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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C01B
審判 一部申し立て 2項進歩性  C01B
管理番号 1384293
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-12-23 
確定日 2022-03-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6896200号発明「オゾン発生装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6896200号の請求項1〜7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6896200号に係る出願は、2020年(令和2年)12月7日を国際出願日とする出願であって、令和3年6月10日にその請求項1〜8に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年6月30日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1〜7に係る特許に対して、同年12月23日に特許異議申立人 川嶋 健太(以下、「申立人」という。)により甲第1〜7号証を証拠方法として特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1〜8に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、このうち請求項1〜7に係る発明は、以下のとおりのものである(以下、「本件発明1」〜「本件発明7」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)。
「【請求項1】
原料ガスから放電によりオゾンを発生させる放電ユニットを複数個内包する放電モジュールが、積層方向に複数個積層して配置され、
各前記放電モジュールには、全前記放電ユニットの放電を制御する放電制御部がそれぞれ設置され、
前記放電ユニットに電圧を印加して前記放電を形成する電源部と、
冷媒を送出して各前記放電ユニットを冷却する冷却部とを備え、
前記冷却部は、積層方向の一端側に設置され、前記放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出するオゾン発生装置。
【請求項2】
前記電源部は、各前記放電モジュールにそれぞれ設置された請求項1に記載のオゾン発生装置。
【請求項3】
各前記放電モジュールが、前記電源部に並列に接続される請求項1に記載のオゾン発生装置。
【請求項4】
各前記放電制御部の動作は、各前記放電モジュール間で個別に行われる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のオゾン発生装置。
【請求項5】
各前記放電モジュール内の全前記放電ユニットは、前記放電制御部に並列に接続される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のオゾン発生装置。
【請求項6】
1つの前記放電モジュールの各前記放電ユニットは、積層方向と直交する直交方向にあらかじめ設定された間隔を隔てて並んで配置される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のオゾン発生装置。
【請求項7】
積層方向に隣接する前記放電モジュール間において、各前記放電モジュールの各前記放電ユニットは、直交方向において互いにずれた位置に配置される請求項6に記載のオゾン発生装置。」

第3 特許異議申立理由の概要
1 特許法第29条第2項進歩性)について
(1)甲第1号証を主引用例とする場合について
本件発明1〜7は、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の出願時における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)甲第3号証を主引用例とする場合について
本件発明1は、甲第3号証に記載された発明及び本件特許の出願時における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
本件特許明細書の記載から、本件発明は、冷媒の流れの上流に位置する放電モジュールを停止した場合には、下流に位置する放電モジュールの冷却を向上させることができるため、停止していない下流の放電モジュールによるオゾンの発生量を大きくして、オゾン発生装置全体として、オゾンの発生量の低下を抑制することができると理解できるが、この場合、冷媒の流れの最下流に位置する放電モジュールを停止した場合には、停止した放電モジュールを通過した冷媒により冷却される放電モジュールがないため、前記のような効果を得ることは困難である。
このため、最下流以外の放電モジュールが停止した場合について規定していない本件発明1〜7は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

3 証拠方法
甲第1号証:中国実用新案公告第204369565号公報
甲第2号証:国際公開第2020/213083号
(当審注:特許異議申立書においては、甲第2号証として特表2020−213083号公報を引用しているが、特表2020−213083号公報は発行日が本件特許の国際出願日後の令和3年4月30日であって、本件特許の先行技術文献として不適格であるところ、申立ての趣旨からみて、甲第2号証として、国際公開日が本件特許の国際出願日前の2020年(令和2年)10月22日である国際公開第2020/213083号を引用するものとして、以下、検討する。)
甲第3号証:特開2015−67464号公報
甲第4号証:特開平8−133706号公報
甲第5号証:米国特許第5437843号明細書
甲第6号証:特開平6−263409号公報
甲第7号証:特開2002−255513号公報

第4 特許異議申立理由についての当審の判断
1 特許法第29条第2項進歩性)について
(1)甲各号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
(ア)甲第1号証には、以下の(1a)〜(1c)の記載がある(当審注:「・・・]は記載の省略を表す。)
(1a)「

」(2頁1行〜10行)
(当審訳:1. マルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器は、高圧容器、2つのトップカバー、複数の放電ユニット組およびセパレーターを含むことを特徴とし、高圧容器の両端にフランジでトップカバーを固定し、高圧容器に仕切り板を配置し、高圧容器の仕切りの左側が気体入口室、右側の高圧容器には冷却水エリアがあり、気体入口室の高圧容器壁には、気体入口管と気体出口管が接続され、気体出口管は、気体入口室に配置された気体出口分岐管に接続され、冷却水エリアの高圧容器壁は、水入口管および水出口管を備えており、放電ユニット組は、複数の放電ユニットを積み重ねた後、長いボルトで固定し、放電ユニット組の一端をセパレータに固定し、放電ユニット組の一端は容器の外壁で支えられており、放電ユニット組は互いに平行に接続されており、複数の放電ユニット組の断面は密接に正方形に配置されており、各放電ユニット組のガスチャネルは高圧容器の壁にある気体出口管に気体出口分岐管を介して接続されて、形成された冷却水チャネルは、冷却水エリアと連絡している。)

