ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B65D |
---|---|
管理番号 | 1384224 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-10-08 |
確定日 | 2022-02-01 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6857326号発明「袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6857326号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6857326号の請求項1〜10に係る特許についての出願は、平成29年2月10日(優先権主張 平成28年7月27日)に出願され、令和3年3月24日にその特許権の設定登録がされ、令和3年4月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年10月8日に特許異議申立人柏木香陽子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第6857326号の請求項1〜10の特許に係る発明(以下、「本件発明」、各発明を「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 内容物を収容する袋(10)であって、 表面フィルム(14)及び裏面フィルム(15)と、 前記袋(10)の下部(12)において前記表面フィルム(14)と前記裏面フィルム(15)との間に位置し、内面(22x,27x)同士が部分的に接合された第1注出口フィルム(22)及び第2注出口フィルム(27)と、 前記第1注出口フィルム(22)及び前記第2注出口フィルム(27)の端部に取り付けられたスパウト(30)と、を備え、 前記第1注出口フィルム(22)の内面(22x)と前記第2注出口フィルム(27)の内面(27x)との間の空間は、前記表面フィルム(14)の内面(14x)と前記裏面フィルム(15)の内面(15x)との間の空間に連通しており、 前記第1注出口フィルム(22)は、前記第1注出口フィルム(22)の上端(22c)が前記表面フィルム(14)の下端(14d)よりも上方に位置するよう、前記表面フィルム(14)の内面(14x)に連結されており、 前記第2注出口フィルム(27)は、前記第2注出口フィルム(27)の上端(27c)が前記裏面フィルム(15)の下端(15d)よりも上方に位置するよう、前記裏面フィルム(15)の内面(15x)に連結されており、 前記表面フィルム(14)に、前記第1注出口フィルム(22)を部分的に露出させる切欠部(14a)が設けられている、又は、 前記裏面フィルム(15)に、前記第2注出口フィルム(27)を部分的に露出させる切欠部が設けられている、袋。 【請求項2】 前記第1注出口フィルム(22)の上端(22c)及び前記第2注出口フィルム(27)の上端(27c)よりも下方の位置において、前記表面フィルム(14)の内面(14x)と前記裏面フィルム(15)の内面(15x)とが部分的に接合されている、請求項1に記載の袋。 【請求項3】 前記表面フィルム(14)及び前記裏面フィルム(15)は、前記袋(10)の上部(11)において少なくとも部分的に内面(14x,15x)同士が接合されている、請求項1又は2に記載の袋。 【請求項4】 前記スパウト(30)は、前記袋(10)の上部(11)が上方に位置し前記下部(12)が下方に位置する状態で、前記スパウト(30)の下端並びに前記表面フィルム(14)の前記下端(14d)又は前記裏面フィルム(15)の前記下端(15d)が少なくとも部分的に所定の載置面に接触するよう、構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の袋。 【請求項5】 前記袋(10)の上部(11)は、前記上部(11)が下方に位置し前記下部(12)が上方に位置する状態で、前記袋(10)が所定の載置面に自立可能となるよう構成されている、請求項1又は2に記載の袋。 【請求項6】 前記袋(10)は、前記第1注出口フィルム(22)の上端(22c)に接続され、前記表面フィルム(14)の内面(14x)に連結された第1連結フィルム(23)と、前記第2注出口フィルム(27)の上端(27c)に接続され、前記裏面フィルム(15)の内面(15x)に連結された第2連結フィルム(28)と、を更に備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の袋。 