• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A63F
管理番号 1384093
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-26 
確定日 2022-01-21 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6798630号発明「情報処理装置及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6798630号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1−3〕,4,5について訂正することを認める。 特許第6798630号の請求項1ないし3,4,5に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6798630号(以下,「本件特許」という。)の請求項1乃至5に係る特許についての出願は,平成31年1月24日を出願日とする特願2019−10392号の一部を令和2年2月5日に新たな特許出願とした特願2020−17877号であって,令和2年11月24日に,その特許権の設定登録がされ,特許掲載公報が同年12月9日に発行され,その後,その全請求項に係る特許に対し,特許異議申立人 糸井正弘(以下,「異議申立人」という。)により令和3年3月26日に特許異議の申立てがされた。
その後,当審において,令和3年8月10日付けで取消理由が通知され,これに対して,特許権者から,同年10月5日付けで意見書及び訂正請求書(以下,「本件訂正請求書」といい,本件訂正請求書によりなされる訂正の請求を「本件訂正請求」という。)が提出され,令和3年11月2日付けで特許異議申立人に対してなされた特許法第120条の5第5項に基づく、訂正請求があった旨の通知に対して、特許異議申立人から何ら応答がなったものである。


2 訂正の適否についての判断
(1)令和3年10月5日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容
本件訂正は,その請求の趣旨を「特許第6798630号の特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1−5について訂正することを求める。」とするものであり,その訂正の内容は、次のとおりである。(注:下線部分は訂正箇所を示す。)

ア 請求項1に係る訂正(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「を備える情報処理装置。」と記載されているのを、「を備え、前記所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である、情報処理装置。」に訂正する。
請求項1を引用する請求項3も同様に訂正する。

イ 請求項2に係る訂正(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項2に「を備える情報処理装置。」と記載されているのを、「を備え、前記所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である、情報処理装置。」に訂正する。
請求項2を引用する請求項3も同様に訂正する。

ウ 請求項4に係る訂正(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項4に「として機能させるためのプログラム。」と記載されているのを、「として機能させ、前記所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である、プログラム。」に訂正する。

エ 請求項5に係る訂正(訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項5に「として機能させるためのプログラム。」と記載されているのを、「として機能させ、前記所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である、プログラム。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び一群の請求項について
ア 請求項1に係る訂正(訂正事項1)について
(ア)訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明では、「所定の進化アイテム」として、プレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材であることを特定していたが、どのようなキャラクタの進化に必要なものかについては何ら特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項1に係る発明では、「所定の進化アイテム」が、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である旨を明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記(ア)の理由から明らかなように、訂正事項1は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に訂正前の請求項3の記載について訂正するものではなく、請求項3のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1において,「所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である」ことは,明細書の【0096】に「抽出手段44は、例えば、プレイヤの所持キャラクタのうち、ゲームの更新によって新たに進化が可能となった進化可能キャラクタを抽出してもよい。ここで、ゲームの更新とは、ゲームのバージョンアップやアップデートのことであって、キャラクタ情報40Bの進化合成情報において、新たに進化条件と進化後キャラクタのキャラクタIDが記憶されることをいう。例えば、抽出手段44は、直近又は所定期間内(例えば1ヶ月以内)のゲームの更新によって新たに進化が可能となった進化可能キャラクタ(所持キャラクタ)を抽出する。」及び【0103】に「また、本実施形態では、抽出手段44は、所持コンテンツのうち、ゲームの更新によって新たに進化が可能となった進化可能コンテンツを抽出してもよい。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
そうすると,訂正事項1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

イ 請求項2に係る訂正(訂正事項2)について
(ア)訂正の目的について
訂正前の請求項2に係る発明では、「所定の進化アイテム」として、プレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材であることを特定していたが、どのようなキャラクタの進化に必要なものかについては何ら特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項2に係る発明では、所定の進化アイテムが、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である旨を明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記(ア)の理由から明らかなように、訂正事項2は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載以外に訂正前の請求項3の記載について訂正するものではなく、請求項3のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2において,「所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である」ことは,明細書の【0096】に「抽出手段44は、例えば、プレイヤの所持キャラクタのうち、ゲームの更新によって新たに進化が可能となった進化可能キャラクタを抽出してもよい。ここで、ゲームの更新とは、ゲームのバージョンアップやアップデートのことであって、キャラクタ情報40Bの進化合成情報において、新たに進化条件と進化後キャラクタのキャラクタIDが記憶されることをいう。例えば、抽出手段44は、直近又は所定期間内(例えば1ヶ月以内)のゲームの更新によって新たに進化が可能となった進化可能キャラクタ(所持キャラクタ)を抽出する。」及び【0103】に「また、本実施形態では、抽出手段44は、所持コンテンツのうち、ゲームの更新によって新たに進化が可能となった進化可能コンテンツを抽出してもよい。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
そうすると,訂正事項2は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 請求項4に係る訂正(訂正事項3)について
(ア)訂正の目的について
訂正前の請求項4に係る発明では、「所定の進化アイテム」として、プレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材であることを特定していたが、どのようなキャラクタの進化に必要なものかについては何ら特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項4に係る発明では、所定の進化アイテムが、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である旨を明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記(ア)の理由から明らかなように、訂正事項3は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3において,「所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である」ことは,明細書の【0096】に「抽出手段44は、例えば、プレイヤの所持キャラクタのうち、ゲームの更新によって新たに進化が可能となった進化可能キャラクタを抽出してもよい。ここで、ゲームの更新とは、ゲームのバージョンアップやアップデートのことであって、キャラクタ情報40Bの進化合成情報において、新たに進化条件と進化後キャラクタのキャラクタIDが記憶されることをいう。例えば、抽出手段44は、直近又は所定期間内(例えば1ヶ月以内)のゲームの更新によって新たに進化が可能となった進化可能キャラクタ(所持キャラクタ)を抽出する。」及び【0103】に「また、本実施形態では、抽出手段44は、所持コンテンツのうち、ゲームの更新によって新たに進化が可能となった進化可能コンテンツを抽出してもよい。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
そうすると,訂正事項3は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

