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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F21V
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21V
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F21V
管理番号 1384191
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-09-09 
確定日 2022-01-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6840195号発明「ヒートシンク及びヒートシンクの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6840195号の請求項1〜6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6840195号の請求項1〜6に係る特許についての出願は、平成26年2月27日に出願した特願2014−36534号(以下「原出願」という。)の一部を、平成30年2月20日に新たな特許出願とした特願2018−27685号(以下「分割直前の出願」という。)の一部を、令和1年7月23日に新たな特許出願としたものであって、令和3年2月18日に特許権の設定登録がされ、同年3月10日に特許掲載公報が発行されその後、その請求項1〜6に係る特許に対し、同年9月9日に、特許異議申立人伊藤直宏(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6840195号の請求項1〜6に係る発明(以下「本件発明1〜6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
板金を曲げ加工した複数の放熱フィンと、
前記複数の放熱フィンが取り付けられた板金で構成された板材と
を備え、
前記放熱フィンは、前記板材に固定された取付部と前記取付部と直交する放熱板とを有し、
前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記複数の放熱フィンの前記取付部が前記板材に配置されたヒートシンク。
【請求項 2】
前記同一平面を形成するように配置された複数の放熱板と、前記同一平面とは別の他平面を形成するように配置された複数の放熱板との間には、前記所定の空間を間にして直線方向に見通せる空間が存在する請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項 3】
前記放熱板は、前記板材と平行な辺と、前記板材と直交する辺とを有し、
前記所定の空間と前記直線方向に見通せる空間とは、前記板材と直交する辺全体において存在し、
前記同一平面を形成するように配置された複数の放熱板は、前記板材と直交する辺全体において、前記板材と平行な辺の方向に流れる空気を通気する請求項2に記載のヒートシンク。
【請求項 4】
前記放熱フィンは、前記取付部の両側に形成された2枚の放熱板を有し、
前記複数の放熱フィンは、隣り合う放熱フィンの放熱板の端部空間が前記2枚の放熱板の端部空間と同じサイズになるように配列された請求項1から3のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項 5】
前記板材は、一面に前記複数の放熱フィンの前記取付部のみを配置している請求項1から4のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項 6】
板金を曲げ加工して、取付部と前記取付部と直交する放熱板とを有する複数の放熱フィンを製造し、
板金で構成された板材の一面に前記複数の放熱フィンのみを配置し、
前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記取付部を前記板材に固定するヒートシンクの製造方法。」

第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、次の甲第1〜8号証を提出し、以下の申立理由1〜3により、本件発明1〜6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

甲第1号証:特開2011−119227号公報
甲第2号証:特開2001−217357号公報
甲第3号証:特開2013−232301号公報
甲第4号証:特開2009−140716号公報
甲第5号証:特開2014−17229号公報
甲第6号証:登録実用新案第3180968号公報
甲第7号証:米国公開公報2013/0335978号公報
甲第8号証:特開2015−162340号公報

1 申立理由1 特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項(同法第113条第2号
1−1 甲第1号証に記載された発明を主の発明とした場合
(1)(新規性)本件発明1〜3は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(2)(進歩性)本件発明1〜3は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明4、5は、甲第1号証に記載された発明と、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

1−2 甲第4号証に記載された発明を主の発明とした場合
進歩性)本件発明1〜3、5は、甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明4は、甲第4号証に記載された発明と、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

1−3 甲第5号証に記載された発明を主の発明とした場合
(1)(新規性)本件発明1〜5は、甲第5号証に記載された発明であるから、請求項1〜5に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(2)(進歩性)本件発明1〜5は、甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

1−4 甲第6号証に記載された発明を主の発明とした場合
(1)(新規性)本件発明1、5は、甲第6号証に記載された発明であるから、請求項1、5に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(2)(進歩性)本件発明1、5は、甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

1−5 甲第2号証に記載された発明を主の発明とした場合
進歩性)本件発明6は、甲第2号証に記載された発明と、甲第1号証、甲第4号証〜甲第6号証に記載された事項に基いてに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 申立理由2 特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号
(1)本件発明1〜6は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件発明1〜6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)本件発明1〜6は、明確でないから、本件発明1〜6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3 申立理由3 分割要件違反及び特許法第29条第1項第3号
本件発明1〜6は、原出願の出願当初の明細書等に開示されたものとはいえない。したがって、本件発明1〜6に係る特許の特許出願である特願2019−135146号は、分割要件を満たしていないから、本件発明1〜6に係る特許の出願日は、原出願の出願日に遡及せず、特願2019−135146号の現実の出願日である令和1年7月23日である。
そうすると、本件発明1〜6は、甲第8号証に記載された発明であるから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

第4 各甲号証の記載事項等
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。以下同様。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外や工場内等の比較的広い範囲を照らす比較的大型のLED照明灯に関する。」

「【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、LED照明灯の消費電力増加や大型化を招くことなく、広い範囲を照らすことができるとともに、効果的に放熱できるLED照明灯を提供することを課題としている。」

「【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明に係るLED照明灯の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1〜図8はLED照明灯の第1の実施の形態を示す。
本実施の形態のLED照明灯は、例えば工場等の建屋内や敷地等を照らすものであり、全長が300mm〜400mm、最大直径(先端部の直径)が200mm〜350ミリ程度の大きさのものである。
このLED照明灯は、多数のLEDランプ1が実装された基板2と、この基板2が取り付けられた放熱部3と、この放熱部3に取り付けられた筒状のケース部4と、このケース部4に設けられて、交流電源のソケットに装着される口金部5と、前記ケース部4内に設けられて、前記口金部5と前記基板2に電気的に接続されたコンバータ(AC〜DCコンバータ)6とを備えている。
【0023】
前記放熱部3は、前記基板2が装着される台座部8と、この台座部8の周囲に、周方向に所定間隔で設けられた多数の放熱板9・・・とを備えており、放熱板9・・・は全体として略半球を形成するように配置している。
台座部8は円板状の銅板で形成されており、この台座部8の外周部には、リング状の反射鏡10が固定されている。この反射鏡10の内周面は、外周側に向けて凸の鏡面となっている。反射鏡10の前面部には、透明な樹脂で形成された円板状の保護蓋11が設けられている。
前記放熱板9は、図8に示すように、アルミの薄板で形成されている。放熱板9は放熱板本体9aと、この放射板9a(「放熱板本体9a」の誤記)に一体的に折り曲げ形成された、第1折曲板9b、第2折曲板9c、第3折曲板9dとによって構成されている。
【0024】
放熱板本体9aは、円弧状の円弧縁91aと、この円弧縁91aの一端から当該円弧縁91aに対して略直角に延びる第1直線縁91bと、この第1直線縁91bの一端から当該第1直線縁91bに対して略直角に延びる第2直線縁91cと、この第2直線縁91cの一端から当該第2直線縁91cに対して略直角に延びる第3直線縁91dと、この第3直線縁91dの一端から当該第3直線縁91dに対して略直角に延びる第4直線縁91eと、この第4直線縁91eの一端から当該第4直線縁91eに対して略直角に延びる第5直線縁91fと、この第5直線縁91fの一端から当該第5直線縁91fに対して略直角に延びる第6直線縁91gと、この第6直線縁91gの一端から当該第6直線縁91gに対して略直角に延びる第7直線縁91hと、この第7直線縁91hの一端から当該第7直線縁91hに対して略直角に延びる第8直線縁91iと、この第8直線縁91iの一端から当該第8直線縁91iに対して略直角に前記円弧縁91aの他端まで延びる第9直線縁91jとによって囲まれた薄板状に形成されている。
【0025】
前記第1折曲板9bは前記第3直線縁91dに沿って形成され、第4直線縁91eに近付くにしたがって漸次幅狭に形成されている。第2折曲板9cは前記第7直線縁91hに沿って形成され、第6直線縁91gに近付くにしたがって漸次幅狭に形成されている。第3折曲板9dは前記第8直線縁91iに沿って同幅に形成されている。
また、第1折曲板9b、第2折曲板9c、第3折曲板9dは、放熱板本体9aに対して全て同方向に直角に折り曲げ形成されている。
【0026】
上記のような放熱板9は、台座部8の周囲に周方向に一定間隔で多数配置されている。
すなわちまず、図1〜図4に示すように、多数の放熱板9・・・はLED照明灯の軸に対して放射状に配置されている。
そして、図6に示すように、台座部8の外周面に、放熱板9の第2直線縁91cの端部が当接され、台座部8の裏面外周部に、放熱板9の第3直線縁91dが当接されるとともに、第1折曲板9bが当接されている。また、放熱板9の第1直線縁91bは保護蓋11の表面とほぼ面一になるように配置されている。
また、台座部8の裏面中央部には、リング12a,12bが同軸に固定されている。リング12bはリング12aより大径でかつ厚さが薄くなっており、リング12aの外周部にはめ込まれている。
リング12a(「リング12b」の誤記)の外周部には放熱板9の第4直線縁91eが当接され、リング12a(「リング12b」の誤記)の表面には放熱板9の第5直線縁91fが当接されている。
リング12b(「リング12a」の誤記)の外周部には放熱板9の第6直線縁91gの端部が固定されている。
さらに、周方向に隣り合う放熱板9,9のうち、一方の放熱板9の第1折曲板9bは、他方の放熱板9の第3直線縁91dに当接して、該第3直線縁91dに固定されている。
このようにして、多数の放熱板9・・・の先端部は台座部8に固定されている。
【0027】
また、周方向に隣り合う放熱板9,9のうち、一方の放熱板9の第2折曲板9cは、他方の放熱板9の第7直線縁91hに当接または近接され、一方の放熱板9の第3折曲板9dは、他方の放熱板9の第8直線縁91iに当接または近接されている。
したがって、放射状に配置された多数の放熱板9の内側には、放熱板9・・・の第6直線縁91g・・・によって囲まれた円筒状の空洞部13が形成されるとともに、第3折曲板9d・・・によって囲まれた円筒状の空洞部14が形成されている。空洞部13と空洞部14とは同軸に配置されており、これら空洞部13,14の境界部には、多数の第2折曲板9c・・・によって形成された段差部15が設けられている。
【0028】
また、放熱部3の基端部(図6では上端部)には、リング状のプレート16が配置されている。このプレート16はリング状の平面板16aと、この平面板16aの裏面に一体的に形成された円筒状の筒部16bとから構成されている。
そして、放熱板9の第3折曲板9dの端部が筒部16bの外周面に固定され、第9直線縁91jが平面板16aの裏面に固定されている。
このようにして、多数の放熱板9・・・の基端部はプレート16に固定されている。」

「【0029】
前記プレート16には、前記ケース部4の先端部が固定されている。ケース部4は円筒状に形成されており、その基端部(図6では上端部)は閉塞されている。ケース部4の先端部は若干外側に膨らんだ膨出部4aとなっており、この膨出部4aの先端部が前記プレート16の外周部に嵌められたうえで、図示しないビスによって固定されている。
ケース部4の基端面(図6では上端面)の中央部には口金部5が設けられており、この口金部5は、ケース部4の内部に設けられているコンバータ6に電気的に接続されている。したがって、口金部5を交流電源のソケットに嵌め込むことによって、コンバータ6には交流が供給されるようになっている。」

