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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 H01M 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01M 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 H01M 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01M 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01M |
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管理番号 | 1384016 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-12-10 |
確定日 | 2022-03-03 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6529745号発明「極板巻取り装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6529745号の特許請求の範囲を、令和 3年 9月 6日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜15〕について訂正することを認める。 特許第6529745号の請求項1〜15に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6529745号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜15に係る特許についての出願は、平成26年11月11日(パリ条約による優先権主張 2014年 8月 1日 (KR)韓国)を出願日として特許出願され、令和 元年 5月24日にその特許権の設定登録がされ、同年 6月12日に特許掲載公報が発行されたものであり、本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 元年12月10日 : 特許異議申立人平賀博(以下、「申立人 」という。)による全請求項に係る特許 に対する特許異議の申立て 令和 2年 2月 5日付 : 取消理由通知 同 年 4月27日 : 特許権者との応対記録 同 年 5月 7日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出 同 年 8月19日 : 申立人による意見書の提出 同 年 9月30日付 : 取消理由(決定の予告)通知 同 年12月21日 : 特許権者との応対記録 令和 3年 1月 6日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出 同 年 3月 8日付 : 訂正拒絶理由通知 同 年 6月 7日付 : 取消理由(決定の予告)通知 同 年 8月16日 : 特許権者との応対記録 同 年 9月 6日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出 同 年10月 8日 : 申立人による意見書の提出 第2 令和 3年 9月 6日提出の訂正請求書による訂正請求について 1 訂正の趣旨、及び訂正の内容 令和3年 9月 6日に特許権者が提出した訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。また、本件訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。)に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜15について訂正を求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線は当審が付したものであり、「・・・」は記載の省略を表すものである。以下同じ。 なお、令和 2年 5月 7日、令和 3年 1月 6日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「一側部から突出する複数の電極タップをそれぞれ備えた第1電極板および第2電極板の移送をそれぞれ案内する移送ローラ」と記載されているのを、「一側部から突出する複数の電極タップをそれぞれ備えた第1電極板および第2電極板の移送をそれぞれ案内する移送ローラであって、一側端部に形成された固定領域と前記電極タップが通過するタップ通過領域を有する移送ローラと」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「前記移送ローラの一側端部の外周面から離隔された変形防止部材であって、」と記載されているのを、「固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、前記第1ガイド部が前記移送ローラの一側端部の前記タップ通過領域の外周面から離隔されるように前記固定部に連結され、」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「前記移送ローラに進入する前記電極タップが前記一側端部の外周面に密着するように案内して前記電極タップの変形を防止する変形防止部材、」と記載されているのを、「前記移送ローラに進入する前記電極タップを前記一側端部の前記タップ通過領域の外周面と前記第1ガイド部との間に案内して前記電極タップの変形を防止する変形防止部材、」に訂正すると共に、「前記変形防止部材の前記第1ガイド部と、前記タップ通過領域の前記外周面との隙間が前記電極タップの厚さより広い」という記載を前記請求項1に組み込む訂正をする。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に「前記変形防止部材は、前記第1電極板または前記第2電極板によって回転しない」と記載されているのを、「前記変形防止部材は、その前記固定部が前記移送ローラの前記固定領域を回転可能に支持すると共に前記第1電極板または前記第2電極板によって前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項2に「前記変形防止部材は、前記移送ローラの一側端部に前記移送ローラに沿って回転しないように結合した固定部、および前記一側端部の外周面から離隔するように前記固定部と連結された」と記載されているのを削除するとともに、特許請求の範囲の請求項2に「第1ガイド部であって、前記電極タップが前記移送ローラと最初に当接して進入する入口部に位置する第1ガイド部を含む」と記載されているのを、「前記第1ガイド部は、前記電極タップが前記移送ローラと最初に当接して進入する入口部に位置する」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項14に「前記第1ガイド部は前記移送ローラの回転軸と互いに並んでいるように配置された環状の形状になる」と記載されているのを、「前記第1ガイド部は環状の形状であり、前記第1ガイド部の中心軸は前記移送ローラの回転軸と互いに平行であるように配置された環状の形状になる」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的の適否 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1における「移送ローラ」を「一側端部に形成された固定領域と前記電極タップが通過するタップ通過領域を有する」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の段落【0040】には、 「まず、図5に示されているように、前記第1移送ローラ121は大きく第1領域Aと第2領域Bとに区分される。前記第1領域Aは、前記第1移送ローラ121の一側端部に相当する領域を意味する。前記第1領域Aはさらに、固定領域A1とタップ通過領域A2とに区分される。前記固定領域A1は、前記変形防止部材130が固定され、ローラの回転軸に沿って回転しない領域を意味する。前記タップ通過領域A2は、前記第1電極タップ11が通過する領域を意味する。前記タップ通過領域A2は図6に示されているように、前記第1電極タップ11が前記タップ通過領域A2に最初に進入する部分である入口部A3を含むことができる。前記第2領域Bは、前記第1電極板10の第1コーティング部12が通過する領域を意味する。」 と記載されている。 これから、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1における「移送ローラ」を「一側端部に形成された固定領域と前記電極タップが通過するタップ通過領域を有する」ものに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的の適否 訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項1における「変形防止部材」を、「固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える」ものであって、「前記第1ガイド部が前記移送ローラの一側端部の前記タップ通過領域の外周面から離隔されるように前記固定部に連結される」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 本件明細書等には、以下のことが記載されている。 (ア)「 【請求項2】 前記変形防止部材は、 前記移送ローラの一側端部に前記移送ローラに沿って回転しないように結合した固定部、および 前記一側端部の外周面から離隔するように前記固定部と連結された第1ガイド部であって、前記電極タップが前記移送ローラと最初に当接して進入する入口部に位置する第1ガイド部を含むことを特徴とする請求項1に記載の極板巻取り装置。」 (イ)「 【0039】 前記変形防止部材130は、図3および図4に示されているように、固定部131、第1ガイド部133、および第2ガイド部135を含むことができる。」 (ウ)「 【0042】 前記第1ガイド部133は前記タップ通過領域A2の外周面から第1間隔d1だけ離隔されるように前記固定部131と連結され、・・・」 (エ)上記(ア)〜(ウ)から、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項1における「変形防止部材」を、「固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える」ものであって、「前記第1ガイド部が前記移送ローラの一側端部の前記タップ通過領域の外周面から離隔されるように前記固定部に連結される」ものに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的の適否 訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項1における「前記移送ローラに進入する前記電極タップが前記一側端部の外周面に密着するように案内して前記電極タップの変形を防止する変形防止部材」という記載における「密着」の意味が不明であって、当該記載が示す内容が不明瞭であったのを明瞭にしようとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 本件明細書等には、以下のことが記載されている。 (ア)「 「【0042】 前記第1ガイド部133は前記タップ通過領域A2の外周面から第1間隔d1だけ離隔されるように前記固定部131と連結され、前記入口部A3に位置することができる。前記第1間隔d1は前記第1電極タップ11の厚さを考慮して前記第1電極タップ11が十分に通過できる程度に設定される。・・・」 (イ)「 【0044】 前記第1電極板10の走行時に揺動現象と基材張力により前記第1電極タップ11が持ち上げて折れる変形または揺動現象が発生しても、前記第1ガイド部133の傾斜曲面は、前記第1電極タップ11が前記入口部A3から前記第1ガイド部133と前記タップ通過領域A2の外周面との間に進入するように案内することで、前記第1電極タップ11の変形を防止することができる。」 (ウ)上記(ア)〜(イ)から、訂正事項3に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前の請求項1には、「前記移送ローラに進入する前記電極タップが前記一側端部の外周面に密着するように案内して前記電極タップの変形を防止する変形防止部材」と記載されているが、上記イで摘記した【0042】、【0044】の下線部の記載を参照すると、訂正前の請求項1の「密着するように」との記載は、「密着」の通常の意味である、隙間なくぴったりと付着するようになることを意味するのではなく、「電極タップ」の変形を防止しながら移送ローラにガイドできるように、「前記変形防止部材の前記第1ガイド部と、前記タップ通過領域の前記外周面との隙間が前記電極タップの厚さより広い」状態にすることを意味すると解することが合理的である。したがって、訂正事項3に係る訂正は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的の適否 訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項1における「前記変形防止部材は、前記第1電極板または前記第2電極板によって回転しない」という記載が、「変形防止部材」について「前記第1電極板または前記第2電極板」以外のもの(例えばモーター等の駆動手段)によって回転するものをも含み得るのか否かが不明確であったのを明確にしようとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 本件明細書等には、以下のことが記載されている。 (ア)「 【0006】 ノッチされたタップを有する基材が巻取り装置のロールツーロール(roll to roll)設備で走行する際、前記タップは重力によって垂れたり、基材の揺動(fluctuation)現象により基材がローラを通る際にタップの折れ現象が発生することができる。このようなタップの折れ現象は製品の損傷を起こして完成された電極組立体の使用が不可能であることもある。また、前記タップの折れ現象は基材の張力調整と走行速度に対する問題まで起こして製品の生産量にも悪影響を与えることができる。」 (イ)「 【0007】 本発明は、電極組立体の製作時に電極板に形成された電極タップのローラを通した移送中に折れ現象が改善された極板巻取り装置を提供する。」 (ウ)「 【0009】 また、前記変形防止部材は、前記移送ローラの一側端部に前記移送ローラに沿って回転しないように結合した固定部、および前記一側端部の外周面から離隔するように前記固定部と連結された第1ガイド部であって、前記電極タップが前記移送ローラと最初に当接して進入する入口部に位置する第1ガイド部を含むことができる。」 (エ)「 【0025】 【図1】 本発明の一実施例による極板巻取り装置の構成図である。 【図2】 本発明の一実施例による第1電極板および第2電極板の構成図である。 【図3】 本発明の一実施例による移送ローラと変形防止部材の結合斜視図である。 【図4】 本発明の一実施例による変形防止部材の斜視図である。 【図5】 図4(当審注:図3の誤記と認められる。)に示されたI?I’線に沿って切り取った断面図である。 【図6】 図4(当審注:図3の誤記と認められる。)に示されたII?II’線に沿って切り取った断面図である。 ・・・」 (オ)「 【0038】 前記変形防止部材130は、前記第1移送ローラ121および前記第2移送ローラ123にそれぞれ結合し、前記第1電極板10および第2電極板20が前記第1移送ローラ121および前記第2移送ローラ123を通過しながら発生する前記第1電極タップ11および前記第2電極タップ21の変形を防止することができる。ここで、前記第1電極タップ11および前記第2電極タップ21の変形は、前記第1電極板10および前記第2電極板20が前記第1移送ローラ121および前記第2移送ローラ123を通過しながら前記第1電極タップ11および前記第2電極タップ21が重力によって垂れたり、揺動(fluctuation)、遠心力または慣性によって一部が浮き上がって折れることを意味する。図1には、前記変形防止部材130が前記第1移送ローラ121および前記第2移送ローラ123に結合した状態が示されているが、前記第1電極板10および前記第2電極板20が通過するすべての移送ローラに結合することもできる。ただし、以下では説明の便宜のために前記変形防止部材130が前記第1移送ローラ121に結合した状態を一例として説明する。」 (カ)「 【0039】 前記変形防止部材130は、図3および図4に示されているように、固定部131、第1ガイド部133、および第2ガイド部135を含むことができる。」 (キ)「 【0040】 まず、図5に示されているように、前記第1移送ローラ121は大きく第1領域Aと第2領域Bとに区分される。前記第1領域Aは、前記第1移送ローラ121の一側端部に相当する領域を意味する。前記第1領域Aはさらに、固定領域A1とタップ通過領域A2とに区分される。前記固定領域A1は、前記変形防止部材130が固定され、ローラの回転軸に沿って回転しない領域を意味する。前記タップ通過領域A2は、前記第1電極タップ11が通過する領域を意味する。前記タップ通過領域A2は図6に示されているように、前記第1電極タップ11が前記タップ通過領域A2に最初に進入する部分である入口部A3を含むことができる。前記第2領域Bは、前記第1電極板10の第1コーティング部12が通過する領域を意味する。」 (ク)「 【0041】 前記固定部131は前記固定領域A1に結合し、前記第1移送ローラ121との結合が容易になるように環状の形状になることができる。」 (ケ)「 【0042】 前記第1ガイド部133は前記タップ通過領域A2の外周面から第1間隔d1だけ離隔されるように前記固定部131と連結され、前記入口部A3に位置することができる。前記第1間隔d1は前記第1電極タップ11の厚さを考慮して前記第1電極タップ11が十分に通過できる程度に設定される。例えば、第1電極板10の厚さが約5ないし20μmの場合、前記第1間隔d1は0.2乃至5mmであることが適切である。また、前記第1ガイド部133の幅Wは前記第1ガイド部133が前記第2領域Bを越えないようになることが適切である。このために、前記第1ガイド部133が前記第2領域Bを越えないように、前記固定部131が前記固定領域A1の適切な位置で固定されることも重要である。前記第1ガイド部133が前記第2領域Bを侵食するように位置することになると、第1コーティング部12の第1電極活物質が前記第1ガイド部133を汚染させて前記第1電極タップ11に影響を与えることができる。」 (コ)「 【0044】 前記第1電極板10の走行時に揺動現象と基材張力により前記第1電極タップ11が持ち上げて折れる変形または揺動現象が発生しても、前記第1ガイド部133の傾斜曲面は、前記第1電極タップ11が前記入口部A3から前記第1ガイド部133と前記タップ通過領域A2の外周面との間に進入するように案内することで、前記第1電極タップ11の変形を防止することができる。」 (サ)「 【0057】 本発明の実施例による変形防止部材は電極タップの折れ現象なしに電極板をより安定的に走行させることによって、電極組立体の不良率を減少させることができる。」 (シ)「 【図3】 」 (ス)「 【図4】 」 (セ)「 【図5】 」 (ソ)「 【図6】 」 (タ)上記(ア)〜(イ)、(オ)、(コ)〜(サ)から、本件特許における「変形防止部材」の技術的意義は、電極板が移送ローラを通過する際に発生する電極タップの、重力による垂れや、基材の揺動、遠心力または慣性によって一部が浮き上がって折れる変形(タップの折れ現象)を防止し、電極板をより安定的に走行させることであると認められる。 (チ)また、上記(シ)には、固定部131と移送ローラ121の一端部(図5の固定領域A1に相当する部分)との間が二重の環として表示されていることを見て取ることができ、上記(ス)には、変形防止部材130の固定部131は、移送ローラ121と一体ではなく独立した円環状の別部材として表示されている。 (ツ)さらに、上記(ソ)には、第1電極板10は、紙面右から移送ローラ121を介して、紙面下に向けて移送される様子が示されているところ、仮に、変形防止部材130が移送ローラ121の一端部に完全に固定されているとすると、変形防止部材130は移送ローラ121と共に回転してしまい、第1電極板10が変形防止部材130及び移送ローラ121に巻き込まれてしまうので、第1電極が移送されないと認められる。 (テ)そこで、上記(ア)〜(ツ)を総合的に勘案すると、本件特許における「変形防止部材」が、その技術的意義を有するためには、本件明細書等を以下のa〜cのように解釈することが合理的であるといえる。 a 上記(シ)における上記二重の環は、間隔(GAP)を意味しており、変形防止部材130の固定部131と移送ローラ121の固定領域A1とは、前記GAPを介して結合している(前記GAPを介さず結合すると仮定すると、変形防止部材130と移送ローラ121とが一体となって回転してしまい、上記(ツ)で指摘したように、第1電極板10が変形防止部材130及び移送ローラ121に巻き込まれてしまい、上記(タ)で指摘した技術的意義である電極板の安定な走行ができなくなる。)。 b 上記aの事項及び重力について勘案すると、変形防止部材130と移送ローラ121とは、移送ローラの頂上、すなわち、上記(セ)の紙面上側の固定部131と移送ローラ121の固定領域A1の界面で、変形防止部材の固定部自身にかかる重力によって接触し、これにより、変形防止部材の固定部が、移送ローラの固定領域を回転可能に支持している。 c 上記a、bから、変形防止部材は、移送ローラ及び電極板の影響(摩擦力等)で、移送ローラの回転軸の周りを一定範囲で揺動するものの、電極板と接触する位置近傍で、前記GAPにより、止まる又は跳ね返ることができ、それによって、移送ローラの回転軸の周りを移送ローラとともに回転することがなく、電極板を巻き込んで電極板の安定な走行を阻害することがない。 (ト)そうすると、上記(テ)から、上記(ウ)〜(オ)、(ク)の「結合(する)」及び上記(キ)、(ケ)の「固定(する)」は、「回転可能に支持(する)」の意味と解釈することが合理的であるといえる。 (ナ)さらに、上記(テ)cから、上記(ウ)の「前記移送ローラに沿って回転しないように」は、「前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように」の意味と解釈することが合理的であるといえる。 (ニ)以上、上記(ア)〜(ナ)から、訂正事項4に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項1における「前記第1電極板または前記第2電極板によって回転しない」「前記変形防止部材」の構造を具体的に限定したものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 エ 申立人の主張について 申立人は、令和3年10月 8日提出の意見書において、 (ア)本件明細書等の図3には、「二重の円」が表現されているが、前記「二重の円」について、以下の参考図1のような態様も考えられるから、「間隔(GAP)」であるとは言い切れない。 (イ)「結合」とは、「二つ以上のものが結びついて一つになること。また、結び合わせて一つにすること。」を意味するものであるから、「固定する又は固定されていることを意味する」と捉える方がむしろ自然である。 (ウ)「固定」は、一般に「一定の位置や状態にあって、動かないこと。また、そのようにすること。」の意であり、「回転可能に支持」の意はないから、「固定」が「結合」と同様に「回転可能に支持」と解釈することはできない。 (エ)「(変形防止部材の)固定部が前記移送ローラの前記固定領域を回転可能に支持する」との記載は、「前記移送ローラの前記固定領域は、(変形防止部材の)固定部によって回転可能に支持される」と言い換えることができる。 すなわち、「固定領域は、・・・回転可能」と訂正されている。 一方、本件明細書等の段落【0040】においては、「・・・前記固定領域A1は、前記変形防止部材130が固定され、ローラの回転軸に沿って回転しない領域を意味する。」と記載されている。つまり、「前記固定領域」は、「ローラの回転軸に沿って回転しない領域」と断言している。 したがって、両記載は、明らかに矛盾する。 と主張しているので検討する。 (オ)主張(ア)について 上記イ(タ)より、本件特許における「変形防止部材」の技術的意義は、電極板が移送ローラを通過する際に発生する電極タップの、重力による垂れや、基材の揺動、遠心力または慣性によって一部が浮き上がって折れる変形(タップの折れ現象)を防止し、電極板をより安定的に走行させることであり、上記イ(テ)で指摘したように、前記技術的意義を満たすためには、電極板が変形防止部材及び移送ローラに巻き込まれないような構造となることが必要である。 しかし、上記(ア)の参考図1の態様では、変形防止部材及び移送ローラが一体となってしまうため、上記イ(ソ)のような電極板の移送を行うと、電極板が変形防止部材及び移送ローラに巻き込まれてしまうはずである。 したがって、「変形防止部材」の技術的意義を考慮すると、上記(ア)の参考図1の態様のような「二重の円」の解釈は、妥当ではない。 よって、申立人の主張(ア)は、採用できない。 (カ)主張(イ)〜(ウ)について 上記イ(テ)〜(ト)において指摘したように、「変形防止部材」の技術的意義を考慮すると、「結合」も「固定」も、一般的な意味ではなく、「回転可能に支持」の意味と解釈することが合理的であると認められる。 仮に、「固定」を、申立人の主張のとおり「一定の位置や状態にあって、動かないこと。また、そのようにすること。」の意であると解釈すると、変形防止部材及び移送ローラが一体となって回転するため、上記イ(ソ)のような電極板の移送を行うと、電極板が変形防止部材及び移送ローラに巻き込まれてしまうはずであるから、技術として成立しなくなる。 よって、申立人の主張(イ)〜(ウ)は、採用できない。 (キ)主張(エ)について 本件明細書等を参照すれば、上記(エ)の「・・・前記固定領域A1は、前記変形防止部材130が固定され、ローラの回転軸に沿って回転しない領域を意味する。」の文章において、「ローラの回転軸に沿って回転しない」の主語は、「固定領域A1」ではなく「変形防止部材130」であると解するのが相当である。 よって、申立人の主張(エ)は、採用できない。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的の適否 訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項2から、訂正事項2、4により請求項1に追加された事項と同様の事項について重複して特定する「前記変形防止部材は、前記移送ローラの一側端部に前記移送ローラに沿って回転しないように結合した固定部、および前記一側端部の外周面から離隔するように前記固定部と連結された」との記載を削除するとともに、当該記載の削除に伴って、「第1ガイド部であって、前記電極タップが前記移送ローラと最初に当接して進入する入口部に位置する第1ガイド部を含む」との記載を「前記第1ガイド部は、前記電極タップが前記移送ローラと最初に当接して進入する入口部に位置する」と明瞭にしようとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 上記アで述べたように、訂正事項5に係る訂正により訂正前の請求項2から削除された事項は、訂正事項2、4に係る訂正により請求項1に追加されており、さらに、訂正後の請求項2は、請求項1を引用するものであるから、訂正事項5に係る訂正によっては、訂正前の請求項2で特定された事項について実質的な内容は変更されていない。 したがって、訂正事項5に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項5に係る訂正は、上記イで述べたとおり、請求項2に係る発明の内容を実質的に変更するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。したがって、訂正事項5に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的の適否 訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項14において、「第1ガイド部」の何がどのように「移送ローラの回転軸」に「配置された」のかを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 本件明細書等には、以下のことが記載されている。 (ア)「 【0050】 また、図13に示されているように、第1ガイド部133eは、前記第1移送ローラ121と互いに並んでいるように配置された環状の形状になることができる。このとき、前記環の中心軸C’と前記第1移送ローラ121の回転軸Cとが互いに平行であることができる。」 (イ)上記(ア)から、訂正事項6に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項 の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項14に記載された「第1ガイド部」と「移送ローラ」の相対的な位置関係を特定のものに限定するものであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。したがって、訂正事項6に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (7)一群の請求項について 本件訂正前の請求項1〜15について、訂正前の請求項2〜15はそれぞれ訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるので、本件訂正前の請求項1〜15は一群の請求項であるところ、本件訂正請求は、前記一群の請求項についてされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 (8)独立特許要件について 特許異議の申立ては、訂正前の請求項1〜15全てに対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 3 本件訂正請求についての結言 上記のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第4項乃至第6項の規定に適合するものである。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜15〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で検討したとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、本件訂正請求により訂正された請求項1〜15に係る発明(以下、「本件発明1」等といい、総称して「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜15に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、下線は、訂正された箇所を表す。 「 【請求項1】 一側部から突出する複数の電極タップをそれぞれ備えた第1電極板および第2電極板の移送をそれぞれ案内する移送ローラであって、一側端部に形成された固定領域と前記電極タップが通過するタップ通過領域を有する移送ローラと、 固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、前記第1ガイド部が前記移送ローラの一側端部の前記タップ通過領域の外周面から離隔されるように前記固定部に連結され、前記移送ローラに進入する前記電極タップを前記一側端部の前記タップ通過領域の外周面と前記第1ガイド部との間に案内して前記電極タップの変形を防止する変形防止部材、および 前記移送ローラを通して移送される前記第1電極板および前記第2電極板と、前記第1電極板および前記第2電極板の間に介在したセパレータとを共に巻き取る巻取りユニットを含み、 前記変形防止部材は、その前記固定部が前記移送ローラの前記固定領域を回転可能に支持すると共に前記第1電極板または前記第2電極板によって前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、 前記変形防止部材の前記第1ガイド部と、前記タップ通過領域の前記外周面との隙間が前記電極タップの厚さより広いことを特徴とする極板巻取り装置。 【請求項2】 前記第1ガイド部は、前記電極タップが前記移送ローラと最初に当接して進入する入口部に位置することを特徴とする請求項1に記載の極板巻取り装置。 【請求項3】 前記固定部は、前記移送ローラの一側端部と対応する環状の形状になることを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項4】 前記第1ガイド部から延長された第2ガイド部であって、前記一側端部の外周面に沿って前記一側端部の外周面から離隔するように前記固定部と連結された第2ガイド部をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項5】 前記第2ガイド部は、前記一側端部の外周面のうち、前記電極タップと当接して通過する部分と対応するように円弧の形状になることを特徴とする請求項4に記載の極板巻取り装置。 【請求項6】 前記第2ガイド部は前記一側端部の外周面から0.2乃至5mm離隔されていることを特徴とする請求項4に記載の極板巻取り装置。 【請求項7】 前記固定部は、前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部が前記第1電極板及び前記第2電極板にそれぞれ形成された電極活物質層の上部に位置しないように前記移送ローラに固定されることを特徴とする請求項4に記載の極板巻取り装置。 【請求項8】 前記第1ガイド部は前記電極タップの走行方向に沿って前記入口部に接近するほど前記移送ローラと近くなる傾斜曲面を備えることを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項9】 前記傾斜曲面は、円柱面の一部であり、前記第1ガイド部の半径は前記電極タップの幅方向の長さと同じかまたは前記長さより長くなることを特徴とする請求項8に記載の極板巻取り装置。 【請求項10】 前記第1ガイド部は前記電極タップの走行方向に沿って前記入口部に接近するほど前記移送ローラと近くなる平らな傾斜面を備えることを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項11】 前記電極タップの走行方向に対する前記第1ガイド部の垂直高さ及び水平長さはそれぞれ前記電極タップの幅方向の長さと同じかまたは前記長さより長くなることを特徴とする請求項10に記載の極板巻取り装置。 【請求項12】 前記第1ガイド部は前記電極タップの走行方向と平行な平面を備えることを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項13】 前記第1ガイド部は前記電極タップの走行方向に対して垂直な平面を備えることを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項14】 前記第1ガイド部は環状の形状であり、前記第1ガイド部の中心軸は前記移送ローラの回転軸と互いに平行であるように配置された環状の形状になることを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項15】 前記セパレータ、前記第1電極板および前記第2電極板を供給するための複数の供給ユニットをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の極板巻取り装置。」 第4 特許異議の申立てについて 1 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証〜甲第13号証(以下、「甲1」等という。)及び参考資料1を提出し、以下の申立理由により、本件訂正前の請求項1〜15に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 (1)申立理由1(進歩性) 本件訂正前の請求項1〜15に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明、甲11に記載された発明、甲12に記載された発明または甲13に記載された発明と周知技術とから、当業者が容易に想到し得るものである。 したがって、本件訂正前の請求項1〜15に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(拡大先願) 本件訂正前の請求項1〜15に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲10の先願の、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と実質的に同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもない。 したがって、本件訂正前の請求項1〜15に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(明確性要件) 本件訂正前の請求項1において、「前記変形防止部材は、前記第1電極板または前記第2電極板によって回転しない」と記載されているが、「変形防止部材」が「第1電極板」や「第2電極板」によっては回転しないが、「電極タップ」の接触通過に伴い回転する場合や、モータ等の駆動手段により回転する場合、「前記変形防止部材は、前記第1電極板または前記第2電極板によって回転しない」といえるのか、不明確である。 したがって、「前記変形防止部材は、前記第1電極板または前記第2電極板によって回転しない」の外延が不明であり、本件訂正前の請求項1〜15に係る発明は不明確である。 よって、本件訂正前の請求項1〜15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (4)申立理由4(明確性要件及び実施可能要件) 本件訂正前の請求項2において、「前記移送ローラの一側端部に前記移送ローラに沿って回転しないように結合した固定部」と規定されている。 ここで、「移送ローラ」は回転するものであるはずであるが、その回転する「移送ローラ」に結合された「固定部」は、本来であれば「移送ローラ」の回転に伴い回転するはずである。 それにもかかわらず、本件訂正前の請求項2では、「固定部」が「回転しない」と記載されており、発明が不明確であり、かつ、当業者がどのように実施するのか明らかでない。 よって、本件訂正前の請求項2〜14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (5)申立理由5(サポート要件、明確性要件、及び実施可能要件) 本件訂正前の請求項2において、「前記固定部と連結された第1ガイド部」と規定されている。 