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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01Q |
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管理番号 | 1384148 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-07-20 |
確定日 | 2022-03-02 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6818078号発明「アンテナ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6818078号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1−15]について訂正することを認める。 特許第6818078号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6818078号の請求項1−15に係る特許についての出願は、令和元年5月10日に出願され、令和3年1月4日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月20日に特許掲載公報が発行された。 その後、その特許について、令和3年7月20日に特許異議申立人 森 泰比古(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年9月10日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である令和3年10月15日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和3年11月24日に意見書(以下、「申立人意見書」という。)を提出した。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和3年10月15日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に『車両に取り付けられるアンテナ装置であって、第1の平面に沿って設けられたモノポール型又はダイポール型のアンテナエレメントと、前記アンテナエレメントと前記車両のノイズ発生源との間に設けられ、前記アンテナエレメントに対して離間して配置された遮蔽部材であり、少なくとも一部が前記第1の平面に対向する第2の平面に沿って設けられた、該遮蔽部材と、絶縁材料から構成され、前記アンテナエレメントと前記遮蔽部材とを連結する絶縁部材と、を備え、前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なるように配置され、前記遮蔽部材が、前記車両とは別体である、アンテナ装置。』と記載されているのを、『車両に取り付けられるアンテナ装置であって、第1の平面に沿って設けられたモノポール型又はダイポール型のアンテナエレメントと、前記アンテナエレメントと前記車両のノイズ発生源との間に設けられ、前記アンテナエレメントに対して離間して配置された遮蔽部材であり、少なくとも一部が前記第1の平面に対向する第2の平面に沿って設けられた、該遮蔽部材と、絶縁材料から構成され、前記アンテナエレメントと前記遮蔽部材とを連結する絶縁部材と、を備え、前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なり、前記アンテナエレメントの一部以外の部分と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重ならないように配置され、前記遮蔽部材が、前記車両とは別体である、アンテナ装置。』に訂正する。(請求項1の記載を、直接引用する請求項2、4〜7、9〜15、間接的に引用する請求項3、8も同様に訂正する。) 2 訂正要件についての判断 (1)一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1〜15は、請求項2〜15が請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1〜15に対応する訂正後の請求項1〜15は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア 訂正事項1 (ア)訂正の目的 訂正前の請求項1は、『前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なるように配置され』るとされ、“前記アンテナエレメントの一部以外の部分”と『前記遮蔽部材の前記少なくとも一部』との配置関係について何ら特定されていなかったものを、訂正後の請求項1は、『前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なり、前記アンテナエレメントの一部以外の部分と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重ならないように配置され』るとすることで、“『前記アンテナエレメントの一部以外の部分』と『前記遮蔽部材の前記少なくとも一部』とは、前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、『重ならないように配置され』る”と特定することで、『前記アンテナエレメントの一部以外の部分』と『前記遮蔽部材の前記少なくとも一部』の配置関係を限定したものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項1による、請求項1の記載を直接引用する請求項2、4〜7、9〜15、間接的に引用する請求項3、8についての訂正についても同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無(願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること) 本願特許に係る願書に添付した明細書の段落【0027】には、「アンテナエレメント2は、一対の主面11a及び11bを有している。図1に示すように、主面11aは、Z方向から見て略長方形をなしており、一対の長辺13a,13bと、一対の短辺13c,13dを有している。一対の長辺13a,13bは、Y方向に沿って延在している。一対の短辺13c,13dは、X方向に沿って延在している。主面11aは、一対の短辺13c,13dに平行な方向、すなわちX方向において、第1の領域R1及び第2の領域R2に区画されている。第1の領域R1は、一対の長辺13a,13bのうち長辺13b側に位置する主面11a上の領域である。第2の領域R2は、一対の長辺13a,13bのうち長辺13a側に位置する主面11a上の領域である。後述するように、第1の領域R1は、Z方向から見て、遮蔽部材3に対して重なるように配置される。」と記載されている。(下線は、当審にて付与した。) また、同明細書の段落【0041】には、「また、第1の平面S1と第2の平面S2との対向方向、すなわちZ方向から見て、アンテナエレメント2の一部と遮蔽部材3の少なくとも一部とが互いに重なるように配置されている。より具体的には、Z方向から見て、アンテナエレメント2の第1の領域R1が遮蔽部材3の一部に対して重なるように配置されている。一方、Z方向から見て、アンテナエレメント2の第2の領域R2は、遮蔽部材3に対して重ならない位置に配置されている。すなわち、Z方向から見た場合に、第1の領域R1及び第2の領域R2のうち第1の領域R1のみが、遮蔽部材3に対して重なっている。したがって、ノイズ発生源からZ方向に沿ってアンテナエレメント2の第1の領域R1に向かうノイズは、遮蔽部材3によって遮断される。」と記載されている。 (下線は、当審にて付与した。) 「【図1】 」 「【図4】 」 上記段落【0027】、【0041】、【図1】、【図4】の記載事項を踏まえると、「アンテナエレメント2の第1の領域R1」は、「遮蔽部材3に対して重なるように配置される」のであるから、請求項1でいう『前記アンテナエレメントの一部』に対応するものである。 また、「アンテナエレメント2の第2の領域R2」は、「遮蔽部材3に対して重ならない位置に配置されている」のであるから、請求項1でいう『前記アンテナエレメントの一部以外の部分』に対応するものである。 さらに、遮蔽部材3において、Z方向から見た場合に第1の領域R1が重なっている部分は、請求項1でいう『前記遮蔽部材の前記少なくとも一部』に対応するものである。 してみると、『前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なり、前記アンテナエレメントの一部以外の部分と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重ならないように配置され』るとの事項は、段落【0027】、【0041】、【図1】、【図4】に記載されており、訂正事項1は、本願特許に係る願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 (ウ)特許請求の範囲の拡張・変更(実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと) 訂正事項1は、上記(ア)で述べたとおり、『前記アンテナエレメントの一部以外の部分』と『前記遮蔽部材の前記少なくとも一部』の配置関係を限定することで特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合する。 (3)独立特許要件について 本件においては、訂正前の請求項1〜15について特許異議申立てがされているので、訂正事項1に関して、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−15〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1〜15に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明15」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 車両に取り付けられるアンテナ装置であって、 第1の平面に沿って設けられたモノポール型又はダイポール型のアンテナエレメントと、 前記アンテナエレメントと前記車両のノイズ発生源との間に設けられ、前記アンテナエレメントに対して離間して配置された遮蔽部材であり、少なくとも一部が前記第1の平面に対向する第2の平面に沿って設けられた、該遮蔽部材と、 絶縁材料から構成され、前記アンテナエレメントと前記遮蔽部材とを連結する絶縁部材と、 を備え、 前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なり、前記アンテナエレメントの一部以外の部分と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重ならないように配置され、 前記遮蔽部材が、前記車両とは別体である、アンテナ装置。 【請求項2】 前記アンテナエレメントが、一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形の主面を有し、 前記主面が、前記一対の短辺に平行な方向において、前記一対の長辺のうち一方の長辺側に位置する第1の領域と、前記一対の長辺のうち他方の長辺側に位置する第2の領域と、に区画され、 前記対向方向から見た場合に、前記第1の領域及び前記第2の領域のうち前記第1の領域のみが、前記遮蔽部材に対して重なっている、請求項1に記載のアンテナ装置。 【請求項3】 前記第1の領域が前記第2の領域よりも前記車両に対して離れた位置に配置されるように、前記遮蔽部材を前記車両に取り付けるためのブラケットを更に備える、請求項2に記載のアンテナ装置。 【請求項4】 前記アンテナエレメントが、一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形の主面を有し、 前記主面が、前記一対の長辺に平行な方向において、前記一対の短辺のうち一方の短辺側に位置する第3の領域と、前記一対の短辺のうち他方の短辺側に位置する第4の領域と、に区画され、 前記対向方向から見た場合に、前記第3の領域及び前記第4の領域のうち前記第3の領域のみが、前記遮蔽部材に対して重なっている、請求項1に記載のアンテナ装置。 【請求項5】 前記遮蔽部材が、網状又は格子状の導体によって構成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項6】 前記遮蔽部材上に設けられ、前記アンテナエレメントに電気的に接続された回路基板を更に備える、請求項1〜5の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項7】 前記遮蔽部材から離間して設けられ、前記アンテナエレメントに電気的に接続された回路基板を更に備え、 前記回路基板は、カバー内に収容された状態で前記アンテナエレメントに装着され、或いは、前記車両内に配置されている、請求項1〜5の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項8】 前記回路基板及び前記アンテナエレメントに電気的に接続されたインダクタを更に備える、請求項6又は7に記載のアンテナ装置。 【請求項9】 前記遮蔽部材に電気的に接続されたアース線を更に備え、 前記アース線が10cm以下の長さを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項10】 前記遮蔽部材に電気的に接続されたアース線を更に備え、 前記アース線が、70cm以上100cm以下の長さを有する、請求項1〜8の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項11】 前記アンテナエレメント及び前記遮蔽部材の少なくとも一方は、可撓性を有する、請求項1〜10の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項12】 前記アンテナエレメントが、AM信号を受信する第1のアンテナエレメント、及び、FM信号を受信する第2のアンテナエレメントを含み、 前記対向方向から見て、前記第1のアンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが互いに重なり、前記第2のアンテナエレメントと前記遮蔽部材とが重ならないように配置されている、請求項1〜11の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項13】 前記車両のルーフの後方に設置された、請求項1〜12の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項14】 前記遮蔽部材を前記車両に取り付けるためのブラケットを更に備え、 前記アンテナエレメントは、前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記遮蔽部材に対して重なるように配置された第1の領域と、前記遮蔽部材に対して重ならないように配置された第2の領域と、を含む主面を有し、 前記ブラケットは、前記第1の領域が前記第2の領域よりも前記車両に対して離れた位置に配置されるように、前記車両に対して前記遮蔽部材を取り付け可能に構成されている、請求項1に記載のアンテナ装置。 【請求項15】 前記遮蔽部材が、前記アンテナエレメントに対向する第1板部と、前記第1板部に対して傾斜する第2板部とを有する、請求項1〜14の何れか一項に記載のアンテナ装置。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和3年7月20日に申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 本件発明1〜15は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の証拠に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1〜15に係る特許は、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。 上記1における本件発明1〜15と証拠との対応関係は、次のとおりである。 