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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 A23L 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L 審判 全部申し立て 特39条先願 A23L |
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管理番号 | 1384119 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-05-07 |
確定日 | 2021-12-24 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6782381号発明「脳機能改善用食品組成物、脳機能改善剤、脳由来神経栄養因子増加用食品組成物、ストレスホルモン分泌抑制用食品組成物、脳由来神経栄養因子増加剤及びストレスホルモン分泌抑制剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6782381号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜5〕、6、〔7〜8〕、9、〔10〜11〕、12、〔13〜14〕について訂正することを認める。 特許第6782381号の請求項3ないし5、8、11、14に係る特許を維持する。 特許第6782381号の請求項1〜2、6〜7、9〜10、12〜13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6782381号の請求項1〜14に係る特許についての出願は、令和2年4月20日(優先権主張 令和1年5月16日)の出願であって、令和2年10月21日にその特許権の設定登録がされ、同年11月11日にその特許公報が発行され、その後、令和3年5月7日に嶋崎 孝明(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。 令和3年7月30日付け 取消理由通知 同年9月 1日 意見書・訂正請求書の提出 同年9月13日付け 訂正請求があった旨の通知 なお、令和3年9月13日付けの訂正請求があった旨の通知に対し、特許異議申立人からの応答はなかった。 第2 訂正の適否 令和3年9月1日付け訂正請求(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜14について訂正することを求めるものである。 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3の「前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする請求項2に記載の脳機能改善用食品組成物。」との記載を、「ユーグレナを有効成分として含有し、ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする脳機能改善用食品組成物。」と訂正する。 請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4及び5も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4の「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の脳機能改善用食品組成物。」との記載を、「請求項3に記載の脳機能改善用食品組成物。」と訂正する。 請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5の「請求項1乃至4のいずれか一項に記載の脳機能改善用食品組成物。」との記載を、「請求項3又は4に記載の脳機能改善用食品組成物。」と訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8の「前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする請求項7に記載の脳機能改善剤。」との記載を、「ユーグレナを有効成分として含有し、ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする脳機能改善剤。」と訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11の「前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする請求項10に記載のストレスホルモン分泌抑制用食品組成物。」との記載を、「ユーグレナを有効成分として含有し、ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制用食品組成物。」と訂正する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項14の「前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする請求項13に記載のストレスホルモン分泌抑制剤。」との記載を、「ユーグレナを有効成分として含有し、ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制剤。」と訂正する。 2 本件訂正の適否 (1)一群の請求項について 本件訂正は、訂正前の請求項1〜14についてのものであるところ、訂正前の請求項5は請求項1〜4を、同請求項8は請求項7を、同請求項11は請求項10を、同請求項14は請求項13をそれぞれ、引用するものであり、訂正前の請求項1〜5と、請求項7〜8と、請求項10〜11と、請求項13〜14はそれぞれ特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 そして、本件訂正の請求は、訂正前の全ての請求項である請求項1〜14についてされているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 (2)訂正事項1、2、6、7、9、10、12、13について ア 訂正の目的 訂正事項1、2、6、7、9、10、12、13は、請求項1、2、6、7、9、10、12、13を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 イ 新規事項の追加の有無及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項1、2、6、7、9、10、12、13は、請求項を削除するに過ぎないから、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1、2、6、7、9、10、12、13は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3、8、11、14について ア 訂正の目的 訂正事項3、8、11、14のそれぞれは、訂正前にそれぞれ請求項2、7、10、13を引用する形式であった請求項3、8、11、14のそれぞれについて、それぞれ請求項2、7、10、13を引用しないものとし、独立形式の請求項とする訂正であって、訂正前の内容と同じであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 イ 新規事項の追加の有無及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項3、8、11、14は引用形式の請求項の記載を独立形式の請求項の記載とするに過ぎないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3、8、11、14は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4、5について ア 訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1〜3を引用していたのを、請求項3のみを引用するものとするものであり、訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項1〜4を引用していたのを、請求項3及び4を引用するものとするものであり、いずれも、引用する請求項を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 イ 新規事項の追加の有無及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項4、5は、引用する請求項を減縮するに過ぎないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4、5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1〜5〕、6、〔7〜8〕、9、〔10〜11〕、12、〔13〜14〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔1〜5〕、6、〔7〜8〕、9、〔10〜11〕、12、〔13〜14〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項3〜5、8、11、14に係る発明は、令和3年9月1日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項3〜5、8、11、14に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明3」などと、また、これらを合わせて「本件発明」ということがある。)である。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 ユーグレナを有効成分として含有し、ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、 前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする脳機能改善用食品組成物。 【請求項4】 前記ユーグレナが1日あたり500mg以上で摂取されることを特徴とする請求項3に記載の脳機能改善用食品組成物。 【請求項5】 12週間以上継続して摂取されることを特徴とする請求項3又は4に記載の脳機能改善用食品組成物。