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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C04B 審判 全部申し立て 2項進歩性 C04B |
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管理番号 | 1384204 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-09-22 |
確定日 | 2021-12-09 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6846144号発明「コンクリート組成物、コンクリート混練物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6846144号の請求項1〜2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6846144号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜2に係る特許についての出願は、平成28年9月6日に出願され、令和3年3月3日にその特許権の設定登録がされ、同年3月24日に特許掲載公報が発行され、その後、全請求項に係る特許に対して、同年9月22日に、特許異議申立人 浜 俊彦(以下、「申立人」という。)により甲第1〜6号証を証拠方法として特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1〜2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明2」といい、これらを総称して「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 結合材としての高炉セメントと、粗骨材と、細骨材とを含み、水結合材比が40%以下となるように水と混練されて使用されるコンクリート組成物であって、 前記粗骨材は、熱膨張係数が8×10−6/℃以上であり、 粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であり、 細骨材は、高炉セメントに対する質量比が693/680以上883/425以下であるコンクリート組成物。 【請求項2】 水結合材比が40%以下となるように、結合材としての高炉セメントと、粗骨材と、細骨材と、水とが混練されて形成されたコンクリート混練物であって、 前記粗骨材は、熱膨張係数が8×10−6/℃以上であり、 粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であり、 細骨材は、高炉セメントに対する質量比が693/680以上883/425以下であるコンクリート混練物。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 各甲号証 甲第1号証:児玉 章裕ら,「論文 高温履歴を受けた低水結合材比の高炉スラグ微粉末含有コンクリートの圧縮・引張性状」,コンクリート工学年次論文集,2008年,Vol.30 No.1,p.363−368 甲第2号証:楊 楊ら,「論文 硬化過程にある高強度コンクリートの線膨張係数測定方法の一提案」,コンクリート工学年次論文集,2000年,Vol.22 No.2,p.961−966 甲第3号証:寺本 篤史ら,「人工軽量骨材による高炉セメントモルタルの線膨張係数制御」,日本建築学会構造系論文集,2012年7月,第77巻 第677号,p.1007−1014 甲第4号証:南 和孝ら,「高温条件下のコンクリートの力学的性質に及ぼす微視的温度応力の影響」,土木学会論文集,1990年8月,第420号/V−13,p.173−180 甲第5号証:細田 暁ら,「高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートの力学的特性に対する微視的温度応力の影響」,土木学会論文集E,2007年10月,Vol.63 No.4,p.549−561 甲第6号証:社団法人 日本コンクリート工学協会 編著,「マスコンクリートのひび割れ制御指針2008」,2版1刷,2008年11月21日,社団法人 日本コンクリート工学協会,p.33 2 特許法第29条第1項第3号(新規性)について 本件発明1〜2は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件発明1〜2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 3 特許法第29条第2項(進歩性)について 本件発明1〜2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第4 特許異議申立理由についての当審の判断 1 各甲号証の記載事項等 (1)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 ア 甲第1号証には以下(1a)〜(1f)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 (1a)「要旨:低水結合材比のコンクリートが高温履歴を受けた際の強度特性を検討した。