本件発明1:甲第1、2号証に記載された発明 本件発明2:甲第1、2号証に記載された発明 本件発明3:甲第1、2、3、7号証に記載された発明 本件発明4:甲第1、2、3号証に記載された発明 本件発明5:甲第1、2、4、9号証に記載された発明 本件発明6:甲第1、2号証に記載された発明 本件発明7:甲第1、2、5号証に記載された発明 本件発明8:甲第1、2、5号証に記載された発明 本件発明9:甲第1、2、6号証に記載された発明 本件発明10:甲第1、2、6号証に記載された発明 本件発明11:甲第1、2号証に記載された発明 本件発明12:甲第1、2号証に記載された発明 本件発明13:甲第1、2、7号証に記載された発明 本件発明14:甲第1、2、3、7号証に記載された発明 本件発明15:甲第1、2、3、8、9号証に記載された発明 <証拠方法> 甲第1号証:特開2010− 21856号公報 甲第2号証:特開2017−200086号公報 甲第3号証:特開2019− 71548号公報 甲第4号証:特開昭57−194133号公報 甲第5号証:実願平 1− 34993号(実開平2−126413号)のマイクロフィルム 甲第6号証:特開平 9−307334号公報 甲第7号証:特開2009−158990号公報 甲第8号証:特開2003− 17916号公報 甲第9号証:WO2017/170906号 また、申立人は、令和3年11月24日の申立人意見書において、次の参考文献1〜3を提出している。 参考文献1:特開2018−121143号公報 参考文献2:特開2015−179896号公報 参考文献3:特開2018− 74371号公報 以下、上記「甲第1号証」〜「甲第9号証」を、「甲1」〜「甲9」ともいう。 第5 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1、5、6、9〜11に係る特許に対して、当審が令和3年9月10日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 ア 請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。 よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 イ 請求項5、6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第4号証に記載される周知な技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。 よって、請求項5、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 ウ 請求項9〜11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第4号証、甲第6号証に記載される周知な技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。 よって、請求項9〜11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 甲第2号証、甲第4号証、甲第6号証は、いずれも、特許異議申立書の証拠方法である。 第6 当審の判断 1 甲号証の記載 (1)甲第2号証(特開2017−200086号公報) 甲第2号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与した。) 「【0014】 [実施形態] 図1、図2に示す本実施形態のルーフモジュール1は、車両Vに適用され、当該車両Vに搭載される各装置間を接続し電源供給や信号通信に用いられるワイヤハーネスの一部を構成する車載モジュールである。ルーフモジュール1は、車両Vの外装を構成する屋根部材であるルーフパネルRP近傍に設けられると共に、種々の機能を統合し適正な通信環境の確保を図った統合オーバーヘッドモジュールである。本実施形態のルーフモジュール1は、典型的には、車両内外における適正な通信環境の確保を図ったものであり、例えば、V2V(Vehicle to Vehicle:車車間)通信やV2I(Vehicle to Infrastructure:路車間)通信を含むV2X(Vehicle to everything)通信、ラジオ、DTV、TEL等の車室外側からの通信を受信し、情報を集約して車室内側に展開し、車室外側の通信と車室内側の通信とをリアルタイムに連携させるものである。」 「【0017】 以下、図3、図4、図5の各図を参照してルーフモジュール1の各構成について詳細に説明する。なお、以下の説明では、特に断りのない限り、ルーフモジュール1が車両Vに組み付けられた状態での位置関係で各部を説明する。 【0018】 具体的には、ルーフモジュール1は、図3、図4、図5に示すように、筐体2と、アンテナ3と、金属パネル4と、モジュール基板5とを備え、これらが一体化されモジュール化される。筐体2は、ベース21と、カバー22とを含んで構成される。ルーフモジュール1は、ルーフパネルRPの車室内側において、車室外側から車室内側に向かって、ベース21、アンテナ3、金属パネル4、モジュール基板5、カバー22の順で積層された構造となっている。ルーフモジュール1は、アンテナ3、モジュール基板5等が収容空間部SP、中空柱状のピラーPLの内部空間等に配索される電力線(電線)等を介して電源と電気的に接続され電力が供給される。同様に、ルーフモジュール1は、アンテナ3、モジュール基板5等が収容空間部SP、中空柱状のピラーPLの内部空間等に配索される通信線(電線)を介してワイヤハーネスを構成する他の車載モジュールの一部の機器と電気的に接続され、相互通信可能とされてもよい。」 「【0020】 筐体2は、ルーフモジュール1の各部を収容するものであり、ここでは、少なくともアンテナ3、金属パネル4、及び、モジュール基板5を収容するものである。筐体2は、上述したように、ベース21とカバー22と含んで構成され、ベース21とカバー22とが組み合わさって全体として中空箱状に形成される。ベース21、及び、カバー22は、絶縁性の合成樹脂によって形成される。さらに言えば、ベース21、及び、カバー22は、例えば、ルーフパネルRPの環境に適した放熱性、遮熱性に優れた合成樹脂によって形成されることが好ましい。 【0021】 ベース21は、筐体2を構成する主たる部分である。ベース21は、皿状(トレイ状)の部材である。ベース21は、収容空間部23を形成する枠状の壁体である側壁部21aと、当該側壁部21aで囲われた収容空間部23の一方の開口(車室外側の開口)を閉塞する底体である底部21bとを含み、これらが一体で形成される。底部21bは、略矩形板状に形成され、側壁部21aは、底部21bの縁部から車室内側に向けて立設されるようにして形成される。ベース21は、側壁部21a、底部21bが組み合わさって全体として、車室内側に開口を有する中空箱状に形成される。 【0022】 また、ベース21は、底部21bの車室外側の面、すなわち、ルーフパネルRPと対向する面に、ルーフパネルRPの車室内側の面への取り付け部21cを有する。取り付け部21cは、底部21bの縁部に複数、ここでは4つ設けられる。ここでは、各取り付け部21cは、凹部状に形成され、ルーフパネルRP側に設けられた係止突起部に係止され、これにより、ベース21がルーフパネルRPの車室内側の面に取り付けられる。ベース21は、当該取り付け部21cを介してルーフパネルRPの車室内側に当該ルーフパネルRPに沿って設けられる。 【0023】 カバー22は、ベース21の車室内側に積層され相互に組み付けられ、ベース21と共に筐体2を構成するものである。カバー22は、ベース21の車室内側の開口を塞ぐ蓋状のカバー部材であり、略矩形板状に形成される。カバー22は、一部が光を透過する光透過部材22aによって形成されている。また、カバー22は、後述する電子部品51の一部の動作を操作するためのボタン、スイッチ等の操作子22bが設けられる。 【0024】 ベース21とカバー22とは、ベース21の底部21bが車室外側に位置し、カバー22が車室内側に位置する位置関係で、種々の係止構造、ボルトの締結部材等を介して相互に組み付けられることで、全体として略箱状の筐体2を構成する。筐体2は、ベース21とカバー22とが組み付けられた状態で、当該ベース21と当該カバー22とによって区画された中空状の内部空間部が収容空間部23として形成される。収容空間部23は、アンテナ3、金属パネル4、及び、モジュール基板5を収容するための空間部である。 【0025】 アンテナ3は、ルーフパネルRPの車室内側に当該ルーフパネルRPに沿って面状に設けられ電波等の電磁波を送受信し、車室外側の通信機器と通信可能なものである。アンテナ3は、例えば、V2X、ラジオ(AM、FM等)、DTV(2K、4K、8K等)、TEL(PCS、CDMA、LTE、WiMAX(登録商標)、5G等)、GNSS(Global Navigation Satellite Systems(GPS、GLONASS、ガリレオ等)等、広域無線通信により車室外側の通信機器と通信する。また、アンテナ3は、例えば、ETC/DSRC、VICS(登録商標)、無線LAN、ミリ波通信等、狭域無線通信により車室外側の通信機器と通信してもよい。本実施形態のアンテナ3は、いわゆる平面アンテナであり、典型的には、ルーフパネルRPとルーフライナRLとの間に形成される収容空間部SP内に収まる略矩形板面状の薄型アンテナである。アンテナ3は、例えば、絶縁基板31の表面(ここでは車室内側の表面だがこれに限らない。)に印刷回路体として印刷された回路体32によってアンテナパターンが形成されることで構成される。また、アンテナ3は、誘電体基板とその両面に印刷配線された放射素子と地導体板を構成要素とするマイクロストリップアンテナ等によって構成されてもよい。ここでは、アンテナ3は、種々の固定機構を介してベース21の車室内側の面に固定され、当該ベース21に沿って面状に設けられる。 【0026】 金属パネル4は、金属材料によって面状に形成されアンテナ3の車室内側に当該アンテナ3に沿って設けられるものである。つまり、金属パネル4は、アンテナ3を挟んでルーフパネルRPとは反対側に設けられる。金属パネル4は、アンテナ3の車室内側の面のほぼ全面を覆うように略矩形板面状に形成される。本実施形態の金属パネル4は、ルーフパネルRPが金属材料ではなく樹脂材料によって構成される車両Vの当該ルーフパネルRPの車室内側において、あえて金属材料によって構成されることで電磁波(電波)環境を安定化させるためのものである。 【0027】 金属パネル4は、電磁波環境の安定化をもたらすための機能として、例えば、下記のような機能を有する。すなわち、金属パネル4は、例えば、ルーフパネルRPが金属材料ではなく樹脂材料によって構成される車両Vにおいて、当該車両Vの車室外側の通信環境と車室内側の通信環境とを区切る境界として機能する。ここでいう車室外側の通信環境とは、典型的には、金属パネル4の車室外側に位置する上述のアンテナ3による通信環境に相当する。一方、車室内側の通信環境とは、典型的には、金属パネル4の車室内側に位置する後述のモジュール基板5に実装される電子部品51等による通信環境に相当する。金属パネル4は、例えば、これら車室外側の通信環境と車室内側の通信環境との相互のノイズを抑制する遮蔽板(シールド部材)としても機能する。ここでは、金属パネル4は、上述のアンテナ3と後述のモジュール基板5とに挟まれて位置することから、双方の遮蔽板として機能させることができる。また、金属パネル4は、例えば、当該金属パネル4の車室外側に位置する上述のアンテナ3のグランドプレーンとしても機能する。また、金属パネル4は、上述のアンテナ3と後述のモジュール基板5との相互の伝熱を抑制すると共に放熱を促進する遮熱板としても機能する。さらに、金属パネル4は、例えば、当該金属パネル4の車室内側に位置する後述のモジュール基板5に実装される電子部品51等による無線通信の指向性を調整するものとしても機能する。また、金属パネル4は、上述のアンテナ3や後述のモジュール基板5の剛性を補うための強度部材(コア部材)としても機能する。本実施形態の金属パネル4は、上記の各種機能が統合された複合機能部材として構成される。 【0028】 金属パネル4は、例えば、電界のシールド効果を重視する場合には導電性が相対的に高い金属材料(言い換えれば、体積抵抗率が相対的に低い金属材料)によって構成されることが好ましく、典型的には、銀、銅、アルミニウム等によって構成されることが好ましい。一方、金属パネル4は、例えば、磁界のシールド効果を重視する場合には初透磁率が相対的に高い金属材料によって構成されることが好ましく、典型的には、パーマロイ、鉄、ニッケル等によって構成されることが好ましい。金属パネル4は、これらの点、及び、コスト性、加工性を考慮して、少なくとも銅、アルミニウム、又は、鉄のいずれか1つを含むものとして構成されることが好ましい。この場合、金属パネル4は、銅、アルミニウム、又は、鉄の単一の金属元素からなる純金属板として形成されてもよいし、これらの金属元素を含む合金板、例えば、銅に亜鉛等の元素を加えた合金である黄銅板、鉄に炭素、クロム、ニッケル等の元素を加えた合金である鋼板、ステンレス板等として形成されてもよい。ここでは、金属パネル4を構成する金属材料は、種々の固定機構を介してアンテナ3の車室内側の面、あるいは、筐体2のベース21に固定され、アンテナ3に沿って面状に設けられる。 【0029】 モジュール基板5は、金属パネル4の車室内側に当該金属パネル4に沿って面状に設けられ電子部品51が実装されたものである。つまり、モジュール基板5は、金属パネル4を挟んでアンテナ3とは反対側に設けられる。モジュール基板5は、複数の電子部品51、及び、当該電子部品51が実装される複数、ここでは、一例として3つの基板52を含んで構成される。 【0030】 各基板52に実装される複数の電子部品51は、各種機能を発揮するための種々の素子であり、種々の機能部品を含んで構成される。複数の電子部品51は、例えば、車室内側を照明する照明機能部品、車室内側における通信を行う通信機能部品等を含む。照明機能部品は、例えば、光を照射するLED(Light Emitting Diode)素子等の光源を含むものである。通信機能部品は、アンテナ3を介して取得した情報を集約して車室内側に展開し、車室外側と車室内側とをリアルタイムに連携させるものであり、例えば、アンテナ3で送受信する情報に対して各種処理を行う情報処理機能部品、車室内側の各種ネットワークの相互接続、中継を行う中継機能部品、車室内側の無線通信を行う無線通信機能部品、車室内側の通信制御を行う制御機能部品等を含むものである。情報処理機能部品は、例えば、同調回路を構成するチューナ等である。中継機能部品は、ネットワーク間で情報を振り分けるルータ機能部品、異なるプロトコルを用いたネットワーク同士間でプロトコルを変換し中継するゲートウェイ(G/W)機能部品等である。無線通信機能部品は、例えば、W−LAN、Wifi(登録商標)、Bluetooh(登録商標)等の近距離無線通信(NFC)等、種々の方式の送受信ユニット等である。無線通信機能部品は、金属パネル4の形状、大きさ等が調整されることで無線通信の指向性が調整される。制御機能部品は、マイコンを含む電子制御ユニット、ECU(Electronic Control Unit)等である。 【0031】 各基板52は、電子部品51が実装されるものであり、略矩形板面状に形成される。各基板52は、3つでアンテナ3の車室内側の面のほぼ全面を覆うように配置される。各基板52は、例えば、エポキシ樹脂、ガラスエポキシ樹脂、紙エポキシ樹脂やセラミック等の絶縁性の樹脂材料からなり表面に銅等の導電性の材料によって回路体53としての配線パターン(プリントパターン)が印刷回路体として印刷されたいわゆるプリント回路基板(Printed Circuit Board:PCB)を用いることができる。回路体53は、複数の電子部品51を電気的に接続し、要求される機能に応じた回路を構成する。回路体53は、スルーホール等を介して電子部品51が実装される。各基板52は、表面が実装面を構成し、当該実装面に電子部品51が実装される。本実施形態の各基板52は、一例として、車室外側の面、及び、車室内側の面の両面が実装面として構成されるがこれに限らない。モジュール基板5は、基板52の回路体53が金属パネル4を迂回して、あるいは一部を貫通して上述のアンテナ3と電気的に接続され、これにより、当該アンテナ3で送受信する種々の情報を相互に伝送することができる。なお、各基板52は、回路体53が印刷された絶縁層を複数枚積層させ多層化されたもの(すなわち、多層基板)であってもよく、また、例えば、導電性の金属材料からなる回路体としてのバスバを絶縁性の樹脂材料で被覆し基板化したバスバプレート等であってもよい。