甲第1号証には、以下の図面が示されている。
【図1】

【図4】

【図6】

【図8】

(2)上記記載事項から次のことが認定できる。
ア 段落【0023】の「前記放熱部3は、前記基板2が装着される台座部8と、この台座部8の周囲に、周方向に所定間隔で設けられた多数の放熱板9・・・とを備えており、放熱板9・・・は全体として略半球を形成するように配置している。」との記載と、段落【0026】の「上記のような放熱板9は、台座部8の周囲に周方向に一定間隔で多数配置されている。」との記載と、【図4】から、放熱板9が60枚配置されていることが看取できることを踏まえると、
放熱部3に関し、基板2が装着される台座部8と、この台座部8の周囲に、周方向に一定間隔で設けられた60枚の放熱板9とを備えており、この放熱板9は全体として略半球を形成するように配置していること。

イ 段落【0023】の「この放射板9a(「放熱板本体9a」の誤記)に一体的に折り曲げ形成された、第1折曲板9b」との記載と、【図8】から、前記放熱板9は放熱板本体9aと、この放熱板本体9aに一体的に直角に折り曲げ形成された、第1折曲板9b、第2折曲板9c、第3折曲板9dとによって構成されていること。

ウ 段落【0028】の記載と、段落【0029】の「前記プレート16には、前記ケース部4の先端部が固定されている。」との記載から、
ケース部4の先端部に固定されているリング状のプレート16のリング状の平面板16a及び円筒状の筒部16bに対して、放熱板9の第3折曲板9dの端部が筒部16bの外周面に固定され、第9直線縁91jが平面板16aの裏面に固定されること。

(3)甲第1号証に記載された発明
上記(1)及び(2)から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「基板2が装着される台座部8と、この台座部8の周囲に、周方向に一定間隔で設けられた60枚の放熱板9とを備えており、この放熱板9は全体として略半球を形成するように配置している放熱部3であって、
前記台座部8は円板状の銅板で形成されており、前記放熱板9は、アルミの薄板で形成され、前記放熱板9は放熱板本体9aと、この放熱板本体9aに一体的に直角に折り曲げ形成された、第1折曲板9b、第2折曲板9c、第3折曲板9dとによって構成されており、
前記放熱板本体9aは、円弧状の円弧縁91aと、この円弧縁91aの一端から当該円弧縁91aに対して略直角に延びる第1直線縁91bと、この第1直線縁91bの一端から当該第1直線縁91bに対して略直角に延びる第2直線縁91cと、この第2直線縁91cの一端から当該第2直線縁91cに対して略直角に延びる第3直線縁91dと、この第3直線縁91dの一端から当該第3直線縁91dに対して略直角に延びる第4直線縁91eと、この第4直線縁91eの一端から当該第4直線縁91eに対して略直角に延びる第5直線縁91fと、この第5直線縁91fの一端から当該第5直線縁91fに対して略直角に延びる第6直線縁91gと、この第6直線縁91gの一端から当該第6直線縁91gに対して略直角に延びる第7直線縁91hと、この第7直線縁91hの一端から当該第7直線縁91hに対して略直角に延びる第8直線縁91iと、この第8直線縁91iの一端から当該第8直線縁91iに対して略直角に前記円弧縁91aの他端まで延びる第9直線縁91jとによって囲まれた薄板状に形成されており、
前記第1折曲板9bは前記第3直線縁91dに沿って形成され、前記第4直線縁91eに近付くにしたがって漸次幅狭に形成されており、前記第2折曲板9cは前記第7直線縁91hに沿って形成され、前記第6直線縁91gに近付くにしたがって漸次幅狭に形成されており、前記第3折曲板9dは前記第8直線縁91iに沿って同幅に形成され、前記第1折曲板9b、前記第2折曲板9c、前記第3折曲板9dは、前記放熱板本体9aに対して全て同方向に直角に折り曲げ形成されており、
前記台座部8の裏面外周部に、前記放熱板9の前記第3直線縁91dが当接されるとともに、前記第1折曲板9bが当接され、
また、前記台座部8の裏面中央部には、リング12a,12bが同軸に固定され、前記リング12bは前記リング12aより大径でかつ厚さが薄くなっており、前記リング12aの外周部にはめ込まれており、前記リング12bの外周部には前記放熱板9の前記第4直線縁91eが当接され、前記リング12bの表面には前記放熱板9の前記第5直線縁91fが当接され、前記リング12aの外周部には前記放熱板9の前記第6直線縁91gの端部が固定され、さらに、周方向に隣り合う前記放熱板9,9のうち、一方の放熱板9の第1折曲板9bは、他方の放熱板9の第3直線縁91dに当接して、該第3直線縁91dに固定されており、
また、ケース部4の先端部に固定されているリング状のプレート16のリング状の平面板16a及び円筒状の筒部16bに対して、前記放熱板9の前記第3折曲板9dの端部が前記筒部16bの外周面に固定され、前記第9直線縁91jが前記平面板16aの裏面に固定されており、
放射状に配置された多数の前記放熱板9の内側には、前記放熱板9の前記第6直線縁91gによって囲まれた円筒状の空洞部13が形成されるとともに、前記第3折曲板9dによって囲まれた円筒状の空洞部14が形成されている放熱部3。」

2 甲第2号証
(1)甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
「【請求項5】金属薄板を折曲げ加工して、一対の平行な垂直面とこれらをその下端で繋ぐ底部とを有する断面U字形状を呈する放熱フィンを成形する工程と、
複数の平行な板状の歯片を等間隔に有する位置決め治具を用い、各歯片に放熱フィンをその細長い開口部を被せて支持するか、隣接する歯片同士間の隙間に放熱フィンの一対の垂直面を挿入して挟持することにより、複数の放熱フィンを各底部を同一平面内に位置させ且つ各垂直面を平行にして位置決めする工程と、
上記位置決めした状態で上記放熱フィンの各底部と金属製の基板の表面とをロウ付けする工程と、を含む、ことを特徴とする放熱器の製造方法。


「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば半導体素子等の発熱体に接触して取付け、係る発熱体から生じる熱を外部に放散させるための放熱器とその製造方法に関する。」

「【0005】
【発明が解決すべき課題】本発明は、複数の放熱フィンを互いに近接させて精度良く基板の表面上に立設得るようにした放熱器と、これを容易且つ確実で精度良く得るための製造方法を提供することを課題とする。」

「【0015】
【発明の実施の形態】以下において本発明の実施に好適な形態を図面と共に説明する。図1(A)は、本発明の放熱器1を示し、これは厚肉で四角形の基板2と、この基板2の表面にロウ付けして立設した複数の断面U字形状の放熱フィン10とを有する。係るフィン10,10の間には一定の間隔17が設けられている。基板2は、厚さ6mm、長さ(L)90mm、幅(W)64mmのサイズを有し、比較的熱伝導性に優れ且つ溶融温度の高いアルミニウム合金(JIS:A1050,JIS:A6063,JIS:A3003)の板である。また、放熱フィン10は、厚さ0.3mmで熱伝導性に優れ且つロウ付け後に強度を高め得る熱処理型アルミニウム合金(JIS:A6063)の薄板を折曲げ加工したもので、一対の垂直面12とその下端(一端)で垂直面12,12間を直角に繋ぐ底部(底面)14とからなる断面U字形状であり、細長い開口部16を有する。尚、該フィン10は、図1(B)に示すように垂直面12,12の下端を断面アール形状で繋ぐ底部14aにしても良い。
【0016】放熱フィン10の材質は、熱伝導性と溶融温度が高く且つロウ付けが容易なアルミニウム合金が望ましい。特に、放熱効率を向上させるため放熱面積を増大させるべく、板厚を薄くし且つ一定の形状を保つための強度も必要になる。また、放熱フィン10は、ロウ付けにより焼き鈍しされた状態となるので、上記熱処理型アルミニウム合金を用いて、ロウ付け直後にファン等による高温から急冷で焼き入れ処理等を施すことにより、耐力を増大させることができる。尚、非熱処理型アルミニウム合金では、ロウ付けにより強度が低下する。このため、放熱フィン10の間隔を狭く且つ板厚を薄くし、フィン10の立設枚数を増やし放熱面積を大きくしようとすると、使用時等で容易に変形してしまうため好ましくない。
【0017】上記放熱フィン10の各垂直面12は、例えば高さ26mm、図示で水平方向の長さ(L)90mmのサイズを有し、開口部16の幅は1mmである。また、放熱フィン10,10間の間隔17は1mmに設定されている。付言すると、図1(A)では、作図する都合上から放熱フィン10は5個しか図示していないが、実際には合計24個(垂直面12の数で合計48枚)が立設されている。尚、放熱フィン10の板厚は、0.1〜0.5mmの範囲内が望ましい。板厚が0.1mm未満では、曲げ加工時の加工精度や取り扱いが困難で、成形した放熱フィン10の垂直面12が変形し易いと共に、伝導される熱容量も低下するため放熱面積の増大による放熱効果が減少する。また、板厚が0.5mmを越えると、放熱フィン10,10間の間隔17が狭くなり、基板2上に立設できるフィン10の数が減ると共に、フィン10,10間を流れる空気の抵抗が大きくなるため、放熱効果が却って向上しなくなる。このため、上記の範囲が推奨される。」「【0027】或いは、図4(B)の垂直面12aのみを形成した後、この垂直面12aの左側に隣接して底部14の幅と他方の垂直面12bの高さとの合計に相当する幅寸法で上記薄板10aを切断し、図4(C2)に示すようなアングル形状の薄板10bとしても良い。その後、図4(C2)中の矢印で示すように、底部14と他方の垂直面12bとの境界を中心として、その左側部分を90度上向きに折曲げることによっても、図4(D2)に示すような放熱フィン10を成形することができる。以上のような放熱フィン10の成形工程によれば、予め薄板10aの状態で所定の位置に前記ルーバ20,24や凸部28を所要数設けた後で、断面U字形状に成形することができる。また、放熱フィン10を、その垂直面12の高さや底部14の幅が異なる種類にして成形することも容易となる。」

甲第2号証には、以下の図面が示されている。
【図1】


(2)上記記載事項から次のことが認定できる。
ア 請求項5の「複数の放熱フィン10を各底部14を同一平面内に位置させ且つ各垂直面12を平行にして位置決めする」との記載、及び段落【0027】の「図4(C2)中の矢印で示すように、底部14と他方の垂直面12bとの境界を中心として、その左側部分を90度上向きに折曲げることによっても、図4(D2)に示すような放熱フィン10を成形することができる。」との記載から、複数の放熱フィン10を各底部14を同一平面内に位置させ且つ、前記底部14と直交する各垂直面12を平行にして位置決めすること。

(3) 甲第2号証に記載された発明 及び 甲第2号証に記載された事項
上記(1)及び(2)から、甲第2号証には、次の発明及び事項(以下「甲2発明」及び「甲2事項」という。)が記載されていると認められる。

ア 甲2発明
「金属薄板を折曲げ加工して、一対の平行な垂直面12とこれらをその下端で繋ぐ底部14とを有する断面U字形状を呈する放熱フィン10を成形する工程と、
複数の平行な板状の歯片44を等間隔に有する位置決め治具40を用い、各歯片44に放熱フィン10をその細長い開口部16を被せて支持するか、隣接する歯片44同士間の隙間48に放熱フィン10の一対の垂直面12を挿入して挟持することにより、複数の放熱フィン10を各底部14を同一平面内に位置させ且つ、前記底部14と直交する各垂直面12を平行にして位置決めする工程と、
上記位置決めした状態で上記放熱フィン10の各底部14と金属製の基板2の表面とをロウ付けする工程と、を含む、放熱器1の製造方法。」

イ 甲2事項
「複数の放熱フィン10とこれらを表面に立設する基板2とからなり、
上記放熱フィン10は金属薄板からなり一対の平行な垂直面12とこれらをその下端で繋ぐ底部14とを有する断面U字形状を呈し、
上記複数の放熱フィン10の各底部14を金属製の基板2の表面にロウ付けすること。」

