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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16H
管理番号 1383955
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-06 
確定日 2022-04-19 
事件の表示 特願2016−213010「変速機の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月10日出願公開、特開2018− 71683、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願は、平成28年10月31日の出願であって、令和 2年10月22日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月24日に意見書及び手続補正書が提出され、令和 3年 3月 9日付けで最後の拒絶理由通知がされ、同年 5月17日に意見書及び手続補正書が提出され、同年 6月 1日付けで令和 3年 5月17日に提出された手続補正書による手続補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年 9月 6日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2010−159722号公報
引用文献2:特開2002−138874号公報

第3 審判請求時の補正について
1.審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

【請求項1】
エンジントルクがロックアップ機構付きのトルクコンバータを介して入力される変速機の制御装置であって、
前記トルクコンバータの前記ロックアップ機構の状態および速度比を取得するトルコン状態取得手段と、
前記変速機が搭載される車両におけるアクセル操作の操作量に応じたエンジントルクの要求値である要求トルクを取得する要求トルク取得手段と、
前記トルコン状態取得手段により取得される前記ロックアップ機構の状態に応じた制限トルクマップを使用して、前記制限トルクマップに定められた速度比と制限トルクとの関係から、速度比に応じた制限トルクを設定する制限トルク設定手段と、
前記要求トルク取得手段により取得される要求トルクが前記制限トルク設定手段により設定される制限トルクに応じた判定閾値を超えるとき、エンジントルクを当該制限トルク以下に制限するトルク制限制御の作動要求を出力するトルク制限要求手段とを含む、制御装置。

2.本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の記載は、令和 2年12月24日に手続補正された特許請求の範囲の記載によって特定される次のとおりである。

【請求項1】
エンジントルクがロックアップ機構付きのトルクコンバータを介して入力される変速機の制御装置であって、
前記トルクコンバータの前記ロックアップ機構の状態および速度比を取得するトルコン状態取得手段と、
前記変速機が搭載される車両におけるアクセル操作の操作量に応じたエンジントルクの要求値である要求トルクを取得する要求トルク取得手段と、
前記トルコン状態取得手段により取得される前記ロックアップ機構の状態および速度比に応じた制限トルクを設定する制限トルク設定手段と、
前記要求トルク取得手段により取得される要求トルクが前記制限トルク設定手段により設定される制限トルクに応じた判定閾値を超えるとき、エンジントルクを当該制限トルク以下に制限するトルク制限制御の作動要求を出力するトルク制限要求手段とを含む、制御装置。

3.本件補正の適否
本件補正は、請求項1の「制限トルク設定手段」について、「前記トルコン状態取得手段により取得される前記ロックアップ機構の状態および速度比に応じた制限トルクを設定する」とあるのを、「前記トルコン状態取得手段により取得される前記ロックアップ機構の状態に応じた制限トルクマップを使用して、前記制限トルクマップに定められた速度比と制限トルクとの関係から、速度比に応じた制限トルクを設定する」と発明特定事項を具体的に特定して限定するものあるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。
当該制限トルク設定手段の構成は、願書に最初に添付した明細書の段落【0074】に、
「11:ECU(制御装置、トルコン状態取得手段、要求トルク取得手段、制限トルク設定手段、トルク制限要求手段)」
と記載され、段落【0053】〜【0055】に、
「ECU11の不揮発性メモリ(ROM、フラッシュメモリなど)には、図4Aおよび図4Bに示される制限トルクマップが記憶されている。制限トルクマップは、トルクコンバータ3の速度比と制限トルクとの関係を定めたマップであり、無段変速機4のシフトレンジおよびトルクコンバータ3の状態に応じた制限トルクを設定するために使用される。
図4Aに示される制限トルクマップは、ロックアップオフの状態で使用される。図4Aに示される制限トルクマップは、たとえば、速度比が0から所定の第1速度比までの範囲で速度比が大きいほど制限トルクの値が大きくなり、第1速度比から1までの範囲で速度比の大小にかかわらず制限トルクの値が一定値となるように作成されている。
図4Bに示される制限トルクマップは、ロックアップオンの状態で使用される。図4Aに示される制限トルクマップは、たとえば、速度比が0から第1速度比よりも小さい所定の第2速度比までの範囲で速度比が大きいほど制限トルクの値が大きくなり、第2速度比から1までの範囲で速度比の大小にかかわらず制限トルクの値が一定値となるように作成されている。図4Bに示される制限トルクマップでは、速度比が0から第2速度比までの範囲における速度比と制限トルクとの関係が図4Aに示される制限トルクマップでの当該関係と同じである。」
と記載されているから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。