【請求項7】 前記第1連結フィルム(23)の下端(23d)は、少なくとも部分的に、前記表面フィルム(14)の前記下端(14d)に一致しており、 前記第2連結フィルム(28)の下端(28d)は、少なくとも部分的に、前記裏面フィルム(15)の前記下端(15d)に一致している、請求項6に記載の袋。 【請求項8】 前記表面フィルム(14)の内面(14x)と前記第1連結フィルム(23)の内面(23x)との間に、両者を接合する下部シール部(12a)と、前記第1注出口フィルム(22)の上端(22c)に至る非シール部(12c)とが存在しており、 前記裏面フィルム(15)の内面(15x)と前記第2連結フィルム(28)の内面(28x)との間にも、両者を接合する下部シール部(12a)と、前記第2注出口フィルム(27)の上端(27c)に至る非シール部(12c)とが存在している、請求項6又は7に記載の袋。 【請求項9】 前記第1注出口フィルム(22)及び前記第2注出口フィルム(27)は、下方に向かうにつれて幅が小さくなる先細部分を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の袋。 【請求項10】 前記スパウト(30)が、前記袋(10)の幅方向における中央領域に位置する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の袋。」 第3 申立理由の概要 申立人は、以下の理由を申立てている。 本件発明1〜10は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項に基いて(以下、各甲号証を「甲1」等ともいう。)、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1〜10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反されたものであるから、同法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである。 甲1:特開2000−335594号公報 甲2:特開2011−178470号公報 甲3:特開2007−331808号公報 甲4:実願昭59−64604号(実開昭60−177034号公報)のマイクロフィルム 第4 当審の判断 1.甲1について (1)甲1には、次の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 胴部と底部を有し、内容物を充填することにより底部シート部材が広がって安定に直立できる自立型容器であって、底部に注出口を有することを特徴とするスタンディングパウチ。」 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、液体、粘体、粉体など流動性を有する内容物を密封包装するために用いられるスタンディングパウチ(自立型袋容器)に関し、詳しくは、開封時に内容物を他の容器に移し替えやすいように底部に注出口が設けられたスタンディングパウチに関する。 【0002】 【従来の技術】従来のスタンディングパウチは、プラスチックフィルムなどの軟包装材に自立性をもたせ、立体容器として用いられており、特に液体、粉体などに広く用いられている。パウチから内容物を取り出すための開封方法としては、「スタンディングパウチの上部を切り取る方法」、「上部シール部のコーナーを切り取る方法」、「上部にプラスチック成型品などのキャップ付き注出口を設ける方法」などがある。」 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、内容物が液体や粘体であっても安全に且つ容易に注ぎ出すことができるスタンディングパウチを提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、胴部と底部を有し、内容物を充填することにより底部シート部材が広がって安定に直立できる自立型容器であって、底部に注出口を有することを特徴とするスタンディングパウチに関する。特に、本発明は、胴部と底部とが胴部シート部材と底部シート部材とを両部材のシール部を貼り合わせることにより形成される上記のスタンディングパウチに関する。 【0006】ひとつの態様として、本発明は、注出口が、底部シート部材をその中央対称線から折り曲げた状態で注出口を形成する突起部を残すように線対称に裁断し、該裁断部に沿ったシール部をヒートシールすることによって形成され、且つ同時に底部が形成された上記スタンディングパウチに関する。