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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01G
管理番号 1384217
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-06 
確定日 2021-12-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第6854957号発明「用水管理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6854957号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6854957号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成27年12月15日に出願した特願2015−244099号の一部を令和2年8月12日に新たな特許出願としたものであって、令和3年3月18日に特許権の設定登録がされ、令和3年4月7日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和3年10月6日に、特許異議申立人 松本 征二(以下「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし4に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。

2 本件発明
特許第6854957号の請求項1ないし4の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
複数の圃場において設置され、圃場への用水の給水または圃場からの用水の排出を行う複数の水栓装置を備え、
前記水栓装置は、制御部と、用水管理サーバと通信を行うサーバ対応通信部と、太陽電池と前記太陽電池の電力を蓄積する蓄電池とを備える電源部と、前記電源部から供給される電力によるモータの回転に応じて軸部を回転させることにより上下方向に移動させることで、当該水栓装置に供給される用水が吐出されるまでの流路に設けられる栓部の開閉を駆動する栓駆動部とを備え、
前記軸部は、用水が吐出される前記栓部の開口部上において回転しながら移動するように設けられており、
前記水栓装置において、前記栓駆動部がモータの負荷電流を監視し、前記負荷電流が過負荷の状態となった場合に過負荷通知信号を制御部に出力する、あるいは、制御部が前記モータの負荷電流値に基づいて過負荷の状態を検出するようにされ、前記制御部は、前記過負荷の状態を解消するために栓部を開閉させる障害解消制御の後に再度過負荷の状態となったことに応じて過負荷通知を前記用水管理サーバに送信し、
前記用水管理サーバは、
前記複数の水栓装置のうち、栓部の開閉の制御を行った水栓装置を対象として、障害が発生しているか否かの判定を過負荷通知の受信に基づいて行う障害判定部と、
前記制御部により送信された過負荷通知により障害が発生していると判定された場合に、障害の発生した水栓装置の情報を含む障害発生通知を、用水管理システムの管理者と圃場主との少なくともいずれかに対して行う障害対応部とを備える
用水管理システム。
【請求項2】
前記障害判定部は、前記栓部の開閉状態を制御する開閉制御部が或る1の水栓装置を対象として所定の開度となるように制御した際に、前記対象の水栓装置における栓部の開度が前記所定の開度に対応する状態であるか否かを判定することにより、前記対象の水栓装置において障害が発生しているか否かについて判定する
請求項1に記載の用水管理システム。
【請求項3】
圃場に給水するように水栓装置を制御している状態において検出される前記圃場の水位に基づいて前記障害判定部が水位の変化しないことを判定した場合に、前記障害対応部が異常発生通知を行う
請求項1または2に記載の用水管理システム。
【請求項4】
水栓装置との通信に不良の発生したことが前記障害判定部により判定された場合に、前記障害対応部が通信不良の通知を行う
請求項1から3のいずれか一項に記載の用水管理システム。」

3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として、以下の甲第1号証(以下「甲1」という。)を、従たる証拠として、以下の甲第2号証ないし甲第8号証(以下、それぞれ「甲2」ないし「甲8」という。)を提出し、請求項1ないし4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1ないし4に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

甲1:特開2004−280743号公報
甲2:水み君(仮称)リーフレット,積水化学工業株式会社,2014年 8月
甲3:特開平8−70716号公報
甲4:特開2003−284440号公報
甲5:特開2000−146297号公報
甲6:特開2011−134089号公報
甲7:特開2001−306427号公報
甲8:特開2011−70282号公報

4 証拠の記載
(1)甲1
ア 甲1には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。以下同様。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば水稲などの作物を栽培する水田にあって、水田の水を管理する水田管理システムに関する。」

(イ)「【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1は圃場全体の側面図、河川または池などの水源の水を用水路1を介し水田2に送り込むもので、各水田に水を送給する給水栓3と、各水田の水を排出する排水栓4と、各水田2の水温を計測する水温センサ5と、各水田2の気温を計測する気温センサ6と、各水田2の水位を計測する水位センサ7と、地盤面または地中の温度を計測する地温センサ8と、農薬の代用特性である電気伝導度ECを計測する電気伝導度センサ9と酸化環元電位度Ehを計測する酸化環元電位度センサ10とを有して給水栓3を開閉操作する給水無線端末装置11と、排水栓4を開閉操作する排水無線端末装置12と、ホストコンピュータなど水管理パソコンを情報収集装置13に備える営農事務所などの基地局14と、端末装置11・12及び基地局14から発信される無線信号を中継する中継装置15とを水田2周囲に配設させている。
【0008】
そして図2に示す如く、各センサ5・6・7・8で計測する水温・気温・水位・地温などの各種データを端末装置11・12及び中継装置15を介して基地局14の情報収集装置13に無線通信により伝達させ、給排水栓3・4の各電磁バルブ16・17を開閉動作させるコントローラ18と情報収集装置13とは中継装置15を介し無線通信により連結させて、情報収集装置13に入力する各種データに基づいて給排水栓3・4(電磁バルブ16・17)を遠隔操作で開閉制御するように構成している。」