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 ユーグレナを有効成分として含有し、ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、 前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする脳機能改善剤。 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 ユーグレナを有効成分として含有し、ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、 前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制用食品組成物。 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 ユーグレナを有効成分として含有し、ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、 前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制剤。」 第4 当審が通知した令和3年7月30日付け取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由の概要 1 特許異議申立人が申し立てた理由の概要 [申立理由1]本件訂正前の請求項1〜14に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本件訂正前の請求項1〜14に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由2]本件訂正前の請求項1〜3、6〜14に係る発明は、その出願日前の下記の甲第1号証に係る出願に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件訂正前の請求項1〜3、6〜14に係る特許は、特許法第39条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由3]本件訂正前の請求項2〜5、7、8、10、11、13及び14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の甲第2〜4号証に係る発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件訂正前の請求項2〜5、7、8、10、11、13及び14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 特許異議申立人が提示した証拠は以下のとおりである。 甲第1号証:特開2020−164511号公報(以下「甲1」ということがある。他の甲各号証についても同様。) 甲第2号証:特開2019−213518号公報 甲第3号証:ラルフ・イエーガー博士、「スポーツ栄養剤におけるホスファチジルセリン(PS)の使用」、FOOD Style 21、2002.9、Vol.6、No.9、pp.115-119 甲第4号証:株式会社ユーグレナ ホームページ、ユーグレナのニュース、ニュースリリース、2018.11.13、「微細藻類ユーグレナ特有の機能性成分・パラミロンの摂取で、運動によるアドレナリンの分泌が抑制されることを確認しました」、[online]、URL:https://www.euglena.jp/news/20181113-2/ 甲第5号証:特願2020−46653号について令和3年4月12日付けで提出された手続補正書 甲第6号証:再表第2017/150327号 甲第7号証:再表第2017/104706号 甲第8号証:特開2017−171595号公報 2 当審が通知した令和3年7月30日付け取消理由の概要 [理由1]本件訂正前の請求項1、4〜6、9、12に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記1の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本件訂正前の請求項1、4〜6、9、12に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [理由2]本件訂正前の請求項1、5、6、9、12に係る発明は、その出願日前の下記5の出願に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件訂正前の請求項1、5、6、9、12に係る特許は、特許法第39条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [理由3]本件訂正前の請求項2、4、5、7、10、13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記引用例4に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件訂正前の請求項2、4、5、7、10、13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 取消理由通知書に記載した出願、引用例は以下のとおりである。 出願1:特願2019−67960号(特開2020−164511号公報(特許異議申立人が提示した甲1)) 出願5:特願2020−46653号(特許異議申立人が提出した甲5に係る出願(出願1を優先権の主張の基礎とした出願)) 引用例4:株式会社ユーグレナ ホームページ、ユーグレナのニュース、ニュースリリース、2018.11.13、「微細藻類ユーグレナ特有の機能性成分・パラミロンの摂取で、運動によるアドレナリンの分泌が抑制されることを確認しました」、[online]、URL:https://www.euglena.jp/news/20181113-2/(特許異議申立人が提示した甲4) 第5 当審の判断 当審は、本件発明3〜5、8、11、14に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由により取り消すべきものではないと判断する。 理由は以下のとおりである。 1 本件発明に関する優先権主張の効果について 本件発明はいずれも「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ」ること、「前記ストレスホルモンは、コルチゾールであること」との事項を特定するものであるといえるところ、本件発明に係る出願の優先権主張の基礎とされた特願2019−92942号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面のいずれにも上記事項についての記載がなく、それらに記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、上記事項を導入することは新たな技術的事項を導入するものといえる。したがって、本件発明については優先権主張の効果が認められない。 2 甲各号証、引用出願の明細書、特許請求の範囲及び図面並びに引用例の記載事項 甲1(特願2020−46653号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。他の出願についても同様。)): 甲1a)「【請求項1】 ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、神経栄養因子発現量増進剤。 ・・・ 【請求項7】 BDNF発現量増進用である、請求項1〜6のいずれかに記載の神経栄養因子発現量増進剤。 【請求項8】 食品組成物、食品添加剤、化粧品、化粧品添加剤、又は医薬である、請求項1〜7のいずれかに記載の神経栄養因子発現量増進剤。 【請求項9】 経口組成物である、請求項1〜8のいずれかに記載の神経栄養因子発現量増進剤。 【請求項10】 神経細胞活性化、神経変性疾患の予防又は改善、気分障害の予防又は改善、気力の向上、記憶力向上、糖及び/又は脂質代謝の改善、食欲抑制、脳卒中による脳傷害の抑制、脳卒中による後遺症の抑制、脳卒中後の運動機能の回復促進、疼痛抑制、視力増強、学習能力向上、注意力改善、抗ストレス、集中力改善、睡眠の質改善、精神安定化、抗肥満、脳機能改善、日常生活における運動機能の維持又は改善、学習機能の精度向上、脳腫瘍の予防又は改善、痴呆症の予防又は改善、脳虚血障害の予防又は改善、脊髄損傷の改善、及びてんかんの予防又は改善からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための、請求項1〜9のいずれかに記載の神経栄養因子発現量増進剤。 【請求項11】 ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、 神経細胞活性化、神経変性疾患の予防又は改善、気分障害の予防又は改善、気力の向上、記憶力向上、糖及び/又は脂質代謝の改善、食欲抑制、脳卒中による脳傷害の抑制、脳卒中による後遺症の抑制、脳卒中後の運動機能の回復促進、疼痛抑制、視力増強、学習能力向上、注意力改善、抗ストレス、集中力改善、睡眠の質改善、精神安定化、抗肥満、脳機能改善、日常生活における運動機能の維持又は改善、学習機能の精度向上、脳腫瘍の予防又は改善、痴呆症の予防又は改善、脳虚血障害の予防又は改善、脊髄損傷の改善、及びてんかんの予防又は改善からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための組成物。」 甲1b)「【0069】 発現量の増進対象領域としては、特に制限されるものではないが、例えば神経細胞、神経組織(例えば脳等)、体液(特に、血液)等が挙げられる。 ・・・ 【0072】 さらには、以下に列挙する用途、目的、対象、: (a)認知機能の維持 (b)記憶力の維持 (c)集中力のサポート (d)学習能力のサポート (e)ストレスケア に利用することもできる。 【0073】 対象となる神経栄養因子は、特に制限されるものではないが、例えばBDNF、NGF、NT-3、NT-4/5、NT-6、CNTF、LIF、GDNF等が挙げられる。これらの中でも、特に好ましくはBDNFが挙げられる。これらは、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。 【0074】 本発明の剤は、各種分野において、例えば食品組成物(健康食品、健康増進剤、栄養補助食品(サプリメントなど)を包含する)、食品添加剤、化粧品、化粧品添加剤、医薬、試薬、飼料などとして用いることができる。