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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D21H
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  D21H
審判 全部申し立て 2項進歩性  D21H
管理番号 1384054
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-01-21 
確定日 2022-03-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6729205号発明「段ボール用白色ライナー及びその製造方法、並びに白色段ボール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6729205号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6729205号の請求項1〜6に係る特許についての出願は、平成28年9月5日に出願され、令和2年7月6日にその特許権の設定登録がされ、令和2年7月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年1月21日に特許異議申立人村上清子(以下「申立人」という)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
本件第6729205号の請求項1〜6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
白色段ボールの表面を構成する紙製の白色ライナーであって、少なくとも表層及び裏層を含む積層体であり、
前記表層は、表層に含まれるパルプの総質量に対して80〜100質量%の古紙パルプ、表層全体100質量部に対してCaCO3無水物換算で10〜30質量部のカルシウム、及び表層のパルプ100質量部に対して固形分換算で0.001〜3.0質量部のポリアクリルアミド系高分子を含む白色ライナー。
【請求項2】
前記表層に含まれる炭酸カルシウムとして重質炭酸カルシウムを含み、前記重質炭酸カルシウムは平均粒子径が2.0μm以下である、請求項1に記載の白色ライナー。
【請求項3】
前記裏層と反対側における前記表層の表面に、固形分換算で0.01〜0.1g/m2の滑剤を有する、請求項1又は2に記載の白色ライナー。
【請求項4】
前記表層と、表層と隣接する層との間に、固形分換算で0.1〜2.0g/m2の澱粉を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の白色ライナー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の白色ライナーの表層が最外面を構成する白色段ボール。
【請求項6】
白色段ボールの表面を構成する紙製の白色ライナーの製造方法であって、 古紙パルプの割合が80〜100質量%であるパルプに、前記パルプ100質量部に対して1〜15質量部の重質炭酸カルシウム、及び前記パルプ100質量部に対して固形分換算で0.001〜3.0質量部のポリアクリルアミド系高分子を配合した表層用組成物を準備する組成物準備工程と、
前記表層用組成物を用いて抄紙して表層用湿紙を形成する抄紙工程と、
前記表層用湿紙と他層用の湿紙とを積層して湿紙の積層体を得る積層工程と、
前記湿紙の積層体を乾燥する乾燥工程とを有する白色ライナーの製造方法。」

第3 申立理由の概要
1. 理由1 進歩性(特許法第29条第2項
請求項1〜6に係る発明(以下「本件発明1」等という)は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、あるいは甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項、甲第3号証に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2006−176921号公報
甲第2号証:特許第3008313号公報
甲第3号証:特開2014−19975号公報
甲第4号証の1:田中宏一、「製紙用無機填料・顔料」、色材、第72巻第8号、1999年8月、494〜500ページ
甲第4号証の2:「色材協会誌」https://www.jstage.jst.go.jp/browse/shikizai/72/8/_contents/−char/ja
のページ
甲第5号証:特開2006−336165号公報
甲第6号証:特開2009−191387号公報
甲第7号証の1:岸川強、「板紙の共重合分岐型紙力剤の使用経験」、紙パ技協紙、第53巻第2号、1999年2月、152〜156ページ
甲第7号証の2:「紙パ技協誌」
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jtappij/53/2/_contents/−char/ja
のページ
甲第8号証の1:平沢隆仁、「紙力増強剤」、紙パ技協紙、第51巻第9号、1997年9月、1295〜1307ページ
甲第8号証の2:「紙パ技協紙」
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jtappij/51/9/_contents/−char/ja
のページ
甲第9号証の1:中川弘、「最新の内添紙力剤の技術動向−紙力剤の設計と使用方法−」、紙パ技協紙、第62巻第11号、2008年、1402〜1408ページ
甲第9号証の2:「紙パ技協紙」
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jtappij/62/11/_contents/−char/ja
のページ
甲第10号証:特開2005−200772号公報

2. 理由2 サポート要件(特許法第36条第6項第1号
(1) 本件発明の課題は、「・・・古紙パルプの含有率が高いにも関わらず充分に白色度が高い、段ボール用白色ライナー及びその製造方法、並びに白色段ボールを提供する。」(本件特許明細書【0004】)であるところ、本件発明1は、「重質炭酸カルシウム」を填料として配合せずに、古紙パルプ中に含有されているカルシウムを「CaCO3無水物換算で10〜30質量部」含ませた形態を含むものである。しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された全ての実施例及び比較例には、「重質炭酸カルシウム」を填料として配合したもののみ記載されているから、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2〜5は、発明の詳細な説明に記載した範囲内のものではない。

(2) 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、古紙パルプの種類と白色度との関係について技術的な説明がなく、したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載からは本件発明の上記課題を解決することができず、本件発明6は、発明の詳細な説明に記載した範囲内のものではない。

3. 理由3 実施可能要件(特許法第36条第4項第1号
本件発明1は、「重質炭酸カルシウム」を填料として配合せずに、古紙パルプ中に含有されているカルシウムを「CaCO3無水物換算で10〜30質量部」含ませた形態を含み、これによって、上記2.(1)に記載した本件発明の課題を解決するものである。
しかし、上記2.(1)に記載したように、本件明細書の発明の詳細な説明には、「重質炭酸カルシウム」を填料として配合せずに、古紙パルプ中に含有されているカルシウムを「CaCO3無水物換算で10〜30質量部」含ませた形態によっても、上記課題を解決することができるとする記載もないし、そのような技術常識も存在しない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1〜5の段ボール用白色ライナーについて、当業者が実施できる程度に記載されていない。

