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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23G
管理番号 1384082
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-10 
確定日 2022-01-12 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6755748号発明「菓子組成物及び菓子組成物の改良方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6755748号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜4〕、〔5〜8〕について」)訂正することを認める。 特許第6755748号の請求項1〜3、5〜7に係る特許を維持する。 特許第6755748号の請求項4及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6755748号は、平成28年8月23日に出願がされ、令和2年8月28日に特許権の設定登録がなされ、同年9月16日にその特許公報が発行され、その後、請求項1〜8に係る特許に対して、令和3年3月10日に特許異議申立人 中嶋美奈子(以下「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。

令和3年5月28日付け:取消理由通知
同年8月 2日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)
同年8月20日付け:特許法第120条の5第5項に基づく通知
同年9月22日 :意見書の提出(申立人)

第2 訂正の可否
1 訂正の内容
令和3年8月2日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、訂正前の請求項1〜4、5〜8は、それぞれ一群の請求項である。

訂正事項1:特許請求の範囲の請求項1の
「小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物において、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を0.1〜7質量%含有することを特徴とする」を
「小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%含有することを特徴とする」に訂正する。

訂正事項2:特許請求の範囲の請求項2の
「前記フスマは、軟質系小麦に由来するフスマである、請求項1記載の」を
「小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満の、軟質系小麦に由来するフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%含有することを特徴とする」に訂正する。

訂正事項3:特許請求の範囲の請求項3の
「前記フスマの加熱処理物は、100〜120℃で30〜60分間の加熱処理を経たものである、請求項1又は2記載の」を
「小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満の、100〜120℃で30〜60分間の加熱処理を経たフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%含有することを特徴とする」に訂正する。

訂正事項4:特許請求の範囲の請求項4を削除する。

訂正事項5:特許請求の範囲の請求項5の
「小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物の改良方法において、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を0.1〜7質量%添加することを特徴とする」を
「小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物の改良方法において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%添加することを特徴とする」に訂正する。

訂正事項6:特許請求の範囲の請求項6の
「前記フスマは、軟質系小麦に由来するフスマである、請求項5記載の」を
「小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物の改良方法において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未滴の、軟質系小麦に由来するフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%添加することを特徴とする」に訂正する。

訂正事項7:特許請求の範囲の請求項7の
「前記フスマの加熱処理物は、100〜120℃で30〜60分間の加熱処理を経たものである、請求項5又は6記載の」を
「小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物の改良方法において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満の、100〜120℃で30〜60分間の加熱処理を経たフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%添加することを特徴とする」に訂正する。

訂正事項8:特許請求の範囲の請求項8を削除する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1及び5は、訂正前の請求項1又は5に係る「菓子組成物」を、訂正前の請求項4及び【0038】に規定される「プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子」に限定し、これら五種の菓子組成物それぞれにおいて、実施例(ミルクプリン、水ようかん、コーヒーゼリー、カスタードクリーム、アイスクリームそれぞれの「評価」)、及び【0039】の「上記フスマの加熱処理物の菓子組成物中での好ましい含有量は、適用する菓子組成物の種類によっても異なるので一概ではないが、典型的には、0.1〜7質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。より具体的には、例えば、プリンでは、1〜5質量%であることが好ましく、1〜2質量%であることがより好ましい。ゼリーでは、0.1〜1質量%であることが好ましく、0.1〜0.5質量%であることがより好ましい。フィリングでは、1〜2質量%であることが好ましい。アイスクリームでは、1〜5質量%であることが好ましく、1〜2質量%であることがより好ましい。水ようかん等の和菓子では、0.9〜2.3質量%であることが好ましい。」との記載に基づき、「平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物」の添加量を規定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、上記規定の根拠からみて、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項2及び3、6及び7は、訂正前において請求項1を引用する請求項2及び請求項1又は2を引用する請求項3、訂正前において請求項5を引用する請求項6及び請求項5又は6を引用する請求項7において、それぞれ訂正前の請求項1又は5の規定を取り込むと共に、訂正事項1又は5と同一の規定を取り込み、引用形式を解消するものであり、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものと認められる。また、上記規定の根拠からみて、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項4及び8は、請求項4及び8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないことは明らかである。

3 引用関係の解消の求めについて
特許権者から、訂正後の請求項2及び3、並びに、6及び7について訂正が認められる場合には、それぞれ請求項1並びに5とは別の訂正単位とする求めがあったことから、訂正後の請求項2、3、6、7について請求項ごとに訂正することを認める。

4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の各規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件訂正後の請求項1〜8に係る発明
本件訂正により訂正された訂正請求項1〜8に係る発明(以下、「本件訂正発明1」〜「本件訂正発明8」、まとめて「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%含有することを特徴とする菓子組成物。
【請求項2】
小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満の、軟質系小麦に由来するフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%含有することを特徴とする菓子組成物。
【請求項3】
小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満の、100〜120℃で30〜60分間の加熱処理を経たフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%含有することを特徴とする菓子組成物。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物の改良方法において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%添加することを特徴とする菓子組成物の改良方法。
【請求項6】
小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物の改良方法において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満の、軟質系小麦に由来するフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%添加することを特徴とする菓子組成物の改良方法。
【請求項7】
小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物の改良方法において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満の、100〜120℃で30〜60分間の加熱処理を経たフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%添加することを特徴とする菓子組成物の改良方法。
【請求項8】(削除)」

第4 取消理由の概要及びこれに対する当審の判断
1 取消理由の概要
請求項1〜8に係る特許に対して、当審が令和3年5月28日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は以下のとおりである。

