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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A21D
管理番号 1384220
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-06 
確定日 2022-02-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6859478号発明「ベーカリー製品用小麦粉、及びベーカリー製品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6859478号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6859478号の請求項1〜5に係る特許についての出願は、令和2年10月16日に出願され、令和3年3月29日にその特許権についての設定登録がされ、令和3年4月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年10月6日に特許異議申立人中嶋美奈子は特許異議の申立てを行った。

第2 本件特許発明
特許第6859478号の請求項1〜5の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
ドウ生地を用いるベーカリー製品を製造するための小麦粉であって、
アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉A、及びたん白質含量が12.5質量%以下の小麦の小麦粉Bを含み、
前記小麦粉Bが、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)、及び オーストラリア産のオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)、並びに日本産のきたほなみ、さとのそら、及びこれらの派生品種からなる群から選択される1種以上の小麦の小麦粉であり、
前記小麦粉Aの含有率が、60質量%以上であり、
前記小麦粉Bの含有率が、3〜30質量%であり、且つ
前記小麦粉Aと前記小麦粉Bの合計の含有率が、65〜100質量%であることを特徴とするベーカリー製品用小麦粉。
【請求項2】
前記小麦粉Bの含有率が、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉の場合は、3〜30質量%であり、オーストラリア産のオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)の小麦粉の場合は、5〜30質量%であり、日本産のきたほなみ、さとのそら、及びこれらの派生品種の小麦粉の場合は、5〜10質量%である請求項1に記載のベーカリー製品用小麦粉。
【請求項3】
ドウ生地を用いるベーカリー製品を製造するための小麦粉を含むミックスであって、
前記小麦粉が、請求項1又は2に記載のベーカリー製品用小麦粉であるベーカリー製品用ミックス。
【請求項4】
ベーカリー製品を製造するための小麦粉を含むドウ生地であって、
前記小麦粉が、請求項1又は2に記載のベーカリー製品用小麦粉であるベーカリー製品用生地。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のベーカリー製品用小麦粉、請求項3に記載のベーカリー製品用ミックス、又は請求項4に記載のベーカリー製品用生地を用いるベーカリー製品の製造方法。」
(以下、請求項順に、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、……、「本件特許発明5」ともいう。)

第3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、以下の甲第1号証〜甲第13号証を提出し、
理由ア:
請求項1〜5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1〜5号証のいずれかに記載された発明及び甲第6〜9号証に記載される当該分野の技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
理由イ:
請求項1〜5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第10号証に記載された発明及び甲第6〜9、11〜13号証に記載される当該分野の技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
と主張する。

甲第1号証:特開2004−73120号公報
甲第2号証:“ソフトフランス”,[online],クックパッド,レシピID:5940609,公開日:19/12/07,更新日:19/12/07,[令和3年9月15日検索],インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/5940609>
甲第3号証:“ザルツシュタンゲンのあんバターサンド”,[online],クックパッド,レシピID:3780321,公開日:16/03/31,更新日:16/03/31,[令和3年9月15日検索],インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/3780321>
甲第4号証:“つやピカチョコベーグル”,[online],クックパッド,レシピID:3378190,公開日:15/09/02,更新日:15/09/02,[令和3年9月15日検索],インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/3378190>
甲第5号証:“塩昆布Wチーズベーグル”,[online],クックパッド,レシピID:3055307,公開日:15/03/08,更新日:15/03/08,[令和3年9月15日検索],インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/3055307>
甲第6号証:竹内光司,「新しい製パン基礎知識(改訂版)」,平成18年4月12日,表紙、18〜23頁,奥付
甲第7号証:農林水産省,「麦の売渡価格決定等をめぐる状況」,平成17年12月
甲第8号証:藤井陽子 外2名,“わが国の小麦品種改良と試験地間スピルオーバーに関する分析−遺伝資源共有度からの接近−”,北海道大学農經論叢,第61号(2005年),pp.171-181
甲第9号証:“小麦・小麦粉の種類と用途”,[online],Wayback machineによる平成28年7月4日のインターネットアーカイブ,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20160704083504/http:/www.seifun.or.jp/kisochishiki/syuruitoyouto.html>
甲第10号証:“黒ごまフランク”,[online],クックパッド,レシピID:2652581,公開日:14/06/02,更新日:15/10/05,[令和3年9月13日検索],インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/2652581>
甲第11号証:“今日のテーマは「北海道の小麦」について”,[online],公益財団法人北海道学校給食会,[令和3年9月15日検索],インターネット<URL:https://hgk.or.jp/%E4%BB%8A%E6%97%A5%E3%81%AE%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%81%AF%E3%80%8C%E5%8C%97%E6%B5%B7%E9%81%93%E3%81%AE%E5%B0%8F%E9%BA%A6%E3%80%8D%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/>
甲第12号証:“小麦”,[online],茨城県営業戦略部販売流通課 茨城をたべよう,Wayback machineによる2020年10月1日のインターネットアーカイブ,[令和3年10月4日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20201001114610/https://www.ibaraki-shokusai.net/brand/wheat/>
甲第13号証:「麦の参考資料」,[online],Wayback machineによる令和2年9月28日のインターネットアーカイブ,[令和3年10月4日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20200928213132/https://www.maff.go.jp/j/seisan/boueki/mugi_zyukyuu/attach/pdf/index-91.pdf>
(以下、順に、「甲1」、「甲2」、……、「甲13」ともいう。)

