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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1383947
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-26 
確定日 2022-04-25 
事件の表示 特願2016−256017「表面保護フィルム付偏光フィルム、及び、表面保護フィルム付光学部材」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月 5日出願公開、特開2018−106137〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続等の経緯

特願2016−256017号は平成28年12月28日を出願日とする出願(以下「本件出願」という。)であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和2年 8月28日付け:拒絶理由通知
令和2年10月30日 :手続補正書
令和2年10月30日 :意見書
令和3年 2月 5日付け:拒絶理由通知
令和3年 4月 8日 :手続補正書
令和3年 4月 8日 :意見書
令和3年 5月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和3年 8月26日 :審判請求書


第2 本願発明

本件出願の特許請求の範囲の請求項1〜2に係る発明は、令和3年4月8日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のものである。

「【請求項1】
表面保護フィルム、及び、偏光フィルムを含む表面保護フィルム付光学部材において、
前記表面保護フィルムが、厚み50μm以上の基材フィルムの少なくとも片面に、粘着性ポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマー、及び、重量平均分子量が3500以上のフッ素系オリゴマーを含有する粘着剤組成物から形成される粘着剤層を有し、
前記偏光フィルムが、偏光子を含み、前記偏光フィルムの厚みが、88μm以下であり、前記偏光子の厚みが、8μm以下であり、
前記偏光フィルムに、反射フィルム、半透過フィルム、位相差フィルム、視角補償フィルム、及び、輝度向上フィルムからなる群より選択される少なくとも1種を積層してなることを特徴とする表面保護フィルム付光学部材。」


第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、令和3年4月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜請求項2に係る発明は、[A]引用文献2、4、6〜8に記載された発明等に基づいて、又は、[B]引用文献2〜4、6〜8に記載された発明等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献2:特開2001−64600号公報
引用文献3:特開2013−237721号公報
引用文献4:特開2015−129826号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6:特開2016−118771号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7:特開2016−71370号公報 (周知技術を示す文献)
引用文献8:特開2016−170383号公報(周知技術を示す文献)


第4 引用文献及び引用発明等

1 引用文献2
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由において引用された、特開2001−64600号公報(以下「引用文献2」という。)は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す(以下、同様である。)。

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、液晶セルに接着した光学部材より容易に剥離できる表面保護フィルムに関する。
・・・中略・・・
【0004】
【発明の技術的課題】本発明は、温度や湿度等の環境変化で光学部材より剥離しない特性を満足させつつ、剥離時には光学部材より容易に剥離できる表面保護フィルムの開発を課題とする。
【0005】
【課題の解決手段】本発明は、光学素材の表面を粘着層を介して接着被覆する保護フィルムであり、その粘着層がフッ素系化合物を含有することを特徴とする表面保護フィルム、及びその表面保護フィルムにて光学素材の表面を接着被覆してなることを特徴とする光学部材、並びにその光学部材を液晶セルの少なくとも片側に有することを特徴とする液晶表示装置を提供するものである。
【0006】
【発明の効果】本発明によれば、フッ素系化合物の含有で接着力が経時上昇しにくい易剥離性の粘着層を形成でき、温度や湿度等の環境変化で光学部材より剥離しない特性を満足させつつ長期間の接着状態を継続した後においても液晶セルに接着した光学部材より手や機械を介し容易に剥離でき、液晶セルにセルギャップ変化等のダメージを与えずに剥離できる表面保護フィルムを得ることができる。」

