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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H03H
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H03H
審判 全部申し立て 2項進歩性  H03H
管理番号 1384294
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-12-23 
確定日 2022-03-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第6892250号発明「圧電デバイス及びベース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6892250号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6892250号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜3に係る特許についての出願は、平成28年11月24日に出願され、令和3年5月31日にその特許権の設定登録がされ、令和3年6月23日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年12月23日に特許異議申立人 市東 勇は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
本件特許の請求項1〜3の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明3」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
凹部および土手部を有するセラミック製ベースと、前記凹部内に収納されている圧電振動片と、前記セラミック製ベースの前記土手部の天面で封止用金属で接合されている蓋と、を有する圧電デバイスにおいて、
前記セラミック製ベースの前記天面は、前記土手部の幅方向に沿う方向において前記セラミック製ベースの内側に向かって下がる傾斜面となっており、かつ、
前記傾斜面は、前記天面の全部に在り、かつ、
前記傾斜面と水平面との成す角度をθとしたとき、2度≦θ≦6度であることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記天面の内側の端から前記蓋の裏面に渡って前記封止用金属が張り出している隅縁構造を有することを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
圧電振動片が収納される凹部および前記凹部を形成している土手部を有するセラミック製ベースにおいて、
前記土手部の天面は、前記土手部の幅方向に沿う方向において当該セラミック製ベースの内側に向かって下がる傾斜面となっており、かつ、
前記傾斜面は、前記天面の全部に在り、かつ、
前記傾斜面と水平面との成す角度をθとしたとき、2度≦θ≦6度であることを特徴とするセラミック製ベース。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人 市東 勇は、主たる証拠として特開2003−338570号公報(以下、「甲1」という。)並びに従たる証拠として特開2004−186276号公報(以下、「甲2」という。)、特開2016−171480号公報(以下、「甲3」という。)、特開2003−163567号公報(以下、「甲4」という。)及び特開2014−3239号公報(以下、「甲5」という。)を提出し、以下の取消理由1〜取消理由4の理由により、請求項1〜3に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

取消理由1:請求項1及び3に係る特許は特許法29条1項3号の規定に違反してされたものである。(同法113条2号

取消理由2:請求項1〜3に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号

取消理由3:請求項1〜3に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条4号

取消理由4:請求項1〜3に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条4号

第4 証拠
1 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項(下線は強調のため当審にて付与した。以下同様。)が記載されている。

(1)「【0014】図1は、本発明の電子部品搭載用基板およびそれを用いた電子装置の実施の形態の一例を示した断面図であり、同図において1は電子部品搭載用基板、2は金属蓋体、3は電子部品である。そして、電子部品搭載用基板1と金属蓋体2とから成るパッケージの内部に例えば圧電振動子や半導体素子等の電子部品3が気密に封止されることによって電子装置となる。
【0015】電子部品搭載用基板1は、上面中央部に電子部品3を収容するための凹状の搭載部Aを有する絶縁基体4に、搭載部A内から下面に導出する複数のメタライズ配線導体5および搭載部Aを取り囲む枠状の封止用メタライズ層6を被着形成して成る。そして、搭載部Aの底面は電子部品3が搭載され、この電子部品3の電極とメタライズ配線導体5とが導電性接着剤8を介して接続される。また、封止用メタライズ層6には、金属蓋体2がろう材7を介してシーム溶接により接合される。
【0016】絶縁基体4は、電子部品3を支持するための支持体であり、酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体等のセラミックスから成る。このような絶縁基体4は、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダー、溶剤を添加混合して泥漿状となすとともに、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法を採用してシート状とすることによって絶縁基体4用のセラミックグリーンシートを得、しかる後、このセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに複数枚積層し、高温で焼成することによって製作される。」

(2)「【0019】さらに、絶縁基体4の上面に搭載部Aを取り囲むように被着された封止用メタライズ層6は、タングステンやモリブデン等の金属粉末焼結体から成り、幅が0.4mm程度で厚みが10〜50μm程度の枠状であり、その上面が内周側に向けて傾いている。封止用メタライズ層6は、絶縁基体4に金属蓋体2を接合させるための下地金属として機能し、通常であれば、その露出する表面に1〜20μm程度の厚みのニッケルめっきと0.1〜3μm程度の厚みの金めっきとが施されている。そして、その上には金属蓋体2がろう材7を介してシーム溶接により接合される。なお、封止用メタライズ層6上に金属蓋体2をろう材7を介してシーム溶接により接合するには、図2に断面図で示すように、下面にろう材7が被着された金属蓋体2を絶縁基体4の封止用メタライズ層6上に載置し、この金属蓋体2の外周縁にシーム溶接機の一対のローラー電極Rを接触させながら転動させるとともに、このローラー電極R間に溶接のための大電流を流し、ローラー電極Rと金属蓋体2との接触部をジュール発熱させ、この熱を金属蓋体2の下面側に伝達させてろう材7の一部を溶融させることによって行われる。このとき、封止用メタライズ層6に施されたニッケルめっきは、その厚みが5μm以上であると、封止用メタライズ層6に金属蓋体2をろう材7を介してシーム溶接により接合する際に、シーム溶接の熱により絶縁基体4に印加される熱衝撃をニッケルめっきにより良好に吸収して絶縁基体4に熱衝撃による割れやクラックが発生するのを有効に防止することができる。したがって、封止用メタライズ層6に施されたニッケルめっきはその厚みを好ましくは5μm以上、更に好ましくは8μmとしておくことが望ましい。
【0020】このような封止用メタライズ層6は、例えばタングステン粉末焼結体から成る場合であれば、タングステン粉末に適当な有機バインダー、溶剤を添加混合して得たタングステンペーストを絶縁基体4用のセラミックグリーンシート上に従来周知のスクリーン印刷法を採用して予め所定厚み、所定パターンに印刷塗布し、これを温風乾燥機や赤外線乾燥機により乾燥して溶剤を除去するとともに、プレス機により上面が内周側に傾くようにプレスした後、絶縁基体4用のセラミックグリーンシートとともに焼成することによって絶縁基体4の上面に搭載部Aを取り囲むようにして被着形成される。」

