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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1384091 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-03-22 |
確定日 | 2022-01-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6758877号発明「O/W型乳化組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6758877号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕について訂正することを認める。 特許第6758877号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6758877号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜5に係る特許についての出願は、平成28年3月30日に特許出願され、令和2年9月4日にその特許権の設定登録がなされ、令和2年9月23日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和3年3月22日に特許異議申立人 玉田尚志(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年6月7日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月6日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年9月22日に申立人により、意見書が提出された。当審は、令和3年10月8日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、その指定期間内に令和3年12月8日付け意見書及び訂正請求書を提出した(当該訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。) なお、令和3年8月6日付けの訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げたものとみなす。 なお、本件訂正請求については、令和3年10月8日付け取消理由(決定の予告)が、令和3年8月6日付けの訂正事項における化合物名称の誤記に関する記載不備の指摘に対応したものであって、特許法第120条の5第5項ただし書の特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないとされる所定の特別の事情があると認め、申立人に対し、同項本文の規定による意見書の提出の機会は与えないこととした。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求は、一群の請求項〔1−5〕についてするものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「(但し、セラミド6II及びセラミドEOSを含む乳化組成物を除く。)」 と記載されているのを、 「(但し、下記(1)〜(3)を除く: (1)セラミド6II及びセラミドEOSを含む乳化組成物; (2)水、BG、グリセリン、ペンチレングリコール、スクワラン、リンゴ酸ジイソステアリル、没食子酸エピガロカテキン、ヒアルロン酸Na、加水分解ヒアルロン酸、セラミド3、セラミド6II、セラミド2、加水分解コラーゲン、加水分解エラスチン、ホホバ種子油、アルガニアスピノサ核油、リン酸アスコルビルMg、酢酸トコフェロール、豆乳発酵液、ベルガモット果実油、マンダリンオレンジ果皮油、エチルヘキシルグリセリン、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ポリグリセリル-10、トレハロース、水添レシチン、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、シア脂、カルボマー、ベヘニルアルコール、アルギニン、クエン酸Na、ジメチコン、オレイン酸、ダイズステロール、水酸化K、クエン酸、銅クロロフィル、アセチルヒドロキシプロリン、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアロイル乳酸Na、イソステアリン酸フィトステリルを含むゲル; (3)グリチルリチン酸ジカリウム、精製水、プラセンタエキス、ヒアルロン酸ナトリウム、水溶性コラーゲン液、植物性スクワラン、濃グリセリン、パルミチン酸2-エチルヘキシル、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.)、フェノキシエタノール、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、シア脂、無水エタノール、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、モノミリスチン酸デカグリセリル、塩酸グルコサミン、水酸化ナトリウム、ボタンエキス、キチン末、クエン酸、水素添加大豆リン脂質、フィトステロール、ヒドロキシステアリルフィトスフィンゴシン、N-ステアロイルジヒドロスフィンゴシン、N-ステアロイルフィトスフィンゴシン、ステアロイルオキシヘプタコサノイルフィトスフィンゴシンを含むミルク。)」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜4も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5に、「(A)」と記載されているのを「(A)セラミド2及び3の組み合わせ、またはセラミド1、2及び3の組み合わせからなるセラミド類」に、「(B)と記載されているのを「(B)非イオン界面活性剤」に、「(C)」と記載されているのを「(C)シア脂」に、「(D)」と記載されているのを「(D)水」に、「(E)」と記載されているのを「(E)アニオン性増粘剤」に、それぞれ訂正する。 また、「請求項1〜4のいずれか一項に記載するO/W型乳化組成物。」と記載されているのを、「、半固形状のO/W型乳化組成物。