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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61J
管理番号 1384233
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-21 
確定日 2022-03-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第6860832号発明「薬剤容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6860832号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6860832号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜13に係る特許についての出願は、2013年(平成25年)9月18日(優先権主張 平成24年9月19日)を国際出願日とする特願2014−536888号の一部を平成29年11月13日に新たな特許出願とした特願2017−218241号の一部を平成31年2月20日に新たな特許出願としたものであって、令和3年3月31日にその特許権の設定登録がされ、令和3年4月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年10月21日に特許異議申立人中谷浩美(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
また、当審より令和3年12月23日付けで審尋し、これに対し特許権者より令和4年1月25日付けの回答書が提出された。

2 本件発明
本件特許の請求項1〜13に係る発明(以下、それぞれ請求項に対応して「本件発明1」などという。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜13に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
本体装置を備えた薬剤フィーダに用いられる薬剤容器であって、
前記薬剤容器は、薬剤フィーダの本体装置に着脱自在であって、
前記本体装置によって薬剤容器を振動させるものであり、
当該薬剤容器は、薬剤を貯留する薬剤貯留部と、外部に薬剤を排出する薬剤排出部があり、
前記薬剤排出部は、内外を連通する開口部分を有し、
前記薬剤貯留部と前記薬剤排出部の前記開口部分との間に薬剤の通路となる領域があり、当該領域は先端側が窄められており、
前記領域と前記薬剤貯留部との間には狭窄開口部があり、
可動蓋部を有し、前記薬剤排出部を閉じた状態と、前記可動蓋部が押圧片によって押圧されることで前記薬剤排出部を開いた状態にすることが可能であり、
前記薬剤容器を振動させることによって、前記薬剤貯留部内の薬剤が前記狭窄開口部を通過して前記薬剤の通路となる領域に入り、前記薬剤が層流化されて、前記薬剤が前記薬剤排出部から排出されることを特徴とする薬剤容器。
【請求項2】
前記可動蓋部は、前記可動蓋部の上端よりも下方であり、前記開口部分よりも上方に位置する軸又は軸片によって構成される軸部を中心に揺動するものであり、
前記薬剤排出部を開いた状態とする時、前記可動蓋部の上端が、前記軸部を中心に揺動して前記薬剤貯留部側に移動することを特徴とする請求項1に記載の薬剤容器。
【請求項3】
前記開口部分よりも上方で前記薬剤容器の内側に、薬剤を封鎖する遮蔽壁を有し、
前記薬剤排出部を開いた状態とする時、前記可動蓋部の上端が、前記軸部を中心に揺動して遮蔽壁側に移動することを特徴とする請求項2に記載の薬剤容器。
【請求項4】
内部に整流部材が設けられ、
前記整流部材は、内部の薬剤を前記薬剤排出部側に移動させる際に、薬剤の一部又は全部が通過する位置に配され、
前記整流部材を境として、前記領域が導出路部として機能し、導出路部において薬剤が層流化され、前記容器本体の周壁下面に沿って層流化された薬剤を移動させて前記開口部分から排出することを特徴とする請求項1及至3のいずれかに記載の薬剤容器。
【請求項5】
前記可動蓋部は、摘まみ部を有し、
押圧片によって前記摘まみ部が押されると、前記可動蓋部が開いた状態となることを特徴とする請求項1及至4のいずれかに記載の薬剤容器。
【請求項6】
前記可動蓋部は、一端に配置された前記摘まみ部と、他端に前記摘まみ部と接続され、前記薬剤排出部を閉じた状態と開いた状態とする押さえ板部とを有することを特徴とする請求項5に記載の薬剤容器。
【請求項7】
前記可動蓋部は、前記押さえ板部と前記摘まみ部との間に、軸又は軸片によって構成される軸部を受ける軸受け部とを有することを特徴とする請求項6に記載の薬剤容器。
【請求項8】
前記薬剤容器は、保管時には前記薬剤容器を保管する容器棚で載置され、
前記薬剤容器は、前記薬剤容器を移動する容器移動手段により、容器棚から前記薬剤容器を載置する本体装置まで移動し、当該本体装置では水平姿勢で設置された場合、
押圧片によって、前記摘まみ部が押されると、前記押さえ板部が開いた状態となることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の薬剤容器。
【請求項9】
前記薬剤容器は、保管時には、容器棚で縦姿勢或いは傾斜姿勢で載置されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の薬剤容器。
【請求項10】
水平姿勢を基準として上面となる位置に、電磁石よる吸着が可能な運搬用鉄板部を備えていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の薬剤容器。
【請求項11】
前記可動蓋部は、板バネと係合することで閉じた状態を維持することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の薬剤容器。
【請求項12】
水平姿勢を基準として上面側に開口を有し、当該開口から内部に薬剤を投入可能であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の薬剤容器。
【請求項13】
内部にコイル状部材が設けられ、
前記コイル状部材は、内部の薬剤を薬剤排出部側に移動させる際に、薬剤の一部又は全部が前記コイル状部材の中を横切る位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の薬剤容器。」

3 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証〜甲第7号証(以下、各甲号証に付された数字に対応して「甲1」などという。)を提出し、本件発明1〜13に係る特許を取り消すべき理由として、次の理由を主張している。
(理由)
本件発明1〜8及び11は、甲1に記載された発明並びに甲2及び3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明9は、甲1に記載された発明並びに甲2〜4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明10は、甲1に記載された発明並びに甲2、3及び5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明12は、甲1に記載された発明並びに甲2、3及び6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明13は、甲1に記載された発明並びに甲2、3及び7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、本件発明1〜13に係る特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

[証拠方法]
甲1:実願平1−13140号(実開平2−105914号)のマイクロフィルム
甲2:特開平7−132135号公報
甲3:特開平11−114020号公報
甲4:特開昭64−59015号公報
甲5:実願昭57−9254(実開昭58−112985号)のマイクロフィルム
甲6:特開平4−286526号公報
甲7:実願昭54−106108号(実開昭56−24487号)のマイクロフィルム