(3)「【0022】なお、図3に部分断面図で示すように、封止用メタライズ層6は、その相対向する2辺の上面に接する直線Lと封止用メタライズ層6の内周から50μm外周側の上面までの距離Dが5〜10μmとなるように内周側に向けて傾いていることが好ましい。距離Dが5μm未満の場合、封止用メタライズ層6に金属蓋体2をろう材7を介してシーム溶接する際に、封止用メタライズ層6と金属蓋体2との間に形成される隙間が小さくなり、溶融したろう材7が封止用メタライズ層6と金属蓋体2との間から押し出されて搭載部A内に流れ出たり、飛び散ったりして内部に収容する電子部品3に付着して電子部品3の作動を阻害してしまう危険性が大きくなり、他方、10μmを超えると、封止用メタライズ層6と金属蓋体2との間に形成される隙間が大きくなりすぎて、そのような大きな隙間をろう材7を介して良好に埋めることが困難となる傾向にある。
【0023】また、電子部品搭載用基板1の封止用メタライズ層6にろう材7を介してシーム溶接により接合される金属蓋体2は、鉄−ニッケル合金板あるいは鉄−ニッケル−コバルト合金板から成る厚みが0.1mm程度の平板であり、その下面の全面には、銀−銅共晶ろう等のろう材7が10〜30μm程度の厚みに被着されている。そして、電子部品搭載用基板1の封止用メタライズ層6にろう材7を介してシーム溶接により接合されることにより電子部品搭載用基板1との間で電子部品3を気密に封止する。」

(4)図3


(5)前記(1)〜(4)によれば、甲1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「電子部品搭載用基板1と金属蓋体2とから成るパッケージの内部に圧電振動子の電子部品3が気密に封止されてなる電子装置であって(【0014】)、
電子部品搭載用基板1は、上面中央部に電子部品3を収容するための凹状の搭載部Aを有する絶縁基体4に、搭載部Aを取り囲む枠状の封止用メタライズ層6を被着形成して成り(【0015】)、
封止用メタライズ層6には、金属蓋体2がろう材7を介してシーム溶接により接合され(【0015】)、
絶縁基体4は、セラミックスから成り、原料粉末に適当な有機バインダー、溶剤を添加混合して泥漿状となすとともに、これをシート状とすることによって絶縁基体4用のセラミックグリーンシートを得、このセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに複数枚積層し、高温で焼成することによって製作され(【0016】)、
ろう材7は、銀−銅共晶ろうであり(【0023】)、
封止用メタライズ層6は、幅が0.4mm程度で厚みが10〜50μm程度の枠状であり、その上面が内周側に向けて傾いており、絶縁基体4に金属蓋体2を接合させるための下地金属として機能し(【0019】)、
封止用メタライズ層6は、タングステンペーストを絶縁基体4用のセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷法を採用して予め所定厚み、所定パターンに印刷塗布し、乾燥して溶剤を除去するとともに、上面が内周側に傾くようにプレスした後、絶縁基体4用のセラミックグリーンシートとともに焼成することによって絶縁基体4の上面に搭載部Aを取り囲むようにして被着形成され(【0020】)、
封止用メタライズ層6は、その相対向する2辺の上面に接する直線Lと封止用メタライズ層6の内周から50μm外周側の上面までの距離Dが5〜10μmとなるように内周側に向けて傾いており(【0022】)、
距離Dが10μmを超えると、封止用メタライズ層6と金属蓋体2との間に形成される隙間が大きくなりすぎて、そのような大きな隙間をろう材7を介して良好に埋めることが困難となる(【0022】)、
電子装置。」

2 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明にかかるセラミック電子部品の一例である水晶発振器の分解斜視図である。水晶発振器1は、セラミックパッケージ7に水晶片2を収容させたものである。水晶片2には、表裏に電極4が取り付けられている。この電極4がセラミックパッケージ7の内部端子5と導通し、外部端子6より所期の発振波が取り出せるようになっている。セラミックパッケージ7は、電子部品本体収容用のキャビティ7cを備えている。キャビティ7cに水晶片2などの電子部品本体を収容した後は、開口周縁部7bに薄板状のリッド3がロウ接される。
【0020】
図2の部分拡大断面図に示すように、リッド3には、低膨張率金属からなる本体部32に、ロウ材層31が接合されたクラッド材を採用することができる。本体部32をなす低膨張率金属としては、たとえばコバール(Fe−29Ni―17Co)などのFe基(Fe含有量40質量%以上)低膨張率金属を使用できる。他方、ロウ材層31には、たとえば導電成分としてAgを質量換算で最も多く含有するAg−28Cuロウ材(これは一般的なAgロウ材)が使用される。ロウ材層31は、リッド3の一方の主面全体をなすとともに、その厚さがおよそ15μm程度に調整されている。このようなリッド3は、開口周縁部7bに形成されたメタライズ層27を介して、セラミックパッケージ7に直接ロウ接される。メタライズ層27は、たとえばW(タングステン)やMo(モリブデン)を質量部換算で最も多く含有する導電層である。なお、図示しないが通常はこの上にNi−Auめっきが施されるので、メタライズ層27は、Ni−Auめっき層を含むと考えてもよい。」

(2)「【0032】
また、図6に示すように、ダレ部7eはキャビティ7cの底面18pからの高さが最も小さい位置と、最も大きい位置との差dが1μm以上10μm以下となるように形成するのがよい(ただし焼成後寸法で)。この高低差d、換言すればダレ量が小さすぎると、ロウ溜まりが十分に形成されず、溶融したロウ材の噴出抑止効果を得ることができない恐れがある。他方、過剰な高低差dを持つダレ部7eを形成しても、ロウ材の噴出抑止効果の向上は望めないばかりか、製造コストの高騰や、リッド3の接合強度低下を招く恐れがある。ダレ量の調整に関して言えば、前述した可撓部材11の厚さ、硬さ、材質等を種々選択したうえで、押圧力を適宜調整することにより行うことができる。なお、本明細書中でいう高さ方向は、グリーンシートの積層方向でもあるし、キャビティ7cの深さ方向でもある。」