「A (サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。


(2)検討
本件発明の解決しようとする課題は、「従来はフスマ臭やざらつき感等の問題があり、フスマを配合することが敬遠されがちであった、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、和菓子など菓子組成物において、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を用いることで、その菓子組成物の風味や食感等の品質を改良すること」(【0012】下線は、当審にて追加。)にあるものと認められる。
この点に関し、上記(1)ウで示した本件発明の実施例をみると、本件発明の構成要件である「平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を0.1〜7質量%含有」という技術的特徴を有していても、必ずしも上記課題を解決するものとはいえないと解される。
例えば、コーヒーゼリーに適用した試験例4では、フスマの加熱処理物「0.1〜7質量%」の範囲内にある1質量%や3質量%のものが、カスタードクリームに適用した試験例5では、同範囲内にある5質量%のものが、それぞれ、フスマの加熱処理物が非添加の場合に比較して、食感(ざらつき)、味(コーヒーゼリーについては、作業性についても)、いずれにおいても劣っており、上記課題を解決するものとはいえない。
また、記載や示唆がなくとも、上記課題が解決できると当業者が認識できる本件出願時点の技術常識も存在しない。
すなわち、本件発明はその課題を解決するものとはいえない。

(3)まとめ
よって、本件発明は本件発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、特許法第36条第6項の規定に違反するものであるから、本件発明に係る特許は特許法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。」

2 当審の判断
本件訂正により、本件訂正発明1〜3及び5〜7は「平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%添加する」ものとなった。
そして、本件実施例における「プリン」、「ゼリー」、「フィリング」、「アイスクリーム」、「和菓子」の代表例である「ミルクプリン」、「コーヒーゼリー」、「カスタードクリーム」、「アイスクリーム」、「水ようかん」につき、上記規定の範囲において、食感(ざらつき)や味(コーヒーゼリーについては、作業性についても)が良好であることが確認できる。
このため、本件発明の詳細な説明からみて、本件訂正発明1〜3及び5〜7は、本件発明の解決課題である、「従来はフスマ臭やざらつき感等の問題があり、フスマを配合することが敬遠されがちであった、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、和菓子など菓子組成物において、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を用いることで、その菓子組成物の風味や食感等の品質を改良すること」(【0012】)が、当業者において理解できるといえる。

3 まとめ
よって、本件発明は本件発明の詳細な説明に記載したものであるということができるから、当審が通知した上記取消理由には理由がない。

第5 異議申立ての理由についての検討
1 申立人の異議申立ての理由について
申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
甲第1号証:特表2011−515077号公報
甲第2号証:特開2016−47054号公報
甲第3号証:特開平5−304915号公報
甲第4号証:特開2015−53868号公報
甲第5号証:特開昭62−87061号公報
甲第6号証:特開2013−243984号公報
甲第7号証:特開昭62−79756号公報
甲第8号証:特開昭62−198619号公報
甲第9号証:特開平11−103800号公報
甲第10号証:特開2001−204411号公報
甲第11号証:特開2014−140366号公報
(以下、甲第1〜11号証を「甲1」〜「甲11」という。)

・申立ての理由1
本件発明1及び5は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由2−1
本件発明は、甲1に記載された発明、及び、甲3〜6並びに甲7〜11に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由2−2
本件発明は、甲2に記載された発明、及び、甲1、3〜6並びに甲7〜11に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由3
本件発明の「平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物」とは、「加熱処理後のフスマの平均粒径が100μm未満」であるのか、「加熱処理前のフスマの平均粒径が100μm未満」であるのか不明確であるから、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものである。
よって、本件発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由4−1
本件発明は、調整例1の条件で製造したものしか実施例がないので、全てが本件特許発明の効果を奏するとは認められないから、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
よって、本件発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由4−2
本件発明は、試験例の評価が、菓子組成物におけるフスマの加熱処理物の配合率が0.1〜7質量%の範囲内であっても、本件特許発明の効果が奏されない場合があることが示されており、当該範囲で、常に本件特許発明の効果が奏されるとは認められないから、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
よって、本件発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

2 申立ての理由1及び2−1について
(1)甲1の記載事項
ア「【請求項1】
穀類ふすまを予備処理して、穀類ふすまからベータグルカンを取り出す工程と,
穀類ふすまを熱機械加工処理して、可塑性の塊を該穀類ふすまから形成する工程と,
前記塊を澱粉を分解する酵素の有無にかかわらずベータグルカンを分解する酵素と接触させる工程と,
かかる酵素を失活させる工程と,
ふすまを乾燥させ,任意に粉砕する工程
とを備えることを特徴とするベータグルカンを含有する穀類ふすま製品を製造する方法。

【請求項3】
前記予備処理工程において,穀類ふすまを粒径200μm以下,好適には100μm以下に粉砕することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。」

イ「【技術分野】
【0001】
本発明は,請求項1の前段に係るベータグルカンを含有する穀類ふすまの製造方法に関する。」

ウ「【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は,既知の技術による問題の少なくともいくつかを解決することに努める。
【0015】
本発明の目的は,ベータグルカン含有穀類ふすまの性質を変えて,液体環境,特に水環境中で弾力性のない構造を好ましくは経済的な方法で付与する方法を提供することである。本発明の他の目的は,実質的に水環境中で弾力性のない構造を有する穀類ふすま製品を提供することである。」

エ「【課題を解決するための手段】

【0017】
より具体的には,本発明に係る方法は主として請求項1の特徴部分に示したことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る方法を用いて乾燥したベータグルカン含有穀類ふすま製品を提供することができ,これは液体環境中で弾力性のない構造をもたらす。該製品は,飲料,ヨーグルト,フール,スープ及び同様の水性製品のような食品産業の生鮮製品,並びに化粧品に用いるのに適している。本発明に従って製造した製品は,血液中へのグルコースの吸収を減速させる能力のようなさまざまな健康効果を有する。」