イ 「【0007】
【発明の実施形態】本発明による表面保護フィルムは、光学素材の表面を粘着層を介して接着被覆する保護フィルムであり、その粘着層がフッ素系化合物を含有するものからなり、光学部材はその表面保護フィルムにてその粘着層を介し光学素材の表面を接着被覆したものからなる。その光学部材の例を図1に示した。1が表面保護フィルムで、11が保護基材、12が粘着層であり、2が光学素材で、21は粘着層である。
【0008】表面保護フィルムは、図例の如く保護基材11にフッ素系化合物含有の粘着層12を設けてその粘着層と共に保護基材を光学部材より剥離できるように形成される。その保護基材としては、従来に準じた適宜な薄葉体を用いることができ、特に限定はない。
【0009】一般には透視性による光学素材の検査性や管理性などの点より例えば、ポリエステル系樹脂やアセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂やポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂やポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂の如き透明なポリマーからなるフィルムやゴムシート、それらのラミネート体などよりなる保護基材が用いられる。
【0010】保護基材の厚さは、強度等に応じて適宜に決定でき、一般には500μm以下、就中5〜300μm、特に10〜200μmとされる。保護基材の片面又は両面には、剥離時の帯電防止を目的に帯電防止層を設けることもできる。また保護基材の粘着層を設ける面には、粘着層との密着力の向上等を目的にコロナ処理等の適宜な表面処理を施すこともできる。
・・・中略・・・
【0012】前記した粘着層の形成には、適宜な粘着性物質や粘着剤を用いることができ、その種類について特に限定はない。ちなみにその例としては、アクリル系重合体やシリコーン系ポリマー、ポリエステルやポリウレタン、ポリアミドやポリエーテル、フッ素系やゴム系などの適宜なポリマーをベースポリマーとするものなどがあげられる。
【0013】上記した粘着剤液の調製に際しては、フッ素系化合物が配合され、これによりフッ素系化合物含有の粘着層を形成して本発明の目的が達成される。そのフッ素系化合物としては、例えばパーフルオロアルキルスルホン酸塩やパーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマーやフルオロオレフィン・ビニルエーテル重合物、パーフルオロアルキルアクリレートの重合物などの適宜なものを1種又は2種以上用いることができる。
【0014】フッ素系化合物の配合量は、目的とする接着力などに応じて適宜に決定することができる。本発明においては光学素材に対する接着力を、常温での180度ピールに基づいて100gf/10mm以下、就中10〜80gf/10mm、特に20〜70gf/10mmに調節した粘着層が好ましく、かかる点よりベースポリマー100重量部あたりフッ素系化合物を15重量部以下、就中1〜10重量部、特に2〜8重量部配合することが好ましい。
【0015】なお粘着層には必要に応じて、接着力等の制御を目的に例えば粘着性付与樹脂の如き天然物や合成物の樹脂類、酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として保護基材に設けることもできる。粘着層の厚さは、接着力や光学素材の表面粗さなどに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μm、就中5〜200μm、特に10〜100μmとされる。
【0016】表面保護フィルムによる接着被覆対象の光学素材は、例えば偏光板や反射型偏光板、半透過型偏光板や偏光分離型偏光板、それらと位相差板を組合せてなる楕円偏光板や反射型楕円偏光板、半透過型楕円偏光板等の液晶表示装置の形成などに用いられる適宜なものであってよく、その種類について特に限定はない。
【0017】ちなみに前記した偏光板の具体例としては、ポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムにヨウ素及び/又は二色性染料を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン配向フィルムからなる偏光フィルムなどがあげられる。また偏光板は、偏光フィルムの片面又は両面に透明保護層を有するものなどであってもよい。
【0018】一方、上記した反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化をはかりやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
・・・中略・・・
【0021】・・・中略・・・なお半透過型偏光板は、上記において反射層を光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。
【0023】透明保護層は、ポリマーの塗布方式やフィルムとしたものの積層方式などの適宜な方式で形成してよく、厚さは適宜に決定してよい。一般には500μm以下、就中1〜300μm、特に5〜200μmの厚さとされる。・・・中略・・・
【0024】また上記した偏光分離型偏光板は、自然光を入射させると所定偏光軸の直線偏光又は所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示す輝度向上板を偏光板に積層したものであり、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、反射光を反射層等を介し反転させて輝度向上板に再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上板を透過する光の増量を図ると共に、偏光板に吸収されにくい偏光を供給して液晶表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。
・・・中略・・・
【0026】従って前記した所定偏光軸の直線偏光を透過するタイプの輝度向上板では、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上板では、そのまま偏光板に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりはその透過円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。ちなみにその位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0027】可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの光等の単色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って偏光板と輝度向上板の間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
・・・中略・・・
【0029】光学素材は、上記した楕円偏光板や反射型偏光板や位相差板の積層体の如く、2層又は3層以上の光学層を積層したものからなっていてもよい。従って反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組合せた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0030】2層又は3層以上の光学層を積層した光学素材は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成しうるものであるが、予め積層して光学素材としたものは、品質の安定性や組立作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。なお積層には、粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。
・・・中略・・・
【0034】本発明による光学部材は、損傷防止等を目的に光学素材の表裏面の一方又は両方を表面保護フィルムで接着被覆したものである。図例の如く光学素材2の片面のみに表面保護フィルム1を設ける場合、それを設けない面には必要に応じて液晶セル等の他部材と接着するための粘着層21を設けることもできる。
【0035】前記の粘着層は、従来に準じた適宜な粘着剤にて形成することができる。就中、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層であることが好ましい。」