4 甲各号証の記載事項
(1)甲1
甲1には、以下の記載がある(下線は当審が付した。以下同様。)。

ア 「〔産業上の利用分野〕
本考案は振動フィーダに係り、特に粉粒体を収納した壜等の容器自体を粉粒体排出時の容器として利用可能なよう構成した振動フィーダ及び容器に用いるトラフ等の付属機器に関する。
〔従来の技術〕
例えば各種薬剤や、染料その他の薬品を正確に排出するフィーダとして直線型の振動フィーダが提供されている。」(第2頁第17行〜第3頁第5行)

イ 「〔考案が解決しようとする課題〕
以上の構成において、排出すべき粉粒体の種類が代わる毎に、当然のことながらホッパに対してはその粉粒体を各々充填する必要がある。然しこの作業は面倒であるばかりでなく、ホッパに充填する際にその一部をこぼすことにより周囲を汚したり、付着した粉粒体により振動フィーダ本体が腐食する等の事態が生じる可能性がある。
また、薬品によっては他の薬品が混じると変質したり、薬剤の場合には投与する患者に悪影響を与えたりするものもあり、一回の排出作業が完了し、別の種類の薬品をホッパに充填する際にはそのホッパを完全に清掃する必要があって、その点からもホッパに対する粉粒体の充填作業は面倒なものであった。
〔課題を解決するための手段〕
本考案は以上の問題点に鑑み構成したものであり、排出供給すべき粉粒体を収納している壜等の容器自体を振動フィーダのホッパとして利用するようにしたもであり、振動フィーダ本体に対して従来のホッパに代えて粉粒体収納容器を支持する支持部材を取り付け、この支持部材により粉粒体収納容器を振動フィーダ本体にそのまま装着し、更にこの容器の蓋に代えて、容器に対してトラフ部材を螺合、嵌挿等、その蓋を容器に取りつけている手段を用いて装着するよう構成する。
〔作用〕
粉粒体の充填してある容器にトラフ部材を装着し、かつこの容器を支持部材を介して振動フィーダ本体に装着する。
振動フィーダ本体を作動させると、その振動は粉粒体を充填してある容器に伝達され、容器内に充填してある粉粒体は蓋の代わりに装着されたトラフ部材を経て外部に順次排出される。」(第3頁第15行〜第5頁第8行)

ウ 「第1図および第2図は第1の実施例を示す。
図中矢印1は振動フィーダ本体を示す。この振動フィーダ本体1自体は従来の振動フィーダと同様の構成としてある。即ち、上下の支持板2a、2bと、これら上下の支持板の間に介在位置し、かつ上部支持板2aの荷重を支持する板バネ3a、3bと、振動発生部を構成する金属板4と、この金属板を断続的に吸引する電磁部5とから構成してある。なお、振動フィーダ本体の構成はもとよりこれに限定する趣旨ではなく、要するに後述する粉粒体充填容器に適当な振動を伝達し得るものであれば、その構成の如何を問うものではない。
6はこの振動フィーダ本体1の上部支持板2aに載置固定した粉粒体収納容器である。この容器は振動フィーダ本体1用に特別に形成したものではなく、薬剤、その他の薬品を収納し、かつ粉粒体の貯蔵に用いる市販の容器である。なお図示の容器は広口壜を示す。
7はこの容器6に対して、容器6用の蓋に代えて装着したトラフ部材であり、本来の蓋と同様の方法で容器6に対して装着される。図示の場合には容器6に対して螺合してある。このトラフ部材7は、容器本来の蓋に対応してこの容器6に対して直接装着する本体部7aと、この本体部7aから突出形成したトラフ部7bとから構成してある。また本体部7aの正面部は第2図に示すように所謂めくらにして閉塞してあり、トラフ部7bに連接する部分に対してのみ粉粒体排出用の開口7cが形成してある。
8は振動フィーダ本体側に固設した容器支持部材であり、バネ材等の弾性部材により形成してあり、容器6を振動フィーダ本体1側に強固かつ着脱可能に取りつける役目を果たしている。
次に上述の装置の使用状態および作動状態について説明する。
まず作業者は、排出作業を行いたい粉粒体が収納されている容器を取り出してその容器の蓋を取り外し、代わりにトラフ部材7を装着する。次にこの容器を、支持部材8を用いて振動フィーダ本体1に装着する。なお、この場合、トラフ部材7のトラフ部7bが図示の如く下側になるよう容器6を装着することはもとより当然である。このようにして容器6を振動フィーダ本体1に確実に装着したならば、振動フィーダ本体を作動させる。
振動フィーダ本体1からの振動は容器6及びこの容器6に装着したトラフ部材7に伝達され、この振動により容器6内に充填してある粉粒体はトラフ部材7のトラフ部7bを介して順次排出されることになる。なお、この場合、充填してある粉粒体の種類によっては流動化し易く、時間当たりの排出量が多すぎる場合も生じる。このような場合には、開口7cをより小さくしたトラフ部材を装着する等して対応する。
粉粒体の排出作業が完了したならば、この容器6を振動フィーダ本体1から取り外し、続いてトラフ部材7をこの容器から取り外し、代わりに容器本来の蓋を装着し、この容器を元の置き場所に戻す。」(第5頁第12行〜第8頁第9行)