第5 当審の判断
1. 理由1(進歩性)について
(1) 引用文献の記載事項
ア. 甲第1号証
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表層、表下層、及び裏層の3層の紙層を有し、全米坪が100〜300g/m2となるように長網多層抄紙機にて抄造され、また前記各層には古紙パルプが50%以上配合されて成る段ボールに供せられる白ライナーであって、前記表層の表出面のJIS−P8123に準拠する白色度が60%以上であり、前記表層及び前記表下層がそれぞれ灰分を15%以上含有し、また前記表層及び前記表下層に澱粉を主体とする紙力増強剤が添加されていることを特徴とする白ライナー。
【請求項2】
前記表層及び前記表下層以外の層に、澱粉を主体とする紙力増強剤が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の白ライナー。
【請求項3】
前記澱粉の添加量が、澱粉添加層のパルプに対し2〜10kg/tであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の白ライナー。
【請求項4】
前記表層以外の層にPAM系紙力増強剤が添加されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の白ライナー。
【請求項5】
前記PAM系紙力増強剤の添加量は、PAM添加層のパルプに対し0.5〜3kg/tであることを特徴とする請求項4に記載の白ライナー。」
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙パルプが50%以上配合された原料パルプを各層に用いて抄紙した白ライナーに関し、さらに詳細には、良好な美粧性及び加工適性を有し、罫線割れの発生を防止した白ライナーに関する。」
「【背景技術】
【0002】
従来より、包装箱等の箱は、白板紙によるもののほか、段ボールシートにより製函される段ボール箱がある。段ボールは、コルゲート処理が施された中芯と中芯を挟持する2枚のライナー(外装用ライナー及び内装用ライナー)とで構成されている。また、ライナーは、漂白されたパルプを主原料とする原料が表層(ライナーの表面となる最外層)に使用されている白ライナーと、漂白されていないパルプ(色調は茶系色)を主原料とする原料が表層に使用されている未晒ライナーとに大別される。
【0003】
近年、段ボールに供せられるライナーは、収納物等の保護だけでなく、収納物等が消費者の注意力を強く引き付け、良好な印象を与えることができるように美粧性が要求されており、また良好な印刷見栄えや目視平滑性、目視白色度が要求されている。そこで、通常、ライナーは、表層をNBKP、LBKP等の白色度の高い晒パルプで形成し、印刷見栄え、目視平滑性、目視白色度等を向上させ、美粧性を向上させている。一方、裏層や中層は、省資源の観点から脱墨古紙パルプや白色度の低いパルプで形成されている。
【0004】
また、中層以下の層、すなわち中層及び裏層を隠蔽し、白ライナーの美粧性をより向上させるために、表層よりは白色度が低いが、中層や裏層よりは白色度が高い晒パルプで形成された表下層を、表層と中層(中層を設けない場合は裏層)との間に設けることが一般的に行なわれている。
【0005】
しかし、近年、省資源の観点から、表層や表下層の晒パルプをバージンパルプから古紙パルプへ置き換える動きが進んでいる。晒パルプを主体に構成された表層及び表下層に古紙パルプが増配されると、古紙パルプに由来する填料や顔料により、表層及び表下層に含有される灰分が増加し、白ライナーの不透明性が向上すると共に、白色度の低い中層以下の層を隠蔽する機能(隠蔽性)が向上し、表層側からの見た目白色度が向上するので、白ライナーの美粧性を向上させることができる。」
「【0006】
そこで、例えば特許文献1に白板紙の例で示されるように、表層及び表下層に含有される古紙に由来する灰分を増加させることで、白板紙の美粧性を改善する方法が提案されている。この方法は、白板紙の表層又は表下層に、顔料を高い割合で含有させることにより、隠蔽性、目視平滑性、印刷適性を改善し、白板紙の美粧性を向上させるものである。
【0007】
しかし、白板紙は、白ライナーと異なり、全米坪が400g/m2を超え、表層及び表下層の各層の米坪は40g/m2以上である。従って、紙層における繊維間強度を十分有しているため、灰分の増加による表面強度の低下、紙層強度の低下を十分にカバーすることができる。」
「【0009】
一方、白ライナーは、全米坪が100〜300g/m2程度であり、表層及び表下層の各層の米坪は、通常35g/m2未満である。従って、表層及び表下層に含有される灰分が増加すると、紙層強度の低下を招くため、製函工程や段ボールシートの製造工程において、表面強度が低下し、また罫線割れの問題が生じる。なお、罫線割れとは、箱状に成型等するために白板紙や白ライナーに罫線を入れて折り曲げた際、白板紙や白ライナーの表層が割れる現象を言う。
【0010】
ここで、特許文献1に記載された方法を白ライナーに適用すると、白ライナーの表層及び表下層に高い割合で顔料を含有させることによって、白ライナーの美粧性は向上するが、白ライナーの表面強度が低下し、罫線割れの問題が深刻なものとなるため、この方法を白ライナーに適用することはできなかった。」
「【0012】
さらにまた、古紙パルプは、バージンパルプより強度が劣ることに加え、リサイクル回数が増すにつれて劣化し、さらに強度が低下していくため、白ライナーの表層又は表下層に古紙パルプが増配されると、白ライナーの強度は一層低下する。従って、白ライナーの加工適性がさらに悪化し、罫線割れの問題をより顕著なものとしていた。
【0013】
そこで、例えば特許文献2に示されるように、白ライナーの表面にポリアクリルアミド(PAM)が配合された塗工液を塗工し、白ライナーの強度の低下を防止することが提案されている。しかし、この方法によると、白ライナーの強度を向上させることはできるが、白ライナーが剛直になるため、白ライナーの加工適性を向上させることはできなかった。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、美粧性及び加工適性に優れ、罫線割れの発生を防止した白ライナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は、少なくとも表層、表下層、及び裏層の3層の紙層を有し、全米坪が100〜300g/m2となるように長網多層抄紙機にて抄造され、また前記各層には古紙パルプが50%以上配合されて成る段ボールに供せられる白ライナーであって、前記表層の表出面のJIS−P8123に準拠する白色度が60%以上であり、前記表層及び前記表下層がそれぞれ灰分を15%以上含有し、また前記表層及び前記表下層に澱粉を主体とする紙力増強剤が添加されていることを特徴とする白ライナーを提供することによって達成される。
【0016】
また、本発明の上記目的は、前記表層及び前記表下層以外の層に、澱粉を主体とする紙力増強剤が添加されていることを特徴とする白ライナーを提供することによって、効果的に達成される。
【0017】
また、本発明の上記目的は、前記澱粉の添加量が、澱粉添加層のパルプに対し2〜10kg/tであることを特徴とする白ライナーを提供することによって、より効果的に達成される。」
「【0018】
また、本発明の上記目的は、前記表層以外の層にPAM系紙力増強剤が添加されていることを特徴とする白ライナーを提供することによって、より効果的に達成される。
【0019】
さらにまた、本発明の上記目的は、前記PAM系紙力増強剤の添加量は、PAM添加層のパルプに対し0.5〜3kg/tであることを特徴とする白ライナーを提供することによって、より効果的に達成される。」
「【発明の効果】
【0020】
本発明に係る段ボールに供せられる白ライナーによれば、少なくとも表層、表下層、及び裏層の3層の紙層を有し、全米坪が100g/m2〜300g/m2となるように長網多層抄紙機にて抄造し、各層には古紙パルプを50%以上配合し、また、表層の表出面のJIS−P8123に準拠した白色度が60%以上であり、表層及び表下層が、それぞれ灰分を15%以上含有し、また表層及び表下層に澱粉を主体とする紙力増強剤を添加することによって、白ライナーの美粧性を向上させることができ、かつ、古紙に由来する灰分が増加しても、白ライナーの表面強度及び白ライナー全体の強度の低下を防止し、さらに白ライナーの柔軟性を維持することができるので加工適性が良好になり、罫線割れの発生も防止することができる。