高炉スラグ微粉末の有無,粗骨材の有無,膨張材の添加等の条件で比較を行った。その結果,今回の低水結合材比の高炉スラグ微粉末含有コンクリートにおいては,蒸気養生を模擬した高温履歴を与えた場合に,粗骨材の熱膨張係数をはじめとする種々の要因が特に引張強度に影響を及ぼすことがわかった。また,膨張材を添加した場合,高温履歴を受けた高炉スラグ微粉末含有コンクリートにおいて,小さいながらも圧縮強度・引張強度の改善効果が見られた。」(363頁4行〜9行) (1b)「1.はじめに 近年,高炉スラグ微粉末を使用したコンクリート構造物に著しいひび割れが発生する事例が報告されている1)。筆者らは,コンクリートが若材齢時に高温履歴を受ける事で骨材周囲に微細な損傷が発生し,コンクリートのひび割れ抵抗性の低下の原因になっていると考えている2)。骨材周囲の微細損傷は,骨材とペーストとの間の熱膨張係数の差による微視的温度応力や過大な自己収縮を,骨材が拘束することによって発生すると考えている。青木ら3)は水結合材比30%の条件において,骨材が存在することで圧縮強度・弾性係数が低下することを報告している。・・・ 本研究は,若材齢時に高温履歴を受けた低水結合材比の高炉スラグ微粉末含有コンクリートにおける損傷の程度と,損傷の影響を調べたものである。本研究では,石灰岩・安山岩という熱膨張係数の異なる2種類の粗骨材を用い,低水結合材比におけるコンクリートの性状を調べた。」(363頁左欄1行〜右欄4行) (1c)「 」(363頁) (1d)「 」(363頁) (1e)「2.実験概要 2.1 使用材料 セメントには普通ポルトランドセメント(密度:3.15g/cm3,比表面積:3210cm2/g)を使用した。JISで許容される5%の後添加物を含まないものである。使用した高炉スラグ微粉末の物理的・化学的特性を表−1に示す。膨張材には低添加型エトリンガイト石灰複合系のもの(密度:3.12g/cm3,比表面積3000cm2/g)を使用した。細骨材には君津産陸砂(シリーズ1:表乾密度:2.60g/cm3,吸水率:1.29%,シリーズ2:表乾密度:2.59g/cm3,吸水率:2.39%)を使用した。粗骨材には秩父産石灰岩(最大寸法:20mm,密度:2.71g/cm3,吸水率:0.43%,熱膨張係数:6.0×10−6/℃)および甲州産安山岩(最大寸法:20mm,密度:2.62g/cm3,吸水率:2.47%,熱膨張係数:11.4×10−6/℃)を使用した。混和剤にはポリカルボン酸エーテル系の高性能AE減水剤と,アルキルエーテル系のAE剤を使用した。 ・・・ 2.2 コンクリートの配合 コンクリートの配合を表−2に示す。モルタルはセメント細骨材比を質量比で1:1.44とした。これは,コンクリートの配合から粗骨材を除いたモルタル部分の配合である。」(364頁左欄1行〜37行) (1f)「2.3 試験パラメータ (a)シリーズ1 材料・養生条件の違いによる影響 シリーズ1では粗骨材の種類,粗骨材や高炉スラグ微粉末の有無,前置き時間がコンクリートの諸性状に及ぼす影響を確認する試験を行った。 (b)シリーズ2 膨張材使用による効果と自己収縮 シリーズ2では粗骨材を安山岩一種とし,シリーズ1の試験内容に加え,鉄筋によって拘束された供試体に対する試験を行った。コンクリート中に配置した鉄筋に貼り付けたひずみゲージにより,養生中の膨張・収縮量も計測した。」(364頁左欄44行〜右欄7行) イ 前記ア(1c)〜(1e)において、特に、前記ア(1d)の「シリーズ1」の「B(A)」のコンクリートに注目すると、ここで使用した高炉スラグ微粉末の物理的・化学的特性が、前記ア(1c)より、密度:2.92g/cm3、比表面積:4130cm2/g、Ig.loss:0.07%、SiO2:33.54%、Al2O3:14.58%、FeO:0.25%、CaO:43.29%、MgO:5.44%、SO3:1.9%、Na2O:0.27%、K2O:0.33%、塩基度:1.6以上であることから、甲第1号証には、 「セメントに普通ポルトランドセメント(密度:3.15g/cm3,比表面積:3210cm2/g)を使用し、これは、JISで許容される5%の後添加物を含まないものであり、 物理的・化学的特性が、密度:2.92g/cm3、比表面積:4130cm2/g、Ig.loss:0.07%、SiO2:33.54%、Al2O3:14.58%、FeO:0.25%、CaO:43.29%、MgO:5.44%、SO3:1.9%、Na2O:0.27%、K2O:0.33%、塩基度:1.6以上である高炉スラグ微粉末を含み、 細骨材に君津産陸砂(表乾密度:2.60g/cm3,吸水率:1.29%)を使用し、 粗骨材に甲州産安山岩(最大寸法:20mm,密度:2.62g/cm3,吸水率:2.47%,熱膨張係数:11.4×10−6/℃)を使用し、 混和剤にポリカルボン酸エーテル系の高性能AE減水剤と、アルキルエーテル系のAE剤を使用したコンクリートであって、 前記コンクリートの配合が、W/B:30%、BF/B:50%、s/a:51%、air:3%、水:170kg/m3、セメント:283kg/m3、スラグ微粉末:283kg/m3、細骨材:810kg/m3、粗骨材:787kg/m3、AE剤:1.13kg/m3、高性能AE減水剤:5.7kg/m3である、コンクリート。」の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。 