エ 請求項5に係る訂正(訂正事項4)について
(ア)訂正の目的について
訂正前の請求項5に係る発明では、「所定の進化アイテム」として、プレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材であることを特定していたが、どのようなキャラクタの進化に必要なものかについては何ら特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項5に係る発明では、所定の進化アイテムが、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である旨を明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記(ア)の理由から明らかなように、訂正事項4は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4において,「所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である」ことは,明細書の【0096】に「抽出手段44は、例えば、プレイヤの所持キャラクタのうち、ゲームの更新によって新たに進化が可能となった進化可能キャラクタを抽出してもよい。ここで、ゲームの更新とは、ゲームのバージョンアップやアップデートのことであって、キャラクタ情報40Bの進化合成情報において、新たに進化条件と進化後キャラクタのキャラクタIDが記憶されることをいう。例えば、抽出手段44は、直近又は所定期間内(例えば1ヶ月以内)のゲームの更新によって新たに進化が可能となった進化可能キャラクタ(所持キャラクタ)を抽出する。」及び【0103】に「また、本実施形態では、抽出手段44は、所持コンテンツのうち、ゲームの更新によって新たに進化が可能となった進化可能コンテンツを抽出してもよい。」との記載がなされていることに基づいて導き出される事項である。
そうすると,訂正事項4は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

オ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件において、訂正前の請求項1乃至5について特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項1乃至5に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。

カ 一群の請求項についての適否
訂正前の請求項1乃至3について、請求項3は、請求項1又は請求項2を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1又は訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1乃至3は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものである。


3 訂正後の本件特許発明
上記「2 訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は認められるから、上記訂正請求により訂正された請求項1乃至3、4及び5に係る発明(以下、順に「本件訂正特許発明1」乃至「本件訂正特許発明3」、「本件訂正特許発明4」及び「本件訂正特許発明5」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
プレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材である進化アイテムを消費して、当該キャラクタを進化させる情報処理装置であって、
クエスト選択画面の表示が要求された場合、前記プレイヤがプレイ可能なクエストであって、当該プレイヤが所持していない所定の進化アイテムを獲得できるクエストを特定する特定手段と、
前記特定されたクエストが前記所定の進化アイテムを獲得できるクエストであることを示す情報を含む、前記クエスト選択画面を表示する制御手段と、
を備え、
前記所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である、
情報処理装置。
【請求項2】
プレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材である進化アイテムを消費して、当該キャラクタを進化させる情報処理装置であって、
クエスト選択画面の表示が要求された場合、前記プレイヤがプレイ可能なクエストであって、当該プレイヤが所持している所定のキャラクタの進化において不足している所定の進化アイテムを獲得できるクエストを特定する特定手段と、
前記特定されたクエストが前記所定の進化アイテムを獲得できるクエストであることを示す情報を含む、前記クエスト選択画面を表示する制御手段と、
を備え、
前記所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である、
情報処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記クエスト選択画面において、前記特定されたクエストと他のクエストを区別して表示する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
プレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材である進化アイテムを消費して、当該キャラクタを進化させるゲームのプログラムであって、
コンピュータを、
クエスト選択画面の表示が要求された場合、前記プレイヤがプレイ可能なクエストであって、当該プレイヤが所持していない所定の進化アイテムを獲得できるクエストを特定する特定手段、
前記特定されたクエストが前記所定の進化アイテムを獲得できるクエストであることを示す情報を含む、前記クエスト選択画面を表示する制御手段、
として機能させ、
前記所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である、
プログラム。
【請求項5】
プレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材である進化アイテムを消費して、当該キャラクタを進化させるゲームのプログラムであって、
コンピュータを、
クエスト選択画面の表示が要求された場合、前記プレイヤがプレイ可能なクエストであって、当該プレイヤが所持している所定のキャラクタの進化において不足している所定の進化アイテムを獲得できるクエストを特定する特定手段、
前記特定されたクエストが前記所定の進化アイテムを獲得できるクエストであることを示す情報を含む、前記クエスト選択画面を表示する制御手段、
として機能させ、
前記所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である、
プログラム。」