もうひとつの態様として、本発明は、注出口が、2枚の底部シート部材の間に注出口となるプラスチック成型キャップを挟んだ状態で、該キャップを2枚の底部シート部材の端部に熱接着して取り付けることにより形成され、且つ該キャップに連なる2枚の底部シート部材の端部シール部分をヒートシールすることにより底部が形成された上記スタンディングパウチに関する。上記構造を有することにより、本発明のスタンディングパウチは、内容物の充填が容易であるとともに、充填後は例えばガゼット部が開くことにより底部が広がって安定に自立することができるとともに、特にこのパウチを容易に持つことができ、且つ注ぎ出す操作も容易であるという効果を奏する。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明の底部に注出口を有するスタンディングパウチは、胴部と底部を有し、内容物を充填することにより底部が広がって直立できるものであれば特に構造は限定されず、例えば胴部と底部は一体物として成形されたものを使用することもできるし、または胴部部材と底部部材とを接合して一体物に組み上げても良い。また注出口の形状、底部への取り付け方法も限定されない。本スタンディングパウチの本体を形成するひとつの方法は、底部がシート部材を内側に折り返してなるガゼット形式で形成され、それが胴部部材の下端部と例えばヒートシールにより接合されて一体化され、この接合部は充填物の注入によって広がることができるように例えば湾曲状等の形が採られる。胴部部材は、2枚のシートの両側縁部をヒートシールして筒状に形成してもよいし、予めチューブ状のものを使用してもよい。注出口は上記本体底部、好ましくはその中央部に、例えば下記のように形成することができる。 【0008】本発明の注出口は、ひとつの態様として、底部シート部材をその中央対称線から折り曲げた状態で注出口を形成する突起部を残すように線対称に裁断し、該裁断部に沿ったシール部をヒートシールすることによって形成される。また注出口は、別の態様として、2枚の底部シート部材の間に注出口となるプラスチック成型キャップを挟んだ状態で、該キャップを2枚の底部シート部材の端部に熱接着して取り付けることにより形成される。後者の場合、キャップを取り外すことによって注出口を形成することができる。また、注出口を形成している前者の突起部先端には、横方向に切断して開口させるための切り取り補助手段を設けてもよい。 【0009】このような構成のスタンディングパウチは、上部が開放されており、底部には、内側に折り畳まれた底部シート部材からなる底面と、底部シート部材と胴部を構成する胴部シート部材がヒートシールされてなる脚部(底部と胴部のヒートシール部)と、ヒートシールされた底部折り畳み部の中央に形成された下向きの突起状ヒートシールパターンを備えている。もしくは、突起状のヒートシールパターンの代わりに、プラスチック成型キャップを備えることもできる。このため、液状などの内容物を充填するときでも通常のスタンディングパウチのように上部から充填した後、上部をシールすることができ、内容物充填後のスタンディングパウチの使用は、底部を上にして、底部に設けている突起状の注出口の先端を切り取ることにより注出口が開口され、内容物を安全且つ容易に注ぎ出すことができる。また、プラスチック成型キャップの場合は、キャップを取り外すことで注出口が開口し、同様に注ぎ出すことができる。なお、注出口を開口する際に、スタンディングパウチの底部を上に向けて開口し、また、スタンディングパウチ上部を縦方向に丸めて手で保持して注ぎ出すことが、安全に注ぎ出す上で好ましい。」 「【0012】 【実施例】以下に、図面により本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、異なる図面においても同一名称の部分には同じ符号を用いた。図1は、本発明のスタンディングパウチの一実施例の構成を示す正面図である。図1において、スタンディングパウチ1は、胴部が2枚のシート2で形成され、シート2の両側縁部が胴部ヒートシール部3でヒートシールして上部が開放された筒状に形成され、底部4が図4、図5に示すような注出口7を備えた底部シート部材18を内側に折り返してなるガゼット形式で形成されるとともに、底部ヒートシール部5が、シール上端6のところで下向きの湾曲形状を形成するようなシールパターンで胴部の内側にシールされている。 【0013】図2、図3は、本発明のスタンディングパウチの底部に設ける注出口の例を示したものである。図2の例では、底部の注出口7が底部シート部材のところに注出口取り付け用ヒートシール部10によって形成されている。・・・ 【0014】図4、図5は、本発明のスタンディングパウチの底部4に設ける注出口7を形成および取り付ける一実施例を示したものである。