第4 甲号証に記載された事項
1 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
(1)甲1に記載された事項
甲1には、以下の記載事項が記載されている。
記載事項(1−1)
「【0066】
実施例1
以下の配合と製法によりプリンパンを製造した。得られたプリンパンの製パン焼き込み用フィリングクリーム部分の表面は平らであった。得られたプリンパンを包丁でカットしたとき、包丁に水中油型乳化組成物Aを含有する製パン焼き込み用フィリングクリーム部分が付着することはなかった。
【0067】
<パン生地>
<生地配合> 準強力粉80重量部、薄力粉20重量部、イースト4重量部、イーストフード0.1重量部、上白糖15重量部、脱脂粉乳2重量部、食塩1.5重量部、練り込み用油脂(ショートニング)10重量部、全卵5重量部、水48重量部、ロールイン油脂40重量部
【0068】
<生地製法>ロールイン油脂と練り込み用油脂(ショートニング)以外の原料をミキサーボールに投入し、堅型ミキサー(関東ミキサー)を用いて低速3分、中速2分ミキシング後、練り込み用油脂を投入し、さらに低速2分、中速3分ミキシングした。得られた生地を、フロアタイム30分とった後、リタード庫にて2℃16時間リタードした。この生地にシート状ロールイン油脂を載置し、包み込み、3つ折り2回後リタード2℃1時間、さらに3つ折り1回後、生地厚5mmに最終圧延を行ない、これをパン生地とした。
【0069】
<製パン焼き込み用フィリングクリームA>
…(中略)…。
【0070】
<プリンパン製法>
パン生地を長さ100mm、幅100mmの正方形にカット成形し(55g)、上面最大直径105mm、底面最大直径50mm、深さ35mmの星型の窪みを有する展板に押し込んだ。この中に、製パン焼き込み用フィリングクリームAを40g絞り、35℃、相対湿度85%、60分のホイロ発酵後、200℃、18分間、オーブンで焼成し、室温で2時間冷却し、プリンパンを得た。」

記載事項(1−2)
「【0078】
実施例3
以下の配合と製法によりチーズプリンパンを製造した。得られたチーズプリンパンの製パン焼き込み用フィリングクリーム部分の表面は平らであった。得られたチーズプリンパンを包丁でカットしたとき、包丁に水中油型乳化組成物Bを含有する製パン焼き込み用フィリングクリーム部分が付着することはなかった。
【0079】
<パン生地>
<生地配合> 準強力粉80重量部、薄力粉20重量部、イースト4重量部、イーストフード0.1重量部、上白糖15重量部、脱脂粉乳2重量部、食塩1.5重量部、練り込み用油脂(ショートニング)10重量部、全卵5重量部、水48重量部、ロールイン油脂40重量部
【0080】
<生地製法>ロールイン油脂と練り込み用油脂(ショートニング)以外の原料をミキサーボールに投入し、堅型ミキサー(関東ミキサー)を用いて低速3分、中速2分ミキシング後、練り込み用油脂を投入し、さらに低速2分、中速3分ミキシングした。得られた生地を、フロアタイム30分とった後、リタード庫にて2℃16時間リタードした。この生地にシート状ロールイン油脂を載置し、包み込み、3つ折り2回後リタード2℃1時間、さらに3つ折り1回後、生地厚5mmに最終圧延を行ない、これをパン生地とした。
【0081】
<製パン焼き込み用フィリングクリームC>
…(中略)…。
【0082】
<チーズプリンパン製法>
パン生地を長さ100mm、100mmの正方形にカット成形し(55g)、上面最大直径105mm、底面最大直径50mm、深さ35mmの星型の窪みを有する展板に押し込んだ。この中に、製パン焼き込み用フィリングクリームCを40g絞り、35℃、相対湿度85%、60分のホイロ発酵後、200℃、18分間、オーブンで焼成し、室温で2時間冷却し、チーズプリンパンを得た。」

記載事項(1−3)
「【0083】
実施例4
以下の配合と製法によりチーズスフレパンを製造した。得られたチーズスフレパンの中詰めスフレ部分の表面は平らであった。得られたチーズスフレパンを包丁でカットしたとき、包丁に水中油型乳化組成物Bを含有する製パン焼き込み用フィリングクリーム部分が付着することはなかった。
【0084】
<パン生地>
<生地配合> 準強力粉80重量部、薄力粉20重量部、イースト4重量部、イーストフード0.1重量部、上白糖15重量部、脱脂粉乳2重量部、食塩1.5重量部、練り込み用油脂(ショートニング)10重量部、全卵5重量部、水48重量部、ロールイン油脂40重量部
【0085】
<生地製法>ロールイン油脂と練り込み用油脂(ショートニング)以外の原料をミキサーボールに投入し、堅型ミキサー(関東ミキサー)を用いて低速3分、中速2分ミキシング後、練り込み用油脂を投入し、さらに低速2分、中速3分ミキシングした。得られた生地を、フロアタイム30分とった後、リタード庫にて2℃16時間リタードした。この生地にシート状ロールイン油脂を載置し、包み込み、3つ折り2回後リタード2℃1時間、さらに3つ折り1回後、生地厚5mmに最終圧延を行ない、これをパン生地とした。
【0086】
<製パン焼き込み用フィリングクリームD>
…(中略)…。
【0087】
<チーズスフレパン製法>
パン生地を長さ100mm、100mmの正方形にカット成形し(55g)、上面最大直径105mm、底面最大直径50mm、深さ35mmの星型の窪みを有する展板に押し込んだ。この中に、製パン焼き込み用フィリングクリームDを40g絞り、35℃、相対湿度85%、60分のホイロ発酵後、200℃、18分間、オーブンで焼成し、室温で2時間冷却し、チーズスフレパンを得た。」

