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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
管理番号 1384055
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-01-21 
確定日 2022-02-08 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6729383号発明「帯電防止フィルム及びその製造方法、並びに、液晶表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6729383号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜13〕について訂正することを認める。 特許第6729383号の請求項1〜5、7〜13に係る特許を維持する。 特許第6729383号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6729383号の請求項1〜13に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)10月15日(優先権主張 2014年(平成26年)10月23日、日本国)を国際出願日とする出願であって、令和2年7月6日にその特許権の設定登録がされ、令和2年7月22日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年1月21日 :特許異議申立人大久保直樹(以下「申立人」という。)による請求項1〜13に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年4月16日付け:取消理由通知書
令和3年6月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和3年8月2日 :申立人による意見書の提出

第2 本件訂正の適否1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の
「脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、
基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層とを備える、帯電防止フィルムであって、
前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、
前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下である、帯電防止フィルム。」を、
「脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、
基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層とを備える、帯電防止フィルムであって、
前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、
前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下であり、
前記帯電防止層の塗工幅方向の端部から50mm以内の両領域における、5mm2以上の面積の帯電防止層の断裂の数が、前記両領域の長さ1m当たり10個未満である、帯電防止フィルム。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3〜5、7〜13も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2の
「前記帯電防止層が、単層構造を有し、
前記帯電防止層の厚みが、1.5μm〜10.0μmである、請求項1記載の帯電防止フィルム。」を、
「脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、
基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層とを備える、帯電防止フィルムであって、
前記帯電防止層が、単層構造を有し、
前記帯電防止層の厚みが、1.5μm〜10.0μmであり、
前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、
前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下である、帯電防止フィルム。」
に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3〜5、7〜13も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7の
「前記金属酸化物粒子の表面が、加水分解性の有機ケイ素化合物で処理されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の帯電防止フィルム。」を、
「前記金属酸化物粒子の表面が、加水分解性の有機ケイ素化合物で処理されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の帯電防止フィルム。」
に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8〜13も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8の
「前記金属酸化物粒子が、鎖状に連結している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の帯電防止フィルム。」を、
「前記金属酸化物粒子が、鎖状に連結している、請求項1〜5及び7のいずれか一項に記載の帯電防止フィルム。」
に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9〜13も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9の
「液晶セルと、
前記液晶セルの視認側に設けられた偏光子と、
前記偏光子の視認側に設けられた、請求項1〜8のいずれか一項に記載の帯電防止フィルムとを備え、
前記帯電防止フィルムが、前記偏光子に近い順に、前記基材フィルム及び前記帯電防止層を備える、液晶表示装置。」を、
「液晶セルと、
前記液晶セルの視認側に設けられた偏光子と、
前記偏光子の視認側に設けられた、請求項1〜5、7及び8のいずれか一項に記載の帯電防止フィルムとを備え、
前記帯電防止フィルムが、前記偏光子に近い順に、前記基材フィルム及び前記帯電防止層を備える、液晶表示装置。」
に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10、11も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項12の
「請求項1〜8のいずれか一項に記載の帯電防止フィルムの製造方法であって、
前記基材フィルム上に、前記金属酸化物粒子を含む帯電防止剤を、相対湿度が40%RH以上60%RH以下の環境において塗工することを含む、帯電防止フィルムの製造方法。」を、
「請求項1〜5、7及び8のいずれか一項に記載の帯電防止フィルムの製造方法であって、
前記基材フィルム上に、前記金属酸化物粒子を含む帯電防止剤を、相対湿度が40%RH以上60%RH以下の環境において塗工することを含む、帯電防止フィルムの製造方法。」
に訂正する(請求項12の記載を引用する請求項13も同様に訂正する。)。

2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1〜13は、請求項2〜13が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1−13〕について請求されたものである。
そして、請求項3〜12は、請求項1の記載及び請求項2の記載を引用しているものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1及び訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載されていた発明特定事項「帯電防止層」について、本件訂正前の請求項6に記載されていた発明特定事項により、「断裂の数」を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該「断裂の数」については、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の請求項6、【0127】及び【0198】〜【0200】に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2において、本件訂正前の請求項1を引用して記載していたものを、請求項1を引用しないものとするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、本件訂正前の請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4〜7
訂正事項4〜7は、引用する請求項のうち、訂正事項3によって削除された請求項6を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

4 小括
上記のとおり、訂正事項1〜7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜13〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1〜5、7〜13に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜5、7〜13に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、
基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層とを備える、帯電防止フィルムであって、
前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、
前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下であり、
前記帯電防止層の塗工幅方向の端部から50mm以内の両領域における、5mm2以上の面積の帯電防止層の断裂の数が、前記両領域の長さ1m当たり10個未満である、帯電防止フィルム。
【請求項2】
脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、
基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層とを備える、帯電防止フィルムであって、
前記帯電防止層が、単層構造を有し、
前記帯電防止層の厚みが、1.5μm〜10.0μmであり、
前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、
前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下である、帯電防止フィルム。
【請求項3】
前記帯電防止フィルムの透過色相L*が、94〜97である、請求項1又は2記載の帯電防止フィルム。
【請求項4】
前記帯電防止層の屈折率が、1.50〜1.55である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の帯電防止フィルム。
【請求項5】
前記基材フィルムが、第一表面層、中間層及び第二表面層をこの順に備え、
前記中間層が、紫外線吸収剤を含み、
前記基材フィルムの厚みが、10μm以上60μm以下であり、
前記基材フィルムの波長380nmにおける光線透過率が、10%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の帯電防止フィルム。
【請求項7】
前記金属酸化物粒子の表面が、加水分解性の有機ケイ素化合物で処理されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の帯電防止フィルム。
【請求項8】
前記金属酸化物粒子が、鎖状に連結している、請求項1〜5及び7のいずれか一項に記載の帯電防止フィルム。
【請求項9】
液晶セルと、
前記液晶セルの視認側に設けられた偏光子と、
前記偏光子の視認側に設けられた、請求項1〜5、7及び8のいずれか一項に記載の帯電防止フィルムとを備え、
前記帯電防止フィルムが、前記偏光子に近い順に、前記基材フィルム及び前記帯電防止層を備える、液晶表示装置。
【請求項10】
前記偏光子と、前記帯電防止フィルムとの間に、紫外線硬化型の接着剤層を備える、請求項9記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記液晶セルが、IPS方式の液晶セルである、請求項9又は10記載の液晶表示装置。
【請求項12】
請求項1〜5,7及び8のいずれか一項に記載の帯電防止フィルムの製造方法であって、
前記基材フィルム上に、前記金属酸化物粒子を含む帯電防止剤を、相対湿度が40%RH以上60%RH以下の環境において塗工することを含む、帯電防止フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記帯電防止剤が、エタノール、メタノール及びイソプロパノールの混合溶媒を含む、請求項12に記載の帯電防止フィルムの製造方法。」

以下、下線は、当審が強調又は理解の便宜のために付した。

第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和3年4月16日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)サポート要件について
本件特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
本件特許の請求項1〜5、7〜13は、「帯電防止層の塗工幅方向の端部から50mm以内の両領域における、5mm2以上の面積の帯電防止層の断裂の数」が10個以上のものを含むから、本件特許の請求項1〜5、7〜13は、本件特許の「発明を解決しようとする課題」を解決しないものを含むところ、出願時の技術常識に照らしても、本件特許の請求項1〜5、7〜13の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件特許の請求項1〜5、7〜13は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(2)進歩性について
本件特許の請求項1、3、4に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、本件特許の請求項5に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基いて、本件特許の請求項7〜9、12、13に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、又は引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基いて、本件特許の請求項10、11に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて、又は引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2011−123513号公報(甲第2号証)
引用文献2:特開2012−236921号公報(甲第1号証)
引用文献3:特開2005−181615号公報(甲第4号証)
引用文献4:特開2006−181731号公報(甲第3号証、周知技術を示す文献)
引用文献5:井上正良,「乾燥工程の問題点」,金属表面技術,11巻(1960年)10号(甲第6号証、技術常識を示す文献)

