• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04H
管理番号 1384282
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-12-17 
確定日 2022-05-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6889550号発明「機械式駐車場」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6889550号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6889550号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成28年12月19日に特許出願され、令和3年5月25日に特許の設定登録がされ、令和3年6月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1ないし6に係る特許に対し、令和3年12月17日に特許異議申立人川股くみ子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6889550号の請求項1ないし6の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、全体の発明を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
乗降室に進入した車両を格納棚へ移動させる機械式駐車場であって、
ユーザによる第1の認証操作により正規ユーザであると認証された場合に乗降室扉を開かせ、ユーザによる第2の認証操作により正規ユーザであると認証され、かつ、第1の認証操作における第1の認証情報と第2の認証操作における第2の認証情報とが一致する場合に乗降室扉を閉じさせ、前記乗降室に進入した車両を格納棚へ移動させる管理装置を備え、
前記管理装置は、認証情報を入力可能な操作入力部と、管理者入力部と、表示部とを、前記乗降室の外側に有し、前記管理者入力部で当該機械式駐車場の係員による管理者入力を受けると、第2の認証操作を実行しないまま放置している放置ユーザに関する認証情報を前記表示部に出力することを特徴とする機械式駐車場。
【請求項2】
前記管理装置は、所定の契機により、第2の認証操作を実行しないまま放置している放置ユーザに関する情報を当該機械式駐車場の係員が参照する表示部に出力することを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車場。
【請求項3】
前記管理装置は、放置ユーザに、第2の認証操作を実行されていない旨を通知することを特徴とする請求項1または2に記載の機械式駐車場。
【請求項4】
乗降室内にいる人を検出する人検出手段を備え、
前記管理装置は、第2の認証操作が実行されないまま所定時間経過した場合にその旨を係員に通報する通報部を含み、
前記通報部は、前記人検出手段が人を検出している場合は前記所定時間を経過しても通報しないことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の機械式駐車場。
【請求項5】
乗降室の入出庫口前に存在する車両を検出する車両検出手段を備え、
前記管理装置は、第2の認証操作が実行されないまま所定時間経過した場合にその旨を係員に通報する通報部を含み、
前記通報部は、前記車両検出手段が車両が去ったことを検出した場合は前記所定時間の経過を待たずに通報することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の機械式駐車場。
【請求項6】
前記所定時間は、ユーザごとに調整可能であることを特徴とする請求項4または5に記載の機械式駐車場。」

第3 特許異議申立理由の概要及び証拠
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立て理由を主張するとともに、証拠方法として以下に示す各甲号証を提出している。
(1)本件発明1ないし4は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)本件発明5は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第5号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(3)本件発明6は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術事項、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第5号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

2 証拠
甲第1号証:特開2016−102345号公報
甲第2号証:特開2012−26121号公報
甲第3号証:特開平7−91102号公報
甲第4号証:特開2002−194914号公報
甲第5号証:特開2013−30038号公報

第4 各甲号証の記載
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は決定で付した。以下同様。)
ア「【0001】
本発明は、機械式駐車装置の扉操作忘れ報知装置、機械式駐車装置、及び機械式駐車装置の扉操作忘れ報知方法に関するものである。」

イ「【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、入出庫扉に対する操作忘れが生じても、より早期にエラーを解消して次の利用者による入出庫操作を可能とする、機械式駐車装置の扉操作忘れ報知装置、機械式駐車装置、及び機械式駐車装置の扉操作忘れ報知方法を提供することを目的とする。」