オ「【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は,ベータグルカンを含有する穀類ふすま製品を製造する方法に関するもので,好適には以下の工程を備える。
1.穀類ふすまを予備処理してベータグルカンを穀類ふすまから取り出す工程,
2.穀類ふすまを熱機械的に加工処理し,澱粉を分解する酵素の有無にかかわらずベータグルカンを分解する酵素と接触させる工程,
3.前記酵素を失活させる工程,
4.生成物を乾燥し,任意に粉砕する工程
【0023】
上記処理後,穀類ふすま製品を回収する。
【0024】
本方法の第一工程において,穀類ふすまを予備処理して,穀類ふすま中に含有されるベータグルカンを取り出す。この予備処理工程は重要である。なぜなら,ベータグルカンが酵素の影響を受けることができないか又は熱機械工程の力に感応しない場合,構成体の保護下にあるベータグルカンは未処理のままであり,所望の変化が制御されないからである。例えば穀類ふすまを機械的エネルギーによって粒子に粉砕することによりベータグルカンを取り出すことができるので,かかる粉砕に関して,少なくともベータグルカンを含有する材料の細胞の主要部分が損傷される。
【0025】
ベータグルカンの取り出し方法が,例えば,国際特許出願公開WO2004/099257に記載されている。かかる国際特許出願公開WO2004/099257に記載された方法では,ベータグルカンを含有する材料の細胞の50%超,好適には90%超を破砕,分割又は破壊するので,これらに含有されたベータグルカンを含む非澱粉性多糖類が,同一物を溶解する媒体と接触するように放出される。穀類ふすまを100μm以下,より好適には50μm以下、最も好適には20μm以下の粒径に圧潰するのが好ましい。また,対応する方法が米国特許第5,063,078号明細書中に記載されている。好適な粒径は,圧潰すべき材料の細胞の大きさよりも小さく、これにより最小の細胞構成体でさえ破壊し,溶解すべき細胞内成分の有効含量が溶解媒体に関連して増加し,溶解性を増大する。予備処理は,熱,圧力及びせん断力の複合効果によって,例えば低い水分含有量での押出又は膨張によるか又は必要な全エネルギー量を材料に付与するまで圧力調整及び/または均質化の回数を繰り返すことにより余剰水の存在下で材料を均質化することによって実行することができる。押出におけるエネルギーの妥当な使用量は、材料kg当たり0.15〜0.39kWhである。」

カ「【0030】
本発明の好適な実施態様によれば,可塑性の塊を穀類ふすまから予備処理後の熱機械加工処理によって形成する。これは,熱機械加工処理段階で押出力又は膨張装置の力により、かつ酵素又は麦芽のような酵素含有材料である添加物質によって影響されうる。」

キ「【0042】
酵素活性を,熱機械加工処理段階の終わりに酵素の適当な失活方法,例えば,温度によって破壊する。温度を90〜130℃,例えば,約95℃まで上げることが好ましい。水分は,好適には20〜65重量%の範囲内である。酵素を,例えば,押出又は膨張装置の末端で酵素活性を破壊するように高く可塑性の塊の温度を上げることにより失活することができる。
【0043】
酵素活性を破壊した後,生成物を乾燥する。酵素活性のない熱機械加工処理した塊を約90〜130℃で乾燥するのが好ましい。乾燥を,好適には5〜14重量%,より好適には約12重量%以下(水の活量は0.6以下である),最も好適には8重量%以下の含水量まで行う。
【0044】
その後,製品の各々の最終用途に従い,生成物を所要の粒径に粉砕できる。」

ク「【0053】
本発明に係る方法の原料は,オート麦,ライ麦もしくは大麦の穀粒又はそれらの断片のようなベータグルカンを含有するあらゆる穀物断片とすることができるが、特に大麦又はオート麦ふすまである。特に,本発明は,ふすまの使用を可能にし、そのベータグルカン含有量が乾燥品の15重量%を超える高いものである。かかる穀類ふすまは,β−グルカン15〜40重量%及び澱粉5〜35重量%を含有する。かかる材料は、例えば,WO0126479号及びEP 0 377 530号の明細書中に記載されている。高いベータグルカン含有量は,ベータグルカンの生理学的に重要な量を達成するために少量のふすまの使用を可能にする。更に,ふすまを,例えば飲料,ヨーグルト,フール及び生鮮食品の製造にその構造を損なうことなく使用することが容易である。

【0060】
本発明に係る製品を、水を含有する食料品又は製造に水の使用を必要とする食料品に用いることが特に好適である。
【0061】
本発明によれば,食料品中で得られるふすま製品の量は1キロ当たり約3〜150gである。」

(2)甲1に記載された発明
ア 請求項1を引用する請求項3を引用する請求項25を引用する請求項28を引用する請求項30から、甲1には以下の甲1使用発明が記載されていると認められる。
「穀類ふすまを粒径200μm以下,好適には100μm以下に粉砕する予備処理をして、穀類ふすまからベータグルカンを取り出す工程と,
穀類ふすまを熱機械加工処理して、可塑性の塊を該穀類ふすまから形成する工程と,
前記塊を澱粉を分解する酵素の有無にかかわらずベータグルカンを分解する酵素と接触させる工程と,
かかる酵素を失活させる工程と,
ふすまを乾燥させ,任意に粉砕する工程
とを備えたベータグルカンを含有する穀類ふすま製品を製造する方法によって提供され、
水を含有する食料品中のふすま製品の量が1キロ当たり約3〜150グラムである、
水環境中で実質的に非伸展性構造を有するベータグルカンを含有する穀類ふすま製品の使用。」

イ 甲1明細書には、甲1使用発明を用いた食料品に係る発明が実質的に記載されていると認められるから、甲1には以下の甲1製品発明が記載されていると認められる。
「穀類ふすまを粒径200μm以下,好適には100μm以下に粉砕する予備処理をして、穀類ふすまからベータグルカンを取り出す工程と,
穀類ふすまを熱機械加工処理して、可塑性の塊を該穀類ふすまから形成する工程と,
前記塊を澱粉を分解する酵素の有無にかかわらずベータグルカンを分解する酵素と接触させる工程と,
かかる酵素を失活させる工程と,
ふすまを乾燥させ,任意に粉砕する工程
とを備えたベータグルカンを含有する穀類ふすま製品を製造する方法によって提供され、
水を含有する食料品中のふすま製品の量が1キロ当たり約3〜150グラムである、
水環境中で実質的に非伸展性構造を有するベータグルカンを含有する穀類ふすま製品を使用した食料品。」