2 当審の判断
(1)サポート要件について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定される要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。以下、本件特許の特許請求の範囲の記載について検討する。
本件特許の発明が解決しようとする課題は、「透明性及び帯電防止性の両方に優れる帯電防止フィルム;及び、前記帯電防止フィルムを備えた液晶表示装置、を提供することを目的とする」(本件特許の明細書【0008】)であるところ、当該課題のうち「透明性」「に優れる」点については、本件発明1及び本件発明2の「前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下であり」という発明特定事項により解決され、また、「帯電防止性」「に優れる」点については、本件発明1及び本件発明2の「前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり」という発明特定事項により解決されている。
そして、前記「前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下であり」及び「前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり」という点は、実施例1〜10により実現されていることが、発明の詳細な説明に記載されている。
また、本件特許の発明の詳細な説明には、「帯電防止層の断裂」について、次のように記載されている。
「【0120】
帯電防止剤の塗工は、所定の相対湿度の環境において行うことが好ましい。前記の塗工時の具体的な相対湿度は、好ましくは40%RH以上、より好ましくは45%RH以上、更に好ましくは50%RH以上、特に好ましくは52%RH以上であり、好ましくは65%RH以下、より好ましくは60%RH以下、更に好ましくは58%RH以下、特に好ましくは57%RH以下である。・・・また、塗工時の環境の相対湿度を前記範囲の上限値以下にすることにより、金属酸化物粒子の過剰な凝集を抑制できるので、帯電防止層の断裂及びヘイズのムラを抑制できる。
【0121】
・・・
一般に、溶媒を含む塗料を基材上に塗工して塗料膜を形成した場合、塗工直後の溶媒の揮発により、基材から溶媒の気化熱の分だけ熱が奪われ、塗料膜の表面に結露が生じることがある。このような現象は「ブラッシング」と呼ばれ、このブラッシングが生じた部分では見た目が白化することがある。
【0122】
前記のようなブラッシングが、仮に基材フィルム上に形成された帯電防止剤の膜に生じると、当該ブラッシングが生じた部分において帯電防止剤の膜に含まれる金属酸化物粒子の凝集が過剰に進行する可能性がある。金属酸化物粒子の凝集が過剰に進行すると、帯電防止層に断裂が生じたり、帯電防止層のヘイズにムラが生じたりすることがある。
・・・そのため、この帯電防止剤の膜の端部近傍においては、帯電防止剤の膜は大面積で外気に触れて早く冷却が開始されるので、冷えやすく、結露が生じやすい。したがって、この帯電防止層の膜の端部近傍では、前記のブラッシングの影響を受けて、帯電防止層の断裂及びヘイズのムラが特に生じやすい。
・・・
【0127】具体的には、帯電防止層120の塗工幅方向Xの端部から50mm以内の領域121及び122における、5mm2以上の面積の帯電防止層120の断裂の数が、前記両領域121及び122の長さ1m当たり、好ましくは10個未満、より好ましくは5個以下、特に好ましくは2個以下である。これにより、帯電防止フィルムの全体でヘイズ値を小さくできるので、帯電防止フィルムの透明性を高めることができる。また、帯電防止層の表面抵抗値を帯電防止フィルムの全体で所定の範囲に収めることができる。」
「【0189】
[実施例6]
前記工程(1−3)において、帯電防止剤(A1)の塗工の際の相対湿度を70%に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、帯電防止フィルムの製造及び評価、並びに、液晶表示装置の製造及び評価を行った。
実施例6では、帯電防止層の塗工幅方向の端部から50mm以内の領域に、疎らではあるが帯電防止層の断裂が見られた。そのため、液晶表示装置の画像の視認性が低下したが、使用上実害が無い程度であった。
・・・
【0196】
[比較例3]
前記工程(1−3)において、帯電防止剤(A1)の塗工厚みを調整することにより、帯電防止層の厚みを11.5μmに変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、帯電防止フィルムの製造及び評価、並びに、液晶表示装置の製造及び評価を行った。
比較例3では、液晶表示装置の画像の視認性がヘイズによって大幅に低くなっていた。
【0197】
[結果]
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表1〜表3に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
UV透過率:基材フィルムの測定波長380nmにおける光線透過率。
SnO−Sb:シリカで被覆されたアンチモンドープ酸化スズの粒子。
断裂の数:帯電防止層の塗工幅方向の端部から50mm以内の両領域における、前記両領域の長さ1m当たりの、5mm2以上の面積の帯電防止層の断裂の数。
【0199】
【表2】

【0200】
【表3】


以上の記載によれば、「帯電防止層の膜の端部近傍では、」「ブラッシングの影響を受けて、帯電防止層の断裂」「が特に生じやすい」ところ、「帯電防止剤の」「塗工時の環境の相対湿度を」「好ましくは65%RH以下、より好ましくは60%RH以下、更に好ましくは58%RH以下、特に好ましくは57%RH以下」「にすることにより、金属酸化物粒子の過剰な凝集を抑制できるので、帯電防止層の断裂」「を抑制でき」、「これにより、帯電防止フィルムの全体でヘイズ値を小さくでき」、「帯電防止層の表面抵抗値を帯電防止フィルムの全体で所定の範囲に収めることができ」るものであるが、「帯電防止フィルム」の「断裂の数」が「9」である実施例6のヘイズ値が0.28%である一方で、「帯電防止フィルム」の「断裂の数」が「7」である比較例3のヘイズ値が0.31%である。
そうすると、前記課題の解決には、必ずしも「前記帯電防止層の塗工幅方向の端部から50mm以内の両領域における、5mm2以上の面積の帯電防止層の断裂の数が、前記両領域の長さ1m当たり10個未満である」ことを要するわけではない。
したがって、本件発明1〜13は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されたもので、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。

