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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1383965
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-16 
確定日 2022-05-10 
事件の表示 特願2020−75503「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和2年7月30日出願公開、特開2020−114511、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月25日に出願した特願2015−254616の一部を令和2年4月21日に新たな特許出願(特願2020−75503)としたものであって、令和3年2月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月28日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年6月11日付け(送達日:同年同月29日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、それに対して、同年9月16日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年10月15日付けで前置報告書が作成されたものである。

第2 原査定の概要
本願の請求項2に係る発明は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、引用文献2に記載された発明からその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願の請求項1に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。

引用文献等一覧
2.特開2004−215914号公報

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年9月16日付けの手続補正において補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める(当審判合議体にて、分説のために記号AからGを付した。)。
なお、本願発明は、当該手続補正で補正されておらず、原査定時における請求項1に係る発明(同年4月28日付けの手続補正により補正された請求項1に係る発明)と、同一である。

「A 所定の図柄を変動/確定表示する表示手段と、前記表示手段における前記図柄の表示動作を制御する表示制御手段と、所定の特別演出を実行する演出実行手段と、前記演出実行手段の動作を制御する演出制御手段とを備えており、
B 所定の変動条件が充足されると、前記表示手段において前記図柄が変動表示を経て確定表示され、その確定表示態様が特別確定表示態様であると遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起する一方、
C 前記図柄の変動開始に伴って実行される演出抽選が当選であることを含む所定の実行条件が充足されると、当該変動開始から確定表示までの間に前記特別演出が実行される遊技機であって、
D 前記演出制御手段に、前記特別演出の実行の有無の決定に係る演出モードとして、第1モードと、前記図柄の変動開始から確定表示までの間に前記特別演出が実行された際、その確定表示が前記特別確定表示態様になる確率が前記第1モードよりも高い第2モードとの少なくとも2種類の演出モードが設定されており、
E 前記演出制御手段により、所定の移行条件が成立すると、前記演出モードが前記第1モードから前記第2モードへ移行されるとともに、
F 前記演出モードの移行に伴い、前記表示手段での表示態様は変更されず、現在の前記演出モードは判別不能である
G ことを特徴とする遊技機。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1
前置報告書において新たに引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1(特開2012−223651号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審判合議体において付した。以下同様。)。

「【0019】
図1を参照してパチンコ遊技機1の正面側の構成を説明する。図1に示すパチンコ遊技機1は、木製の外枠4の前面に額縁状の前面枠2を開閉可能に取り付け、前面枠2の裏面に取り付けた遊技盤収納フレーム(図示せず)内に遊技盤3を装着し、この遊技盤3の表面に形成した遊技領域3a(図2参照)を前面枠2の開口部に臨ませた構成を有している。そして、遊技領域3aの前側に、透明ガラスを支持したガラス扉枠6が設けられている。」