同様に、前記ア(1d)の「シリーズ2」の「B(A)」の2種類のコンクリートに注目すると、甲第1号証には、 「セメントに普通ポルトランドセメント(密度:3.15g/cm3,比表面積:3210cm2/g)を使用し、これは、JISで許容される5%の後添加物を含まないものであり、 物理的・化学的特性が、密度:2.92g/cm3、比表面積:4130cm2/g、Ig.loss:0.07%、SiO2:33.54%、Al2O3:14.58%、FeO:0.25%、CaO:43.29%、MgO:5.44%、SO3:1.9%、Na2O:0.27%、K2O:0.33%、塩基度:1.6以上である高炉スラグ微粉末を含み、 細骨材に君津産陸砂(表乾密度:2.59g/cm3,吸水率:2.39%)を使用し、 粗骨材に甲州産安山岩(最大寸法:20mm,密度:2.62g/cm3,吸水率:2.47%,熱膨張係数:11.4×10−6/℃)を使用し、 混和剤にポリカルボン酸エーテル系の高性能AE減水剤と、アルキルエーテル系のAE剤を使用したコンクリートであって、 前記コンクリートの配合が、W/B:30%、BF/B:50%、s/a:51%、air:3%、水:170kg/m3、セメント:283kg/m3、スラグ微粉末:283kg/m3、細骨材:819kg/m3、粗骨材:796kg/m3、AE剤:1.13kg/m3、高性能AE減水剤:5.1kg/m3である、コンクリート。」の発明(以下、「甲1発明2」という。)、及び、 「セメントに普通ポルトランドセメント(密度:3.15g/cm3,比表面積:3210cm2/g)を使用し、これは、JISで許容される5%の後添加物を含まないものであり、 物理的・化学的特性が、密度:2.92g/cm3、比表面積:4130cm2/g、Ig.loss:0.07%、SiO2:33.54%、Al2O3:14.58%、FeO:0.25%、CaO:43.29%、MgO:5.44%、SO3:1.9%、Na2O:0.27%、K2O:0.33%、塩基度:1.6以上である高炉スラグ微粉末を含み、 膨張材に低添加型エトリンガイト石灰複合系のもの(密度:3.12g/cm3,比表面積3000cm2/g)を使用し、 細骨材に君津産陸砂(表乾密度:2.59g/cm3,吸水率:2.39%)を使用し、 粗骨材に甲州産安山岩(最大寸法:20mm,密度:2.62g/cm3,吸水率:2.47%,熱膨張係数:11.4×10−6/℃)を使用し、 混和剤にポリカルボン酸エーテル系の高性能AE減水剤と、アルキルエーテル系のAE剤を使用したコンクリートであって、 前記コンクリートの配合が、W/B:30%、BF/B:50%、s/a:51%、air:3%、水:170kg/m3、セメント:273kg/m3、スラグ微粉末:273kg/m3、膨張材:20kg/m3、細骨材:819kg/m3、粗骨材:796kg/m3、AE剤:1.13kg/m3、高性能AE減水剤:5.7kg/m3である、コンクリート。」の発明(以下、「甲1発明3」という。)が記載されているといえる。 (2)甲第2号証の記載事項 甲第2号証には以下(2a)〜(2d)の記載がある。 (2a)「2.実験概要 2.1 材料及び配合 使用した高強度コンクリートの材料及び配合を表−1及び表−2に示す。」(961頁右欄1行〜4行) (2b)「 」(961頁右欄) (2c)「 」(962頁) (2d)「 」(963頁左欄) (3)甲第3号証の記載事項 甲第3号証には以下(3a)〜(3f)の記載がある。 (3a)「1.はじめに 近年,高炉セメントを利用した構造物でひび割れが発生した事例が報告されており,その原因の一つとして若材齢に生じるコンクリートの体積変化が挙げられている。高炉セメントを用いたコンクリートは普通コンクリートと比較して線膨張係数1)及び自己収縮ひずみ2)が大きくなることが指摘されており,マスコンクリートのように水和発熱で高温履歴を受ける構造物では,若材齢に生じる体積変化が普通コンクリートと比べて大きくなる可能性が考えられる。」(1007頁左欄1行〜8行) (3b)「2. 実験概要 2.1 使用材料及び調合 本実験で,セメントペースト試験体及びモルタル試験体の作製に使用した普通ポルトランドセメント及び高炉スラグ微粉末(BFS)の化学成分を表1に示す。 本実験で使用した結合材は,BFSに無水石膏を3.4%内割りで置換したものを,普通ポルトランドセメントに対して内割りで30%置換したものであり,水結合材比は全ての試験体で40%とした。本論文ではこの高炉セメントペーストをBB3040と表記する。 モルタル試験体の作製には,山梨県大月産砕砂(表乾密度:2.57g/cm3,吸水率:2.62%,記号−N)及び人工軽量骨材(表乾密度:1.86g/cm3,吸水率:18.82%,記号−ALA)の2種類の細骨材を使用した。細骨材全体の体積比率は,モルタル全体積の38%(記号−38),60%(記号−60)の2水準を設け,骨材体積比38%のものは,全量をNとしたものと,38%のうち19%をN,19%をALAとしたものを作製した。また,骨材体積比60%のものは,全量をNとしたもの,60%のうち30%をN,30%をALAとしたものに加えて,全量をALA(記号−all)としたものを用意した。」(1007頁右欄18行〜1008頁左欄14行) (3c)「 」(1008頁) (3d)「 」(1008頁右欄) (3e)「 」(1010頁右欄) (3f)「 」(1011頁右欄) (4)甲第4号証の記載事項 甲第4号証には以下(4a)〜(4d)の記載がある。 (4a)「3.実験概要 (1)使用材料および配合 本実験には普通ポルトランドセメントを使用した.細骨材には泥質岩起源熱変成岩(ホルンフェルス)および石灰岩の砕砂を使用し,粗骨材にはホルンフェルスおよび石灰岩の砕石(ともに最大寸法25mm)を使用した.」(174頁左欄5行〜10行) (4b)「5.コンクリート内部に発生する微視的温度応力 (1)高温条件下におけるコンクリート構成材料の熱膨張特性 ・・・一方,図−4に示すようにセメントペーストの熱膨張ひずみは温度上昇時には約100℃まではほぼ線形に増加するが,その後温度の上昇に伴いしだいに収縮する.・・・これに対して,モルタルの場合には,温度上昇時の熱膨張ひずみはセメントペーストの場合と同様に約100℃までほぼ線形に増加し,その後セメントペースト中のゲル水およびモルタル中のキャピラリ−水の脱水により幾分の収縮を生じ,非線形な挙動を示しながら最大ひずみに到達する.」(175頁右欄8行〜176頁左欄8行) (4c)「(2)加熱を受けることによってモルタルと粗骨材との間には熱膨張量の差が生じる.そのため,この熱膨張量の差に伴ってモルタルと粗骨材との界面近傍に微視的温度応力が発生する.微視的温度応力はモルタルをマトリックス,粗骨材をインクルージョンと仮定することによって算定することができる.」(179頁右欄下から15行〜下から10行) (4d)「 」(175頁右欄) (5)甲第5号証の記載事項 甲第5号証には以下(5a)〜(5e)の記載がある。 (5a)「コンクリートの各構成材料は異なる熱膨張係数を持つ.その熱膨張係数の違いが,打込み後の水和発熱に起因する高温履歴や,蒸気養生などの高温履歴を受けたコンクリートの物性に,例え小さくとも影響を全く及ぼさないということは考えられない.田澤ら1),2)は,材齢3週間のコンクリートに最高温度200℃の高温履歴を与え,骨材とペーストの熱膨張係数の差によって生じる微視的温度応力の影響を示した.」(549頁左欄下から8行〜最終行) (5b)「 」(550頁) (5c)「 」(551頁左欄) (5d)「 」(551頁) (5e)「(1)使用材料およびコンクリートの配合 2章で検討した奥多摩産の石灰岩(最大寸法:20mm,密度:2.69g/cm3,吸水率:0.43%),君津産の山砂(表乾密度:2.64g/cm3,吸水率:1.59%),2章で用いたスラグ,普通ポルトランドセメントを使用した.混和剤として,高性能AE減水剤(ポリカルボン酸エーテル系化合物)を使用した. コンクリートの配合を表−6に示した.水結合材比が50%の配合もあるが,コンクリートとペーストの強度比較は30%のものについてのみ実施した.」(552頁左欄1行〜10行) (6)甲第6号証の記載事項 甲第6号証には以下(6a)の記載がある。 (6a)「 」(33頁) 2 特許法第29条第1項第3号(新規性)について (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明1とを対比した場合、甲1発明1における「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数」は明らかでないので、本件発明1と甲1発明1とは、少なくとも以下の点で相違する。 ・相違点1:本件発明1は、「コンクリート組成物」が「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」る、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明1は前記発明特定事項を有するか否かが明らかでない点。 イ 以下、前記アの相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲1発明1における「粗骨材以外のモルタル成分」は、「セメントに普通ポルトランドセメント(密度:3.15g/cm3,比表面積:3210cm2/g)を使用し、これは、JISで許容される5%の後添加物を含まないものであり、物理的・化学的特性が、密度:2.92g/cm3、比表面積:4130cm2/g、Ig.loss:0.07%、SiO2:33.54%、Al2O3:14.58%、FeO:0.25%、CaO:43.29%、MgO:5.44%、SO3:1.9%、Na2O:0.27%、K2O:0.33%、塩基度:1.6以上である高炉スラグ微粉末を含み、細骨材に君津産陸砂(表乾密度:2.60g/cm3,吸水率:1.29%)を使用し」、「混和剤にポリカルボン酸エーテル系の高性能AE減水剤と,アルキルエーテル系のAE剤を使用した」ものであって、これらの配合が「水:170kg/m3、セメント:283kg/m3、スラグ微粉末:283kg/m3、細骨材:810kg/m3」、「AE剤:1.13kg/m3、高性能AE減水剤:5.7kg/m3」であるものである(以下、「甲1モルタル成分」という。)。 そして、前記「甲1モルタル成分」の「熱膨張係数」が「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」となることを開示する証拠は何ら提示されていないし、このことを示す技術常識も存在しないから、甲1発明1に係る「コンクリート組成物」において、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」るとはいえないので、前記相違点1は実質的な相違点である。 