ここで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないので、以下、検討する。

4.独立特許要件について
4−1 本願発明について
本願発明は、令和 3年 9月 6日の手続補正(本件補正)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第3の1.のとおりである。

4−2 引用文献に記載された事項及び引用発明
(1)引用文献1に記載された事項及び引用発明について
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
エンジン(E)とオートマチックトランスミッション(M)とをロックアップクラッチ(18)を備えたトルクコンバータ(T)を介して接続し、前記オートマチックトランスミッション(M)の摩擦係合部材がスリップするのを防止すべく前記エンジン(E)のトルクを制限するエンジントルクの制御装置において、
前記ロックアップクラッチ(18)の係合状態を判定するロックアップクラッチ係合状態判定手段(Sd)と、前記オートマチックトランスミッション(M)の変速状態を判定する変速状態判定手段(Sc)と、前記オートマチックトランスミッション(M)の油温を検出する油温検出手段(Sb)と、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段(Sa)と、前記変速クラッチをスリップさせずに前記エンジン(E)が出力可能なトルク制限値を算出するトルク制限値算出手段(M1)と、
前記トルク制限値に基づいて前記エンジン(E)のトルクを制限するエンジントルク制御手段(Ue)と、
を備え、
前記トルク制限値算出手段(M1)は、前記ロックアップクラッチ(18)の係合状態、前記油温、前記エンジン回転数および前記変速状態をパラメータとして前記トルク制限値を算出することを特徴とするエンジントルクの制御装置。」

イ 「【0004】
ところで、[発明を実施するための最良の形態]の欄で詳述するように、トルクコンバータに設けられたロックアップクラッチが係合すると、エンジンからオートマチックトランスミッションに入力されるエンジントルクの最大値が増加するため、ロックアップクラッチの非係合時にスリップしなかったオートマチックトランスミッションの摩擦係合部材が、ロックアップクラッチの係合時にスリップする可能性がある。またオートマチックトランスミッションの摩擦係合部材がスリップするエンジントルクは、オートマチックトランスミッションの油温や変速段によっても変化する。
【0005】
しかしながら上記特許文献1、2に記載されたものは、トルクコンバータのロックアップクラッチの係合状態、オートマチックトランスミッションの油温および変速段を考慮してエンジントルクの制限値を算出していないため、摩擦係合部材のスリップを確実に防止しようとすると、エンジントルクが必要以上に低下してしまう可能性があった。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、オートマチックトランスミッションの変速クラッチがスリップしないようにエンジンのトルクを低減制御する際に、摩擦係合部材のスリップを確実に防止しながらエンジントルクの低減量を最小限に抑えることを目的とする。」

ウ 「【0013】
図1〜図9は本発明の実施の形態を示すもので、図1はロックアップクラッチを備えたトルクコンバータの構造を示す図、図2はオートマチックトランスミッションおよびエンジンの電子制御ユニットのブロック図、図3はスリップ防止トルク制限値を検索するマップを示す図、図4はロックアップクラッチの係合状態により変化するトランスミッション入力トルクを示す図、図5は運転者要求トルクを検索するマップを示す図、図6はロックアップクラッチの係合状態によるトルク低減量の差を示す図、図7は変速クラッチのスリップ防止制御のフローチャート、図8は変速状態によるトルク制限値の切り替えを示すタイムチャート、図9はロックアップクラッチの係合状態によるトルク制限値の切り替えを示すタイムチャートである。」