ここで、「第1ガイド部」は、明細書中では、「第2ガイド部135」と連結されているが、「固定部131」と連結されていない。 したがって、本件訂正前の請求項2に係る発明は、発明が不明確であり、かつ、当業者がどのように実施するのか明らかでなく、発明が明細書によってサポートされていない。 よって、本件訂正前の請求項2〜14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (6)申立理由6(明確性要件) 本件訂正前の請求項3において、「前記固定部は、前記移送ローラの一側端部と対応する環状の形状になること」と規定されている。 明細書を参照すると、図3、4にて示される符合131で表記された部位が「固定部」に該当すると思料されるが、例えば、図13で符合133eで表記される部位も「前記移送ローラの一側端部と対応する環状の形状になること」の要件を文言上満たし得るのか否かが不明である。 したがって、本件訂正前の請求項3に係る発明は、発明の外延が不明確であり、発明が不明確である。 よって、本件訂正前の請求項3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (7)申立理由7(明確性要件及び実施可能要件) 本件訂正前の請求項7において、「前記固定部は、・・・前記移送ローラに固定される」と規定される。 上記(2)で述べたとおり、回転するものであるはずの「移送ローラ」に固定された「固定部」は、「移送ローラ」の回転に伴い回転するはずであるが、上記記載では、「固定(部)」、「固定される」と表現されている。 したがって、本件訂正前の請求項7に係る発明は不明確であり、かつ、当業者がどのように実施するのか明らかでない。 よって、本件訂正前の請求項7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (8)申立理由8(明確性要件) 本件訂正前の請求項15において、「前記セパレータ、前記第1電極板および前記第2電極板を供給するための複数の供給ユニット」と規定されている。 ここで、「前記セパレータ、前記第1電極板および前記第2電極板を供給する」1組の供給ユニットを複数備えることを意味するのか、(2枚の)「セパレータ」を供給するユニット、1つの「第1電極板」を供給するユニット、1つの「第2電極板」を供給するユニットで複数備えていることを示すのか、不明である。 したがって、本件訂正前の請求項15に係る発明は明確でない。 よって、本件訂正前の請求項15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (9)申立理由9(明確性要件及び実施可能要件) (i)図5を参照すると、移送ローラの固定領域A1と、タップ通過領域A2と、第2領域Bとは、破線で仕切られているに過ぎないこと、(ii)【0040】に「前記第1移送ローラ121は大きく第1領域Aと第2領域Bとに区分される。」と記載されていることを勘案すると、第1領域Aは移送ローラの一部であって、いずれの領域も回転すると考えるのが自然である。 一方で、固定領域A1が固定状態にあり、第2領域Bが回転可能であれば、固定領域A1とタップ通過領域A2との間、または、タップ通過領域A2と第2領域Bとの間のいずれかに「隙間」が形成されていなければならないが、どの図を参照してもそのような「隙間」が存在しない。 したがって、どのように実施すれば、固定領域A1とタップ通過領域A2との間、あるいは、タップ通過領域A2と第2領域Bとの間のいずれかに「隙間」を設けることなく、「ローラの回転軸に沿って回転しない」「固定領域A1」を確保することができるのか理解できない。 よって、本件訂正前の請求項1〜15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (10)申立理由10(新規事項の追加) 平成30年12月12日付け手続補正により追加された本件訂正前の請求項1の「前記変形防止部材は、前記第1電極板または前記第2電極板によって回転しない」ことは、本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。 よって、本件訂正前の請求項1〜15に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号に該当し取り消されるべきものである。 (11)証拠方法 甲第1号証(甲1):特開2013−218819号公報 甲第2号証(甲2):特開平9−180735号公報 甲第3号証(甲3):特開平5−205731号公報 甲第4号証(甲4):特公昭55−8811号公報 甲第5号証(甲5):実公昭56−19366号公報 甲第6号証(甲6):特開2005−343643号公報 甲第7号証(甲7):特開2009−186996号公報 甲第8号証(甲8):実願昭49−122695号(実開昭51−49451号)のマイクロフィルム 甲第9号証(甲9):実公平3−44641号公報 甲第10号証(甲10):特開2016−6765号公報 甲第11号証(甲11):韓国公開特許第10−2013−0007140号公報 甲第12号証(甲12):特開平3−62461号公報 甲第13号証(甲13):特公昭60−52545号公報 参考資料1:甲11の特許データベースJP−NETによる和訳文 2 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1〜15に係る特許に対して、令和 3年 6月 7日付けで通知した取消理由通知(2回目の決定の予告)により、当審が特許権者に対して通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。なお、前記取消理由は、令和 2年 2月 5日付け取消理由通知書の「第4 取消理由」において記載した内容と同一である。 なお、令和 2年 9月30日付けで通知した取消理由通知(1回目の決定の予告)において新たに通知された取消理由6(明確性)について、上記第3の請求項14の記載をみても明らかなとおり、「第1のガイド部」との記載が、本件訂正後の請求項14にはそもそもないから、前記取消理由6は解消されている。 (1)取消理由1(明確性要件)(申立理由3に対応) 本件訂正前の請求項1には、「前記変形防止部材は、前記第1電極板または前記第2電極板によって回転しない」と記載されているが、「変形防止部材」が「前記第1電極板または前記第2電極板」以外のもの(例えばモーター等の駆動手段)によって回転するものをも含み得るのか否かが不明確である。 本件訂正前の請求項2〜15に係る発明は本件訂正前の請求項1に係る発明に従属するから、本件訂正前の請求項2〜15に係る発明には同様に記載不備がある。 したがって、本件訂正前の請求項1〜15に係る発明は、明確でない。 よって、本件訂正前の請求項1〜15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (2)取消理由2(明確性要件)(申立理由4、7、9に対応) 本件訂正前の請求項2には、「前記移送ローラの一側端部に前記移送ローラに沿って回転しないように結合した固定部」と記載されている。 一方で、本件訂正前の請求項2では、「移送ローラ」の構成が十分に特定されておらず、例えば、甲10の図8の「固定軸部300」のような、回転しない構成を有するものであることが特定されているとはいえないため、「移送ローラ」の全体が回転するものであるとも解釈し得るところ、上記記載が、「固定部」が「移送ローラ」に対し、どのようにして「回転しないように結合した」ことを示すのかを理解できない。 したがって、本件訂正前の請求項2に係る発明及び本件訂正前の請求項2を引用する本件訂正前の3〜14に係る発明は、明確でない。 よって、本件訂正前の請求項2〜14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (3)取消理由3(明確性要件)(職権で通知) 本件訂正前の請求項1に係る発明は、「前記移送ローラの一側端部の外周面から離隔された変形防止部材であって、前記移送ローラに進入する前記電極タップが前記一側端部の外周面に密着するように案内して前記電極タップの変形を防止する変形防止部材」との発明特定事項を備えたものである。 そうすると、本件訂正前の請求項1に係る発明の「変形防止部材」は、「移送ローラ」の「外周面」に「密着」するように「電極タップ」を案内するものと認められる。 ここで、「密着」との用語の通常の意味は、「ぴったりと付着すること」であるから(株式会社岩波書店 広辞苑第六版を参照。)、本件訂正前の請求項1に係る発明における「密着」が通常の意味で用いられていると仮定すると、上記記載は、「移送ローラ」の「外周面」と「電極タップ」とが「ぴったりと付着する」、すなわち隙間無く接するように「変形防止部材」が「電極タップ」を「案内」することを意味し、この場合、「変形防止部材」と「移送ローラ」の「外周面」との間の間隔は、「電極タップ」の厚さと概ね同じとなると認められる。 一方で、本件特許の明細書の【0042】には、「変形防止部材」の一部である「第1ガイド部133」と「移送ローラ」の一部である「タップ通過領域A2」との間の間隔に関し、次の記載がある。 「【0042】 前記第1ガイド部133は前記タップ通過領域A2の外周面から第1間隔d1だけ離隔されるように前記固定部131と連結され、前記入口部A3に位置することができる。前記第1間隔d1は前記第1電極タップ11の厚さを考慮して前記第1電極タップ11が十分に通過できる程度に設定される。例えば、第1電極板10の厚さが約5ないし20μmの場合、前記第1間隔d1は0.2乃至5mmであることが適切である。・・・」 そして、当該記載からみて、本件特許の明細書では、「変形防止部材」と「移送ローラ」との間の間隔は、明らかに「移送ローラ」の「外周面」と「電極タップ」とが「ぴったりと付着する」、すなわち隙間無く接するような間隔ではなく、より広い間隔であることが認められる。 そうすると、明細書の段落【0042】の上記記載からは、本件訂正前の請求項1に係る発明における「密着」は上記した通常の意味とは異なる意味で用いられているとも解釈し得る。 したがって、本件訂正前の請求項1に係る発明における「密着」は複数の意味で解釈可能であり、いずれの意味で用いられているのかを特定できないから、本件訂正前の請求項1に係る発明の内容が不明確である。 また、本件訂正前の請求項1を引用する本件訂正前の2〜15に係る発明も同様に明確でない。 よって、本件訂正前の請求項1に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (4)取消理由4(明確性要件)(職権で通知) 本件訂正前の請求項2に係る発明は、「前記移送ローラに沿って回転しないように結合した固定部」との発明特定事項を備えたものである。 一方で、上記記載では、「固定部」が「移送ローラ」の何に沿って回転しないのかが不明確であって、「固定部」が「移送ローラ」の回転軸を回転軸とした回転をしないことを示すのか、その他の意味があるのかが不明確である。 したがって、本件訂正前の請求項2に係る発明及び本件訂正前の請求項2に従属する本件訂正前の請求項3〜14に係る発明は、明確でない。 よって、本件訂正前の請求項2〜14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (5)取消理由5(明確性要件)(職権で通知) 本件訂正前の請求項14に係る発明は、「前記第1ガイド部は前記移送ローラの回転軸と互いに並んでいるように配置された環状の形状になること」との発明特定事項を備えたものである。 一方で、上記記載では、「第1ガイド部」と「移送ローラ」とがどのように並んでいるものまでを含むのかが不明確であって、本件特許の明細書【0050】に記載のような「環状の形状」である「第1ガイド部」の中心軸と「移送ローラ」の回転軸とが互いに平行であるように並ぶものを指すのか、その他のものを指すのかが不明確である。 したがって、本件訂正前の請求項14に係る発明は、明確でない。 よって、本件訂正前の請求項14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 3 当審の判断 当審は、本件訂正請求により訂正された本件発明について、当審による取消理由はいずれも解消し、また、申立人が主張するその余の申立理由によっても、本件特許を取り消すことはできないと判断する。なお、下線は当審が付したものであり、「・・・」は記載の省略を表すものである。以下同じ。 (1)取消理由1(明確性要件)(上記2の(1))について ア 本件訂正によって、本件発明1では、「変形防止部材」が「固定部」と「前記固定部と連結された第1ガイド部」とを備え、「その前記固定部が前記移送ローラの前記固定領域を回転可能に支持すると共に前記第1電極板または前記第2電極板によって前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、」と特定された。 イ そのため、本件発明1では、変形防止部材の固定部が、移送ローラの固定領域を回転可能に支持すると共に第1電極板または第2電極板によって移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されているから、「前記第1電極板または前記第2電極板」以外のもの(例えばモーター等の駆動手段)によって回転するものを含み得ないことが明確になった。 ウ したがって、上記取消理由1は、解消された。 (2)取消理由2(明確性要件)(上記2の(2))について ア 本件訂正によって、本件発明1では、「変形防止部材」が「固定部」と「前記固定部と連結された第1ガイド部」とを備え、「その前記固定部が前記移送ローラの前記固定領域を回転可能に支持すると共に前記第1電極板または前記第2電極板によって前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、」と特定された。 イ ここで、上記第2の2(4)イ(タ)〜(テ)で検討したように、上記アにおける、「固定部が移送ローラの固定領域を回転可能に支持すると共に第1電極板または第2電極板によって移送ローラの回転軸の周りを回転しない構成」とは、固定部が移送ローラの頂上、すなわち、上記第2の2(4)イ(セ)の紙面上側の固定部131と移送ローラ121の固定領域A1の界面で、変形防止部材の固定部自身の重力によって接触し(固定部が移送ローラの固定領域を回転可能に支持し)、変形防止部材が、移送ローラ及び電極板の影響(摩擦力等)で、移送ローラの回転軸の周りを一定範囲で揺動するものの、電極板と接触する位置近傍で、固定部と移送ローラとの間のGAPにより、止まる又は跳ね返ることを意味していると解される。 ウ そうすると、上記アの特定によって、「固定部」が「移送ローラ」に対し、どのように「回転しないように結合」したのかが明確になった。 エ したがって、上記取消理由2は、解消された。 (3)取消理由3(明確性要件)(上記2の(3))について ア 本件訂正によって、本件発明1は「密着」することを発明特定事項とはしないものとなった。 イ したがって、上記取消理由3は、解消された。 (4)取消理由4(明確性要件)(上記2の(4))について ア 本件訂正によって、本件発明1では、「変形防止部材」が「固定部」と「前記固定部と連結された第1ガイド部」とを備え、「その前記固定部が前記移送ローラの前記固定領域を回転可能に支持すると共に前記第1電極板または前記第2電極板によって前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、」と特定された。 イ そのため、本件発明1では、変形防止部材の固定部が、移送ローラの回転軸の周りを回転しないことを示すことが明確になった。 ウ したがって、上記取消理由4は、解消された。 (5)取消理由5(明確性要件)(上記2の(5))について ア 本件訂正によって、本件発明14では、「前記第1のガイド部は環状の形状であり、前記第1ガイド部の中心軸は前記移送ローラの回転軸と互いに平行であるように配置された環状の形状になる」と特定された。 イ そのため、本件発明14では、「環状の形状」である「第1ガイド部」の中心軸と「移送ローラ」の回転軸とが互いに平行であるように並ぶものを指すことが明確になった。 ウ したがって、上記取消理由5は、解消された。 (6)申立理由1(進歩性)(取消理由として不採用)について ア 刊行物等の記載事項 (ア)甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 a 「 【0007】 本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、タブ部の形成が容易な巻回型や積層型の電極体を備えた蓄電装置及び二次電池並びに蓄電装置用電極体の製造方法を提供することにある。」 b 「 【0021】 図1(b),(c)に示すように、帯状正極11及び帯状負極12は、それぞれ巻回された状態で径方向に重なる複数のタブ部11b,12bが一体に巻回軸方向に突出形成されている。・・・」 c 「 【0023】 次に前記のように構成された二次電池用電極体10の製造方法を説明する。二次電池用電極体10の製造方法は、帯状正極11及び帯状負極12を両者の間に帯状のセパレータ13が介在する状態で巻き取り部材上に巻き取る巻き取り工程に特徴を有する。・・・」 d 「 【0027】 アンコイラー22と巻き取り部材27との間には正極用リール21から引き出される帯状正極11をガイドするガイドローラ31が設けられ、ガイドローラ31より正極用リール21側には切断手段32が設けられている。・・・」 e 「 【0028】 アンコイラー24と巻き取り部材27との間には負極用リール23から引き出される帯状負極12をガイドするガイドローラ33が設けられ、ガイドローラ33より負極用リール23側には切断手段34が設けられている。・・・」 f 「 【図1】 」 g 「 【図2】 」 h 「 【図4】 」 (イ)甲2の記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 a 「 【0009】本発明は、この種の問題を解決するものであり、電極シートの塗布部と未塗布部の境界部位を容易かつ正確に検出することができ、前記電極シートの位置決め停止作業を安定して行うことが可能な電池巻回機の電極シート位置決め装置を提供することを目的とする。」 b 「 【0010】 【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するために、本発明は、電極シートの走行途上に配設された色識別センサにより、電極材が塗布された塗布部と未塗布部との境界部位が検出されると、前記電極シートの巻回動作が停止される。このため、電極シートの境界部位が実際に検出され、前記電極シートを精度よくかつ安定して位置決め停止させることができる。」 c 「 【0012】 【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施形態に係る電極シート位置決め装置10を組み込む電池巻回機12の概略構成図である。」 d 「 【0016】負極移送手段20は、図1に示すように、回転駆動される負極送り出し軸14と、この負極送り出し軸14から巻き込み部18に向かって負極シート16を所定の搬送路に沿って移送するために配設された複数の搬送ローラ48とを有する。この負極移送手段20の途上には、負極タブ溶着用の超音波溶着器50が配設されている。」 e 「 【0019】図1に示すように、正極移送手段26は、回転駆動される正極送り出し軸22と、複数の搬送ローラ66とを備え、その搬送路上に正極タブ溶着用の超音波溶着器68が配設されるとともに、巻き込み部18側に近接して正極吸着ブロック70、カッター72および第2色識別センサ74が配置される。