本発明の剤は、好ましくは経口組成物である。 ・・・ 【0082】 本発明の剤の適用(例えば、投与、摂取、接種など)量は、神経栄養因子発現量増進作用を発現する有効量であれば特に限定されず、通常は、有効成分の乾燥重量として、一般に一日あたり0.1〜10000 mg/kg体重である。上記適用量は1日1回以上(例えば1〜3回)に分けて適用するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減することもできる。」 甲2(上記1で述べたとおり、本件発明については優先権主張の効果が認められないところ、後記のとおり、甲2は、本件発明について進歩性を判断するにあたっては公知の文献である。): 甲2a)「【請求項1】 ユーグレナ及び/又はパラミロンを含有する、テストステロン分泌促進剤。 ・・・ 【請求項6】 テストステロンレベル向上、テストステロンレベル維持、筋組織成長促進、筋組織再生促進、タンパク質合成促進、筋量低下の予防又は改善、筋量増加促進、筋力低下の予防又は改善、筋力増加促進、サルコペニアの予防又は改善、男性更年期障害の予防又は改善、骨密度低下の予防又は改善、骨密度増加促進、性欲減退の予防又は改善、性欲増加促進、性活動減少の予防又は改善、性活動増加促進、勃起障害の予防又は改善、勃起力増加促進、活力低下の予防又は改善、活力増加促進、抑うつの予防又は改善、集中力低下の予防又は改善、集中力増加促進、記名力低下の予防又は改善、記名力増加促進、睡眠障害の予防又は改善、体脂肪増加の予防又は改善、及び貧血の予防又は改善からなる群より選択される少なくとも1種のために用いられる、請求項1〜5のいずれかに記載のテストステロン分泌促進剤。 ・・・ 【請求項8】 食品組成物である、請求項1〜6のいずれかに記載のテストステロン分泌促進剤。」 甲2b)「【0046】 製造例1 ユーグレナ・グラシリスEOD-1株(独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(NITE-IPOD)の乾燥粉末(神鋼環境ソリューション製、パラミロン含有率70%以上)を下記配合でカプセル錠としたものを試験食とし、対照食としてコーンスターチを配合したカプセル錠を製造した。 【0047】 【表1】 【0048】 試験例1 試験概要は以下のとおりである。 ・試験食摂取期間 : 4週間 ・試験食の摂取量 : ユーグレナ乾燥粉末換算で 500mg/day ・被験者 : 男性30名 なお、被験者の内、23名は、日常的に高強度の運動(運動強度:8METs×3回/週)を行っている運動群であり、7名は、日常的には運動を行っていない一般群(運動強度:3METs×1回/週)である。 【0049】 <試験内容> 試験食摂取開始前の被験者から、短いストローを用いて流涎を採取した。得られた唾液中のテストステロン濃度をキット(Testosterone Salivary Immunoassay Kit (1-2402)、Salimetrics社製)を用いて測定した。該測定の翌日から、被験者に試験食の摂取を開始させ、約4週間摂取させた。摂取終了後、摂取前と同様に唾液中のテストステロン濃度を測定した。 【0050】 <試験結果> 得られた結果について、IBM SPSS Statistics 25を使用して統計解析した。検定は、ウィルコクソンの符号順位和検定(Wilcoxon signed-rank test)で実施した。結果を図1〜3に示す。 【0051】 図1〜3に示されるように、ユーグレナ摂取により、テストステロン値が促進した。このことから、ユーグレナがテストステロン分泌促進作用を有することが示唆された。また、この作用は、ユーグレナが含むパラミロンに起因すると推察された。」 甲3: 甲3a)「1.過度のトレーニング 過度のトレーニングは、競技スポーツにおいて自然に伴っている危険と言える。練習の無理が機能・免疫力の低下、怪我、精神的な抑鬱状態などの結果をもたらすが、時には重症となる場合がある1)。若い女性運動選手は、過度のトレーニングによって骨密度の低下という深刻な結果になる傾向がある。トレーニング過度の初期段階、例えば1回か2回の練習で無理をし過ぎたような場合には、筋肉痛が起こり、休憩時や軽い運動をしている際の心拍数、およびコルチゾール・レベルが増大し、テストステロンのレベルが低下する。・・・ 2.コルチゾールとテストステロン テストステロンは同化作用を促進する性質を持ち、蛋白質合成を剌激して筋肉を増強する。一方コルチゾールは、テストステロンとは逆方向に働き、運動選手が苦労して身に付けた筋肉を分解させてしまう。異化促進ホルモンであるコルチゾールは、筋肉の蛋白質をアミノ酸に分解し、肝臓はそのアミノ酸をブドウ糖に変えて、アミノ酸が筋肉細胞に取り入れられるのを妨げる。コルチゾールもテストステロンもコレステロールから生合成されるステロイドホルモンで、筋肉を増強するテストステロンと筋肉を消耗させるコルチゾールの比率を最適化させることが、運動選手の努力目標の一つである。運動選手にとって、厳しい鍛錬は競争力を身に付けるために不可欠だが、ハード・トレーニングは筋肉内に薬も毒も発生させる。激しい練習の結果コルチゾールとテストステロンが放出されることにより、運動選手はジレンマに直面する。トレーニング・プログラムは、トレーニング過多に陥らないようにしながら運動選手の技能を高めるほどの激しさをも求めなくてはならない。」(115頁左欄1行〜116頁左欄21行) 甲4(引用例4と同じ。): 甲4a)「株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、社長:出雲充)は、名古屋市立大学※1との共同研究にて、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ、以下ユーグレナ)特有の機能性成分であるパラミロン※2を継続摂取することで、強度の高い運動(高強度運動)による血中でのアドレナリン※3の分泌が抑制されることを確認しました。 ※1 名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科奥津先生との共同研究 ※2 ユーグレナ特有の機能性成分であり、グルコースがβ-1,3結合によって直鎖状に重合した結晶構造が特徴の不溶性β-グルカンの一種 ※3 副腎髄質で作られるホルモンの一種で交感神経を活性化させる作用がある ■背景と目的 人間の自律神経には緊張や興奮、ストレスを感じたときに活性化する交感神経と、リラックスしたときに活性化する副交感神経があり、通常は交感神経と副交感神経のバランスは保たれています。しかし、例えば強度の高い運動などを行うと、ホルモンの一種であるアドレナリンの分泌が増加することで交感神経が活性化し、その結果瞬発的に身体的パフォーマンスが向上しますが、同時に身体へのストレスの原因にもなります。 今回は、パラミロンの継続摂取によるアドレナリンの分泌量への影響を確認するために、パラミロンを摂取させたマウスに強度の高い運動を実施させる研究を行いました。 ■研究の内容と結果 マウスを、○1(当審注:○の中に1。以下同様。)通常食を与え、運動をさせない群(安静群)、○2通常食を与え、強度の高い運動※4をさせた群(運動群)、○3パラミロンを入れたエサを与え、強度の高い運動をさせた群(運動+パラミロン群)の3つに分け、2週間の経口摂取と強度の強い運動の実施を行い、それぞれにおいて血中のアドレナリン値を測定しました。 その結果、○3運動+パラミロン群は、○2運動群よりも血中のアドレナリン値が有意に抑制されることを確認しました。 ※4 走行による運動 図 血中アドレナリン値の比較(p<0.05) すなわち、パラミロンは、強度の高い運動による血中でのアドレナリンの分泌を抑制し、運動によって交感神経が優位となる状況を緩和する可能性があることが示唆されました。 今後は、パラミロンの摂取で強度の高い運動によるアドレナリンの分泌が抑制されるメカニズムと、その生理学的な意義の解明を進め、ストレスに対するパラミロンの有用性の立証を目指します。 なお、当社では、微細藻類ユーグレナおよびその含有成分の健康食品、医療分野等での利活用や食材としての付加価値向上を目指し、研究開発を行っていきます。 <微細藻類ユーグレナについて> 微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)は、植物と動物の両方の特徴を持ち、ビタミン類やミネラルなど豊富な種類の栄養素をバランス良く含む藻の一種です。2005年に株式会社ユーグレナが世界で初めて食用屋外大量培養に成功しました。」(1〜2頁) 甲5(甲5に係る出願は出願5と同じ。): 甲5a)「【請求項1】 ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、神経栄養因子発現量増進剤。 ・・・ 【請求項7】 BDNF発現量増進用である、請求項1〜6のいずれかに記載の神経栄養因子発現量増進剤。 【請求項8】 発現量の増進対象領域が神経細胞、神経組織、体液、及び血液からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれかに記載の神経栄養因子発現量増進剤。 【請求項9】 食品組成物、食品添加剤、化粧品、化粧品添加剤、又は医薬である、請求項1〜8のいずれかに記載の神経栄養因子発現量増進剤。 ・・・ 【請求項11】 神経細胞活性化、神経変性疾患の予防又は改善、気分障害の予防又は改善、気力の向上、記憶力向上、糖及び/又は脂質代謝の改善、食欲抑制、脳卒中による脳傷害の抑制、脳卒中による後遺症の抑制、脳卒中後の運動機能の回復促進、疼痛抑制、視力増強、学習能力向上、注意力改善、抗ストレス、集中力改善、睡眠の質改善、精神安定化、抗肥満、脳機能改善、日常生活における運動機能の維持又は改善、学習機能の精度向上、脳腫瘍の予防又は改善、痴呆症の予防又は改善、脳虚血障害の予防又は改善、脊髄損傷の改善、及びてんかんの予防又は改善からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための、請求項1〜10のいずれかに記載の神経栄養因子発現量増進剤。 【請求項12】 ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、 神経細胞活性化、神経変性疾患の予防又は改善、気分障害の予防又は改善、気力の向上、記憶力向上、糖及び/又は脂質代謝の改善、食欲抑制、脳卒中による脳傷害の抑制、脳卒中による後遺症の抑制、脳卒中後の運動機能の回復促進、疼痛抑制、視力増強、学習能力向上、注意力改善、抗ストレス、集中力改善、睡眠の質改善、精神安定化、抗肥満、脳機能改善、日常生活における運動機能の維持又は改善、学習機能の精度向上、脳腫瘍の予防又は改善、痴呆症の予防又は改善、脳虚血障害の予防又は改善、脊髄損傷の改善、及びてんかんの予防又は改善からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための組成物。 【請求項13】 ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、神経突起伸長促進剤。 【請求項14】 ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有し、血中の神経栄養因子発現量増進のために用いられ、且つ認知機能の維持、記憶力向上、脳卒中後の運動機能の回復促進、学習能力向上、注意力改善、及び集中力改善からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための組成物。 【請求項15】 食品組成物である、請求項14に記載の組成物。」 甲6: 甲6a)「【0003】 神経栄養因子(Neurotrophin)とは神経細胞の発生・成長・維持・再生を促進させる物質の総称であり、これまでに様々な栄養因子が同定されている。その中で、脳由来神経栄養因子(Brain-Derived Neurotrophic Factor: BDNF)は神経細胞の生存維持、神経突起の伸張促進、神経伝達物質の合成促進などの作用を示す。なお、これらのBDNFの機能は高親和性受容体(TrkB)を介する(非特許文献1,2)。 BDNFは、アルツハイマー病、うつ病などの精神神経疾患との関連が報告されている。アルツハイマー病の患者の脳では、特に大脳皮質や海馬において、BDNFとTrkBのレベルが健常者よりも低い。健常者では前頭前野においてTrkB mRNAレベルが加齢に伴い減少する。ラットでは加齢に伴う空間記憶の低下と、海馬のBDNF mRNA発現量の減少が相関することが示されている。これらの事実は、加齢及びアルツハイマー病における記憶低下に、BDNF作用の減少の関与が示唆されている(非特許文献3)。 BDNFとうつ病との関連を示すデータも報告されている(非特許文献4)。うつ病患者の脳では、海馬を含むいくつかの領域でBDNF蛋白量の減少が認められる。うつ病のモデル動物では海馬のセロトニンン作動性神経線維の脱落が認められるが、BDNFはセロトニン作動性ニューロンの生存維持に作用する。」 甲7: 甲7a)「【0004】 脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor、以下、BDNFと称する)は、119個のアミノ酸からなるポリベプチドの二量体として存在し、神経栄養因子ファミリーに属するタンパク質の1つであり、その生理作用は、脳・神経系において、神経細胞の生存や神経ネットワーク形成、さらには記憶の固定化などの高次脳機能発現といった多岐にわたる。 また、様々な神経変性疾患や精神疾患においてBDNF発現量の減少が認められており、BDNFの発現を誘導する薬物、あるいはそれを含む組成物は、神経変性疾患や精神疾患により低下した脳機能を改善することが期待されている。 一方、長年の使用実績から安全性が確保されており、日本薬局方にも収載されている生薬のエキスにBDNF遺伝子発現誘導活性を持つものがどの程度存在するかが未知数である。」 甲8: 甲8a)「【0003】 近年、神経細胞の生存維持、成長、シナプスの機能亢進などの機能を有し、認知能や記憶力の維持向上に寄与する因子として、脳由来神経栄養因子(Brain−derived neurotrophic factor:BDNF)が注目されている。BDNFの低下がうつ病などの精神神経疾患の発症に関わることが示唆されており、実際、うつ病患者では脳内のBDNFの濃度の減少が確認されている(非特許文献1)。また、うつ病モデル動物を用いた実験において、脳室へのBDNF投与により行動異常が改善することが報告されている(非特許文献2)。 ・・・ 【0005】 従って、BDNFを増加させることにより、脳機能の向上又は改善作用、認知能又は記憶力向上、抗うつ又は抗不安作用、気力向上作用、精神安定化作用、体重軽減又は抗肥満作用、エネルギー代謝亢進作用、糖代謝向上又は改善作用、脂質代謝向上又は改善作用、勃起機能不全改善作用、卵細胞成熟促進作用、生殖能向上作用などの良好な機能が発揮されることが期待される。」 出願1(特願2019−67960号)の当初明細書等に記載された事項(特開2020−164511号が出願公開された時に出願公開されたものとみなされた。また、以下に示す事項(段落番号は除く。)は全て、出願1を優先権主張の基礎とした甲1に係る出願(特願2020−46653号、甲5に係る出願)の当初明細書等にも記載されている。): 1a)「【請求項1】 ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、神経栄養因子発現量増進剤。 ・・・ 【請求項7】 BDNF発現量増進用である、請求項1〜6のいずれかに記載の神経栄養因子発現量増進剤。 【請求項8】 食品組成物、食品添加剤、化粧品、化粧品添加剤、又は医薬である、請求項1〜7のいずれかに記載の神経栄養因子発現量増進剤。 ・・・ 【請求項10】 神経細胞活性化、神経変性疾患の予防又は改善、気分障害の予防又は改善、気力の向上、記憶力向上、糖及び/又は脂質代謝の改善、食欲抑制、脳卒中による脳傷害の抑制、脳卒中による後遺症の抑制、脳卒中後の運動機能の回復促進、疼痛抑制、視力増強、学習能力向上、注意力改善、抗ストレス、集中力改善、睡眠の質改善、精神安定化、及び抗肥満からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための、請求項1〜9のいずれかに記載の神経栄養因子発現量増進剤。 【請求項11】 ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、 神経細胞活性化、神経変性疾患の予防又は改善、気分障害の予防又は改善、気力の向上、記憶力向上、糖及び/又は脂質代謝の改善、食欲抑制、脳卒中による脳傷害の抑制、脳卒中による後遺症の抑制、脳卒中後の運動機能の回復促進、疼痛抑制、視力増強、学習能力向上、注意力改善、抗ストレス、集中力改善、睡眠の質改善、精神安定化、及び抗肥満からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための組成物。」 1b)「【背景技術】 【0002】 高齢化の進展や社会経済状況等を背景として、近年、アルツハイマー病等の神経変性疾患やうつ病等の気分障害等が増加している。BDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor)等の神経栄養因子は、神経細胞の新生、生存、発達、成長等に関与しており、これらの疾患や状態の改善に関与することが報告されている。例えば、特許文献1では、プラセンタ抽出物が神経栄養因子の発現量を増進すること、及び該抽出物を用いた上記疾患や状態の改善剤について報告されている。 【0003】 ユーグレナは、ミドリムシ属(=ユーグレナ属)に属する微細藻類であり、食品材料として利用されている。また、ユーグレナ抽出物を皮膚に適用することも行われている。また、パラミロンは、ミドリムシが産生するβ−1,3−グルカンであり、創傷治療やアレルギー抑制などに有用であることが報告されている。しかしながら、ユーグレナやβ−1,3−グルカンと神経栄養因子遺伝子との関連については未だしられていない。 ・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、神経栄養因子発現量増進剤を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、神経栄養因子発現量増進剤であれば、上記課題を解決できることを見出した。この知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明が完成した。」 1c)「【0008】 【図1】神経栄養因子発現量測定試験(試験例1)の結果を示す。縦軸は、BDNFの発現量をβ-actinの発現量で除した値の相対値である。横軸中、コントロールはネガティブコントロールとしてPBSを添加した場合を示し、その他は被検物質及びその濃度を示す。」 1d)「【0012】 1.ユーグレナ ユーグレナは、ミドリムシ属(=ユーグレナ属)に属する微細藻類であり、その限りにおいて特に制限されない。・・・ 【0013】 ユーグレナの形態は、ユーグレナの細胞体又はその成分の大半を含むものである限り、特に制限されない。ユーグレナの形態としては、例えばユーグレナの乾燥粉末形態、ユーグレナの懸濁液、ユーグレナエキス等が挙げられ、中でも、好ましくはユーグレナの乾燥粉末形態が挙げられる。 【0014】 ユーグレナの乾燥状態におけるパラミロン含有率は、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。 ・・・ 【0016】 2.β−1,3−グルカン、パラミロン ・・・ 【0018】 β−1,3−グルカンは、化学合成により得られたものであってもよいが、入手容易性等の観点から、各種生物が産生する天然β−1,3−グルカンが好ましい。天然β−1,3−グルカンとしては、例えばパラミロン、カードラン、ラミナラン、カロース、レンチナン、シゾフィラン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはパラミロンが挙げられる。以下、パラミロンについて説明する。 【0019】 パラミロンは、ユーグレナ由来のβ−1,3−グルカンであり、その限りにおいて特に制限されない。 【0020】 パラミロンが由来するユーグレナについては、上記「1.ユーグレナ」における説明と同様である。 ・・・ 【0023】 パラミロンは、ユーグレナの細胞内において、通常、β−1,3−グルカン鎖が形成する3重螺旋構造体が一定の規則性の基に高度に集積してなるパラミロン粒子として存在している。 ・・・ 【0026】 パラミロンの形態は、パラミロンを含むものである限り、特に制限されない。ユーグレナの形態としては、例えばパラミロンの乾燥粉末形態、パラミロンの懸濁液等が挙げられ、中でも、好ましくはパラミロンの乾燥粉末形態が挙げられる。」 1e)「【0056】 5.用途 ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンは、神経栄養因子発現量増進作用を有するので、ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種は、神経栄養因子発現量増進剤の有効成分として利用することができる。 