ここでは、モジュール基板5は、種々の固定機構を介して金属パネル4の車室内側の面、あるいは、筐体2のベース21に固定され、金属パネル4に沿って面状に設けられる。そして、上述した筐体2のカバー22は、このモジュール基板5の車室内側に当該モジュール基板5に沿って面状に設けられる。つまり、カバー22は、モジュール基板5を挟んで金属パネル4とは反対側に設けられる。 【0032】 上記のように構成されるルーフモジュール1は、例えば、筐体2のベース21内の収容空間部23に車室外側から車室内側に向かって順にアンテナ3、金属パネル4、モジュール基板5が積層されて設けられると共に、モジュール基板5の車室内側から筐体2のカバー22がベース21に組み付けられることでこれらの構成要素が一体化される。そして、ルーフモジュール1は、各構成要素が一体化された状態で、ルーフパネルRP側に設けられた係止突起部にベース21の各取り付け部21cが係止されることで、ルーフパネルRPの車室内側の面に取り付けられ、ルーフパネルRPとルーフライナRLとの間の収容空間部SP内に収容される。ルーフモジュール1は、カバー22の光透過部材22a、操作子22bを含む部分がルーフライナRLに形成された開口RLa(図5参照)から露出しており、これにより、光透過部材22aを介して電子部品51のうちの照明機能部品が照射した光を車室内側に透過し車室内側を照らすと共に、操作子22bへの操作を受け付けることができる。そして、ルーフモジュール1は、アンテナ3によって車室外側からの通信を受信すると共に、モジュール基板5によって当該通信で取得された情報等を集約して車室内側に展開し、車室外側の通信と車室内側の通信とをリアルタイムに連携させることができる。 【0033】 以上で説明したルーフモジュール1によれば、樹脂材料によって面状に形成され車両Vの外装を構成するルーフパネルRPの車室内側に当該ルーフパネルRPに沿って面状に設けられ電磁波を送受信するアンテナ3と、金属材料によって面状に形成されアンテナ3の車室内側に当該アンテナ3に沿って設けられた金属パネル4とを備える。」 「【0042】 また、以上で説明したルーフモジュール1、1Aは、筐体2自体を備えなくてもよく、また、モジュール基板5も備えなくてもよい。 【0043】 また、以上で説明したルーフモジュール1、1Aは、アンテナ3とモジュール基板5との間に金属パネル4が設けられるものとして説明したがこれに限らず、金属パネル4がアンテナ3より車室内側に設けられる構成であればよく、例えば、金属パネル4がモジュール基板5の車室内側に設けられる構成であってもよい。」 「【図1】 」 「【図3】 」 「【図4】 」 「【図5】 」 そして、上記【図3】、【図4】の記載を参酌すると、絶縁基板31の表面に印刷されたアンテナパターンの態様として、ミアンダ状のアンテナパターンと棒状のアンテナパターンが例示されている。 以上を踏まえると、甲第2号証には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「車両Vに適用され、当該車両Vに搭載される各装置間を接続し電源供給や信号通信に用いられるワイヤハーネスの一部を構成する車載モジュールであるルーフモジュール1であって(【0014】)、 ルーフモジュール1は、筐体2と、アンテナ3と、金属パネル4と、モジュール基板5とを備え、これらが一体化されモジュール化され、ルーフパネルRPの車室内側において、車室外側から車室内側に向かって、ベース21、アンテナ3、金属パネル4、モジュール基板5、カバー22の順で積層された構造となっており(【0018】)、 筐体2は、ルーフモジュール1の各部を収容するものであり、少なくともアンテナ3、金属パネル4、及び、モジュール基板5を収容するものであり、ベース21とカバー22と含んで構成され、ベース21とカバー22とが組み合わさって全体として中空箱状に形成され、ベース21、及び、カバー22は、絶縁性の合成樹脂によって形成され(【0020】)、 アンテナ3は、広域無線通信により車室外側の通信機器と通信する、絶縁基板31の表面に印刷回路体として印刷された回路体32によって、ミアンダ状のアンテナパターンと棒状のアンテナパターンが形成されることで構成され、種々の固定機構を介してベース21の車室内側の面に固定され(【0025】、【図3】、【図4】)、 金属パネル4は、金属材料によって面状に形成されアンテナ3の車室内側に当該アンテナ3に沿って設けられ、電磁波環境の安定化をもたらすための機能として、ルーフパネルRPが金属材料ではなく樹脂材料によって構成される車両Vにおいて、当該車両Vの車室外側の通信環境と車室内側の通信環境とを区切る境界として機能するとともに、車室外側の通信環境と車室内側の通信環境との相互のノイズを抑制する遮蔽板(シールド部材)としても機能し、金属パネル4を構成する金属材料は、種々の固定機構を介してアンテナ3の車室内側の面、あるいは、筐体2のベース21に固定され(【0026】〜【0028】、【図3】、【図4】)、 モジュール基板5は、金属パネル4の車室内側に当該金属パネル4に沿って面状に設けられ電子部品51が実装される基板52の回路体53が金属パネル4を迂回して、あるいは一部を貫通して上述のアンテナ3と電気的に接続され、当該アンテナ3で送受信する種々の情報を相互に伝送することができ(【0029】、【0031】)、 金属パネル4がアンテナ3より車室内側に設けられる構成であればよく、金属パネル4がモジュール基板5の車室内側に設けられる構成であってもよい(【0042】、【0043】)、 ルーフモジュール1。」 (2)甲第4号証(特開昭57−194133号公報) 甲第4号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与した。) 「第4、5図は本発明の第1実施例を示すもので、従来と同じプラスチックや紙、木、布などの不導体(絶縁物)よりなるリヤパーセルシエルフ21の下面に銅、アルミニウム、鉄、黄銅等の電気の良導体よりなる薄膜22を貼り合わせたものである。・・・途中省略・・・したがって、薄膜22はワイヤハーネス12より出る雑音電波20を吸収し、ラジオに雑音が入るのを防止できるものである。 第6図は本発明の第2実施例を示すもので、導体の薄膜22のかわりにます目1mm角程度の網に編組みした網体22aをリヤパーセルシエルフ21の下面に設けたものである。」(公報第2頁左上欄第16行〜同右上欄第11行) 「第6図 」 以上を踏まえると、甲第4号証には以下の技術(以下「甲4記載技術」という。)が記載されている。 「プラスチックや紙、木、布などの不導体(絶縁物)よりなるリヤパーセルシエルフ21の下面に貼り合わされた銅、アルミニウム、鉄、黄銅等の電気の良導体よりなる薄膜22は、ワイヤハーネス12より出る雑音電波20を吸収し、ラジオに雑音が入るのを防止できるものであり、導体の薄膜22のかわりにます目1mm角程度の網に編組みした網体22aを設けること。」 (3)甲第6号証(特開平9−307334号公報) 甲第6号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与した。) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、車両等のガラスウインドに設けられるアース付きの車載用アンテナ装置及びアンテナのためのアース構造に関するものである。」 「【0078】かくして、端開放型アース線は、ネジ止め、接着、接地パターンなどの何らかの構成が必要であった従来のアース方法または本実施形態のアース板(図11)に比して、アースをとることが極めて簡易になるという効果がある。組立上極めて有利な構成を有する端開放型アース線のアースとしての性能を以下に説明する図68〜図73は、第1実施形態の凸型アンテナ10に端開放型アース線を接続して、90MHz〜230MHzの帯域のTV電波を受信した際に、端開放型アース線の長さを色々と変えたときのVSWR特性を示す。比較のために、図74に同アンテナ10と図11のアース板とを組み合わせたときのVSWR特性図を、図75に同アンテナ10にアースを設けないときのVSWR特性図を、図76に同アンテナ10を車体に直接アース(アース線の長さは15cm程度)したときのVSWR特性図を示す。ボデイへの直接アースもしくはアース板を設けることが、アースの機能を最大限に発揮させ得るという観点からみて最も好ましいとすれば、図74もしくは図76に示したVSWR特性がアンテナ10(図3)のためのアースとしては理想的であり、従って、このVSWR特性に最も近い図72若しくは図73の特性を有する端開放型アース線、即ち、長さ50cm〜60cmのアース線が好ましいということになる。 【0079】このように、端開放型アース線の長さを受信電波の波長に応じてδ・λ/4(ここで、δはアース線と車体との間に介在する物質の線路短縮率)に設定することにより、設定が簡単で最適な受信性能のアース線を提供することができる。次に、端開放型アース線の受信感度に与える影響について説明する。図77〜図84は、図3に示した凸型アンテナ10(図面上ではT型アンテナとも呼ぶ)の受信感度を示す。図77,図79,図81,図83において、曲線Iは端開放型アース線をアンテナ10に接続したときのアンテナ10の特性を、破線IIは比較対象のアース板(図7)をアンテナ10に接続したときのアンテナ10の特性を示す。特に、図77,図78は88〜110MHz帯の電波を受信するために端開放型アース線の長さを90cmに設定したときの受信感度を示し、図78から感度としては十分な平均感度−13.3dBを得ていることが分かる。また、図79,図80は170〜225MHz帯の電波を受信するために端開放型アース線の長さを53.5cmに設定したときの受信感度を示し、図80から感度としては十分な平均感度−12.3dBを得ていることが分かる。また、図81,図82は170〜225MHz帯の電波を受信するために端開放型アース線の長さを30cmに設定したときの受信感度を示し、図82から感度としては十分な平均感度−12.3dBを得ていることが分かる。また、図83,図84は470〜770MHz帯の電波を受信するために端開放型アース線の長さを20cmに設定したときの受信感度を示し、図84から感度としては十分な平均感度−17.4dBを得ていることが分かる。 【0080】また、図77,図79,図81,図83のグラフは、端開放型アース線がその長さを適切に設定すれば、アース板に遜色のない特性を発揮することを物語っている。図87は、470MHz 〜770MHz帯の電波を図4の長枠形状のアンテナ20により受信した場合の感度を示し、図中、実線Iは端開放型アース線の長さを10cmに設定し、破線IIはアース板を用いたときの特性を示す。」 以上を踏まえると、甲第6号証には以下の技術(以下「甲6記載技術」という。)が記載されている。 「車両等のガラスウインドに設けられるアース付きの車載用アンテナ装置及びアンテナのためのアース構造において、 端開放型アース線の長さを受信電波の波長に応じてδ・λ/4(ここで、δはアース線と車体との間に介在する物質の線路短縮率)に設定することにより、設定が簡単で最適な受信性能のアース線を提供することができる。」 (4)甲第1号証(特開2010−21856号公報) 甲第1号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与した。) 「【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 このような従来のアンテナ装置100では、アンテナ装置100を車体に取り付けた際に、エレメント110が車体から大きく突出しているため車両の美観・デザインを損ねると共に、車庫入れや洗車時等に倒したロッド部を起こし忘れた場合、アンテナ性能が失われたままになるという問題点があった。また、アンテナ装置100は車外に露出しているため、エレメント110が盗難にあう恐れも生じる。そこで、アンテナケース内にアンテナを収納した車載用のアンテナ装置が考えられる。この場合、車両から突出するアンテナ装置の高さは車両外部突起規制により70mm以下の高さに制限されると共に、車両の美観を損ねないよう長手方向の長さも160〜220mm程度が好適とされる。このようなアンテナの放射抵抗Rradは、600〜800×(高さ/波長)2として表されるようにアンテナの高さの2乗に比例してほぼ決定されるようになる。例えば、アンテナ装置100においてエレメント110を回動させて、アンテナ高を図70に示す約195mmから図71に示す約70mmに低くすると約7dBも感度が劣化するようになる。このように、単純にエレメント110の高さを低くすると性能が大きく劣化して実用化が困難になるという問題点があった。さらに、アンテナを70mm以下の低姿勢とすると放射抵抗Rradが小さくなってしまうことから、アンテナそのものの導体損失の影響により放射効率が低下しやすくなって、さらなる感度劣化の原因になるという問題点があった。 【0005】 そこで、本発明は70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできるAM放送とFM放送を受信可能なアンテナ装置を提供することを目的としている。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記目的を達成するために、本発明は、アンテナケースと、該アンテナケース内に収納されるアンテナ部とを備え、取り付けられた際に約70mm以下の高さで突出するアンテナ装置であって、アンテナケースの下端に嵌着されるアンテナベース上に、アンテナパターンが上部に形成されているアンテナ基板が立設され、アンテナ基板を跨ぐように断面形状が山形に形成されたトップ部が配置されており、トップ部の斜面とされた側部の下縁とアンテナベースとの間隔が約10mm以上とされ、トップ部の大きさが、トップ部とアンテナパターンからなるアンテナエレメントのアンテナ容量が約3pF以上となる大きさとされていることを最も主要な特徴としている。 【発明の効果】 【0007】 本発明によれば、トップ部の断面形状が山形に形成されていることから、トップ部の斜面とされた側部とアンテナベースとの対向面積を極力小さくすることができるようになって、アンテナ容量における無効容量分を極力小さくすることができる。併せて、トップ部の斜面とされた側部の下縁とアンテナベースとの間隔が約10mm以上とすると共に、トップ部とアンテナパターンからなるアンテナエレメントのアンテナ容量が約3pF以上となる大きさとしたことにより、取り付けられた際に70mm以下の高さで突出するアンテナ装置としても、約195mmの高さとなる従来のアンテナ装置とほぼ同等のアンテナ性能を得ることができるようになる。 【0008】 本発明の実施例にかかるアンテナ装置の構成を図1ないし図6に示す。ただし、図1は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す平面図であり、図2は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す正面図であり、図3は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す側面図であり、図4は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成を示す平面図であり、図5は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成を示す正面図であり、図6は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成を示す右側面図である。 これらの図に示す本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は、車両のルーフに取り付けられるアンテナ装置とされており、車両に取り付けられた際に車両から突出する高さhは約70mmとされている。アンテナ装置1は極めて低姿勢(周波数100MHzの波長をλとすると、高さhは約0.0023λ以下)とされているが、AM放送とFM放送を受信することが可能とされている。このアンテナ装置1の形状は先端に行くほど細くなる流線型とされており、車両の美観・デザインを損ねないようある程度の範囲内において自由に形状を決定することができる。そして、アンテナ装置1の下面には、ゴム製またはエラストマー製の柔軟なベースパッドが嵌着されており、車両に水密に取り付けることができるようにされている。 