第2色識別センサ74は、上記の第1色識別センサ56と同様に構成されており、その詳細な説明は省略する。」 f 「 【0022】負極シート16は、予め超音波溶着器50を介して所定の部位に負極タブが溶着されており、負極移送手段20を構成する負極送り出し軸14の回転作用下にこの負極送り出し軸14から送り出され、所定の搬送路を通って巻き込み部18に搬送される。」 g 「 【0023】一方、正極シート24は、予め超音波溶着器68を介して所定の部位に正極タブが溶着されており、正極移送手段26を構成する正極送り出し軸22の回転作用下に、巻き込み部18側に移送される。第1および第2セパレータ28、30は、同様に第1および第2セパレータ移送手段32、34の作用下に該巻き込み部18に対応して搬送されている。従って、負極シート16と正極シート24は、第1および第2セパレータ28、30を介装して巻き込み部18で巻回動作が開始される。」 h 「 【図1】 」 (ウ)甲3の記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 a 「 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の方法のようにプレスやロータリーカッターで鉛合金シートの非展開部から集電用の極板耳部と枠体(枠骨)を切り出し、活物質ペーストを塗着した網状体の部分から極板の活物質ペーストの塗着部分を切り出す方法では、鉛合金シートの非展開部と展開された網状体部分との延びの差やカッターあるいはダイス等からの型離れの差などによって極板耳部に反りやゆがみが発生したり、極板耳部が極板平面に対して斜めに変形することがあった。そして、この極板耳部の変形の結果、極板群を組み立てる場合には極板耳部に接続棚形成用のくし型治具をはめ込む際、極板耳部にこのくし型治具がうまく挿入できないという問題が生じた。」 b 「 【0005】このような問題を解消するために、平滑プレスにより極板を圧迫して極板耳部の変形を矯正する方法が提案されたが、この方法では極板に塗着された活物質が脱落したり、極板を損傷することがあり、極板の耳部だけをうまく矯正することはできなかった。」 c 「 【0006】本発明はこのような課題を解決するためのものであり、エキスパンド加工法による極板作製時に極板耳部が変形した極板に対して、極板を損傷させることなく、その極板耳部の変形を矯正することができる鉛蓄電池用極板の耳部の矯正装置を提供することを目的とするものである。」 d 「 【0009】図2に示したように、この極板の耳部の矯正装置は極板の平面部を上下から加圧しながら送り出す一対の二本の棒状ローラー1とこの棒状ローラー1の一方の一端部に先端に行くにつれて次第に径大となる円錐形のローラー2とを備えているので、極板3の平面部を前記棒状ローラー1によって上下から加圧するとともに極板3の耳部4の反り(状態A)を前記円錐形のローラー2によって反り逆方向(状態B)に屈曲させることができる。」 e 「 【図1】 」 f 「 【図2】 」 (エ)甲4の記載事項 甲4には、以下の事項が記載されている。 a 「 従来、アキシャル形電子部品を伸線するために、手でリード線を伸ばしたり、または第2図および第3図に示したような装置を使うのが普通であった。この先行技術の装置を第2図と第3図を参照して説明する。この装置は、部品のリード線の軸方向位置に対応して配置された2つのローラ6,6’を有する駆動軸と、これらのローラの円周面にばね9により常時押圧されて接触するようにコラム8に揺動自在に懸垂されたシュー4,4’を具備する。前記の種類の部品を回転するローラ6,6’と揺動自在なシュー4,4’の間にリード線が狭まれるように供給すれば、リード線がそれらの間で回転しながらローラー円周面に沿ってローラの回転方向に進み、ローラ6,6’とシュー4,4’の間でリード線の伸線作業が行なわれる。」(1頁右欄16〜30行) b 「 」 c 「 」 (オ)甲5の記載事項 甲5には、以下の事項が記載されている。 a 「 本考案は従来の送り爪移送力式に代えて補助ゴムローラを用いたもので、該補助ゴムローラを矯正用ゴムローラの上部位置にてこれに圧接して設け、これら矯正用ゴムローラと補助ゴムローラとを互に反対方向に回転させ、それらの間に素子のリード線をくい込ませて矯正用ゴムローラの下側とそれに対向して設けられた矯正板の円弧面との間に素子のリード線を詰ることなく強制的に送り込んでリード線を回転させながら屈曲部を押圧して真直に矯正するように構成したものであって、かかる構成により曲がりの大きいリード線であってもその全長に亙って確実に且つリード線を傷つけることなく矯正することができるようにしたことを特徴とするリード線矯正装置を提供せんとするものである。」(1頁右欄11〜25行) b 「前記補助ゴムローラ20に続き矯正用ゴムローラ8に対向する矯正板11aの下面は円弧状に形成され、該円弧面はパフ仕上げされて硬質クロームメッキされている。」(2頁左欄43行〜右欄2行) c 「矯正板11aは回転しないのでリード線3bは矯正用ゴムローラ8により矯正板11aに対し押圧状態で回転されながら移送され、この間を通過する間に圧迫力で真直に矯正される。」(2頁右欄32〜36行) d 「 e 「 」 (カ)甲6の記載事項 甲6には、以下の事項が記載されている。 a 「 【発明の効果】 【0011】 以上の本発明によれば、プラテン近傍に設けられ、ラベル紙媒体をガイドするラベル紙媒体ガイド部と、前記ラベル紙媒体ガイド部と搬送される前記ラベル紙媒体との間で、且つ前記ラベル紙媒体ガイド部の搬送方向下流端部を少なくとも含む範囲で前記ラベル紙媒体をガイドするラベル紙ガイド部とを設けたので、ラベル紙媒体を搬送する場合であっても、ラベル紙媒体のはがれを防止して正常に搬送することができ、媒体搬送異常の発生を防止することができる。」 b 「 【0015】 そして、図1ないし図3に示したように媒体の1つである連続紙9を繰出すトラクタ6と、繰出された媒体をガイドする用紙ガイド7と、用紙ガイド7の上部に一定の幅を有しラベル紙9dの端部をガイドするラベル紙ガイド20(20a、20b)を備えている。ラベル紙ガイド20a、20bは、用紙ガイド7の搬送方向上流に接着され、搬送方向へ向けて、リボンプロテクタブラケット16の下流まで伸びている。」 c 「 【0017】 また、図2、図3に示したようなラベル紙9dの両端にそれぞれラベル紙ガイド20a、20bを設ける構成とするのではなく、ヘッド1先端部分の移動範囲に孔をあけた構造でラベル9dの略全面を覆うラベル紙ガイドとする構成としてもよいし、ラベル紙9d両端と中央部をそれぞれ覆うような構成としてもよい。また端部がはがれやすいため端部を含むのが望ましいが、端部近傍でも良い。」 d 「 【図1】 」 e 「 【図2】 」 f 「 【図3】 」 (キ)甲7の記載事項 甲7には、以下の事項が記載されている。 a 「 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 光学フィルムを切断する方法として、光学フィルムに粘着剤層を介して貼り合せられた離型フィルムは切断せずに、光学フィルムおよび粘着剤層を切断し、表示基板に対する貼り合せ処理の前に、光学フィルムから離型フィルムを剥離する方法が考えられる。 【0010】 しかし、このような方法では、シート製品が搬送される搬送路が屈曲部または湾曲部のような搬送方向を変更する部分を有している場合に、当該屈曲部または湾曲部を搬送される際に、光学フィルムおよび粘着剤層が、切断された位置において離型フィルムから剥離するおそれがある。このようにして光学フィルムおよび粘着剤層が剥離した場合には、粘着剤層に異物が付着したり、粘着剤層を介して光学フィルムが搬送路中のあらゆる部分に貼り付いたりするおそれがある。 【0011】 本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであって、光学フィルムおよび粘着剤層が離型フィルムから剥離するのを良好に防止することができる光学表示ユニットの製造システムおよび搬送機構を提供することを目的とする。」 b 「 【0102】 次に、各種装置について、図3?図5を用いて順に説明する。図5は、第1貼合装置18の近傍の具体的構成を示した図である。・・・」 c 「 【0140】 ・・・これらの押え部材200は、搬送路12A,22Aにおける湾曲部に対向する位置に設けられており、離型フィルムF12,F22から剥離するフィルム本体を離型フィルムF12,F22側へ押さえるものである。」 d 「 【0143】 アキュムレート装置A内に設けられる押え部材200の位置は、当該アキュムレート装置Aに備えられた上下垂直方向に変位する変位ローラA1の上流側または下流側に最初に配置されている搬送ローラに対向する位置であることが好ましい。・・・」 e 「 【0145】 図7は、押え部材200の構成の一例を示した要部拡大図である。この図7の例では、第1シート製品F1の搬送路12A、又は、第2シート製品F2の搬送路22Aの湾曲部を形成している搬送ローラR1に対向する位置に、押え部材200が設けられている。・・・」 f 「 【図5】 」 g 「 【図7】 」 (ク)甲8の記載事項 甲8には、以下の事項が記載されている。 a 「 つぎに従来より使用されているリード線直伸機およびその動作について図によつて説明する。第1図は従来のリード線直伸機の斜視図で、同軸上に固定された1対のローラー1、1’と、これに組合う1対のシュー2、2’とより構成されており、・・・シュー2、2’はローラー1、1’の外周に添うような曲面を有し、その曲面はローラー1、1’の外周との間に微小間■(当審注:文字が潰れて判別不可能である。)を保持するように取り付けられている。・・・第2図はリード直伸機の直伸機構の正面図、・・・いずれもリード線直伸機の動作状態を示すものである。・・・その両端リード線はローラ1、1’の回転によりローラ1、1とシュー2、2’との間にくわえ込まれ、駆動され回転しながら下方に進行する。この間にリード線は圧し伸ばされ直伸する。」(2頁16行〜3頁17行) b 「 」 c 「 」 (ケ)甲9の記載事項 甲9には、以下の事項が記載されている。 a 「 したがつて、本考案によれば、テーピング用ホイールの間歇回転に伴い、その係合用溝に電子部品のリード線を係合して移送し、固定テープ受上でリード線を圧着用ホイールによりテーピングし、このテーピング後のテープにテーピング用ホイールの凹所内の定位置に設けられた固定穿孔部材と、これに対する可動穿孔部材との協力により穿孔することができる。そして、上記のように固定穿孔部材はテーピング用ホイールとは別に定位置に設けているので、常に可動穿孔部材と正確に位置合わせすることができる。」(2頁左欄21〜31行) b 「 ホーミング用ホイール5の外周部には前記第2の供給用ホイール16より下流側に向つて順次キンク形成装置19、折曲げ装置20及び倒し装置21が設けられている。而してキンク形成装置19によりリード線r2に第1図に示すようにキンクr2aを形成し、折曲げ装置20によりリード線r2にr2bの如くU字状の曲げ加工を施し、倒し装置21によりリード線r2を倒すことができる。」(2頁右欄30〜37行) c 「 」 (コ)甲11の記載事項 甲11には、以下の事項が記載されている。 a 「 」(当審訳:[0006] また、ノッチングによってタップが形成された電極シートをローラーによってリワインディングする場合、ノッチング工程によって形成されたタップの中で一つがローラーによってリワインディングされながら一つが折れると、次のタップが折れたタップの上で重なりながらますますさらに折れる程度が大きくなる問題点が発生する。) b 「 」(当審訳:[0010] また、本発明の目的はリワインディング工程で自重によって生地を加圧するローラーによって生地の間に空気が捕獲されるか生地の蛇行を防止することでリワインディングされる生地の品質を均一化することができる特定構造のガイドロール装置を提供することである。) c 「 」(当審訳: [0011] このような目的を果たすための本発明によるガイドロール装置は、電池生産工程でフィーディングロールに巻いていた生地を解いて所定の工程を実行した後ワインディングロールに巻取するリワインディング工程で、生地の間に空気が捕獲されるか生地の蛇行(蛇行)を防止するガイドロール装置として、 [0012] 下記装着部を回転させる回転軸; [0013] 片側端部は前記回転軸に上下で回転可能に結合されていて、他側端部には下記ローラーが装着されている装着部; 及び [0014] 装着部の他側端部と結合されていて、自重(自重)によって生地を加圧する一つ以上のローラー; [0015] を含んでいる構造で構成されることができる。) d 「 」(当審訳:[0016] よって、本発明によるガイドロール装置は、生地を解いて所定の工程を実行した後ワインディングロールに巻取する場合、装着部の他側端部に結合されているローラーが自重によって生地を自動的に加圧するので生地の間に空気が捕獲されるか生地が定位置から外れるように巻くことを防止することができる。) e 「 」(当審訳:[0021] 一方、タップとノッチがプレスによって生地の上端部と下段部に所定サイズに形成された後、生地がワインディングロールに蛇行されながら巻取されるとタップ部位の折れる問題点が発生する。 また、生地がワインディングロールに蛇行されながら巻取されないとしても、生地の圧延しきりに過程で生地の表面が雨具をツグルするようになっていて、生地を巻取する場合ワインディング軸に垂直である方向に生地が押し寄せながらタップの折れることが継続して大きくなる問題点がある。) f 「 」(当審訳:[0022] よって、このような問題点を解決するためにノッチングされた生地を巻取する場合蛇行を防止するのがさらに必要になるので、本発明によるガイドロール装置は電極シートを単位電極間隔にノッチングする工程以後のリワインディング工程に望ましく使われることができる。) g 「 」(当審訳:[0023] 望ましくは、前記ローラーはノッチング工程によって形成されたタップをガイドするためのタップガイド部を含んでいて、ローラーのタップガイド部がノッチング工程後リワインディング過程でタップを所定の圧力で一定するように加圧してタップが折れることを防止することができる。) h 「 」(当審訳:[0024] 前記ガイドロール装置は自重によって生地を加圧することが必要な部位なら装着位置側面で特別な制限はないし、例えば生地を巻取しているリワインダーに装着されている構造であることができる。) i 「 」(当審訳:[0051] 図2には本発明の一つの実施例によるガイドロール装置の正面図が模式的に図示されていて、図3には本発明のまた他の実施例によるノッチング工程の模式図が図示されている。 また、図4には図3のノッチング工程によって製造される生地の平面図が模式的に図示されている。) j 「 」(当審訳:[0052] これら図面を参照すると、ガイドロール装置(100)は電池生産工程でフィーディングロール(200)に巻いていた生地(700)を解いてノッチング工程(300)を実行した後ワインディングロール(500)に巻取するリワインディング工程で、生地の間に空気が捕獲されるか生地の蛇行を防止するために回転軸(120)、装着部(130)、及び1個のローラー(140)で構成されている。) k 「 」(当審訳:[0058] また、ノッチング工程は電極タップ(710)のピッチ(pitch)と長さ、肩線を検査するためのビジョンカメラ(400)と保護フィルムをオンワインドするためのアンワインダーロール(600)を含んでいる。) l 「 」(当審訳:[0060] ガイドロール装置(100)は生地(700)を巻取しているリワインダー(500)に装着されていて、ローラー(140)は装着部(130)の片側端部(132)を基準で90度以内の内角で作動している。) m 「 」(当審訳:[0064] これとは違い、本発明によるローラー(140)は巻取される生地の幅より大きいサイズに該当するタップガイド部が電極シートのタップを所定の圧力で一定するように加圧してタップが折れる現象をあらかじめ防止する。) n 「 」(当審訳:図2) o 「 」(当審訳:図3) (サ)甲12の記載事項 甲12には、以下の事項が記載されている。 a 「 2.特許請求の範囲 半円状の巻込み部を上下に数個有した円筒状ドラムの下巻込み部に、帯状の陽、陰極板を供給し保持する手段と、帯状の陽、陰極板の長さによって、下巻込み部に供給する極板位置を変える手段と、所定長さに切断した帯状セパレータを下巻込み部に供給する手段と、帯状セパレータの相対する方向より、半円状に分割した捲回軸を挿入し帯状セパレータを挾む手段と、前記半円状の巻込み部の上下を重ね合せ、帯状の陽、陰極板、セパレータを巻込み部の上下を重ね合せた円状の中で、捲回軸を回転して渦巻状に巻上げる手段と、捲回軸の回転数を変えて、渦巻状に巻上げた渦巻状捲回群の帯状陰極板の巻終り点を所定位置にする手段と、巻上げる際、加圧ローラで巻込み部の一部から帯状の陽、陰極板、セパレータを加圧する手段と、巻上げた後に捲回軸を戻し、電池缶を供給し渦巻状捲回群を巻込み部から電池缶に挿入する手段と、渦巻状捲回群を挿入した電池缶を取り出す手段を備えてなる渦巻状捲回群の製造装置。」 b 「 従来の技術 従来、渦巻状捲回群の製造装置は第3図にかける上巻込み部6、下巻込み部2を備えた巻込み部に、第4図のように帯状の陽極板4、陰極板13、セパレータ15を供給し、上巻込み部6、下巻込み部2で挾む次いで帯状セパレータ15を半円状に分割した捲回軸5で挾み、第5図に示すように捲回軸5を回転して上巻込み部6、下巻込み部2で形成した円状の中で極板を巻込み、第6図に示す渦巻状捲回群16に巻上げる。この渦巻状捲回群16を第7図のように電池缶14を供給し、上下巻込み部内6、2の渦巻状捲回群16を押込み棒10で押し出して電池缶14に挿入する方法がとられていた。」(1頁右下欄9行〜2頁左上欄2行) c 「 」 d 「 」 e 「 」 f 「 」 (シ)甲13の記載事項 甲13には、以下の事項が記載されている。 a 「 本発明は、ら施状に巻かれた電気化学セルを製造する装置に係り、特に巻き付け成分の中、少なくとも1つの成分を容易に圧縮できる様にして成分の寸放変動を受け容れる様にして幾何学的に均一のら施状セルパツクを得る巻き付け装置に係る。」(2頁左欄6〜11行) b 「 そこで本発明の主たる目的は、前記の問題を解消することにあり、例え、成分の厚みが実質的に変動したとしても非常に均一な幾何学的断面形状を持つて巻き上げられたセル素子を提起し、成分が互いに整列されて巻き上げられた素子を提起し、極板のペーストを塗られた面が巻き付け中にひつかき傷がついたり、ひびが入つたり、或いは損傷を受けたりすることのない様に巻き上げられた素子を提起し、巻き付け中は適当な巻き付け圧力を維持しつつセパレータと極板とを互いにスリツプできる様にする巻き付けプロセスをとり、そして上記した条件に合致する巻き付け装置を提供することである。」(2頁右欄28〜40行) c 「 (1)セルの小組立体 電気化学セルの小組立体及びその成分が第7図及び第8図に参照番号10で一般的に示されており、そして可撓性の正電極12と負電極14と、その間に挿入される圧縮性のセパレータ部材16とを備えている。これらの成分は適当な巻き付け張力の下でゼリーロール(ら施)形状に形成され、そして尾端部材18(第7図)によつてこの相互圧縮関係に保持される。」(3頁左欄42〜右欄6行) d 「 各極板は第5図に示した形状をしていて、格子基板22を備えており、この格子基板は穴あけされた形態、伸展されたメツシユ、編まれたワイヤスクリーン、又はその他の適当な基板でよい。この基板上には酸化鉛の様な電気化学的に活性なペーストの均一層24が存在している。