エ 「第4図および第5図は第3の実施例を示す。
この実施例は前記第2の実施例に比較して更に首元の細い、即ち粉粒体の排出がより困難な容器11内の粉粒体を排出するよう構成している。
第4図において、容器11は第3図に示す容器よりも更に口元が細く、内部の粉粒体の排出がより困難であるため、容器11と振動フィーダ本体1との間の介在部材10の傾斜角度はより大きなものとしておき、容器11の首元での粉粒体の滞留を防止するようにしている。但し、容器11の傾斜角度を大きくしただけでは、容器内に大量の粉粒体が存在する場合には一時に大量の粉粒体が排出され、制御不能となる可能性がある。このため容器に装着するトラフ部材(符号12で示す)には特別の工夫をしておく。この構成を主として第5図を用いて説明する。
トラフ部材12の本体部12aは容器11に対して螺合等、容器本来の蓋の装着手段を利用して装着される。トラフ部12bはこの本体部12aに対して一定の角度をもって取り付けてあり、容器11を振動フィーダ本体1に対して斜めに装着した場合に、ほぼ水平になるようにしてある。
12cは粉粒体の出口に形成した粉粒体流量調節体である。この調節体12cはトラフ部12bに至る開口部(第2図の構成の符号7cに対応する)を一部閉塞して堰板として作用するように形成配置してある。これにより粉粒体排出部開口12dは第6図(A)に示すように略半円形のスリット状に形成される。次にこの流量調節体12cはトラフ部材12の他の部分よりも薄肉に形成してあり、振動フィーダ本体側から伝達される振動により、この流量調節体12c自体が独自に振動するようになっている。この振動により、容器11を斜めに配置することによってこの容器の首元に集中している粉粒体は良好に撹拌され、開口部12d近傍で固化閉塞することはない。
第6図(B)の構成は同(A)に示す構成の変形例である。
(A)の構成では流量調節体12cが一枚の板状に形成してあるのに対して、この構成では流量調節体12cは櫛状に形成してある。この構成により各櫛の歯が独自に振動し、粉粒体流量調整と閉塞の防止をより効果的に行うことができる。」(第10頁第2行〜第12頁第4行)

オ 「第1図



カ 「第2図



キ 「第4図



ク 「第5図



ケ 「第6図



コ 上記イの「薬品によっては他の薬品が混じると変質したり、薬剤の場合には投与する患者に悪影響を与えたりするものもあり、一回の排出作業が完了し、別の種類の薬品をホッパに充填する際にはそのホッパを完全に清掃する必要があって、その点からもホッパに対する粉粒体の充填作業は面倒なものであった。」という考案が解決しようとする課題、上記ウの「この容器は振動フィーダ本体1用に特別に形成したものではなく、薬剤、その他の薬品を収納し、かつ粉粒体の貯蔵に用いる市販の容器である。」の記載からみて、甲1の「粉粒体収納容器」は、「粉粒体」として「薬剤」を充填する市販の容器と認められる。

サ 甲1の第1の実施例における「粉粒体排出用の開口7c」について、上記ウの「トラフ部材7は、容器本来の蓋に対応してこの容器6に対して直接装着する本体部7aと、この本体部7aから突出形成したトラフ部7bとから構成してある。また本体部7aの正面部は第2図に示すように所謂めくらにして閉塞してあり、トラフ部7bに連接する部分に対してのみ粉粒体排出用の開口7cが形成してある。」の記載及び上記カの第2図から看取される態様からみて、当該「粉粒体排出用の開口7c」は、狭窄した開口であるものと認められる。
また、甲1の第3の実施例における「粉粒体排出部開口12d」について、上記エの「12cは粉粒体の出口に形成した粉粒体流量調節体である。この調節体12cはトラフ部12bに至る開口部(第2図の構成の符号7cに対応する)を一部閉塞して堰板として作用するように形成配置してある。これにより粉粒体排出部開口12dは第6図(A)に示すように略半円形のスリット状に形成される。」の記載並びに上記クの第5図及び上記ケの第6図から看取される態様からみて、当該「粉粒体排出部開口12d」は、第1の実施例における「粉粒体排出用の開口7c」と同様に、狭窄した開口であるものと認められる。

シ 上記ウの「振動フィーダ本体1からの振動は容器6及びこの容器6に装着したトラフ部材7に伝達され、この振動により容器6内に充填してある粉粒体はトラフ部材7のトラフ部7bを介して順次排出される」の記載及び上記カの第2図から看取されるトラフ部7b及び粉粒体排出用の開口7cの態様からみて、甲1の第1の実施例においては、容器6及びトラフ部材7に伝達された振動により容器6内に充填してある粉粒体は、粉粒体排出用の開口7cを通過してトラフ部7bに入り、前記粉粒体は前記トラフ部材7の前記トラフ部7bを介して前記トラフ部7bの先端から順次排出されるものと認められる。
また、甲1の第3の実施例においても同様に、上記クの第5図から、容器11及びトラフ部材12に伝達された振動により容器11内に充填してある粉粒体は、粉粒体排出部開口12dを通過してトラフ部12bに入り、前記粉粒体は前記トラフ部材12の前記トラフ部12bを介して前記トラフ部12bの先端から順次排出されることが看取される。

ス 上記カの第2図から、粉粒体が順次排出される「トラフ部7b」の先端側の幅は、「粉粒体排出用の開口7c」側の幅と同等であることが看取される。

上記ア〜ケの摘記事項並びに上記コ〜スで認定した技術的事項を踏まえると、甲1には、次のとおりの発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

[甲1発明]
「振動フィーダ本体に載置固定した粉粒体収納容器であって、
前記粉粒体収納容器は、粉粒体として薬剤を充填する市販の容器であり、前記振動フィーダ本体に着脱可能に取りつけられ、
前記粉粒体収納容器用の蓋に代えて、トラフ部材が、本来の蓋と同様の方法で前記粉粒体収納容器に対して装着され、
前記トラフ部材は、前記粉粒体収納容器に対して直接装着する本体部と、この本体部から突出形成したトラフ部とから構成され、
前記本体部の前記トラフ部に連接する部分に粉粒体排出用の狭窄した開口が形成され、
前記トラフ部の先端側の幅は、前記粉粒体排出用の狭窄した開口側の幅と同等であり、
前記振動フィーダ本体からの振動は前記粉粒体収納容器及びこの粉粒体収納容器に装着したトラフ部材に伝達され、この振動により粉粒体収納容器内に充填してある粉粒体は、前記粉粒体排出用の狭窄した開口を通過して前記トラフ部に入り、前記粉粒体は前記トラフ部材の前記トラフ部を介して前記トラフ部の先端から順次排出される粉粒体収納容器。」