記載事項(1−4)
「【0088】
実施例5
以下の配合と製法によりグラタンパンを製造した。得られたグラタンパンの製パン焼き込み用フィリングクリーム部分の表面は平らであった。得られたグラタンパンを包丁でカットしたとき、包丁に水中油型乳化組成物Cを含有する製パン焼き込み用フィリングクリーム部分が付着することはなかった。
【0089】
<パン生地>
<生地配合> 準強力粉80重量部、薄力粉20重量部、イースト4重量部、イーストフード0.1重量部、上白糖15重量部、脱脂粉乳2重量部、食塩1.5重量部、練り込み用油脂(ショートニング)10重量部、全卵5重量部、水48重量部、ロールイン油脂40重量部
【0090】
<生地製法>ロールイン油脂と練り込み用油脂(ショートニング) 以外の原料をミキサーボールに投入し、堅型ミキサー(関東ミキサー)を用いて低速3分、中速2分ミキシング後、練り込み用油脂を投入し、さらに低速2分、中速3分ミキシングした。得られた生地を、フロアタイム30分とった後、リタード庫にて2℃16時間リタードした。この生地にシート状ロールイン油脂を載置し、包み込み、3つ折り2回後リタード 2℃1時間、さらに3つ折り1回後、生地厚5mmに最終圧延を行ない、これをパン生地とした。
【0091】
<製パン焼き込み用フィリングクリームE>
<ホワイトソース>
…(中略)…。
【0092】
<冷製グラタンフィリング>
…(中略)…。
【0093】
<グラタンパン製法>
パン生地を長さ100mm、100mmの正方形にカット成形し(55g)、上面最大直径105mm、底面最大直径50mm、深さ35mmの星型の窪みを有する展板に押し込んだ。この中に、製パン焼き込み用フィリングクリームEを40g絞り、35℃、相対湿度85%、60分のホイロ発酵後、200℃、18分間、オーブンで焼成し、室温で2時間冷却し、グラタンパンを得た。」

(2)甲1に記載された発明
記載事項(1−1)〜記載事項(1−4)に記載された「パン生地」はいずれも「ドウ生地」であるから、記載事項(1−1)〜記載事項(1−4)より、甲1には以下の発明が記載されていると認める。
「ドウ生地を用いる、プリンパン、チーズプリンパン、チーズスフレパン、又はグラタンパンを製造するための小麦粉であって、準強力粉80重量部及び薄力粉20重量部からなる、プリンパン、チーズプリンパン、チーズスフレパン、又はグラタンパン用小麦粉。」の発明(以下、「甲1発明」という。)

2 甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明
(1)甲2に記載された事項
甲2には、以下の記載事項が記載されている。
記載事項(2)




(2)甲2に記載された発明
記載事項(2)に記載された「作り方」の1〜2で得られるものは「ドウ生地」であるから、記載事項(2)より、甲2には以下の発明が記載されていると認める。
「ドウ生地を用いる、ソフトフランスを製造するための小麦粉であって、準強力粉180g及び薄力粉20gからなる、ソフトフランス用小麦粉。」の発明(以下、「甲2発明」という。)

3 甲3に記載された事項及び甲3に記載された発明
(1)甲3に記載された事項
甲3には、以下の記載事項が記載されている。
記載事項(3)




(2)甲3に記載された発明
記載事項(3)に記載された「作り方」の1で得られるものは「ドウ生地」であるから、記載事項(3)より、甲3には以下の発明が記載されていると認める。
「ドウ生地を用いる、ザルツシュタンゲンのあんバターサンドを製造するための小麦粉であって、準強力粉180g及び薄力粉20gからなる、ザルツシュタンゲンのあんバターサンド用小麦粉。」の発明(以下、「甲3発明」という。)

4 甲4に記載された事項及び甲4に記載された発明
(1)甲4に記載された事項
甲4には、以下の記載事項が記載されている。
記載事項(4)





(2)甲4に記載された発明
記載事項(4)に記載された「作り方」の1で得られるものは「ドウ生地」であるから、記載事項(4)より、甲4には以下の発明が記載されていると認める。
「ドウ生地を用いる、つやピカチョコベーグルを製造するための小麦粉であって、準強力粉200g及び薄力粉50gからなる、つやピカチョコベーグル小麦粉。」の発明(以下、「甲4発明」という。)

5 甲5に記載された事項及び甲5に記載された発明
(1)甲5に記載された事項
甲5には、以下の記載事項が記載されている。
記載事項(5)




(2)甲5に記載された発明
記載事項(5)に記載された「作り方」の1で得られるものは「ドウ生地」であるから、記載事項(5)より、甲5には以下の発明が記載されていると認める。
「ドウ生地を用いる、塩昆布Wチーズベーグルを製造するための小麦粉であって、準強力粉250g及び薄力粉50gからなる、塩昆布Wチーズベーグル用小麦粉。」の発明(以下、「甲5発明」という。)

6 甲6に記載された事項
甲6には、以下の記載事項が記載されている。
記載事項(6)


」(21頁最上段)

7 甲7に記載された事項
甲7には、以下の記載事項が記載されている。
記載事項(7)


」(8頁)

8 甲8に記載された事項
甲8には、以下の記載事項が記載されている。
記載事項(8)


」(174頁)

9 甲9に記載された事項
甲9には、以下の記載事項が記載されている。
記載事項(9)




10 甲10の記載された事項及び甲10に記載された発明
(1)甲10に記載された事項
甲10には、以下の記載事項が記載されている。
記載事項(10)





(2)甲10に記載された発明
記載事項(10)に記載された「作り方」の1で得られるものは「ドウ生地」であるから、記載事項(10)より、甲10には以下の発明が記載されていると認める。
「ドウ生地を用いる、黒ごまフランクを製造するための小麦粉であって、準強力粉120g、中力粉24g及び強力粉16gからなる、黒ごまフランク用小麦粉。」の発明(以下、「甲10発明」という。)

11 甲11に記載された事項
甲11には、以下の記載事項が記載されている。
記載事項(11)


」(表題下)

12 甲12に記載された事項
甲12には、以下の記載事項が記載されている。
記載事項(12)


」(表題下)

13 甲13に記載された事項
甲13には、以下の記載事項が記載されている。
記載事項(13−1)


」(7頁右欄)

記載事項(13−2)


」(19頁右欄)

第5 当審の判断
1 理由ア(進歩性欠如)について
(1)本件特許発明1
ア 甲1発明及び甲6〜甲9に記載される当該技術分野の技術常識に基づく進歩性の検討
上記第4 1(2)に示したとおり、甲1発明は、
「ドウ生地を用いる、プリンパン、チーズプリンパン、チーズスフレパン、又はグラタンパンを製造するための小麦粉であって、準強力粉80重量部及び薄力粉20重量部からなる、プリンパン、チーズプリンパン、チーズスフレパン、又はグラタンパン用小麦粉。」の発明である。