(1b)「


(当審訳:[0025]本実用新案で提案されたマルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器の構造を図1に示す。高圧容器10、2つのトップカバー15、複数の放電ユニット組6、セパレーター8を含む。2つのトップカバー15は、フランジ16によって高圧容器10の両端に固定されている。セパレーター8は高圧容器10内に配置され、高圧容器10内のセパレーター8の左側が気体入口室12であり、高圧容器10内のセパレーター8の右側が冷却水エリア11である。気体入口室12の高圧容器10の壁面には気体入口管1と気体出口管2が配置され、気体出口管2は、気体入口室内に配置された気体出口分岐管9に接続されている。冷却水エリア11の高圧容器壁には、水入口管3と水出口管4が配置されている。放電ユニット組6は、互いに積み重ねられた後、長いボルト7によって相互に固定された複数の放電ユニットで構成されている。複数の放電ユニット組の一端はセパレーター8に固定され、複数の放電ユニット組の他端は容器の外壁によって支持されており、放電ユニット組6は互いに平行に接続されており、複数の放電ユニット組の断面は、図3に示すように、密接に配置された正方形である。図2に示すように、各放電ユニット組のガスチャネル14は、気体出口分岐管16を介して高圧容器の壁の気体出口管2に接続されている。積み重ねられた放電ユニットの間に形成された冷却水チャネルは、前記冷却水エリア11に接続されている。
[0026]本実用新案が提案するマルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器では、気体入口室12内に気体出口管2、気体出口分岐管9、ヒューズボックス13、ガスチャネル14の開口および高電圧ケーブル5が設置されており、図2に示されるように、高圧容器10の気体エリア側に気体入口1、気体出口2および高電圧ケーブル5の入口が設置される。放電ユニットは、2009年12月31日に出願人によって提案された「外冷式ダブルエアギャップ積層板式オゾン発生器」というタイトルの実用新案を採用することができ、出願番号は200920350681.9である。
[0027]本実用新案のマルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器では、気体入口室12に複数のヒューズボックス13が設けられ、高電圧ケーブル5で高電圧ケーブル5の入口に接続されており、放電ユニット組ごとに1つのヒューズボックスが設けられる。ケーブルの入口は、密閉および絶縁する必要がある。高圧容器の両端には、フランジで接続されたトップカバーが付いている。
[0028]本実用新案が提案するマルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器では、ユーザーの要求に応じて、特定の数の放電ユニットを1つずつ積み重ね、1つの列の放電ユニットが多すぎれば、2つ以上の列に分割し、並列に組み立ててオゾン発生器を形成することができる。
[0029]本実用新案が提案するマルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器では、その準備プロセスの1番目のステップは材料を準備することであり、2番目のステップは放電ユニット6を1つずつ組み立てることであり、3番目のステップは放電ユニット6をセパレーター8に1つずつきちんと積み重ね、各放電ユニットは、発生器が漏れないように長いボルト7で固定され、各放電ユニット組は、1つずつ並列に取り付けられ、4番目のステップは、気体入口室12で、各放電ユニットの高電圧ケーブルをヒューズボックス13の高電圧出力端子に取り付け、高電圧ケーブル5をヒューズボックスの入力端子に接続し、高電圧ケーブル5と気体入口室12を、漏れがないことを保証するために柔軟なシールを採用して接続し、5番目のステップは、気体出口管気体出口を取り付け、6番目のステップは、トップカバー15を取り付け、フランジボルト16を締め、フランジインターフェースが漏れないことを確認することである。
[0030]本実用新案が提案するマルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器の動作原理は、高圧電極と接地電極の間に高周波高圧電源が作用すると、誘電体によってブロックされた放電ギャップで無声コロナ放電が発生し、ギャップを流れる酸素分子を電離して酸素原子にしてから、電離していない酸素分子と結合してオゾン分子を形成し、生成されたオゾン含有ガスはプロセスに使用される。各電極で生成された熱は、冷却液によってオゾン発生器から運ばれ、電極の動作温度を安定させる。入力電圧を調整したり、吸気の流れと圧力を変更したりすることで、プロジェクトの実際のニーズに合わせてオゾン濃度とオゾン発生器の出力を簡単に調整できる。)