3 甲第3号証
(1)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「【請求項 1】
板金によって形成された放熱部と、
第一スリットと、上記第一スリットに対して略平行に配置された第二スリットとを有する略板状で、発熱する発熱部に対して上記放熱部を固定する固定部とを有し、
上記放熱部は、
上記発熱部に当接して、上記発熱部から熱を受け取る当接部と、
上記板金の上記当接部に隣接する部分を上記当接部に対して略直角な方向に折り曲げた形状で、上記第一スリットに挿通された第一翼部と、
上記板金の上記第一翼部と反対側の上記当接部に隣接する部分を上記第一翼部と同じ方向へ向けて上記当接部に対して略直角な方向に折り曲げた形状で、上記第二スリットに挿通された第二翼部とを有する
ことを特徴とする放熱構造。」

「【技術分野】
【0001】
この発明は、発熱部で発生した熱を放熱する放熱構造及びそれを用いた照明器具に関する。」

「【発明の効果】
【0006】
この発明にかかる放熱構造によれば、放熱効率を高めることができる。」

「【0009】
図1は、この実施の形態における照明器具10の外観を示す斜視図である。
【0010】
照明器具10は、例えば、LEDなどを光源とし、天井面などに設けられた取付穴に挿入することにより、天井面などに埋め込んで使用されるダウンライト型の照明器具である。照明器具10は、例えば、フレーム12と、ヒートシンク16とを有する。フレーム12は、天井面から室内に露出する枠である。ヒートシンク16は、光源で発生した熱を天井裏に放熱する。
【0011】
図2は、この実施の形態における照明器具10の構造を示す分解斜視図である。
【0012】
照明器具10は、図1で説明したフレーム12及びヒートシンク16に加えて、更に、カバー13と、基板押さえ14と、光源モジュール15とを有する。
光源モジュール15(光源ユニット、発熱部)は、例えば基板51を有する。基板51は、例えばプリント配線板である。基板51は、この図に見えていない反対側(表側)の面に、LEDパッケージなどの光源素子が実装されている。
ヒートシンク16(放熱構造)は、光源モジュール15に接触して、光源素子で発生した熱を受け取り、空気中に放熱する。
基板押さえ14は、例えば円形枠状である。基板押さえ14は、ネジなどの固定部品によってヒートシンク16に固定される。基板押さえ14は、ヒートシンク16との間に光源モジュール15を挟むことにより、光源モジュール15をヒートシンク16に押し当てて固定する。
カバー13は、例えば円形板状である。カバー13は、基板押さえ14を保護する。カバー13は、透光部31を有する。透光部31は、例えば樹脂などにより形成され、透明または半透明である。透光部31は、光源モジュール15の光源が放射した光を透過する。
フレーム12は、例えば円形枠状である。フレーム12は、例えば、反射部21と、複数の取付けバネ22とを有する。反射部21(反射板、リフレクタ)は、光源モジュール15の光源が放射した光を反射する。これにより、照明器具10が放射する光の配光や遮光角などの配光特性が決まる。取付けバネ22は、照明器具10を天井面などに固定する。
ヒートシンク16は、例えばネジなどの固定部品によってフレーム12に固定される。
【0013】
なお、図示を省略しているが、照明器具10は、上述した他に、光源モジュール15に対して電力を供給する電源ボックスなどを有する。
【0014】
図3は、この実施の形態におけるヒートシンク16の構造を示す分解斜視図である。
【0015】
ヒートシンク16は、例えば、ベース61と、複数のフィン62(62a〜62f)とを有する。
ベース61(固定部)は、例えば円形板状である。ベース61は、複数のスリット611(611a〜611f、第一スリット),612(612a〜612f、第二スリット)を有する。
複数のスリット611,612は、ほぼ平行に配置されている。複数のスリット611,612は、隣接する2つずつが組をなしている。一組のスリット611,612(611a,612a;611b,612b;611c,612c;611d,612d;611e,612e:611f,612f)は、ほぼ同じ長さである。
フィン62(放熱部)は、例えば板金などの熱伝導率が高い材料を折り曲げ加工することにより形成されている。フィン62は、例えば略長方形状の板金を略コの字状に折り曲げた形状を有する。それぞれのフィン62は、一組のスリット611,612に対応している。
【0016】
図4は、この実施の形態におけるヒートシンク16の組立て工程を示す拡大断面図である。
【0017】
フィン62は、例えば、当接部621(621a〜621f)と、2つの翼部622(622a〜622f、第一翼部),623(623a〜623f、第二翼部)とを有する。
当接部621は、フィン62の中央に当たる部分であり、例えば略長方形板状である。当接部621の短辺方向(この図における左右方向)の長さは、対応する一組のスリット611,612の間隔にほぼ等しい。当接部621の長辺方向(この図における紙面に対して垂直な方向)の長さは、対応する一組のスリット611,612の長さとほぼ等しい。
翼部622は、例えば、当接部621の長辺の一つに繋がる先の部分を当接部621に対してほぼ垂直に折り曲げて形成される。
翼部623は、例えば、当接部621のもう一つの長辺に繋がる先の部分を翼部622と同じ方向へ向けて、当接部621に対してほぼ垂直に折り曲げて形成される。2つの翼部622,623は、ほぼ平行である。」

「段落【0019】
フィン62aは、一組のスリット611a,612aに対応している。ヒートシンク16の組立て工程において、フィン62aは、翼部622aがスリット611aに挿入され、翼部623aがスリット612aに挿入される。フィン62b〜62fも同様に、翼部622(622b〜622f)が、対応するスリット611(611b〜611f)に挿入され、翼部623(623b〜623f)が、対応するスリット612(612b〜612f)に挿入される。」

「【0023】
光源素子52で発生した熱は、基板51に伝わる。基板51の面512(図5参照)は、フィン62の当接部621(図5参照)に押し当てられて固定されているので、基板51からフィン62に熱が伝わる。フィン62に伝わった熱は、翼部622,623(図4参照)から空気中に放熱される。」
甲第3号証には、以下の図面が示されている。
【図2】


【図4】


(2)甲第3号証に記載された事項
上記(1)から、甲第3号証には、放熱効率を高めるヒートシンク16に関し、次の事項(以下「甲3事項」という。)が記載されていると認められる。

「放熱効率を高めるヒートシンク16において、
板金によって形成されたフィン62と、
第一スリット611と、上記第一スリット611に対して略平行に配置された第二スリット612とを有する略板状で、発熱する光源モジュール15に対して上記フィン62を固定するベース61とを有し、
上記フィン62は、
上記光源モジュール15に当接して、上記光源モジュール15から熱を受け取る当接部621と、
上記板金の上記当接部621に隣接する部分を上記当接部621に対して略直角な方向に折り曲げた形状で、上記第一スリット611に挿通された第一翼部622と、
上記板金の上記第一翼部と反対側の上記当接部621に隣接する部分を上記第一翼部622と同じ方向へ向けて上記当接部621に対して略直角な方向に折り曲げた形状で、上記第二スリット612に挿通された第二翼部623とを有すること。」

4 甲第4号証
(1)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
複数のチップ状の半導体発光素子と;
これら半導体発光素子が接着により実装された素子実装板を有した装置基板であって、前記素子実装板から正面側に突設され前記素子実装板の熱を前記装置基板の正面側に移動させる伝熱部を有した前記装置基板と;
前記各半導体発光素子を封止して設けられた透光性の封止部材と;
前記伝熱部と熱的に接続して前記装置基板の正面側に設けられているとともに前記封止部材の外部に少なくとも一部が配置された放熱部材と;
を具備したことを特徴とする照明装置。」
「【請求項 6】
前記放熱部材が、前記正面金属層に熱的に接続された受熱ベースと、この受熱ベースから一体に突出された複数の放熱フィンと有し、この放熱フィンに前記封止部材を覆う配光制御部材が支持されていることを特徴とする請求項3から5の内のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項 7】
前記放熱フィンが、前記受熱ベースの中心に対して放射方向に延びているとともに、隣接した前記放射フィン間が前記放熱部材の外周側で開放されていることを特徴とする請求項6に記載の照明装置。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、光源として複数のLED(発光ダイオード)などの半導体発光素子を備えて、天井等の被取付け部に埋め込んで或いは直付けして設置される照明装置に関する。」

「【0008】
本発明の目的は、封止部材で封止された半導体発光素子が発した熱の放熱性能を向上できるとともに、設置状態での被取付け部に対する突出高さを小さくできる照明装置を提供することにある。」

「【0041】
図1及び図2を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
【0042】
図1中符号1は照明装置、例えば屋内の天井(被取付け部)2に埋め込んで設置される埋め込み型のダウンライトを示している。ダウンライト1は、装置基板3と、半導体発光素子例えば青色発光をする複数のLED25と、透光性の封止部材31と、点灯回路が有した複数の電気部品35と、正面側放熱部材41と、背面側放熱部材45とを具備している。
【0043】
装置基板3は、素子実装板4と、部品取付け板11と、伝熱部18とを有している。」

「【0045】
部品取付け板11はドーナツ状をなしている。部品取付け板11の内径は素子実装板4の外径より小さいとともに、部品取付け板11の外径は素子実装板4の外径より大きい。この部品取付け板11は、取付け板ベース12の正面(図1では下面)に正面金属層13を積層して形成されている。
【0046】
取付け板ベース12は、コアとなる第1のベース板14の背面(図1では上面)に第2のベース板15を貼り合せて形成されている。第1のベース板14と第2のベース板15は、いずれも電気絶縁物例えば合成樹脂で同じ大きさのドーナツ状に作られている。正面金属層13はメッキ処理等により第1のベース板14の正面(図1では下面)の全面にわたって被着されている。この正面金属層13は好適には銅からなる。」

「【0055】
図1に示すように正面側放熱部材41はアルミニウム(その合金を含む)等のように軽く熱伝導性に優れた材料からなり、受熱ベース42と、これから光の照射側に一体に突設された複数の放熱フィン43とを有して形成されている。
【0056】
受熱ベース42はドーナツ形状をなしていて、その内径は部品取付け板11の内径と同じであり、外径は部品取付け板11の外径より例えば小さい。図2に示すように各放熱フィン43は、大きさ(径)が異なる円環状をなしていて、同心円的に配置されている。各放熱フィン43の厚みは例えばいずれも同じである。各放熱フィン43の高さは、例えば同じではなく、図1に示すように相対的に内側位置の放熱フィン43よりも外側位置の放熱フィン43の方が、突出高さが高い。最も突出高さが高い放熱フィン43は、ダウンライト1が天井2に装着された場合に、遮光角θを規定するようになっている。
【0057】
正面側放熱部材41は、その受熱ベース42を正面金属層13に面接触するように図示しない接着剤を用いて接着することにより、装置基板3の正面に取付けられている。したがって、受熱ベース42は正面金属層13に熱的に接続されていて、伝熱部18の熱を受けるようになっている。又、正面金属層13に接続された正面側放熱部材41は、図2に示すように装置基板3を正面に見て、つまり、ダウンライト1を正面から背面方向に見て、封止部材31を囲むように配置されている。それにより、正面側放熱部材41は、その全体が封止部材31の外部に位置されているとともに、封止部材31の表面よりも光の照射側に突出している。」

「【0081】
図5(A)(B)は本発明の第4実施形態を示している。この第4実施形態は以下説明する事項以外は第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と同じ構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0082】
第4実施形態では、正面側放熱部材41が有した複数の放熱フィン43の夫々が、円形ではなく、正面側放熱部材41の中心に対し放射方向に延びて形成されている。各放熱フィン43は、その放熱面積を大きく確保しつつ、正面側放射部材41の周方向に隣接した放熱フィン43間に光が入射し易くするために、図5(A)に示すように正面側放射部材41の中央部側の端から外周部側の端に向かうに従い次第に高く形成されている。そして、正面側放射部材41の周方向に隣接した放熱フィン43間は、図5(B)に示すように正面側放射部材41の外周側で開放されている。」