(2)甲2
甲2には、以下の記載がある。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、散薬分包機に用いられる散薬供給装置に関するものである。」

イ 「【0009】散薬収納庫20は、散薬をカセット21に収容して、このようなカセット21を散薬の種類に応じて多数具えたものであり、どのカセット21に収容された散薬でも分割包装機2の配分/分割装置3に配分するため、左右の配分/分割装置3a、3bに対応した供給位置40a、40bのいずれにもすべてのカセット21を移動させることのできる移動機構41を具えている。
【0010】カセット21は、ストック部22と、排出部23とから構成されている。ストック部22は、縦向きの円筒形に構成され、その底部に撹拌羽根24が配置されている。撹拌羽根24は、円錐形部分を中心としてそれから2枚が互いに180°隔てて半径方向外方へ延び、しかも、外方へ行くにしたがって回転方向に対して後退する方向に湾曲して形成されている。排出部23は、ストツク部22の正面下部においてその半径方向に沿った横向きの小径の円筒内にスクリュー25が配置されたものであり、ストック部22の底面外周付近に形成された連通口26によって、ストック部22と排出部23とは互いに連通している。スクリュー25の回転軸は、ストック部22の中心に位置する撹拌羽根24の回転軸の真下を通って後方へ延び、また、撹拌羽根24の回転軸もスクリュー25の回転軸と一体に回転するように連結されている。排出部23の正面には,その円筒先端からなる出口を開閉するシャッタ27が設けられ、このシャッタ27は、その支軸に設けたバネ28によって強制的に閉鎖状態を維持するように構成されている。そして、排出部23の側方をスクリュー25の回転軸と平行に延びたレバー29の後端が前方へ押されているとき、その前端がシャッタ27の側方に張り出した部分を前方へ押して、シャッタ27を開放するようになっている。また、ストック部22の正面には、収容した散薬の薬品名がラベル30に表示されている。」

ウ 「【0012】供給位置40a、40bには、配分/分割装置3a、3bに配分する散薬を供給するための散薬フィーダ50a、50bが設けられ、各散薬フィーダ50は、その供給位置40に位置するカセット21と、カセット21を作動して散薬を排出させる作動装置51と、カセット21から排出される散薬を計量する計量装置61とから構成されている。
【0013】作動装置51は、カセット21群の昇降領域および循環領域を避けて、供給位置40に位置するカセット21の後方に配置され、モータ52と、作動部材53とから構成されている。モータ52の出力軸には、その軸に沿って進退可能のカップリング54が設けられ、このカップリング54が前進したとき、モータ52の出力軸が、カセット21のスクリュー25の回転軸後端と連結されるようになっている。作動部材53は、モータ52のカップリング54を進退させるものであり、この作動部材53が作動すると、カップリング54を前進させてモータ52の出力軸をスクリュー25の回転軸に連結させるとともに、カセツト21のレバー29を前方へ押して、シャッタ27を開放させるように構成されている。
【0014】計量装置61は、たとえば、秤量器と秤量皿とからなる秤量装置として構成することができるものであるが、その場合、計量時には、供給位置40に位置するカセット21の前方において、その排出部23の正面出口から排出される散薬を受け取るために、排出部23の正面出口の真下に計量中心が位置するように配置される必要がある。すなわち、計量装置61は、作動装置51のようにつねにカセット21群の昇降領域および循環領域を避けて配置することはできず、計量時にはカセット21の移動領域内に侵入しなければならない。そのため、シフト機構62が設けられ、このシフト機構62が、計量装置61を、その計量中心がカセット21の排出部23の正面出口の真下に位置する計量位置(図2のA)と、計量し終わった散薬を配分/分割装置3に配分する配分位置(図2のB)と、さらには、配分が終わった汚れを除去する清掃位置(図2のC)との間をシフトさせることによって、計量時にのみカセット21の移動領域内に侵入させ、それ以外はカセット21の移動領域から外方へ退避させるように構成されている。そして、計量装置61は、清掃が終わったのち、つぎの散薬計量のため計量位置へシフトされるまでの間、清掃位置で待機するようになっている。また、計量装置61には、配分位置において、配分/分割装置3に対する散薬の配分動作を円滑に行わせるため、散薬を徐々に供給する振動フィーダ63が設けられている。すなわち、振動フィーダ63のトラフ64を、カセット21から受け取る散薬を載せる秤量皿として構成し、このトラフ64を含む振動フィーダ63を秤量器65で支えることによって、計量装置61が構成されている。」

エ 「【図1】



上記ア〜エの摘記事項から、甲2には、次のとおりの技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲2技術]
「散薬分包機に用いられる散薬供給装置において、
散薬をカセット21に収容して、このようなカセット21を散薬の種類に応じて多数具え、
カセット21は、ストック部22と、排出部23とから構成され、ストック部22の底面外周付近に形成された連通口26によって、ストック部22と排出部23とは互いに連通し、排出部23の正面には、その円筒先端からなる出口を開閉するシャッタ27が設けられ、
散薬フィーダ50は、カセット21と、カセット21を作動して散薬を排出させる作動装置51と、カセット21から排出される散薬を計量する計量装置61とから構成され、
作動装置51は、モータ52と、作動部材53とから構成され、この作動部材53が作動すると、カセット21のレバー29を前方へ押して、シャッタ27を開放させるように構成され、
計量装置61は、秤量器65と秤量皿とからなる秤量装置として構成され、カセット21の前方において、その排出部23の正面出口から排出される散薬を受け取るために、排出部23の正面出口の真下に計量中心が位置するように配置され、
計量装置61には、散薬を徐々に供給する振動フィーダ63が設けられ、振動フィーダ63のトラフ64を、カセット21から受け取る散薬を載せる秤量皿として構成し、このトラフ64を含む振動フィーダ63を秤量器65で支えることによって、計量装置61が構成される技術。」

(3)甲3
甲3には、以下の記載がある。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、散薬供給装置に関し、詳しくは、ストックしている多くの散薬から適宜の散薬を散薬分包処理へ適量供給する散薬供給装置に関する。」