ウ 「【0041】
【実施例】実施例1
アクリル酸イソノニル100部(重量部、以下同じ)及びアクリル酸2−ヒドロキシエチル4部をアゾビスイソブチロニトリル0.5部を介し酢酸エチル150部中、約60℃で8時間反応させて得たアクリル系ポリマー溶液にその固形分100部あたり3部のフッ素化合物(デフェンサMCF323、大日本インキ化学工業社製)と3部のイソシアネート系架橋剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業社製)を加えて粘着剤シロップとし、それを厚さ38μmのポリエステルフィルム上に塗工して乾燥させ厚さ25μmのアクリル系粘着層を形成し、表面保護フィルムを得た後、それを偏光板(HEG1425DU、日東電工社製)の片面に接着して光学部材を得た。なお用いた偏光板は、他面にセパレータで保護した粘着層を有するものである。
【0042】実施例2
アクリル酸イソノニルに代えて、アクリル酸2−エチルヘキシルを用いたほかは実施例1に準じ、アクリル系ポリマー溶液と粘着剤シロップを得、それを用いて表面保護フィルムと光学部材を得た。
・・・中略・・・
【0045】評価試験
接着力
実施例、比較例で得た光学部材を幅10mmにカットして試験片とし、それよりバネ秤を介した手による剥離作業で表面保護フィルムの接着力を調べた。なお接着力は、10人の作業員にて各5回の剥離作業を行い、その各人の平均値とした。
【0046】剥離作業性
実施例、比較例で得た光学部材を長さ300mm、幅200mmのサイズにカットした試験片をその偏光板に設けた粘着層を介しガラス板に接着し、そのガラス板を下側にして台上に置き、表面保護フィルムの角部に粘着テープを接着してそのテープを介したピックアップ方式で剥離作業を行い、その場合の剥離作業性を調べた。評価は、接着力が強くて剥離に時間を要したり、剥離の際にガラス板自体が持ち上げられたりした場合を不良、ガラス板の持ち上げなくスムーズに剥離できた場合を良好とした。
【0047】前記の結果を次表に示した。
実施例1 実施例2 比較例1 比較例2
接着力(gf/10mm) 30〜60 40〜70 140〜160 170〜200
剥離作業性 良 好 良 好 不良(*1) 不良(*1)
*1:ガラス板を支えなければ剥離困難」

(2)引用発明2
引用文献2の実施例に関する記載(上記ウ)に基づけば、引用文献2には次の「光学部材」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「アクリル酸イソノニル100部及びアクリル酸2−ヒドロキシエチル4部をアゾビスイソブチロニトリル0.5部を介し酢酸エチル150部中、約60℃で8時間反応させて得たアクリル系ポリマー溶液にその固形分100部あたり3部のフッ素化合物(デフェンサMCF323、大日本インキ化学工業社製)と3部のイソシアネート系架橋剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業社製)を加えて粘着剤シロップとし、それを厚さ38μmのポリエステルフィルム上に塗工して乾燥させ厚さ25μmのアクリル系粘着層を形成し、表面保護フィルムを得た後、それを他面にセパレータで保護した粘着層を有する偏光板(HEG1425DU、日東電工社製)の片面に接着して得た光学部材」