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無 (1)訂正事項1について (ア)訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1のO/W型乳化組成物から除外される態様として、新たに(2)及び(3)項を除外事項として追加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。 請求項1を引用する請求項2〜4も、当該訂正により、同様に除外事項が増えるものであるから、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加の有無 訂正事項1は、請求項に係る発明に包含される一部の事項のみをその請求項に記載した事項から除外するものであり、新たな技術的事項を導入するものではないから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 (ウ)特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無 訂正事項1は、請求項に係る発明に包含される一部の事項のみをその請求項に記載した事項から除外するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1〜4の記載を引用する形式で記載されていた訂正前の請求項5の記載のうち、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項5の記載を、それを引用しない形式で記載するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正請求による訂正後の請求項1〜5に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明5」といい、全体をまとめて「本件発明」という。)は、令和3年12月8日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 下記成分を含むことを特徴とする、半固形状のO/W型乳化組成物: (A)セラミド2及び3の組み合わせ、またはセラミド1、2及び3の組み合わせからなるセラミド類、 (B)非イオン界面活性剤、 (C)シア脂、 (D)水、及び (E)アニオン性増粘剤、 (但し、下記(1)〜(3)を除く: (1)セラミド6II及びセラミドEOSを含む乳化組成物; (2)水、BG、グリセリン、ペンチレングリコール、スクワラン、リンゴ酸ジイソステアリル、没食子酸エピガロカテキン、ヒアルロン酸Na、加水分解ヒアルロン酸、セラミド3、セラミド6II、セラミド2、加水分解コラーゲン、加水分解エラスチン、ホホバ種子油、アルガニアスピノサ核油、リン酸アスコルビルMg、酢酸トコフェロール、豆乳発酵液、ベルガモット果実油、マンダリンオレンジ果皮油、エチルヘキシルグリセリン、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ポリグリセリル-10、トレハロース、水添レシチン、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、シア脂、カルボマー、ベヘニルアルコール、アルギニン、クエン酸Na、ジメチコン、オレイン酸、ダイズステロール、水酸化K、クエン酸、銅クロロフィル、アセチルヒドロキシプロリン、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアロイル乳酸Na、イソステアリン酸フィトステリルを含むゲル; (3)グリチルリチン酸ジカリウム、精製水、プラセンタエキス、ヒアルロン酸ナトリウム、水溶性コラーゲン液、植物性スクワラン、濃グリセリン、パルミチン酸2-エチルヘキシル、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.)、フェノキシエタノール、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、シア脂、無水エタノール、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、モノミリスチン酸デカグリセリル、塩酸グルコサミン、水酸化ナトリウム、ボタンエキス、キチン末、クエン酸、水素添加大豆リン脂質、フィトステロール、ヒドロキシステアリルフィトスフィンゴシン、N-ステアロイルジヒドロスフィンゴシン、N-ステアロイルフィトスフィンゴシン、ステアロイルオキシヘプタコサノイルフィトスフィンゴシンを含むミルク。)。 【請求項2】 前記(E)アニオン性増粘剤が、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、アルギン酸、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、グアーガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、及びポリアクリル酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1記載のO/W型乳化組成物。 【請求項3】 さらに(F)炭化水素油を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載するO/W型乳化組成物。 【請求項4】 さらに(G)多価アルコールを含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載するO/W型乳化組成物。 【請求項5】 (A)セラミド2及び3の組み合わせ、またはセラミド1、2及び3の組み合わせからなるセラミド類を0.1〜3重量%、(B)非イオン界面活性剤を4〜8重量%、(C)シア脂を0.5〜2重量%、(D)水を20〜90重量%、及び(E)アニオン性増粘剤を0.025〜1重量%の割合で含有する、半固形状のO/W型乳化組成物。」 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 (1)当審が令和3年10月8日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 ア 取消理由1 令和3年8月6日付け訂正請求により訂正された請求項1に記載された「ペンチレングルコール」及び「イソステアリン酸フィトステアリル」は、どのような構造から成る化合物であるのか明確でない。また、請求項1を引用する請求項2〜4に係る発明も同様に明確でない。したがって、本件特許の請求項1〜4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 当審の判断 本件訂正請求は、令和3年8月6日付けの訂正請求により訂正された請求項1の「ペンチレングルコール」及び「イソステアリン酸フィトステアリル」という記載を、それぞれ「ペンチレングリコール」及び「イソステアリン酸フィトステリル」と技術的に正確に記載したものに該当するものであって、本件訂正請求により、取消理由1は理由がないものとなった。 