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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61F
管理番号 1384111
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-28 
確定日 2022-02-07 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6775049号発明「吸水性樹脂粒子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6775049号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。 特許第6775049号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6775049号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成31年3月22日(優先権主張 平成30年12月12日)の出願であって、令和2年10月7日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和3年4月28日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし3)がされ、同年7月30日付けで取消理由が通知され、同年10月8日に特許権者 住友精化株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年同月15日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年11月18日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和3年10月8日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「無加圧DWの30秒値が、1.0mL/g以上であり、」
とあるのを、
「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり、」
と訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「生理食塩水の保水量が35〜60g/gである」
とあるのを、
「生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」
と訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、
「吸水性樹脂粒子であって、」
とあるのを、
「吸水性樹脂粒子であって、
前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり、」
と訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記無加圧DWの30秒値が、3.0mL/g以上である」
とあるのを、
「前記無加圧DWの30秒値が、9.5mL/g以上である」
と訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「無加圧DWの30秒値」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項1についての訂正は、「生理食塩水の保水量」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項1についての訂正は、「シリカ粒子の割合」に関する限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし3による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項2についての訂正について
訂正事項1ないし3による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし3による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)請求項3についての訂正について
訂正事項1ないし3による請求項3についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項3についての訂正は、「無加圧DWの30秒値」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし4による請求項3についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし4による請求項1ないし3についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし4による請求項1ないし3についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。

なお、訂正前の請求項1ないし3は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし4による請求項1ないし3についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし3に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子であって、
前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり、
無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり、
以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、
生理食塩水の保水量が41〜60g/gである、吸水性樹脂粒子。
i)25℃において、吸水性樹脂粒子からなる層の表面上に、25質量%食塩水の直径3.0±0.1mmに相当する球状液滴を滴下して、当該吸水性樹脂粒子と前記液滴とを接触させる。
ii)前記液滴が前記表面に接触してから、30秒後の時点の前記液滴の接触角を測定する。
【請求項2】
前記接触角が、20度以上70度以下である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】
前記無加圧DWの30秒値が、9.5mL/g以上である、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年4月28日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1(甲第1ないし3、5、6及び8号証のいずれかを主引用文献とする新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし3、5、6及び8号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか又は上記甲第1ないし3、5、6及び8号証のいずれかに記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由2(甲第4号証を主引用文献とする新規性
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

3 申立理由3(甲第7、9又は21号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7、9又は21号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

4 申立理由4(甲第13又は14号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第13又は14号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

5 申立理由5(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(1)シリカ粒子の添加量が規定されていない点
ア 発明の詳細な説明の記載及び甲第22号証の記載から、シリカ粒子の添加量が吸水性樹脂の吸水速度(無加圧のDW値の30秒値に関連)の制御および本件特許発明の課題の達成に大きく影響を及ぼすと推察される。ところが、本件特許の請求項1ないし3にはシリカ粒子の添加量または含有量がなんら規定されていない。
したがって、本件特許発明1ないし3は、発明の課題を解決できない範囲(例えば比較例1の0.1質量%)が含まれていることになる。

イ 非晶質シリカの含有量を好ましい下限値(0,2質量%)を大きく下回る0.02質量%又は0.001質量%まで低減させて得られる吸水性樹脂粒子は、甲第24号証記載の吸水性樹脂粒子と差異もなく、発明の課題を解決できないのは明らかである。
そして、本件特許発明1ないし3は、「シリカ粒子」の量が欠如しており、発明の課題を解決しない範囲が含まれていることになる。

(2)シリカ粒子の種類が規定されていない点
ア 甲第27号証の記載から、超疎水性シリカ粒子を添加することでは、本件特許発明1ないし3において規定される「接触角」の条件を達成できないのは自明である。
そして、本件特許発明1ないし3は、シリカ粒子の種類が特定されておらず、発明の課題を解決しない範囲が含まれていることになる。

イ 甲第28号証には、親水性度が70%未満の場合、二酸化ケイ素の疎水性が強くなることから、得られる吸水性組成物の吸水速度が遅くなり、且つ初期の加圧下吸水量が低下することが記載されている。
そうすると、親水性度が70%未満の二酸化ケイ素粉末を添加することでは、初期吸水速度の関連する、本件特許発明1ないし3において規定される「無加圧DWの30秒値」の条件を達成できないのは自明である。
そして、本件特許発明1ないし3は、シリカ粒子の種類が特定されておらず、発明の課題を解決しない範囲が含まれていることになる。

6 申立理由6(実施可能要件
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(1)シリカ粒子の種類及び添加量が規定されていない点
発明の詳細な説明に記載の実施例では、製品名:トクシールNP−Sの非晶質シリカのみが使用されている。
ここで、吸水性樹脂粒子に添加するシリカ粒子の種類及び粒径でDW値や吸水速度が大きく影響することは技術常識であること及び甲第23号証の記載から、吸水性樹脂粒子に対して、疎水性シリカ粒子を添加する場合に、本件特許発明1ないし3において規定される「無加圧DWの30秒値」や「接触角」の条件を達成できないのは自明である。
したがって、疎水性シリカを含め、どの種類のシリカ粒子を選択し、どの適度含有させればよいのか、非晶質シリカ等のシリカ粒子のみを開示する発明の詳細な説明の記載からは当業者であっても理解できない。

(2)シリカ粒子の種類が規定されていない点
ア 甲第27号証の記載から、超疎水性シリカ粒子を添加することでは、本件特許発明1ないし3において規定される「接触角」の条件を達成できないのは自明である。
したがって、超疎水性シリカ粒子を含め、どの種類のシリカ粒子を選択すればよいのか、発明の詳細な説明の記載からは当業者であっても理解できない。

イ 甲第28号証には、親水性度が70%未満の場合、二酸化ケイ素の疎水性が強くなることから、得られる吸水性組成物の吸水速度が遅くなり、且つ初期の加圧下吸水量が低下することが記載されている。
そうすると、親水性度が70%未満の二酸化ケイ素粉末を添加することでは、初期吸水速度の関連する、本件特許発明1ないし3において規定される「無加圧DWの30秒値」の条件を達成できないのは自明である。
したがって、親水性度が70%未満の二酸化ケイ素粉末を含め、どの種類のシリカ粒子を選択すればよいのか、発明の詳細な説明の記載からは当業者であっても理解できない。

7 証拠方法
甲第1号証:国際公開第2018/062539号
甲第2号証:特開平9−124955号公報
甲第3号証:特開2006−68731号公報
甲第4号証:特開2005−111474号公報
甲第5号証:国際公開第2017/170605号
甲第6号証:国際公開第2018/155591号
甲第7号証:特開2012−236898号公報
甲第8号証:国際公開第2016/104374号
甲第9号証:国際公開第2011/086843号
甲第10号証:国際公開第2004/110328号
甲第11号証:特開2012−12451号公報
甲第12号証:Modern Superabsorbent Polymer Technology(発行1998)
甲第13号証:国際公開第95/07938号
甲第14号証:特開平6−93008号公報
甲第15号証:特開平10−118117号公報
甲第16号証:甲第1号証の実施例28の実験成績証明書
甲第17号証:甲第2号証の実施例3の実験成績証明書
甲第18号証:甲第3号証の実施例2の実験成績証明書
甲第19号証:甲第4号証の実施例32の実験成績証明書
甲第20号証:甲第5号証の実施例1および2の実験成績証明書
甲第21号証:特開2009−57496号公報
甲第22号証:特開2009−19065号公報
甲第23号証:特許第5485805号公報
甲第24号証:特開2003−88552号公報
甲第25号証:拒絶理由通知書(発送日:令和1年7月30日)に対し、特許権者が令和1年11月27日付で提出した意見書
甲第26号証:特開2010−241975号公報
甲第27号証:特表2016−540107号公報
甲第28号証:特開平7−88171号公報
参考文献1:特開2008−133441号公報
なお、参考文献1は令和3年11月18日に提出された意見書に添付されたものである。また、証拠の表記は、特許異議申立書及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」及び「参1」のようにいう。

第5 取消理由の概要
令和3年7月30日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。

1 取消理由1(甲1ないし6、8及び21のいずれかを主引用文献とする新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1ないし6、8及び21のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか又は上記甲1ないし6、8及び21のいずれかに記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由1は申立理由1、申立理由2及び申立理由3のうち甲21を主引用文献とする進歩性を包含する。

2 取消理由2(実施可能要件
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由2は申立理由6と表現は異なるもののおおむね同旨である。

・本件特許発明1ないし3の発明特定事項である「シリカ粒子」については、発明の詳細な説明の【0064】に「この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。」と記載されているが、シリカ粒子が親水性なのか疎水性なのかについては記載されていない。
そして、発明の詳細な説明の【0082】ないし【0092】には、本件特許発明1ないし3の発明特定事項を有する実施例1ないし3において、「シリカ粒子」として「非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)」を使用することが記載されている。
ところで、吸水性樹脂粒子に添加する粒子の種類がDW値や吸水速度に大きく影響することは技術常識であるところ、甲23に記載された事項から、吸水性樹脂粒子に対して、疎水性シリカ粒子を添加する場合、本件特許発明1ないし3において規定される「無加圧DWの30秒値」及び「以下のi」及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」の条件を達成できないのは自明である。また、甲27に記載された事項から、吸水性樹脂粒子に対して、超疎水性シリカ粒子を添加する場合、本件特許発明1ないし3において規定される「無加圧DWの30秒値」及び「以下のi」及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」の条件を達成できないのは自明であり、さらに、甲28に記載された事項から、吸水性樹脂粒子に対して、親水性度が70%未満の二酸化ケイ素微粉末を添加する場合、本件特許発明1ないし3において規定される「無加圧DWの30秒値」及び「以下のi」及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」の条件を達成できないことも自明である。
してみると、「シリカ粒子」として、「非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)」以外のシリカ粒子、特に疎水性シリカ粒子、超疎水性シリカ粒子又は親水性度が70%未満の二酸化ケイ素微粉末を使用した場合、本件特許発明1ないし3において規定される「無加圧DWの30秒値」及び「以下のi」及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」の条件を達成するために、どのような「シリカ粒子」を選択し、添加量をどの程度にするかを決めるのに、当業者といえども、過度の試行錯誤を要するといえる。
よって、本件特許発明1ないし3に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足するものとはいえない。

第6 取消理由についての判断
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「吸水性樹脂組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は予め付されたものに加え当審で付したものがある。他の文献についても同様。

・「[0347] 〔製造例2〕
容量2Lのポリプロピレン製容器に、アクリル酸441.0g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.768g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.024モル%)、1.0質量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)水溶液2.70g、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液181.69g、および脱イオン水(イオン交換水)366.44gを投入し混合させて、単量体水溶液(a2’)を作製した。
[0348] 次に、前記単量体水溶液(a2’)を攪拌しながら冷却した。液温が39.5℃となった時点で、40℃に調温した48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液189.76gを加え、混合することで単量体水溶液(a2)を作製した。このとき、該単量体水溶液(a2)の作製直後の温度は、2段目の中和熱によって79.8℃まで上昇した。
[0349] 次に、攪拌状態の前記単量体水溶液(a2)に4.5質量%の過硫酸ナトリウム水溶液17.68gを加えた後、直ちにステンレス製バット型容器(底面340mm×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)コーティング)に大気開放系で注いだ。なお、2段目の中和開始から前記バット型容器に単量体水溶液(a2)を注ぎ込むまでの時間は、55秒間とし、前記バット型容器はホットプレート(NEO HOTPLATE HI−1000/株式会社井内盛栄堂社)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱した。
[0350] 前記単量体水溶液(a2)がバット型容器に注がれてから58秒経過後に、重合反応が開始した。前記重合反応は、生成する重合体が水蒸気を発生しながら四方八方に膨脹発泡して進行した後、バット型容器よりも若干大きなサイズまで収縮した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル(2)を取り出した。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行った。
[0351] 前記重合反応で得られた含水ゲル(2)を、ミートチョッパー(HL−3225N、プレート孔径:10.0mm/レマコ株式会社)を用いてゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(2)とした。
[0352] 前記含水ゲル(2)の投入量は230g/minであり、前記含水ゲル(2)の投入と並行して、90℃に調温した脱イオン水を50g/minで添加しながらゲル粉砕を行った。
[0353] 前記操作で得られた粒子状の含水ゲル(2)を、目開き850μmのステンレス製の金網上に広げ、180℃で30分間、熱風を通気させることで乾燥した。続いて、乾燥処理で得られた乾燥重合体(2)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社)を用いて粉砕した後、目開き710μmおよび45μmのJIS標準篩で分級することにより、粒径710〜45μmの不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(A2)を得た。吸水性樹脂粒子(A2)の遠心分離機保持容量(CRC)は48.3g/g、溶出可溶分量は24.6質量%であった。」

・「[0354] 〔実施例1〕
製造例1で得た、不定形粒子状の吸水性樹脂粒子(A1)(粒径:850〜150μm)100質量部に、エチレンカーボネート0.385質量部、プロピレングリコール0.644質量部、純水2.6質量部、および濃度10質量%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート溶液0.01質量部(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートとして0.001質量部)を混合してなる表面処理剤溶液を均一に混合した。その後、混合物を200℃に加熱されたパドルミキサー中で加熱処理した。混合物の平均滞留時間は約50分であった。加熱物を冷却して、目開き850μmと150μmのJIS標準篩で分級することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1)を得た。なお、850μm篩上にあった表面架橋後の吸水性樹脂粒子(粒径850μmを超える凝集粒子)は850μm篩を通過するまで解砕した。
[0355] 次いで、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1)100質量部に対し、純水1.0質量部およびジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.01質量部を混合してなる溶液を、均一に混合した。その後、無風条件下、60℃で45分間加熱処理した後、850μmを超える凝集粒子は目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、850μm通過物の粒子状吸水性樹脂組成物(1)を得た。」

・「[0356] 〔実施例2〕吸水性樹脂の変更
実施例1において、製造例2で得た不定形粒子状の吸水性樹脂粒子(A2)(粒径:710〜45μm)100質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、表面架橋された吸水性樹脂粒子(2)、および850μm通過物の粒子状吸水性樹脂組成物(2)を得た。」

・「[0381] 〔実施例28〕無機微粒子の添加
実施例2において、さらに、実施例2で得られた吸水性樹脂組成物(2)に、Aerosil(登録商標)200(日本アエロジル社製)を、0.30質量部添加することにより、850μm通過物の粒子状吸水性樹脂組成物(28)を得た。」