(3)対比及び判断
ア 本件訂正発明1
(ア)本件訂正発明1と甲1製品発明とを対比する。
甲1製品発明の「好適には100μm以下に粉砕する予備処理をして」、「熱機械加工処理」した「穀類ふすま」は、本件訂正発明1の「平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物」に相当する。「100μm以下」とあるが、「平均粒径」でみれば「100μm未満」を満たすものと解される。
本件訂正発明1の「菓子組成物」は「食料品」であることは明らかである。
そうすると、本件訂正発明1と甲1製品発明とは以下の点で一致する。
「平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を含有することを特徴とする食料品。」

そして、両者は以下の点で相違する。
相違点1:本件訂正発明1は「小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物」であって、「前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子」であるのに対し、甲1製品発明は「食料品」であり、小麦の含有量や水分含量が不明である点。
相違点2:「平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物」の含有量に関し、本件訂正発明1は「菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%含有する」のに対し、甲1製品発明は「水を含有する食料品中のふすま製品の量が1キロ当たり約3〜150グラムである」点。

(イ)上記相違点について検討する。
甲1には、「食料品」として「飲料,ヨーグルト,フール,スープ及び同様の水性製品のような食品産業の生鮮製品」(【0018】)、「飲料,ヨーグルト,フール及び生鮮食品」(【0053】)が挙げられている。しかし、「プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子」については記載がなく、これらを対象とすることを想起させる記載はない。
このため、本件訂正発明1は甲1製品発明とはいえない。
また、例えば甲2には「プディング」、「カスタードクリーム」、「アイスクリーム」(【0081】〜【0089】)、甲8には「ジエリー」、「アイスクリーム」(2頁左下欄8〜18行)との記載はあるが、他の甲各号証をみても、甲1製品発明の「食料品」を「プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子」とすることを想起させる記載はなく、そのような技術常識があったとも認められない。
このため、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明及びその余の甲各号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件訂正発明2、3、5〜7について
本件訂正発明2、3、5〜7においても、甲1製品発明とは、少なくとも上記相違点1及び2の相違点が存在する。
したがって、本件訂正発明1は甲1に記載された発明とはいえず、また、甲1に記載された発明及びその余の甲各号証に記載された技術的事項から容易に発明をすることができたものとはいえないことに鑑みると、本件訂正発明2、3、5〜7は甲1に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明2、3、5〜7は甲1に記載された発明及びその余の甲各号証に記載された技術的事項から容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)まとめ
よって、申立ての理由1及び2−1には理由がない。

3 申立ての理由2−2について
(1)甲2の記載事項
ア「【請求項1】
穀類ふすま画分の保水力(WHC)を増大させるための方法であって、
a)微粒子状穀類ふすま画分に水を添加して、100%(w/w)未満の含水量を得るステップと、
b)水が添加された前記微粒子状穀類ふすま画分を、1つまたは複数の細胞壁修飾酵素により処理し、そして場合により、同時にまたは任意の順序で連続して、前記微粒子状穀類ふすま画分を1つまたは複数のさらなる酵素により処理するステップと
を含む方法。

【請求項5】
前記穀類ふすま画分が、40〜300℃の範囲、例えば50〜150℃の範囲、例えば60〜120℃の範囲、例えば60〜90℃の範囲の温度で加熱処理される、請求項4に記載の方法。

【請求項7】
前記微粒子状ふすまの平均粒径が、3000μm未満、例えば1000μm未満、例えば500μm未満である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記穀類ふすま画分が工業的な製粉プロセスから得られ、500μm未満、例えば400μm未満、例えば200μm未満の平均粒径を得るようにさらに製粉される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。」

イ「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態の目的は、多量の水を穀類ふすま画分に同時添加することを必要とせずに、穀類ふすま画分の保水力(WHC)を増大させるための方法を提供することである。」

ウ「【0040】
「穀類」という用語は、本明細書で使用される場合、イネ科の植物からの果実を指し、このような種子は、果皮、種皮(seed coat)(あるいは、種皮(testa)とも呼ばれる)および/または胚のさらなる存在の有無に関わらず、少なくとも、糊粉を含むふすま、およびデンプン質の胚乳を含有する。この用語は、小麦、大麦、オート麦、スペルト、ライ麦、ソルガム、トウモロコシ(コーン)、米、キビ、キノア、ソバ、ライ小麦、およびフォニオなどの種を含むが、これらに限定されない。
【0041】
「ふすま」という用語は、本明細書で使用される場合、対応する完全なままの種子と比較して、糊粉、果皮および種皮から選択される組織のいずれかまたは全てが豊富な穀類由来の製粉画分を指す。
【0042】
「製粉画分」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、限定はされないが、切断、圧延、破砕、破損または製粉による、粒子サイズの機械的減少から得られる画分の全てまたは一部を指し、例えば、限定はされないが、ふるい(sieving)、スクリーニング、ふるい分け(sifting)、ブローイング、吸引、遠心ふるい分け(centrifugal sifting)、ウィンドシフティング(windsifting)、静電分離、または電界分離による分画を伴っても、伴わなくてもよい。
【0043】
従って、「穀類ふすま画分」という用語は、本明細書で使用される場合、ふすまを含有する、製粉から直接得られる穀類画分を指す。本発明の方法において使用される穀類ふすま画分が、「穀類ふすま画分」からの残留デンプンの除去、そしてその後の穀類ふすま成分、例えば糊粉、果皮および/または種皮などが多い画分への分離または分画などのために、化学的または酵素的な修飾または処理を受けていないことは明らかである。従って、本発明に従う「微粒子状穀類ふすま画分」は、1つまたは複数の細胞壁修飾酵素による処理(例えば、外因性アミラーゼによる処理など)の前に、任意の外因性酵素によって処理および/または修飾され、その後ふすま成分の含量がより高い画分へ分離または分画されたふすまを含む組成物を含むことは意図されない。また、本発明に従う「微粒子状穀類ふすま画分」は、1つまたは複数の細胞壁修飾酵素による処理の前に、例えば、エタノール沈殿による処理などの、デンプン除去のための方法ステップを受けているふすまを含む組成物を含むことは意図されない。」