イ 「【0025】カセット30は、散薬を取り出し可能にストックするために、散薬ストック部33と、その下方の排出部とから構成されている(図3参照)。散薬ストック部33は、縦向きの円筒形に構成され、その底部に攪拌羽根32が配置されている。攪拌羽根32は、円錐形部分を中心としてそれから2枚が互いに180゜隔てて半径方向外方へ延び、しかも、外方へ行くにしたがって回転方向に対して後退する方向に湾曲して形成されている。カセット30の排出部には、散薬ストック部33の下方正面においてその半径方向に沿って横向きに小径円筒の排出路35が形成されており、この排出路35と散薬ストック部33とは、散薬ストック部33の底面外周付近に形成された連通路34によって互いに通じている。」

ウ 「【0027】また、カセット30は、図示は割愛したが、その排出路35の正面に、その円筒先端からなる出口を開閉するシャッタも設けられており、このシャッタは、その支軸に設けたバネによって強制的に閉鎖状態を維持するように構成されている。そして、排出路35の側方をスクリューや従動シャフト31と平行に延びたレバーの後瑞が前方へ押されているとき、その前瑞がシャッタの側方に張り出した部分を前方へ押して、シャッタを開放するようになっている。」

エ 「【0031】電子秤50は、散薬取り出し位置に来たカセット30の少し下のところで、搬送機構10の上下のベルト11の間に設置されている(図2参照)。電子秤50には、単独で或いは本体と共に昇降しうる支承片51が設けられていて、上昇したときだけ、ベルト11でカセット30の排出路35の出口直下へ搬送されて来たカップ1を、ベルト11の切れ目から支承して、その重さを秤量する(図3参照)。そして、カセット30からそこのカップ1へ散薬が取り出されると、その散薬の分だけ秤量値も増加する。これにより、電子秤50(計量装置)は、散薬カセット30から取り出した散薬を計量するものとなっている。」

オ 「【0035】フィーダ60は、カセット30(散薬カセット)からカップ1へ取り出されカップ1と共に搬送機構10等によって搬送されて来た散薬を散薬分包機70(分割装置)へ送り込むため、カセット収納ユニットFの搬送機構10の終端の近傍であって散薬分包機70の上方に当たるところに設けられる(図1参照)。このフィーダ60は、カップ1から移された散薬を受けるホッパ61と、ホッパ61から散薬を散薬分包機70の環状凹溝72へ送り込むための案内部62と、その送り込みを定量で均一に行わせるため案内部62等へ与える振動を発生する振動体63とからなっており、振動体63は発振回路64から受けた発振信号と同じ周波数で振動する。」

カ 「【図1】



キ 「【図3】



ク 「【図4】



上記ア〜クの摘記事項から、甲3には、次のとおりの技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲3技術]
「ストックしている多くの散薬から適宜の散薬を散薬分包処理へ適量供給する散薬供給装置において、
カセット30は、散薬ストック部33と、その下方の排出部とから構成され、排出部には、散薬ストック部33の下方正面において排出路35が形成されており、この排出路35と散薬ストック部33とは、散薬ストック部33の底面外周付近に形成された連通路34によって互いに通じ、排出路35の正面に、その円筒先端からなる出口を開閉するシャッタが設けられ、
排出路35の側方をスクリューや従動シャフト31と平行に延びたレバーの後端が前方へ押されているとき、その前端がシャッタの側方に張り出した部分を前方へ押して、シャッタを開放し、
電子秤50は、散薬取り出し位置に来たカセット30の少し下に設置され、カセット30からカップ1へ取り出した散薬を計量し、
フィーダ60は、カップ1から移された散薬を受けるホッパ61と、ホッパ61から散薬を散薬分包機70の環状凹溝72へ送り込むための案内部62と、その送り込みを定量で均一に行わせるため案内部62等へ与える振動を発生する振動体63とからなっており、振動体63は発振回路64から受けた発振信号と同じ周波数で振動する技術。」

(4)甲4
甲4には、以下の記載がある。

ア 「(産業上の利用分野)
本発明は、多品種の粉体試料を試料相互の汚染なく正確に秤量することができる粉体の自動秤量装置に関するものである。」(第2頁左上欄第2〜5行)

イ 「各別に異なる試料を収納するフィーダ付試料容器8は、試料容器トレイ12−1,12−2にそれぞれ10個ずつ保持されるよう構成されている。」(第3頁右上欄第10〜13行)

ウ 「第2図



エ 上記ウの第2図から、複数のフィーダ付試料容器8が、試料容器トレイ12−2に傾斜姿勢で保持されることが看取される。

上記ア〜ウの摘記事項及び上記エで認定した技術的事項を踏まえると、甲4には、次のとおりの技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲4技術]
「粉体の自動秤量装置において、
試料を収納するフィーダ付試料容器を試料容器トレイに傾斜姿勢で保持する技術。」

(5)甲5
甲5には、以下の記載がある。

ア 「本考案は、放射線計測等に使用される試料容器に関する。」(第1頁第9及び10行)

イ 「第1図において、符号1はプラスチック,ガラス,石英或いはテフロン等からなり側壁と底の厚さが均等な円筒状の容器本体であって、その容器本体1の口部外周には雄ねじ2が設けられている。また上記容器本体1の口部に装着する蓋体3の内周側には雌ねじ4が形成されており、さらにその蓋体3の上面には鉄板5が埋め込まれ、その鉄板5を埋め込んだ蓋体3の上部には、鉄板5の腐蝕を防止するための極く薄いプラスチックシール6が貼付されている。」(第3頁第4〜13行)