【0057】 発現量の増進対象領域としては、特に制限されるものではないが、例えば神経細胞、神経組織(例えば脳等)、体液(特に、血液)等が挙げられる。 【0058】 また、ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種は、神経栄養因子発現量増進作用に基づく種々の用途、例えば神経細胞活性化(例えば、神経細胞の分化、生存、機能の維持及び再生、樹状突起の伸長、神経伝達物質の合成等の促進)、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ポリグルタミン病(ハンチントン病、脊髄小脳変性症等)、プリオン病(ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病等)等)の予防又は改善、気分障害(例えばうつ病、不安等)の予防又は改善、気力の向上、記憶力向上、糖及び/又は脂質代謝の改善(より具体的には、例えばインスリン感受性、糖尿病の改善)、食欲抑制(より具体的には、例えば過食や肥満の抑制)、脳卒中による脳傷害の抑制、脳卒中による後遺症の抑制、脳卒中後の運動機能の回復促進、疼痛抑制(特に、慢性疼痛の抑制)、視力増強、学習能力向上、注意力改善、抗ストレス、集中力改善、睡眠の質改善、精神安定化、及び抗肥満からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための組成物や本発明の剤等の有効成分として利用することも可能である。好ましくは、これらの用途の内の複数(2つ以上、より好ましくは3つ以上、さらに好ましくは4つ以上、よりさらに好ましくは5つ以上、よりさらに好ましくは6つ又はそれ以上)の用途を含む包括的な用途に利用することができる。 【0059】 さらには、以下に列挙する用途、目的、対象、: (a)認知機能の維持 (b)記憶力の維持 (c)集中力のサポート (d)学習能力のサポート (e)ストレスケア に利用することもできる。 【0060】 対象となる神経栄養因子は、特に制限されるものではないが、例えばBDNF、NGF、NT-3、NT-4/5、NT-6、CNTF、LIF、GDNF等が挙げられる。これらの中でも、特に好ましくはBDNFが挙げられる。これらは、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。 【0061】 本発明の剤は、各種分野において、例えば食品組成物(健康食品、健康増進剤、栄養補助食品(サプリメントなど)を包含する)、食品添加剤、化粧品、化粧品添加剤、医薬、試薬、飼料などとして用いることができる。本発明の剤は、好ましくは経口組成物である。 ・・・ 【0063】 本発明の剤の形態としては、用途が食品組成物の場合は、液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、茶、スープ、豆乳などの飲料、サラダ油、ドレッシング、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、ケーキミックス、乳製品(例えば、粉末状、液状、ゲル状、固形状等)、パン、菓子(例えば、クッキー等)などが挙げられる。 ・・・ 【0069】 本発明の剤の適用(例えば、投与、摂取、接種など)量は、神経栄養因子発現量増進作用を発現する有効量であれば特に限定されず、通常は、有効成分の乾燥重量として、一般に一日あたり0.1〜10000 mg/kg体重である。上記適用量は1日1回以上(例えば1〜3回)に分けて適用するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減することもできる。」 1f)「【実施例】 ・・・ 【0071】 参考例1 ユーグレナとして、ユーグレナ・グラシリスEOD-1株(独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(NITE-IPOD)の乾燥粉末(神鋼環境ソリューション製、パラミロン含有率70%以上)を準備した。 【0072】 参考例2 パラミロン粒子を以下のようにして調製した。 【0073】 準備したユーグレナ・グラシリスEOD-1株(培養後、乾燥前の状態のもの)を、・・・。 ・・・パラミロン粒子を得た。得られたパラミロン粒子を、以下の試験例でパラミロンとして用いた。 【0079】 試験例1.神経栄養因子発現量測定試験 サンプル(パラミロン)の神経栄養因子発現量に対する影響を解析した。具体的には、以下のようにして解析した。 【0080】 試験例1-1.Caco-2細胞の培養 ヒト腸管上皮のモデル細胞として、ヒト結腸ガン由来Caco-2細胞を用いた。・・・ 【0081】 試験例1-2.SH-SY5Y細胞 ヒト神経のモデル細胞として、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を用いた。・・・ 【0082】 試験例1-3.パラミロンサンプルの調製方法 パラミロンはPBSを用いて100 mg/mLに調製し、-20℃で保存したものを適宜解凍して使用した。 【0083】 試験例1-4.Caco-2細胞との共培養(Co-Culture System) セルカルチャーインサート用の24 ウェルプレート(Corning, 353504)上に乗せるインサート(Apical (AP) side) (Cell Culture Insert, Transparent PET Membrane 24 Well 0.4μm pore size, 353095)にCaco-2細胞を2×105 cells/mlで250 μL/insertとなるように播種した。・・・ 【0087】 試験例1-5.神経栄養因子発現量の測定 High Pure RNA Isolation Kit (Roche, Diagnostics Gmbh, Mannheim, Germany) を用いてライセートの回収及びRNA抽出を行った。・・・ 【0091】 試験例1-6.結果 結果を図1に示す。パラミロンを培地に・・・により、神経細胞における神経栄養因子の発現量が増加することが分かった。・・・パラミロンが神経栄養因子発現量増進作用を有することが分かった」 1g)「【図1】 」 3 引用発明 (1)出願1(甲1に優先権主張番号が記載された特願2019−67960号) 上記摘示1a〜1g、特に、摘示1aの請求項1を引用する請求項7を引用する請求項8を引用する請求項10の記載からみて、出願1の当初明細書等には、 「ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、BDNF発現量増進用であり、食品組成物、食品添加剤、化粧品、化粧品添加剤、又は医薬であり、神経細胞活性化、神経変性疾患の予防又は改善、気分障害の予防又は改善、気力の向上、記憶力向上、糖及び/又は脂質代謝の改善、食欲抑制、脳卒中による脳傷害の抑制、脳卒中による後遺症の抑制、脳卒中後の運動機能の回復促進、疼痛抑制、視力増強、学習能力向上、注意力改善、抗ストレス、集中力改善、睡眠の質改善、精神安定化、及び抗肥満からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための、神経栄養因子発現量増進剤。」の発明(以下「出願1発明1」という。)が記載されていると認める。 同様に、請求項1を引用する請求項7を引用する請求項10の記載からみて出願1の当初明細書等には、 「ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、BDNF発現量増進用であり、神経細胞活性化、神経変性疾患の予防又は改善、気分障害の予防又は改善、気力の向上、記憶力向上、糖及び/又は脂質代謝の改善、食欲抑制、脳卒中による脳傷害の抑制、脳卒中による後遺症の抑制、脳卒中後の運動機能の回復促進、疼痛抑制、視力増強、学習能力向上、注意力改善、抗ストレス、集中力改善、睡眠の質改善、精神安定化、及び抗肥満からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための、神経栄養因子発現量増進剤。」の発明(以下「出願1発明2」という。) が記載されていると認める。 (2)甲2(特開2019−213518号公報) 上記摘示甲2a〜甲2b、特に、摘示甲2aの請求項1を引用する請求項6を引用する請求項8の記載からみて、甲2には、 「ユーグレナ及び/又はパラミロンを含有する、テストステロンレベル向上、テストステロンレベル維持、筋組織成長促進、筋組織再生促進、タンパク質合成促進、筋量低下の予防又は改善、筋量増加促進、筋力低下の予防又は改善、筋力増加促進、サルコペニアの予防又は改善、男性更年期障害の予防又は改善、骨密度低下の予防又は改善、骨密度増加促進、性欲減退の予防又は改善、性欲増加促進、性活動減少の予防又は改善、性活動増加促進、勃起障害の予防又は改善、勃起力増加促進、活力低下の予防又は改善、活力増加促進、抑うつの予防又は改善、集中力低下の予防又は改善、集中力増加促進、記名力低下の予防又は改善、記名力増加促進、睡眠障害の予防又は改善、体脂肪増加の予防又は改善、及び貧血の予防又は改善からなる群より選択される少なくとも1種のために用いられる、食品組成物である、テストステロン分泌促進剤。」の発明(以下「甲2発明」)という。)が記載されていると認める。 (3)甲1(特願2020−46653号) 甲1に係る出願について、令和3年4月12日付けで提出された手続補正書(甲5)の記載からみて、甲1に係る出願における請求項14を引用する請求項15に係る発明は以下のとおりである。 「ユーグレナ、パラミロン、パラミロン加工物、及びβ−1,3−グルカンからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有し、血中の神経栄養因子発現量増進のために用いられ、且つ認知機能の維持、記憶力向上、脳卒中後の運動機能の回復促進、学習能力向上、注意力改善、及び集中力改善からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための食品組成物。」(以下「甲1発明」という。) 4 当審が通知した取消理由について (1)理由1について 理由1は、本件訂正前の請求項1、4〜6、9、12についての理由である。 本件訂正により、請求項1、6、9、12は削除された。 訂正前の請求項4は請求項1〜3を、同請求項5は請求項1〜4を引用するところ、理由1は請求項2、3を対象としていないから、請求項4及び請求項5についての理由は、請求項1を引用する請求項4、請求項1を引用する請求項5、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を対象とした理由であるといえるところ、請求項1、2が削除され、請求項3が独立形式の請求項に訂正され、請求項4が請求項3のみを引用し、請求項5が請求項3又は4を引用する訂正がされた結果、請求項4及び5は、拒絶の対象とされていない本件訂正前の請求項3の発明特定事項を含むものに限定された。 したがって、理由1には理由がない。 (2)理由2について 理由2は、本件訂正前の請求項1、5、6、9、12についての理由である。 本件訂正により、請求項1、6、9、12は削除された。 訂正前の請求項5は請求項1〜4を引用するところ、理由2は請求項2〜4を対象としていないから、請求項5についての理由は、請求項1を引用する請求項5を対象とした理由であるといえるところ、請求項1、2が削除され、請求項3が独立形式の請求項に訂正され、請求項4が請求項3のみを引用し、請求項5が請求項3又は4を引用する訂正がされた結果、請求項5は、拒絶の対象とされていない本件訂正前の請求項3の発明特定事項を含むものに限定された。 したがって、理由2には理由がない。 (3)理由3について 理由3は、本件訂正前の請求項2、4、5、7、10、13についての理由である。 本件訂正により、請求項2、7、10、13は削除された。 訂正前の請求項4は請求項1〜3を、同請求項5は請求項1〜4を引用するところ、理由3は請求項1、3を対象としていないから、請求項4及び請求項5についての上記理由は、請求項2を引用する請求項4、請求項2を引用する請求項5、請求項2を引用する請求項4を引用する請求項5を対象とした理由であるといえるところ、請求項1、2が削除され、請求項3が独立形式の請求項に訂正され、請求項4が請求項3のみを引用し、請求項5が請求項3又は4を引用する訂正がされた結果、請求項4及び5は、拒絶の対象とされていない本件訂正前の請求項3の発明特定事項を含むものに限定された。 したがって、理由3には理由がない。 5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)[申立理由1]について ア 前提 甲1は、優先権主張を伴う出願の公開公報であるところ、特許異議申立書の記載からみて、申立理由1に係る「特許出願」(先願)は、特願2019−67960号であると認められるところ、当該特許出願は取消理由通知における出願1と同じである。 したがって、申立理由1は、本件訂正前の請求項1〜14を対象とするところ、そのうち請求項1、4〜6、9、12については、当審が通知した取消理由の理由1と同じである。 また、本件訂正により請求項1、2、6、7、9、10、12、13は削除された。 したがって、以下では、請求項3、8、11、14について検討する。 イ 本件発明3について 本件発明3と出願1発明1とを対比する。 出願1発明1において、含有する成分及び剤の形態についてそれぞれ選択肢が存在する。出願1の当初明細書等には、「ユーグレナ」及び「食品組成物」についての具体例の記載はないが、ユーグレナが含有する成分であるパラミロンについてBDNFの発現量が増加することが具体的に記載されており(摘示1f)、出願1の当初明細書等において、ユーグレナ、パラミロンは同様のものとして記載されており、薬理作用を有する物質を食品に配合することは当該分野において周知の技術的事項であるから、出願1発明1において、「ユーグレナ」及び「食品組成物」を把握することができる。また、摘示1a〜1gの記載からみて、出願1発明1において、「ユーグレナ」は有効成分であるといえる。 したがって、本件発明3と出願1発明1とは、 「ユーグレナを有効成分として含有する食品組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 食品組成物について、本件発明3は、「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする脳機能改善用」と特定しているのに対し、出願1発明1は「BDNF発現量増進用であり」、「神経細胞活性化、神経変性疾患の予防又は改善、気分障害の予防又は改善、気力の向上、記憶力向上、糖及び/又は脂質代謝の改善、食欲抑制、脳卒中による脳傷害の抑制、脳卒中による後遺症の抑制、脳卒中後の運動機能の回復促進、疼痛抑制、視力増強、学習能力向上、注意力改善、抗ストレス、集中力改善、睡眠の質改善、精神安定化、及び抗肥満からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための、神経栄養因子発現量増進剤」である点。 上記相違点1について検討するに、出願1の当初明細書等には、ユーグレナをストレスホルモンの分泌を抑制するために用いること、ストレスホルモンはコルチゾールであることは記載されておらず、記載されているに等しいということもできない。また、当該相違点1が課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)であるということもできない。 したがって、「脳機能改善用」との事項を検討するまでもなく、本件発明3は出願1の当初明細書等に記載された発明と同一であるということはできない。 ウ 本件発明8について 上記イで述べたのと同様にして、本件発明8と出願1発明2とを対比すると、両者は、 「ユーグレナを有効成分として含有する剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 剤について、本件発明8は、「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする脳機能改善剤」と特定しているのに対し、出願1発明2は「BDNF発現量増進用であり、神経細胞活性化、神経変性疾患の予防又は改善、気分障害の予防又は改善、気力の向上、記憶力向上、糖及び/又は脂質代謝の改善、食欲抑制、脳卒中による脳傷害の抑制、脳卒中による後遺症の抑制、脳卒中後の運動機能の回復促進、疼痛抑制、視力増強、学習能力向上、注意力改善、抗ストレス、集中力改善、睡眠の質改善、精神安定化、及び抗肥満からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための、神経栄養因子発現量増進剤」である点。 上記相違点2について検討するに、出願1の当初明細書等には、ユーグレナをストレスホルモンの分泌を抑制するために用いること、ストレスホルモンはコルチゾールであることは記載されておらず、記載されているに等しいということもできない。また、当該相違点2が課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)であるということもできない。 したがって、「脳機能改善」との事項を検討するまでもなく、本件発明8は出願1の当初明細書等に記載された発明と同一であるということはできない。 エ 本件発明11について 上記イで述べたのと同様にして、本件発明11と出願1発明1とを対比すると、両者は、 「ユーグレナを有効成分として含有する食品組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 食品組成物について、本件発明11は、「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制用」と特定しているのに対し、出願1発明1は「BDNF発現量増進用であり」、「神経細胞活性化、神経変性疾患の予防又は改善、気分障害の予防又は改善、気力の向上、記憶力向上、糖及び/又は脂質代謝の改善、食欲抑制、脳卒中による脳傷害の抑制、脳卒中による後遺症の抑制、脳卒中後の運動機能の回復促進、疼痛抑制、視力増強、学習能力向上、注意力改善、抗ストレス、集中力改善、睡眠の質改善、精神安定化、及び抗肥満からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための、神経栄養因子発現量増進剤」である点。 上記相違点3について検討するに、出願1の当初明細書等には、ユーグレナをストレスホルモンの分泌を抑制するために用いること、ストレスホルモンはコルチゾールであることは記載されておらず、記載されているに等しいということもできない。また、当該相違点3が課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)であるということもできない。 したがって、本件発明11は出願1の当初明細書等に記載された発明と同一であるということはできない。 オ 本件発明14について 上記イで述べたのと同様にして、本件発明14と出願1発明2とを対比すると、両者は、 「ユーグレナを有効成分として含有する剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4> 剤について、本件発明14は、「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制」と特定しているのに対し、出願1発明2は「BDNF発現量増進用であり、神経細胞活性化、神経変性疾患の予防又は改善、気分障害の予防又は改善、気力の向上、記憶力向上、糖及び/又は脂質代謝の改善、食欲抑制、脳卒中による脳傷害の抑制、脳卒中による後遺症の抑制、脳卒中後の運動機能の回復促進、疼痛抑制、視力増強、学習能力向上、注意力改善、抗ストレス、集中力改善、睡眠の質改善、精神安定化、及び抗肥満からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための、神経栄養因子発現量増進剤」である点。 上記相違点4について検討するに、出願1の当初明細書等には、ユーグレナをストレスホルモンの分泌を抑制するために用いること、ストレスホルモンはコルチゾールであることは記載されておらず、記載されているに等しいということもできない。また、当該相違点4が課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)であるということもできない。 したがって、本件発明14は出願1の当初明細書等に記載された発明と同一であるということはできない。 カ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、申立理由1について、出願1に係る発明として出願1発明1、出願1発明2とは異なる発明を主張しているが、本件発明が「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールである」と特定している点が相違点となることに変わりはなく、上記判断を左右しない。 