(3)図1


(4)図2


(5)図6

(当審注:D2の具体的な寸法は、甲2明細書及び図面に示されていない。)

(6)前記(1)〜(5)によれば、甲2には以下の技術が記載されている。

「セラミックパッケージ7に水晶片2を収容させた水晶発振器1であって、
セラミックパッケージ7は、電子部品本体収容用のキャビティ7cを備え、キャビティ7cに水晶片2などの電子部品本体を収容した後、開口周縁部7bに薄板状のリッド3がロウ接され(【0019】)、
リッド3には、低膨張率金属からなる本体部32に、ロウ材層31が接合されたクラッド材を採用することができ、ロウ材層31には、一般的なAgロウ材が使用され、リッド3は、開口周縁部7bに形成されたメタライズ層27を介して、セラミックパッケージ7に直接ロウ接され(【0020】)、
ダレ部7eはキャビティ7cの底面18pからの高さが最も小さい位置と、最も大きい位置との差dが1μm以上10μm以下となるように形成するのがよく、この高低差d、換言すればダレ量が小さすぎると、ロウ溜まりが十分に形成されず、溶融したロウ材の噴出抑止効果を得ることができない恐れがあり、他方、過剰な高低差dを持つダレ部7eを形成しても、ロウ材の噴出抑止効果の向上は望めないばかりか、製造コストの高騰や、リッド3の接合強度低下を招く恐れがあり、ダレ量の調整に関して言えば、前述した可撓部材11の厚さ、硬さ、材質等を種々選択したうえで、押圧力を適宜調整することにより行うことができる(【0032】)、
水晶発振器1。」

3 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0014】
本実施形態の振動子デバイス1は、平板状の底部11と底部11上に設けられる環状の堤部12とからなり、底部11と堤部12とで囲まれる有底孔状の空間17を有する基板10と、空間17内に設けられる振動子50と、堤部12の上面14上に空間17の開口を取り囲むように設けられる環状の接合材層30と、接合材層30により基板10と接合されて、空間17の開口を塞ぐ蓋体20と、を備える。そして、堤部12の上面14と内側面15との連結面16は、蓋体20側から底部11側に向かうにつれて空間17が狭くなるように傾斜するとともに、その傾斜角度が漸次急になる曲面であり、接合材層30の内側面31は、蓋体20の下面21上から堤部12の連結面16上に延在しており、蓋体20側から底部11側に向かうにつれて空間17が広がるように傾斜する。そして、堤部の連結面16の平均傾斜角度は、接合材層の内側面31の平均傾斜角度より小さい。」

(2)「【0017】
基板10を構成する材料は、特に限定されないが、セラミック材料とすることができる。特にセラミック材料としては、アルミナを主成分とするセラミック材料や、窒化アルミニウムを主成分とするセラミック材料や、ムライトを主成分とするセラミック材料や、低温焼成の一種であるガラス−セラミック材料等を挙げることができる。」

(3)「【0023】
また、堤部12のサイズは、特に限定されないが、例えば2.0mm(縦幅)×2.5mm(横幅)×0.3mm(厚さ)とし、空間17の開口のサイズは、例えば1.2mm(縦幅)×1.5mm(横幅)とする。また、堤部12の内側面15の傾斜角度は、底部11の上面13に対して、例えば80°とする。堤部12の連結面16の平均傾斜角度(θ1)は、底部11の上面13(堤部12の上面14)に対して、例えば27°とする。」

(4)「【0030】
蓋体20を構成する材料は、特に限定されないが、セラミック材料とすることができる。また、金属材料、樹脂材料等も挙げることができる。」

(5)「【0032】
接合材層30は、基板10と蓋体20とを接合するための部材であって、基板10の堤部12の上面14上に、環状に設けられる。そして、底部11側から蓋体20側に向けてフィレットを形成する。
接合材層30の内側面31は、蓋体20の下面21上から堤部12の連結面16上に延在しており、蓋体20側から底部11側に向かうにつれて空間17が広がるように傾斜するとともに、その傾斜角度が漸次急になる曲面(凹状に湾曲した曲面)である。
なお、内側面は、蓋体20側から底部11側に向かうにつれて傾斜角度が漸次緩やかなる曲面(凸状に湾曲した曲面)としても良く、あるいは、平面状の傾斜面としても良い。」

(6)「【0036】
接合材層30を構成する材料は、特に限定されないが、ガラス材料とすることができる。また、ガラス材料として、ホウ圭酸ガラス、酸化バナジウム系ガラス、銀リン酸系ガラス、錫リン酸系ガラス、酸化ビスマス系ガラス等を挙げることができる。また、ガラス材料とは別に、半田、銀合金、金合金等の金属ロウ材や、シリコーン系樹脂接着剤、ポリイミド系樹脂接着剤、エポキシ系樹脂接着剤、ウレタン系樹脂接着剤などの樹脂接着剤も挙げることができる。」