このペーストは格子基板の両面に表面層を形成し、そして格子基板の目25に入り込む。 この極板は離間された半径方向に整列された複数個の正の電流収集タブ26,28,30,32並びに負のタブ26’,28’,30’,及び32’をも支持している。」(3頁右欄14〜25行) e 「 (2)巻き付け装置 添付図面の第1図及び第2図を説明すれば、巻き付け機構は二重巻き付けヘツド36,38と、これら巻き付けヘツド間に配置された自由回転マンドレル40と、第1極板送り装置42と、第2極板送り装置44と、並置された巻き付けヘツド36,38の各々の連結された機械的駆動機構46とを備えており、該駆動機構46はヘツド36,38を第2図に実線で示した位置へ互いに離れる様に引つ込めたり、仮想線で示した位置へ互いに向つて移動したりすることができる。」(4頁右欄19〜29行) f 「 各巻き付けヘツドはハブに装着された上部極板52,52’と下部極板53,53’とを備えている。上部極板と下部極板との間で各ヘツドの巻き付け端に装着されているのは、1対の自由回転圧着ロール54,56及び58,60であり、これらは巻き付けヘツドの中心線を横方向にまたいでいる。上部極板と下部極板との間にはテンシヨンローラ一62,64も配置されており、そして別の自由回転ローラ(例えば59)が巻き付けヘツドの周辺に配置され、このまわりに圧着ロール54,56及び58,60に沿つて可撓性のエンドレスベルトの駆動面66,68がのせられている。こられのベルトは少なくとも1方(好ましくは両方)が駆動される駆動ローラ(ハブ48,50と同軸的に装着され、参照番号48’,50’で示すが隠れている。)によつて駆動され、そしてベルトの所望張力は巻き付けヘツドの上部極板に取り付けられたバネ偏倚調整機構74,75でもつてテンシヨンローラ62,64の位置を調整するによつて得られる。ベルトは本質的に伸びないものが好ましい。スリツプを生じることなく、ベルトを確実に駆動するためピンチロール70,72が用いられる。」(5頁左欄19〜41行) g 「 (2)巻き付け方法 巻き付けの準備中は、機械が停止されておりそして第2図に実線て示す様に巻き付けヘツド38及び36が、それらの引つ込められた位置にある。」(6頁左欄26〜30行) h 「 初めは、正極板送り装置42及び先導縁43が線119に沿つたセパレータの初期位置により定められた平面の右側まで引つ込められている。同様に、負極板送り装置44も線118の左側まで引つ込められている。単1層又は多層の形態のセパレータ材は、今やガイド110乃至117の間に挿入され、そして平面118,119に沿つて極板送り機構に対して横方向に配置されている。」(6頁左欄34〜41行) i 「 次の段階に於いては、各々の極板送り機構42,44が各々のトラツクに沿つて巻き付け領域に向つて進められ、これを行なう際にはセパレータ材よりも柔軟性のない極板の先端43及び45・・・がそれらの各々のセパレータ16を取り上げ、そして相対的なスリツプを生じることなく極板と共に、これらセパレータを運ぶ。極板送り装置42はマンドレル40の1方の側(即ち上面)に向けられ、そして他方の極板はマンドレル40の反対側に向けられる。極板の先端43,45はほぼマンドレルの端までの位置へと進められ、・・・ そして今度は、巻き付けヘツド38及び36が第3図に示した様に巻き付け準備位置にロツクされる。・・・そして巻き付けヘツドの移動しないベルト面66及び68がセパレータと、これにサンドイツチされた極板とに係合し、そしてこれらとマンドレルに圧着する様に、エアシリンダ90が作動される。 第3図に示す様に、巻き付けヘツドが位置固定された状態では、各ローラ54,56及び58,60の中間の領域にある巻き付けベルトが、それらの可撓性によつて著しい曲率を呈することになりそしてサンドイツチされた極板とセパレータに対して圧着を与える。・・・ 極板及びセパレータは、マンドレルと接線方向に接触する点まで、そして巻き付けが進むにつれてセルパツクの巻き付け体と接線方向に接触する点まで、実質的に互いに接触状態にならずにマンドレルに対して接線方向に供給される。 極板とこれに隣接して配置されたセパレータとの先端が第3図に示された様にマンドレルのまわりに形成された状態では、巻き付けベルト66及び68が駆動ローラ48’及び50’(ベルト138により駆動される)によつてカム76の回転と同期して駆動される。・・・極板及びセパレータがそれらのガイド内に自由に、且つゆるく配置され、そして巻き付けられているセルパツクに対して接線方向に実質的に直線に成分が送られる様に、これらガイドがマンドレルから徐々に離れる様に駆動回転されるので、成分は互いにら施状に巻き付けられる。」(6頁右欄3行〜7頁左欄22行) j 「 」(当審訳:第1図) k 「 」(当審訳:第2図) l 「 」(当審訳:第3図) m 「 」(当審訳:第5図) イ 引用発明及び本件発明との対比・判断 (ア)甲1を主たる引用文献とする進歩性について a 上記ア(ア)における各摘記事項、特に、図1〜2及びそれに関連した摘記事項を総合的に勘案すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。 「一側部から突出する複数のタブ部11b、12bをそれぞれ備えた帯状正極11、帯状負極12の移送をそれぞれ案内するガイドローラ31、33と、ガイドローラ31、33を通して移送される帯状正極11および帯状負極12と、帯状正極11および帯状負極12の間に介在したセパレータ13とを共に巻き取る巻き取り部材27を含む、巻き取り工程で使用される装置。」 b そこで、本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「複数のタブ部11b、12b」、「帯状正極11」、「帯状負極12」、「ガイドローラ31、33」、「セパレータ13」、「巻き取り部材27」、「巻き取り工程で使用される装置」は、それぞれ、本件発明1の「電極タップ」、「第1電極板」、「第2電極板」、「移送ローラ」、「セパレータ」、「巻取りユニット」、「極板巻取り装置」に相当する。 c そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「一側部から突出する複数の電極タップをそれぞれ備えた第1電極板および第2電極板の移送をそれぞれ案内する移送ローラと、前記移送ローラを通して移送される前記第1電極板および前記第2電極板と、前記第1電極板および前記第2電極板の間に介在したセパレータとを共に巻き取る巻取りユニットを含む極板巻取り装置。」 d 一方、本件発明1と甲1発明とは、次の点で相違する。 <相違点1> 移送ローラについて、本件発明1では、「一側端部に形成された固定領域」と「電極タップが通過するタップ通過領域」を有するのに対し、甲1発明では、固定領域とタップ通過領域を有しているか否か不明な点。 <相違点2> 本件発明1では、固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、第1ガイド部が移送ローラの一側端部のタップ通過領域の外周面から離隔されるように固定部に連結され、固定部が移送ローラの固定領域を回転可能に支持すると共に第1電極板または第2電極板によって移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、第1ガイド部と、タップ通過領域の外周面との隙間が電極タップの厚さより広い、移送ローラに進入する電極タップを一側端部のタップ通過領域の外周面と第1ガイド部との間に案内して電極タップの変形を防止する変形防止部材を有するのに対し、甲1発明では、そのような変形防止部材を有していない点。 e そこで、上記相違点について検討する。 (a)上記相違点1及び2について、上記ア(ウ)a〜fより、甲3における「円形状ローラ2」は、「棒状ローラ1」を回転可能に支持するものではなく、「棒状ローラ1」と「円形状ローラ2」との間に「極板の耳部4」を案内するものではなく、「極板の耳部4」の変形を防止するものでもないから、本件発明1の上記「変形防止部材」には相当せず、甲3における「棒状ローラ1」は、「極板の耳部4」が通過する領域を有していないから、本件発明1の上記「移送ローラ」に相当しない。 (b)上記ア(エ)a〜cより、甲4における「シュー4,4’」は、「アキシアル形電子部品」の「リード線」の伸線作業を行うものであるから、本件発明1の上記「電極タップの変形を防止する変形防止部材」には相当せず、甲4における「ローラ6,6’」は、「電極タップ」を移送していないから、本件発明1の上記「電極タップが通過するタップ通過領域」を有する「移送ローラ」に相当しない。 (c)上記ア(オ)a〜dより、甲5における「矯正板11a」は、「素子のリード線」を「矯正」するものであるから、本件発明1の上記「電極タップの変形を防止する変形防止部材」には相当せず、甲5における「矯正用ゴムローラ8」は、「電極タップ」を移送していないから、本件発明1の上記「電極タップが通過するタップ通過領域」を有する「移送ローラ」に相当しない。 (d)上記ア(カ)a〜fより、甲6における「用紙ガイド7」は、「連続紙6」を「ガイド」するものであるから、本件発明1の上記「電極タップの変形を防止する変形防止部材」には相当せず、甲6における「プラテン5」は、「電極タップ」を移送していないから、本件発明1の上記「電極タップが通過するタップ通過領域」を有する「移送ローラ」に相当しない。 (e)上記ア(キ)a〜gより、甲7における「押さえ部材200」は、「離型フィルムF12,F22から剥離するフィルム」を「押さえる」ものであるから、本件発明1の上記「電極タップの変形を防止する変形防止部材」には相当せず、甲7における「搬送ローラR1」は、光学フィルム及び離型フィルムを搬送するものであるから、本件発明1の上記「電極タップが通過するタップ通過領域」を有する「移送ローラ」に相当しない。 (f)上記ア(ク)a〜cより、甲8における「シュー2、2’」は、「リード線を圧し伸ばす」ものであるから、本件発明1の上記「電極タップの変形を防止する変形防止部材」には相当せず、甲8における「ローラー1、1’」は、リード線を移送するものであるから、本件発明1の上記「電極タップが通過するタップ通過領域」を有する「移送ローラ」に相当しない。 (g)上記ア(ケ)a〜cより、甲9における「倒し装置21」は、「リード線r2を倒す」ものであるから、本件発明1の上記「電極タップの変形を防止する変形防止部材」には相当せず、甲9における「ホーミング用ホイール5」は、リード線r2を移送するものであるから、本件発明1の上記「電極タップが通過するタップ通過領域」を有する「移送ローラ」に相当しない。 (h)上記ア(コ)a〜oより、甲11における「ワインディングロール(500)」は、「電極シート」を「巻取」する(ワインディングする)ものであり、移送するものではないから、本件発明1の上記「移送ローラ」に相当しない。 (i)上記ア(サ)a〜fより、甲12における「上巻き込み部6、下巻き込み部2で形成」された空間の内側面は、電極タップの変形を防止するものではないから、本件発明1の上記「電極タップの変形を防止する変形防止部材」には相当せず、甲12における「加圧ローラ11」は、陽極板4、陰極板13、セパレータ15を加圧するものであって移送するものではなく、「捲回軸5」は、陽極板4、陰極板13、セパレータ15を巻上げるものであって移送するものではないから、いずれも、本件発明1の上記「移送ローラ」に相当せず、さらに、甲12における「ガイドローラ12」は、電極タップの通過領域を有しているか甲12に記載がなく不明であるから、本件発明1の上記「電極タップが通過するタップ通過領域」を有する「移送ローラ」に相当するとは認められない。 (j)上記ア(シ)a〜mより、甲13における「上部極板52」及び「下部極板53」は、電極タップに相当する「正の電流収集タブ26,28,30,32」や「負のタブ26’,28’,30’,及び32’」の変形を防止するか否か甲13に記載がなく不明であるから、本件発明1の上記「電極タップの変形を防止する変形防止部材」に相当するとは認められず、甲13における「エンドレスベルトの駆動面66,68」、「圧着ロール54,56及び58,60」、及び「駆動ローラ」は、いずれも、極板を移送するものではないから、本件発明1の上記「移送ローラ」に相当しない。 (k)したがって、上記(a)〜(j)から、甲3〜9、11〜13の記載事項からでは、本件発明1の「一側端部に形成された固定領域と電極タップが通過するタップ通過領域」を有する「移送ローラ」及び「固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、第1ガイド部が移送ローラの一側端部のタップ通過領域の外周面から離隔されるように固定部に連結され、固定部が移送ローラの固定領域を回転可能に支持すると共に第1電極板または第2電極板によって移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、第1ガイド部と、タップ通過領域の外周面との隙間が電極タップの厚さより広い、移送ローラに進入する電極タップを一側端部のタップ通過領域の外周面と第1ガイド部との間に案内して電極タップの変形を防止する変形防止部材」を設けることが、周知技術であったとはいえない。 (l)また、仮に、本件発明1の上記「移送ローラ」及び上記「変形防止部材」が周知の事項であったとしても、以下の理由で、甲1発明に上記周知の事項を適用することは当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (m)上記第2の2(4)イ(ア)〜(ウ)、(オ)〜(キ)、(コ)〜(サ)から、本件発明において、移送ローラに「一側端部に形成された固定領域」と「電極タップが通過するタップ通過領域」を設け、前記固定領域に上記「変形防止部材」を取り付ける技術的意義は、電極板が移送ローラを通過する際に発生する電極タップの、重力による垂れや、基材の揺動、遠心力または慣性によって一部が浮き上がって折れる変形(タップの折れ現象)を防止し、電極板をより安定的に走行させることであると認められる。 (n)これに対し、甲1発明の課題は、上記ア(ア)aに摘記されているように、タブ部の形成が容易な巻回型や積層型の電極体を提供することであり、タブ部の変形の防止について検討するものではない。そして、甲1には、タブ部の変形の防止について検討することを示唆する記載も認められない。 (o)そうすると、甲1発明において、移送ローラに、上記固定領域及びタップ通過領域を設け、上記固定領域に上記変形防止部材を取り付ける積極的な動機付けは見いだせない。 (p)そして、上記アより、甲3〜9、11〜13にも、タブ部の変形の防止について記載乃至示唆されていないため、上記固定領域に上記変形防止部材を取り付ける積極的な動機付けは見いだせない。 (q)したがって、移送ローラに上記固定領域及びタップ通過領域を設け、上記固定領域に上記変形防止部材を取り付ける動機がない甲1、3〜9、11〜13に記載された事項からでは、甲1発明において、上記固定領域及びタップ通過領域を設けることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (r)加えて、本件発明1は、移送ローラに上記固定領域及びタップ通過領域を設け、上記固定領域に変形防止部材を取り付けるという、上記相違点1及び2の構成を備えることによって、「電極板が移送ローラを通過する際に発生する電極タップの、重力による垂れや、基材の揺動、遠心力または慣性によって一部が浮き上がって折れる変形(タップの折れ現象)を防止し、電極板をより安定的に走行させる」との格別な効果を奏するものである。 f 以上を総合すると、上記相違点1及び2に係る発明特定事項を備えた本件発明1は、甲1発明及び甲3〜9、11〜13の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 g また、本件発明2〜15は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1をさらに減縮したものであるから、本件発明1において、上記eで判断したのと同様の理由によって、甲1発明及び甲3〜9、11〜13の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (イ)甲2を主たる引用文献とする進歩性について a 上記ア(イ)における各摘記事項、特に、図1及びそれに関連した摘記事項を総合的に勘案すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲2発明」という。)。 「負極タブ及び正極タブをそれぞれ備えた負極シート16及び正極シート24の移送をそれぞれ案内する搬送ローラ48及び搬送ローラ66と、搬送ローラ48及び搬送ローラ66を通して移送される負極シート16及び正極シート24と、負極シート16及び正極シート24に介装された第1および第2セパレータ28、30とを共に巻き取る巻き込み部18を含む、電池巻回機12。」 b そこで、本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「負極タブ及び正極タブ」、「負極シート16」、「正極シート24」、「搬送ローラ48及び搬送ローラ66」、「第1および第2セパレータ28、30」、「巻き込み部18」、「電池巻回機12」は、それぞれ、本件発明1の「電極タップ」、「第1電極板」、「第2電極板」、「移送ローラ」、「セパレータ」、「巻取りユニット」、「極板巻取り装置」に相当する。 c また、通常、巻回型の電池においては、負極タブ及び正極タブは、それぞれ、電極シートの一側部から突出する形状をとり、複数設けられるから、甲2発明においても「負極タブ及び正極タブ」は、それぞれ、「一側部から突出」し、「複数」存在すると認められる。 d そうすると、本件発明1と甲2発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「一側部から突出する複数の電極タップをそれぞれ備えた第1電極板および第2電極板の移送をそれぞれ案内する移送ローラと、前記移送ローラを通して移送される前記第1電極板および前記第2電極板と、前記第1電極板および前記第2電極板の間に介在したセパレータとを共に巻き取る巻取りユニットを含む極板巻取り装置。」 e 一方、本件発明1と甲2発明とは、次の点で相違する。 <相違点3> 移送ローラについて、本件発明1では、「一側端部に形成された固定領域」と「電極タップが通過するタップ通過領域」を有するのに対し、甲2発明では、固定領域とタップ通過領域を有しているか否か不明な点。 <相違点4> 本件発明1では、固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、第1ガイド部が移送ローラの一側端部のタップ通過領域の外周面から離隔されるように固定部に連結され、固定部が移送ローラの固定領域を回転可能に支持すると共に第1電極板または第2電極板によって移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、第1ガイド部と、タップ通過領域の外周面との隙間が電極タップの厚さより広い、移送ローラに進入する電極タップを一側端部のタップ通過領域の外周面と第1ガイド部との間に案内して電極タップの変形を防止する変形防止部材を有するのに対し、甲2発明では、そのような変形防止部材を有していない点。 f 以下、上記相違点について検討する。 (a)上記相違点3及び4について、上記イ(ア)e(a)〜(j)より、甲3〜9、11〜13の記載事項からでは、本件発明1の、「一側端部に形成された固定領域と電極タップが通過するタップ通過領域」を有する移送ローラ」、及び「固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、第1ガイド部が移送ローラの一側端部のタップ通過領域の外周面から離隔されるように固定部に連結され、固定部が移送ローラの固定領域を回転可能に支持すると共に第1電極板または第2電極板によって移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、第1ガイド部と、タップ通過領域の外周面との隙間が電極タップの厚さより広い、移送ローラに進入する電極タップを一側端部のタップ通過領域の外周面と第1ガイド部との間に案内して電極タップの変形を防止する変形防止部材」を設けることが、周知技術であったとはいえない。 (b)また、仮に、本件発明1の上記「移送ローラ」及び上記「変形防止部材」が周知の事項であったとしても、以下の理由で、甲2発明に上記周知の事項を適用することは当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (c)上記第2の2(4)イ(ア)〜(ウ)、(オ)〜(キ)、(コ)〜(サ)から、本件発明において、移送ローラに「一側端部に形成された固定領域」と「電極タップが通過するタップ通過領域」を設け、前記固定領域に上記「変形防止部材」を取り付ける技術的意義は、電極板が移送ローラを通過する際に発生する電極タップの、重力による垂れや、基材の揺動、遠心力または慣性によって一部が浮き上がって折れる変形(タップの折れ現象)を防止し、電極板をより安定的に走行させることであると認められる。 (d)これに対し、甲2発明の課題は、上記ア(イ)aに摘記されているように、電極シートの塗布部と未塗布部の境界部位を容易かつ正確に検出することができ、前記電極シートの位置決め停止作業を安定して行うことが可能な電池巻回機の電極シート位置決め装置を提供することであり、タブの変形の防止について検討するものではない。そして、甲2には、タブの変形の防止について検討することを示唆する記載も認められない。 (e)そうすると、甲2発明において、移送ローラに、上記固定領域及びタップ通過領域を設け、上記固定領域に上記変形防止部材を取り付ける積極的な動機付けは見いだせない。 (f)そして、上記アより、甲3〜9、11〜13にも、タブの変形の防止について記載乃至示唆されていないため、上記固定領域に上記変形防止部材を取り付ける積極的な動機付けは見いだせない。 (g)したがって、移送ローラに上記固定領域及びタップ通過領域を設け、上記固定領域に上記変形防止部材を取り付ける動機がない甲2〜9、11〜13に記載された事項からでは、甲2発明において、上記格別な効果を奏するように、上記固定領域及びタップ通過領域を設けることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (h)加えて、本件発明1は、移送ローラに上記固定領域及びタップ通過領域を設け、上記固定領域に変形防止部材を取り付けるという上記相違点3及び4の構成を備えることによって、「電極板が移送ローラを通過する際に発生する電極タップの、重力による垂れや、基材の揺動、遠心力または慣性によって一部が浮き上がって折れる変形(タップの折れ現象)を防止し、電極板をより安定的に走行させる」との格別な効果を奏するものである。 g 以上を総合すると、上記相違点3及び4に係る発明特定事項を備えた本件発明1は、甲2発明及び甲3〜9、11〜13の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 h また、本件発明2〜15は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1をさらに減縮したものであるから、本件発明1において、上記fで判断したのと同様の理由によって、甲2発明及び甲3〜9、11〜13の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)甲11を主たる引用文献とする進歩性について a 上記ア(コ)における各摘記事項、特に、図2〜3及びそれに関連した摘記事項を総合的に勘案すると、甲11には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲11発明」という。)。 「タップが形成された電極シートと、ワインディングロール(500)と、ワインディングロール(500)に装着され、ノッチング工程(300)を実行した後ワインディングロール(500)に巻取するリワインディング工程で、自重によって生地を加圧し、前記タップが折れることを防止するタップガイド部を有するローラー(140)を含むガイドロール装置を含む巻取装置。」 b そこで、本件発明1と甲11発明とを対比すると、甲11発明の「タップ」、「電極シート」、「巻取装置」は、それぞれ、本件発明1の「電極タップ」、「第1電極板」又は「第2電極板」、「極板巻取り装置」に相当する。 c ここで、通常、巻回型の電池においては、タップは、それぞれ、電極シートの一側部から突出する形状をとり、複数設けられるから、甲11発明においても「タップ」は、それぞれ、「一側部から突出」し、「複数」存在すると認められる。 d また、上記ア(コ)a〜oより、甲11における「ワインディングロール(500)」は、「電極シート」を「巻取」する(ワインディングする)ものであり、移送するものではないから、本件発明1の上記「移送ローラ」に相当しない。 e そうすると、本件発明1と甲11発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「極板巻取り装置。」 f 一方、本件発明1と甲11発明とは、次の点で相違する。 <相違点5> 本件発明1では、一側部から突出する複数の電極タップをそれぞれ備えた第1電極板および第2電極板の移送をそれぞれ案内する移送ローラであって、一側端部に形成された固定領域と前記電極タップが通過するタップ通過領域を有する移送ローラを有するのに対し、甲11発明では、そのような移送ローラを有していない点。 <相違点6> 本件発明1では、固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、第1ガイド部が移送ローラの一側端部のタップ通過領域の外周面から離隔されるように固定部に連結され、固定部が移送ローラの固定領域を回転可能に支持すると共に第1電極板または第2電極板によって移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、第1ガイド部と、タップ通過領域の外周面との隙間が電極タップの厚さより広い、移送ローラに進入する電極タップを一側端部のタップ通過領域の外周面と第1ガイド部との間に案内して電極タップの変形を防止する変形防止部材を有するのに対し、甲11発明では、前記変形防止部材を有していない点。 <相違点7> 本件発明1では、移送ローラを通して移送される第1電極板および第2電極板と、第1電極板および第2電極板の間に介在したセパレータとを共に巻き取る巻取りユニットを有するのに対し、甲11発明では、前記巻取りユニットを有していない点。 g 以下、上記相違点について検討する。 (a)上記相違点5及び6について、上記イ(ア)e(a)〜(j)より、甲4〜9、12〜13の記載事項からでは、本件発明1の、「一側端部に形成された固定領域と電極タップが通過するタップ通過領域」を有する移送ローラ」、及び「固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、第1ガイド部が移送ローラの一側端部のタップ通過領域の外周面から離隔されるように固定部に連結され、固定部が移送ローラの固定領域を回転可能に支持すると共に第1電極板または第2電極板によって移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、第1ガイド部と、タップ通過領域の外周面との隙間が電極タップの厚さより広い、移送ローラに進入する電極タップを一側端部のタップ通過領域の外周面と第1ガイド部との間に案内して電極タップの変形を防止する変形防止部材」を設けることが、周知技術であったとはいえない。 (b)また、仮に、本件発明1の上記「移送ローラ」及び上記「変形防止部材」が周知の事項であったとしても、以下の理由で、甲11発明に上記周知の事項を適用することは当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (c)上記第2の2(4)イ(ア)〜(ウ)、(オ)〜(キ)、(コ)〜(サ)から、本件発明において、移送ローラに「一側端部に形成された固定領域」と「電極タップが通過するタップ通過領域」を設け、前記固定領域に上記「変形防止部材」を取り付ける技術的意義は、電極板が移送ローラを通過する際に発生する電極タップの、重力による垂れや、基材の揺動、遠心力または慣性によって一部が浮き上がって折れる変形(タップの折れ現象)を防止し、電極板をより安定的に走行させることであると認められる。 (d)これに対し、甲11発明の課題は、上記ア(コ)a〜bに摘記されているように、ノッチングによってタップが形成された電極シートをローラーによってリワインディングするリワインディング工程で、自重によって生地を加圧するローラーによって生地の間に生地の間に空気が捕獲されるか生地の蛇行を防止することで、リワインディングされる生地の品質を均一化することであり、上記変形について検討するものではない。そして、甲11には、タップの変形の防止について検討することを示唆する記載も認められない。 (e)そうすると、甲11発明において、上記移送ローラ及び上記変形防止部材を取り付ける積極的な動機付けは見いだせない。 (f)そして、上記アより、甲4〜9、12〜13にも、タップの変形の防止について記載乃至示唆されていないため、上記移送ローラ及び上記変形防止部材を取り付ける積極的な動機付けは見いだせない。 (g)したがって、上記移送ローラ及び上記変形防止部材を取り付ける動機がない甲4〜9、11〜13に記載された事項からでは、甲11発明において、上記固定領域及びタップ通過領域を設けることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (h)そして、本件発明1は、移送ローラに上記固定領域及びタップ通過領域を設け、上記固定領域に変形防止部材を取り付けるという、上記相違点5及び6の構成を備えることによって、「電極板が移送ローラを通過する際に発生する電極タップの、重力による垂れや、基材の揺動、遠心力または慣性によって一部が浮き上がって折れる変形(タップの折れ現象)を防止し、電極板をより安定的に走行させる」との格別な効果を奏するものである。 (i)上記相違点7について、上記(d)で指摘したように、甲11発明の課題は、ノッチングによってタップが形成された電極シートをローラーによってリワインディングするリワインディング工程で、自重によって生地を加圧するローラーによって生地の間に生地の間に空気が捕獲されるか生地の蛇行を防止することで、リワインディングされる生地の品質を均一化することであるから、甲11発明は、タップが形成された電極シートのみを巻き取るためのものであって、電極とセパレータとを共に巻き取るためのものではないといえる。 (j)そうすると、甲11発明において、移送ローラを通して移送される第1電極板および第2電極板と、第1電極板および第2電極板の間に介在したセパレータとを共に巻き取る巻取りユニットを設けると、タップが形成された電極シートのみを巻き取ることを阻害することになるといえる。 (k)したがって、甲11発明において、上記巻取りユニットを設けることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。 h 以上を総合すると、上記相違点5〜7に係る発明特定事項を備えた本件発明1は、甲11発明及び甲4〜9、12〜13の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 i また、本件発明2〜15は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1をさらに減縮したものであるから、本件発明1において、上記gで判断したのと同様の理由によって、甲11発明及び甲4〜9、12〜13の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (エ)甲12を主たる引用文献とする進歩性について a 上記ア(サ)における各摘記事項、特に、第3〜第5図及びそれに関連した摘記事項を総合的に勘案すると、甲12には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲12発明」という。)。 「帯状の陽極板4及び陰極板13と、セパレータ15と、上巻き込み部6、下巻き込み部2、捲回軸5、加圧ローラ11、及びガイドローラ12から構成される渦巻状捲回群16の巻上げ部材とを含む、渦巻状捲回群16の製造装置。」 b そこで、本件発明1と甲12発明とを対比すると、甲12発明の「帯状の陽極板4」、「陰極板13」、「セパレータ15」、「渦巻状捲回群16の巻上げ部材」は、それぞれ、本件発明1の「第1電極板」、「第2電極板」、「セパレータ」、「巻取りユニット」に相当する。 c ここで、上記ア(サ)cから、甲12発明における「帯状の陽極板4」には、一側部から突出する形状の電極タップが形成されていることが理解される。そして、通常、巻回型の電池においては、電極タップは、陽極板および陰極板のそれぞれに、複数設けられる。したがって、上記ア(サ)cから、甲12発明における「帯状の陽極板4」と「陰極板13」のそれぞれには、「一側部から突出する複数の電極タップ」が形成されていると認められる。 d 一方、甲12発明における「上巻き込み部6、下巻き込み部2で形成」された空間の内側面は、電極タップの変形を防止するものではないから、本件発明1の上記「電極タップの変形を防止する変形防止部材」には相当しない。 e また、甲12発明における「加圧ローラ11」は、陽極板4、陰極板13、セパレータ15を加圧するものであって移送するものではなく、「捲回軸5」は、陽極板4、陰極板13、セパレータ15を巻上げるものであって移送するものではないから、いずれも、本件発明1の上記「移送ローラ」に相当しない。 f さらに、甲12発明における「ガイドローラ12」は、電極タップの通過領域を有しているか甲12に記載がなく不明であるから、本件発明1の上記「電極タップが通過するタップ通過領域」を有する「移送ローラ」に相当するとは認められない。 g そうすると、本件発明1と甲12発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「第1電極板および第2電極板の間に介在したセパレータとを共に巻き取る巻取りユニットを含む、極板巻取り装置。」 h 一方、本件発明1と甲12発明とは、次の点で相違する。 <相違点8> 本件発明1では、一側部から突出する複数の電極タップをそれぞれ備えた第1電極板および第2電極板の移送をそれぞれ案内する移送ローラであって、一側端部に形成された固定領域と前記電極タップが通過するタップ通過領域を有する移送ローラを有するのに対し、甲12発明では、前記移送ローラを有していない点。 <相違点9> 本件発明1では、固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、第1ガイド部が移送ローラの一側端部のタップ通過領域の外周面から離隔されるように固定部に連結され、固定部が移送ローラの固定領域を回転可能に支持すると共に第1電極板または第2電極板によって移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、第1ガイド部と、タップ通過領域の外周面との隙間が電極タップの厚さより広い、移送ローラに進入する電極タップを一側端部のタップ通過領域の外周面と第1ガイド部との間に案内して電極タップの変形を防止する変形防止部材を有するのに対し、甲12発明では、前記変形防止部材を有していない点。 i 以下、上記相違点について検討する。 (a)上記相違点8及び9について、上記イ(ア)e(a)〜(j)より、甲4〜9、11、13の記載事項からでは、本件発明1の、「一側端部に形成された固定領域と電極タップが通過するタップ通過領域」を有する移送ローラ」、及び「固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、第1ガイド部が移送ローラの一側端部のタップ通過領域の外周面から離隔されるように固定部に連結され、固定部が移送ローラの固定領域を回転可能に支持すると共に第1電極板または第2電極板によって移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、第1ガイド部と、タップ通過領域の外周面との隙間が電極タップの厚さより広い、移送ローラに進入する電極タップを一側端部のタップ通過領域の外周面と第1ガイド部との間に案内して電極タップの変形を防止する変形防止部材」を設けることが、周知技術であったとはいえない。 (b)また、仮に、本件発明1の上記「移送ローラ」及び上記「変形防止部材」が周知の事項であったとしても、以下の理由で、甲12発明に上記周知の事項を適用することは当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (c)上記第2の2(4)イ(ア)〜(ウ)、(オ)〜(キ)、(コ)〜(サ)から、本件発明において、移送ローラに「一側端部に形成された固定領域」と「電極タップが通過するタップ通過領域」を設け、前記固定領域に上記「変形防止部材」を取り付ける技術的意義は、電極板が移送ローラを通過する際に発生する電極タップの、重力による垂れや、基材の揺動、遠心力または慣性によって一部が浮き上がって折れる変形(タップの折れ現象)を防止し、電極板をより安定的に走行させることであると認められる。 (d)これに対し、甲12には、電極タップの変形の防止について検討することを示唆する記載が認められない。 (e)そうすると、甲12発明において、上記移送ローラ及び上記変形防止部材を取り付ける積極的な動機付けは見いだせない。 (f)そして、上記アより、甲4〜9、11、13にも、電極タップの変形の防止について記載乃至示唆されていないため、上記移送ローラ及び上記変形防止部材を取り付ける積極的な動機付けは見いだせない。 (g)したがって、上記移送ローラ及び上記変形防止部材を取り付ける動機がない甲4〜9、11〜13に記載された事項からでは、甲12発明において、上記固定領域及びタップ通過領域を設けることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (h)加えて、本件発明1は、移送ローラに上記固定領域及びタップ通過領域を設け、上記固定領域に変形防止部材を取り付けるという、上記相違点8及び9の構成を備えることによって、「電極板が移送ローラを通過する際に発生する電極タップの、重力による垂れや、基材の揺動、遠心力または慣性によって一部が浮き上がって折れる変形(タップの折れ現象)を防止し、電極板をより安定的に走行させる」との格別な効果を奏するものである。 j 以上を総合すると、上記相違点8及び9に係る発明特定事項を備えた本件発明1は、甲12発明及び甲4〜9、11、13の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 k また、本件発明2〜15は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1をさらに減縮したものであるから、本件発明1において、上記iで判断したのと同様の理由によって、甲12発明及び甲4〜9、11、13の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (オ)甲13を主たる引用文献とする進歩性について a 上記ア(シ)における各摘記事項、特に、図1〜3及びそれに関連した摘記事項を総合的に勘案すると、甲13には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲13発明」という。)