(1c)「



(イ)前記(ア)(1a)〜(1c)によれば、甲第1号証には、高圧容器、2つのトップカバー、複数の放電ユニット組およびセパレーターを含むことを特徴とし、高圧容器の両端にフランジでトップカバーを固定し、高圧容器に仕切り板を配置し、高圧容器の仕切りの左側が気体入口室、右側の高圧容器には冷却水エリアがあり、気体入口室の高圧容器壁には、気体入口管と気体出口管が接続され、気体出口管は、気体入口室に配置された気体出口分岐管に接続され、冷却水エリアの高圧容器壁は、水入口管および水出口管を備えており、放電ユニット組は、複数の放電ユニットを積み重ねた後、長いボルトで固定し、放電ユニット組の一端をセパレータに固定し、放電ユニット組の一端は容器の外壁で支えられており、放電ユニット組は互いに平行に接続されており、複数の放電ユニット組の断面は密接に正方形に配置されており、各放電ユニット組のガスチャネルは高圧容器の壁にある気体出口管に気体出口分岐管を介して接続されて、形成された冷却水チャネルは、冷却水エリアと連絡している、「マルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器」が記載されている。
すなわち、前記「マルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器」は、高圧容器10、2つのトップカバー15、複数の放電ユニット組6、セパレーター8を含み、2つのトップカバー15は、フランジ16によって高圧容器10の両端に固定され、セパレーター8は高圧容器10内に配置され、高圧容器10内のセパレーター8の左側が気体入口室12であり、高圧容器10内のセパレーター8の右側が冷却水エリア11であり、気体入口室12の高圧容器10の壁面には気体入口管1と気体出口管2が配置され、気体出口管2は、気体入口室内に配置された気体出口分岐管9に接続されており、冷却水エリア11の高圧容器壁には、水入口管3と水出口管4が配置され、放電ユニット組6は、互いに積み重ねられた後、長いボルト7によって相互に固定された複数の放電ユニットで構成され、複数の放電ユニット組の一端はセパレーター8に固定され、複数の放電ユニット組の他端は容器の外壁によって支持されており、放電ユニット組6は互いに平行に接続されており、複数の放電ユニット組の断面は、密接に配置された正方形であり、各放電ユニット組のガスチャネル14は、気体出口分岐管16を介して高圧容器の壁の気体出口管2に接続され、積み重ねられた放電ユニットの間に形成された冷却水チャネルは、前記冷却水エリア11に接続されているものである。
また、前記「マルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器」では、気体入口室12内に気体出口管2、気体出口分岐管9、ヒューズボックス13、ガスチャネル14の開口および高電圧ケーブル5が設置されており、高圧容器10の気体エリア側に気体入口1、気体出口2および高電圧ケーブル5の入口が設置され、気体入口室12に複数のヒューズボックス13が設けられ、高電圧ケーブル5で高電圧ケーブル5の入口に接続されており、放電ユニット組ごとに1つのヒューズボックスが設けられ、ケーブルの入口は、密閉および絶縁する必要があり、高圧容器の両端には、フランジで接続されたトップカバーが付いているものである。
そして、その動作原理は、高圧電極と接地電極の間に高周波高圧電源が作用すると、誘電体によってブロックされた放電ギャップで無声コロナ放電が発生し、ギャップを流れる酸素分子を電離して酸素原子にしてから、電離していない酸素分子と結合してオゾン分子を形成し、生成されたオゾン含有ガスはプロセスに使用されるものであり、各電極で生成された熱は、冷却液によってオゾン発生器から運ばれ、電極の動作温度を安定させるものであり、入力電圧を調整したり、吸気の流れと圧力を変更したりすることで、プロジェクトの実際のニーズに合わせてオゾン濃度とオゾン発生器の出力を簡単に調整できるものである。

(ウ)前記(イ)によれば、甲第1号証には、
「高圧容器、2つのトップカバー、複数の放電ユニット組およびセパレーターを含むことを特徴とし、高圧容器の両端にフランジでトップカバーを固定し、高圧容器に仕切り板を配置し、高圧容器の仕切りの左側が気体入口室、右側の高圧容器には冷却水エリアがあり、気体入口室の高圧容器壁には、気体入口管と気体出口管が接続され、気体出口管は、気体入口室に配置された気体出口分岐管に接続され、冷却水エリアの高圧容器壁は、水入口管および水出口管を備えており、放電ユニット組は、複数の放電ユニットを積み重ねた後、長いボルトで固定し、放電ユニット組の一端をセパレータに固定し、放電ユニット組の一端は容器の外壁で支えられており、放電ユニット組は互いに平行に接続されており、複数の放電ユニット組の断面は密接に正方形に配置されており、各放電ユニット組のガスチャネルは高圧容器の壁にある気体出口管に気体出口分岐管を介して接続されて、形成された冷却水チャネルは、冷却水エリアと連絡している、マルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器であって、
前記マルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器は、高圧容器、2つのトップカバー、複数の放電ユニット組、セパレーターを含み、2つのトップカバーは、フランジによって高圧容器の両端に固定され、セパレーターは高圧容器内に配置され、高圧容器内のセパレーターの左側が気体入口室であり、高圧容器内のセパレーターの右側が冷却水エリアであり、気体入口室の高圧容器の壁面には気体入口管と気体出口管が配置され、気体出口管は、気体入口室内に配置された気体出口分岐管に接続されており、冷却水エリアの高圧容器壁には、水入口管と水出口管が配置され、放電ユニット組は、互いに積み重ねられた後、長いボルトによって相互に固定された複数の放電ユニットで構成され、複数の放電ユニット組の一端はセパレーターに固定され、複数の放電ユニット組の他端は容器の外壁によって支持されており、放電ユニット組は互いに平行に接続されており、複数の放電ユニット組の断面は、密接に配置された正方形であり、各放電ユニット組のガスチャネルは、気体出口分岐管を介して高圧容器の壁の気体出口管に接続され、積み重ねられた放電ユニットの間に形成された冷却水チャネルは、前記冷却水エリアに接続されているものであり、
更に、気体入口室内に気体出口管、気体出口分岐管、ヒューズボックス、ガスチャネルの開口および高電圧ケーブルが設置されており、高圧容器の気体エリア側に気体入口、気体出口および高電圧ケーブルの入口が設置され、気体入口室に複数のヒューズボックスが設けられ、高電圧ケーブルで高電圧ケーブルの入口に接続されており、放電ユニット組ごとにつのヒューズボックスが設けられ、ケーブルの入口は、密閉および絶縁する必要があり、高圧容器の両端には、フランジで接続されたトップカバーが付いているものであり、
その動作原理は、高圧電極と接地電極の間に高周波高圧電源が作用すると、誘電体によってブロックされた放電ギャップで無声コロナ放電が発生し、ギャップを流れる酸素分子を電離して酸素原子にしてから、電離していない酸素分子と結合してオゾン分子を形成し、生成されたオゾン含有ガスはプロセスに使用されるものであり、各電極で生成された熱は、冷却水によってオゾン発生器から運ばれ、電極の動作温度を安定させるものであり、入力電圧を調整したり、吸気の流れと圧力を変更したりすることで、プロジェクトの実際のニーズに合わせてオゾン濃度とオゾン発生器の出力を簡単に調整できるものである、マルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

