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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E05D
管理番号 1384066
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-08 
確定日 2022-02-08 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6756672号発明「ピボットヒンジ、及び、建具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6756672号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕、〔6,7〕、8について訂正することを認める。 特許第6756672号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6756672号の請求項1〜8に係る特許についての出願は、平成29年6月22日に出願され、令和2年8月31日にその特許権の設定登録がされ、同年9月16日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1〜8に係る特許について、令和3年2月8日(受付)に特許異議申立人 伊澤 武登(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審より、同年6月21日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年8月18日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行ったところ、本件訂正請求に対して、申立人は、同年10月15日に意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「締結部材と、下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジであって、前記ピボットヒンジ本体と前記下枠との間に位置する止水材を備えることを特徴とする」とあるのを、「締結部材と、下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジであって、前記ピボットヒンジ本体は、雄側ピボットヒンジを係合させるための穴部、又は雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジを有し、浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる前記下枠の傾斜面に前記ピボットヒンジ本体が取り付けられると、前記穴部又は前記雄側のヒンジの軸方向が上下方向となり、前記ピボットヒンジ本体と前記下枠の前記傾斜面との間に位置する止水材を備えることを特徴とする」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜5も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6に「請求項4又は請求項5に記載のピボットヒンジであって、前記ピボットヒンジカバーは、前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆うことを特徴とするピボットヒンジ。」とあるうち、引用する請求項4のうち請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「締結部材と、下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジであって、前記ピボットヒンジ本体と前記下枠との間に位置する止水材を備え、前記ピボットヒンジ本体の前記締結部材により締結される締結部分を覆うピボットヒンジカバーを有し、前記ピボットヒンジカバーは、前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆うことを特徴とするピボットヒンジ。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に「請求項4乃至請求項6のいずれかに記載のピボットヒンジであって、前記ピボットヒンジ本体を覆う前記ピボットヒンジカバーの裏面は、前記締結部材の頭部と接触することを特徴とするピボットヒンジ。」とあるうち、請求項6を引用するものについて「請求項6に記載のピボットヒンジであって、前記ピボットヒンジ本体を覆う前記ピボットヒンジカバーの裏面は、前記締結部材の頭部と接触することを特徴とするピボットヒンジ。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8に「下枠と、締結部材と、前記下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジと、を備える建具であって、前記ピボットヒンジは、前記ピボットヒンジ本体と前記下枠との間に位置する止水材を備えることを特徴とする」とあるのを、「下枠と、締結部材と、前記下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジと、を備える建具であって、前記下枠は、浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる傾斜面を有し、前記ピボットヒンジ本体は、雄側ピボットヒンジを係合させるための穴部、又は雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジを有し、前記下枠の前記傾斜面に前記ピボットヒンジ本体が取り付けられると、前記穴部又は前記雄側のヒンジの軸方向が上下方向となり、前記ピボットヒンジは、前記ピボットヒンジ本体と前記下枠の前記傾斜面との間に位置する止水材を備えることを特徴とする」に訂正する。
(5)一群の請求項について
訂正前の請求項1〜7について、訂正前の請求項2〜7は直接又は間接的に請求項1を引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1〜7に対応する訂正後の請求項1〜7は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
なお、特許権者は、訂正後の請求項6、7については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
以下、上記各訂正事項に係る訂正の適否について検討する。なお、訂正前の全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているので、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する特許法126条7項の独立特許要件は課されない。
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「ピボットヒンジ本体」がヒンジを係合するためにどのような構造をしているのか、また、「ピボットヒンジ本体」が取り付けられる「下枠」がどのような形状をしているのかが特定されていなかったところ、訂正により、前者について、「ピボットヒンジ本体」が「雄側ピボットヒンジを係合させるための穴部、又は雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジを有」すること、後者について、「下枠」が「浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる」「傾斜面」を有することを特定するとともに、「ピボットヒンジ本体」は「下枠」に取り付けられると「前記穴部又は前記雄側のヒンジの軸方向が上下方向とな」るような構造を有すること、「止水材」について「前記ピボットヒンジ本体と前記下枠の前記傾斜面」との間に位置することとなることを特定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項1で「前記ピボットヒンジ本体」が「雄側ピボットヒンジを係合させるための穴部、又は雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジを有」するとの技術的事項を追加する点は、本件特許に係る出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面と併せて「本件明細書等」という。)の段落【0029】の「ピボットヒンジ本体12の室内側には、雄型ピボットヒンジを係合(嵌合)させるための円形の穴部12aが設けられている」との記載、段落【0057】の「上記実施の形態においては、雌側ピボットヒンジ10が下枠3に、雄側ピボットヒンジが浴室ドアに、それぞれ取り付けられていることとしたが、これに限定されるものではなく、雄側ピボットヒンジの方が下枠に雄側ピボットヒンジの方が浴室ドアに取り付けられていることとしてもよい」との記載からみて、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものといえる。
訂正事項1で「浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる前記下枠の傾斜面に前記ピボットヒンジ本体が取り付けられると、前記穴部又は前記雄側のヒンジの軸方向が上下方向とな」るとの技術的事項を追加する点は、本件明細書の【0028】の「ピボットヒンジ本体12は、浴室ドアを支持するピボットヒンジの本体部分である。・・・また、図3に示すように、下枠3が見込み方向において傾斜しており(室外側から室内側へ向かうにつれて下がっており)、これに合わせるために(雌側ピボットヒンジ10の上面を平らにするために)、ピボットヒンジ本体12の室内側の厚みは室外側の厚みよりも大きくなっている」との記載、及び、図3の図示内容からみて、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものといえる。
訂正事項1において、「止水材」が、ピボットヒンジ本体と下枠の「傾斜面」との間に位置することを特定する点は、図3の図示内容からみて、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものといえる。
以上から、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものといえる。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項6が「請求項4又は請求項5」の記載を引用していたところ、そのうちの訂正前の請求項1の記載を引用する「請求項4」の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるものであるから、訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするとともに、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2に係る訂正の目的は、上記のとおりであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項7が「請求項4乃至請求項6」のいずれかの記載を引用していたところ、請求項6の記載を引用するもののみとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3に係る訂正の目的は、上記のとおりであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項8において、訂正事項1と同様、「ピボットヒンジ本体」について「雄側ピボットヒンジを係合させるための穴部、又は雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジを有」すること、「下枠」について「浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる」「傾斜面」を有することを特定し、そのうえで、「ピボットヒンジ本体」は「下枠」に取り付けられると「前記穴部又は前記雄側のヒンジの軸方向が上下方向とな」るような構造を有すること、「止水材」について「前記ピボットヒンジ本体と前記下枠の前記傾斜面」との間に位置することとなることを特定するものである。
したがって、訂正事項4は、訂正事項1と同様の理由により、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜5〕、〔6、7〕、8について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1〜8に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
締結部材と、下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体は、雄側ピボットヒンジを係合させるための穴部、又は雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジを有し、
浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる前記下枠の傾斜面に前記ピボットヒンジ本体が取り付けられると、前記穴部又は前記雄側のヒンジの軸方向が上下方向となり、
前記ピボットヒンジ本体と前記下枠の前記傾斜面との間に位置する止水材を備えることを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項2】
請求項1に記載のピボットヒンジであって、
前記止水材は、穴部を有し、
該穴部を前記締結部材が貫通していることを特徴とするピボットヒンジ。【請求項3】
請求項2に記載のピボットヒンジであって、
前記穴部の径は、前記締結部材の頭部の径よりも小さいことを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体の前記締結部材により締結される締結部分を覆うピボットヒンジカバーを有することを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項5】
請求項4に記載のピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体は、前記締結部材により締結され、かつ、前記締結部材の頭部を収容する窪み部を有し、
前記ピボットヒンジカバーは、前記窪み部を覆うことを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項6】
締結部材と、下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体と前記下枠との間に位置する止水材を備え、
前記ピボットヒンジ本体の前記締結部材により締結される締結部分を覆うピボットヒンジカバーを有し、
前記ピボットヒンジカバーは、
前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆うことを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項7】
請求項6のいずれかに記載のピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体を覆う前記ピボットヒンジカバーの裏面は、前記締結部材の頭部と接触することを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項8】
下枠と、
締結部材と、前記下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジと、を備える建具であって、
前記下枠は、浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる傾斜面を有し、
前記ピボットヒンジ本体は、雄側ピボットヒンジを係合させるための穴部、又は雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジを有し、
前記下枠の前記傾斜面に前記ピボットヒンジ本体が取り付けられると、前記穴部又は前記雄側のヒンジの軸方向が上下方向となり、
前記ピボットヒンジは、前記ピボットヒンジ本体と前記下枠の前記傾斜面との間に位置する止水材を備えることを特徴とする建具。