エ「【0077】
いくつかの態様では、本発明は、食料または食料材料として使用され得る、本発明に従って調製された穀類ふすま画分を提供する。

【0081】
いくつかの実施形態では、本発明に従って使用される食料は、以下の:卵、卵ベースの製品(マヨネーズ、サラダドレッシング、ソース、アイスクリーム、卵粉、改質卵黄およびこれらから作られた製品を含むがこれらに限定されない)、焼いた食品(パン、ケーキ、甘い生地製品、層状生地、液体衣(batter)、マフィン、ドーナツ、ビスケット、クラッカーおよびクッキーを含む)、菓子類(チョコレート、キャンディ、カラメル、ハラワ(halawa)、ガム、例えば、無糖および砂糖入りガム、風船ガム、ソフト風船ガム、チューインガムおよびプディングを含む)、凍結製品(ソルベを含む)、好ましくは凍結乳製品(アイスクリームおよびアイスミルクを含む)、乳製品(チーズ、バター、ミルク、コーヒークリーム、ホイップクリーム、カスタードクリーム、乳飲料およびヨーグルトを含む)、ムース、ホイップ野菜クリーム、食肉製品(加工食肉製品を含む)、食用油および脂肪、発泡および非発泡ホイップ製品、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、マーガリン、ショートニングおよびスプレッド(低脂肪および超低脂肪スプレッドを含む)、ドレッシング、マヨネーズ、ディップ、クリームベースのソース、クリームベースのスープ、飲料、スパイスエマルジョンおよびソースのうちの1つまたは複数から選択される。

【0084】
さらなる態様では、本発明に従う食料は、小麦粉、プレミックス、油、脂肪、ココアバター、コーヒー用クリーム、サラダドレッシング、マーガリン、スプレッド、ピーナッツバター、ショートニング、アイスクリーム、料理用油などの植物由来の食品であり得る。
【0085】
別の態様では、本発明に従う食料は、バター、ミルク、クリーム、様々な形態(細切り、ブロック、スライスまたは粉を含む)のチーズ(ナチュラル、プロセス、およびイミテーションチーズなど)、クリームチーズ、アイスクリーム、凍結デザート、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、バター脂肪、無水乳脂肪、他の乳製品を含む乳製品であり得る。本発明に従って使用される酵素は、乳製品における脂肪安定性を改善することができる。

【0089】
一態様では、好ましくは、食料は、以下の:卵、卵ベース製品(マヨネーズ、サラダドレッシング、ソース、アイスクリーム、卵粉、改質卵黄およびこれらから作られた製品を含む)のうちの1つまたは複数から選択される。
【0090】
好ましくは、本発明に従う食料は、水を含有する食料である。適切には、食料は、10〜98%の水、適切には14〜98%の水、適切には18〜98%の水、適切には20〜98%の水、適切には40〜98%の水、適切には50〜98%の水、適切には70〜98%の水、適切には75〜98%の水を含み得る。」

オ「【0131】
いくつかの実施形態では、穀類ふすま画分は、40〜300℃の範囲、例えば50〜150℃の範囲、例えば60〜120℃の範囲、例えば60〜90℃の範囲の温度で加熱処理において処理される。
【0132】
いくつかの実施形態では、穀類ふすま画分は、含水量を低下させるために、酵素活性が著しく低減される温度、例えば40〜60℃の範囲の温度で、穀類ふすま画分中の含水量を実質的に乾燥製品になるまで低下させるのに十分な時間、加熱処理ステップにおいて処理される。

【0136】
いくつかの実施形態では、前記微粒子状ふすまの平均粒径は、3000μm未満、例えば1000μm未満、例えば500μm未満である。
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明に従う方法において使用される穀類ふすま画分は工業的な製粉プロセスから得られ、500μm未満、例えば400μm未満、例えば200μm未満の平均粒径を得るようにさらに製粉される。」

カ「【0152】
実施例1
材料:
ふすま:
以下の組成を有する、1つはライ麦由来、そしてもう1つは小麦由来である、2つの穀類ふすま画分(以下、ライ麦および小麦)を使用した。
【0153】
【表2】
サンプル │水分 │タンパク質│繊維 │灰分 │デンプン
───────┼───┼─────┼───┼───┼─────
ライ麦ふすま│ 8.33│ 14.49│ 7.42│ 4.83│ 22.98
小麦ふすま │ 8.16│ 15.58│ 8.91│ 6.38│ 21.39
【0154】
基準として、Fibrex595が使用される。
【0155】
酵素:
穀類ふすまを修飾するために、Grindamyl PowerBake950(キシラナーゼ)を使用した。
【0156】
方法:
ふすまの修飾:
45%w/wの含水量になるまで混合しながらふすまに水(+/−酵素)を添加(例えば、45gの水を100gのふすまに添加)した。水(+/−酵素)を添加したふすまを、ふすま成分の修飾のために40℃で30分間放置した。その後、オーブン中でふすまを乾燥させた(80℃、一晩)。乾燥プロセスは3つの主な目的を有し得る。1)修飾されたふすまが安定な製品を得るために乾燥され得る。2)プロセスにより、ふすま中の残留デンプンがゼラチン化され、修飾ふすまの保水力が増大し得る。そして、3)プロセスにより、添加した酵素が不活性化され得る。」