4 令和3年8月10日付け取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
請求項1乃至5に係る本件特許は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1乃至5に係る本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)当審の判断
ア 甲第1号証に記載された発明
(ア)甲第1号証に記載した事項
本件特許に係る出願の原出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証(特許第6251507号公報)には、以下の記載がある。

a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム及びゲームシステムに関する。」

b 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
合成アイテムを合成するために必要な複数のアイテムが予め指定されている場合、プレーヤは、所望する合成アイテムの合成に必要な全てのアイテムが揃ったかどうかを確認する度に、自らが所有する多数のアイテムを表示させる操作入力を行う必要があり煩わしい。
【0006】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、合成アイテムの合成に必要な全てのアイテムが揃ったかどうかを確認するための操作入力の煩わしさを低減することが可能なプログラム及びゲームシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、
プレーヤにより指定された複数のアイテムの合成を指示する操作入力があった場合、指定された複数のアイテムの組合せに対応づけて記憶された1のアイテム(以下、合成アイテムという)を決定し、当該合成アイテムをプレーヤが使用可能な状態に更新するゲームを実行するためのプログラムであって、
プレーヤが前記合成アイテムを選択する操作入力があった場合に、選択された前記合成アイテムを記憶部に登録する登録処理部と、
登録された前記合成アイテムに対応付けて記憶されたアイテム(以下、必要アイテムという)の全てが選択可能な状態か否かを判定し、当該必要アイテムの全てが選択可能な状態と判定した場合に、登録された前記合成アイテムの合成が可能な状態となったことをプレーヤに報知する報知画面を表示させる処理を行う報知処理部としてコンピュータを機能させ、
前記報知画面は、前記合成アイテムを合成するためのアイテム合成画面への遷移を指示する操作入力を受付可能な遷移指示表示を含むことを特徴とするプログラムに関する。
【0008】
また本発明は、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体であって、上記各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記憶した情報記憶媒体に関する。また本発明は、プレーヤにより指定された複数のアイテムの合成を指示する操作入力があった場合、指定された複数のアイテムの組合せに対応づけて記憶された1のアイテム(以下、合成アイテムという)を決定し、当該合成アイテムをプレーヤが使用可能な状態に更新するゲームを実行するゲームシステムであって、上記各部を含むゲームシステムに関する。
【0009】
本発明によれば、プレーヤが合成を希望する合成アイテムを登録する操作入力を行っておけば、登録された合成アイテムを合成するために必要な全ての必要アイテムが揃った(選択可能な状態となった)場合に、その旨を報知する報知画面が表示され、報知画面において画面遷移を指示する操作入力を行うだけで、合成アイテムを合成するためのアイテム合成画面を表示させることができるため、必要アイテムが揃ったかどうかを確認する操作入力を行わずに少ない操作入力で登録した合成アイテムを合成することが可能となり、操作入力の煩わしさを低減することができる。」

c 「【0024】
本実施形態のゲームでは、ゲームにおいてプレーヤが使用・選択可能な複数のアイテムを合成することで、他のアイテム(以下、合成アイテムという)を使用・選択することができる。1つの合成アイテムを合成するためには、複数のアイテムが必要であり、これらの合成に必要となるアイテムを必要アイテムという。また、本発明において、合成とは、複数の必要アイテムのうちの一つのアイテムをベースアイテムとして選択し、ベースアイテムの攻撃力、防御力などのパラメータが異なるアイテム(ベースアイテムのパラメータだけを変化させる場合も含む)を使用・選択可能にする処理や、ベースアイテムと異なるアイテムを使用・選択可能にする処理、また、ベースアイテムを選択せず、複数のアイテムを選択し、これらの組合せに応じてアイテムを決定し、決定したアイテムを使用・選択可能にする処理など、複数のアイテムの組合せに応じて1つのアイテムを決定し、使用・選択可能にする処理をいう。なお、以降の説明において、ベースアイテムを選択して合成する場合に、ベースアイテムの他に必要となるアイテムや、ベースアイテムを選択せずに合成する場合のアイテムを素材アイテムという。」

d 「【0025】
1.構成
図1は、本実施形態のネットワークシステム(ゲームシステム)を示す。本実施形態では、複数の端末10(10A,10B,10C)とサーバ20(サーバシステム)とによって構成される。つまり、図1に示すように、本実施形態のネットワークシステムは、サービスを提供するサーバ20と、端末10とが、ネットワークに接続可能に構成される。
【0026】
サーバ20は、複数のユーザ(プレーヤ)間でコミュニケーションを提供することが可能なサービスを提供する情報処理装置であり、本実施形態ではSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)と呼ばれるコミュニティ型のサービスを提供するサーバである。つまり、サーバ20は、ユーザの情報(ユーザ名、日記、掲示情報、ゲームの進捗状況など)をログインしたユーザだけでなく、当該ユーザとフレンド関係にある他のユーザにも送信し、ユーザ間でコミュニティを図るようにしている。サーバ20は、会員登録を行ったユーザに限定してサービスを提供するようにしてもよい。サーバ20は、1又は複数のサーバ(認証サーバ、ゲーム処理サーバ、通信サーバ、課金サーバ、データベースサーバ等)により構成することができる。
【0027】
また、本実施形態のサーバ20は、端末10からの要求に応じて、オンラインゲームサービス(ソーシャルゲーム)を提供する。本実施形態では、端末10においてゲームプログラムが実行され、サーバ20では、プレーヤのアカウント情報やプレーヤに付与されたアイテム情報等が管理される。
【0028】
端末10は、携帯端末(スマートフォン、携帯電話、PHS端末、PDA、携帯型ゲーム機等)、パーソナルコンピュータ(PC)、ゲーム機、画像生成装置などの情報処理装置であり、インターネット(WAN)、LANなどのネットワークを介してサーバ20に接続可能な装置である。なお、端末10とサーバ20との通信回線は、有線でもよいし無線でもよい。」