第4 対比

1 対比
本願発明と引用発明2とを対比すると、以下のとおりとなる。

(表面保護フィルム付光学部材)
引用発明2の「表面保護フィルム」は、本願発明の「表面保護フィルム」に相当し、同じく「偏光板」は「偏光フィルム」に相当する。そして、引用発明2の「表面保護フィルム」「を偏光板の片面に接着して得た光学部材」は、本願発明の「表面保護フィルム付光学部材」に相当する。

(表面保護フィルム)
引用発明2の表面保護フィルムは「ポリエステルフィルム上に」「アクリル系粘着層を形成」したものである。すると、引用発明2の表面保護フィルムが有する「ポリエステルフィルム」及び「アクリル系粘着層」は、それぞれ本願発明の表面保護フィルムが有する「基材フィルム」及び「粘着剤層」に相当し、また、本願発明における「基材フィルムの少なくとも片面に」「粘着剤層を有し」との要件を満たす。
引用発明2の「アクリル系粘着層」は、「アクリル系ポリマー溶液」をもとに形成されたものである。すると、技術常識を踏まえれば、引用発明2の「アクリル系粘着層」は、本願発明の粘着剤層と、「粘着性ポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマー」「を含有する粘着剤組成物から形成される」点において共通するといえる。
引用発明2のアクリル系粘着層に加えられる「フッ素化合物」と、本願発明の「フッ素系オリゴマー」とは、粘着剤層が含有するフッ素系化合物である点で共通するといえる。

(偏光フィルム)
引用発明2の「偏光板」が、偏光子を含むことは、技術常識から明らかである。

2 一致点及び相違点

(1)一致点
本願発明と引用発明2とは、以下の点で一致する。

「表面保護フィルム、及び、偏光フィルムを含む表面保護フィルム付光学部材において、
前記表面保護フィルムが、基材フィルムの少なくとも片面に、粘着性ポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマー、及び、フッ素系化合物を含有する粘着剤組成物から形成される粘着剤層を有し、
前記偏光フィルムが、偏光子を含む
表面保護フィルム付光学部材」

(2)相違点
本願発明と引用発明2とは、以下の点で相違する。

(相違点1)
基材フィルムの厚みが、本願発明では「50μm以上」であるのに対して、引用発明2では「38μm」である点。

(相違点2)
フッ素系化合物が、本願発明では「重量平均分子量が3500以上」の「オリゴマー」に特定されているのに対し、引用発明2では「デフェンサMCF323」(商品名)であって、その重量平均分子量、及びオリゴマーであるか否かは、不明である点。

(相違点3)
偏光フィルム及び偏光子の厚みが、本願発明では、それぞれ「88μm以下」及び「8μm以下」であるの対して、引用発明2(商品名「HEG1425DU」)では、いずれの厚みも不明である点。

(相違点4)
表面保護フィルム付光学部材が、本願発明は「前記偏光フィルムに、反射フィルム、半透過フィルム、位相差フィルム、視角補償フィルム、及び、輝度向上フィルムからなる群より選択される少なくとも1種を積層してなる」のに対して、引用発明2は、そのような積層を有していない点。


第5 判断

1 相違点1及び相違点3について

本願発明は「偏光フィルムが薄型の偏光フィルムの場合であっても、偏光フィルムが撓んだり折れたりすることがなく」(本件出願の明細書【0006】)という点に着目してなされた発明であることから、相違点1及び3については併せて検討する。