【0021】
また、表層及び表下層以外の層にも、澱粉を主体とする紙力増強剤を添加することによって、白ライナーの加工適性をより良好なものとし、罫線割れの発生を防止することもできる。
【0022】
また、澱粉の添加量を、各層のパルプに対し2〜10kg/tとすることによって、白ライナーの加工適性をより良好なものとし、罫線割れを防止することができる。
【0023】
また、表層以外の層にPAM系紙力増強剤を添加することによって、白ライナーの破裂強度、リング強度を維持することができるので、白ライナー全体の強度の低下を防止することができ、加工適性をより良好なものとすることができる。
【0024】
さらにまた、PAMの配合量を、各層のパルプに対し0.5〜3kg/tとすることによって、白ライナーの加工適性をより良好なものとすることができる。」
「【発明を実施するための最良の形態】
・・・
【0027】
本白ライナーの各層の原料パルプには、古紙パルプが50%以上配合されている。これにより、古紙パルプに由来する填料や顔料の灰分(以下、単に「灰分」と言う。)を15%以上含有させることができ、本白ライナーの美粧性を向上させることができる。なお、古紙パルプの配合率が50%未満であると、後述するように白ライナーに灰分を15%以上含有させることができず、白ライナーの美粧性を向上させることができない。
【0028】
古紙パルプの原料としては、特に限定されるものではないので、例えば上白、白アート、カード、特白、中白、模造、白マニラ、色上、段ボール、新聞、雑誌、切符、中質反古、台紙、地券等の公知の種々のものを用いることができる。なお、これらの原料は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良いが、本白ライナーの美粧性をより向上させるために、白色度の高い古紙パルプ等が増配されることが好ましい。
【0029】
また、本白ライナーの表層、表下層、及び裏層の各層に用いられる他の原料パルプとしては、特に限定されるものではないので、例えば針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)や、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の晒クラフトパルプや、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)や、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の未晒クラフトパルプ、グランドパルプ(GP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ、サルファイトパルプ(SP)等の化学パルプ等、公知の種々の原料パルプを単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。」
「【0034】
本白ライナーの表層及び表下層の原料パルプには、澱粉を主体とする紙力増強剤が添加されている。従って、灰分の増加による本白ライナーの表面強度及び本白ライナー全体の強度の低下を防止し、さらに本白ライナーの柔軟性を維持することができるので、本白ライナーは加工適性が良好となり、また罫線割れの発生を防止することができる。
【0035】
なお、本白ライナーは、表層及び表層以外の層、すなわち裏層にも澱粉を主体とする紙力増強剤を添加しても良く、これにより本白ライナーの加工適性をより良好なものとすることができる。
【0036】
また、澱粉の添加量は、上述した紙力増強剤を添加する各層(「澱粉添加層」と言う。)のパルプに対し2〜10kg/tである。澱粉の添加量が澱粉添加層のパルプに対し、2kg/t未満であると白ライナーの表面強度及び白ライナー全体の強度を向上させ、加工適性を良好なものとすることができず、逆に添加量が10kg/tを超えても、添加量に比した効果が得られず、製造コストが高くなるので好ましくない。」
「【0038】
また、本白ライナーは、表層以外の層、すなわち表下層及び裏層にポリアクリルアミド(PAM)系紙力増強剤を必要に応じて添加すると、本白ライナーの破裂強度、JIS−P8126のリングクラッシュ法に準拠するリング剛度(リング強度)を維持することができるので、本白ライナー全体の強度低下を防止することができ、加工適性をより良好なものとすることができる。PAM系紙力増強剤は、特に限定されるものではないので、例えば共重合PAM、アニオンPAM等の公知の種々のものを、本白ライナーの使用目的やニーズに応じ、単独で又は2種以上を混合して適宜添加することができる。なお、PAM系紙力増強剤が表層に添加されると、白ライナーが剛直になり、加工適性が低下するので好ましくない。」
「【実施例】
【0043】
以下、本発明に係る白ライナーの効果を確認するために、以下のような試料を作成し、美粧性や加工適性等を評価する試験を行なった。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0044】
本発明に係る5種類の白ライナー(これを「実施例1」ないし「実施例5」とする。)と、これらの実施例1ないし実施例5と比較検討するための5種類の白ライナー(これを「比較例1」ないし「比較例5」とする。)を、表1に示すような表層及び表下層の原料パルプを用いて、表1に示す全米坪となるように長網多層抄紙機にて3層に抄造した。
【0045】
このようにして得られた実施例1ないし実施例5、及び比較例1ないし比較例5に係る白ライナーについて、以下の評価試験により評価した結果は、表2に示すとおりであった。
【0046】
なお、表2中の「美粧性」とは、成人の男性5名、女性5名が、A4の大きさに調製した紙試料を外観にて美粧性の目視評価を行なったもので、その評価基準は、評価が高いもの上位3位までを◎、4位から6位を○、7位から9位を△、10位を×とした。
【0047】
また、「加工適性」とは、実機のコルゲーターマシンで、フルート(中芯)との糊合加工を行ない、搬送不良、貼合不良、粉落ち等の設備汚れの発生の有無を確認し、評価したもので、その評価基準は、◎印の「搬送不良、貼合不良、粉落ちとも無く、良好に加工」、○印の「搬送不良、貼合不良、粉落ちの何れかが生じたが、良好に加工」、△印の「搬送不良、貼合不良、粉落ちの何れかが生じ、加工効率が低下」、×印の「搬送不良、貼合不良、粉落ちのいずれも生じ、問題が発現」の4段階とした。
【0048】
また、「罫線割れ」とは、JIS−P8111に準拠して調湿を行ない、10mm四方の紙試料を調製した後、表層が内側となるように縦、横それぞれの方向に二つ折りし、縦、横折面での割れの発現の有無を目視で判断し、評価したもので、その評価基準は、○印の「縦横とも割れは生じず」、△印の「縦横のいずれか一方のみ、割れが生じた」、×印の「縦横の両方とも割れが生じた」の3段階とした。
【0049】
また、「表面強度」とは、紙の幅方向を紙試料の幅方向とし、幅100mmの紙試料を調製し、この紙試料の表面に黒色オフセットインキを用いて、RI印刷適性試験機(明製作所製)にて黒ベタ印刷を行ない、紙試料表面の繊維の取られ具合を「5」が「最良」、「1」が「最も悪い」の5段階で評価した。
【0050】
また、「印刷見栄え」とは、紙の幅方向を紙試料の幅方向とし、幅100mmの紙試料を調製し、この紙試料の表面に赤色オフセットインキを用いて、RI印刷適性試験機(明製作所製)にて、1回転/分の速度でベタ印刷を行ない、赤色ベタ印刷の印刷ムラを、成人の男性5名、女性5名が目視評価したものを「5」が「最良」、「1」が「最も悪い」の5段階で評価した。【0051】
また、「目視平滑性」とは、成人の男性5名、女性5名が、A4の大きさに調製した紙試料の表面を目視観察し、平滑性が高く感じられる度合いを「5」が「最良」、「1」が「最も悪い」の5段階で評価した。
【0052】
また、「目視白色度」とは、成人の男性5名、女性5名が、A4の大きさに調製した紙試料の表面を目視観察し、白色度が高く感じられる度合いを「5」が「最良」、「1」が「最も悪い」の5段階で評価した。
【0053】
さらにまた、「製造コスト」とは、坪量あたりの製造コストを「5」が「最良」、「1」が「最も悪い」の5段階で評価した。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】