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1〜8に係る特許に対して、当審より令和3年6月21日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)特許法29条2項違反(甲第1号証を主引用例とするもの)
請求項1ないし8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たものであるから、請求項1ないし8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)特許法29条2項違反(甲第2号証を主引用例とするもの)
請求項1ないし8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たものであるから、請求項1ないし8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)特許法29条2項違反(甲第3号証を主引用例とするもの)
請求項1ないし8に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たものであるから、請求項1ないし8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 甲号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証(特開2015−229864号公報)(以下「甲1」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア「【0002】
玄関等の出入口を開閉する扉の取り付けに蝶番を採用することは一般的に行われているが、蝶番を用いる扉の取り付けには、扉の吊り込みを維持する状態で位置合わせやねじ止め等の作業を行う必要があるため、二人の作業者を必要とし、非常に手間がかかるという不都合がある。」
イ「【0019】
図3乃至図5に示すように、ブラケット21は、扉枠10の上枠10aの下面に衝合される基板部22の一端部に扉枠10の縦枠10bの内面上部に衝合される取付板部23を設けたL形をなし、上記基板部22および取付板部23のそれぞれがねじ24の締め付けによって扉枠10に固定される。
【0020】
基板部22の下側には調整板25が重ね合わされ、その調整板25の下面にピボット軸26が突設されている。調整板25は、基板部22を扉枠10に固定するねじ24を中心にして回動自在に支持される。その調整板25の内側端部にはねじ24を中心とする弧状の長孔27が複数設けられ、それぞれの長孔27に挿通されたロックねじ28が基板部22にねじ込まれている。」
ウ「【0038】
図9に示すように、下部ピボットヒンジH2は、上部ピボットヒンジH1と同様に、扉枠10の一側下部に取り付けられるブラケットAと、扉12の一側下部に形成された嵌合凹部14内に組み込まれた軸受具Bとからなる。
【0039】
ここで、ブラケットAは、上部ピボットヒンジH1におけるブラケット21と同一の構成であって上下が反転する逆向きの取り付けとしている点でのみ相違しているため、上部ピボットヒンジH1におけるブラケット21と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
上記ブラケットAは、カバー29の取り付けによって基板部22が覆われている。
・・・
【0048】
上記のような準備作業後、下部ピボットヒンジH2におけるブラケットAのピボット軸26に軸受具Bの軸受筒80を嵌合し、扉12の一側下部を回動自在に支持する。」

エ 図1、図2、図3、図9は、次のものである。
「【図1】 【図2】

【図3】 【図9】


オ 上記アないしエによれば、甲1には、特に「上部ピボットヒンジH1」に着目した記載がなされ、「扉枠10の上枠10aの下面に衝合される基板部22と、その一端部に扉枠10の縦枠10bの内面上部に衝合される取付板部23を設けたL形をなし、上記基板部22および取付板部23のそれぞれがねじ24の締め付けによって扉枠10に固定され、基板部22の下側には調整板25が重ね合わされ、その調整板25の下面にピボット軸26が突設されており、調整板25は、基板部22を扉枠10に固定するねじ24を中心にして回動自在に支持される、上部ピボットヒンジH1におけるブラケット21」の発明が記載されているところ、「下部ピボットヒンジH2の扉枠10の一側下部に取り付けられるブラケットA」は、これと同一の構成であって上下が反転する逆向きの取り付けとしている点でのみ相違するものである(段落【0039】)。
カ 段落【0040】には、ブラケットAにカバー29が取り付けられることが記載されているところ、技術常識を踏まえると、図9からは、ブラケットAについて、以下の事項が看て取れる。
・基板部22と調整板25は、両者を貫通する穴部を有しており、
・ねじ24は、上面が平らで座面が円錐形の頭部と該頭部の下方に連接する径が一定の軸部と該軸部の下方に連接する円錐形の先端部からなり、
・基板部22と調整板25の前記穴部を貫通するねじ24は、調整板25の上面から座面の円錐形と同様の形状を有するようにザグリ加工された部分に当接し、頭部の平らな上面が調整板25の上面と面一となっており、
・カバー29が、調整板25の前記ザグリ加工された部分を覆い、調整板25の前記上面、ねじ24の頭部の平らな上面に接するように覆うとともに、
・カバー29の左縁に調整板25の下に位置する突起が設けられており、カバー29が基板部22及び調整板25の上面をその左縁からピボット軸26の左側にかけて覆っていること。