(基材フィルムの厚み)
引用文献2の【発明の実施形態】では、表面保護フィルムの基材フィルムに相当する「保護基材」の厚さについて、「強度等に応じて適宜に決定でき、一般には500μm以下、就中5〜300μm、特に10〜200μmとされる。」としている(【0010】)。加えて、引用文献6には、表面保護フィルムに相当する「プロテクトフィルム」(ただし、粘着剤層を含まない)の厚みを「60μm以上」(【請求項3】)とすることが記載されているように、基材フィルムの厚みとして「50μm以上」の数値範囲は、本件出願の時点において格別のものではない。

(偏光フィルム及び偏光子の厚み)
偏光フィルム(偏光板)の薄型化は本件出願時における周知の課題であって、相違点3に係る本願発明の数値範囲のように薄型化されたものも、本件出願の時点において周知である。例えば、引用文献6には、偏光子が「7μm」(【0094】)で、「偏光板」が「66μm」(【0103】)の実施例があり、引用文献7には、「偏光子」が「5μm」で(【0154】)、これに「40μm」の「透明保護フィルム」を「0.5μm」の「接着剤層」で貼合した「片保護偏光フィルムA」(【0157】、【0159】)の実施例があり、引用文献8には、偏光子にあたる「偏光フィルム」が「7μm」で(【0144】)、これに「60μm」の「保護フィルム」を「水系接着剤層」で貼合した「片面保護偏光板」(【0147】、【0148】)の実施例がある。

(基材フィルムの厚みと、偏光フィルム及び偏光子の厚みの関係)
基材フィルムの厚みと、偏光フィルム及び偏光子の厚みの関係について検討すると、後者を薄型化するとき、撓んだり折れたりして光学部材の搬送時や貼り合せ時に不具合が生じるという課題、及び、当該課題に対応して前者を厚くしておくという解決手段は、本件出願時に周知である。例えば、引用文献7の【0142】には「本発明の粘着剤層付偏光フィルムは非常に薄いフィルムであるため・・・中略・・・シートの搬送や表示パネルへの貼合せ時のハンドリングが難しく、それらの過程で粘着剤層付偏光フィルム(シート)が大きな機械的衝撃(例えば、吸着による撓み等)を受けるリスクが高くなる。このようなリスクを低減するには、例えば基材フィルムの厚みが50μm以上の厚めの表面保護フィルムを用いる等の対策が別途必要となる」と記載されており、同様のことは、引用文献6の【0005】〜【0015】、引用文献8の【0063】等の記載からも把握される。

してみれば、偏光フィルム(偏光板)の薄型化の傾向に従い、引用発明2における偏光フィルム及び偏光子の厚みを相違点3に係る本願発明の数値範囲とし、これに併せて、偏光フィルム(偏光板)の薄型化に伴う課題を解決する目的で基材フィルムの厚みを相違点1に係る本願発明の数値範囲にすることは、当業者が設計的になし得たことである。

2 相違点2について

引用文献2は「そのフッ素系化合物としては、例えばパーフルオロアルキルスルホン酸塩やパーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマーやフルオロオレフィン・ビニルエーテル重合物、パーフルオロアルキルアクリレートの重合物などの適宜なものを1種又は2種以上用いることができる。」(【0013】)との記載により、発明の実施形態となり得る材料の選択肢を開示していることから、粘着層に含有させるフッ素系化合物として、パーフルオロアルキル基含有オリゴマーに代表される「フッ素系オリゴマー」の採用についても示唆している。