イ 甲1発明
甲1に記載された事項を、特に実施例28に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「容量2Lのポリプロピレン製容器に、アクリル酸441.0g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.768g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.024モル%)、1.0質量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)水溶液2.70g、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液181.69g、および脱イオン水(イオン交換水)366.44gを投入し混合させて、単量体水溶液(a2’)を作製し、次に、前記単量体水溶液(a2’)を攪拌しながら冷却し、液温が39.5℃となった時点で、40℃に調温した48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液189.76gを加え、混合することで単量体水溶液(a2)を作製し、このとき、該単量体水溶液(a2)の作製直後の温度は、2段目の中和熱によって79.8℃まで上昇し、次に、攪拌状態の前記単量体水溶液(a2)に4.5質量%の過硫酸ナトリウム水溶液17.68gを加えた後、直ちにステンレス製バット型容器(底面340mm×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)コーティング)に大気開放系で注ぎ、なお、2段目の中和開始から前記バット型容器に単量体水溶液(a2)を注ぎ込むまでの時間は、55秒間とし、前記バット型容器はホットプレート(NEO HOTPLATE HI−1000/株式会社井内盛栄堂社)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱し、前記単量体水溶液(a2)がバット型容器に注がれてから58秒経過後に、重合反応が開始し、前記重合反応は、生成する重合体が水蒸気を発生しながら四方八方に膨脹発泡して進行した後、バット型容器よりも若干大きなサイズまで収縮し、重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル(2)を取り出し、なお、これら一連の操作は、大気開放系で行い、前記重合反応で得られた含水ゲル(2)を、ミートチョッパー(HL−3225N、プレート孔径:10.0mm/レマコム株式会社)を用いてゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(2)とし、前記含水ゲル(2)の投入量は230g/minであり、前記含水ゲル(2)の投入と並行して、90℃に調温した脱イオン水を50g/minで添加しながらゲル粉砕を行い、前記操作で得られた粒子状の含水ゲル(2)を、目開き850μmのステンレス製の金網上に広げ、180℃で30分間、熱風を通気させることで乾燥し、続いて、乾燥処理で得られた乾燥重合体(2)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社)を用いて粉砕した後、目開き710μmおよび45μmのJIS標準篩で分級することにより、粒径710〜45μmの不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(A2)を得、得た不定形粒子状の吸水性樹脂粒子(A2)100質量部に、エチレンカーボネート0.385質量部、プロピレングリコール0.644質量部、純水2.6質量部、および濃度10質量%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート溶液0.01質量部(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートとして0.001質量部)を混合してなる表面処理剤溶液を均一に混合し、その後、混合物を200℃に加熱されたパドルミキサー中で加熱処理し、混合物の平均滞留時間は約50分であり、加熱物を冷却して、目開き850μmと150μmのJIS標準篩で分級することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子(2)を得、なお、850μm篩上にあった表面架橋後の吸水性樹脂粒子(粒径850μmを超える凝集粒子)は850μm篩を通過するまで解砕し、次いで、表面架橋された吸水性樹脂粒子(2)100質量部に対し、純水1.0質量部およびジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.01質量部を混合してなる溶液を、均一に混合し、その後、無風条件下、60℃で45分間加熱処理した後、850μmを超える凝集粒子は目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、850μm通過物の粒子状吸水性樹脂組成物(2)を得、得た吸水性樹脂組成物(2)に、Aerosil(登録商標)200(日本アエロジル社製)を、0.30質量部添加することにより、得た粒子状吸水性樹脂組成物(28)。」

(2)甲2に記載された事項及び甲2発明
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「吸収剤組成物および吸収体、並びに、吸収体を含む吸収物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0100】〔実施例1〕中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)39重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレート3.59gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。」

・「【0108】〔実施例3〕アクリル酸20重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのN,N’−メチレンビスアクリルアミド2.35gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、実施例1の反応器と同様の反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。
【0109】続いて、反応液を攪拌しながら、過硫酸アンモニウム1.5gおよびL−アスコルビン酸0.07gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、30℃〜80℃で重合を行い、重合を開始してから60分後に、中和剤である炭酸ナトリウム606.7gを加えて攪拌し、中和した。その後、反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出した。
【0110】得られた含水ゲル状重合体は、中和率が75モル%であり、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュの金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュの金網で分級することにより、平均粒子径が390μmで、しかも、粒子径が106μm未満の粒子の割合が4重量%の不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体を得た。
【0111】得られた吸水性樹脂前駆体100重量部に、第一表面架橋剤としてのプロピレングリコール〔SP値:δ=12.6(cal/cm3)1/2〕0.75重量部と、第二表面架橋剤としてのプロピレングリコールジグリシジルエーテル〔SP値:δ=10.1(cal/cm3)1/2〕0.05重量部と、水3重量部と、エチルアルコール0.75重量部とからなる表面架橋剤溶液を混合した。上記の混合物を195℃で40分間加熱処理することにより、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の平均粒子径は390μmであり、粒子径が106μm未満の粒子の割合は3重量%であった。
【0112】次に、上記の吸水性樹脂100gに、水不溶性無機粉体としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・レオロシールQS−20;徳山曹達株式会社(現・株式会社トクヤマ)製)0.3gを添加・混合することにより、本発明にかかる吸収剤組成物を得た。」

イ 甲2発明
甲2に記載された事項を、特に実施例3に関して整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「アクリル酸20重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのN,N’−メチレンビスアクリルアミド2.35gを溶解させて反応液とし、次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気し、次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を攪拌しながら、過硫酸アンモニウム1.5gおよびL−アスコルビン酸0.07gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始し、そして、30℃〜80℃で重合を行い、重合を開始してから60分後に、中和剤である炭酸ナトリウム606.7gを加えて攪拌し、中和し、その後、反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体は、中和率が75モル%であり、その径が約5mmに細分化されており、この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュの金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュの金網で分級することにより、平均粒子径が390μmで、しかも、粒子径が106μm未満の粒子の割合が4重量%の不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体を得、得られた吸水性樹脂前駆体100重量部に、第一表面架橋剤としてのプロピレングリコール〔SP値:δ=12.6(cal/cm3)1/2〕0.75重量部と、第二表面架橋剤としてのプロピレングリコールジグリシジルエーテル〔SP値:δ=10.1(cal/cm3)1/2 〕0.05重量部と、水3重量部と、エチルアルコール0.75重量部とからなる表面架橋剤溶液を混合し、上記の混合物を195℃で40分間加熱処理することにより、吸水性樹脂を得、次に、上記の吸水性樹脂100gに、水不溶性無機粉体としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・レオロシールQS−20;徳山曹達株式会社(現・株式会社トクヤマ)製)0.3gを添加・混合することにより、得た吸収剤組成物。」

(3)甲3に記載された事項及び甲3発明
ア 甲3に記載された事項
甲3には、「吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤、その製造方法及び吸水性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0148】
[アクリル酸の製造例1]
市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm含有)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)等の除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)を得た。」

・「【0151】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK−エステルF−50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。フラスコ中に、製造例1のアクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、製造例1のアクリル酸21.6g及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC−ダイセルEP−850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出した。次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得た。得られたポリマー粉体の含水率は、5.6%であった。
【0152】
上記ポリマー100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4−ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合した。上記の混合物を210℃で45分間加熱処理した。表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得た。得られた粒子状吸水剤(1)の無加圧下吸収倍率、1.9kPaでの加圧下吸収倍率、粒度分布、質量平均粒子径(D50)、対数標準偏差(σζ)及び粒子径150μm未満の質量百分率、水可溶分、耐尿性評価、吸収速度、吸湿ブロッキング率、揮発性有機溶媒、及び180℃での3時間加熱後の残存モノマーの含有量が表1及び表2に示される。」

・「【0155】
[実施例2]
実施例1で得られた粒子状吸水剤(1)100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、粒子状吸水剤(2)を得た。得られた粒子状吸水剤(2)を実施例1と同様に評価した結果が、表1及び表2に示される。」

イ 甲3発明
甲3に記載された事項を、特に実施例2に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。

「市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm含有)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)等の除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)を得、攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK−エステルF−50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出し、フラスコ中に、上記アクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、上記アクリル酸21.6g及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC−ダイセルEP−850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製し、このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出し、次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させ、その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了し、重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得、得られたポリマー粉体100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4−ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合し、上記の混合物を210℃で45分間加熱処理し、表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得、この粒子状吸水剤(1)100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、得た粒子状吸水剤(2)。」

(4)甲4に記載された事項及び甲4発明
ア 甲4に記載された事項
甲4には、「吸水剤およびその製法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0248】
(実施例15)
断熱材である発泡スチロールで覆われた内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.79g、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に調温したイオン交換水239.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%が得られた。さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.89gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。
【0249】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0250】
この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径325μm、対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは31.4g/g、ゲル層膨潤圧は40.1kdyne/cm2であった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0251】
得られた吸水性樹脂粒子100重量部にエチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール1重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(15)の諸物性を表12に示した。」

・「【0270】
(実施例20)
実施例15に記載の方法においてポリエチレングリコールジアクリレートを0.05モル%に変更した以外は同様の操作を行い、重量平均粒子径323μm、対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは43.5g/g、ゲル層膨潤圧は35.1kdyne/cm2であった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0271】
得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.5重量部、プロピレングリコール0.5重量部、純水4重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を200℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(20)の諸物性を表12に示した。」

・「【0282】
(実施例32)
実施例20で得られた吸水剤(20)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。」

イ 甲4発明
甲4に記載された事項を、特に実施例32に関して整理すると、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。

「断熱材である発泡スチロールで覆われた内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.70g(アクリル酸に対して0.05モル%)、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に調温したイオン交換水239.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合し、中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%)が得られ、さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.89gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注ぎ、単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始し、水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮し、この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出し、この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径323μm、対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の吸水性樹脂を得、得られた吸水性樹脂粒子100重量部に1,4−ブタンジオール0.5重量部、プロピレングリコール0.5重量部、純水4重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を200℃で35分間加熱処理し、さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得、この吸水性樹脂100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、得た吸水剤。」

(5)甲5に記載された事項及び甲5発明
ア 甲5に記載された事項
甲5には、「粒子状吸水剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「<ダメージ付与後の微粉増加量>
[0293] 吸水剤に下記のペイントシェーカーテストを行い、目開き150μmのJIS標準篩で分級し、テスト前後における150μm以下の粒子径を有する粒子の増加量を測定した。
[0294] [ペイントシェーカーテスト]
ペイントシェーカーテスト(PS−test)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で30分間、振盪するものであり、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている。」

・「[0328] [製造例1]
アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.94重量部、0.1重量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液16.4重量部、脱イオン水314.3重量部からなる単量体水溶液(1)を作製した。
[0329] 次に、38℃に調温した上記単量体水溶液(1)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(1)の液温は80℃まで上昇した。
[0330] 更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(1)を得た。得られた帯状の含水ゲル(1)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(1)を得た。含水ゲル(1)は、CRC33.5[g/g]、樹脂固形分49.5重量%であった。」

・「[0331] [製造例2]
アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製した。
[0332] 次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(2)の液温は81℃まで上昇した。
[0333] 更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を得た。得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得た。含水ゲル(2)は、CRC36.0[g/g]、樹脂固形分48.1重量%であった。」

・「[0351] [実施例1]
(ゲル粉砕)
上記製造例1で得られた含水ゲル(1)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕した。該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(1)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は26.9[J/g]、GGE(2)は13.6[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(1)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(1)の温度は85℃に上昇していた。
[0352] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(1)は、樹脂固形分49.1重量%、重量平均粒子径(D50)994μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)1.01であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(1)の物性を表2に示す。
[0353](乾燥)
次に、上記粒子状含水ゲル(1)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(1)を得る。熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]である。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター 6162で測定する。
[0354](粉砕・分級)
次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(1)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得る。吸水性樹脂粒子(1)は、重量平均粒子径(D50)348μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC42.1[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.5重量%である。
[0355](表面処理・添加剤添加)
次に、上記吸水性樹脂粒子(1)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、1,4−ブタンジオール0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(1)のCRCが35g/gとなるように加熱処理する。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合する。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加する。こうして、粒子状吸水剤(1)を得た。粒子状吸水剤(1)の諸物性を表3〜6に示す。なお、ペイントシェーカーテスト後の150μm通過粒子増加量は粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際(おむつなどの吸収体製造時のプロセスダメージを想定したもの)の150μm通過粒子の増加量を示す。」

・「[0356] [実施例2]
実施例1と以下に示す操作以外は同様の操作を行う。含水ゲル(1)のかわりに上記製造例2で得られた含水ゲル(2)を用いる。スクリュー押出機の先端部の多孔板の孔径を8mmに変更する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(2)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(2)の温度は84℃に上昇していた。
[0357] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(2)は、樹脂固形分47.5重量%、重量平均粒子径(D50)860μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.95であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(2)の物性を表2に示す。
[0358] 次いで、実施例1と同様の乾燥・粉砕・分級操作を行い、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得る。吸水性樹脂粒子(2)は、重量平均粒子径(D50)355μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC48.2[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.4重量%である。
[0359] 次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理する。その後、実施例1と同様の操作を行う。こうして、粒子状吸水剤(2)を得た。粒子状吸水剤(2)の諸物性を表3〜6に示す。」

イ 甲5発明
甲5に記載された事項を、特に実施例1及び2に関して整理すると、甲5には次の発明(以下、「甲5実施例1発明」のようにいう。)が記載されていると認める。

<甲5実施例1発明>
「アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.94重量部、0.1重量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液16.4重量部、脱イオン水314.3重量部からなる単量体水溶液(1)を作製し、次に、38℃に調温した上記単量体水溶液(1)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングし、更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給し、その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(1)を得、得られた帯状の含水ゲル(1)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(1)を得、上記含水ゲル(1)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕し該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用し、該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(1)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給し、この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であり、上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(1)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(2)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(1)を得、熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]であり、次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(1)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得、次に、上記吸水性樹脂粒子(1)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、1,4−ブタンジオール0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(1)のCRCが35g/gとなるように加熱処理し、その後冷却を行い、ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合し、60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加して得た粒子状吸水剤(1)。」

<甲5実施例2発明>
「アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製し、次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングし、更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給し、その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を、得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得、上記含水ゲル(2)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕し、該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径8mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用し、該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(2)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給し、この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であり、上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(2)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(2)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(2)を得、熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]であり、次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(2)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得、次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理し、その後冷却を行い、ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合し、60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加して得た粒子状吸水剤(2)。」

(6)甲6に記載された事項及び甲6発明
ア 甲6に記載された事項
甲6には、「吸水性シート、長尺状吸水性シートおよび吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「[0503] <ダメージ付与後の微粉増加量>
吸水剤に下記のペイントシェーカーテストを行い、目開き150μmのJIS標準篩で分級し、テスト前後における150μm以下の粒子径を有する粒子の増加量を測定した
[0504] [ペイントシェーカーテスト]
ペイントシェーカーテスト(PS−test)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で30分間、振盪するものであり、装置の詳細は特開平9−235378号公報に開示されている。」

・「[0563] [製造例b]
アクリル酸300質量部、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61質量部、1.0質量%のエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5質量部及び脱イオン水346.1質量部からなる単量体水溶液(b)を調製した。
[0564] 次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(b)を定量ポンプで連続供給した後、さらに48質量%の水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を連続的にラインミキシングした。なお、この時、中和熱によって単量体水溶液(b)の液温は81℃まで上昇した。
[0565] 次に、4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚さが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(b)を得た。得られた帯状の含水ゲル(b)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル(b)を得た。当該含水ゲル(b)は、CRCが36.0g/g、含水率が51.9質量%(樹脂固形分が48.1重量%)であった。」