(7)図2


(8)図3


(9)前記(1)〜(8)によれば、甲3には以下の技術が記載されている。

「振動子デバイス1であって、
平板状の底部11と底部11上に設けられる環状の堤部12とからなり、
底部11と堤部12とで囲まれる有底孔状の空間17を有する基板10と、
空間17内に設けられる振動子50と、
堤部12の上面14上に空間17の開口を取り囲むように設けられる環状の接合材層30と、
接合材層30により基板10と接合されて、空間17の開口を塞ぐ蓋体20と、を備え、
堤部12の上面14と内側面15との連結面16は、蓋体20側から底部11側に向かうにつれて空間17が狭くなるように傾斜するとともに、その傾斜角度が漸次急になる曲面であり、
接合材層30の内側面31は、蓋体20の下面21上から堤部12の連結面16上に延在しており、蓋体20側から底部11側に向かうにつれて空間17が広がるように傾斜し、
堤部の連結面16の平均傾斜角度は、接合材層の内側面31の平均傾斜角度より小さく(【0014】)、
基板10を構成する材料は、セラミック材料とすることができ(【0017】)、
堤部12のサイズは、2.0mm(縦幅)×2.5mm(横幅)×0.3mm(厚さ)とし、
空間17の開口のサイズは、1.2mm(縦幅)×1.5mm(横幅)とし、
堤部12の内側面15の傾斜角度は、底部11の上面13に対して、80°とし、
堤部12の連結面16の平均傾斜角度(θ1)は、底部11の上面13(堤部12の上面14)に対して、27°とし、(【0023】)、
蓋体20を構成する材料は、金属材料を挙げることができ(【0030】)、
接合材層30の内側面31は、蓋体20の下面21上から堤部12の連結面16上に延在しており、蓋体20側から底部11側に向かうにつれて空間17が広がるように傾斜するとともに、その傾斜角度が漸次急になる曲面(凹状に湾曲した曲面)であり(【0032】)、
接合材層30を構成する材料は、金属ロウ材を挙げることができる(【0036】)、
振動子デバイス1。」

4 甲4の記載事項
甲4には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0003】(従来技術の一例)第4図(ab)は一従来例を説明する水晶振動子の図で、同図(a)は断面図、同図(b)はカバー4を除く平面図である。表面実装振動子は、表面実装容器1内に水晶片2を密閉封入してなる。表面実装容器1は積層セラミックとした凹状の容器本体3と、セラミックとした絶縁カバー4とからなる。容器本体3は三層構造とし、外表面に実装電極5を有する底壁6a、一端に分割段部を他端に段部を形成する中間枠壁6b及び上壁6cからなる。分割段部には、実装電極5と電気的に接続する図示しない一対の水晶端子が形成される。」

(2)「【0005】導電性接着剤9は、容器本体3の分割段部上に塗布して水晶片2の一端部を載置した後、熱硬化によって固着する。なお、水晶片2の一端部の下面及び側面が導電性接着剤9によって固着される。絶縁カバー4は、ここではガラス(10)封止によって容器本体3の上壁6c上面に接合し、水晶片2を密閉封入する。」

(3)図4(a)

図4によれば、ガラス(10)の内側面は、絶縁カバー4に近づくにつれて張り出すように傾斜していることが認められる。

(4)前記(1)〜(3)によれば、甲4には以下の技術が記載されている。

「従来技術の表面実装振動子であって、
表面実装容器1内に水晶片2を密閉封入し、
表面実装容器1は積層セラミックとした凹状の容器本体3と、
セラミックとした絶縁カバー4とからなり(【0003】)、
絶縁カバー4は、ここではガラス(10)封止によって容器本体3の上壁6c上面に接合し、水晶片2を密閉封入し(【0005】)、
ガラス(10)の内側面は、絶縁カバー4に近づくにつれて張り出すように傾斜している(前記(3))、
表面実装振動子。」

5 甲5の記載事項
甲5には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0025】
本実施の形態1にかかる水晶振動子1には、図1に示すように、圧電素子のATカット水晶振動片2(本発明でいう電子部品素子であり、以下、水晶振動片という)と、水晶振動片2を搭載し保持するベース3と、ベース3の一主面31に保持した水晶振動片2を気密封止するための蓋5と、が設けられている。
【0026】
この水晶振動子1では、ベース3と蓋5とが封止部材8により加熱溶融接合されて本体筺体11(本発明でいう電子部品用パッケージ)が構成され、この接合により、気密封止された本体筺体11の内部空間12が形成される」

(2)「【0029】
ベース3は、セラミック材料を積層して構成される。具体的に、ベース3は、図2,3に示すように、底部32と、ベース3の一主面31の主面外周に沿って底部32から上方に延出した壁部33とから構成される箱状体に成形され、底部32と壁部33とによって囲まれ、ベース3の一主面31に水晶振動片2を搭載するキャビティ34が形成されている。このベース3は、セラミックの一枚板(底部32に対応)上に、セラミックの環状板(壁部33に対応)を積層して凹状(断面視形状)に一体焼成してなる。」

(3)「【0031】
ベース3の壁部33の天面は、蓋5との接合面であり、この接合面には、蓋5と接合するための金属層が設けられている。金属層は、複数の層の積層構造からなり、ベース3の壁部33の天面に、WやMoからなるメタライズ層41と、NiからなるNi膜42と、AuからなるAu膜43とが順に積層されてなる。メタライズ層41は、メタライズ材料を印刷した後、セラミック焼成時にベース3に一体的に形成され、Ni膜42とAu膜43はメッキ技術により形成される。なお、ベース3のAu膜43が封止部材8の一部となる(第1接合層44)。」

(4)「【0037】
蓋5は、図1に示すように、一枚板のKovar(Fe−Ni−Co合金)からなるKov母材51(導電性材料)からなり、このKov母材51の他主面52(ベース3との接合時にベース3に対面しない側の主面)にNiからなるNi層53が形成され、Kov母材51の一主面54(ベース3との接合時に、ベース3との接合面となり、ベース3に対面する側の主面)に、CuからなるCu層60が形成され、Cu層60上にAgからなるAgロウ材61(AgとCuとが主体の合金ろう材)が形成され、Agロウ材61上にSnを含むSn系ろう材62が形成されている。Sn系ろう材62は、蓋5の一主面55の外周に沿った環状層となる。蓋5のAgロウ材61およびSn系ろう材62が封止部材8の一部となる(第2接合層63)。また、蓋5の外形寸法は、ベース3の外形寸法よりも小さい。」

