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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06Q
管理番号 1384134
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-07 
確定日 2022-02-15 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6797388号発明「オンライン学習システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6797388号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕、〔8、9〕について」訂正することを認める。 特許第6797388号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第特許第6797388号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、令和2年7月31日に出願したものであって、同年11月20日に特許権の設定登録がされ、同年12月9日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和3年6月7日に特許異議申立人渡辺陽子(以下「申立人」という。)により請求項1ないし9に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、当審は、同年8月31日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年10月29日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)を行い、本件訂正請求に対して、申立人は、同年12月7日に意見書を提出した。

第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし9について訂正することを求める、というものであるところ、本件訂正は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「前記認証処理部は、前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて・・・行う」を、「前記認証処理部は、前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像における認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって・・・行う」と訂正する。請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「顔認識を行う」を、「顔認証を行う」と訂正する。請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8の「前記認証処理における顔認証は、前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて行われる」を、「前記認証処理における顔認証は、前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像における認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって行われる」と訂正する。請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の内容
訂正事項1は,複数の訂正事項を含んでいるため,以下に示すとおり分けて検討する。
(ア)訂正事項1−1
訂正前の請求項1の「前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において」を「前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像における」に訂正する。請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7も同様に訂正する。

(イ)訂正事項1−2
訂正前の請求項1の「認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて・・・行う」を「認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって・・・行う」に訂正する。請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7も同様に訂正する。

イ 訂正の目的
(ア)訂正事項1−1
訂正事項1−1のうちの請求項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「前記講義動画の視聴を妨げずに」との記載が「撮影された」を修飾するのか「行う」を修飾するのか明確ではなく、また、「前記講義動画の視聴を妨げずに」との記載がその否定的表現によって除かれるものが「前期講義動画の視聴を妨げ」るという作用的な表現によって記載されているから発明特定事項が技術的に十分特定されておらず明確でないという特許法第36条第6項第2号違反の取消理由通知に対して、訂正前の「前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において」との記載を、訂正により「前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像における」とすることによって、「前期講義動画の視聴を妨げずに」との不明確な記載を削除するとともに記載を整えて明確化するものであり、特許法第120条の5第2項第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項1−1のうちの請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7に係る訂正も同様である。

(イ)訂正事項1−2
訂正事項1−2のうちの請求項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「撮影された画像において認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて顔認識(当審注:「顔認識」は「顔認証」の誤記と認められる。後記「(2)訂正事項2について」の欄参照。)を行う」を、訂正により「認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって顔認証を行う」とすることによって、「顔認証を行う」ことに係る事項を付加することによりその内容を限定するものであり、特許法第120条の5第2項第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1−2のうちの請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7に係る訂正も同様である。

(ウ)まとめ
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするとともに、特許法第120条の5第2項第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
(ア)訂正事項1−1
訂正前の「前期講義動画の視聴を妨げずに」との記載が、「撮影された」を修飾するのか、「行う」を修飾するのか明確でなく、また、「前期講義動画の視聴を妨げずに」との否定的表現によって除かれるものが「前期講義動画の視聴を妨げ」るという作用的な表現によって記載され、発明特定事項が技術的に十分に特定されていないことが明らかであり明確でなく、したがって、「前期講義動画の視聴を妨げずに」との用語の技術的意義が明確でないから、「前期講義動画の視聴を妨げずに」の意義を解釈するために、本件特許に係る願書に添付した明細書の記載を参酌する。
本件特許に係る願書に添付した明細書には、訂正前の請求項1の「前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において撮影された画像において認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて顔認識(当審注:「顔認識」は「顔認証」の誤記と認められる。後記「(2)訂正事項2について」の欄参照。)を行う」ことについて、以下の記載がある(下線は当審で付した。)。

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術によれば、生体認証情報を用いて、受講中のランダムなタイミングで本人認証を行うことにより、本人以外による成りすまし受講を防止できる。しかし、特許文献1に記載されたシステムでは、受講者は、受講中に数回、生体認証操作を行う必要があり、受講の妨げになる可能性がある。また、本人認証を要求されたタイミングにおいてのみ、本人が生体認証操作を行えば良いので、講義を最初から最後までしっかりと聴講したか否かは必ずしも保証されない。」

「【0019】
図3は、受講者端末301の構成を示すブロック図である。図3に示すように、受講者端末301は、動画再生部31、操作部32、カメラ33、ディスプレイ34、通信部36を備えている。動画再生部31は、Webブラウザにより実現される。操作部32は、例えばディスプレイ34に一体化されたタッチパネル等で実現され、受講者からの入力を受け付ける。カメラ33は、受講者端末301に内蔵されているカメラであり、いわゆるインカメラとして、受講者がディスプレイ34を見ている状態で、当該受講者の画像を撮影可能に構成されている。通信部36は、オンライン学習システム100および教習所サーバ201との通信を制御する。」

「【0032】
図9は、受講者端末301に配信された講義動画の表示画面の一例である。なお、図9は、受講者端末301が、パーソナルコンピュータやタブレット等のように、比較的大きいディスプレイを有する場合の表示画面例である。スマートフォン等のようにディスプレイが小さい場合の講義動画の表示画面例については、後で説明する。図9に示すように、講義動画の表示画面には、配信中の講義の項目番号およびタイトルの表示欄54dと、受講ステータス欄54eが表示される。図9の例では、受講者は項目番号1−1の「運転者の心得」を初めて受講しているため、受講ステータス欄54eには「未受講」が表示されている。講義動画は、講義表示ウィンドウ54aに表示される。図9の例では、講義表示ウィンドウ54aの左上に、手話通訳動画が表示されている。また、講義表示ウィンドウ54aの下部には、日本語字幕が表示されている。手話通訳動画および日本語字幕を講義動画と同時に表示することにより、聴覚障害のある受講者も講義内容を十分に理解することができる。なお、字幕の言語を、日本語以外の言語から選択可能としても良い。講義表示ウィンドウ54aの下には、再生の一時停止や再開等を制御すると共に、現在の再生ポイントを表示する操作ウィンドウ54bが表示されている。さらにその下には、講座情報54cとして、講座で使用されている教本のタイトル、参照すべきページ数、講座の概要情報などが表示される。
【0033】
また、講義表示ウィンドウ54aの右横に、認証用ウィンドウ54fが表示されている。認証用ウィンドウ54fには、受講者端末301に内蔵されたカメラ33によって撮影された画像が、動画またはコマ送りの静止画として表示される。認証用ウィンドウ54fは、カメラ33によって撮影される範囲を示す。認証用ウィンドウ54fには、認識枠54gが表示されている。認識枠54gは、カメラ33で撮影されて認証用ウィンドウ54fに表示されている画像のうち、オンライン学習システム100に登録されている顔画像とのマッチング対象とされる領域を表している。したがって、受講者は、認識枠54g内に自分の顔が入るようにして、講義動画を視聴する必要がある。」

「【0036】
受講者が講義に集中して聴講している場合は、認識枠54gに顔が入るように姿勢を維持することは比較的容易である。また、認識枠54gは、講義表示ウィンドウ54aのすぐ横に表示されているので、受講者にとっては、講義表示ウィンドウ54aを見つつ、認識枠54g内に顔が入っているか否かを確認することは、困難ではない。したがって、オンライン学習システム100によれば、配信動画を聴講している受講者が、本人か否かを容易にかつ確実に判断することができる。これにより、学科教習をオンライン講義で受講させたとしても、教習所の教室で受講している場合と同等の学習環境を提供でき、学習成果を保証することができる。また、講義動画の再生中に、受講者端末301に設けられたカメラ33で撮影した画像に基づき、バックグラウンドで顔認証を行うことにより、受講者が受講中に自発的かつ意図的に生体認証を行う必要がある従来のシステムと比較して、顔認証が講義動画の視聴の妨げにならず、講義に対する受講者の集中力が削がれることがない。」

つまり、本件特許に係る願書に添付した明細書には、講義動画の再生中に、受講者が講義動画が表示されるディスプレイを見ている状態で、認識枠内に自分の顔が入るようにして、講義動画を視聴する必要があるものの、受講者端末に設けられたカメラで撮影した受講者の画像に基づき、バックグラウンドで顔認証を行うことにより、受講者が受講中に数回、生体認証操作を行う必要がある従来のシステムと比較して、顔認証が講義動画の視聴の妨げにならず、講義に対する受講者の集中力が削がれることがないことが記載されている(上記段落【0004】、【0019】、【0032】、【0033】及び【0036】の下線部参照。)。すなわち、受講者端末により講義動画の再生中に画像を撮影される際には、認識枠内に自分の顔が入るようにして、講義動画を視聴する必要があるものの、受講者の操作を介さずになされるものであることが記載されているのみである。
そうすると、訂正前の請求項1の「前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において」のうちの「受講者の操作を介さずかつ前期講義動画の視聴を妨げずに」とは、本件特許の願書に添付した明細書の記載から「受講者の操作を介さず」との特定事項による作用効果である「顔認証が講義動画の視聴の妨げになら」ないことを併せて記載したものであって、「前期講義動画の視聴を妨げずに」との作用効果は、「受講者の操作を介さず」との特定事項から当然想起されるものであって、何らの技術的事項を特定するものではないから、訂正により請求項1から「前期講義動画の視聴を妨げずに撮影された」という要件が削除されても、訂正前後の請求項1に係る発明の技術的範囲は変わるものではない。
したがって、訂正事項1−1のうちの請求項1に係る訂正は、「受講者の操作を介さずかつ前期講義動画の視聴を妨げずに」から、「受講者の操作を介さず」になされること以外に何らの技術的事項を特定するものではない「前期講義動画の視聴を妨げずに」を削除するとともに記載を整えるものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、訂正事項1−1のうちの請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7に係る訂正も同様である。