甲第4号証には、以下の図面が示されている。
【図5】


(2)上記記載事項から次のことが認定できる。
ア 請求項1の「前記各半導体発光素子を封止して設けられた透光性の封止部材と;前記伝熱部と熱的に接続して前記装置基板の正面側に設けられているとともに前記封止部材の外部に少なくとも一部が配置された放熱部材」との記載と、段落【0082】の「第4実施形態では、正面側放熱部材41が有した複数の放熱フィン43の夫々が、円形ではなく、正面側放熱部材41の中心に対し放射方向に延びて形成されている。」との記載から、請求項1の「放熱部材」は、第4実施形態では「正面側放熱部材41」であることを踏まえると、
伝熱部18と熱的に接続して装置基板3の正面側に設けられているとともに、各半導体発光素子を封止して設けられた透光性の封止部材31の外部に配置された正面側放熱部材41であること。

イ 請求項6の記載と、【図5】から18枚の放熱フィン43が看取できることを踏まえると、
正面側放熱部材41は、受熱ベース42と、この受熱ベース42から一体に突出された18枚の放熱フィン43と有すること。

ウ 段落【0055】の記載から、受熱ベース42は、アルミニウム等のように軽く熱伝導性に優れた材料からなること。

エ 請求項7の記載と、【図5】から、放熱フィン13は、受熱ベース42の周囲に周方向に一定間隔で設けられることが看取できることを踏まえると、
放熱フィン13は、受熱ベース42の周囲に周方向に一定間隔で設けられ、前記受熱ベース42の中心に対して放射方向に延びているとともに、隣接した前記放射フィン13間が正面側放熱部材41の外周側で開放されていること。

(3)甲第4号証に記載された発明
上記(1)及び(2)から、甲第4号証には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「伝熱部18と熱的に接続して装置基板3の正面側に設けられているとともに、各半導体発光素子を封止して設けられた透光性の封止部材31の外部に配置された正面側放熱部材41であって、
前記正面側放熱部材41は、受熱ベース42と、この受熱ベース42から一体に突出された18枚の放熱フィン43と有し、
前記受熱ベース42は、アルミニウム等のように軽く熱伝導性に優れた材料からなり、
前記放熱フィン13は、前記受熱ベース42の周囲に周方向に一定間隔で設けられ、前記受熱ベース42の中心に対して放射方向に延びているとともに、隣接した前記放射フィン13間が前記正面側放熱部材41の外周側で開放されている正面側放熱部材41。」

5 甲第5号証
(1)甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
「【請求項 1】
ハウジングと、
少なくとも1つの半導体光素子を含み、前記ハウジングの底面外側に配置される発光モジュールと、
前記ハウジングの底面内側に放射状に配置され、前記ハウジングの底面内側の中心部に連通空間を形成する放熱ユニットと、
前記ハウジングの底面内側の中心部から放射状に形成される第1放熱通路と、
前記ハウジング底面の周縁に沿って上下方向に形成される第2放熱通路と、を含むことを特徴とする光半導体照明装置。
【請求項2】
前記放熱ユニットは、
前記ハウジングの底面と直交し、対向する一対の放熱薄板を含む放熱体ユニットが複数に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の光半導体照明装置。」

「【請求項 12】
少なくとも1つの半導体光素子が前記ハウジングの底面外側に配置されるハウジングと、
前記ハウジングの底面内側に放射状に配置される複数の底部薄板と、
前記底部薄板の両側周縁に沿って延在して対向する放熱薄板と、を含むことを特徴とする光半導体照明装置。
【請求項 13】
前記光半導体照明装置は、
前記底面内側の中心部に向かって前記底部薄板の内側端部から延在する延在薄板と、
前記延在薄板の両側周縁に沿って延在して対向する固定薄板と、をさらに含み、
前記固定薄板は前記放熱薄板と接続されることを特徴とする請求項12に記載の光半導体照明装置。
【請求項 14】
前記光半導体照明装置は、
前記底面内側の中心部に配置され前記固定薄板の上側周縁を固定するコア固定片をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の光半導体照明装置。
【請求項 15】
前記底部薄板は、
前記底面内側の周縁側に向かって次第に広くなるようにテーパ状をなす形状であることを特徴とする請求項12に記載の光半導体照明装置。
【請求項 16】
前記ハウジングは、
前記底面内側から突出され前記底部薄板の両側周縁に沿って配置された複数の固定突片をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の光半導体照明装置。
【請求項17】
前記ハウジングは、
前記底面内側の中心部から複数の前記底部薄板及び前記放熱薄板の内側端部間で形成される連通空間をさらに含み、
前記連通空間は第1放熱通路と連通することを特徴とする請求項12に記載の光半導体照明装置。
【請求項18】
前記ハウジングは、
前記連通空間に配置される換気ファンをさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の光半導体照明装置。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体照明装置に関する。」

「【0003】
通常、このような光半導体を利用した照明器具は光半導体からの発熱が避けられないため、熱が発生する部位には必ずヒートシンクを設置して発生した熱を外部に放出させなければならない。」

「【0008】
一方、このような点に鑑みて薄板を利用して放熱板の形態に製作されたヒートシンクの場合は、十分な放熱面積の確保は可能であるが、ハウジングに線接触の形態で配置されなければならないという構造的な制限によって、光半導体から発生する熱を伝達して排出させる熱伝逹の側面では限界があった。」

「【0038】
まず、本発明は発光モジュールが装着されたハウジングに放射状に配置される放熱ユニットを含み、放熱ユニットの形成方向に沿って第1放熱通路を形成し、発光モジュールの周縁に沿ってハウジングの上下方向に第2放熱通路を形成した構造を採用することによって、第1、第2放熱通路を介した自然対流を活発に誘導して放熱効果を大幅に増大させて発熱問題を解決することができる。
【0039】
また、本発明は半導体光素子を含むハウジングに放射状に配置された底部薄板の両側の周縁から延在して放熱薄板が互いに対向する「U」字形状の構造を採用することによって、製品全体の軽量化を実現でき、製品の生産原価と原資材の使用量を大幅に減らすことができる。
【0040】
すなわち、本発明は放熱体ユニットそのものを薄板化することによってダイカストで製作された従来のヒートシンクの問題点であるヒートシンクを薄板化することが難しい問題点を解決して軽量化を実現できるようにしており、従来の薄板型ヒートシンクの線接触方式による伝熱面積の確保の困難を底部薄板によって解決したものと言える。」

「【0046】
図1は、本発明の一実施形態による光半導体照明装置の全体的な構成を示す斜視図であり、図2は図1のA−A´線断面図で、図3は図1のBから見た一部の概念図で、図4は図1のCから見た一部の概念図で、図5及び図6は本発明の一実施形態による光半導体照明装置の主要部である放熱ユニットを構成する放熱体ユニットの全体的な構造を示す図である。
【0047】
本発明は、図示のように、発光モジュール200が配置されたハウジング100に放熱ユニット300が装着され、ハウジング100内側に第1、第2放熱通路H1、H2が形成された構造であることがわかる。」

「【0050】
放熱ユニット300はハウジング100の底面110内側に放射状に配置され、ハウジング100の底面110内側の中心部に連通空間101を形成するものであり、発光モジュール200から発生する熱をハウジング100の外側に排出させるためのものである。
【0051】
第1放熱通路H1はハウジング100の底面110内側の中心部から放射状に形成されるものであり、具体的には放熱ユニット300それぞれの形成方向に沿って放射状に形成されることができる。」

「【0063】
一方、放熱ユニット300は上述のようにハウジング100の底面110に装着されて放熱性能を実現できるようにしたものであり、ハウジング100の底面110と直交し、対向する一対の放熱薄板320を含む放熱体ユニット301(図5及び図6参照)が複数に配置されたものである。
【0064】
ここで、放熱ユニット300の外側端部はハウジング100の底面110外側から形成される第2放熱通路H2と連通することを確認することができる。
【0065】
放熱ユニット300の構造についてさらに詳しく述べると、ハウジング100の底面110内側に放射状に配置されるものであり、半導体光素子201が配置された反対側面、すなわち底面110内側に接触される複数の底部薄板310を含む構造であることが把握できる。
【0066】
そして、放熱ユニット300は底部薄板310の両側周縁に沿って延在して互いに対向する放熱薄板320を含む。」

「【0070】
このとき、放熱ユニット300は底面110内側の中心部に向かって底部薄板310の内側端部から延在する延在薄板311と、延在薄板311の両側周縁に沿って延在して互いに対向する固定薄板312と、をさらに含むことが好ましい。
【0071】
延在薄板311は固定薄板312の形成空間を提供するためのものであり、固定薄板312は固定薄板312の上側周縁を固定するコア固定片400による固定支持力を分散支持するための補強構造の役割を行うものである。」

「【0073】
したがって、連通空間101はコア固定片400の上側空間、すなわち底面110内側の中心部から複数の底部薄板310及び放熱薄板320の内側端部間で形成され、第1放熱通路H1と互いに連通するものである。
【0074】
また、ハウジング100は、図5のように放熱体ユニット301を構成する底部薄板310の定着空間を提供し、放熱薄板320の下部側が堅固に固定支持されることができるように底面110内側から突出され、底部薄板310の両側周縁に沿って配置された複数の固定突片160をさらに含むことが好ましい。
【0075】
また、底部薄板310は、図6のように底面110の中心部から外側に向かうほど円滑に熱が排出されることができるように底面110内側の周縁側に向かって次第に広くなるようにテーパ状をなす形状に製作されるようにする。
【0076】
したがって、放熱ユニット300は放熱体ユニット301を構成する底部薄板310と放熱薄板320が全体的にその断面が「U」字形状をなすようにするが、底部薄板310が底面110の内側に接触配置されるようにすることによって従来の放熱フィン構造に比べて伝熱面積が増大する結果によってさらに増大した放熱効果を図ることができるようになる。
【0077】
さらに、本発明は従来の照明装置でヒートシンクがダイカストで製作されることによって、体積と大きさが大きくなる問題点を、薄板構造である底部薄板310と放熱薄板320とを含む放熱体ユニット301の放射状の配置構造に代えることによって製品全体の軽量化が可能になる。」


甲第5号証には、以下の図面が示されている。
【図1】


【図2】

【図5】

【図6】

(2)上記記載事項及び各図面から次のことが認定できる。
ア 請求項1の記載から、放熱ユニット300は、ハウジング100の底面110内側に放射状に配置され、前記ハウジング100の前記底面110内側の中心部に連通空間101を形成し、前記ハウジング100の前記底面110内側の中心部から放射状に形成される第1放熱通路H1と、前記ハウジング100の前記底面110の周縁に沿って上下方向に形成される第2放熱通路H2と、を含むこと。また、ハウジング100の底面110を形成する熱伝導のための部材として板金を使用することは一般常識である。

イ 請求項2及び請求項12の記載から、放熱ユニット300は、ハウジング100の底面110内側に放射状に配置される複数の底部薄板310と、この底部薄板310の両側周縁に沿って延在して前記ハウジング100の底面110と直交し、対向する一対の放熱薄板320を含む放熱体ユニット301が複数に配置されていること。
また、段落【0077】において、ダイカストで製作されることによる問題点が指摘されているとともに、「放熱体ユニット301の放射状の配置構造に代えることによって製品全体の軽量化が可能になる」ことが記載されており、さらに、熱伝導のための部材として板金を使用することは、一般常識であるところ、【図5】等を参照すると、放熱体ユニット301が、板金を曲げ加工して作製されていることは明らかである。