(2)進歩性について
ア 引用文献に記載された事項、引用発明
(ア)引用文献1
引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
透明基材の少なくとも片面に、該透明基材側から順に、ハードコート層と、帯電防止層、低屈折率層を備える反射防止フィルムであって、
前記低屈折率層側の反射防止フィルム表面での視感平均反射率が0.5%以上1.5%以下の範囲内であり、且つ、
前記低屈折率層側の反射防止フィルム表面での波長400nmから700nmの範囲における分光反射率の最大値と最小値の差が0.2%以上0.9%以下の範囲内であり、且つ、
前記反射防止フィルムの視感平均光透過率吸収損失が0.5%以上3.0%以下の範囲内であり、且つ、
前記反射防止フィルムの平行光線透過率が94.0%以上96.5%以下の範囲内である
ことを特徴とする反射防止フィルム。
・・・
【請求項3】
前記反射防止フィルムのヘイズが0.5%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射防止フィルム。
・・・
【請求項5】
前記帯電防止ハードコート層が電子電導型の導電性ポリマーもしくは電子電導型の導電性無機粒子を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記帯電防止ハードコート層がアンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム酸化スズ(ITO)のいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記反射防止フィルムの低屈折率層表面における表面抵抗値が1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の反射防止フィルム。
・・・
【請求項9】
前記ハードコート層の屈折率と前記透明基材の屈折率の差が0.05以下の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至8に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の反射防止フィルムの低屈折率層が設けられている側の反対側の透明基材フィルムの面に偏光層、透明基材フィルムを備える偏光板。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載の反射防止フィルムの低屈折率層が設けられている側の反対側の透明基材フィルムの面に偏光層、透明基材フィルムを備える偏光板、液晶セル、偏光板、バックライトユニットをこの順に備えることを特徴とする透過型液晶ディスプレイ。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、窓やディスプレイなどの表面に外光が反射することを防止することを目的として設けられる反射防止フィルムに関する。特に、液晶ディスプレイ(LCD)、CRTディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などのディスプレイの表面に設けられる反射防止フィルムに関する。特に、液晶ディスプレイ(LCD)表面に設けられる反射防止フィルムに関する。」
「【0012】
本発明にあっては、透明基材の少なくとも片面に、該透明基材側から順に、ハードコート層と導電性物質を添加した帯電防止層と低屈折率層を備える反射防止フィルムにおいて、十分な反射防止性能、十分な帯電防止性能を有するだけでなく、反射光の色味を低減し、色ムラの発生を抑え、且つ、反射防止フィルムをディスプレイ表面、特に透過型液晶ディスプレイ表面に設けた際に、優れた明所コントラストと優れた暗所コントラストを示すことができる反射防止フィルムを提供することを課題とする。」
「【0049】
また、本発明の反射防止フィルムにあっては、反射防止フィルムの平行光線透過率が94.0%以上96.5%以下の範囲内であることを特徴とする。反射防止フィルムの平行光線透過率を94.0%以上96.5%以下とすることにより、コントラストを良好なものとすることができる。反射防止フィルムの平行光線透過率が94.0%に満たない場合にあっては、白表示した際の白輝度が低下し、コントラストが低下してしまう。反射防止フィルムの平行光線透過率が94.0%に満たない場合にあっては、低屈折率層を設けて平行光線透過率を向上させた分をキャンセルしてしまうこととなる。一方、裏面反射等を考慮すると平行光線透過率を96.5%を超える反射防止フィルムを作製することは実質的に困難であり、本発明の反射防止フィルムにあっては平行光線透過率96.5%以下であることを特徴とする。なお、反射防止フィルムの平行光線透過率はJIS K 7105(1981)によって求めることができる。」
「【0056】
また、本発明の反射防止フィルムにあっては、反射防止フィルムのヘイズが0.5%以下の範囲内であることが好ましい。本発明の反射防止フィルムのヘイズを0.5%以下とすることにより、明所コントラストのより高い反射防止フィルムとすることができる。ヘイズが0.5%を超える場合には、散乱による透過損失によって暗所での黒表示させた際の光モレを見かけ上抑制することが可能となるが、明所での黒表示の際に散乱によって黒表示が白ボケしてコントラストが低下してしまう。なお、反射防止フィルムのヘイズはJIS K 7105(1981)によって求めることができる。
【0057】
また、本発明の反射防止フィルムにあっては、帯電防止ハードコート層が電子電導型の導電性ポリマーもしくは電子電導型の導電性無機粒子を含むことが好ましい。ハードコート層に帯電防止機能を付与するにあっては導電性材料を添加する必要があるが、このとき電子電導型の導電性材料とイオン電導型の導電性材料に大別される。ここで、電子電導型の導電性材料の方が低湿度下であっても帯電防止機能を安定的に発揮することができる。
【0058】
また、本発明にあっては、帯電防止ハードコート層がアンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)のいずれかを含むことが好ましい。アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)といった酸化スズ系の導電性粒子は、可視光領域における各波長での光透過吸収損失が波長が長くなるにつれ漸次増加する傾向を示す。したがって、酸化スズ系の金属酸化物粒子を用いることにより、反射防止フィルムの可視光領域における各波長での光透過吸収損失を波長が長くなるにつれ漸次増加させることができ、光透過吸収損失がQ450<Q550<Q650を満たす反射防止フィルムを容易に製造することができる。
【0059】
また、本発明にあっては、帯電防止ハードコートフィルムの低屈折率層表面における表面抵抗値が1.0×106Ω/□以上1.0×1011Ω/□以下の範囲内であることが好ましい。低屈折率層側の反射防止フィルム表面の表面抵抗値を1.0×1011(Ω/cm2)以下とすることにより、帯電防止性に優れた反射防止フィルムとすることができる。
【0060】
反射防止フィルム表面の表面抵抗値が1.0×1011(Ω/cm2)を超える場合にあっては十分な帯電防止性を有さないために、ディスプレイ表面に反射防止フィルムを設けた際に埃等の付着汚れが発生することがある。また、ディスプレイ表面の帯電がディスプレイ内部に影響することがある。低屈折率層側の反射防止フィルム表面の表面抵抗値が1.0×106(Ω/cm2)を下回る場合、導電性粒子をバインダマトリックス中に多量添加する必要があり、不経済であり、また、光学特性が本発明内で調整不可能なものとなってしまうことがある。」
「【0070】
本発明の反射防止フィルムにおける透明基材としては、種々の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。中でも、トリアセチルセルロースにあっては、複屈折率が小さく、透明性が良好であることから液晶ディスプレイに対し好適に用いることができる。
【0071】
なお、透明基材の厚みは25μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましく、さらには、40μm以上80μm以下の範囲内にあることが好ましい
【0072】
さらに、これらの有機高分子に公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより機能を付加させたものも使用できる。また、透明基材は上記の有機高分子から選ばれる1種または2種以上の混合物、または重合体からなるものでもよく、複数の層を積層させたものであってもよい。」
「【0094】
本発明の帯電防止層にあっては、導電性材料とバインダマトリックス形成材料を含む帯電防止形成用塗液を塗布し、透明基材上に塗膜を形成することにより形成することができる。
【0095】
導電性材料としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウム−酸化スズ(ITO)、酸化亜鉛、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(AZO)、酸化亜鉛−酸化ガリウム(GZO)、酸化インジウム−酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化アンチモン−酸化スズ(ATO)、酸化タングステン等の導電性を有する金属酸化物粒子や金属粒子からなる導電性無機粒子を用いることができる。
【0096】
中でも、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)といった酸化スズ系の金属酸化物粒子あるいは酸化インジウム酸化スズ(ITO)を用いることにより、反射防止フィルムの可視光領域における各波長での光透過吸収損失を波長が長くなるにつれ漸次増加させることができ、光透過吸収損失がQ450<Q550<Q650を満たす反射防止フィルムを容易に製造することができる。
・・・
【0104】
なお、帯電防止層形成用塗液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、塗液には添加剤として、表面調整剤、帯電防止剤、防汚剤、撥水剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤等を加えることもできる。」
「【0119】
(実施例1)
<透明基材>
透明基材として、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムと、偏光層であるヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコールを2枚の厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムで狭持した偏光板を用意した。
・・・
【0120】
<ハードコート層の形成>
・・・得られたハードコート層形成用塗液をトリアセチルセルロースフィルム上にワイヤーバーコーターにより塗布した。ハードコート層形成用塗液を塗布したトリアセチルセルロースフィルムをオーブンで80℃1分乾燥をおこない、乾燥後、メタルハイドランプを用い、120Wの出力で20cmの距離から10秒間紫外線照射をおこなうことによりハードコート層を形成した。得られたハードコート層の膜厚は5μmであり、屈折率は1.52であった。
【0121】
<帯電防止層の形成>
有機ケイ素化合物としてテトラエトキシシランを原料とし、これにイソプロピルアルコール、0.1N塩酸を加え、加水分解させることより、オリゴマーからなるテトラエトキシシランの重合体を含む溶液を得た。この溶液に一次粒子径が8nmのアンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粒子を混合し、イソプロピルアルコールを加え、塗液100重量部中にテトラエトキシシランの重合体2.5重量部、アンチモンドープ酸化スズ微粒子2.5重量部含む帯電防止層形成用塗液を得た。一方、ハードコート層が形成されたトリアセチルセルロースフィルムを、50℃1.5N−NaOH水溶液に2分間浸漬してアルカリ処理をおこない、水洗後、0.5重量%のH2SO4水溶液に室温で30秒浸漬し、中和させ、水洗、乾燥処理をおこなった。得られた帯電防止層形成用塗液をアルカリ処理したハードコート層上にワイヤーバーコーターに塗布し、オーブンで120℃1分間加熱乾燥をおこない、帯電防止層を形成した。得られた帯電防止層の膜厚は163nmであり、屈折率は1.53であり、光学膜厚は250nmであった。
【0122】
<低屈折率層の形成>
・・・得られた低屈折率層形成用塗液を帯電防止層上にワイヤーバーコーターに塗布し、オーブンで120℃で1分間加熱乾燥をおこない、低屈折率層を形成した。得られた低屈折率層の膜厚は91nmであり、屈折率は1.37であり、光学膜厚は125nmであった。
【0123】
以上により、透明基材、ハードコート層、帯電防止層、低屈折率層を順に備える反射防止フィルム、および透明基材、偏光層、透明基材からなる偏光板上にハードコート層、帯電防止層、低屈折率層を順に備える偏光板を作製した。
【0124】
(実施例2)
<透明基材>
透明基材として、(実施例1)と同一のトリアセチルセルロースフィルムと偏光板を用意した。
【0125】
<ハードコート層の形成>
(実施例1)と同様の方法によりハードコート層を形成した。得られたハードコート層の膜厚は5μmであり、屈折率は1.52であった。・・・
【0126】
<帯電防止層の形成>
(実施例1)と同様の方法により帯電防止層を形成した。得られた帯電防止層の膜厚は163nmであり、屈折率は1.53であり、光学膜厚は250nmであった。
【0127】
<低屈折率層の形成>
・・・得られた低屈折率層形成用塗液を帯電防止層上にワイヤーバーコーターに塗布し、オーブンで120℃で1分間加熱乾燥をおこない、低屈折率層を形成した。得られた低屈折率層の膜厚は94nmであり、屈折率は1.33であり、光学膜厚は125nmであった。
【0128】
以上により、透明基材、ハードコート層、帯電防止層、低屈折率層を順に備える反射防止フィルム、および透明基材、偏光層、透明基材からなる偏光板上にハードコート層、帯電防止層、低屈折率層を順に備える偏光板を作製した。
【0129】
(実施例3)
<透明基材>
透明基材として、(実施例1)と同一のトリアセチルセルロースフィルムと偏光板を用意した。
【0130】
<ハードコート層の形成>
(実施例1)と同様の方法によりハードコート層を形成した。得られたハードコート層の膜厚は5μmであり、屈折率は1.52であった。・・・
【0131】
<帯電防止層の形成>
有機ケイ素化合物としてテトラエトキシシランを原料とし、これにイソプロピルアルコール、0.1N塩酸を加え、加水分解させることより、オリゴマーからなるテトラエトキシシランの重合体を含む溶液を得た。この溶液に一次粒子径が8nmのリンドープ酸化スズ(PTO)微粒子を混合し、イソプロピルアルコールを加え、塗液100重量部中にテトラエトキシシランの重合体2.0重量部、リンドープ酸化スズ微粒子3.0重量部含む帯電防止層形成用塗液を得た。一方、ハードコート層が形成されたトリアセチルセルロースフィルムを、50℃1.5N−NaOH水溶液に2分間浸漬してアルカリ処理をおこない、水洗後、0.5重量%のH2SO4水溶液に室温で30秒浸漬し、中和させ、水洗、乾燥処理をおこなった。得られた帯電防止層形成用塗液をアルカリ処理したハードコート層上にワイヤーバーコーターに塗布し、オーブンで120℃1分間加熱乾燥をおこない、帯電防止層を形成した。得られた帯電防止層の膜厚は181nmであり、屈折率は1.54であり、光学膜厚は279nmであった。
【0132】
<低屈折率層の形成>
(実施例1)と同様の方法により低屈折率層を形成した。得られた低屈折率層の膜厚は91nmであり、屈折率は1.37であり、光学膜厚は125nmであった。
【0133】
以上により、透明基材、ハードコート層、帯電防止層、低屈折率層を順に備える反射防止フィルム、および透明基材、偏光層、透明基材からなる偏光板上にハードコート層、帯電防止層、低屈折率層を順に備える偏光板を作製した。
【0134】
(実施例4)
<透明基材>
透明基材として、(実施例1)と同一のトリアセチルセルロースフィルムと偏光板を用意した。
【0135】
<ハードコート層の形成>
(実施例1)と同様の方法によりハードコート層を形成した。得られたハードコート層の膜厚は5μmであり、屈折率は1.52であった。
【0136】
<帯電防止層の形成>
(実施例1)と同様の方法により帯電防止層を形成した。得られた帯電防止層の膜厚は163nmであり、屈折率は1.53であり、光学膜厚は250nmであった。
【0137】
<低屈折率層の形成>
・・・
得られた塗液を帯電防止ハードコート層上にワイヤーバーコーターにより塗布し、塗膜を形成し、その後、オーブンで乾燥をおこない、乾燥後、コンベア式紫外線硬化装置により露光量500mJ/cm2で硬化して低屈折率層を形成した。得られた低屈折率層の膜厚は94nmであり、屈折率は1.39であり、光学膜厚は130nmであった。
【0138】
以上により、透明基材、ハードコート層、帯電防止層、低屈折率層を順に備える反射防止フィルム、および透明基材、偏光層、透明基材からなる偏光板上にハードコート層、帯電防止層、低屈折率層を順に備える偏光板を作製した。」
「【0175】
【表1】