・「[0575]・・・(略)・・・
[製造例1]
(ゲル粉砕)
上記製造例aで得られた短冊状の含水ゲル(a)を、スクリュー押出機に供給してゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(1)を得た。なお、スクリュー押出機には、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられ、スクリュー軸の外径は86mmであった。
[0576] 製造例1におけるゲル粉砕は、上記スクリュー押出機のスクリュー軸の回転数を130rpmとした状態で、上記短冊状の含水ゲル(a)と水蒸気とをそれぞれ別の供給口から同時に供給することで行われた。なお、該含水ゲル(a)の供給量は毎分4640g、水蒸気の供給量は毎分83gであった。
[0577] 製造例1でのゲル粉砕エネルギー(GGE)は26.9J/g、ゲル粉砕エネルギー粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は13.6J/gであった。また、ゲル粉砕前の含水ゲル(a)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル(1)の温度は85℃であった。
[0578] 上記ゲル粉砕後に得られた粒子状含水ゲル(1)は、含水率が50.9質量%、質量平均粒子径(D50)が994μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が1.01であった。表2にゲル粉砕条件及び粒子状含水ゲル(1)の物性を示した。
[0579] (乾燥)
次に、上記ゲル粉砕の終了後、1分間以内に上記粒子状含水ゲル(1)を通気ベルト式連続乾燥機の通気ベルト上に載置(この時点での粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、185℃の熱風を30分間通気させることで乾燥した。熱風の平均風速は、通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0m/sであった。該熱風の風速は、定温度熱式風速計(アネモマスター6162;日本カノマックス株式会社)を用いて測定した。
[0580] (粉砕・分級)
次いで、上記乾燥後に得られた乾燥重合体(1)全量を3段ロールミルに供給して粉砕した。その後、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩を用いて分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(1)を得た。該吸水性樹脂粉末(1)は、質量平均粒子径(D50)が348μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.32、CRCが42.1g/g、粒子径150μm未満の粒子の割合(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)が0.5質量%であった。
[0581] (表面架橋、添加剤添加)
次に、上記吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液(1)を添加して、均一になるまで混合した。その後、得られる吸水性樹脂粒子(1)のCRCが35g/gとなるように、190℃で30分間程度、加熱処理した。その後、60℃まで強制冷却した。
[0582] 次に、上記操作で得られた吸水性樹脂粒子(1)について、上述したペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した。その後、吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム0.01質量部及び脱イオン水1質量部からなるキレート剤水溶液(1)1.01質量部を添加して、均一になるまで混合した。その後、60℃で1時間乾燥し、得られた結果物を目開き710μmのJIS標準篩に通過させた。その後、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4質量部を添加して、均一になるまで混合した。
[0583] 以上の操作によって、粒子状吸水剤(1)を得た。表3〜5に粒子状吸水剤(1)の物性を示した。
[0584] なお、ペイントシェーカーテスト(PS)後の150μm通過粒子増加量は、粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際の、150μm通過粒子の増加量を示す。このペイントシェーカーテストにより粒子状吸水剤に与えられるダメージは、紙オムツ等の吸収体製造時のプロセスダメージを想定したものである。
[0585] [製造例2]
上記製造例bで得られた短冊状の含水ゲル(b)について、下記の条件変更以外は製造例1と同様のゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(2)を得た。
[0586] 製造例2において、スクリュー押出機の多孔板の孔径を9.5mmから8mmに変更した。該変更によって、多孔板の開孔率は25.6%となった。なお、製造例2でのゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9J/g、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は17.5J/gであった。また、ゲル粉砕前の含水ゲル(b)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル(2)の温度は84℃であった。
[0587] 上記ゲル粉砕後に得られた粒子状含水ゲル(2)は、含水率が52.5質量%、質量平均粒子径(D50)が860μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.95であった。表2にゲル粉砕条件及び粒子状含水ゲル(2)の物性を示した。
[0588] 次いで、製造例1と同様の乾燥、粉砕、分級を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(2)を得た。該吸水性樹脂粉末(2)は、質量平均粒子径(D50)が355μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.32、CRCが48.2g/g、粒子径150μm未満の粒子の割合(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)が0.4質量%であった。
[0589] 次に、上記吸水性樹脂粉末(2)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液(2)を添加して、均一になるまで混合した。その後、得られる吸水性樹脂粒子(2)のCRCが38g/gとなるように、190℃で30分間程度、加熱処理した。その後、60℃まで強制冷却した。
[0590] その後、製造例1と同様の操作を行うことによって、粒子状吸水剤(2)を得た。表3〜5に粒子状吸水剤(2)の物性を示した。」

イ 甲6発明
甲6に記載された事項を、特に製造例2に関して整理すると、甲6には次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認める。

「アクリル酸300質量部、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61質量部、1.0質量%のエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5質量部及び脱イオン水346.1質量部からなる単量体水溶液(b)を調製し、次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(b)を定量ポンプで連続供給した後、さらに48質量%の水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を連続的にラインミキシングし、次に、4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚さが10mmとなるように連続的に供給し、その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(b)を得、得られた帯状の含水ゲル(b)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル(b)を得、スクリュー押出機に供給してゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(2)を得、なお、スクリュー押出機には、先端部に直径100mm、孔径8mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられ、スクリュー軸の外径は86mmであり、次に、上記ゲル粉砕の終了後、1分間以内に上記粒子状含水ゲル(2)を通気ベルト式連続乾燥機の通気ベルト上に載置し、185℃の熱風を30分間通気させることで乾燥し、熱風の平均風速は、通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0m/sであり、次いで、上記乾燥後に得られた乾燥重合体(2)全量を3段ロールミルに供給して粉砕し、その後、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩を用いて分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(2)を得、次に、上記吸水性樹脂粉末(2)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液(1)を添加して、均一になるまで混合し、その後、得られる吸水性樹脂粒子(2)のCRCが35g/gとなるように、190℃で30分間程度、加熱処理し、その後、60℃まで強制冷却し、次に、上記操作で得られた吸水性樹脂粒子(2)について、ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与し、その後、吸水性樹脂粉末(2)100質量部に対して、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム0.01質量部及び脱イオン水1質量部からなるキレート剤水溶液(1)1.01質量部を添加して、均一になるまで混合し、その後、60℃で1時間乾燥し、得られた結果物を目開き710μmのJIS標準篩に通過させ、その後、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4質量部を添加して、均一になるまで混合して、得た粒子状吸水剤(2)。」

(7)甲8に記載された事項及び甲8発明
ア 甲8に記載された事項
甲8には、「吸水性樹脂組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「[0072]実施例1
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン340gをとり、界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.8gを添加し、60℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却した。
[0073] 別途、500mLの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、イオン交換水6.8gを加え、更に30質量%の水酸化ナトリウム水溶液102.0gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、室温にて撹拌して完全に溶解させた。さらに、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.11g、エチレングリコールジグリシジルエーテル20.2mgをイオン交換水36.9gに溶解し加えて、第1段目の単量体水溶液を調製した。
[0074] 撹拌機の回転数を450rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行うことにより、第1段目の重合後スラリーを得た。
[0075] また、別途、別の500mLの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8gをとり、外部より冷却しつつ、イオン交換水9.7gを加え、更に30質量%の水酸化ナトリウム水溶液143.0gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、溶解させた。さらに、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.15g、エチレングリコールジグリシジルエーテル11.6mgをイオン交換水6.45gに溶解して加え、第2段目の単量体水溶液を調製した。
[0076] 前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、22℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持したのち、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行うことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
[0077] 次いで、125℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンとを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、分留管に溜まった水の抜き出し量が計245gになった時点で後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液4.42gを添加し、内温80℃で2時間保持し反応させた。その後、更に加熱してn−ヘプタンと水とを留去させて乾燥させたものを、850μmの篩を通過させ、球状の1次粒子が凝集した粒子の形態を有する吸水性樹脂220gを得た。この吸水性樹脂100gを分取し、親水性シリカ(エボニックデグサジャパン社:カープレックス#80)を1.00g(吸水性樹脂に対して1.0質量%)添加し、卓上クロスロータリー混合機で30分混合して、実施例1の吸水性樹脂組成物とした。得られた吸水性樹脂組成物の中位粒子径は460μmであった。各性能の測定結果を表1に示す。
[0078]実施例2
実施例1において、疎水性物質の無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、ハイワックス1105A)3.4gをn−ヘプタン30.6gに事前に熱溶解し保温した溶液を、2時間の後架橋反応後に系内に加え、10分間81℃で攪拌混合した後、更に加熱してn−ヘプタンと水とを留去させて乾燥させたものを、850μmの篩を通過させ、球状の1次粒子が凝集した粒子の形態を有する吸水性樹脂224gを得た。この吸水性樹脂100gを分取し、親水性シリカ(エボニックデグサジャパン社:カープレックス#80)を0.60g(吸水性樹脂に対して0.6質量%)添加し、卓上クロスロータリー混合機で30分混合して、実施例2の吸水性樹脂組成物とした。得られた吸水性樹脂組成物の中位粒子径は450μmであった。各性能の測定結果を表1に示す。
[0079]実施例3
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン340gをとり、界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.8gと疎水性物質の無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、ハイワックス1105A)0.8gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却した。
[0080] 別途、500mLの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、イオン交換水6.8gを加え、更に30質量%の水酸化ナトリウム水溶液102.0gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、室温にて撹拌して完全に溶解させた。さらに、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.11g、エチレングリコールジグリシジルエーテル20.2mgをイオン交換水36.9gに溶解し加えて、第1段目の単量体水溶液を調製した。
[0081] 撹拌機の回転数を450rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行うことにより、第1段目の重合後スラリーを得た。
[0082] また、別途、別の500mLの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8gをとり、外部より冷却しつつ、イオン交換水9.7gを加え、更に30質量%の水酸化ナトリウム水溶液143.0gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、溶解させた。さらに、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.15g、エチレングリコールジグリシジルエーテル11.6mgをイオン交換水6.45gに溶解して加え、第2段目の単量体水溶液を調製した。
[0083] 前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、23℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持したのち、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行うことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
[0084] 次いで、125℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンとを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、分留管に溜まった水の抜き出し量が計245gになった時点で後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液4.42gを添加し、内温80℃で2時間保持し反応させた。その後、更に加熱してn−ヘプタンと水とを留去させて乾燥させたものを、850μmの篩を通過させ、球状の1次粒子が凝集した粒子の形態を有する吸水性樹脂231gを得た。この吸水性樹脂100gを分取し、親水性シリカ(エボニックデグサジャパン社:カープレックス#80)を0.4g(吸水性樹脂に対して0.4質量%)添加し、卓上クロスロータリー混合機で30分混合して、実施例3の吸水性樹脂組成物とした。得られた吸水性樹脂組成物の中位粒子径は390μmであった。各性能の測定結果を表1に示す。」

・「[0099][表1]



イ 甲8発明
甲8に記載された事項を、特に実施例1ないし3に関して整理すると、甲8には次の発明(以下、「甲8実施例1発明」のようにいう。)が記載されていると認める。

<甲8実施例1発明>
「実施例1の吸水性樹脂組成物。」(当審注:実施例1の詳細については上記ア参照。)

<甲8実施例2発明>
「実施例2の吸水性樹脂組成物。」(当審注:実施例2の詳細については上記ア参照。)

<甲8実施例3発明>
「実施例3の吸水性樹脂組成物。」(当審注:実施例3の詳細については上記ア参照。)

(8)甲21に記載された事項及び甲21発明
ア 甲21に記載された事項
甲21には、「吸水性樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を示す。
<製造例1>
アクリル酸ナトリウム88部(0.94モル部)、アクリル酸22.85部(0.3174モル部)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.3部(0.002モル部)、脱イオン水293部及びジクロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ルテニウム0.001部を攪拌・混合しながら、温度を1〜2℃に保ち、この混合液中に窒素を流入して、混合液中の溶存酸素濃量を0.5ppm以下とした。
【0041】
引き続き、この混合液に、1%過酸化水素水溶液0.3部、0.2%アスコルビン酸水溶液0.8部及び2%の2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液0.8部を添加・混合して重合を開始させ、反応液が80℃に達した後、重合温度80±2℃で約5時間重合することにより、含水ゲルを得た。この含水ゲル400部をミンチ機(目皿穴径:6mm、飯塚工業社製 12VR−400K)にて25℃で5分間細断した後、通気型バンド乾燥機(135℃、2.0m/秒;井上金属工業(株)製)で乾燥し、乾燥重合体を得た。
【0042】
この乾燥重合体をジューサーミキサー(National MX−X53、松下電器(株)製)で粉砕し、目開き150及び710μmのふるいを用いて150〜710μmの粒子径範囲に調整した後、この100部を高速攪拌(細川ミクロン製 高速攪拌タービュライザーミキサー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの1%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=60/40)の5.5部{エチレングリコールジグリシジルエーテル0.055部(0.00032モル部)}をスプレー噴霧しながら添加・混合し、140℃で30分間静置し加熱架橋(表面架橋)することにより架橋重合体粒子(A1)を得た。
【0043】
<製造例2>
アクリル酸81.8部(1.14モル部)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.3部(0.002モル部)及び脱イオン水241部を攪拌・混合しながら、温度を1〜2℃に保ち、この混合液中に窒素を流入して、混合液中の溶存酸素量を0.02ppm以下とした。
【0044】
引き続き、この混合液に、1%過酸化水素水溶液1部、0.2%アスコルビン酸水溶液1.2部及び2%の2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液2.8部を添加・混合して重合を開始させ、反応温度が70℃に達した後、重合温度75±5℃で約8時間重合することにより含水ゲルを得た。この含水ゲルをインターナルミキサーで3〜7mmの大きさに細断して細断ゲルを得た後、この細断ゲル325部に48重量%の水酸化ナトリウム水溶液67.5部を添加してカルボキシル基の72当量%を中和して、中和細断ゲルを得た。なお、JIS K0113−1997に準拠(0.1規定水酸化カリウム水溶液を滴定液として使用、電位差滴定法、変曲点法)して測定した酸価から算出した中和細断ゲルの中和度は70.1当量%であった。
【0045】
次いで、縦20cm×横20cm×高さ10cmで、天板を有さず、底板に目開き4mmの金網を装着したステンレス製のトレイに、この中和細断ゲルを約5cmの厚さに積層し、150℃、風速2.0m/sの条件で、通気型バンド乾燥機(井上金属製)で乾燥して、乾燥重合体を得た。
得られた乾燥重合体を製造例1と同様に粉砕及び表面架橋して、架橋重合体粒子(A2)を得た。
【0046】
<製造例3>
シクロヘキサン121.2部、ソルビタンモノステアレート0.9部を均一混合した後、この混合液中に窒素を流入し、混合液中の溶存酸素量を0.02ppm以下とし、反応溶媒を得た。
【0047】
別に、アクリル酸45部(0.63モル部)と脱イオン水6.4部との混合液中に、氷冷下、水酸化ナトリウムの25%水溶液70部を加えてカルボキシル基の70当量%を中和した。さらに、この中和混合物に、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.033部(0.00021モル部)、次亜リン酸ナトリウム0.0546部及び2,2‘−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド0.0313部を加えて均一混合し、モノマー溶液を得た。
【0048】
このモノマー溶液を、先の反応溶媒へ添加し、攪拌して分散させると共に、窒素を流入しながら油浴にて60℃に上昇させた。引き続き、この分散液体の温度を60℃に保ち、攪拌しながら2時間重合させた。2時間後の内容物は水で膨潤した含水ゲルがシクロヘキサン中に分散してスラリー状となっていた。次いで、油浴の温度を上げ、シクロヘキサンと水との共沸により、膨潤した含水ゲルの水分が20重量%になるまで脱水を行った。脱水後、攪拌を停止し、沈降する含水ゲルをデカンテーションによりシクロヘキサン相から分離した。この含水ゲルを80〜90℃、13.3kPaで減圧乾燥し、乾燥重合体を得た。
得られた乾燥重合体を製造例1と同様に表面架橋して、架橋重合体粒子(A3)を得た。
【0049】
<実施例1>
架橋重合体粒子(A1)100部と水不溶性無機微粒子(B1){株式会社ノザワ製針状非晶質シリカ、SP−01、流動性62秒/10g}2.5部とを、コニカルブレンダー(ホソカワミクロン(株)製)で均一混合して、本発明の吸水性樹脂粒子(1)を得た。
【0050】
<実施例2>
水不溶性無機微粒子(B1)を「2.5部」から「2部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(2)を得た。
【0051】
<実施例3>
水不溶性無機微粒子(B1)を「2.5部」から「1部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(3)を得た。
【0052】
<実施例4>
水不溶性無機微粒子(B1)を「2.5部」から「0.1部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(4)を得た。
【0053】
<実施例5>
水不溶性無機微粒子(B1)を「2.5部」から「0.05部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(5)を得た。
【0054】
<実施例6>
水不溶性無機微粒子(B1)を「2.5部」から「0.01部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(6)を得た。
【0055】
<実施例7>
「架橋重合体粒子(A1)」を「架橋重合体粒子(A2)」に変更したこと、及び水不溶性無機微粒子(B1)を「2.5部」から「1部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(7)を得た。
【0056】
<実施例8>
「架橋重合体粒子(A1)」を「架橋重合体粒子(A3)」に変更したこと、及び水不溶性無機微粒子(B1)を「2.5部」から「1部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(8)を得た。
【0057】
<実施例9>
「水不溶性無機微粒子(B1)2.5部」を「水不溶性無機微粒子(B2){日本アエロジル株式会社製酸化アルミニウム、アルミニウムオキサイドC、流動性20秒/10g}1部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(9)を得た。
【0058】
<実施例10>
「水不溶性無機微粒子(B1)2.5部」を「水不溶性無機微粒子(B3){電気化学工業株式会社製シリカ、デンカ溶融シリカF−300、流動性135秒/10g}1部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(10)を得た。
【0059】
<実施例11>
「水不溶性無機微粒子(B1)2.5部」を「水不溶性無機微粒子(B4){日本アエロジル株式会社製シリカ、アエロジルOX50T、流動性55秒/g}1部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(11)を得た。」