(2)甲2に記載された発明
請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項8を引用する請求項21を引用する請求項22を引用する請求項28から、甲2には以下の甲2発明が記載されていると認められる。
「穀類ふすま画分の保水力(WHC)を増大させるための方法であって、
a)微粒子状穀類ふすま画分に水を添加して、100%(w/w)未満の含水量を得るステップと、
b)水が添加された前記微粒子状穀類ふすま画分を、1つまたは複数の細胞壁修飾酵素により処理し、そして場合により、同時にまたは任意の順序で連続して、前記微粒子状穀類ふすま画分を1つまたは複数のさらなる酵素により処理するステップと
を含み、
さらなる酵素活性を不活性化するため、そして/またはあらゆる残留デンプンをゼラチン化するため、そして/またはWHCをさらに増大させるために、前記穀類ふすま画分が、加熱処理においてしばらくの間さらに処理され、
前記穀類ふすま画分が、40〜300℃の範囲、例えば50〜150℃の範囲、例えば60〜120℃の範囲、例えば60〜90℃の範囲の温度で加熱処理され、
前記穀類ふすま画分が工業的な製粉プロセスから得られ、500μm未満、例えば400μm未満、例えば200μm未満の平均粒径を得るようにさらに製粉される方法によって生じた増大したWHCを有する穀類ふすま画分の、食料品の製造のための使用によって得られる食料品。」

(3)対比及び判断
ア 本件訂正発明1
(ア)本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「40〜300℃の範囲、例えば50〜150℃の範囲、例えば60〜120℃の範囲、例えば60〜90℃の範囲の温度で加熱処理され」た「穀類ふすま画分」は、本件訂正発明1の「フスマの加熱処理物」に相当する。
本件訂正発明1の「菓子組成物」は「食料品」であることは明らかである。
そうすると、本件訂正発明1と甲2発明とは以下の点で一致する。
「フスマの加熱処理物を含有することを特徴とする食料品。」

そして、両者は以下の点で相違する。
相違点3:本件訂正発明1は「小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物」であって、「前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子」であるのに対し、甲2発明は「食料品」であり、小麦の含有量や水分含量が不明である点。
相違点4:「フスマの加熱処理物」の含有量に関し、本件訂正発明1は「菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%含有する」のに対し、甲2発明は明らかでない点。
相違点5:「フスマの加熱処理物」に関し、本件訂正発明1は「平均粒径100μm未満」であるのに対し、甲2発明は「500μm未満、例えば400μm未満、例えば200μm未満の平均粒径を得るようにさらに製粉され(た)」ものである点。

(イ)上記相違点4について検討する。
甲2には「プディング」、「カスタードクリーム」、「アイスクリーム」(上記(1)エ)との記載がある。しかし、これらの食料品に対して「フスマの加熱処理物」をどの程度含有させるのか、甲2の記載からは明らかでなく、「プリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%含有する」という含有量を設定することを想起させる記載はない。
また、その余の甲各号証の記載をみても、甲2発明においてこれらの含有量を設定するようにすることを想起させる記載はなく、そのような技術常識があったとも認められない。
このため、相違点3及び5を検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明及びその余の甲各号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件訂正発明2、3、5〜7について
本件訂正発明2、3、5〜7においても、甲2発明とは、少なくとも上記相違点3〜5の相違点が存在する。
したがって、本件訂正発明1は甲2に記載された発明及びその余の甲各号証に記載された技術的事項から容易に発明をすることができたものとはいえないことに鑑みると、本件訂正発明2、3、5〜7は甲2に記載された発明及びその余の甲各号証に記載された技術的事項から容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)まとめ
よって、申立ての理由2−2には理由がない。

4 申立ての理由3について
(1)申立人は、本件発明の「平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物」とは、「加熱処理後のフスマの平均粒径が100μm未満」であるのか、「加熱処理前のフスマの平均粒径が100μm未満」であるのか不明確であるから、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものである旨主張する。

(2)本件発明の詳細な説明には以下の記載がある。
ア「【0032】
本発明に使用するフスマは、上記のような加熱処理が施されていると共に、所定粒度である必要がある。すなわち、平均粒径100μm未満であることが好ましく、平均粒径60μm未満であることがより好ましい。なお、本明細書において「平均粒径」とは、粒度分布における50%中位径を意味するものとする。粒度分布における中位径とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径(体積中位径)を意味する。この中位径は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布計(例えば商品名「マイクロトラック」、日機装社製)で測定したメジアン径として測定し得る。」