キ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由1には理由がない。 (2)申立理由2について ア 前提 申立理由2は甲1に係る出願(特願2020−46653号)を引用出願とするものであるところ、当該出願は取消理由通知における出願5と同じである。 また、申立理由2は、本件訂正前の請求項1〜3、6〜14を対象とするところ、そのうち請求項1、6、9、12については、当審が通知した取消理由の理由2と同じである。 そして、本件訂正により請求項1、2、6、7、9、10、12、13は削除された。 したがって、以下では、請求項3、8、11、14について検討する。 イ 本件発明3について 本件発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、 「ユーグレナを有効成分として含有する食品組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点5> 食品組成物について、本件発明3は「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする脳機能改善用」と特定しているのに対し、甲1発明は「血中の神経栄養因子発現量増進のために用いられ、且つ認知機能の維持、記憶力向上、脳卒中後の運動機能の回復促進、学習能力向上、注意力改善、及び集中力改善からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための」と特定している点。 上記相違点5について検討するに、相違点5に係る「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールである」との本件発明3の食品組成物の用途が、相違点5に係る甲1発明の食品組成物の用途と表現上の差異であって一致しているとか、微差であって実質的に同一であるということはできない。 したがって、相違点5の他の点について検討するまでもなく、本件発明3は甲1に係る出願に係る発明と同一であるとはいえない。 ウ 本件発明8について 本件発明8と甲1発明とを対比すると、両者は、 「ユーグレナを有効成分として含有する物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点6> 物について、本件発明8は「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする脳機能改善剤」と特定しているのに対し、甲1発明は「血中の神経栄養因子発現量増進のために用いられ、且つ認知機能の維持、記憶力向上、脳卒中後の運動機能の回復促進、学習能力向上、注意力改善、及び集中力改善からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための食品組成物」と特定している点。 上記相違点6について検討するに、相違点6に係る「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールである」との本件発明8の脳機能改善剤の用途が、相違点6に係る甲1発明の食品組成物の用途と表現上の差異であって一致しているとか、微差であって実質的に同一であるということはできない。 したがって、相違点6の他の点について検討するまでもなく、本件発明8は甲1に係る出願に係る発明と同一であるとはいえない。 エ 本件発明11について 本件発明11と甲1発明とを対比すると、両者は、 「ユーグレナを有効成分として含有する食品組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点7> 食品組成物について、本件発明11は「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制用」と特定しているのに対し、甲1発明は「血中の神経栄養因子発現量増進のために用いられ、且つ認知機能の維持、記憶力向上、脳卒中後の運動機能の回復促進、学習能力向上、注意力改善、及び集中力改善からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための」と特定している点。 上記相違点7について検討するに、相違点7に係る「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制用」との本件発明11の食品組成物の用途が、相違点7に係る甲1発明の食品組成物の用途と表現上の差異であって一致しているとか、微差であって実質的に同一であるということはできない。 したがって、本件発明11は甲1に係る出願に係る発明と同一であるとはいえない。 オ 本件発明14について 本件発明14と甲1発明とを対比すると、両者は、 「ユーグレナを有効成分として含有する物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点8> 物について、本件発明14は「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制剤」と特定しているのに対し、甲1発明は「血中の神経栄養因子発現量増進のために用いられ、且つ認知機能の維持、記憶力向上、脳卒中後の運動機能の回復促進、学習能力向上、注意力改善、及び集中力改善からなる群より選択される少なくとも1種に用いるための食品組成物」と特定している点。 上記相違点8について検討するに、相違点8に係る「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制剤」との本件発明14の用途が、相違点8に係る甲1発明の用途と表現上の差異であって一致しているとか、微差であって実質的に同一であるということはできない。 したがって、本件発明14は甲1に係る出願に係る発明と同一であるとはいえない。 カ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、申立理由2について、甲1に係る発明として甲1発明とは異なる発明を主張しているが、本件発明が「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールである」と特定している点が相違点となることに変わりはなく、上記判断を左右しない。 キ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由2には理由がない。 (3)申立理由3について ア 前提 上記1で述べたとおり、本件発明に係る出願については優先権主張の効果が認められないから、本件発明について進歩性を判断するにあたっては、甲2〜甲4はいずれも公知である。 また、申立理由3は、本件訂正前の請求項2〜5、7、8、10、11、13及び14を対象とするところ、本件訂正により請求項1、2、6、7、9、10、12、13は削除された。 したがって、以下では、請求項3〜5、8、11、14について検討する。 イ 本件発明3について 甲2の記載(摘示2a〜2b)からみて、甲2発明のユーグレナは有効成分であるといえる。 したがって、本件発明3と甲2発明とは、 「ユーグレナを有効成分として含有する食品組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点9> 食品組成物について、本件発明3は「ユーグレナを有効成分として含有し、ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする脳機能改善用」と特定しているのに対し、甲2発明は「テストステロンレベル向上、テストステロンレベル維持、筋組織成長促進、筋組織再生促進、タンパク質合成促進、筋量低下の予防又は改善、筋量増加促進、筋力低下の予防又は改善、筋力増加促進、サルコペニアの予防又は改善、男性更年期障害の予防又は改善、骨密度低下の予防又は改善、骨密度増加促進、性欲減退の予防又は改善、性欲増加促進、性活動減少の予防又は改善、性活動増加促進、勃起障害の予防又は改善、勃起力増加促進、活力低下の予防又は改善、活力増加促進、抑うつの予防又は改善、集中力低下の予防又は改善、集中力増加促進、記名力低下の予防又は改善、記名力増加促進、睡眠障害の予防又は改善、体脂肪増加の予防又は改善、及び貧血の予防又は改善からなる群より選択される少なくとも1種のために用いられる」、「テストステロン分泌促進剤」と特定している点。 上記相違点について検討するに、甲2には、食品組成物を「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールである」とすることは記載も示唆もされていない。 甲3には、トレーニング過度の初期段階にコルチゾール・レベルが増大し、テストステロンのレベルが低下すること、コルチゾールとテストステロンの合成経路、テストステロンは同化作用を促進する性質を持ち、蛋白質合成を剌激して筋肉を増強する一方、コルチゾールは、テストステロンとは逆方向に働き、運動選手が苦労して身に付けた筋肉を分解させてしまうこと等が記載されているが(摘示甲3a)、かかる記載はトレーニング過度の場合のコルチゾール・レベル及びテストステロン・レベルに関することを述べているにすぎず、テストステロンの分泌を促進すれば、コルチゾールの分泌を抑制することが示されているとはいえない。また、甲4には、微細藻類ユーグレナ特有の機能性成分であるパラミロンは、強度の高い運動による血中でのアドレナリンの分泌を抑制し、運動によって交感神経が優位となる状況を緩和する可能性があることが示唆されたこと等が記載されているが(摘示甲4a)、かかる記載は、ストレスホルモンであるコルチゾールに関する技術的事項を何ら記載・示唆するものではない。 してみると、「脳機能改善用」について検討するまでもなく、甲2〜甲4の記載事項を参酌しても、甲2発明において、相違点9に係る本件発明3の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、その効果について検討するまでもなく、本件発明3は甲2〜甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明4、5について 本件発明4、5は、本件発明3を引用しさらに技術的事項を特定するものであるから、本件発明3と同様に、甲2〜甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件発明8について 上記イで述べたのと同様にして本件発明8と甲2発明とを対比すると、両者は、 「ユーグレナを有効成分として含有する物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点10> 物について、本件発明8は「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする脳機能改善剤」と特定しているのに対し、甲2発明は「テストステロンレベル向上、テストステロンレベル維持、筋組織成長促進、筋組織再生促進、タンパク質合成促進、筋量低下の予防又は改善、筋量増加促進、筋力低下の予防又は改善、筋力増加促進、サルコペニアの予防又は改善、男性更年期障害の予防又は改善、骨密度低下の予防又は改善、骨密度増加促進、性欲減退の予防又は改善、性欲増加促進、性活動減少の予防又は改善、性活動増加促進、勃起障害の予防又は改善、勃起力増加促進、活力低下の予防又は改善、活力増加促進、抑うつの予防又は改善、集中力低下の予防又は改善、集中力増加促進、記名力低下の予防又は改善、記名力増加促進、睡眠障害の予防又は改善、体脂肪増加の予防又は改善、及び貧血の予防又は改善からなる群より選択される少なくとも1種のために用いられる、食品組成物である、テストステロン分泌促進剤」と特定している点。 上記相違点10について検討するに、この相違点は「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールである」との点が含まれている点で、相違点9と共通するものであり、この共通する点については上記イで述べたとおりであり、甲2〜甲4の記載事項を参酌しても、甲2発明において、この点に関する技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるということはできないから、相違点10のその他の点について検討するまでもなく、相違点10に係る本件発明8の技術的事項は当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、その効果について検討するまでもなく、本件発明8は甲2〜甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 オ 本件発明11について 上記イで述べたのと同様にして本件発明11と甲2発明とを対比すると、両者は、 「ユーグレナを有効成分として含有する食品組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点11> 食品組成物について、本件発明11は「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制用」と特定しているのに対し、甲2発明は「テストステロンレベル向上、テストステロンレベル維持、筋組織成長促進、筋組織再生促進、タンパク質合成促進、筋量低下の予防又は改善、筋量増加促進、筋力低下の予防又は改善、筋力増加促進、サルコペニアの予防又は改善、男性更年期障害の予防又は改善、骨密度低下の予防又は改善、骨密度増加促進、性欲減退の予防又は改善、性欲増加促進、性活動減少の予防又は改善、性活動増加促進、勃起障害の予防又は改善、勃起力増加促進、活力低下の予防又は改善、活力増加促進、抑うつの予防又は改善、集中力低下の予防又は改善、集中力増加促進、記名力低下の予防又は改善、記名力増加促進、睡眠障害の予防又は改善、体脂肪増加の予防又は改善、及び貧血の予防又は改善からなる群より選択される少なくとも1種のために用いられる」、「テストステロン分泌促進剤」と特定している点。 上記相違点11について検討するに、この相違点は「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールである」との点が含まれている点で、相違点9と共通するものであり、この共通する点については上記イで述べたとおりであり、甲2〜甲4の記載事項を参酌しても、甲2発明において、この点に関する技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるということはできないから、相違点11のその他の点について検討するまでもなく、相違点11に係る本件発明11の技術的事項は当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、その効果について検討するまでもなく、本件発明11は甲2〜甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 カ 本件発明14について 上記イで述べたのと同様にして本件発明14と甲2発明とを対比すると、両者は、 「ユーグレナを有効成分として含有する物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点12> 物について、本件発明14は「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制剤」と特定しているのに対し、甲2発明は「テストステロンレベル向上、テストステロンレベル維持、筋組織成長促進、筋組織再生促進、タンパク質合成促進、筋量低下の予防又は改善、筋量増加促進、筋力低下の予防又は改善、筋力増加促進、サルコペニアの予防又は改善、男性更年期障害の予防又は改善、骨密度低下の予防又は改善、骨密度増加促進、性欲減退の予防又は改善、性欲増加促進、性活動減少の予防又は改善、性活動増加促進、勃起障害の予防又は改善、勃起力増加促進、活力低下の予防又は改善、活力増加促進、抑うつの予防又は改善、集中力低下の予防又は改善、集中力増加促進、記名力低下の予防又は改善、記名力増加促進、睡眠障害の予防又は改善、体脂肪増加の予防又は改善、及び貧血の予防又は改善からなる群より選択される少なくとも1種のために用いられる、食品組成物である、テストステロン分泌促進剤」と特定している点。 上記相違点12について検討するに、この相違点は「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールである」との点が含まれている点で、相違点9と共通するものであり、この共通する点については上記イで述べたとおりであり、甲2〜甲4の記載事項を参酌しても、甲2発明において、この点に関する技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるということはできないから、相違点12のその他の点について検討するまでもなく、相違点12に係る本件発明14の技術的事項は当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、その効果について検討するまでもなく、本件発明14は甲2〜甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 キ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、申立理由3について、甲2に記載された発明として甲2発明とは異なる発明を主張しているが、本件発明が「ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、前記ストレスホルモンは、コルチゾールである」と特定している点が相違点となることに変わりはなく、上記判断を左右しない。 ク まとめ 以上のとおりであるから、申立理由3には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求項3〜5、8、11、14に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項3〜5、8、11、14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 特許異議申立の対象であった請求項1〜2、6〜7、9〜10、12〜13は、訂正請求により削除されたので、請求項1〜2、6〜7、9〜10、12〜13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 ユーグレナを有効成分として含有し、ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、 前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする脳機能改善用食品組成物。 【請求項4】 前記ユーグレナが1日あたり500mg以上で摂取されることを特徴とする請求項3に記載の脳機能改善用食品組成物。 【請求項5】 12週間以上継続して摂取されることを特徴とする請求項3又は4に記載の脳機能改善用食品組成物。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 ユーグレナを有効成分として含有し、ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、 前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とする脳機能改善剤。 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 ユーグレナを有効成分として含有し、ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、 前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制用食品組成物。 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 ユーグレナを有効成分として含有し、ストレスホルモンの分泌を抑制するために用いられ、 前記ストレスホルモンは、コルチゾールであることを特徴とするストレスホルモン分泌抑制剤。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-12-13 |
出願番号 | P2020-074963 |
審決分類 |
P
1
651・
161-
YAA
(A23L)
P 1 651・ 4- YAA (A23L) P 1 651・ 121- YAA (A23L) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
瀬良 聡機 |
特許庁審判官 |
冨永 保 関 美祝 |
登録日 | 2020-10-21 |
登録番号 | 6782381 |
権利者 | 株式会社ユーグレナ |
発明の名称 | 脳機能改善用食品組成物、脳機能改善剤、脳由来神経栄養因子増加用食品組成物、ストレスホルモン分泌抑制用食品組成物、脳由来神経栄養因子増加剤及びストレスホルモン分泌抑制剤 |
代理人 | 秋山 敦 |
代理人 | 角渕 由英 |
代理人 | 福士 智恵子 |
代理人 | 秋山 敦 |
代理人 | 角渕 由英 |
代理人 | 福士 智恵子 |