イ 甲21発明
甲21に記載された事項を、特に実施例1ないし11に関して整理すると、甲21には次の発明(以下、順に「甲21実施例1発明」にようにという。)が記載されていると認める。

<甲21実施例1発明>
「吸水性樹脂粒子(1)。」(当審注:「吸水性樹脂粒子(1)」の詳細については上記ア参照。)

<甲21実施例2発明>
「吸水性樹脂粒子(2)。」(当審注:「吸水性樹脂粒子(2)」の詳細については上記ア参照。)

<甲21実施例3発明>
「吸水性樹脂粒子(3)。」(当審注:「吸水性樹脂粒子(3)」の詳細については上記ア参照。)

<甲21実施例4発明>
「吸水性樹脂粒子(4)。」(当審注:「吸水性樹脂粒子(4)」の詳細については上記ア参照。)

<甲21実施例5発明>
「吸水性樹脂粒子(5)。」(当審注:「吸水性樹脂粒子(5)」の詳細については上記ア参照。)

<甲21実施例6発明>
「吸水性樹脂粒子(6)。」(当審注:「吸水性樹脂粒子(6)」の詳細については上記ア参照。)

<甲21実施例7発明>
「吸水性樹脂粒子(7)。」(当審注:「吸水性樹脂粒子(7)」の詳細については上記ア参照。)

<甲21実施例8発明>
「吸水性樹脂粒子(8)。」(当審注:「吸水性樹脂粒子(8)」の詳細については上記ア参照。)

<甲21実施例9発明>
「吸水性樹脂粒子(9)。」(当審注:「吸水性樹脂粒子(9)」の詳細については上記ア参照。)

<甲21実施例10発明>
「吸水性樹脂粒子(10)。」(当審注:「吸水性樹脂粒子(10)」の詳細については上記ア参照。)

<甲21実施例11発明>
「吸水性樹脂粒子(11)。」(当審注:「吸水性樹脂粒子(11)」の詳細については上記ア参照。)

(9)参1に記載された事項
参1には、「吸収性樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特記しない限り、部は重量部を示す。
<製造例1>
アクリル酸ナトリウム88部、アクリル酸22.85部、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.3部及び脱イオン水293、ジクロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ルテニウム0.001部を攪拌・混合しながら、温度を1〜2℃に保ち、この混合液中に窒素を流入して、混合液中の溶存酸素濃量を0.5ppm以下とした。
引き続き、この混合液に、1重量%過酸化水素水溶液0.3部、0.2重量%アスコルビン酸水溶液0.8部及び2重量%の2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液0.8部を添加・混合して重合を開始させ、反応液が80℃に達した後、重合温度80±2℃で約5時間重合することにより、含水樹脂(ゲル)を得た。
この含水樹脂(ゲル)400部をミンチ機(目皿穴径:6mm、飯塚工業社製12VR−400K)にて25℃で5分間細断した後、通気型バンド乾燥機(135℃、2.0m/秒;井上金属工業(株)製)で乾燥し、乾燥重合体を得た。
この乾燥重合体をジューサーミキサー(National MX−X53、松下電器(株)製)で粉砕し、目開き150及び710μmのふるいを用いて150〜710μmの粒子径範囲に調整した後、この100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザーミキサー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの1重量%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=60/40)の1部をスプレー噴霧しながら添加・混合し、140℃で30分間静置し加熱架橋(表面架橋)することにより架橋重合体粒子(A1){重量平均粒子径400μm}を得た。
【0030】
<製造例2>
アクリル酸81.8部、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.3部及び脱イオン水241部を攪拌・混合しながら、温度を1〜2℃に保ち、この混合液中に窒素を流入して、混合液中の溶存酸素量を0.02ppm以下とした。
引き続き、この混合液に、1重量%過酸化水素水溶液1部、0.2重量%アスコルビン酸水溶液1.2部及び2重量%の2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液2.8部を添加・混合して重合を開始させ、反応温度が70℃に達した後、重合温度75±5℃で約8時間重合することにより含水樹脂(ゲル)を得た。
この含水樹脂(ゲル)をインターナルミキサーで3〜7mmの大きさに細断して細断ゲルを得た後、この細断ゲル325部に48重量%の水酸化ナトリウム水溶液67.5部を添加してカルボキシル基の72当量%を中和して、中和細断ゲルを得た。なお、JIS K0113−1997に準拠(0.1規定水酸化カリウム水溶液を滴定液として使用、電位差滴定法、変曲点法)して測定した酸価から算出した中和細断ゲルの中和度は70.1当量%であった。
次いで、縦20cm×横20cm×高さ10cmで、天板を有さず、底板に目開き4mmの金網を装着したステンレス製のトレイに、この中和細断ゲルを約5cmの厚さに積層し、150℃、風速2.0m/sの条件で、通気型バンド乾燥機(井上金属製)で乾燥して、乾燥重合体を得た。
得られた乾燥重合体を製造例1と同様の方法(粉砕、表面架橋)により架橋重合体粒子(A2){重量平均粒子径350μm}を得た。
【0031】
<製造例3>
シクロヘキサン121.2部、ソルビタンモノステアレート0.9部を均一混合した後、この混合液中に窒素を流入し、混合液中の溶存酸素量を0.02ppm以下とし、反応溶媒を得た。
別に、アクリル酸45部と水6.4部との混合液中に、氷冷下、水酸化ナトリウムの25重量%水溶液70部を加えてカルボキシル基の70当量%を中和した。さらに、この中和混合物に、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.033部、次亜リン酸ナトリウム0.0546部、及び2,2‘−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド0.0313部を加えて均一混合し、モノマー溶液を得た。
このモノマー溶液を、先の反応溶媒へ添加し、攪拌して分散させると共に、窒素を流入しながら油浴にて60℃に上昇させた。
引き続き、この分散液体の温度を60℃に保ち、攪拌しながら2時間重合させた。2時間後の内容物は水で膨潤した架橋重合体がシクロヘキサン中に分散してスラリー状となっていた。次いで、油浴の温度を上げ、シクロヘキサンと水との共沸により、膨潤した含水ゲル状重合体の水分が20重量%になるまで脱水を行った。脱水後、攪拌を停止し、沈降する含水ゲル状重合体をデカンテーションによりシクロヘキサン相から分離した。この含水ゲル状重合体を80〜90℃、13.3kPaで減圧乾燥し、乾燥重合体を得た。
得られた乾燥重合体を製造例1と同様の方法(表面架橋)により架橋重合体粒子(A3){重量平均粒子経300μm}を得た。
【0032】
<実施例1>
架橋重合体粒子(A1)100部と水不溶性無機微粒子(B1)(株式会社ノザワ製針状非晶質シリカSP−01、流動性62秒/10g)2.5部とをコニカルブレンダー(ホソカワミクロン(株)製)で均一混合して、本発明の吸水性樹脂粒子(1)を得た。
・・・(略)・・・
【0038】
<実施例7>
架橋重合体粒子(A1)を(A2)に変更したこと、及び水不溶性無機微粒子(B1)2.5部を1部に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(7)を得た。
【0039】
<実施例8>
架橋重合体粒子(A1)を(A3)に変更したこと、及び水不溶性無機微粒子(B1)2.5部を1部に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(8)を得た。
【0040】
<実施例9>
水不溶性無機微粒子(B1)2.5部をアルミニウムオキサイドC(日本アエロジル株式会社製 流動性20秒/g)1部に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(9)を得た。
【0041】
<実施例10>
水不溶性無機微粒子(B1)2.5部をデンカ溶融シリカF−300(電気化学工業株式会社製 流動性135秒/g)1部に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(10)を得た。
【0042】
<実施例11>
水不溶性無機微粒子(B1)2.5部をアエロジルOX50T(日本アエロジル株式会社製 流動性55秒/g)1部に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(11)を得た。
【0043】
<実施例12>
水不溶性無機微粒子(B1)2.5部をサイロイドED50(グレースジャパン株式会社製 流動性180秒/g)1部に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(12)を得た。
・・・(略)・・・
【0050】
<保水量>
目開き63μmのナイロン網(JIS Z8801−1:2000)で作成したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料1.00gを入れ、生理食塩水(食塩濃度0.9重量%)1,000cc中に無撹拌下、1時間浸漬した後、15分間吊るして水切りする。その後、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の生理食塩水を取り除き、ティーバックを含めた重量(h1)を測定し次式から保水量を求める。なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃である。
【0051】

保水量(g/g)=(h1)−(h2)

(h2)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバックの重量である。
【0052】
【表2】



2 取消理由1(甲1ないし6、8及び21のいずれかを主引用文献とする新規性進歩性)について
(1)甲1を主引用文献とする新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり、
以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、
生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」(審決注:「以下のi)及びii)」は、「i)25℃において、吸水性樹脂粒子からなる層の表面上に、25質量%食塩水の直径3.0±0.1mmに相当する球状液滴を滴下して、当該吸水性樹脂粒子と前記液滴とを接触させる。
ii)前記液滴が前記表面に接触してから、30秒後の時点の前記液滴の接触角を測定する。」である。以下、この摘記は省略する。)と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、相違点1について検討する。
甲16(甲1の実施例28の実験成績証明書)によると、甲1発明における「無加圧DWの30秒値」、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」及び「生理食塩水の保水量」は、それぞれ、「7.0mL/g」、「30度」及び「40.3g/g」であり、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上」及び「生理食塩水の保水量が41〜60g/g」であるという条件を満たしていない。
したがって、甲1発明は、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点1は実質的な相違点である。
また、甲1には「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」に関する記載はなく、他の証拠(実験成績証明書を除く。以下同様。)にも甲1発明において「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲1発明において、「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」に着目し、それぞれ「9.0mL/g以上」及び「41〜60g/g」として、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」(本件特許の明細書の【0008】参照。)という甲1発明及び他の証拠に記載された事項からに記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、令和3年11月18日に提出された意見書において、「訂正発明1において、「生理食塩水の保水量」を41g/g以上に規定することに臨界的意義はない。同様に、訂正発明1において、「無加圧DWの30秒値」を「9.0mL/g以上」に規定することに臨界的意義はない。
よって、当業者であれば、本件特許に記載の発明の課題を解決することを目的として、甲1発明〜甲4発明において、「生理食塩水の保水量」を、訂正発明1において何ら臨界的意義がない41〜60g/gの範囲内とし、さらに、「無加圧DWの30秒値」を、訂正発明1において何ら臨界的意義がない「9.0mL/g以上」することは、容易に想到できる。」(上記意見書第12ページ第3ないし12行)旨主張する。
そこで、検討するに、仮に、本件特許発明1において、「生理食塩水の保水量」を「41g/g以上」に規定すること及び「無加圧DWの30秒値」を「9.0mL/g以上」に規定することに何ら臨界的意義がないとしても、上記のとおり、甲1に「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」に関する記載がなく、他の証拠にも甲1発明において「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」を調整する動機付けとなる記載がない以上、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明1は甲1発明であるとはいえないし、甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)甲2を主引用文献とする新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり、
以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、
生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、相違点2について検討する。
甲17(甲2の実施例3の実験成績証明書)によると、甲2発明における「無加圧DWの30秒値」、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」及び「生理食塩水の保水量」は、それぞれ、「6.9mL/g」、「32度」及び「39.4g/g」であり、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上」及び「生理食塩水の保水量が41〜60g/g」であるという条件を満たしていない。
したがって、甲2発明は、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点2は実質的な相違点である。
また、甲2には「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」に関する記載はなく、他の証拠にも甲2発明において「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲2発明において、「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」に着目し、それぞれ「9.0mL/g以上」及び「41〜60g/g」として、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲2発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人の令和3年11月18日に提出された意見書における甲2発明に関する主張については、上記(2)ア(イ)と同様であり、採用できない。

(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明1は甲2発明であるとはいえないし、甲2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)甲3を主引用文献とする新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり、
以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、
生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、相違点3について検討する。
甲18(甲3の実施例2の実験成績証明書)によると、甲3発明における「無加圧DWの30秒値」、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」及び「生理食塩水の保水量」は、それぞれ、「3.8mL/g」、「61度」及び「38g/g」であり、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上」及び「生理食塩水の保水量が41〜60g/g」であるという条件を満たしていない。
したがって、甲3発明は、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点3は実質的な相違点である。
また、甲3には「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」に関する記載はなく、他の証拠にも甲3発明において「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲3発明において、「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」に着目し、それぞれ「9.0mL/g以上」及び「41〜60g/g」として、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲3発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人の令和3年11月18日に提出された意見書における甲3発明に関する主張については、上記(2)ア(イ)と同様であり、採用できない。

(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえないし、甲3発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)甲4を主引用文献とする新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲4発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点4>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり、
以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、
生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、相違点4について検討する。
甲19(甲4の実施例32の実験成績証明書)によると、甲4発明における「無加圧DWの30秒値」、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」及び「生理食塩水の保水量」は、それぞれ、「7.1mL/g」、「32度」及び「38.6g/g」であり、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上」及び「生理食塩水の保水量が41〜60g/g」であるという条件を満たしていない。
したがって、甲4発明は、相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点4は実質的な相違点である。
また、甲4には「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」に関する記載はなく、他の証拠にも甲4発明において「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲4発明において、「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」に着目し、それぞれ「9.0mL/g以上」及び「41〜60g/g」として、相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲4発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人の令和3年11月18日に提出された意見書における甲4発明に関する主張については、上記(2)ア(イ)と同様であり、採用できない。

(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明1は甲4発明であるとはいえないし、甲4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)甲5を主引用文献とする新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)甲5実施例1発明との対比・判断
a 対比
本件特許発明1と甲5実施例1発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点5−1>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり、
以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、
生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」と特定されているのに対し、甲5実施例1発明においては、そのようには特定されていない点。

b 判断
そこで、相違点5−1について検討する。
甲20(甲5の実施例1及び2の実験成績証明書)によると、甲5実施例1発明における「無加圧DWの30秒値」、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」及び「生理食塩水の保水量」は、それぞれ、「9.6mL/g」、「33度」及び「37.5g/g」であり、「生理食塩水の保水量が41〜60g/g」であるという条件を満たしていない。
したがって、甲5実施例1発明は、相違点5−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点5−1は実質的な相違点である。
また、甲5には「生理食塩水の保水量」に関する記載はなく、他の証拠にも甲5実施例1発明において「生理食塩水の保水量」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲5実施例1発明において、「生理食塩水の保水量」に着目し、これを「41〜60g/g」として、相違点5−1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲5実施例1発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、令和3年11月18日に提出された意見書において、「訂正発明1において、「生理食塩水の保水量」を41g/g以上に規定することに臨界的意義はない。よって、当業者であれば、本件特許に記載の発明の課題を解決することを目的として、甲5実施例1発明において、吸収体表面の液走り以外の理由に起因する液体漏れに対応するために、「生理食塩水の保水量」を、訂正発明1において何ら臨界的意義がない41〜60g/gの範囲内とすることは、容易に想到できる。」(上記意見書第7ページ第24行ないし第8ページ第5行)旨主張する。
そこで、検討するに、仮に、本件特許発明1において、「生理食塩水の保水量」を41g/g以上に規定することに何ら臨界的意義がないとしても、上記のとおり、甲5に「生理食塩水の保水量」に関する記載がなく、他の証拠にも甲5実施例1発明において「生理食塩水の保水量」を調整する動機付けとなる記載がない以上、甲5実施例1発明において、相違点5−1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

c まとめ
したがって、本件特許発明1は甲5実施例1発明であるとはいえないし、甲5実施例1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)甲5実施例2発明との対比・判断
a 対比
本件特許発明1と甲5実施例2発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点5−2>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり、
以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、
生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」と特定されているのに対し、甲5実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。