イ「【0041】
<調製例1>
麦種として軟質系小麦のウエスタン・ホワイト(以下、「WW」という場合がある。)を選択し、その製粉工程で得られるフスマ画分を採取した。このフスマの灰分は、約5.8質量%であった。
【0042】
上記フスマを、回転釜に入れて、撹拌しながら、最終品温120℃となるように加熱し、合計60分間焙煎した。こうして得られた焙煎フスマは、一般生菌数が260個/gであり、水分量は2.1質量%であった。
【0043】
上記加熱処理フスマを、気流式粉砕機によって粉砕した。
【0044】
上記粉砕物を目開き200μmのふるいにかけ、パスした部分を採取し、オンした部分を除去した。
【0045】
こうして得られた加熱処理フスマの粉砕物を、レーザー回折/散乱式粒度分布計(例えば商品名「マイクロトラック」、日機装社製)を用いて測定したところ、平均粒径(粒度分布における50%中位径)が26μmであった。
【0046】
<調製例2>
調製例1において、気流式粉砕機による粉砕の程度を弱めて、なお且つ、得られた粉砕物を目開き300μmのふるいにかけ、パスした部分を採取し、オンした部分を除去した以外は、他は調製例1と同様にして、加熱処理フスマの粉砕物を得た。この加熱処理フスマの粉砕物を、レーザー回折/散乱式粒度分布計(例えば商品名「マイクロトラック」、日機装社製)を用いて測定したところ、平均粒径(粒度分布における50%中位径)が101μmであった。
【0047】
<調製例3>
調製例1において、衝撃式粉砕機による粉砕以外は、他は調製例1と同様にして、加熱処理フスマの粉砕物を得た。この加熱処理フスマの粉砕物を、レーザー回折/散乱式粒度分布計(例えば商品名「マイクロトラック」、日機装社製)を用いて測定したところ、平均粒径(粒度分布における50%中位径)が368μmであった。
【0048】
<調製例4>
麦種として硬質系小麦のダーク・ノーザン・スプリングを主体とする小麦を選択して、その製粉工程で得られるフスマ画分を採取した。このフスマの灰分は、約5.4質量%であった。
【0049】
上記フスマを、回転釜に入れて、撹拌しながら、最終品温120℃となるように加熱し、合計60分間焙煎した。こうして得られた焙煎フスマは、一般生菌数が2800個/gであり、水分量は2.8質量%であった。
【0050】
上記加熱処理フスマを、気流式粉砕機によって粉砕した。
【0051】
上記粉砕物を目開き200μmのふるいにかけ、パスした部分を採取し、オンした部分を除去した。
【0052】
こうして得られた加熱処理フスマの粉砕物を、レーザー回折/散乱式粒度分布計(例えば商品名「マイクロトラック」、日機装社製)を用いて測定したところ、平均粒径(粒度分布における50%中位径)が82μmであった。
【0053】
<調製例5>
調製例1に使用したフスマを、加熱処理せずに、気流式粉砕機によって粉砕した。
【0054】
上記粉砕物を目開き200μmのふるいにかけ、パスした部分を採取し、オンした部分を除去した。
【0055】
こうして得られた加熱処理フスマの粉砕物を、レーザー回折/散乱式粒度分布計(例えば商品名「マイクロトラック」、日機装社製)を用いて測定したところ、平均粒径(粒度分布における50%中位径)が30μmであった。
【0056】
<試験例1(ミルクプリンの製造 その1)>
調製例1乃至5の粉砕フスマを使用して、その粉砕フスマを1質量%含有するミルクプリンを製造した。表1にはその配合を示す。具体的には、以下のようにしてミルクプリンを製造した。
【0057】
(ミルクプリンの製造方法)
ボールに、卵黄とグラニュー糖を合わせてすりまぜる。粉砕フスマを加えて混ぜる。牛乳と生クリームを加える。かき混ぜながら、湯せんにかける。70℃を超えたら、湯に溶かした粉ゼラチンを加えて混ぜ、次いでバニラエッセンスを加えて混ぜる。茶漉しでこしながらプリンカップに60g〜70gずつ分注する。冷蔵庫で冷やし固める。
【0058】
【表1】

【0059】
得られたミルクプリンにつき、その外観、食感、味について、5名のパネラーによる官能評価を行った。評価では、下記基準にて5段階の相対評価でパネラーに点数を付けてもらい、その平均点を求めた。
・外観:色が暗く不均一/1〜5点/色が明るく均一
・食感:ざらつきが強い/1〜5点/ざらつきが弱い
・味:フスマ臭が強い/1〜5点/フスマ臭が弱い
結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
その結果、表2に示されるように、麦種としてWWを使用し、加熱処理し、平均粒径26μmとされた粉砕フスマ(調製例1)を配合したミルクプリンは、平均粒径101μmとされた粉砕フスマ(調製例2)や、平均粒径368μmとされた粉砕フスマ(調製例3)や、硬質系小麦を主体とした小麦を使用して調製された粉砕フスマ(調製例4)に比べ、外観、食感、味のいずれにおいても、優れていた。また、加熱処理しないで調製された粉砕フスマ(調製例5)を配合したミルクプリンは、若干のフスマ臭さを呈した。」

(3)上記(2)アで示すように、本件発明の詳細な説明には「本発明に使用するフスマは、上記のような加熱処理が施されていると共に、所定粒度である必要がある。」と記載されている。この記載からみて、「加熱処理が施されている」ものが「所定粒度である」と解するのが相当である。実施例においても、例えば上記(2)イで示すように、加熱処理したフスマである調整例1〜4において、平均粒径はいずれも加熱処理後に測定されている。
このため、「加熱処理後のフスマの平均粒径が100μm未満」であることで、本件訂正発明は明確である。

(4)よって、申立ての理由3には理由がない。

5 申立ての理由4−1について
(1)申立人は、要するに、本件発明は調整例1の条件で製造したものしか実施例がないので、全てが本件特許発明の効果を奏するとは認められないから、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである旨主張する。

(2)本件発明の詳細な説明には以下の記載がある。
ア「【0011】
すなわち、本発明の第1は、小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物において、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を0.1〜7質量%含有することを特徴とする菓子組成物を提供するものである。
【0012】
本発明による菓子組成物によれば、従来はフスマ臭やざらつき感等の問題があり、フスマを配合することが敬遠されがちであった、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、和菓子など菓子組成物において、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を用いることで、その菓子組成物の風味や食感等の品質を改良することができる。
【0013】
本発明による菓子組成物においては、前記フスマは、軟質系小麦に由来するフスマであることが好ましい。これによれば、フスマ臭が少なく、ざらつき感の少ない、より良好な食感の菓子組成物となる。
【0014】
また、前記フスマの加熱処理物は、100〜120℃で30〜60分間の加熱処理を経たものであることが好ましい。これによれば、フスマに付着している微生物を死滅させて、より保存性の良好な菓子組成物となる。
【0015】
また、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であることが好ましい。
【0016】
一方、本発明の第2は、小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物の改良方法において、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を0.1〜7質量%添加することを特徴とする菓子組成物の改良方法を提供するものである。
【0017】
本発明による菓子組成物の改良方法によれば、従来はフスマ臭やざらつき感等の問題があり、フスマを配合することが敬遠されがちであった、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、和菓子など菓子組成物において、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を用いることで、その菓子組成物の風味や食感等の品質を改良することができる。
【0018】
本発明による菓子組成物の改良方法においては、前記フスマは、軟質系小麦に由来するフスマであることが好ましい。これによれば、フスマ臭が少なく、ざらつき感の少ない、より良好な食感の菓子組成物となる。
【0019】
また、前記フスマの加熱処理物は、100〜120℃で30〜60分間の加熱処理を経たものであることが好ましい。これによれば、フスマに付着している微生物を死滅させて、より保存性の良好な菓子組成物となる。
【0020】
また、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であることが好ましい。」