申立人は、令和3年12月7日に提出した意見書において、
“訂正前の請求項1の「視聴を妨げずに」は「撮影された」を修飾している。したがって、訂正前の請求項1の「受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像」は、分かり易く表現すれば、「受講者の操作を介さずに撮影された画像であって、かつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像」ということになる。
よって、「受講者の操作を介さずに撮影された画像であるが、前記講義動画の視聴を妨げて撮影された画像(以下、「画像A」という。)」に基づいて顔認識を行うことは、訂正前は、請求項1に係る発明の技術的範囲に属さなかった。
しかし・・・訂正により請求項1から「前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された」という要件が削除された。よって、画像Aに基づいて顔認識を行うことは、訂正後の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更している不当な訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の要件(拡張・変更禁止要件)に適合していない。”
と主張する。

しかしながら、上述したように、訂正前の請求項1の「受講者の操作を介さずかつ前期講義動画の視聴を妨げずに」とは、本件特許の願書に添付した明細書の記載から「受講者の操作を介さず」との特定事項による作用効果である「顔認証が講義動画の視聴の妨げになら」ないことを併せて記載したものであって、「前期講義動画の視聴を妨げずに」との作用効果は、「受講者の操作を介さず」との特定事項から当然想起されるものであって、何らの技術的事項を特定するものではないから、訂正により請求項1から「前期講義動画の視聴を妨げずに撮影された」という要件が削除されても、訂正前後の請求項1に係る発明の技術的範囲は変わるものではない。よって、申立人の上記主張は採用できない。

(イ)訂正事項1−2
訂正事項1−2のうちの請求項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「撮影された画像において認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて顔認識(当審注:「顔認識」は「顔認証」の誤記と認められる。後記「(2)訂正事項2について」の欄参照。)を行う」を、訂正により「認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって顔認証を行う」とすることによって、「顔認証を行う」ことに係る事項を付加することによりその内容を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、訂正事項1−2のうちの請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7に係る訂正も同様である。

(ウ)まとめ
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

エ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)訂正事項1−1
訂正事項1−1のうちの請求項1に係る訂正は、上記イ(ア)で述べたように、本件特許に係る願書に添付した明細書の段落【0004】、【0019】、【0032】、【0033】及び【0036】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項1−1のうちの請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7に係る訂正も同様である。

(イ)訂正事項1−2
願書に添付した明細書の段落【0034】には、「認証処理部14は、認識枠54g内の画像を一定の時間間隔でサンプリング(キャプチャ)し、受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとマッチングを行う。」と記載されている。訂正事項1−2のうちの請求項1にかかる訂正は、この記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項1−2のうちの請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7に係る訂正も同様である。

(ウ)まとめ
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第5項の規定に適合する。

オ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の請求項1ないし9について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1ないし7に係る訂正事項1−2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1には、「受講者端末により撮影された画像に基づいて、前記講義動画の再生中に受講者の顔認証を行う認証処理部」および「前記認証処理部において、・・・受講者の顔認証の失敗が・・・」との記載があり、「認証処理部」は「顔認証」を行うものとされていることから、訂正前の請求項1の「前記認証処理部は・・・撮影された画像において認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて顔認識を行う」との記載のうちの「顔認識」が「顔認証」の誤記であることは明らかである。
また、願書に添付した明細書の段落【0014】には「受講者がWeb学科教習をオンラインで受講している間、バックグラウンドにて顔認証を一定期間またはランダムなタイミングで行うことで、本人確認及び受講管理を行うことができる。」との記載があるとともに、段落【0036】には「講義動画の再生中に、受講者端末301に設けられたカメラ33で撮影した画像に基づき、バックグラウンドで顔認証を行う・・・」との記載があり、これらの記載からも、訂正前の請求項1の「前記認証処理部は、前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて顔認識を行う」との記載のうちの「顔認識」が「顔認証」の誤記であることは明らかである。
したがって、訂正事項2のうちの請求項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「前記認証処理部は、前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて顔認識を行う」との記載のうちの「顔認識」が「顔認証」の誤記であったため、これを「顔認証」に改めるものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定された誤記の訂正を目的とするものである。
また、訂正事項2のうちの請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7に係る訂正も同様である。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2のうち請求項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の他の記載及び願書に添付した明細書の段落【0014】及び【0036】の記載から当業者その他一般第三者にとって「顔認識」が「顔認証」の誤記であると明白に理解できる誤記を正すものであり、訂正前後で同一の意味であることが客観的に認められるといえるし、また、「顔認識」を「顔認証」に訂正することは「顔認識」に「顔」の「証明」を行うことを付加して限定するものともいえることから、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、訂正事項2のうちの請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7に係る訂正も同様である。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2のうち請求項1に係る訂正は、上記アで述べたように、訂正前の請求項1及び願書に添付した明細書の段落【0014】及び【0036】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項2のうちの請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7に係る訂正も同様である。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の請求項1ないし9について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1ないし7に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の内容
訂正事項3は,複数の訂正事項を含んでいるため,以下に示すとおり分けて検討する。
(ア)訂正事項3−1
訂正前の請求項8の「前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において」を「前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像における」に訂正する。請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。

(イ)訂正事項3−2
訂正前の請求項8の「前記認証処理における顔認証は」「認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて行われる」を「前記認証処理における顔認証は」「認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって行われる」に訂正する。請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。

イ 訂正の目的
(ア)訂正事項3−1
訂正事項3−1のうちの請求項8に係る訂正は、訂正前の請求項8の「前記講義動画の視聴を妨げずに」との記載が「撮影された」を修飾するのか「行う」を修飾するのか明確ではなく、また、「前記講義動画の視聴を妨げずに」との記載がその否定的表現によって除かれるものが「前期講義動画の視聴を妨げ」るという作用的な表現によって記載されているから発明特定事項が技術的に十分特定されておらず明確でないという特許法第36条第6項第2号違反の取消理由通知に対して、訂正前の「前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において」との記載を、訂正により「前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像における」とすることによって、「前期講義動画の視聴を妨げずに」との記載を削除するとともに記載を整えて明確化するものであり、特許法第120条の5第2項第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3−1のうちの請求項8の記載を引用する請求項9に係る訂正も同様である。

(イ)訂正事項3−2
訂正事項3−2のうちの請求項8に係る訂正は、訂正前の請求項8の「前記認証処理における顔認証は」「認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて行われる」を、訂正により「前記認証処理における顔認証は」「認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって行われる」とすることによって、「顔認証」に係る事項を付加することによりその内容を限定するものであり、特許法第120条の5第2項第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3−2のうちの請求項8の記載を引用する請求項9に係る訂正も同様である。

(ウ)まとめ
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項第3号に規定された明瞭でない記載の釈明を目的とするとともに、特許法第120条の5第2項第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
(ア)訂正事項3−1
訂正前の「前期講義動画の視聴を妨げずに」との記載が、「撮影された」を修飾するのか、「行う」を修飾するのか明確でなく、また、「前期講義動画の視聴を妨げずに」との否定的表現によって除かれるものが「前期講義動画の視聴を妨げ」るという作用的な表現によって記載され、発明特定事項が技術的に十分に特定されていないことが明らかであり明確でなく、したがって、「前期講義動画の視聴を妨げずに」との用語の技術的意義が明確でないから、「前期講義動画の視聴を妨げずに」の意義を解釈するために、本件特許に係る願書に添付した明細書の記載を参酌する。
本件特許に係る願書に添付した明細書には、訂正前の請求項8の「前記認証処理における顔認証は、前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて行われる」ことについて、以下の記載がある(下線は当審で付した。)。

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術によれば、生体認証情報を用いて、受講中のランダムなタイミングで本人認証を行うことにより、本人以外による成りすまし受講を防止できる。しかし、特許文献1に記載されたシステムでは、受講者は、受講中に数回、生体認証操作を行う必要があり、受講の妨げになる可能性がある。また、本人認証を要求されたタイミングにおいてのみ、本人が生体認証操作を行えば良いので、講義を最初から最後までしっかりと聴講したか否かは必ずしも保証されない。」