「【0029】
パチンコ遊技機1では、遊技球が上始動口34または下始動口35に入賞したことに基づき、主制御基板27(図3参照)において乱数抽選による当りに関する抽選(当り抽選)が行なわれる。この抽選結果に応じて、7セグにより表現される特別図柄を第1特別図柄表示装置38aまたは第2特別図柄表示装置38bに変動表示させて、特別図柄変動表示ゲームを開始し、一定時間経過後に、その結果を各特別図柄表示装置38a、38bに表示するようになっている。
・・・
【0031】
上記第1または第2特別図柄変動表示ゲームの開始に伴い、これに連動する形態で、図柄、数字、記号、またはキャラクタ等により表現される装飾図柄を液晶表示装置36に変動表示させて、装飾図柄変動表示ゲームを現出し、これに付随して種々の予告演出(たとえば、リーチ演出や擬似連演出)や背景演出を生じさせる。すなわち、装飾図柄変動表示ゲームでは、上記特別図柄変動表示ゲームでの抽選結果を反映させた演出表示が行われる。したがって、特別図柄変動表示ゲームの結果を反映したものが装飾図柄変動表示ゲームに表現されるので、この2つの図柄変動表示ゲームを等価的な図柄遊技と捉えても良い。このように特別図柄表示装置38a、38bまたは液晶表示装置36は、複数種類の遊技図柄(特別図柄または装飾図柄)の変動表示および停止表示による図柄変動表示遊技(特別図柄変動表示ゲームまたは装飾図柄変動表示ゲーム)を行い、当り抽選結果を反映表示するための図柄遊技表示手段として機能する。
【0032】
したがって、上記特別図柄変動表示ゲームの結果が「当り」であった場合、液晶表示装置36の装飾図柄変動表示ゲームの結果も当該「当り」を反映させた演出が現出される。このとき、特別図柄変動表示ゲームが行われた特別図柄表示装置には、当りを示す特別図柄が所定の表示態様で停止表示され(たとえば、7セグが「7」の表示状態)、液晶表示装置36には、「左」「中」「右」の各表示エリアにおいて、当り有効ライン上で当り抽選結果を反映させた装飾図柄が所定の表示態様で停止表示される(たとえば、3個の装飾図柄が「7」「7」「7」の表示状態)。
【0033】
そして、当りとなった場合には、大入賞口ソレノイド42c(図3参照)が作動して開放扉42bが開き、これにより大入賞口40が所定パターンで開閉制御されて、当り遊技が発生する。この当り遊技では、たとえば、開放扉42bが所定時間(たとえば、30秒)開放して大入賞口40が開放されるか、または所定個数(たとえば、9個)の遊技球が大入賞口40に入賞するまで大入賞口40が開放され、その後、所定時間(たとえば、1秒)開放扉42bが閉まって大入賞口40を閉鎖する、といった動作(ラウンド遊技)が所定回数(たとえば、最大15回(最大15ラウンド))繰り返される。」

「【0101】
<遊技状態における演出モード:図8、図9>
次に、各遊技状態における演出の演出モードについて説明する。本実施形態のパチンコ遊技機1には、報知すべき現在の遊技状態に関連した演出の演出モード(演出状態)として、確変状態であることを確定的に報知する演出をなす「確変演出モード(たとえば、背景演出が夜背景)」と、少なくとも時短状態であることを確定的に報知する演出をなす「時短演出モード(たとえば、背景演出が夕方背景)」と、現在の遊技状態を秘匿して大当り確変状態であるかの如く装い、遊技者に大当り確変状態の期待感を与える「確変秘匿演出モード(たとえば、背景演出が昼背景)」と、通常状態であることを示唆する「通常演出モード(たとえば、背景演出が朝方背景)」と、が設けられている。本実施形態のパチンコ遊技機1では、異なる複数種類の演出モードを設定し、これらの演出モード間の行き来を可能に構成している。
・・・
【0106】
(特殊15R大当り場合)
演出モード移行契機が特殊15R大当りである場合、つまり特殊15R大当りに当選した場合、その特殊15R大当りによる当り遊技終了後の演出モードは、リミッタ機能未作動時における移行前の演出モードが確変演出モードであれば確変演出モードまたは時短演出モードに、時短演出モードであれば再び時短演出モードに、通常演出モードであれば確変秘匿演出モードに、確変秘匿演出モードであれば再び確変秘匿演出モードに移行するようになっている。一方、リミッタ機能作動時における移行前の演出モードが確変演出モードであれば時短演出モードに、時短演出モードであれば再び時短演出モードに、通常演出モードであれば確変秘匿演出モードに、確変秘匿演出モードであれば再び確変秘匿演出モードに移行するようになっている。
・・・
【0108】
(小当りの場合)
演出モード移行契機が小当りである場合、つまり小当りに当選した場合、その小当りによる当り遊技終了後の演出モードは、移行前の演出モードが確変演出モードであれば確変演出モードまたは時短演出モードに、時短演出モードであれば再び時短演出モードに、通常演出モードであれば確変秘匿演出モードに、確変秘匿演出モードであれば再び確変秘匿演出モードに移行するようになっている。
・・・
【0110】
また、上記通常演出モードから確変秘匿演出モードに移行した場合は、内部的には通常状態であるが、演出上は潜伏確変状態であるかの如く装う、偽(ガセ)の確変秘匿演出モードとなる。特殊15R大当り当選を契機に移行した確変秘匿演出モード下で小当りに当選した場合は、内部的には潜伏確変状態であり、この場合には、本物の確変秘匿演出モードが継続することになる。本実施形態では、特殊15R大当りまたは小当りの当選を契機に同一の確変秘匿演出モードに移行させるようになっており、演出を観察しても、内部的な遊技状態を見分けることが不可能になっている。勿論、これに限らず、上記本物の確変秘匿演出モード(第1の確変秘匿演出モードに相当する)と偽の確変秘匿演出モード(第2の確変秘匿演出モードに相当する)とを別個の演出モードとして管理し、これらの演出モード下でなされる演出の挙動を異ならせるように構成しても良い。たとえば、本物の確変秘匿演出モードの方が偽の確変秘匿演出モードよりも特定演出(大当り確変状態の期待度の高低を表す演出。たとえば、特定のアニメキャラクタが出現する演出)の発生率を高くする。この場合、特定演出の発生率により、どちらの確変秘匿演出モードであるかを予測する楽しみを遊技者に与えることができる。」