(ウ)「【0010】
また、水田管理システム上で故障などの異常発生時には故障の原因などをメール画面データに編集して携帯電話21に情報収集装置13から出力させて、異常発生を速やかに各水田管理者などに通知させる。」

(エ)図1




(オ)上記(イ)の記載に照らして、上記(エ)の図1から、複数の給水無線端末装置11が散在していることが看取される。

イ 上記アからみて、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「各水田2に水を送給する給水栓3を、水田2周囲に配設し、
給水栓3の電磁バルブ16を開閉動作させるコントローラ18と情報収集装置13とを無線通信により連結させて、電磁バルブ16を遠隔操作で開閉制御し、
情報収集装置13は、水田管理システム上での故障などの異常発生時には故障の原因などをメール画面データに編集して携帯電話21に出力して異常発生を速やかに各水田管理者などに通知し、
給水無線端末装置11は給水栓3を開閉操作するものであり、
複数の給水無線端末装置11が散在している、
水田の水を管理する水田管理システム。」

(2)甲2
ア 甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「水み君(仮称) タイマー式自動給水栓
タイマー制御で給水管理!
給水操作をタイマー制御で自動化し、
水管理の省力化を実現。水使用の平準化により、
水使用量削減を可能にします。また、夜間かんがいで
米作りをサポートします。
特長
1 給水周期ダイヤルで給水開始時間をコントロール
2 バルブ開き度ダイヤルで給水量をコントロール
3 給水時間ダイヤルで給水時間をコントロール
4 動力はソーラー発電+バッテリー
5 夜間かんがいを自動化
6 水位センサー(オプション)で水位管理
7 散水チューブや蛇口も追加可能」(第1頁)

(イ)「仕様
外形寸法|190×200×440(エアダスバルブ含まず)
本体重量|6.2kg
対応バルブ/パイプ|エアダスバルブ/φ75
筐体構造、主な材質|ステンレス/強化ガラス
ソーラーパネル|多結晶シリコンセル
バッテリー|DC6V4.5
モーター|6V−3.5W
減速/トルク/回転|1/700/18.4kgf・cm/8.4rpm
モード切替|切/手動/自動
制御方法|開度 9段切替 1〜9
|給水時間 10段階切替 0(1分)1(1時間)〜9(9時間)
|給水周期 10段階切替 0(半自動)1(毎日)9(9日毎)
|手動開閉 センター復帰スイッチ
弁開閉限度制御|機械式移動可リミットスイッチ
緊急開閉機構|本体取り外し可
トルクリミッター|開閉各3回のリトライ後停止し赤ランプ点灯
水位センサー接続|2系統方式 (1)上水位停止端子 (2)下水位スタート端子
警報|赤点灯→過負荷 赤点滅→ローバッテリー」(第2頁左中欄)
(当審注:マル囲いの数字は、(1)〜(2)で代用した。)

(ウ)「操作パネル
(1)給水周期(ダイヤル調整)
・給水周期を毎日〜9日毎に設定
(2)開度(ダイヤル調整)
・用水弁の開度を設定
・水圧や(3)給水時間により調整
・設定2以上で使用する
(3)給水時間
・用水弁を開放し続ける時間を設定
(4)自動運転中
・自動運転中状態をランプ表示する
(5)異常ランプ
・用水弁に異物などを噛み込んだ場合など、過負荷が発生した際に点灯する
(6)スタートスイッチ
・(7)メインスイッチが自動の場合、スタートスイッチONで(1)〜(3)で設定した自動運転時間を記憶し、給水を開始する
(7)メインスイッチ(切替スイッチ)
・(自動)自動運転を行う
・(手動)(8)手動開閉スイッチで用水弁の開閉を手動で行う
・(切)停止
(8)手動スイッチ
・(7)メインスイッチが「手動」の場合のみ有効
・(開)用水弁を開く
・(閉)用水弁を閉じる」(第2頁右上欄)
(当審注:マル囲いの数字は、(1)〜(8)で代用した。)

(エ)「取付方法
手動バルブへの自動機(水み君)取付は簡単
1.ハンドルとナットを外し
2.本体をナットで固定
3.上下の軸を固定し完了」(第2頁下欄)

イ 上記アからみて、甲2には、次の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「手動バルブに自動機を取り付けるものであって、用水弁を備えるタイマー式自動給水栓において、
動力はソーラー発電とバッテリーであって、
ソーラーパネル、バッテリー及びモーターを備える仕様であり、
操作パネルの異常ランプは、用水弁に異物などを噛み込んだ場合など過負荷が発生した際に点灯し、
警報の仕様として過負荷の際に赤点灯し、
トルクリミッターの仕様として開閉各3回のリトライ後停止し赤ランプ点灯する点。」