図4は底部シート部材18そのものに注出口を形成する構成で、底部シート部材の折り畳み線15に線対称な突起部19が合わさった形状に切断除去部17を切断除去し(図4(b))、折り畳み線15で折り曲げて突起部19を形成(c)した後、注出口取り付け用ヒートシール部10をヒートシールする。このとき注出口7に切り取り用補助手段9を加工しても良い。また、切断除去部17は注出口取り付け用ヒートシール部10をヒートシールした後切断しても良い。注出口取り付け用ヒートシール部10をヒートシール後、図4(d)および(e)に示すように折り返し線16で注出口7を内側に挟み込むように折り返してスタンディングパウチの底部4を形成する。」 「 ![]() 」(【図1】) 「 ![]() 」(【図2】) 「 ![]() 」(【図4】) (2)上記記載からみて、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「 内容物を収容するスタンディングパウチ1であって、 スタンディングパウチ1は、胴部が2枚のシート2で形成され、シート2の両側縁部が胴部ヒートシール部3でヒートシールして上部が開放された筒状に形成され、底部4は、注出口7を備えた底部シート部材18を内側に折り返してなるガゼット形式で形成されるとともに、底部ヒートシール部5が、シール上端6のところで下向きの湾曲形状を形成するようなシールパターンで胴部の内側にシールされている、スタンディングパウチ1。」 2.甲2〜甲4の記載事項 (1)甲2には、次の事項が記載されている。 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、詰め替え用の液状体を入れる袋状のパウチに係り、特に詰め替え時に、液状 体を残りなく移動させることができる液状体の詰め替えパウチに関する。」 「【0021】 図3(b)、(c)は、内側シート部4を示す図であり、シート状部材Pの内側シート側部シール部30を熱溶着した後に、山折り線Aにおいてテーパー部10を下側に押し込むように折り曲げ、立体形状としたものである。 前述のように成形されたシート状部材Pを立体形状とすると、図3(b)に示すように、管状部分を取り除いた漏斗を前後から押しつぶしたような形状のテーパー部10と、テーパー部10の外周縁から鉛直方向下側に延設された、筒状の接着部20と、テーパー部10の両端点を含む鉛直面と接着部20との交線部分から、接着部20の左右の外側方向に延設するように設けられた、略矩形状の内側シート側部シール部30とからなる内側シート部4が形成される。 テーパー部10は、図3(c)に示すように、その長手方向の中央部においても、切欠き孔11に向かって傾斜する斜面となっている。 【0022】 注出口部40は、図3(d)に示すように、円筒状の円筒部42と、円筒部42の上端縁に設けられたフランジ44とからなる。円筒部42の外周壁の鉛直方向中央部分には、後述するキャップ50の上周端が係止される、平行な2つのリング状部分42aが、円筒部42の外周壁の鉛直方向下側部分にはキャップ部50と螺合するネジ山42bがそれぞれ凸状に設けられている。 また、キャップ部50は、底部を有する筒状体であり、内容物である液状体が漏れることのないように注出口部40に螺着されるものである。図示していないが、その内壁面には注出口部40に螺着するネジ山、底部内壁には凸状に設けられた液止めリング、外周壁には微細な歯車模様、上周端には開栓時に切断されるブリッジを介したリング部等が設けられている。なお、注出口部40及びキャップ部50はオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、メタクリル樹脂やポリカーボネイト等のプラスチック成形体等からなる。」 「 ![]() 」(【図3】) 上記記載からみて、甲2には次の事項が記載されている。 「内側シート部4の端部に取り付けられた注出口を備えた、パウチ。」 (2)甲3には、次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、粉体又は粉粒物等を収納する積層フィルムからなる収納物飛散防止用注出口付き包装袋に関する。詳しくは包装袋から収納物を詰め替える際に、収納物が飛散するのを防止する収納物飛散防止用注出口付き包装袋に関する。 収納物としては、洗剤、粉状漂白剤、クレンザー等の家庭用品、殺菌剤、防虫剤、防カビ剤、抗菌剤、除菌剤等の薬剤、粉体または紛粒物からなる胃腸薬、風邪薬、ビタミン剤、漢方薬等の医薬品、粉体または紛粒物からなる小麦粉、化学調味料、わさび、山椒、胡麻、カレー粉、七味唐辛子、片栗粉等の食品類が例示できる。」 「【0045】 図1および図2に示すように、本発明の収納物飛散防止用注出口付き包装袋は表側積層フィルム1と裏側積層フィルム2を有し、上部横幅方向中央に突設された注出口部12が形成されている。