以上の記載から、特に実施例4に着目すると、甲第1号証には、以下の引用物発明1が記載されている。
「段ボールを構成するコルゲート処理が施された中芯を挟持するライナーとして供せられ、少なくとも表層、表下層、及び裏層の3層の紙層を有し、表層及び表下層の灰分が20%である白ライナーであって、
表層及び表下層の原料パルプには白物古紙が80%及び針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が20%配合されて成る原料パルプを用い、表層の原料パルプには紙力増強剤として澱粉をパルプに対し10kg/t添加し、表下層の原料パルプには紙力増強剤として澱粉をパルプに対し10kg/t及びポリアクリルアミド(PAM)をパルプに対し0.5kg/t添加して、全米坪が300g/m2となるように長網多層抄紙機にて3層に抄造した、白ライナー。」

また、以上の記載から、特に実施例4に着目すると、以下の引用方法発明1が記載されている。
「段ボールを構成するコルゲート処理が施された中芯を挟持するライナーとして供せられ、少なくとも表層、表下層、及び裏層の3層の紙層を有し、表層及び表下層の灰分が20%である白ライナーの製造方法であって、
表層及び表下層の原料パルプには白物古紙が80%及び針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が20%配合されて成る原料パルプを用い、表層の原料パルプには紙力増強剤として澱粉をパルプに対し10kg/t添加し、表下層の原料パルプには紙力増強剤として澱粉をパルプに対し10kg/t及びポリアクリルアミド(PAM)を0.5kg/t添加して、全米坪が300g/m2となるように長網多層抄紙機にて3層に抄造した、白ライナーの製造方法。」

イ. 甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】表層及び表下層(表層のすぐ下の層)を有し、表下層が、カナダ標準濾水度250cc〜500ccに叩解されたパルプから成り、対パルプで10重量%以上の顔料を含む白板紙。
【請求項2】表層が、カナダ標準濾水度が250cc〜500ccに叩解されたパルプから成り、対パルプで10重量%以上の顔料を含むことを特徴とする請求項1記載の白板紙。
【請求項3】表層のパルプのうち20重量%以上がNBKPであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の白板紙。
【請求項4】表層に紙力増強剤を対パルプ分で0.5重量%以上配合することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の白板紙。
【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の白板紙に顔料系塗料を塗付乾燥して得られたことを特徴とする白板紙。
【請求項6】表層及び/又は表下層に顔料を含有する古紙パルプを混合することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の白板紙。」
「【0009】第4の発明では、上記に加えて、表層に紙力増強剤を対パルプで0.5重量%以上配合することが必須要件である。紙力増強剤としては、澱粉類、植物性ガム、セルロース誘導体、ポリアクリルアミド等が任意に使用できる。紙力増強剤の添加により、白板紙の罫線割れがより改善される。」
「【実施例】
【0015】(実施例1〜3)
表下層にCSF300ccのDIPと、対パルプで<表1>に示す各重量%のタルク粒子を混合したものを用い、表層にNBKP50重量%、DIP50重量%から成るCSF350ccに調整されたパルプを用い、中層に脱墨しない新聞古紙パルプを用いて、テスト丸網抄紙機によって全米坪700g/m2の白板紙を抄造した。このとき表層、表下層は各々40g/m2とした。なお、表層と表下層の間及び表下層と中層の間には各々1g/m2の澱粉スプレーを行った。表層にはポリアクリルアミド系の紙力増強剤を対パルプで0.5%配合した。これに、顔料分としてカオリン45重量%、重質炭酸カルシウム50重量%、酸化チタン5重量%を含有し、バインダ固形分として対顔料20重量%の変性SBRラテックスを含有する塗料を塗布乾燥した。塗布量は全固形分で20g/m2とした。これらの試料の測定値を<表1>に記載した。」