イ 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の(2a)〜(2d)の記載がある。
(2a)「1.放電によってオゾンを発生させる円柱状の複数の放電ユニットと、
前記放電ユニットの軸方向と直交する方向に複数の前記放電ユニットが並べて挿入される挿入孔を有する放熱器と、
前記放熱器を冷却する冷媒を送出する冷却器と
を備えたオゾン発生装置であって、
前記冷却器が前記冷媒を送出する方向は、複数の前記放電ユニットが並べられた方向と平行な方向であることを特徴とするオゾン発生装置。
・・・
8.複数の請求項1から7のいずれか1項に記載のオゾン発生装置が、
前記放電ユニットの軸方向および前記放電ユニットの並べられた方向と直交する方向に重ねて設けられたことを特徴とするオゾン発生装置セット。」(請求の範囲)

(2b)「[0012]
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るオゾン発生装置の構成を示す断面図である。図1において、オゾン発生装置1は、円筒状の複数の放電ユニット2と、放電ユニット2が挿入される挿入孔を備えた放熱器3と、放熱器3を冷却する冷却器として送風ファン4とを備えている。放電ユニット2は、放電ユニット2の軸方向と直交する方向に並べて配置されている。送風ファン4は冷却風Wを送出する。冷却風Wが送出される方向は、放電ユニット2が並べられた方向と平行な方向である。放電ユニット2は、外側電極である接地電極10と、誘電体筒11と、内側電極である高電圧電極12とを備えている。放電ユニット2の誘電体筒11と接地電極10との間には、放電空隙Gが形成されている。ここで、円筒状の放電ユニット2の軸方向をx軸方向、放電ユニット2が並べられた方向をy軸方向、x軸方向およびy軸方向に直交する方向をz軸方向とする。送風ファン4から送出される冷却風Wは、放電ユニット2が並べられた方向と同じ方向のy軸方向に流れる。
・・・
[0050]
実施の形態4.
図10は、実施の形態4に係るオゾン発生装置セットの構成を示す模式図である。図10に示すように、本実施の形態のオゾン発生装置セット70は、実施の形態1から3に示したオゾン発生装置1が、放電ユニットの軸方向と平行な方向および放電ユニット2が並べられた方向と直交する方向に4つ重ねて設けられている。 」

(2c)「[図1]



(2d)「[図10]



ウ 甲第3号証の記載事項及び甲第3号証に記載された発明
(ア)甲第3号証には、以下の(3a)〜(3d)の記載がある。
(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端が開放し内面が金属で形成された円筒状の接地管と、
外面と前記接地管の内面との間に放電ギャップを形成する間隙を有するように、前記接地管の内側に同軸状に内包され、内面に導電性の高電圧電極が形成された円筒状の誘電体管と、
前記接地管の開放端を閉鎖する絶縁体の栓と、
前記栓を貫通し、前記接地管の内部に原料ガスを供給するように設けられた絶縁体のガス供給管と、
前記高電圧電極に外部から高周波高電圧を給電するように、前記ガス供給管の内部に挿入された給電線と、
前記ガス供給管から供給された原料ガスが前記間隙の前記栓が設けられた側の開口から前記間隙に流入し、前記間隙を流れる間に前記接地管と前記高電圧電極の間に印加された前記高周波高電圧により形成される電界により放電してオゾン化ガスとなり、前記間隙の前記栓が設けられた側とは反対側の開口から流出する前記オゾン化ガスを前記接地管内部から外部に取り出すためのオゾン化ガス取り出し構造と、
を備えたことを特徴とするオゾン発生装置。
・・・
【請求項7】
前記接地管と、前記誘電体管と、前記栓と、前記ガス供給管と、前記給電線とで構成される放電管を複数備え、この複数の放電管が、前記接地管の外部を冷却する冷却水を流す冷却タンクに設置されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のオゾン発生装置。」

(3b)「【0031】
図5に、図3に示した放電管100を複数本接続し、オゾン発生量を増加させた場合の構成の断面模式図を示す。また、図5の構成を基本として、1枚の管板40に接地管2、すなわち放電管を4本固定したサブユニット210を4個、1個の水タンク50に備えたユニット200の外観斜視図を図6に示す。図6では、一部のサブユニット210を取り出して示している。図6に示す構成では、オゾン化ガス取り出し構造として、サブユニット210の複数の放電管のそれぞれの接地管2の開口部を接続するマニホールド201を備えている。この構成でも、数本〜20本程度の放電管をまとめてユニットとすることで、実施の形態1と同様、放電管の本数を増やすには、単純にユニットを増やすだけでよいため、簡単に超大型の発生器を製作することができる。」

(3c)「【図5】



(3d)「【図6】



(イ)前記(ア)(3a)〜(3d)によれば、甲第3号証には、少なくとも一端が開放し内面が金属で形成された円筒状の接地管と、外面と前記接地管の内面との間に放電ギャップを形成する間隙を有するように、前記接地管の内側に同軸状に内包され、内面に導電性の高電圧電極が形成された円筒状の誘電体管と、前記接地管の開放端を閉鎖する絶縁体の栓と、前記栓を貫通し、前記接地管の内部に原料ガスを供給するように設けられた絶縁体のガス供給管と、前記高電圧電極に外部から高周波高電圧を給電するように、前記ガス供給管の内部に挿入された給電線と、前記ガス供給管から供給された原料ガスが前記間隙の前記栓が設けられた側の開口から前記間隙に流入し、前記間隙を流れる間に前記接地管と前記高電圧電極の間に印加された前記高周波高電圧により形成される電界により放電してオゾン化ガスとなり、前記間隙の前記栓が設けられた側とは反対側の開口から流出する前記オゾン化ガスを前記接地管内部から外部に取り出すためのオゾン化ガス取り出し構造と、
を備えた「オゾン発生装置」であって、前記接地管と、前記誘電体管と、前記栓と、前記ガス供給管と、前記給電線とで構成される放電管を複数備え、この複数の放電管が、前記接地管の外部を冷却する冷却水を流す冷却タンクに設置された、「オゾン発生装置」が記載されている。
すなわち、前記「オゾン発生装置」は、1枚の管板40に接地管2、すなわち放電管を4本固定したサブユニット210を4個、1個の水タンク50に備えたユニット200を有するものであり、オゾン化ガス取り出し構造として、サブユニット210の複数の放電管のそれぞれの接地管2の開口部を接続するマニホールド201を備えているものである。

(ウ)前記(イ)によれば、甲第3号証には、
「少なくとも一端が開放し内面が金属で形成された円筒状の接地管と、
外面と前記接地管の内面との間に放電ギャップを形成する間隙を有するように、前記接地管の内側に同軸状に内包され、内面に導電性の高電圧電極が形成された円筒状の誘電体管と、
前記接地管の開放端を閉鎖する絶縁体の栓と、
前記栓を貫通し、前記接地管の内部に原料ガスを供給するように設けられた絶縁体のガス供給管と、
前記高電圧電極に外部から高周波高電圧を給電するように、前記ガス供給管の内部に挿入された給電線と、
前記ガス供給管から供給された原料ガスが前記間隙の前記栓が設けられた側の開口から前記間隙に流入し、前記間隙を流れる間に前記接地管と前記高電圧電極の間に印加された前記高周波高電圧により形成される電界により放電してオゾン化ガスとなり、前記間隙の前記栓が設けられた側とは反対側の開口から流出する前記オゾン化ガスを前記接地管内部から外部に取り出すためのオゾン化ガス取り出し構造と、を備えたオゾン発生装置であって、
前記接地管と、前記誘電体管と、前記栓と、前記ガス供給管と、前記給電線とで構成される放電管を複数備え、この複数の放電管が、前記接地管の外部を冷却する冷却水を流す冷却タンクに設置された、オゾン発生装置であり、
1枚の管板に接地管、すなわち放電管を4本固定したサブユニットを4個、1個の水タンクに備えたユニットを有し、オゾン化ガス取り出し構造として、サブユニットの複数の放電管のそれぞれの接地管の開口部を接続するマニホールドを備えている、オゾン発生装置。」の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。