ウ 「第2図に上述の試料容器を、放射線計測用の自動搬送機によって試料測定個所に搬送する例を示す。第2図において、符号10は自動搬送機の基盤であって、その基盤10上には基盤10上に立設された昇降ガイド11によって案内され昇降シリンダ12によって昇降される昇降体13が配設されている。
上記昇降体13にはアーム回転用電動機14によって回動されるアーム15が水平方向に突設されており、そのアーム15の先端には、ターンテーブル16上に載置されている試料容器17の蓋体3に埋め込まれた鉄板5を吸着する電磁石18が装着されている。一方、アーム15が所定量回動したときその先端部下方位置には、試料容器17を挿入する検出器19が配設されており、その検出器19の周囲には鉛スタンド20が設置され、その上方部には、電動機21によって開閉される鉛スライド扉22が配設されている。
しかして、上記アーム15の先端部に配設した電磁石18によって、試料容器17の蓋体3に埋め込まれている鉄板を吸着し、昇降体13を上昇せしめることによって試料容器17を吊り上げ、そこでアーム15を所定量回動させた後昇降体13を下降せしめれば、試料容器17を放射線計測用の検出器19内に搬入することができる。また計測終了後は逆の操作によって搬出することができる。」(第3頁第20行〜第5頁第4行)

エ 「第1図



オ 「第2図



上記ア〜オの摘記事項から、甲5には、次のとおりの技術(以下、「甲5技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲5技術]
「放射線計測等に使用される試料容器17において、
容器本体1の蓋体3の上面には鉄板5が埋め込まれ、
放射線計測用の自動搬送機の基盤10上に昇降体13が配設され、
昇降体13にはアーム回転用電動機14によって回動されるアーム15が水平方向に突設され、
アーム15の先端部に配設した電磁石18によって、試料容器17の蓋体3に埋め込まれている鉄板を吸着し、昇降体13を上昇せしめることによって試料容器17を吊り上げ、そこでアーム15を所定量回動させた後昇降体13を下降せしめ、試料容器17を放射線計測用の検出器19内に搬入する技術。」

(6)甲6
甲6には、以下の記載がある。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は振動供給装置に関するもので、詳しくは、医薬品のような粉粒材料等を供給するのに好適な振動供給装置に関するものである。」

イ 「【0042】また、以上の実施例では、トラフ容器としては、側面形状がほぼへの字形状で上方が開口したトラフ形状のものであったが、これに代えて、図11に示したように、有底の角筒形状で開口89側にリブ90a、90bを突設したトラフ容器Wを用いることもできる。」

ウ 「【図11】



エ 上記ウの図11から、トラフ容器Wは、有底の角筒形状で上面側に開口89を有するものと認められる。

上記ア〜ウの摘記事項及び上記エで認定した技術的事項を踏まえると、甲6には、次のとおりの技術(以下、「甲6技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲6技術]
「医薬品のような粉粒材料等を供給する振動供給装置において、有底の角筒形状で上面側に開口89を有するトラフ容器Wを用いる技術。」

(7)甲7
甲7には、以下の記載がある。

ア 「この考案は飼料タンクの改良構造に係る。」(第1頁第8行)

イ 「このような点を考慮してこの考案では飼料タンク内に数枚の羽根を飼料タンク外壁にそつて挿入し、これら羽根の下端はスプリングで連結するようにし、上端は飼料タンク外壁に支持せしめたものであり、これにより飼料粉体の投入にともないこの粉体がスプリングや羽根にあたるたびに振動を生じ、飼料を通して折曲部1aの附属物にも振動を与えて適当にブリッジの発生を防ぐことができ、有効な効果を与えるものである。」(第2頁第3〜11行)

ウ 「かくて飼料がスプリング3や羽根板2にあたるたびに羽根板2が振動を起してスプリング3の助けで振動の増幅作用を与えて飼料タンク外壁の折曲部1aに附着して残つた飼料をも払い落し、ブリッジが起るのをさけることができる。」(第3頁第9〜13行)

エ 「第1図



オ 「第2図



上記ア〜オの摘記事項から、甲7には、次のとおりの技術(以下、「甲7技術」という。)が記載されていると認められる。

[甲7技術]
「飼料タンクにおいて、
飼料タンク内に数枚の羽根を飼料タンク外壁にそつて挿入し、これら羽根の下端はスプリングで連結するようにし、上端は飼料タンク外壁に支持せしめ、
飼料粉体の投入にともないこの粉体がスプリングや羽根にあたるたびに振動を生じ、飼料タンク外壁の折曲部1aに附着して残つた飼料をも払い落す技術。」

5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「トラフ部材」が装着された「粉粒体収納容器」は、その機能からみて、本件発明1の「薬剤容器」に相当し、同様に、前者の「振動フィーダ本体」は、後者の「薬剤フィーダの本体装置」に相当する。
(イ)甲1発明の「振動フィーダ本体に載置固定した粉粒体収納容器」は、その態様からみて、本件発明1の「本体装置を備えた薬剤フィーダに用いられる薬剤容器」に相当し、同様に、前者の「前記粉粒体収納容器は、・・・前記振動フィーダ本体に着脱可能に取りつけられ」は、後者の「前記薬剤容器は、薬剤フィーダの本体装置に着脱自在であって」に相当する。
(ウ)甲1発明の「粉粒体収納容器」は、「粉粒体として薬剤を充填する市販の容器」であるから、その内部である「粉粒体収納容器内」は、本件発明1の「薬剤を貯留する薬剤貯留部」に相当する。
(エ)甲1発明の「トラフ部材」の「トラフ部の先端」は、粉粒体が「順次排出される」部分であるから、本件発明1の「薬剤を排出する薬剤排出部」に相当する。
(オ)甲1発明は、「振動により粉粒体収納容器内に充填してある粉粒体は、前記粉粒体排出用の狭窄した開口を通過して前記トラフ部に入り、前記粉粒体は前記トラフ部材の前記トラフ部を介して前記トラフ部の先端から順次排出される」ものであるから、甲1発明の「粉粒体収納容器内」と「トラフ部の先端」との間に位置する「トラフ部」は、本件発明1の「薬剤の通路となる領域」に相当する。
(カ)甲1発明の「粉粒体排出用の狭窄した開口」は、「トラフ部材」の「粉粒体収納容器に対して直接装着する本体部」「の前記トラフ部に連接する部分」に形成されることによって、「トラフ部」と「粉粒体収納容器内」との間に位置することになるから、本件発明1の「前記領域と前記薬剤貯留部との間」の「狭窄開口部」に相当する。
(キ)甲1発明の「前記振動フィーダ本体からの振動は前記粉粒体収納容器及びこの粉粒体収納容器に装着したトラフ部材に伝達され、この振動により粉粒体収納容器内に充填してある粉粒体は、前記粉粒体排出用の狭窄した開口を通過して前記トラフ部に入り、前記粉粒体は」「前記トラフ部の先端から順次排出される」は、その作用からみて、本件発明1の「前記本体装置によって薬剤容器を振動させるものであり、」「前記薬剤容器を振動させることによって、前記薬剤貯留部内の薬剤が前記狭窄開口部を通過して前記薬剤の通路となる領域に入り、」「前記薬剤が前記薬剤排出部から排出される」に相当する。