e 「【0029】
図2に本実施形態のサーバ20の機能ブロック図の一例を示す。なお本実施形態のサーバ20は図2の構成要素(各部)の一部を省略した構成としてもよい。
【0030】
記憶部170は、処理部100や通信部196などのワーク領域となるもので、その機能はRAM、ハードディスクなどにより実現できる。記憶部170は、ワーク領域として使用される主記憶部172と、格納部174(例えばデータベース)とを含む。
【0031】
格納部174は、本実施形態のネットワークシステムに参加する複数のプレーヤそれぞれのプレーヤ情報176を格納する。例えば、格納部174は、複数のプレーヤそれぞれのプレーヤの識別情報に対応づけて、プレーヤ名(プレーヤアカウント)、プレーヤパスワード、端末10の「宛先情報」(IPアドレス、メールアドレス等)などを、プレーヤ情報176として格納する。また、格納部174は、プレーヤとフレンド関係にある他のプレーヤを特定するための情報を、プレーヤ情報176として格納する。
【0032】
また、格納部174は、プレーヤの識別情報に対応づけて、プレーヤに付与された(プレーヤが保有する)アイテムの情報等の各種ゲームパラメータを、プレーヤ情報176として格納する。また、格納部174は、プレーヤの識別情報に対応づけて、登録された合成アイテムに関する情報をプレーヤ情報176として格納する。
【0033】
情報記憶媒体180(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部100は、情報記憶媒体180に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。情報記憶媒体180には、本実施形態の処理部100の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記憶することができる。
【0034】
通信部196は端末10や他のサーバとの間で通信を行うための各種制御を行うものであり、その機能は、各種プロセッサ又は通信用ASICなどのハードウェアや、プログラムなどにより実現できる。
【0035】
処理部100(プロセッサ)は、端末10から送信され通信部196を介して受信したデータ(入力情報等)、プログラムなどに基づいて、プレーヤ情報176(アカウント情報、プレーヤに付与されたアイテムの情報等)の管理、ログイン/ログアウトに関する処理、画像生成処理などの各種処理を行う。処理部100は主記憶部172をワーク領域として各種処理を行う。処理部100の機能は各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。処理部100は、登録処理部110、アイテム付与部112、アイテム合成部114、画像生成部120を含む。
【0036】
登録処理部110は、プレーヤが合成アイテムを選択する操作入力(合成アイテムの登録を指示する操作入力)を端末10から受信した場合に、選択された合成アイテムを記憶部170(格納部174)に登録する処理を行う。また、登録処理部110は、端末10から受信した操作入力に基づいて、登録された前記合成アイテムに優先度を設定してもよい。
【0037】
アイテム付与部112は、端末10から受信したゲーム結果等の情報に基づいて、プレーヤにアイテム(ベースアイテム、素材アイテム)を付与する処理を行う。すなわち、プレーヤ情報176を更新して、プレーヤに付与されたアイテムをプレーヤ情報176に登録する。
【0038】
アイテム合成部114は、合成を指示する操作入力を端末10から受信した場合に、当該合成アイテムに対応付けて記憶された複数の必要アイテム(1つのベースアイテムと複数の素材アイテム、或いは、複数の素材アイテム)を合成して合成アイテムを合成する処理を行う。合成された合成アイテムは、プレーヤが使用・選択可能なアイテム(プレーヤに付与されたアイテム)としてプレーヤ情報176に登録される。
【0039】
画像生成部120は、処理部100で行われる処理の結果に基づいて、端末10においてゲーム画像を表示するための画像生成用データを生成する。生成された画像生成用データは、処理部100によって、通信部196を介して各端末10に送信される。画像生成部120は、報知処理部122を含む。
【0040】
報知処理部122は、プレーヤ情報176を参照して、登録された前記合成アイテムを合成するために必要な全ての前記必要アイテムがプレーヤに付与されているか(プレーヤが使用・選択可能な状態か)否かを判定し、前記全ての前記必要アイテムがプレーヤに付与されていると判定した場合に、登録された前記合成アイテムが登録可能な状態となったことをプレーヤに報知する報知画面を端末10において表示させる処理を行う。すなわち、当該報知画面を端末10において表示するための画像生成用データを生成して端末10に送信する。ここで、前記報知画面は、前記合成アイテムを合成するためのアイテム合成画面への遷移を指示する操作入力を受付可能な遷移指示表示を含む。」

f 「【0046】
また、報知処理部122は、前記必要アイテムを取得可能な複数のゲームのうち、登録された前記合成アイテムを合成するために必要な前記必要アイテムを取得可能な前記ゲームをプレーヤに報知する処理を行ってもよい。」