「【0118】
この制御装置は、遊技動作制御を統括的に司る主制御基板27(主制御部)と、主制御基板27から演出制御コマンドを受けて、画像と光と音についての演出制御とを行う演出制御部21と、主制御基板27から払出制御コマンドを受けて、賞球の払い出し制御を行う払出制御基板29とを中心に構成される。演出制御部21には、光と音についての演出制御を行う演出制御基板24と、この演出制御基板24からの指示を受けて画像についての演出制御を行う液晶制御基板25とが含まれ、液晶制御基板25には画像表示装置としての液晶表示装置36が接続されている。なお本明細書においては、場合により、演出制御基板24の機能と液晶制御基板25の機能を特に区別することなく、両機能を併せ持つ制御装置部分を「演出制御部21」として説明する。」

「【0133】
特別図柄変動表示ゲームに関する情報は、当該ゲーム開始時に、当り抽選の結果(当りかハズレかの別、当りならばその当り種別)、作動保留球数情報、特別図柄の変動時間などのゲームに必要となる基本情報が、演出制御コマンド(たとえば、特別図柄の挙動情報を含む変動パターンコマンドや当り種別情報を含む装飾図柄指定コマンドがその代表例として挙げられる)により主制御部(主制御基板27)から演出制御部21(正確には演出制御基板24)へと送信される。そして、所定時間(特別図柄変動時間)経過後に、演出停止を指示する演出制御コマンド(演出停止コマンド)が主制御部(主制御基板27)から演出制御部21へと送信される。
【0134】
また、遊技状態を指定する情報や演出モード移行に関する情報(リミッタ機能作動状況を含む)は、所定のタイミング(たとえば、遊技状態移行時や大当り遊技開始時)で、演出制御コマンド(遊技状態指定コマンドや大当り中コマンド)により主制御部(主制御基板27)から演出制御部21(演出制御基板24)へと送信される。これにより、演出制御基板24側で現出すべき演出モード決定され、演出モードの移行制御を行う。
【0135】
演出制御部21側では、主制御基板27から送られてくる演出制御コマンドが解析され、これに基づく演出パターンが抽選により選択されるか、または一意的に決定される。そして、この決定された演出パターンを実行指示する制御信号が演出制御基板24から音響発生装置46aおよび光表示装置45aに送信される。さらにまた、上記決定された演出パターンに関連付けられた液晶制御コマンドが画像の表示が必要なタイミングで液晶制御基板に送信される。これにより、演出パターン対応する効果音の再生と、装飾ランプ45やLEDなどの点灯点滅駆動、そして、画像表示による演出が実現される。」