エ 「【0016】
ロックアップクラッチ18はトルクコンバータカバー19の内面に当接可能なクラッチピストン20を備えており、クラッチピストン20の両側に第1液室21および第2液室22が形成される。第1、第2液室21,22にロックアップクラッチ18の制御液圧を供給する液圧制御手段23は液圧ポンプや液圧制御弁で構成されており、車速V、エンジン回転数NE、トルクコンバータTの速度比、オートマチックトランスミッションMの変速比等が入力される電子制御ユニットUtにより制御される。
【0017】
第1液室21に液圧が供給されてクラッチピストン20のフェーシング20aがトルクコンバータカバー19の内面に当接すると、ロックアップクラッチ18が係合してエンジンEの出力軸11のトルクが直接オートマチックトランスミッションMの入力軸13に伝達される。第2液室22に液圧が供給されてクラッチピストン20のフェーシング20aがトルクコンバータカバー19から離間すると、ロックアップクラッチ18が係合解除してエンジンEの出力軸11とオートマチックトランスミッションMの入力軸13との機械的な連結が遮断される。また第1、第2液室21,22の差圧を制御することで、トルクコンバータカバー19とクラッチピストン20のフェーシング20aとをスリップさせることで、トルクコンバータTの速度比を任意に制御することができる。
【0018】
図2に示すように、オートマチックトランスミッションMの電子制御ユニットUtは、変速クラッチがスリップしない範囲でエンジンEからオートマチックトランスミッションMに出力可能なトルクの上限であるトルク制限値を算出するトルク制限値算出手段M1と、オートマチックトランスミッションMの変速時のショックを最小限に抑えるための変速時要求トルクを算出する変速時要求トルク算出手段M2とを備える。トルク制限値算出手段M1は、スリップ防止トルク制限値算出手段M1aと、ストール時トルク制限値算出手段M1bと、同時踏みトルク制限値算出手段M1cと、ローセレクト手段M1dとを備える。
【0019】
スリップ防止トルク制限値算出手段M1aには、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段Saと、オートマチックトランスミッションMの油温を検出する油温検出手段Sbと、オートマチックトランスミッションMの変速状態(変速段および変速フェーズ)を判定する変速状態判定手段Scと、ロックアップクラッチ18の係合状態を判定するロックアップクラッチ係合状態判定手段Sdとが接続される。
【0020】
スリップ防止トルク制限値算出手段M1aは、エンジン回転数、オートマチックトランスミッションMの油温、オートマチックトランスミッションMの変速状態およびロックアップクラッチ18の係合状態に基づいて、変速クラッチがスリップしない範囲でエンジンEからオートマチックトランスミッションMに出力可能なスリップ防止トルク制限値をマップ検索により算出する。
【0021】
図3に示すように、前記スリップ防止トルク制限値を算出するマップは、オートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数とをパラメータとするもので、油温の増加に伴ってスリップ防止トルク制限値が減少し、かつエンジン回転数の増加に伴ってスリップ防止トルク制限値が増加するように設定される。このマップは、ロックアップクラッチ係合状態判定手段Sdで判定したロックアップクラッチ18の係合時および非係合時によって持ち替えられ、かつ変速状態判定手段Scで判定した変速段によって持ち替えられる。従って5速のオートマチックトランスミッションMの場合には、合計10枚のマップが持ち替えられることになる。」

オ 「【0025】
同時踏みトルク制限値算出手段M1cは、アクセルペダルおよびブレーキペダルが同時に踏まれたと判定したときに、同時踏みトルク制限値を出力する。同時踏みトルク制限値を設ける理由は、アクセルペダルを踏みながらブレーキペダルを踏むと車両が停止した状態でエンジントルクが増加し、オートマチックトランスミッションMに大きなトルクが入力されて変速クラッチがスリップする可能性があるからである。」

カ 「【0028】
運転者要求トルク算出手段M3は、エンジン回転数検出手段Saで検出したエンジン回転数と、アクセル開度検出手段Sfで検出したアクセル開度とを、図5に示すマップに適用して運転者要求トルクを算出する。ローセレクト手段M4は、運転者要求トルク算出手段M3で算出した運転者要求トルクと、オートマチックトランスミッションMの電子制御ユニットUtからCANを介して入力されたトルク制限値および変速時要求トルクとのうちから、最も小さい値を最終出力トルクとして燃料噴射量算出手段M5に出力する。そして燃料噴射量算出手段M5は、エンジンEが前記最終出力トルクを出力するように燃料噴射量を制御する。」

キ 「【図2】



ク 「【図3】



ケ 「【図7】



コ 摘記事項エの段落【0016】に、「第1、第2液室21,22にロックアップクラッチ18の制御液圧を供給する液圧制御手段23は液圧ポンプや液圧制御弁で構成されており、車速V、エンジン回転数NE、トルクコンバータTの速度比、オートマチックトランスミッションMの変速比等が入力される電子制御ユニットUtにより制御される。」と記載され、段落【0017】に、「また第1、第2液室21,22の差圧を制御することで、トルクコンバータカバー19とクラッチピストン20のフェーシング20aとをスリップさせることで、トルクコンバータTの速度比を任意に制御することができる。」と記載されているから、トルクコンバータTの速度比が電子制御ユニットUtに入力され、その速度比は任意に制御することができるので、電子制御ユニットUtにはトルクコンバータTの任意に制御することができる速度比の入力部があると認められる。