g 「【0048】
図3に本実施形態の端末10の機能ブロック図の一例を示す。なお本実施形態の端末10は図3の構成要素(各部)の一部を省略した構成としてもよい。
【0049】
入力部260は、プレーヤからの入力情報を入力するための機器であり、プレーヤの入力情報(操作入力)を処理部200に出力する。入力部260の機能は、タッチパネル(タッチパネル型ディスプレイ)、タッチパッド、マウス、方向キーやボタン、キーボード等の入力機器により実現することができる。
【0050】
記憶部270は、処理部200や通信部296などのワーク領域となるもので、その機能はRAMなどにより実現できる。記憶部270は、ワーク領域として使用される主記憶部274を含む。
【0051】
情報記憶媒体280(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部200は、情報記憶媒体280に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。情報記憶媒体280には、本実施形態の処理部200の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記憶することができる。
【0052】
表示部290は、処理部200で生成されたゲーム画像を出力するものであり、その機能は、LCD、CRT、或いはタッチパネルなどのディスプレイにより実現できる。
【0053】
音出力部292は、処理部200で生成された音を出力するものであり、その機能は、スピーカ、或いはヘッドフォンなどにより実現できる。
【0054】
通信部296はサーバ20との間で通信を行うための各種制御を行うものであり、その機能は、各種プロセッサ又は通信用ASICなどのハードウェアや、プログラムなどにより実現できる。
【0055】
処理部200(プロセッサ)は、入力部260からの入力情報、プログラム、通信部296を介してサーバ20から受信したデータなどに基づいて、ゲーム処理、画像生成処理、音生成処理、などの処理を行う。処理部200は主記憶部272をワーク領域として各種処理を行う。処理部200の機能は各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。処理部200は、ゲーム進行制御部210、画像生成部220、音生成部230を含む。
【0056】
ゲーム進行制御部210は、入力部260からの入力情報や、サーバ20から受信したデータなどに基づいて、ゲームを進行させる処理(ゲームを開始させる処理、ゲーム空間にキャラクタ、アイテム等を配置する処理、各種ゲームパラメータを算出する処理、ゲームを終了させる処理)を行う。
【0057】
画像生成部220は、処理部200で行われる種々の処理の結果に基づいて描画処理を行い、これによりゲーム画像(ゲーム画面)を生成し、表示部290に出力する。画像生成部220は、オブジェクト空間内において仮想カメラ(所与の視点)から見える画像(いわゆる3次元画像)を生成してもよい。また、画像生成部220は、サーバ20から受信した画像生成用データに基づいて、各種ゲーム画面(報知画面、アイテム合成画面等)を生成し、表示部290に出力する。」

h 「【0062】
本実施形態のゲームでは、プレーヤが所有するベースアイテム(必要アイテムの一例)に対して複数の素材アイテム(必要アイテムの一例)を合成することで、当該ベースアイテムを進化させた新たなアイテム(合成アイテム)を合成することができる。合成アイテムを合成する(ベースアイテムを進化させる)ために必要な複数の素材アイテムの種類と数は予め指定されているため、プレーヤは当該複数の素材アイテムを全て揃えた状態でなければ当該合成アイテムを合成することができない。プレーヤにとって、所望する合成アイテムの合成に必要な全ての素材アイテムが揃ったかどうかを確認する操作入力を行うことは手間を要し煩わしい。」

i「【0086】
また、本実施形態では、複数のゲームのうち、登録された合成アイテムを合成するために必要な素材アイテム(且つ、プレーヤが所有していない素材アイテム)を取得可能なゲームをプレーヤに報知する。例えば、図14に示すように、プレーヤがプレイ可能な複数のダンジョン(複数のゲームの一例)の一覧を表示するダンジョン選択画面DSにおいて、複数のダンジョンのうち、登録された合成アイテムの合成に必要な素材アイテムを取得可能なダンジョンに関連付けて、当該ダンジョンで取得可能な素材アイテムMIを表示ししてもよい。このようにすると、登録された合成アイテムの合成に必要な素材アイテムを取得するためのゲームを選択させ易くすることができる。」

j 「【図2】



k 「【図5】



l 「【図14】



(イ)甲第1号証の記載から認定できる事項
a 上記eの【0038】には、「アイテム合成部114」は「合成アイテムを合成する処理を行う」ものであることが記載され、上記eの【0035】には、「処理部100」は「アイテム合成部114」を含むことが記載され、上記eの【0029】の「図2に本実施形態のサーバ20の機能ブロック図の一例を示す。」との記載及び上記jの【図2】からサーバ20の機能ブロックに「処理部100」が含まれることが看取できることから、甲第1号証には、合成アイテムを合成する処理を行うサーバが記載されているといえる。

b 上記eの【0035】には、「処理部100」は「画像生成部120」を含むことが記載され、上記eの【0039】には、「画像生成部120」は「処理部100で行われる処理の結果に基づいて、端末10においてゲーム画像を表示するための画像生成用データを生成する」ものであるとともに「報知処理部122を含む」ことが記載され、上記fの【0046】に「報知処理部122」が「前記必要アイテムを取得可能な複数のゲームのうち、登録された前記合成アイテムを合成するために必要な前記必要アイテムを取得可能な前記ゲームをプレーヤに報知する処理」を行ってもよいことが記載されていることから、上記iの【0086】の「プレーヤがプレイ可能な複数のダンジョン(複数のゲームの一例)の一覧を表示するダンジョン選択画面DSにおいて、複数のダンジョンのうち、登録された合成アイテムの合成に必要な素材アイテムを取得可能なダンジョンに関連付けて、当該ダンジョンで取得可能な素材アイテムMIを表示」するための処理を「処理部100」が行っていることは明らかである。
そして、上記eの【0029】の「図2に本実施形態のサーバ20の機能ブロック図の一例を示す。」との記載及び上記jの【図2】からサーバ20の機能ブロックに「処理部100」が含まれることが看取できることから、甲第1号証には、サーバが、ダンジョン選択画面DSにおいて、ダンジョンで取得可能な素材アイテムMIを表示する処理部を含むことが記載されているといえる。

c 上記kの【図5】から、「ベースアイテム」がキャラクタの表示態様を有するものであることが看取できることから、甲第1号証には、キャラクタの表示態様を有するベースアイテムが記載されているといえる。