【0009】 本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は、樹脂製のアンテナケース10と、このアンテナケース10の下部が嵌着されている金属製のアンテナベース20と、アンテナベース20に垂直に取り付けられているアンテナ基板30および平行に取り付けられているアンプ基板34と、頂部と、該頂部の両側から斜面とされた側部形成されて断面形状が山形に形成され、アンテナ基板30を跨ぐように上に配置されているトップ部31と、アンテナベース20上に取り付けられているGPSアンテナ32とを備えている。アンテナケース10は電波透過性の合成樹脂製とされており、先端に行くほど細くなる流線型の外形形状とされている。アンテナケース10内には、立設されたアンテナ基板30およびアンテナ基板30の上部に配置されたトップ部31を収納できる空間と、アンプ基板34を横方向に収納する空間が形成されている。アンテナケース10の下面には金属製のアンテナベース20が嵌着されている。そして、アンテナベース20にアンテナ基板30が立設して固着され、アンテナ基板30の前方にアンプ基板34がアンテナベース20にほぼ平行に固着されている。アンテナ基板30の上部には後述するように、アンテナパターンが形成されている。また、アンテナケース10内の上部にトップ部31が内蔵されている。そして、アンテナケース10をアンテナベース20に嵌着することにより、アンテナケース10に内蔵されたトップ部31がアンテナ基板30の上部を跨ぐように配置され、アンテナ基板30の上部に取り付けられた接続金具36がトップ部31の内面に電気的に接触するようになる。接続金具36は、アンテナ基板30に形成されているアンテナパターンに電気的に接続されていることから、接続金具36を介してトップ部31とアンテナパターンとが接続されるようになる。これにより、アンテナパターンとトップ部31とによりアンテナエレメントが構成され、アンテナケース10内の空間にアンテナ基板30とトップ部31とアンプ基板34とが収納されるようになる。 【0010】 アンテナ基板30上には、アンテナパターンとトップ部31とにより構成されるアンテナエレメントをFM波帯付近で共振させるためのコイル35が設けられている。コイル35の一端はアンテナパターンに接続され、コイル35の他端はアンテナ基板30上に形成されているパターンの一端に接続され、このパターンの他端には接続線33の一端が接続される。接続線33の他端はアンプ基板34に設けられているAM/FMアンプの入力部に接続され、アンテナパターンとトップ部31とにより構成されるアンテナエレメントにより受信されたAM/FM受信信号がAM/FMアンプに入力されて増幅されるようになる。また、アンテナベース20の下面からは、アンテナ装置1を車両に取り付けるためのボルト部21が突出するよう形成されている。また、アンテナ装置1から受信信号を車両内に導くためのケーブル22がアンテナベース20の下面から導出されている。このケーブル22はアンプ基板34から導出されており、アンプ基板34に設けられているAM/FMアンプにより増幅されたAM受信信号およびFM受信信号を導くケーブルが含まれており、カラー45により束ねられている。この場合、ボルト部21およびケーブル22が挿通される穴が車両のルーフに形成され、これらの穴にボルト部21およびケーブル22が挿通されるようルーフ上にアンテナ装置1を載置する。そして、車両内に突出したボルト部21にナットを締着することによりアンテナ装置1を車両のルーフに固着することができる。また、アンテナケース10内に収納されているアンプ基板34への電源は、車両内からケーブル22によりアンプ基板34に供給される。」 「【0013】 図7に示すようにして組み立てられたアンテナ装置1の構成を図8ないし図11に示す。ただし、図8は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す平面図であり、図9は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す正面図であり、図10は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す右側面図であり、図11は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す下面図である。ただし、図8ないし図11においてはアンテナケース10およびベースパッド24を省略して示している。 これらの図の説明は前述した通りであるから説明は省略するが、アンテナ基板30は2本のネジ41によりアンテナベース20に立設して取り付けられており、アンテナ基板30の下端には切欠30iが形成されて、この切欠30iに一部収納されるようGPSアンテナ32をアンテナベース20に取り付けることができる。GPSアンテナ32が取り付けられた場合は、GPSアンテナ32からもケーブル22に沿ってケーブルが導出される。また、アンテナ基板30の上部を跨ぐように配置されたトップ部31の斜面とされた側部の下縁とアンテナベース20の上面との間隔がh10とされ、間隔h10は例えば約34.4mmとされている。なお、GPSアンテナ32は必要とされる場合に限って取り付けられる。また、トップ部31の後部は斜めに切り取られてアンテナベース20の後端より後方へ突出されており、アンテナベース20との対向面積が極力低減されている。」 「【0016】 トップ部31の長さをL20、後端の幅をw20、前端の幅をw21、高さをh20とした際に、例えば長さL20は約106mm、後端の幅w20は約28mm、前端の幅w21は約19mm、高さh20は約28mmとされる。また、トップ部31の頂部の細い幅w22は約4mmとされる。トップ部31の第1側部31aと第2側部31bの斜面を急傾斜の斜面とするのは、アンテナケース10の内側の断面形状にあわせるためでもあるが、主に、トップ部31とアンテナベース20との対面する面積を低減させて、トップ部31とアンテナベース20間の浮遊容量を減少させるためである。この浮遊容量は、アンテナ容量の内の無効容量となってアンテナのゲインを低減させる要因となる。また、トップ部31の後部は斜めに切り取られてアンテナベース20との対向面積を極力低減させている。 【0017】 図19(a)(b)にコイル35の構成を示す。コイル35は、トップ部31とアンテナ基板30に形成されたアンテナパターンからなる小さなアンテナ容量のアンテナエレメントをFM波帯付近で共振させるためのものである。図19(a)はコイル35の構成を示す正面図、図19(b)はコイル35の構成を示す側面図である。これらの図に示すコイル35は、コイルが巻回された円筒状のコイル本体35aと、コイル本体35aから引き出された2本の引出線35bを有している。コイル35は、FM波帯付近で共振させるためにアンテナエレメントに直列に接続される。前述したように、アンテナ装置1のアンテナエレメントは、トップ部31とアンテナ基板30に形成されているアンテナパターンとにより構成されるが、このアンテナエレメントのアンテナ容量は約4.7pF程度であることから、0.5μH〜3μH程度のコイル35を直列に挿入することにより、アンテナエレメントをFM波帯付近で共振できるようにしている。これにより、トップ部31とアンテナパターンからなるアンテナエレメントは、コイル35の作用によりFM波帯において良好に動作するようになる。なお、このFM波帯で共振するアンテナエレメントをAM波帯では電圧受信素子として利用することにより、AM波帯を受信するようにしている。」 「【0026】 次に、図34および図35にアンテナ基板30の構成を示す。ただし、図34はアンテナ基板30の構成を示す正面図であり、図35はアンテナ基板30の構成を示す側面図である。 これらの図に示すアンテナ基板30は、高周波特性の良好なガラスエポキシ基板等のプリント基板とされている基板本体30aを備え、基板本体30aには矩形状の部分の上部から突出する突出部30fと左下部から左側へ突出する部分が形成されている。基板本体30aの上部と突出部30fにはアンテナパターン30bが両面に形成されており、左側の周縁にはアンテナパターン30bの下から細長いパターンが左下部から突出する部分にかけて両面に形成されている。また、突出部30fは接続金具36を挿着する部位とされ、突出部30fの上端の両側には接続金具36の位置決めのための突起30hがそれぞれ形成されている。基板本体30aの下部には2つの取付孔30dが形成されており、取付孔30dの間に切欠30iが形成されている。この取付孔30dの周囲にはリング状のパターンが両面に形成されており、取付孔30dにそれぞれネジ41が挿通されてアンテナベース20のネジ部20dに螺着されることにより、アンテナ基板30がアンテナベース20に立設して取り付けられる。また、切欠30iに一部収納されるようGPSアンテナ32がアンテナベース20に取り付けられる。」 「【0032】 本発明のアンテナ装置1においてはトップ部31をアンテナベース20の後端より後方へ突出すると平均利得およびS/N比が向上するようになる。そこで、トップ部31をアンテナベース20の後端より後方へ突出させた際の基礎実験におけるアンテナ装置1の態様を図40ないし図43に示し、その際に得られた基礎実験データを図44ないし図50に示す。 図40は基礎実験に用いたアンテナ装置1の構成を示す平面図であり、図41は基礎実験に用いたアンテナ装置1の構成を示す正面図であり、図42は基礎実験に用いたアンテナ装置1の構成を示す右側面図である。これらの図に示すように、アンテナ装置1におけるトップ部31−1の形状は実施例のトップ部31と若干異なっているが長さや幅の寸法はほぼ同様とされており、アンテナエレメントとしてはほぼ同様の電気的性能を奏している。トップ部31−1は、頂部がほぼ平坦に形成されて両側部は下方へ向かって急傾斜の斜面とされている。トップ部31−1の後部は斜めに切り取られてアンテナベース20との対向面積を極力低減させている。このトップ部後方突出長さの基礎実験では、図40,図41に示すように標準の位置からのトップ部31−1の移動量LをL1,L2,L3,L4と後方へ移動しており、ここでは、移動量L1,L2,L3,L4をそれぞれ約10mm、約20mm、約30mm、約40mmとしている。なお、図43はトップ部31−1の移動量Lを約40mm(L4)とした際の構成を示す正面図とされている。」 「【0035】 次に、標準の位置からのトップ部31−1の後方への移動量LをL1,L2,L3,L4と後方へ移動した際のFM波帯におけるS/N比の周波数特性を図48ないし図50に示す。図48ないし図50はFM波帯における周波数において、トップ部31−1の後方への移動量Lが0mmを基準として、S/N比が30dB得られるアンテナ入力値を0dBに基準化し、移動量Lを0mmから約10mm、約20mm、約30mm、約40mmと移動していった際に30dBのS/N比が得られるアンテナ入力値を、基準化されたアンテナ入力値に対する入力改善値[dB]として示している。図48は周波数を下限値の76MHzとした際の移動量Lである突出長さLに対する入力改善値を示しており、図49は周波数をほぼ中心周波数の83MHzとした際の移動量Lである突出長さLに対する入力改善値を示しており、図50は周波数を上限値の90MHzとした際の移動量Lである突出長さLに対する入力改善値を示している。これらの図を参照すると、76MHzの周波数においては、突出長さLが大きくなるほど入力改善値が向上されていき、突出長さLが40mmとされた際に約1.2dB向上されるようになる。また、83MHzの周波数においても、突出長さLが大きくなるほど入力改善値が向上されていき、突出長さLが40mmとされた際に約0.6dB向上されるようになる。さらに、90MHzの周波数においても、突出長さLが大きくなるほど入力改善値が向上されていき、突出長さLが40mmとされた際に約1.3dB向上されるようになる。このように、FM波帯においても突出長さLを大きくするほどS/N比が向上されるようになる。 上記した基礎実験から、トップ部31を後方へ移動するほどグランドからの間隔が大きくなって、グランドとトップ部31間の浮遊容量が減少されて、AM波帯においてもFM波帯においてもゲインおよびS/N比が向上することが分かる。」 「【0039】 次に、トップ部31−2の高さHをH1,H2,H3,H4と次第に高くした際のFM波帯におけるS/N比の周波数特性を図60ないし図62に示す。図60ないし図62はFM波帯における周波数において、トップ部31−2のアンテナベース20からの高さHが30mmを基準として、S/N比が30dB得られるアンテナ入力値を0dBに基準化し、高さHを5mmから約10mm、約20mm、約30mmと移動していった際に30dBのS/N比が得られるアンテナ入力値を、基準化されたアンテナ入力値に対する入力改善値を示しており、図60は周波数を下限値の76MHzとした際の高さHに対する入力改善値を示しており、図61は周波数をほぼ中心周波数の83MHzとした際の高さHに対する入力改善値を示しており、図62は周波数を上限値の90MHzとした際の高さHに対する入力改善値を示している。これらの図を参照すると、76MHzの周波数においては、高さHが5mmとされた際に約6.4dB劣化しているが、高さHが大きくなるほど入力改善値が向上されていき、高さHが30mmとされた際に0dBまで向上するようになる。また、83MHzの周波数においても、高さHが5mmとされた際に約7.5dB劣化しているが、高さHが大きくなるほど入力改善値が向上されていき、高さHが30mmとされた際に0dBまで向上するようになる。さらに、90MHzの周波数においても、高さHが5mmとされた際に約4.5dB劣化しているが、高さHが大きくなるほど入力改善値が向上されていき、高さHが30mmとされた際に0dBまで向上するようになる。このように、FM波帯においても高さHを高くするほどS/N比が向上されるようになる。 上記した基礎実験から、トップ部31のアンテナベース20からの高さHを高くするほどアンテナベース20とされるグランドからの間隔が大きくなって、グランドとトップ部31間の浮遊容量が減少されるようになる。ここでは、高さHを約10mm以上とするとAM波帯においてもFM波帯においてもゲインおよびS/N比が向上することが分かる。 【0040】 次に、本発明のアンテナ装置1においてトップ部31のアンテナベース20に対面する面積を変化させた際のアンテナ容量の基礎実験データを得る基礎実験について説明する。本発明のアンテナ装置1の等価回路を図69に示す。等価回路におけるアンテナエレメント部50は、トップ部31とアンテナ基板30に形成されているアンテナパターン30bとにより構成されており、アンテナエレメント誘起電圧源V0とアンテナ全体容量Caとが直列に接続されている。アンテナエレメント部50から出力される受信信号はアンプ基板34に設けられているアンプ回路部51に入力される。アンプ回路部51にはアンプAMPが設けられており、入力された受信信号が増幅されて出力端OUTから出力される。また、アンプ回路部51の入力側にはグランドとの間にアンプ入力部容量とされる無効容量Ciが接続されている。無効容量Ciは、アンテナエレメント部50のグランドに対する浮遊容量により発生する。アンプAMPに入力される受信信号のアンテナ入力部電圧Viは次式(1)で求められる。 Vi=V0・Ca/(Ca+Ci) (1) (1)式で示されるように、無効容量Ciが小さいほどアンプAMPに入力されるアンテナ入力部電圧Viは大きくなって、アンテナ装置1のゲインが向上することがわかる。」 「【0042】 次に、図64(a)(b)に示すトップ部31−3は横の長さa2が約50mm、縦の長さb2が約25mmとされており、図64(a)はトップ部31−3がアンテナベース20に立設されたアンテナ基板30上に垂直に配置された構成を示す正面図であり、アンテナ基板30の高さがクリアランスSとされている。図64(b)はトップ部31−3がアンテナベース20に立設されたアンテナ基板30上に水平に配置された構成を示す側面図であり、アンテナ基板30の高さがクリアランスSとされている。図64(a)(b)に示す第2の構成において、クリアランスSを約10mmから約50mmまで変化させた際のアンテナ容量の変化特性を図67に示す。図67を参照すると、図64(a)に示すようにトップ部31−3を垂直に配置した場合は、クリアランスSが10mmの時に最大となってアンテナ容量は約2.1pFとなり、クリアランスSが大きくなるにつれて減少していきクリアランスSが40mmとされた際にアンテナ容量は約1.3pFとなる。また、図64(b)に示すようにトップ部31−3を水平に配置した場合はアンテナベース20との対向面積が大きくなり、クリアランスSが10mmの時に最大となってアンテナ容量は約3pFとなり、クリアランスSが大きくなるにつれて減少していきクリアランスSが40mmとされた際にアンテナ容量は約1.4pFとなる。」 