以上の記載事項、特に実施例1〜5の「反射防止フィルム」に着目すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムと、偏光層であるヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコールを2枚の厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムで狭持した偏光板である透明基材、トリアセチルセルロースフィルム上に形成された5μmのハードコート層、ハードコート層上に形成された膜厚163〜181nmの帯電防止層、帯電防止層上に形成された膜厚91〜94nmの低屈折率層を順に備える反射防止フィルムであって、
帯電防止層が、一次粒子径が8nmのアンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粒子、一次粒子径が8nmのリンドープ酸化スズ(PTO)微粒子のいずれかを含み、
前記低屈折率層側の反射防止フィルム表面での視感平均反射率が0.7〜1.4%であり、
ヘイズが0.1〜0.3%であり、
平行光線透過率94.2〜94.9%であり、
視感平均光透過率吸収損失が1.3〜2.0%であり、
透過率吸収損失の最大値と最小値の差が0.7〜1.5%であり、
450nm、550nm、650nmでの透過率吸収損失が1.0〜2.7%であり、
反射色相a*が0.99〜2.89であり、反射色相bが−0.35〜−2.61であり、
表面抵抗値が2.8×109〜8.0×109Ω/□である、
反射防止フィルム。」

(イ)引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
(メタ)アクリロイル基を分子中に3個以上有する化合物を50重量%以上含有する組成物と光重合開始剤とを必須成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と粒子表面を加水分解性有機ケイ素化合物で処理した導電性を有する金属酸化物微粒子とを必須成分とする帯電防止ハードコート塗材であって、前記(メタ)アクリロイル基を分子中に3個以上有する化合物を50重量%以上含有する組成物の酸価が0.01〜0.5mgKOH/gであることを特徴とする帯電防止ハードコート塗材。
・・・
【請求項4】
前記金属酸化物微粒子が、酸化錫、アンチモンがドーピングされた酸化錫、アンチモンがドーピングされた酸化インジウム、スズがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタンからなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物である請求項1、2又は3に記載の帯電防止ハードコート塗材。
【請求項5】
前記金属酸化物微粒子が、2〜10個の範囲で鎖状に連結したものである請求項4記載の帯電防止ハードコート塗材。
・・・
【請求項11】
透明基板に請求項1〜10のいずれか1つに記載の帯電防止ハードコート塗材を塗布して帯電防止ハードコート層を形成した光学部材。」
「【0006】
従って、本発明の課題は、前記課題に着目してなされたものであり、高い帯電防止性と高い光線透過率の両方を兼ね備えたハードコート膜を形成できる帯電防止ハードコート塗材を提供することにある。
・・・
【0008】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリロイル基を分子中に3個以上有する化合物を50重量%以上含有する組成物と光重合開始剤とを必須成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と粒子表面を加水分解性有機ケイ素化合物で処理した導電性を有する金属酸化物微粒子とを必須成分とする帯電防止ハードコート塗材であって、前記(メタ)アクリロイル基を分子中に3個以上有する化合物を50重量%以上含有する組成物の酸価が0.01〜0.5mgKOH/gであることを特徴とする帯電防止ハードコート塗材、該帯電防止ハードコート塗材を基材に塗布した光学部材を提供する。」
「【0050】
さらに、得られた分散液は、必要に応じて水を添加して用いることができる。水添加を行うと、導電性微粒子の連結数が増加し、得られる透明導電性被膜の導電性は著しく向上でき、このような塗料を用いて基材上に透明導電性被膜を形成すると、概ね102〜1012Ω/□の表面抵抗値を有する透明導電性微粒子層を形成することができるので、帯電防止等に優れた透明導電性被膜付基材を得ることができる。」
「【0056】
塗材中の導電性を有する金属酸化物微粒子の濃度は、固形分として0.01〜20重量%、さらには1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、得られる被膜の帯電防止効果が高く、また、得られる被膜の透明性が低下したり、ヘーズが高くなることもない。また、塗料中の樹脂の濃度は、樹脂を固形分として1〜5重量%、さらには0.2〜39.6重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、基材との密着性が高く、また形成する透明導電性被膜の厚さを均一にすることができる。
【0057】
前記微粒子の濃度が前記範囲にあれば、被膜の厚さが薄すぎず厚すぎることもなく、充分な帯電防止性能の被膜を形成できるとともに、透明性にも優れ、ヘーズが低く、また被膜にクラックや基材に反りが生じることもない。さらに、塗料の粘度が高くならないので、塗工性に優れ、表面の平坦性が低下したり筋ムラが生じたりすることもない。」
「【0063】
本発明におけるハードコート膜を設ける物品(基材)は、特に限定せず、プラスティック、ガラス、金属等からなるものが挙げられる。また本発明においては、帯電防止性能と透明性の両方を備えたハードコート膜を提供できる為、光学部品やディスプレイなどに適用すると好適である。
【0064】
基材としては、特に限定はされないが、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂あるいはポリアリレート樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂を混合して使用してもよい。この中で、セルロースエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリエステルなどが好ましい例として挙げられる。
前記の基材の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステルフィルム、ポリカーボネート、シンジオタクティックポリスチレン、ポリアリレート、ノルボルネン樹脂系フィルム、例えばアートン(JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上日本ゼオン(株)製)等が挙げられ、透明性、機械的性質、光学的異方性がない点等好ましく用いられる。特に、セルロースエステルを主成分とするフィルムであることが好ましい」
「【0066】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に述べる。例中、%、部は特に断りがない限り重量基準である。
【0067】
製造例1
錫酸カリウム130gと酒石酸アンチモニルカリウム30gを純水400gに溶解した混合溶液を調製した。この調製した溶液を12時間かけて、60℃、攪拌下の硝酸アンモニウム1.0gと15%アンモニア水12gを溶解した純水1000g中に添加して加水分解を行った。このとき10%硝酸溶液をpH9.0に保つよう同時に添加した。生成した沈殿物を濾別洗浄した後、再び水に分散させて固形分濃度20重量%のSbドープ酸化錫前駆体の水酸化物分散液を調製した。この分散液を温度100℃で噴霧乾燥した。得られた粉体を空気雰囲気下、550℃で2時間加熱処理することによりアンチモンドープ酸化錫粉末を得た。この粉末60部を濃度4.3重量%の水酸化カリウム水溶液140部に分散させ、分散液を30℃に保持しながらサンドミルで3時間粉砕してゾルを調製した。次に、このゾルをイオン交換樹脂でpHが3.0になるまで脱アルカリイオン処理を行い、ついで、純水を加えて固形分濃度20重量%のアンチモンドープ酸化スズ微粒子からなる導電性微粒子(1)分散液を調製した。この導電性微粒子(1)分散液のpHは3.3であった。また導電性微粒子(1)の平均粒子径は9nmであった。次いで、濃度20重量%の導電性微粒子(1)分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8%)4.0gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル100部を1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、15時間加熱処理を行った。このときの固形分濃度は10%であった。次いで限外濾過膜にて分散媒の水、エタノ−ルをエタノ−ルに置換し、固形分濃度20%の、シリカで被覆した鎖状導電性微粒子(1)分散液を調製した。鎖状の導電性を有する金属酸化物微粒子(1)を構成する微粒子(1)の平均連結数は5個であった。なお、平均連結数は、鎖状導電性微粒子の透過型電子顕微鏡写真を撮影し、100個の鎖状導電性微粒子について、連結数を求め、この平均値を四捨五入して、平均連結数を求めた。
【0068】
製造例2
塩化錫57.7gと塩化アンチモン7.0gとをメタノ−ル100gに溶解して溶液を調製した。調整した溶液を4時間かけて60℃攪拌下の純水1,000gに添加して加水分解を行い、生成した沈殿物を濾別洗浄した後、再び水に分散させて固形分濃度10%のアンチモンドープ酸化スズ前駆体の水酸化物分散液を調製した。この分散液を温度100℃で噴霧乾燥した。上記粉体を窒素ガス雰囲気下550℃で2時間加熱処理することによりSbドープ酸化錫粉末を得た。この粉末60gを濃度4.3重量%の水酸化カリウム水溶液140gに分散させ、分散液を30℃に保持しながらサンドミルで3時間粉砕してゾルを調製した。次いで、このゾルをイオン交換樹脂でpHが3.3になるまで脱アルカリの処理を行い、純水を加えて濃度20重量%のSbドープ酸化スズ微粒子からなる導電性を有する金属酸化物微粒子(2)分散液を調製した。この導電性微粒子(2)分散液のpHは3.8であった。また導電性を有する金属酸化物微粒子(2)の平均粒子径は25nmであった。次いで、濃度20重量%の導電性を有する金属酸化物微粒子(2)分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8%)5.0gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル100gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、15時間加熱処理を行った。このときの固形分濃度は10%であった。次いで限外濾過膜にて分散媒の水、エタノ−ルをエタノ−ルに置換し、固形分濃度30%のシリカで被覆した鎖状導電性微粒子(2)分散液を調製した。なお、鎖状の導電性を有する金属酸化物微粒子(2)を構成する微粒子(2)の平均連結数は4個であった。