ウ これについて申立人は、以下(ア)〜(エ)のように主張する。 (ア)本件特許明細書の段落【0036】によれば、本件発明における「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数」は、モルタル硬化体の材齢2日時点におけるものであるが、高炉セメントでは、材齢2という若材齢における「粗骨材以外のモルタル成分」の「熱膨張係数」が「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」であることはありふれた値であり、これは技術常識といえるから、甲1発明1においても、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」る蓋然性が高い。 (イ)本件特許明細書の段落【0034】〜【0040】の全ての実施例及び比較例における「粗骨材以外のモルタル成分」が、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」る、という本件発明1の発明特定事項を満たしており、このことから、高炉セメントにおける「粗骨材以外のモルタル成分」の熱膨張係数は、材齢2日目時点では「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」であることが通常であり、この範囲を外れる「粗骨材以外のモルタル成分」は一般的ではないことが推測され、このことから、甲1発明1においても、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」る蓋然性が高いことが裏付けられる。 (ウ)前記1(2)(2c)〜(2d)より、甲第2号証に記載される配合のコンクリートにおいて予測される「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数」は、「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」の範囲に入っているといえ、前記1(3)(3d)〜(3f)より、甲第3号証に記載されるモルタル試験体「N60」は、高炉セメントに対する細骨材(山梨県大月産細砂)の質量比が60/40である点で本件発明1と同一であり、その熱膨張係数は、材齢2日(48時間)において「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」の範囲にあることがわかり、前記1(4)(4d)より、甲第4号証には、細骨材としてホルンフェルスを用いたモルタルの熱膨張係数は、「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」であることが記載されており、これらのことから、甲1発明1においても、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」る蓋然性が高いことが裏付けられる。 (エ)一般的に、セメントペーストの熱膨張係数は高く、モルタルの熱膨張係数はそれよりも低く、コンクリートの熱膨張係数は更に低いが、前記1(5)(5d)の表−6の配合「L30−50」は、水セメント比が30%である高炉セメントである点、及び、高炉セメントに対する細骨材の質量比が773/500である点で本件発明1と同一の組成を有し、この配合「L30−50」に用いられるセメントペーストの熱膨張係数は、前記1(5)(5c)の表−5より、平均19.4×10−6/℃であり、本件発明1で特定される「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数」よりも高い。 他方、前記1(6)(6a)の解説表−3.3.3によれば、骨材の熱膨張係数は平均値として5.5〜11.8であり、高炉セメントに用いられるセメントペーストに対して骨材を混合したときのモルタルの熱膨張係数の値は、セメントペーストの熱膨張係数よりも低い値となり、その値は、19.4×10−6/℃よりも低く、本件発明1で特定される「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数」となる蓋然性が高いので、甲1発明1においても、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」る蓋然性が高いことが裏付けられる。 エ そこで、以下、前記ウ(ア)〜(エ)の主張について検討する。 (ア)技術常識からみて、コンクリート組成物における「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数」は、前記「粗骨材以外のモルタル成分」の組成の相違により変化することが強く推認されるものであり、このことは、例えば前記1(3)(3e)(図5、6)、(3f)(図9、図10)において、細骨材の配合量や種類が異なるモルタル試験体「BB3040」、「N38」、「N60」、「ALA60−S」、「ALA60−D」及び「ALA60all−S」の線膨張係数がそれぞれ異なることからも裏付けられるものである。また、材齢2日の高炉セメントにおける「粗骨材以外のモルタル成分」の「熱膨張係数」が必ずしも「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」となるものともいえないし、このことを裏付ける証拠もない。 