よって、本件発明1〜4に係る特許は、取消理由1によって取り消すべきものではない。 第5 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 (1)本件特許の請求項1〜4に係る特許に対して、当審が令和3年6月7日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 ア 取消理由2 本件特許の請求項1〜4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であって、特許法第29条第1項第1号に該当するから、本件特許の請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、具体的な理由は下記(2)のとおりである。 イ 取消理由3 本件特許の請求項1〜4に係る発明は、甲1〜4の記載を参酌すれば、本件特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、本件特許の請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、具体的な理由は下記(2)のとおりである。 (2)具体的な理由 本件発明1〜4は、甲1に記載された発明と区別が付かない。 本件発明1〜4は、甲2に記載された発明と区別が付かない。 本件発明1〜4は、甲3に記載された発明と区別が付かない。 本件発明1〜4は、甲4に記載された発明と区別が付かない。 よって、本件発明1〜4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 <引用文献等一覧> 甲1:「シンデレラタイムスリーピングパックゲル 柑橘系の爽やかな香り 80g」(ASIN : B00MXY9ZUW)、トゥルーネイチャー、Amazon.co.jp、[オンライン]、[令和3年3月18日検索] 甲2:「シンデレラタイム スリーピングパックゲル(爽やかな柑橘系の香り)」、トゥルーネイチャー、Cosmetic-Info.jp、[令和3年3月19日検索]、[オンライン] 甲3:「素肌しずく 乾燥性敏感肌用 うるおいミルク」、アサヒフードアンドヘルスケア、アットコスメ、[オンライン]< https://www.cosme.net/product/product_id/10098363/top> 甲4:「素肌しずく 乾燥性敏感肌用 うるおいミルク」、アサヒフードアンドヘルスケア、Cosmetic-Info.jp、[令和3年3月19日検索]、[オンライン] 参考電子的技術情報1:「化粧品配合成分「ステアリン酸ポリグリセリル-10」の総合レポート」、化粧品成分オンライン、[令和3年5月27日検索]、[オンライン] 参考電子的技術情報2:「化粧品配合成分「(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー」の総合レポート」、化粧品成分オンライン、[令和3年5月27日検索]、[オンライン] 参考電子的技術情報3:「化粧品配合成分「ミリスチン酸ポリグリセリル-10」の総合レポート」、化粧品成分オンライン、[令和3年5月27日検索]、[オンライン]https://cosmetic-ingredients.org/surfactant/%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%B3%E9%85%B8%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%BB%E3%83%AA%E3%83%AB-10%E3%81%AE%E6%88%90%E5%88%86%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%81%A8%E6%AF%92%E6%80%A7/ 2 甲号証に記載された事項 (1)甲1 甲1には、次の事項が記載されている。 (1−1) 「シンデレラタイム スリーピングパックゲル 柑橘系の爽やかな香り 80g」 「原材料・成分 水、BG、グリセリン、ペンチレングリコール、スクワラン、リンゴ酸ジイソステアリル、没食子酸エピガロカテキン、ヒアルロン酸Na、加水分解ヒアルロン酸、セラミド3、セラミド6II、セラミド2、加水分解コラーゲン、加水分解エラスチン、ホホバ種子油、アルガニアスピノサ核油、リン酸アスコルビルMg、酢酸トコフェロール、豆乳発酵液、ベルガモット果実油、マンダリンオレンジ果皮油、エチルヘキシルグリセリン、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ポリグリセリル-10、トレハロース、水添レシチン、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、シア脂、カルボマー、ベヘニルアルコール、アルギニン、クエン酸Na、ジメチコン、オレイン酸、ダイズステロール、水酸化K、クエン酸、銅クロロフィル、アセチルヒドロキシプロリン、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアロイル乳酸Na、イソステアリン酸フィトステリル」 (1−2) 「使用方法 洗顔後にスパチュラに適量(夜はさくらんぼ1粒大、朝はパール2粒大が目安)をとり、お顔全体にまんべんなくのばしてください。」 (1−3) 「Amazon.co.jp での取り扱い開始日 : 2014/8/22 メーカー : トゥルーネイチャー」 (2)甲2 甲2には、次の事項が記載されている。 (2−1) 「シンデレラタイム スリーピングパックゲル(爽やかな柑橘系の香り)」 (2−2) 「発売元 トゥルー・ネイチャー 発売日 2014-03-03」 (2−3) 「全成分リスト 1.水 2.BG 3.グリセリン 4.ペンチレングリコール 5.スクワラン 6.リンゴ酸ジイソステアリル 7.没食子酸エピガロカテキン 8.ヒアルロン酸Na 9.加水分解ヒアルロン酸 10.セラミド3 11.セラミド6II 12.セラミド2 13.加水分解コラーゲン 14.加水分解エラスチン 15.ホホバ種子油 16.アルガニアスピノサ核油 17.リン酸アスコルビルMg 18.酢酸トコフェロール 19.豆乳発酵液 20.ベルガモット果実油 21.マンダリンオレンジ果皮油 22.エチルヘキシルグリセリン 23.ステアリン酸 24.ステアリン酸グリセリル 25.ステアリン酸ソルビタン 26.