上記摘記事項ア〜ケ及び認定事項コから、引用文献1には、特に「スリップトルク制限値」に注目すると、次の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明」という。)。

(引用発明)
「エンジントルクがロックアップクラッチ18を備えたトルクコンバータTを介して入力されるオートマチックトランスミッションMの電子制御ユニットUtおよびエンジンEの電子制御ユニットUeであって、
前記トルクコンバータTの前記ロックアップクラッチ18の係合状態を判定するロックアップクラッチ係合状態判定手段Sdと、
前記トルクコンバータTの任意に制御することができる速度比を入力する速度比の入力部と、
前記オートマチックトランスミッションMが備えられる車両におけるエンジン回転数とアクセル開度とを適用して運転者要求トルクを算出する運転者要求トルク算出手段M3と、
前記オートマチックトランスミッションMの変速状態を判定する変速状態判定手段Scと、前記オートマチックトランスミッションMの油温を検出する油温検出手段Sbと、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段Saと、
前記ロックアップクラッチ18の係合状態、前記油温、前記エンジン回転数および前記変速状態をパラメータとして、前記変速クラッチをスリップさせずに前記エンジンEが出力可能なトルク制限値を算出するトルク制限値算出手段M1のうちのスリップ防止トルク制限値算出手段M1aであって、前記変速状態判定手段Scにより判定される変速段によって持ち替えられ、かつ、前記ロックアップクラッチ係合状態判定手段Sdにより判定される前記ロックアップクラッチ18の係合状態によって持ち替えられたスリップ防止トルク制限値を算出するマップをマップ検索して、前記スリップ防止トルク制限値を算出するマップに設定されたオートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数とをパラメータとするスリップ防止トルク制限値のマップから、オートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数とをパラメータとするスリップ防止トルク制限値を算出するスリップ防止トルク制限値算出手段M1aと、
前記スリップ防止トルク制限値算出手段M1aにより算出されるスリップ防止トルク制限値が前記運転者要求トルク算出手段M3により算出される運転者要求トルクを下回っているとき、エンジンEの出力トルクを当該トルク制限値まで低減する最終出力トルクとして出力するローセレクト手段M4とを含む、オートマチックトランスミッションMの電子制御ユニットUtおよびエンジンEの電子制御ユニットUe。」

(2) 引用文献2の記載事項
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 自動変速機の通常走行レンジを検出する通常走行レンジ信号検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段とを備えた自動変速機を搭載した内燃機関のトルク制御装置において、前記自動変速機の通常走行レンジの検出時で、且つ車速が予め設定された値よりも小さく、さらにエンジン回転数が予め設定されたエンジン回転数域内にある場合に、前記自動変速機のインプットシャフトとエンジン回転数との比から算出される速度比が予め設定された値よりも小さいときには、速度比に対応した点火時期量にて前記内燃機関を遅角制御する制御手段を設けたことを特徴とする内燃機関のトルク制御装置。」

イ 「【0032】そして、コンバータケース部140内には、内燃機関2のクランクシャフトとオーバドライブインプットシャフト144との間で、トルクコンバータ150が設けられている。このトルクコンバータ150は、クランクシャフトに固定したドライブプレート152に取り付けられたポンプ羽根154と、オーバドライブインプットシャフト144に取り付けられたタービン羽根156と、ステータ158とを有している。このステータ158は、変速機ケース138のケース壁部160に連設した固定シャフト162にワンウェイクラッチ164を介して取り付けられている。ドライブプレート152には、図示しないポンプ用シャフトを介してオイルポンプ166が設けられる。
【0033】また、前記ギヤケース部142には、フォワードクラッチインプットシャフト146上で、オーバドライブクラッチ168とオーバドライブブレーキ170とが設けられている。
【0034】更に、前記ギヤケース部142には、アウトプットシャフト148上で、補助変速機構を構成するように、プラネタリギヤユニットとして、フロントプラネタリギヤ172とリアプラネタリギヤ174とが設けられ、また、クラッチとして、フォワードクラッチ176とワンウェイクラッチ178とダイレクトクラッチ180とが設けられ、更に、ブレーキとして、セカンドコーストブレーキ182とセカンドブレーキ184とリバースブレーキ186とが設けられている。
【0035】なお、符号188は、オーバドライブプラネタリギヤである。
【0036】そしてこのとき、前記制御手段66に、前記自動変速機136の通常走行レンジの検出時で、且つ車速が予め設定された値よりも小さく、さらにエンジン回転数が予め設定されたエンジン回転数域内にある場合に、前記自動変速機136のインプットシャフトとエンジン回転数との比から算出される速度比が予め設定された値よりも小さいときには、速度比に対応した点火時期量にて前記内燃機関2を遅角制御する機能を設ける構成とする。
【0037】詳述すれば、前記自動変速機136のDレンジの検出時で、且つ車速が予め設定された値VSP1(例えば8km/h)よりも小さく、さらにエンジン回転数Neが予め設定されたTRDNEL〜TRDNEHの範囲内にある場合に、前記自動変速機136のインプットシャフトであるオーバドライブインプットシャフト144とエンジン回転数との比から算出される速度比Sratioが予め設定された値SDratio(図5参照)よりも小さいときには、前記制御手段66によって、速度比Sratioに対応した点火時期量である遅角制御量、つまりDレンジ時遅角量TRDにて前記内燃機関2を遅角制御するものである。」