b 判断
そこで、相違点5−2について検討する。
甲20によると、甲5実施例2発明における「無加圧DWの30秒値」、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」及び「生理食塩水の保水量」は、それぞれ、「7.4mL/g」、「33度」及び「42.5g/g」であり、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上」であるという条件を満たしていない。
したがって、甲5実施例2発明は、相違点5−2に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点5−2は実質的な相違点である。
また、甲5には「無加圧DWの30秒値」に関する記載はなく、他の証拠にも甲5実施例2発明において「無加圧DWの30秒値」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲5実施例2発明において、「無加圧DWの30秒値」に着目し、これを「9.0mL/g以上」として、相違点5−2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲5実施例2発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、令和3年11月18日に提出された意見書において、「訂正発明1において、「無加圧DWの30秒値」を「9.0mL/g以上」に規定することに臨界的意義はない。よって、当業者であれば、本件特許に記載の発明の課題を解決することを目的として、甲5実施例2発明において、液走りに起因する液体漏れを抑制するために、「無加圧DWの30秒値」を、訂正発明1において何ら臨界的意義がない「9.0mL/g以上」の範囲内とすることは、容易に想到できると考えられる。」(上記意見書第9ページ第5ないし11行)旨主張する。
そこで、検討するに、仮に、本件特許発明1において、「無加圧DWの30秒値」を「9.0mL/g以上」に規定することに何ら臨界的意義がないとしても、上記のとおり、甲5に「無加圧DWの30秒値」に関する記載がなく、他の証拠にも甲5実施例2発明において「無加圧DWの30秒値」を調整する動機付けとなる記載がない以上、甲5実施例2発明において、相違点5−2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

c まとめ
したがって、本件特許発明1は甲5実施例2発明であるとはいえないし、甲5実施例2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲5実施例1発明又は甲5実施例2発明であるとはいえないし、甲5実施例1発明又は甲5実施例2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(6)甲6を主引用文献とする新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲6発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点6>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり、
以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、
生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」と特定されているのに対し、甲6発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、相違点6について検討する。
甲6の製造例2は甲5の実施例2と同じなので、甲20(甲5の実施例1及び2の実験成績証明書)によると、甲6発明における「無加圧DWの30秒値」、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」及び「生理食塩水の保水量」は、それぞれ、「7.4mL/g」、「33度」及び「42.5g/g」であり、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上」であるという条件を満たしていない。
したがって、甲6発明は、相違点6に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点6は実質的な相違点である。
また、甲6には「無加圧DWの30秒値」に関する記載はなく、他の証拠にも甲6発明において「無加圧DWの30秒値」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲6発明において、「無加圧DWの30秒値」に着目し、これを「9.0mL/g以上」として、相違点6に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲6発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明1は甲6発明であるとはいえないし、甲6発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲6発明であるとはいえないし、甲6発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(7)甲8を主引用文献とする新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)甲8実施例1発明との対比・判断
a 対比
本件特許発明1と甲8実施例1発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点8>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり、
以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、
生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」と特定されているのに対し、甲8実施例1発明においては、そのようには特定されていない点。

b 判断
そこで、相違点8について検討する。
特許権者が令和3年10月8日に提出した意見書に添付された乙第1号証(以下、「乙1」という。)によると、甲8実施例1発明の「無加圧DWの30秒値」は「8.4mL/g」であり、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上」であるという条件を満たしていない。
したがって、甲8実施例1発明は、相違点8に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点8は実質的な相違点である。
また、甲8には「無加圧DWの30秒値」に関する記載はなく、他の証拠にも甲8実施例1発明において「無加圧DWの30秒値」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲8実施例1発明において、「無加圧DWの30秒値」に着目し、これを「9.0mL/g以上」として、相違点8に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲8実施例1発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、令和3年11月18日に提出された意見書において、「訂正発明1において、「無加圧DWの30秒値」を「9.0mL/g以上」に規定することに臨界的意義はない。
よって、当業者であれば、本件特許に記載の発明の課題を解決することを目的として、甲8実施例1発明において、「無加圧DWの30秒値」を、訂正発明1において何ら臨界的意義がない「9.0mL/g以上」の範囲内とすることは、容易に想到できる。」(上記意見書第13ページ第2ないし8行)旨主張する。
そこで、検討するに、仮に、本件特許発明1において、「無加圧DWの30秒値」を「9.0mL/g以上」に規定することに何ら臨界的意義がないとしても、上記のとおり、甲8に「無加圧DWの30秒値」に関する記載がなく、他の証拠にも甲8実施例1発明において「無加圧DWの30秒値」を調整する動機付けとなる記載がない以上、甲8実施例1発明において、相違点8に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

c まとめ
したがって、本件特許発明1は甲8実施例1発明であるとはいえないし、甲8実施例1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)甲8実施例2発明及び甲8実施例3発明との対比・判断
a 対比
本件特許発明1と甲8実施例2発明及び甲8実施例3発明を対比するに、両者の一致点及び相違点は、上記(ア)aの一致点及び相違点8と同じである。

b 判断
そこで、相違点8について検討する。
甲8実施例2発明及び甲8実施例3発明の「無加圧DWの5分値」は、それぞれ「58ml/g」及び「57ml/g」であり、甲8実施例1発明の「61ml/g」より低い。
そして、甲8実施例2発明及び甲8実施例3発明は甲8実施例1発明と同様の製造方法で製造されていることから、同様の挙動を示すことが当業者の技術常識から予測されるため、「無加圧DWの5分値」が「61ml/g」である甲8実施例1発明ですら、「無加圧DWの30秒値」は「9.0mL/g以上」であるという条件を満たしていないのであるから、「無加圧DWの5分値」が「61ml/g」よりも低い甲8実施例2発明及び甲8実施例3発明が、「無加圧DWの30秒値」は「9.0mL/g以上」であるという条件を満たしている蓋然性が高いとはいえない。その他に、甲8実施例2発明及び甲8実施例3発明が、当該物性値の条件を満足するといえる証拠もない。
すなわち、甲8実施例2発明又は甲8実施例3発明は、相違点8に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点8は実質的な相違点である。
また、上記(ア)bと同様に、甲8実施例2発明又は甲8実施例3発明において、相違点8に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲8実施例2発明又は甲8実施例3発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

c まとめ
したがって、本件特許発明1は甲8実施例2発明又は甲8実施例3発明であるとはいえないし、甲8実施例2発明又は甲8実施例3発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲8実施例1発明、甲8実施例2発明又は甲8実施例3発明であるとはいえないし、甲8実施例1発明、甲8実施例2発明又は甲8実施例3発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(8)甲21を主引用文献とする新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)甲21実施例1発明との対比・判断
a 対比
本件特許発明1と甲21実施例1発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点21−1−1>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり、
以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、
生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」と特定されているのに対し、甲21実施例1発明においては、そのようには特定されていない点。

b 判断
そこで、相違点21−1−1について検討する。
特許権者が令和3年10月8日に提出した意見書に添付された乙第2号証(甲21の実施例1の実験報告書)によると、甲21実施例1発明の「生理食塩水の保水量」は「34g/g」であり、「生理食塩水の保水量が41〜60g/g」であるという条件を満たしていない。
したがって、甲21実施例1発明は、相違点21−1−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点21−1−1は実質的な相違点である。
また、甲21には「生理食塩水の保水量」に関する記載はなく、他の証拠にも甲21実施例1発明において「生理食塩水の保水量」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲21実施例1発明において、「生理食塩水の保水量」に着目し、これを「41〜60g/g」として、相違点21−1−1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲21実施例1発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

c まとめ
したがって、本件特許発明1は甲21実施例1発明であるとはいえないし、甲21実施例1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)甲21実施例2発明ないし甲21実施例6発明のいずれかとの対比・判断
a 対比
本件特許発明1と甲21実施例2発明ないし甲21実施例6発明のいずれかを対比するに、両者の一致点及び相違点は、上記(ア)aの一致点及び相違点21−1−1と同じである。

b 判断
そこで、相違点21−1−1について検討する。
甲21実施例2発明ないし甲21実施例6発明のいずれも、甲21実施例1発明の水溶性無機粒子の含有量のみを変更した吸水性樹脂粒子である。
そして、本件特許の明細書の【0110】の【表1】によると、非晶質シリカの含有量のみが異なる本件特許の実施例1の吸水性樹脂粒子と実施例2の吸水性樹脂粒子との間で生理食塩水の保水量に違いはないから、甲21実施例2発明ないし甲21実施例6発明のいずれも、「生理食塩水の保水量」は甲21実施例1発明の「生理食塩水の保水量」の値(34g/g)と同程度の値である蓋然性が高い。
すなわち、甲21実施例2発明ないし甲21実施例6発明のいずれも、相違点21−1−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえず、相違点21−1−1は実質的な相違点である。
また、上記(ア)と同様に、甲21実施例2発明ないし甲21実施例6発明のいずれかにおいて、相違点21−1−1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲21実施例2発明ないし甲21実施例6発明のいずれか及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

c まとめ
したがって、本件特許発明1は甲21実施例2発明ないし甲21実施例6発明のいずれかであるとはいえないし、甲21実施例2発明ないし甲21実施例6発明のいずれか及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)甲21実施例7発明との対比・判断
a 対比
本件特許発明1と甲21実施例7発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点21−7−1>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり、
以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、
生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」と特定されているのに対し、甲21実施例7発明においては、そのようには特定されていない点。

b 判断
そこで、相違点21−7−1について検討する。
本件特許の実施例1ないし4と同じ非晶質シリカを用い、かつ、ポリアクリル酸ナトリウムを構成要素に含む本件特許の比較例1及び3における「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」がそれぞれ「104度」及び「92度」であるから、甲21実施例7発明が、「水不溶性無機微粒子(B1){株式会社ノザワ製針状非晶質シリカ、SP−01、流動性62秒/10g}」を用い、かつ、ポリアクリル酸ナトリウムを構成要素とするとしても、本件特許の比較例1及び3よりも遠いと考えられるので、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」は「20度以上80度以下」である蓋然性が高いとはいえない。
また、甲21実施例1発明の「生理食塩水の保水量」は「34g/g」である以上、甲21実施例1発明と原料及び製造方法が類似する甲21実施例7発明における「生理食塩水の保水量」が「41〜60g/g」である蓋然性が高いとはいえない。
したがって、相違点21−7−1は実質的な相違点である。
また、甲21には「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」及び「生理食塩水の保水量」に関する記載はなく、他の証拠にも甲21実施例7発明において「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」」及び「生理食塩水の保水量」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲21実施例7発明において、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」及び「生理食塩水の保水量」に着目し、これらをそれぞれ、「20度以上80度以下」及び「41〜60g/g」として、相違点21−7−1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲21実施例7発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、令和3年11月18日に提出された意見書において、「一方、特許権者は、上記意見書の19頁において・・・(略)・・・主張している。・・・(略)・・・そうすると、このような「親水性の高さ」が、訂正発明1に規定される「接触角」の要件を満足する指標とはならず、比較例3のように、重合体粒子の質量に対して0.2質量%の非晶質シリカを添加しても訂正発明1に規定される「接触角」の要件を満たさない(上限を超過する)ものにまで指標に含めるのであれば、訂正発明1に規定される「接触角」の要件を満たすための達成手段が不明である。」(上記意見書第16ページ第11ないし末行)旨主張する。
そこで、検討するに、本件特許発明1ないし3に関して、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を充足することは、下記3のとおりであるし、「訂正発明1に規定される「接触角」の要件を満たすための達成手段が不明である」かどうかは、進歩性の判断に関係がない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

また、特許異議申立人は、令和3年11月18日に提出された意見書において、「本書に添付の参考文献1:特開2008−133441号公報に記載の実施例7および11には、甲第21号証に記載の実施例7および8と同一の製造方法にて吸水性樹脂粒子を製造したことが記載されている(甲第21号証の段落〔0040〕〜〔0042〕、〔0049〕、〔0055〕および〔0056〕、並びに、参考文献1の段落〔0029〕、〔0032〕、〔0038〕および〔0042〕を参照。
参考文献1の実施例7および11に記載の吸水性樹脂粒子はそれぞれ、「保水性」が52g/gおよび53g/gである(参考文献1の段落〔0052〕の表2を参照)。ここで、参考文献1に記載の「保水性」とは、参考文献1の段落〔0050〕〜〔0051〕に記載の「保水量」のことを意味していると考えられる。・・・(略)・・・同一の吸水性樹脂粒子において、参考文献1に記載の「保水量(保水性)」と本件特許の「生理食塩水の保水量」とは、実質的に同程度の値となると考えられる。
従って、甲第21号証に記載の実施例7および8に記載の樹脂粒子はそれぞれ、本件特許の「生理食塩水の保水量」がおよそ52g/gおよび53g/gであり、訂正発明1に規定される「生理食塩水の保水量」の要件(41〜60g/g)を充足する蓋然性が高い。」(上記意見書第15ページ第2ないし24行)旨主張する。
そこで、検討するに、甲21に記載の実施例7及び8は、「エチレングリコールジグリシジルエーテルの1%水/メタノール混合液(水/メタノールの重量比=60/40)」の「5.5部」をスプレー噴霧し、加熱架橋(表面架橋)させている(甲21の【0042】)のに対し、参1に記載の実施例7及び11は、「エチレングリコールジグリシジルエーテルの1%水/メタノール混合液(水/メタノールの重量比=60/40)」の「1部」をスプレー噴霧し、加熱架橋(表面架橋)させており(参1の【0029】)、「エチレングリコールジグリシジルエーテルの1%水/メタノール混合液(水/メタノールの重量比=60/40)」の量が異なることから、「本書に添付の参考文献1:特開2008−133441号公報に記載の実施例7および11には、甲第21号証に記載の実施例7および8と同一の製造方法にて吸水性樹脂粒子を製造したことが記載されている。」とはいえず、「甲第21号証に記載の実施例7および8に記載の樹脂粒子はそれぞれ、本件特許の「生理食塩水の保水量」がおよそ52g/gおよび53g/gであり、訂正発明1に規定される「生理食塩水の保水量」の要件(41〜60g/g)を充足する蓋然性が高い。」とはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

c まとめ
したがって、本件特許発明1は甲21実施例7発明であるとはいえないし、甲21実施例7発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(エ)甲21実施例8発明ないし甲21実施例11発明のいずれかとの対比・判断
a 対比
本件特許発明1と甲21実施例8発明ないし甲21実施例11発明のいずれかを対比するに、両者の一致点及び相違点は、上記(ウ)aの一致点及び相違点21−7−1と同じである。

b 判断
そこで、相違点21−7−1について検討する。
上記(ウ)bと同様であり、相違点21−7−1は実質的な相違点であるし、甲21実施例8発明ないし甲21実施例11発明のいずれかにおいて、相違点21−7−1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲21実施例8発明ないし甲21実施例11発明のいずれか及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。

c まとめ
したがって、本件特許発明1は甲21実施例8発明ないし甲21実施例11発明のいずれかであるとはいえないし、甲21実施例8発明ないし甲21実施例11発明のいずれか及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲21実施例1発明ないし甲21実施例11発明のいずれかであるとはいえないし、甲21実施例1発明ないし甲21実施例11発明のいずれか及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(10)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。
よって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものであるとはいえないので、取消理由1によっては取り消すことはできない。

3 取消理由2(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
本件特許発明1ないし3は「吸水性樹脂粒子」という物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。

(2)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、次の記載がある。

・「【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、尿等の水を主成分とする液体を吸収するための吸収性物品には、吸水性樹脂粒子を含有する吸収体が用いられている。例えば下記特許文献1には、おしめなどの吸収性物品に好適に用いられる粒子径を有する吸水性樹脂粒子の製造方法が、また特許文献2には、尿の様な体液を収容するのに効果的な吸収性部材として、特定の食塩水流れ誘導性、圧力下性能等を有するヒドロゲル吸収性重合体を使用する方法が開示されている。
・・・(略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、吸収性物品に用いられる吸収体に対しては、金属イオンを含む種々の液(尿、汗等)を吸収することが求められている。ここで、吸収体に供された液が、吸収体に十分浸透しなければ、余剰の液はその表面を流れるなどして、吸収体の外に漏れるといった不具合が生じ得る。そのため、金属イオンを含む液が吸収体に十分な速さで浸透する必要があり、液の種類に依存することなく好適な浸透速度が安定的に得られることが求められる。
【0005】
従来の吸収体を用いた吸収性物品では、吸液対象の液が吸収体に十分吸収されずに、余剰の液が吸収体表面を流れる現象(液走り)が起こりやすく、結果として液が吸収性物品の外に漏れるという漏れ性の点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することを目的とする。」