イ 以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。

[一致点]
「本体装置を備えた薬剤フィーダに用いられる薬剤容器であって、
前記薬剤容器は、薬剤フィーダの本体装置に着脱自在であって、
前記本体装置によって薬剤容器を振動させるものであり、
当該薬剤容器は、薬剤を貯留する薬剤貯留部と、薬剤を排出する薬剤排出部があり、
前記薬剤貯留部と前記薬剤排出部との間に薬剤の通路となる領域があり、
前記領域と前記薬剤貯留部との間には狭窄開口部があり、
前記薬剤容器を振動させることによって、前記薬剤貯留部内の薬剤が前記狭窄開口部を通過して前記薬剤の通路となる領域に入り、前記薬剤が前記薬剤排出部から排出されることを特徴とする薬剤容器。」

[相違点1]
本件発明1の「薬剤排出部」は、「内外を連通する開口部分を有し、」「外部に薬剤を排出する」ものであるのに対して、
甲1発明の「トラフ部材」は、「粉粒体収納容器に対して直接装着する本体部と、この本体部から突出形成したトラフ部とから構成され」ることにより、当該「トラフ部」上の「粉粒体」は、既に「粉粒体収納容器」の外部にあることになるから、甲1発明の「トラフ部の先端」は、内外を連通する開口部分を有さず、外部に「粉粒体」を排出するものではない点。

[相違点2]
本件発明1は、「可動蓋部を有し、前記薬剤排出部を閉じた状態と、前記可動蓋部が押圧片によって押圧されることで前記薬剤排出部を開いた状態にすることが可能であ」るのに対して、
甲1発明の「トラフ部の先端」は、可動蓋部を有しない点。

[相違点3]
本件発明1の「薬剤の通路となる領域」は、「先端側が窄められて」いるのに対して、
甲1発明の「トラフ部の先端側の幅は、前記粉粒体排出用の狭窄した開口側の幅と同等であり」、先端側が窄められていない点。

[相違点4]
本件発明1は、「薬剤が層流化され」るのに対して、
甲1発明の「粉粒体」が層流化されるかは、明らかでない点。

ウ 相違点1について検討する。
(ア)甲2技術について
本件発明1の「薬剤排出部」は、「薬剤容器を振動させることによって、」「薬剤が層流化されて、前記薬剤が」「排出される」部分であるから、当該「薬剤排出部」に対応する甲2技術の構成は、「散薬を徐々に供給する振動フィーダ63」「のトラフ64」の先端であると認められる。甲2技術は、「トラフ64」の先端に内外を連通する開口部分を有していないから、本件発明1の相違点1に係る構成を有しない。
なお、甲2技術の「排出部23」の「円筒先端からなる出口」は、「カセット21」の構成であるが、甲1発明の「トラフ部材」は、甲2技術の「カセット21」とは、その目的、機能、構造が全く異なるものであるから、甲2技術の「円筒先端からなる出口」を、本件発明1の「薬剤排出部」に相当する甲1発明の「トラフ部材」の「トラフ部の先端」に適用する動機付けはない。
(イ)甲3技術について
本件発明1の「薬剤排出部」に対応する甲3技術の構成は、「ホッパ61と、ホッパ61から散薬を散薬分包機70の環状凹溝72へ送り込むための案内部62と、その送り込みを定量で均一に行わせるため案内部62等へ与える振動を発生する振動体63とからな」る「フィーダ60」の「案内部62」の先端であると認められる。甲3技術は、「案内部62」の先端に内外を連通する開口部分を有していないから、本件発明1の相違点1に係る構成を有しない。
なお、甲3技術の「排出路35」の「円筒先端からなる出口」は、「カセット30」の構成であるが、甲1発明の「トラフ部材」は、甲3技術の「カセット30」とは、その目的、機能、構造が全く異なるものであるから、甲3技術の「円筒先端からなる出口」を、甲1発明の「トラフ部の先端」に適用する動機付けはない。
(ウ)甲4〜7技術について
甲4〜7技術は、いずれも「内外を連通する開口部分を有し、」「外部に薬剤を排出する」「薬剤排出部」に関する技術ではなく、本件発明1の相違点1に係る構成を有しない。
(エ)阻害要因について
甲1発明において、「トラフ部材」の「トラフ部の先端」に内外を連通する開口部分を設け、外部に「粉粒体」を排出するようにするためには、「トラフ部材」の全体が「粉粒体収納容器」の内部に位置するように「トラフ部材」及び「粉粒体収納容器」の構造を変更する必要があることは明らかである。
しかしながら、甲1発明の「トラフ部材」は、「粉粒体収納容器用の蓋に代えて、」「本来の蓋と同様の方法で前記粉粒体収納容器に対して装着され」るものであるから、「粉粒体収納容器」の外部に装着することしか想定されていないものといえる。そして、甲1発明の「粉粒体収納容器」は、「粉粒体として薬剤を充填する市販の容器」であり、上記4(1)イに「排出供給すべき粉粒体を収納している壜等の容器自体を振動フィーダのホッパとして利用する」と記載されているように、前記「市販の容器」自体を利用することが甲1発明の課題解決手段であるから、甲1発明において「粉粒体収納容器」の構造を変更することは想定されていないばかりか、そのような変更には阻害要因があるといえる。
(オ)よって、甲2〜7技術は、いずれも本件発明1の上記相違点1に係る構成を有さず、甲1発明において、「トラフ部材」の全体が「粉粒体収納容器」の内部に位置するように「トラフ部材」及び「粉粒体収納容器」の構造を変更することには阻害要因があるから、当該変更は、当業者が容易になし得たこととはいえない。