【0069】
製造例3
錫酸カリウム130部と酒石酸アンチモニルカリウム30部を純水400gに溶解した混合溶液を調製した。この調製した溶液を12時間かけて、60℃、攪拌下の硝酸アンモニウム1.0部と15%アンモニア水12部を溶解した純水1000部中に添加して加水分解を行った。このとき10%硝酸溶液をpH9.0に保つよう同時に添加した。生成した沈殿物を濾別洗浄した後、再び水に分散させて固形分濃度20重量%のSbドープ酸化錫前駆体の水酸化物分散液を調製した。
この分散液を温度100℃で噴霧乾燥した。得られた粉体を空気雰囲気下、550℃で2時間加熱処理することによりアンチモンドープ酸化錫粉末を得た。
この粉末60部を濃度4.3重量%の水酸化カリウム水溶液140部に分散させ、分散液を30℃に保持しながらサンドミルで3時間粉砕してゾルを調製した。
次に、このゾルをイオン交換樹脂でpHが3.0になるまで脱アルカリイオン処理を行い、ついで、純水を加えて固形分濃度20重量%のアンチモンドープ酸化スズ微粒子からなる導電性微粒子(1)分散液を調製した。この導電性を有する金属酸化物微粒子(3)分散液のpHは3.3であった。また導電性微粒子(3)の平均粒子径は10nmであった。次いで、濃度20重量%の導電性を有する金属酸化物微粒子(3)分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8%)4.0部を3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル100部を1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、15時間加熱処理を行った。このときの固形分濃度は10%であった。次いで限外濾過膜にて分散媒の水、エタノ−ルをエタノ−ルに置換し、固形分濃度20%のシリカで被覆した鎖状の導電性を有する金属酸化物微粒子(3)分散液を調製した。さらに得られた鎖状導電性微粒子分散液100gにメチルエチルケトン66.4部とイオン交換水7.4部をあらかじめ混合した液を混合し、た。なおこの時の鎖状導電性微粒子(3)を構成する導電性微粒子(3)の平均連結数は8個であった。
製造例4
テトラエトキシシランを添加しなかった以外は製造例1と同様にして、鎖状導電性微粒子(4)分散液を調製した。
【0070】
実施例1
紫外線硬化性樹脂組成物(1)〔ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6A)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(5A)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(6A)の混合物、但し、重量比(6A)/(5A)/(4A)=64/17/19、固形分濃度100%。〕45.9部、メチルエチルケトン42.7部、光開始剤2.3部(チバスペシャリティ社製:イルガキュア184。固形分100%。)を十分混合して、製造例1で調製した鎖状の導電性を有する金属酸化物微粒子(1)分散液9.17部に混合して帯電防止ハードコート(A−1)塗材を調製した。これら紫外線硬化性樹脂組成物(1)の酸価は0.05mgKOH/gであった。得られた帯電防止ハードコート(A−1)の塗材外観を観察し、次いで、80μmのトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製)に、バーコーターで、膜厚6μmとなるように塗工し、60℃で2分間乾燥したのち、高圧水銀ランプで500mJ/cm2照射し、ハードコート層を形成した。得られたハードコート層について、塗膜外観の観察、表面抵抗値(ハードコート層形成直後、及び、23.1℃・48%RHで18時間放置後)、フリンジ及び粘度安定性の測定を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0071】
実施例2
紫外線硬化樹脂組成物(2)ペンタエリスリトールテトラアクリレート(4A)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(3A)、ペンタエリスリトールジアクリレート(2A)の混合物、但し、重量比(4A)/(3A)/(2A)=42/55/3、固形分濃度100%。)20.0部、紫外線硬化樹脂組成物(2)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6A)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(5A)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(4A)の混合物、但し、重量比(6A)/(5A)/(4A)=37/44/19、固形分濃度100%。)25.9部、メチルエチルケトン42.7部、光開始剤2.3部(チバスペシャリティ社製:イルガキュア184。固形分100%。)を十分混合して、調製した鎖状の導電性を有する金属酸化物微粒子(1)分散液(固形分20%。)9.17部と帯電防止ハードコート(A−2)塗材を調製した。これら紫外線硬化性樹脂組成物(2)の酸価は0.03mgKOH/gであった。次いで、実施例1と同様にしてハードコート層を形成し、塗膜外観の観察、表面抵抗値、フリンジ及び粘度安定性の測定を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0072】
実施例3〜5
実施例1中紫外線硬化性樹脂組成物(1)の代わりに、表1に示される紫外線硬化樹脂組成物(3)〜(5)を用いる以外は、実施例1と同様にして、帯電防止ハードコート(A−3)、(A−4)、(A−5)塗材を調製し、実施例1と同様にしてハードコート層を形成し、塗膜外観の観察、表面抵抗値、フリンジ及び粘度安定性の測定を行なった。得られた結果を表2に示す。これら紫外線硬化性樹脂組成物(3)〜(5)の酸価はそれぞれ、0.03、0.05、0.02mgKOH/gであった。
【0073】
実施例6
製造例2で調製した鎖状の導電性を有する金属酸化物微粒子(2)分散液を、前記微粒子(1)分散液の代わりに用いた以外は、実施例1と同様にして、ハードコート塗材(A−6)を調製し、次いでハードコート層を形成し、塗膜外観の観察、表面抵抗値、フリンジ及び粘度安定性の測定を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0074】
実施例7
鎖状導電性微粒子(1)分散液の代わりに、鎖状の導電性を有する金属酸化物微粒子(3)分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、ハードコート塗材(A−7)を調製し、ハードコート層を形成し塗膜外観の観察、表面抵抗値、フリンジ及び粘度安定性の測定を行なった。
実施例8
実施例3で用いた紫外線硬化樹脂組成物(3)に、更に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのアクリル酸付加物(該化合物の水酸基の0.5mol%付加したもの)1重量部を添加した紫外線硬化樹脂組成物(8)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ハードコート塗材(A−8)を調製し、次いでハードコート層を形成し、塗膜外観の観察、表面抵抗値、フリンジ及び粘度安定性の測定を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0075】
これら紫外線硬化性樹脂組成物の酸価は、0.3mgKOH/gであった。
【0076】
実施例9(アセトンを使用した実施例)
紫外線硬化性樹脂組成物(1)〔ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6A)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(5A)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(6A)の混合物、但し、重量比(6A)/(5A)/(4A)=64/17/19、固形分濃度100%。〕45.9部、メチルエチルケトン20.0部、アセトン22.7部、光開始剤2.3部(チバスペシャリティ社製:イルガキュア184。固形分100%。)を十分混合して、製造例1で調製した鎖状の導電性を有する金属酸化物微粒子(1)分散液9.17部に混合して帯電防止ハードコート(A−9)塗材を調製した。得られた帯電防止ハードコート(A−9)の塗材外観を観察し、次いで、80μmのトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製)に、バーコーターで、膜厚6μmとなるように塗工し、60℃で2分間乾燥したのち、高圧水銀ランプで500mJ/cm2照射し、ハードコート層を形成した。得られたハードコート層について、塗膜外観の観察、表面抵抗値、フリンジ及び粘度安定性の測定を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0077】
実施例10(水を使用した実施例)
紫外線硬化性樹脂組成物(1)〔ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6A)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(5A)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(6A)の混合物、但し、重量比(6A)/(5A)/(4A)=64/17/19、固形分濃度100%。〕45.9部、メチルエチルケトン20.0部、アセトン22.7部、精製水0.5部、光開始剤2.3部(チバスペシャリティ社製:イルガキュア184。固形分100%。)を十分混合して、製造例1で調製した鎖状の導電性を有する金属酸化物微粒子(1)分散液9.17部に混合して帯電防止ハードコート(A−10)塗材を調製した。得られた帯電防止ハードコート(A−10)の塗材外観を観察し、次いで、80μmのトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製)に、バーコーターで、膜厚6μmとなるように塗工し、60℃で2分間乾燥したのち、高圧水銀ランプを500mJ/cm2照射し、ハードコート層を形成した。得られたハードコート層について、塗膜外観の観察、表面抵抗値、フリンジ及び粘度安定性の測定を行なった。得られた結果を表2に示す。」
「【0086】
【表2】