「【0183】
図14において、演出制御部21は、まず、演出モード移行契機が到来したか否かを判定する(ステップS301)。ここでは、主制御基板24から送られてくる演出制御コマンド(たとえば、当り開始コマンドや変動パターンコマンド)に基づいて、いずれの演出モード移行契機が到来したか否かを判定する。
【0184】
演出モード移行契機が到来していない場合(ステップS301:NO)、そのまま何もせずに演出状態移行処理を終了する。一方、演出モード移行契機が到来した場合(ステップS301:YES)、その移行契機種別と演出モード移行テーブル(図9参照)とに基づき、所定の演出モード(演出状態)への移行設定を行う。ここでは、既に説明したように、図9に示す演出モード移行テーブルが参照され、到来した演出モード移行契機と現在の演出モード、そして画面表示上大当り回数に基づき、移行先となる演出モードが決定される。これにより、次回の図柄変動表示ゲームにおける演出モードが変更され、この演出モード下での演出が現出されることになる。」

2.引用発明
したがって、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号AからGに概ね対応させて記号aからgを付した。)。

「a−d、f 遊技球が上始動口34または下始動口35に入賞したことに基づき、当り抽選が行なわれ、抽選結果に応じて、特別図柄を変動表示させる特別図柄変動表示ゲームの開始に伴い、装飾図柄を液晶表示装置36に変動表示させ、特別図柄変動表示ゲームの結果が「当り」であった場合、液晶表示装置36には、3個の装飾図柄が「7」「7」「7」の表示状態で停止表示され(【0029】、【0031】、【0032】)、大入賞口40が所定パターンで開閉制御されるラウンド遊技が所定回数繰り返される(【0033】)パチンコ遊技機1(【0019】)であって、
主制御基板27から演出制御コマンドを受けて演出制御を行う演出制御部21には、光と音についての演出制御を行う演出制御基板24と、液晶表示装置36が接続され、演出制御基板24からの指示を受けて画像についての演出制御を行う液晶制御基板25とが含まれ(【0118】)、特別図柄変動表示ゲームに関する情報は、当該ゲーム開始時に、演出制御コマンドにより主制御基板27から演出制御基板24へと送信され(【0133】)、演出制御部21側では、演出制御コマンドが解析されて演出パターンが抽選により選択され(【0135】)、
演出モードとして、現在の遊技状態を秘匿して遊技者に大当り確変状態の期待感を与える確変秘匿演出モード(背景演出が昼背景)が設けられ(【0101】)、本物の確変秘匿演出モードの方が偽の確変秘匿演出モードよりも、大当り確変状態の期待度の高低を表す特定のアニメキャラクタが出現する演出の発生率を高くし、どちらの確変秘匿演出モードであるかを予測する楽しみを遊技者に与えることができ(【0110】)、演出モード移行に関する情報は、遊技状態移行時や大当り遊技開始時に、演出制御コマンドにより主制御基板27から演出制御基板24へと送信され、演出制御基板24側で現出すべき演出モード決定され(【0134】)、次回の図柄変動表示ゲームにおける演出モードが変更され(【0184】)、
e、f 演出モード移行契機が小当りである場合、小当りによる当り遊技終了後の演出モードは、移行前の演出モードが通常演出モードであれば偽の確変秘匿演出モードに移行し(【0108】、【0110】)、演出モード移行契機が特殊15R大当りである場合、特殊15R大当りによる当り遊技終了後の演出モードは、移行前の演出モードが確変秘匿演出モードであれば再び確変秘匿演出モードに移行し(【0106】)、特殊15R大当り当選を契機に移行した確変秘匿演出モード下で小当りに当選した場合は、内部的には潜伏確変状態であり、本物の確変秘匿演出モードが継続する(【0110】)、
g パチンコ遊技機1(【0019】)。」