ステアリン酸ポリグリセリル-10 27.トレハロース 28.水添レシチン 29.(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー 30.シア脂 31.カルボマー 32.ベヘニルアルコール 33.アルギニン 34.クエン酸Na 35.ジメチコン 36.オレイン酸 37.ダイズステロール 38.水酸化K 39.クエン酸 40.銅クロロフィル 41.アセチルヒドロキシプロリン 42.ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10 43.ステアロイル乳酸Na 44.イソステアリン酸フィトステリル」 (3)甲3 甲3には、次の事項が記載されている。 (3−1) 「素肌しずく 乾燥性敏感肌用 うるおいミルク」 (3−2) 「販売日 2015/9/7」 (3−3) 「メーカー アサヒグループ食品」 (3−4) 「叡子さん ・・・とろっとした乳液のような感じ。・・・ 2015/12/23・・・」 (3−5) 「くりぃむすーぷさん 2015/9/7・・・ 」 (4)甲4 甲4には、次の事項が記載されている。 (4−1) 「素肌しずく 乾燥性敏感肌用 うるおいミルク」 (4−2) 「発売元 アサヒフードアンドヘルスケア 発売日 2015-09-07」 (4−3) 「全成分リスト 1.(有効成分)グリチルリチン酸ジカリウム 2.精製水 3.プラセンタエキス(1) 4.ヒアルロン酸ナトリウム(2) 5.水溶性コラーゲン液 6.植物性スクワラン 7.濃グリセリン 8.パルミチン酸2-エチルヘキシル 9.1,3-ブチレングリコール 10.1,2-ペンタンジオール 11.ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.) 12.フェノキシエタノール 13.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 14.シア脂 15.無水エタノール 16.キサンタンガム 17.ヒドロキシエチルセルロース 18.モノミリスチン酸デカグリセリル 19.塩酸グルコサミン 20.水酸化ナトリウム 21.ボタンエキス 22.キチン末 23.クエン酸 24.水素添加大豆リン脂質 25.フィトステロール 26.ヒドロキシステアリルフィトスフィンゴシン 27.N-ステアロイルジヒドロスフィンゴシン 28.N-ステアロイルフィトスフィンゴシン 29.ステアロイルオキシヘプタコサノイルフィトスフィンゴシン」 3 当審の判断 (1)甲1〜4に記載された発明 ア 甲1に記載された発明 上記2(1)の記載事項(1−1)からみて、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「水、BG、グリセリン、ペンチレングリコール、スクワラン、リンゴ酸ジイソステアリル、没食子酸エピガロカテキン、ヒアルロン酸Na、加水分解ヒアルロン酸、セラミド3、セラミド6II、セラミド2、加水分解コラーゲン、加水分解エラスチン、ホホバ種子油、アルガニアスピノサ核油、リン酸アスコルビルMg、酢酸トコフェロール、豆乳発酵液、ベルガモット果実油、マンダリンオレンジ果皮油、エチルヘキシルグリセリン、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ポリグリセリル-10、トレハロース、水添レシチン、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、シア脂、カルボマー、ベヘニルアルコール、アルギニン、クエン酸Na、ジメチコン、オレイン酸、ダイズステロール、水酸化K、クエン酸、銅クロロフィル、アセチルヒドロキシプロリン、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアロイル乳酸Na、イソステアリン酸フィトステリルを含むゲル。」 イ 甲2に記載された発明 上記2(2)の記載事項(2−3)からみて、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「水、BG、グリセリン、ペンチレングリコール、スクワラン、リンゴ酸ジイソステアリル、没食子酸エピガロカテキン、ヒアルロン酸Na、加水分解ヒアルロン酸、セラミド3、セラミド6II、セラミド2、加水分解コラーゲン、加水分解エラスチン、ホホバ種子油、アルガニアスピノサ核油、リン酸アスコルビルMg、酢酸トコフェロール、豆乳発酵液、ベルガモット果実油、マンダリンオレンジ果皮油、エチルヘキシルグリセリン、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ポリグリセリル-10、トレハロース、水添レシチン、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、シア脂、カルボマー、ベヘニルアルコール、アルギニン、クエン酸Na、ジメチコン、オレイン酸、ダイズステロール、水酸化K、クエン酸、銅クロロフィル、アセチルヒドロキシプロリン、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアロイル乳酸Na、イソステアリン酸フィトステリルを含むゲル。」 ウ 甲3に記載された発明 上記2(3)の記載事項(3−5)からみて、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「グリチルリチン酸ジカリウム 精製水 プラセンタエキス(1) ヒアルロン酸ナトリウム(2) 水溶性コラーゲン液 植物性スクワラン 濃グリセリン パルミチン酸2-エチルヘキシル 1,3-ブチレングリコール 1,2-ペンタンジオール ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.) フェノキシエタノール アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 シア脂 無水エタノール キサンタンガム ヒドロキシエチルセルロース モノミリスチン酸デカグリセリル 塩酸グルコサミン 水酸化ナトリウム ボタンエキス キチン末 クエン酸 水素添加大豆リン脂質 フィトステロール ヒドロキシステアリルフィトスフィンゴシン N-ステアロイルジヒドロスフィンゴシン N-ステアロイルフィトスフィンゴシン ステアロイルオキシヘプタコサノイルフィトスフィンゴシンを含むミルク。」 エ 甲4に記載された発明 上記2(4)の記載事項(4−3)からみて、甲4には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。 