。 「一側部から突出する複数の正の電流収集タブ26,28,30,32並びに負のタブ26’,28’,30’,及び32’をそれぞれ備えた正電極12および負電極14と、上部極板52及び下部極板53と、エンドレスベルトの駆動面66,68と、圧着ロール54,56及び58,60と、駆動ローラ48’,50’と、セパレータ部材16と、正電極12および負電極14と、正電極12および負電極14の間に介在したセパレータ部材16とを共に巻き取るマンドレル40を含む巻き付け装置。」 b そこで、本件発明1と甲13発明とを対比すると、甲13発明の「正の電流収集タブ26,28,30,32並びに負のタブ26’,28’,30’,及び32’」、「正電極12」、「負電極14」、「セパレータ部材16」、「マンドレル40」は、それぞれ、本件発明1の「電極タップ」、「第1電極板」、「第2電極板」、「セパレータ」、「巻取りユニット」に相当する。 c 一方、甲13発明における「上部極板52」及び「下部極板53」は、電極タップに相当する「正の電流収集タブ26,28,30,32」や「負のタブ26’,28’,30’,及び32’」の変形を防止するか否か甲13に記載がなく不明であるから、本件発明1の上記「電極タップの変形を防止する変形防止部材」に相当するとは認められない。 d また、甲13発明における「エンドレスベルトの駆動面66,68」、「圧着ロール54,56及び58,60」、及び「駆動ローラ48’,50’」は、いずれも、極板を移送するものではないから、本件発明1の上記「移送ローラ」に相当しない。 e そうすると、本件発明1と甲13発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「第1電極板および第2電極板の間に介在したセパレータとを共に巻き取る巻取りユニットを含む、極板巻取り装置。」 f 一方、本件発明1と甲13発明とは、次の点で相違する。 <相違点10> 本件発明1では、一側部から突出する複数の電極タップをそれぞれ備えた第1電極板および第2電極板の移送をそれぞれ案内する移送ローラであって、一側端部に形成された固定領域と前記電極タップが通過するタップ通過領域を有する移送ローラを有するのに対し、甲13発明では、前記移送ローラを有していない点。 <相違点11> 本件発明1では、固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、第1ガイド部が移送ローラの一側端部のタップ通過領域の外周面から離隔されるように固定部に連結され、固定部が移送ローラの固定領域を回転可能に支持すると共に第1電極板または第2電極板によって移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、第1ガイド部と、タップ通過領域の外周面との隙間が電極タップの厚さより広い、移送ローラに進入する電極タップを一側端部のタップ通過領域の外周面と第1ガイド部との間に案内して電極タップの変形を防止する変形防止部材を有するのに対し、甲13発明では、前記変形防止部材を有していない点。 g 以下、上記相違点について検討する。 (a)上記相違点10及び11について、上記イ(ア)e(a)〜(j)より、甲4〜9、11〜12の記載事項からでは、本件発明1の、「一側端部に形成された固定領域と電極タップが通過するタップ通過領域」を有する移送ローラ」、及び「固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、第1ガイド部が移送ローラの一側端部のタップ通過領域の外周面から離隔されるように固定部に連結され、固定部が移送ローラの固定領域を回転可能に支持すると共に第1電極板または第2電極板によって移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、第1ガイド部と、タップ通過領域の外周面との隙間が電極タップの厚さより広い、移送ローラに進入する電極タップを一側端部のタップ通過領域の外周面と第1ガイド部との間に案内して電極タップの変形を防止する変形防止部材」を設けることが、周知技術であったとはいえない。 (b)また、仮に、本件発明1の上記「移送ローラ」及び上記「変形防止部材」が周知の事項であったとしても、以下の理由で、甲13発明に上記周知の事項を適用することは当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (c)上記第2の2(4)イ(ア)〜(ウ)、(オ)〜(キ)、(コ)〜(サ)から、本件発明において、移送ローラに「一側端部に形成された固定領域」と「電極タップが通過するタップ通過領域」を設け、前記固定領域に上記「変形防止部材」を取り付ける技術的意義は、電極板が移送ローラを通過する際に発生する電極タップの、重力による垂れや、基材の揺動、遠心力または慣性によって一部が浮き上がって折れる変形(タップの折れ現象)を防止し、電極板をより安定的に走行させることであると認められる。 (d)これに対し、上記ア(シ)bから、甲13発明の課題は、成分の厚みが実質的に変動したとしても非常に均一な幾何学的断面形状を持つて巻き上げられたセル素子を提起し、成分が互いに整列されて巻き上げられた素子を提起し、極板のペーストを塗られた面が巻き付け中にひつかき傷がついたり、ひびが入つたり、或いは損傷を受けたりすることのない様に巻き上げられた素子を提起し、巻き付け中は適当な巻き付け圧力を維持しつつセパレータと極板とを互いにスリツプできる様にする巻き付けプロセスをとることであり、タブの変形の防止について検討するものではない。そして、甲13には、タブの変形の防止について検討することを示唆する記載も認められない。 (e)そうすると、甲13発明において、上記移送ローラ及び上記変形防止部材を取り付ける積極的な動機付けは見いだせない。 (f)そして、上記アより、甲4〜9、11〜12にも、上記変形について検討することについて記載乃至示唆されていないため、上記移送ローラ及び上記変形防止部材を取り付ける積極的な動機付けは見いだせない。 (g)したがって、上記移送ローラ及び上記変形防止部材を取り付ける動機がない甲4〜9、11〜13に記載された事項からでは、甲13発明において、上記格別な効果を奏するように、上記固定領域及びタップ通過領域を設けることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (h)加えて、本件発明1は、移送ローラに上記固定領域及びタップ通過領域を設け、上記固定領域に変形防止部材を取り付けるという、上記相違点10及び11の構成を備えることによって、「電極板が移送ローラを通過する際に発生する電極タップの、重力による垂れや、基材の揺動、遠心力または慣性によって一部が浮き上がって折れる変形(タップの折れ現象)を防止し、電極板をより安定的に走行させる」との格別な効果を奏するものである。 h 以上を総合すると、上記相違点10及び11に係る発明特定事項を備えた本件発明1は、甲13発明及び甲4〜9、11〜12の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 i また、本件発明2〜15は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1をさらに減縮したものであるから、本件発明1において、上記gで判断したのと同様の理由によって、甲13発明及び甲4〜9、11、13の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、申立理由1(進歩性)について、本件特許の請求項1〜15に係る特許は、特許第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえず、同法113条第2号に該当しないものであるため、取り消すことはできない。 (7)申立理由2(拡大先願)(取消理由として不採用)について ア 先願当初明細書等の記載 平成28年 1月14日に出願公開(特開2016−006765号)がされた出願(特願2015−101733号)(以下、「先願」という。)である甲10の、願書の最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。 なお、各項目において、摘記した記載の後に、括弧書きで、パリ条約による優先権主張の基礎となる、平成26年 5月22日に出願された韓国特許出願10−2014−0061738号の願書に添付された明細書又は図面の対応箇所も摘記する。 (ア)「 【0006】 ここで、前記ゼリー・ロール(電極ロール)は、陰極極板を先ず巻き、その上に分離膜、分離膜上に陽極極板が巻かれ、最上部に陽極が分離膜を挟んで陰極を囲み、分離膜が表面に位置し、分離膜が最終仕上げられて、ゼリー・ロールが完成する。」 ( ) (イ)「 【0012】 図3のように、電極板20において、電極部分の一部を取り外し除去して電極21を形成し、図4のように、陽極(+)と陰極(?)を同じ方向に構成されるように電池ロールを巻き取る。」 ( ) (ウ)「 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0017】 本発明では、一方向に電極をまとめて構成することができるように、電極の一定部分を除去して電極が構成された電極板を移送するための移送装置に関し、移送ローラーの外面で電極の移動位置にガイドローラーを構成して、電極の移送において破損が防止できるようにした電気自動車用2次電池の電極板巻取移送装置を提供する。」 ( ) (エ)「 【課題を解決するための手段】 【0018】 本発明の電気自動車用2次電池の電極板巻取移送装置は、電極板を移送させるための移送ローラーと、本体パネルに設置固定して移送ローラーに結合して移送ローラーの固定及び回転軸として構成され、移送ローラーの前端でガイド固定部を結合固定させるための固定軸部と、固定軸部に結合固定し、ガイドローラーを固定させるためのガイド固定部と、ガイド固定部に結合固定し、移送ローラーの外面に位置して移送ローラーを経由する電極板500によって回転しながら電極板の電極をガイドするガイドローラーとを含んで構成されることを特徴とする。」 ( ) (オ)「 【発明の効果】 【0020】 このような本発明によると、一方向に電極が構成された電極ロールの製作において、電極部分が移送される時に、ガイドローラーによって電極を案内して移送することで、移送ローラーによって電極が移送する時の破損を防止することができる。」 ( ) (カ)「 【0022】 本発明の電気自動車用2次電池の電極板巻取移送装置を添付の図5乃至図12に示した実施例を参照して説明すると、以下の通りである。」 ( ) (キ)「 【0023】 電極板500を移送させるための移送ローラー100と、本体パネル600に設置固定して移送ローラー100に結合して移送ローラー100の固定及び回転軸として構成され、移送ローラー100の前端でガイド固定部200を結合固定させるための固定軸部300と、固定軸部300に結合固定し、ガイドローラー400を固定させるためのガイド固定部200と、ガイド固定部200に結合固定し、移送ローラー100の外面に位置して移送ローラー100を経由する電極板500によって回転しながら電極板500の電極501をガイドするガイドローラー400とを含んで構成される。」 ( ) (ク)「 【0024】 前記固定軸部300は、本体パネル600に固定手段310によって設置固定され、移送ローラー100が結合する移送ローラー結合部301が構成され、移送ローラー結合部301の前後端では移送ローラー100と移送ローラー結合部301との間にベアリング320が結合して、移送ローラー100が移送ローラー結合部301を軸として回転する構造で結合し、移送ローラー100が結合した移送ローラー結合部301の前端には、固定軸300を固定させる固定リング330が結合する固定リング結合部301aが構成され、移送ローラー結合部301の末端には、ガイド固定部200が結合するガイドローラー固定結合部302が構成される。」 ( ) (ケ)「 【0025】 前記ガイド固定部200は、ガイド固定結合部302に結合し、固定手段210によって固定するように構成された固定軸結合部201と、ガイドローラー400が結合固定するガイドローラー固定部202とを含んで構成される。」 ( ) (コ)「 【0029】 そして、前記移送ローラー100の外周面に沿って弾性リング結合溝が形成され、弾性リング結合溝に弾性リング110が結合し、前記ガイドローラー400と接触して、移送ローラー100とガイドローラー400との間の間隔を形成して、電極板500の電極501が曲がることなく通過されるようにする。」 ( ) (サ)「 【0030】 即ち、移送ローラー100の回転によって電極501がガイドローラー400内に進入する時に移動する電極501によって、ガイドローラー400が負荷なく回転し、電極501を安全に通過させることができる。」 ( ) (シ)「 【0031】 前記ガイドローラー400と移送ローラー100との間隔は、0.5mmで構成される。」 ( ) (ス)「 【0044】 前記固定部430を外部方向に傾斜面を置いて形成して、最初の電極板500を挟む時に便利に構成する。」 ( ) (セ)「 【0054】 図10及び図11に示すように、移送ローラー100の各位置にガイドローラー400が設置され、移送ローラー100の回転及び移送する経路に沿って電極501を取るので、電極501の裂けを防止することができる。 これを勘案すると、移送ローラー100の曲律及び設置された位置によって電極板500の電極に力を受ける位置が変わる。従って、その位置を考慮してガイドローラー400を設置すれば、電極501が破損することなく移送ローラー100を安全に通過することができる。」 ( ) (タ)「 【図3】 」 ( ) (チ)「 」 ( ) (ツ)「 」 ( ) (テ)「 」 ( ) (ト)「 」 ( ) (ナ)「 」 ( ) イ 拡大先願について (ア)上記ア、特に、図3、5、7〜8、10〜12及びそれに関連した摘記事項、及び(コ)〜(シ)の摘記事項を総合的に勘案すると、先願当初明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。 「一側部から突出する複数の電極21(501)をそれぞれ備えた陽極又は陰極の電極板20(500)の移送を案内する移送ローラー100と、固定軸部300、ガイド固定部200、及びガイドローラー400を含み、移送ローラー100とガイドローラー400との間の間隔が、電極板500の電極501が曲がることなく安全に通過できる程度のものであり、その為の間隔が0.5mmである、電極板巻取移送装置。」 (イ)そこで、本件発明1と先願発明とを対比する。 a 先願発明の「電極21(501)」、「陽極又は陰極の電極板20(500)」、「移送ローラー100」は、それぞれ、本件発明1の「電極タップ」、「第1電極板」又は「第2電極板」、「移送ローラ」に相当する。 b 先願発明における「固定軸部300、ガイド固定部200、及びガイドローラー400と備える部材」について、 (a)「固定軸部300」は、上記ア(キ)〜(ク)より、その一部である移送ローラ結合部301において、移送ローラー100とベアリング320で結合し、移送ローラー100が移送ローラー結合部301を軸として回転できる構造となっており、かつ、本体パネルに設置固定されるものであるから、移送ローラー100を回転可能に支持すると共に電極板500によって移送ローラ100の回転軸の周りを回転しないように構成されたものであると認められる。 (b)「ガイド固定部200」は、上記ア(キ)より、固定軸部300とガイドローラー400の両方を固定するものであると認められる。 (c)「ガイドローラー400」は、上記ア(ケ)〜(シ)より、ガイド固定部200のガイドローラー固定部202と結合固定(連結)し、移送ローラー100から0.5mmの間隔を形成し、電極板500の電極501が曲がることなく(変形を防止しつつ)通過されるようにするものであるから、移送ローラー100の外周面から離隔されるようにガイド固定部200に連結され、電極板500の電極501を移送ローラー100とガイドローラー400との間に案内して、電極板500の電極501の変形を防止するものであると認められる。 (d)そうすると、先願発明の「固定軸部300」及び「ガイド固定部200」は、本件発明1の「移送ローラ」を「回転可能に支持すると共に前記第1電極板または前記第2電極板によって前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成」された「固定部」に相当する。 (e)また、先願発明の「ガイドローラー400」は、本件発明1の「移送ローラ」「の外周面から離隔されるように」「固定部に連結され」、「移送ローラに進入する」「電極タップ」を「移送ローラ」「との間に案内して」「電極タップの変形を防止する」「第1ガイド部」に相当する。 (f)その結果、先願発明の「固定軸部300、ガイド固定部200、及びガイドローラー400」は、本件発明1の「変形防止部材」に相当する。 c 上記ア(チ)〜(ナ)より、移送ローラー100には、ガイドローラ400との間で、電極板500の電極501が通過する領域と、前記領域からガイド固定部200側に存在する領域が存在すると認められる。すなわち、上記ア(チ)〜(ナ)より、移送ローラー100には、本件発明1の「一側端部に形成された固定領域」及び「電極タップが通過するタップ通過領域」が存在すると認められる。 d 本願発明1の「前記変形防止部材の前記第1ガイド部と、前記タップ通過領域の前記外周面との隙間」に相当する先願発明の構成について、 (a)本件明細書等には、以下の事項が記載されている。 「 【0042】 前記第1ガイド部133は前記タップ通過領域A2の外周面から第1間隔d1だけ離隔されるように前記固定部131と連結され、前記入口部A3に位置することができる。前記第1間隔d1は前記第1電極タップ11の厚さを考慮して前記第1電極タップ11が十分に通過できる程度に設定される。例えば、第1電極板10の厚さが約5ないし20μmの場合、前記第1間隔d1は0.2乃至5mmであることが適切である。・・・」 (b)そうすると、先願発明の上記「間隔」は、電極板500の電極501が十分に通過できる程度の間隔を有しており、電極板500の電極501の厚さよりも広いものである、すなわち、本件発明1の「電極タップの厚さより広い」ものであると認められる。 e 上記a〜dから、本件発明1と先願発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「一側部から突出する複数の電極タップをそれぞれ備えた第1電極板(又は第2電極板)の移送を案内する移送ローラであって、一側端部に形成された固定領域と前記電極タップが通過するタップ通過領域を有する移送ローラと、 固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、前記第1ガイド部が前記移送ローラの一側端部の前記タップ通過領域の外周面から離隔されるように前記固定部に連結され、前記移送ローラに進入する前記電極タップを前記一側端部の前記タップ通過領域の外周面と前記第1ガイド部との間に案内して前記電極タップの変形を防止する変形防止部材、および 前記変形防止部材は、その前記固定部が前記移送ローラの前記固定領域を回転可能に支持すると共に前記第1電極板または前記第2電極板によって前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、 前記変形防止部材の前記第1ガイド部と、前記タップ通過領域の前記外周面との隙間が前記電極タップの厚さより広い装置。」 