本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
プリンパン、チーズプリンパン、チーズスフレパン、グラタンパンは、いずれもベーカリー製品であるから、両者は、
「ドウ生地を用いるベーカリー製品を製造するための小麦粉である、ベーカリー製品用小麦粉。」である点で一致し、
小麦粉の特定が、
本件特許発明1では
「アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉A、及びたん白質含量が12.5質量%以下の小麦の小麦粉Bを含み、
前記小麦粉Bが、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)、及び オーストラリア産のオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)、並びに日本産のきたほなみ、さとのそら、及びこれらの派生品種からなる群から選択される1種以上の小麦の小麦粉であり、
前記小麦粉Aの含有率が、60質量%以上であり、
前記小麦粉Bの含有率が、3〜30質量%であり、且つ
前記小麦粉Aと前記小麦粉Bの合計の含有率が、65〜100質量%である」とされる一方、
甲1発明では、
「準強力粉80重量部及び薄力粉20重量部からなる」とされる点で相違する。

記載事項(6)〜記載事項(9)より、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉は、準強力粉の原料となる銘柄であり、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉は、薄力粉の原料となる銘柄であると認められる。
しかし、記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲6〜甲9の記載を検討しても、準強力粉の原料となる銘柄であるアメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉が単独でも準強力粉であるといえる根拠、及び、薄力粉の原料となる銘柄であるアメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉が単独でも薄力粉であるといえる根拠を見出すことはできない。
そればかりか、製粉協会,“小麦粉への原料原産地表示適用の「実施不可能性」について”,平成28年4月,「令和4年1月31日検索],インターネット<URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/160427_takihara.pdf>の3頁には、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉の蛋白値が11.3〜13.8%(平均12.1%)であり、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉の蛋白値が8.6〜11.4%(平均10.4%)であることが記載されている。
また、農林水産省,“輸入小麦の政府売渡価格について(価格公表添付資料)”,平成27年2月,[令和4年1月31日検索],インターネット<URL:https://www.maff.go.jp/j/press/seisan/boeki/pdf/150226-01.pdf>の5頁には、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉を構成する銘柄のタンパク含有率として、9.7〜11.1%の値が記載されている。
これらの記載と、強力粉のたん白質含量は11.5〜13.5%、準強力粉のたん白質含量は10.5〜12.0%、中力粉のたん白質含量は8.0〜10.5%、薄力粉のたん白質含量は6.5〜8.5%であることを示す記載事項(6)の記載から、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉は単独では強力粉〜準強力粉に該当し、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉は単独では準強力粉〜中力粉に該当するといえる。
記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲6〜甲9の記載を検討しても、当業界において、強力粉〜準強力粉に該当する小麦粉を「準強力粉」として用いることが技術常識であるとはいえず、準強力粉〜中力粉に該当する小麦粉を「薄力粉」として用いることが技術常識であるとはいえず、また、甲1発明における小麦粉を構成する「準強力粉」に代えて、強力粉〜準強力粉に該当するアメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉を用いるとともに、「薄力粉」に代えて、準強力粉〜中力粉に該当するアメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉を用いる動機付けを見出すことはできない。
また、記載事項(1−1)〜記載事項(1−4)及び記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲1及び甲6〜甲9の記載を検討しても、甲1発明において「準強力粉80重量部及び薄力粉20重量部からなる」とされる小麦粉に代えて、小麦銘柄で特定される小麦粉並びにたん白質含量及び小麦銘柄で特定される小麦粉を特定の含有率及び特定合計含有率で含む本件特許発明1における小麦粉を用いる動機付けを見出すことはできない。
したがって、甲1発明における「準強力粉80重量部及び薄力粉20重量部からなる」とされる小麦粉に代えて、本件特許発明1における、小麦銘柄で特定される小麦粉並びにたん白質含量及び小麦銘柄で特定される小麦粉を特定の含有率及び特定合計含有率で含む小麦粉を用いることを、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

そして、本件特許発明1は、本件特許明細書(特に、発明の詳細な説明の段落0008〜段落0009及び段落0018〜段落0024)に記載されるとおり、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉を主体的に含んでいても、良好な製パン性で、良好な品質のベーカリー製品を製造することができるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。

以上により、本件特許発明1は、甲1発明及び甲6〜9に記載される当該分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 甲2発明及び甲6〜甲9に記載される当該技術分野の技術常識に基づく進歩性の検討
上記第4 2(2)に示したとおり、甲2発明は、
「ドウ生地を用いる、ソフトフランスを製造するための小麦粉であって、準強力粉180g及び薄力粉20gからなる、ソフトフランス用小麦粉。」の発明である。

本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
ソフトフランスは、ベーカリー製品であるから、両者は、
「ドウ生地を用いるベーカリー製品を製造するための小麦粉である、ベーカリー製品用小麦粉。」である点で一致し、
小麦粉の特定が、
本件特許発明1では
「アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉A、及びたん白質含量が12.5質量%以下の小麦の小麦粉Bを含み、
前記小麦粉Bが、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)、及び オーストラリア産のオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)、並びに日本産のきたほなみ、さとのそら、及びこれらの派生品種からなる群から選択される1種以上の小麦の小麦粉であり、
前記小麦粉Aの含有率が、60質量%以上であり、
前記小麦粉Bの含有率が、3〜30質量%であり、且つ
前記小麦粉Aと前記小麦粉Bの合計の含有率が、65〜100質量%である」とされる一方、
甲2発明では、
「準強力粉180g及び薄力粉20gからなる」とされる点で相違する。

記載事項(6)〜記載事項(9)より、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉は、準強力粉の原料となる銘柄であり、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉は、薄力粉の原料となる銘柄であると認められる。
しかし、記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲6〜甲9の記載を検討しても、準強力粉の原料となる銘柄であるアメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉が単独でも準強力粉であるといえる根拠、及び、薄力粉の原料となる銘柄であるアメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉が単独でも薄力粉であるといえる根拠を見出すことはできない。
そればかりか、製粉協会,“小麦粉への原料原産地表示適用の「実施不可能性」について”,平成28年4月,「令和4年1月31日検索],インターネット<URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/160427_takihara.pdf>の3頁には、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉の蛋白値が11.3〜13.8%(平均12.1%)であり、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉の蛋白値が8.6〜11.4%(平均10.4%)であることが記載されている。
また、農林水産省,“輸入小麦の政府売渡価格について(価格公表添付資料)”,平成27年2月,[令和4年1月31日検索],インターネット<URL:https://www.maff.go.jp/j/press/seisan/boeki/pdf/150226-01.pdf>の5頁には、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉を構成する銘柄のタンパク含有率として、9.7〜11.1%の値が記載されている。
これらの記載と、強力粉のたん白質含量は11.5〜13.5%、準強力粉のたん白質含量は10.5〜12.0%、中力粉のたん白質含量は8.0〜10.5%、薄力粉のたん白質含量は6.5〜8.5%であることを示す記載事項(6)の記載から、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉は単独では強力粉〜準強力粉に該当し、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉は単独では準強力粉〜中力粉に該当するといえる。
記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲6〜甲9の記載を検討しても、当業界において、強力粉〜準強力粉に該当する小麦粉を「準強力粉」として用いることが技術常識であるとはいえず、準強力粉〜中力粉に該当する小麦粉を「薄力粉」として用いることが技術常識であるとはいえず、また、甲2発明における小麦粉を構成する「準強力粉」に代えて、強力粉〜準強力粉に該当するアメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉を用いるとともに、「薄力粉」に代えて、準強力粉〜中力粉に該当するアメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉を用いる動機付けを見出すことはできない。
また、記載事項(2)及び記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲2及び甲6〜甲9の記載を検討しても、甲2発明において「準強力粉180g及び薄力粉20gからなる」とされる小麦粉に代えて、小麦銘柄で特定される小麦粉並びにたん白質含量及び小麦銘柄で特定される小麦粉を特定の含有率及び特定合計含有率で含む本件特許発明1における小麦粉を用いる動機付けを見出すことはできない。
したがって、甲2発明における「準強力粉80重量部及び薄力粉20重量部からなる」とされる小麦粉に代えて、本件特許発明1における、小麦銘柄で特定される小麦粉並びにたん白質含量及び小麦銘柄で特定される小麦粉を特定の含有率及び特定合計含有率で含む小麦粉を用いることを、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

そして、本件特許発明1は、本件特許明細書(特に、発明の詳細な説明の段落0008〜段落0009及び段落0018〜段落0024)に記載されるとおり、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉を主体的に含んでいても、良好な製パン性で、良好な品質のベーカリー製品を製造することができるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。

以上により、本件特許発明1は、甲2発明及び甲6〜9に記載される当該分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 甲3発明及び甲6〜甲9に記載される当該技術分野の技術常識に基づく進歩性の検討
上記第4 3(2)に示したとおり、甲3発明は、
「ドウ生地を用いる、ザルツシュタンゲンのあんバターサンドを製造するための小麦粉であって、準強力粉180g及び薄力粉20gからなる、ザルツシュタンゲンのあんバターサンド用小麦粉。」の発明である。

本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
ザルツシュタンゲンのあんバターサンドは、ベーカリー製品であるから、両者は、
「ドウ生地を用いるベーカリー製品を製造するための小麦粉である、ベーカリー製品用小麦粉。」である点で一致し、
小麦粉の特定が、
本件特許発明1では
「アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉A、及びたん白質含量が12.5質量%以下の小麦の小麦粉Bを含み、
前記小麦粉Bが、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)、及び オーストラリア産のオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)、並びに日本産のきたほなみ、さとのそら、及びこれらの派生品種からなる群から選択される1種以上の小麦の小麦粉であり、
前記小麦粉Aの含有率が、60質量%以上であり、
前記小麦粉Bの含有率が、3〜30質量%であり、且つ
前記小麦粉Aと前記小麦粉Bの合計の含有率が、65〜100質量%である」とされる一方、
甲3発明では、
「準強力粉180g及び薄力粉20gからなる」とされる点で相違する。

記載事項(6)〜記載事項(9)より、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉は、準強力粉の原料となる銘柄であり、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉は、薄力粉の原料となる銘柄であると認められる。
しかし、記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲6〜甲9の記載を検討しても、準強力粉の原料となる銘柄であるアメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉が単独でも準強力粉であるといえる根拠、及び、薄力粉の原料となる銘柄であるアメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉が単独でも薄力粉であるといえる根拠を見出すことはできない。
そればかりか、製粉協会,“小麦粉への原料原産地表示適用の「実施不可能性」について”,平成28年4月,「令和4年1月31日検索],インターネット<URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/160427_takihara.pdf>の3頁には、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉の蛋白値が11.3〜13.8%(平均12.1%)であり、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉の蛋白値が8.6〜11.4%(平均10.4%)であることが記載されている。
また、農林水産省,“輸入小麦の政府売渡価格について(価格公表添付資料)”,平成27年2月,[令和4年1月31日検索],インターネット<URL:https://www.maff.go.jp/j/press/seisan/boeki/pdf/150226-01.pdf>の5頁には、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉を構成する銘柄のタンパク含有率として、9.7〜11.1%の値が記載されている。
これらの記載と、強力粉のたん白質含量は11.5〜13.5%、準強力粉のたん白質含量は10.5〜12.0%、中力粉のたん白質含量は8.0〜10.5%、薄力粉のたん白質含量は6.5〜8.5%であることを示す記載事項(6)の記載から、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉は単独では強力粉〜準強力粉に該当し、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉は単独では準強力粉〜中力粉に該当するといえる。
記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲6〜甲9の記載を検討しても、当業界において、強力粉〜準強力粉に該当する小麦粉を「準強力粉」として用いることが技術常識であるとはいえず、準強力粉〜中力粉に該当する小麦粉を「薄力粉」として用いることが技術常識であるとはいえず、また、甲3発明における小麦粉を構成する「準強力粉」に代えて、強力粉〜準強力粉に該当するアメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉を用いるとともに、「薄力粉」に代えて、準強力粉〜中力粉に該当するアメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉を用いる動機付けを見出すことはできない。
また、記載事項(3)及び記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲3及び甲6〜甲9の記載を検討しても、甲3発明において「準強力粉180g及び薄力粉20gからなる」とされる小麦粉に代えて、小麦銘柄で特定される小麦粉並びにたん白質含量及び小麦銘柄で特定される小麦粉を特定の含有率及び特定合計含有率で含む本件特許発明1における小麦粉を用いる動機付けを見出すことはできない。
したがって、甲3発明における「準強力粉180g及び薄力粉20gからなる」とされる小麦粉に代えて、本件特許発明1における、小麦銘柄で特定される小麦粉並びにたん白質含量及び小麦銘柄で特定される小麦粉を特定の含有率及び特定合計含有率で含む小麦粉を用いることを、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

そして、本件特許発明1は、本件特許明細書(特に、発明の詳細な説明の段落0008〜段落0009及び段落0018〜段落0024)に記載されるとおり、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉を主体的に含んでいても、良好な製パン性で、良好な品質のベーカリー製品を製造することができるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。

以上により、本件特許発明1は、甲3発明及び甲6〜9に記載される当該分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 甲4発明及び甲6〜甲9に記載される当該技術分野の技術常識に基づく進歩性の検討
上記第4 4(2)に示したとおり、甲4発明は、
「ドウ生地を用いる、つやピカチョコベーグルを製造するための小麦粉であって、準強力粉200g及び薄力粉50gからなる、つやピカチョコベーグル小麦粉。」の発明である。

本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
つやピカチョコベーグルは、ベーカリー製品であるから、両者は、
「ドウ生地を用いるベーカリー製品を製造するための小麦粉である、ベーカリー製品用小麦粉。」である点で一致し、
小麦粉の特定が、
本件特許発明1では
「アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉A、及びたん白質含量が12.5質量%以下の小麦の小麦粉Bを含み、
前記小麦粉Bが、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)、及び オーストラリア産のオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)、並びに日本産のきたほなみ、さとのそら、及びこれらの派生品種からなる群から選択される1種以上の小麦の小麦粉であり、
前記小麦粉Aの含有率が、60質量%以上であり、
前記小麦粉Bの含有率が、3〜30質量%であり、且つ
前記小麦粉Aと前記小麦粉Bの合計の含有率が、65〜100質量%である」とされる一方、
甲4発明では、
「準強力粉200g及び薄力粉50gからなる」とされる点で相違する。

記載事項(6)〜記載事項(9)より、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉は、準強力粉の原料となる銘柄であり、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉は、薄力粉の原料となる銘柄であると認められる。
しかし、記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲6〜甲9の記載を検討しても、準強力粉の原料となる銘柄であるアメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉が単独でも準強力粉であるといえる根拠、及び、薄力粉の原料となる銘柄であるアメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉が単独でも薄力粉であるといえる根拠を見出すことはできない。
そればかりか、製粉協会,“小麦粉への原料原産地表示適用の「実施不可能性」について”,平成28年4月,「令和4年1月31日検索],インターネット<URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/160427_takihara.pdf>の3頁には、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉の蛋白値が11.3〜13.8%(平均12.1%)であり、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉の蛋白値が8.6〜11.4%(平均10.4%)であることが記載されている。
また、農林水産省,“輸入小麦の政府売渡価格について(価格公表添付資料)”,平成27年2月,[令和4年1月31日検索],インターネット<URL:https://www.maff.go.jp/j/press/seisan/boeki/pdf/150226-01.pdf>の5頁には、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉を構成する銘柄のタンパク含有率として、9.7〜11.1%の値が記載されている。
これらの記載と、強力粉のたん白質含量は11.5〜13.5%、準強力粉のたん白質含量は10.5〜12.0%、中力粉のたん白質含量は8.0〜10.5%、薄力粉のたん白質含量は6.5〜8.5%であることを示す記載事項(6)の記載から、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉は単独では強力粉〜準強力粉に該当し、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉は単独では準強力粉〜中力粉に該当するといえる。
記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲6〜甲9の記載を検討しても、当業界において、強力粉〜準強力粉に該当する小麦粉を「準強力粉」として用いることが技術常識であるとはいえず、準強力粉〜中力粉に該当する小麦粉を「薄力粉」として用いることが技術常識であるとはいえず、また、甲4発明における小麦粉を構成する「準強力粉」に代えて、強力粉〜準強力粉に該当するアメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉を用いるとともに、「薄力粉」に代えて、準強力粉〜中力粉に該当するアメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉を用いる動機付けを見出すことはできない。
また、記載事項(4)及び記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲4及び甲6〜甲9の記載を検討しても、甲4発明において「準強力粉200g及び薄力粉50gからなる」とされる小麦粉に代えて、小麦銘柄で特定される小麦粉並びにたん白質含量及び小麦銘柄で特定される小麦粉を特定の含有率及び特定合計含有率で含む本件特許発明1における小麦粉を用いる動機付けを見出すことはできない。
したがって、甲4発明における「準強力粉200g及び薄力粉50gからなる」とされる小麦粉に代えて、本件特許発明1における、小麦銘柄で特定される小麦粉並びにたん白質含量及び小麦銘柄で特定される小麦粉を特定の含有率及び特定合計含有率で含む小麦粉を用いることを、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

そして、本件特許発明1は、本件特許明細書(特に、発明の詳細な説明の段落0008〜段落0009及び段落0018〜段落0024)に記載されるとおり、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉を主体的に含んでいても、良好な製パン性で、良好な品質のベーカリー製品を製造することができるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。

以上により、本件特許発明1は、甲4発明及び甲6〜9に記載される当該分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 甲5発明及び甲6〜甲9に記載される当該技術分野の技術常識に基づく進歩性の検討
上記第4 5(2)に示したとおり、甲5発明は、
「ドウ生地を用いる、塩昆布Wチーズベーグルを製造するための小麦粉であって、準強力粉250g及び薄力粉50gからなる、塩昆布Wチーズベーグル用小麦粉。」の発明である。

本件特許発明1と甲5発明とを対比する。
塩昆布Wチーズベーグルは、ベーカリー製品であるから、両者は、
「ドウ生地を用いるベーカリー製品を製造するための小麦粉である、ベーカリー製品用小麦粉。」である点で一致し、
小麦粉の特定が、
本件特許発明1では
「アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉A、及びたん白質含量が12.5質量%以下の小麦の小麦粉Bを含み、
前記小麦粉Bが、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)、及び オーストラリア産のオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)、並びに日本産のきたほなみ、さとのそら、及びこれらの派生品種からなる群から選択される1種以上の小麦の小麦粉であり、
前記小麦粉Aの含有率が、60質量%以上であり、
前記小麦粉Bの含有率が、3〜30質量%であり、且つ
前記小麦粉Aと前記小麦粉Bの合計の含有率が、65〜100質量%である」とされる一方、
甲5発明では、
「準強力粉250g及び薄力粉50gからなる」とされる点で相違する。

記載事項(6)〜記載事項(9)より、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉は、準強力粉の原料となる銘柄であり、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉は、薄力粉の原料となる銘柄であると認められる。
しかし、記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲6〜甲9の記載を検討しても、準強力粉の原料となる銘柄であるアメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉が単独でも準強力粉であるといえる根拠、及び、薄力粉の原料となる銘柄であるアメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉が単独でも薄力粉であるといえる根拠を見出すことはできない。
そればかりか、製粉協会,“小麦粉への原料原産地表示適用の「実施不可能性」について”,平成28年4月,「令和4年1月31日検索],インターネット<URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/160427_takihara.pdf>の3頁には、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉の蛋白値が11.3〜13.8%(平均12.1%)であり、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉の蛋白値が8.6〜11.4%(平均10.4%)であることが記載されている。
また、農林水産省,“輸入小麦の政府売渡価格について(価格公表添付資料)”,平成27年2月,[令和4年1月31日検索],インターネット<URL:https://www.maff.go.jp/j/press/seisan/boeki/pdf/150226-01.pdf>の5頁には、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉を構成する銘柄のタンパク含有率として、9.7〜11.1%の値が記載されている。
これらの記載と、強力粉のたん白質含量は11.5〜13.5%、準強力粉のたん白質含量は10.5〜12.0%、中力粉のたん白質含量は8.0〜10.5%、薄力粉のたん白質含量は6.5〜8.5%であることを示す記載事項(6)の記載から、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉は単独では強力粉〜準強力粉に該当し、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉は単独では準強力粉〜中力粉に該当するといえる。
記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲6〜甲9の記載を検討しても、当業界において、強力粉〜準強力粉に該当する小麦粉を「準強力粉」として用いることが技術常識であるとはいえず、準強力粉〜中力粉に該当する小麦粉を「薄力粉」として用いることが技術常識であるとはいえず、また、甲5発明における小麦粉を構成する「準強力粉」に代えて、強力粉〜準強力粉に該当するアメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉を用いるとともに、「薄力粉」に代えて、準強力粉〜中力粉に該当するアメリカ産のウェスタンホワイト(WW)の小麦粉を用いる動機付けを見出すことはできない。
また、記載事項(5)及び記載事項(6)〜記載事項(9)を含む甲5及び甲6〜甲9の記載を検討しても、甲5発明において「準強力粉200g及び薄力粉50gからなる」とされる小麦粉に代えて、小麦銘柄で特定される小麦粉並びにたん白質含量及び小麦銘柄で特定される小麦粉を特定の含有率及び特定合計含有率で含む本件特許発明1における小麦粉を用いる動機付けを見出すことはできない。
したがって、甲5発明における「準強力粉200g及び薄力粉50gからなる」とされる小麦粉に代えて、本件特許発明1における、小麦銘柄で特定される小麦粉並びにたん白質含量及び小麦銘柄で特定される小麦粉を特定の含有率及び特定合計含有率で含む小麦粉を用いることを、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

そして、本件特許発明1は、本件特許明細書(特に、発明の詳細な説明の段落0008〜段落0009及び段落0018〜段落0024)に記載されるとおり、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉を主体的に含んでいても、良好な製パン性で、良好な品質のベーカリー製品を製造することができるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。

以上により、本件特許発明1は、甲5発明及び甲6〜9に記載される当該分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

カ 小括
以上ア〜オに示したとおり、本件特許発明1は、甲1発明〜甲5発明のいずれか及び甲6〜9に記載される当該分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2〜5
上記(1)に示したとおり、本件特許発明1が、甲1発明〜甲5発明のいずれか及び甲6〜甲9に記載される当該技術分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明1の発明特定事項すべてを含む本件特許発明2〜5もまた、甲1発明〜甲5発明のいずれか及び甲6〜甲9に記載される当該技術分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)小括
以上(1)〜(2)に示したとおり、本件特許発明1〜5は、甲1発明〜甲5発明のいずれか及び甲6〜9に記載される当該分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 理由イ(進歩性欠如)について
(1)本件特許発明1
上記第4 10(2)に示したとおり、甲10発明は、
「ドウ生地を用いる、黒ごまフランクを製造するための小麦粉であって、準強力粉120g、中力粉24g及び強力粉16gからなる、黒ごまフランク用小麦粉。」の発明である。

本件特許発明1と甲10発明とを対比する。
黒ごまフランクは、ベーカリー製品であるから、両者は、
「ドウ生地を用いるベーカリー製品を製造するための小麦粉である、ベーカリー製品用小麦粉。」である点で一致し、
小麦粉の特定が、
本件特許発明1では
「アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉A、及びたん白質含量が12.5質量%以下の小麦の小麦粉Bを含み、
前記小麦粉Bが、アメリカ産のウェスタンホワイト(WW)、及び オーストラリア産のオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)、並びに日本産のきたほなみ、さとのそら、及びこれらの派生品種からなる群から選択される1種以上の小麦の小麦粉であり、
前記小麦粉Aの含有率が、60質量%以上であり、
前記小麦粉Bの含有率が、3〜30質量%であり、且つ
前記小麦粉Aと前記小麦粉Bの合計の含有率が、65〜100質量%である」とされる一方、
甲10発明では、
「準強力粉120g、中力粉24g及び強力粉16gからなる」とされる点で相違する。