「グリチルリチン酸ジカリウム 精製水 プラセンタエキス(1) ヒアルロン酸ナトリウム(2) 水溶性コラーゲン液 植物性スクワラン 濃グリセリン パルミチン酸2-エチルヘキシル 1,3-ブチレングリコール 1,2-ペンタンジオール ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.) フェノキシエタノール アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 シア脂 無水エタノール キサンタンガム ヒドロキシエチルセルロース モノミリスチン酸デカグリセリル 塩酸グルコサミン 水酸化ナトリウム ボタンエキス キチン末 クエン酸 水素添加大豆リン脂質 フィトステロール ヒドロキシステアリルフィトスフィンゴシン N-ステアロイルジヒドロスフィンゴシン N-ステアロイルフィトスフィンゴシン ステアロイルオキシヘプタコサノイルフィトスフィンゴシンを含むミルク。」 (2)判断 本件訂正請求により、訂正後の本件発明1〜4において、甲1発明及び甲2発明に相当する「(2)」の態様が除かれているから、本件発明1〜4は、甲1発明又は甲2発明とは同一ではない。 また、本件訂正請求により、訂正後の本件発明1〜4において、甲3発明及び甲4発明に相当する「(3)」の態様が除かれているから、本件発明1〜4は、甲3発明又は甲4発明とは同一ではない。 したがって、上記取消理由2及び3によっては、本件発明1〜4に係る特許を取り消すことはできない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由の概要 申立人は、本件特許に対し、以下の申立理由1及び2を主張する。 (1)申立理由1(進歩性) 訂正前の請求項5に係る発明は、甲1発明並びに、甲5及び甲6に記載された事項に基づいて、又は、甲3発明並びに、甲5及び甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 甲1:「シンデレラタイムスリーピングパックゲル 柑橘系の爽やかな香り 80g」(ASIN : 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アルブチン 2.0 グリチルリチン酸ジカリウム 1.0 リン酸−L−アスコルビルマグネシウム 0.1 1,2−ペンタンジオール 3.0 ジプロピレングリコール 7.0 濃グリセリン 5.0 ポリエチレングリコール6000[重量平均分子量:6000]1.0 ヒアルロン酸ナトリウム 0.5 トリメチルグリシン 0.5 1,3−ブチレングリコール 3.0 キサンタンガム 0.5 アクリル酸/メタアクリル酸アルキル共重合体 0.7 スクワラン 0.5 シア脂 1.0 サラシミツロウ 1.0 ベヘニルアルコール 1.0 モノステアリン酸グリセリル 2.0 イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.0 トコフェロール 0.5 アスタキサンチン 0.2 水溶性コラーゲン 1.0 加水分解コラーゲン溶液(魚由来) 1.0 N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン 1.0 オリザノール 0.01 ポリオキシエチレンフィトステロール (NIKKOL BPS−20:日光ケミカルズ社製) 0.03 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.2 ツボクサエキス 0.01 レシチン 0.1 ショ糖脂肪酸エステル 0.1 モノオレイン酸ポリグリセリル 0.1 クエン酸 0.7 クエン酸ナトリウム 適量 フェノキシエタノール 0.3 硫酸マグネシウム 0.2 精製水 残量」 (2)甲6 甲6には次の事項が記載されている。 (6−1) 「【0033】 本発明の外用組成物には、セラミド類縁体を1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、セラミド類は一般に融点が高く、結晶性が高いので、2種以上併用すると、乳化安定・取り扱い性の観点で好ましい。 なかでも、天然型のセラミドを2種以上組み合わせるのが最も好ましい。また、天然型のセラミド類と、糖セラミド化合物から選択される1種以上、或いは、天然型のセラミド類と、フィトスフィンゴシンから選択される1種以上とを組み合わせて用いることが、粒子の微細化や乳化物の分散安定性向上の観点から好ましい。・・・」 (3)甲7 甲7には、次の事項が記載されている。 (7−1)(2頁) 「セラミドは化粧品業界において重要な成分ですが、その構造や組成の理解が飛躍的に進歩したのは2000年代以降であり、すべてのセラミドが同一構造を有するわけではないため、セラミドの命名法を明確にする必要性が生じてきたことから、セラミドの科学的名称も旧称である「セラミド+数字」から「セラミド+英字」に変更されています。 そういった背景から、化学名称としての改正名称および旧称は、 このように移行されており(・・・)、一方で化粧品成分表示名称に登録されている改正名称および旧称は2020年時点で、 このように移行されていますが(・・・)、いくつか誤解を招く点が存在するため、その点について解説します。」 (4)甲8 甲8には、次の事項が記載されている。 (8−1) 「 」 3 当審の判断 (1)申立理由1 ア 甲1発明及び甲5、甲6に記載された事項に基づく進歩性について (ア)甲1発明は、上記第4 3(1)アで認定したとおり、 「水、BG、グリセリン、ペンチレングリコール、スクワラン、リンゴ酸ジイソステアリル、没食子酸エピガロカテキン、ヒアルロン酸Na、加水分解ヒアルロン酸、セラミド3、セラミド6II、セラミド2、加水分解コラーゲン、加水分解エラスチン、ホホバ種子油、アルガニアスピノサ核油、リン酸アスコルビルMg、酢酸トコフェロール、豆乳発酵液、ベルガモット果実油、マンダリンオレンジ果皮油、エチルヘキシルグリセリン、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ポリグリセリル-10、トレハロース、水添レシチン、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、シア脂、カルボマー、ベヘニルアルコール、アルギニン、クエン酸Na、ジメチコン、オレイン酸、ダイズステロール、水酸化K、クエン酸、銅クロロフィル、アセチルヒドロキシプロリン、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアロイル乳酸Na、イソステアリン酸フィトステリルを含むゲル。」 である。 (イ)対比 本件発明5と甲1発明を対比すると、次のことがいえる。 a 甲1発明は、「セラミド3」及び「セラミド2」を含むものであるが、これは、本件発明5の「(A)セラミド2及び3の組み合わせ、またはセラミド1、2及び3の組み合わせから成るセラミド類」に相当する。 b 本件明細書の【0027】には、本件発明5の「非イオン界面活性剤」として、「ステアリン酸グリセリル」、及び「ステアリン酸ポリグリセリル−10」が挙げられていることから、甲1発明の「ステアリン酸グリセリル」、及び「ステアリン酸ポリグリセリル−10」は、本件発明5の「(B)非イオン界面活性剤」に相当する。 c 本件明細書の【0023】には、本件発明5の「非イオン界面活性剤」として、「ソルビタン脂肪酸エステル」が挙げられていることから、甲1発明の「ステアリン酸ソルビタン」は、本件発明5の「(B)非イオン界面活性剤」に相当する。 d 本件明細書の【0027】には、本件発明5の「非イオン界面活性剤」として、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」が挙げられていることから、甲1発明の「ペンタステアリン酸ポリグリセリル−10」は、本件発明5の「(B)非イオン界面活性剤」に相当する。 e 本件明細書の【0034】には、本件発明5の「アニオン性増粘剤」として、「ヒアルロン酸」、「カルボキシビニルポリマー」(「カルボマー」と同義)及び「アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体」が挙げられていることから、甲1発明の「ヒアルロン酸Na」、「カルボマー」及び「(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー」は、本件発明5の「(E)アニオン性増粘剤」に相当する。 f 甲1発明の「ゲル」は、本件発明5の「組成物」に相当する。 g 本件発明5は、「下記成分を含むことを特徴とする」「組成物」であるから、(A)〜(E)以外の成分の含有を排除するものではない。したがって、甲1発明が、(A)〜(E)以外の成分を含有することは相違点とはならない。 そうすると、本件発明5と甲1発明は、 「(A)セラミド2及び3の組み合わせ、またはセラミド1、2及び3の組み合わせからなるセラミド類、 (B)非イオン界面活性剤、 (C)シア脂、 (D)水、及び (E)アニオン性増粘剤 を含有する組成物」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1 本件発明5は、「半固形状のO/W型乳化組成物」であることが特定されているのに対し、甲1発明は、そのような特定がなされていない点 相違点2 本件発明5では、各成分の割合が特定されており、(A)セラミド2及び3の組み合わせ、またはセラミド1、2及び3の組み合わせからなるセラミド類を「0.1〜3重量%」、(B)非イオン性界面活性剤を「4〜8重量%」、(C)シア脂を「0.5〜2重量%」、(D)水を「20〜90重量%」、及び(E)アニオン性増粘剤を「0.025〜1重量%」の割合で含有することが特定されているのに対し、甲1発明では、各成分の割合が不明である点 (ウ)判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。 甲1は、市販の製品について、その成分のみを記載したものであり、各成分の配合割合は記載されておらず、各成分の配合割合を規定する手がかりが何ら示されていない。 甲5の実施例3には、「セラミド含有組成物を0.5質量%、非イオン界面活性剤を3.4質量%(モノステアリン酸グリセリル2.0質量%+イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル1.0質量%+ポリオキシエチレン硬化ヒマシ脂0.2質量%+ショ糖脂肪酸エステル0.1質量%+モノオレイン酸ポリグリセリル0.1質量%)、シア脂を1.0質量%、アニオン性増粘剤を1.7質量%(ヒアルロン酸ナトリウム0.5質量%、キサンタンガム0.5質量%、アクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体0.7質量%及び水を含む美白クリーム」(記載事項(5−4))が記載されているものの、甲5に記載されているのはクリームであるのに対し、甲1発明はゲルであり、形態が異なるものであるから、市販のゲル製品から把握される甲1発明において、甲5に記載されたクリームの成分の配合割合をそのまま適用することは、当業者が動機付けられるものではない。 そして、甲6には、外用組成物には、セラミド類を2種以上併用してもよいことが記載されるだけであって、本件発明5に規定される各成分を特定の配合割合で含有せしめることは記載も示唆もされていない。 そうすると、甲1発明の各成分について、本件発明5で規定される特定の割合とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。 仮に、甲1発明に、甲5に記載されたクリームの成分の配合割合を適用したとしても、甲5に記載された美白クリームにおける非イオン界面活性剤(本件発明5の成分(B)に相当)の配合割合は3.4%であり、本件発明5で規定する範囲(4〜8重量%)に入らないものである。 また、甲5に記載された美白クリームにおけるアニオン性増粘剤(本件発明5の成分(E)に相当)の配合割合は1.7%であり、本件発明5で規定する範囲(0.025〜1重量%)の範囲に入らないものである。 したがって、甲1発明において、甲5に記載の美白クリームの配合割合を適用したとしても、本件発明5の発明特定事項には至らない。 そして、本件発明5は、肌への使用感(べたつきのなさ、肌なじみのよさ)に加えて、肌に載せて塗り伸ばすときに独特な塗布感(厚み感)に優れているという効果を奏するものであり(【0011】、【0078】、表4)、これらの効果は、いずれの証拠からも当業者が予測することはできない。 以上のとおりであるから、相違点1については検討するまでもなく、本件発明5は、甲1に記載された発明並びに、甲5及び甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 甲3発明及び甲5、6に記載された事項に基づく進歩性について (ア)甲3発明は、上記第4 3(1)ウで認定したとおり、 「 グリチルリチン酸ジカリウム 精製水 プラセンタエキス(1) ヒアルロン酸ナトリウム(2) 水溶性コラーゲン液 植物性スクワラン 濃グリセリン パルミチン酸2-エチルヘキシル 1,3-ブチレングリコール 1,2-ペンタンジオール ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.) フェノキシエタノール アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 シア脂 無水エタノール キサンタンガム ヒドロキシエチルセルロース モノミリスチン酸デカグリセリル 塩酸グルコサミン 水酸化ナトリウム ボタンエキス キチン末 クエン酸 水素添加大豆リン脂質 フィトステロール ヒドロキシステアリルフィトスフィンゴシン N-ステアロイルジヒドロスフィンゴシン N-ステアロイルフィトスフィンゴシン ステアロイルオキシヘプタコサノイルフィトスフィンゴシンを含むミルク。」 