そうすると、「甲1モルタル成分」と組成が合致しない「粗骨材以外のモルタル成分」の「熱膨張係数」が「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」となるとしても、このことから直ちに「甲1モルタル成分」の「熱膨張係数」が「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」となるといえるものではないから、仮に、高炉セメントにおいて、材齢2日における「粗骨材以外のモルタル成分」の「熱膨張係数」が「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」であることはありふれた値であり、このことが技術常識であるといえるとしても、そのような「粗骨材以外のモルタル成分」の組成と「甲1モルタル成分」の組成とが合致することを示す証拠は提出されていないので、当該技術常識に基づいて、「甲1モルタル成分」の熱膨張係数が、「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」であるということはできない。 したがって、前記「甲1モルタル成分」を含有する甲1発明1において、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」るということはできない。 (イ)また、本件特許明細書の段落【0035】には以下の記載がある。 「【0035】 <使用材料> ・セメント(N):普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製) ・セメント(M):中庸熱ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製) ・セメント(BB):高炉セメントB種(住友大阪セメント社製) ・水(W):上水道水 ・細骨材A:山砂(千葉県富津産) ・細骨材B:石灰砕砂(高知県鳥形山産) ・粗骨材A:砂岩砕石(茨城県岩瀬産) ・粗骨材B:川砂利(富山県庄川産) ・粗骨材C:石灰砕石(栃木県葛生産) ・粗骨材D:石灰砕石(高知県鳥形山産) ・化学混和剤:チューポールHP−11W(竹本油脂社製)」 そして、前記記載によれば、段落【0034】〜【0040】の実施例及び比較例における「粗骨材以外のモルタル成分」の細骨材は、山砂(千葉県富津産)又は石灰砕砂(高知県鳥形山産)であり、化学混和剤は、チューポールHP−11W(竹本油脂社製)であって、「甲1モルタル成分」の細骨材である「君津産陸砂(表乾密度:2.60g/cm3,吸水率:1.29%)」及び「混和剤」である「ポリカルボン酸エーテル系の高性能AE減水剤、アルキルエーテル系のAE剤」とは材料が異なるものである。 更に、本件特許明細書の記載からは、前記実施例及び比較例における高炉スラグの組成も明らかでないのに対して、「甲1モルタル成分」における「高炉スラグ微粉末」の組成は、「Ig.loss:0.07%、SiO2:33.54%、Al2O3:14.58%、FeO:0.25%、CaO:43.29%、MgO:5.44%、SO3:1.9%、Na2O:0.27%、K2O:0.33%、塩基度:1.6以上」に特定されるものであるから、前記実施例及び比較例の「粗骨材以外のモルタル成分」の組成と「甲1モルタル成分」の組成とは合致しない。 そうすると、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、前記実施例及び比較例の全てにおいて、「粗骨材以外のモルタル成分」が、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」る、という本件発明1の発明特定事項を満たしているとしても、このことから、「甲1モルタル成分」の「熱膨張係数」が「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」であるということはできない。 (ウ)更に、前記1(2)(2a)〜(2c)によれば、甲第2号証には、甲第2号証に記載される高強度コンクリートにおける高炉スラグの組成が記載されておらず、当該高炉スラグが、「甲1モルタル成分」における「高炉スラグ微粉末」の組成と合致するものとはいえない。 また、前記高強度コンクリートの細骨材は相模川水系川砂(F.M.:2.97;表乾比重:2.63)であって、「甲1モルタル成分」における細骨材である「君津産陸砂(表乾密度:2.60g/cm3,吸水率:1.29%)」とは異なる細骨材が使用されており、前記高強度コンクリートの混和剤は、高性能AE減水剤SPであって、ポリカルボン酸エーテル系と架橋ポリマーの複合体であるのに対して、「甲1モルタル成分」は、「混和剤にポリカルボン酸エーテル系の高性能AE減水剤と,アルキルエーテル系のAE剤を使用した」ものであり、これらのことからみれば、甲第2号証に記載される高強度コンクリートにおける「粗骨材以外のモルタル成分」の組成と、「甲1モルタル成分」の組成とは、少なくとも「高炉スラグ微粉末」、「細骨材」及び「混和剤」について合致しない。 