【0087】
【表3】


以上の記載事項、特に実施例1〜10の「反射防止フィルム」に着目すると、引用文献2には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「紫外線硬化性樹脂組成物、メチルエチルケトン又はメチルエチルケトン及びアセトン又はメチルエチルケトン、アセトン及び精製水、光開始剤を十分混合し、鎖状の導電性を有する金属酸化物微粒子分散液に混合して帯電防止ハードコート塗材を調製し、得られた酸価0.02〜0.05mgKOH/gの帯電防止ハードコートの塗材外観を観察し、80μmのトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製)に、バーコーターで、膜厚6μmとなるように塗工し、60℃で2分間乾燥したのち、高圧水銀ランプで500mJ/cm2照射し、ハードコート層を形成し、23.1℃・48%RHで18時間放置後の表面抵抗値が1×109〜7×109Ω/□である、光学部材。」

(ウ)引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
中間層の両側に表面層が積層されてなる光学積層体であって、各層の樹脂成分が脂環式構造を有する重合体樹脂であり、該中間層が以下の[1]及び[2]の要件を満たし、
前記積層体の波長380nmにおける光線透過率が3〜9%で、370nmにおける光線透過率が2%以下で、波長420〜780nmにおける光線透過率が85%以上で、かつ波長385〜395nmにおける光線透過率の変化率が4%/nm以上である光学積層体。
[1]中間層の紫外線吸収剤の含有量が0.5〜2.5重量%である。
[2]中間層における紫外線吸収剤の濃度のばらつきが全面で±0.1%以内である。
・・・
【請求項3】
偏光板保護フィルムとして用いられる請求項1又は2に記載の光学積層体。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等に用いられる光学積層体に関し、さらに詳しくは液晶表示装置に使用したときに表示むらの小さい光学積層体に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、長期間使用においても紫外線透過率の変化が少なく、液晶表示に実装したときに表示むらや着色のない光学積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして、前記課題を解決する手段として、
(1)中間層の両側に表面層が積層されてなる光学積層体であって、各層の樹脂成分が脂環式構造を有する重合体樹脂であり、該中間層が以下の[1]及び[2]の要件を満たし、
前記積層体の波長380nmにおける光線透過率が3〜9%で、370nmにおける光線透過率が2%以下で、波長420〜780nmにおける光線透過率が85%以上で、かつ波長385〜395nmにおける光線透過率の変化率が4%/nm以上である光学積層体、
[1]中間層の紫外線吸収剤の含有量が0.5〜2.5重量%である、
[2]中間層における紫外線吸収剤の濃度のばらつきが全面で±0.1%以内である;
(2)中間層の厚さのばらつきが全面で±1μm以内である請求項1記載のフィルム;
及び
(3)偏光板保護フィルムとして用いられる請求項1又は2に記載の光学積層体;
がそれぞれ提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期間使用後の紫外線透過率の変化が面内で均一とすることができるので、本発明の光学積層体を光学部材、特に偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に実装すると、液晶表示装置の表示むらや着色を小さくすることができる。」
「【0025】
本発明において、中間層の厚さは10〜40μmであることが好ましい。中間層の厚さが10μm未満であると層間の界面が荒れてしまい面状態が悪化してしまうおそれがある。一方、中間層の厚さが40μmを超えると偏光板保護フィルムとして使用した場合に偏光板全体が厚くなってしまい実用が難しくなる。
【0026】
本発明において、中間層の厚さのばらつきが全面で±1μm以内であることが好ましい。中間層の厚さのばらつきが全面で±1μm以内であることにより、色調のばらつきが小さくなる。また、長期使用後の色調変化も均一となるため、長期使用後の色調ムラも起こらない。
中間層の厚さは、市販の接触式厚さ計を用いて、総厚を測定し、厚さ測定部分を切断し断面を光学顕微鏡で観察して、中間層と表面層との厚さ比を求めて、その比率より中間層の厚さを計算する。以上の操作を積層体の横方向及び縦方向において一定間隔毎に行う。
中間層の厚さのばらつきは、上記で測定した測定値の算術平均値を基準厚さTaveとし、測定した厚さTの内最大値をTmax、最小値をTminとして以下の式から算出する。
厚さのばらつき(μm)=Tmin−Tave、及びTmax−Tave
ここで前記Tmin−Tave、及びTmax−Taveの絶対値が異なる場合は、絶対値の大きいほうをとる。
本発明において、表面層には紫外線吸収剤を含有しないことが好ましく、表面層の厚さは5〜10μmとすることが好ましい。」
「【0037】
本発明の光学積層体を偏光板保護フィルムとして用いる場合は、偏光板の片面又は両面に、適当な接着剤を介してこれを積層する。偏光板は、ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素などをドープした後、延伸加工することにより得られる。接着層としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルや合成ゴムなどの適当なポリマーをベースポリマーとする粘着剤などが用いられる。」

(エ)引用文献4
引用文献4には、次の事項が記載されている。
「【0093】
液晶セルは液晶モードによって特に限定されない。液晶モードとしては、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型、VA(Vertical Alignment)型、MVA(Multiple Vertical Alignment)型、IPS(In Plane Switching)型、OCB(Optical Compensated Bend)型、反射型、半透過型等が挙げられる。」
この記載において例示されるように、IPS方式の液晶セルは周知である(以下「周知技術」という。)。

(オ)引用文献5
引用文献5には、次の事項が記載されている。
「5.乾燥工租における塗料の欠陥
5−1 ブラッシング
溶剤の蒸発によって固化する塗料は,低沸点で蒸発量の大きい溶剤を多量に使用しているため,塗装後溶剤の蒸発潜熱によって塗面が冷却され,空気中の水分が塗面に結露する結果,塗膜は白化し不透明となる。湿度が75以下%で塗装すればこの欠陥は生じない。・・・」(489ページ左欄6〜12行)

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムである透明基材」と、本件発明1の「脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルム」とは、「熱可塑性樹脂からなる基材フィルム」の点で一致する。
引用発明の「一次粒子径が8nmのアンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粒子、一次粒子径が8nmのリンドープ酸化スズ(PTO)微粒子のいずれかを含」む「帯電防止層」は、本件発明1の「基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層」に相当する。
引用発明の「反射防止フィルム」は、「ハードコート層上に形成された膜厚163〜181nmの帯電防止層」を備えるから、本件発明1の「帯電防止フィルム」に相当する。
引用発明の「表面抵抗値が2.8×109〜8.0×109Ω/□である」ことは、本件発明1の「前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であ」ることに相当する。
引用発明の「ヘイズが0.1〜0.3%であ」ることは、本件発明1の「前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下であ」ることに相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
「熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層とを備える、帯電防止フィルムであって、
前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、
前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下である、帯電防止フィルム」
[相違点1]
「熱可塑性樹脂からなる基材フィルム」について、本件発明1は、「脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる」のに対し、引用発明の「透明基材」は「厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム」である点。
[相違点2]
本件発明1は、「前記帯電防止層の塗工幅方向の端部から50mm以内の両領域における、5mm2以上の面積の帯電防止層の断裂の数が、前記両領域の長さ1m当たり10個未満である」のに対し、引用発明の「帯電防止層」は、その点が不明である点。