上記ア〜カで摘記又は認定した事項によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
【甲1発明】
扉枠10の一側下部に取り付けられる、下部ピボットヒンジH2のブラケットAであって、
扉枠10の下枠10aの上面に衝合される基板部22と、その一端部に扉枠10の縦枠10bの内面下部に衝合される取付板部23を設けたL形をなし、
基板部22および取付板部23のそれぞれがねじ24の締め付けによって扉枠10に固定され、
基板部22の上側には調整板25が重ね合わされ、調整板25の上面にピボット軸26が突設されており、調整板25は、基板部22を扉枠10に固定するねじ24を中心に回動自在に支持され、
ピボット軸26に扉12の一側下部に形成された嵌合凹部14内に組み込まれた軸受具Bの軸受筒80を嵌合し、扉12の一側下部を回動自在に支持し、
基板部22と調整板25は、両者を貫通する穴部を有しており、
ねじ24は、上面が平らで座面が円錐形の頭部と該頭部の下方に連接する径が一定の軸部と該軸部の下方に連接する円錐形の先端部からなり、
基板部22と調整板25の前記穴部を貫通するねじ24は、調整板25の上面から前記座面の円錐形と同様の形状を有するようにザグリ加工された部分に当接し、頭部の平らな上面が調整板25の上面と面一となっており、
カバー29が、調整板25の前記ザグリ加工された部分を覆い、調整板25の前記上面、ねじ24の頭部の平らな上面に接するように覆うとともに、カバー29の左縁に調整板25の下に位置する突起が設けられており、カバー29が基板部22及び調整板25の上面をその左縁からピボット軸26の左側にかけて覆っている、
ブラケットA。

(2)甲第2号証
甲第2号証(米国特許第5613276号明細書)(以下「甲2」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア「(第2欄第20〜29行)

ここで図8を参照すると、本発明のヒンジシステムによってシャワー室フレーム102に取り付けられたガラス製シャワードア100が示されており、このヒンジシステムは、ドアの上下の水平縁部にそれぞれ取り付けられた上ヒンジ部材110及び下ヒンジ部材112を含む。ドア100は、ドアに取り付けられた二重ハンドル120の一方の側又は他方の側に適当な圧力を加えることによって、矢印で示すように、内側に回転可能に開くことが理解されよう。」
イ「(第2欄第45〜52行)

図5は、ドア100の下端に取り付けられた下部クランプ部材130を示し、下部ヒンジ部材112の一部を形成する下部ベース部材160に対する下部クランプ部材の関係も示している。下部ベース部材160は、ピボットピン150を回転可能に受け入れるようにその中に画定された垂直円筒形開口部を含むことが分かる。」
ウ「(第3欄第14〜20行)

図7は上述した下部ヒンジ部材112の構成要素を示しており、また、開口部230及び232が下部ベース部材160を貫通することを明らかにしており、下部ベース部材をシャワー室フレーム102に取り付けるための締結具(図示されていない)を受け入れるようになっている(図8)。パイロット孔234は、下部ベース部材160を貫通して形成され、フレーム102上の下部ベース部材の正確な位置決めのためのものである。・・・」
エ 図5、図8
「図5 図8


オ 図5、図8からは、下部ベース部材160が取り付けられるのは、シャワー室フレーム102の下枠であることが看て取れる。

上記ア〜オで摘記又は認定した事項によれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
【甲2発明】
シャワー室フレーム102の下枠においてガラス製シャワードア100を取り付ける下部ヒンジ部材112の一部を形成する下部ベース部材160であって、
下部ベース部材160は、ピボットピン150を回転可能に受け入れるようにその中に画定された垂直円筒形開口部を含み、
開口部230及び232が下部ベース部材160を貫通し、下部ベース部材160をシャワー室フレーム102の下枠に取り付けるための締結具を受け入れるように構成されている、
下部ヒンジ部材112。

(3)甲第3号証
甲第3号証(特開2013−23854号公報)(以下「甲3」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
本発明は、建物の開口部に障子がピポットヒンジ装置(当審注:「ピボットヒンジ装置」の誤記と認める。以下、甲3において同じ)で回動自在に支持された建具に関する。」
イ「【0018】
[下部ヒンジ装置]
下部ヒンジ装置20は、図2に示すように、下枠5の上面に取り付けられた下部ベース部材21と、扉3の下面に取り付けられた下部受け部材25とを備える。下枠5の上面は、障子である扉3の下面に対向する面であり、本発明の開口部の下面である。
下部ベース部材21は、金属板製のプレート22と、プレート22に固定された金属製の鉛直軸23で構成されている。プレート22には、ネジ孔24が形成されている。そして、下部ベース部材21は、図示しない皿ネジをネジ孔24から下枠5にねじ込むことで、下枠5に固定されている。」
ウ「【0048】
・・・
本発明の建具は、玄関ドアに限らず、勝手口ドア、浴室ドア、室内ドアなど、ピポットヒンジ装置で扉3を支持するドアに広く利用できる。」
エ 図1、図2
「【図1】 【図2】



上記ア〜エによれば、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
【甲3発明】
浴室ドアなど、ピボットヒンジ装置で扉を支持するドアに利用できる下部ヒンジ装置20において、下枠5の上面に取り付けられる下部ベース部材21であって、
下部ベース部材21は、金属板製のプレート22と、プレート22に固定された金属製の鉛直軸23で構成され、プレート22には、ネジ孔24が形成されて、下部ベース部材21は、皿ネジをネジ孔24から下枠5にねじ込むことで下枠5に固定される、下部ベース部材21。

(4)甲第4ないし13号証
ア 甲4の記載
甲第4号証(特許第5364622号公報)(以下「甲4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0003】
ヒンジの連結片とボディパネルとをボルトによって締め付け固定する場合には、緩み防止とボルト穴からの雨水の浸入を防止するために、両者の間にパッキンを介在させる。使用するパッキンは、適度な硬度を有する板状体よりなり、ボルトを貫通させる貫通穴を有するものが一般的である。」
(イ)「【0028】
本例のパッキン1は、図1〜図3に示すごとく、ボルト5を貫通させる貫通穴11、12を有する板状体よりなるパッキン本体部10と、パッキン本体部10の外周端面の周囲に配置される防錆シール部材15とよりなる。貫通穴11、12は、上述した部品貫通穴721、722及びボディ貫通穴81、82に対向する位置に設けられている。
・・・」
(ウ)「【0031】
次に、上記構成の車両用パッキン1を用いて、ヒンジ部品7とボディパネル8とを固定するには次のように行う。
まず、図3、図4に示すごとく、車両用パッキン1をボディパネル8とヒンジ部品7の第2連結片72との間に介在させると共に、2本のボルト5をそれぞれ部品貫通穴721、722、貫通穴11、12、及びボディ貫通穴81、82の順に通す。なお、本例では、2本のボルト5は、予め部品貫通穴721、722に通した状態でその頭部と第2連結片72とを溶接部59(図4)を溶接することによって固定した。そして、ボディ貫通穴81、82から突出したボルト5の先端部にナット55を螺着して、締結固定する。これにより、ヒンジ部品7の第2連結片72とボディパネル8との間に車両用パッキン1を介在さてボルト締結した固定構造が得られる。」
(エ)図3、図4
「【図3】 【図4】