そして、図2に示すように本体包装袋と注出口部12を覆う表裏被覆フィルム14から構成されている。 【0046】 前記本体包装袋は図1または図3に示すように包装袋縦中央線Oに対して線対称となるように注出部が湾曲状に突設配置されている。 【0047】 前記注出部12は左シール部5と右シール部6と上部開口摘みシール部7から形成されている。そして、各シール部は表側積層フィルム1の内面のシーラント層3と裏側積層フィルム4の内面のシーラント層4がヒートシールされている。」 「 ![]() 」(【図1】) 「 ![]() 」(【図2】) 上記記載からみて、甲3には次の事項が記載されている。 「注出口部12の端部と表裏被覆フィルム14の端部とが揃うように構成された包装袋。」 (3)甲4には、次の事項が記載されている。 「第1図、第2図、第3図及び第4図において1はスタンディング・パウチであり、スタンディング・パウチ1は、正面片2と背面片3を重ね合せた下部に、2つ折りして折山を上にして挟まれた底面片4の折山の中央部位に栓10を備えている。 栓10は、第4図に別に示すように栓本体11と、スクリューキャップ14とからなる。栓本体11は、筒状部12と、その一端において筒状部12からフランジ状に張り出した取付部13とからなり、軟質プラスチックにより一体成形されている。筒状部にの外周面には雄ネジが切られ、一方スクリューキャップ14の内周面には雌ネジが切られており両者のネジ係合により、栓本体11の一方の間放端である内容物取出し口15が密封されている。 栓本体11はフランジ部13において底面片4にヒートシールされている。」(第5頁第1行〜第17行) 「 なお、この考案のスタンディング・パウチでは内容物取出し口15が底部に設けられるので、ボトムシール部の一部8を第2図に示すように切欠いてボトムシールの上げ底部分に内容物の滴等が溜らないようにしてもよい。」(第6頁第11行〜第15行) 「 ![]() 」(第1図) 「 ![]() 」(第2図) 「 ![]() 」(第3図 ) 上記記載からみて、甲4には以下の事項が記載されている。 「2つ折りにして折山を上にして挟まれた底面片4の折山の中央部位に栓10を備え、ボトムシールの上げ底部分に内容物の滴等が溜らないようにボトムシール部の一部8を切欠いたスタンディング・パウチ1。」 3.本件発明1について (1)対比 甲1発明の「スタンディングパウチ1」、「2枚のシート2」、「注出口7を備えた底部シート部材18」は、それぞれ、本件発明1の「袋(10)」、「表面フィルム(14)と裏面フィルム(15)」、「第1注出口フィルム(22)及び第2注出口フィルム(27)」に相当する。 また、甲1発明の「底部シート部5が、シート上端6のところで」「胴部の内側にシールされている」ことは、本件発明1の「袋(10)の下部(12)において表面フィルム(14)と裏面フィルム(15)との間に位置し、内面(22x,27x)同士が部分的に接合された第1注出口フィルム(22)及び第2注出口フィルム(27)」を備えることに相当する。 また、甲1発明の「底部4は」、「注出口7を備えた底部シート部剤18を内側に折り返してなるガゼット形式で形成されるとともに」、「底部ヒートシール部5が」、「胴部の内側にシールされている」ことは、本件発明1の「第1注出口フィルム(22)の内面(22x)と第2注出口フィルム(27)の内面(27x)との間の空間は、表面フィルム(14)の内面(14x)と裏面フィルム(15)の内面(15x)との間の空間に連通して」いることに相当する。 また、甲1発明の「底部4は」、「底部ヒートシール部5が、シール上端6のところで」「胴部の内側にシールされている」ことは、本件発明1の「第1注出口フィルム(22)は、第1注出口フィルム(22)の上端(22c)が表面フィルム(14)の下端(14d)よりも上方に位置するよう、表面フィルム(14)の内面(14x)に連結されており、第2注出口フィルム(27)は、第2注出口フィルム(27)の上端(27c)が裏面フィルム(15)の下端(15d)よりも上方に位置するよう、裏面フィルム(15)の内面(15x)に連結されている」ことに相当する。 