「【0019】
図3は、受講者端末301の構成を示すブロック図である。図3に示すように、受講者端末301は、動画再生部31、操作部32、カメラ33、ディスプレイ34、通信部36を備えている。動画再生部31は、Webブラウザにより実現される。操作部32は、例えばディスプレイ34に一体化されたタッチパネル等で実現され、受講者からの入力を受け付ける。カメラ33は、受講者端末301に内蔵されているカメラであり、いわゆるインカメラとして、受講者がディスプレイ34を見ている状態で、当該受講者の画像を撮影可能に構成されている。通信部36は、オンライン学習システム100および教習所サーバ201との通信を制御する。」

「【0032】
図9は、受講者端末301に配信された講義動画の表示画面の一例である。なお、図9は、受講者端末301が、パーソナルコンピュータやタブレット等のように、比較的大きいディスプレイを有する場合の表示画面例である。スマートフォン等のようにディスプレイが小さい場合の講義動画の表示画面例については、後で説明する。図9に示すように、講義動画の表示画面には、配信中の講義の項目番号およびタイトルの表示欄54dと、受講ステータス欄54eが表示される。図9の例では、受講者は項目番号1−1の「運転者の心得」を初めて受講しているため、受講ステータス欄54eには「未受講」が表示されている。講義動画は、講義表示ウィンドウ54aに表示される。図9の例では、講義表示ウィンドウ54aの左上に、手話通訳動画が表示されている。また、講義表示ウィンドウ54aの下部には、日本語字幕が表示されている。手話通訳動画および日本語字幕を講義動画と同時に表示することにより、聴覚障害のある受講者も講義内容を十分に理解することができる。なお、字幕の言語を、日本語以外の言語から選択可能としても良い。講義表示ウィンドウ54aの下には、再生の一時停止や再開等を制御すると共に、現在の再生ポイントを表示する操作ウィンドウ54bが表示されている。さらにその下には、講座情報54cとして、講座で使用されている教本のタイトル、参照すべきページ数、講座の概要情報などが表示される。
【0033】
また、講義表示ウィンドウ54aの右横に、認証用ウィンドウ54fが表示されている。認証用ウィンドウ54fには、受講者端末301に内蔵されたカメラ33によって撮影された画像が、動画またはコマ送りの静止画として表示される。認証用ウィンドウ54fは、カメラ33によって撮影される範囲を示す。認証用ウィンドウ54fには、認識枠54gが表示されている。認識枠54gは、カメラ33で撮影されて認証用ウィンドウ54fに表示されている画像のうち、オンライン学習システム100に登録されている顔画像とのマッチング対象とされる領域を表している。したがって、受講者は、認識枠54g内に自分の顔が入るようにして、講義動画を視聴する必要がある。」

「【0036】
受講者が講義に集中して聴講している場合は、認識枠54gに顔が入るように姿勢を維持することは比較的容易である。また、認識枠54gは、講義表示ウィンドウ54aのすぐ横に表示されているので、受講者にとっては、講義表示ウィンドウ54aを見つつ、認識枠54g内に顔が入っているか否かを確認することは、困難ではない。したがって、オンライン学習システム100によれば、配信動画を聴講している受講者が、本人か否かを容易にかつ確実に判断することができる。これにより、学科教習をオンライン講義で受講させたとしても、教習所の教室で受講している場合と同等の学習環境を提供でき、学習成果を保証することができる。また、講義動画の再生中に、受講者端末301に設けられたカメラ33で撮影した画像に基づき、バックグラウンドで顔認証を行うことにより、受講者が受講中に自発的かつ意図的に生体認証を行う必要がある従来のシステムと比較して、顔認証が講義動画の視聴の妨げにならず、講義に対する受講者の集中力が削がれることがない。」

つまり、本件特許に係る願書に添付した明細書には、講義動画の再生中に、受講者が講義動画が表示されるディスプレイを見ている状態で、認識枠内に自分の顔が入るようにして、講義動画を視聴する必要があるものの、受講者端末に設けられたカメラで撮影した受講者の画像に基づき、バックグラウンドで顔認証を行うことにより、受講者が受講中に数回、生体認証操作を行う必要がある従来のシステムと比較して、顔認証が講義動画の視聴の妨げにならず、講義に対する受講者の集中力が削がれることがないことが記載されている(上記段落【0004】、【0019】、【0032】、【0033】及び【0036】の下線部参照。)。すなわち、受講者端末により講義動画の再生中に画像を撮影される際には、認識枠内に自分の顔が入るようにして、講義動画を視聴する必要があるものの、受講者の操作を介さずになされるものであることが記載されているのみである。
そうすると、訂正前の請求項8の「前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において」のうちの「受講者の操作を介さずかつ前期講義動画の視聴を妨げずに」とは、本件特許の願書に添付した明細書の記載から「受講者の操作を介さず」との特定事項による作用効果である「顔認証が講義動画の視聴の妨げになら」ないことを併せて記載したものであって、「前期講義動画の視聴を妨げずに」との作用効果は、「受講者の操作を介さず」との特定事項から当然想起されるものであって、何らの技術的事項を特定するものではないから、訂正により請求項8から「前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された」という要件が削除されても、訂正の前後の請求項8に係る発明の技術的範囲は変わるものではない。
したがって、訂正事項3−1のうちの請求項8に係る訂正は、「受講者の操作を介さずかつ前期講義動画の視聴を妨げずに」から、「受講者の操作を介さず」になされること以外に何らの技術的事項を特定するものではない「前期講義動画の視聴を妨げずに」を削除するとともに記載を整えるものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、訂正事項3−1のうちの請求項8の記載を引用する請求項9に係る訂正も同様である。

申立人は、令和3年12月7日に提出した意見書において、
“「受講者の操作を介さずに撮影された画像であるが、前記講義動画の視聴を妨げて撮影された画像(画像A)に基づいて顔認識を行うことは、訂正前は、請求項8に係る発明の技術的範囲に属さなかった。
しかし・・・訂正により請求項8から「前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された」という要件が削除された。よって、画像Aに基づいて顔認識を行うことは、訂正後の請求項8に係る発明の技術的範囲に属する。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更している不当な訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の要件(拡張・変更禁止要件)に適合していない。”
と主張する。

しかしながら、上述したように、訂正前の請求項8の「受講者の操作を介さずかつ前期講義動画の視聴を妨げずに」とは、本件特許の願書に添付した明細書の記載から「受講者の操作を介さず」になされることを意味し、「前期講義動画の視聴を妨げずに」との記載によって、「受講者の操作を介さず」になされること以外に何らの技術的事項を特定するものではないから、訂正により請求項8から「前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された」という要件が削除されても、訂正前後の請求項8に係る発明の技術的範囲は変わるものではない。よって、申立人の上記主張は採用できない。

(イ)訂正事項3−2
訂正事項3−2のうちの請求項8に係る訂正は、訂正前の請求項8の「前記認証処理における顔認証は」「認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて行われる」を、訂正により「前記認証処理における顔認証は」「認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって行われる」とすることによって、「顔認証」に係る事項を付加することによりその内容を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、訂正事項3−2のうちの請求項8の記載を引用する請求項9に係る訂正も同様である。

(ウ)まとめ
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

エ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)訂正事項3−1
訂正事項3−1のうちの請求項8に係る訂正は、上記イ(ア)で述べたように、本件特許に係る願書に添付した明細書の段落【0004】、【0019】、【0032】、【0033】及び【0036】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項3−1のうちの請求項8の記載を引用する請求項2ないし7に係る訂正も同様である。

(イ)訂正事項3−2
願書に添付した明細書の段落【0034】には、「認証処理部14は、認識枠54g内の画像を一定の時間間隔でサンプリング(キャプチャ)し、受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとマッチングを行う。」と記載されている。訂正事項3−2のうちの請求項8にかかる訂正は、この記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項3−2のうちの請求項8の記載を引用する請求項9に係る訂正も同様である。

(ウ)まとめ
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用される特許法第126条第5項の規定に適合する。