イ 甲5の記載
甲第5号証(特開2001−303831号公報)(以下「甲5」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
【従来の技術】例えば図6に示すように、車体1の後部に設けられたバックドア2は、バックドアヒンジ3によってルーフパネル4に支持されて開閉できるようになっている。従来のバックドアヒンジ3について、図7ないし図10を参照して、次に説明する。」
(イ)「【0005】固定ヒンジ5の底部9とルーフパネル4との間には、取付孔13から車室内への水漏れを防止するために、パッキン15が介装されている。底部9のボルト孔12の周囲には、円形のビード16が形成されており、このビード16の背面の凹所にパッキン15を収容することによって、底部9とルーフパネル4との密着性を高めている。」
(ウ)図1、図3
「【図1】 【図3】



ウ 甲6の記載
甲第6号証(特開平9−291572号公報)(以下「甲6」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
【従来の技術】浴室,シャワールーム等の壁面に固定した丸棒状のガイドレールに沿ってハンガー本体を移動できるようにしたスライド式シャワーハンガーは、実開昭60−91656号公報等により知られている。同公報に示されたスライド式シャワーハンガーは、ガイドレールの両端部にエンド部材が嵌着され、該エンド部材をビスにより壁面に固定したものであった。」
(イ)「【0008】一方、図5に示した壁面固着用の掛止片14は上記掛止片7と同一形状のプラスチック製のもので、基部15とフック部16とからなり、基部15に透孔17が形成されている。そして、該掛止片14は頭付のビス18を透孔17に貫挿し浴室等の壁面に該フック部16が上向となるように固着される。該フック部16の内面19はテーパ状に先細に形成されている。なお、20は基部15と壁面間に挟む水封用パッキンである。
【0009】しかして、このガイドレール1を取付けるに際しては、壁面の適宜高さに孔を開けて上記ビス18を螺合し掛止片14を固着し、該掛止片14にガイドレール1背面の掛止片7を掛止し、図2に示したように両掛止片7,14の内面12,19を重合させる。この内面12,19はテーパ面のために、ガイドレール1が荷重により下がると該ガイドレール1は壁面に隙間なく引き寄せられ止着できる。」
(ウ)図2、図5
「【図2】 【図5】



エ 甲7の記載
甲第7号証(実用新案登録第3146830号公報)(以下「甲7」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
従来、リモコンのケーシング本体の背面には、リモコンを壁に取り付けるための孔と、ケーシング本体の内側に収納される電子基板に接続されるケーブルを通すための孔とを設けていた(例えば、特許文献1参照)。このような構造のリモコンを屋外や浴室などに設置する場合には、水などの液体がリモコンと壁との隙間から孔を通過してケーシング本体の内側に侵入するのを防止する必要があった。そのため、リモコンを壁に取り付けた後、リモコンと壁との隙間にシリコンなどのシール材を使用して隙間を埋めるコーキングを行っていた。」
(イ)「【0045】
ゴムスポンジ400は、貫通孔を有している。ゴムスポンジ400は、図4に示すように、貫通孔の一例として、上側貫通孔(取付貫通孔)410と、下側貫通孔(取付貫通孔)420と、配線貫通孔430とを有している。上側貫通孔410は、後側カバー300の上側取付孔330に対向する位置に設けられている。下側貫通孔420は、後側カバー300の下側取付孔340に対向する位置に設けられている。上側貫通孔410および下側貫通孔420は、ねじSが貫通するための孔である。配線貫通孔430は、後側カバー300の配線孔350に対向する位置に設けられている。配線貫通孔430は、配線20が貫通するための孔である。」
(ウ)「【0047】
(本実施形態の優位性)
背面301にゴムスポンジ400が固定された後側カバー300は、図5に示すように、ねじSが上側取付孔330および上側貫通孔410、下側取付孔340および下側貫通孔420を通り外壁Wに締結されることにより、外壁Wに取り付けられる。この際、ゴムスポンジ400の厚さが減少するようにねじSを回して取り付けられる。そして、カバー10を外壁Wに取り付けると、ゴムスポンジ400がカバー10と外壁Wとに挟まれることにより、ゴムスポンジ400が圧縮されて外壁Wの形状およびカバー10の後側カバー300の背面301の形状に沿って変形する。
【0048】
そのため、ゴムスポンジ400自身の隙間が塞がり、水などの液体がゴムスポンジ400内を通過しない。また、ゴムスポンジ400と外壁Wおよび後側カバー300の背面301との隙間が塞がり、水などの液体がゴムスポンジ400と外壁Wおよび後側カバー300の背面301との隙間を通過しない。その結果、水などの液体が、上側取付孔330、下側取付孔340や配線孔350からカバー10の内側に侵入するのを防止し、操作器1が故障するのを防止して操作器1の信頼性を向上させることができる。・・・」
(エ)図4、図5
「 【図4】 【図5】



オ 甲8の記載
甲第8号証(特開2004−232190号公報)(以下「甲8」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0025】
次に、カウンタ1の浴室の壁2への取付けについて説明する。取付けに際しては、防水パッキン20とビス等の固定具23を用意する。この防水パッキン20は、例えば、ブチルゴムのようなゴム系のもので、カウンタ1の取付部12に対応したロ字状に形成されている。カウンタ1は、その取付部12に防水パッキン20を重ねた状態で、上方室Uを浴室の壁2の開口3に挿入する。そして、図4(a)(b)に示すように、取付部12のねじ通し孔にビス等の固定具23を通し、ビス等の固定具23を浴室の壁2にねじ込み固定する。この場合、載置部10の水が前方に流れやすいように、手前にくるにしたがって僅かに載置部10が下方へ傾斜するようにする。22はねじカバーで、ビス等の頭部を覆うべく、弾性結合が可能なよう樹脂等により形成する。なお、美観の面をそれほど気にしない場合は省略してもよい。」
(イ)「【0031】
さらに、カウンタ1と壁2の間は、防水パッキン20を介在させているので、そこで水の浸入が止められて開口部3から水の壁2の奥への浸入をより確実に防止できる。」
(ウ)図1、図4
「【図1】 【図4】