「【0044】 アンテナ容量はアンテナ全体容量Caと無効容量Ciとの和であり、無効容量Ciは、アンテナエレメント部50とグランドとの対向面積により生じる浮遊容量であることから、トップ部31−3を横に配置した際に、トップ部31−3とアンテナベース20との対向面積が大きくなって無効容量Ciが大きくなる。この無効容量CiはクリアランスSに反比例して減少することから、クリアランスSが大きくなるにつれてアンテナ容量は減少していく。この場合、減少していく容量は無効容量Ciに基づく容量であってアンテナ全体容量CaはクリアランスSが変化しても変化しない。従って、図66ないし図68のアンテナ容量の変化特性に示されるように、無効容量Ciはトップ部31−3とアンテナベース20との対向面積を少なくすることにより小さくなることが分かる。このように、トップ部31−3の面積を小さくするほど無効容量Ciは小さくなるが、トップ部31−3の面積を大きくしても垂直に配置することにより無効容量Ciを小さくすることができる。そこで、本発明の実施例のアンテナ装置1におけるトップ部31においては、頂部から両側に急傾斜の斜面とされた第1側部31aと第2側部31bで構成することにより、アンテナベース20との対向面積を低減させて、無効容量を小さくしているのである。 【産業上の利用可能性】 【0045】 以上説明した本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は低姿勢とされて、約70mm以下の高さとされる。アンテナ装置1では、前述したようにトップ部31とアンテナ基板30に形成されているアンテナパターン30bとによりアンテナエレメントが構成されるが、このアンテナエレメントのアンテナ容量は約4.7pFとなる。この場合、トップ部31の下縁からアンテナベース20の上面までの高さh10は約34.4mmとされ、トップ部31の寸法は前述した寸法とされる。本発明のアンテナ装置1におけるアンテナ容量としては、アンテナエレメントがアンテナとして有効に機能するように約3pF以上とすることが好適とされる。そして、無効容量を低減するためにクリアランスSで示されるトップ部31の下縁からアンテナベース20の上面までの高さh10は約10mm以上とすることが好適とされる。また、トップ部31の後部をアンテナベース20の後端より後方へ突出するよう移動させることにより、電気的特性を向上することができる。さらに、トップ部31の形状は図15ないし図18に示す形状に限るものではなく、図40ないし図43に示すトップ部31−1の形状としてもよい。 上記の説明では金属板からなるトップ部をアンテナケース内に取り付けることにより内蔵するようにしたが、トップ部をアンテナケース内の上部内面に蒸着あるいは貼着することにより、トップ部をアンテナケース内に内蔵させるようにしてもよい。また、本発明にかかるアンテナ装置は車両のルーフやトランクに取り付けられる車載用としたが、これに限るものではなくAM波帯とFM波帯を受信するアンテナ装置であれば適用することができる。」 「【図4】 」 「【図5】 」 「【図6】 」 「【図15】 」 「【図16】 」 「【図18】 」 「【図34】 」 「【図43】 」 「【図54】 」 「【図55】 」 「【図63】 」 「【図64】 」 以上を踏まえると、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできるAM放送とFM放送を受信可能な、車両のルーフに取り付けられ、車両に取り付けられた際に車両から突出する高さhは約70mmとされているアンテナ装置1であって(【0005】、【0008】)、 樹脂製のアンテナケース10と、このアンテナケース10の下部が嵌着されている金属製のアンテナベース20と、アンテナベース20に垂直に取り付けられているアンテナ基板30および平行に取り付けられているアンプ基板34と、頂部と、該頂部の両側から斜面とされた側部形成されて断面形状が山形に形成され、アンテナ基板30を跨ぐように上に配置されているトップ部31と、アンテナベース20上に取り付けられているGPSアンテナ32とを備え(【0009】)、 アンテナケース10をアンテナベース20に嵌着することにより、アンテナケース10に内蔵されたトップ部31がアンテナ基板30の上部を跨ぐように配置され、アンテナ基板30の上部に取り付けられた接続金具36がトップ部31の内面に電気的に接触するようになり、接続金具36は、アンテナ基板30に形成されているアンテナパターンに電気的に接続されていることから、接続金具36を介してトップ部31とアンテナパターンとが接続されることにより、アンテナパターンとトップ部31とによりアンテナエレメントが構成され、アンテナケース10内の空間にアンテナ基板30とトップ部31とアンプ基板34とが収納されるようになり(【0009】)、 アンテナ基板30は、高周波特性の良好なガラスエポキシ基板等のプリント基板とされている基板本体30aを備え、基板本体30aには矩形状の部分の上部から突出する突出部30fと左下部から左側へ突出する部分が形成されており、基板本体30aの上部と突出部30fにはアンテナパターン30bが両面に形成されており、左側の周縁にはアンテナパターン30bの下から細長いパターンが左下部から突出する部分にかけて両面に形成されており、また、突出部30fは接続金具36を挿着する部位とされ、突出部30fの上端の両側には接続金具36の位置決めのための突起30hがそれぞれ形成され、基板本体30aの下部には2つの取付孔30dが形成されており、取付孔30dの間に切欠30iが形成され、この取付孔30dの周囲にはリング状のパターンが両面に形成されており、取付孔30dにそれぞれネジ41が挿通されてアンテナベース20のネジ部20dに螺着されることにより、アンテナ基板30がアンテナベース20に立設して取り付けられ(【0026】)、 さらに、トップ部31の斜面とされた側部の下縁とアンテナベースとの間隔が約10mm以上とされ、トップ部の大きさが、トップ部とアンテナパターンからなるアンテナエレメントのアンテナ容量が約3pF以上となる大きさとされている(【0006】)、 アンテナ装置1。」 (5)甲第3号証(特開2019−71548号公報) 甲第3号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与した。) 「【0023】 以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の車両ボディ埋め込み型アンテナ装置の概要を説明するための概略斜視図である。また、図2は、本発明の車両ボディ埋め込み型アンテナ装置の詳細を説明するための概略図であり、図2(a)が上面図であり、図2(b)が一部断面側面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、本発明の車両ボディ埋め込み型アンテナ装置は、アンテナエレメント10と、回路基板20と、コイル30と、接地用ブラケット40とから主に構成されている。例えばこれらの構成要素が、車両ボディ、例えば、車両ルーフRに埋め込まれれば良い。また、スポイラに内蔵されても良い。 【0024】 アンテナエレメント10は、車両のルーフ面に略平行な平面板状部を有するものである。そして、アンテナエレメント10は、ルーフ面に略平行に配置されることから、ルーフ面に略平行な偏波を主偏波とするアンテナである。より具体的には、例えば車両のトップルーフに配置される場合、アンテナエレメント10は、水平偏波を主偏波とするものとなる。アンテナエレメント10は、平面形状を有する接地型アンテナであり、例えばモノポールアンテナのように機能すれば良い。図示例では、アンテナエレメント10は、車両ルーフRに設けられたボディ開口部15に配置された例を示した。アンテナエレメント10は、第1周波数帯に対応する容量アンテナとして機能するようなアンテナ容量を有する。ここで、第1周波数帯とは、例えばラジオのAM帯等をいう。本発明のアンテナエレメント10は、容量アンテナとして機能するように、平面板状部が第1周波数帯を受信可能な程度のアンテナ容量を有するようにその面積が決定されれば良い。アンテナエレメント10は、例えば金属板を加工することにより形成されれば良い。即ち、金属板をカットすることで、例えば長方形状の平面板状部が形成されれば良い。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えばアンテナエレメント10をプリント基板又はフレキシブルプリント基板の導体箔を加工することにより形成しても良い。さらに、アンテナエレメント10の平面板状部は、第1周波数帯に対応する容量アンテナとして機能するようなアンテナ容量を有するものであれば良いため、平面板状部と略等価なアンテナ容量を有するように構成されたメアンダ状のエレメントであっても良い。また、アンテナエレメント10には、給電線11が設けられている。給電線11は、例えば平面板状部の端部を折り曲げ加工等してピン状に形成されれば良い。 【0025】 回路基板20は、アンテナエレメント10が接続される給電部21を有する。即ち、アンテナエレメント10の給電線11が、給電部21に接続されている。回路基板20は、例えば一般的なプリント基板であれば良い。回路基板20には、後述のコイル30や、必要によりアンプ回路50が載置される。また、回路基板20には、車内に設けられるチューナ等に接続される信号ケーブルが接続される。 【0026】 ここで、アンテナエレメント10と回路基板20は、1枚のプリント基板で構成されても良い。 【0027】 コイル30は、回路基板20に載置され、アンテナエレメント10が接続される給電部21に接続されるものである。コイル30は、アンテナエレメント10が第2周波数帯に対応するアンテナ長を有するように、その長さが決定される。即ち、コイル30は、第2周波数帯に対してアンテナエレメント10が共振アンテナとして機能するように、そのアンテナ長の不足分を補うためのものである。ここで、第2周波数帯とは、例えばラジオのFM帯やDAB(Digital Audio Broadcast)やUHF(Ultra−High Frequency)等の周波数帯であれば良い。コイル30は、アンテナエレメント10とアンプ回路50との間に直列に接続されるものである。コイル30は、例えば導線を螺旋状に巻回したものであれば良い。ここで、図示の通り、コイル30は、その軸方向にアンテナエレメント10が存在するように回路基板20に載置されている。即ち、アンテナエレメント10とアンプ回路50の間を結ぶ線に対して軸方向が平行となるように配置されれば良い。なお、本発明はこれに限定されず、回路基板20の幅に対してコイル30の長さが収まるものであれば、アンテナエレメント10とアンプ回路50の間を結ぶ線に対してコイル30の軸方向が垂直となるように配置されても良い。 【0028】 接地用ブラケット40は、回路基板20のグラウンドとなるものである。即ち、接地型アンテナであるアンテナエレメント10のグラウンドの一部となるものである。接地用ブラケット40は、アンテナエレメント10のルーフ面に略垂直な偏波の感度が向上するように、ルーフ面と異なる角度で配置されるボディの導電性部材に直接接地されるものである。例えば、アンテナエレメント10が車両ルーフRのボディ開口部15に配置される場合、車両ルーフRに対して略垂直に設けられる車両のピラーPに接地用ブラケットが直接接地されれば良い。ピラーPが導電性部材であれば、ピラーPを介して大地方向(垂直方向)に電流を流すことが可能となる。したがって、車両ルーフR(水平方向)に平行に埋め込まれた水平偏波を主偏波とするアンテナエレメント10であっても、垂直偏波が得られる構成となる。」 「【0031】 ここで、接地用ブラケット40は、回路基板20からピラーPまで導通させるものであれば良い。図示例では、さらに、接地用ブラケット40は、導電性の板状部材を板金加工等により折り曲げ形成され所定の強度を有するものであり、回路基板20を車両ボディに固定する固定具の機能も有している。また、接地用ブラケット40は、回路基板20を挟み込むように折り曲げ形成され、回路基板20に固定されても良い。そして、接地用ブラケット40が車両ボディに直接接地されるように、所定のねじ孔41が設けられている。また、車両ボディにも所定のねじ孔が設けられており、ボルト43により接地用ブラケット40が車両ボディに共締めされる。 「【0042】 本発明の車両ボディ埋め込み型アンテナ装置は、車両のルーフ面に略平行な平面板状部を有するアンテナエレメント10を、接地用ブラケット40を用いてルーフ面と異なる角度で配置されるボディの導電性部材に直接接地することで、アンテナエレメント10のルーフ面に略垂直な偏波の感度を向上させるものである。したがって、アンテナエレメント10は、ルーフ面に略平行に配置されていれば良く、ボディ開口部内に配置される必要は必ずしもない。例えば図6の配置例Cは、アンテナエレメント10がスポイラS内に配置される例である。スポイラSは、具体的には例えばリアスポイラである。そして、このスポイラS内に、アンテナエレメント10の長手方向が車両進行方向に垂直に配置されている。また、ルーフ面に平行なアンテナエレメント10は、接地用ブラケット40を用いてルーフ面と異なる角度のピラーに直接接地されている。このように、本発明の車両ボディ埋め込み型アンテナ装置では、そのアンテナエレメントの配置位置が、車両に応じて適宜調整可能である。何れの配置例であっても、水平・垂直偏波特性を改善可能である。 【0043】 なお、本発明の車両ボディ埋め込み型アンテナ装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。」 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図3】 」 以上を踏まえると、甲第3号証には以下の技術(以下「甲3記載技術」という。)が記載されている。 「アンテナエレメント10と、回路基板20と、コイル30と、接地用ブラケット40とから主に構成されている車両ボディ埋め込み型アンテナ装置において、 接地用ブラケット40は、回路基板20のグラウンドとなるもの、即ち、接地型アンテナであるアンテナエレメント10のグラウンドの一部となるものであって、導電性の板状部材を板金加工等により折り曲げ形成され所定の強度を有するものであり、回路基板20を車両ボディに固定する固定具の機能も有している。」 (6)甲第7号証(特開2009−158990号公報) 甲第7号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与した。) 「【0014】 図1に示すように、車体1の後部上方に、アンテナが内蔵された車両外装品であるエアスポイラ1000が、固定されている。 【0015】 図2に示すように、エアスポイラ1000の筐体2は、樹脂材料の成形加工部品である中空体であって、底面に開口する第1、第2、第3の窓2a,2b,2cが形成されている。また、筐体2の底面は取付面となっており、車体取り付け用のボルトやクリップ等の固定具3が複数設けられている。さらに、筐体2の内部には、UHF、VHF、FMなどの各種電波受信用のアンテナエレメント4と、このアンテナエレメント4を筐体2に内部から保持するリテーナ5と、リテーナ5を筐体2に固定するためのアンテナ用ブラケット6と、一端がアンテナエレメント4に固定された給電線としてのケーブル7と、ケーブル7の他端が接続されたコネクタ8とを備えている。ケーブル7は中途にアースコンタクト18を備えており、このアースコンタクト18は、筐体2の内面側に設けられたブラケット保持凹部20に保持されたブラケット11に接続されている。ブラケット11にはボルト11aが設けられており、このボルト11aは、ブラケット保持凹部20に設けられた長孔20pから筐体2の外部に向けて突出している。ブラケット11には筐体2の外部から、ボルト11aの外径と長孔20pの内周の間にカラー30が挿入されている。なお、図2は、エアスポイラ1000の車体中央付近から車体左側に位置する部位の底面図であるが、車体中央付近から車体右側に位置する部位に関しても、左右対称であるため、同様の構成および形状を有する。また、第1の窓2aは後述するアンテナユニットを挿通できる大きさを有し、第2の窓2bは、ブラケット11を挿入可能であり、人間の手を差し入れてブラケット保持凹部20にブラケット11を組み付けることが可能な大きさを有している。」 「【0023】 図9を用いて、ブラケット11について詳細に説明する。ブラケット11は導電性金属材料からなり、ボルト11a、平板部11b、アースコンタクト取付部11cから構成される。