イ「【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来はフスマ臭やざらつき感等の問題があり、フスマを配合することが敬遠されがちであった、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、和菓子など菓子組成物において、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を用いることで、その菓子組成物の風味や食感等の品質を改良することができる。」

ウ「【0038】
菓子組成物としては、上記範囲のものであればよく、特に制限はないが、例えば、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子などが挙げられる。なお、フィリングには、カスタードクリーム、チョコレートクリーム、ミルククリーム等が含まれる。また、和菓子には、水ようかん、わらびもち、ぎゅうひもち等が含まれる。なお、本発明が適用される菓子類が、複数の菓子組成物素材どうしを組み合わせてなる菓子組成物の場合であって、各菓子組成物素材が独立して食感や風味を呈する部分を構成する場合には、本発明における菓子組成物とは、その独立して食感や風味を呈する部分をいうものとする。
【0039】
上記フスマの加熱処理物の菓子組成物中での好ましい含有量は、適用する菓子組成物の種類によっても異なるので一概ではないが、典型的には、0.1〜7質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。より具体的には、例えば、プリンでは、1〜5質量%であることが好ましく、1〜2質量%であることがより好ましい。ゼリーでは、0.1〜1質量%であることが好ましく、0.1〜0.5質量%であることがより好ましい。フィリングでは、1〜2質量%であることが好ましい。アイスクリームでは、1〜5質量%であることが好ましく、1〜2質量%であることがより好ましい。水ようかん等の和菓子では、0.9〜2.3質量%であることが好ましい。」

(3)上記(2)ア及びイの記載から、本件訂正発明により、従来はフスマ臭やざらつき感等の問題があり、フスマを配合することが敬遠されがちであった、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、和菓子など菓子組成物において、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を用いることで、その菓子組成物の風味や食感等の品質を改良することができると認識でき、上記(2)ウや4(2)イから本件訂正発明における「プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子」それぞれにおける「平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物」の含有量が理解できる。
そうすると、本件訂正発明は、本件発明の詳細な説明に記載されたものというべきである。

(4)よって、申立ての理由4−1には理由がない。

6 申立ての理由4−2について
申立ての理由4−2は当審が通知した取消理由と同旨であり、上記第4で検討したとおりである。
よって、申立ての理由4−2には理由がない。

7 令和3年9月22日提出の意見書における申立人の主張について
申立人は、上記意見書において以下のとおり主張する。
「「フスマの加熱処理物」が、「軟質系小麦に由来するフスマの加熱処理物」に限定されていない請求項1、3、5、7に係る発明については、請求項で規定する全ての範囲において、本発明の「菓子組成物の風味や食感等の品質を改良する」という目的を達成できることが、本件特許明細書の実施例に示されているとはいえない。」(3.4)(2))
「フスマの加熱処理物が、「平均粒径100μm未満」の範囲で常に本発明の「菓子組成物の風味や食感等の品質を改良する」という目的を達成できることが本件特許明細書の実施例に示されているとはいえない。例えば、フスマの加熱処理物の平均粒径が100μmに近い場合に本件特許発明の効果を達成できることは、実施例からは確信できない。」(3.4)(3))
しかし、上記第4 2で検討したとおりであるから、上記主張を勘案することができない。

8 まとめ
以上のことから、申立人が主張する申立ての理由にはいずれも理由がなく、これらの申立の理由によっては本件訂正発明に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、請求項1〜3、5〜7に係る発明の特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項4及び8に係る特許については、上述のとおり、この請求項を削除する訂正を含む本件訂正が認容されるため、特許異議申立ての対象となる特許が存在しないものとなったことから、同請求項に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%含有することを特徴とする菓子組成物。
【請求項2】
小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満の、軟質系小麦に由来するフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%含有することを特徴とする菓子組成物。
【請求項3】
小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満の、100〜120℃で30〜60分間の加熱処理を経たフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%含有することを特徴とする菓子組成物。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物の改良方法において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満のフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%添加することを特徴とする菓子組成物の改良方法。
【請求項6】
小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物の改良方法において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満の、軟質系小麦に由来するフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%添加することを特徴とする菓子組成物の改良方法。
【請求項7】
小麦粉の含有量が10質量%以下、水分含量が60質量%以上である菓子組成物の改良方法において、前記菓子組成物は、プリン、ゼリー、フィリング、アイスクリーム、又は和菓子であり、平均粒径100μm未満の、100〜120℃で30〜60分間の加熱処理を経たフスマの加熱処理物を、前記菓子組成物がプリンの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物がゼリーの場合は0.1〜0.5質量%、前記菓子組成物がフィリングの場合は1〜3質量%、前記菓子組成物がアイスクリームの場合は1〜5質量%、前記菓子組成物が和菓子の場合は2〜5質量%添加することを特徴とする菓子組成物の改良方法。
【請求項8】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-12-23 
出願番号 P2016-162446
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A23G)
P 1 651・ 537- YAA (A23G)
P 1 651・ 121- YAA (A23G)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 大熊 幸治
齊藤 真由美
登録日 2020-08-28 
登録番号 6755748
権利者 日東富士製粉株式会社
発明の名称 菓子組成物及び菓子組成物の改良方法  
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所  
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所  

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