(ウ)甲1発明
上記(ア)及び(イ)より、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「プレーヤが所有する、キャラクタの表示態様を有するベースアイテムに対して、予め指定されている進化させた合成アイテムの合成に必要な複数の素材アイテムを合成することで、当該ベースアイテムを進化させた合成アイテムを合成する処理を行うサーバであって、
プレーヤがプレイ可能な複数のダンジョンの一覧を表示するダンジョン選択画面DSにおいて、複数のダンジョンのうち、プレーヤが所有していない素材アイテムを取得可能なダンジョンに関連付けて、当該ダンジョンで取得可能な素材アイテムMIを表示する処理部を含む、
サーバ。」

イ 本件訂正特許発明1について
(ア)本件訂正特許発明1と甲1発明との対比
本件訂正特許発明1と甲1発明とを対比すると、以下のことがいえる。

a 甲1発明の「プレーヤ」は、本件訂正特許発明1の「プレイヤ」に相当し、甲1発明の「ベースアイテム」は、「キャラクタの表示態様を有する」ものであるから、本件訂正特許発明1の「キャラクタ」に相当する。
してみれば、甲1発明の「プレーヤが所有する、キャラクタの表示態様を有するベースアイテム」は、本件訂正特許発明1の「プレイヤが所持しているキャラクタ」に相当する。

b 甲1発明の「予め指定されている進化させた合成アイテムの合成に必要な複数の素材アイテム」は、ベースアイテムを進化させ、合成アイテムを合成するために必要な素材であるから、上記aを踏まえれば、本件訂正特許発明1の「キャラクタの進化に必要な素材である進化アイテム」に相当する。

c 甲1発明は、「プレーヤが所有する、キャラクタの表示態様を有するベースアイテムに対して、予め指定されている進化させた合成アイテムの合成に必要な複数の素材アイテムを合成することで、当該ベースアイテムを進化させた合成アイテムを合成する処理を行う」ものであるところ、ゲーム媒体の合成に関する技術常識を踏まえれば、複数の素材アイテムを合成する際に、合成に用いた複数の素材アイテムを消費することは当業者にとって自明な事項であること、及び、甲1発明の「サーバ」は、情報処理装置の一種であることからすれば、甲1発明の「プレーヤが所有する、キャラクタの表示態様を有するベースアイテムに対して、予め指定されている進化させた合成アイテムの合成に必要な複数の素材アイテムを合成することで、当該ベースアイテムを進化させた合成アイテムを合成する処理を行うサーバ」は、上記a及びbで示した相当関係も踏まえれば、本件訂正特許発明1の「プレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材である進化アイテムを消費して、当該キャラクタを進化させる情報処理装置」に相当する。

d 甲1発明の「ダンジョン」は、プレーヤがプレイ可能なものであるとともに、所定のアイテムを取得することが可能なものであって、実質的にクエストといえることから、本件訂正特許発明1の「クエスト」に相当する。

e 甲1発明の「ダンジョン選択画面DS」は、上記dを踏まえれば、本件訂正特許発明1の「クエスト選択画面」に相当する。

f 甲1発明の「プレーヤが所有していない素材アイテム」は、素材アイテムがベースアイテムを進化させるために必要なアイテムであることから、本件訂正特許発明1の「当該プレイヤが所持していない所定の進化アイテム」に相当する。

g 上記d及びfの相当関係を踏まえれば、甲1発明の「複数のダンジョンのうち、プレーヤが所有していない素材アイテムを取得可能なダンジョン」は、本件訂正特許発明1の「前記プレイヤがプレイ可能なクエストであって、当該プレイヤが所持していない所定の進化アイテムを獲得できるクエスト」に相当する。

h 甲1発明の「複数のダンジョンのうち、プレーヤが所有していない素材アイテムを取得可能なダンジョンに関連付けて」「表示する」「当該ダンジョンで取得可能な素材アイテムMI」は、ダンジョンに関連付けて表示される、プレーヤが所有していない素材アイテムを取得可能なダンジョンであることを示す情報であるから、本件訂正特許発明1の「前記所定の進化アイテムを獲得できるクエストであることを示す情報」に相当する。

i 甲1発明のサーバは、「プレーヤがプレイ可能な複数のダンジョンの一覧を表示するダンジョン選択画面DSにおいて、複数のダンジョンのうち、プレーヤが所有していない素材アイテムを取得可能なダンジョンに関連付けて、当該ダンジョンで取得可能な素材アイテムMIを表示する処理部」を含むものであるところ、ゲームプログラムに基づくゲーム処理に係る技術常識を考慮すれば、素材アイテムMIを表示する処理を行う前に、複数のダンジョンのうちのどのダンジョンが、プレーヤがプレイ可能なダンジョンであって、プレーヤが所有していない素材アイテムを取得可能なダンジョンであるのかを特定する必要があることは、当業者にとって自明の事項であるから、甲1発明の「処理部」は、本件訂正特許発明1の「前記プレイヤがプレイ可能なクエストであって、当該プレイヤが所持していない所定の進化アイテムを獲得できるクエストを特定する特定手段」に相当する構成を有しているといえる。