(5)「【0041】
拡散工程後に、製造室内の温度をさらに上げて、Sn系ろう材の融点を超える温度まで上昇させる。この温度上昇により第1接合層44と第2接合層63とを加熱して、Sn系ろう材62を溶融させて、第1金属間化合物81(下記参照)と第2金属間化合物82(下記参照)とを生成して封止部材8を形成し、封止部材8によりベース3と蓋5とを接合して(加熱溶融工程)、図1に示すように、水晶振動片2を内部空間12に気密封止した水晶振動子1を製造する。」

(6)「【0047】
また、内部空間12内における封止部材8のキャビティに臨む面84は、ベース3の壁部33の天面に対して角度を有する。」


(7)図1


(8)前記(1)〜(7)によれば、甲5には以下の技術が記載されている。

「水晶振動子1であって、
ATカット水晶振動片2と、水晶振動片2を搭載し保持するベース3と、ベース3の一主面31に保持した水晶振動片2を気密封止するための蓋5と、が設けられ(【0025】)、
ベース3と蓋5とが封止部材8により加熱溶融接合されて、この接合により、気密封止された本体筺体11の内部空間12が形成され(【0026】)、
ベース3は、セラミック材料を積層して構成され、ベース3は、底部32と、ベース3の一主面31の主面外周に沿って底部32から上方に延出した壁部33とから構成される箱状体に成形され、底部32と壁部33とによって囲まれ、ベース3の一主面31に水晶振動片2を搭載するキャビティ34が形成されており(【0029】)、
ベース3の壁部33の天面は、蓋5との接合面であり、この接合面には、蓋5と接合するための金属層が設けられ、金属層は、複数の層の積層構造からなり、ベース3の壁部33の天面に、メタライズ層41と、Ni膜42と、Au膜43とが順に積層され、ベース3のAu膜43が封止部材8の一部となり(第1接合層44)(【0031】)、
蓋5は、一枚板のKovarからなるKov母材51からなり、このKov母材51の他主面52(ベース3との接合時にベース3に対面しない側の主面)にNi層53が形成され、Kov母材51の一主面54(ベース3との接合時に、ベース3との接合面となり、ベース3に対面する側の主面)に、Cu層60が形成され、Cu層60上にAgロウ材61(AgとCuとが主体の合金ろう材)が形成され、Agロウ材61上にSn系ろう材62が形成され、Sn系ろう材62は、蓋5の一主面55の外周に沿った環状層となり、蓋5のAgロウ材61およびSn系ろう材62が封止部材8の一部となり(第2接合層63)(【0037】)、
温度上昇により第1接合層44と第2接合層63とを加熱して、Sn系ろう材62を溶融させて、封止部材8を形成し、封止部材8によりベース3と蓋5とを接合して水晶振動片2を内部空間12に気密封止した水晶振動子1を製造し(【0041】)、
内部空間12内における封止部材8のキャビティに臨む面84は、ベース3の壁部33の天面に対して角度を有する(【0047】)、
水晶振動子1。」

第5 当審の判断
事案に鑑み、先ず、取消理由4について判断し、その後、取消理由1及び2について判断し、最後に取消理由3について判断する。

1 取消理由4(明確性要件)についての判断
(1)申立人は、本件発明に共通する発明特定事項である「前記傾斜面と水平面との成す角度をθとしたとき、2度≦θ≦6度である」との事項について、「水平面」がいかなる面を指すかが定義されていないとして、本件発明が明確ではない(特許異議申立書24頁)旨、主張するので、以下、この点について検討する。

(2)本件明細書には「さらに、このベース11では、土手部11cの天面11caが、土手部11cの幅Wの方向に沿う方向においてベースの内側に向かって下がる傾斜面(図1(C)の例)、又は、土手部11cの幅Wの方向に沿う方向においてベースの外側に向かって下がる傾斜面となっている。傾斜面は、水平面と傾斜面との成す角度がθで傾斜している。」(【0015】)との記載がある。
該記載によれば、「土手部11cの幅Wの方向」が「水平面」を成す方向である、すなわち、本件明細書における「水平面」は、土手部の幅方向に平行な面であると理解できる。

(3)そして、本件明細書、本件特許請求の範囲及び本件図面のその他の記載においても、前記(2)の解釈に反する記載は存在しない。

(4)申立人は、「水平面とは、一般に重力が働く方向に垂直な面をいうところ、いかなる面が水平面に該当するかは、圧電デバイスの設置状況等によって異なる。」(特許異議申立書24頁)と主張するが、以下のア〜イのとおり、申立人の主張は採用できない。

ア 本件明細書及び図面では、ベース11の断面図(図1(B)〜(D)、図2〜図4)にて紙面の上の方に位置する面を本件明細書で「天面」と記載し、紙面の下の方に位置する面を本件明細書で「底面」と記載していることから、断面図においては、紙面下方向を重力が働く方向に見立てていると解される。
そうすると、本件の断面図は、重力が働く方向(すなわち、紙面の下方向)に垂直な面(すなわち、紙面の底辺と水平で、紙面に垂直な面)に「底面」が平行になるように、圧電デバイスが置かれたものであると解釈するのが自然である。

イ 前記アによれば、本件の断面図における「水平面」は、紙面の底辺と水平で、紙面に垂直な面のことであると理解でき、これは「土手部の幅方向に水平な面」と一致するから、本件明細書及び図面を参照する際に圧電デバイスがどのように設置されているかは明らかであり、前記(2)の解釈とも整合する。
よって、申立人の主張は採用できない。

(5)申立人は、「このような傾斜面をどのように形成し、どのようにして所定の傾斜角度とするかについても特定されていないことから、この点が製造方法から明確となることもない。」(特許異議申立書24頁)と主張するが、製造方法の特定がなくても本件発明の圧電デバイスが明確であることは、前記(2)及び(3)から明らかである。
よって、申立人の主張は採用できない。

(6)前記(2)〜(5)によれば、本件発明の「水平面」は「土手部の幅方向に平行な面」であると明確に理解できる。
また、その他の点で本件発明が不明確となることもない。
したがって、本件特許は特許法36条6項2号に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものである。
よって、取消理由4には理由がない。