ウ 請求項13の記載から、底部薄板310には、底面110内側の中心部に向かって前記底部薄板310の内側端部から延在する延在薄板311と、この延在薄板311の両側周縁に沿って延在して対向する固定薄板312と、が設けられること。

エ 請求項14の記載から、ハウジング100は、底面110内側の中心部に配置され固定薄板312の上側周縁を固定するコア固定片400を含むこと。

オ 請求項16の記載から、ハウジング100の底面110には、該底面110内側から突出され底部薄板310の両側周縁に沿って配置された複数の固定突片160を設けること。

カ 請求項17の記載から、放熱ユニット300は、底面110内側の中心部から複数の底部薄板310及び放熱薄板320の内側端部間で形成される連通空間101をさらに含み、この連通空間101は第1放熱通路H1と連通すること。

(3)甲第5号証に記載された発明
上記(1)及び(2)から、甲第5号証には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「板金で構成されたハウジング100の底面110内側に放射状に配置され、前記ハウジング100の前記底面110内側の中心部に連通空間101を形成し、前記ハウジング100の前記底面110内側の中心部から放射状に形成される第1放熱通路H1と、前記ハウジング100の前記底面110の周縁に沿って上下方向に形成される第2放熱通路H2と、を含む放熱ユニット300であって、
前記ハウジング100の前記底面110内側に放射状に配置される複数の底部薄板310と、この底部薄板310の両側周縁に沿って延在して前記ハウジング100の前記底面110と直交し、対向する一対の放熱薄板320を含む、板金を曲げ加工して作製されている放熱体ユニット301が複数に配置されており、
前記底部薄板310には、前記底面110内側の中心部に向かって前記底部薄板310の内側端部から延在する延在薄板311と、この延在薄板311の両側周縁に沿って延在して対向する固定薄板312と、が設けられ、
前記ハウジング100は、前記底面110内側の中心部に配置され前記固定薄板312の上側周縁を固定するコア固定片400を含み、
前記ハウジング100の前記底面110には、該底面110内側から突出され前記底部薄板310の両側周縁に沿って配置された複数の固定突片160が設けられ、
前記底面110内側の中心部から複数の前記底部薄板310及び前記放熱薄板320の内側端部間で形成される前記連通空間101をさらに含み、この連通空間は前記第1放熱通路H1と連通している放熱ユニット300。」

6 甲第6号証
(1)甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
「【請求項 1】
LEDランプに設けられる放熱装置であって、
一端に挿入端部を有する板状の複数の放熱フィンを周方向に並べることにより筒状に形成される放熱フィンセットと、
板状であり、前記挿入端部に対応する複数の挿し溝が周方向に形成され、前記挿入端部が前記挿し溝に差し込まれることにより前記放熱フィンセットと結合する放熱基座と、
前記放熱フィンセットの取り付けに用いる絶縁コネクターと、を備えることを特徴とするLEDランプ用放熱装置。」

「【請求項 4】
前記放熱フィンの前記挿入端部は、前記放熱フィンが折り曲がって形成される二層構造であり、
前記放熱基座の前記挿し溝の幅は、前記挿入端部の肉厚より略大きく形成され、
前記挿入端部及び前記挿し溝の側壁に対してプレス加工することにより形成される押し付け変形部を有することを特徴とする請求項1記載のLEDランプ用放熱装置。」

「【技術分野】
【0001】
本考案はLEDランプ(lamp)に関するもので、特にLEDランプ用放熱装置に関するものである。」

「【0006】
LEDランプは放熱フィンセット、放熱基座、絶縁コネクターを備える。放熱フィンセットは複数個の放熱フィンが廻りめぐって構成される。放熱基座は平板の形状で、一方の端面の周辺には、互いに所定間隔を有する複数個の挿し溝が形成される。各放熱フィンは、垂直方向の頂端に挿入端部が形成される。各放熱フィンの挿入端部はそれぞれ放熱基座の挿し溝に挿し込まれ、プレス(press)加工により各放熱フィンと放熱基座の各挿し溝とが結合する。本考案は、全体的構造が精巧簡単であり、組み立て工程が簡易であり、一回のプレス加工により全部の放熱フィンを放熱基座に緊密に取り付けることができる。」

「【0013】
(一実施形態)
図1、図2に示すのは本考案の一実施形態によるLEDランプ用放熱装置であり、放熱フィンセット10、放熱基座2、絶縁コネクター3を備える。放熱フィンセット10の開口端にはランプフード4が結合されている。
【0014】
放熱フィンセット10は、複数の放熱フィン1を環設することにより構成され、各放熱フィン1の長手方向の頂端には挿入端部11が形成されている。
【0015】
放熱基座2は平板形状に形成され、一方の面2aの縁部には周方向に複数の挿し溝21が形成されている(図3に示す如く)。放熱基座2の他方の面2bには複数のLEDを有する直列に構成される発光基板、または他のLED発光ユニット(図面には示されていない)が設けられている。放熱基座2には適当に配置された孔22、23を有し、発光基板またはLED発光ユニットの配線の取り付けに用いる。
【0016】
絶縁コネクター3は放熱フィンセット10の取り付けに用いられる。
各放熱フィン1の挿入端部11をそれぞれ放熱基座2の挿し溝21に挿し込み、挿し溝21に対してプレス加工を行うことで、押圧変形を発生させ、放熱フィン1の植え部11と放熱基座2の挿し溝21とを緊密に結合させる(図4に示す如く)。そして、絶縁コネクター3と結合し、またはランプフード4と結合してLEDランプを構成する。
【0017】
平板形状の放熱基座2の一方の端面2aの周辺には、所定間隔を置いて複数個の挿し溝21が設けられる。挿し溝21は各放熱フィン1の挿入端部11と対応する。適合なプレス加工により緊密に結合するので、全体的の組立結合をより迅速で、簡略化することができる。
【0018】
放熱フィン1の挿入端部11は折り畳んで形成された二層(または多層)の挿入端部11でもよい。図5に示すように、放熱基座2の挿し溝21の幅は折り畳まれた二層の挿入端部11の厚さよりやや大きい。よって挿入端部11が挿し溝21に挿入されても挿し溝21には適当な隙間211を有する。よって、プレスヘッド5を用いて二層の挿入端部11の折り畳み部分111と挿し溝の側壁212に対してプレス加工を行うと(順番に図6から図8に示す如く)、折り畳み部分111は挿し溝21に完全に埋め込まれる。また、挿し溝の側壁212に押し付け変形部212aが形成され、押し付け変形部212aと挿入端部11の折り畳み部分111と緊密に結合すれば、放熱フィン1と挿し溝21の外れまたは緩みを抑制することができる。
【0019】
図9に示すように、放熱フィン1の直立方向の頂端には二つ以上の階段部が形成される。そのうちの一つの階段部は挿入端部11であり、内側に位置する階段部は折り曲げられている水平折片12を有する。各内側の階段部の水平折片12は隣接して配列され、環状の平面を形成する(図2に示す如く)。環状平面は、放熱基座2の一方の面2aに密着し、放熱基座2はより速く熱を吸収して放熱フィン1へ伝送することができる。この設計により、環状平面と放熱基座2の一方の端面2aは密着するので、分離または隙間することなく、放熱基座2は快速に熱を各放熱フィン1に伝送することができる。
【0020】
図9に示すように、放熱フィン1の挿入端部11は折り畳んで形成された二層または多層の形態でもよい。折り畳みの挿入端部11を放熱基座2の挿し溝21に挿し込み、プレス加工を行うことにより結合させる。各放熱フィン1の開口端の外側縁部13には嵌め付け溝131が形成され、ランプフード4は複数個の嵌め付け溝131により、放熱フィンセット10の開口端に簡単に結合することができる(図10に示す如く)。」

「【0024】
本考案の絶縁コネクター3の形態は上記の実施形態に限らず、例えば図1、図2の実施例に示す絶縁コネクター3は中空であっても良い。絶縁コネクター3の上端には放熱フィンセット10を取り付ける管柱32が設けられ、下端には標準仕様のねじ付け部33が設けられ、周知の金属導電コネクター331が設けられ、絶縁コネクター3の中段には環状縁部34が設けられ、環状縁部34の内側縁部には環状の嵌め止め341が設けられ、嵌め止め341は各放熱フィン1の外嵌め付け溝132との結合に用いられる(図10に示す如く)。」

甲第6号証には、以下の図面が示されている。
【図2】




【図3】



【図4】

【図9】

【図10】

(2)上記記載事項及び各図面から次のことが認定できる。
ア 【図4】等から、40枚の放熱フィン1を等間隔に周方向に並べることにより筒状に形成される放熱フィンセット10であること。

イ 段落【0019】の記載から、放熱フィン1の直立方向の頂端には二つ以上の階段部が形成され、そのうちの一つの階段部は挿入端部11であり、内側に位置する階段部は折り曲げられている水平折片12であり、各内側の階段部の前記水平折片12は隣接して配列され、環状平面を形成し、この環状平面は、放熱基座2の一方の面2aに密着していること。

ウ 段落【0024】の「絶縁コネクター3は中空であっても良い。」との記載、及び【図10】から、放熱フィンセット10の取り付けに用いる中空部を有する絶縁コネクター3であること。

(3)甲第6号証に記載された発明
上記(1)及び(2)から、甲第6号証には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
「LEDランプに設けられる放熱装置であって、
一端に挿入端部11を有する板状の40枚の放熱フィン1を等間隔に周方向に並べることにより筒状に形成される放熱フィンセット10と、
板状であり、前記挿入端部11に対応する複数の挿し溝21が周方向に形成され、前記挿入端部11が前記挿し溝21に差し込まれることにより前記放熱フィンセット10と結合する放熱基座2と、
前記放熱フィンセット10の取り付けに用いる中空部を有する絶縁コネクター3と、を備えるLEDランプ用放熱装置であって、
前記放熱フィン1の前記挿入端部11は、前記放熱フィン1が折り曲がって形成される二層構造であり、前記放熱基座2の前記挿し溝21の幅は、前記挿入端部11の肉厚より略大きく形成され、前記挿入端部11及び前記挿し溝21の側壁に対してプレス加工することにより形成される押し付け変形部を有し、
前記放熱フィン1の直立方向の頂端には二つ以上の階段部が形成され、そのうちの一つの階段部は前記挿入端部11であり、内側に位置する階段部は折り曲げられている水平折片12であり、各内側の階段部の前記水平折片12は隣接して配列され、環状平面を形成し、この環状平面は、前記放熱基座2の一方の面2aに密着しているLEDランプに設けられる放熱装置。」

第5 当審の判断
1 申立理由1について
1−1 甲第1号証を主の発明とした場合について
1−1−1 対比
(1)本件発明1と甲1発明との対比
ア 後者の「60枚の放熱板9」は、「アルミの薄板で形成され、前記放熱板9は放熱板本体9aと、この放熱板本体9aに一体的に折り曲げ形成された、第1折曲板9b、第2折曲板9c、第3折曲板9dとによって構成されて」いるから、前者の「板金を曲げ加工した複数の放熱フィン」に相当する。

イ 後者の「円板状の銅板で形成されており」、「周囲に、周方向に一定間隔で設けられた60枚の放熱板9とを備え」た「台座部8」は、前者の「前記複数の放熱フィンが取り付けられた板金で構成された板材」に相当する。