j 甲1発明の「プレーヤがプレイ可能な複数のダンジョンの一覧を表示するダンジョン選択画面DSにおいて、複数のダンジョンのうち、プレーヤが所有していない素材アイテムを取得可能なダンジョンに関連付けて、当該ダンジョンで取得可能な素材アイテムMIを表示する処理部」は、「プレーヤが所有していない素材アイテムを取得可能なダンジョンに関連付けて、当該ダンジョンで取得可能な素材アイテムMI」を含む「ダンジョン選択画面DS」を表示する制御を行っているのであるから、上記h及びiも踏まえれば、本件訂正特許発明1の「前記特定されたクエストが前記所定の進化アイテムを獲得できるクエストであることを示す情報を含む、前記クエスト選択画面を表示する制御手段」に相当する。

k 上記a〜jからすれば、本件訂正特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

[一致点]
「プレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材である進化アイテムを消費して、当該キャラクタを進化させる情報処理装置であって、
前記プレイヤがプレイ可能なクエストであって、当該プレイヤが所持していない所定の進化アイテムを獲得できるクエストを特定する特定手段と、
前記特定されたクエストが前記所定の進化アイテムを獲得できるクエストであることを示す情報を含む、前記クエスト選択画面を表示する制御手段と、
を備える情報処理装置。」

[相違点1]
本件訂正特許発明1は、「クエスト選択画面の表示が要求された場合」に前記プレイヤがプレイ可能なクエストであって、当該プレイヤが所持していない所定の進化アイテムを獲得できるクエストを特定するのに対し、甲1発明は、ダンジョン選択画面DSを表示する前のいかなるタイミングで、複数のダンジョンのうち、登録された合成アイテムを合成するために必要な素材アイテム、且つ、プレーヤが所有していない素材アイテムを取得可能なダンジョンを特定するのかが定かでない点。

[相違点2]
本件訂正特許発明1は、「所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である」のに対し、甲1発明は、予め指定されている進化の合成に必要な素材アイテムである点。

(イ)上記各相違点に対する判断
事案に鑑み、上記相違点2から検討する。
ゲーム分野において、「直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材であるアイテムを獲得できるクエストであることを示す情報を含む、クエスト選択画面を表示する制御手段を備えた情報処理装置」は、ゲームの分野において、周知の技術事項でもないし、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材であるアイテムを獲得できるクエストであることを示す情報を含む、クエスト選択画面を表示することが設計的事項といえる理由もない。
してみると、上記相違点1について検討するまでもなく、本件訂正特許発明1は、甲1発明より、当業者が容易に想到し得るものということはできない。

ウ 本件訂正特許発明2について
(ア)本件訂正特許発明2は、本件訂正特許発明1の「当該プレイヤが所持していない所定の進化アイテム」との記載を、「当該プレイヤが所持している所定のキャラクタの進化において不足している所定の進化アイテム」との記載に置換した以外は、本件訂正特許発明1と同様の発明特定事項を有するものである。
(イ)本件訂正特許発明2と甲1発明との対比・判断
a 甲1発明の「登録された合成アイテムを合成するために必要な素材アイテム、且つ、プレーヤが所有していない素材アイテム」は、登録された合成アイテムを合成する、すなわち、プレーヤが所有するベースアイテムを進化させるために必要な素材アイテムのうちのプレーヤが所有していない素材アイテムであって、これが、プレーヤが所有するベースアイテムの進化において不足している素材アイテムであることは明らかであるから、本件訂正特許発明2の「当該プレイヤが所持している所定のキャラクタの進化において不足している所定の進化アイテム」に相当する。
b 上記a、及び、上記イ(ア)のaないしe、gないしjより、本件訂正特許発明2と甲1発明とは、上記相違点1及び相違点2で相違し、その余の点で一致する。
c そして、上記相違点2についての上記イ(イ)での検討を踏まえれば、本件訂正特許発明2は、甲1発明より、当業者が容易に想到し得るものということはできない。

エ 本件訂正特許発明3について
(ア)本件訂正特許発明3は、本件訂正特許発明1又は2において、「前記制御手段は、前記クエスト選択画面において、前記特定されたクエストと他のクエストを区別して表示する」との発明特定事項を付加したものである。
(イ)本件訂正特許発明3と甲1発明との対比・判断
a 甲1発明は「プレーヤがプレイ可能な複数のダンジョンの一覧を表示するダンジョン選択画面DSにおいて、複数のダンジョンのうち、プレーヤが所有していない素材アイテムを取得可能なダンジョンに関連付けて、当該ダンジョンで取得可能な素材アイテムMIを表示する処理部」を含むものであって、「処理部」が、素材アイテムMIを表示する「プレーヤが所有していない素材アイテムを取得可能なダンジョン」と、素材アイテムMIを表示しないそれ以外のダンジョンとを区別して表示している処理を行っているといえることから、甲1発明の「処理部」が「プレーヤがプレイ可能な複数のダンジョンの一覧を表示するダンジョン選択画面DSにおいて、複数のダンジョンのうち、プレーヤが所有していない素材アイテムを取得可能なダンジョンに関連付けて、当該ダンジョンで取得可能な素材アイテムMIを表示する」ことは、本件訂正特許発明3の「前記制御手段は、前記クエスト選択画面において、前記特定されたクエストと他のクエストを区別して表示する」ことに相当する。
b 上記a、並びに、上記イ(ア)または上記ウ(ア)からすれば、本件訂正特許発明3と甲1発明とは、上記相違点1及び相違点2で相違し、その余の点で一致する。
c そして、上記相違点についての上記イ(イ)での検討も踏まえれば、本件訂正特許発明3は、甲1発明より、当業者が容易に想到し得るものということはできない。