オ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の請求項1ないし9について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項8及び9に係る訂正事項3−2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし7は、請求項2ないし7が、いずれも請求項1を直接的または間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項をなすものである。
訂正前の請求項8及び9は、請求項9が請求項8を引用する関係にあるから、一群の請求項をなすものである。
そして、本件訂正は、訂正事項1及び2が一群の請求項〔1ないし7〕について請求され、訂正事項3が一群の請求項〔8、9〕について請求されており、一群の請求項ごとに請求されているものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定及び同法第120条の5第4項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし7〕、〔8、9〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の請求項1ないし9に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし9に係る発明(以下、順に「本件訂正特許発明1」ないし「本件訂正特許発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
受講者端末からアクセス可能なオンライン学習システムであって、
講義動画を記憶する講義データ記憶部と、
受講者端末からの配信要求を受け付け、前記講義データ記憶部に記憶された講義動画を配信する配信制御部と、
受講者端末により撮影された画像に基づいて、前記講義動画の再生中に受講者の顔認証を行う認証処理部と、
前記認証処理部において、前記講義動画の再生中に受講者の顔認証の失敗が所定の条件を超えて続いた場合、前記受講者による当該講義動画の受講は未修了であるものとする受講進捗管理部とを備え、
前記認証処理部は、前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像における認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって顔認証を行う、
オンライン学習システム。
【請求項2】
前記認証処理部は、前記受講者端末の表示画面に、受講者端末による撮影範囲を示す認証用ウィンドウと、前記認識枠とを表示する、請求項1に記載のオンライン学習システム。
【請求項3】
前記認証処理部は、前記受講者端末の表示画面において、前記認証用ウィンドウおよび前記認識枠を、講義動画の再生ウィンドウと並べて表示する、請求項2に記載のオンライン学習システム。
【請求項4】
前記認証処理部は、前記受講者端末の表示画面において、前記認証用ウィンドウおよび前記認識枠を、講義動画の再生ウィンドウと切り替え可能に表示する、請求項2に記載のオンライン学習システム。
【請求項5】
前記配信制御部は、前記受講者端末の表示画面において、前記認証用ウィンドウおよび前記認識枠が、講義動画の再生ウィンドウから切り替えて表示された際に、講義動画の再生を一時停止する、請求項4に記載のオンライン学習システム。
【請求項6】
前記受講者の顔認証を、ランダムなタイミングで行う、請求項1〜5のいずれか一項に記載のオンライン学習システム。
【請求項7】
前記講義動画が、自動車運転免許の学科教習の講義動画または資格試験の講義動画である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のオンライン学習システム。
【請求項8】
受講者端末からアクセス可能なコンピュータのプロセッサで実行されるプログラムであって、
前記コンピュータのプロセッサに、
受講者端末からの配信要求を受け付け、講義データ記憶部に記憶された講義動画を配信する配信処理と、
受講者端末により撮影された画像に基づいて、前記講義動画の再生中に受講者の顔認証を行う認証処理と、
前記認証処理において、前記講義動画の再生中に受講者の顔認証の失敗が所定の条件を超えて続いた場合、前記受講者による当該講義動画の受講は未修了であるものとする受講進捗管理処理とを行わせ、
前記認証処理における顔認証は、前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像における認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって行われる、
プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし9に係る特許に対して、当審が令和3年8月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

明確性)請求項1ないし9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(1)請求項1の「前記認証処理部は、前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて顔認識を行う」との記載は、「前記講義動画の視聴を妨げずに」が、「撮影された」を修飾するのか、「行う」を修飾するのか、明確でない。

(2)請求項1の「前記講義動画の視聴を妨げずに」との記載は、否定的表現によって除かれるものが「前記講義動画の視聴を妨げ」るという作用的な表現によって記載され、発明特定事項が技術的に十分に特定されていないことが明らかであるから、明確でない。

(3)請求項8の「前記認証処理における顔認証は、前記受講者端末により前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずかつ前記講義動画の視聴を妨げずに撮影された画像において認識枠で規定された範囲内の画像に基づいて行われる」との記載は、「前記講義動画の視聴を妨げずに」が、「撮影された」を修飾するのか、「行われる」を修飾するのか、明確でない。

(4)請求項8の「前記講義動画の視聴を妨げずに」との記載は、否定的表現によって除かれるものが「前記講義動画の視聴を妨げ」るという作用的な表現によって記載され、発明特定事項が技術的に十分に特定されていないことが明らかであるから、明確でない。

したがって、請求項1及び8に係る特許発明並びに請求項1又は8を直接または間接的に引用する請求項2ないし7及び9に係る特許発明は明確でない。

2 当審の判断
(1)取消理由の(1)について
上記訂正事項1−1により、訂正前の請求項1の「前期講義動画の視聴を妨げずに」との記載は削除されたから、「前記講義動画の視聴を妨げずに」が「撮影された」を修飾するのか、「行う」を修飾するのか明確でないとの取消理由は、訂正後の請求項1において存在しないものとなった。
また、請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7についても同様である。

(2)取消理由の(2)について
上記訂正事項1−1により、訂正前の請求項1の「前期講義動画の視聴を妨げずに」との記載は削除されたから、「前記講義動画の視聴を妨げずに」との記載について否定的表現によって除かれるものが「前記講義動画の視聴を妨げ」るという作用的な表現によって記載され、発明特定事項が技術的に十分に特定されておらず明確でないとの取消理由は、訂正後の請求項1において存在しないものとなった。
また、請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2ないし7についても同様である。

(3)取消理由の(3)について
上記訂正事項3−1により、訂正前の請求項8の「前期講義動画の視聴を妨げずに」との記載は削除されたから、「前記講義動画の視聴を妨げずに」が「撮影された」を修飾するのか、「行う」を修飾するのか明確でないとの取消理由は、訂正後の請求項8において存在しないものとなった。
また、請求項8の記載を引用する請求項9についても同様である。

(4)取消理由の(4)について
上記訂正事項3−1により、訂正前の請求項8の「前期講義動画の視聴を妨げずに」との記載は削除されたから、「前記講義動画の視聴を妨げずに」との記載について否定的表現によって除かれるものが「前記講義動画の視聴を妨げ」るという作用的な表現によって記載され、発明特定事項が技術的に十分に特定されておらず明確でないとの取消理由は、訂正後の請求項8において存在しないものとなった。
また、請求項8の記載を引用する請求項9についても同様である。

(5)まとめ
したがって、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし9の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえず、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由について
進歩性違反について
(1)申立人の主張の概要
ア 甲第1号証に記載された発明を主引用発明とする進歩性違反
申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1ないし9に係る特許は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用例(甲第1号証及び甲第6ないし9号証)に記載された発明及び周知技術(甲第2号証ないし甲第5号証等)に基づいて、甲第1号証に記載された発明を主引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(同法第113条第2号)から、特許を取り消されるべきものである旨主張する。

イ 甲第8号証に記載された発明を主引用発明とする進歩性違反
申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1ないし9に係る特許は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用例(甲第6ないし9号証)に記載された発明及び周知技術(甲第2号証ないし甲第5号証等)に基づいて、甲第8号証に記載された発明を主引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(同法第113条第2号)から、特許を取り消されるべきものである旨主張する。

(2)各甲号証の記載
ア 甲第1号証について
本件特許に係る出願前に頒布された甲第1号証(国際公開2018/225642号)には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
(ア)「[0017] [第1実施形態]
本発明の第1実施形態として、ネットワークを介した遠隔教育システムの例を説明する。図1は、第1実施形態に係る遠隔教育システムの概略構成を示す模式図である。遠隔教育システムは、学習管理システム1、顔認証管理サーバ2及びユーザ端末4を含む。学習管理システム1、顔認証管理サーバ2及びユーザ端末4は、ネットワーク3を介して相互に通信可能に接続される。なお、図1には、学習管理システム1、顔認証管理サーバ2が1つずつ図示されており、ユーザ端末4が複数(3つ)図示されているが、これらの個数は特に限定されるものではない。なお、ユーザ端末4がアクセスする対象である学習管理システム1は、単にアクセス対象システムと呼ばれることもある。
[0018] 学習管理システム1は、ユーザ端末4を利用するユーザにネットワーク3を介して遠隔での教育サービスを提供するシステムであり、イーラーニング(e-learning)システムと呼ばれることもある。学習管理システム1は、ユーザ端末4に、講義音声、講義動画、説明資料、理解度の確認テスト等のコンテンツの送信を行う。これらのコンテンツの送信は、データのダウンロードと再生を同時に行うストリーミング、プログレッシブダウンロード等の技術により行われ得る。また、学習管理システム1は、ユーザから講師への質問を受け付ける等の機能を更に備えることにより、双方向の教育を行うものであってもよい。
[0019] 顔認証管理サーバ2は、学習管理システム1にアクセスしようとするユーザあるいはアクセスしているユーザに対する顔認証を実行するための顔認証用ソフトウェアの提供を行う。当該ソフトウェアは、ユーザ端末4にインストールされるものとして説明するが、顔認証管理サーバ2、学習管理システム1、あるいはその他のサーバにインストールされていてもよい。また、顔認証管理サーバ2は、ユーザ端末4にインストールされた顔認証用ソフトウェアに対し、顔認証のポリシーを提供する機能を有する。」