第5 対比・判断
1.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(1)構成Aについて
引用発明の構成a−d、fの「装飾図柄」を「変動表示させ」、「特別図柄変動表示ゲームの結果が「当り」であった場合、」「3個の装飾図柄が「7」「7」「7」の表示状態で停止表示」する「液晶表示装置36」は、本願発明の構成Aの「所定の図柄を変動/確定表示する表示手段」に相当する。
引用発明の構成a−d、fの「装飾図柄」を「変動表示させ」、「3個の装飾図柄が「7」「7」「7」の表示状態で停止表示」する「液晶表示装置36が接続され、演出制御基板24からの指示を受けて画像についての演出制御を行う液晶制御基板25」は、本願発明の構成Aの「前記表示手段における前記図柄の表示動作を制御する表示制御手段」に相当する。
引用発明の構成a−d、fの「大当り確変状態の期待度の高低を表す特定のアニメキャラクタが出現する演出」は、本願発明の構成Aの「所定の特別演出」に相当する。そして、引用発明の構成a−d、fは、「大当り確変状態の期待度の高低を表す特定のアニメキャラクタが出現する演出」を行うことから、引用発明の構成a−d、fの「演出制御部21」は、本願発明の構成Aの「所定の特別演出を実行する演出実行手段」及び「前記演出実行手段の動作を制御する演出制御手段」に相当する機能を具備することは、明らかである。
してみると、引用発明は、本願発明の構成Aに相当する構成を備える。

(2)構成Bについて
引用発明の構成a−d、fの「遊技球が上始動口34または下始動口35に入賞したことに基づき、当り抽選が行なわれ」ることは、本願発明の構成Bの「所定の変動条件が充足される」ことに相当する。
引用発明の構成a−d、fの「装飾図柄」の「停止表示」、「3個の装飾図柄」の「「7」「7」「7」の表示状態」、「大入賞口40が所定パターンで開閉制御されるラウンド遊技が所定回数繰り返される」状態は、それぞれ本願発明の構成Bの「確定表示」、「特別確定表示態様」、「遊技者にとって有利な特別遊技状態」に相当することから、引用発明の構成a−d、fの「特別図柄を変動表示させる特別図柄変動表示ゲームの開始に伴い、装飾図柄を液晶表示装置36に変動表示させ、特別図柄変動表示ゲームの結果が「当り」であった場合、液晶表示装置36には、3個の装飾図柄が「7」「7」「7」の表示状態で停止表示され、大入賞口40が所定パターンで開閉制御されるラウンド遊技が所定回数繰り返される」ることは、本願発明の構成Bの「前記表示手段において前記図柄が変動表示を経て確定表示され、その確定表示態様が特別確定表示態様であると遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起する」ことに相当する。
してみると、引用発明は、本願発明の構成Bに相当する構成を備える。

(3)構成Cについて
引用発明の構成a−d、fの「大当り確変状態の期待度の高低を表す特定のアニメキャラクタが出現する演出」を行うことは、本願発明の構成Cの「前記特別演出が実行される」ことに相当し、引用発明の構成a−d、fの「パチンコ遊技機1」は、本願発明の構成Cの「遊技機」に相当する。
してみると、引用発明は、本願発明の構成Cと、「前記特別演出が実行される遊技機」である点で共通する。

(4)構成Dについて
引用発明の構成a−d、fの「偽の確変秘匿演出モード」及び「本物の確変秘匿演出モード」は、それぞれ本願発明の構成Dの「第1モード」及び「第2モード」に相当する。
引用発明の構成a−d、fの「演出制御部21側では、演出制御コマンドが解析されて演出パターンが抽選により選択され」ることは、本願発明の構成Dの「前記演出制御手段に、」「演出モードが設定されて」いることに相当する。
してみると、引用発明は、本願発明の構成Dと、「前記演出制御手段に、」「第1モードと、」「第2モードとの少なくとも2種類の演出モードが設定されて」いる点で共通する。