(2)甲第1号証を主引用例とした場合について
ア 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「放電ユニット」は、本件発明1における「原料ガスから放電によりオゾンを発生させる放電ユニットを」「内包する放電モジュール」に相当し、甲1発明において、「放電ユニット組」が、「互いに積み重ねられた後、長いボルトによって相互に固定された複数の放電ユニットで構成され」ることは、本件発明1において、「放電モジュールが、積層方向に複数個積層して配置され」ることに相当する。
また、甲1発明における「高周波高圧電源」、「冷却水」、「水入口管」及び「マルチグループ並列型外部冷却ダブルエアギャップ積層板オゾン発生器」は、それぞれ、本件発明1における「前記放電ユニットに電圧を印加して前記放電を形成する電源部」、「冷媒」、「冷媒を送出して各前記放電ユニットを冷却する冷却部」及び「オゾン発生装置」に相当する。
すると、本件発明1と甲1発明とは、
「原料ガスから放電によりオゾンを発生させる放電ユニットを内包する放電モジュールが、積層方向に複数個積層して配置され、
前記放電ユニットに電圧を印加して前記放電を形成する電源部と、
冷媒を送出して各前記放電ユニットを冷却する冷却部とを備える、
オゾン発生装置。」の点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1:本件発明1は、「オゾン発生装置」が、「前記冷却部は、積層方向の一端側に設置され、前記放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出する」との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は前記発明特定事項を有しない点。

イ そこで、前記アの相違点1に係る構成の容易想到性について検討すると、前記(1)イ(2a)〜(2d)によれば、甲第2号証には、放電によってオゾンを発生させる円柱状の複数の「放電ユニット」と、前記放電ユニットの軸方向と直交する方向に複数の前記放電ユニットが並べて挿入される挿入孔を有する放熱器と、前記放熱器を冷却する冷媒を送出する「冷却器」とを備えた「オゾン発生装置」であって、前記冷却器が前記冷媒を送出する方向は、複数の前記放電ユニットが並べられた方向と平行な方向であるオゾン発生装置が、前記放電ユニットの軸方向および前記放電ユニットの並べられた方向と直交する方向に重ねて設けられた、「オゾン発生装置セット」が記載されている。
そして、甲第2号証に記載された「オゾン発生装置」、「冷却器」及び「オゾン発生装置セット」はそれぞれ、本件発明1でいえば、原料ガスから放電によりオゾンを発生させる放電ユニットを複数個内包する「放電モジュール」、冷媒を送出して各前記放電ユニットを冷却する「冷却部」及び「オゾン発生装置」にあたるものといえるのであるが、この「冷却部」は、複数の前記放電ユニットが並べられた方向と平行な方向に冷媒を送出するものであるから、放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出するものではない。
すると、甲第2号証には、放電モジュールの「積層方向の一端側に設置され、放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出する」ように構成された「冷却部」については記載も示唆もされていないといわざるを得ない。また、この点は、甲第5〜6号証に記載された事項について検討しても事情は同じである。

ウ 前記イによれば、甲第2、5及び6号証には、「冷却部」を、「積層方向の一端側に設置され、放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出する」ものとすることが記載も示唆もされておらず、ほかに、このことを開示する証拠もないから、甲1発明において、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、本件特許の出願時における周知技術に基づいて当業者が容易になし得る事項とはいえない。

エ 申立人は、「オゾン発生装置」において、冷媒を送るポンプなどの冷却部をどこに配置するかは当業者が適宜設計し得る事項に過ぎず、また、送風ファンを空気(冷媒)の流れる方向の上流側に設けることは甲第2号証及び甲第5号証に、ポンプを冷却水(冷媒)の流れる方向の上流側に設けることは甲第6号証に、それぞれ記載されているように周知技術であることに照らすと、「放電モジュール」の積層方向と同一方向に冷媒を送出する場合において、冷却部を放電モジュールの積層方向の一端側に設置し、もって前記相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到できる旨を主張している(特許異議申立書9頁14行〜最終行)。
ところが、送風ファンを空気(冷媒)の流れる方向の上流側に設けることや、ポンプを冷却水(冷媒)の流れる方向の上流側に設けることは、ただちに「オゾン発生装置」の「冷却部」を「積層方向の一端側に設置」して、「放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出する」ことを意味するわけではない。
すると、甲第2、5及び6号証に記載される周知技術は、送風ファンを空気(冷媒)の流れる方向の上流側に設けることや、ポンプを冷却水(冷媒)の流れる方向の上流側に設けることにとどまるのであって、「冷却部」を「積層方向の一端側に設置」して、「放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出する」ことが、本件特許の出願時における周知技術であるとまではいえないから、甲1発明において、「オゾン発生装置」を、「前記冷却部は、積層方向の一端側に設置され、前記放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出する」との前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることが、当業者による設計的事項の範ちゅうのものであるとも、容易想到のものであるともいえない。
したがって、申立人の前記主張は採用できない。

オ よって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の出願時における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
更に、本件発明1を引用する本件発明2〜7について検討しても事情は同じであるから、本件発明1〜7は、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の出願時における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、前記第3の1(1)の特許異議申立理由は理由がない。