ウ 「【0041】ここで、参考までに記載すると、自動変速機での発生トルクは、図7に示す如く、スロットル全開でエンジン出力トルクが大きく、且つ速度比が小さい時により大きなトルクが発生する。
【0042】また、図8〜図11に示す如く、全開発進をした時に自動変速機のインプットシャフト回転数がある回転数に到達するまで、またはフットブレーキを思い切り踏み込んで、なお且つアクセルを全開にするストール状態で大きなトルクが発生する。
【0043】上述した状態は非常に希であり、この希な頻度の発生トルクを満足させるために、自動変速機は各部品の強度アップを図り、自動変速機の重量や大きさ、コストが増加するのが現状である。
【0044】このとき、本発明は、このような希な頻度のトルク発生を内燃機関側の遅角によって低下させ、自動変速機の重量や大きさ、コストの低減を図るものである。」

エ 「【図1】



オ 「【図5】



上記摘記事項ア〜オから、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているといえる。

「速度比に対応した点火時期量にて前記内燃機関を遅角制御する制御手段を設けた内燃機関のトルク制御装置により、トルク発生を内燃機関側の遅角によって低下させ、自動変速機の重量や大きさ、コストの低減を図ること。」

4−3 対比・判断
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ロックアップクラッチ18を備えたトルクコンバータT」は、本願発明の「ロックアップ機構付きのトルクコンバータ」に相当する。
引用発明の「オートマチックトランスミッションMの電子制御ユニットUtおよびエンジンEの電子制御ユニットUe」は本願発明の「変速機の制御装置」及び「制御装置」に相当する。
引用発明の「前記トルクコンバータTの前記ロックアップクラッチ18の係合状態を判定する」ことは「前記トルクコンバータの前記ロックアップ機構の状態」「を取得する」ことに相当し、「前記トルクコンバータTの任意に制御することができる速度比を入力する」ことは「前記トルクコンバータの」「速度比を取得する」ことに相当する。そうすると、本願発明の「トルコン状態取得手段」と引用発明の「ロックアップクラッチ係合状態判定手段Sd」および「速度比の入力部」とは、ともに、トルクコンバータのロックアップ機構の状態および速度比を取得する手段といえるので、結局、後者は前者に相当する。
引用発明の「アクセル開度」は本願発明の「アクセル操作の操作量」に相当するから、引用発明の「オートマチックトランスミッションMが備えられる車両におけるエンジン回転数とアクセル開度とを適用して運転者要求トルクを算出する」ことは本願発明の「変速機が搭載される車両におけるアクセル操作の操作量に応じたエンジントルクの要求値である要求トルクを取得する」ことに相当し、引用発明の「運転者要求トルク算出手段M3」は本願発明の「要求トルク取得手段」に相当する。

ここで、引用発明の「前記ロックアップクラッチ係合状態判定手段Sdにより判定される前記ロックアップクラッチ18の係合状態によって持ち替えられた」態様は本願発明の「前記トルコン状態取得手段により取得される前記ロックアップ機構の状態に応じた」態様に相当する。
また、本願発明の「制限トルクマップ」と引用発明の「スリップ防止トルク制限値を算出するマップ」とは、前者がそれを使用して、それに定められた「速度比と制限トルクの関係から、速度比に応じた制限トルクを設定する」ことができるものであって所定の制限トルクに係るものであるのに対し、後者がそれをマップ検索して、それに設定された「オートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数とをパラメータとするスリップ防止トルク制限値のマップから、オートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数とをパラメータとするスリップ防止トルク制限値を算出」することができるものであって他の所定の制限トルクに係るものであるから、結局、両者は「所定の制限トルクに係るマップ」の限りにおいて一致する。そして、本願発明の「ロックアップ機構の状態に応じた制限トルクマップを使用して」と引用発明の「ロックアップクラッチ18の係合状態によって持ち替えられたスリップ防止トルク制限値を算出するマップをマップ検索して」とは、引用発明の「係合状態によって持ち替えられた」及び「マップ検索して」が本願発明の「状態に応じた」及び「使用して」にそれぞれ相当するから、「ロックアップ機構の状態に応じた所定の制限トルクに係るマップを使用して」の限りにおいて一致し、本願発明の「制限トルクマップに定められた速度比と制限トルクとの関係」と引用発明の「スリップ防止トルク制限値を算出するマップに設定されたオートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数とをパラメータとするスリップ防止トルク制限値のマップ」とは、引用発明の「設定された」が本願発明の「定められた」に相当し、本願発明の「速度比」と引用発明の「オートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数」とは「所定の制限トルクに係るマップ」における「所定のパラメータ」の限りにおいて一致するから、本願発明の「速度比と制限トルクとの関係」と引用発明の「オートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数とをパラメータとするスリップ防止トルク制限値のマップ」とが「所定のパラメータと所定の制限トルクとの関係」の限りにおいて一致するので、結局、「所定の制限トルクに係るマップに定められた所定のパラメータと所定の制限トルクとの関係」の限りにおいて一致する。さらに、本願発明の「速度比に応じた制限トルクを設定する」ことと引用発明の「オートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数とをパラメータとするスリップ防止トルク制限値を算出すること」とは、「所定のパラメータに応じた所定の制限トルクを設定する」ことの限りにおいて一致し、本願発明の「制限トルク設定手段」と引用発明の「スリップ防止トルク制限値算出手段M1a」とは、「所定の制限トルクの設定手段」の限りにおいて一致する。
これらのことをまとめると、本願発明の「前記トルコン状態取得手段により取得される前記ロックアップ機構の状態に応じた制限トルクマップを使用して、前記制限トルクマップに定められた速度比と制限トルクとの関係から、速度比に応じた制限トルクを設定する制限トルク設定手段」と引用発明の「前記オートマチックトランスミッションMの変速状態を判定する変速状態判定手段Scと、前記オートマチックトランスミッションMの油温を検出する油温検出手段Sbと、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段Saと、前記ロックアップクラッチ18の係合状態、前記油温、前記エンジン回転数および前記変速状態をパラメータとして、前記変速クラッチをスリップさせずに前記エンジンEが出力可能なトルク制限値を算出するトルク制限値算出手段M1のうちのスリップ防止トルク制限値算出手段M1aであって、前記変速状態判定手段Scにより判定される変速段によって持ち替えられ、かつ、前記ロックアップクラッチ係合状態判定手段Sdにより判定される前記ロックアップクラッチ18の係合状態によって持ち替えられたスリップ防止トルク制限値を算出するマップをマップ検索して、前記スリップ防止トルク制限値を算出するマップに設定されたオートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数とをパラメータとするスリップ防止トルク制限値のマップから、オートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数とをパラメータとするスリップ防止トルク制限値を算出するスリップ防止トルク制限値算出手段M1a」とは、「前記トルコン状態取得手段により取得される前記ロックアップ機構の状態に応じた所定の制限トルクに係るマップを使用して、前記所定の制限トルクに係るマップに定められた所定のパラメータと所定の制限トルクとの関係から、所定のパラメータに応じた所定の制限トルクを設定する所定の制限トルクの設定手段」の限りにおいて一致する。