(5)構成Eについて
引用発明の構成e、fにおいて、「特殊15R大当り当選を契機に移行した確変秘匿演出モード下で小当りに当選した場合は、内部的には潜伏確変状態であり、本物の確変秘匿演出モードが継続する」ことから、「特殊15R大当り当選を契機に移行した確変秘匿演出モード」が「本物の確変秘匿演出モード」であることは明らかである。
そして、引用発明の構成e、fの「小当り」となって「小当りによる当り遊技終了後」に「偽の確変秘匿演出モードに移行し」、その後「特殊15R大当り」となって、「特殊15R大当りによる当り遊技終了後」に「本物の確変秘匿演出モード」「に移行する」ことは、本願発明の構成Eの「所定の移行条件が成立すると、前記演出モードが前記第1モードから前記第2モードへ移行される」ことに相当する。
してみると、引用発明は、本願発明の構成Eと、「所定の移行条件が成立すると、前記演出モードが前記第1モードから前記第2モードへ移行される」点で共通する。

(6)構成Gについて
引用発明の構成gの「パチンコ遊技機1」は、本願発明の構成Gの「遊技機」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「A 所定の図柄を変動/確定表示する表示手段と、前記表示手段における前記図柄の表示動作を制御する表示制御手段と、所定の特別演出を実行する演出実行手段と、前記演出実行手段の動作を制御する演出制御手段とを備えており、
B 所定の変動条件が充足されると、前記表示手段において前記図柄が変動表示を経て確定表示され、その確定表示態様が特別確定表示態様であると遊技者にとって有利な特別遊技状態が生起する一方、
C’前記特別演出が実行される遊技機であって、
D’前記演出制御手段に、第1モードと、第2モードとの少なくとも2種類の演出モードが設定されており、
E’所定の移行条件が成立すると、前記演出モードが前記第1モードから前記第2モードへ移行される
G 遊技機。」

(相違点)
・相違点1(構成C)
「前記特別演出」に関し、本願発明は、「前記図柄の変動開始に伴って実行される演出抽選が当選であることを含む所定の実行条件が充足されると」「実行される」のに対し、引用発明は、「大当り確変状態の期待度の高低を表す特定のアニメキャラクタが出現する演出」(「特別演出」に相当。)が、どのような条件に基づいて実行されるのか、特定されていない点。

・相違点2(構成C)
「前記特別演出が実行される」のが、本願発明は、「当該変動開始から確定表示までの間」であるのに対し、引用発明は、「大当り確変状態の期待度の高低を表す特定のアニメキャラクタが出現する演出」が、どのようなタイミングで実行されるのか、特定されていない点。

・相違点3(構成D)
「第1モード」及び「第2モード」が、本願発明は、「前記特別演出の実行の有無の決定に係る演出モード」であるのに対し、引用発明は、「本物の確変秘匿演出モード」(「第2モード」に相当。)は「偽の確変秘匿演出モード」(「第1モード」に相当。)よりも、「大当り確変状態の期待度の高低を表す特定のアニメキャラクタが出現する演出の発生率を高く」するものの、「本物の確変秘匿演出モード」及び「偽の確変秘匿演出モード」が、「大当り確変状態の期待度の高低を表す特定のアニメキャラクタが出現する演出」の「実行の有無の決定に係る演出モード」であるとは、特定されていない点。

・相違点4(構成D)
「第2モード」に関し、本願発明は、「前記図柄の変動開始から確定表示までの間に前記特別演出が実行された際、その確定表示が前記特別確定表示態様になる確率が前記第1モードよりも高い」の対し、
引用発明は、「大当り確変状態の期待度の高低を表す特定のアニメキャラクタが出現する演出」が、どのようなタイミングで実行されるのか特定されておらず、
さらに、引用発明は、「アニメキャラクタが出現する演出」は、「大当り確変状態の期待度」が「低」いこと「を表す」場合も含むことから、「アニメキャラクタが出現する演出」が実行されたとしても、「大当り確変状態の期待度」が高い(つまり、「確定表示が前記特別確定表示態様になる確率が」「高い」)とはいえない点。

・相違点5(構成E)
本願発明は、「前記演出制御手段により、所定の移行条件が成立すると、前記演出モードが前記第1モードから前記第2モードへ移行される」のに対し、引用発明は、「小当り」となって「小当りによる当り遊技終了後」に「偽の確変秘匿演出モードに移行し」、その後「特殊15R大当り」となって、「特殊15R大当りによる当り遊技終了後」に「本物の確変秘匿演出モード」「に移行する」制御は、「小当り」及び「特殊15R大当り」の抽選や各「当り遊技」の実行を含むものであり、「演出制御部21」(「演出制御手段」に相当。)により行うものとはいえない点。