(3)甲3
ア 甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水田等に設けられた給水栓の駆動軸に取付けて用いる給水栓自動開閉装置に関するものである。」

(イ)「【0021】図1において、水田1には水2が注入され、稲3が植えられている。水田1の地中には、ため池等から引かれた給水管6が設置されており、地上露出部には給水栓4が設けられている。一般には、給水栓4はその上部に設けられたハンドル5を手動操作することにより開閉される。次に、図2に示すように、給水栓4からハンドル5を取り外し、本発明の給水栓自動開閉装置10を給水栓4の上部に装着する。給水栓自動開閉装置10は、図3(a)及び(b)に示すように、筐体11の上部に傾斜して取付けられた太陽電池12と、太陽電池12により発電された電気エネルギーを駆動源とするモーター13と、余分な電気エネルギーを蓄えておくための蓄電池14と、モーター13の出力軸に連結された歯車機構15と、モーター13の起動及び停止、回転方向や回転時間等を制御するためのプログラムを内蔵した制御装置16と、歯車機構15の出力軸15aに連結され垂直方向には上下動しない第1の軸17と、第1の軸17と嵌合し垂直方向に上下動可能な中空の第2の軸18と、給水栓4の駆動軸4aに取付けられたアダプター19等で構成されている。
【0022】モーター13の駆動力を給水栓4の駆動軸4aに伝達するため、この実施例の場合、第1の軸17及び第2の軸18はそれぞれ矩形断面を有している。なお、矩形断面を有する軸は製造工程が複雑で、コストを高くする要因となるため、第1及び第2の軸17及び18をそれぞれ円形断面とし、両者を小判穴及び当該小判穴を摺動するピン等で連結してもよい。太陽電池12は、太陽熱/電気エネルギー変換効率が最も高くなるように、水平から略22度から30度傾斜させて設けられている。また、太陽電池12の傾斜面を太陽の方向、例えば南向きにすることはいうまでもない。モーター13としては、小型軽量で高トルクのギヤードモーター等を用いる。制御装置16は、CPU、メモリー、入力キー、ディスプレイド及びタイマー等で構成され、内蔵されているプログラムに従ってモーター13を制御する。また、歯車機構15、第1及び第2の軸17及び18、アダプター19等は、モーター13の駆動力を給水栓4の駆動軸4aに伝達するための駆動力伝達機構を構成する。
【0023】以上のように構成された本発明の給水栓自動開閉装置の動作について説明する。一般に、給水栓4の機種により駆動軸4aの回転数や駆動軸4aの動作ストローク等が異なる。また、個々の給水栓4によっても、錆や泥の付着、駆動部分の嵌合や潤滑の程度又は水圧等により駆動軸4aを回転させるために必要なトルクが異なる。さらに、給水栓4の開き量が同じであっても、水圧等により給水に要する時間が異なる。そのため、既存の給水栓に本発明の給水栓自動開閉装置を装着した場合、最初に動作テストを行う。例えば、給水栓4が、その駆動軸4aを反時計方向に10回転させることにより全開するものである場合、モーター13が駆動軸4aを左方向に10回転まで所定方向の電流を通電し、その通電時間をカウントしておく。次に、給水栓4が開いた状態で、水田1の水2が所定の水位を上昇するのに要する時間をカウントする。そして、水田1の水2が所定の水位に達した後、前記所定方向とは逆向きの電流をモーター13に通電し、駆動軸4aを時計方向に10回転させる。このとき、駆動軸4aを時計方向に10回転させるのに要する時間もカウントしておく。このようにして得られたデータを制御装置16に内蔵されているプログラムの変数として入力する。そして、水田を見回りに行った際に、水位の低下を見て、給水栓4の全開時間をセットする。」

(ウ)図3




イ 上記アからみて、甲3には、次の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「水田等に設けられた給水栓の駆動軸に取付けて用いる給水栓自動開閉装置において、
筐体11の上部に傾斜して取付けられた太陽電池12と、太陽電池12により発電された電気エネルギーを駆動源とするモーター13と、余分な電気エネルギーを蓄えておくための蓄電池14とを備え、
モーター13の駆動力を給水栓4の駆動軸4aに伝達し、
給水栓の駆動軸4aを反時計方向に10回転させることにより全開させるために、モーター13に所定方向の電流を通電する点。」

(4)甲4
ア 甲4には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水田圃場での灌水管理に用いられる水田バルブに関する。」

(イ)「【0027】前記上部筐体4内の主軸10の上下方向中央部には螺旋ネジ50が形成され、該螺旋ネジ50には爪部51が係合するように配置され、該爪部51は上部筐体4内に横架された支持軸54の中央に固定して突設されている。該支持軸54の両側は上部筐体4に回動自在に支持され、該支持軸54の一端側には、トーションスプリング55が外嵌されており、該トーションスプリング55は、一端側55aが上部筐体4に固定され、他端側55bが支持軸54より突設したステー57に係止されている。該トーションスプリング55は前記爪部51が螺旋ネジ50と係合するように付勢している。また、前記ステー57にはステー56が当接可能に配置され、該ステー56は前記回転軸20に螺装したスライダ36より突設されている。また、前記主軸10の上端にはハンドル85が固設されている。
【0028】このような構成において、爪部51が螺旋ネジ50と係合している状態で、ハンドル85を回転して主軸10を回転させると主軸10は昇降し、この回転により主軸10を下降させると、主軸10下端がフロート弁5を下方に押して、フロート弁5は弁座3aより離れて止水状態が解除され、下部筐体2内からガイド部材8を介して吐水される。このとき、ハンドル85の回転量により主軸10の下降量を調節できる。つまり、主軸10を下降させるほどフロート弁5と弁座3aの間隔が大きくなり、吐水量を増加させることができ、吐水量を調節できるのである。」

(ウ)「【0030】そして、前記つまみ61の回転により吐水時間を設定してつまみより手を離すと、ゼンマイバネ21の復元力により、後述するタイマー装置を作動して、回転軸20を逆方向に回転し、スライダ36を徐々に下降させる。そして、設定した時間が経過すると、スライダ36の下降によりステー56がステー57を下方に押して支持軸54を回動し、爪部51を下方へ回動すると、爪部51と螺旋ネジ50の係合が解除されて、主軸10はフロート弁5の浮上力と水圧で上昇し、フロート弁5が弁座3aと密着して止水されるのである。」

(エ)図5




(オ)上記(イ)の記載に照らして、上記(エ)の図5から、主軸10は、フロート弁5が配置される弁座3aの上方に位置することが看取される。

イ 上記アからみて、甲4には、次の技術事項(以下「甲4技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「水田圃場での灌水管理に用いられる水田バルブにおいて、
主軸10は、フロート弁5が配置される弁座3aの上方に位置し、
主軸10の上下方向中央部には螺旋ネジ50が形成され、該螺旋ネジ50には爪部51が係合するように配置され、
爪部51が螺旋ネジ50と係合している状態で、ハンドル85を回転して主軸10を回転させると主軸10は昇降し、この回転により主軸10を下降させると、主軸10下端がフロート弁5を下方に押して、フロート弁5は弁座3aより離れて止水状態が解除されて吐水され、
ハンドル85の回転量により主軸10の下降量を調節でき、主軸10を下降させるほど吐水量を増加させることができ、吐水量を調節できる点。」

(5)甲5
ア 甲5には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0008】Mは前記水栓WV、電磁安全弁MV、緩点火機構G等の機能部を駆動する単一のモータで、たとえば、減速ギヤー20付きのギヤードモータ等を用い、該モータMと連動する作動体Kを介して前記各機能部をそれぞれの動作タイミングを変えて駆動する。すなわち、作動体Kとして図2に例示したようなカム体1を用い、該カム体1をモータMの出力軸に固定してモータMによりカム体1を所定の角度だけ間歇的に回転させることによって各機能部の駆動をタイミングを変えて行うものである。カム体1としては、水栓WVを駆動するためのカム1aと電磁安全弁MVを駆動するためのカム1b及び緩点火機構Gを駆動するためのカム1cを同一軸心を保って並設するほか、釦表示カム1d、カム体1の位置を検出する2つのカムスイッチS3、S4を作動するカム1e等をも一体に備えた構造とし、水栓駆動用カム1aに前記ダイヤフラム式給水弁WVのパイロット弁8の弁軸21に先端部を係合させた作動レバー22の基端部22bを、また、電磁安全弁駆動用カム1bには電磁安全弁MVの安全弁V5と同軸上に発条23で復帰方向に付勢して設けた押圧杆24を、さらに、緩点火機構駆動用カム1cには緩点火機構Gの弁軸15をそれぞれ関連させ、各々のカム1a、1b、1cのカム面の形状はカム体1がモータMによって所定の角度だけ間歇的に回転することにより前記各機能部がタイミングを変えて的確に駆動されるように設定するものである。なお、釦表示カム1dには表示杆25を、カムスイッチ作動用カム1eにはそのスイッチ杆26、27をそれぞれ関連させるものである。」

(イ)「【0017】前記消火シーケンスにおいて、「止」シーケンス動作中にON操作しても「止」シーケンスが完了するまで「止」操作を優先させるようになっており、このシーケンスにもモータMの起動に対応する過負荷監視シーケンスが備えられている。前記点火及び消火シーケンスにおけるモータMの起動に対応するモータ過負荷監視シーケンスとしては、たとえば、図6に例示されているように、ステップ300でモータMを起動してから一定時間T5秒経過後に該モータMに流れる電流を確認し、一定値A1以上の場合はステップ301でモータMを停止し、ステップ302のMg保持電流OFF、ボタンスイッチON保持解除へ移行せしめるようになすものである。」

イ 上記アからみて、甲5には、次の技術事項(以下「甲5技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「水栓を駆動するモータにおいて、モータ過負荷監視シーケンスとして、モータを起動してから一定時間経過後に該モータに流れる電流を確認し、一定値以上の場合はモータを停止する点。」

(6)甲6
ア 甲6には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0033】
以下、本発明に係る異常通知装置及び異常報知システムの一実施の形態について、図1〜図7を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態の異常通知装置は、いわゆるゲートウェイECU(以下、GW−ECUとも記載)20として実現されており、本実施の形態の異常報知システムは、このGW−ECU20を含むとともに、タイヤ空気圧監視システム10の監視ECU11と、車両Cに搭載されるメータ装置30のメータECU31と、通信ライン60と、通信ライン70とを含む異常報知システムとして実現されている。なお、本実施の形態は、例えば北米など、タイヤ空気圧監視システム10を車両Cに搭載することが法的に義務付けられた地域向けの仕様(スタンダード仕様)とされている。以下、異常報知システム及び異常通知装置について説明する。」

(イ)「【0043】
詳しくは、メータECU31は、監視ECU11から通信ライン60、GW−ECU20、及び通信ライン70を介してタイヤに異常がある旨及びそのタイヤ情報が入力されると、これらタイヤに異常がある旨及びそのタイヤ情報を表示機32に画面表示することによりユーザに報知する。また、メータECU31は、GW−ECU20から、監視ECU11とGW−ECU20との接続状態が異常である旨を示す異常通知を通信ライン70を介して受信すると、この異常通知を画面表示することによりユーザに報知する。なお、詳しくは後述するが、異常通知には、監視ECU11とGW−ECU20との通信が途絶している旨を示す通信途絶通知と、監視ECU11が存在していない旨を示す不存在通知ととの双方が含まれている。
【0044】
また、本実施の形態では、表示機32として例えば液晶表示機(LCD)を採用したがこれに限らない。他に例えば7セグメントディスプレイ等、適宜の表示機を採用することができる。さらに、表示機にも限らず、タイヤに異常がある旨、そのタイヤ情報、異常通知をスピーカ等により音声案内してもよく、あるいは、ブザー等により警報してもよい。要は、ユーザに報知することができれば、その報知装置は任意である。」

(7)甲7
ア 甲7には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0086】次に、ステップS2で公衆回線8がモデム48に接続されたか否かを判断し、公衆回線8がモデム48に接続されなかった場合は、ステップS10でその旨を示す情報を緊急コールが発生した画像形成装置へ送信する(NGを報告する)が、公衆回線8がモデム48に接続された場合は、ステップS3で中央制御装置6へ発呼し、ステップS4で中央制御装置6との通信回線がビジーかどうかを判断する。
【0087】そして、中央制御装置6との通信回線がビジーでなかった場合は、ステップS5で中央制御装置6との通信を開始して先に受け取った緊急コールを中央制御装置6へ通知(通報)した後、ステップS6で中央制御装置6との通信が正常に終了したか否かを判断し、その通信が正常に終了した場合には、ステップS7でその旨を示す情報を緊急コールが発生した画像形成装置へ送信する(OKを報告する)。
【0088】一方、中央制御装置6との通信回線がビジーだった場合、あるいは中央制御装置6との通信が正常に終了できなかった場合は、ステップS8で中央制御装置6への発呼処理の回数が予め定められたリトライ回数に達したか否か、あるいは中央制御装置6への発呼処理を開始してから経過した時間が予め定めた所定時間を経過(タイムアウト)したか否かを判断する。
【0089】そして、中央制御装置6への発呼処理の回数がリトライ回数に達していない場合、あるいは中央制御装置6への発呼処理を開始してから経過した時間が所定時間を経過していない場合は、ステップS2に戻って上述と同様の処理を繰り返し、中央制御装置6への発呼処理の回数がリトライ回数に達した場合、あるいは中央制御装置6への発呼処理を開始してから経過した時間が所定時間を経過した場合に、ステップS9でその旨を示す情報を緊急コールが発生した画像形成装置へ送信する(NGを報告する)。」

(8)甲8
ア 甲8には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0010】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記検出手段および前記通知手段が前記マスタ装置に設けられ、前記復旧手段が前記スレーブ装置に設けられ、前記マスタ装置に設けられた前記検出手段が前記通信ラインに生じた異常を検出した場合には、前記通知手段が異常の発生を前記スレーブ装置に通知し、前記スレーブ装置の前記復旧手段が、前記マスタ装置から異常の発生の通知を受けた場合に前記IIC通信を復旧させることを特徴とする。
このような構成によれば、マスタ装置において通信の異常を検出した場合には、スレーブ装置に異常を通知し、スレーブ装置がIIC通信を復旧させるので、マスタ装置が主体となって通信異常を管理することができる。」

5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「水田2」、「各水田2に水を送給する給水栓3」は、本件発明1の「圃場」、「圃場への用水の給水」「を行う」「水栓装置」に相当する。
また、甲1発明の「給水栓3」は「各水田2に水を送給する」こと、及び、「給水栓3を開閉操作」する「給水無線端末装置11」について「複数の給水無線端末装置11が散在している」ことから、複数の給水栓3がそれぞれの水田2に対応して設けられることは明らかであって、このようなそれぞれの水田2に対応する複数の給水栓3であることは、本件発明1の「複数の」圃場において設置される「複数の」水栓装置であることに相当する。

(イ)甲1発明の「コントローラ18」は、「給水栓3の電磁バルブ16を開閉動作させる」ものであって、本件発明1の「水栓装置」の「制御部」に相当する。
また、甲1発明の「情報収集装置13」は、本件発明1の「用水管理サーバ」に相当するとともに、甲1発明の「コントローラ18」は、「情報収集装置13」と「無線通信により連結させ」るものであって、情報収集装置13と無線通信を行う通信部としての機能を備えていることは明らかである。よって、甲1発明の「コントローラ18」は、本件発明1の「用水管理サーバと通信を行うサーバ対応通信部」に相当する。
さらに、甲1発明の「給水栓3の電磁バルブ16」は、電磁バルブにおける技術常識に照らして、給水栓3の流路に設けられる栓部材を開閉駆動するものであることは明らかであって、本件発明1の「当該水栓装置に供給される用水が吐出されるまでの流路に設けられる栓部の開閉を駆動する栓駆動部」に相当する。
よって、甲1発明の「給水栓3の電磁バルブ16を開閉動作させるコントローラ18と情報収集装置13とを無線通信により連結させて、電磁バルブ16を遠隔操作で開閉制御」することと、本件発明1の「前記水栓装置は、制御部と、用水管理サーバと通信を行うサーバ対応通信部と、太陽電池と前記太陽電池の電力を蓄積する蓄電池とを備える電源部と、前記電源部から供給される電力によるモータの回転に応じて軸部を回転させることにより上下方向に移動させることで、当該水栓装置に供給される用水が吐出されるまでの流路に設けられる栓部の開閉を駆動する栓駆動部とを備え」ることとは、「前記水栓装置は、制御部と、用水管理サーバと通信を行うサーバ対応通信部と、当該水栓装置に供給される用水が吐出されるまでの流路に設けられる栓部の開閉を駆動する栓駆動部とを備え」る点で共通する。

(ウ)甲1発明の「情報収集装置13」は、「故障などの異常発生時には故障の原因などをメール画面データに編集して」いる以上、本件発明1における「障害が発生しているか否かの判定を」「行う」機能を有していることは明らかであるから、甲1発明は、本件発明1における「障害が発生しているか否かの判定を」「行う障害判定部」に相当する構成を有している。

(エ)甲1発明の「各水田管理者」と本件発明1の「用水管理システムの管理者と圃場主との少なくともいずれか」とは「水田管理者」である点で共通するものであって、甲1発明において、「故障などの異常発生時」に「異常発生を速やかに各水田管理者などに通知」することは、本件発明1の「障害が発生していると判定された場合」の「障害発生通知」に相当するから、甲1発明の「故障などの異常発生時」に「異常発生を速やかに各水田管理者などに通知」する「情報収集装置13」と、本件発明1の「前記制御部により送信された過負荷通知により障害が発生していると判定された場合に、障害の発生した水栓装置の情報を含む障害発生通知を、用水管理システムの管理者と圃場主との少なくともいずれかに対して行う障害対応部」とは、「障害が発生していると判定された場合に、障害発生通知を、水田管理者に対して行う障害対応部」である点で共通している。

(オ)甲1発明の「水田の水を管理する水田管理システム」は、本件発明1の「用水管理システム」に相当する。

(カ)以上のことから、本件発明1と甲1発明は、次の一致点で一致し、相違点で相違する。

(一致点)
「複数の圃場において設置され、圃場への用水の給水を行う複数の水栓装置を備え、
前記水栓装置は、制御部と、用水管理サーバと通信を行うサーバ対応通信部と、当該水栓装置に供給される用水が吐出されるまでの流路に設けられる栓部の開閉を駆動する栓駆動部とを備え、
前記用水管理サーバは、
障害が発生しているか否かの判定を行う障害判定部と、
障害が発生していると判定された場合に、障害発生通知を、水田管理者に対して行う障害対応部とを備える
用水管理システム。」

(相違点1)
水栓装置について、本件発明1では、栓駆動部による栓部の開閉を「モータの回転に応じて軸部を回転させることにより上下方向に移動させることで」行い「前記軸部は、用水が吐出される前記栓部の開口部上において回転しながら移動するように設けられて」いること(以下「相違事項1−1」という。)、モータの回転は「太陽電池と前記太陽電池の電力を蓄積する蓄電池とを備える電源部」を備えて「前記電源部から供給される電力による」こと(以下「相違事項1−2」という。)、及び、「前記栓駆動部がモータの負荷電流を監視し、前記負荷電流が過負荷の状態となった場合に過負荷通知信号を制御部に出力する、あるいは、制御部が前記モータの負荷電流値に基づいて過負荷の状態を検出するようにされ、前記制御部は、前記過負荷の状態を解消するために栓部を開閉させる障害解消制御の後に再度過負荷の状態となったことに応じて過負荷通知を前記用水管理サーバに送信」すること(以下「相違事項1−3」という。)が特定されているのに対し、甲1発明では、給水栓3を電磁バルブ16で開閉制御するものであって、上記のように特定されていない点。

(相違点2)
障害判定部による障害が発生しているか否かの判定について、本件発明1では、「前記複数の水栓装置のうち、栓部の開閉の制御を行った水栓装置を対象として、」「過負荷通知の受信に基づいて」行い、「前記制御部により送信された過負荷通知により障害が発生していると判定」することが特定されているのに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点。

(相違点3)
障害発生通知を水田管理者に対して行うことについて、本件発明1では、障害発生通知は「障害の発生した水栓装置の情報を含む」こと、及び、水田管理者は「用水管理システムの管理者と圃場主との少なくともいずれか」であることが特定されているのに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、まず、甲1発明において、上記ア(カ)の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるといえるか否かについて検討する。

(イ)上記(ア)について、相違事項1−2及び1−3は、相違事項1−1を前提とするものであるところ、相違事項1−1に最も関連すると認められる甲4技術事項について、まず検討する。
a 甲4技術事項の「主軸10」、「フロート弁5」は、それぞれ本件発明1の「軸部」、「栓部」に相当する。
また、甲4技術事項の「爪部51が螺旋ネジ50と係合している状態で、ハンドル85を回転して主軸10を回転させると主軸10は昇降し、この回転により主軸10を下降させると、主軸10下端がフロート弁5を下方に押して、フロート弁5は弁座3aより離れて止水状態が解除されて吐水され、ハンドル85の回転量により主軸10の下降量を調節でき、主軸10を下降させるほど吐水量を増加させることができ、吐水量を調節できる」ことは、主軸10を回転させると主軸10は昇降し、当該昇降に伴いフロート弁5の止水状態と吐水状態とが切り替えられることを意味するものであって、本件発明1の、栓部の開閉を「軸部を回転させることにより上下方向に移動させることで」行うことに相当する。
さらに、甲4技術事項の「弁座3a」は、「フロート弁5」が「離れて止水状態が解除されて吐水され」るものであるから、本件発明1の「用水が吐出される前記栓部の開口部」に相当する。よって、甲4技術事項の、回転させると昇降する主軸10であって「主軸10は、フロート弁5が配置される弁座3aの上方に位置」することは、本件発明1の「前記軸部は、用水が吐出される前記栓部の開口部上において回転しながら移動するように設けられて」いることに相当する。

b 上記aのとおり、甲4技術事項は、相違点1の相違事項1−1に係る本件発明1の構成のうち、栓駆動部による栓部の開閉を「軸部を回転させることにより上下方向に移動させることで」行い「前記軸部は、用水が吐出される前記栓部の開口部上において回転しながら移動するように設けられて」いることに相当する構成を具備している。

c しかしながら、甲1発明における栓部の開閉は、電磁バルブ16を遠隔操作で開閉制御するものであるのに対して、甲4技術事項における栓部の開閉は、ハンドル85の操作により吐水し(上記4(4)ア(イ)の段落【0028】参照。)、つまみ61の操作により設定時間後に止水する(上記4(4)ア(ウ)の段落【0030】参照。)ことにより行うものである。
そうすると、電磁的機構による弁の自動操作を前提とする甲1発明において、機械的機構による弁の手動操作を前提とする甲4技術事項の構成を適用することに、動機付けがあるとはいえない。

d また、仮に、甲1発明において、上記a及びbに示した甲4技術事項の構成を適用したとしても、上記cのとおり、ハンドル85及びつまみ61を手動操作することを前提とするもので、相違点1の相違事項1−1のうち軸部の回転が「モータの回転に応じて」いる点を具備するようにする動機付けもないから、当該相違事項1−1に係る構成に至るものとはいえない。

e そして、以上の判断は、上記dのとおり、甲1発明に甲4技術事項を適用する動機付けがない以上、給水栓の技術分野において、自動開閉装置を給水栓の駆動軸に取り付けてモータの回転により栓を駆動させることが、甲2技術事項及び甲3技術事項に照らして、本件出願前に周知の技術であったといえる(以下「周知技術1」という。)としても変わるものではない。

f 上記aないしeのとおり、相違点1の相違事項1−1が当業者が容易に想到し得たものとは認められないから、相違点1の相違事項1−2及び相違事項1−3について検討するまでもなく、甲1発明において、甲4技術事項の構成を適用し、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(ウ)補足的に、相違点1の相違事項1−2及び相違事項1−3も含めて検討する。
a 上記4の(2)及び(3)によれば、甲2技術事項及び甲3技術事項は、いずれも相違事項1−2に係る構成を具備しているといえる。

b 甲2技術事項の「トルクリミッターの仕様として開閉各3回のリトライ後停止し赤ランプ点灯」することは、トルクリミッターがトルクの過負荷防止を目的とすることに照らして、甲2技術事項の「操作パネルの異常ランプは、用水弁に異物などを噛み込んだ場合など過負荷が発生した際に点灯」すること、及び、「警報の仕様として過負荷の際に赤点灯」することと同一の事象であることは明らかである。そうすると、甲2技術事項の上記事項を合わせると、「用水弁に異物などを噛み込んだ場合など過負荷が発生した際に開閉各3回のリトライ後停止し異常ランプが赤点灯すること」を意味するといえる。
そして、甲2技術事項の上記「用水弁に異物などを噛み込んだ場合など過負荷が発生した際に開閉各3回のリトライ後停止し異常ランプが赤点灯すること」は、過負荷の発生を検出し、開閉各3回のリトライを行った後に、過負荷が解消しない場合に異常ランプが赤点灯することを意味するのは明らかであって、相違事項1−3のうち「過負荷の状態を検出するようにされ、」「前記過負荷の状態を解消するために栓部を開閉させる障害解消制御の後に再度過負荷の状態となったことに応じて過負荷通知」をすることに相当する。
甲5技術事項に照らして、水栓を駆動するモータの過負荷の検出を負荷電流値の監視に基づいて行うことは、本件出願前に周知の技術であったといえる。
そして、上記周知技術2の構成は、相違事項1−3のうち、過負荷の状態を「前記モータの負荷電流値に基づいて」検出することに相当する。

c 上記a及びbのとおり、甲2技術事項、甲3技術事項及び甲5技術事項には、相違点1の相違事項1−2及び相違事項1−3に係る構成が記載されているといえる。
しかしながら、上記(イ)dで検討したとおり、甲1発明において電磁バルブ16に換えて、甲4技術事項の水田バルブを適用する動機付けはなく、水田バルブの主軸10の回転を周知技術1のモータで行うものに変更する動機付けもないのであるから、甲1発明に甲4技術事項の水田バルブ、周知技術1のモータを採用したうえで、さらに、甲2技術事項、甲3技術事項及び甲5技術事項に係る構成を付加して、相違点1の相違事項1−1ないし相違事項1−3に係る構成とすることまでも、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

d 上記aないしcのとおりであるから、仮に甲1発明において甲4技術事項の構成を適用した上記(イ)dの場合であっても、甲1発明及び甲2技術事項ないし甲5技術事項に基づき、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

e 上記aないしdの検討について、甲6ないし甲8の記載事項を併せみても同様である。

ウ 小括
上記ア及びイを踏まえると、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2ないし8に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。

エ 申立人の主張について
申立人は、「甲第4号証には、主軸10が回転しながら上下方向に移動することで、水田バルブに供給される用水が吐出されるまでの流路に設けられたフロート弁5の開閉を駆動させる構成が記載されており、当該構成は、構成Bの「軸部を回転させることにより上下方向に移動させることで、当該水栓装置に供給される用水が吐出されるまでの流路に設けられる栓部の開閉を駆動する栓駆動部」に相当する。そして、甲第4号証に記載されたハンドル85に替えて、甲第3号証のモーター13で甲第4号証の主軸20を回転させることは容易に相当(当審注:「想到」の誤記と解した。)できる。このため、構成Bの「太陽電池と前記太陽電池の電力を蓄積する蓄電池とを備える電源部と、前記電源部から供給される電力によるモータの回転に応じて軸部を回転させることにより上下方向に移動させることで、当該水栓装置に供給される用水が吐出されるまでの流路に設けられる栓部の開閉を駆動する栓駆動部とを備え」との構成は、甲第2号証および(当審注:「ないし」の誤記と解した。)甲第4号証の記載から容易に想到することができる。・・・したがって、甲第1号証に記載された給水栓に、上記の甲第2号証および(当審注:「ないし」の誤記と解した。)甲第4号証の構成を適用して、構成Bに係る構成とすることは、容易になし得たことである。」(申立書第18頁第11行〜第19頁第3行)旨を主張している。
しかしながら、上記アないしウで検討したとおり、甲1発明において、甲2技術事項ないし甲5技術事項を適用し、上記ア(カ)の相違点1に係る構成(上記主張する構成Bを含む。)とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。

(2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加した発明であるから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2ないし4は、甲1発明及び甲2ないし8に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-12-16 
出願番号 P2020-136479
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A01G)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 長井 真一
田中 洋行
登録日 2021-03-18 
登録番号 6854957
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 用水管理装置  
代理人 大槻 真紀子  
代理人 西澤 和純  
代理人 山口 洋  
代理人 川越 雄一郎  
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