(イ)「[0021] ユーザ端末4は、ユーザが学習管理システム1からコンテンツを受信するための通信機能を有するコンピュータである。ユーザ端末4は、デスクトップPC(Personal Computer)、ラップトップPC、タブレットPC、携帯電話等であり得る。また、ユーザ端末4は、学習管理システム1にアクセスするユーザの顔の画像を撮影するためのカメラを備える。ユーザ端末4は、顔認証管理サーバ2からユーザの顔認証を行うソフトウェアの提供を受け、顔認証用プログラムを実行することにより、顔認証システムとして機能する。」

(ウ)「[0029] 図3は、第1実施形態に係るユーザ端末4の機能ブロック図である。図3には、ユーザ端末4のCPU401が、顔認証ソフトウェアのプログラムを実行することにより、ユーザ端末4を顔認証システム50として機能させた際の機能ブロックが図示されている。顔認証システム50は、カメラ43、顔画像記憶部501、特徴量演算部502、特徴量記憶部503、顔画像入出力部504、比較対象量記憶部505、認証条件取得部506、状態取得部507、判定基準設定部508、認証結果出力部509及び顔認証部510を備える。」

(エ)[0035] 顔画像記憶部501に記憶された比較対象画像についても、カメラ43で撮影された顔画像と同様にして特徴量演算部502において特徴量の演算が行われる。比較対象画像の特徴量は、比較対象量記憶部505に記憶される。比較対象画像にユーザ名等の属性が紐付けられている場合には、特徴量にこれらの属性を紐付けて記憶してもよい。

(オ)[0039] 顔認証部510は、特徴量記憶部503に記憶されているユーザの顔画像の特徴量と、比較対象量記憶部505に記憶されている比較対象画像の特徴量とを比較して、これらが同一の人物の画像であるか否かを判定する顔認証を行う。このとき、特徴量の差により表現されるユーザの顔画像と比較対象画像の類似度が、判定基準設定部508で設定された判定基準に基づく閾値を超えていれば、顔認証部510は、人物が同一であると判定する。

(カ)「[0048] ステップS18において、学習管理システム1は、ユーザ端末4のログインを承認し、ユーザ端末4からの要求に応じたコンテンツの送信を開始する。」

(キ)「[0050] ログイン期間内のステップS21aにおいて、カメラ43は、ユーザの顔画像を撮影し、顔認証部510は、ユーザの顔認証を行う。ステップS21aは、認証条件により定められた所定のタイミングに行われる。このとき、学習管理システム1は、ログインしているユーザの顔認証結果を受け付ける状態である。」

(ク)「[0052] ・・・学習管理システム1は、この顔認証の結果を用いた種々の動作を行うことができる。例えば学習管理システム1は、強制的にログオフさせる処理を行ってもよく、受講状態の履歴をログに蓄積する処理を行ってもよく、警告メッセージを表示させるようにユーザ端末4に対する指示を行ってもよい。また、別の例としては、学習管理システム1は、顔認証の結果に応じて、ユーザ端末4でのコンテンツの再生を一時的に中止してもよい。中止されたコンテンツの再生は、顔認証が認められたときに再開される。」

(ケ)「[0054] 以上のステップS21a、S21b、S22、S23の処理は、ログイン期間内に繰り返し複数回行われ得る。例えば、当該処理を1秒間に1回行う等の一定の周期で行うことにより、ユーザを実質的に常時監視することができる。」

(コ)「[0060] ・・・ログイン中に顔認証の閾値を低く設定するため、受講中にユーザが別の人物が入れ替わるなりすまし(替え玉受講)が行われる可能性がある。」

(認定事項)
上記(ア)の段落[0019]には、顔認証用ソフトウェアが学習管理システム1にインストールされていてもよい旨記載されており、顔認証用ソフトウェアが学習管理システム1にインストールされているのであれば、上記(イ)の「顔認証部510」が学習管理システム1に備えられることは明らかである。

以上から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲第1発明」という。)が記載されていると認められる。

「学習管理システム1、顔認証管理サーバ2及びユーザ端末4を含む遠隔教育システムであって、
学習管理システム1は、ユーザ端末4がアクセスする対象であり、
学習管理システム1は、ユーザ端末4を利用するユーザにネットワーク3を介して遠隔での教育サービスを提供するシステムであり、イーラーニング(e-learning)システムと呼ばれることもあり、
学習管理システム1は、ユーザ端末4に、講義音声、講義動画、説明資料、理解度の確認テスト等のコンテンツの送信を行い、
顔認証管理サーバ2は、学習管理システム1にアクセスしようとするユーザあるいはアクセスしているユーザに対する顔認証を実行するための顔認証用ソフトウェアの提供を行い、当該ソフトウェアは、学習管理システム1にインストールされており、
学習管理システム1は、ステップS18において、ユーザ端末4のログインを承認し、ユーザ端末4からの要求に応じたコンテンツの送信を開始し、
ユーザ端末4が備えるカメラ43は、ログイン期間内のステップS21aにおいて、ユーザの顔画像を撮影し、
学習管理システム1が備える顔認証部510は、ユーザの顔画像の特徴量と、顔画像記憶部501に記憶された比較対象画像を演算して比較対象量記憶部505に記憶されている比較対象画像の特徴量とを比較して、これらが同一の人物の画像であるか否かを判定する顔認証を行い、
ステップS21aの処理は、ログイン期間内に1秒間に1回行う等の一定の周期で行うことにより、ユーザを実質的に常時監視することができ、
学習管理システム1は、顔認証の結果に応じて、ユーザ端末4でのコンテンツの再生を一時的に中止してもよく、中止されたコンテンツの再生は、顔認証が認められたときに再開される、
遠隔教育システム。」

イ 甲第2号証及び甲第3号証について
本件特許に係る出願前に頒布された甲第2号証(特開2013−141092号公報)には、以下の記載がある。

「【0056】
S706にて、システム制御部50は、描画順番iの顔に対する顔認識枠を描画する。次に、S707にて、システム制御部50は、描画順番iの顔に対して予め登録されているデータと照合し、登録されている顔であるかどうかを識別する。」

また、本件特許に係る出願前に頒布された甲第3号証(特開2008−278458号公報)には、以下の記載がある。

「【0061】
なお、撮像画像Gにおいて、5人の被写体人物の顔が検出されて認識されており、5人分の顔画像領域Fが表示されている。また、撮像画像Gにおいて顔画像領域Fに対応する部分には、顔認識枠Wが表示されている。」

そうすると、顔認証の技術分野において、その枠内の認証を受ける人の顔画像に基づいて、顔認証を行う「認識枠」を表示することは、甲第2号証及び甲第3号証に記載されているように、本件特許出願の時点で周知技術であるといえる。

ウ 甲第4号証及び甲5号証について
本件特許に係る出願前に頒布された甲第4号証(特開2019−220837号公報)には、以下の記載がある。
「【0055】
案内部131は、部屋番号の入力を確定する呼出ボタンN4が押されると、「枠内に顔を入れてください」という案内画像(案内情報)を、表示画面180に出力する(図3B参照)。また案内部131は、「こちらを向いて枠内に顔を入れてください」という音声メッセージ(案内情報)を、通話部19のスピーカより出力する。」

また、本件特許に係る出願前に頒布された甲第5号証(特開2020−095728号公報)には、以下の記載がある。」
「【0050】
・・・
図13のS60において、制御部10はインカメラ33aを起動させて、インカメラ33aのスルー画像を含む、図14に示す顔撮影画面85をタッチパネルディスプレイ35に出力する。ユーザは、顔撮影画面85の顔枠85aに自身の顔が入るように、携帯端末1の位置を調整する。」

そうすると、顔認証の技術分野において、その枠内の認証を受ける人の顔画像に基づいて、顔認証を行う枠であって、且つ認証を受ける人が、その枠内に顔を配置することを要請される「認識枠」を表示することは、甲第4号証及び甲第5号証に記載されているように、本件特許出願の時点で周知技術であるといえる。

エ 甲第6号証
本件特許に係る出願前に頒布された甲第6号証(特開2018−066990号公報)には、以下の記載がある。
(ア)「【0121】
顔認証のタイミングに至ると(ステップS75:Yes)、情報処理端末100は、図18に例示する顔認証画面M6を表示し、認証用の顔画像を取得する(ステップS76)。顔認証画面M6は、テストの問題及び解答欄の他、撮像手段407により情報処理端末100に取り込まれた画像を表示する画像表示欄m60と、撮影ボタンm61とを含む。」

(イ)図18には、ユーザ端末の表示画面(顔認証画面M6)に、取り込まれた画像を表示する画像表示欄m60と試験問題とを並べて表示することが示されている。

オ 甲第7号証
本件特許に係る出願前に頒布された甲第7号証(特開2006−221282号公報)には、以下の記載がある。
(ア)「【0028】
図1に本実施形態係る顔認証装置100の一形態の概略図を示す。顔認証装置100は、カメラ1と、表示部2と、表示部2に基準点重畳部3を備える。図1に示す顔認証装置100は、カメラ付き携帯電話を兼用する例である。」