ウ 後者の「放熱板本体9a」は、前者の「放熱板」に相当する。また、後者の「放熱板本体9aに一体的に直角に折り曲げ形成された、第1折曲板9b」と、前者の「板材に固定された取付部」とは、「板材に配置された配置部」の点で共通し、後者のかかる「放熱板本体9a」は、上記「放熱板本体9aに一体的に直角に折り曲げ形成された、第1折曲板9b」との構成から、前者の「取付部と直交する放熱板」とは、「配置部と直交する放熱板」の点で共通する。

エ 後者の「放射状に配置された多数の前記放熱板9の内側には、前記放熱板9の前記第6直線縁91gによって囲まれた円筒状の空洞部13が形成されるとともに、前記第3折曲板9dによって囲まれた円筒状の空洞部14が形成されている」構成における「円筒状の空洞部13」及び「円筒状の空洞部14」は、前者の「所定の空間」に相当する。
また、後者は、「この台座部8の周囲に、周方向に一定間隔で設けられた60枚の放熱板9とを備えて」いるところ、放熱板9が60枚で偶数枚であることから、放熱板9同士の間隔も偶数である。そして、段落【0022】の「周方向に所定間隔で設けられた多数の放熱板9・・・とを備えており」との記載から、当該偶数枚の放熱板9は等間隔に設けられていることに基づけば、ある放熱板本体9aと、この放熱板本体9aを基準として180°離れた位置に配置されている他の放熱板本体9aとは直線上に位置することは、数学的にみて明らかである。そうすると、後者の「放熱板9」の「放熱板本体9a」の板面と、この「放熱板本体9a」を基準として180°離れた位置に配置されている他の「放熱板本体9a」の板面とは同一平面を形成しているといえるし、また、前記「放熱板本体9a」と前記180°離れた位置に配置されている他の「放熱板9」の「放熱板本体9a」との間に「円筒状の空洞部13」及び「円筒状の空洞部14」が存在することは、【図6】等から明らかであるから、後者のかかる「放熱板9」の「放熱板本体9a」の配置構成と、前者の「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記複数の放熱フィンの前記取付部が前記板材に配置された」構成とは、「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記複数の放熱フィンの前記配置部が前記板材に配置された」構成の点で共通する。

エ 後者の「放熱部3」は、前者の「ヒートシンク」に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「板金を曲げ加工した複数の放熱フィンと、
前記複数の放熱フィンが取り付けられた板金で構成された板材と
を備え、
前記放熱フィンは、前記板材に配置された配置部と前記配置部と直交する放熱板とを有し、
前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記複数の放熱フィンの前記配置部が前記板材に配置されたヒートシンク。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
放熱フィンと板材の取り付けについて、
本件発明1では、「放熱フィンは、前記板材に固定された取付部」を有するのに対し、
甲1発明では、「放熱板9」の「台座部8」への固定は、「台座部8の裏面中央部に」「固定され」た「前記リング12aの外周部には前記放熱板9の前記第6直線縁91gの端部が固定され」るとともに、「ケース部4の先端部に固定されているリング状のプレート16のリング状の平面板16a及び円筒状の筒部16bに対して、前記放熱板9の前記第3折曲板9dの端部が前記筒部16bの外周面に固定され、前記第9直線縁91jが前記平面板16aの裏面に固定され」ることで行われる点。

1−1−2 判断
(1)新規性の判断(請求項1〜3)
本件発明1と甲1発明とでは、放熱フィンと板材の取り付けにおいて固定の仕方に相違があるので、上記相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明であるとはいえない。
また、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、甲1発明であるとはいえない。

(2)進歩性の判断(請求項1〜5)
(2−1)本件発明1について
相違点1について検討する。
ア 本件発明1の「放熱フィン」の「板材に固定された取付部」は、「放熱フィン」を「取付部」によって「板材に固定」するものである。このことは、願書に添付された明細書(以下「本件特許明細書」といい、図面を含めて「本件特許明細書等」という。)の段落【0065】の「ヒートシンク12は、放熱フィン122をベースプレート121に固定したフィン固定部129を有している。フィン固定部129は、ベースプレート121の板金の一部を変形させて形成されたものである。フィン固定部129は、ベースプレート121に形成された突起123を変形させることで形成される。」との記載、及び段落【0066】の「図17のとおり、放熱フィン122は、ベースプレート121に密着する取付部126を有している。取付部126は、台形形状であり、台形形状中央に直線方向に3個の取付穴127を有している。突起123は、中央に穴124を有する環状凸形状をしている。フィン固定部129は、突起123を取付穴127に挿入して突起123の先端を外側に曲げることにより取付穴127の穴縁部713の裏面712と表面711とを挟持したものである。すなわち、フィン固定部129は、取付部126の取付穴127の裏面712と表面711とを挟持して、放熱フィン122をベースプレート121に固定している。」との記載からも明らかである。

イ 他方、甲1発明の「第1折曲板9b」は、「台座部8」に「当接」するものであって、固定するものでない。
また、甲1発明において、放熱板9の台座部8に対する固定は、リング12aの外周部と放熱板9の第6直線縁91gの端部でなされることから、これに加えて新たな固定手段を設ける必要性はないといえる。
さらに、甲1発明では、放熱板9の「第1折曲板9b」は、「前記第3直線縁91dに沿って形成され」、隣接する他の「放熱板9」の「第3直線縁91d」へ当接するものとし、「台座部8」へ直接固定することなく「当接」し、「前記台座部8の裏面外周部に、前記放熱板9の前記第3直線縁91dが当接されるとともに、前記第1折曲板9bが当接され」るものとなっており、放熱板9の台座部8への固定は、上述したとおり、リング12aの外周部と放熱板9の第6直線縁91gの端部でなされるものとなっているが、これは、多数の放熱板9をまず組み立てた上で、その組み立て体を「台座部8」ではなくリング12aに固定するための構成であるであるところ、甲1発明において、「第1折曲板9b」を「台座部8」に直接固定しないことで、組み立て作業や位置決め作業を簡易にしているものであるといえることから、「第1折曲板9b」を「台座部8」に直接固定するという代替手段を採用することになれば、組み立ての際の作業工程を複雑化する要因となることは明らかである。
以上を踏まえると、甲1発明において、第1折曲9bと台座部8の裏面外周部に直接固定するような動機付けが存在するとはいえない。
したがって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明から容易に想到し得るものとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 甲第2、3号証の検討
本件発明4、5に対しての証拠である甲第2、3号証についても、一応検討する。
(ア)甲第2号証の適用について
甲第2号証には、「甲2事項」として、上記「第4 2(2)イ」で述べたように、「複数の放熱フィン10とこれらを表面に立設する基板2とからなり、上記放熱フィン10は金属薄板からなり一対の平行な垂直面12とこれらをその下端で繋ぐ底部14とを有する断面U字形状を呈し、上記複数の放熱フィン10の各底部14を金属製の基板2の表面にロウ付けすること。」が記載されている。
しかしながら、上記イで述べたように、甲1発明は、リング12aの外周部と放熱板9の第6直線縁91gの端部で固定できているものであるから、作業の複雑化となるような第1折曲板9bと台座部8の裏面外周部をロウ付けする動機付けはないといわざるを得ない。

(イ)甲第3号証の適用について
甲第3号証には、「甲3事項」として、上記「第4 3(2)」で述べたように、「放熱効率を高めるヒートシンク16において、板金によって形成されたフィン62と、第一スリット611と、上記第一スリット611に対して略平行に配置された第二スリット612とを有する略板状で、発熱する光源モジュール15に対して上記フィン62を固定するベース61とを有し、上記フィン62は、上記光源モジュール15に当接して、上記光源モジュール15から熱を受け取る当接部621と、上記板金の上記当接部621に隣接する部分を上記当接部621に対して略直角な方向に折り曲げた形状で、上記第一スリット611に挿通された第一翼部622と、上記板金の上記第一翼部と反対側の上記当接部621に隣接する部分を上記第一翼部622と同じ方向へ向けて上記当接部621に対して略直角な方向に折り曲げた形状で、上記第二スリット612に挿通された第二翼部623とを有すること。」が記載されている。
甲第3号証の段落【0019】の「フィン62aは、翼部622aがスリット611aに挿入され、翼部623aがスリット612aに挿入される。」との記載から、フィン62はベース61のスリット611,612に挿入されるものであるものの、段落【0012】の「ヒートシンク16は、例えばネジなどの固定部品によってフレーム12に固定される。」との記載、段落【0023】の「基板51の面は、フィン62の当接部621(図5参照)に押し当てられて固定されている」という記載からみて、固定部品によってフレーム12に固定されたときに、基板51の面が押し当てられて固定されるものであって、フィン62は当接部621でベース61に直接固定されるものであるとはいえない。
そうすると、甲1発明に甲3事項を適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成には至らない。

(ウ)
したがって、上記相違点1に係る本件発明1の構成を、甲1発明と、甲2事項及び甲3事項から容易想到といえるものでない。

(2−2)本件発明2〜5について
本件発明2〜5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。
したがって、本件発明2、3は、本件発明1と同様に、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明4、5も、本件発明1と同様に、甲1発明と、甲2事項及び甲3事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

1−2 甲第4号証を主の発明とした場合について
1−2−1 対比
(1)本件発明1と甲4発明との対比
ア 後者の「18枚の放熱フィン43」と、前者の「板金を曲げ加工した複数の放熱フィン」とは、「複数の放熱フィン」の点で共通する。

イ 後者の「アルミニウム等のように軽く熱伝導性に優れた材料からなる受熱ベース42」は、「この受熱ベース42から一体に突出され、受熱ベース42の周囲に周方向に一定間隔で設けられた18枚の放熱フィン43と有」するから、前者の「前記複数の放熱フィンが取り付けられた板金で構成された板材」に相当する。

ウ 後者は、「18枚の放熱フィン43と有し、」「前記放熱フィン13は、前記受熱ベース42の周囲に周方向に一定間隔で設けられ、前記受熱ベース42の中心に対して放射方向に延びている」から、後者の「放熱フィン43」の板面と、この「放熱フィン43」を基準として180°離れた位置に配置されている他の「放熱フィン43」の板面とは同一平面を形成するものであり、かつ、前記「放熱フィン43」と前記180°離れた位置に配置されている他の「放熱フィン43」との間には、【図5】を参照すると、所定の空間が存在することは明らかであるから、後者のかかる「放熱フィン43」の配置構成と、前者の「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記複数の放熱フィンの前記取付部が前記板材に配置された」構成とは、「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記複数の放熱フィンが前記板材に配置された」構成の点で共通する。

エ 後者の「正面側放熱部材41」は、前者の「ヒートシンク」に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲4発明とは、
「複数の放熱フィンと、
前記複数の放熱フィンが取り付けられた板金で構成された板材と
を備え、
前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記複数の放熱フィンが前記板材に配置されたヒートシンク。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点A>
本件発明1の「放熱フィン」は、「板金を曲げ加工した」ものであって、「前記板材に固定された取付部と前記取付部と直交する放熱板とを有し、」「前記複数の放熱フィンの前記取付部が前記板材に配置され」ているのに対し、
甲4発明の「放熱フィン13」は、「受熱ベース42から一体に突出された」ものである点。

1−2−2 判断
(1)進歩性の判断(請求項1〜5)
(1−1)本件発明1について
相違点Aについて検討する。
ア 本件発明1の「放熱フィン」は、「板金を曲げ加工した」ものであって、「前記板材に固定された取付部と前記取付部と直交する放熱板とを有し、」「前記複数の放熱フィンの前記取付部が前記板材に配置され」ているものであるから、「板金を曲げ加工した」「板材に固定された取付部」と該「取付部」「と直交する放熱板」を有するものと認められる。