である。 (イ)対比 本件発明5と甲3発明を対比すると、次のことがいえる。 a 甲3発明の「N-ステアロイルジヒドロスフィンゴシン」は、「セラミド2」のことであり、甲3発明の「N-ステアロイルフィトスフィンゴシン」は、「セラミド3」のことであるから、これらは、本件発明5の「(A)セラミド2及び3の組み合わせ、またはセラミド1、2及び3の組み合わせから成るセラミド類」に相当する。 b 本件明細書の【0027】には、本件発明5の「非イオン界面活性剤」として、「ミリスチン酸デカグリセリル」が挙げられていることから、甲3発明の「モノミリスチン酸デカグリセリル」は、本件発明5の「(B)非イオン界面活性剤」に相当する。 c 甲3発明の「精製水」は、本件発明5の「水」に相当する。 d 本件明細書の【0034】には、本件発明5の「アニオン性増粘剤」として、「アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体」、「ヒアルロン酸」及び「キサンタンガム」が挙げられていることから、甲3発明の「アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体」、「ヒアルロン酸ナトリウム(2)」及び「キサンタンガム」は、本件発明5の「(E)アニオン性増粘剤」に相当する。 f 甲3発明の「ミルク」は、本件発明5の「組成物」に相当する。 g 本件発明5は、「・・・の割合で含有する」「組成物」であるから、(A)〜(E)以外の成分の含有を排除するものではない。したがって、甲3発明が、(A)〜(E)以外の成分を含有することは相違点とはならない。 そうすると、本件発明5と甲3発明は、 「(A)セラミド2及び3の組み合わせ、またはセラミド1、2及び3の組み合わせからなるセラミド類、 (B)非イオン界面活性剤、 (C)シア脂、 (D)水、及び (E)アニオン性増粘剤 を含有する組成物」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1 本件発明5は、「半固形状のO/W型乳化組成物」であることが特定されているのに対し、甲3発明は、そのような特定がなされていない点 相違点2 本件発明5では、各成分の割合が特定されており、(A)セラミド2及び3の組み合わせ、またはセラミド1、2及び3の組み合わせからなるセラミド類を「0.1〜3重量%」、(B)非イオン性界面活性剤を「4〜8重量%」、(C)シア脂を「0.5〜2重量%」、(D)水を「20〜90重量%」、及び(E)アニオン性増粘剤を「0.025〜1重量%」の割合で含有することが特定されているのに対し、甲3発明では、各成分の割合が不明である点 (ウ)判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。 甲3は、市販の製品について、その成分のみを記載したものであり、各成分の配合割合は記載されておらず、各成分の配合割合を規定する手がかりが何ら示されていない。 甲5の実施例3には、「セラミド含有組成物を0.5質量%、非イオン界面活性剤を3.4質量%(モノステアリン酸グリセリル2.0質量%+イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル1.0質量%+ポリオキシエチレン硬化ヒマシ脂0.2質量%+ショ糖脂肪酸エステル0.1質量%+モノオレイン酸ポリグリセリル0.1質量%)、シア脂を1.0質量%、アニオン性増粘剤を1.7質量%(ヒアルロン酸ナトリウム0.5質量%、キサンタンガム0.5質量%、アクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体0.7質量%及び水を含む美白クリーム」(記載事項(5−4))が記載されているものの、甲5に記載されているのはクリームであるのに対し、甲3発明はミルクであり、形態が異なるものであるから、市販のミルク製品から把握される甲3発明において、甲5に記載されたクリームの成分の配合割合をそのまま適用することは、当業者が動機付けられるものではない。 そして、甲6には、外用組成物には、セラミド類を2種以上併用してもよいことが記載されるだけであって、本件発明5に規定される各成分を特定の配合割合で含有せしめることは記載も示唆もされていない。 そうすると、甲3発明の各成分について、本件発明5で規定される特定の割合とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。 仮に、甲3発明に、甲5に記載されたクリームの成分の配合割合を適用したとしても、甲5に記載された美白クリームにおける非イオン界面活性剤(本件発明5の成分(B)に相当)の配合割合は3.4%であり、本件発明5で規定する範囲(4〜8重量%)に入らないものである。 また、甲5に記載された美白クリームにおけるアニオン性増粘剤(本件発明5の成分(E)に相当)の配合割合は1.7%であり、本件発明5で規定する範囲(0.025〜1重量%)の範囲に入らないものである。 したがって、甲3発明において、甲5に記載の美白クリームの配合割合を適用したとしても、本件発明5の発明特定事項には至らない。 そして、本件発明5は、肌への使用感(べたつきのなさ、肌なじみのよさ)に加えて、肌に載せて塗り伸ばすときに独特な塗布感(厚み感)に優れているという効果を奏するものであり(【0011】、【0078】、表4)、これらの効果は、いずれの証拠からも当業者が予測することはできない。 以上のとおりであるから、相違点1については検討するまでもなく、本件発明5は、甲3に記載された発明並びに、甲5及び甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件発明5は、甲3に記載された発明並びに、甲5及び甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 申立人の主張 申立人は、甲1又は甲3の組成物において、甲5、6を参照して、その各成分の配合割合を、甲5の実施例に記載された組成と非常に近い本件発明5の構成に係る範囲とすることは、当該範囲に限定することでの有利な効果等が得られるといった事情も把握できないことから、当業者であれば容易に想到し得ることである旨主張するが、甲1発明において、甲5及び甲6に記載された事項を参酌しても、上記相違点2に係る本件発明5の発明特定事項に至らない点は、上記ア及びイで述べたとおりである。 