・「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、無加圧DWの30秒値が、1.0mL/g以上であり、以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が90度以下である、吸水性樹脂粒子を提供する。
i)25℃において、吸水性樹脂粒子からなる層の表面上に、25質量%食塩水の直径3.0±0.1mmに相当する球状液滴を滴下して、吸水性樹脂粒子と液滴とを接触させる。
ii)液滴が表面に接触してから、30秒後の時点の液滴の接触角を測定する。
【0008】
上記吸水性樹脂粒子は、無加圧DWの30秒値及び上記接触角が所定の範囲内にあるため、液体漏れを抑制可能である。すなわち、上記吸水性樹脂粒子は、吸収性物品からの液体漏れの発生を抑制することに効果的に寄与できる。ここで、無加圧DWは、吸水性樹脂粒子が、無加圧下で、生理食塩水(濃度0.9質量%の食塩水)と接触してから所定の時間経過するまでに生理食塩水を吸収した量で表される吸水速度である。無加圧DWは、生理食塩水の吸収前の吸水性樹脂粒子1g当たりの吸収量(mL)で表される。無加圧DWの30秒値は、吸水性樹脂粒子が生理食塩水と接触してから30秒後の吸収量を意味する。
【0009】
上記吸水性樹脂粒子において、上記接触角は70度以下であってよい。
【0010】
上記吸水性樹脂粒子において、生理食塩水の保水量は20〜60g/gであってよい。」

・「【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」

・「【0015】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の無加圧DWの30秒値が、1.0mL/g以上である。無加圧DWの30秒値は、液体漏れがより一層抑制可能となる観点から、2.0mL/g以上、3.0mL/g以上、4.0mL/g以上、5.0mL/g以上、6.0mL/g以上、7.0mL/g以上、8.0mL/g以上、9.0mL/g以上、又は9.5mL/g以上であってよく、15mL/g以下、12mL/g以下、又は10mL/g以下であってよい。無加圧DWの30秒値は、後述する実施例に記載されている測定方法により測定される値である。
【0016】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角は、90度以下である。
i)25℃において、吸水性樹脂粒子からなる層の表面上に、25質量%食塩水の直径3.0±0.1mmに相当する球状液滴を滴下して、吸水性樹脂粒子と液滴とを接触させる。
ii)液滴が表面に接触してから、30秒後の時点の液滴の接触角を測定する。
【0017】
接触角は、液体漏れがより一層抑制可能となる観点から、80度以下、70度以下、60度以下、50度以下、又は40度以下であってよい。また、接触角は、0度以上であっても、0度を超えてもよく、10度以上、又は20度以上であってよい。
【0018】
接触角は、JIS R 3257(1999)「基盤ガラス表面のぬれ性試験方法」に準じて測定される値であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0019】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、生理食塩水に対する高い吸水能を有することができる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は、例えば、20〜60g/g、25〜55g/g、30〜50g/g、又は32〜42g/gであってよい。生理食塩水の保水量は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0020】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の荷重下における生理食塩水の吸水量は、例えば10〜40mL/g、15〜35mL/g、20〜30mL/g、又は22〜28mL/gであってよい。荷重下における生理食塩水の吸水量としては、荷重4.14kPaにおける吸水量(25℃)を用いることができる。吸水量は、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。
【0021】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の形状としては、略球状、破砕状、顆粒状等が挙げられる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の中位粒子径は、250〜850μm、300〜700μm、又は、300〜600μmであってよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、後述する製造方法により得られた時点で所望の粒度分布を有していてよいが、篩による分級を用いた粒度調整等の操作を行うことにより粒度分布を調整してもよい。
【0022】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含むことができる。架橋重合体は、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する。
【0023】
吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合させる工程を含む方法により、製造することができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらの中では、得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性の確保、及び、重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法が好ましい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
【0024】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であることが好ましく、・・・(略)・・・
【0025】
・・・(略)・・・エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが更に好ましい。
・・・(略)・・・
【0027】
・・・(略)・・・エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量に対して70〜100モル%であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70〜100モル%であることがより好ましい。
【0028】
単量体水溶液は、エチレン性不飽和単量体が酸基を有する場合、その酸基をアルカリ性中和剤によって中和して用いてもよい。・・・(略)・・・
【0029】
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、ラジカル重合開始剤等を用いてエチレン性不飽和単量体の重合を行うことができる。ラジカル重合開始剤としては、水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0030】
界面活性剤としては、・・・(略)・・・
【0033】
逆相懸濁重合では、上述の界面活性剤と共に高分子系分散剤を併せて用いてもよい。・・・(略)・・・
【0035】
炭化水素分散媒は、・・・(略)・・・
【0038】
ラジカル重合開始剤は水溶性であることが好ましく、・・・(略)・・・
【0041】
重合反応の際、重合に用いる単量体水溶液は、連鎖移動剤を含んでいてもよい。・・・(略)・・・
【0042】
吸水性樹脂粒子の粒子径を制御するために、重合に用いる単量体水溶液は、増粘剤を含んでいてもよい。・・・(略)・・・
【0043】
重合の際に自己架橋による架橋が生じるが、更に内部架橋剤を用いることで架橋を施してもよい。内部架橋剤を用いると、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。内部架橋剤は、通常、重合反応の際に反応液に添加される。内部架橋剤としては、例えば、・・・(略)・・・内部架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、ジグリシジルエーテル化合物がより好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種が更に好ましい。
【0044】
内部架橋剤の使用量は、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0ミリモル以上、0.02ミリモル以上、0.03ミリモル以上、0.04ミリモル以上、又は0.05ミリモル以上であってもよく、0.1モル以下であってもよい。特に、多段の逆相懸濁重合の重合、1段目の重合において、内部架橋剤の量がエチレン性不飽和単量体1モル当たり0.03ミリモル以上であると、保水量と無加圧DWが好適な吸水性樹脂粒子が得られ易い。
【0045】
エチレン性不飽和単量体、ラジカル重合開始剤、必要に応じて内部架橋剤等を含む水相と、炭化水素系分散剤と必要に応じて界面活性剤、高分子系分散剤等を含む油相を混合した状態において撹拌下で加熱し、油中水系において逆相懸濁重合を行うことができる。
【0046】
逆相懸濁重合を行う際には、界面活性剤(必要に応じて更に、高分子系分散剤)の存在下で、エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液を炭化水素分散媒に分散させる。このとき、重合反応を開始する前であれば、界面活性剤、高分子系分散剤等の添加時期は、単量体水溶液の添加の前後どちらであってもよい。
【0047】
その中でも、得られる吸水性樹脂に残存する炭化水素分散媒の量を低減しやすい観点から、高分子系分散剤を分散させた炭化水素分散媒に単量体水溶液を分散させた後に界面活性剤を更に分散させてから重合を行うことが好ましい。
【0048】
逆相懸濁重合は、1段、又は、2段以上の多段で行うことができる。逆相懸濁重合は、生産性を高める観点から、2〜3段で行うことが好ましい。
【0049】
2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合には、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物にエチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。・・・(略)・・・
【0051】
重合後、得られた含水ゲル状重合体に架橋剤を添加して加熱することで、重合後架橋を施してもよい。重合後架橋を行なうことで含水ゲル状重合体の架橋度を高め、それにより吸水性樹脂粒子の吸水特性を更に向上させることができる。
【0052】
重合後架橋を行うための架橋剤としては、例えば、・・・(略)・・・これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。これらの架橋剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0053】
重合後架橋に用いられる架橋剤の量は、得られる含水ゲル状重合体が適度に架橋されることにより好適な吸水特性を示すようにする観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0〜0.03モルであることが好ましく、0〜0.01モルであることがより好ましく、0.00001〜0.005モルであることが更に好ましい。前記架橋剤の添加量が上述の範囲内であることによって、無加圧DWや接触角が好適な吸水性樹脂粒子が得られ易い。
・・・(略)・・・
【0055】
引き続き、得られた含水ゲル状重合体から水分を除去するために乾燥を行う。乾燥により、エチレン性不飽和単量体の重合体を含む重合体粒子が得られる。乾燥方法としては、例えば、・・・(略)・・・
【0056】
重合反応時の撹拌機の回転数を調整することによって、あるいは、重合反応後又は乾燥の初期において凝集剤を系内に添加することによって吸水性樹脂粒子の粒子径を調整することができる。凝集剤を添加することにより、得られる吸水性樹脂粒子の粒子径を大きくすることができる。凝集剤としては、無機凝集剤を用いることができる。無機凝集剤(例えば粉末状無機凝集剤)としては、シリカ、ゼオライト、ベントナイト、酸化アルミニウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、クレイ、ハイドロタルサイト等が挙げられる。凝集効果に優れる観点から、凝集剤としては、シリカ、酸化アルミニウム、タルク及びカオリンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
・・・(略)・・・
【0059】
吸水性樹脂粒子の製造においては、乾燥工程又はそれ以降のいずれかの工程において、架橋剤を用いて含水ゲル状重合体の表面部分の架橋(表面架橋)が行われることが好ましい。表面架橋を行うことで、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。表面架橋は、含水ゲル状重合体が特定の含水率であるタイミングで行われることが好ましい。表面架橋の時期は、含水ゲル状重合体の含水率が5〜50質量%である時点が好ましく、10〜40質量%である時点がより好ましく、15〜35質量%である時点が更に好ましい。なお、含水ゲル状重合体の含水率(質量%)は、次の式で算出される。
含水率=[Ww/(Ww+Ws)]×100
Ww:全重合工程の重合前の単量体水溶液に含まれる水分量から、乾燥工程により系外部に排出された水分量を差し引いた量に、凝集剤、表面架橋剤等を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を加えた含水ゲル状重合体の水分量。
Ws:含水ゲル状重合体を構成するエチレン性不飽和単量体、架橋剤、開始剤等の材料の仕込量から算出される固形分量。
【0060】
表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、・・・(略)・・・ポリグリシジル化合物が好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及び、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0061】
表面架橋剤の使用量は、得られる含水ゲル状重合体が適度に架橋されることにより好適な吸水特性を示すようにする観点から、通常、重合に使用するエチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.00001〜0.02モルが好ましく、0.00005〜0.01モルがより好ましく、0.0001〜0.005モルが更に好ましい。表面架橋剤の添加量が上述の範囲内であることによって、無加圧DWや接触角が好適な吸水性樹脂粒子が得られ易い。
【0062】
表面架橋後において、公知の方法で水及び炭化水素分散媒を留去することにより、表面架橋された乾燥品である重合体粒子を得ることができる。
【0063】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、重合体粒子のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム等)、及び流動性向上剤(滑剤)等から選ばれる各種の追加の成分を更に含むことができる。追加の成分は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又はそれらの両方に配置され得る。追加の成分としては、流動性向上剤(滑剤)が好ましく、そのなかでも無機粒子がより好ましい。無機粒子としては、例えば、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。
【0064】
吸水性樹脂粒子は、重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。例えば、重合体粒子と無機粒子とを混合することにより、重合体粒子の表面上に無機粒子を配置することができる。この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。吸水性樹脂粒子が重合体粒子の表面上に配置された無機粒子を含む場合、重合体粒子の質量に対する無機粒子の割合は、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよく、5.0質量%以下、又は3.5質量%以下であってもよい。ここでの無機粒子は、通常、重合体粒子の大きさと比較して微小な大きさを有する。例えば、無機粒子の平均粒子径が、0.1〜50μm、0.5〜30μm、又は1〜20μmであってもよい。ここでの平均粒子径は、動的光散乱法、又はレーザー回折・散乱法によって測定される値であることができる。無機粒子の添加量が上述の範囲内であることによって、吸水性樹脂粒子の吸水特性、なかでも無加圧DWや接触角が好適な吸水性樹脂粒子が得られ易い。」

・「【実施例】
【0082】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0083】
<吸水性樹脂粒子の製造>
[実施例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、並びに、攪拌機として、翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径11cm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn−ヘプタン293gをとり、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.736gを添加し、攪拌しつつ80℃まで昇温して分散剤を溶解した後、50℃まで冷却した。
【0084】
一方、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.03モル)をとり、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下して75モル%の中和を行った後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HECAW−15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、および過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を加えて溶解し、第1段目の水性液を調製した。
【0085】
そして、上記にて調製した水性液をセパラブルフラスコに添加して、10分間攪拌した後、n−ヘプタン6.62gに界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS−370)0.736gを加熱溶解した界面活性剤溶液を、さらに添加して、撹拌機の回転数を550rpmとして攪拌しながら系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことにより、第1段目の重合スラリー液を得た。
【0086】
一方、別の内容積500mLのビーカーに水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)、および過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)を加えて溶解し、第2段目の水性液を調製した。
【0087】
撹拌機の回転数を1000rpmとして撹拌しながら、上記のセパラブルフラスコ系内を25℃に冷却した後、上記第2段目の水性液の全量を、第1段目の重合スラリー液に添加して、系内を窒素で30分間置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を60分間行った。その後、重合後架橋のための架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液0.580g(0.067ミリモル)を添加し、含水ゲル状重合体を得た。
【0088】
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体に、45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.265gを攪拌下で添加した。その後、125℃に設定した油浴にフラスコを浸漬し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留により、n−ヘプタンを還流しながら、238.5gの水を系外へ抜き出した。その後、フラスコに表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、83℃で2時間保持した。
【0089】
その後、n−ヘプタンを125℃にて蒸発させて乾燥させることによって、重合体粒子(乾燥品)を得た。この重合体粒子を目開き850μmの篩に通過させ、重合体粒子の質量に対して0.2質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)を重合体粒子と混合し、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子を232.1g得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は396μmであった。
【0090】
[実施例2]
重合体粒子(乾燥品)に対して、2.0質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)を混合したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子236.3gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は393μmであった。
【0091】
[実施例3]
第1段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩を用いずに、過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)を用いたこと、第2段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩を用いずに、過硫酸カリウム0.090g(0.334ミリモル)を用いたこと、第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により247.9gの水を系外へ抜き出したこと、及び重合体粒子の質量に対して0.5質量%の非晶質シリカを重合体粒子と混合したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子231.0gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は355μmであった。
【0092】
[実施例4]
第1段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩を用いずに、過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)を用いたこと、第2段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩を用いずに、過硫酸カリウム0.090g(0.334ミリモル)を用いたこと、第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により239.7gの水を系外へ抜き出したこと、及び、重合体粒子に対して、0.5質量%の非晶質シリカを混合したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子229.2gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は377μmであった。」