カ 甲9の記載
甲第9号証(特開2000−126089号公報)(以下「甲9」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0010】又、握りバー10の壁面取付け部12a、12bと該握りバー10を所定位置に固定する壁面30と間にはパッキン21が設けられている。パッキン21は、円形の外径をして外周の一端には壁面取付け部12a、12bとの嵌合と、水密性を保つ為に鍔状になされている。パッキン21の壁面30と接する一面には両面テープ22が貼られている。又、パッキン21の面には、ダボ穴211と固定具取付け孔212が設けられている。パッキン21は、合成樹脂からなり、自身の弾性により握りバー10と壁面30は密着して取付けできる様になされている。」
(イ)「【0017】最後に、握りバー10を前記壁面30の所定位置に固定する作業では、壁面30に貼着されたパッキン21には、固定具取付け孔301、302が上下一対の正確な位置関係で開けられているので、壁面取付け部12a、12bの底部122の固定具取付け孔125からビス15を螺子込んで握りバー10をパッキン21の固定具取付け孔212、220、壁面30の固定具取付け孔301、302を貫通して、壁面30の補強材31にしっかりと固定する。固定終了後に壁面取付け部の切り欠き部にキャップ123を嵌め込む。」
(ウ)図1、図2
「【図1】 【図2】



キ 甲10の記載
甲第10号証(ネジクル、ネジの百科事典、https://www.tsurugacorp.co.jp/dictionary/machine_screw/machine_screw_flat_head.html、公知日2016年11月5日(インターネットアーカイブ))(以下「甲10」という。)には、以下の事項が記載されている(「/」は、改行位置を示す。)。
(ア)「特徴
十字穴付き皿小ねじJIS B 1111(cross recessed flat head screws)
上面が平らで座面が円錐形という形状の頭をしています。/呼び長さを表すとき、ほかのねじでは軸の部分の長さを表すことが多いのですが、/皿小ねじでは頭からの長さを表しますので、同じ呼び長さのほかのねじより、短く見える/ことがあります。」
(イ)「用途
頭部を出っ張らせたくないとき、締結する部材と面一にしたいときに使います。ただ/し、座面の円錐形に合わせた「ザグリ加工」を、あらかじめ部材に施すことが必要です。/この加工が不十分だと、頭部が出っ張ってしまいします。ザグリ加工は「皿もみ」とも呼/ばれます。」
(ウ)上記「(イ)」の右の図



(エ)「用途事例
■ちょうつがいをとめている皿小ねじ
皿頭の特長は、ねじを締めた後に頭が出っ張らないこと。/ドアがピッタリと閉じるように、ちょうつがいは皿小ねじでとめられています。」

ク 甲11の記載
甲第11号証(特開2013−227740号公報)(以下「甲11」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0021】
本実施の形態の建具は・・・開口枠1と、建物の躯体2及び浴室の壁パネル3に設けた開口部を開閉する障子4とを備える。開口枠1は、上枠5と、下枠6と、一対の縦枠7とを四周枠組したものであり、壁パネル3や額縁8に固定されている。障子4は、ピボットヒンジなどのヒンジ機構(図示せず)により開口枠1に支持されており、上下方向に沿ったヒンジ軸を中心として面外方向に回動することが可能である。」
(イ)図1、図2
「【図1】 【図2】



ケ 甲12の記載
甲第12号証(特開2014−109126号公報)(以下「甲12」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0020】
下枠本体15は、枠体10の下枠を構成する部材のうち、建物躯体に固定される長尺の部材である。下枠本体15は、その長手方向が建物開口部の下縁に沿って配置され、建物躯体に固定されている。
図3からわかるように、下枠本体15は、当該断面において見込み方向に延びる片15aを有している。そして該片15aの見込み方向の更衣室側で、上記上枠11のパッキン11cと同じ見込み方向位置に溝15bが設けられている。当該溝15bは下枠本体15の長手方向全長に亘って延びている。
また、本形態では、上記のようピボットヒンジで障子30を開閉可能とするため、下枠本体15のうち吊元側端部には下側ピボット軸15cが上方に向けて突出するように配置されている。」
(イ)図1、図3
「【図1】 【図3】



コ 甲13の記載
甲第13号証(実開平7−16882号公報)(以下「甲13」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0009】
軸受け1の本体10は図1,図2に示すように横枠4の、障子5を収納する側の見込み片41に重なる板状をし、障子5側の面は水平面に形成され、見込み片41側の面はその傾斜に対応して傾斜する。受け部11は本体10の背面側から横枠4側へ突出し、ピボットヒンジ3の軸31が挿入される挿入孔111 は障子5側の面から袋状に連続する。実施例では受け部11の外周の、本体10の背面側に相対的に径の小さい、スペーサ2が外接する首部12を形成し、首部12にスペーサ2を嵌合させることによりこれを本体10から抜け止めし、両者を一体化している。
・・・
【0014】
軸受け1の受け部11は袋状をすることから、障子5の設置場所が浴室で、横枠4が下枠の場合には受け部11に排水孔112 が明けられ、挿入孔111 内部に浸入した水が排除される。排水孔112 から横枠4内に排出された水は浴室側の見付け片42に明けられる排水孔421 から浴室へ排出される。」
(イ)図1、図2
「【図1】 【図2】



3 当審の判断
(1)特許法29条2項違反(甲第1号証を主引用例とするもの)について
ア 本件発明1ないし5、8について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「ねじ24」は、本件発明1における『締結部材』に相当するから、甲1発明における「下部ピボットヒンジH2の」「ブラケットA」における「基板部22」は、「ねじ24(締結部材)の締め付けによって」「扉枠10の下枠10a(下枠)の上面に衝合され」て「取り付けられる」から、「基板部22」は、「基板部22の上側に」「重ね合わされ」「上面にピボット軸26が突設されて」いる「調整板25」とともに、本件発明1における『下枠に該締結部材により締結される』『ピボットヒンジ本体』に相当し、甲1発明における「基板部22」と「調整板25」に、基板部22の一端部に設けた扉枠10の縦枠10bの内面下部に衝合される「取付板部23」を合わせたものは、本件発明1における『ピボットヒンジ』に相当する。
甲1発明における「基板部22」と「調整板25」(ピボットヒンジ本体)は、調整板25の上面に「ピボット軸26」(雄側のヒンジ)が突設されており、「ピボット軸26」に「扉12の一側下部に形成された嵌合凹部14内に組み込まれた軸受具Bの軸受筒80(雌側ピボットヒンジの穴部)を嵌合し、扉12の一側下部を回動自在に支持し」ていることは、本件発明1における『前記ピボットヒンジ本体は、』『雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジを有し、』に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
締結部材と、下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体は、雄側ピボットヒンジを係合させるための穴部、又は雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジを有するピボットヒンジ。
【相違点1−1】
本件発明1は、「浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる前記下枠の傾斜面に前記ピボットヒンジ本体が取り付けられると、前記穴部又は前記雄側のヒンジの軸方向が上下方向となり、前記ピボットヒンジ本体と前記下枠の前記傾斜面との間に位置する止水材を備える」のに対し、
甲1発明では、そのようなことは特定されていない点。