以上から、本願発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「内容物を収容する袋(10)であって、 表面フィルム(14)及び裏面フィルム(15)と、 前記袋(10)の下部(12)において前記表面フィルム(14)と前記裏面フィルム(15)との間に位置し、内面(22x,27x)同士が部分的に接合された第1注出口フィルム(22)及び第2注出口フィルム(27)と、を備え、 前記第1注出口フィルム(22)の内面(22x)と前記第2注出口フィルム(27)の内面(27x)との間の空間は、前記表面フィルム(14)の内面(14x)と前記裏面フィルム(15)の内面(15x)との間の空間に連通しており、 前記第1注出口フィルム(22)は、前記第1注出口フィルム(22)の上端(22c)が前記表面フィルム(14)の下端(14d)よりも上方に位置するよう、前記表面フィルム(14)の内面(14x)に連結されており、 前記第2注出口フィルム(27)は、前記第2注出口フィルム(27)の上端(27c)が前記裏面フィルム(15)の下端(15d)よりも上方に位置するよう、前記裏面フィルム(15)の内面(15x)に連結されている、袋。」 <相違点1> 「スパウト」に関して、本件発明1は、「前記第1注出口フィルム(22)及び前記第2注出口フィルム(27)の端部に取り付けられたスパウト(30)」を備えたものであるのに対し、甲1発明は、注出口7を構成する各シートの端部にスパウトを備えていない点。 <相違点2> 「切欠部」に関して、本件発明1には、「前記表面フィルム(14)に、前記第1注出口フィルム(22)を部分的に露出させる切欠部(14a)が設けられている、又は、前記裏面フィルム(15)に、前記第2注出口フィルム(27)を部分的に露出させる切欠部が設けられている」のに対して、甲1発明には、胴部を構成する2枚のシート2には切欠部が設けられていない点。 (2)相違点についての判断 まず、相違点2について検討する。 甲4(第5頁第1行〜第17行、第6頁第11行〜第15行)の記載や第1図〜第3図の図示内容から、甲4には、ボトムシール部に切欠部を設けることは把握できるものの、底面片4は、折山を上にして配置していることから、切欠部から底面片4が露出することまでは把握できない。 また、甲1(【請求項1】、【0006】〜【0007】)には、底部シート部材が広がって安定に直立できる自立型容器であることが記載され、安定に直立できるためには、底部シート部材に剛性が要求されるため、敢えて、底部シート部材に、注出口7を構成するシートを露出させる切欠部を設けることに動機付けがあるとはいえず、むしろ、阻害要因があるというべきである。 また、甲2には、保持体3の下部に切欠部を設けることは記載されておらず、切欠部を設けることの動機付けとなる記載はない。 また、甲3にも、保持体3の下部に切欠部を設けることは記載されておらず、切欠部を設けることの動機付けとなる記載はない。 以上のとおり、甲1ないし甲4には、表面フィルムに、第1注出口フィルムを部分的に露出させる切欠部が設けられている、又は、裏面フィルムに、第2注出口フィルムを部分的に露出させる切欠部が記載されていないし、当該切欠部を設けることの動機付けも記載されていないから、相違点2に係る本願発明1の構成は、甲1発明及び甲2ないし甲4に記載された事項から容易になし得たものではない。 よって、相違点1について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2ないし甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4.本件発明2〜10について 本件発明2〜10は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を追加したものである。 よって、上記2.に示した理由と同様の理由により、本件発明2〜10は、甲1発明及び甲2ないし甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものではない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1〜10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-01-21 |
出願番号 | P2017-023246 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B65D)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
西村 泰英 塩治 雅也 |
登録日 | 2021-03-24 |
登録番号 | 6857326 |
権利者 | 大日本印刷株式会社 |
発明の名称 | 袋 |
代理人 | 柏 延之 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 宮嶋 学 |
代理人 | 高田 泰彦 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 岡村 和郎 |