イ 他方、甲4発明の「放熱フィン13」は、「受熱ベース42から一体に突出された」ものであるから、本件発明1の「板材」に相当する「受熱ベース42」に固定されるものであるが、本願発明1の「板金を曲げ加工した」「板材に固定された取付部」に相当する構成を有するものでない。
したがって、上記相違点Aに係る本件発明1の構成を、甲4発明から容易に想到し得るものとはいえない。
よって、本件発明1は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 甲第2、3号証の検討
本件発明4に対しての証拠である甲第2、3号証についても、一応検討する。
(ア)甲第2号証の適用について
甲第2号証には、「甲2事項」として、上記「第4 2(2)イ」で述べたように、「複数の放熱フィン10とこれらを表面に立設する基板2とからなり、上記放熱フィン10は金属薄板からなり一対の平行な垂直面12とこれらをその下端で繋ぐ底部14とを有する断面U字形状を呈し、上記複数の放熱フィン10の各底部14を金属製の基板2の表面にロウ付けすること。」が記載されている。
しかしながら、甲2事項には、「底部14」と「基板2」を別体とし、これらを互いに
ロウ付けして固定することが記載されているが、これは、甲4発明の「受熱ベース42」と「放熱フィン43」を一体のものとした構成とは技術思想が異なるものである。
そして、甲4発明の「熱の放熱性能を向上すること」(段落【0008】を参照。)を踏まえると、「受熱ベース42」と「放熱フィン43」を「一体」のものからわざわざ別体のものとして構成する動機付けはないといわざるを得ない。

(イ)甲第3号証の適用について
甲第3号証には、「甲3事項」として、上記「第4 3(2)」で述べたように、「放熱効率を高めるヒートシンク16において、板金によって形成されたフィン62と、第一スリット611と、上記第一スリット611に対して略平行に配置された第二スリット612とを有する略板状で、発熱する光源モジュール15に対して上記フィン62を固定するベース61とを有し、上記フィン62は、上記光源モジュール15に当接して、上記光源モジュール15から熱を受け取る当接部621と、上記板金の上記当接部621に隣接する部分を上記当接部621に対して略直角な方向に折り曲げた形状で、上記第一スリット611に挿通された第一翼部622と、上記板金の上記第一翼部と反対側の上記当接部621に隣接する部分を上記第一翼部622と同じ方向へ向けて上記当接部621に対して略直角な方向に折り曲げた形状で、上記第二スリット612に挿通された第二翼部623とを有すること。」が記載されている。
しかしながら、甲3事項は、フィン62をベース61は別体となっており、さらにこれらは互いに直接固定するものとはなっていない。そうすると、甲4発明において、甲3事項を適用することは、上記(ア)で述べたとおり動機付けがない、

(ウ)したがって、上記相違点Aに係る本件発明1の構成は、甲4発明と甲2事項、甲3事項から容易想到であるとはいえない。

エ 異議申立人の主張について
(ア)異議申立書の「(4−2−2−2)主引例:甲第4号証(特開2009−140716号公報)」では、「甲第4号証に記載された『正面側放熱部材41』は、本願特許発明1の構成要件A『複数の放熱フィン』および構成要件E「ヒートシンク」に、それぞれ相当する。」(異議申立書の33ページ 4〜6行)と述べ、「甲第4号証に記載された『正面金属層13』は、本願特許発明1の構成要件B『板材』に相当する。」(同10〜11行)と述べている。

(イ)しかしながら、本件発明1は、「ヒートシンク」に、「複数の放熱フィン」と「板材」を有するものである。
他方、甲第4号証の段落【0055】の「図1に示すように正面側放熱部材41はアルミニウム(その合金を含む)等のように軽く熱伝導性に優れた材料からなり、受熱ベース42と、これから光の照射側に一体に突設された複数の放熱フィン43とを有して形成されている。」との記載から、「正面側放熱部材41」は「受熱ベース」と「放熱フィン」とを有するものであり、同段落【0046】の「取付け板ベース12は、コアとなる第1のベース板14の背面(図1では上面)に第2のベース板15を貼り合せて形成されている。第1のベース板14と第2のベース板15は、いずれも電気絶縁物例えば合成樹脂で同じ大きさのドーナツ状に作られている。正面金属層13はメッキ処理等により第1のベース板14の正面(図1では下面)の全面にわたって被着されている。」との記載から、「取付け板ベース12」が「第1のベース板14」と「第2のベース板15」を貼り合わせて形成されているところ、「正面金属層13」は、「第1のベース板14の正面(図1では下面)の全面にわたって被着されている」から、該「正面金属層13」は「取付け板ベース12」の「第1のベース板14」に被着されるものであって、「正面側放熱部材41」に含まれるものでない。つまり、甲4発明の「正面側放熱部材41」が本件発明1の「ヒートシンク」に相当すると述べながら、該「正面側放熱部材41」が本件発明1の「板材」に相当する「正面金属層13」を有していないことになる。
以上のことから、異議申立人が主張する上記(ア)で主張した相当関係は、誤りが含まれているから、この相当関係を前提とする「(4−2−2−2)主引例:甲第4号証(特開2009−140716号公報)」の主張は、採用できない。
したがって、当審では、甲第4号証に記載された発明を上記「第4 4(3)」で認定した甲4発明とし、上記「第5 1 1−2 1−2−1」の対比に基づいて、進歩性の判断をした。

オ したがって、本件発明1は、甲4発明に基いて、また、甲4発明及び甲2、3事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(1−2)本件発明2〜5について
本件発明2〜5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。
したがって、本件発明2、3は、本件発明1と同様に、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明4も、本件発明1と同様に、甲4発明と、甲2事項及び甲3事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

1−3 甲第5号証を主の発明とした場合について
1−3−1 対比
(1)本件発明1と甲5発明との対比
ア 後者の「複数」の「板金を曲げ加工して作製されている放熱体ユニット301」は、前者の「板金を曲げ加工した複数の放熱フィン」に相当する。 また、後者の「放熱薄板320」は、前者の「放熱板」に相当する。

イ 後者の「放熱体ユニット301が複数に配置され」た「板金で構成されたハウジング100の底面110」は、前者の「前記複数の放熱フィンが取り付けられた板金で構成された板材」に相当する。

ウ 後者の「放熱体ユニット301」は、前者の「ヒートシンク」に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲5発明とは、
「板金を曲げ加工した複数の放熱フィンと、
前記複数の放熱フィンが取り付けられた板金で構成された板材と
を備えたヒートシンク。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点ア>
本件発明1の「放熱フィン」は、「前記板材に固定された取付部と前記取付部と直交する放熱板とを有」するに対し、
甲5発明の「放熱体ユニット301」は、「ハウジング100の底面110」に「配置」された「底部薄板310」と、「底部薄板310の両側周縁に沿って延在して前記ハウジング100の前記底面110と直交し、対向する一対の放熱薄板320」とを有するが、「放熱体ユニット301」の「ハウジング100の底面110」への固定は、「前記底面110内側の中心部に配置され前記固定薄板312の上側周縁を固定するコア固定片400」により行われる点。

<相違点イ>
本件発明1は、「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記複数の放熱フィンの前記取付部が前記板材に配置された」構成であるのに対し、
甲5発明は、各「放熱薄板320」の配置として、そのように特定がされていない点。

1−3−2 判断
(1)新規性の判断(請求項1〜5)
上記「1−3−1」の対比で述べたとおり、本件発明1と甲5発明との間には、相違点ア、イがあるから、本件発明1は甲5発明であるとはいえない。また、本件発明2〜5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2〜5は甲5発明であるとはいえない。

(2)進歩性の判断(請求項1〜5)
相違点アについて検討する。
ア 上記「1−1 1−1−2 (2)ア」で検討したとおり、本件発明1の「放熱フィン」の「板材に固定された取付部」は、「放熱フィン」を「取付部」によって「板材に固定」するものである。

イ 他方、本件発明1の「取付部」に機能的に関連する甲5発明の「底部薄板310」は、本件発明1の「板材」に相当する甲5発明の「ハウジング100の底面110」に「配置」するものであって、「放熱体ユニット320」を「底部薄板310」によって「ハウジング100の底面110」に固定するものではない。
また、「底部薄板310」は、「底面110内側から突出され前記底部薄板310の両側周縁に沿って配置された複数の固定突片160」により位置決めされて配置されるものであって、「底部薄板310」自体を「ハウジング100の底面110」に固定することなく位置決めを可能とするものであるから、組立て作業の際の工程が増すような「底部薄板310」によって「ハウジング100の底面110」に固定する構成にする動機付けが存在するとはいえない。

ウ したがって、上記相違点アに係る本件発明1の構成を、甲5発明から容易想到といえるものでないから、上記相違点イを検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明2〜5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2〜5は、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

1−4 甲第6号証を主の発明とした場合について
1−4−1 対比
(1)本件発明1と甲6発明との対比
ア 後者の「複数の放熱フィン1」は、「前記放熱フィン1の直立方向の頂端には二つ以上の階段部が形成され、そのうちの一つの階段部は前記挿入端部11であり、内側に位置する階段部は折り曲げられている水平折片12であ」るとの構成を踏まえると、板金を曲げ加工したものであることは明らかであるから、前者の「板金を曲げ加工した複数の放熱フィン」に相当する。 また、後者の「放熱フィン1」のうち、「水平折片12」を除く平面部は、前者の「放熱板」に相当する。

イ 後者の「板状であり、前記挿入端部11に対応する複数の挿し溝21が周方向に形成され、前記挿入端部11が前記挿し溝21に差し込まれることにより前記放熱フィンセット10と結合する放熱基座2」は、板金で構成されることは一般常識であるから、前者の「前記複数の放熱フィンが取り付けられた板金で構成された板材」に相当する。

ウ 後者の「放熱フィンセット10の取り付けに用いる中空部を有する絶縁コネクター3」の「中空部」は、前者の「所定の空間」に相当する。また、後者は、「40枚の放熱フィン1を等間隔に周方向に並べ」られているから、後者の「放熱フィン1」のうち、「水平折片12」を除く平面部の板面と、この平面部を基準として180°離れた位置に配置されている他の「放熱フィン1」の平面部の板面とは同一平面を形成し、かつ、前記平面部と前記180°離れた位置に配置されている他の「放熱フィン1」の平面部との間に前記「絶縁コネクター3」の「中空部」が存在することは明らかであるから、後者のかかる「放熱フィン1」の平面部の配置構成と、前者の「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記複数の放熱フィンの前記取付部が前記板材に配置された」構成とは、「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記複数の放熱フィンが前記板材に配置された」構成の点で共通する。

オ 後者の「LEDランプに設けられる放熱装置」は、前者の「ヒートシンク」に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲6発明とは、
「板金を曲げ加工した複数の放熱フィンと、
前記複数の放熱フィンが取り付けられた板金で構成された板材と
を備え、
前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記複数の放熱フィンが前記板材に配置されたヒートシンク。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点α>
本件発明1の「放熱フィン」は、「前記板材に固定された取付部と前記取付部と直交する放熱板とを有し、」「前記複数の放熱フィンの前記取付部が前記板材に配置され」ているのに対し、
甲6発明の「放熱フィン1」は、「放熱基座2の一方の面2aに密着している」「水平折片12」と、「放熱フィン1」のうち、「折り曲げられている水平折片12」を除く平面部とを有するが、「放熱フィン1」の「放熱基座2」への固定は、「前記放熱フィン1の前記挿入端部11は、前記放熱フィン1が折り曲がって形成される二層構造であり、前記放熱基座2の前記挿し溝21の幅は、前記挿入端部11の肉厚より略大きく形成され、前記挿入端部11及び前記挿し溝21の側壁に対してプレス加工することにより形成される押し付け変形部」により固定される点。