エ 相違点2について検討する。
(ア)甲2技術について
甲2技術は、本件発明1の「薬剤排出部」に対応する「トラフ64」の先端に可動蓋部を有していないから、本件発明1の相違点2に係る構成を有しない。
なお、甲2技術の「シャッタ27」は、「カセット21」の「排出部23の正面」に設けられた部材であるが、甲1発明の「トラフ部材」は、甲2技術の「カセット21」とは、その目的、機能、構造が全く異なるものであるから、甲2技術の「シャッタ27」を、甲1発明の「トラフ部の先端」に適用する動機付けはない。
(イ)甲3技術について
甲3技術は、本件発明1の「薬剤排出部」に対応する「案内部62」の先端に可動蓋部を有していないから、本件発明1の相違点2に係る構成を有しない。
なお、甲3技術の「シャッタ」は、「カセット30」の「排出路35の正面」に設けられた部材であるが、甲1発明の「トラフ部材」は、甲3技術の「カセット30」とは、その目的、機能、構造が全く異なるものであるから、甲3技術の「シャッタ」を、甲1発明の「トラフ部の先端」に適用する動機付けはない。
(ウ)甲4〜7技術について
甲4〜7技術は、いずれも可動蓋部に関する技術ではなく、本件発明1の相違点2に係る構成を有しない。
(エ)よって、甲2〜7技術は、いずれも本件発明1の相違点2に係る構成を有していないから、甲1発明の「トラフ部の先端」に可動蓋部を設けることは、甲2〜7技術から当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

オ 相違点3について検討する。
本件発明1の「薬剤の通路となる領域」の「先端側が窄められて」は、本件特許の明細書及び図面に記載された実施形態のうち、図12〜18に示され、段落【0095】及び【0096】等に記載された実施形態の「段部121」の態様が対応するものと認められる。当該実施形態においては、段落【0095】に記載のように、容器本体5Cは傾斜姿勢の右傾斜周壁53bC及び傾斜姿勢の左傾斜周壁53aCを有し、段落【0096】に記載のように、周壁下面12Cの薬剤排出部8C側に「段部121」があることから、当該「段部121」においては、容器本体5Cの幅が容器本体5Cの先端側及び下方側に向かうほど狭くなる態様とされているものと認められる。
甲1発明の「トラフ部」は、「粉粒体は前記トラフ部材の前記トラフ部を介して前記トラフ部の先端から順次排出される」という粉粒体の通路としての機能を有するものであるが、上記4(1)ア〜ケの記載事項からみて、甲1には、当該機能を実現するために、本件発明1の上記実施形態の「段部121」のような構造を設けるなどして、当該「トラフ部」の先端側を窄めることが必要あるいは有利であることは記載も示唆もされておらず、また、それが本件特許の出願時の技術常識であったともいえないから、当業者が甲1発明の「トラフ部」の先端側を窄めるように設計変更をする動機付けがあったとはいえない。
そして、甲2〜7技術は、いずれも薬剤の通路となる領域の先端側を窄める技術ではなく、本件発明1の相違点3に係る構成を有しないから、甲1発明において、その先端側を窄めるように「トラフ部」を変更することは、甲2〜7技術から当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

カ 相違点4について検討する。
本件発明1の「薬剤が層流化され」とは、本件特許の明細書の段落【0006】に「投入ホッパ205に投入された散薬は、投入ホッパ205の下端の開口から粉体フィーダ206のトラフ210に落ちる。そしてトラフ210が振動することによって、散薬は、ゆっくりと先端側に移動し、整流される。またトラフ210上を移動する内に、整流が進み、薬剤の流れは層流状態となる。即ち流れに対して直交する方向の断面における薬剤の分布が一定となり、かつ単位時間当たりに薬剤が進行する距離も一定となる。その結果、60グラムの散薬は均一に分散され、また時間あたり一定の速度でゆっくりと先端側に向かって移動する。」と記載されているように、「流れに対して直交する方向の断面における薬剤の分布が一定となり、かつ単位時間当たりに薬剤が進行する距離も一定となる」ことを意味すると理解される。
甲1発明は、「前記振動フィーダ本体からの振動は前記粉粒体収納容器及びこの粉粒体収納容器に装着したトラフ部材に伝達され、この振動により粉粒体収納容器内に充填してある粉粒体は、前記粉粒体排出用の狭窄した開口を通過して前記トラフ部に入り、前記粉粒体は前記トラフ部材の前記トラフ部を介して前記トラフ部の先端から順次排出される」ものであるから、「トラフ部」上の「粉粒体」に対して振動が作用することにより、当業者に周知の現象として、「粉粒体」の流れに対して直交する方向の断面における「粉粒体」の分布が一定となり、かつ単位時間当たりに「粉粒体」が進行する距離も一定となる、すなわち、「粉粒体」は「層流化」されるものと認められる。
よって、相違点4は、実質的な相違点ではない。

キ したがって、上記ウ〜オより、本件発明1は、甲1発明及び甲2〜7技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2〜13について
本件発明2〜13は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)で示した理由と同様に、甲1発明及び甲2〜7技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)小括
以上のとおり、本件発明1〜13は、甲1発明及び甲2〜7技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1〜13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとすることはできない。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-03-16 
出願番号 P2019-028565
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 栗山 卓也
津田 真吾
登録日 2021-03-31 
登録番号 6860832
権利者 株式会社湯山製作所
発明の名称 薬剤容器  
代理人 藤田 隆  

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