(イ)判断
上記相違点1−1について検討する。
甲1発明は、玄関等の扉に関し、玄関等の蝶番を用いる扉の取り付けには、扉の吊り込みを維持する状態で位置合わせやねじ止め等の作業を行う必要があるため、二人の作業者を必要とし、非常に手間がかかるという不都合があることを解決すべき課題としており(段落【0002】)、かかる課題からみて本件発明1のように「浴室」で用いられる扉に適用することが想定されているとはいえない。また、甲1発明の扉枠10の下枠10aの上面に衝合される「基板部22」とその一端部に扉枠10の縦枠10bの内面下部に衝合される「取付板部23」とが「L形」をなしており、かかる構造からみても、甲1発明は、「室外側から室内側に向かうにつれて下がる」「傾斜面」を有している下枠に取り付けることが想定されているとはいえない。
以上を踏まえれば、甲1発明を主引用発明として、少なくとも相違点1−1に係る「浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる前記下枠の傾斜面に前記ピボットヒンジ本体が取り付けられる」という構成には至らない。

申立人が令和3年10月15日付け意見書に添付して提出した甲11ないし甲13によれば、室外側から室内側に向かうにつれて下がる傾斜面を有する浴室の下枠においてヒンジの軸方向を上下方向とするという技術的事項が周知であることを理解できるとしても、当該技術的事項は、甲1発明の上記課題及び構造に照らすと、甲1発明において採用しうるものではなく、上記判断は左右されない。

よって、相違点1−1に係る本件発明1の構成は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものということはできない。

したがって、本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

そして、本件発明2ないし5は、本件発明1の構成を全て含むから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

また、本件発明8は、本件発明1のピボットヒンジを備える建具の発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 本件発明6、7について
(ア)対比
本件発明6と甲1発明とを対比する。
本件発明1と甲1発明との対比と同様、甲1発明における「ねじ24」は、本件発明6における『締結部材』に相当し、甲1発明における「基板部22」は、「調整板25」とともに、本件発明6における『下枠に該締結部材により締結される』『ピボットヒンジ本体』に相当し、甲1発明における「基板部22」と「調整板25」に、「取付板部23」を合わせたものは、本件発明6における『ピボットヒンジ』に相当する。
甲1発明における「カバー29」は、「調整板25の前記ザグリ加工された部分を覆い、調整板25の前記上面、ねじ24の頭部の平らな上面に接するように覆」っているところ、「調整板25の前記ザグリ加工された部分」は、「ねじ24」(締結部材)により締結される締結部分といえるから、本件発明6における『前記ピボットヒンジ本体の前記締結部材により締結される締結部分を覆うピボットヒンジカバー』に相当する。

そうすると、本件発明6と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
締結部材と、下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体の前記締結部材により締結される締結部分を覆うピボットヒンジカバーを有する、ピボットヒンジ。
【相違点1−2】
本件発明6は、「前記ピボットヒンジ本体と前記下枠との間に位置する止水材」を備え、「前記ピボットヒンジカバーは、前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」という構成を有しているのに対し、
甲1発明は、基板部22と下枠10aとの間に「止水材」を備えるものではなく、カバー29(ピボットヒンジカバー)は、基板部22及び調整板25(ピボットヒンジ本体)の上面をその左縁からピボット軸26の左側にかけて覆っているものの、基板部22及び調整板25の下枠10aと対向する対向面以外の全ての面を覆うものとはいえない点。

(イ)判断
上記相違点1−2について検討する。
甲1発明の「カバー29」は、その左縁に調整板25の下に位置する突起が設けられていることからみて、基板部22及び調整板25に対して左から右にスライドさせるようにして取り付けるものと認められるから、甲1発明の「カバー29」を、基板部22及び調整板25の上面のピボット軸26よりも右側の部分を覆うものではない。また、仮に甲1発明の「カバー29」を、基板部22及び調整板25の上面のピボット軸26よりも右側の部分を覆うようなものとすると、ピボット軸26と干渉して、基板部22及び調整板25に対して左から右にスライドさせるようにして取り付けることができなくなるから、甲1発明の「カバー29」について、ピボット軸26よりも右側の部分を覆うようなものとすることに阻害要因がある。
そうすると、甲1発明を主引用発明として、少なくとも相違点1−2に係る「前記ピボットヒンジカバーは、前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」との構成には至らない。
そして、本件発明6は、相違点1−2に係る構成を備えることで、水がねじ穴を伝わることによる水漏れの発生をより一層確実に抑制するという本件明細書の段落【0052】、【0053】に記載の効果を奏するものと認められる。

よって、相違点1−2に係る本件発明6の構成は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものということはできない。

したがって、本件発明6は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

また、本件発明7は、本件発明6の構成を全て含むから、本件発明6と同様の理由により、甲1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1ないし8は、甲1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)特許法29条2項違反(甲第2号証を主引用例とするもの)について
ア 本件発明1ないし5、8について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「締結具」は、本件発明1における『締結部材』に相当し、甲2発明における「下部ベース部材160」は、「シャワー室フレーム102の下枠に」「締結具により」「取り付け」られるから、本件発明1における『下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体』に相当し、甲2発明における「締結具」と「下部ベース部材160」とを合わせたものは、本件発明1における『ピボットヒンジ』に相当する。
甲2発明における「下部ベース部材160」(ピボットヒンジ本体)は、ピボットピン150(雄側ピボットヒンジ)を回転可能に受け入れるようにその中に画定された垂直円筒形開口部(穴部)を有するから、本件発明1における『前記ピボットヒンジ本体』が『雄側ピボットヒンジを係合させるための穴部』を有することに相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
締結部材と、下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体は、雄側ピボットヒンジを係合させるための穴部、又は雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジを有するピボットヒンジ。
【相違点2−1】
本件発明1は、「浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる前記下枠の傾斜面に前記ピボットヒンジ本体が取り付けられると、前記穴部又は前記雄側のヒンジの軸方向が上下方向となり、前記ピボットヒンジ本体と前記下枠の前記傾斜面との間に位置する止水材を備える」のに対し、
甲2発明では、そのようなことは特定されていない点。

(イ)判断
上記相違点2−1について検討する。
甲2発明は、さして厚みがあるものではないガラス製シャワードア100を下部ベース部材160(ピボットヒンジ本体)を用いてシャワー室フレーム102の下枠に取り付けるもので、下枠の室内外方向の長さと下部ベース部材160の短辺の長さもさして厚みのあるものではないことから、下枠の上面の高さを浴室の床面の高さよりも高い位置としたい場合には、下枠の上面と浴室の床面との間に段差を設ければ足り、甲2発明におけるシャワー室フレーム102の下枠の上面を室外側から室内側にかけてあえて傾斜面とする動機付けがあるとは認められず、そうである以上、下部ベース部材160についても短辺方向をあえて傾斜面に対応する形状とする動機付けはない。また、仮に甲2発明の下部ベース部材160を傾斜面に取り付けることとすると、ヒンジの軸方向が上下方向となるような構成としなければならないところ、甲2にはその点に係る記載が何らないことから、甲2発明は、ガラス製シャワードア100を室内外方向に「傾斜面」をなしている下枠に取り付けることが想定されているとはいえない。
以上を踏まえれば、甲2発明を主引用発明として、少なくとも相違点2−1に係る「浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる前記下枠の傾斜面に前記ピボットヒンジ本体が取り付けられる」という構成を備えることが、当業者が容易になし得たものということはできない。