f 一方、本件発明1と先願発明とは、以下の点で相違する。 <相違点12> 移送ローラが、本件発明1では、一側部から突出する複数の電極タップをそれぞれ備えた第1電極板および第2電極板の移送をそれぞれ案内するものであるのに対し、先願発明では、第1電極板又は第2電極板のいずれか1つを案内するものである点。 <相違点13> 装置が、本件発明1では、移送ローラを通して移送される第1電極板および第2電極板と、前記第1電極板および前記第2電極板の間に介在したセパレータとを共に巻き取る巻取りユニットを含むのに対し、先願発明では、前記巻取りユニットがない点。 <相違点14> 装置が、本件発明1では、極板巻取り装置であるのに対し、先願発明では、電極板移送装置である点。 g 以下、上記相違点について検討する。 (a)相違点13及び14について、先願当初明細書等には、以下の事項が記載されている。 「 【0006】 ここで、前記ゼリー・ロール(電極ロール)は、陰極極板を先ず巻き、その上に分離膜、分離膜上に陽極極板が巻かれ、最上部に陽極が分離膜を挟んで陰極を囲み、分離膜が表面に位置し、分離膜が最終仕上げられて、ゼリー・ロールが完成する。」 ( ) (b)上記(a)より、先願当初明細書等では、陰極極板を先ず巻き、その上に分離膜、分離膜上に陽極極板が巻かれ、最上部に陽極が分離膜を挟んで陰極を囲み、分離膜が表面に位置し、分離膜が最終仕上げになるように巻き取りを行うことが記載されているのみであって、第1電極板および第2電極板と、第1電極板および第2電極板の間に介在したセパレータとを共に巻き取る本件発明1の態様について、記載も示唆もされていない。 (c)そうすると、先願発明において、本件発明1のような「前記移送ローラを通して移送される前記第1電極板および前記第2電極板と、前記第1電極板および前記第2電極板の間に介在したセパレータとを共に巻き取る巻取りユニット」を設置し、「極板巻取り装置」とすることは、単なる設計変更や、周知技術の付加であるとはいえない。 (d)したがって、先願発明において、本件発明1のような「前記移送ローラを通して移送される前記第1電極板および前記第2電極板と、前記第1電極板および前記第2電極板の間に介在したセパレータとを共に巻き取る巻取りユニット」を設置し、「極板巻取り装置」とすることは、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。 h 以上から、上記相違点13及び14に係る発明特定事項を備えた本件発明1は、先願発明と実質的に同一であるとはいえない。 i また、本件発明2〜15は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1をさらに減縮したものであるから、本件発明1において、上記gで判断したのと同様の理由によって、先願発明と実質的に同一であるとはいえない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、申立理由2(拡大先願)について、本件特許の請求項1〜15に係る特許は、特許第29条の2の規定に違反してなされたものとはいえず、同法113条第2号に該当しないものであるため、取り消すことはできない。 (8)申立理由5(サポート要件、明確性要件、及び実施可能要件)(取消理由として不採用)について ア 「前記固定部と連結された第1ガイド部」について、本件明細書等には、以下の事項が記載されている。 a 「 【0039】 前記変形防止部材130は、図3および図4に示されているように、固定部131、第1ガイド部133、および第2ガイド部135を含むことができる。」 b「 【0051】 前記第2ガイド部135は図3、図4、および図6に示されているように、前記第1ガイド部133から延長され、前記タップ通過領域A2の外周面に沿って前記外周面から第2間隔d2だけ離隔されるように前記固定部131と連結される。」 c 「 【図4】 」 イ 上記アa〜cから、本件明細書等には、固定部とガイド部との連結状態の具体的な態様として、第2ガイド部135を介して固定部131と連結された第1ガイド部が記載されていると認められる。 ウ そうすると、本件明細書等から、上記「前記固定部と連結された第1ガイド部」とは、直接連結されたもののみならず、他の部材を介して間接的に連結しているものも含むものと解される。 エ したがって、本件発明1〜15における「前記固定部と連結された第1ガイド部」との発明特定事項は、本件明細書等から、固定部と第1ガイド部が間接的に連結したことも意味すると解されるから、実施可能な程度にサポートされており、明確なものであるといえる。 オ よって、上記「前記固定部と連結された第1ガイド部」との発明特定事項が含まれている本件特許の請求項1〜15に係る発明について、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしており、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当しないものであるため、取り消すことはできない。 (9)申立理由6(明確性)について ア 符号133eで表記される部位について、本件明細書等には、以下の事項が記載されている。 a 「 【0050】 また、図13に示されているように、第1ガイド部133eは、前記第1移送ローラ121と互いに並んでいるように配置された環状の形状になることができる。このとき、前記環の中心軸C’と前記第1移送ローラ121の回転軸Cとが互いに平行であることができる。」 b 「 【図13】 」 イ 上記アa〜bから、符号133eで表記される部位は、「ガイド部」であり、「固定部」に該当しない。 ウ したがって、「固定部」の外延が不明確であるとする根拠はないから、「前記固定部は、前記移送ローラの一側端部と対応する環状の形状になること」との発明特定事項を有する本件発明3は、明確である。 エ よって、上記「前記固定部は、前記移送ローラの一側端部と対応する環状の形状になること」との発明特定事項を有する本件特許の請求項3に係る発明について、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当しないものであるため、取り消すことはできない。 (10)申立理由8(明確性)(取消理由として不採用)について ア 本件発明15は、本件発明1の極板巻取り装置において、さらに複数の供給ユニットを含むものである。 イ ここで、本件発明15の「前記セパレータ、前記第1電極板および前記第2電極板を供給するための複数の供給ユニットをさらに含む」との発明特定事項について、本件明細書等には、以下の事項が記載されている。 a 「 【0037】 前記第1移送ローラ121は前記第1供給ユニット111から供給される前記第1電極板10の移送を案内することができる。前記第2移送ローラ123は前記第2供給ユニット113から供給される前記第2電極板20の移送を案内することができる。前記第3移送ローラ125は、前記第3供給ユニット115から供給される前記第1セパレータ30が前記第1電極板10上に付着し、前記第1セパレータ30が付着した第1電極板50が前記巻取りユニット140に移送されるように案内することができる。前記第4移送ローラ127は、前記第4供給ユニット117から供給される前記第2セパレータ40が前記第2電極板20上に付着し、前記第1セパレータ40が付着した第1電極板60が前記巻取りユニット140に移送されるように案内することができる。」 b 「 【図1】 」 ウ 上記イa〜bを参照すれば、上記さらに含む「複数の供給ユニット」とは、(2枚の)「セパレータ」を供給するユニット、1つの「第1電極板」を供給するユニット、1つの「第2電極板」を供給するユニットを意味することは明らかである。 エ そして、一つの巻取り装置において、複数の第1電極板や複数の第2電極板を巻き取ることは記載も示唆もされていないから、「前記セパレータ、前記第1電極板および前記第2電極板を供給する」1組の供給ユニットを複数備える、のように解釈することは不合理である。 オ したがって、本件発明15は、明確である。 カ よって、本件特許の請求項15に係る発明について、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当しないものであるため、取り消すことはできない。 (11)申立理由10(新規事項)(取消理由として不採用)について ア 本件訂正によって、本件訂正前の請求項1の「前記変形防止部材は、前記第1電極板または前記第2電極板によって回転しない」との記載は、「前記変形防止部材は、その前記固定部が前記移送ローラの前記固定領域を回転可能に支持すると共に前記第1電極板または前記第2電極板によって前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、」と訂正された。 イ そして、上記第2の2(4)イにおいて検討したように、「前記変形防止部材は、その前記固定部が前記移送ローラの前記固定領域を回転可能に支持すると共に前記第1電極板または前記第2電極板によって前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、」との訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ したがって、本件訂正によって、本件発明1〜15に、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正に該当する発明特定事項は存在しなくなった。 エ よって、本件特許の請求項1〜15に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものでないから、同法第113条第1号に該当しないものであるため、取り消すことはできない。 (12)令和 3年10月 8日提出の意見書における申立人の記載不備(b−6)に係る主張について ア 申立人は、令和 3年10月 8日提出の意見書において、本件発明1における「その前記固定部が前記移送ローラの前記固定領域を回転可能に支持する」との発明特定事項について、「前記固定部」が具体的にどこにどのようにして支持されているのか、本件明細書等からでは全く定かではなく、本件明細書等は当業者が実施可能に記載されているとは到底言い難いから、本件特許の請求項1〜15に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである旨新たに主張した。 イ しかし、上記第2の2(4)イ(テ)bにおいて指摘したように、本件明細書等を、本件特許における「変形防止部材」の技術的意義も含め勘案すると、変形防止部材と移送ローラとは、移送ローラの頂上、すなわち、上記第2の2(4)イ(セ)の紙面上側の固定部131と移送ローラ121の固定領域A1の界面で、変形防止部材の固定部自身の重力によって接触し、これにより、変形防止部材の固定部が、移送ローラの固定領域を回転可能に支持していると認められる。 ウ したがって、本件発明1における「その前記固定部が前記移送ローラの前記固定領域を回転可能に支持する」との発明特定事項について、「前記固定部」が具体的にどこにどのようにして支持されているのかは、本件明細書等から、当業者が実施可能な程度に理解できると認められる。 エ よって、本件特許の請求項1〜15に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていると認められるから、同法第113条第4号に該当しないものであるため、取り消すことはできない。 (13)令和 3年10月 8日提出の意見書における申立人の記載不備(c−2)に係る主張について ア 申立人は、令和 3年10月 8日提出の意見書において、本件発明1における「前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており」との発明特定事項について、その主体が、「変形防止部材」であるのか、「変形防止部材の固定部」であるのかが不明であって、発明が不明確であるから、本件特許の請求項1〜15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである旨新たに主張した。 イ しかし、上記第2の2(4)イ(テ)cにおいて指摘したように、本件明細書等を、本件特許における「変形防止部材の」技術的意義も含め勘案すると、変形防止部材は、移送ローラ及び電極板の影響(摩擦力等)で、移送ローラの回転軸の周りを一定範囲で揺動するものの、電極板と接触する位置近傍で、GAPにより、止まる又は跳ね返ることができ、それによって、移送ローラの回転軸の周りを移送ローラとともに回転することがないものであると認められる。 ウ すなわち、本件明細書等を、本件特許における「変形防止部材」の技術的意義も含め勘案すれば、本件発明1における「前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており」との発明特定事項の主体は、「変形防止部材」であると認められる。 エ したがって、本件発明1における「前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており」との発明特定事項について、その主体が「変形防止部材」であることは、本件明細書等から、明確であると認められる。 オ よって、本件特許の請求項1〜15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていると認められるから、同法第113条第4号に該当しないものであるため、取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、当審の取消理由及び異議申立理由によっては、本件特許の請求項1〜15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1〜15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、上記結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 一側部から突出する複数の電極タップをそれぞれ備えた第1電極板および第2電極板の移送をそれぞれ案内する移送ローラであって、一側端部に形成された固定領域と前記電極タップが通過するタップ通過領域を有する移送ローラと、 固定部と前記固定部と連結された第1ガイド部とを備える変形防止部材であって、前記第1ガイド部が前記移送ローラの一側端部の前記タップ通過領域の外周面から離隔されるように前記固定部に連結され、前記移送ローラに進入する前記電極タップを前記一側端部の前記タップ通過領域の外周面と前記第1ガイド部との間に案内して前記電極タップの変形を防止する変形防止部材、および 前記移送ローラを通して移送される前記第1電極板および前記第2電極板と、前記第1電極板および前記第2電極板の間に介在したセパレータとを共に巻き取る巻取りユニットを含み、 前記変形防止部材は、その前記固定部が前記移送ローラの前記固定領域を回転可能に支持すると共に前記第1電極板または前記第2電極板によって前記移送ローラの回転軸の周りを回転しないように構成されており、 前記変形防止部材の前記第1ガイド部と、前記タップ通過領域の前記外周面との隙間が前記電極タップの厚さより広いことを特徴とする極板巻取り装置。 【請求項2】 前記第1ガイド部は、前記電極タップが前記移送ローラと最初に当接して進入する入口部に位置することを特徴とする請求項1に記載の極板巻取り装置。 【請求項3】 前記固定部は、前記移送ローラの一側端部と対応する環状の形状になることを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項4】 前記第1ガイド部から延長された第2ガイド部であって、前記一側端部の外周面に沿って前記一側端部の外周面から離隔するように前記固定部と連結された第2ガイド部をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項5】 前記第2ガイド部は、前記一側端部の外周面のうち、前記電極タップと当接して通過する部分と対応するように円弧の形状になることを特徴とする請求項4に記載の極板巻取り装置。 【請求項6】 前記第2ガイド部は前記一側端部の外周面から0.2乃至5mm離隔されていることを特徴とする請求項4に記載の極板巻取り装置。 【請求項7】 前記固定部は、前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部が前記第1電極板及び前記第2電極板にそれぞれ形成された電極活物質層の上部に位置しないように前記移送ローラに固定されることを特徴とする請求項4に記載の極板巻取り装置。 【請求項8】 前記第1ガイド部は前記電極タップの走行方向に沿って前記入口部に接近するほど前記移送ローラと近くなる傾斜曲面を備えることを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項9】 前記傾斜曲面は、円柱面の一部であり、前記第1ガイド部の半径は前記電極タップの幅方向の長さと同じかまたは前記長さより長くなることを特徴とする請求項8に記載の極板巻取り装置。 【請求項10】 前記第1ガイド部は前記電極タップの走行方向に沿って前記入口部に接近するほど前記移送ローラと近くなる平らな傾斜面を備えることを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項11】 前記電極タップの走行方向に対する前記第1ガイド部の垂直高さ及び水平長さはそれぞれ前記電極タップの幅方向の長さと同じかまたは前記長さより長くなることを特徴とする請求項10に記載の極板巻取り装置。 【請求項12】 前記第1ガイド部は前記電極タップの走行方向と平行な平面を備えることを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項13】 前記第1ガイド部は前記電極タップの走行方向に対して垂直な平面を備えることを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項14】 前記第1ガイド部は環状の形状であり、前記第1ガイド部の中心軸は前記移送ローラの回転軸と互いに平行であるように配置された環状の形状になることを特徴とする請求項2に記載の極板巻取り装置。 【請求項15】 前記セパレータ、前記第1電極板および前記第2電極板を供給するための複数の供給ユニットをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の極板巻取り装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-02-21 |
出願番号 | P2014-228690 |
審決分類 |
P
1
651・
161-
YAA
(H01M)
P 1 651・ 537- YAA (H01M) P 1 651・ 121- YAA (H01M) P 1 651・ 536- YAA (H01M) P 1 651・ 113- YAA (H01M) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
池渕 立 |
特許庁審判官 |
太田 一平 粟野 正明 |
登録日 | 2019-05-24 |
登録番号 | 6529745 |
権利者 | 三星エスディアイ株式会社 |
発明の名称 | 極板巻取り装置 |
復代理人 | 橋口 明子 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 阿部 達彦 |
復代理人 | 崔 允辰 |
復代理人 | 崔 允辰 |
復代理人 | 橋口 明子 |