オ 本件訂正特許発明4について
(ア)本件訂正特許発明4は、本件訂正特許発明1と発明のカテゴリが異なるのみであって、発明を特定するための事項は、本件訂正特許発明1と実質的に同一である。
(イ)そのため、上記イ(ア)を踏まえれば、本件訂正特許発明4と甲1発明とは、上記相違点1及び相違点2で相違し、その余の点で一致する。
(ウ)そして、上記相違点についての上記イ(イ)での検討も踏まえれば、本件訂正特許発明4は、甲1発明より、当業者が容易に想到し得るものということはできない。

カ 本件訂正特許発明5について
(ア)本件訂正特許発明5は、本件訂正特許発明2と発明のカテゴリが異なるのみであって、発明を特定するための事項は、本件訂正特許発明2と実質的に同一である。
(イ)そのため、上記イ(ア)のaないしe、gないしj、上記イ(ア)を踏まえれば、本件訂正特許発明5と甲1発明とは、上記相違点1及び相違点2で相違し、その余の点で一致する。
(ウ)そして、上記相違点についての上記イ(イ)での検討も踏まえれば、本件訂正特許発明2は、甲1発明より、当業者が容易に想到し得るものということはできない。

(3)取消理由通知に記載した取消理由についてのまとめ
上記のとおりであって、本件訂正特許発明1乃至3、4及び5は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、異議申立人の主張する理由(取消理由で通知した理由)によっては、本件請求項1乃至3、4及び5に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものということはできない。

5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
請求項1乃至5に係る特許は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲第1号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、請求項1乃至5に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(2)当審の判断
上記のとおり、本件訂正特許発明1乃至3、4及び5は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正特許発明1乃至3、4及び5は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

(3)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(特許法第29条第1項第3号)についてのまとめ
上記のとおり、本件訂正特許発明1乃至3,4及び5は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではないから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由により、本件特許請求の範囲の請求項1及至3,4及び5に係る特許を取り消すことはできない。

6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1乃至3,4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1乃至3,4及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材である進化アイテムを消費して、当該キャラクタを進化させる情報処理装置であって、
クエスト選択画面の表示が要求された場合、前記プレイヤがプレイ可能なクエストであって、当該プレイヤが所持していない所定の進化アイテムを獲得できるクエストを特定する特定手段と、
前記特定されたクエストが前記所定の進化アイテムを獲得できるクエストであることを示す情報を含む、前記クエスト選択画面を表示する制御手段と、
を備え、
前記所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である、
情報処理装置。
【請求項2】
プレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材である進化アイテムを消費して、当該キャラクタを進化させる情報処理装置であって、
クエスト選択画面の表示が要求された場合、前記プレイヤがプレイ可能なクエストであって、当該プレイヤが所持している所定のキャラクタの進化において不足している所定の進化アイテムを獲得できるクエストを特定する特定手段と、
前記特定されたクエストが前記所定の進化アイテムを獲得できるクエストであることを示す情報を含む、前記クエスト選択画面を表示する制御手段と、
を備え、
前記所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である、
情報処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記クエスト選択画面において、前記特定されたクエストと他のクエストを区別して表示する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
プレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材である進化アイテムを消費して、当該キャラクタを進化させるゲームのプログラムであって、
コンピュータを、
クエスト選択画面の表示が要求された場合、前記プレイヤがプレイ可能なクエストであって、当該プレイヤが所持していない所定の進化アイテムを獲得できるクエストを特定する特定手段、
前記特定されたクエストが前記所定の進化アイテムを獲得できるクエストであることを示す情報を含む、前記クエスト選択画面を表示する制御手段、
として機能させ、
前記所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である、
プログラム。
【請求項5】
フレイヤが所持しているキャラクタの進化に必要な素材である進化アイテムを消費して、当該キャラクタを進化させるゲームのプログラムであって、
コンピュータを、
クエスト選択画面の表示が要求された場合、前記フレイヤがプレイ可能なクエストであって、当該フレイヤが所持している所定のキャラクタの進化において不足している所定の進化アイテムを獲得できるクエストを特定する特定手段、
前記特定されたクエストが前記所定の進化アイテムを獲得できるクエストであることを示す情報を含む、前記クエスト選択画面を表示する制御手段、
として機能させ、
前記所定の進化アイテムは、直近のゲームの更新によって新たに進化が可能となったキャラクタの進化に必要な素材である、
プログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-01-11 
出願番号 P2020-017877
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A63F)
P 1 651・ 113- YAA (A63F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 藤田 年彦
特許庁審判官 佐々木 創太郎
藤本 義仁
登録日 2020-11-24 
登録番号 6798630
権利者 株式会社セガ
発明の名称 情報処理装置及びプログラム  
代理人 小林 功  
代理人 小林 功  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