(イ)判断
まず、相違点2について検討する。
上記(1)に記載したとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載によれば、本件特許の「断裂の数」については、「帯電防止層の膜の端部近傍では、」「ブラッシングの影響を受けて、帯電防止層の断裂」「が特に生じやすい」ところ、「帯電防止剤の」「塗工時の環境の相対湿度を」「好ましくは65%RH以下、より好ましくは60%RH以下、更に好ましくは58%RH以下、特に好ましくは57%RH以下」「にすることにより、金属酸化物粒子の過剰な凝集を抑制できるので、帯電防止層の断裂」「を抑制でき」、「これにより、帯電防止フィルムの全体でヘイズ値を小さくでき」、「帯電防止層の表面抵抗値を帯電防止フィルムの全体で所定の範囲に収めることができ」るものであるが、「帯電防止フィルム」の「断裂の数」が「9」である実施例6のヘイズ値が0.28%である一方で、「帯電防止フィルム」の「断裂の数」が「7」である比較例3のヘイズ値が0.31%であること、がわかる。
すなわち、「帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下であ」ることが、「帯電防止層の塗工幅方向の端部から50mm以内の両領域における、5mm2以上の面積の帯電防止層の断裂の数が、前記両領域の長さ1m当たり10個未満である」わけではない。
そうすると、引用発明の「反射防止フィルム」の「ヘイズが0.1〜0.3%であ」ることが、ただちに、「帯電防止層の塗工幅方向の端部から50mm以内の両領域における、5mm2以上の面積の帯電防止層の断裂の数が、前記両領域の長さ1m当たり10個未満である」ことにはならないから、相違点2は実質的な相違点である。
そして、引用文献1〜4のいずれにも、「帯電防止層の膜の端部近傍」における「ブラッシング」や「帯電防止層の断裂」について、記載も示唆もされていないし、引用文献5には「湿度が75以下%で塗装すれば」、「塗膜は白化し不透明となる」「欠陥は生じない」、すなわち「ブラッシング」は生じない旨が記載されているものの、「ブラッシング」と「金属酸化物粒子の過剰な凝集を抑制できる」こと、ひいては「帯電防止層の断裂」「を抑制できる」ことについては記載も示唆もされておらず、他に、「帯電防止層の膜の端部近傍」における「ブラッシング」や「帯電防止層の断裂」と、「帯電防止フィルムの全体でヘイズ値を小さくでき」、「帯電防止層の表面抵抗値を帯電防止フィルムの全体で所定の範囲に収めることができ」るという効果との関係が、当業者に周知であったことを示す証拠もない。
したがって、引用発明において、「帯電防止層の膜の端部近傍」における「ブラッシング」に着目し、「帯電防止フィルムの全体でヘイズ値を小さくでき」、「帯電防止層の表面抵抗値を帯電防止フィルムの全体で所定の範囲に収めることができ」るという効果を期待して、相違点2に係る本件発明1のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と引用発明とを対比する。
引用発明の「厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムである透明基材」と、本件発明2の「脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルム」とは、「熱可塑性樹脂からなる基材フィルム」の点で一致する。
引用発明の「一次粒子径が8nmのアンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粒子、一次粒子径が8nmのリンドープ酸化スズ(PTO)微粒子のいずれかを含」む「帯電防止層」は、本件発明2の「基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む」「帯電防止層」に相当する。
引用発明の「反射防止フィルム」は、「ハードコート層上に形成された膜厚163〜181nmの帯電防止層」を備えるから、本件発明2の「帯電防止フィルム」に相当する。
引用発明の「帯電防止層」が「ハードコート層上に形成された」ことは、本件発明2の「前記帯電防止層が、単層構造を有し」ていることに相当する。
引用発明の「表面抵抗値が2.8×109〜8.0×109Ω/□である」ことは、本件発明2の「前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であ」ることに相当する。
引用発明の「ヘイズが0.1〜0.3%であ」ることは、本件発明2の「前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下であ」ることに相当する。
そうすると、本件発明2と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
「熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層とを備える、帯電防止フィルムであって、
前記帯電防止層が、単層構造を有し、
前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、
前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下である、帯電防止フィルム。」
[相違点3]
「熱可塑性樹脂からなる基材フィルム」について、本件発明2は、「脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる」のに対し、引用発明の「透明基材」は「厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム」である点。
[相違点4]
本件発明2は、「前記帯電防止層の厚みが、1.5μm〜10.0μmであ」るのに対し、引用発明の「帯電防止層」は、「膜厚163〜181nm」である点。

(イ)判断
まず、相違点4について検討する。
引用発明は、「透明基材の少なくとも片面に、該透明基材側から順に、ハードコート層と導電性物質を添加した帯電防止層と低屈折率層を備える反射防止フィルムにおいて、十分な反射防止性能、十分な帯電防止性能を有するだけでなく、反射光の色味を低減し、色ムラの発生を抑え、且つ、反射防止フィルムをディスプレイ表面、特に透過型液晶ディスプレイ表面に設けた際に、優れた明所コントラストと優れた暗所コントラストを示すことができる反射防止フィルムを提供することを課題とする」(引用文献1の【0012】)ものであり、「本発明の反射防止フィルムは、低屈折率層(14)と帯電防止層(13)の光学干渉により反射防止機能が発現する」ことにより、「反射防止フィルム表面に入射する外光の反射を抑制することができ、明所でのコントラストを向上させることができ」、「また、反射防止フィルムの透過率を向上させることができ、白表示させた際の白輝度を向上し、コントラストを向上させることができる」(引用文献1の【0028】)ものであり、引用発明の「帯電防止層」の膜厚を、(1.5μm÷181nm=)約8〜(10μm÷163nm=)約61倍にまで増やすと、屈折率が変化することは明らかであるから、引用発明の「反射防止」という機能の機序である「低屈折率層と」「の光学干渉」の点で阻害要因があり、また、この点が阻害要因でなかったにせよ、引用発明において、そのようにする動機もないから、引用発明において、相違点4に係る本件発明2のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明3〜5、7〜13について
本件発明3〜5、7〜13は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1又は本件発明2を限定するものであるから、上記イ〜ウで検討したのと同じ理由により、当業者が、引用発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものではない。

第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由の概要
(1)進歩性
本件訂正前の請求項1〜3、5〜13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3〜6号証に例示される周知技術に基いて、本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第3〜6号証に例示される周知技術及び甲第7号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

甲第1〜4号証及び甲第6号証:第4の1(2)に記載のとおり。
甲第5号証:米国特許出願公開第2011/0285640号明細書
甲第7号証:特開2012―194548号公報

(2)明確性要件
本件訂正前の請求項1に記載された「前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下である」の範囲が不明確であるため、本件訂正前の請求項1〜13に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たさず、特許を受けることができない。

2 当審の判断
(1)進歩性について
ア 甲各号証に記載された事項
(ア)甲第5号証
甲第5号証には、日本語で記載すると、次の事項が記載されている。
「[0050] 前記電界遮蔽層は、ディスプレイ14の表面上の静電荷を防止する液晶層38の動作を妨害することを確実に防止するために、この遮蔽層は、十分な導電性を有していなければならない。同時に、遮蔽層が過度に導電性を有しないことに注意すべきである。なぜならば、これは、タッチセンサの静電容量センサー機能に影響を与えることになるからである。好ましくは、遮蔽層の抵抗率は10Mオーム/平方〜10Gオーム/平方である。この範囲内の抵抗率を有する遮蔽膜は、高抵抗を有すると呼ばれることもある。遮蔽層は、絶縁されていない(なぜなら、静電電荷の影響を遮断するのに有効である態様を防止するためである。)。同時に、遮蔽層は適度に導電性である。なぜなら、導電性の高い導体は過度な遮蔽を提供し、タッチセンサを切断しまうからである。」

(イ)甲第7号証
甲第7号証には、次の事項が記載されている。
「【0095】
[帯電防止層]
本発明における帯電防止層は、屈折率が1.48〜1.65であることが好ましい。更に望ましくは1.48〜1.60、最も好ましくは1.48〜1.55である。上記範囲内とすることで基材との干渉ムラを抑制し、更に低屈折率層を積層した際の反射色味をニュートラルにすることができ好ましい。
【0096】
帯電防止層の膜厚は0.05〜20μmが好ましく、2〜15μmが好ましく、5〜10μmが最も好ましい。上記範囲とすることで物理強度と導電性を両立することができる。
【0097】
帯電防止層の透過率は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが最も好ましい。
【0098】
帯電防止層のヘイズは、防眩性付与のための樹脂粒子を含有しない場合は3%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。一方、防眩性付与のために樹脂粒子を含有する場合は、0.1〜30%であることが好ましく、0.1〜20%であることが更に好ましい。」
「【0105】
(透明支持体)
本発明の光学フィルムにおける透明支持体としては、透明基材フィルムが好ましい。透明基材フィルムとしては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスなど、特に限定は無い。透明樹脂フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルムポリオレフィン、脂環式構造を有するポリマー(ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製))、などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、脂環式構造を有するポリマーが好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
透明支持体の厚さは通常25μm〜1000μm程度のものを用いることができるが、好ましくは25μm〜250μmであり、30μm〜90μmであることがより好ましい。
透明支持体の表面は平滑であることが好ましく、平均粗さRaの値が1μm以下であることが好ましく、0.0001〜0.5μmであることが好ましく、0.001〜0.1μmであることが更に好ましい。
透明支持体については、特開2009−98658号公報の段落[0163]〜[0169]に記載されており、本発明においても同様である。」

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「80μmのトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製)」と、本件発明1の「脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルム」とは、「熱可塑性樹脂からなる基材フィルム」の点で一致する。
甲1発明の「紫外線硬化性樹脂組成物、メチルエチルケトン又はメチルエチルケトン及びアセトン又はメチルエチルケトン、アセトン及び精製水、光開始剤を十分混合し、鎖状の導電性を有する金属酸化物微粒子分散液に混合して帯電防止ハードコート塗材を調製し、得られた酸価0.02〜0.05mgKOH/gの帯電防止ハードコートの塗材外観を観察し、80μmのトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製)に、バーコーターで、膜厚6μmとなるように塗工し、60℃で2分間乾燥したのち、高圧水銀ランプで500mJ/cm2照射し、」「形成し」た「ハードコート層」は、本件発明1の「基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層」に相当する。
甲1発明の「光学部材」は、「帯電防止ハードコート塗材」を「80μmのトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製)に、バーコーターで、膜厚6μmとなるように塗工し、60℃で2分間乾燥したのち、高圧水銀ランプで500mJ/cm2照射し、ハードコート層を形成し」たものであるから、本件発明1の「帯電防止フィルム」に相当する。
甲1発明の「光学フィルム」が「23.1℃・48%RHで18時間放置後の表面抵抗値が1×109〜7×109Ω/□である」ることは、本件発明1の「前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であ」ることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
「熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、
基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層とを備える、帯電防止フィルムであって、
前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下である、帯電防止フィルム。」
[相違点5]
「熱可塑性樹脂からなる基材フィルム」について、本件発明1は、「脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる」のに対し、甲1発明の「透明基材」は、「厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム」である点。
[相違点6]
本件発明1は、「前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下であ」るのに対し、甲1発明の「光学フィルム」は、その点が不明である点。
[相違点7]
本件発明1は「前記帯電防止層の塗工幅方向の端部から50mm以内の両領域における、5mm2以上の面積の帯電防止層の断裂の数が、前記両領域の長さ1m当たり10個未満である」のに対し、甲1発明の「光学フィルム」は、その点が不明である点。