2 本件発明1と引用発明との対比
次いで、取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について判断するにあたり、本件発明1と引用発明とを対比する。

(1)ア 引用発明の「電子部品搭載用基板1」は、上面中央部に電子部品3を収容するための凹状の搭載部Aを有する絶縁基体4に、搭載部Aを取り囲む枠状の封止用メタライズ層6を被着形成して成」るものである。
そうすると、引用発明の「絶縁基体4」は、「電子部品3」を搭載して収納するための基体すなわちベースである。
そして、引用発明の「絶縁基体4」は、「凹状の搭載部A」を有するから、凹部を有する。
引用発明の「絶縁基体4」は、「絶縁基体4は、原料粉末に適当な有機バインダー、溶剤を添加混合して泥漿状となすとともに、これをシート状とすることによって絶縁基体4用のセラミックグリーンシートを得、このセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに複数枚積層し、高温で焼成することによって製作され」るものであるから、「絶縁基体4用のセラミックグリーンシート」のうち「凹状の搭載部A」を形成するために「打ち抜き加工」を施されたものは、明らかに「搭載部A」を取り囲む土手(以下、これを「土手部グリーンシート」という。)を形成し、引用発明の「土手部グリーンシート」は、本件発明1の「土手部」に相当する。
加えて、引用発明の「絶縁基体4」は「セラミックスから成」るものである。
以上によれば、引用発明の「絶縁基体4」は、本件発明1の「凹部および土手部を有するセラミック製ベース」に相当する。

イ 引用発明の「電子部品3」は「圧電振動子」であり、圧電振動子が「圧電振動片」を有していることは技術常識である。
そして、引用発明の「凹状の搭載部A」には「電子部品3」が収容されるから、引用発明の「凹状の搭載部A」には「圧電振動片」が収容されている。
よって、本件発明1と引用発明とは「凹部内に収納されている圧電振動片」を有する点で一致する。

ウ 引用発明の「金属蓋体2」は本件発明1の「蓋」に相当する。
引用発明の「ろう材7」は、明らかに封止用の材料であって、「銀−銅共晶ろう」であるから金属である。したがって、引用発明の「ろう材7」は本件発明1の「封止用金属」に相当する。

エ 本件発明1の「蓋」は「前記セラミック製ベースの前記土手部の天面で」接合されており、これに対して引用発明の「金属蓋体2」は「封止用メタライズ層6」で接合されている点で一見相違するが、この点は以下の(ア)及び(イ)のとおりである。

(ア)本件明細書には、「なお、天面11caはセラミックの面であるので、そこに直接に封止用金属を接合できないため、周知の技術によりメタライズ層23を設けてある。」(【0015】、下線は強調のため当審で付した。)との記載及び「実際の封止は、圧電振動片13を実装しているベース11と、封止用金属25が形成されている蓋21とを重ねた状態で加熱炉に投入することで、封止用金属を溶融させることで、蓋21とベース11の天面11cx(実際は天面に倣って形成されているメタライズ層23)とが接合されることで、実現される。」(【0016】、下線は強調のため当審で付した。)との記載がある。
前記記載によれば、本件発明1における「天面」と「蓋」との接合は、直接行うことができないため、「メタライズ層23」の介在が必要となると理解される。
したがって、本件発明1の「前記セラミック製ベースの前記土手部の天面で封止用金属で接合されている蓋」は、「メタライズ層23」の介在により「封止用金属」で「土手部」と接合していると解するべきである。

(イ)引用発明の「封止用メタライズ層6」は「絶縁基体4に金属蓋体2を接合させるための下地金属として機能」するものであるから、引用発明では「絶縁基体4」の天面、すなわち、「土手部グリーンシート」の最上面(以下、「グリーンシートの天面」という。)と「金属蓋体2」とが「封止用メタライズ層6」を介して接合されているといえる。
そうすると、前記(ア)によれば、引用発明の「封止用メタライズ層6」は本件明細書に記載された「メタライズ層23」に相当するものである。
また、引用発明の「グリーンシートの天面」は本件発明1の「土手部の天面」に相当する。
よって、本件発明1と引用発明とは、「前記セラミック製ベースの前記土手部の天面で封止用金属で接合されている蓋」を有する点で一致するといえる。

オ 引用発明は「電子装置」であり、その内部に「圧電振動子」を収納するから、圧電デバイスといえる。

カ 前記ア〜オによれば、本件発明1と引用発明とは、「凹部および土手部を有するセラミック製ベースと、前記凹部内に収納されている圧電振動片と、前記セラミック製ベースの前記天面で封止用金属で接合されている蓋と、を有する圧電デバイス」である点で一致する。

(2)引用発明では、「封止用メタライズ層6は、タングステンペーストを絶縁基体4用のセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷法を採用して予め所定厚み、所定パターンに印刷塗布し、乾燥して溶剤を除去するとともに、上面が内周側に傾くようにプレスした後、絶縁基体4用のセラミックグリーンシートとともに焼成することによって絶縁基体4の上面に搭載部Aを取り囲むようにして被着形成され」るから、プレスは「封止用メタライズ層6」とともにその下に位置する「絶縁基体4用のセラミックグリーンシート」にも影響する。
そのため、焼成後は「封止用メタライズ層6」の上面が内周側に傾くだけでなく、「グリーンシートの天面」も内周側に傾くことが明らかである。
したがって、「グリーンシートの天面」は、その程度はともかく、内周側に向けて傾くから、その幅方向に沿う方向において「絶縁基体4」の内側に向かって下がる傾斜面となっている。
よって、本件発明1と引用発明とは「前記セラミック製ベースの前記天面は、前記土手部の幅方向に沿う方向において前記セラミック製ベースの内側に向かって下がる傾斜面となって」いる点で一致する。