また、本願発明の「前記要求トルク取得手段により取得される要求トルクが前記制限トルク設定手段により設定される制限トルクに応じた判定閾値を超えるとき」と引用発明の「前記スリップ防止トルク制限値算出手段M1aにより算出されるスリップ防止トルク制限値が前記運転者要求トルク算出手段M3により算出される運転者要求トルクを下回っているとき」とは、引用発明の「算出される」ことは本願発明の「設定される」こと及び「取得される」ことに相当し、本願発明の「制限トルクに応じた判定閾値」と引用発明の「スリップ防止トルク制限値」とが「所定の制限トルクに係る値」の限りにおいて一致し、本願発明の「要求トルクが」「制限トルクに応じた判定閾値」「を超えるとき」と引用発明の「スリップ防止トルク制限値」が「運転者要求トルクを下回っているとき」とが「要求トルクが」「所定の制限トルクに係る値」「を超えるとき」の限りにおいて一致している。
そして、引用発明の「エンジンEの出力トルク」は本願発明の「エンジントルク」に相当し、引用発明の「当該トルク制限値まで低減する」ことは本願発明の「当該制限トルク以下に制限する」ことに相当するから、結局、引用発明の「エンジンEの出力トルクを当該トルク制限値まで低減する最終出力トルクとして出力するローセレクト手段M4」は本願発明の「エンジントルクを当該制限トルク以下に制限するトルク制限制御の作動要求を出力するトルク制限要求手段」に相当する。
これらのことをまとめると、本願発明の「前記要求トルク取得手段により取得される要求トルクが前記制限トルク設定手段により設定される制限トルクに応じた判定閾値を超えるとき、エンジントルクを当該制限トルク以下に制限するトルク制限制御の作動要求を出力するトルク制限要求手段」と引用発明の「前記スリップ防止トルク制限値算出手段M1aにより算出されるスリップ防止トルク制限値が前記運転者要求トルク算出手段M3により算出される運転者要求トルクを下回っているとき、エンジンEの出力トルクを当該トルク制限値まで低減する最終出力トルクとして出力するローセレクト手段M4」とは「前記要求トルク取得手段により取得される要求トルクが前記所定の制限トルクの設定手段により設定される所定の制限トルクに係る値を超えるときエンジントルクを当該制限トルク以下に制限するトルク制限制御の作動要求を出力するトルク制限要求手段」の限りにおいて一致している。

してみると、本願発明と引用発明とは、両者が
「エンジントルクがロックアップ機構付きのトルクコンバータを介して入力される変速機の制御装置であって、
前記トルクコンバータの前記ロックアップ機構の状態および速度比を取得するトルコン状態取得手段と、
前記変速機が搭載される車両におけるアクセル操作の操作量に応じたエンジントルクの要求値である要求トルクを取得する要求トルク取得手段と、
前記トルコン状態取得手段により取得される前記ロックアップ機構の状態に応じた所定の制限トルクに係るマップを使用して、前記所定の制限トルクに係るマップに定められた所定のパラメータと所定の制限トルクとの関係から、所定のパラメータに応じた所定の制限トルクを設定する所定の制限トルクの設定手段と、
前記要求トルク取得手段により取得される要求トルクが前記所定の制限トルクの設定手段により設定される所定の制限トルクに係る値を超えるときエンジントルクを当該制限トルク以下に制限するトルク制限制御の作動要求を出力するトルク制限要求手段とを含む、制御装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
「前記トルコン状態取得手段により取得される前記ロックアップ機構の状態に応じた所定の制限トルクに係るマップを使用して、前記所定の制限トルクに係るマップに定められた所定のパラメータと所定の制限トルクとの関係から、所定のパラメータに応じた所定の制限トルクを設定する所定の制限トルクの設定手段」に関し、本願発明は、「前記トルコン状態取得手段により取得される前記ロックアップ機構の状態に応じた制限トルクマップを使用して、前記制限トルクマップに定められた速度比と制限トルクとの関係から、速度比に応じた制限トルクを設定する制限トルク設定手段」であるのに対し、引用発明では「前記オートマチックトランスミッションMの変速状態を判定する変速状態判定手段Scと、前記オートマチックトランスミッションMの油温を検出する油温検出手段Sbと、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段Saと、前記ロックアップクラッチ18の係合状態、前記油温、前記エンジン回転数および前記変速状態をパラメータとして、前記変速クラッチをスリップさせずに前記エンジンEが出力可能なトルク制限値を算出するトルク制限値算出手段M1のうちのスリップ防止トルク制限値算出手段M1aであって、前記変速状態判定手段Scにより判定される変速段によって持ち替えられ、かつ、前記ロックアップクラッチ係合状態判定手段Sdにより判定される前記ロックアップクラッチ18の係合状態によって持ち替えられたスリップ防止トルク制限値を算出するマップをマップ検索して、前記スリップ防止トルク制限値を算出するマップに設定されたオートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数とをパラメータとするスリップ防止トルク制限値のマップから、オートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数とをパラメータとするスリップ防止トルク制限値を算出するスリップ防止トルク制限値算出手段M1a」であり、特に「所定のパラメータ」に関し、本願発明は「速度比」であるのに対し、引用発明では「オートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数」である点。