(イ)「【0076】
本発明に係る顔認証システムは、モバイル環境においても簡単で、高いセキュリティのe−learning用コンテンツなど様々なコンテンツの提供に利用することができる。

(ウ)図1の右側の図には、顔画像5が表示されている。

カ 甲第8号証
本件特許に係る出願前に頒布された甲第8号証(特開2010−066990号公報)には、以下の記載がある。
(ア)「【0016】
このように構成すると、本発明においても、定期的又はランダムに本人認証を繰り返すことによって、コンテンツ利用中のユーザの入れ替わり等の不正行為が行われるリスクを軽減することが可能になる。」

(イ)「【0030】
図1において、本発明にかかる本人認証サーバは、ユーザ端末からアクセスしたユーザの本人認証を行うために、Webサーバにおける一部の機能として備えられている。Webサーバは、ユーザ端末からのリクエストに応じてeラーニング用の動画ファイルなどのコンテンツを送信するが、ユーザデータベースに登録されたデータを参照して、リクエストを送信したユーザの本人認証を行う。
【0031】
ユーザデータベースには、登録されたユーザ毎に、一般に認証キーとして用いられるパスワード等に加えて、ユーザの顔画像によって本人認証を行うためのユーザの顔画像の特徴データに関する情報が格納されている。ユーザ端末ではWebカメラを用いてユーザの顔画像を撮影してWebサーバに送信し、撮影した顔画像から抽出した特徴データがユーザデータベースに格納された特徴データと一致するか否かによって、ユーザの本人認証が行われる。
【0032】
ユーザの本人認証はコンテンツファイルを読み出すためにWebサーバにログオンする際に限られず、コンテンツの利用中においても所定のタイミングで自動的にWebカメラにより顔画像を撮影してWebサーバに送信し、Webサーバにおいて繰り返し本人認証を実行する。コンテンツの利用中にも本人認証を繰り返すことによって、利用開始後のユーザの入れ替わり等の不正行為に対処することが可能になる。」

(ウ)「【0037】
・・・コンテンツファイル格納部16には、eラーニング等で用いられる音声データを含む動画ファイル等が格納されている。」

(エ)「【0061】
続いて、ユーザ端末30でコンテンツファイルが再生されている間に、所定のタイミングに到達すると、Webサーバ10では認証処理部14が起動されて、ユーザ端末20にユーザの顔画像を撮影する命令が送信される。送信のタイミングは特に限定されるものではないが、コンテンツファイルの送信から時間の経過をカウントし、例えば10分毎といったタイミングで定期的に命令を送信することとしてもよいし、コンテンツファイルの送信後ランダムに命令を送信することとしてもよい。

(オ)「【0064】
そこで、撮影用プログラムの起動命令を送信する際には、図8の例に示したように、Webブラウザ31に新たなウィンドウ(サブウィンドウ)を開かせる命令をあわせて送信することとすれば、コンテンツの表示されるウィンドウに影響を与えることなく、Webブラウザ31上で撮影用プログラムを実行させることができる。この新たに開くウィンドウのサイズを極めて小さいものと設定しておくことによって、ユーザにはほとんど気付かれない状態で顔画像の撮影処理を自動的に起動することができる。」

(カ)「【0068】
図9の例に示したように、Webカメラ33で撮影されたユーザの顔画像のイメージファイルは、撮影用プログラムによってWebサーバ10に送信される。これを受信したWebサーバ10では、ログオン時と同様にユーザデータベース20にあらかじめ登録されたユーザの顔画像に関する情報と照合して、顔認証によるユーザの本人認証が行われる」。

上記記載によれば、甲第8号証には以下の発明(以下「甲第8発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ユーザ端末からのリクエストに応じてeラーニング用の動画ファイルなどのコンテンツを送信するWebサーバであって、
eラーニング等で用いられる音声データを含む動画ファイルが格納されるコンテンツファイル格納部16と、
ユーザ端末30でコンテンツファイルが再生されている間に例えば10分毎といった所定のタイミングに到達すると起動されて、ユーザ端末20にユーザの顔画像を撮影する命令を送信し、ユーザ端末30のWebカメラ33で撮影されたユーザの顔画像のイメージファイルを受信して、撮影されたユーザの顔画像から抽出した特徴データがユーザデータベース20にあらかじめ登録されたユーザの顔画像の特徴データと一致するか否かによって顔認証によるユーザの本人認証を行う認証処理部14と、を備え、
認証処理部14は、撮影用プログラムの起動命令を送信する際には、Webブラウザ31に新たなウィンドウ(サブウィンドウ)を開かせる命令をあわせて送信することとし、この新たに開くウィンドウのサイズを極めて小さいものと設定しておくことによって、ユーザにはほとんど気付かれない状態で顔画像の撮影処理を自動的に起動することができる、
Webサーバ。」

キ 甲第9号証
本件特許に係る出願前に頒布された甲第9号証(特開2009−276950号公報)には、以下の記載がある。
「【0001】
本発明はe-learning学習時に生体認証を利用した本人認証方法及び装置に関し、特にランダムで本人認証を行う際の好適な方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種資格や自動車の運転免許取得を目的とした国家試験の受講や講習の受講を遠隔教育を用いて、受験・受講者の自宅で行なう事が可能となっている。」

ク 甲第10号証
甲第10号証(「特許・実用新案審査基準」第2(当審注:「2」はローマ数字で記載されている。)部第2章第3節「明確性要件」)の第8頁には、以下の記載がある。
(ア)「a否定的表現(「〜を除く」、「〜でない」等)」がある結果、発明の範囲が不明確となる場合
否定的表現によって除かれるものが不明確となる場合(例えば、「引用文献1に記載される発明を除く。」)は、その表現を含む請求項に係る発明の範囲は不明確となる。」

ケ 令和3年12月7日に提出された意見書において提示された特開2010−97272号公報(以下「追加引用例1」という。)及び特開2009−64140号公報( 以下「追加引用例2」という。)

追加引用例1には、以下の記載がある。
「【0043】
顔照合処理部43は、検出されたグループ分類顔画像から、認証対象者の顔の特徴を表す第2の顔特徴情報を顔の特徴パターンとして抽出(顔の特徴量を算出)する。例えば、顔照合処理部43は、同一人物ごとに複数枚ずつ得られた個々のグループ分類顔画像それぞれから、四つの円形領域とみなせる瞳の黒目部分及び鼻孔(さらに加えて例えば唇の端点など)の位置座標を顔器官の特徴点として検出する。
【0044】
さらに、顔照合処理部43は、同一人物ごとに画像系列を分類したグループ分類顔画像、すなわち、同一人物における一連の連続画像から得た各特徴点に基づいて主成分分析などの統計的処理を行うことで、人物ごとに固有でかつその人物の顔を特定(識別)可能な顔の特徴量を算出(顔の特徴パターンを生成)する。さらに、顔照合処理部43は、このようにして求めた認証対象者の顔の特徴を表す第2の顔特徴情報を記憶部46内に記憶する。」

追加引用例2には、以下の記載がある。
「【0025】
顔特徴量抽出部18は、顔検出処理部20により検出された図3に示すグループ分類顔画像25a、25b…25nから、認証対象者3a、3b…3nの顔の特徴を表す第2の顔特徴情報を顔の特徴パターンとして抽出(顔の特徴量を算出)する。つまり例えば、顔特徴量抽出部18は、同一人物ごとに複数枚ずつ得られた個々のグループ分類顔画像25a、25b…25n各々から、四つの円形領域とみなせる瞳の黒目部分及び鼻孔(さらに加えて例えば唇の端点など)の位置座標を顔器官の特徴点として検出する。
【0026】
さらに、顔特徴量抽出部18は、同一人物ごとに画像系列を分類したグループ分類顔画像25a、25b…25n、すなわち、同一人物における一連の連続画像から得た各特徴点に基づいて主成分分析などの統計的処理を行うことで、人物ごとに固有でかつその人物の顔を特定(識別)可能な顔の特徴量を算出(顔の特徴パターンを生成)する。さらに、顔特徴量抽出部18は、このようにして求めた認証対象者3a、3b…3nの顔の特徴を表す第2の顔特徴情報をワークメモリ19内に記憶する。したがって、このような顔特徴量抽出部18は、上述した画像入力部21、画像メモリ22、ワークメモリ19、及び顔検出処理部20と協働しつつ顔特徴情報生成部として機能する。」

そうすると、顔認証の技術分野において、顔の特徴パターンを用いて顔認証を行うことは、追加引用例1及び追加引用例2に記載されているように、本件特許出願の時点で周知技術であるといえる。

(3)当審の判断
ア 甲第1号証に記載された発明を主引用発明とする進歩性違反について
(ア)本件訂正特許発明1について
a 対比
本件訂正特許発明1と甲第1発明とを対比する。