・相違点6(構成F)
本願発明は、「前記演出モードの移行に伴い、前記表示手段での表示態様は変更されず、現在の前記演出モードは判別不能である」のに対し、
引用発明は、「偽の確変秘匿演出モード」から「本物の確変秘匿演出モード」に移行する際、「特殊15R大当りによる当り遊技」が実施されており、「偽の確変秘匿演出モード」、「特殊15R大当りによる当り遊技」、「本物の確変秘匿演出モード」と順に移行する際、「液晶表示装置36」(「表示手段」に相当。)での「表示態様が変更され」ないとは、特定されておらず、
さらに、引用発明は、「本物の確変秘匿演出モードの方が偽の確変秘匿演出モードよりも、大当り確変状態の期待度の高低を表す特定のアニメキャラクタが出現する演出の発生率を高くし、どちらの確変秘匿演出モードであるかを予測する楽しみを遊技者に与える」ことから、「特定のアニメキャラクタが出現する演出の発生率」により、「本物の確変秘匿演出モード」と「偽の確変秘匿演出モード」とは判別可能である点(この点に付随して、仮に「偽の確変秘匿演出モード」から「本物の確変秘匿演出モード」に直接移行したとしても、「特定のアニメキャラクタが出現する演出の発生率」が「高く」なることから、「前記表示手段での表示態様は変更され」ていると認められる。)。

2.相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点6について先に検討する。
大当り遊技中に、大当たり遊技に関する演出を画像表示装置において表示することは技術常識であることを踏まえると、引用発明において、「偽の確変秘匿演出モード」、「特殊15R大当りによる当り遊技」、「本物の確変秘匿演出モード」と順に移行する際、大当たり遊技に関する演出が行われることから、「液晶表示装置36」での「表示態様が変更され」ることは明らかである。そして、「偽の確変秘匿演出モード」、「特殊15R大当りによる当り遊技」、「本物の確変秘匿演出モード」と順に移行する際、「液晶表示装置36」での「表示態様が変更され」ないように構成することが、本願出願前において周知技術であるとも認められない。
また、引用発明は、「本物の確変秘匿演出モードの方が偽の確変秘匿演出モードよりも」、「特定のアニメキャラクタが出現する演出の発生率を高くし」て「どちらの確変秘匿演出モードであるかを予測する楽しみを遊技者に与えることができ」るものである。ここで、引用発明の「本物の確変秘匿演出モード」と「偽の確変秘匿演出モード」とで、「液晶表示装置36」での「表示態様が変更され」ないように構成するためには、「特定のアニメキャラクタが出現する演出の発生率」を、「本物の確変秘匿演出モード」と「偽の確変秘匿演出モード」とで同一にせざるを得ないが、その際には、「どちらの確変秘匿演出モードであるかを予測する楽しみを遊技者に与えることができ」るという点との矛盾が生じるため、そのような設計変更を引用発明において行うことに関し、当業者にとっての動機付けがあるとは認められない。そして、そのように構成することが、本願出願前において周知技術であるとも認められない。

そして、本願発明は、上記相違点6に係る本願発明の構成を備えることにより、「従来にない遊技性を備えた遊技機とすることができる」(【0009】)という格別の効果を奏するものである。

してみると、技術常識や周知技術を参酌しても、引用発明に基いて、上記相違点6に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。

したがって、本願発明は、上記相違点1から5を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、請求項2が削除されたことで、前記第2に示した拒絶理由は解消された。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-04-19 
出願番号 P2020-075503
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
P 1 8・ 113- WY (A63F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 鷲崎 亮
太田 恒明
発明の名称 遊技機  
代理人 井上 敬也  
代理人 園田 清隆  
代理人 上田 恭一  
代理人 石田 喜樹  
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