(3)前記(1)及び(2)によれば、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

〈一致点〉
「凹部および土手部を有するセラミック製ベースと、前記凹部内に収納されている圧電振動片と、前記セラミック製ベースの前記土手部の天面で封止用金属で接合されている蓋と、を有する圧電デバイスにおいて、
前記セラミック製ベースの前記天面は、前記土手部の幅方向に沿う方向において前記セラミック製ベースの内側に向かって下がる傾斜面となっている
ことを特徴とする圧電デバイス。」
である点。

〈相違点1〉
「傾斜面」が、本件発明1では「前記天面の全部に在」るのに対し、引用発明では「グリーンシートの天面」の全部に在るか否かが明らかではない点。

〈相違点2〉
本件発明1は「傾斜面と水平面との成す角度」すなわち「θ」が「2度≦θ≦6度である」のに対し、引用発明は「幅が0.4mm程度で厚みが10〜50μm程度の枠状」の「封止用メタライズ層6」が「その相対向する2辺の上面に接する直線Lと封止用メタライズ層6の内周から50μm外周側の上面までの距離Dが5〜10μmとなるように内周側に向けて傾いて」いる点。

3 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について判断する。

(1)引用発明の「封止用メタライズ層6」の「相対向する2辺の上面に接する直線L」は、図3を参照すると、「土手部グリーンシート」の幅方向に平行な面内にあると解される。

(2)引用発明において、焼成後の「封止用メタライズ層6」と「直線L」とのなす角度を以下では「φ」と記し、焼成後の「グリーンシートの天面」と「直線L」とのなす角度を以下では「ψ」と記すと、φ>ψとなる。なぜならば、前記2(2)のとおり、「封止用メタライズ層6」と「封止用グリーンシート」との両者がプレスの影響を受けるので、両者とも、内周側の方が外周側よりも圧縮されて薄くなっているためである。

(3)引用発明では、「封止用メタライズ層6は、幅が0.4mm程度で」ある、すなわち、「封止用メタライズ層6」の幅は400μm程度であるとされ、「その相対向する2辺の上面に接する直線Lと封止用メタライズ層6の内周から50μm外周側の上面までの距離Dが5〜10μmとなるように内周側に向けて傾いて」いるから、角度φは以下の(式1)
φ=tan-1(D/(400μm−50μm)) ・・・(式1)
で求められる。
(式1)のDに5μmを代入すると、φは約0.818度となり、Dに10μmを代入すると、φは約1.64度となる。すなわち、0.818度≦φ≦1.64度である。

(4)前記(2)及び(3)によれば、ψ<φ≦1.64度であるから、ψは明らかに2度未満である。

(5)申立人は、「甲第1号証に記載の電子装置の電子部品搭載用基板1は、絶縁基体4の搭載部Aの底面と、絶縁基体4の搭載部Aの周囲の部分の上面の傾斜部分とのなす角度が、約6度となっている(図1)。」(特許異議申立書14頁)と主張するが、φが6度であるとする根拠は甲1に存在しないので、申立人の主張は採用できない。

(6)次いで、引用発明のψを2度以上6度以下にすることの容易性について検討する。
引用発明のφは前記(4)のとおり2度未満であるから、ψ<φであるψを2度以上6度以下とするためには、距離Dを10μmよりも大きくしてφを2度よりも大きくする必要がある。
しかしながら、引用発明は「距離Dが10μmを超えると、封止用メタライズ層6と金属蓋体2との間に形成される隙間が大きくなりすぎて、そのような大きな隙間をろう材7を介して良好に埋めることが困難となる」ものであるから、距離Dを10μmよりも大きくすることには阻害要因がある。

(7)加えて、甲2〜甲5をみても、引用発明の角度φを2度よりも大きくすべき特段の事情は、記載も示唆もない。
また、その他、引用発明の角度φを2度よりも大きくする特段の事情は存在しない。

(8)前記(6)及び(7)によれば、本件発明1の相違点2に係る構成は、当業者といえども容易に想到し得るものではない。

4 取消理由1(新規性)についての判断
(1)前記2のとおり、本件発明1と引用発明との間には、少なくとも相違点2が認められる。
したがって、本件発明1は引用発明とは同一ではない。

(2)本件発明3は、本件発明1のセラミック製ベースの部分の発明であると解され、本件発明1と同じく「前記傾斜面と水平面との成す角度をθとしたとき、2度≦θ≦6度である」ことを発明特定事項として含んでいる。
そうすると、前記2と同様の理由で、本件発明3と引用発明との間には、少なくとも前記2の相違点2が認められる。
したがって、本件発明1は引用発明とは同一ではない。

(3)前記(1)及び(2)によれば、本件の請求項1及び請求項3に係る特許は特許法29条1項3号の規定に違反してされたものではない。
よって、取消理由1には理由がない。

5 取消理由2(進歩性)についての判断
(1)前記3のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者といえども引用発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2は、本件発明1を引用して記載された発明であり、引用発明との間には、少なくとも前記2の相違点2が存在する。
よって、前記3と同様に、本件発明2は、当業者といえども引用発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(3)前記4(2)のとおり、本件発明3と引用発明との間には、少なくとも前記2の相違点2が存在する。
よって、前記3と同様に、本件発明3は、当業者といえども引用発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(4)前記(1)〜(3)によれば、本件の請求項1〜3に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。
よって、取消理由2には理由がない。

6 取消理由3(サポート要件)についての判断
(1)申立人は、「本件特許発明1から3が、いずれもベースと蓋との封止の信頼性を向上するという本件特許が掲げる課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えた発明であることは明らかである。」(特許異議申立書23頁)旨、主張するので、以下、この点について検討する。