(相違点2)
「前記要求トルク取得手段により取得される要求トルクが前記所定の制限トルクの設定手段により設定される所定の制限トルクに係る値を超えるときエンジントルクを当該制限トルク以下に制限するトルク制限制御の作動要求を出力するトルク制限要求手段」に関し、本願発明は、「前記要求トルク取得手段により取得される要求トルクが前記制限トルク設定手段により設定される制限トルクに応じた判定閾値を超えるとき、エンジントルクを当該制限トルク以下に制限するトルク制限制御の作動要求を出力するトルク制限要求手段」であるのに対し、引用発明では「前記スリップ防止トルク制限値算出手段M1aにより算出されるスリップ防止トルク制限値が前記運転者要求トルク算出手段M3により算出される運転者要求トルクを下回っているとき、前記オートマチックトランスミッションMの摩擦係合部材がスリップするのを防止すべくエンジンEの出力トルクを当該トルク制限値まで低減する最終出力トルクとして出力するローセレクト手段M4」である点。

(2) 判断
上記相違点1について検討する。
特に、本願発明の「制限トルクマップに定められた速度比と制限トルクとの関係から、速度比に応じた制限トルクを設定する制限トルク設定手段」という発明特定事項に係る上記相違点1の「所定のパラメータ」に関し、本願発明は「速度比」であるのに対し、引用発明では「オートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数」である点について検討すると、一般に制御手段の制御値に係るパラメータの選択は、制御目的に応じて設定されるものであるから、引用発明において「オートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数」を設定したことも引用発明の制御目的に応じたものといえる。実際、引用文献1の明細書の段落【0005】及び【0006】に「トルクコンバータのロックアップクラッチの係合状態、オートマチックトランスミッションの油温および変速段を考慮してエンジントルクの制限値を算出していないため、摩擦係合部材のスリップを確実に防止しようとすると、エンジントルクが必要以上に低下してしまう可能性があった。本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、オートマチックトランスミッションの変速クラッチがスリップしないようにエンジンのトルクを低減制御する際に、摩擦係合部材のスリップを確実に防止しながらエンジントルクの低減量を最小限に抑えることを目的とする。」と記載されているから、少なくとも、本願発明において「オートマチックトランスミッションMの油温」を上記パラメータとすることは、引用発明の目的からして必須であるといえる。
そして、引用発明は、速度比に関し「トルクコンバータTの任意に制御することができる速度比」としているから、引用発明の上記パラメータのうちの残りである「エンジン回転数」と速度比とには所定の関係がなく、したがって、当業者が両者の置き換えを直ちに想到し得たものではない。そうすると、引用文献2に、上記「速度比に対応した点火時期量にて前記内燃機関を遅角制御する制御手段を設けた内燃機関のトルク制御装置により、トルク発生を内燃機関側の遅角によって低下させ、自動変速機の重量や大きさ、コストの低減を図ること。」(4−2(2)参照。)との技術的事項が記載されているとしても、引用発明の上記パラメータの「エンジン回転数」に替えて「速度比」を採用することは、当業者といえども容易に相想到し得たこととはいえない。
さらに、引用発明において上記パラメータを「速度比」とすることは、引用文献1に記載されておらず、それを示唆する記載もないところ、技術常識をも参酌して仮に引用文献2に記載された上記技術的事項引用発明に適用して、引用発明の上記パラメータを「オートマチックトランスミッションMの油温とエンジン回転数」に加えて、「速度比」も採用するならば、上記パラメータ数を増やすこととなり、引用発明をして所定の工夫なりが必要であって単純に当該技術的事項を適用することはできないから、上記パラメータ数を増やして適用することまでが、当業者にとって容易に想到し得たということはできないものである。
してみると、相違点2について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。

5.小括
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではなく、その他の拒絶理由も発見できないから、特許出願の際独立して特許を受けることができる発明であるので、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

第4 原査定について
本件補正により、本願発明は、「制限トルクマップに定められた速度比と制限トルクとの関係から、速度比に応じた制限トルクを設定する制限トルク設定手段」という発明特定事項を備えるものとなっており、当業者であっても、原査定において引用された引用発明に基いて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-03-31 
出願番号 P2016-213010
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16H)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 田村 嘉章
内田 博之
発明の名称 変速機の制御装置  
代理人 皆川 祐一  

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