ウ. 甲第3号証
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも白層、白下層、中層及び裏層を有する多層抄構造の白板紙の白層が、重質炭酸カルシウムを白層のパルプ量に対して3質量%以上、10質量%未満内添して構成されていることを特徴とする白板紙。
【請求項2】
白層に内添する重質炭酸カルシウムが、湿式粉砕処理されたものであり、粒子径2μm以下の粒子を70質量%以上〜95質量%未満含有する重質炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1に記載の白板紙。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、白板紙、特に中層に古紙パルプを使用した白板紙に関し、見た目の白色ムラの目立たない白紙外観を有する白板紙に関する。
【背景技術】
【0002】
白板紙は、印刷されパッケージ用として使用される。したがって、白板紙への印刷適性や、白板紙が白色であること共に、白色ムラがないことも重要な課題となる。ここで、白板紙は坪量150g/m2以上の厚紙であり、一般的には3層〜9層の多層構造からなる。例えば、白層、白下層、中層と呼ばれる多層が合わされることによって製造される。具体的には、最表層は白層と呼ばれる白色度の高い晒パルプを使用した層、ついで白層に接する内側の白下層と呼ばれる比較的白色度の高い古紙を使用した層、更に内側には中層と呼ばれる古紙パルプを使用した層で構成されている。この構成により、古紙利用を図りつつも、白色の白板紙を得ることができる。しかしながら、白層又は白下層によっても中層古紙の暗灰色の隠蔽が十分でなく、見た目の白色ムラを生じるという問題があった。」
「【発明の効果】
【0009】
本発明であれば、白板紙の原紙に酸化澱粉などの表面紙力剤を使用したサイズプレスなどの表面強度処理を行うことなく、印刷時に紙表面から紙粉が脱落する恐れが少なく、見た目の白色ムラのない白板紙が得られる。これにより、例えば白板紙の美粧性を向上させたり、顔料を主体とする塗工層を設けた白板紙を製造しても見た目の白色ムラを改善することができる。さらには製造時に白板紙の原紙に表面紙力剤を付与する工程を省略できることから、乾燥に要するエネルギーが減少し製造コストの低減とより環境負荷の少ない白板紙製品の提供が可能になる。また本発明によれば、抄紙時のpHは中性もしくは弱アルカリ性領域であるために古紙を多量に含有することができる。すなわち、紙や新聞紙の中性紙化がすすむ中でそれらに使用されている炭酸カルシウムは酸性抄紙では溶解するため多量の古紙使用には制限を受けるが、本願発明のように中性又は弱アルカリ性領域での抄紙であればこのような制限を受けることなく古紙を多量に使用することができる。さらに、本発明では古紙中に含有する炭酸カルシウムも填料として有効に使用できる。」
「【0014】
白色度を維持しながら紙の隠蔽性を高くするために、内添填料としてカオリン、タルク、炭酸カルシウム、チタン等を用いることが知られている。カオリンは隠蔽性が高いものの白色度が炭酸カルシウムには及ばず、又、コストも割高である。タルクは白色度が炭酸カルシウムに及ばず隠蔽性も劣る。チタンは白色、隠蔽性に最も優れているが、抄紙ワイヤー上での歩留りが低いことと高価である難点がある。炭酸カルシウムは白色度、隠蔽性の点から割安で利用しやすい内添填料である。
【0015】
しかしながら、特に顔料としてクレーを主体とする塗料を塗布する従来の板紙の製造においては、板紙の白層に炭酸カルシウムを内添填料として利用することは従来から行われていなかった。この理由として、前述したようにクレーを主顔料とした塗工層の隠蔽性が高いことから内添に炭酸カルシウムを使う必要性が低かったこと、内添に炭酸カルシウムを含有させると、サイズ剤として従来から使用されている酸性ロジンサイズではサイズ性が低下しやすいこと、内添に炭酸カルシウムを使用すると歩留りが低下しやすいことなどが挙げられる。特に、古紙を利用する中層の白水が黒ずんでいるためその影響を受けやすく、白層に炭酸カルシウム、特に隠蔽性がタルクと同程度の重質炭酸カルシウムを使用しても白色度・白色ムラの改善が得られないと考えられていたことが挙げられる。本発明では白色度がタルク・クレーよりも高い重質炭酸カルシウムを白層に内添することで、白色度と白色ムラを改善するものである。さらに白層を中性から弱アルカリ性にすることで、紙層強度は高くなり、酸性抄紙の場合に比べより多くの填料の使用が可能になり、繊維原料の節減によるコストダウンも可能となる。」
「【0017】
また前述したように本発明の白層を中性から弱アルカリ性にすることで、紙層強度は高くなり、酸性抄紙の場合には必要であった表面紙力剤の使用をなくすことが可能になる。本発明の表面紙力剤を併用しない態様では重質炭酸カルシウムの使用が必須である。本発明においては表面紙力剤の使用はむしろ負の効果をもたらす恐れがある。すなわち表面紙力剤の使用により、白層の不透明度が低下し、また地合が不均一な場合には白層の不透明度ムラが助長され、結果として白色ムラが悪化する場合が起こる。すなわち、本発明の白板紙は、白層に重質炭酸カルシウムの白層のパルプ量に対して3質量%以上、10質量%未満の内添を必須条件とする。重質炭酸カルシウムが白層のパルプ量に対して3質量%未満である場合、重質炭酸カルシウムによる白色度の向上、見た目の白色ムラを改善することは出来ない。一方、重質炭酸カルシウムが白層のパルプ量に対して10質量%以上内添される場合、白色度の向上、見た目の白色ムラは顕著に改善されるものの、印刷時に紙表面から紙粉が脱落する恐れがある。古紙由来の無機物や必要に応じて炭酸カルシウム以外の填料の少量添加は強度が許される限り妨げないが、その場合であっても全填料は15%を超えないことが好ましい。
【0018】
さらに、本発明で使用される炭酸カルシウムとしては、白層に内添する重質炭酸カルシウムは湿式粉砕処理され、粒子径2μm以下の粒子を70質量%以上〜95質量%未満含有する重質炭酸カルシウムであることが好ましい。白層に内添する重質炭酸カルシウムの粒子径2μm以下の割合が70質量%未満では白色度の向上が少なく白色ムラの改善も不十分となるおそれがある。95質量%以上では白色ムラは良好であるが粒径が細かくなり、紙層強度も低下することから印刷時に紙表面から紙粉が脱落するおそれがある。」
「【0030】
【表1】


「【0031】
(実施例1)
白層に上質系古紙パルプ60%、広葉樹パルプ(L−BKP)30%と針葉樹パルプ(N−BKP)10%からなるCSF350ccに調整されたパルプと、白層のパルプ量に対して湿式粉砕重質炭酸カルシウム、カービタル90(イメリス社製 2μm以下90質量%)を7%混合したものを用い、白下層には新聞脱墨漂白古紙を未叩解で用い、中層には雑誌古紙パルプを用い、裏層には新聞古紙パルプを用いて白層/白下層/中層/裏層の構成となるよう短網組み合わせ型抄紙機によってpH7.5において表面紙力剤を使用せずに全米坪290g/m2の白板紙を抄紙した。表側白層の米坪は35g/m2、白色度は80%、白下層の米坪は50g/m2、白色度は60%、中層の米坪は170g/m2、白色度は50%で、裏側の米坪は35g/m2、白色度は45%であった。白層には紙力増強剤としてポリアクリルアマイド(荒川化学工業株式会社製 ポリストロン619)を白層のパルプ量に対して0.2%、凝集助剤として硫酸バンドを白層のパルプ量に対して0.2%、サイズ剤として中性ロジン(星光PMC株式会社製 CC−1401)を白層のパルプ量に対して0.3%、歩留り向上剤(栗田工業株式会社製 HH220)を白層のパルプ量に対して300ppm、それぞれ内添にて添加した。この白板紙の白層の表面に、顔料塗工層の下塗り層用塗料として、カオリン(ケイミン社製 ハイドラスパース)20部、湿式重質炭酸カルシウム(株式会社イメリスミネラメズジャパン製 カービタル60)80部、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス15部及びリン酸エステル化澱粉3部を水中に分散させ固形分濃度64質量%に調整した塗料ロッドコーターにて固形分10g/m2となるように塗布、乾燥した。次いで、顔料塗工層の上塗り層用塗料として、カオリン(カダム社製 アマゾンSB)30部、湿式重質炭酸カルシウム(株式会社イメリスミネラメズジャパン製 カービタル90)60部、酸化チタン(デュポン社製 RPS−Vantage)10部、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス15部を水中に分散させて固形分濃度64%に調整した塗料を、ロッドコーターにて下塗り層の表面に固形分10g/m2となるように塗布、乾燥して顔料塗工層を設けて塗工白板紙を得た。」

エ. 甲第4号証の1
甲第4号証の1には、以下の事項が記載されている。
「・・・代表的製紙用無機材料は,カオリンクレー,タルク,炭酸カルシウムである。そのうち炭酸カルシウムは2種類に大別され,一つは天然産の白色石灰石等を粉砕し分級工程を経て製造した重質炭酸カルシウムで,他方は化学的に合成した軽質炭酸カルシウムである。・・・」(494ページ、左欄、7〜11行)
「・・・紙の白色度および不透明度は図−4に示すように,炭酸カルシウム系填料が高くその、中でもPCCは最も高い値を示す。」(496ページ、左欄、32〜34行)