ボルト11aは平板部11bに対して略垂直に突出するように固定されている。平板部11bは、四角形の板状であり、1つの端部11dはボルト11aの突出している方向と反対の方向に約45度反り上がっている。また、反り上がった端部11dと隣接する2つの端部11e,11fは、切り欠き11g,11hをそれぞれ有し、各々2つの差込部11i,11j、差込部11k,11lを形成している。アースコンタクト取付部11cは、反り上がった端部11cに対向する端部11mに、平板部11bの中央よりの部分から、ボルト11aの突出している方向と反対の方向に約45度を反り上げた舌片11nにより構成される。この舌片11nにはアースコンタクト18をビス19によって固定できるよう、アースコンタクト固定孔11oを有している。」 「【0030】 図14に示すように筐体2に組み付けられたブラケット11に設けられたボルト11aを車体1に設けられた取付孔1a,1bに挿入させ、図6に示すように、車体1の内側からナット1cを用いて締結することによってアンテナが内蔵されたエアスポイラ1000の車体1への取り付けを行う。なお、図13および図14では、クッション材40はカラー30の軸方向の長さよりも厚みを有しているが、エアスポイラ1000が車体1に取り付けられた状態においては、図6に示すように、ボルト締結によって車体1の取付面と筐体2の取付面に押しつぶされて、0.1mm程度になる。」 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図5】 」 「【図6】 」 「【図7】 」 「【図9】 」 「【図10】 」 「【図11】 」 「【図12】 」 以上を踏まえると、甲第7号証には以下の技術(以下「甲7記載技術」という。)が記載されている。 「アンテナが内蔵された車両外装品であるエアスポイラ1000の筐体2内部には、UHF、VHF、FMなどの各種電波受信用のアンテナエレメント4と、このアンテナエレメント4を筐体2に内部から保持するリテーナ5と、リテーナ5を筐体2に固定するためのアンテナ用ブラケット6が備わっている。」 さらに、 「アンテナが内蔵された車両外装品であるエアスポイラ1000の筐体2に組み付けられたブラケット11に関し、ブラケット11は導電性金属材料からなり、ボルト11a、平板部11b、アースコンタクト取付部11cから構成され、ブラケット11に設けられたボルト11aを車体1に設けられた取付孔1a,1bに挿入させ、車体1の内側からナット1cを用いて締結することによってアンテナが内蔵されたエアスポイラ1000の車体1への取り付けを行う。」 (7)甲第5号証(実願平1−34993号(実開平2−126413号)のマイクロフィルム) 甲第5号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与した。) 「ところで、無線通信においては、通信システムの雑音特性(S/N比等)を向上させる上で、アンテナの直下に送受信回路を配置することが望ましい。しかしながら、アンテナと送受信回路を一体化すると、相当大きなサイズとなるため、デザイン的にアンテナ部の小型化望まれる車載用アンテナでは、通常、第11図に示すように、送受信部Cと制御部Dをアンテナ部Aとは別に車体B内に設けていることが多いが、そのような場合でも、アンテナ部Aに低雑音のコンバータ回路や増幅回路を一体化することが一般的である。」(明細書第6頁第5〜15行) 「第1図は本考案の一実施例の断面図である。図中、1は放射素子面、2は誘電体基板、3はグランド面、4は回路部、5はそのシールドケースを示す。図示されたように、本考案にあっては、アンテナと一体化された回路部4のシールドケース5を、実際の回路部4を収納するのに要するスペースよりも大きくし、少なくともアンテナのグランド面3以上の大きさとする。これにより、アンテナのグランド面3の実効面積が大きくなり、グランド面3の裏面への廻り込みが減少する。次に、シールドケース5の高さhをアンテナ装着に必要なグランド面3から金属構造体6までの距離よりもΔtだけ短くなるように調整する。」(明細書第9頁第12行〜第10頁第4行) 「第1図 」 「第11図 」 以上を踏まえると、甲第5号証には以下の技術(以下「甲5記載技術」という。)が記載されている。 「アンテナと一体化された回路部4のシールドケース5を、実際の回路部4を収納するのに要するスペースよりも大きくし、少なくともアンテナのグランド面3以上の大きさとすること。」 (8)甲第8号証(特開2003−17916号公報) 甲第8号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与した。) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、車両から外部へ突出する部分を備えていない車載用アンテナに関する。」 「【0009】 【発明の実施の形態】本発明の車載用アンテナの実施の形態の構成例を図1に示す。ただし、図1(a)は本発明の車載用アンテナが取り付けられるルーフの構成を示す斜視図であり、同図(b)はルーフに取り付けられた本発明の車載用アンテナの実施の形態を示す断面図である。これらの図に示す本発明の実施の形態の車載用アンテナは、車両のルーフ1に形成された円筒状の凹部からなるアンテナ収納部2内に収納されるようになされている。アンテナ収納部2は、ルーフ1に下面が閉じた円筒状のアンテナ収納ボックス5を埋め込むことにより形成されている。ただし、アンテナ収納ボックス5を埋め込むことに代えてルーフ1に円筒状の凹部を形成するようにしてもよい。 【0010】アンテナ収納ボックス5の下面の一部は、さらに車体内に突出して小さな凹部が形成されており、この凹部内にはアンテナ部10が接続されるコネクタ3が設けられている。コネクタ3からは、車体内に設けられる機器とアンテナ部10とを接続するための信号ケーブル6が導出されている。アンテナ収納ボックス5は、アンテナ部10を収納するアンテナ収納部2の空間を生じさせるためのボックスであり、金属板を加工して形成することにより、アンテナ部10のグランドプレーンとするのが好適である。ただし、アンテナ部10がグランドプレーンを備えている場合は、アンテナ収納ボックス5を合成樹脂の成形品としてもよい。アンテナ部10は移動電話帯のアンテナ、AM/FM帯のアンテナやGPSアンテナ、キーレスエントリー用のアンテナ等のアンテナの一部あるいは全部により構成されており、アンテナ部10の下部にはコネクタ3に嵌着可能なプラグ11が設けられている。すなわち、アンテナ収納部2にアンテナ部10を収納する際には、アンテナ部10のプラグ11をコネクタ3に嵌着することにより収納する。 【0011】また、アンテナ収納ボックス5は、アンテナ部10がアンテナ収納部2内に収納された後に収納蓋4により閉塞される。収納蓋4はルーフ1に嵌着されることにより取り付けられ、この際に、収納蓋4とルーフ1との間に防水シールやOリングが設けられて防水構造とされる。さらに、収納蓋4の形状はルーフ1の一部を構成するように、ルーフ1の曲面形状とほぼ連続する形状とされる。これにより、車のデザインを損なうことを防止することができる。また、アンテナ収納ボックス5内に収納されるアンテナ部10は、AM/FM帯のアンテナを除いて基板に形成されたループ素子や、ストリップアンテナ、パッチアンテナ、あるいは逆F型アンテナ等の小型化できるアンテナが好適である。また、AM/FM帯のアンテナは波長が長いことからコイルやコンデンサにより長さが短縮されたアンテナを用いるのが好適である。」 「【0014】このアンテナ収納ボックス25は、アンテナ部20がアンテナ収納部22内に収納された後に収納蓋24により閉塞される。収納蓋24はルーフ1に嵌着されることにより取り付けられ、この際に、収納蓋24とルーフ1との間に防水シールやOリングが設けられて防水構造とされる。さらに、収納蓋24の形状はルーフ1の一部を構成するように、ルーフ1の曲面形状とほぼ連続する形状とされる。これにより、車のデザインを損なうことを防止することができる。また、アンテナ収納ボックス25内に収納されるアンテナ部20は、AM/FM帯のアンテナを除いて基板に形成されたループ素子や、ストリップアンテナ、パッチアンテナ、あるいは逆F型アンテナ等の小型化できるアンテナが好適である。また、AM/FM帯のアンテナは波長が長いことからコイルやコンデンサにより長さが短縮されたアンテナを用いるのが好適である。」 「【0017】アンテナ収納部37の下面の一部は、さらに車体内に突出して小さな凹部が形成されており、この凹部内に同軸ケーブル36が導入されている。ただし、この凹部内にアンテナ部30が接続されるコネクタを設けるようにしてもよい。アンテナ収納部37内にはストリップアンテナとされたアンテナ部30が収納されている。ストリップアンテナとされたアンテナ部30の構成を図5に示すが、アンテナ部30は、誘電体として作用する裏面の全面にグランドプレーン33が形成されたアンテナ基板31の表面に、ストリップ状のアンテナエレメント32が形成されることにより構成されている。アンテナエレメント32の所定位置には給電点34が設けられて、同軸ケーブル36の芯線36aが接続されている。ただし、図示するアンテナ部30は直線偏波用のアンテナとされており、円偏波用のアンテナとする場合には、摂動素子を備えるパッチアンテナによりアンテナエレメント32を構成すればよい。 【0018】このような構成のアンテナ部30がアンテナ収納部37内に収納されており、アンテナ部30のグランドプレーン33はアンテナ収納部37の下面に接触して電気的に車体にアースされるようになされている。また、グランドプレーン33には同軸ケーブル36のシールド導体36bが接続され、同軸ケーブル36の芯線36aは図示するようにアンテナエレメント32の給電点に34接続されている。このアンテナ収納部37は、アンテナ部30が内部に収納された後に収納蓋34により閉塞される。収納蓋34はルーフ1に嵌着されることにより取り付けられ、この際に、収納蓋34とルーフ1との間に防水シールやOリングが設けられて防水構造とされる。さらに、収納蓋34の形状はルーフ1の一部を構成するように、ルーフ1の曲面形状とほぼ連続する形状とされる。これにより、車のデザインを損なうことを防止することができる。なお、アンテナ基板31には受信した信号を増幅する増幅回路を組み込むようにしてもよい。この際の電源は、車体内からアンテナ収納部37内に配線すればよい。また、図4および図5においてはアンテナ部30から直接同軸ケーブル36を導出するようにしたが、図1あるいは図2に示す車載用アンテナと同様にアンテナ収納部37の下部に設けたコネクタにアンテナ部30に設けたプラグを嵌着する構成としてもよい。」 「【0022】ところで、図4および図6に示す収納蓋34の周縁は、内側にリング状に突出しており、このリング状の突出部がアンテナ収納部37の周側部の上部に嵌合されるようになされている。この場合、リング状の突出部における周側面が外側に傾斜する係合部が設けられ、この係合部がアンテナ収納部37の周側部の上部に係止されるようになされている。また、係合部の形状は公知の種々の形状とすることができ、この形状に合わせて係止部の形状も変更することができる。さらに、嵌着された収納蓋34の周辺に接着剤を塗布して防水構造としてもよい。また、上記説明した各実施の形態において、アンテナ部の下面に磁石を設けてアンテナ収納部にアンテナ部を収納した際に、アンテナ収納部にアンテナ部をその磁石により吸着することにより固着するようにしてもよい。」 「【図1】 」 「【図2】 」 以上を踏まえると、甲第8号証には以下の技術(以下「甲8記載技術」という。)が記載されている。 「車両から外部へ突出する部分を備えていない車載用アンテナに関し、 車載用アンテナは、車両のルーフ1に形成された円筒状の凹部からなるアンテナ収納部2内に収納され、アンテナ収納部2は、ルーフ1に下面が閉じた円筒状のアンテナ収納ボックス5を埋め込むことにより形成され、 アンテナ収納ボックス5は、アンテナ部10を収納するアンテナ収納部2の空間を生じさせるためのボックスであり、金属板を加工して形成することにより、アンテナ部10のグランドプレーンとするのが好適である。」 (9)甲第9号証(WO2017/170906号) 甲第9号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与した。) 「[0013] 以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。 図1に、本発明のアンテナ装置1の基本構造が示されている。この例では、自動車等の乗物の、導体からなる屋根部を設置面2として、アンテナ装置1が設置されている。すなわち、屋根部の一部に凹部3が形成されている。この凹部3は、底部3aから開口部3bに向かって広がっている形状であり、底部3aと開口部3bを繋ぐ側壁部3cは、底部3aに対して120度以上、好ましくは135度以上の角度で傾斜している。底部3aと側壁部3cは電気的に接続され、グランド部(埋め込みグランド板)を構成している。グランド部は導体からなり、凹部3が形成されている設置面2と電気的に接続されている。凹部3内にはアンテナ素子4(例えばモノポールアンテナ)が配置されている。グランド部上には給電点5が設けられており、給電点5はアンテナ素子4と接続されている。開口部3bはカバー6によって塞がれている。 [0014] このアンテナ装置1は、側壁部3cが傾斜しており、側壁部3cで生じる反射波が上方の開口部3bに向かうため、水平方向の利得が安定するという効果がある。さらに、アンテナ素子4は、グランド部によって、そのグランド部の下方の空間と隔てられているため、下方の空間内の人や物による影響を受けにくく、アンテナ特性が安定するという効果がある。さらに、設置面2が導体であってグランド部に電気的に接続されているので、実質的にグランド部が非常に大きくなり、室内の人や物の影響をより受けにくくなっている。」 「[0017] アンテナ素子4は、図1に示すような線状や図2に示すようなコーン状に限られず、線を折り曲げた形状、平面状、立体形状など、任意の様々な形状を有していてよい。また、給電点5に整合素子を取り付けてもよい。さらに、逆Fアンテナのようにアンテナ素子4とグランド部との間に短絡部を設けても良い。同軸ケーブルを用いて給電する場合には、同軸ケーブルの周囲にフェライトコアを取り付けて、ケーブルの影響を低減させることもできる。 [0018] 凹部3の底部3aおよび側壁部3cにより構成されるグランド部は、導体板、導体薄膜、パンチングメタル、導体網等の様々な導体であってよい。さらに、それらの導体を絶縁体で保持した構造であってもよい。そして、グランド部の形状は、図2に示すような円錐台形状に限らず、側壁部3cが傾斜している任意の形状であってよい。側壁部3cの傾斜角は一定でなくてもよく、底部3aも傾斜していてもよい。凹部3が、逆円錐形のように、底部3aが平坦でなく側壁部3cと一体化して連続した形状であってもよい。また、側壁部3cは、図8に示すような階段状であってもよく、図示しないが湾曲面状であってもよい。 [0019] 凹部を覆うカバー6は、グランド部の上方のみに被せられる板状に限られず、図9に示すように、設置面2を含めてグランド部よりも広い範囲を覆うように被せられる板状であってもよい。カバー6を支えるために、グランド部とカバー6の間に支えとなる構造物を設置してもよい。また、カバー6の代わりに、図10に示すように凹部3内に絶縁材7を充填する構成であってもよい。また、カバー6と絶縁材7とを組み合わせて用いてもよい。」 「[0021] アンテナ素子4は、モノポール系のような接地型アンテナ素子4であっても、ダイポール系のアンテナ素子4等の他方式のアンテナ素子4であってもよい。ダイポール系のアンテナ素子4を用いる場合も底部3aおよび側壁部3bは導体であることが好ましい。このようなダイポール系のアンテナ素子4を、底部3aおよび側壁部3bとカバー6の間に設置した場合も、モノポール系のアンテナ素子4と同様に、側壁部3bの反射の影響を受けにくいという効果が得られる。 本実施形態のアンテナ装置1は、凹部3ごと取り外すことが可能であり、メンテナンスを容易に行うことができ、必要に応じて設置や交換が容易に行える。」 「[請求項2] 前記底部と前記側壁部は接地型アンテナのグランド部を構成している、請求項1に記載のアンテナ装置。 [請求項3] 前記側壁部は傾斜面状または階段状である、請求項1または2に記載のアンテナ装置。」 「[図1] 」 「[図10] 」 以上を踏まえると、甲第9号証には以下の技術(以下「甲9記載技術」という。)が記載されている。 