エ 小括 以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1に記載された発明並びに、甲5及び甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件発明5は、甲3に記載された発明並びに、甲5及び甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、申立人が主張する申立理由1には理由がない。 (2)申立理由2(明確性) ア 申立人の主張 申立人は、セラミドEOSはセラミド1のことであるから、本件発明1〜5において、同物質が異なる名称で表記されることにより、発明の範囲が不明確である旨主張する。 イ 当審の判断 甲7の記載事項(7−1)及び甲8の記載事項(8−1)によれば、セラミドEOSがセラミド1と同義であることは本願出願時における技術常識であるから、本件発明1〜4において、同じ物質を異なる名称で表記していたとしても、その物質がどのようなものであるのか明確に理解できる以上は、本件発明1〜4の範囲が不明確であるということはない。 よって、申立人が主張する申立理由2には理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1〜5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、本件請求項1〜5に係る特許について、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 下記成分を含むことを特徴とする、半固形状のO/W型乳化組成物: (A)セラミド2及び3の組み合わせ、またはセラミド1、2及び3の組み合わせからなるセラミド類、 (B)非イオン界面活性剤、 (C)シア脂、 (D)水、及び (E)アニオン性増粘剤、 (但し、下記(1)〜(3)を除く: (1)セラミド6II及びセラミドEOSを含む乳化組成物; (2)水、BG、グリセリン、ペンチレングリコール、スクワラン、リンゴ酸ジイソステアリル、没食子酸エピガロカテキン、ヒアルロン酸Na、加水分解ヒアルロン酸、セラミド3、セラミド6II、セラミド2、加水分解コラーゲン、加水分解エラスチン、ホホバ種子油、アルガニアスピノサ核油、リン酸アスコルビルMg、酢酸トコフェロール、豆乳発酵液、ベルガモット果実油、マンダリンオレンジ果皮油、エチルヘキシルグリセリン、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ポリグリセリル−10、トレハロース、水添レシチン、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー、シア脂、カルボマー、ベヘニルアルコール、アルギニン、クエン酸Na、ジメチコン、オレイン酸、ダイズステロール、水酸化K、クエン酸、銅クロロフィル、アセチルヒドロキシプロリン、ペンタステアリン酸ポリグリセリル−10、ステアロイル乳酸Na、イソステアリン酸フィトステリルを含むゲル; (3)グリチルリチン酸ジカリウム、精製水、プラセンタエキス、ヒアルロン酸ナトリウム、水溶性コラーゲン液、植物性スクワラン、濃グリセリン、パルミチン酸2−エチルヘキシル、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.0.)(8E.0、)(5P.0.)、フェノキシエタノール、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、シア脂、無水エタノール、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、モノミリスチン酸デカグリセリル、塩酸グルコサミン、水酸化ナトリウム、ボタンエキス、キチン末、クエン酸、水素添加大豆リン脂質、フィトステロール、ヒドロキシステアリルフィトスフィンゴシン、N−ステアロイルジヒドロスフィンゴシン、N−ステアロイルフィトスフィンゴシン、ステアロイルオキシヘプタコサノイルフィトスフィンゴシンを含むミルク。)。 【請求項2】 前記(E)アニオン性増粘剤が、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、アルギン酸、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、グアーガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、及びポリアクリル酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1記載のO/W型乳化組成物。 【請求項3】 さらに(F)炭化水素油を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載するO/W型乳化組成物。 【請求項4】 さらに(G)多価アルコールを含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載するO/W型乳化組成物。 【請求項5】 (A)セラミド2及び3の組み合わせ、またはセラミド1、2及び3の組み合わせからなるセラミド類を0.1〜3重量%、(B)非イオン界面活性剤を4〜8重量%、(C)シア脂を0.5〜2重量%、(D)水を20〜90重量%、及び(E)アニオン性増粘剤を0.025〜1重量%の割合で含有する、半固形状のO/W型乳化組成物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-01-07 |
出願番号 | P2016-069230 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K) P 1 651・ 537- YAA (A61K) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
岡崎 美穂 |
特許庁審判官 |
大久保 元浩 冨永 みどり |
登録日 | 2020-09-04 |
登録番号 | 6758877 |
権利者 | 小林製薬株式会社 |
発明の名称 | O/W型乳化組成物 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |