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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 特39条先願  C08G
審判 全部申し立て 特174条1項  C08G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1384252
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-18 
確定日 2022-05-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第6876750号発明「難燃性ポリウレタン樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6876750号の請求項1〜9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6876750号(請求項の数9。以下、「本件特許」という。)は、平成27年7月14日(優先権主張 平成26年7月14日 日本国)を国際出願日とする特願2015−537055号の一部を平成30年5月15日に新たな出願とした特願2018−94044号の一部を令和1年7月5日に新たな出願とした特願2019−125704号に係る特許であって、令和3年4月28日に設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は同年5月26日である。)。
その後、令和3年11月18日に、本件特許の請求項1〜9に係る特許に対して、特許異議申立人である石井豪(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
請求項1〜9に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項1〜9に係る発明を、項番順に「本件発明1」等という。)。

「【請求項1】
ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる硬化物を含む難燃性ポリウレタンフォームであって、
前記難燃性ポリウレタンフォームは、三量化触媒、発泡剤及び添加剤を含み、
前記添加剤が赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、及びアンチモン含有難燃剤からなる群から選択される一種以上の難燃剤とを含有し、
前記硬化物における、13C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3〜3.5の間であり、
前記硬化物を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下である、難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記硬化物を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下である、請求項1に記載の難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
イソシアネートインデックスが125〜1000の範囲である、請求項1又は2に記載の難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
比重が0.020〜0.130の範囲である、請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
前記添加剤がリン酸エステルを含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
前記添加剤がリン酸エステルと、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物からなる群から選択される一種以上の難燃剤とを含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項7】
前記添加剤が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として4.5重量部〜70重量部の範囲である、請求項1〜6のいずれかに記載の難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項8】
前記赤リンが、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として3.0重量部〜18重量部の範囲である、請求項1〜7のいずれかに記載の難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項9】
前記三量化触媒が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として0.1〜10重量部の範囲である、請求項1〜8のいずれかに記載の難燃性ポリウレタンフォーム。」

第3 特許異議申立書に記載された申立ての理由
申立人は、本件特許は(1)の理由があるから取り消されるべきものであると主張し、証拠方法として(2)の甲第1号証〜甲第11号証を提出した。
(1)申立ての理由
申立理由1(新規事項)
令和2年7月9日提出の手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

本件の願書に最初に添付した明細書には、本件発明1の「10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下である、難燃性ポリウレタンフォーム。」は記載されていない。

申立理由2(明確性
本件の請求項1〜9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

ア 発泡剤である水はイソシアネート基などと反応して消費され、反応後の硬化物であるポリウレタンフォームには存在しないのが技術常識であるから、請求項1〜9の記載には技術的な矛盾がある。
イ 請求項1を引用する請求項5及び6は、添加剤として赤リンを必須としない難燃性ポリウレタンフォームについて特許を請求しているのか不明瞭である。

申立理由3(実施可能要件
本件特許は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

そもそも難燃性ポリウレタンフォームの特性は、構成成分の具体的な種類や配合量により、大きく影響を受けることが、本件出願当時の技術常識であったといえるから、NMRのピーク強度比及び総発熱量が特定される請求項1〜9に係る発明は当業者に相当の試行錯誤を強いるものという他ない。

申立理由4(サポート要件)
本件の請求項1、3〜9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

本件明細書の【0145】の記載に接した当業者は、「10分間加熱でコーンカロリーメーターの総発熱量が8MJ/m2以下かつ20分加熱で9MJ/m2以下」であるものについては本件特許発明の課題(【0011】)を解決すると理解するが、「20分加熱で9MJ/m2以下」の規定が無い本件発明1、3〜9は上記総発熱量を満足していない。

申立理由5(実施可能要件及びサポート要件)
本件特許は、発明の詳細な説明について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるか、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

本件明細書の【0143】に記載の1000mLポリプロピレンビーカーで製造された発泡体から10cm×10cm×5cmの試験用サンプルを切り出すことは不可能であり、また、本件明細書の実施例(実施例1〜3)と甲1の実施例(実施例39,34及び46)とはイソシアネートインデックスのみが異なり、本件明細書の記載は正確性に疑いがあり、さらに、本件の図1及び図2に示された実施例1のNMRチャートが異なり、実施例1のピーク強度比は正確性に疑いがある。

申立理由6(先願)
請求項1〜2、4〜8に係る発明は、その出願日前の下記の甲第1号証に係る出願に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

本件発明1と先願1発明1とが同一である。
本件発明2と先願1発明2とが同一である。
本件発明4〜6と先願1発明1とが同一である。
本件発明7及び8と先願1発明3とが同一である。

申立理由7(先願)
請求項1〜3、5〜9に係る発明は、その出願日前の下記の甲第2号証に係る出願に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

本件発明1、5及び6と先願2発明8とが同一である。
本件発明2と先願2発明8とが同一である。
本件発明3と先願2発明8とが同一である。
本件発明7〜9と先願2発明8とが同一である。

申立理由8(先願)
請求項1〜3、5〜8に係る発明は、その出願日前の下記の甲第3号証に係る出願に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

本件発明1、5及び6と先願2発明6とが同一である。
本件発明2と先願2発明6とが同一である。
本件発明3と先願2発明8とが同一である。
本件発明7及び8と先願2発明6とが同一である。

申立理由9(新規性及び進歩性
請求項1〜9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第4号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、請求項1〜9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第4号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

申立理由10(新規性及び進歩性
請求項1〜9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、請求項1〜9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

申立理由11(進歩性
請求項1〜9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第6号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)証拠方法
甲第1号証:特願2019−165521号(特許第6683873号公報)
甲第2号証:特願2014−557418号(特許第6200435号公報)
甲第3号証:特願2018−21501号(特許第6481058号公報)
甲第4号証:国際公開第2014/112394号
甲第5号証:特開2015−78357号公報
甲第6号証:中国特許出願公開第102585148号明細書
甲第6−1号証:中国特許出願公開第102585148号明細書の訳文
甲第7号証:「建築基準法に基づく性能評価の概要及び防火材料・防耐火構造の性能評価の実際」GBRC、114、2003、pp.39〜46
甲第8号証:特開2008−88355号公報
甲第9号証:特開2010−53267号公報
甲第10号証:特開2004−50495号公報
甲第11号証:特開2006−321882号公報
(以下、甲第1号証〜甲第11号証を、順に「甲1」等という。また、甲1〜甲3を、順に「先願1」等ともいう。)

第4 当審の判断
当審は、以下に述べるとおり、特許異議申立書に記載した理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできないと判断する。

1 申立理由1(新規事項の追加)について
(1)令和2年7月9日提出の手続補正の内容
当該手続補正は、特許請求の範囲の請求項1を、「ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含む難燃性ウレタン樹脂組成物であって、該難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物における、13C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3〜3.5の間である難燃性ウレタン樹脂組成物。」から、「ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる硬化物を含む難燃性ポリウレタンフォームであって、
前記難燃性ポリウレタンフォームは、三量化触媒、発泡剤及び添加剤を含み、
前記添加剤が赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物からなる群から選択される一種以上の難燃剤とを含有し、
前記硬化物における、13C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3〜3.5の間であり、
前記硬化物を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下である、難燃性ポリウレタンフォーム。」に補正する事項を含むものである(当審注:下線は補正箇所を示す。)。

(2)判断
上記(1)の補正事項のうち、「前記硬化物を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下である」ことについて検討する。
本件特許の願書に最初に添付した明細書(以下、「出願当初明細書」という。)には、後記4(2)で述べるとおり、本件発明の課題が、高い難燃性を有し、かつ取扱いに優れた難燃性ポリウレタン組成物を硬化発泡して得られる難燃性ポリウレタンフォームを提供することにあることが示されていると解され、実施例及び比較例(【0142】〜【0149】)では、、硬化物であるポリウレタンフォームの発熱量試験において、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時及び20分経過時の総発熱量をそれぞれ測定し、「10分間加熱でコーンカロリーメーターの総発熱量が8MJ/m2以下かつ20分加熱で9MJ/m2以下の場合が合格である。本試験では10分間加熱で8MJ/m2を超えるものを×、10分間で8MJ/m2以下かつ20分加熱で8MJ/m2を超え9MJ/m2以下のものを△、10分間で8MJ/m2以下かつ20分間加熱で8MJ/m2以下のものを○、10分間で8MJ/m2以下かつ20分加熱で6MJ/m2以下のものを◎とした。」(【0145】)と記載され、加熱後10分経過時の総発熱量と20分経過時の総発熱量により、ポリウレタンフォームの難燃性が段階的に示されている。ここで、「10分間加熱で8MJ/m2を超えるものを×」との記載は、20分経過時の総発熱量に関係なく、10分間加熱で8MJ/m2を超えるポリウレタンフォームは難燃性が好ましくないと解される。また、出願当初明細書には、実施例1〜11及び比較例1〜3が記載され、比較例1〜3はいずれも10分経過時の総発熱量が8MJ/m2を超え、総発熱量の評価が×であるのに対して、実施例1〜11は10分経過時の総発熱量が2.0〜7.1MJ/m2であり、いずれも10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下であって、総発熱量の評価が◎、○及び△のいずれかであることが具体的に示されている。
このように、出願当初明細書には、20分経過時の総発熱量に依らず、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2を超えるポリウレタンフォームは難燃性が好ましくなく、本件発明の課題が難燃性の高いポリウレタンフォームの提供であって、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下であることを満たす具体例が記載されていることから、ポリウレタンフォームを、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分間経過時の総発熱量が8MJ/m2以下であることが実質的に記載されていると解される。
そうすると、令和2年7月9日提出の手続補正書により、「前記硬化物を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分間経過時の総発熱量が8MJ/m2以下である」ことを加える補正は、本件特許の願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、出願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえる。

2 申立理由2(明確性)について
(1)申立理由2のアについて
本件発明は「前記難燃性ポリウレタンフォームは、三量化触媒、発泡剤及び添加剤を含み」と特定され、発泡剤を含むものである。一方、本件明細書には、難燃性ウレタン樹脂組成物に使用する発泡剤の具体例について【0058】〜【0059】の記載があり、上記発泡剤として、水の他、種々の化合物が使用でき、難燃性ポリウレタンフォームに含まれる発泡剤は上記組成物に由来するものである。そして、樹脂組成物から形成されたフォームに発泡剤が、気化して気泡となった状態や、水のようにイソシアネート基と反応する発泡剤であっても、上記組成物を仕込んだときの状態で残存することがあるといえ、本件発明は、このようにして樹脂組成物に由来する発泡剤を含むものであると解される。
そうすると、本件発明は明確であり、申立理由は理由がない。

(2)申立理由2のイについて
本件発明5は「前記添加剤がリン酸エステルを含有する」と特定し、本件発明1を直接又は間接的に引用するものである。一方、本件発明1は「前記添加剤が赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、及びアンチモン含有難燃剤からなる群から選択される一種以上の難燃剤とを含有し」と特定するものであり、添加剤が赤リンと、リン酸エステル等から選択される難燃剤とを含有するものである。
そうすると、本件発明5は、リン酸エステル等から選択される上記難燃剤としてリン酸エステルを含有することを特定したものであり、添加剤として、赤リンとリン酸エステルを含有するものであることは明らかである。
本件発明6は「前記添加剤がリン酸エステルと、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物からなる群から選択される一種以上の難燃剤とを含有する」と特定し、本件発明1を直接又は間接的に引用するものである。そして、上述のとおり、本件発明1は、赤リンと、リン酸エステル等から選択される難燃剤とを含有するものであるから、本件発明6は、赤リンと、リン酸エステルと、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物からなる群から選択される一種以上の難燃剤とを含有するものであることは明らかである。
よって、申立理由は理由がない。

3 申立理由3(実施可能要件)について
(1)実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について
特許法第36条第4項第1号は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と定めている。
これは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が、明細書に記載した事項と出願時の技術常識とに基づき、物の発明については、その物を作れ、かつ、その物を使用することができ、物を生産する方法の発明については、その方法により物を生産することができる程度に、発明の詳細な説明を記載しなければならないことを意味するものである。そこで、この点について以下に検討する。

(2)判断
本件明細書には、【0025】〜【0029】(ポリイソシアネート)、【0030】〜【0047】(ポリオール)、【0049】〜【0050】(ウレタン樹脂のイソシアネートインデックス)、【0052】〜【0057】(触媒)、【0058】〜【0061】(発泡剤)、【0065】〜【0109】(添加剤)、【0119】〜【0124】及び【0147】〜【0149】(強度比(A/B))、【0138】〜【0140】及び【0143】〜【0145】(耐火試験)、【0142】〜【0149】(実施例)の記載があり、各成分及び各剤の種類及び配合量、カルボニル基のピーク強度比及び発熱性試験の詳細、並びに、本件発明の具体例が示されている。
具体的には、本件明細書の【0052】〜【0054】に、ウレタン化触媒の種類及びその添加量が記載され、同じく【0056】【0057】に三量化触媒の種類及びその添加量が記載され、【0121】には難燃性ウレタン樹脂組成物における成分とその含有量が記載され、実施例1〜11にはそれぞれの難燃性ウレタン樹脂組成物とそれを発泡した難燃性ポリウレタンフォームのカルボニル基のピーク強度比が1.16〜3.08であったことが記載されている。また、本件明細書の【0065】〜【0109】には、赤リンの添加量、リン酸エステル等の各難燃剤の種類とその添加量が記載され、実施例1〜11には難燃性ポリウレタンフォームの10分経過時の総発熱量が2.8〜7.1MJ/m2であったことが記載されている。
そして、このような本件明細書の記載を基にし、必要に応じて本件出願時の技術常識を参酌して、当業者であれば、本件発明に係る難燃性ポリウレタンフォームを製造することができるものと解される。
なお、申立人は、本件明細書の記載から本件発明を製造することができない可能性を指摘するだけであり、具体的に実施可能要件を満たさない証拠を示していない。

(3)申立人の主張について
本件明細書は、本件発明に係る難燃性ポリウレタンフォームを当業者が製造できる程度に明確かつ十分に記載されていればよく、上記(2)で述べたとおり、本件発明の特定事項である各成分及び各剤、カルボニル基のピーク強度及び総発熱量について詳細に記載されている。そして、本件発明の特定事項ではない任意成分(【0110】〜【0113】に記載された成分及びその他の成分)や任意成分を含む場合に上記ピーク強度及び総発熱量を満たす手段等についても記載されていないことを理由に実施可能要件違反になるとまではいえない。

4 申立理由4(サポート要件)について
(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の判断手法
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点に立って判断する。

(2)本件発明が解決しようとする課題
本件明細書には、従来技術を示す文献を挙げ、いずれの文献も「ウレタンに由来するカルボニル基とイソシアヌレートに由来するカルボニル基の比と、難燃性ポリウレタン組成物の不燃性との関係については開示していない」(【0010】)こと、及び、「本発明の目的は、高い難燃性を発現でき、かつ取扱いに優れた難燃性ポリウレタン組成物を提供することにある」(【0011】)が記載されているから、本件発明の課題は、高い難燃性を有し、かつ取扱いに優れた難燃性ポリウレタン組成物を硬化発泡して得られる難燃性ポリウレタンフォームを提供することにあるものと解される。
ここで、上記取扱いとは、難燃性ポリウレタン樹脂組成物は「それぞれの成分を混合すると反応が始まり時間の経過と共に粘度が上昇し、流動性を失う」(【0130】)ものであるから、本件明細書の【0114】〜【0117】に記載されるように、難燃性ポリウレタン樹脂組成物の使用前は二以上に分割しておき、使用時に一つにまとめることにより硬化発泡が始まるようにしたことに基づく性能であると解される。そして、本件発明は、上記難燃性ポリウレタン組成物を硬化発泡して難燃性ポリウレタンフォームとしたものであり、難燃性ポリウレタン組成物の取扱い性は、本件発明に係る難燃性ポリウレタンフォームが直接的に解決しようとする課題とはいえないから、以下では、本件明細書は、本件発明に係る難燃性ポリウレタンフォームが高い難燃性を有することを当業者が認識できるように記載したものであるかを検討する。

(3)本件発明1について
本件明細書には、上記3(2)で述べたとおり、各成分及び各剤の種類及び配合量、カルボニル基のピーク強度比及び発熱性試験の詳細、並びに、本件発明の実施例が記載されており、カルボニル基のピーク強度比が0.3〜3.5の範囲にあるときに難燃性ポリウレタン組成物は高い難燃性を発現できること(【0120】)も記載されている。また、添加剤の赤リンやリン酸エステルは本件出願前に周知の難燃剤である。そして、実施例における総発熱量の評価は、総発熱量の評価が10分間加熱で8MJ/m2を超えるものを×としているところ、本件発明1の具体例である実施例1〜11は、◎、○又は△であって、本件発明1の特定事項を満たさない比較例1〜3と比べて、10分経過時の総発熱量において優れ、残渣状態においても優れており、高い難燃性を有することが示されているといえる。
そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記課題を解決できると認識できると解される。

(4)本件発明3〜9について
本件発明3〜9は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記(3)で本件発明1について述べたのと同じ理由により、発明の詳細な説明は、本件発明3〜9は上記課題を解決できると認識できるように記載されている。

(5)申立人の主張について
申立人は、「10分間加熱でコーンカロリーメーターの総発熱量が8MJ/m2以下かつ20分加熱で9MJ/m2以下」であるものについては本件発明の課題を解決するが、20分加熱で9MJ/m2以下の特定がない本件発明1、3〜9は課題を解決しない旨の主張をする。
しかしながら、上記(3)で述べたように、発明の詳細な説明には、実施例における総発熱量の評価では、20分加熱での総発熱量に依らず、10分間加熱で8MJ/m2を超えるものを×とし、本件発明として好ましくないことが示されており、上記課題を解決するためには、10分加熱で8MJ/m2以下であればよく、20分加熱で9MJ/m2以下であることは、必ずしも必要ないと解される。また、本件明細書の【0145】に「10分間加熱でコーンカロリーメーターの総発熱量が8MJ/m2以下かつ20分加熱で9MJ/m2以下の場合が合格である」と記載されているのは、実施例における発泡体の発熱性試験の合格基準であり、これを満たすものは本件発明の課題を解決するとは解されるが、これが本件発明の課題を解決するか否かの指標であるとはいえない。そして、本件発明が課題を解決できるか否かは、上記(3)で述べたように、本件明細書の記載全体、必要に応じて本件出願時の技術常識を参酌して判断すべきものであり、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記課題を解決できると認識できるものである。
そうすると、申立理由4は理由がないものである。

5 申立理由5(実施可能要件及びサポート要件)について
実施可能要件の判断は上記3(1)及び(2)に示したとおりであり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に違反するものではない。また、サポート要件の判断は上記4(1)及び(2)に示したとおりであり、本件発明1〜9はサポート要件に違反するものではない。
第3(1)の申立理由5に示した申立人の主張について、申立人が述べる寸法の1000mlビーカーであっても、サンプルの切り出し方向を工夫すれば10cm×10cm×5cmの試験用サンプルを切り出すことは可能である。また、本件明細書及び甲1の実施例で用いられたポリイソシアネートである「ミリオネートMR−200」のNCO含量が30.5〜32.0%であり(以下の参考文献を参照)、同じ商品名の化合物でも、NCOインデックスに直接関係する物性値に一定の幅があるものがあり、反応条件によっても得られる発泡体が異なるものになることがあると解され、2つの実施例でNCOインデックスの値が異なるとしても、それは、上記した一定の幅の範囲程度による影響であるといえ、本件明細書の実施例の記載に正確性の疑いはない。
なお、申立人は、図1における実施例1のNMRチャートから計算されるピーク強度比と、図2における実施例1のNMRチャートから計算されるピーク強度比とが異なる値になる証拠を具体的に示していない。
参考文献:東ソー株式会社ウェブサイト、ポリメリックMDI(ミリオネートMR)https://www.tosoh.co.jp/product/chloro/urethan/assets/millionate_mr.pdf

6 申立理由6(先願)について
(1)先願1に係る発明
甲1の請求項1〜4に係る発明は、令和3年4月15日に訂正請求された願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤、難燃剤を含む原料を反応させてなるポリウレタンフォームであって、
前記触媒が三量化触媒を含有し、
前記難燃剤が赤リンを含有し、前記赤リン以外にリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有し、
ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が7.8MJ/m2以下であり、
比重が0.030〜0.130の範囲であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項2】
少なくとも、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤、難燃剤を含む原料を反応させてなるポリウレタンフォームであって、イソシアネートインデックスが120〜1000の範囲であり、
前記触媒が三量化触媒を含有し、
前記難燃剤が赤リンを含有し、前記赤リン以外にリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有し、
ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が12.7MJ/m2以下であり、
比重が0.030〜0.130の範囲であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記難燃剤が、前記ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として4.5〜70重量部の範囲であり、
前記赤リンが、前記ウレタン樹脂100重量部を基準として3〜18重量部の範囲であり、
前記赤リンを除く難燃剤が、前記ウレタン樹脂100重量部を基準として1.5〜52重量部の範囲である請求項1または2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】(削除)」
(以下、請求項1〜4に係る発明を、項番順に「先願1発明1」等という。)

(2)先願1発明1について
ア 対比
本件発明1と先願1発明1と対比すると、両者は、
「ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる硬化物を含む難燃性ポリウレタンフォームであって、
前記難燃性ポリウレタンフォームは、三量化触媒、発泡剤及び添加剤を含み、
前記添加剤が赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、及びアンチモン含有難燃剤からなる群から選択される一種以上の難燃剤とを含有する、難燃性ポリウレタンフォーム。」で一致し、次の点で相違する。

相違点1a:本件発明1は、「前記硬化物における、13C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3〜3.5の間であ」るのに対して、先願1発明1は、上記ピークの強度比が不明である点

相違点1b:本件発明1は、「前記硬化物を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下である」のに対して、先願1発明1は、「ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が7.8MJ/m2以下であ」る点

イ 検討
まず、相違点1aについて検討する。
先願1発明1は「ポリウレタンフォーム」であるから、ウレタンのカルボニル基を有し、「三量化触媒」を含有するから、イソシアヌレートのカルボニル基を有するものであると解される。しかしながら、先願1発明1には、「13C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比」を決定する事項はないし、ましてや、上記「ピークの強度比」が「0.3〜3.5の間」であることを示す事項もない。
また、先願1の明細書にも、先願1発明1の特定事項を備えることにより、先願1発明1に係るポリウレタンフォームにおける上記「ピークの強度比」が「0.3〜3.5の間」であることを示す事項は記載されておらず、このことが本件優先日時点の技術常識であったと解すべき事情もない。

申立人は、「原材料と10分経過時の総発熱量が後者(又は前者)の規定を満足する難燃性ポリウレタンフォームであれば、その全てが相違点1(当審注:相違点1aと同じ)を満足することは、本件明細書の具体的な記載から明らかである」(申立書20頁20〜25行)と主張するが、本件明細書には上記主張を裏付ける記載は見当たらない。

そうすると、上記相違点1aは実質的な相違点であり、相違点1bについて検討するまでもなく、本件発明1は先願1発明1と同一の発明ではない。

(3)本件発明2、4〜8について
本件発明2、4〜8は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、本件発明1をさらに限定したものである。そして、先願1発明1〜3には、「13C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比」を決定する事項はないし、上記「ピークの強度比」が「0.3〜3.5の間」であることを示す事項もない。
そうすると、上記(2)で先願1発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明2は先願1発明2と同じ発明ではないし、本件発明4〜6は先願1発明1と同じ発明ではないし、本件発明7及び8は先願1発明3と同一の発明ではない。

(4)小括
本件発明1、2、4〜8は、先願1に係る発明と同一の発明ではなく、申立理由6により取り消すことはできない。

7 申立理由7(先願)について
(1)先願2に係る発明
甲2の請求項1〜8に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
難燃性ウレタン樹脂組成物であって、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み、
前記三量化触媒が、窒素含有芳香族化合物、カルボン酸アルカリ金属塩、3級アンモニウム塩および4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、
前記添加剤が、赤リンを必須成分とし、前記赤リン以外にリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つを組み合わせてなり、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物からなる発泡体を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が7.8MJ/m2以下であることを特徴とする、難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記難燃性ウレタン樹脂組成物からなる発泡体を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が7.8MJ/m2以下であり、20分経過時の総発熱量が12.7MJ/m2以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記添加剤が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として4.5〜70重量部の範囲であり、
前記赤リンが、前記ウレタン樹脂100重量部を基準として3〜18重量部の範囲であり、
前記赤リンを除く添加剤が、前記ウレタン樹脂100重量部を基準として1.5〜52重量部の範囲である、請求項1又は2に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記難燃性ウレタン樹脂組成物が、触媒を含み、
前記触媒が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として、前記三量化触媒を0.6〜10重量部の範囲で含む、請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記発泡剤が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として0.1〜30重量部の範囲である、請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ホウ素含有難燃剤が、酸化ホウ素、ホウ酸およびホウ酸金属塩からなる群により選ばれる少なくとも一つである、請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記ウレタン樹脂のイソシアネートインデックスが120〜1000の範囲である、請求項1〜6のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されてなることを特徴とする発泡体。」
(以下、請求項1〜8に係る発明を、項番順に「先願2発明1」等という。)

(2)本件発明1について
ア 対比
先願2発明1を引用する先願2発明8を独立形式で表記すると、以下のようになる。
「難燃性ウレタン樹脂組成物であって、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含み、
前記三量化触媒が、窒素含有芳香族化合物、カルボン酸アルカリ金属塩、3級アンモニウム塩および4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、
前記添加剤が、赤リンを必須成分とし、前記赤リン以外にリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つを組み合わせてなり、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物からなる発泡体を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が7.8MJ/m2以下であることを特徴とする、難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されてなることを特徴とする発泡体。」
そして、上記発泡体は、難燃性ウレタン樹脂組成物の三量化触媒、発泡剤及び添加剤を含有するものであると解される。

本件発明1と先願2発明8とを対比すると、先願2発明8の「発泡体」は、添加剤である赤リン及びリン酸エステル等の難燃剤を含有するものであるから、本件発明1の「難燃性ポリウレタンフォーム」に相当するといえる。

そうすると、本件発明1と先願2発明8とは、
「ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる硬化物を含む難燃性ポリウレタンフォームであって、
前記難燃性ポリウレタンフォームは、三量化触媒、発泡剤及び添加剤を含み、
前記添加剤が赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、及びアンチモン含有難燃剤からなる群から選択される一種以上の難燃剤とを含有する、難燃性ポリウレタンフォーム。」で一致し、次の点で相違する。

相違点2a:本件発明1は、「前記硬化物における、13C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3〜3.5の間であ」るのに対して、先願2発明8は、上記ピークの強度比が不明である点

相違点2b:本件発明1は、「前記硬化物を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下である」のに対して、先願2発明8は、上記10分経過時の総発熱量が7.8MJ/m2以下である点

イ 検討
まず、相違点2aについて検討すると、上記6(2)イで述べたのと同じ理由により、先願2発明8には、「13C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比」を決定する事項はないし、ましてや、上記「ピークの強度比」が「0.3〜3.5の間」であることを示す事項もない。
また、先願2の明細書にも、先願2発明8の特定事項を備えることにより、先願2発明8に係るポリウレタンフォームにおける上記「ピークの強度比」が「0.3〜3.5の間」であることを示す事項は記載されておらず、このことが本件優先日時点の技術常識であったと解すべき事情もない。

申立人は、本件発明1の原材料と10分経過時の総発熱量を満足するポリウレタンフォームは全て、相違点2aを満足することが、本件明細書の具体的な記載から明らかである旨の主張をするが(申立書23頁下2行〜24頁1行)、本件明細書には上記主張を裏付ける記載は見当たらない。

そうすると、相違点2aは実質的な相違点であり、相違点2bについて検討するまでもなく、本件発明1は先願2発明8と同一の発明ではない。

(3)本件発明2、3、5〜9について
本件発明2、3、5〜9は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、本件発明1をさらに限定したものである。そして、先願2発明8には、「13C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比」を決定する事項はないし、上記「ピークの強度比」が「0.3〜3.5の間」であることを示す事項もない。
そうすると、上記(2)で本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明2、3、5〜9は先願2発明8と同一の発明ではない。

(4)小括
本件発明1〜3、5〜9は、先願2に係る発明と同一の発明ではなく、申立理由6により取り消すことはできない。

8 申立理由8(先願)について
(1)先願3に係る発明
甲3の請求項1〜6に係る発明は、令和2年1月20日の訂正請求により訂正された願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
難燃性ウレタン樹脂組成物であって、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および難燃剤を含み、
前記難燃剤が、赤リンを必須成分とし、前記赤リン以外にリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つを含有し、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物からなる発泡体を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が7.8MJ/m2以下であることを特徴とする、難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記難燃性ウレタン樹脂組成物からなる発泡体を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が7.8MJ/m2以下であり、20分経過時の総発熱量が12.7MJ/m2以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】 (削除)
【請求項4】
前記難燃剤が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として4.5〜70重量部の範囲であり、
前記赤リンが、前記ウレタン樹脂100重量部を基準として3〜18重量部の範囲であり、
前記赤リンを除く難燃剤が、前記ウレタン樹脂100重量部を基準として1.5〜52重量部の範囲である、請求項1又は2のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ウレタン樹脂のイソシアネートインデックスが120〜1000の範囲である、請求項1、2、4のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1、2、4、5のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されてなることを特徴とする発泡体。」
(以下、請求項1〜6に係る発明を、項番順に「先願3発明1」等という。)

(2)本件発明1について
ア 対比
先願3発明1を引用する先願3発明6を独立形式で表記すると、以下のようになる。
「難燃性ウレタン樹脂組成物であって、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および難燃剤を含み、
前記難燃剤が、赤リンを必須成分とし、前記赤リン以外にリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つを含有し、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物からなる発泡体を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が7.8MJ/m2以下であることを特徴とする、難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されてなることを特徴とする発泡体。」
そして、上記発泡体は、難燃性ウレタン樹脂組成物の三量化触媒、発泡剤及び難燃剤を含有するものであると解される。

本件発明1と先願3発明6とを対比すると、先願3発明6の「発泡体」は、赤リン及びリン酸エステル等の難燃剤を含有するものであるから、本件発明1の「難燃性ポリウレタンフォーム」に相当するといえる。

そうすると、本件発明1と先願3発明6とは、
「ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる硬化物を含む難燃性ポリウレタンフォームであって、
前記難燃性ポリウレタンフォームは、三量化触媒、発泡剤及び添加剤を含み、
前記添加剤が赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、及びアンチモン含有難燃剤からなる群から選択される一種以上の難燃剤とを含有する、難燃性ポリウレタンフォーム。」で一致し、次の点で相違する。

相違点3a:本件発明1は、「前記硬化物における、13C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3〜3.5の間であ」であるのに対して、先願3発明6は、上記ピークの強度比が不明である点

相違点3b:本件発明1は、「前記硬化物を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下である」のに対して、先願3発明6は、上記10分経過時の総発熱量が7.8MJ/m2以下である点

イ 検討
まず、相違点3aについて検討すると、上記6(2)イで述べたのと同じ理由により、先願3発明6には、「13C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比」を決定する事項はないし、ましてや、上記「ピークの強度比」が「0.3〜3.5の間」であることを示す事項もない。
また、先願3の明細書にも、先願3発明6の特定事項を備えることにより、先願3発明6に係るポリウレタンフォームにおける上記「ピークの強度比」が「0.3〜3.5の間」であることを示す事項は記載されておらず、このことが本件優先日時点の技術常識であったと解すべき事情もない。

申立人は、本件発明1の原材料と10分経過時の総発熱量を満足するポリウレタンフォームは全て、相違点3aを満足することが、本件明細書の具体的な記載から明らかである旨の主張をするが(申立書27頁9〜11行)、本件明細書には上記主張を裏付ける記載は見当たらない。

そうすると、相違点3aは実質的な相違点であり、相違点3bについて検討するまでもなく、本件発明1は先願3発明6と同じ発明ではない。

(3)本件発明2、3、5〜8について
本件発明2、3、5〜8は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、本件発明1をさらに限定したものである。そして、先願3発明6には、「13C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比」を決定する事項はないし、上記「ピークの強度比」が「0.3〜3.5の間」であることを示す事項もない。
そうすると、上記(2)で本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明2、3、5〜8は先願3発明6と同じ発明ではない。

(4)小括
本件発明1〜3、5〜8は、先願3に係る発明と同一の発明ではなく、申立理由8により取り消すことはできない。

9 申立理由9(甲4を主引用文献とする新規性及び進歩性)について
(1)本件特許の優先権の主張について
特願2014−144008号(以下、「優先権主張の基礎出願」という。)の願書に最初に添付した明細書(以下、「優先権主張の基礎出願の当初明細書」という。)には、「ISO−5660に準拠し、輻射熱強度50kW/m2にて20分間加熱したときの」総発熱量であり(【0142】)、「20分間加熱でコーンカロリーメーターの総発熱量が8MJ/m2以下の場合に合格であるが、本試験では20分間加熱で8MJ/m2を超えるものを×、20分間加熱で8MJ/m2以下のものを◎とした。」(【0143】)、実施例1〜4では、10分経過時の総発熱量がそれぞれ3.8MJ/m2、2.0MJ/m2、4.7MJ/m2、3.7MJ/m2以下であり、かつ20分経過時の総発熱量も8MJ/m2以下の数値であったこと【表1】が記載されている。そして、20分経過時の総発熱量は、上述のとおり加熱を始めてから20分経過時までの総発熱量であるから、【0143】に記載された「20分間加熱でコーンカロリーメーターの総発熱量が8MJ/m2以下の場合」は、10分間加熱での総発熱量が8MJ/m2以下であることは明らかであり、実施例1〜4もそのようになっている。これらのことから、優先権主張の基礎出願の当初明細書には、本件発明1における「10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下である」ことが実質的に記載されているといえる。
仮にそのようにいえないとしても、所定時間加熱時の総発熱量が小さいポリウレタンフォームを指向することは本件特許の優先日時点の技術常識であり、優先権主張の基礎出願の当初明細書にも、「本発明の目的は、高い難燃性を発現でき…た難燃性ポリウレタン組成物を提供する」(【0011】)、「20分間加熱でコーンカロリーメーターの総発熱量が8MJ/m2以下の場合に合格である」(【0143】)など上記技術常識と同趣旨の記載があるから、優先権主張の基礎出願の当初明細書に記載された「8MJ/m2以下」を用いて、当初明細書の実施例で測定される「10分経過時の総発熱量」(表1)の範囲を特定することが、当初明細書及び特許請求の範囲の記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入することになるとはいえない。
そうすると、本件発明1において、「放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下である」と特定することは、優先権主張の基礎出願の願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、本件発明1〜9の新規性及び進歩性の判断の基準日は、本件特許の優先日である2014年(平成26年)7月14日である。

(2)甲4の公知日
甲4が頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった日は、国際公開日である2014年7月24日であるから、甲4は、本件特許の優先日後に公知になった文献である。
そうすると、甲4は、本件発明の新規性及び進歩性を否定する証拠とはなり得ず、申立理由9は根拠がない。

(3)小括
よって、本件発明1〜9は、申立理由9によって取り消すことはできない。

10 申立理由10(甲5を主引用文献とする新規性及び進歩性)について
上記8(1)で述べたように、本件特許の優先日は2014年(平成26年)7月14日であり、甲5が頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった日は、出願公開日である平成27年(2015年)4月23日であるから、甲5は、本件特許の優先日後に公知になった文献である。
そうすると、甲5は、本件発明の新規性及び進歩性を否定する証拠とはなり得ず、申立理由10は根拠がない。

11 申立理由11(甲6を主引用文献とする進歩性)について
(1)甲6に記載された事項及び甲6に記載された発明
甲6(甲6の記載事項と記載箇所は甲6−1を用いた。)には、請求の範囲、[0008]、[0033]、[0044]〜[0047]、[0051]、[0053]〜[0077]、実施例1〜7の事項が記載されており、実施例4に着目すると、以下の発明が記載されているといえる。

「ポリオール2(無水フタル酸とDEGの重縮合で得られる、水酸基価が200mgKOH/gで平均官能価が2のポリオール)25重量%、
ポリオール4(ジメチルテレフタレート、DEG、アジピン酸を原料として、エステル交換反応や重縮合などの反応により得られる、水酸基価が250mgKOH/gで平均官能価が2のポリオール)10重量%、
ポリオール7(エチレンジアミンを開始剤としてポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドと重合させて得られる、重量平均分子量が300で、平均官能価が4のポリオール)3重量%、
反応性難燃剤(FR−130(広東万華栄威ポリウレタン有限公司製造、テトラブロモビスフェノールAとエチレンオキシド/プロピレンオキシドとの反応生成物を主体とする反応性難燃剤、水酸基価が130mgKOH/g)8重量%、
固体難燃剤1(RM4−7081(道康寧公司製造、シリコーン難燃剤)5重量%
固体難燃剤2(HP1250(上海洽普化工有限公司製造、赤リン)10重量%、
液体有機難燃剤(トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート60wt%とトリエチルホスフェート40wt%の混合物)13重量%、
水(蒸留水)2重量%、
触媒(15wt%のPC5、25wt%のPC8、25wt%のPC46、35wt%のTMR−2、の混合物(PC5、PC8、PC46、TMR−2はいずれも、ガス製品・化学公司が製造するアミン及び第4級アンモニウム塩型触媒))3重量%、
泡安定剤(B8525(高斯米特公司製造、ポリシロキサン化合物)3重量%、
発泡剤(HCFC−141b(浙江三美公司製造、ジクロロフルオロエタン)18重量%、からなる配合材料と、
ポリイソシアネート原材料(煙台万華ポリウレタン股分有限公司製造のPM400、そのNCO含量は30.9%)160重量%を、
撹拌機の中で8〜10秒間(回転数300rpm)撹拌混合させた後、予め55℃に加熱しておいたアルミニウム製の金型の中に、撹拌した混合物を素早く注ぎ、混合物を発泡させて得られたポリイソシアヌレートフォーム」(以下、「甲6発明」という。)

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲6発明とを対比する。
甲6発明の「ポリイソシアネート」は、本件発明1の「ポリイソシアネート化合物」に相当し、甲6発明の「ポリオール2」、「ポリオール4」及び「ポリオール7」は、本件発明1の「ポリオール化合物」に相当する。
甲6発明の「触媒」の「第4級アンモニウム塩型触媒」は、本件明細書の【0056】の記載から、本件発明1の「三量化触媒」に相当する。
甲6発明の「水」及び「発泡剤」は、本件明細書の【0059】の記載から、本件発明1の「発泡剤」に相当する。
甲6発明の「固体難燃剤2」は「赤リン」を含むものであるから、本件発明1の「赤リン」に相当する。
甲6発明の「液体有機難燃剤」は、「トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート60wt%とトリエチルホスフェート40wt%の混合物」であるから、本件発明1の「難燃剤」である「リン酸エステル」に相当する。
そして、甲6発明における「ポリイソシアヌレートフォーム」は、本件発明1における「難燃性ポリウレタンフォーム」に相当するといえる。

そうすると、本件発明1と甲6発明とは、
「ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる硬化物を含む難燃性ポリウレタンフォームであって、
前記難燃性ポリウレタンフォームは、三量化触媒、発泡剤及び添加剤を含み、
前記添加剤が赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、及びアンチモン含有難燃剤からなる群から選択される一種以上の難燃剤とを含有する、難燃性ポリウレタンフォーム。」で一致し、次の点で相違する。

相違点6a:本件発明1は、「前記硬化物における、13C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3〜3.5の間であ」であるのに対して、甲6発明は、上記ピークの強度比が不明である点

相違点6b:本件発明1は、「前記硬化物を、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下である」のに対して、甲6発明は、上記総発熱量が不明である点

イ 検討
事案に鑑みて、相違点6bから検討する。
甲7には、建築基準法に基づく防火材料に関する性能評価に関して、不燃材料は、不燃性試験、発熱性試験、ガス有害性試験の3試験法が規定され、「20分間の加熱に対して燃焼しないこと。防火上有害な変形・溶融・亀裂その他の損傷を生じないこと。」が評価されること、準不燃材料は、発熱性試験、模型箱試験、ガス有害性試験の3試験が規定され、「10分間の加熱に対して燃焼しないこと。防火上有害な変形・溶融・亀裂その他の損傷を生じないこと。」が評価されること、難燃材料は、準不燃材料の試験法と同じであり、5分間の加熱に対する性能が要求されること、発熱性試験(ISO−5660−1)は、試験体(寸法99mm×99mm)を水平に置き、その上方からコーン型の電気ヒーターにより50kW/m2の輻射加熱を与え、電気スパークの口火により着火させ、燃焼性を発熱量により判定すること、その判定基準は総発熱量が8MJ/m2以下であること、が記載されている(42〜43頁の「3.新試験・評価方法の概要」、「4.新試験方法」)。
甲8〜甲11には、ISO−5660に準拠した発熱性試験(コーンカロリーメータ試験)の評価基準として、20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であることが記載されている(甲8の【0037】及び【0038】、甲9の【0041】、甲10の【0061】〜【0065】、甲11の【0066】)。
しかしながら、甲6発明のポリイソシアヌレートフォームは、その成分及び含有量によって決まる防火性能があるのであり、甲6には、本件発明1の「ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下」となる防火性能は記載されていないから、この防火性能を満たすように甲6発明の成分やその含有量を変更することが動機づけられるとはいえない。また、甲7〜甲11に記載されるように、上記「10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下」となる防火性能が本件優先日前に周知の事項であったとしても、甲6発明におけるどの成分をどのような含有量にすれば、この総発熱量を達成できるのかは、甲6に何ら記載されていないのであるから、甲6発明を上記「10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下」にすることが動機づけられない。
そうすると、甲6発明において、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえず、相違点6aについて検討するまでもなく、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(3)本件発明2〜9について
本件発明2〜9は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記(2)で本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明2〜9は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)小括
したがって、本件発明1〜9は、甲6に記載された発明、並びに甲6〜甲11に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件発明1〜9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-04-21 
出願番号 P2019-125704
審決分類 P 1 651・ 55- Y (C08G)
P 1 651・ 113- Y (C08G)
P 1 651・ 4- Y (C08G)
P 1 651・ 537- Y (C08G)
P 1 651・ 121- Y (C08G)
P 1 651・ 536- Y (C08G)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 橋本 栄和
近野 光知
登録日 2021-04-28 
登録番号 6876750
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 難燃性ポリウレタン樹脂組成物  
代理人 田口 昌浩  
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