「自動車等の乗物の、導体からなる屋根部を設置面2として設置されるアンテナ装置1に関し、 屋根部の一部に凹部3が形成され、この凹部3は、底部3aから開口部3bに向かって広がっている形状であり、底部3aと開口部3bを繋ぐ側壁部3cは、底部3aに対して120度以上、好ましくは135度以上の角度で傾斜しており、底部3aと側壁部3cは電気的に接続され、グランド部(埋め込みグランド板)を構成し、グランド部は導体からなり、凹部3が形成されている設置面2と電気的に接続され、凹部3内にはアンテナ素子4(例えばモノポールアンテナ)が配置されおり、 凹部3の底部3aおよび側壁部3cにより構成されるグランド部は、導体板、導体薄膜、パンチングメタル、導体網等の様々な導体であってよい。」 3 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (ア)甲2発明の「ルーフモジュール1」は「車両V」の「ワイヤハーネスの一部を構成」していて、「アンテナ3」を備えるものであるから、本件発明1とは『車両のアンテナ装置』である点で共通する。 (イ)『第1の平面に沿って設けられたモノポール型又はダイポール型のアンテナエレメント』について 甲2発明の「アンテナ3」は、「絶縁基板31の表面に印刷回路体として印刷された回路体32によってアンテナパターンが形成されることで構成され」るものであり、「絶縁基板31の表面」は、本件発明でいう『第1の平面』に対応するものといえる。 そうすると、甲2発明の「アンテナ3」と本件発明1の『アンテナエレメント』は、「第1の平面に沿って設けられたアンテナエレメント」である点で共通する。 (ウ)『前記アンテナエレメントと前記車両のノイズ発生源との間に設けられ、前記アンテナエレメントに対して離間して配置された遮蔽部材であり、少なくとも一部が前記第1の平面に対向する第2の平面に沿って設けられた、該遮蔽部材』について 甲2発明の「金属パネル4」は、「車室外側の通信環境と車室内側の通信環境との相互のノイズを抑制する遮蔽板」として機能するものであって「アンテナ3より車室内側に設けられ」るから、「アンテナ3」と車室内側のノイズ発生源との間に設けられた『遮蔽部材』といえる。 また、「金属パネル4」は、「金属材料によって面状に形成され」ていて、「アンテナ3の車室内側に当該アンテナ3に沿って設けられ」ているから「アンテナ3」に『対向』しているといえる。つまり、「金属パネル4」が設けられている面は、『前記第1の平面に対向する第2の平面』といえ、そして、上述したように、「金属パネル4」は、「アンテナ3」と車室内側のノイズ発生源との間に設けられた『遮蔽部材』といえるものであるから、「アンテナ3」と「金属パネル4」とが離間して配置されていることは明らかである。 そうすると、甲2発明の「金属パネル4」は、本件発明1の『前記アンテナエレメントと前記車両のノイズ発生源との間に設けられ、前記アンテナエレメントに対して離間して配置された遮蔽部材であり、少なくとも一部が前記第1の平面に対向する第2の平面に沿って設けられた、該遮蔽部材』といえる。 (エ)『絶縁材料から構成され、前記アンテナエレメントと前記遮蔽部材とを連結する絶縁部材』について 甲2発明は、「筐体2と、アンテナ3と、金属パネル4と、モジュール基板5」とが一体化されたモジュールであり、「アンテナ3」は「種々の固定機構を介してベース21の車室内側の面に固定され」、「金属パネル4」は「種々の固定機構を介してアンテナ3の車室内側の面、あるいは、筐体2のベース21に固定され」るものである。 そうすると、甲2発明の、金属パネル4をアンテナ3の車室内側の面に固定する「種々の固定機構」と、本件発明1の『絶縁材料から構成され、前記アンテナエレメントと前記遮蔽部材とを連結する絶縁部材』とは、「アンテナエレメントおよび遮蔽板を連結固定する機構」を備える点で共通する。 (オ)『前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なり、前記アンテナエレメントの一部以外の部分と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重ならないように配置され』ることについて 甲2発明の「アンテナ3」と「金属パネル4」は「一体化されモジュール化され」ていて「積層された構造」であり、筐体2に収容されるものであるから、積層方向から見て、「アンテナ3」と「金属パネル4」は、重なる部分があることは明らかであること、及び、上記(イ)および(ウ)で言及した事項を踏まえると、本件発明1と甲2発明とは、『前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なるように配置され』ている点で共通している。 (カ)『前記遮蔽部材が、前記車両とは別体である』ことについて 「別体」とは、一般には「(1)形体を異にすること。また、その体。(2)漢字や仮名の標準以外の字体。漢字では正字以外の俗字・古字・略字など。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」であるから、本件発明1における「遮蔽部材が、前記車両とは別体である」ことの「別体」については、一般的な意味ではなく、本件明細書にも「別体」の用語は用いられていないから、「別体」の意味については、明細書を参酌して参照すべきと解される。 本件発明3に「前記遮蔽部材を前記車両に取り付ける」ことが記載され、明細書【0034】に「ブラケット24は、遮蔽部材3を車両または車両の外装部品に取り付けるための部材である。」と記載され、明細書【0043】に「遮蔽部材は、ブラケット24および締結部材111を用いて車両100のバックドア101a上部に固定されている。」と記載されていることを考慮すれば、遮蔽部材が前記車両に「取り付けられる」ものであると解される。 ここで、甲2発明の「金属パネル4」についてみると、「金属パネル4」は「ルーフモジュール1」の構成要素であって、「ルーフモジュール1」は「ワイヤハーネスの一部を構成する車載モジュール」であって、明らかに「取り付けられる」ものではないから、「別体」ではない。 以上を踏まえると、本件発明1と甲2発明とは、次の点で、一致ないし相違する。 <一致点> 「車両のアンテナ装置であって、 第1の平面に沿って設けられたアンテナエレメントと、 前記アンテナエレメントと前記車両のノイズ発生源との間に設けられ、前記アンテナエレメントに対して離間して配置された遮蔽部材であり、少なくとも一部が前記第1の平面に対向する第2の平面に沿って設けられた、該遮蔽部材と、 アンテナエレメントおよび遮蔽部材を連結固定する機構を備え、 前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なるように配置された、 アンテナ装置。」 <相違点> (相違点1)本件発明1のアンテナ装置は「車両に取り付けられる」ものであるのに対し、甲2発明は「ワイヤハーネスの一部を構成」するモジュールである点。 (相違点2)本件発明1の『アンテナエレメント』がモノポール型又はダイポール型のものであるのに対し、甲2発明の「アンテナ3」がどのような型のアンテナであるのか、甲2には明示されていない点。 (相違点3)本件発明1は、アンテナエレメントおよび遮蔽部材を一体化する機構として、『絶縁材料から構成され、前記アンテナエレメントと前記遮蔽部材とを連結する絶縁部材』を有するのに対し、甲2発明において、「アンテナ3」及び「金属パネル4」は、「種々の固定機構」で固定される点。 (相違点4)本件発明1は、『前記遮蔽部材が、前記車両とは別体である』のに対し、甲2発明の「金属パネル4」は、「ワイヤハーネスの一部を構成する車載モジュール」の構成要素である点。 (相違点5)本件発明1は、『前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なり、前記アンテナエレメントの一部以外の部分と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重ならないように配置され』ると特定されているのに対し、甲2発明において「アンテナ3」と「金属パネル4」との配置関係として、上記下線で示した事項が特定されていない点。 (2)判断 事案に鑑み、相違点5について検討する。 甲2発明の「金属パネル4」は、金属材料によって面状に形成されアンテナ3の車室内側に当該アンテナ3に沿って設けられ、「車両Vの車室外側の通信環境と車室内側の通信環境とを区切る境界として機能するとともに、車室外側の通信環境と車室内側の通信環境との相互のノイズを抑制する遮蔽板(シールド部材)」としても機能するものである。 ここで、甲2発明の「アンテナ3」と「金属パネル4」との配置関係を、本件発明1において特定されている『前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なり、前記アンテナエレメントの一部以外の部分と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重ならないように配置され』としてしまうと、上記「アンテナ3」が車室内側に向かって露出してしまい、「金属パネル4」がもたらす「境界」及び「遮蔽」という機能を十分に果たさなくなる恐れがある。 してみると、甲2発明を本件発明1の相違点4のように構成することは、「金属パネル4」がもたらす「境界」及び「遮蔽」としての機能が阻害される要因になるといわざるを得ない。 したがって、甲2発明を本件発明1の相違点5のように構成することは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (3)小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)申立人の意見 申立人は、令和3年11月24日の申立人意見書において、相違点4について、甲第2号証、甲第1号証(【図40】〜【図43】、【図54】、【図55】、【0032】〜【0045】)、参考文献1(【図2】(a)〜(c)、【図5】(a)〜(c)、【0036】、【0053】、【0056】)、参考文献2(【図5】、【0033】〜【0038】)等の記載事項に基づいて、「当業者が、甲2発明に甲1、参考文献1、2に記載されている周知の事項ないし技術的知見を適用して訂正発明1(「本件発明1」のこと)の構成に想到することは容易ですので、訂正発明1(「本件発明1」のこと)は、進歩性を欠如しており、取り消されるべきです。」と主張している。 しかしながら、甲第1号証の「トップ部31」は、立体的に構成される「アンテナエレメント」の一部の構成である。 一方、甲2発明の「アンテナ3」は、「絶縁基板31の表面に印刷回路体として印刷された回路体32によって、ミアンダ状のアンテナパターンと棒状のアンテナパターンが形成されることで構成され」たものであるから、すなわち、平面に沿って設けられたアンテナである。 また、甲第1号証には、「アンテナベース20」が遮蔽版としての機能を有している旨の記載はない。 してみると、甲第1号証の“立体的に構成される「アンテナエレメント」の一部を構成する「トップ部31」”と“金属製の「アンテナベース20」”との関係は、甲2発明の“平面に沿って設けられた「アンテナ3」”と、“「車両Vの車室外側の通信環境と車室内側の通信環境とを区切る境界として機能するとともに、車室外側の通信環境と車室内側の通信環境との相互のノイズを抑制する遮蔽板(シールド部材)」としても機能する「金属パネル4」”との関係とは異なり、甲第1号証の“立体的に構成される「アンテナエレメント」の一部を構成する「トップ部31」”と“金属製の「アンテナベース20」”との関係を、甲2発明の“平面に沿って設けられた「アンテナ3」”と“「車両Vの車室外側の通信環境と車室内側の通信環境とを区切る境界として機能するとともに、車室外側の通信環境と車室内側の通信環境との相互のノイズを抑制する遮蔽板(シールド部材)」としても機能する「金属パネル4」”との関係に採用することはできないし、仮に、甲2発明に甲第1号証で開示されている構成を適用すると、上記(2)で言及したように、甲2発明の「金属パネル4」がもたらす「境界」及び「遮蔽」としての機能が阻害される要因になるから組み合わせることはできない。 また、参考文献1及び2にも上記相違点5で言及した構成について記載も示唆もされておらず、当業者にとって周知であるとはいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 4 本件発明2〜15について 本件発明2〜15は、請求項1を直接的または間接的に引用するものであるから、本件発明1の発明特定事項を全て有するものである。 また、甲1、甲3〜9には、上記相違点5に関して、開示も示唆もされていない。 そうすると、本件発明2〜15は、本件発明1と同様に甲2発明及び各甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜15に係る発明(以下、「本件訂正前発明1」〜「本件訂正前発明15」という。)について、甲1に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)と本件訂正前発明1〜本件訂正前発明15とを対比して、相違点については、各甲号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明できたものと主張した。 1 本件訂正前発明 本件訂正前発明は、特許第6818078号の特許請求の範囲の請求項1〜15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 車両に取り付けられるアンテナ装置であって、 第1の平面に沿って設けられたモノポール型又はダイポール型のアンテナエレメントと、 前記アンテナエレメントと前記車両のノイズ発生源との間に設けられ、前記アンテナエレメントに対して離間して配置された遮蔽部材であり、少なくとも一部が前記第1の平面に対向する第2の平面に沿って設けられた、該遮蔽部材と、 絶縁材料から構成され、前記アンテナエレメントと前記遮蔽部材とを連結する絶縁部材と、 を備え、 前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なるように配置され、 前記遮蔽部材が、前記車両とは別体である、アンテナ装置。 【請求項2】 前記アンテナエレメントが、一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形の主面を有し、 前記主面が、前記一対の短辺に平行な方向において、前記一対の長辺のうち一方の長辺側に位置する第1の領域と、前記一対の長辺のうち他方の長辺側に位置する第2の領域と、に区画され、 前記対向方向から見た場合に、前記第1の領域及び前記第2の領域のうち前記第1の領域のみが、前記遮蔽部材に対して重なっている、請求項1に記載のアンテナ装置。 【請求項3】 前記第1の領域が前記第2の領域よりも前記車両に対して離れた位置に配置されるように、前記遮蔽部材を前記車両に取り付けるためのブラケットを更に備える、請求項2に記載のアンテナ装置。 【請求項4】 前記アンテナエレメントが、一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形の主面を有し、 前記主面が、前記一対の長辺に平行な方向において、前記一対の短辺のうち一方の短辺側に位置する第3の領域と、前記一対の短辺のうち他方の短辺側に位置する第4の領域と、に区画され、 前記対向方向から見た場合に、前記第3の領域及び前記第4の領域のうち前記第3の領域のみが、前記遮蔽部材に対して重なっている、請求項1に記載のアンテナ装置。 【請求項5】 前記遮蔽部材が、網状又は格子状の導体によって構成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項6】 前記遮蔽部材上に設けられ、前記アンテナエレメントに電気的に接続された回路基板を更に備える、請求項1〜5の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項7】 前記遮蔽部材から離間して設けられ、前記アンテナエレメントに電気的に接続された回路基板を更に備え、 前記回路基板は、カバー内に収容された状態で前記アンテナエレメントに装着され、或いは、前記車両内に配置されている、請求項1〜5の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項8】 前記回路基板及び前記アンテナエレメントに電気的に接続されたインダクタを更に備える、請求項6又は7に記載のアンテナ装置。 