粘着剤(粘着剤組成物)を取り扱う技術分野において、基材となる粘着性ポリマーに、重量平均分子量が3500以上のフッ素系オリゴマーを含有させることは周知技術である。例えば、特開2014−162821号公報には、「濡れ性やリワーク性」の向上(【0057】)を目的として、レベリング剤として「メガファックF470N」又は、同「F556」(【0058】)を含有させることが、また、国際公開第2016/181879号には「剥離性を向上させる」([0016])ことを目的として「メガファックF−553」又は、同「F−554」、「F−556」、「F−557」、「F−559」、「F552」、「F562」([0107])を含有させることが記載されている。
さらに進んで、光学部材の表面保護フィルムの粘着剤への用途においても、粘着性ポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを用いる場合に、重量平均分子量が3500以上のフッ素系オリゴマーを含有させることは、同様に知られている。例えば、引用文献3には、剥離帯電防止性や粘着性、再剥離性の向上(【0011】)を目的として、「メガファックF−477」又は「サーフロンS−386」(【0055】)を含有させることが、また、特開2011−63712号公報には、剥離力の低下の防止、ひいては製造工程での浮きや剥がれの防止を目的として(【0016】)、「メガファック477」又は、同「470」、「444」(【0024】)を含有させることが記載されている。
なお、上記において「メガファックF470N」の重量平均分子量が3500以上であることについては、特開2009−155521号公報の【0013】に記載されており、その余については、本件出願の明細書に記載のとおりである。

以上のとおり、粘着剤の主目的である粘着性(浮きや剥がれの防止)と剥離性との両立、さらには塗布性(レベリング性)を向上させる目的から、あるいは、粘着剤を光学部材の表面保護フィルムに用いる場合においては、剥離帯電防止という周知の課題を解決する目的もあって、粘着剤に重量平均分子量が3500以上のフッ素系オリゴマーを含有させることは、当業者における周知技術である。

引用文献2でも「本発明は、温度や湿度等の環境変化で光学部材より剥離しない特性を満足させつつ、剥離時には光学部材より容易に剥離できる表面保護フィルムの開発を課題とする。」(【0004】)と説明しているように、引用発明2において上記の目的と共通した認識があることは明らかである。また、剥離帯電防止性も、光学部材の表面保護フィルムに共通する一般的課題であって(例えば、引用文献2の【0010】も参照)、引用発明2において当然に当業者が認識している課題といえる。
すると、引用発明2において、上記の目的に沿って周知技術を参照し、その粘着剤(粘着剤組成物)のフッ素系化合物として上記周知の商品群から適宜選択して含有させること、すなわち、相違点2に係る本願発明の構成に想到することは、当業者が容易になし得たことといえる。

これに対し、本件出願の明細書では、重量平均分子量が3500未満のフッ素系オリゴマーを用いた比較例4〜6が「せん断力に劣る」という特性を以て、本願発明の効果を説明し、審判請求書でも当該効果を主張している。
しかしながら、上に示したとおり、粘着性と剥離性は粘着剤の上記主目的に応じて求められる主たる特性であり、また、JIS規格(JIS Z 0109−1992)に基づき、その粘着力が「せん断粘着力」や「保持力」、「引きはがし粘着力」等で測定、評価されることは当業者の技術常識にすぎないから、上記周知技術を適用した粘着剤についても、その主たる特性である「せん断粘着力」の程度については、当業者が当然に承知していたこと、あるいは少なくとも、その程度を確認することは当業者としてきわめて当然のことといえる。
加えて、引用発明2において認識されている上記課題を踏まえた当業者は、「せん断粘着力」のみならず「引きはがし粘着力」についても十分考慮して、粘着剤(組成物)の選択にあたるというべきである。
そうすると、請求人が主張する比較例4〜6に基づく上記効果は、その実質は、「せん断粘着力」や「引きはがし粘着力」等で評価されている粘着剤の選択にあたり、(メタ)アクリル系ポリマーに重量平均分子量が3500以上のフッ素系オリゴマー(上記周知の商品群)を含有させた従来周知の粘着剤が奏する既存の特性(せん断粘着力)を改めて測定、評価し直した以上のものではなく、これを以て、本願発明が新たに見いだした有利な効果と評価することはできない。あるいは、(メタ)アクリル系ポリマーに重量平均分子量が3500以上のフッ素系オリゴマーを含有させた従来周知の粘着剤が、せん断力(せん断粘着力)に関する本願発明の効果を既に奏していたことは、当業者にとって明らかなこと、乃至は、当然に知り得たことである。

以上のとおりであるから、本件出願の明細書において、上記のような特性が有利な効果として記載されているからといって直ちに、当該効果が本願発明の進歩性を推認するに足りるものとはいえない。
また、粘着剤として周知の上記組成を引用発明2の粘着剤に採用したときにも当該効果は発揮されるが、それは単に、周知の組成それ自体に起因する特性にすぎず、技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果が本願発明で新たに生じたとはいえない。

3 相違点4について

引用文献2では、表面保護フィルムによる接着被覆対象の光学素材として、偏光板に反射層を設けた反射型偏光板、偏光板に半透過型の反射層を設けた半透過型偏光板、輝度向上板を偏光板に積層した偏光分離型偏光板、偏光板に位相差板を組合せてなる円偏光板も想定されている(【0016】、【0018】、【0021】、【0024】、【0026】及び【0029】)。
加えて、偏光フィルムに関しては、実用に際して反射板や半透過板、位相差板、視角補償フィルム、輝度向上フィルム等の他の光学層と積層した光学フィルムとして用いられることは、例えば、引用文献4の【0104】等に記載されるように周知の事項でもある。審判請求人は、引用文献4には、本願発明にいうところの表面保護フィルム(偏光フィルムの透明保護フィルムの偏光子と接している面と反対側の面に接しているもの)について記載がない旨を主張するが、表面保護フィルムの存否にかかわらず、偏光フィルムに関する上記周知の事項は、引用発明2の偏光フィルムにも適用できることは明らかであり、当該主張を採用することはできない。
よって、引用発明2において、相違点4に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が適宜になし得たことである。

4 本願発明の効果について

本願発明の効果として本件出願の明細書【0011】には、(1)偏光フィルムが撓んだり折れたりすることがない、(2)光学部材の搬送時や貼り合せ時における不具合を予防できる、(3)光学部材から表面保護フィルムを容易に剥離することが可能であることが記載されている。
これらの効果については、上記1〜3において検討したとおりであり、(1)については、当業者が予測できた効果といえ、(2)〜(3)については、周知の組成の粘着剤それ自体の特性として当業者が当然に知り得た事項であって、技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果が新たに生じたとはいえない。

5 審判請求人の主張について

審判請求人は、令和3年8月26日提出の審判請求書において概略、次のように主張している。
(1)引用発明2は表面保護フィルムの厚さが38μmであり、引用文献2には、偏光子や偏光子を含む偏光フィルムの厚みについて記載や示唆はなく、薄型の偏光フィルム等との貼付を想定した記載、偏光フィルムが撓んだり折れたりする課題の記載もない点(審判請求書の(ア)〜(イ)、(カ)〜(キ))
(2)引用文献2には、フッ素系オリゴマーの重量平均分子量について記載や示唆はなく、軽剥離性と粘着特性の両立を図る本願発明に容易に想到することは困難である点(同(ウ)〜(オ))
(3)引用文献2には、薄型の偏光フィルムに他の光学部材を積層することの記載がなく、また、引用文献4に記載の粘着剤層は表面保護フィルムの構成の一部ではない点(同(ク)〜(ケ))
(4)引用文献3のパーフルオロアルキル基含有オリゴマーを使用する主な目的は剥離帯電防止性の向上であり、引用文献2には剥離帯電防止性に関する記載はなく、両引例の組み合わせに明確な動機づけはない点(同(コ))

以上の点については、上記1〜3で検討したとおりであり、審判請求人のこれらの主張はいずれも採用できない。

6 小括

したがって、本願発明は、その出願前に当業者が引用文献2に記載された発明及び引用文献3〜6に記載の周知技術、その他の文献に記載の周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものである。


第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-02-18 
結審通知日 2022-02-22 
審決日 2022-03-10 
出願番号 P2016-256017
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 榎本 吉孝
河原 正
発明の名称 表面保護フィルム付偏光フィルム、及び、表面保護フィルム付光学部材  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
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