(3)甲第3号証を主引用例とした場合について
ア 本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明における「サブユニット」は、本件発明1における「原料ガスから放電によりオゾンを発生させる放電ユニットを複数内包する放電モジュール」に相当し、甲3発明において、「サブユニットを4個、1個の水タンクに備えた」ことは、本件発明1において、「放電モジュールが、積層方向に複数個積層して配置され」ることに相当し、甲3発明における「給電線」は、本件発明1における「前記放電ユニットに電圧を印加して前記放電を形成する電源部」に相当し、甲3発明において「接地管の外部を冷却する冷却水を流す」ことは、本件発明1において「冷媒を送出して各前記放電ユニットを冷却する冷却部」「を備える」ことに相当する。
すると、本件発明1と甲3発明とは、
「原料ガスから放電によりオゾンを発生させる放電ユニットを複数内包する放電モジュールが、積層方向に複数個積層して配置され、
前記放電ユニットに電圧を印加して前記放電を形成する電源部と、
冷媒を送出して各前記放電ユニットを冷却する冷却部とを備える、
オゾン発生装置。」の点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
・相違点2:本件発明1は、「オゾン発生装置」が、「前記冷却部は、積層方向の一端側に設置され、前記放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出する」との発明特定事項を有するのに対して、甲3発明は前記発明特定事項を有しない点。

イ 以下、前記アの相違点2に係る構成の容易想到性について検討すると、前記相違点2は前記(2)アの相違点1と同じものであるので、前記(2)イ〜エに記載したのと同じ理由により、甲3発明において、「オゾン発生装置」を、「前記冷却部は、積層方向の一端側に設置され、前記放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出する」との前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることを、当業者が容易になし得る事項とはいえない。

ウ したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明及び本件特許の出願時における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、前記第3の1(2)の特許異議申立理由は理由がない。

(4)小括
よって、特許法第29条第2項進歩性)についての特許異議申立理由はいずれも理由がない。

2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、この観点に立って検討する。

(2)サポート要件についての当審の判断
ア 本件特許明細書には以下の(A)〜(C)の記載がある。
(A)「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のマルチモジュール式のオゾン発生装置では、各モジュールに高電圧電源と冷却器とが備えられており、モジュール毎に独立にオゾン発生と放電ユニットの冷却が行われていた。そのため、例えば1つのモジュールが停止した場合、他のモジュールの運転に影響することなく、停止したモジュール分のオゾン生成量が低下する。すなわち、オゾン発生装置の全体としての空間利用率が低下するという問題点があった。
【0008】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、複数の放電モジュールを備えるオゾン発生装置において、ある放電モジュールが停止した場合においても、オゾン発生量の低下を抑制し、装置の空間を有効に活用できるオゾン発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に開示されるオゾン発生装置は、
原料ガスから放電によりオゾンを発生させる放電ユニットを複数個内包する放電モジュールが、積層方向に複数個積層して配置され、
各前記放電モジュールには、全前記放電ユニットの放電を制御する放電制御部がそれぞれ設置され、
前記放電ユニットに電圧を印加して前記放電を形成する電源部と、
冷媒を送出して各前記放電ユニットを冷却する冷却部とを備え、
前記冷却部は、積層方向の一端側に設置され、前記放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出するものである。
【発明の効果】
【0010】
本願に開示されるオゾン発生装置によれば、
複数の放電モジュールを備えるオゾン発生装置において、ある放電モジュールが停止した場合においても、オゾン発生量の低下を抑制し、装置の空間を有効に活用できる。」

(B)「【0018】
次に、上記のように構成された実施の形態1のオゾン発生装置100の動作について説明する。まず、外部から放電ユニット2のそれぞれに酸素ガスを供給する。次に、送風ファン5を動作させ、オゾン発生装置100内において冷却空気6を積層方向Yの一端側Y1から他端側Y2に流す。そして、全ての高電圧電源3を駆動させ、全てのスイッチ素子4をONすることで全ての放電ユニット2に高電圧を印加し、放電空隙9に放電を発生させる。これにより、原料ガスである酸素ガスの一部がオゾンへと変換される。
【0019】
このように、各放電モジュール1に内包される放電ユニット2の放電は、同一の放電モジュール1に備えられる高電圧電源3とスイッチ素子4とにより生成制御される。例えば、放電モジュール101においては、高電圧電源301を駆動させスイッチ素子401をONすることで、放電モジュール101内の放電ユニット201、202、203、204の全てに放電が生成される。放電で生じた熱の一部が冷却空気6によりヒートシンク7から除去されることで、放電モジュール101内の放電ユニット201、202、203、204の過熱が抑制される。
【0020】
そして、冷却空気6は、一端側Y1に位置する放電モジュール104から他端側Y2の放電モジュール101に向けて一連の流れを形成する。このため、放電モジュール104を通過する際の冷却空気6の温度が最も低く、下流に進むに従って温度が上昇し、放電モジュール101を通過する際の温度が最も高くなる。このため、冷却空気6による冷却能力は、放電モジュール104において最も高く、下段に位置する放電モジュールほど低下する。
【0021】
次に、いずれかの放電ユニット2の動作が停止した場合のオゾン発生について説明する。例えば、放電モジュール104内のいずれかの放電ユニット2の不具合、あるいはオゾン需要の減少により放電モジュール104を停止させた場合を想定する。この場合、冷却空気6の温度は、放電モジュール104を通過しても、放電モジュール104内の放電ユニット2が駆動していないため発熱源がなく上昇しない。従って、下段に位置する放電モジュール103、102、101を通過する冷却空気6の温度は、放電モジュール104が駆動している場合と比較して低くなる。
【0022】
このため放電モジュール104が停止した際の放電モジュール103、102、101の冷却は向上し、それによりオゾン発生性能は、放電モジュール104が稼働している場合と比較して高くなる。結果的に、オゾン発生装置100全体としては、放電モジュール104停止によるオゾン発生量の低下が、本実施の形態1を適用しない場合と比較して抑制される。
【0023】
実施の形態1では、各放電モジュール101、102、103、104に対して独立した高電圧電源301、302、303、304が接続されている。このため、高電圧電源301、302、303、304の動作条件を個別に制御できる。例えば、冷却空気6の流れの一端側Y1から他端側Y2に向けて、放電モジュール1に供給される電力が低下するように動作することも可能である。この場合、冷却空気6の他端側Y2における放電モジュール101の放電ユニット201、202、203、204の過熱を抑制し、オゾン発生装置100全体としてのオゾン発生性能を向上できる。」