・「【0096】
<生理食塩水保水量の測定>
吸水性樹脂粒子2.0gを量り取った綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)を500mL容のビーカー内に設置した。吸水性樹脂粒子の入った綿袋中に0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gをママコができないように一度に注ぎ込み、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分静置させることで吸水性樹脂粒子を膨潤させた。30分経過後の綿袋を、遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(株式会社コクサン製、品番:H−122)を用いて1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量Wb(g)を測定し、以下の式から生理食塩水保水量を算出した。
生理食塩水保水量(g/g)=[Wa−Wb]/2.0
【0097】
<吸水性樹脂粒子の荷重下の吸水量>
・・・(略)・・・
【0099】
<中位粒子径>
・・・(略)・・・
【0102】
<無加圧DW(DemandWettability)の30秒値の測定>
吸水性樹脂の粒子の無加圧DWは、図1に示す測定装置を用いて測定した。測定は1種類の吸水性樹脂粒子に関して5回実施し、最低値と最高値とを除いた3点の測定値の平均値を求めた。
当該測定装置は、ビュレット部1、導管5、測定台13、ナイロンメッシュシート15、架台11、及びクランプ3を有する。ビュレット部1は、目盛が記載されたビュレット管21と、ビュレット管21の上部の開口を密栓するゴム栓23と、ビュレット管21の下部の先端に連結されたコック22と、ビュレット管21の下部に連結された空気導入管25及びコック24とを有する。ビュレット部1はクランプ3で固定されている。平板状の測定台13は、その中央部に形成された直径2mmの貫通孔13aを有しており、高さが可変の架台11によって支持されている。測定台13の貫通孔13aとビュレット部1のコック22とが導管5によって連結されている。導管5の内径は6mmである。
【0103】
測定は温度25℃、湿度60±10%の環境下で行なわれた。まずビュレット部1のコック22とコック24を閉め、25℃に調節された0.9質量%食塩水50をビュレット管21上部の開口からビュレット管21に入れた。食塩水の濃度0.9質量%は、食塩水の質量を基準とする濃度である。ゴム栓23でビュレット管21の開口の密栓した後、コック22及びコック24を開けた。気泡が入らないよう導管5内部を0.9質量%食塩水50で満たした。貫通孔13a内に到達した0.9質量%食塩水の水面の高さが、測定台13の上面の高さと同じになるように、測定台13の高さを調整した。調整後、ビュレット管21内の0.9質量%食塩水50の水面の高さをビュレット管21の目盛で読み取り、その位置をゼロ点(0秒時点の読み値)とした。
【0104】
測定台13上の貫通孔13の近傍にて、ナイロンメッシュシート15(100mm×100mm、250メッシュ、厚さ約50μm)を敷き、その中央部に、内径30mm、高さ20mmのシリンダーを置いた。このシリンダーに、1.00gの吸水性樹脂粒子10aを均一に散布した。その後、シリンダーを注意深く取り除き、ナイロンメッシュシート15の中央部に吸水性樹脂粒子10aが円状に分散されたサンプルを得た。次いで、吸水性樹脂粒子10aが載置されたナイロンメッシュシート15を、その中心が貫通孔13aの位置になるように、吸水性樹脂粒子10aが散逸しない程度にすばやく移動させて、測定を開始した。空気導入管25からビュレット管21内に気泡が最初に導入された時点を吸水開始(0秒)とした。
【0105】
ビュレット管21内の0.9質量%食塩水50の減少量(すなわち、吸水性樹脂粒子10aが吸水した0.9質量%食塩水の量)を0.1mL単位で順次読み取り、吸水性樹脂粒子10aの吸水開始から起算して30秒後の0.9質量%食塩水50の減量分Wc(g)を読み取った。Wcから、下記式により無加圧DWの30秒値を求めた。無加圧DWは、吸水性樹脂粒子10aの1.00g当たりの吸水量である。
無加圧DWの30秒値(mL/g)=Wc/1.00
【0106】
<接触角の測定>
接触角の測定は温度25℃、湿度60±10%の環境下で行なった。ガラス製プレパラート(25mm×75mm)に両面テープ(ニチバン製内スタック:10mm×75mm)を添付し、粘着面が露出したものを用意した。まず、前記プレパラートに添付された両面テープ上に吸水性樹脂粒子2.0gを均一に散布した。その後、プレパラートを垂直に立てて、余剰の吸水性樹脂粒子を除き、測定用サンプルを調製した。
【0107】
接触角計(協和界面科学製:Face s−150)は、上下方向に可動な試料載置用ステージと、その上部に設置されたシリンジ部と、ステージを水平に観察できるスコープ部からなっている。接触角の測定は、このような接触角計を用いて以下の手順で行った。 まず、前記シリンジ(容量1ml)の鉛直下のステージ部に測定用サンプルを載置した。接触角計のスコープを用いて、25質量%食塩水の直径3mmの球状液滴をシリンジ先端部に調製した。当該球状液滴の直径は±0.1mmまで許容した。ステージを上方に動かし、調製した液滴をサンプルの表面が平滑な場所に、接触させた(その時点をt=0(秒)とする)。t=30(秒)の時点での前記食塩水液滴と両面テープ表面との接触面における左右端点と頂点を結ぶ直線の両面テープ表面に対する角度を、接触角計のレンズで読み取り、その角度をθ/2とした。これを2倍することによって接触角θを求めた。測定は5回繰り返し、平均した値を、その吸水性樹脂粒子の接触角とした。なお、角度の読み取り方法は、JIS R 3257(1999)「基盤ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠している。
【0108】
<傾斜漏れ試験>
(人工尿の調製)
イオン交換水に、下記の通りに無機塩が存在するように配合して溶解させたものに、さらに少量の青色1号を配合して人工尿(試験液)を調製した。下記の濃度は、人工尿の全質量を基準とする濃度である。
人工尿組成
NaCl:0.780質量%
CaCl2:0.022質量%
MgSO4:0.038質量%
青色一号:0.002質量%
【0109】
(漏れ性の評価)
以下のi)、ii)、iii)、iv)及びv)の手順により、吸水性樹脂粒子の漏れ性を評価した。
i)長さ15cm、幅5cmの短冊状の粘着テープ(ダイヤテックス株式会社製、パイオランテープ)を粘着面が上になるよう実験台上に置き、その粘着面上に、吸水性樹脂粒子3.0gを均一に散布した。散布された吸水性樹脂粒子の上部に、ステンレス製ローラー(質量4.0kg、径10.5cm、幅6.0cm)を載せ、ローラーを、粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させた。これにより、吸水性樹脂粒子からなる吸水層を粘着テープの粘着面上に形成した。
ii)粘着テープを垂直に立てて、余剰の吸水性樹脂粒子を吸水層から除いた。再度、吸水層に前記ローラーを載せ、粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させた。
iii)温度25±2℃の室内において、長さ30cm、幅55cmの長方形の平坦な主面を有するアクリル樹脂板を、その幅方向が水平面に平行で、その主面と水平面とが30度をなすように固定した。固定されたアクリル板の主面に、吸水層が形成された粘着テープを、吸水層が露出し、その長手方向がアクリル樹脂板の幅方向に対して垂直になる向きで貼り付けた。
iV)吸水層の上端から約1cmの位置で表面から約1cmの高さから、液温25℃の試験液0.25mLを、マイクロピペット(エムエス機器社製ピペットマン・ネオP1000N)を用いて、1秒以内に全て注入した。
v)試験液の注入開始から30秒後に、吸水層に注入された試験液の移動距離の最大値を読み取り、拡散距離Dとして記録した。なお、拡散距離Dは、主面上において、滴下点(注入点)と最長到達点とを、アクリル樹脂板の短辺水平面に対して垂直方向の直線で結んだ距離である。なお、拡散距離Dが14cm以上の場合は液体漏れが発生していた。」

・「【0110】
【表1】

【0111】
表1の結果から、実施例にて得られた吸水性樹脂粒子によれば、比較例にて得られた吸水性樹脂粒子に比べ、液体漏れの抑制が可能となることが示された。」

(3)実施可能要件の判断
発明の詳細な説明の記載は上記(2)のとおりであり、発明の詳細な説明には、本件特許発明1の各発明特定事項について具体的に記載されており、また、本件特許発明1の実施形態に係る吸水性樹脂粒子を得るための単量体、ラジカル重合開始剤、界面活性剤、高分子系分散剤、炭化水素分散媒、内部架橋剤、後架橋剤、表面架橋剤及びシリカ粒子等の原材料並びに重合方法についても具体的に記載されている。
特に、発明の詳細な説明の【0053】及び【0061】等に重合後に用いられる架橋剤の量及び表面架橋剤の量を調整して接触角が好適な吸水性樹脂粒子が得られることが記載されている。
また、疎水性シリカ粒子、超疎水性シリカ粒子又は親水度が70%未満の二酸化ケイ素微粉末等のシリカ粒子を添加すると接触角が大きくなり易いことは本件特許の出願時の技術常識であるから、これらのシリカ粒子を添加する場合の接触角を小さくするための量は微量であることは当業者に明らかである。
そうすると、疎水性シリカ粒子、超疎水性シリカ粒子又は親水度が70%未満の二酸化ケイ素微粉末等のシリカ粒子を用いた場合でも、当業者であれば、重合後に用いられる架橋剤の量、表面架橋剤の量及びシリカ粒子の量を調整して、過度の試行錯誤を要することなく、接触角が好適な吸水性樹脂粒子を得ることができるといえる。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
また、本件特許発明2及び3についても同様であり、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明2及び3を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。

(4)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第4号に該当しないので、取消理由2によっては、取り消すことはできない。

第7 取消理由に採用しなかった特許異議の申立ての理由について
取消理由に採用しなかった特許異議の申立ての理由は、申立理由3(甲7、9又は21を主引用文献とする進歩性)のうち甲7又は9を主引用文献とする進歩性、申立理由4(甲13又は14を主引用文献とする進歩性)及び申立理由5(サポート要件)である。
以下、検討する。

1 申立理由3(甲7、9又は21を主引用文献とする進歩性)のうち甲7又は9を主引用文献とする進歩性について
(1)甲7を主引用文献とする進歩性について
ア 甲7に記載された事項及び甲7発明
(ア)甲7に記載された事項
甲7には、「吸吸水性樹脂、及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0092】
実施例1
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン500mLをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却した。
一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、20.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液154.3gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、室温にて撹拌して完全に溶解させた。過硫酸アンモニウム0.11g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mgを加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
攪拌機の回転数を450rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第1段目の重合後スラリーを得た。(なお、この重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn−ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、球状の1次粒子の中位粒子径は80μmであった。)
一方、別の500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液110.4gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液149.9gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.13g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド33.1mgを加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、23℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持したのち、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、256.1gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液8.10gを添加し、80℃で2時間保持した後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂213.8gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は400μm、水分率は6質量%であった。各性能の測定結果を表1に示す。」

(イ)甲7発明
甲7に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲7には次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されていると認める。

「流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備し、このフラスコにn−ヘプタン500mLをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却し、一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、20.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液154.3gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、室温にて撹拌して完全に溶解させた。過硫酸アンモニウム0.11g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mgを加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製し、攪拌機の回転数を450rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第1段目の重合後スラリーを得、一方、別の500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液110.4gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液149.9gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.13g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド33.1mgを加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製し、前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、23℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持したのち、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第2段目の重合後スラリーを得、次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、256.1gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液8.10gを添加し、80℃で2時間保持した後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、得た球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂。」

イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲7発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子を含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点7−1>
本件特許発明1においては、「該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点7−2>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点7−3>
本件特許発明1においては、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点7−4>
本件特許発明1においては、「生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点7−3から検討する。
甲7には、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」に関する記載はなく、他の証拠にも甲7発明において「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲7発明において、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」に着目し、これを「20度以上80度以下」として、相違点7−3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲7発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「ここで、(甲7イ)から、流動性を向上させるために、非晶質シリカ粉末を添加してもよいことが記載されている。そうすると、甲7−1発明において、流動性を向上させるために、親水性アモルファスシリカReolosil QS−20を用いることは、当業者にとって容易になし得た事項である。そして、このような吸水性樹脂は、親水性が高いので、構成要件(1D)及び(1F)を満たす蓋然性が高い。」(当審注:「構成要件(1D)」は「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、」のことであり、「構成要件(1F)は「i)25℃において、吸水性樹脂粒子からなる層の表面上に、25質量%食塩水の直径3.0±0.1mmに相当する球状液滴を滴下して、当該吸水性樹脂粒子と前記液滴とを接触させる。
ii)前記液滴が前記表面に接触してから、30秒後の時点の前記液滴の接触角を測定する。」のことである。以下同様。)(特許異議申立書第60ページ第8ないし13行)旨主張する。
そこで、検討するに、本件特許の実施例1ないし4と同じ非晶質シリカを用い、かつ、ポリアクリル酸ナトリウムを構成要素に含む本件特許の比較例1及び3における「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」がそれぞれ「104度」及び「92度」であることからみて、甲7発明に親水性アモルファスシリカReolosil QS−20を適用できたとしても、その場合、吸水性樹脂粒子の組成や構造は、本件特許の比較例1及び3よりも本件特許発明1から異なると考えられるから、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」が「20度以上80度以下」となる蓋然性が高い、すなわち「構成要件(1D)及び(1F)を満たす蓋然性が高い。」とはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

また、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「また、(甲26ア)及び(甲26イ」から、・・・(略)・・・
(甲26ウ)から、疎水性物質(C1)として、ショ糖脂肪酸エステル等が例示されており、疎水性物質(C)のHLB値は、1〜10である。さらに、甲第26号証の表1から実施例1〜9では、疎水性物質を添加した吸水性樹脂と生理食塩水との接触角が30〜80°である。
ここで、(甲7オ)から、甲第7号証の実施例1〜4では、吸水性樹脂の製造に、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS−370)を用いる。甲第7号証の実施例1〜4にて使用されるショ糖脂肪酸エステルは、(甲26ウ)に記載のショ糖脂肪酸エステルと同様である。そうすると、甲第7号証の実施例1〜4の吸水性樹脂は、構成要件(1D)を満たす蓋然性が高い。」(特許異議申立書第60ページ第14行ないし第61ページ第4行)旨主張する。
そこで、検討するに、甲7の実施例1〜4で使用された「HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS−370)」は、本件特許の比較例1及び3でも使用されており、本件特許の比較例1及び3の「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」はそれぞれ「104度」及び「92度」であることからみて、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」が「20度以上80度以下」となる蓋然性が高い、すなわち「甲第7号証の実施例1〜4の吸水性樹脂は、構成要件(1D)を満たす蓋然性が高い。」とはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲7発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲7発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)甲9を主引用文献とする進歩性について
ア 甲9に記載された事項及び甲9発明
(ア)甲9に記載された事項
甲9には、「吸水シート構成体」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「[0133](製造例1:吸水性樹脂A)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン500mLをとり、界面活性剤としてのHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却した。
[0134] 一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、20.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液154.1gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.11g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mgを加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
[0135] 撹拌機の回転数を600r/minとして、前記単量体水溶液全量を前記セパブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行うことにより、第1段目の重合後スラリーを得た。
[0136] 一方、別の500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液174.9gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.16g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド12.9mgを加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製し、温度を約25℃に保持した。
[0137] 前記重合後スラリーの入った撹拌機の撹拌回転数を1000r/minに変更した後、25℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液全量を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持した。再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して、昇温し、重合を行うことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
[0138] 次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、269.8gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液8.83gを添加し、80℃で2時間保持した。その後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂Aを231.2g得た。得られた吸水性樹脂Aの性能は、質量平均粒径:350μm、生理食塩水吸水速度:33秒、生理食塩水保水能:43g/g、2.07kPa荷重下での生理食塩水吸水能:33mL/g、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能:18mL/g、初期吸水速度:0.17mL/s、有効吸水量:64mL/gであった。」

(イ)甲9発明
甲9に記載された事項を、特に製造例1に関して整理すると、甲9には次の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されていると認める。

「還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備し、このフラスコにn−ヘプタン500mLをとり、界面活性剤としてのHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却し、一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、20.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液154.1gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.11g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mgを加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製し、撹拌機の回転数を600r/minとして、前記単量体水溶液全量を前記セパブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行うことにより、第1段目の重合後スラリーを得、一方、別の500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液174.9gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.16g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド12.9mgを加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製し、温度を約25℃に保持し、前記重合後スラリーの入った撹拌機の撹拌回転数を1000r/minに変更した後、25℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液全量を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持した。再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して、昇温し、重合を行うことにより、第2段目の重合後スラリーを得、次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、269.8gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液8.83gを添加し、80℃で2時間保持し、その後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって得た球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂A。」

イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲9発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子を含むものである、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点9−1>
本件特許発明1においては、「該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点9−2>
本件特許発明1においては、「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点9−3>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点9−4>
本件特許発明1においては、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点9−5>
本件特許発明1においては、「生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点9−4から検討する。
甲9には、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」に関する記載はなく、他の証拠にも甲9発明において「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲9発明において、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」に着目し、これを「20度以上80度以下」として、相違点9−4に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲9発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「(甲4イ)から、カチオン性高分子化合物(US5797893のカラム11に例示されているものなど)や疎水性の無機微粒子などは液透過性を向上させ、液体透過性向上剤(F)として使用可能であるが、・・・(略)・・・液透過性向上剤(F)として親水性のアモルファスシリカが例示されている。一方、ポリアクリル酸ナトリウム塩は、本来、親水性が高いことが技術常識である。このため、親水性のアモルファスシリカが添加された実施例32の吸水剤は、接触角が低く、構成要件(1D)及び(1F)を満たす蓋然性が高い。」(特許異議申立書第68ページ末行ないし第69ページ第9行)旨主張する。
そこで、検討するに、本件特許の実施例1ないし4と同じ非晶質シリカを用い、かつ、ポリアクリル酸ナトリウムを構成要素に含む本件特許の比較例1及び3における「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」がそれぞれ「104度」及び「92度」であることからみて、甲9発明に親水性のアモルファスシリカを適用できたとしても、その場合、吸水性樹脂粒子の組成や構造は、本件特許の比較例1及び3よりも本件特許発明1から異なると考えられるから、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」が「20度以上80度以下」となる蓋然性が高い、すなわち「構成要件(1D)及び(1F)を満たす蓋然性が高い。」とはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲9発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲9発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)申立理由3のうち甲7又は9を主引用文献とする進歩性についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものであるとはいえないので、申立理由3のうち甲7又は9を主引用文献とする進歩性によっては取り消すことはできない。

2 申立理由4(甲13又は14を主引用文献とする進歩性)について
(1)甲13を主引用文献とする進歩性について
ア 甲13に記載された事項及び甲13発明
(ア)甲13に記載された事項
甲13には、「不定形重合体粒子の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「実施例2
アクリル酸102.0gを25.5gの水に溶解した後、冷却しつつ 30wt%水酸化ナトリウム水溶液140.0で中和した後、5.2wt%過硫酸カリウム水溶液7.9g、エポキシ系二官能性架橋剤〔エチレングリコールジグリシジルエーテル、長瀬化成工業(株)製,商品名「デナコールEX810」〕0.051gを加えて均一溶液とし、モノマー/開始剤水溶液を作った。
別に、還流冷却管、滴下漏斗、撹拌棒、及び窒素導入管を備えた1000mlのフラスコにシクロへキサン400mlを取り、分散剤としてHL15.0のポリオキシエチレンソルビタンモノオレート〔EO:20モル付加体、花王(株)製,商品名「レオドールTW−0120」〕5.1gを加えて撹拌(350rpm) ・分散させ、フラスコを窒素置換した後、75℃に昇温して、シクロへキサンを還流させた。これに前述のモノマー/開始剤水溶液を1時間に渡り滴下し、滴下完了後、75℃で0.5時間、さらに80℃で4時間撹拌・重合した。
重合終了後、生成物を分別し、減圧下に乾燥することにより、105.3gのアクリル酸(ナトリウム)重合体を得た。得られた重合体は、平均粒径:570μmの歪な形状をした顆粒状粒子で、嵩密度は0.45g/mlであり、100μm以下の微粉末状の粒子は殆ど含まれていなかった。また、前記重合体粒子表面は、数〜20μmの不定形粒子が互いに融着したような構造をしており、表面の凹凸が極めて著しいものであった。
得られた重合体について、平衡膨潤吸水量、吸水速度を表す吸水量及び生理食塩水の通液速度の測定を行った。その結果を〔表1〕に示す。」(第20ページ第1行ないし第21ページ第6行)

(イ)甲13発明
甲13に記載された事項を、特に実施例2に関して整理すると、甲13には次の発明(以下、「甲13発明」という。)が記載されていると認める。

「アクリル酸102.0gを25.5gの水に溶解した後、冷却しつつ 30wt%水酸化ナトリウム水溶液140.0で中和した後、5.2wt%過硫酸カリウム水溶液7.9g、エポキシ系二官能性架橋剤〔エチレングリコールジグリシジルエーテル、長瀬化成工業(株)製,商品名「デナコールEX810」〕0.051gを加えて均一溶液とし、モノマー/開始剤水溶液を作り、別に、還流冷却管、滴下漏斗、撹拌棒、及び窒素導入管を備えた1000mlのフラスコにシクロへキサン400mlを取り、分散剤としてHL15.0のポリオキシエチレンソルビタンモノオレート〔EO:20モル付加体、花王(株)製,商品名「レオドールTW−0120」〕5.1gを加えて撹拌(350rpm) ・分散させ、フラスコを窒素置換した後、75℃に昇温して、シクロへキサンを還流させ、これに前述のモノマー/開始剤水溶液を1時間に渡り滴下し、滴下完了後、75℃で0.5時間、さらに80℃で4時間撹拌・重合し、重合終了後、生成物を分別し、減圧下に乾燥することにより、得たアクリル酸(ナトリウム)重合体の顆粒状粒子。」

イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲13発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子を含む吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点13−1>
本件特許発明1においては、「該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲13発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点13−2>
本件特許発明1においては、「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である」と特定されているのに対し、甲13発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点13−3>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲13発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点13−4>
本件特許発明1においては、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり」と特定されているのに対し、甲13発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点13−5>
本件特許発明1においては、「生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」と特定されているのに対し、甲13発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点13−4から検討する。
甲13には、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」に関する記載はなく、他の証拠にも甲13発明において「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲13発明において、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」に着目し、これを「20度以上80度以下」として、相違点13−4に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲13発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第13号証に記載の発明において、通液性を良好にするために、甲第4号証に記載の液透過性向上剤(F)として、親水性のアモルファスシリカを使用することは、当業者がなし得た事項である。」(特許異議申立書第71ページ第18ないし21行)旨主張した上で、「(甲13ア)から、甲第13号証に記載の発明では、HLBが13以上の界面活性剤を使用して、不定形重合体粒子の製造をしている。HLBが13以上の界面活性剤は、疎水性が高いものではない。ここで、ポリアクリル酸ナトリウム塩は、本来、親水性が高いことが技術常識である。このため、甲第13号証に記載の不定形重合体粒子は、接触角が低く、構成要件(1D)及び(1F)を満たす蓋然性が高い。」(特許異議申立書第72ページ第6ないし11行)旨主張する。
そこで、検討するに、本件特許の実施例1ないし4と同じ非晶質シリカを用い、かつ、ポリアクリル酸ナトリウムを構成要素に含む本件特許の比較例1及び3における「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」がそれぞれ「104度」及び「92度」であることからみて、甲13発明に甲4に記載された特定の非晶質シリカを適用できたとしても、その場合、吸水性樹脂粒子の組成や構造は、本件特許の比較例1及び3よりも本件特許発明1から異なると考えられるから、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」が「20度以上80度以下」となる蓋然性が高い、すなわち「構成要件(1D)及び(1F)を満たす蓋然性が高い。」とはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲13発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)甲14を主引用文献とする進歩性について
ア 甲14に記載された事項及び甲14発明
(ア)甲14に記載された事項
甲14には、「不定形重合体粒子の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0035】
【実施例4】アクリル酸72.1gを32.0gの水で希釈し、冷却しつつ30wt%の水酸化ナトリウム水溶液98.9gで中和した後、2.8wt%過硫酸カリウム水溶液10.7gを加えて均一溶液とし、モノマー/開始剤水溶液を作った。別に、還流冷却管、滴下漏斗、攪拌棒、及び窒素導入管を備えた500mlのフラスコにシクロヘキサン283mlを取り、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩〔平均エチレンオキシド付加モル数=3〕の25wt%水溶液1.5gを加えて攪拌(300rpm)・分散させ、フラスコを窒素置換した後、75℃に昇温した。これに前記モノマー/開始剤水溶液を30分間に渡り滴下した。この際、同時に、エポキシ系二官能性架橋剤として、エチレングリコールジグリシジルエーテル)0.058gをシリンジを用いて徐々に滴下した。滴下完了後、75℃で1.5時間、さらに80℃で4時間攪拌・重合させた。生成物を分別し、減圧下に乾燥することにより、88.4gのアクリル酸(ナトリウム)重合体を得た。得られた重合体は、ふるい法による平均粒径が400μmの歪な形状をした顆粒状粒子で、嵩密度は0.41g/mlであった。前記重合体の粒子表面は、数〜20μmの不定形粒子が互いに融着したような構造をしており、表面の凹凸が極めて著しいものであった。得られた重合体について、平衡膨潤吸水量、吸水速度を表す吸水量及び生理食塩水の通液速度を、それぞれ測定した。その結果を表1に示す。」

(イ)甲14発明
甲14に記載された事項を、特に実施例4に関して整理すると、甲14には次の発明(以下、「甲14発明」という。)が記載されていると認める。

「アクリル酸72.1gを32.0gの水で希釈し、冷却しつつ30wt%の水酸化ナトリウム水溶液98.9gで中和した後、2.8wt%過硫酸カリウム水溶液10.7gを加えて均一溶液とし、モノマー/開始剤水溶液を作り、別に、還流冷却管、滴下漏斗、攪拌棒、及び窒素導入管を備えた500mlのフラスコにシクロヘキサン283mlを取り、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩〔平均エチレンオキシド付加モル数=3〕の25wt%水溶液1.5gを加えて攪拌(300rpm)・分散させ、フラスコを窒素置換した後、75℃に昇温し、これに前記モノマー/開始剤水溶液を30分間に渡り滴下し、この際、同時に、エポキシ系二官能性架橋剤として、エチレングリコールジグリシジルエーテル)0.058gをシリンジを用いて徐々に滴下し、滴下完了後、75℃で1.5時間、さらに80℃で4時間攪拌・重合させ、生成物を分別し、減圧下に乾燥することにより、得たアクリル酸(ナトリウム)重合体の顆粒状粒子。」

イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲14発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子を含む吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点14−1>
本件特許発明1においては、「該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲14発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点14−2>
本件特許発明1においては、「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である」と特定されているのに対し、甲14発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点14−3>
本件特許発明1においては、「無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲14発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点14−4>
本件特許発明1においては、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり」と特定されているのに対し、甲14発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点14−5>
本件特許発明1においては、「生理食塩水の保水量が41〜60g/gである」と特定されているのに対し、甲14発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点14−4から検討する。
甲14には、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」に関する記載はなく、他の証拠にも甲14発明において「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲14発明において、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」に着目し、これを「20度以上80度以下」として、相違点14−4に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲14発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第14号証に記載の発明において、通液性を良好にするために、甲第4号証に記載の液透過性向上剤(F)として、親水性のアモルファスシリカを使用することは、当業者がなし得た事項である。」(特許異議申立書第74ページ第13ないし16行)旨主張した上で、「(甲14ア)から、甲第14号証に記載の発明では、陰イオン性界面活性剤を使用して、不定形重合体粒子の製造をしている。陰イオン性の界面活性剤は、疎水性が高いものではない。ここで、ポリアクリル酸ナトリウム塩は、本来、親水性が高いことが技術常識である。このため、甲第14号証に記載の不定形重合体粒子は、接触角が低く、構成要件(1D)及び(1F)を満たす蓋然性が高い。」(特許異議申立書第74ページ末行ないし第75ページ第5行)旨主張する。
そこで、検討するに、本件特許の実施例1ないし4と同じ非晶質シリカを用い、かつ、ポリアクリル酸ナトリウムを構成要素に含む本件特許の比較例1及び3における「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」がそれぞれ「104度」及び「92度」であることからみて、甲14発明に甲4に記載された特定の非晶質シリカを適用できたとしても、その場合、吸水性樹脂粒子の組成や構造は、本件特許の比較例1及び3よりも本件特許発明1から異なると考えられるから、「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」が「20度以上80度以下」となる蓋然性が高い、すなわち「構成要件(1D)及び(1F)を満たす蓋然性が高い。」とはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲14発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものであるとはいえないので、申立理由4によっては取り消すことはできない。

3 申立理由5(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。

(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細の記載は上記第6 3(2)のとおりである。

(4)サポート要件の判断
発明の詳細な説明の【0001】ないし【0006】によると、本件特許発明1ないし3の解決しようとする課題は、「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供すること」(以下、「発明の課題」という。)である。

そして、上記第6 3(2)のとおり、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
・「吸水性樹脂粒子」について、「本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含むことができる。架橋重合体は、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する。」(【0022】)、「エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが更に好ましい。」(【0025】)、「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70〜100モル%であることがより好ましい。」(【0027】)、「吸水性樹脂粒子は、重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。例えば、重合体粒子と無機粒子とを混合することにより、重合体粒子の表面上に無機粒子を配置することができる。この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。吸水性樹脂粒子が重合体粒子の表面上に配置された無機粒子を含む場合、重合体粒子の質量に対する無機粒子の割合は、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよく、5.0質量%以下、又は3.5質量%以下であってもよい。」(【0064】)と記載されている。
・「無加圧DWの30秒値」について、「本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の無加圧DWの30秒値が、1.0mL/g以上である。無加圧DWの30秒値は、液体漏れがより一層抑制可能となる観点から、2.0mL/g以上、3.0mL/g以上、4.0mL/g以上、5.0mL/g以上、6.0mL/g以上、7.0mL/g以上、8.0mL/g以上、9.0mL/g以上、又は9.5mL/g以上であってよく」(【0015】)と記載されている。
・「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」について、「接触角は、液体漏れがより一層抑制可能となる観点から、80度以下、70度以下、60度以下、50度以下、又は40度以下であってよい。また、接触角は、0度以上であっても、0度を超えてもよく、10度以上、又は20度以上であってよい。」(【0017】)と記載されている。
・「生理食塩水の保水量」について、「本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は、例えば、20〜60g/g、25〜55g/g、30〜50g/g、又は32〜42g/gであってよい。」(【0020】)と記載されている。
・「生理食塩水の保水量」、「無加圧DWの30秒値」及び「以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角」が、それぞれ、41g/g、3.5ml/g及び61度の実施例1、41g/g、9.6ml/g及び28度の実施例2、35g/g、7.0ml/g及び33度の実施例3並びに31g/g、2.0ml/g、44度の実施例4において、傾斜漏れ試験を行い、拡散距離が12cm、8cm、9cm、10cmであること、すなわち「液体漏れ」が抑制されていることを確認した記載(【0108】ないし【0111】)がある。

そうすると、当業者は「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子であって、
無加圧DWの30秒値が、1.0mL/g以上であり、
以下のi)及びii)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、
生理食塩水の保水量が35〜60g/gである、吸水性樹脂粒子」は発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1は該吸水性樹脂粒子よりも「無加圧DWの30秒値」及び「生理食塩水の保水量」の数値範囲が狭い範囲として特定されている上に、さらに、「シリカ粒子の割合」が特定されている。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
また、本件特許発明2及び3についても同様であり、本件特許発明2及び3に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記第4 5のとおり主張している。また、令和3年11月8日に提出された意見書においても、同様の主張をしている。
そこで、検討するに、シリカ粒子の添加量の下限値や種類が特定されていないとしても、本件特許発明1ないし3が発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであることは、上記のとおりである。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(5)申立理由5についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由5によっては取り消すことはできない。

第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置されたシリカ粒子とを含み、
(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子であって、
前記シリカ粒子の割合が、前記重合体粒子の質量に対して、5.0質量%以下であり、
無加圧DWの30秒値が、9.0mL/g以上であり、
以下の i)及び i i)の順で行われる試験で測定される接触角が20度以上80度以下であり、
生理食塩水の保水量が41〜60g/gである、吸水性樹脂粒子。
i)25℃において、吸水性樹脂粒子からなる層の表面上に、25質量%食塩水の直径3.0±0.1mmに相当する球状液滴を滴下して、当該吸水性樹脂粒子と前記液滴とを接触させる。
i i)前記液滴が前記表面に接触してから、30秒後の時点の前記液滴の接触角を測定する。
【請求項2】
前記接触角が、20度以上70度以下である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】
前記無加圧DWの30秒値が、9.5mL/g以上である、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-01-27 
出願番号 P2019-055267
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A61F)
P 1 651・ 536- YAA (A61F)
P 1 651・ 537- YAA (A61F)
P 1 651・ 113- YAA (A61F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 細井 龍史
特許庁審判官 植前 充司
加藤 友也
登録日 2020-10-07 
登録番号 6775049
権利者 住友精化株式会社
発明の名称 吸水性樹脂粒子  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 沖田 英樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 福島 直樹  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 沖田 英樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 吉住 和之  
代理人 吉住 和之  
代理人 福島 直樹  

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