記載事項(6)〜記載事項(9)より、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉は、準強力粉の原料となる銘柄であると認められる。
記載事項(6)、記載事項(9)及び記載事項(13−1)より、オーストラリア産のオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)の小麦粉が、年間輸入量が723〜797千トン程度の、中力粉の原料となる銘柄であると認められる。
記載事項(6)及び記載事項(9)より、国内産の小麦粉が、中力粉の原料となるものであると認められ、記載事項(11)及び記載事項(13−2)より、日本産のきたほなみの小麦粉は、作付け面積割合が42%程度である、中力粉の原料となる銘柄であると認められ、記載事項(12)及び記載事項(13−1)より、国内産のさとのそらの小麦粉は、作付け面積割合が7%程度である、中力粉の原料となる銘柄であると認められる。

しかし、記載事項(6)〜記載事項(13−2)を含む甲6〜甲9及び甲11〜甲13の記載を検討しても、準強力粉の原料となる銘柄であるアメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉が単独でも準強力粉であるといえる根拠、及び、中力粉の原料となる銘柄であるオーストラリア産のオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)の小麦粉、日本産のきたほなみの小麦粉、日本産のさとのさらの小麦粉が、それぞれ単独でも中力粉であるといえる根拠を見出すことはできない。
そればかりか、製粉協会,“小麦粉への原料原産地表示適用の「実施不可能性」について”,平成28年4月,「令和4年1月31日検索],インターネット<URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/160427_takihara.pdf>の3頁には、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉の蛋白値が11.3〜13.8%(平均12.1%)であり、オーストラリア産のオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)の小麦粉の蛋白値が9.8〜11.9%(平均10.8%)であり、日本産のきたほなみの小麦粉の蛋白値が9.3〜15.0%(平均11.5%)であることが記載されている。
これらの記載と、強力粉のたん白質含量は11.5〜13.5%、準強力粉のたん白質含量は10.5〜12.0%、中力粉のたん白質含量は8.0〜10.5%、薄力粉のたん白質含量は6.5〜8.5%であることを示す記載事項(6)の記載から、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉は単独では強力粉〜準強力粉に該当し、オーストラリア産のオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)の小麦粉及び日本産のきたほなみの小麦粉は準強力粉〜中力粉に該当するといえる。
記載事項(6)〜記載事項(9)及び記載事項(11)〜記載事項(13−2)を含む甲6〜甲9及び甲11〜甲13の記載を検討しても、当業界において、強力粉〜準強力粉に該当する小麦粉を「準強力粉」として用いることが技術常識であるとはいえず、準強力粉〜中力粉に該当する小麦粉を「中力粉」として用いることが技術常識であるとはいえず、中力粉の原料となる銘柄の小麦粉が単独で「中力粉」に該当するものとはいえなくても、それを「中力粉」として用いることが技術常識であるとはいえず、また、甲10発明における小麦粉を構成する「準強力粉」に代えて、強力粉〜準強力粉に該当するアメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉を用いるとともに、「中力粉」に代えて、準強力粉〜中力粉に該当するオーストラリア産のオーストラリアン・スタンダード・ホワイト(ASW)の小麦粉又は日本産のきたほなみの小麦粉、あるいは「中力粉」に該当するものとはいえない日本産のさとのそらの小麦粉を用いる動機付けを見出すことはできない。
また、記載事項(10)並びに記載事項(6)〜記載事項(9)及び記載事項(11)〜記載事項(13−2)を含む甲10並びに甲6〜甲9及び甲11〜甲13の記載を検討しても、甲10発明において「準強力粉120g、中力粉24g及び強力粉16gからなる」とされる小麦粉に代えて、小麦銘柄で特定される小麦粉並びにたん白質含量及び小麦銘柄で特定される小麦粉を特定の含有率及び特定合計含有率で含む本件特許発明1における小麦粉を用いる動機付けを見出すことはできない。
したがって、甲10発明における「準強力粉120g、中力粉24g及び強力粉16gからなる」とされる小麦粉に代えて、本件特許発明1における、小麦銘柄で特定される小麦粉並びにたん白質含量及び小麦銘柄で特定される小麦粉を特定の含有率及び特定合計含有率で含む小麦粉を用いることを、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

そして、本件特許発明1は、本件特許明細書(特に、発明の詳細な説明の段落0008〜段落0009及び段落0018〜段落0024)に記載されるとおり、アメリカ産のハード・レッド・ウィンター(HRW)の小麦粉を主体的に含んでいても、良好な製パン性で、良好な品質のベーカリー製品を製造することができるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。

以上により、本件特許発明1は、甲10発明並びに甲6〜9及び甲11〜甲13に記載される当該分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2〜5
上記(1)に示したとおり、本件特許発明1が、甲10発明及び甲6〜甲9、甲11〜13に記載される当該技術分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明1の発明特定事項すべてを含む本件特許発明2〜5もまた、甲10発明及び甲6〜甲9、甲11〜13に記載される当該技術分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)小括
以上(1)〜(2)に示したとおり、本件特許発明1〜本件特許発明5は、本件特許の出願前に頒布された甲10発明及び甲6〜甲9、甲11〜甲13に記載される当該分野の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 まとめ
上記1及び2に示したとおり、本件特許発明1〜本件特許発明5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号により取り消されるべきものではない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1〜本件特許発明5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1〜本件特許発明5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-02-07 
出願番号 P2020-174492
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A21D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 村上 騎見高
齊藤 真由美
登録日 2021-03-29 
登録番号 6859478
権利者 昭和産業株式会社
発明の名称 ベーカリー製品用小麦粉、及びベーカリー製品の製造方法  
代理人 野村 悟郎  

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