1−4−2 判断
(1)新規性の判断(請求項1、5)
上記「1−4−1」の対比で述べたとおり、本件発明1と甲6発明との間には、相違点があるから、本件発明1は甲6発明であるとはいえない。また、本件発明5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明5は甲6発明であるとはいえない。

(2)進歩性の判断(請求項1、5)
(2−1)本件発明1について
相違点αについて検討する。
ア 上記「1−1 1−1−2 (2)(2−1)ア」で検討したとおり、本件発明1の「放熱フィン」の「板材に固定された取付部」は、「放熱フィン」を「取付部」によって「板材に固定」するものである。

イ 他方、本件発明1の「取付部」に機能的に関連する甲6発明の「水平折片12」は、本件発明1の「板材」に相当する「放熱基座2」の「一方の面2aに密着している」ものであって、「放熱フィン1」を「水平折片12」によって「放熱基座2」に固定されているものではない。
また、「水平折片12」は、「各内側の階段部の前記水平折片12は隣接して配列され、環状平面を形成」することで位置決めされて配置されるものであって、「水平折片12」を直接「放熱基座2」に固定することなく位置決めを可能とするものであるところ、甲第6号証の段落【0006】に「本考案は、全体的構造が精巧簡単であり、組み立て工程が簡易であり、一回のプレス加工により全部の放熱フィンを放熱基座に緊密に取り付けることができる。」と記載されているように、「水平折片12」自体を「放熱基座2」に固定することなく、「放熱フィン1」の「前記挿入端部11及び前記挿し溝21の側壁に対してプレス加工することにより形成される押し付け変形部」により固定するものであるから、「組み立て工程が簡易であ」ることを損ねてしまうような、「水平折片12」自体を「放熱基座2」に固定するような構成に変更する動機付けが存在するとはいえない。

ウ したがって、上記相違点αに係る本件発明1の構成を、甲6発明から容易想到といえるものでないから、本件発明1は、甲6発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2−2)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明5は、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

1−5 甲第2号証を主の発明とした場合について
1−5−1 対比
(1)本件発明6と甲2発明との対比
ア 後者の「金属薄板」は、前者の「板金」に相当する。
後者は「上記位置決めした状態で上記放熱フィン10の各底部14と金属製の基板2の表面とをロウ付けする工程」を含むから、後者の「底部14」は、前者の「取付部」に相当し、後者の「底部14と直交する各垂直面12」の部位は、前者の「取付部と直交する放熱板」に相当する。
そうすると、後者の「金属薄板を折曲げ加工して、一対の平行な垂直面12とこれらをその下端で繋ぐ底部14とを有する断面U字形状を呈する放熱フィン10を成形する工程」は、前者の「板金を曲げ加工して、取付部と前記取付部と直交する放熱板とを有する複数の放熱フィンを製造し」との工程に相当する。

イ 後者の「金属製の基板2」は、前者の「板金で構成された板材」に相当し、後者の「複数の放熱フィン10を」「位置決めした状態で上記放熱フィン10の各底部14と金属製の基板2の表面とをロウ付けする工程」は、【図1】を参照すると、「金属製の基板2」の一面に「複数の放熱フィン10」のみを配置していること、及び放熱フィン10の各底部14が基板2に直接固定されているといえるから、前者の「板金で構成された板材の一面に前記複数の放熱フィンのみを配置」する工程に相当する。

ウ 後者の「放熱器1の製造方法」は、前者の「ヒートシンクの製造方法」に相当する。

以上によれば、本件発明6と甲2発明とは、
「板金を曲げ加工して、取付部と前記取付部と直交する放熱板とを有する複数の放熱フィンを製造し、
板金で構成された板材の一面に前記複数の放熱フィンのみを配置するヒートシンクの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点β>
本件発明6は、「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記取付部を前記板材に固定する」のに対し、
甲2発明は、「複数の放熱フィン10を各底部14を同一平面内に位置させ且つ、前記底部14と直交する各垂直面12を平行にして位置決め」している点。

1−5−2 判断
(1)請求項6についての進歩性の判断
相違点βについて検討する。
ア 甲2発明は、【0005】に記載のとおり、複数の放熱フィンを互いに近接させて精度良く基板の表面に立設得るようにした放熱器と、これを容易且つ確実で精度良く得るための製造方法を提供することを課題とし、「複数の放熱フィン10を各底部14を同一平面内に位置させ且つ、前記底部14と直交する各垂直面12を平行にして位置決めする工程」を必須の構成とするものであり、放熱フィン10を周方向に配置することについては記載も示唆もない。そうすると、たとえ、本件発明6として「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記取付部を前記板材に固定する」構成が存在したとしても、そもそも、甲2発明において、複数の放熱フィン10を甲6発明のように変更しなければならないとする動機付けは存在しない。

したがって、甲2発明において、甲第1、4、5、6号証に記載されているような放熱フィン(甲第1号証の「放熱板9」、甲第4号証の「放熱フィン43」、甲第5号証の「放熱体ユニット301」、甲第6号証の「放熱フィン1」)の周方向に一定間隔で設けた配置構成を適用して上記相違点βに係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものであるということはできない。

イ したがって、本件発明6は、甲2発明、並びに甲第1、4、5、6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 申立理由2(1)特許法第36条第6項第1号(2)特許法第36条第6項第2号について
(1)申立理由の概要
請求項1,6の「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、」との記載、請求項2の「前記同一平面を形成するように配置された複数の放熱板と、前記同一平面とは別の他平面を形成するように配置された複数の放熱板との間には、前記所定の空間を間にして直線方向に見通せる空間が存在する」との記載、請求項3の「前記所定の空間と前記直線方向に見通せる空間とは、前記板材と直交する辺全体において存在し、」「前記板材と平行な辺の方向に流れる空気を通気する」との記載に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明は何ら説明がなされておらず、意味が不明である。(異議申立書12ページ 下から15行〜下から6行)
したがって、本件発明1〜6は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでなく、サポート要件を満たしていない。また、本件発明1〜6は、明確でなく、明確性要件を満たしていない。

(2)検討
ア 請求項1、6について
本件発明1、6には「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、」と記載されているが、本件発明1、6は「複数の放熱フィン」を有することから、このうちある一つの特定の放熱フィンに着目した場合に、「他の放熱フィン」とは、この特定の放熱フィン以外のすべての放熱フィンのことを指し、そのような他の放熱フィンのうちの一つに特定の放熱板の板面と同一平面を形成するものがあり、かつ、そのような他の放熱フィンのうちの一つに特定の放熱板との間に所定の空間が存在するようなものがあると解することが、技術的にみて合理的である。
本件特許明細書等の【図15】から、16個の放熱フィン122が看取できるところ、段落【0063】の「1個の放熱フィン122が、1枚の板金を折り曲げて形成した2枚の放熱板125を有する場合を示している。」との記載、及び段落【0064】の「図15では、二枚の放熱板125の中心角θ1と隣り合う放熱フィン122の放熱板125の中心角θ2とは、同じ(θ1=θ2)又はほぼ同じ角度である。したがって、隣り合う放熱板125の端部空間714は、同じ(ほぼ同じ)サイズになる。」との記載によれば、32(16×2)枚の放熱板125が周方向に等間隔に配置されていることが理解できる。
そうすると、任意の1つの放熱板125の板面に注目した場合に、この板面と180°離れた他の放熱フィン122の放熱板125の板面とが同一平面を形成することは数学的に明らかである。
また、本件特許明細書の段落【0016】の「前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、前記複数の放熱フィンの前記取付部が前記板材に配置された。」との記載と、及び段落【0063】の「放熱板125の長辺81は、ヒートシンク12の中心C(中央部分)から半径方向に放射状に配置されている。」との記載、並びに【図15】の「(a)斜視図」及び「(b)平面図」を参照すると、放熱板125と他の放熱フィン122の放熱板125との間に所定の空間が存在することも理解できる。
したがって、請求項1、6の上記「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、」との事項は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているものであって、かつ明確なものある。

【図15】


イ 請求項2について
上記アで検討した事項を踏まえ、【図15】の「(a)斜視図」を参照すると、同一平面を形成するように配置された複数の放熱板125と、前記同一平面とは別の他平面を形成するように配置された複数の放熱板125との間には、所定の空間を間にして直線方向に見通せる空間が存在することが理解できる。
したがって、請求項2の上記「前記同一平面を形成するように配置された複数の放熱板と、前記同一平面とは別の他平面を形成するように配置された複数の放熱板との間には、前記所定の空間を間にして直線方向に見通せる空間が存在する」との事項は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているものであって、かつ明確なものある。

ウ 請求項3について
【図15】の「(a)斜視図」を参照すると、所定の空間と直線方向に見通せる空間とは、板材(ベースプレート121)と直交する辺(短辺82)全体において存在し、前記板材(ベースプレート121)と平行な辺(長辺81)の方向に流れる空気を通気することが理解できる。
したがって、請求項3の上記「前記所定の空間と前記直線方向に見通せる空間とは、前記板材と直交する辺全体において存在し、」「前記板材と平行な辺の方向に流れる空気を通気する」との事項は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているものであって、かつ明確なものある。

エ 以上のことから、本件発明1〜6は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるから、サポート要件を満たしている。また、本件発明1〜6は、明確であるから、明確性要件を満たしている。

3 申立理由3(分割要件違反及び新規性欠如)について
(1)分割要件違反について
ア 申立理由の概要
請求項1,6に記載された「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、」なる技術的事項に関し、原出願である特願2014−36534号、及び分割直前の出願である特願2018−27685号の明細書等には開示も示唆もされていない。(異議申立書43ページ 7〜11行)

イ 検討
原出願である特願2014−36534号、及び分割直前の出願である特願2018−27685号の明細書等の段落【0063】及び段落【0064】並びに【図15】には、本件特許明細書等の段落【0063】及び段落【0064】並びに【図15】と同一の内容が記載されている。
したがって、上記「3(2)ア」で述べたとおり、請求項1,6に記載された「前記放熱板の板面が他の放熱フィンの放熱板の板面と同一平面を形成するように、かつ、前記放熱板と前記他の放熱フィンの放熱板との間に所定の空間が存在するように、」なる技術的事項は、「原出願」及び「分割直前の出願」の段落【0063】及び段落【0064】並びに【図15】の記載内容及び図示内容に基づいて理解できることであるから、当業者によって、「原出願」及び「分割直前の出願」の明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、「原出願」及び「分割直前の出願」に記載した事項の範囲内においてしたものといえるから、本件発明1〜6に係る特許の特許出願である特願2019−135146号は、分割要件を満たしている。

(2)新規性欠如について
上記(1)で述べたとおり、本件発明1〜6に係る特許の特許出願である特願2019−135146号は、分割要件を満たしており、出願日は、原出願の出願日である平成26年2月27日に遡及するから、新規性欠如の証拠となっている甲第8号証(原出願の公開公報)は、公知文献ではない。
したがって、本件請求項1〜6に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものということはできない。

第6.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての申立理由1〜3及び証拠によっては、請求項1〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-12-22 
出願番号 P2019-135146
審決分類 P 1 651・ 537- Y (F21V)
P 1 651・ 113- Y (F21V)
P 1 651・ 121- Y (F21V)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 島田 信一
畔津 圭介
登録日 2021-02-18 
登録番号 6840195
権利者 三菱電機照明株式会社 三菱電機株式会社
発明の名称 ヒートシンク及びヒートシンクの製造方法  
代理人 溝井国際特許業務法人  
代理人 溝井国際特許業務法人  

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