(a)甲第1発明における「ユーザ端末4」は、本件訂正特許発明1における「受講者端末」に相当する。

(b)甲第1発明の「学習管理システム1」は、「ユーザ端末4がアクセスする対象であり」、「イーラーニング(e−learning)システムと呼ばれることもあ」るから、本件訂正特許発明1における「受講者端末からアクセス可能なオンライン学習システム」に相当する。

(c)甲第1発明の「学習管理システム1」は、「顔認証の結果に応じて、ユーザ端末4でのコンテンツの再生を一時的に中止してもよく、中止されたコンテンツの再生は、顔認証が認められたときに再開される」ものであることから、技術的にみて、甲第1発明の学習管理システム1が、本件訂正特許発明1の「講義動画を記憶する講義データ記憶部」に相当する構成を備えていることは明らかである。

(d)甲第1発明の「学習管理システム1」は、「ステップS18において、ユーザ端末4のログインを承認し、ユーザ端末4からの要求に応じたコンテンツの送信を開始」するものであるから、甲第1発明の「学習管理システム1」が、本件訂正特許発明1の「受講者端末からの配信要求を受け付け、前記講義データ記憶部に記憶された講義動画を配信する配信制御部」に相当する構成を備えていることは明らかである。

(e)甲第1発明は、「ユーザ端末4が備えるカメラ43」が「ログイン期間内のステップS21aにおいて、ユーザの顔画像を撮影し」、「学習管理システム1が備える顔認証部510」が「顔認証を行」うものであるから、甲第1発明の「顔認証部510」は、本件訂正特許発明1の「受講者端末により撮影された画像に基づいて、前記講義動画の再生中に受講者の顔認証を行う認証処理部」に相当する。

(f)甲第1発明では、「ユーザの顔画像を撮影」する「ステップS21aの処理」を、「ログイン期間内に1秒間に1回」の頻度で「行う」のであり、これだけの高い頻度で行われるのであれば、受溝者の操作を介さずに、受講者とは無関係にシステムが勝手に画像を撮影していることは明らかである。また、甲第1発明の「学習管理システム1が備える顔認証部510」は、「撮影」された「ユーザの顔画像の特徴量と、顔画像記憶部501に記憶された比較対象画像を演算して比較対象量記憶部505に記憶されている特徴量とを比較して、これらが同一の人物の画像であるか否かを判定する顔認証を行」うものであるから、撮影されたユーザの顔画像と記憶された比較対照画像または特徴量とを比較すなわちマッチングすることによって顔認証を行うものといえる。よって、本件訂正特許発明1の「認証処理部」と甲第1発明の「顔認証部510」とは、「前記認証処理部は、前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって顔認証を行う」点で共通する。

そうすると、本件訂正特許発明1と甲第1発明とは、
「受講者端末からアクセス可能なオンライン学習システムであって、
講義動画を記憶する講義データ記憶部と、
受講者端末からの配信要求を受け付け、前記講義データ記憶部に記憶された講義動画を配信する配信制御部と、
受講者端末により撮影された画像に基づいて、前記講義動画の再生中に受講者の顔認証を行う認証処理部とを備え、
前記認証処理部は、前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって顔認証を行う、
オンライン学習システム。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本件訂正特許発明1の認証処理部は、「前記講義動画の再生中に受講者の顔認証の失敗が所定の条件を超えて続いた場合、前記受講者による当該講義動画の受講は未修了であるものとする受講進捗管理部」を備えるのに対して、甲第1発明の学習管理システム1の顔認証部510は、「前記講義動画の再生中に受講者の顔認証の失敗が所定の条件を超えて続いた場合、前記受講者による当該講義動画の受講は未修了であるものとする受講進捗管理部」を備えるのか否か不明な点。

(相違点2)
本件訂正特許発明1の認証処理部が、「撮影された画像における認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像」に基づいて顔認識を行うのに対して、甲第1発明の顔認証部510は、「撮影された画像における認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像」に基づいて顔認識を行うものではない点。

b 判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
(相違点2について)
顔認証の技術分野において、その枠内の認証を受ける人の顔画像に基づいて、顔認証を行う「認識枠」を表示することが、甲第2号証及び甲第3号証に記載されているように、本件特許出願の時点で周知技術であるものの、また、顔認証の技術分野において、その枠内の認証を受ける人の顔画像に基づいて、顔認証を行う枠であって、且つ認証を受ける人が、その枠内に顔を配置することを要請される「認識枠」を表示することが、甲第4号証及び甲第5号証に記載されているように、本件特許出願の時点で周知技術であるものの、認識枠は、表示されている顔画像に対して顔認証を行う範囲を画定する枠なのであるから、顔画像を表示することを前提としていない甲第1発明に「認識枠」を適用する動機付けを見いだすことはできない。
また、他の各甲号証並びに追加引用例1及び2には、甲第1発明に「認識枠」を適用する動機付けとなる記載や示唆はなく、他の各甲号証並びに追加引用例1及び2を参照してもこの判断が左右されるものではない。

したがって、相違点1を検討するまでもなく、本件訂正特許発明1は、引用例(甲第1号証及び甲第6ないし9号証)に記載された発明及び周知技術(甲第2号証ないし甲第5号証等)に基づいて、甲第1号証に記載された発明を主引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。よって、本件特許の請求項1に係る特許は、同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

(イ)本件訂正特許発明2ないし9について
本件訂正特許発明2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用して記載された発明であり、本件訂正特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものである。
また、本件訂正特許発明8は、本件訂正特許発明1において特定された「オンライン学習システム」の各部が行う制御処理の内容をそのまま「プログラム」の制御処理の内容に書き換えて特定したものである。そして、本件訂正特許発明8を引用して記載された本件訂正特許発明9は、本件訂正特許発明9の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものである。
そうすると、上記(ア)で検討したとおり、本件訂正特許発明1は、引用例(甲第1号証及び甲第6ないし9号証)に記載された発明及び周知技術(甲第2号証ないし甲第5号証等)に基づいて、甲第1号証に記載された発明を主引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正特許発明2ないし9に係る発明も、引用例(甲第1号証及び甲第6ないし9号証)に記載された発明及び周知技術(甲第2号証ないし甲第5号証等)に基づいて、甲第1号証に記載された発明を主引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。よって、本件請求項2ないし9に係る特許は、同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

イ 甲第8号証に記載された発明を主引用発明とする進歩性違反
(ア)本件訂正特許発明1について
a 対比
本件訂正特許発明1と甲第8発明とを対比する。

(a)甲第8発明の「Webサーバ」は、「ユーザ端末からのリクエストに応じてeラーニング用の動画ファイルなどのコンテンツを送信する」ものであり、ユーザ端末からアクセス可能なオンライン学習システムといえる。したがって、甲第8発明の「ユーザ端末」が、本件訂正特許発明1の「受講者端末」に相当し、甲第8発明の「Webサーバ」が、本件訂正特許発明1の「受講者端末からアクセス可能なオンライン学習システム」に相当する。

(b)甲第8発明の「コンテンツファイル格納部16」は、「eラーニング等で用いられる音声データを含む動画ファイル等が格納される」ものであり、eラーニング等で用いられる音声データを含む動画ファイルは講義動画といえる。したがって、甲第8発明の「コンテンツファイル格納部16」が、本件訂正特許発明1の「講義動画を記憶する講義データ記憶部」に相当する。

(c)甲第8発明の「Webサーバ」は、「ユーザ端末からのリクエストに応じてeラーニング用の動画ファイルなどのコンテンツを送信」する。したがって、甲第8発明の「Webサーバ」が、本件訂正特許発明1の「受講者端末からの配信要求を受け付け、前記講義データ記憶部に記憶された講義動画を配信する配信制御部」に相当する構成を備えていることは明らかである。

(d)甲第8発明の「認証処理部14」は、「ユーザ端末30でコンテンツファイルが再生されている間に例えば10分毎といった所定のタイミングに到達すると起動されて」、「ユーザ端末30のWebカメラ33で撮影されたユーザの顔画像のイメージファイルを受信して、撮影されたユーザの顔画像から抽出した特徴データがユーザデータベース20にあらかじめ登録されたユーザの顔画像の特徴データと一致するか否かによって顔認証によるユーザの本人認証を行う」ものである。したがって、甲第8発明の「認証処理部14」が、本件訂正特許発明1の「受講者端末により撮影された画像に基づいて、前記講義動画の再生中に受講者の顔認証を行う認証処理部」に相当する。