ウ「【0027】
図1は、本第1実施形態に係る機械式駐車装置1の一例を示すエレベータ式の機械式駐車装置の縦断面図である。なお、本第1実施形態に係る機械式駐車装置1は、複数の駐車スペースに搬送機で駐車車両を入出庫させる機械式駐車装置であれば幅広く適用できるものであって、以下の説明にあるエレベータ式の立体駐車場のみに限定されるものではない。
【0028】
機械式駐車装置1は、複数の車両2を収容可能なエレベータ式のタワー型立体駐車場施設であり、入出庫口3と入出庫扉4とが設けられた駐車塔5を備えている。駐車塔5の地上階は、車両2を入出庫させる乗入室7となっており、その床面には車両2の方向を転換させるターンテーブル8が設置されている。ターンテーブル8は、乗入室7の床面に形成された凹状のピット9内に旋回板10と旋回駆動部11が設けられた構成である。
【0029】
駐車塔5の中心部には垂直な昇降通路13が形成されており、この中にリフト14(エレベータ状の搬送機)が上下に昇降可能に設けられている。リフト14は、例えば駐車塔5の上部に設けられた図示しないウインチから下方に延びる複数本のワイヤロープ15に四隅を吊持され、上記ウインチが起動することにより昇降通路13内を上下に昇降することができる。
【0030】
一方、昇降通路13の両側には車両格納棚17(駐車スペース)が設けられている。この車両格納棚17は、昇降通路13を挟むようにして上下に多階層状に設けられており、それぞれの車両格納棚17には車両2を積載するためのパレット18が1枚ずつ収容されている。なお、車両格納棚17の支柱等は図示が省略されている。
【0031】
リフト14と車両格納棚17の床面には、両者14,17の床面の高さが一致した時に、空荷のパレット18、または車両2が積載されたパレット18を、リフト14から車両格納棚17に、または車両格納棚17からリフト14に、スムーズに受け渡すことができる図示しない受渡機構が設けられている。・・・
【0032】
図2は、乗入室7を示す斜視透視図である。外側から見て、入出庫扉4の左側に非常用出入口20があり、入出庫扉4の上部に青と赤のランプを備えた管制灯21が設けられている。また、例えば入出庫扉4に向かって右側に機側操作盤22が設けられている。この機側操作盤22は、この機械式駐車装置1に入庫する各車両2の利用者により操作される。符号23は、機械式駐車装置1の制御状態を示す三色灯である。
【0033】
乗入室7の内部には、中央部にパレット18が配置されるスペースがあり、入出庫扉4の正面の壁には車両2の位置をドライバーが確認するための鏡24と、「前進」、「停車」、「後退」の案内を行う電光式の停車位置指示灯25が設けられている。
【0034】
また、乗入室7の内部各所には、乗入室7の内部における車両2および人等の存在や、車両2の大きさ、停車位置等を検知するための複数のセンサ30が設けられている。停車位置指示灯25は、各センサ30により検知される車両位置のデータに基づいて、車両2のドライバーに車両位置の案内を行う。
【0035】
乗入室7における各センサ30は、それぞれ2個一組となって対向しており、その間に赤外線ビームが配光され、この赤外線ビームが車両2や人等によって遮光されるとセンサ30がONになり、その検知信号が制御装置40に伝達されるようになっている。
【0036】
さらに、乗入室7の内部状況を撮影する、例えば4基の乗入室カメラ35(35A〜35D)が設置されている。これらの乗入室カメラ35A〜35Dは、それぞれ乗入室7の異なる壁面(4面)に取り付けられており、乗入室カメラ35Aは乗入室7内に停車した車両2の正面を撮影し、乗入室カメラ35Bは車両2の後面、乗入室カメラ35Cは車両2の左側面、乗入室カメラ35Dは車両2の右側面をそれぞれ撮影する。
【0037】
また、乗入室7の内部、あるいは乗入室7の外部に、この機械式駐車装置1の全体の制御を行う制御装置40が設置されている。制御装置40は、リフト14による一連の入出庫操作を実行する装置である。
【0038】
図3は、機側操作盤22の斜視図である。機側操作盤22は、風雨からの保護と悪戯防止のために金属製の筐体43に収容されており、この筐体43には施錠可能な蓋44が設けられている。利用者が機側操作盤22を操作する際には、施錠を解錠して蓋44を開き、機側操作盤22にアクセスする。なお、例えば利用者が携帯しているリモコン送信機を図示省略のLF送信アンテナ及びRF受信アンテナを用いて、利用者の接近とともに自動的に蓋44の施錠を解錠するようにしてもよい。
【0039】
機側操作盤22は、利用者が認証操作および入出庫扉4の開閉、リフト14の起動といった機械操作を行うためのタッチパネル式の操作画面45と、リモコン送信機から発信されるトランスポンダ信号等を読み込むためのリーダー36と、利用者に操作方法を音声で案内するためのスピーカー47と、非常停止ボタン48等が配置される。
【0040】
操作画面45には、操作ガイド等の表示部45aと、テンキー等の入力部45bとが表示される。これらの表示は、必ずしも操作画面45の特定の区画に表示されるものではなく、操作画面45全体が表示部45aになったり、入力部45bになったりすることもある。
【0041】
また、機側操作盤22には、例えば人感センサである利用者検知部が設けられ、利用者が機側操作盤22の正面に立ったことを検知する。
【0042】
図4は、出庫予約盤22Bを示す斜視図である。出庫予約盤22Bは、利用者による出庫予約を受け付ける操作盤である。出庫予約盤22Bは、図1に示す機械式駐車装置1の入出庫扉4に対して遠隔位置にある、例えばマンションのロビー等に設けられている。なお、遠隔位置とは、乗入室7の入出庫扉4が視認できない位置でもある。
【0043】
出庫予約盤22Bには、タッチパネル式のディスプレイ画面41Bと、トランスポンダリーダー36Bと、LF送信アンテナ46Bと、RF受信アンテナ48Bと、利用者検知部47Bとが設けられている。
【0044】
LF送信アンテナ46Bは、利用者が所持するリモコン送信機に対して利用者を識別するための認証番号(利用者ID)を問い合わせるリモコン照合信号SDを送信し、その最大到達距離は、出庫予約盤22Bの直近に居る利用者の位置まで、例えば0.5〜1メートル程度に設定されている。
・・・
【0051】
ここで、入出庫扉4の操作は、安全性の観点から利用者自身が実行することが求められており、入出庫扉4の操作忘れが生じるとエラーとなり、次の利用者による入出庫操作ができない場合が生じる。
そこで、本第1実施形態に係る機械式駐車装置1は、入出庫扉4の閉め忘れ又は開け忘れを利用者に報知する扉操作忘れ報知装置60を備える。
【0052】
図6は、実施形態に係る扉操作忘れ報知装置60の電気的構成を示す機能ブロック図である。なお、扉操作忘れ報知装置60は、制御装置40に備えられており、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
【0053】
扉操作忘れ報知装置60は、操作忘れ検出部62、警告発報部64、及び通信部66を備える。
【0054】
操作忘れ検出部62は、入出庫扉4の開閉を必要としてから開閉操作が所定時間(以下「操作忘れ判定時間」という。)以上されていないか否かを検出する。
上記操作忘れ判定時間とは、例えば、入出庫扉4の操作忘れが生じエラーとなったと判定される時間であり、例えば、入庫の場合では乗入室7から利用者が退出してからの経過時間であり、出庫の場合では乗入室7から車両2が退出してからの経過時間である。
なお、入出庫扉4の開閉状態は、入出庫扉センサ68で検知され、検知結果が操作忘れ検出部62に入力される。
【0055】
警告発報部64は、操作忘れ検出部62によって入出庫扉4の操作忘れが検出された場合、入出庫扉4の開閉操作をするべき利用者の情報機器(以下「利用者情報端末」という。)70に対して、通信部66を介して開閉操作の実行を促す警告情報を報知する。
利用者情報端末70は、機械式駐車装置1の利用者が閲覧可能な予め定められた情報機器であり、例えば利用者が携帯する携帯電話やスマートフォン等の携帯型情報端末装置や、通信機能を有するカーナビゲーション装置等である。利用者情報端末70の電話番号やメールアドレスは、利用者IDと共に登録情報記憶部72に記憶されている。
本第1実施形態に係る警告発報部64は、一例として、利用者情報端末70及び後述する管理者用情報機器74やサービス員用情報機器76に対して電子メール(Eメール)によって、警告情報を報知する。
【0056】
なお、登録情報記憶部72には、警告情報を報知した回数が利用者毎に記憶される。
【0057】
通信部66は、機械式駐車装置1の利用者情報端末70、機械式駐車装置1の管理者が有する情報機器である管理者用情報機器74、及び機械式駐車装置1の保守及び点検等を行うサービス員が有する情報機器であるサービス員用情報機器76との通信が可能とされている。
管理者用情報機器74、サービス員用情報機器76は、例えば携帯電話やスマートフォン等の携帯型情報端末装置、管理者やサービス員の待機場所に設置されているパソコン等である。
また、通信部66は、警告情報を利用者情報端末70等に送信したり、利用者情報端末70等からの情報を受信し、受信した情報をモニタ制御部78に出力する。」

エ「【0061】
次に、本第1実施形態に係る扉操作忘れ報知装置60によって実行される扉閉め忘れ処理について説明する。
【0062】
なお、扉閉め忘れ処理を行う場合、乗入室7内における車両2の存在の有無は問われない。すなわち、入庫又は出庫が完了した後に、利用者が入出庫扉4を閉め忘れた場合のみならず、例えば、利用者が入庫呼び出しを行い、パレット18が乗入室7に到着して入出庫扉4が開かれたものの、利用者が車両2を入庫せずに、入出庫扉4が操作忘れ判定時間以上開状態のままでも扉閉め忘れ処理が行われる。同様に、利用者が出庫呼び出しを行い、車両2が乗入室7に到着して入出庫扉4が開かれたものの、利用者が車両2を出庫せずに、入出庫扉4が操作忘れ判定時間以上開状態のままでも扉閉め忘れ処理が行われる。
【0063】
図7は、本第1実施形態に係る車両2の入庫時の扉閉め忘れの流れを示すフローチャートである。図7では、左側が各操作盤等の動作状況を示し、右側が機械式駐車装置1の動作状況を示す。
【0064】
入庫する車両2が入庫予約盤22C前に到着すると(S100)、車両2に搭乗している利用者は、車内からリモコン送信機を用いたリモコン操作により入庫呼び出しを行う(S102)。入庫呼び出しが行われると、機械式駐車装置1は、入庫起動を行い(S200)、車両2が載置されていないパレット18(以下「空パレット」という。)を車両格納棚17から取り出し、乗入室7に搬送する。入庫起動が行われると、利用者番号表示器49には、入庫起動を行っている利用者の番号が表示される(S104)。
【0065】
そして、空パレットが乗入室7に到着すると(S202)、管制灯21の青色が点滅する(S106)。利用者は、管制灯21の青点滅を確認すると、入出庫扉4を開くためのリモコン操作を行う(S108)。
【0066】
これにより、機械式駐車装置1は、入出庫扉4を開き(S204)、乗入室7内の空パレットに車両2が移動することで車両2の入庫を行う(S206)。
【0067】
入庫が終わると、利用者は車両2から降り、乗入室7から退出する。利用者の退出は、センサ30により検知され、退出から操作忘れ判定時間(例えば1分)が経過しても入出庫扉4を閉状態となっていない場合(S110)には、利用者確認が行われる(S112)。
【0068】
利用者確認は、利用者が乗入室7内や乗入室7近辺に居ないことの確認であり、例えば乗入室カメラ35による人の撮影の確認、入出庫扉4の開状態の確認、機側操作盤22前の人検知等により判断される。なお、利用者確認は、操作忘れ検出部62で実行され、乗入室カメラ35に人が映っておらず、入出庫扉4が開状態であり、機側操作盤22前で人が検知されない場合に、利用者は乗入室7内や乗入室7近辺に居ないと判定される。
【0069】
操作忘れ検出部62によって利用者が居ないと判定されると、入出庫扉4の開状態が閉め忘れとして検出され(エラーの発生)、閉め忘れ処理(S114)が実行される。閉め忘れ処理を行った状態では、未だ入出庫扉4は開状態のままである(S208)。
【0070】
図8,9は、本第1実施形態に係る扉閉め忘れ処理の流れを示すフローチャートである。
図8,9では、左側から、各操作盤と利用者番号表示器49の動作状況、扉操作忘れ報知装置60の動作状況、利用者情報端末70の動作状況、管理者用情報機器74の動作状況、及びサービス員用情報機器76の動作状況を示す。
【0071】
操作忘れ検出部62によって閉め忘れが検出されると(S400)、警告発報部64が利用者情報端末70へ電子メールにより入出庫扉4を閉め忘れていることを示す警告情報を送信する(S402)。これに伴い、機側操作盤22の表示部45aや利用者番号表示器49には、入出庫扉4の閉め忘れの発生と、利用者へ報知中である等の対応状況が表示される(S300)。
利用者情報端末70が警告情報を電子メールで受信すると(S500)、利用者は、自身で入出庫扉4の閉操作を行うか、閉操作を予め定められた他者である管理者に委譲するかの選択(以下「委譲選択」という。)を行う。
また、委譲選択が可能な期限終了までをカウントダウンする選択期限タイマーT1が起動する(S404)。選択期限タイマーT1は、例えば7分間をカウントダウンする。
【0072】
図10は、扉閉め忘れ処理において、利用者情報端末70の画面に表示される画像である。
【0073】
図10(A)は、利用者情報端末70の画面に表示される委譲選択を行うための画像(以下「選択画像」という。)80Aである。なお、選択画像80Aは、例えば、利用者情報端末70で受信した電子メールに記述されているURL(Uniform Resource Locator)をクリックすることで表示される。
【0074】
図10(A)に示される選択画像80Aは、警告の名称を示す「扉閉め忘れ通知」、入出庫扉4を閉め忘れた駐車場名、利用者ID、利用者が出庫した車両2が載置されていたパレット18の番号、及び入出庫扉4を閉め忘れた時刻を表示する。
また、選択画像80Aは、利用者が入出庫扉4の状態を確認できるように、入出庫扉4が開状態とされた乗入室7の内部又は乗入室7の正面を映した乗入室画像82を表示する。
【0075】
そして、選択画像80Aは、入出庫扉4の閉操作を利用者自身が実行することを選択するための戻り釦84_1、及び閉操作を管理者に委譲することを選択するための委譲釦84_2を表示する。
すなわち、利用者が自身で入出庫扉4の閉操作を行う意思がある場合には、戻り釦84_1が押される(S502のNO)。一方、利用者が入出庫扉4の閉操作を管理者に委譲する場合には、委譲釦84_2が押される(S502のYES)。
利用者によって戻り釦84_1又は委譲釦84_2が押されると、その選択結果は、扉操作忘れ報知装置60が備える通信部66に送信される。なお、委譲釦84_2が押されると、利用者による委譲選択は終了する。
【0076】
利用者によって戻り釦84_1が押されると、図10(B)に示される到着時間入力画像86Aが表示される。到着時間入力画像86Aは、機械式駐車装置1に戻るまでに要する時間である到着時間(戻り時間)を入力可能とする画面である。
図10(B)の例では、1〜5分を1分刻みで入力可能な複数の到着時間入力釦88Aが表示される。利用者は、何れかの到着時間入力釦88Aを押すことで、機械式駐車装置1への到着時間を入力し(S504)、利用者は機械式駐車装置1に急行する(S506)。
入力された到着時間は、扉操作忘れ報知装置60が備える通信部66へ送信される。
【0077】
なお、入力可能な到着時間は、警告情報が報知されてからの経過時間が長くなるほど短くなる。例えば、警告情報が報知されてから1分以内であれば、到達時刻として1〜5分を1分刻みで入力可能とされ、警告情報が報知されてから1〜3分以内であれば、1〜3分を1分刻みで入力可能とされ、警告情報が報知されてから3〜5分以内であれば、到達時刻として1,2分のみが入力可能とされる。
このように、警告情報が報知されてからの経過時間が長くなるほど、段階的に入力可能な到着時間は短くされるので、入出庫扉4を閉じるまで(エラー解消)までの時間が長時間となることが抑制される。
【0078】
通信部66が到着時間を受信すると、受信された到着時間は、モニタ制御部78に入力される。モニタ制御部78は、現在時刻に到着時間を加算することで、復旧予定時刻を算出し、機側操作盤22の表示部45aや利用者番号表示器49に復旧予定時刻を表示させる(S406、S302)。
【0079】
一方、利用者によって委譲釦84_2が押された場合(S502のYES)、若しくは利用者が戻り釦84_1又は委譲釦84_2を押すことなく、選択期限タイマーT1がタイムアップした場合(S408)、警告発報部64が、管理者用情報機器74へ、電子メールにより入出庫扉4の閉操作の委譲を示す委譲情報を送信する(S410)。
【0080】
このように、本第1実施形態に係る扉閉め忘れ処理では、利用者が閉操作をできない場合、利用者は管理者に閉操作を委譲できる。閉操作が委譲された管理者は、管理者用情報機器74に対する報知によって利用者がエラーの解消をできないことに気が付き、早期のエラー解消が可能となる。
【0081】
そして、機側操作盤22の表示部45aや利用者番号表示器49には、入出庫扉4の閉め忘れの発生と、管理者へ報知中である等の対応状況とが更新して表示される(S304)。管理者用情報機器74が委譲情報を受信すると(S600)、管理者は自身で入出庫扉4の閉操作を行うか、閉操作を異なる他者であるサービス員に委譲するかの委譲選択を行う。
さらに、委譲選択が可能な期限終了までをカウントダウンする選択期限タイマーT2が起動する(S412)。選択期限タイマーT2は、選択期限タイマーT1と同じ時間をカウントダウンしてもよいし、選択期限タイマーT1と異なる時間をカウントダウンしてもよい。
【0082】
図11(A)は、管理者用情報機器74の画面に表示される委譲選択を行うための選択画像80Bである。なお、選択画像80Bは、例えば、管理者用情報機器74で受信した電子メールに記述されているURLをクリックすることで表示される。
【0083】
図11(A)に示される選択画像80Bは、選択画像80Aと同様に、警告の名称を示す「扉閉め忘れ通知」、入出庫扉4を閉め忘れた駐車場名、利用者ID、利用者が出庫した車両2が載置されていたパレット18の番号、入出庫扉4を閉め忘れた時刻、乗入室画像82を表示する。
【0084】
そして、選択画像80Bは、入出庫扉4の閉操作を管理者自身が実行することを選択するための戻り釦84_3、及び閉操作をサービス員に委譲することを選択するための委譲釦84_4を表示する。すなわち、管理者が自身で入出庫扉4の閉操作を行う意思がある場合には、戻り釦84_3が押される(S602のNO)。一方、管理者が入出庫扉4の閉操作を管理者に委譲する場合には、委譲釦84_4が押される(S602のYES)。
管理者によって戻り釦84_3又は委譲釦84_4が押されると、その選択結果は、扉操作忘れ報知装置60が備える通信部66に送信される。なお、委譲釦84_4が押されると、管理者による委譲選択は終了する。
【0085】
管理者によって戻り釦84_3が押されると、図11(B)に示される到着時間入力画像86Bが表示される。
図11(B)の例では、6〜7分を1分刻みで入力可能な複数の到着時間入力釦88Bが表示される。管理者は、何れかの到着時間入力釦88Bを押すことで、機械式駐車装置1への到着時間を入力し(S604)、利用者は機械式駐車装置1に急行する(S606)。
入力された到着時間は、扉操作忘れ報知装置60が備える通信部66へ送信される。
【0086】
なお、一例として、図11(B)に示される入力可能な到着時間は、利用者情報端末70に表示される到着時間入力釦88Aよりも長い時間である。これは、機械式駐車装置1の管理者が、例えば、マンションの管理者を兼務しており、機械式駐車装置1に対して離れた場所に居ることを想定しているためである。
また、到着時間入力釦88Bに表示される入力可能な到着時間は、委譲情報が報知されてからの経過時間が長くなるほど短くなる。
【0087】
通信部66が到着時間を受信すると、受信された到着時間は、モニタ制御部78に入力される。モニタ制御部78は、現在時刻に到着時間を加算することで、復旧予定時刻を算出し、機側操作盤22の表示部45aや利用者番号表示器49に復旧予定時刻を表示させる(S414、S306)。
【0088】
また、管理者によって委譲釦84_4が押された場合(S602のYES)、若しくは管理者が戻り釦84_3又は委譲釦84_4を押すことなく、選択期限タイマーT2がタイムアップした場合(S416)、警告発報部64が、サービス員用情報機器76へ、電子メールにより入出庫扉4の閉操作の委譲を示す委譲情報を送信する(S418)。
【0089】
このように、本第1実施形態に係る扉閉め忘れ処理では、管理者が閉操作をできない場合、管理者はサービス員に閉操作を委譲できる。閉操作が委譲されたサービス員は、サービス員用情報機器76に対する報知によって利用者及び管理者がエラーの解消をできないことに気が付き、早期のエラー解消が可能となる。
【0090】
そして、機側操作盤22の表示部45aや利用者番号表示器49には、入出庫扉4の閉め忘れの発生と、サービス員へ報知中である等の対応状況とが更新して表示される(S308)。サービス員用情報機器76が警告情報を受信すると(S700)、サービス員は自身で入出庫扉4の閉操作を行うこととなる。
【0091】
図12は、サービス員用情報機器76の画面に表示される機械式駐車装置1への到着時間を入力するための到着時間入力画像86Cである。なお、到着時間入力画像86Cは、例えば、サービス員用情報機器76で受信した電子メールに記述されているURLをクリックすることで表示される。
また、到着時間入力画像86Cは、警告の名称を示す「扉閉め忘れ通知」、入出庫扉4を閉め忘れた駐車場名、利用者ID、利用者が出庫した車両2が載置されていたパレット18の番号、入出庫扉4を閉め忘れた時刻、乗入室画像82を表示する。
【0092】
図12の例では、5〜25分を5分刻みで入力可能な複数の到着時間入力釦88Cが表示される。サービス員は、何れかの到着時間入力釦88Cを押すことで、機械式駐車装置1への到着時間を入力し(S702)、利用者は機械式駐車装置1に急行する(S704)。
入力された到着時間は、扉操作忘れ報知装置60が備える通信部66へ送信される。
【0093】
なお、一例として、図12に示される入力可能な到着時間は、管理者用情報機器74に表示される到着時間入力釦88Bよりも長い時間である。これは、サービス員がより遠方で待機していることを想定しているためである。
また、到着時間入力釦88Cに表示される入力可能な到着時間は、委譲情報が報知されてからの経過時間が長くなるほど短くなる。
【0094】
通信部66が到着時間を受信すると、受信された到着時間は、モニタ制御部78に入力される。モニタ制御部78は、現在時刻に到着時間を加算することで、復旧予定時刻を算出し、機側操作盤22の表示部45aや利用者番号表示器49に復旧予定時刻を表示させる(S420、S310)。
【0095】
そして、利用者(管理者又はサービス員)が機械式駐車装置1に到着すると、利用者等は、乗入室7内(場内)の無人を確認する(S116)。そして、利用者等は、機側操作盤22で認証処理を行い(S118)、認証処理に成功すると機側操作盤22によって入出庫扉4の閉操作を行い(S120)、機械式駐車装置1は、入出庫扉4を閉める(S210)。
【0096】
これにより、入庫時における入出庫扉4が開状態のエラーが解消され、次の利用者による機械式駐車装置1の利用が可能となる。
【0097】
図13は、本第1実施形態に係る車両2の出庫時の扉閉め忘れの流れを示すフローチャートである。図13では、左側が各操作盤等の動作状況を示し、右側が機械式駐車装置1の動作状況を示す。
【0098】
利用者が出庫予約盤22B前に到着すると(S150)、利用者はリモコン送信機を用いたリモコン操作により出庫呼び出しを行う(S152)。出庫呼び出しが行われると、機械式駐車装置1は、出庫起動を行い(S250)、利用者の車両2が載置された実パレットを車両格納棚17から取り出し、乗入室7に搬送する。出庫起動が行われると、利用者番号表示器49には、出庫起動を行っている利用者の番号が表示される(S154)。
【0099】
そして、実パレットが乗入室7に到着すると(S252)、管制灯21の赤色が点滅する(S156)。利用者は、管制灯21の赤点滅を確認すると、入出庫扉4を開くためのリモコン操作を行う(S158)。
【0100】
これにより、機械式駐車装置1は、入出庫扉4を開き(S254)、利用者が乗入室7内の車両2に乗車して、車両2を退出させることで車両2の出庫を行う(S256)。
【0101】
車両2の退出は、センサ30により検知され、退出から操作忘れ判定時間(例えば1分)が経過しても入出庫扉4を閉状態となっていない場合(S160)には、利用者確認が行われる(S162)。
【0102】
操作忘れ検出部62によって利用者が居ないと判定されると、入出庫扉4の開状態が閉め忘れとして検出され(エラーの発生)、上述した閉め忘れ処理(S164)が実行される。閉め忘れ処理を行った状態では、未だ入出庫扉4は開状態のままである(S258)。
【0103】
そして、利用者(管理者又はサービス員)が機械式駐車装置1に到着すると、乗入室7内(場内)の無人を確認し(S166)、機側操作盤22で認証処理を行う(S168)。認証処理に成功すると、入出庫扉4の閉操作を行い(S170)、機械式駐車装置1は、入出庫扉4を閉める(S260)。
【0104】
これにより、出庫時における入出庫扉4が開状態のエラーが解消され、次の利用者による機械式駐車装置1の利用が可能となる。
【0105】
以上説明したように、本第1実施形態に係る扉操作忘れ報知装置60は、機械式駐車装置1の利用者が携帯する予め定められた利用者情報端末70と通信を行う通信部66と、入出庫扉4の開閉を必要としてから開閉操作が所定時間以上行われない場合、該開閉操作をするべき利用者の利用者情報端末70に対して、通信部66を介して開閉操作の実行を促す警告情報を報知する警告発報部64と、を備える。
入出庫扉4の操作忘れに伴うエラーを解消できる者は、入出庫扉4を操作すべき利用者である。このため、この利用者は、扉操作忘れ報知装置60から報知される警告情報によって、入出庫扉4の操作忘れに早期に気が付いて入出庫扉4の操作を行うことで、早期のエラー解消が可能となる。」

オ 図面
(ア)図1



上記図1から、乗入室7に有するリフト14上に、パレット18が配置されている点が看取できる。

(イ)図3




(ウ)図14




(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)によれば、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「機械式駐車装置1であって、
入出庫口3と入出庫扉4とが設けられた駐車塔5を備え、駐車塔5の地上階は、車両2を入出庫させる乗入室7となっており、駐車塔5の中心部には垂直な昇降通路13が形成されており、この中にリフト14が上下に昇降可能に設けられていて、リフト14は、駐車塔5の上部に設けられたウインチから下方に延びる複数本のワイヤロープ15に四隅を吊持され、上記ウインチが起動することにより昇降通路13内を上下に昇降することができ、リフト14上に、パレット18が配置されており、
昇降通路13の両側には車両格納棚17が設けられ、リフト14と車両格納棚17の床面には、車両2が積載されたパレット18を、リフト14から車両格納棚17に、スムーズに受け渡すことができる受渡機構が設けられており、
入出庫扉4に向かって右側に機側操作盤22が設けられており、前記機側操作盤22は、この機械式駐車装置1に入庫する各車両2の利用者により操作されるものであり、
乗入室7の内部に、この機械式駐車装置1の全体の制御を行い、リフト14による一連の入出庫操作を実行する制御装置40が設置されており、
機側操作盤22は、利用者が認証操作および入出庫扉4の開閉、リフト14の起動といった機械操作を行うためのタッチパネル式の操作画面45と、リモコン送信機から発信されるトランスポンダ信号等を読み込むためのリーダー36等が配置されており、
前記操作画面45に表示される、操作ガイド等の表示部45aと、テンキー等の入力部45bは、操作画面45の特定の区画に表示されるものではなく、操作画面45全体が表示部45aになったり、入力部45bになったりするものであり、
入出庫扉4の操作は、安全性の観点から利用者自身が実行することが求められるものであり、
制御装置40には、入出庫扉4の閉め忘れを利用者に報知する扉操作忘れ報知装置60が備えられており、前記扉操作忘れ報知装置60は、操作忘れ検出部62、警告発報部64、及び通信部66を備えており、
通信部66は、機械式駐車装置1の利用者情報端末70、機械式駐車装置1の管理者が有する情報機器である管理者用情報機器74との通信が可能とされており、管理者用情報機器74は、携帯型情報端末装置、管理者の待機場所に設置されているパソコン等であり、
操作忘れ検出部62によって閉め忘れが検出されると、警告発報部64が利用者情報端末70へ電子メールにより入出庫扉4を閉め忘れていることを示す警告情報を送信し、利用者が閉操作をできない場合、利用者は管理者に閉操作を委譲できるものであって、利用者によって委譲釦84_2が押された場合、警告発報部64が、管理者用情報機器74へ、電子メールにより入出庫扉4の閉操作の委譲を示す委譲情報を送信し、
管理者用情報機器74の画面には、受信した電子メールに記述されているURLをクリックすることで、管理者は自身で入出庫扉4の閉操作を行うか、閉操作を異なる他者であるサービス員に委譲するかの委譲選択を行うための選択画像80Bが表示され、
選択画像80Bは、警告の名称を示す「扉閉め忘れ通知」、入出庫扉4を閉め忘れた駐車場名、利用者IDを表示し、
管理者が機械式駐車装置1に到着すると、管理者は、乗入室7内の無人を確認し、機側操作盤22で認証処理を行い、認証処理に成功すると機側操作盤22によって入出庫扉4の閉操作を行い、機械式駐車装置1は、入出庫扉4を閉める、
機械式駐車装置1。」

2 甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、機械式立体駐車場に係り、特に車両の入庫時および出庫時に、該車両のユーザー(ドライバー)自身が入出庫扉を開閉操作するように構成された機械式立体駐車場の制御方法およびこの制御方法により制御される機械式立体駐車場に関するものである。
・・・
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、車庫装置内に人が取り残された状態で入出庫扉が閉じられてしまうことを防止して安全に運行することのできる機械式立体駐車場の制御方法およびこの制御方法により制御される機械式立体駐車場を提供することを目的とする。」

(2)「【0054】
以上説明したように、本発明に係る機械式立体駐車場1の制御方法は、車庫装置4の入出庫扉11を開く前に、ユーザーによる第1の認証操作に基づいて該ユーザーの認証を行う第1の認証処理(ステップS4)と、この第1の認証処理の後でパレット5を呼び出す搬送呼出処理(ステップS5)と、パレット5の到着後に入出庫扉11を開く開扉処理(ステップS6)と、入出庫扉11を閉じる前にユーザーによる第2の認証操作に基づいて該ユーザーの認証を再度行う第2の認証処理(ステップS8)と、第1の認証処理(ステップS4)における認証情報と第2の認証処理(ステップS8)における認証情報とが一致しているか否かを照合する照合処理(ステップS9)と、この照合処理における照合結果が一致した場合にのみ入出庫扉11を閉じる閉扉処理(ステップS12)とを有する。」

3 甲第3号証
(1)甲第3号証の記載
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両収納装置の各部の作動状況を検出する検出手段の検出情報に基づいて、前記車両収納装置の作動を制御して入庫及び出庫を管理する管理手段が、前記検出手段の検出情報に基づいて異常を判別するに伴って、前記車両収納装置の作動を停止させ、かつ、異常内容を表示手段に表示させるように構成された立体駐車場の管理システムに関する。」

イ「【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1には、立体駐車場Pの一部切り欠き正面図が、また、図2には、立体駐車場Pの縦断側面図が示されており、立体駐車場Pには、車両Zを収納する複数の棚1を上下方向に並べて備える車両収納部A、外部と車両収納部Aとを連絡する外部連通部B、車両収納部Aの夫々の棚1と外部連通部Bとの間にわたり車両Zを搬送する車両搬送機構C、及び外部連通部B内において車両Zを旋回させる旋回機構D、などにより構成される車両収納装置Vが設けられている。尚、車両収納部Aへの車両Zの収納、車両搬送機構Cによる車両Zの搬送、及び旋回機構Dによる車両Zの旋回は、車両Zがパレット2に載置された状態で行われるようになっている。
・・・
【0029】図1及び図2に示すように、入出庫口3の近傍には、管理装置Eが備えられており、図4に示すように、管理装置Eには、車両収納装置Vの各部の作動状況を検出する検出手段Sの検出情報に基づいて、車両収納装置Vの作動を制御して車両Zの入庫及び出庫を管理する管理手段としての制御部8、及び、制御部8に対する指令を入力する操作部9、などが備えられている。図5にも示すように、操作部9には、制御部8からの各種情報が表示される表示手段としての表示部9a、制御部8からの各種情報に基づいて車両Zの入庫や出庫などの指令を入力する複数の入力キーからなる入力部9b、及び制御部8の運転モードの切り換えを指示する手動指示部としての切換スイッチ9c、などが備えられている。切換スイッチ9cは、インタロック式に構成されており、キー(図示せず)を用いた切り換え操作によって、制御部8の運転モードを、車両Zの入庫または出庫を行うための通常運転モードと、立体駐車場のメンテナンスを行うためのメンテナンスモードとに切り換えられるようになっている。」

ウ「【0033】図4に示すように、立体駐車場Pの管理システムの一環として、立体駐車場Pを離れて監視する監視センタFが設けられており、監視センタFには、立体駐車場Pのメンテナンスなどの熟練者が待機するようになっている。また、管理センタFには、中央管理装置Gが備えられており、中央管理装置Gには、立体駐車場Pの制御部8と電話回線Lにて通信自在な中央管理手段としての主制御部18、立体駐車場Pの制御部8から電話回線Lを介して送信された情報を復調する復調部19、立体駐車場Pの制御部8からの情報が表示される中央管理用の表示手段としての主表示部20、及び立体駐車場Pの管理者との間で電話回線Lを介して通話を行うための電話機21が備えられている。一方、管理装置Eには、中央管理装置Gへ電話回線Lを介して送信する情報を変調する変調部22、及び監視センタFにて待機している熟練者との間で電話回線Lを介して通話を行うための電話機23が備えられている。
【0034】管理装置Eの制御部8は、車両収納装置Vに異常が生じた場合には、検出手段Sからの検出情報に基づいて異常を判別できるように構成されている。また、その判別に伴って、車両収納装置Vの作動を停止させ、かつ、異常内容を表示手段としての表示部9aに表示させるとともに中央管理装置Gの主制御部18へ送信するようになっている。そして、中央管理装置Gの主制御部18は、管理装置Eの制御部8から送信された異常内容を主表示部20に表示させるようになっている。例えば、車両搬送部C1が上昇中に棚1の上側停止位置にて非常停止した場合には、図7に示すような異常内容が異常報告として管理装置Eの表示部9aと中央管理装置Gの主表示部20に表示される。つまり、立体駐車場Pの管理者は、車両収納装置Vの異常内容が表示部9aに表示されることによって、車両収納装置Vに生じた異常内容を把握できるようになっており、その異常内容に基づいて車両収納装置Vの復旧作業を行うのである。また、監視センタFにて待機している熟練者も、車両収納装置Vの異常内容が主表示部20に表示されることによって、車両収納装置Vに生じた異常内容を把握できるようになっており、管理者は、能力的に復旧が困難であると判断した場合には、中央管理装置Gの熟練者から通話により指示を仰ぎ、その指示に基づいて復旧作業を行えるのである。
【0035】図7に示すように、管理装置Eの表示部9aと中央管理装置Gの主表示部20には、異常内容とともに異常の原因を確定するための確認内容も表示されるようになっており、立体駐車場Pの管理者は、夫々の確認内容に副った車両収納装置Vの手動操作などを行うことによって、容易に異常の原因を確定することができるようになっている。このとき、操作部9の入力部9bは、管理装置Eの制御部8へ車両収納装置Vの各部の作動指令を入力する手動操作部として機能するようになっている。また、管理装置Eの制御部8は、検出手段Sにて検出される手動操作による車両収納装置Vの作動状況をも、管理装置Eの表示部9aにて表示させるとともに中央管理装置Gの主制御部18へ送信するようになっている。そして、中央管理装置Gの主制御部18は、送信された車両収納装置Vの作動状況を中央管理装置Gの主表示部20に表示させるようになっている。つまり、立体駐車場Pの管理者にとって異常の原因の確定が困難な場合には、監視センタFにて待機している熟練者により異常の原因を確定することができるのである。
【0036】管理手段Eの制御部8は、車両収納装置Vに生じた異常作動を異常作動履歴として記憶し、かつ、異常作動履歴の出力が指令されるに伴って、異常作動履歴を管理装置Eの表示部9aにて表示させるとともに中央管理装置Gの主制御部18へ送信するようになっている。また、中央管理装置Gの主制御部18は、送信された異常作動履歴を中央管理装置Gの主表示部20に表示させるようになっている。そして、立体駐車場Pの管理者は、監視センタFにて待機している熟練者から異常作動履歴の表示が要求されると、先ず、図7の異常報告画面に示されている「F10:終了」(異常報告画面の終了により、メニュー画面へ戻る)に基づいて、入力部9bの入力キーのうち「F10」を押し操作し、管理装置Eの表示部9aと中央管理装置Gの主表示部20とを図8に示すメニュー画面に切り換える。次に、図8のメニュー画面に示されている「3:異常履歴」に基づいて、入力部9bの入力キーのうち「3」を押し操作し、管理装置Eの表示部9aと中央管理装置Gの主表示部20とを図9に示す異常履歴画面に切り換えるのである。それによって、監視センタFにて待機している熟練者は、その車両収納装置Vの過去に生じた異常内容を知ることができ、異常の原因を早急に追求することができるようになる。ちなみに、図8のメニュー画面に示されている項目の夫々は、異常作動履歴の場合と同様の操作を行うことによって、その項目に副った内容が管理装置Eの表示部9aと中央管理装置Gの主表示部20とに表示されるようになっている。」

エ「【0038】また、車両収納装置Vのメンテナンスを行う場合において、切換スイッチ9cにより制御部8の運転モードをメンテナンスモードに切り換えると、管理装置Eの表示部9aと中央管理装置Gの主表示部20とに、図8に示すメニュー画面が表示されるようになっている。また、制御部8は、メンテナンスモードにおいても上述と同様の作動を行えるように構成されており、立体駐車場Pの管理者は、復旧操作作業の場合と同様に、管理装置Eの表示部9aに表示されたメンテナンス情報や監視センタFにて待機している熟練者からの指示に基づいて車両収納装置Vのメンテナンス作業を行うのである。」

オ 図面
(ア)図4




(イ)図5




(2)甲第3号証に記載の技術事項
上記(1)によれば、甲第3号証には、次の事項(以下「甲第3号証に記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
(甲第3号証に記載の技術事項)
「車両収納装置の各部の作動状況を検出する検出手段の検出情報に基づいて、前記車両収納装置の作動を制御して入庫及び出庫を管理する管理手段が、前記検出手段の検出情報に基づいて異常を判別するに伴って、前記車両収納装置の作動を停止させ、かつ、異常内容を表示手段に表示させるように構成された立体駐車場Pの管理システムであって、
立体駐車場Pには、車両Zを収納する複数の棚1を上下方向に並べて備える車両収納部A、外部と車両収納部Aとを連絡する外部連通部B、車両収納部Aの夫々の棚1と外部連通部Bとの間にわたり車両Zを搬送する車両搬送機構C、及び外部連通部B内において車両Zを旋回させる旋回機構D、などにより構成される車両収納装置Vが設けられており、
入出庫口3の近傍に備えられた管理装置Eには、車両収納装置Vの各部の作動状況を検出する検出手段Sの検出情報に基づいて、車両収納装置Vの作動を制御して車両Zの入庫及び出庫を管理する管理手段としての制御部8、及び、制御部8に対する指令を入力する操作部9などが備えられ、操作部9には、制御部8からの各種情報が表示される表示手段としての表示部9a、制御部8からの各種情報に基づいて車両Zの入庫や出庫などの指令を入力する複数の入力キーからなる入力部9b、及び制御部8の運転モードの切り換えを指示する手動指示部としての切換スイッチ9cなどが備えられ、前記切換スイッチ9cは、インタロック式に構成されており、キーを用いた切り換え操作によって、制御部8の運転モードを、車両Zの入庫または出庫を行うための通常運転モードと、立体駐車場のメンテナンスを行うためのメンテナンスモードとに切り換えられるようになっており、
立体駐車場Pの管理システムの一環として設けられた、立体駐車場Pを離れて監視する監視センタFに備えられた中央管理装置Gには、立体駐車場Pの制御部8と電話回線Lにて通信自在な中央管理手段としての主制御部18、立体駐車場Pの制御部8から電話回線Lを介して送信された情報を復調する復調部19、立体駐車場Pの制御部8からの情報が表示される中央管理用の表示手段としての主表示部20、及び立体駐車場Pの管理者との間で電話回線Lを介して通話を行うための電話機21が備えられており、
立体駐車場Pの管理者は、車両収納装置Vの異常内容が表示部9aに表示されることによって、車両収納装置Vに生じた異常内容を把握できるようになっており、その異常内容に基づいて車両収納装置Vの復旧作業を行い、監視センタFにて待機している熟練者も、車両収納装置Vの異常内容が主表示部20に表示されることによって、車両収納装置Vに生じた異常内容を把握できるようになっており、立体駐車場Pの管理者は、能力的に復旧が困難であると判断した場合には、中央管理装置Gの熟練者から通話により指示を仰ぎ、その指示に基づいて復旧作業を行え、
車両収納装置Vのメンテナンスを行う場合において、切換スイッチ9cにより制御部8の運転モードをメンテナンスモードに切り換えると、管理装置Eの表示部9aと中央管理装置Gの主表示部20とに、メニュー画面が表示されるようになっており、メニュー画面に示されている「3:異常履歴」に基づいて、入力部9bの入力キーのうち「3」を押し操作し、管理装置Eの表示部9aと中央管理装置Gの主表示部20とを異常履歴画面に切り換える、
立体駐車場の管理システム。」

4 甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、機械式駐車装置に係わり、更に詳しくは、機械式駐車装置のリモコン操作による入出庫方法及び装置に関する。」

(2)「【0015】図1は、本発明のリモコン操作による入出庫装置の模式図である。この図に示すように、本発明の入出庫装置は、発信機2、受信機4、在車センサー6及び操作盤8を備える。
【0016】発信機2(リモコン)は、暗証番号(例えば4桁の数字)を記憶し、これを発信できる持ち運び可能な大きさの装置である。発信機2は、無線又は光通信により受信機4から離れた位置から受信機4に信号を発信する。発信機2の出力は制限されており、所定の駐車位置から例えば5m以上離れた場合には、受信できない程度になっている。この発信機2は、対象とする機械式駐車装置9(例えばエレベータ方式やタワーパーキング方式の機械式駐車装置)の収容台数に応じて、複数台が予め利用者に渡されており、それぞれの異なる暗証番号が記憶されている。
【0017】受信機4は、例えば入出庫扉9aの庇の下等、入出庫扉9aの近傍に設置されている。この受信機4は、発信機2の無線又は光通信に対応し、発信機2が発信する暗証番号を受信し、これを操作盤8へ入力するようになっている。
【0018】在車センサー6も、例えば入出庫扉9aの庇の下等、入出庫扉9aの近傍に設置されている。この在車センサー6は、超音波センサー又は光センサーであり、超音波又は光の反射により、所定の前面空地に停車する車両1のみを検出する。」

(3)図1




5 甲第5号証
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、機械式駐車場に係り、特に車両の入庫時および出庫時に、該車両のユーザー(ドライバー)自身が入出庫扉を開閉操作するように構成された機械式駐車場の制御装置、制御方法、およびこの制御方法により制御される機械式駐車場に関するものである。」

(2)「【0093】
なお、入庫を終えたユーザーが入出庫扉12の閉扉操作を忘れて立ち去ろうとした場合には、乗入室5から出てきた携帯認証媒体70が外部認証エリアA1に一旦入るものの、外部認証エリアA1内に留まらずに出て行ってしまうため、これを検知して音声スピーカ58からの音声により入出庫扉12を閉じるよう指示すれば、入出庫扉12の閉じ忘れを防止することができる。」

(3)図2




第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「機械式駐車装置1」、「乗入室7」、「車両2」及び「車両格納棚17」は、本件発明1の「機械式駐車場」、「乗降室」、「車両」及び「格納棚」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明は、「駐車塔5の地上階」の「乗入室7」において入庫させた「車両2」を「リフト14上」に「配置」した「パレット18」に積載し、「リフト14」を「上下に昇降」するとともに、「リフト14と車両格納棚17の床面には、車両2が積載されたパレット18を、リフト14から車両格納棚17に、スムーズに受け渡すことができる受渡機構が設けられて」いることから、「乗入室7」に入庫させた「車両2」を「車両格納棚17」へ移動させるものであることは明らかである。
そうすると、甲1発明の、「乗入室7」が設けられ、「パレット18」を配置した「リフト14」を「上下に昇降」させ、「車両2が積載されたパレット18を、リフト14から車両格納棚17に、スムーズに受け渡すことができる受渡機構が設けられて」いる「機械式駐車装置1」は、本件発明1の「乗降室に進入した車両を格納棚へ移動させる機械式駐車場」に相当する。

イ 本件発明1の「管理装置」に関して、本件明細書の段落【0029】には、「管理装置60は、乗降室12の外側に設けられた操作盤28と、操作盤28と接続された制御装置30と、を備える。」との記載がある。この記載から「管理装置」は、「操作盤」及び「制御装置」を備えるものも含むものと理解することができる。
甲1発明の「機側操作盤22」は、「機械式駐車装置1に入庫する各車両2の利用者により操作される」ものであり、また、「乗入室7の内部」に設置されている「制御装置40」は、「機械式駐車装置1の全体の制御を行い、リフト14による一連の入出庫操作を実行する」ものであるから、「機側操作盤22」と「制御装置40」とが一体となって入出庫の管理や制御をしていることは明らかである。
そして、上記アで説示したとおり、甲1発明が、本件発明1と同様に「乗降室に進入した車両を格納棚へ移動させる」ものであり、「管理装置」についての上記理解を踏まえると、甲1発明の「機側操作盤22」と「制御装置40」を合わせたものは、本件発明1の「前記乗降室に進入した車両を格納棚へ移動させる管理装置」に相当する。

ウ 甲1発明の「機側操作盤22」は、「機械式駐車装置1」に「入庫する各車両2の利用者により操作されるもの」であり、甲1発明の「機側操作盤22」における「機械操作を行うためのタッチパネル式の操作画面45」は、「利用者が認証操作」「といった機械操作を行うため」のものであって、「操作画面45全体が表示部45aになったり、テンキー等の入力部45bになったりするもの」である。
そうすると、甲1発明の「機側操作盤22」における「機械操作を行うためのタッチパネル式の操作画面45」は、本件発明1の「認証情報を入力可能な操作入力部」に相当する。
また、甲1発明の「操作画面45」における「表示部45a」は、本件発明1の「表示部」に相当する。
また、甲1発明の「機側操作盤22」は、「入出庫扉4に向かって右側に機側操作盤22が設けられて」いることから、「乗入室7」の外側にあることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「機側操作盤22」が、「機械操作を行うためのタッチパネル式の操作画面45」を有し、「操作画面45全体が表示部45a」に「なったりするもの」であって、「タッチパネル式の操作画面45」が、「利用者が認証操作」といった「機械操作」を行うためのものであり、「入出庫扉4に向かって右側に機側操作盤22が設けられて」いることと、本件発明1が「前記管理装置は、認証情報を入力可能な操作入力部と、管理者入力部と、表示部とを、前記乗降室の外側に有し」ていることとは、「前記管理装置は、認証情報を入力可能な操作入力部と、表示部とを、前記乗降室の外側に有し」ている点で共通する。

ところで、本件発明1の「管理者入力」に関して、本件明細書の段落【0007】には、「当該機械式駐車場の係員による管理者入力を受けると」との記載があり、また段落【0044】には、「係員は、管理者入力として、係員が所持している鍵を図3の操作盤28のモード切替部46の鍵穴にさして「管理」モードに回し、タッチパネル44に表示された図5の管理メニュー画面において放置ユーザの管理番号ボタン48をタッチする。」との記載がある。これらの記載から「管理者入力」とは、係員が所持している鍵を使って操作盤28のモードを切替え、これによりタッチパネルに表示された管理メニュー画面にタッチするなどといった、管理者しかできない入力を意味し、また「管理者入力部」とは、管理者しか入力することができない部位であると理解することができる。
上記理解に基づくと、甲1発明の「機側操作盤22」の「テンキー等の入力部45b」は、管理者(機械式駐車場の係員)を含む任意の者が入力することができるものであって、管理者(機械式駐車場の係員)しか「入力」することができない部位とは認められないから、本件発明1の「管理者入力部」に対応する構成であるとはいえない。

エ 甲1発明の「選択画像80B」が「表示」される「管理者用情報機器74」の「画面」と、本件発明1の「管理装置」が有する「表示部」とは、「表示部」である点で共通し、
甲1発明の「管理者用情報機器74」の「画面」で表示される「利用者ID」は、扉操作を忘れた者に係る情報であることは明らかであるから、本件発明1の「放置ユーザに関する認証情報」とは、「放置ユーザに関する情報」で共通する。
一方、甲1発明の「利用者ID」が表示されるのは、「機側操作盤22」の「表示部45a」とは別の「管理者用情報機器74」の「画面」である。
そうすると、甲1発明の「管理者用情報機器74」の「選択画像80B」に「利用者ID」が表示されることと、本件発明1の「管理装置」において、「第2の認証操作を実行しないまま放置している放置ユーザに関する認証情報を前記表示部に出力すること」とは、「放置ユーザに関する情報」を「出力する」ことにおいて共通する。

そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点および相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「乗降室に進入した車両を格納棚へ移動させる機械式駐車場であって、
前記乗降室に進入した車両を格納棚へ移動させる管理装置を備え、
前記管理装置は、認証情報を入力可能な操作入力部と、表示部とを、前記乗降室の外側に有し、放置ユーザに関する情報を出力する機械式駐車場。」

<相違点1>
管理装置について、本件発明1では、「ユーザによる第1の認証操作により正規ユーザであると認証された場合に乗降室扉を開かせ、ユーザによる第2の認証操作により正規ユーザであると認証され、かつ、第1の認証操作における第1の認証情報と第2の認証操作における第2の認証情報とが一致する場合に乗降室扉を閉じさせる」ものであるのに対して、甲1発明では、そのような特定がなされていない点。

<相違点2>
管理装置について、本件発明1では、「管理者入力部、表示部とを、前記乗降室の外側に有し、前記管理者入力部で当該機械式駐車場の係員による管理者入力を受けると、第2の認証操作を実行しないまま放置している放置ユーザに関する認証情報を前記表示部に出力するもの」であるのに対して、甲1発明では、管理者入力部を有しておらず、放置ユーザに関する情報(利用者ID)は、当該情報が「第2の認証操作を実行しないまま放置している放置ユーザに関する認証情報」とは特定されていないとともに、管理装置(機側操作盤22)の表示部とは別の表示部(管理者用情報機器74の画面)に出力される点。

(2)判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
甲第3号証には、上記第4の3(2)のとおりの甲第3号証に記載の技術事項が記載されている。
ア 甲第3号証に記載の技術事項の「管理装置E」は、「車両収納装置Vの作動を制御して車両Zの入庫及び出庫を管理する管理手段としての制御部8」を備えていて、「外部連通部B」に進入した「車両Z」を「車両Zを収納する複数の棚1」へ「搬送」することについて管理していることは明らかである。
そうすると、甲第3号証に記載の技術事項の上記構成を有する「管理装置E」は、本件発明1の「乗降室に進入した車両を格納棚へ移動させる管理装置」に相当する。

イ 甲第3号証に記載の技術事項の「操作部9」に備えられた「表示部9a」は、「制御部8からの各種情報が表示される表示手段」であるから、本件発明1の「表示部」に相当する。
また、甲第3号証に記載の技術事項の「操作部9」に備えられた「切換スイッチ9c」は、「車両収納装置Vのメンテナンスを行う場合において」、「制御部8の運転モードをメンテナンスモードに切り換える」ものであって、管理者にしか入力することができない部位であると認められるから、本件発明1の「管理者入力部」に相当する。
さらに、甲第3号証は、「切換スイッチ9cにより制御部8の運転モードをメンテナンスモードに切り換えると、管理装置Eの表示部9a」に「メニュー画面が表示されるようになって」おり、「管理者」が「入力部9bの入力キーのうち「3」を押し操作して、管理装置Eの表示部9a」を「異常履歴画面に切り換える」ことができるものである。前記「表示部9a」において切り換えられた「画面」における「異常履歴」は、「表示部9a」の「画面」に出力された「情報」であるといえる。
そうすると、甲第3号証に記載の技術事項の「切換スイッチ9c」で「制御部8の運転モードをメンテナンスモードに切り換え」て、「管理装置Eの表示部9a」に「メニュー画面が表示されるようになって」いて、「管理者」が「入力キー」を「押し操作」して「表示部9a」を「異常履歴画面に切り換える」ことと、本件発明1の「管理者入力部で当該機械式駐車場の係員による管理者入力を受けると、第2の認証操作を実行しないまま放置している放置ユーザに関する認証情報を前記表示部に出力すること」とは、「管理者入力部で当該機械式駐車場の係員による管理者入力を受け」て、「情報を前記表示部に出力する」点で共通する。

ウ 一方、甲1発明は、「管理者」が「管理者用情報機器74」により「受信した電子メールに記述されているURLをクリックすることで」、「選択画像80B」に「利用者ID」を表示させるものであり、また、「管理者が機械式駐車装置1に到着」し、「機側操作盤22で認証処理」を行い、「入出庫扉4の閉操作」をするものである。
しかしながら、甲第1号証には、「利用者ID」を表示させることが記載されているに止まり、認証処理に際して「利用者ID」を使用することは記載も示唆もされていない。
また、仮に甲1発明の「利用者ID」が認証処理に用いられるものであるとしても、管理装置(「機械操作盤22」)に到着する以前に「利用者ID」の情報を入手していて、管理装置に到着した後に、管理装置を操作(「機側操作盤22」の「表示部45a」又は「入力部45b」を操作)し、改めて「利用者ID」を表示部(「表示部45a」)に表示させるということが公知ないしは周知であるとの証拠は、なんら示されていない。

エ そうすると、甲1発明に、甲第3号証に記載の技術事項を適用する動機付けは存在しない。仮に、甲1発明に甲第3号証に記載の技術事項の「管理者入力部」の構成を適用しても、「管理者入力部」の「管理者入力」を受けて、「放置ユーザに関する認証情報を前記表示部に出力する」ことにはならないから、相違点2に係る本件発明1の構成に想到することはできない。

(3)申立人の主張
ア 申立人は、甲1発明の「1d 機側操作盤22は、利用者及び管理人が認証情報を入力可能なリーダ36、タッチパネル式の操作画面45とを、乗入室7の外側に有する」は、本件発明1の「1D 前記管理装置は、認証情報を入力可能な操作入力部と、管理者入力部と、表示部とを、前記乗降室の外側に有し、」に相当する旨主張する。(申立書16頁18−21行)
しかしながら、上記(1)ウで説示したとおり、甲1発明は、「認証情報を入力可能な操作入力部」や「表示部」を「乗降室の外側に有し」ているとしても、「管理者入力部」は有していないから、上記の相当関係があるとはいえない。

イ 申立人は、相違点2について、甲1発明と甲第3号証に記載の技術事項は、いずれも機械式駐車場に関する技術分野に属し、課題も一致することから、甲1発明に甲第3号証に記載の技術事項を適用し、管理者が操作盤の前に駆け付け、管理人モードへの切り替え操作を行ったときに、扉閉め忘れに関する詳細情報及び扉の閉め忘れを解消するために必要な情報を表示部に表示させるように構成することは、当業者が容易になし得たことである旨主張する。(申立書18頁8−20行)
しかしながら、上記(2)で説示したとおり、甲1発明に、甲第3号証に記載の技術事項を適用する動機付けは存在しない。仮に、甲1発明に甲第3号証に記載の技術事項を適用しても、相違点2に係る本件発明1の構成に想到することはできない。

ウ 以上のとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。

(4)小括
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第3号証に記載の技術事項、並びに申立人が提出したその他の証拠に記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本件発明2ないし6について
本件発明2ないし6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記1と同様の理由により、甲1発明及び甲第3号証に記載の技術事項、並びに申立人が提出したその他の証拠に記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし6は、甲1発明及び甲第3号証に記載の技術事項、並びに申立人が提出したその他の証拠に記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-04-21 
出願番号 P2016-245115
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04H)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 西田 秀彦
奈良田 新一
登録日 2021-05-25 
登録番号 6889550
権利者 住友重機械搬送システム株式会社
発明の名称 機械式駐車場  
代理人 富所 輝観夫  
代理人 森下 賢樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