(C)「【図1】



イ 前記ア(A)の記載からみれば、本件発明は、従来のマルチモジュール式のオゾン発生装置では、各モジュールに高電圧電源と冷却器とが備えられており、モジュール毎に独立にオゾン発生と放電ユニットの冷却が行われていたため、例えば1つのモジュールが停止した場合、他のモジュールの運転に影響することなく、停止したモジュール分のオゾン生成量が低下し、オゾン発生装置の全体としての空間利用率が低下する、という課題(以下、「本件課題」という。)を解決するものであって、冷媒を送出して各放電ユニットを冷却する冷却部を備え、前記冷却部は、放電モジュールの積層方向の一端側に設置され、前記放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出することで、本件課題を解決するものであるといえる。
すなわち、前記ア(B)〜(C)の記載によれば、例えば、放電モジュール104内のいずれかの放電ユニット2の不具合、あるいはオゾン需要の減少により放電モジュール104を停止させた場合を想定した場合、冷却空気6の温度は、放電モジュール104を通過しても、放電モジュール104内の放電ユニット2が駆動していないため発熱源がなく上昇しないので、下段に位置する放電モジュール103、102、101を通過する冷却空気6の温度は、放電モジュール104が駆動している場合と比較して低くなり、このため放電モジュール104が停止した際の放電モジュール103、102、101の冷却は向上し、それによりオゾン発生性能は、放電モジュール104が稼働している場合と比較して高くなるので、結果的に、オゾン発生装置100全体としては、放電モジュール104停止によるオゾン発生量の低下が抑制されることが分かる。
本件発明は、このような機序を期待してなされたものである。

ウ 前記イのとおり、本件特許明細書の記載に接した当業者は、冷媒を送出して各放電ユニットを冷却する冷却部が、放電モジュールの積層方向の一端側に設置され、前記放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出することで、放電モジュールを停止させた場合、冷却空気の温度は上昇しないので、停止した放電モジュールの下段に位置する放電モジュールを通過する冷却空気の温度が、放電モジュールが駆動している場合と比較して低くなり、このため放電モジュールが停止した際の放電モジュールの冷却は向上し、それによりオゾン発生性能は、停止した放電モジュールが稼働している場合と比較して高くなるので、結果的に、オゾン発生装置全体としては、放電モジュール停止によるオゾン発生量の低下が抑制されることで、本件課題を解決できることを理解できる。
そして、冷媒を送出して各放電ユニットを冷却する冷却部が、放電モジュールの積層方向の一端側に設置され、前記放電モジュールの積層方向と同一方向に冷媒を送出することは、本件発明1の発明特定事項にほかならないから、当業者は、本件特許明細書の記載に基づいて、本件発明1の発明特定事項により、本件課題を解決できると認識することができるといえる。

エ ここで、本件発明1は、最下流のモジュールが停止した場合を包含するものであるが、前記イにおいて説示した機序を期待する以上、このような場合についてまで、前記空間利用率の低下を問題にしているとは考えにくい。
そうである以上、当該場合を含めて本件課題を認定することは妥当でない。

オ そして、前記エのように本件課題を捉えると、本件発明1が、本件特許明細書の記載に基づいて、当業者において、本件課題を解決できると認識できる範囲内のものであることは、前記ウに記載のとおりであるから、このことを前記(1)の判断手法に照らせば、本件発明1は発明の詳細な説明の記載に記載された発明というべきである。
更に、本件発明1を直接的または間接的に引用する本件発明2〜7について検討しても事情は同じであるので、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の規定に適合するというべきであるから、前記第3の2の特許異議申立理由は理由がない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1〜7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-03-09 
出願番号 P2021-512468
審決分類 P 1 652・ 121- Y (C01B)
P 1 652・ 537- Y (C01B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 金 公彦
関根 崇
登録日 2021-06-10 
登録番号 6896200
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 オゾン発生装置  
代理人 特許業務法人ぱるも特許事務所  

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