そうすると、仮に、甲第2号証に記載される高強度コンクリートにおける「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数」が、「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」る、という本件発明1の発明特定事項を満たしているとしても、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、「甲1モルタル成分」の「熱膨張係数」が「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」であるということはできない。 そして、甲第3〜5号証に記載される「粗骨材以外のモルタル成分」の組成が「甲1モルタル成分」の組成と合致しないことは、甲第2号証の場合と同様であるし、甲第6号証には、岩種別による骨材およびこれを用いたコンクリートの熱膨張係数が記載されているに過ぎないから、甲第2〜6号証に記載された事項に基づいて、「甲1モルタル成分」の「熱膨張係数」が「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」であるといえるものではない。 (エ)したがって、本件特許明細書の段落【0034】〜【0040】の記載から、甲1発明1において、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」る蓋然性が高いということはできないし、甲第2〜6号証に記載された事項から、甲1発明1において、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」る蓋然性が高いことが裏付けられるものでもないので、申立人の前記ウ(ア)〜(エ)の主張はいずれも採用できない。 オ よって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲1発明1であるとはいえない。 そして、甲1発明2及び甲1発明3についても甲1発明1と事情は同じであるから、本件発明1は甲第1号証に記載された発明とはいえない。 (2)本件発明2について 前記(1)アと同様にして本件発明2と甲1発明1とを対比した場合、本件発明2と甲1発明1とは、少なくとも以下の点で相違する。 ・相違点1’:本件発明2は、「コンクリート混練物」が「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」る、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明1は前記発明特定事項を有するか否かが明らかでない点。 そして、前記相違点1’は前記(1)アの相違点1と実質的に同じものであるから、前記(1)イ〜オに記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2も甲1発明1であるとはいえない。 更に、甲1発明2及び甲1発明3に対して検討しても甲1発明1と事情は同じであるから、本件発明2も甲第1号証に記載された発明とはいえない。 (3)小括 よって、前記第3の2の特許異議申立理由は理由がない。 3 特許法第29条第2項について (1)本件発明1について ア 以下、前記2(1)アの相違点1の想到容易性について検討すると、前記1(1)(1a)、(1b)、(1f)によれば、甲第1号証に記載される「コンクリート」は、低水結合材比の「コンクリート」が高温履歴を受けた際の強度特性を検討するためのものであって、高炉スラグ微粉末の有無、粗骨材の有無、膨張材の添加等の条件で比較を行うためのものであり、具体的には、若材齢時に高温履歴を受けた低水結合材比の「高炉スラグ微粉末含有コンクリート」における損傷の程度と、損傷の影響を調べるためのものである。 すなわち、甲第1号証は、前記「コンクリート」において、石灰岩・安山岩という熱膨張係数の異なる2種類の粗骨材を用い、低水結合材比における性状を調べたものであり、シリーズ1では、粗骨材の種類、粗骨材や高炉スラグ微粉末の有無、前置き時間がコンクリートの諸性状に及ぼす影響を確認する試験を行い、シリーズ2では、粗骨材を安山岩一種とし、シリーズ1の試験内容に加え、鉄筋によって拘束された供試体に対する試験を行ったものである。 イ そして、そのような甲第1号証に記載の「コンクリート」において、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数」に注目してこれを調整することはそもそも想定されないのであり、甲1発明において「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数」を「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」とする動機付けは存在しないから、甲第2〜6号証の記載事項に関わらず、甲1発明1において、「コンクリート組成物」を、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であ」る、との前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることを、甲第2〜6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得るものではない。 ウ これについて申立人は、以下のように主張する。 