」(496ページ)

オ. 甲第5号証
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも紙料調成工程と、抄紙工程とを経て単層又は複数層の紙層を有するように抄紙される白ライナーの製造方法において、前記紙料調成工程で、表層用のパルプスラリーに蛍光消去剤が連続添加されており、該蛍光消去剤の添加量が、前記抄紙工程を経た後の前記白ライナーの表層面の蛍光強度の測定結果に基づいて、随時調整されていることを特徴とする白ライナーの製造方法。
【請求項2】
前記蛍光消去剤は、前記表層用のパルプスラリーが滞留時間を有する箇所に添加されることを特徴とする請求項1に記載の白ライナーの製造方法。
【請求項3】
前記表層用のパルプスラリーに、古紙パルプを50重量%以上配合し、灰分を15重量%以上含有させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の白ライナーの製造方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、紙料調成工程で、表層用のパルプスラリーに蛍光消去剤を連続添加する白ライナーの製造方法及び白ライナーに関し、さらに詳細には、白ライナーの演色の問題がなく、安定した色調を有し、かつ地合いが良好な白ライナーの製造方法及び白ライナーに関する。」
「【0003】
また、白ライナーは、通常、表層には、バージンパルプや、脱墨処理あるいは漂白処理等が施された白色度が高い古紙パルプが用いられ、表層以外の層には脱墨処理あるいは漂白処理等が施されていない古紙パルプが用いられている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、地合いが良好で、かつ古紙パルプが高率配合されたパルプスラリーを表層に用いても演色の問題が少ない白ライナーを提供することにある。」
「【0014】
また、本発明の上記目的は、前記表層用のパルプスラリーに、古紙パルプを50重量%以上配合し、灰分を15重量%以上含有させたことを特徴とする白ライナーの製造方法を提供することによって、より効果的に達成される。」
「【0029】
本白ライナーの表層用のパルプスラリーには、古紙パルプが50重量%以上配合されており、このパルプスラリーを用いて抄紙された本白ライナーの表層は、JIS−P8204に基づく灰分(以下、単に「灰分」と言う。)を15重量%以上含有している。このように表層用のパルプスラリーに、古紙パルプが50重量%以上配合されていると、本白ライナーの表層の灰分を15重量%以上含有させることができるので、本白ライナーの地合いを向上させることができる。なお、後述する実施例で示すように、古紙パルプの配合量が50重量%未満であると、本白ライナーの表層の灰分を15重量%以上含有させることが難しくなり、本白ライナーの地合いを向上させることが難しくなる。
【0030】
表層用のパルプスラリーに配合される古紙パルプの原料は特に限定されるものではなく、例えば上白、コート、白アート、カード、特白、中白、模造、白マニラ等の公知の種々のものを使用することができるが、これらの中でも特に、灰分を多量に含むコート古紙や白アート古紙を使用することが好ましい。なお、これらの原料は単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。」
「【0058】
【表1】


カ. 甲第6号証について
「【技術分野】
【0001】
本発明は、着色層である表層の表面に樹脂を塗工した、美粧性が高い着色層を有する多層抄き光沢板紙に関する。
【背景技術】
【0002】
贈答用ギフトでは着色層を有する多層抄き板紙が多く使用されており、特にハム・ソーセージ、洋菓子等の分野では表面に光沢がある着色層を有する多層抄き板紙が使用されている。このような着色層を有する多層抄き板紙には、印刷品と抄き込み品とがある。抄き込み品とはパルプなどの原料を染料で着色した着色層を有している板紙のことで、印刷品とは例えばグラビア印刷機、フレキソ印刷機などを使用し、白ライナーやKライナー、ジュートライナーに油性あるいは水性インキを印刷した板紙のことである。」
「【0010】
本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、着色層を有する原紙の表面にオンマシンで樹脂を塗工することにより光沢度を8%以上とし、且つ段ボール原紙としての貼合・製函・印刷の加工適性を有する多層抄き光沢板紙を提供することである。」
「【0052】
また、実施例2〜20、比較例1〜3を表1に示す条件以外は実施例1と同様に作製し、本発明の評価を行った。なお、本実施例における滑剤には、ステアリン酸カルシウムを用いた。また、比較例2には、他社の市販されている着色層を有する多層抄き板紙を用い、評価した。」
「【手続補正2】
・・・
【0011】
本発明の上記目的は、原紙が表層、中層、及び裏層の少なくとも3層から構成され、少なくとも前記表層に着色剤を配合した着色層を有する多層抄き光沢板紙において、前記着色剤にアニオン性直接染料、カチオン性直接染料、塩基性染料のいずれか1つ又はこれらの組み合わせを用いると共に、前記表層、中層、裏層の各層に用いられる原料パルプのフリーネスの値を、表層の原料パルプのフリーネス<中層の原料パルプのフリーネス<裏層の原料パルプのフリーネス、となるように設定し、且つ、前記着色層の表面に樹脂をオンマシンで塗工して塗工層を設け、前記塗工層を圧着乾燥して光沢層を形成してなり、前記光沢層の光沢度を8%以上としたことを特徴とする多層抄き光沢板紙を提供することによって達成される。」

キ. 甲第7号証の1について
甲第7号証の1には、以下の事項が記載されている。
「一方、板紙に対するニーズの多様化,高品質化がさらに高まっている。このように状況変化に対応するため紙力増強剤に対する依存度が高まり,同時に使用量も急増し,紙力増強剤に対する改善が要求されている。」(152ページ、左欄、6〜9行)


」(154ページ、左欄)
「6. 結果の考察
実機テストの結果より
(1) 乾燥性の向上
(2) 硫酸ばん土の削減ができる
(3) 紙力剤同コスト添加で(20%削減)同等紙力を発現できる。」(154ページ、右欄、1〜6行)
「8. 今後の課題
今回の発表では,白ライナー,強化中芯での結果を述べたが他の抄紙機についても,従来処方と同等以上の乾燥性,地合面での効果がみられた。今後の課題として紙力発現性の更なる向上を目指し,現在取り組み中である。」(156ページ、左欄、1〜6行)