(e)甲第8発明の「認証処理部14」は、「ユーザ端末30でコンテンツファイルが再生されている間に例えば10分毎といった所定のタイミングに到達すると起動されて、ユーザ端末20にユーザの顔画像を撮影する命令を送信」するものであり、「撮影用プログラムの起動命令を送信する際には、Webブラウザ31に新たなウィンドウ(サブウィンドウ)を開かせる命令をあわせて送信することとし、この新たに開くウィンドウのサイズを極めて小さいものと設定しておくことによって、ユーザにはほとんど気付かれない状態で顔画像の撮影処理を自動的に起動することができる」ものであるから、コンテンツファイルが再生されている間に、ユーザの操作を介さずに顔画像を撮影していることは明らかである。また、甲第8発明の「認証処理部14」は、「撮影されたユーザの顔画像から抽出した特徴データがユーザデータベース20にあらかじめ登録されたユーザの顔画像の特徴データと一致するか否かによって、顔認証によるユーザの本人認証を行う」ものであるから、撮影された顔画像とユーザの顔画像として登録されている特徴データと一致するか否かすなわちマッチングすることによって顔認証を行うものであるといえる。したがって、本件訂正特許発明1の「認証処理部」と甲第8発明の「認証処理部14」とは、「前記認証処理部は、前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像と受講者の顔画像として登録されている特徴パターンとをマッチングすることによって顔認証を行う」点で共通する。

そうすると、本件訂正特許発明1と甲第8発明とは、
「受講者端末からアクセス可能なオンライン学習システムであって、
講義動画を記憶する講義データ記憶部と、
受講者端末からの配信要求を受け付け、前記講義データ記憶部に記憶された講義動画を配信する配信制御部と、
受講者端末により撮影された画像に基づいて、前記講義動画の再生中に受講者の顔認証を行う認証処理部とを備え、
前記認証処理部は、前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像と受講者の顔画像として登録されている特徴パターンとをマッチングすることによって顔認証を行う、
オンライン学習システム。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点3)
本件訂正特許発明1の認証処理部は、「前記講義動画の再生中に受講者の顔認証の失敗が所定の条件を超えて続いた場合、前記受講者による当該講義動画の受講は未修了であるものとする受講進捗管理部」を備えるのに対して、甲第8発明の認証処理部14は、「前記講義動画の再生中に受講者の顔認証の失敗が所定の条件を超えて続いた場合、前記受講者による当該講義動画の受講は未修了であるものとする受講進捗管理部」を備えるのか否か不明な点。

(相違点4)
本件訂正特許発明1の認証処理部が、「撮影された画像における認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像」に基づいて顔認識を行うのに対して、甲第8発明の認証処理部14は、「撮影された画像における認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像」に基づいて顔認識を行うものではない点。

b 判断
事案に鑑み、相違点4から検討する。
(相違点4について)
顔認証の技術分野において、その枠内の認証を受ける人の顔画像に基づいて、顔認証を行う「認識枠」を表示することが、甲第2号証及び甲第3号証等に記載されているように、本件特許出願の時点で周知技術であるものの、また、顔認証の技術分野において、その枠内の認証を受ける人の顔画像に基づいて、顔認証を行う枠であって、且つ認証を受ける人が、その枠内に顔を配置することを要請される「認識枠」を表示することが、甲第4号証及び甲第5号証に記載されているように、本件特許出願の時点で周知技術であるものの、認識枠は、表示されている顔画像に対して顔認証を行う範囲を画定する枠なのであるから、顔画像を表示することを前提としていない甲第8発明に「認識枠」を適用する動機付けを見いだすことはできない。
また、他の各甲号証並びに追加引用例1および2には、甲第8発明に「認識枠」を適用する動機付けとなる記載や示唆はなく、他の各甲号証並びに追加引用例1および2を参照してもこの判断が左右されるものではない。

したがって、相違点3を検討するまでもなく、本件訂正特許発明1は、引用例(甲第6ないし9号証)に記載された発明及び周知技術(甲第2号証ないし甲第5号証等)に基づいて、甲第8号証に記載された発明を主引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。よって、本件特許の請求項1に係る特許は、同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

(イ)本件訂正特許発明2ないし9について
本件訂正特許発明2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用して記載された発明であり、本件訂正特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものである。
また、本件訂正特許発明8は、本件訂正特許発明1において特定された「オンライン学習システム」の各部が行う制御処理の内容をそのまま「プログラム」の制御処理の内容に書き換えて特定したものである。そして、本件訂正特許発明8を引用して記載された本件訂正特許発明9は、本件訂正特許発明9の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものである。
そうすると、上記(ア)で検討したとおり、本件訂正特許発明1は、引用例(甲第6ないし9号証)に記載された発明及び周知技術(甲第2号証ないし甲第5号証等)に基づいて、甲第8号証に記載された発明を主引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正特許発明2ないし9に係る発明も、引用例(甲第6ないし9号証)に記載された発明及び周知技術(甲第2号証ないし甲第5号証等)に基づいて、甲第8号証に記載された発明を主引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。よって、本件請求項2ないし9に係る特許は、同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

明確性違反について
申立人は、請求項1の「認識枠」の定義は、その枠内の認証を受ける人の顔画像に基づいて、顔認証を行う枠(定義1)であるのか、その枠内の認証を受ける人の顔画像に基づいて、顔認証を行う枠であて、且つ認証を受ける人が、その枠内に顔を配置することを要請される枠(定義2)であるのか不明確であり、請求項2ないし9も「認識枠」という記載を含むから、請求項1の記載と同様に不明確であり、よって、本件特許発明1ないし9は、特許法第36条第6甲第2号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものである(同法第113条第4号)から、特許を取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、上記訂正事項1により訂正された請求項1の「認識枠」に係る記載は、「前記認証処理部は、前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像における認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって顔認証を行う」という記載であって、「認識枠」とは、受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとマッチングすることによって顔認証を行うために、受講者端末において撮影された画像からキャプチャする範囲を規定するための枠であることは明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
したがって、申立人の係る主張は、採用することができない。

3 小括
よって、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由によっては、本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立ての理由によっては、本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受講者端末からアクセス可能なオンライン学習システムであって、
講義動画を記憶する講義データ記憶部と、
受講者端末からの配信要求を受け付け、前記講義データ記憶部に記憶された講義動画を配信する配信制御部と、
受講者端末により撮影された画像に基づいて、前記講義動画の再生中に受講者の顔認証を行う認証処理部と、
前記認証処理部において、前記講義動画の再生中に受講者の顔認証の失敗が所定の条件を超えて続いた場合、前記受講者による当該講義動画の受講は未修了であるものとする受講進捗管理部とを備え、
前記認証処理部は、前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像における認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって顔認証を行う、
オンライン学習システム。
【請求項2】
前記認証処理部は、前記受講者端末の表示画面に、受講者端末による撮影範囲を示す認証用ウィンドウと、前記認識枠とを表示する、請求項1に記載のオンライン学習システム。
【請求項3】
前記認証処理部は、前記受講者端末の表示画面において、前記認証用ウィンドウおよび前記認識枠を、講義動画の再生ウィンドウと並べて表示する、請求項2に記載のオンライン学習システム。
【請求項4】
前記認証処理部は、前記受講者端末の表示画面において、前記認証用ウィンドウおよび前記認識枠を、講義動画の再生ウィンドウと切り替え可能に表示する、請求項2に記載のオンライン学習システム。
【請求項5】
前記配信制御部は、前記受講者端末の表示画面において、前記認証用ウィンドウおよび前記認識枠が、講義動画の再生ウィンドウから切り替えて表示された際に、講義動画の再生を一時停止する、請求項4に記載のオンライン学習システム。
【請求項6】
前記受講者の顔認証を、ランダムなタイミングで行う、請求項1〜5のいずれか一項に記載のオンライン学習システム。
【請求項7】
前記講義動画が、自動車運転免許の学科教習の講義動画または資格試験の講義動画である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のオンライン学習システム。
【請求項8】
受講者端末からアクセス可能なコンピュータのプロセッサで実行されるプログラムであって、
前記コンピュータのプロセッサに、
受講者端末からの配信要求を受け付け、講義データ記憶部に記憶された講義動画を配信する配信処理と、
受講者端末により撮影された画像に基づいて、前記講義動画の再生中に受講者の顔認証を行う認証処理と、
前記認証処理において、前記講義動画の再生中に受講者の顔認証の失敗が所定の条件を超えて続いた場合、前記受講者による当該講義動画の受講は未修了であるものとする受講進捗管理処理とを行わせ、
前記認証処理における顔認証は、前記受講者端末において前記講義動画の再生中に受講者の操作を介さずに撮影された画像における認識枠で規定された範囲内の画像をキャプチャし、キャプチャした前記範囲内の画像と受講者の顔画像として登録されている画像または特徴パターンとをマッチングすることによって行われる、
プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-02-02 
出願番号 P2020-130300
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G06Q)
P 1 651・ 537- YAA (G06Q)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 吉村 尚
藤田 年彦
登録日 2020-11-20 
登録番号 6797388
権利者 アカメディア・ジャパン株式会社
発明の名称 オンライン学習システム  
代理人 三品 明生  
代理人 三品 明生  
代理人 川上 桂子  
代理人 田端 豊  
代理人 川上 桂子  
代理人 田端 豊  
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