前記1(1)ア(1b)、同(3)(3a)、同(4)(4c)、同(5)(5a)の甲第1、3、4、5号証の記載によれば、モルタル成分と粗骨材の熱膨張係数の差に起因して内部応力が生じることや、これが微視的破壊につながり得ることは、従来知られていた技術的課題であり、このような従来からの課題認識によれば、これを解決すべく、コンクリート組成物又は混練物においてモルタル成分の熱膨張係数と粗骨材の熱膨張係数との差を小さくしようとすることは、当業者が容易になし得ることであるから、粗骨材の熱膨張係数が11.4×10−6/℃である甲第1号証に記載された発明において、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数」を「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」とすることは当業者が容易になし得るものであるので、本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1〜6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ そこで、以下、前記ウの主張について検討すると、本件特許明細書の【0015】、【0030】には以下の記載がある。 「【0015】 以上のように、本発明によれば、水結合材比が比較的少ないコンクリート混練物の硬化に伴う発熱やコンクリート硬化体が受ける高温履歴がコンクリート硬化体の強度の発現に影響するのを抑制することができる。」 「【0030】 即ち、結合材としてのセメントと、粗骨材と、細骨材とを含み、水結合材比が40%以下となるように水と混練されて使用されるコンクリート組成物であって、前記粗骨材は、熱膨張係数が8×10−6/℃以上であり、粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数が8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下であることで、発熱によって高温状態になったり、高温履歴を受けたりした場合であっても、コンクリート硬化体の圧縮強度が低下するのを抑制することができる。」 そして、前記記載によれば、本件発明1は、「高炉セメントと、粗骨材と、細骨材とを含」む「コンクリート組成物」において、「粗骨材」の「熱膨張係数」を「8×10−6/℃以上」とし、「粗骨材以外のモルタル成分」の「熱膨張係数」を「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」として、これらの組み合わせを最適化することで、水結合材比が比較的少ないコンクリート混練物の硬化に伴う発熱やコンクリート、硬化体が受ける高温履歴がコンクリート硬化体の強度の発現に影響するのを抑制できるものである。 これに対して、甲第1〜6号証には、「コンクリート組成物」において、「粗骨材」の「熱膨張係数」と、「粗骨材以外のモルタル成分」の「熱膨張係数」の組み合わせを最適化することは記載も示唆もされていないから、仮に、モルタル成分と粗骨材の熱膨張係数の差に起因して内部応力が生じることや、これが微視的破壊につながり得ることが従来知られていた技術的課題であるとしても、甲第1号証に記載された発明において、「粗骨材以外のモルタル成分の熱膨張係数」を「8×10−6/℃以上15×10−6/℃以下」とすることを、当業者が容易になし得るものとはいえないので、申立人の前記ウの主張は採用できない。 オ よって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1及び甲第2〜6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、甲1発明2及び甲1発明3に対して検討しても甲1発明1と事情は同じであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2について 以下、前記2(2)の相違点1’の想到容易性について検討すると、前記相違点1’は前記(1)アの相違点1と実質的に同じものであるから、前記(1)ア〜オに記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2も、甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)小括 よって、前記第3の3の特許異議申立理由は理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるので、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1〜2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2021-12-01 |
出願番号 | P2016-173504 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C04B)
P 1 651・ 113- Y (C04B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
宮澤 尚之 |
特許庁審判官 |
伊藤 真明 金 公彦 |
登録日 | 2021-03-03 |
登録番号 | 6846144 |
権利者 | 住友大阪セメント株式会社 株式会社安藤・間 |
発明の名称 | コンクリート組成物、コンクリート混練物 |
代理人 | 中谷 寛昭 |
代理人 | 中谷 寛昭 |
代理人 | 藤本 昇 |
代理人 | 藤本 昇 |