ク. 甲第8号証の1について
甲第8号証の1には、以下の事項が記載されている。
「紙力増強剤の使用は,デンプンや植物ガム等天然に存在する高分子化合物に端を発し,近年の高分子合成化学の進歩に伴い,種々の合成高分子化合物が紙力増強剤として使用されるようになってきた。特に,アクリルアミドを主成分とする合成高分子化合物は,紙力向上効果に優れているので,現在紙力増強剤の主流を占めている。」(1295ページ、左欄、3〜9行)
「1.5 板紙用紙力増強剤の技術動向
PAM系紙力増強剤の大半は,ライナー,中芯に代表される板紙に使用されている。」(1296ページ、右欄、1〜3行)
「1.5.2 炭酸カルシウム混入系での評価
資源の有効活用の観点から,段ボール古紙に限らず雑誌古紙やチラシを出来る限り使用することが求められている。しかし,雑誌古紙やチラシから系内に持ち込まれる炭酸カルシウムは,抄紙pHの上昇等を引き起こし,紙力増強剤の効果に悪影響を及ぼすことがある。このような状況を想定し,段ボール古紙に炭酸カルシウムを添加して,紙力剤の効果が実際にどのように影響されるかを検討した。
段ボール古紙に炭酸カルシウムを無添加,1.5%,3.0%添加して,紙力剤としてアニオンPAM/マンニックPAM併用,共重合PAM(改良DS)を1%添加した条件で比較した結果を示した(図1)。
アニオンPAM/マンニックPAM併用では,炭酸カルシウム添加量が多くなるにつれて歩留り・ろ水性が明らかに悪化する傾向であった。一方,共重合PAMでも炭酸カルシウムを3%添加すると歩留り・ろ水性がやや悪くなる傾向が見られたが,アニオンPAM/マンニックPAM処方よりは明らかに影響は小さかった。紙力も,いずれの処方とも炭酸カルシウム添加量が多くなる程低下する傾向が見られたが,共重合PAMはその傾向が小さかった。」(1297ページ、左欄、2〜23行)

ケ. 甲第9号証の1について
甲第9号証の1には、以下の事項が記載されている。
「2.2 内添紙力剤の市場と動向について
紙力剤には内添紙力剤以外に表面塗工や層間スプレーする紙力剤がある。澱粉やPAM系紙力剤を含めた紙力剤全体の2007年度の予想販売量は460千トンで,その内訳は内添が140千トン,表面が282千トン,層間が37千トンである(図1)。
内添紙力剤の内訳は,澱粉が92.5千トン,PAM系紙力剤が48.2千トンとなっている(図1)。この数量差は澱粉が安価である事からPAM対比使用量が多く推移してきたと考えられるが,最近の澱粉のコスト上昇に伴いPAM系紙力剤の見直しを行うユーザーも増えてきている。PAM系紙力剤は澱粉に比べて少ない添加量で優れた紙力効果を発現することから,より強度が必要な紙種では過去から使用されており,特に古紙配合率の高い板紙で多く使用されている。澱粉とPAM系紙力剤の最近3年と10年前の使用量を比較すると図2のようになる。紙・板紙の生産量が横ばいの中,澱粉の使用量は横ばいとなっているが,PAM系紙力剤は97年から05年にかけて大きな伸びを見せている。これは図3に示すように同時期に古紙の利用率が伸びたことで原料強度が低下したため,より効率よく強度を発揮できるPAM系紙力剤の需要が伸びた為と考えられる。また,古紙利用率の上昇はマシンの操業性を低下させるが,PAM系紙力剤は澱粉対比,強い凝集力に起因する優れた歩留まり効果を発揮することで操業性改善が可能となり,このことがPAM系紙力剤の使用量増加につながったと考える。」(1403ページ、左欄、8行〜右欄、5行)
「PAM系紙力剤は板紙での古紙配合に伴う紙力効果の改善だけでなく,濾水は歩留効果も改善できることで広く普及することとなった。」(1404ページ、右欄、13〜15行)

コ. 甲第10号証について
甲第10号証には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
2層以上の多層構造を有し、表層に古紙を含有し、表層の灰分含有量が3質量%以上である段ボール用ライナーであって、
抄紙機工程内でライナー表面に撥水剤の塗布が行われており、その紙面pHが3.5〜6.0であることを特徴とする段ボール用ライナー。」
「【0031】
実施例1
下記の原材料を用いて、下記の製造方法に従って、段ボール用ライナーを得た。なお、原材料の配合量kg/tとは、パルプ1tあたりの固形分換算の配合量である。
<原材料>
・表層
パルプ;NUKP(フリーネス450mlCSF)、段ボール古紙、配合比率90:10
紙力増強剤;ポリアクリルアマイド、5kg/t
サイズ剤;酸性ロジンエマルジョンサイズ1.2kg/t
定着剤;硫酸バンド、15kg/t
・表下層
パルプ;NUKP(フリーネス480mlCSF)段ボール古紙(フリーネス380mlCSF)、配合比率50/50
紙力増強剤;ポリアクリルアマイド、2kg/t
サイズ剤;酸性ロジンエマルジョンサイズ1.2kg/t
定着剤;硫酸バンド、15kg/t
【0032】
・中層
パルプ;段ボール古紙(フリーネス380mlCSF)、雑誌古紙(フリーネス320mlCSF)、配合比率50/50
紙力増強剤;ポリアクリルアマイド、2kg/t
サイズ剤;酸性ロジンエマルジョンサイズ0.4kg/t
定着剤;硫酸バンド、15kg/t
・裏層
パルプ;段ボール古紙(フリーネス380mlCSF)
紙力増強剤;ポリアクリルアマイド、5kg/t
サイズ剤;酸性ロジンエマルジョンサイズ0.6kg/t
定着剤;硫酸バンド、10kg/t」
「【0044】
【表1】



2. 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と引用物発明1とを対比する。
引用物発明1の「ライナー」が「段ボールを構成するコルゲート処理が施された中芯を挟持する」ことは、本件発明1の「白色段ボールの表面を構成する」ことに相当する。
引用物発明1の「表層」及び「裏層」は、それぞれ、本件発明1の「表層」及び「裏層」に相当するから、引用発明1の「少なくとも表層、表下層、及び裏層の3層の紙層を有し」ていることは、本件発明1の「少なくとも表層及び裏層を含む積層体であ」ることに相当する。
甲第1号証の【0054】の【表1】に記載された「(%)」は、表層の体積変化に応じて変化することのない、質量%であることは、明らかであるから、引用物発明の「表層」「の原料パルプには白物古紙が80%及び針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が20%配合されて成る原料パルプを用い、表層の原料パルプには紙力増強剤として澱粉をパルプに対し10kg/t添加し」、「表層」「の灰分が20%である」ことと、本件発明1の「前記表層は、表層に含まれるパルプの総質量に対して80〜100質量%の古紙パルプ、表層全体100質量部に対してCaCO3無水物換算で10〜30質量部のカルシウム、及び表層のパルプ100質量部に対して固形分換算で0.001〜3.0質量部のポリアクリルアミド系高分子を含む」ことは、「前記表層は、表層に含まれるパルプの総質量に対して80〜100質量%の古紙パルプを含む」ことの限りで一致する。