【請求項9】 前記遮蔽部材に電気的に接続されたアース線を更に備え、 前記アース線が10cm以下の長さを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項10】 前記遮蔽部材に電気的に接続されたアース線を更に備え、 前記アース線が、70cm以上100cm以下の長さを有する、請求項1〜8の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項11】 前記アンテナエレメント及び前記遮蔽部材の少なくとも一方は、可撓性を有する、請求項1〜10の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項12】 前記アンテナエレメントが、AM信号を受信する第1のアンテナエレメント、及び、FM信号を受信する第2のアンテナエレメントを含み、 前記対向方向から見て、前記第1のアンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが互いに重なり、前記第2のアンテナエレメントと前記遮蔽部材とが重ならないように配置されている、請求項1〜11の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項13】 前記車両のルーフの後方に設置された、請求項1〜12の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項14】 前記遮蔽部材を前記車両に取り付けるためのブラケットを更に備え、 前記アンテナエレメントは、前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記遮蔽部材に対して重なるように配置された第1の領域と、前記遮蔽部材に対して重ならないように配置された第2の領域と、を含む主面を有し、 前記ブラケットは、前記第1の領域が前記第2の領域よりも前記車両に対して離れた位置に配置されるように、前記車両に対して前記遮蔽部材を取り付け可能に構成されている、請求項1に記載のアンテナ装置。 【請求項15】 前記遮蔽部材が、前記アンテナエレメントに対向する第1板部と、前記第1板部に対して傾斜する第2板部とを有する、請求項1〜14の何れか一項に記載のアンテナ装置。」 2 本件訂正前発明1について (1)対比 本件訂正前発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「アンテナ装置1」は「車両のルーフに取り付けられる」のであるから、本件訂正前発明1の『車両に取り付けられるアンテナ装置』に相当する。 (イ)『第1の平面に沿って設けられたモノポール型又はダイポール型のアンテナエレメント』について 甲1発明にかかる「アンテナエレメント」は、「アンテナケース10に内蔵されたトップ部31がアンテナ基板30の上部を跨ぐように配置され、アンテナ基板30の上部に取り付けられた接続金具36がトップ部31の内面に電気的に接触するようになり、接続金具36は、アンテナ基板30に形成されているアンテナパターンに電気的に接続されていることから、接続金具36を介してトップ部31とアンテナパターンとが接続されることにより、アンテナパターンとトップ部31とにより構成」されるものであり、本件訂正前発明1にかかる『アンテナエレメント』のように『第1の平面に沿って設けられたモノポール型又はダイポール型』のものであるかは不明であるものの、両者は、「アンテナエレメント」を備える点で共通している。 (ウ)『絶縁材料から構成され、前記アンテナエレメントと前記遮蔽部材とを連結する絶縁部材』について 甲1発明の「アンテナ基板30」は、「アンテナベース20に立設して取り付けられる」ものであり、また、「高周波特性の良好なガラスエポキシ基板等のプリント基板とされている基板本体30aを備え」るものである。 ここで、前記「ガラスエポキシ基板」が“絶縁部材”であることは自明であること、及び、上記(イ)で言及した「アンテナエレメント」の構成を踏まえると、甲1発明の「アンテナ基板30」は、「アンテナエレメントを支持する絶縁部材」といえる。 してみると、本件訂正前発明1と甲1発明は、「絶縁材料から構成され、前記アンテナエレメントを支持する絶縁部材」を備える点で共通している。 以上を踏まえると、本件訂正前発明1と甲1発明とは、次の点で、一致ないし相違する。 <一致点> 「車両に取り付けられるアンテナ装置であって、 アンテナエレメントと、 絶縁材料から構成され、前記アンテナエレメントを支持する絶縁部材を備えた アンテナ装置。」 <相違点> (相違点1) 本件訂正前発明1にかかる『アンテナエレメント』は、『第1の平面に沿って設けられたモノポール型又はダイポール型』のものであるのに対し、甲1発明にかかる「アンテナエレメント」は、「接続金具36を介してトップ部31と(アンテナ基板30に形成されている)アンテナパターンとが接続されて」構成されるものである点。 (相違点2) 本件訂正前発明1の『アンテナ装置』は、『前記アンテナエレメントと前記車両のノイズ発生源との間に設けられ、前記アンテナエレメントに対して離間して配置された遮蔽部材であり、少なくとも一部が前記第1の平面に対向する第2の平面に沿って設けられた、該遮蔽部材』を備えるのに対し、甲1発明の「アンテナ装置1」は、遮蔽部材を備える旨特定されていない点。 (相違点3) 上記(相違点2)と相まって、本件訂正前発明1にかかる『絶縁部材』は、『前記アンテナエレメントと前記遮蔽部材とを連結する』のに対し、甲1発明にかかる「アンテナ基板30」は、「アンテナエレメント」と「遮蔽部材」とを連結するものでない点。 (相違点4) 上記(相違点2)及び(相違点3)と相まって、本件訂正前発明1においては、『前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なるように配置され、』との事項が特定されているのに対し、甲1発明には、かかる事項が特定されていない点。 (相違点5) 上記(相違点2)、(相違点3)、(相違点4)と相まって、本件訂正前発明1には、『前記遮蔽部材が、前記車両とは別体である』との事項が特定されているのに対し、甲1発明には、かかる事項が特定されていない点。 (2)判断 相違点について検討する。 (相違点1)について 甲1発明にかかる「アンテナエレメント」は、車両のルーフに取り付けられ、車両に取り付けられた際に車両から突出する高さhは約70mmとされている「アンテナ装置1」を構成している「樹脂製のアンテナケース10に内蔵される」ものであって、「接続金具36を介してトップ部31と(アンテナ基板30に形成されている)アンテナパターンとが接続されて」構成されており、さらに、前記「アンテナ基板30」は、「アンテナベース20に立設して取り付けられる」ものであるから、いわゆる、立体的に構成されたものであって「車両から突出する」のであるから、明らかに車両の外側に取り付けられている。 一方、甲2発明にかかる「アンテナ3」は、「広域無線通信により車室外側の通信機器と通信する、絶縁基板31の表面に印刷回路体として印刷された回路体32によって、ミアンダ状のアンテナパターンと棒状のアンテナパターンが形成されることで構成され、種々の固定機構を介してベース21の車室内側の面に固定される」ものであるから、いわゆる、平面的に構成されたものである。 してみると、甲1発明にかかる「アンテナエレメント」と甲2発明にかかる「アンテナ3」とは、アンテナ自体の構造(「立体的な構成」と「平面的な構成」)も車両に対する設置場所(車両のルーフの「車両の外側」と「車室内側」)も全く異なるものであり、甲1発明にかかる「アンテナエレメント」を、甲2発明にかかる「アンテナ3」のようなものに変更する動機はなく、当業者といえども容易に想到し得るものではない。 (相違点2)について 甲1発明は、「70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできるAM放送とFM放送を受信可能とする、アンテナ装置を提供すること」を目的とするものであって、本件訂正前発明1のような「ノイズの影響を抑制しつつ、アンテナ装置の設置位置の自由度を高める」ことを目的とするものではない。なお、本件訂正発明1におけるノイズの発生源としては、「車両内のノイズ発生源としては、例えば、車両のランプ、ワイパー、バックカメラ、コンプレッサ、インバータ、モータ等の電装部品、及び、車両内に搭載されるモニタ等の電子機器」(本件特許の特許公報の段落【0032】参照。)が挙げられている。 してみると、ノイズの影響を抑制することを何ら目的としていない甲1発明の「アンテナ装置1」に「遮蔽部材」を追加する必要性や動機はなく、当業者といえども容易に想到し得るものではない。 (相違点3)(相違点4)(相違点5)について 相違点3、相違点4、相違点5は、いずれも、「遮蔽部材」と関連するものであり、上記(相違点2)で言及した様に、ノイズの影響を抑制することを何ら目的としていない甲1発明の「アンテナ装置1」に「遮蔽部材」を追加する必要性や動機はなく、当業者といえども容易に想到し得るものではないのであるから、いずれの相違点も、そうすることの必要性や動機はなく、当業者といえども容易に想到し得るものではない。 (3)小括 したがって、本件訂正前発明1は、甲1発明及び甲2記載技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、申立人の主張する上記特許異議申立理由は採用できない。 3 本件訂正前発明2〜15について 本件訂正前発明2〜15は、請求項1を直接的または間接的に引用するものであるから、本件訂正前発明1の発明特定事項を全て有するものである。 また、甲3〜9には、少なくとも上記相違点1に関して、開示も示唆もされていない。 そうすると、本件訂正前発明2〜15は、本件訂正前発明1と同様に甲1発明及び各甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないから、申立人の主張する上記特許異議申立理由は採用できない。 したがって、申立人の主張する上記特許異議申立理由は、取消理由通知において採用できない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1〜15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 車両に取り付けられるアンテナ装置であって、 第1の平面に沿って設けられたモノポール型又はダイポール型のアンテナエレメントと、 前記アンテナエレメントと前記車両のノイズ発生源との間に設けられ、前記アンテナエレメントに対して離間して配置された遮蔽部材であり、少なくとも一部が前記第1の平面に対向する第2の平面に沿って設けられた、該遮蔽部材と、 絶縁材料から構成され、前記アンテナエレメントと前記遮蔽部材とを連結する絶縁部材と、 を備え、 前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記アンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重なり、前記アンテナエレメントの一部以外の部分と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが重ならないように配置され、 前記遮蔽部材が、前記車両とは別体である、アンテナ装置。 【請求項2】 前記アンテナエレメントが、一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形の主面を有し、 前記主面が、前記一対の短辺に平行な方向において、前記一対の長辺のうち一方の長辺側に位置する第1の領域と、前記一対の長辺のうち他方の長辺側に位置する第2の領域と、に区画され、 前記対向方向から見た場合に、前記第1の領域及び前記第2の領域のうち前記第1の領域のみが、前記遮蔽部材に対して重なっている、請求項1に記載のアンテナ装置。 【請求項3】 前記第1の領域が前記第2の領域よりも前記車両に対して離れた位置に配置されるように、前記遮蔽部材を前記車両に取り付けるためのブラケットを更に備える、請求項2に記載のアンテナ装置。 【請求項4】 前記アンテナエレメントが、一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形の主面を有し、 前記主面が、前記一対の長辺に平行な方向において、前記一対の短辺のうち一方の短辺側に位置する第3の領域と、前記一対の短辺のうち他方の短辺側に位置する第4の領域と、に区画され、 前記対向方向から見た場合に、前記第3の領域及び前記第4の領域のうち前記第3の領域のみが、前記遮蔽部材に対して重なっている、請求項1に記載のアンテナ装置。 【請求項5】 前記遮蔽部材が、網状又は格子状の導体によって構成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項6】 前記遮蔽部材上に設けられ、前記アンテナエレメントに電気的に接続された回路基板を更に備える、請求項1〜5の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項7】 前記遮蔽部材から離間して設けられ、前記アンテナエレメントに電気的に接続された回路基板を更に備え、 前記回路基板は、カバー内に収容された状態で前記アンテナエレメントに装着され、或いは、前記車両内に配置されている、請求項1〜5の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項8】 前記回路基板及び前記アンテナエレメントに電気的に接続されたインダクタを更に備える、請求項6又は7に記載のアンテナ装置。 【請求項9】 前記遮蔽部材に電気的に接続されたアース線を更に備え、 前記アース線が10cm以下の長さを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項10】 前記遮蔽部材に電気的に接続されたアース線を更に備え、 前記アース線が、70cm以上100cm以下の長さを有する、請求項1〜8の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項11】 前記アンテナエレメント及び前記遮蔽部材の少なくとも一方は、可撓性を有する、請求項1〜10の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項12】 前記アンテナエレメントが、AM信号を受信する第1のアンテナエレメント、及び、FM信号を受信する第2のアンテナエレメントを含み、 前記対向方向から見て、前記第1のアンテナエレメントの一部と前記遮蔽部材の前記少なくとも一部とが互いに重なり、前記第2のアンテナエレメントと前記遮蔽部材とが重ならないように配置されている、請求項1〜11の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項13】 前記車両のルーフの後方に設置された、請求項1〜12の何れか一項に記載のアンテナ装置。 【請求項14】 前記遮蔽部材を前記車両に取り付けるためのブラケットを更に備え、 前記アンテナエレメントは、前記第1の平面と前記第2の平面との対向方向から見て、前記遮蔽部材に対して重なるように配置された第1の領域と、前記遮蔽部材に対して重ならないように配置された第2の領域と、を含む主面を有し、 前記ブラケットは、前記第1の領域が前記第2の領域よりも前記車両に対して離れた位置に配置されるように、前記車両に対して前記遮蔽部材を取り付け可能に構成されている、請求項1に記載のアンテナ装置。 【請求項15】 前記遮蔽部材が、前記アンテナエレメントに対向する第1板部と、前記第1板部に対して傾斜する第2板部とを有する、請求項1〜14の何れか一項に記載のアンテナ装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-02-18 |
出願番号 | P2019-089924 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(H01Q)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
佐藤 智康 |
特許庁審判官 |
伊藤 隆夫 吉田 隆之 |
登録日 | 2021-01-04 |
登録番号 | 6818078 |
権利者 | 原田工業株式会社 |
発明の名称 | アンテナ装置 |
代理人 | 小曳 満昭 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 寺澤 正太郎 |
代理人 | 小曳 満昭 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 寺澤 正太郎 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |