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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A61K 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K |
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管理番号 | 1384110 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-04-28 |
確定日 | 2022-02-16 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6781358号発明「起泡性外用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6781358号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−10〕について訂正することを認める。 特許第6781358号の請求項1、5ないし10に係る特許を維持する。 特許第6781358号の請求項2ないし4に係る特許についての特許異議申立ては、却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許(特許第6781358号)に係る特許出願(特願2020−526043号)は、2019年12年18日(優先権主張 2018年12月19日 JP(日本国))を国際出願日とするものであり、令和2年10月19日に設定の登録(請求項の数10)がなされ、同年11月4日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和3年4月28日に、本件請求項1〜10に係る特許に対し、特許異議申立人 井上真一郎(以下「申立人1」という。)により、特許異議の申立てがなされた。 さらに、令和3年5月1日(特許異議申立書は令和3年5月6日差出)に、本件請求項1〜10に係る特許に対し、特許異議申立人 田中志帆(以下「申立人2」という。)により、特許異議の申立てがなされた。 以後の経緯は以下のとおりである。 ・令和3年 9月8日付け:取消理由通知書 ・令和3年11月11日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 ・令和3年12月20日:申立人2による意見書の提出 ・令和3年12月22日:申立人1による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和3年11月11日になされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである。 訂正事項1 請求項1における「高分子界面活性剤を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを含む組成物」を「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2〜3重量%を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%含有する組成物」に訂正する。 請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項5〜10も、連動して同様に訂正する。 (2)訂正事項2 請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 請求項4を削除する。 (5)訂正事項5 請求項5における「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.2〜3重量%、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%」を「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.8〜1.2重量%」に、「請求項4に記載」を「請求項1に記載」にそれぞれ訂正する。 請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項6〜10も、連動して同様に訂正する。 (6)訂正事項6 請求項6における「請求項1〜5のいずれかに記載」を「請求項1または5に記載」に訂正する。 請求項6を直接的又は間接的に引用する請求項7〜10も、連動して同様に訂正する。 (7)訂正事項7 請求項10における「請求項1〜9のいずれかに記載」を「請求項1、5〜9のいずれかに記載」に訂正する。 なお、訂正前の請求項2〜10は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1〜10に対応する訂正後の請求項1〜10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1における「高分子界面活性剤」を訂正前の請求項4に記載される「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」に限定するとともに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び1,3−ブチレングリコールの組成物全量に対する含有量を、それぞれ訂正前の請求項5に記載される「0.2〜3重量%」及び「15〜40重量%」に特定するものである。 よって、訂正事項1による請求項1に対する訂正、及び訂正事項1による請求項1に対する訂正に連動する請求項5〜10に対する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 (2)訂正事項2〜4について 訂正事項2〜4は、それぞれ訂正前の請求項2〜4を削除するものであるから、訂正事項2〜4による請求項2〜4に対する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 (3)訂正事項5について ア 訂正事項5のうち、訂正前の請求項5における「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.2〜3重量%、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%」を「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.8〜1.2重量%」とする訂正は、訂正前の請求項5において、組成物全量に対する「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」の含有量を「0.2〜3重量%」から「0.8〜1.2重量%」に減縮するものである。 そして、訂正前の請求項5における「1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%」という発明特定事項は、訂正後の請求項1の記載に追加されたので、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項5において上記「1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%」という発明特定事項の記載がないことは、訂正前の請求項5の記載を実質的に変更するものではない。 よって、上記訂正、及び上記訂正に連動する請求項6〜10に対する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 イ 訂正事項5のうち、訂正前の請求項5における「請求項4に記載」を「請求項1に記載」とする訂正は、訂正事項1により訂正前の請求項1における「高分子界面活性剤」が訂正前の請求項4に記載される「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」に限定(上記(1))されるとともに、訂正事項4により訂正前の請求項4が削除(上記(2))されたことに伴い、訂正前のの請求項5の引用請求項である「請求項4」を、訂正後の請求項5では「請求項1」に訂正するものである。 よって、上記訂正、及び上記訂正に連動する請求項6〜10に対する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 (4)訂正事項6について 訂正事項6は、訂正前の請求項6の引用請求項を「請求項1〜5のいずれか」から「請求項1または5」に訂正して、引用請求項の数を減少させるものである。 よって、上記訂正、及び上記訂正に連動する請求項7〜10に対する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 (5)訂正事項7について 訂正事項7は、訂正前の請求項10の引用請求項を「請求項1〜9のいずれか」から「請求項1、5〜9のいずれか」に訂正して、引用請求項の数を減少させるものである。 よって、上記訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 (6)小括 以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同様第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 また、請求項1〜10は、特許異議申立ての対象とされた請求項であるから、本件訂正請求による訂正に、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は適用されない。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−10〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、訂正後の請求項1〜10に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2〜3重量%を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%含有する組成物が、ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器内に充填されていること、並びに当該容器内に噴射剤を含まないことに特徴づけられる、使用時に泡を形成する外用製品。 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】 組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.8〜1.2重量%含有する、請求項1に記載の製品。 【請求項6】 医薬有効成分を少なくとも一種含む、請求項1または5のいずれかに記載の製品。 【請求項7】 医薬有効成分がムコ多糖類である請求項6に記載の製品。 【請求項8】 医薬有効成分の含有量が、組成物全量に対し0.01〜5重量%である、請求項6または7に記載の製品。 【請求項9】 医薬有効成分としてヘパリン類似物質および/またはヒアルロン酸あるいはその塩を含む請求項8に記載の製品。 【請求項10】 皮膚疾患の治療のための請求項1、5〜9のいずれかに記載の製品。」 以下、本件請求項1〜10に係る発明をそれぞれ本件発明1〜10といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。 第4 取消理由の概要 訂正前の請求項1〜10に係る特許に対して、当審から令和3年9月8日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 [取消理由1(新規性欠如)] 本件特許の下記の請求項に係る発明は、下記1〜6の点でその出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、下記の請求項に係る本件特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 記 1. 請求項1〜4及び6〜9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。 2. 請求項1〜4、6、7及び10に係る発明は、甲1’号証に記載された発明である。 3. 請求項1〜4、6及び10に係る発明は、甲2’号証に記載された発明である。 4. 請求項1〜4、6及び10に係る発明は、甲3’号証に記載された発明である。 5. 請求項1〜4、6及び10に係る発明は、甲4’号証に記載された発明である。 6. 請求項1及び2に係る発明は、甲6’号証に記載された発明である。 [取消理由2(進歩性欠如)] 本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるので、下記の請求項に係る本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 記 1. 請求項1〜10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第1号証に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2. 請求項1〜10に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第1号証に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3. 請求項1〜10に係る発明は、甲第6’号証に記載された発明、甲第6’号証及び甲第5’号証に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものである。 <引用文献一覧> ・甲第1号証:特開2014−125436号公報 ・甲第2号証:特開2001−131583号公報 ・甲第1’号証:Whip Face Wash,(ID#)5878173,Mintel GNPD,2018年8月(和訳文添付) ・甲第2’号証:Whip Face Wash,(ID#)5878171,Mintel GNPD,2018年8月(和訳文添付) ・甲第3’号証:Anti-Bacterial Gentle Foaming Hand Soap,(ID#)1277802,Mintel GNPD,2010年2月(和訳文添付) ・甲第4’号証:Cotton Snowy Cleansing Foam,(ID#)4647557,Mintel GNPD,2017年2月(和訳文添付) ・甲第5’号証:特開2014−125436号公報(甲第1号証と同一の文献) ・甲第6’号証:特開2014−137247号公報 (当審注) 以下では、甲第1号証・・・、甲第1’号証・・・をそれぞれ甲1、甲1’と記載し、他の号証も同様に記載する。 取消理由で引用された甲1及び甲2は、申立人1が提出した甲1及び甲2であり、甲1’〜甲6’は、申立人2が提出した甲1〜甲6である。 そして、各号証で外国語で記載されている箇所については、必要に応じて当審合議体による訳文を記載する。 また、本件訂正請求による訂正により請求項2〜4が削除されたこと(上記「第2」の「1(2)〜(4)」及び「2(2)」)を踏まえて、以下の判断を行う。 なお、下線は、特に断りがない限り、当審合議体が付したものである。 第5 取消理由1(新規性欠如)に対する当審の判断 1 本件発明1及び6〜9に係る発明に対する、甲1を主引用例とする新規性欠如について (1)甲1(特開2014−125436号公報)に記載された発明 取消理由通知書の「第4 1(1)」で説示したように、甲1における【請求項1】〜【請求項2】、【0010】、【0028】〜【0029】、【0035】〜【0038】、【0041】〜【0043】、【0046】、【0049】、及び実施例18(【0061】〜【0063】)等の記載、特に実施例18の記載から、甲1には以下の発明が記載されていると認められる。 「下記の成分(1)〜(21)を含む組成物がポンプフォーマーFL5L組成物ポンプフォーマーFL5L(大和製罐社製)内に充填されていること、上記ポンプフォーマー内に噴射剤を含まないこと、及び当該組成物が使用時に泡状化粧水となることを特徴とする、泡沫状化粧水。 (1)デシルグルコシド(プランタケア2000、コグニスジャパン社製、純分50%) 0.3質量%、(2)ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(HLB値:14.0) 0.2質量%、(3)モノステアリン酸デカグリセリル(HLB値:12.0) 0.1質量%、(4)オレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(HLB値:15.0) 0.1質量%、(5)ジプロピレングリコール 3.0質量%、(6)1,3−ブチレングリコール 3.0質量%、(7)ポリエチレングリコール4000 2.0質量%、(8)グルコシルグリセリン 2.0質量%、(9)ヒアルロン酸ナトリウム 0.05質量%、(10)ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム(ヒアロベール、キューピー社製) 0.5質量%、(11)クエン酸 0.03質量%、(12)クエン酸ナトリウム 0.07質量%、(13)エデト酸二ナトリウム 0.05質量%、(14)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.05質量%、(15)加水分解コラーゲン液 0.5質量%、(16)加水分解エラスチン液 0.5質量%、(17)エタノール 10.0質量%、(18)フェノキシエタノール 0.2質量%、(19)エチルヘキシルグリセリン(HLB値:15.0) 0.1質量%、(20)香料 0.02質量%、(21)精製水 残部。」(以下「甲1発明」という。) (2)本件発明1と甲1発明との対比・判断 甲1発明の「泡沫状化粧水」は肌に塗布するものであるから(【0010】)、本件発明1の「外用製品」に相当する。 そして、本件特許明細書における「本発明の高分子界面活性剤は、エチルセルロース、・・・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、・・・カルボキシメチルエチルセルロースなどのセルロース誘導体、・・・から選ばれる少なくとも一種である。」(【0011】)及び「本発明は、高分子界面活性剤を起泡成分として含む」(【0007】)という記載からみて、甲1発明における「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」は、本件発明1における「起泡成分」である「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」に相当する。 また、甲1発明における「ポンプフォーマーFL5L(大和製罐社製)」は、本件発明1における「ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器」に相当する。 さらに、甲1発明における上記組成物が「使用時に泡状化粧水となる」ことは、本件発明1における組成物が「使用時に泡を形成する」ことに相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「ヒドロキシプロピルメチルセルロースを起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを含有する組成物が、ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器内に充填されていること、並びに当該容器内に噴射剤を含まないことに特徴づけられる、使用時に泡を形成する外用製品。」である点で一致し、下記の点で相違する。 (相違点1) 本件発明1は、「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2〜3重量%を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%含有する」ものであるのに対し、甲1発明は、組成物全量に「ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.05質量%」を起泡成分として含み、かつ「1,3−ブチレングリコール 3.0重量%」を含有するものである点。 そして、上記相違点1に係る「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」及び「1,3−ブチレングリコール」の含有量の相違は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。 (3)本件発明6〜9と甲1発明との対比・判断 請求項6〜9は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件発明6〜9と甲1発明とは、上記相違点1を含む点で相違するから、本件発明6〜9は、甲1に記載された発明ではない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件発明1、6〜9は、甲1に記載された発明ではない。 2 本件発明1、6、7及び10に対する甲1’を主引用例とする新規性欠如について (1)甲1’(Whip Face Wash,(ID#)5878173,Mintel GNPD,2018年8月)に記載された発明 取消理由通知書の「第4 2(1)」で説示したように、甲1’の「成分」の項目に記載されている「BG」は1,3-ブチレングリコールの表示名称であり(要すれば「Cosmetic-info.jp(URL:https://www.cosmetic-info.jp/)」に掲載されている化粧品表示名称「BG」の項目及び部外品添加物「1,3-ブチレングリコール」の項目を参照。)、「Parfum」は香料を意味する記載である(要すれば「ファルマシア,1985,Vol.21,No.2,p.134-138」のp.134左欄「A.香料の歴史」の第3段落を参照。)。そして、上記「成分」の項目に噴射剤に相当する成分は記載されていない。 また、甲1’の「Whip Face Wash」と称される製品は、上記「成分」の項目に記載された成分を含む組成物が容器に充填された外用製品であり、当該組成物は使用時に容器から噴出された際に泡に分配されるものである。 そうすると、甲1’には次の発明が記載されていると認められる。 「水、グリセリン、ソルビトール、ラウリン酸、コカミドメチルMEA、(カプリリル/カプリル)グルコシド、ジグリセリン、水酸化カリウム、死海塩、ゴマ種子エキス(エキス)、ムコ多糖、ツベルアエスチブムエキス(エキス)、プロポリスエキス(エキス)、オタネニンジン、クミン種子油(エキス)、センチフォリアバラ花エキス(エキス)、サボンソウ葉エキス(エキス)、シロキクラゲ多糖体、クインスシードエキス(エキス)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、エデト酸Na、オレイン酸、クエン酸、プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、ラムノース、アルコール、グルクロン酸、グルコース、シクロデキストリン、マルトデキストリン、フェノキシエタノール、及び香料を含む組成物が容器内に充填されていること、上記容器内に噴射剤を含まないこと、及び上記組成物が使用時に泡に分配されることを特徴とする、『Whip Face Wash』と称される製品。」(以下「甲1’発明」という。) (2)本件発明1と甲1’発明との対比・判断 甲1’発明の「『Whip Face Wash』と称される製品」は肌をクレンジングするもの(「商品の説明」の項目)、すなわち肌に適用するものであるから、本件発明1の「外用製品」に相当する。 そして、本件特許明細書における「本発明の高分子界面活性剤は、エチルセルロース、・・・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、・・・カルボキシメチルエチルセルロースなどのセルロース誘導体、・・・から選ばれる少なくとも一種である。」(【0011】)及び「本発明は、高分子界面活性剤を起泡成分として含む」(【0007】)という記載からみて、甲1’発明における「ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208」は、本件発明1における「起泡成分」である「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」に相当する。 また、甲1’発明における「容器」は本件発明1における「ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器」に相当し、甲1’発明における組成物が「使用時に泡に分配される」ことは、本件発明1における組成物が「使用時に泡を形成する」ことに相当する。 そうすると、本件発明1と甲1’発明とは、 「ヒドロキシプロピルメチルセルロースを起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを含有する組成物が、ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器内に充填されていること、並びに当該容器内に噴射剤を含まないことに特徴づけられる、使用時に泡を形成する外用製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点2) 本件発明1は、「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2〜3重量%を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%含有する」ものであるのに対し、甲1’発明では「ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208」及び「1,3−ブチレングリコール」の含有量は特定されていない点。 そして、上記相違点2に係る「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」及び「1,3−ブチレングリコール」の含有量の相違は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1’に記載された発明ではない。 (3)本件発明6、7及び10と甲1’発明との対比・判断 請求項6、7及び10は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件発明6、7及び10と甲1’発明とは上記相違点2を含む点で相違するから、本件発明6、7及び10は、甲1’に記載された発明ではない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件発明1、6、7及び10は、甲1’に記載された発明ではない。 3 本件発明1、6及び10に対する甲2’を主引用例とする新規性欠如について (1)甲2’(Whip Face Wash,(ID#)5878171,Mintel GNPD,2018年8月)に記載された発明 取消理由通知書の「第4 3(1)」で説示したように、甲2’の「成分」の項目に記載されている「BG」及び「Parfum」は、それぞれ「1,3-ブチレングリコール」及び「Parfum」は香料を意味する記載であることは、上記2(1)で説示したとおりである。そして、上記「成分」の項目に噴射剤に相当する成分は記載されていない。 また、甲2’の「Whip Face Wash」と称される製品は、上記「成分」の項目に記載された成分を含む組成物が容器に充填された外用製品であり、当該組成物は使用時に容器から噴出された際に泡に分配されるものである。 そうすると、甲2’には次の発明が記載されていると認められる。 「水、グリセリン、ソルビトール、ラウリン酸、コカミドメチルMEA、(カプリリル/カプリル)グルコシド、水酸化カリウム、死海塩、ニゲラサチバ種子油、プロポリスエキス(エキス)、オタネニンジン、ゴマ種子エキス(エキス)、トリュフエキス(エキス)、ハイブリッドローズ花エキス(エキス、ハイブリッド、交配種)、サボンソウ葉エキス(エキス)、イカスミ(エキス、Hydrolysed)、シロキクラゲ多糖体、クインスシードエキス(エキス)、ジグリセリン、ミリスチン酸、パルミチン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、エデト酸Na、オレイン酸、クエン酸、プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、ラムノース、アルコール、プロピレングリコール、グルクロン酸、グルコース、シクロデキストリン、フェノキシエタノール、及び香料を含む組成物が容器内に充填されていること、上記容器内に噴射剤を含まないこと、及び上記組成物が使用時に泡に分配されることを特徴とする『Whip Face Wash』と称される製品。」(以下「甲2’発明」という。) (2)本件発明1と甲2’発明との対比・判断 甲2’発明の「『Whip Face Wash』と称される製品」は肌をクレンジングするものであるから(「商品の説明」の項目)、本件発明1の「外用製品」に相当する。 そして、甲2’発明における「ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208」が本件発明1における「起泡成分」である「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」に相当することは、上記2(2)で説示したとおりである。 また、甲2’発明における「容器」は本件発明1における「ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器」に相当し、甲2’発明における組成物が「使用時に泡に分配される」ことは、本件発明1における組成物が「使用時に泡を形成する」ことに相当する。 そうすると、本件発明1と甲2’発明とは、 「ヒドロキシプロピルメチルセルロースを起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを含有する組成物が、ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器内に充填されていること、並びに当該容器内に噴射剤を含まないことに特徴づけられる、使用時に泡を形成する外用製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点3) 本件発明1は、「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2〜3重量%を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%含有する」ものであるのに対し、甲2’発明では「ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208」及び「1,3−ブチレングリコール」の含有量は特定されていない点。 そして、上記相違点3に係る「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」及び「1,3−ブチレングリコール」の含有量の相違は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2’に記載された発明ではない。 (3)本件発明6及び10と甲2’発明との対比・判断 請求項6及び10は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件発明6及び10と甲2’発明とは上記相違点3を含む点で相違するから、本件発明6及び10は、甲2’に記載された発明ではない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件発明1、6及び10は、甲2’に記載された発明ではない。 4 本件発明1、6及び10に対する、甲3’を主引用例とする新規性欠如について (1)甲3’(Anti-Bacterial Gentle Foaming Hand Soap,(ID#)1277802,Mintel GNPD,2010年2月)に記載された発明 取消理由通知書の「第4 4(1)」で説示したように、甲3’の「成分」の項目に記載されている「BG」及び「Parfum」は、それぞれ「1,3-ブチレングリコール」及び「Parfum」は香料を意味する記載であることは、上記2(1)で説示したとおりである。そして、上記「成分」の項目に噴射剤に相当する成分は記載されていない。 また、上記「Anti-Bacterial Gentle Foaming Hand Soap」と称される製品は、甲3’の「成分」の項目に記載された成分を含む組成物が容器に充填された外用製品であり、製品名における「Foaming」という記載からみて、当該組成物は使用時に容器から噴出された際に泡を形成するものであると認められる。 そうすると、甲3’には次の発明が記載されていると認められる。 「水、ラウレス硫酸Na、香料、PPG-1-PEG-9ラウリルグリコールエーテル、スルホコハク酸ラウレス2Na、マンゴー果実エキス(エキス)、Olea Europaea(Olive)、Fruit Extract(エキス)、ココナツ果実エキス(エキス、ココナッツ由来)、ハチミツエキス(エキス)、塩化ナトリウム、グリセリン、Cocamidopropylamine Oxide、ヒドロキシエチルウレア(尿素)、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、カチオン化グアーガム-2、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、エデト酸四ナトリウム、1,3−ブチレングリコール、クエン酸、オキシベンゾン-4、水酸化ナトリウム、ベンジルアルコール、メチルクロロイソチアゾリン、メチルイソチアゾリノン、酸化鉄(CI 19140)、及び赤227を含む組成物が容器内に充填されていること、上記容器内に噴射剤を含まないこと、及び上記組成物が使用時に泡を形成することを特徴とする、『Anti-Bacterial Gentle Foaming Hand Soap』と称される製品。」(以下「甲3’発明」という。) (2)本件発明1と甲3’発明との対比・判断 甲3’発明の「『Anti-Bacterial Gentle Foaming Hand Soap』と称される製品」はハンドソープ(「商品の説明」の項目)、すなわち手の皮膚に適用するものであるから、本件発明1の「外用製品」に相当する。 そして、甲3’発明における「ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208」が本件発明1における「起泡成分」である「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」に相当することは、上記2(2)で説示したとおりである。 また、甲3’発明における「容器」は本件発明1における「ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器」に相当し、甲3’発明における組成物が「使用時に泡を形成すること」は、本件発明1における組成物が「使用時に泡を形成する」ことに相当する。 そうすると、本件発明1と甲3’発明とは、 「ヒドロキシプロピルメチルセルロースを起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを含有する組成物が、ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器内に充填されていること、並びに当該容器内に噴射剤を含まないことに特徴づけられる、使用時に泡を形成する外用製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点4) 本件発明1は、「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2〜3重量%を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%含有する」ものであるのに対し、甲3’発明では「ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208」及び「1,3−ブチレングリコール」の含有量は特定されていない点。 そして、上記相違点4に係る「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」及び「1,3−ブチレングリコール」の含有量の相違は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲3’に記載された発明ではない。 (3)本件発明6及び10と甲3’発明との対比・判断 請求項6及び10は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件発明6及び10と甲3’発明とは上記相違点3を含む点で相違するから、本件発明6及び10は、甲3’に記載された発明ではない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件発明1、6及び10は、甲3’に記載された発明ではない。 5 本件発明1、6及び10に対する、甲4’を主引用例とする新規性欠如 (1)甲4’(Cotton Snowy Cleansing Foam,(ID#)4647557,Mintel GNPD,2017年2月)に記載された発明 取消理由通知書の「第4 5(1)」で説示したように、甲4’の「成分」の項目に記載されている「BG」及び「Parfum」は、それぞれ「1,3-ブチレングリコール」及び「Parfum」は香料を意味する記載であることは、上記2(1)で説示したとおりである。そして、上記「成分」の項目に噴射剤に相当する成分は記載されていない。 また、甲4’の「Cotton Snowy Cleansing Foam」と称される製品は、上記「成分」の項目に記載された成分を含む組成物が容器に充填された外用製品であり、上記「商品説明」の項目における「リッチでデリケートな泡」という記載からみて、当該組成物は使用時に容器から噴出された際に泡を形成するものであると認められる。 そうすると、甲4’には次の発明が記載されていると認められる。 「水、グリセリン、ラウレス硫酸Na、アルキル(8〜16)グルコシド、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル、PEG-6(カプリル/カプリン酸)グリセリル、コカミドプロピルベタイン、コカミドDEA、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)クロスポリマー、ウワウルシエキス(エキス)、酵母エキス(エキス)、ミトラカーパススケーパーエキス(エキス)、シロバナワタ種子エキス(エキス)、α-アルブチン、1,3−ブチレングリコール、トラネキサム酸、米発酵液(ろ過、発酵)、ラウロイルサルコシンNa、スルホコハク酸ラウレス2Na、ココイルイセチオン酸Na、PEG-40水添ヒマシ油(加水分解)、塩化ナトリウム、クエン酸、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、エデト酸Na、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、水酸化カリウム、亜硫酸ナトリウム(活性、界面活性剤)、フェノキシエタノール、クロルフェネシン、及び香料を含む組成物が容器内に充填されていること、上記容器内に噴射剤を含まないこと、及び上記組成物が使用時に泡を形成することを特徴とする、『Cotton Snowy Cleansing Foam』と称される製品。」(以下「甲4’発明」という。) (2)本件発明1と甲4’発明との対比・判断 甲4’発明の「『Cotton Snowy Cleansing Foam』と称される製品」は肌に適用するものであるから(「商品の説明」の項目)、本件発明1の「外用製品」に相当する。 そして、甲4’発明における「ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208」が本件発明1における起泡成分である「高分子界面活性剤」に相当することは、上記2(2)で説示したとおりである。 また、甲4’発明における「容器」は本件発明1における「ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器」に相当し、甲4’発明における組成物が「使用時に泡を形成すること」は、本件発明1における組成物が「使用時に泡を形成する」ことに相当する。 そうすると、本件発明1と甲4’発明とは、 「ヒドロキシプロピルメチルセルロースを起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを含有する組成物が、ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器内に充填されていること、並びに当該容器内に噴射剤を含まないことに特徴づけられる、使用時に泡を形成する外用製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点5) 本件発明1は、「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2〜3重量%を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%含有する」ものであるのに対し、甲4’発明では「ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208」及び「1,3−ブチレングリコール」の含有量は特定されていない点。 そして、上記相違点5に係る「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」及び「1,3−ブチレングリコール」の含有量の相違は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲4’に記載された発明ではない。 (3)本件発明6及び10と甲4’発明との対比・判断 請求項6及び10は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件発明6及び10と甲4’発明とは上記相違点5を含む点で相違するから、本件発明6及び10は、甲4’に記載された発明ではない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件発明1、6及び10は、甲4’に記載された発明ではない。 6 本件発明1に対する、甲6’を主引用例とする新規性欠如について (1)甲6’(特開2014−137247号公報)に記載された発明 取消理由通知書の「第4 6(1)」で説示したように、甲6’における【請求項1】〜【請求項2】、【0014】〜【0015】、【0020】、【0024】、実施例3(【0027】〜【0029】)等の記載、特に実施例3の記載から、甲6’には次の発明が記載されていると認められる。 「1,3−ブチレングリコールを6質量%、ジグリセリンを5質量%、ココイルグルタミン酸トリエタノールアミンを5質量%、ココイルアラニントリエタノールアミンを3質量%、ヤシ脂肪酸トリエタノールアミンを1質量%、ヤシ脂肪酸を0.005質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウムを0.5質量%、及び精製水(残部)を含む組成物が、フォーマーポンプ容器(吉野工業所(株)社製、200メッシュのポリエチレンスクリーン2枚を有する)内に充填されていること、並びに当該容器内に噴射剤を含まないことに特徴づけられる、使用時に泡を形成する洗顔料。」(以下、「甲6’発明」という。) (2)本件発明1と甲6’発明との対比・判断 甲6’発明の「洗顔料」は顔の皮膚に適用するものであるから、本件発明1の「外用製品」に相当する。 そして、本件特許明細書における「すなわち、本発明は、高分子界面活性剤を起泡成分として含む、使用時に泡を形成する外用組成物に関する。」(【0007】)及び「本発明の高分子界面活性剤は、エチルセルロース、・・・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロースなどのセルロース誘導体、・・・から選ばれる少なくとも一種である。」(【0011】)という記載からみて、甲6’発明における「カルボキシメチルセルロースナトリウム」は、起泡成分である高分子界面活性剤である。 また、甲6’発明における「フォーマーポンプ容器(吉野工業所(株)社製、200メッシュのポリエチレンスクリーン2枚を有する)」は、本件発明1における「ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器」に相当し、甲6’発明における上記組成物が「使用時に泡を形成する」ことは、本件発明1における組成物が「使用時に泡を形成する」ことに相当する。 そうすると、本件発明1と甲6’発明とは、 「高分子界面活性剤を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを含有する組成物が、ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器内に充填されていること、並びに当該容器内に噴射剤を含まないことに特徴づけられる、使用時に泡を形成する外用製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点6) 本件発明1における起泡成分である高分子界面活性剤は「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」であり、本件発明1では「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2〜3重量%を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%含有する」点が特定されている対し、甲6’発明における起泡成分である高分子界面活性剤は「カルボキシメチルセルロースナトリウム」であり、甲6’発明では上記の点は特定されていない点。 そして、上記相違点6は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲6’に記載された発明ではない。 第6 取消理由2(進歩性欠如)に対する当審の判断 1 本件発明1、5〜10に対する、甲1を主引用例とする進歩性欠如について (1)本件発明1と甲1に記載された発明(甲1発明)との対比・判断 ア 甲1発明は上記「第5 1(1)」で認定したとおりであり、本件発明1と甲1発明との相違点1は上記「第5 1(2)」で認定した以下のとおりである。 (相違点1) 本件発明1は、「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2〜3重量%を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%含有する」ものであるのに対し、甲1発明は、組成物全量に「(14)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.05質量%」を起泡成分として含み、かつ「(6)1,3−ブチレングリコール 3.0重量%」を含有するものである点。 イ 相違点1について検討する。 (ア)本件特許明細書には、相違点1に関して、以下の事項が記載されている。 「本発明は、より良好な泡質、垂れ落ちのない適度な泡持ち感、使用感のよい泡を生成できる起泡性外用組成物を提供することを課題とする。」(【0006】) 「本発明者等は、・・・高分子界面活性剤を起泡剤として使用することで、所望の目的を達成することを見出した。すなわち、本発明は、高分子界面活性剤を起泡成分として含む、使用時に泡を形成する外用組成物に関する。」(【0007】) 「本発明の高分子界面活性剤は、・・・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)・・・などのセルロース誘導体、・・・から選ばれる少なくとも一種である。・・・特にヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)が好ましい。・・・高分子界面活性剤は、組成物全体に対し、・・・より好ましくは0.2〜3重量%、特に約0.5重量%、約0.75重量%や約1重量%程度含有するものが例示される。なお、・・・「約」という場合、示された数値の±20%、または±10%もしくは±5%の値まで含むものとする。・・・。」(【0011】) 「本発明の組成物にはアルコールを含み得る。アルコールとしては、・・・1,3−ブチレングリコール、・・・等の多価アルコールが例示され、1種あるいは2種以上含み得る。特に、・・・1,3−ブチレングリコールが好適に例示される。該アルコールの総含有量は、5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜40重量%である。」(【0013】) 「【0022】 実施例1 下記処方に従って、調製した検体をポンプフォーマー容器に充填し、容器から吐出時の泡形成の有無を評価した(表1、図1)。尚、検体AからIおよびNが高分子界面活性剤である。 【0023】 【表1】 【0024】 【表2】 本実施例にて用いた各検体の入手元を以下に示す。 【0025】 本発明の起泡性外用組成物に配合される高分子界面活性剤はそれぞれ単独で起泡剤として有効であることが分かった。 」(【0022】〜【0025】) 「【0026】 実施例2 下記処方に従って、調製した検体をポンプフォーマー容器に充填して、泡形成の有無、泡質、泡の保持時間及び液だれの有無を測定した(表3および表4)。・・・ 【0027】 【表3】 【0028】 【表4】 【0029】 ヒプロメロースは単体で良質で安定な泡を形成し、5分後も保持、3分後も液だれしなかった。この効果は、多価アルコールを組み合わせることでさらに改良された。一方、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60にポリオキシエチレンセチルエーテルやポリオキシエチレンラウリルエーテルを組み合わし得たものは、泡を形成しないか、形成しても弾力が低く、保持時間が短く、液だれし、多価アルコールを組み合わせてもヒプロメロースを用いた製剤と比較して弾力や保持時間などで劣った。ヒプロメロースは単体で良質で安定な泡を形成し、5分間も保持、3分後も液だれしなかった。この効果は多価アルコールを組み合わせることでさらに改良された。」(【0026】〜【0029】) 「【0030】 実施例3 粘度の異なるヒプロメロースを使って、濃度による泡形成の有無を評価した。尚、泡質の評価基準は実施例1と同様である。 【0031】 【表5】 【0032】 ヒプロメロースの粘度に関わらず、濃度0.2%以上で泡を形成した。」 (【0030】〜【0031】) (イ)上記(ア)から、本件発明1は、実施例1に記載されるように、他の高分子界面活性剤を用いた場合よりも優れた性質の泡を形成できる「起泡成分」である「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」(ヒプロメロース)と、「1,3−ブチレングリコール」とを、相違点1に係る含有量範囲で組み合わせて用いることによって、実施例2に記載されるように、より良好な泡質、垂れ落ちのない適度な泡持ち感等が得られる起泡性外用組成物を提供できることを特徴とするものであるといえる。 (ウ)甲1発明は、上記「第5 1(1)」で認定した、以下のとおりの発明である。 「下記の成分(1)〜(21)を含む組成物がポンプフォーマーFL5L組成物ポンプフォーマーFL5L(大和製罐社製)内に充填されていること、上記ポンプフォーマー内に噴射剤を含まないこと、及び当該組成物が使用時に泡状化粧水となることを特徴とする、泡沫状化粧水。 (1)デシルグルコシド(プランタケア2000、コグニスジャパン社製、純分50%) 0.3質量%、(2)ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(HLB値:14.0) 0.2質量%、(3)モノステアリン酸デカグリセリル(HLB値:12.0) 0.1質量%、(4)オレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(HLB値:15.0) 0.1質量%、(5)ジプロピレングリコール 3.0質量%、(6)1,3−ブチレングリコール 3.0質量%、(7)ポリエチレングリコール4000 2.0質量%、(8)グルコシルグリセリン 2.0質量%、(9)ヒアルロン酸ナトリウム 0.05質量%、(10)ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム(ヒアロベール、キューピー社製) 0.5質量%、(11)クエン酸 0.03質量%、(12)クエン酸ナトリウム 0.07質量%、(13)エデト酸二ナトリウム 0.05質量%、(14)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.05質量%、(15)加水分解コラーゲン液 0.5質量%、(16)加水分解エラスチン液 0.5質量%、(17)エタノール 10.0質量%、(18)フェノキシエタノール 0.2質量%、(19)エチルヘキシルグリセリン(HLB値:15.0) 0.1質量%、(20)香料 0.02質量%、(21)精製水 残部。」 ここで、甲1に、「本発明の効果を損なわない範囲内で、化粧料に一般に配合し得る成分を任意に添加することができる。このような成分としては、例えば油脂、・・・などの油性成分、高級アルコール、低級アルコールなどのアルコール類、天然水溶性高分子、半合成水溶性高分子、合成水溶性高分子などの高分子化合物、保湿剤、防腐剤、ビタミン類、消炎剤、美白剤、植物抽出物、賦活剤、血行促進剤、抗脂漏剤、無機の水溶性高分子、金属イオン封鎖剤などの各種薬剤が挙げられる。」(【0043】)と記載され、また、【0046】に多数記載される半合成水溶性高分子の例に甲1発明の「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」に相当する「メチルヒドロキシプロピルセルロース」も列記されているように、甲1発明における「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」は任意成分である。そして、甲1発明では、ヒドロキシプロピルメチルセルロース以外の各種の任意成分も用いられている。 また、甲1に、「これらの多価アルコールは、一種又は二種以上を組み合わせて配合することができる。これら多価アルコールのうち、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、マルチトール、ソルビトールが化粧水の泡沫を安定化し、肌に塗布した後に消泡する機能、また塗布後の肌のしっとり感を与え好ましい」(【0033】)と記載されているように、 甲1発明では、多価アルコールとして「1,3−ブチレングリコール」の他にジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール4000を組み合わせて用いられている。 そうすると、甲1発明で用いられた複数種の任意成分のうちヒドロキシプロピルメチルセルロースのみに着目してその含有量を0.2〜3重量%に特定するとともに、複数種を組み合わせて用いられている多価アルコールのうち1,3−ブチレングリコールのみに着目してその含有量を15〜40重量%に特定することを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 そして、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、1,3−ブチレングリコールとを相違点1に係る含有量範囲で組み合わせて用いることによって、上記(イ)のような起泡性外用組成物を提供できることが、本件特許出願の優先日(2018年12月19日)当時の技術常識であったともいえない。 ウ 以上のとおりであるから、甲1発明を、相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (2)本件発明5〜10と甲1発明との対比・判断 請求項5〜10は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるので、本件発明5〜10と甲1発明とは上記相違点1を含む点で相違する。 また、本件発明5におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量範囲である「0.8〜1.2重量%」は、相違点1に係るヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量範囲である「0.2〜3重量%」よりも狭い範囲である。 そうすると、上記(1)イと同様の理由により、甲1発明を、本件発明5〜10の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (3)本件発明の効果について ア 本件特許明細書の実施例1(上記(2)アの【0022】〜【0025】)、「起泡成分」として、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」(ヒプロメロース)を用いると、他の高分子界面活性剤を用いた場合よりも優れた性質の泡を形成できることを示す実験結果が記載されている。 イ 本件特許明細書の実施例2(上記(2)アの【0026】〜【0029】)には、HPMC-50と称される置換度タイプ2910のヒドロキシプロピルメチルセルロースと1,3−ブチレングリコールとを本件発明で特定される範囲内の含有量で組み合わせて用いた起泡性外用組成物が、性状、泡形成、泡質、保持時間、液だれの点で優れていたという効果が得られたことが記載されている。 ウ 本件特許明細書の実施例3(上記(2)アの【0030】〜【0032】)には、各種の粘度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)を、濃度0.2%以上で用いた場合に泡を形成したことを示す実験結果が記載されている。 エ さらに、特許権者が令和3年11月11日付けの意見書に添付して提出した乙第1号証(以下、「乙1」という。)の実験成績証明書には、下記の表1に示されるように、HPMC-50と称される置換度タイプ2910のヒドロキシプロピルメチルセルロースと1,3−ブチレングリコールとを本件発明で特定される範囲内の含有量で組み合わせて用いた起泡性外用組成物(検体1及び2)、HPMC-400と称される置換度タイプ2906のヒドロキシプロピルメチルセルロースと1,3−ブチレングリコールとを本件発明で特定される範囲内の含有量で組み合わせて用いた起泡性外用組成物(検体3)のいずれについても、泡形成、液だれ、保持時間の点において、比較例1及び2の起泡性外用組成物よりも、優れた効果が得られたことが記載されている。 オ 上記ア〜エの実験結果を総合すると、「起泡成分」として、他の高分子界面活性剤を用いた場合よりも優れた性質の泡を形成できる複数種の「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」(ヒプロメロース)と、「1,3−ブチレングリコール」とを、本件発明で特定される含有量範囲に該当する複数種の含有量で組み合わせて用いることによって、より良好な泡質、垂れ落ちのない適度な泡持ち感等が得られる起泡性外用組成物を提供できる、という顕著な効果が奏されるといえる。 そして、このような効果は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項から、当業者が予測し得たものであるとはいえない。 (4)小括 よって、本件発明1、5〜10は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本件発明1、5〜10に対する、甲2を主引用例、甲1を副引用例とする進歩性欠如について (1)甲2(特開2001−131583号公報)に記載された発明 取消理由通知書の「第5 2(1)」で説示したように、甲2の【請求項1】〜【請求項2】、【0026】〜【0028】、【0030】、【0031】、【0035】、実施例18(【0052】)、【0057】等の記載、特に実施例18の記載から、甲2には以下の発明が記載されていると認められる。 「下記の成分(1)〜(21)を含むデオドラント及びふけ防止用シャンプー組成物。 (1)モノ−N−ラウリルリンゴ酸アミドトリエタノールアミン 10質量%、(2)POE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 10質量%、(3)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 3質量%、(4)ラルリン酸ジエタノールアミド 2質量%、(5)ベンゲルFW(豊順鉱業社製)0.5質量%、(6)カチオン化セルロース(レオガードGP、ライオン化学製)0.5質量%、(7)ラウリルジメチルアミンオキサイド 2質量%、(8)ヘキシレングリコール 7質量%、(9)エタノール 1質量%、(10)メチルパラベン 0.2質量%、(11)プロピルパラベン 0.1質量%、(12)油溶性甘草エキス 2質量%、(13)トリクロサン 0.2質量%、(14)ピロクトン オラミン(オクトピロックス、クラリアント・ジャパン社製)0.1質量%、(15)l−メントール 0.3質量%、(16)シリコーンエマルジョン(BY22−020、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)2質量%、(17)1,3−ブチレングリコール 5質量%、(18)エチレングリコールジステアレート 1質量%、(19)香料B 1質量%、(20)青色403号 適量、(21)精製水 残部」(以下「甲2発明」という。) (2)本件発明2と甲2発明との対比・判断 ア 甲2発明の「デオドラント及びふけ防止用シャンプー組成物」は皮膚(頭皮を含む)に適用するものであるから(【0057】)、本件発明1の「外用製品」に相当する。 そして、本件特許明細書における「本発明の高分子界面活性剤は、エチルセルロース、・・・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロースなどのセルロース誘導体、・・・ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸から選ばれる少なくとも一種である。」(【0011】)及び「本発明は、高分子界面活性剤を起泡成分として含む」(【0007】)という記載からみて、甲2発明における「カチオン化セルロース(レオガードGP、ライオン化学製)」は、「起泡成分」である「高分子界面活性剤」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「高分子界面活性剤を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを含有する組成物、又は当該組成物が容器内に充填されている外用製品。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点7) 本件発明1は、組成物が「ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器内に充填されていること、並びに当該容器内に噴射剤を含まないことに特徴づけられる、使用時に泡を形成する外用製品。」であるのに対し、甲2発明は、組成物が「デオドラント及びふけ防止用シャンプー組成物」である点。 (相違点8) 本件発明1における起泡成分である高分子界面活性剤は「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」であり、本件発明1では「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2〜3重量%を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%含有する」点が特定されている対し、甲2発明における起泡成分である高分子界面活性剤は「カチオン化セルロース(レオガードGP、ライオン化学製)」であり、甲2発明の組成物全量に対する1,3−ブチレングリコールの含有量は5質量%である点。 イ 相違点について検討する。 (ア)相違点7について 甲2には、ポンプ式又はスクイーズ式のフォーマー容器に収容して、使用時に泡を形成させるようにする態様が記載されており(【0030】)、そして、甲2発明は噴射剤を含まない組成物である。 そうすると、甲2発明の組成物を上記フォーマー容器に充填することにより、相違点7に係る構成を有する外用製品にすることを、当業者は容易に想到し得たといえる。 (イ)相違点8について (イ−1)本件発明1は、「起泡成分」として、他の高分子界面活性剤を用いた場合よりも優れた性質の泡を形成できる「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」(ヒプロメロース)と、「1,3−ブチレングリコール」とを、相違点1に係る含有量範囲で組み合わせて用いることによって、より良好な泡質、垂れ落ちのない適度な泡持ち感等が得られる起泡性外用組成物を提供できることを特徴とするものであることは、上記1(1)ア及びイで説示したとおりである。 (イ−2)これに対し、甲2発明は、上記2(1)で認定した、以下のとおりの発明である。 「下記の成分(1)〜(21)を含むデオドラント及びふけ防止用シャンプー組成物。 (1)モノ−N−ラウリルリンゴ酸アミドトリエタノールアミン 10質量%、(2)POE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 10質量%、(3)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 3質量%、(4)ラルリン酸ジエタノールアミド 2質量%、(5)ベンゲルFW(豊順鉱業社製)0.5質量%、(6)カチオン化セルロース(レオガードGP、ライオン化学製)0.5質量%、(7)ラウリルジメチルアミンオキサイド 2質量%、(8)ヘキシレングリコール 7質量%、(9)エタノール 1質量%、(10)メチルパラベン 0.2質量%、(11)プロピルパラベン 0.1質量%、(12)油溶性甘草エキス 2質量%、(13)トリクロサン 0.2質量%、(14)ピロクトン オラミン(オクトピロックス、クラリアント・ジャパン社製)0.1質量%、(15)l−メントール 0.3質量%、(16)シリコーンエマルジョン(BY22−020、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)2質量%、(17)1,3−ブチレングリコール 5質量%、(18)エチレングリコールジステアレート 1質量%、(19)香料B 1質量%、(20)青色403号 適量、(21)精製水 残部」 そして、甲2には、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」がノニオン性高分子の例として記載されているが(【0027】)、甲2発明で用いられたカチオン性高分子である「カチオン化セルロース(レオガードGP、ライオン化学製)」よりも、ノニオン性高分子の方が好ましいという趣旨の記載はなく、甲2には、アルコール成分として1,3−ブチレングリコールを用いることが好ましいという趣旨の記載もない。 また、甲1には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び1,3−ブチレングリコールを含有する組成物が記載されているが(上記「第5 1(1)」)、甲1発明で用いられた複数種の任意成分のうちヒドロキシプロピルメチルセルロースのみに着目してその含有量を0.2〜3重量%に特定するとともに、複数種を組み合わせて用いられている多価アルコールのうち1,3−ブチレングリコールのみに着目してその含有量を15〜40重量%に特定することを、当業者が容易に想到し得たとはいえないことは、上記1(1)イ(ウ)で説示したとおりである。 そうすると、甲2発明で用いられた複数種の成分のうち、「カチオン化セルロース(レオガードGP、ライオン化学製)」に代えて「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」を用いて、その含有量を0.2〜3重量%に特定するとともに、「1,3−ブチレングリコール」に着目してその含有量を5〜40重量%に特定することを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 そして、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、1,3−ブチレングリコールとを相違点1に係る含有量範囲で組み合わせて用いることによって、上記のような起泡性外用組成物を提供できることが、本件特許出願の優先日当時の技術常識であったともいえない。 そうすると、甲2発明を、相違点8に係る構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 ウ 以上のとおりであるから、甲2発明を、相違点7及び8に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (2)本件発明5〜10と甲2発明との対比・判断 請求項5〜10は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるので、本件発明5〜10と甲2発明とは上記相違点7及び8を含む点で相違する。 また、本件発明5におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量範囲である「0.8〜1.2重量%」は、相違点8に係るヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量範囲である「0.2〜3重量%」よりも狭い範囲である。 そうすると、上記(1)イと同様の理由により、甲2発明を、本件発明5〜10の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (3)本件発明の効果について 上記1(3)で説示した本件発明の効果は、甲2に記載された発明、甲2及び甲1に記載された事項から、当業者が予測し得たものであるとはいえない。 (4)小括 よって、本件発明1、5〜10は、甲2に記載された発明、甲2及び甲1に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 本件発明1、5〜10に対する、甲6’を主引用例及び甲5’を副引用例とする進歩性欠如について ア 甲6’発明は上記「第5 6(1)」で認定したとおりであり、本件発明1と甲6’発明との相違点6は上記「第5 6(2)」で認定した以下のとおりである。 (相違点6) 本件発明1における起泡成分である高分子界面活性剤は「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」であり、本件発明1では「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2〜3重量%を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%含有する」点が特定されている対し、甲6’発明における起泡成分である高分子界面活性剤は「カルボキシメチルセルロースナトリウム」であり、甲6’発明では上記の点は特定されていない点。 イ 相違点6について検討する。 甲6’には、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」を用いることについての記載はない。 そして、甲5’(上記「第5 1」で説示した甲1と同一の文献)には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び1,3−ブチレングリコールを含有する組成物が記載されているが(上記「第5 1(1)」)、甲5’に記載された発明(すなわち甲1発明)で用いられた複数種の任意成分のうちヒドロキシプロピルメチルセルロースのみに着目してその含有量を0.2〜3重量%に特定するとともに、複数種を組み合わせて用いられている多価アルコールのうち1,3−ブチレングリコールのみに着目してその含有量を15〜40重量%に特定することを、当業者が容易に想到し得たとはいえないことは、上記1(1)イ(ウ)で説示したとおりである。 そして、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、1,3−ブチレングリコールとを相違点1に係る含有量範囲で組み合わせて用いることによって、上記のような起泡性外用組成物を提供できることが、本件特許出願の優先日当時の技術常識であったともいえない。 そうすると、甲6’及び甲5’の記載から、甲6’発明を相違点6に係る構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 ウ 以上のとおりであるから、甲6’発明を、相違点6に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (2)本件発明5〜10と甲6’発明との対比・判断 請求項5〜10は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるので、本件発明5〜10と甲6’発明とは上記相違点6を含む点で相違する。 また、本件発明5におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量範囲である「0.8〜1.2重量%」は、相違点6に係るヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量範囲である「0.2〜3重量%」よりも狭い範囲である。 そうすると、上記(1)イと同様の理由により、甲6’発明を、本件発明5〜10の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (3)本件発明の効果について 上記1(3)で説示した本件発明の効果は、甲6’に記載された発明、甲6’及び甲5’に記載された事項から、当業者が予測し得たものであるとはいえない。 (4)小括 よって、本件発明1、5〜10は、甲6’に記載された発明、甲6’及び甲5’に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4 申立人の主張について (1)申立人1は、令和3年12月22日提出の意見書の(3−3−2)〜(3−3−3)において、ヒドロキシプロピルメチルセルロース」(ヒプロメロース)の種類を問わず顕著な効果があるとまではいえず、また、本件特許明細書にはHPMC-50(1重量%)及び1,3-ブチレングリコール(15重量%)を組み合わし得た結果しか記載されておらず、本件発明で特定される含有量範囲の全範囲に渡って、当業者が技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果があると推論することは不可能であるという趣旨の主張をしている。 しかし、上記1(3)、2(3)及び3(3)で説示したとおり、本件特許明細書には、本件発明により、「起泡成分」として、他の高分子界面活性剤を用いた場合よりも優れた性質の泡を形成できる「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」(ヒプロメロース)の複数種について、「1,3−ブチレングリコール」と、本件発明で特定される含有量範囲に該当する複数種の含有量で組み合わせて用いることによって、より良好な泡質、垂れ落ちのない適度な泡持ち感等が得られる起泡性外用組成物を提供できるという、各甲号証の記載からは予測できない顕著な効果が得られることが記載されているのであるから、当業者は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース」(ヒプロメロース)の種類を問わず、そして本件発明で特定される含有量範囲の全範囲に渡って、各甲号証の記載からは予測できない顕著な効果が得られることを、理解できるといえる。 よって、上記主張を採用することはできない。 (2)申立人1は、令和3年12月22日提出の意見書の13〜14頁において、特許権者が提出した乙1の実験成績証明書に記載の調製方法により、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと1,3−ブチレングリコールを組み合わせても、本件発明の効果が得られなかった場合があったという趣旨の主張をしている。 しかし、申立人1は、上記のように本件発明の効果が得られなかったことを当業者が客観的に確認できる実験成績証明書等を提出していないので、上記主張には根拠がなく、採用することはできない。 (3)申立人2は、令和3年12月20日提出の意見書の7〜8頁の(d)等において、本件発明1及び5の構成、含有量及びそれによる効果は既に公知技術であるので、本件発明1及び5による効果は、格別顕著な効果ではないという趣旨の主張をしている。 しかし、上記1〜3で説示したように、そもそも、各号証のいずれにも、「起泡成分」として、他の高分子界面活性剤を用いた場合よりも優れた性質の泡を形成できる「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」(ヒプロメロース)と、「1,3−ブチレングリコール」とを、相違点1に係る含有量範囲で組み合わせて用いることによって、より良好な泡質、垂れ落ちのない適度な泡持ち感等が得られる起泡性外用組成物を提供できることについては記載も示唆もされていないのであるから、本件発明1及び5の構成は公知ではない。 そして、上記1(3)、2(3)及び3(3)で説示したとおり、本件発明により、「起泡成分」として、他の高分子界面活性剤を用いた場合よりも優れた性質の泡を形成できる複数種の「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」(ヒプロメロース)と、「1,3−ブチレングリコール」とを、本件発明で特定される含有量範囲で組み合わせて用いることによって、より良好な泡質、垂れ落ちのない適度な泡持ち感等が得られる起泡性外用組成物を提供できるという、各甲号証の記載からは予測できない顕著な効果が得られることを、当業者は理解できるといえる。 よって、上記主張を採用することはできない。 第7 取消理由通知で採用しなかった、特許異議申立書で主張された特許異議申立理由について 1 特許法第36条第6項第1号について (1)申立人1の主張 ア 申立人1は、訂正前の請求項5(訂正後の請求項1)には「組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.2〜3重量%、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%含有する。」という記載があるが、本件特許明細書においては実施例2に記載の特定の組合せの場合の効果しか実証されていないので、訂正前の請求項5(訂正後の請求項1)に記載の含有量の全範囲において、上記効果を拡張ないし一般化できないという趣旨の主張をしている(特許異議申立書の35頁)。 イ 上記アの主張について、検討する。 (ア)本件特許明細書の実施例1(上記(2)アの【0022】〜【0025】)には、「起泡成分」として、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」(ヒプロメロース)を用いると、他の高分子界面活性剤を用いた場合よりも優れた性質の泡を形成できることを示す実験結果が記載されている。 (イ)本件特許明細書の実施例2(上記(2)アの【0026】〜【0029】)には、HPMC-50と称される置換度タイプ2910のヒドロキシプロピルメチルセルロースと1,3−ブチレングリコールとを本件発明で特定される範囲内の含有量で組み合わせて用いた起泡性外用組成物が、性状、泡形成、泡質、保持時間、液だれの点で優れていたという効果が得られたことが記載されている。 (ウ)本件特許明細書の実施例3(上記(2)アの【0030】〜【0032】)には、各種の粘度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)を、濃度0.2%以上で用いた場合に泡を形成したことを示す実験結果が記載されている。 (エ)さらに、特許権者が令和3年11月11日付けの意見書に添付して提出した乙1の実験成績証明書には、下記の表1に示されるように、HPMC-50と称される置換度タイプ2910のヒドロキシプロピルメチルセルロースと1,3−ブチレングリコールとを本件発明で特定される範囲内の含有量で組み合わせて用いた起泡性外用組成物(検体1及び2)、HPMC-400と称される置換度タイプ2906のヒドロキシプロピルメチルセルロースと1,3−ブチレングリコールとを本件発明で特定される範囲内の含有量で組み合わせて用いた起泡性外用組成物(検体3)のいずれについても、泡形成、液だれ、保持時間の点において、比較例1及び2の起泡性外用組成物よりも、優れた効果が得られたことが記載されている。 (オ)上記(ア)〜(エ)の実験結果を総合して参酌すると、「起泡成分」として、他の高分子界面活性剤を用いた場合よりも優れた性質の泡を形成できる「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」(ヒプロメロース)の複数種について、「1,3−ブチレングリコール」と、本件発明で特定される含有量範囲に該当する複数種の含有量で組み合わせて用いることによって、より良好な泡質、垂れ落ちのない適度な泡持ち感等が得られる起泡性外用組成物を提供できることから、訂正前の請求項5(訂正後の請求項1)に記載される含有量の全範囲にまで、実施例2に記載される特定の組合せの場合の効果を拡張ないし一般化できることを、当業者は認識できるといえる。 ウ 以上のとおりであるから、申立人1の上記アの主張は認められない。 (2)申立人2の主張 ア 申立人2は、本件特許出願時に様々なポンプフォーマー容器等の吐出口の形状や吐出量、泡吐出形成機構等が存在し、本件特許出願時の技術常識を参酌しても一義的にポンプフォーマー容器等が定まらないため、本件課題を解決し得たか否かは明らかではない、という趣旨の主張をしている(特許異議申立書の60頁)。 イ 上記アの主張について、検討する。 甲1の実施例18では「ポンプフォーマーFL5L(大和製罐社製)」(【0063】)が用いられ、そして、甲1の【0041】〜【0043】には、容器内に噴射剤を含まない各種のポンプフォーマー容器又はスクイーズフォーマー容器が多数例示されている。 甲6’の実施例では「フォーマーポンプ容器(吉野工業所(株)社製、200メッシュのポリエチレンスクリーン2枚を有する)」(【0024】)が用いられ、そして、甲6’の【0021】〜【0022】には、容器内に噴射剤を含まないポンプフォーマー容器について具体的に説明する記載がある。 このように、本件特許出願時の技術常識として、起泡性外用組成物の吐出に用いられる各種のポンプフォーマー容器又はスクイーズフォーマー容器が知られていたのであるから、当業者は、泡形成、液だれ、保持時間等において優れた起泡性外用組成物を得るという本件発明の課題(【0006】)を解決するために適切なポンプフォーマー容器又はスクイーズフォーマー容器を、過度の試行錯誤を要することなく、適切なポンプフォーマー容器又はスクイーズフォーマー容器を、使用することによって、泡形成、液だれ、保持時間等において優れた起泡性外用組成物を得るという本件発明の課題(【0006】)を解決することができたものと認められる。 ウ 以上のとおりであるから、申立人2の上記アの主張は認められない。 2 特許法第36条第6項第2号について ア 申立人2は、本件特許明細書の実施例には、使用したポンプフォーマー容器の購入先の記載がなく、吐出口の形状、吐出量や泡形成のためのメッシュ番号等の泡吐出形成機構についての記載もなく、ポンプフォーマー容器等が一義的に定まらず、実施例における測定方法や評価方法の記載が不十分であるため、本件発明の範囲を明確に特定することができないので本件発明の記載は不明確である、という趣旨の主張をしている(特許異議申立書の58〜59頁)。 イ 上記アの主張について、検討する。 上記「第3」で説示したように、本件発明は訂正特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1〜10には、当業者が技術的意義を理解できないような発明特定事項は記載されていないのであるから、請求項1〜10の記載は明確であり、本件発明の範囲は明確であるといえる。 ウ また、本件特許出願時の技術常識として、起泡性外用組成物の吐出に用いられる各種のポンプフォーマー容器又はスクイーズフォーマー容器が多数知られていたことは上記1(2)イで説示したとおりであり、ポンプフォーマー容器等を明確に理解できるし、本件特許明細書の実施例には「泡の評価基準」(【0023】)、「保持時間」及び「液だれ」(【0028】)の具体的な評価方法が明確に記載されているので、上記1(1)イで説示したように、当業者は、本件特許明細書における実施例等の記載を参酌することにより、請求項1、5〜10に記載された発明特定事項により奏される効果を理解できるといえる。 エ 以上のとおり、本件発明は明確であるから、申立人2の上記アの主張は認められない。 3 特許法第36条第4項第1号について ア 申立人2は、本件発明の課題が解決できるか否かを評価するために重要な泡吐出形成機構であるポンプフォーマー容器等が明確に特定されておらず、本件出願時の技術常識をもってしても、本件発明を当業者が実施するためには過度な試行錯誤を要する、という趣旨の主張をしている(特許異議申立書の59〜60頁)。 イ しかし、本件特許出願時の技術常識として、起泡性外用組成物の吐出に用いられる各種のポンプフォーマー容器又はスクイーズフォーマー容器が多数知られていたことは上記1(2)イで説示したとおりであるし、本件特許明細書における実施例等の記載を参酌することにより、本件発明により奏される効果を当業者が理解できるといえることは、上記1(1)イで説示したとおりであるから、当業者が本件発明の実施をするために過度の試行錯誤を要するとはいえない。 ウ 以上のとおりであるから、申立人2の上記アの主張は認められない。 4 申立人2による特許法第29条第2項(進歩性欠如)について ア 申立人2は、特許異議申立書の(5−1−2)において(51頁)、訂正前の請求項5(訂正後の請求項1)に係る発明(すなわち本件発明1)に対し、ポンプフォーマー容器等を使用する分野において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、1、3−ブチレングリコールとの組合せは周知技術であり、その効果も当業者の予測を超えるものではないという趣旨の、甲1’〜甲4’に基づく進歩性欠如を主張している。 そこで、上記主張について検討する。 甲1’〜甲4’のいずれの記載を参酌しても、起泡性外用組成物で複数種の成分のうち、ヒドロキシプロピルメチルセルロースに着目してその含有量を0.2〜3重量%に特定するとともに、1,3−ブチレングリコールに着目してその含有量を15〜40重量%に特定することを、当業者が容易に想到し得たとはいえず、また、これらの号証の記載から、上記「第6 1(3)」で説示した本件発明の効果を、当業者が予測し得たとはいえない。 イ 申立人2は、特許異議申立書の(5−1−4)において(52〜53頁)、下記甲7’の特許請求の範囲には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の成分(B)の1〜2.5%と、1,3−ブチレングリコール等の成分(C)の3〜20%を含む粘性洗浄剤組成物が記載され、甲7’の実施例21には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)1.5%と、1,3−ブチレングリコール8%を含む粘性洗浄剤組成物が記載されていることを根拠として、訂正前の請求項5(訂正後の請求項1)に係る発明(すなわち本件発明1)に対する進歩性欠如を主張している。 ・甲7’:再公表特許WO2014/129257号公報(申立人2の提出した甲第7号証) そこで、上記主張について検討する。 甲7’の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5を引用する請求項6の記載から、甲7’には、以下の発明が記載されていると認められる。 「成分(A)〜(C): (A)高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N−アシルアミノ酸アミン塩及びN−アシルメチルタウリン塩から選ばれる1種又は2種以上である、アニオン性界面活性剤 3〜25質量% (B)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)から選ばれる1種又は2種以上である、ノニオン性セルロース誘導体 1〜2.5質量% (C)エタノール、プロピレングリコール、次プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、液状のポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上である、IOB(無機性値/有機性値)が3.4以下のエタノール及び/又は多価アルコール 3〜20質量% を含有する粘性洗浄剤組成物。」(以下、「甲7’発明」という。) 上記のように、甲7’発明の粘性洗浄剤組成物は、成分(B)及び成分(C)とともに、高級脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤である成分(A)も必須の主要成分として含むものである。 そして、請求人が指摘する甲7’の実施例21に記載の粘性洗浄剤組成物(甲7’の【表4】)は、成分(A)としてラウリン酸を6%、ミリスチン酸を3%、パルミチン酸を4%、これらの対塩基である水酸化カリウム(【0014】及び【0016】)を3.28%、成分(B)としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を1.5%、成分(C)として1,3−ブチレングリコールを8%含むものであり、甲7’の【0048】には、ディスペンサー付きポンプ容器を使用することについての記載がある。 しかし、甲7’の実施例21の記載及び甲7’の他の記載をみても、甲7’発明において、成分(B)としてヒドロキシプロピルメチルセルロースのみに着目してその含有量を0.2〜3重量%に特定するとともに、成分(C)として1,3−ブチレングリコールのみに着目してその含有量を15〜40重量%に特定して、上記成分(A)を必須の主要成分としない本件発明1の構成を得ることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 また、甲7’の記載から、上記「第6 1(3)」で説示した本件発明の効果を、当業者が予測し得たとはいえない。 ウ 申立人2は、特許異議申立書において(特に53頁以降)、訂正前の請求項6〜10に対する進歩性欠如を主張しているが、訂正後の請求項6〜10は訂正前の請求項5(訂正後の請求項1)を引用するものであり、上記ア及びイで説示したように、訂正前の請求項5(訂正後の請求項1)に係る発明(すなわち本件発明1)に対する進歩性欠如の理由はないのであるから、訂正後の請求項6〜10に対する進歩性欠如の理由もないことは明らかである。 エ 以上のとおりであるから、申立人2の上記ア〜ウの主張は認められない。 5 採用しなかった証拠について (1)進歩性欠如の理由に関連する文献として、申立人1は下記甲3を提出している。 ・甲3:「信越化学 医薬品セルロース製品案内」、2018年7月、表紙、第1頁、裏書き (2)本件特許出願の優先日当時の周知技術又は技術常識に関する文献として、申立人2は下記甲8’〜甲16’を提出している。 ・甲8’:特開2003−95895号公報(申立人2の提出した甲8) ・甲9’:特開2001−354524号公報(申立人2の提出した甲9) ・甲10’:特開2001−348324号公報(申立人2の提出した甲10) ・甲11’:特開2010−265241号公報(申立人2の提出した甲11) ・甲12’:特開2017−149699号公報(申立人2の提出した甲12) ・甲13’:公開技報2006−501515号(申立人2の提出した甲13) ・甲14’:特開2017−110170号公報(申立人2の提出した甲14) ・甲15’:ものこわし教室、***泡が出てくるポンプの巻(3)***、https://www.yumeginga.jp/720_directors_room/monokowashis/monokowashi/awapump/awapump3.html(申立人2の提出した甲15) ・甲16’:大和製罐株式会社、製品紹介、容器【化粧品】、フォーマー容器、https://www.daiwa-can.co.jp/product/former.html(申立人2の提出した甲16) (3)しかし、上記(1)及び(2)の証拠に記載された事項を考慮しても、これらの事項は結論を左右するものではない。 6 小括 したがって、取消理由通知で採用しなかった、上記1〜4の理由及び上記5(1)及び(2)の証拠に記載された事項により、請求項1、5〜10に係る特許を取り消すことはできない。 第8 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、5〜10に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1、5〜10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項2〜4は、上記「第2」で説示したとおり、訂正により削除された。これにより、請求項2〜4に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2〜3重量%を起泡成分として含み、1,3−ブチレングリコールを15〜40重量%含有する組成物が、ポンプフォーマー容器またはスクイズフォーマー容器内に充填されていること、並びに当該容器内に噴射剤を含まないことに特徴づけられる、使用時に泡を形成する外用製品。 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】 組成物全量に対しヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.8〜1.2重量%含有する、請求項1に記載の製品。 【請求項6】 医薬有効成分を少なくとも一種含む、請求項1または5に記載の製品。 【請求項7】 医薬有効成分がムコ多糖類である請求項6に記載の製品。 【請求項8】 医薬有効成分の含有量が、組成物全量に対し0.01〜5重量%である、請求項6または7に記載の製品。 【請求項9】 医薬有効成分としてヘパリン類似物質および/またはヒアルロン酸あるいはその塩を含む請求項8に記載の製品。 【請求項10】 皮膚疾患の治療のための請求項1、5〜9のいずれかに記載の製品。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-02-03 |
出願番号 | P2020-526043 |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K) P 1 651・ 536- YAA (A61K) P 1 651・ 121- YAA (A61K) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
原田 隆興 |
特許庁審判官 |
渕野 留香 前田 佳与子 |
登録日 | 2020-10-19 |
登録番号 | 6781358 |
権利者 | 日東メディック株式会社 |
発明の名称 | 起泡性外用組成物 |
代理人 | 山尾 憲人 |
代理人 | 松谷 道子 |
代理人 | 櫻井 陽子 |
代理人 | 坂田 啓司 |
代理人 | 松谷 道子 |
代理人 | 櫻井 陽子 |
代理人 | 坂田 啓司 |
代理人 | 山尾 憲人 |