そうすると、本件発明1と引用物発明1とは、以下の点で一致し、かつ、相違する。
<一致点1>
白色段ボールの表面を構成する紙製の白色ライナーであって、少なくとも表層及び裏層を含む積層体であり、 前記表層は、表層に含まれるパルプの総質量に対して80%〜100質量%の古紙パルプを含む白色ライナー。」

<相違点1>
「前記表層は、表層に含まれるパルプの総質量に対して80〜100質量%の古紙パルプを含む」ことについて、本件発明1は「表層全体100質量部に対してCaCO3無水物換算で10〜30質量部のカルシウム、及び表層のパルプ100質量部に対して固形分換算で0.001〜3.0質量部のポリアクリルアミド系高分子」も含むのに対し、引用物発明1は「紙力増強剤として澱粉をパルプに対し10kg/t添加し」、「表層」「の灰分が20%である」点。

(2) <相違点1>ついての判断
甲第7号証の1及び甲第8号証の1の記載によれば、ライナーにPAMを含有させることは、本件特許に係る出願前の周知技術であるといえる。
しかし、甲第1号証には、「本白ライナーは、表層以外の層、すなわち表下層及び裏層にポリアクリルアミド(PAM)系紙力増強剤を必要に応じて添加すると、本白ライナーの破裂強度、JIS−P8126のリングクラッシュ法に準拠するリング剛度(リング強度)を維持することができるので、本白ライナー全体の強度低下を防止することができ、加工適性をより良好なものとすることができる。・・・なお、PAM系紙力増強剤が表層に添加されると、白ライナーが剛直になり、加工適性が低下するので好ましくない。」(【0038】)と記載されているから、引用物発明1には、引用物発明1の「表層の原料パルプ」に添加した「紙力増強剤」としてPAMを添加する動機付けはなく、むしろ、阻害事由が存在する。
よって、上記周知技術の存在を考慮しても、引用物発明1を、<相違点1>に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に為し得たことであるとはいえない。

(3) 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用物発明1及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3. 本件発明2〜5について
本件発明2〜5の各々は、本件発明1に構成を付加し、技術的に限定したものである。そうすると、本件発明2〜5は、本件発明1に包含されるものであるところ、上記2.に示したように、本件発明2〜5を包含するより広範な範囲である本件発明1が、引用物発明1及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから、本件発明2〜5も引用物発明1及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4. 本件発明6について
本件発明6と引用方法発明1とを対比すると、本件発明6は、表層用組成物にPAMを配合したのに対し、引用方法発明1は、そうではない点で、少なくとも相違する(以下「相違点2」という)。
そうすると、当該<相違点2>は、上記<相違点1>とPAMを含むか否かで、相違する点は同じであるから、上記2.で示した判断と同様に、引用方法発明1を、<相違点2>に係る本件発明6を備えたものとすることは、当業者が容易に為し得たことであるとはいえない。
よって、本件発明6は、引用方法発明1及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2. 理由2(サポート要件)について
(1) 本件発明1〜5
本件特許明細書には、表層のCa量の測定について、次の記載がある。
「・・・表層のみを他層から剥離し、測定サンプルとした。走査型電子顕微鏡(SEM)にて、表層表面の画像を取り込んだ後、蛍光X線分析(EDX)を用いて、表層に含まれるCaの元素の割合を算出した。・・・
上記測定で得られた表層のCa量から、Ca原子量:40g/mol、CaCO3分子量:100g/molより、下記の計算式により表層中の無水CaCO3換算のCa量を求めた。
CaCO3割合(%)=Ca割合(%)×100(g/mol)/40(g/mol)」(【0037】、【0038】)
そして、算出値を、【0044】の【表1】及び【0047】の【表2】に整理したものである。
そうすると、表層に含まれるCaが、本件特許明細書に記載された実施例や比較例の「湿式粉砕重質炭酸カルシウム」(【0036】)に由来するものであるか、あるいは申立人が上記2.(1)で主張する「重質炭酸カルシウム」を填料として配合せずに、古紙パルプ中に含有されているカルシウムを「CaCO3無水物換算で10〜30質量部」含ませた形態を含むものであるかにかかわらず、【表1】及び【表2】に示された「無水CaCO3換算(質量部)」の値は、Ca元素のみの割合に基づいて算出されたものであるといえる。
そして、【表1】及び【表2】の「無水CaCO3換算(質量部)」と、「古紙パルプ」及び「白色度」をみると、「無水CaCO3換算(質量部)」が10〜30質量部の範囲で、「古紙パルプ」は、80あるいは90質量部であるにもかかわらず、古紙パルプ割合が70と劣る比較例1の白色度(73.5%)とほぼ同等の白色度(70.2〜74.0)が得られている。
そうすると、本件発明1の白色ライナーは、表層に含まれるパルプの総質量に対して80〜100質量%と高い割合で古紙パルプを含むものであって、表層全体100質量部に対してCaCO3無水物換算で10〜30質量部のカルシウムを包含することで、古紙パルプがより低いものよりも高い白色度が得られるから、本件発明1、そして本件発明1を引用する本件発明2〜5は、上記本件発明の課題を解決するものである。

(2) 本件発明6
本件特許明細書の【0044】の【表1】及び【0045】の【表2】をみると、古紙パルプの割合が80あるいは90と高い実施例において、「表層のCa量」の「Caとして(質量部)」の値が1〜15質量部の重質炭酸カルシウムは、「白色度(表層)」が、古紙パルプ割合が70と劣る比較例1の白色度(73.5%)とほぼ同等の白色度(70.2〜74.0)であるから、本件発明6も本件特許の課題を解決するものである。

3. 理由3(実施可能要件)について
上記2.(1)に示したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、「重質炭酸カルシウム」を填料として配合せずに、古紙パルプ中に含有されているカルシウムを「CaCO3無水物換算で10〜30質量部」含ませた形態によっても、上記課題を解決することができることが理解できるから、上記第3の3.の申立人の主張は前提において誤りである。
そして、本件発明1〜5は、【0029】〜【0035】に記載された白色ライナーの製造方法によって、実施可能なことは明らかであり、このことは、【0036】〜【0048】に記載された実施例により裏付けられている。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1〜5を実施することができる程度に明確且つ十分に記載されたものである。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する
 
異議決定日 2022-03-11 
出願番号 P2016-173000
審決分類 P 1 651・ 536- Y (D21H)
P 1 651・ 121- Y (D21H)
P 1 651・ 537- Y (D21H)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 石井 孝明
特許庁審判官 藤井 眞吾
久保 克彦
登録日 2020-07-06 
登録番号 6729205
権利者 王子ホールディングス株式会社
発明の名称 段ボール用白色ライナー及びその製造方法、並びに白色段ボール  
代理人 志賀 正武  
代理人 川越 雄一郎  
代理人 鈴木 三義  
代理人 松沼 泰史  
代理人 伏見 俊介  
代理人 柳井 則子  
代理人 君塚 哲也  
代理人 高橋 詔男  

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