申立人が提出した甲11ないし甲13によれば、室外側から室内側に向かうにつれて下がる傾斜面を有する浴室の下枠においてヒンジの軸方向を上下方向とするという技術的事項が周知であることを理解できるとしても、当該技術的事項は、甲2発明の上記構造に照らすと、甲2発明において採用しうるものではなく、上記判断は左右されない。

よって、相違点2−1に係る本件発明1の構成は、甲2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものということはできない。

したがって、本件発明1は、甲2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

そして、本件発明2ないし5は、本件発明1の構成を全て含むから、本件発明1と同様の理由により、甲2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

また、本件発明8は、本件発明1のピボットヒンジを備える建具の発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 本件発明6、7について
(ア)対比
本件発明6と甲2発明とを対比する。
本件発明1と甲2発明との対比と同様、甲2発明における「締結具」は、本件発明6における『締結部材』に相当し、甲2発明における「下部ベース部材160」は、本件発明6における『下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体』に相当し、甲2発明における「締結具」と「下部ベース部材160」とを合わせたものは、本件発明6における『ピボットヒンジ』に相当する。

そうすると、本件発明6と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
締結部材と、下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジ。
【相違点2−2】
本件発明6は、「前記ピボットヒンジ本体と前記下枠との間に位置する止水材を備え、前記ピボットヒンジ本体の前記締結部材により締結される締結部分を覆うピボットヒンジカバーを有し、前記ピボットヒンジカバーは、前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」という構成を有しているのに対し、
甲2発明は、下部ベース部材160と下枠との間に「止水材」を備えるものではなく、また、ピボットヒンジカバーに係る構成を有していない点。

(イ)判断
上記相違点2−2について検討する。
相違点2−2に係る「前記ピボットヒンジカバーは、前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」との構成について、甲2には、ピボットヒンジカバーを設けることについて記載されておらず、甲1発明における「カバー29」は、「ピボットヒンジカバー」に相当すると認められるものの、上記「(1)イ(イ)」で示したとおり、「前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」ものではない。そして、申立人が提出するその他の証拠のいずれにも、ピボットヒンジ本体の下枠と対向する対向面以外の全ての面を覆うピボットヒンジカバーは記載されておらず、相違点2−2に係る「前記ピボットヒンジカバーは、前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」との構成が周知技術である、或いは周知技術に基づく設計的事項である、と認めるに足りる証拠はない。
そうすると、甲2発明を主引用発明として、少なくとも相違点2−2に係る「前記ピボットヒンジカバーは、前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」という構成を備えることが、当業者が容易になし得たものということはできない。
そして、相違点2−2に係る構成のように「前記ピボットヒンジ本体と前記下枠との間に位置する」「止水材」を備えるとともに「前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」「ピボットヒンジカバー」を備えるようにしたものは、申立人が提出したいずれの証拠にも記載も示唆もされておらず、本件発明6は、相違点2−2に係る構成を備えることで、水がねじ穴を伝わることによる水漏れの発生をより一層確実に抑制するという本件明細書の段落【0052】、【0053】に記載の効果を奏するものと認められる。

よって、相違点2−2に係る本件発明6の構成は、甲2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものということはできない。

したがって、本件発明6は、甲2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

また、本件発明7は、本件発明6の構成を全て含むから、本件発明6と同様の理由により、甲2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1ないし8は、甲2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)特許法29条2項違反(甲第3号証を主引用例とするもの)について
ア 本件発明1ないし5、8について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明における「皿ネジ」は、本件発明1における『締結部材』に相当し、甲3発明における「下部ベース部材21」は、「浴室ドアなど」における「下枠5」の上面に「皿ネジ」を「ネジ孔24から下枠5にねじ込むことで下枠5に固定される」から、本件発明1における『下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体』に相当する。
甲3発明における「下部ヒンジ装置20」は、「皿ネジ」と「下部ベース部材21」とを有しているから、本件発明1における『ピボットヒンジ』に相当する。
甲3発明における「下部ベース部材21」が「金属製の鉛直軸23」を有することは、本件発明1における『前記ピボットヒンジ本体』が『雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジ』を有することに相当する。

そうすると、本件発明1と甲3発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
締結部材と、下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体は、雄側ピボットヒンジを係合させるための穴部、又は雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジを有するピボットヒンジ。
【相違点3−1】
本件発明1は、「浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる前記下枠の傾斜面に前記ピボットヒンジ本体が取り付けられると、前記穴部又は前記雄側のヒンジの軸方向が上下方向となり、前記ピボットヒンジ本体と前記下枠の前記傾斜面との間に位置する止水材を備える」のに対し、
甲3発明では、そのようなことは特定されていない点。

(イ)判断
上記相違点3−1について検討する。
甲3発明の下部ベース部材21は、金属板製のプレート22に鉛直軸23を固定して構成したもので、傾斜面に対応する形状でないから、甲3発明の下部ベース部材21を浴室ドアに適用し、下枠5の上面の高さを浴室の床面の高さよりも高い位置としたい場合であっても、下枠5の上面と浴室の床面との間に段差を設けるのが自然であり、甲3発明の下枠5の上面を室外側から室内側にかけてあえて傾斜面とする動機付けがあるとは認められない。また、仮に甲3発明の下部ベース部材21を傾斜面に取り付けることとすると、ヒンジの軸方向が上下方向となるような構成としなければならないところ、甲3にはその点に係る記載が何らなく、甲3発明は「傾斜面」をなしている下枠に取り付けることが想定されているとはいえない。
以上を踏まえれば、甲3発明を主引用発明として、少なくとも相違点3−1に係る「浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる前記下枠の傾斜面に前記ピボットヒンジ本体が取り付けられる」という構成を備えることが、当業者が容易になし得たものということはできない。
以上の判断は、相違点2−1について上記で述べたのと同様の理由により、申立人が提出した甲11ないし甲13を参酌しても左右されるものではない。

よって、相違点3−1に係る本件発明1の構成は、甲3発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものということはできない。

したがって、本件発明1は、甲3発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

そして、本件発明2ないし5は、本件発明1の構成を全て含むから、本件発明1と同様の理由により、甲3発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