(イ)判断
まず、相違点7について検討する。
引用文献1〜5、甲第5号証及び甲第7号証のいずれにも、「帯電防止層の膜の端部近傍」における「ブラッシング」や「帯電防止層の断裂」について、記載も示唆もされていないし、引用文献5には「湿度が75以下%で塗装すれば」、「塗膜は白化し不透明となる」「欠陥は生じない」、すなわち「ブラッシング」は生じない旨が記載されているものの、「ブラッシング」と「金属酸化物粒子の過剰な凝集を抑制できる」こと、ひいては「帯電防止層の断裂」「を抑制できる」ことについては記載も示唆もされておらず、他に、「帯電防止層の膜の端部近傍」における「ブラッシング」や「帯電防止層の断裂」と、「帯電防止フィルムの全体でヘイズ値を小さくでき」、「帯電防止層の表面抵抗値を帯電防止フィルムの全体で所定の範囲に収めることができ」るという効果との関係が、当業者に周知であったことを示す証拠もない。
したがって、甲1発明において、「帯電防止層の膜の端部近傍」における「ブラッシング」に着目し、「帯電防止フィルムの全体でヘイズ値を小さくでき」、「帯電防止層の表面抵抗値を帯電防止フィルムの全体で所定の範囲に収めることができ」るという効果を期待して、相違点7に係る本件発明1のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「80μmのトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製)」と、本件発明2の「脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルム」とは、「熱可塑性樹脂からなる基材フィルム」の点で一致する。
甲1発明の「紫外線硬化性樹脂組成物、メチルエチルケトン又はメチルエチルケトン及びアセトン又はメチルエチルケトン、アセトン及び精製水、光開始剤を十分混合し、鎖状の導電性を有する金属酸化物微粒子分散液に混合して帯電防止ハードコート塗材を調製し、得られた酸価0.02〜0.05mgKOH/gの帯電防止ハードコートの塗材外観を観察し、80μmのトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製)に、バーコーターで、膜厚6μmとなるように塗工し、60℃で2分間乾燥したのち、高圧水銀ランプで500mJ/cm2照射し、」「形成し」た「ハードコート層」は、本件発明2の「基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層」に相当する。
甲1発明の「光学部材」は、「帯電防止ハードコート塗材」を「80μmのトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製)に、バーコーターで、膜厚6μmとなるように塗工し、60℃で2分間乾燥したのち、高圧水銀ランプで500mJ/cm2照射し、ハードコート層を形成し」たものであるから、本件発明2の「帯電防止フィルム」に相当する。
甲1発明の「帯電防止ハードコート塗材」を「80μmのトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製)に、バーコーターで、膜厚6μmとなるように塗工し、60℃で2分間乾燥したのち、高圧水銀ランプで500mJ/cm2照射し、ハードコート層を形成し」たことは、本件発明2の「前記帯電防止層が、単層構造を有し、前記帯電防止層の厚みが、1.5μm〜10.0μmであ」ることに相当する。
甲1発明の「光学フィルム」が「23.1℃・48%RHで18時間放置後の表面抵抗値が1×109〜7×109Ω/□である」ることは、本件発明2の「前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であ」ることに相当する。
そうすると、本件発明2と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
「熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、
基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層とを備える、帯電防止フィルムであって、
前記帯電防止層が、単層構造を有し、
前記帯電防止層の厚みが、1.5μm〜10.0μmであり、
前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下である、帯電防止フィルム。」
[相違点8]
「熱可塑性樹脂からなる基材フィルム」について、本件発明2は、「脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる」のに対し、甲1発明の「透明基材」は、「厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム」である点。
[相違点9]
本件発明2は、「前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下であ」るのに対し、甲1発明の「光学フィルム」は、その点が不明である点。

(イ)判断
まず、相違点9について検討する。
引用文献2(甲第1号証)には、ヘーズが低くする旨の示唆があるが(引用文献2の【0056】〜【0057】)、ヘーズについて具体的な値は記載されておらず、また、甲1発明の構成によって、ヘーズを0.3%以下にすることは、引用文献1〜5、甲第5号証及び甲第7号証のいずれにも、記載も示唆もされておらず、他に、当業者に周知であったことを示す証拠もない。
したがって、甲1発明において、相違点8に係る本件発明2のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明3〜5、7〜13について
本件発明3〜5、7〜13は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1又は本件発明2を限定するものであるから、上記イ〜ウで検討したのと同じ理由により、当業者が、甲1発明、引用文献1に記載された事項、引用文献3に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものではない。

(2)明確性要件について
「ヘイズ値が、0.3%以下である」ことは、その字句どおりであり、何ら不明確な点はなく、その測定方法についても、本件特許の発明の詳細な説明には「【0139】・・・帯電防止フィルムのヘイズ値は、JIS K7136に準拠して、ヘイズメーター(東洋精機社製「ヘイズガードII)を用いて測定しうる。」及び「【0156】(帯電防止フィルムのヘイズ値の測定方法)帯電防止フィルムのヘイズ値は、JIS K7136に準拠して、ヘイズメーター(東洋精機社製「ヘイズガードII)を用いて測定した。」と記載されているとおりであり、当業者が理解するヘイズ値と異なる定義であるわけでもないから、本件発明1〜13は明確である。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1〜5、7〜13に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1〜5、7〜13に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、請求項6に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、申立人による請求項6に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、
基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層とを備える、帯電防止フィルムであって、
前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、
前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下であり、
前記帯電防止層の塗工幅方向の端部から50mm以内の両領域における、5mm2以上の面積の帯電防止層の断裂の数が、前記両領域の長さ1m当たり10個未満である、帯電防止フィルム。
【請求項2】
脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルムと、
基材フィルム上に設けられ、導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層とを備える、帯電防止フィルムであって、
前記帯電防止層が、単層構造を有し、
前記帯電防止層の厚みが、1.5μm〜10.0μmであり、
前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×106Ω/□以上1.0×1010Ω/□以下であり、
前記帯電防止フィルムのヘイズ値が、0.3%以下である、帯電防止フィルム。
【請求項3】
前記帯電防止フィルムの透過色相L*が、94〜97である、請求項1又は2記載の帯電防止フィルム。
【請求項4】
前記帯電防止層の屈折率が、1.50〜1.55である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の帯電防止フィルム。
【請求項5】
前記基材フィルムが、第一表面層、中間層及び第二表面層をこの順に備え、
前記中間層が、紫外線吸収剤を含み、
前記基材フィルムの厚みが、10μm以上60μm以下であり、
前記基材フィルムの波長380nmにおける光線透過率が、10%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の帯電防止フィルム。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記金属酸化物粒子の表面が、加水分解性の有機ケイ素化合物で処理されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の帯電防止フィルム。
【請求項8】
前記金属酸化物粒子が、鎖状に連結している、請求項1〜5及び7のいずれか一項に記載の帯電防止フィルム。
【請求項9】
液晶セルと
前記液晶セルの視認側に設けられた偏光子と、
前記偏光子の視認側に設けられた、請求項1〜5、7及び8のいずれか一項に記載の帯電防止フィルムとを備え、
前記帯電防止フィルムが、前記偏光子に近い順に、前記基材フィルム及び前記帯電防止層を備える、液晶表示装置。
【請求項10】
前記偏光子と、前記帯電防止フィルムとの間に、紫外線硬化型の接着剤層を備える、請求項9記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記液晶セルが、IPS方式の液晶セルである、請求項9又は10記載の液晶表示装置。
【請求項12】
請求項1〜5、7及び8のいずれか一項に記載の帯電防止フィルムの製造方法であって、
前記基材フィルム上に、前記金属酸化物粒子を含む帯電防止剤を、相対湿度が40%RH以上60%RH以下の環境において塗工することを含む、帯電防止フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記帯電防止剤が、エタノール、メタノール及びイソプロパノールの混合溶媒を含む、請求項12に記載の帯電防止フィルムの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-01-28 
出願番号 P2016-555197
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 石井 孝明
藤井 眞吾
登録日 2020-07-06 
登録番号 6729383
権利者 日本ゼオン株式会社
発明の名称 帯電防止フィルム及びその製造方法、並びに、液晶表示装置  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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