また、本件発明8は、本件発明1のピボットヒンジを備える建具の発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 本件発明6、7について
(ア)対比
本件発明6と甲3発明とを対比する。
本件発明1と甲3発明との対比と同様、甲3発明における「皿ネジ」は、本件発明6における『締結部材』に相当し、甲3発明における「下部ベース部材21」は、本件発明6における『下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体』に相当し、甲3発明における「下部ヒンジ装置20」は、本件発明6における『ピボットヒンジ』に相当する。

そうすると、本件発明6と甲3発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
締結部材と、下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジ。
【相違点3−2】
本件発明6は、「前記ピボットヒンジ本体と前記下枠との間に位置する止水材を備え、前記ピボットヒンジ本体の前記締結部材により締結される締結部分を覆うピボットヒンジカバーを有し、前記ピボットヒンジカバーは、前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」という構成を有しているのに対し、
甲3発明は、下部ベース部材21と下枠5との間に「止水材」を備えるものではなく、また、ピボットヒンジカバーに係る構成を有していない点。

(イ)判断
上記相違点3−2について検討する。
相違点3−2に係る「前記ピボットヒンジカバーは、前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」との構成について、甲3には、ピボットヒンジカバーを設けることについて記載されておらず、甲1発明における「カバー29」は、「ピボットヒンジカバー」に相当すると認められるものの、上記「(1)イ(イ)」で示したとおり、「前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」ものではない。そして、申立人が提出するその他の証拠のいずれにも、ピボットヒンジ本体の下枠と対向する対向面以外の全ての面を覆うピボットヒンジカバーは記載されておらず、相違点3−2に係る「前記ピボットヒンジカバーは、前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」との構成が周知技術である、或いは周知技術に基づく設計的事項である、と認めるに足りる証拠はない。
そうすると、甲3発明を主引用発明として、少なくとも相違点3−2に係る「前記ピボットヒンジカバーは、前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」という構成を備えることが、当業者が容易になし得たものということはできない。
そして、相違点3−2に係る構成のように「前記ピボットヒンジ本体と前記下枠との間に位置する」「止水材」を備えるとともに「前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆う」「ピボットヒンジカバー」を備えるようにしたものは、申立人が提出したいずれの証拠にも記載も示唆もされておらず、本件発明6は、相違点3−2に係る構成を備えることで、水がねじ穴を伝わることによる水漏れの発生をより一層確実に抑制するという本件明細書の段落【0052】、【0053】に記載の効果を奏するものと認められる。

よって、相違点3−2に係る本件発明6の構成は、当業者が容易に想到することができたものということはできない。

したがって、本件発明6は、甲3発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

また、本件発明7は、本件発明6の構成を全て含むから、本件発明6と同様の理由により、甲3発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1ないし8は、甲3発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)申立人の主張について
ア 申立人は、本件発明1について、(ア)浴室から脱水室に水が流れては困るため、浴室の下枠を傾斜させることは甲11ないし甲13により周知である、(イ)ヒンジの軸方向は鉛直にならないとうまく回動しないから、甲1ないし甲3発明において、下枠が傾斜していたら傾斜に合わせて、ピボットヒンジ本体が取り付けられるとヒンジの軸方向が上下方向となるようにすることは設計的事項にすぎない、などと主張する。
しかし、甲1ないし甲3発明は、上記「(1)ア(イ)」ないし「(3)ア(イ)」で示したとおり、いずれも下枠を傾斜面とすることが想定されているとはいえないものであるから、申立人の当該主張は採用することができない。
イ 申立人は、本件発明6について、(ア)「前記ピボットヒンジ本体と前記下枠との間に位置する止水材を備え」ることは、甲7の図4及び図5に記載されている、(イ)「前記ピボットヒンジ本体の前記締結部材により締結される締結部分を覆うピボットヒンジカバーを有し、」という事項は、水がかかることが想定される場合、締結部分をカバーで覆うことは周知の技術的事項であり、例えば、甲7の図3〜図5に記載されている、という旨主張する。
しかし、甲7は、リモコンを屋外や浴室などに設置する場合に関するもので、ピボットヒンジにカバーを設ける構成は記載されていないから、申立人の当該主張は採用することができない。

第5 むすび
特許異議申立書に記載した特許異議申立理由は全て令和3年6月21日付け取消理由通知で通知したところ、以上のとおり、上記いずれの取消理由によっても、本件請求項1〜8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結部材と、下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体は、雄側ピボットヒンジを係合させるための穴部、又は雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジを有し、
浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる前記下枠の傾斜面に前記ピボットヒンジ本体が取り付けられると、前記穴部又は前記雄側のヒンジの軸方向が上下方向となり、
前記ピボットヒンジ本体と前記下枠の前記傾斜面との間に位置する止水材を備えることを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項2】
請求項1に記載のピボットヒンジであって、
前記止水材は、穴部を有し、
該穴部を前記締結部材が貫通していることを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項3】
請求項2に記載のピボットヒンジであって、
前記穴部の径は、前記締結部材の頭部の径よりも小さいことを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体の前記締結部材により締結される締結部分を覆うピボットヒンジカバーを有することを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項5】
請求項4に記載のピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体は、前記締結部材により締結され、かつ、前記締結部材の頭部を収容する窪み部を有し、
前記ピボットヒンジカバーは、前記窪み部を覆うことを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項6】
締結部材と、下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体と前記下枠との間に位置する止水材を備え、
前記ピボットヒンジ本体の前記締結部材により締結される締結部分を覆うピボットヒンジカバーを有し、
前記ピボットヒンジカバーは、
前記ピボットヒンジ本体の、前記下枠と対向する対向面以外の全ての面を、覆うことを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項7】
請求項6に記載のピボットヒンジであって、
前記ピボットヒンジ本体を覆う前記ピボットヒンジカバーの裏面は、前記締結部材の頭部と接触することを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項8】
下枠と、
締結部材と、前記下枠に該締結部材により締結されるピボットヒンジ本体と、を有するピボットヒンジと、を備える建具であって、
前記下枠は、浴室の室外側から室内側に向かうにつれて下がる傾斜面を有し、
前記ピボットヒンジ本体は、雄側ピボットヒンジを係合させるための穴部、又は雌側ピボットヒンジの穴部に係合させるための雄側のヒンジを有し、
前記下枠の前記傾斜面に前記ピボットヒンジ本体が取り付けられると、前記穴部又は前記雄側のヒンジの軸方向が上下方向となり、
前記ピボットヒンジは、前記ピボットヒンジ本体と前記下枠の前記傾斜面との間に位置する止水材を備えることを特徴とする建具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-01-27 
出願番号 P2017-122405
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (E05D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 長井 真一
有家 秀郎
登録日 2020-08-31 
登録番号 6756672
権利者 YKK AP株式会社
発明の名称 ピボットヒンジ、及び、建具  
代理人 一色国際特許業務法人  
代理人 一色国際特許業務法人  
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