(2)本件明細書には、「ところで、この種の圧電デバイスでは、その特性を維持するために、容器内は所定の低圧雰囲気又は所定の不活性ガス雰囲気に維持される必要があるので、封止の信頼性が重要である。圧電デバイスの小型化が進むに従いベースの土手部の幅も狭くなり、その結果封止パス(シールパス)が狭くなる。シールパスが狭小化されても封止の信頼性を確保できる種々の技術が益々必要になる。」(【0005】)との記載及び「例えば上記のような封止用金属を用いる場合、従来は、ベース外形に対し蓋の外形を一回り小さくしてベース端部から蓋の端部を後退させる構造が採られていた。そして、ベース天面と蓋の裏面とを封止金属で接合するとともに、前記後退部分で封止用金属を蓋の側面に回りこませていわゆるフィレット構造により蓋の側面を封止用金属で補強して封止の信頼性を高める構造が採られていた。しかしながら、シールパスの狭小化が進むと上記の後退部分を確保すること自体が困難になってくる。何らかの対応が必要である。」(【0006】)との記載があり、当該記載からは、従来の圧電デバイスは、小型化によってベースの土手部の幅が狭くなり、その結果、シールパスが狭小化されているため、封止の信頼性を確保することが必要となっているが、いわゆるフィレット構造でも封止の信頼性が確保できないほど小型化が進んでいることが理解できる。
前記記載を受けて、本件明細書には「この出願はこのような点に鑑みなされたものであり、従ってこの出願の目的は、封止の信頼性を向上できる新たな構造を有した圧電デバイス、およびその製造に用いて好適なベースを提供することにある。」(【0006】)との記載がある。
そうすると、本件発明が解決すべき課題は、いわゆるフィレット構造でも封止の信頼性が確保できない程に小型化された圧電デバイスについて、封止の信頼性を向上させることにあると認められる。

(3)前記(2)の課題を受けて、本件明細書には、課題を解決するための手段として「この目的の達成を図るため、この出願の圧電デバイスの発明によれば、凹部および土手部を有するセラミック製ベースと、前記凹部内に収納されている圧電振動片と、前記ベースの前記土手部の天面に封止用金属で接合されている蓋と、を有する圧電デバイスにおいて、/前記ベースの前記天面は、前記土手部の幅方向に沿う方向においてベースの内側に向かって下がる傾斜面、又は、前記土手部の幅方向に沿う方向において前記ベースの外側に向かって下がる傾斜面となっていることを特徴とする。」(【0007】、「/」は改行を表す。)との記載があり、さらに、発明の効果として「この発明の圧電デバイス及びベースによれば、ベースの土手部の天面に所定の傾斜面を具えるので、傾斜面が無い場合に比べて、蓋と天面との間に封止用金属が溜まり易い領域が生じるから、その分、蓋とベースとの接合強度が高まる。」(【0009】)との記載がある。
前記記載によれば、「ベースの土手部の天面に所定の傾斜面を具える」構造によって「傾斜面が無い場合に比べて、蓋と天面との間に封止用金属が溜まり易い領域が生じる」ので、「蓋とベースとの接合強度が高まる。」ことが理解でき、この理解によれば、本件発明において課題を解決するために必要不可欠な手段は、「天面」の「前記土手部の幅方向に沿う方向においてベースの内側に向かって下がる傾斜面」又は「前記土手部の幅方向に沿う方向において前記ベースの外側に向かって下がる傾斜面」であると認められる。

(4)さらに、本件明細書の「この角度θは、小さすぎては、本発明の効果が得られず、大きすぎては傾斜面11caと蓋21の面との接触が良好に行えなくなる。従って、この角度θは、発明者の実験および検討によれば、2度≦θ≦6度、より好ましくは2度≦θ≦5度、さらに好ましくは3度≦θ≦5度が良い。」(【0015】)との記載によれば、封止の信頼性をより高めるためには、傾斜面と水平面との成す角度θを「2度≦θ≦6度」とすることが好適であると理解できる。

(5)本件発明はいずれも「天面は、前記土手部の幅方向に沿う方向において前記セラミック製ベースの内側に向かって下がる傾斜面となっており」との発明特定事項を備えるから、前記(3)によれば、前記(2)の課題を解決することができると認められる。
また、本件発明はいずれも「2度≦θ≦6度」との発明特定事項を備えるから、前記(4)によれば、前記(2)の課題をより好適に解決できると認められる。

(6)申立人は、本件明細書の段落【0017】の記載を根拠として、「ベースと蓋との封止の信頼性を向上するという本件特許が掲げる課題の解決には、封止用金属の厚みが重要となると解される。/これに対し、本件特許発明1から3は、いずれも、封止用金属の厚みについて規定していない。」(特許異議申立書22頁、「/」は改行を表す。)とし、「本件特許発明1から3は、いずれも、封止用金属の厚みが、ベースと蓋との封止の信頼性を向上するという課題を解決できない程度の厚みにしかならない場合もその権利範囲に含むものと解される。」(特許異議申立書23頁)と主張する。
しかしながら、本件明細書の段落【0017】には、「この発明の圧電デバイス及びベースによれば、図1(C)及び(D)に示したように、ベース21の天面(傾斜面)と蓋との間に封止用金属の溜まりが、傾斜面が無い場合に比べて多く、生じる。そのため、例えば、封止用金属の厚みが厚くなるので、それにより封止用金属による緩衝効果が得られると考えられ、蓋とベースとの接合の耐衝撃性向上、接合強度向上が図れる。」(下線は強調のために当審で付した。)と記載されている。
該記載は、「傾斜面が無い場合に比べて」傾斜面のある場合の方が接合強度が向上することを述べたものである。すなわち、本件発明は、傾斜面の存在により接合強度が向上することに着目していたものであって、その理由の一端を封止用金属の厚みに求めてはいるが、封止用金属の厚みのみが接合強度の向上に影響するものとは解されない。
したがって、本件明細書の段落【0017】の記載によっても、本件発明における課題解決手段の本質は、封止用金属の厚みではなく、「傾斜面」であると理解できる。
そして、傾斜面の角度θが2度から6度の本件発明は、より好適に課題を解決できると認められる(前記(4))ところ、θのこの範囲において封止が不十分であることを疑わせる記載は本件明細書及び図面には存在しない。

(7)前記(1)〜(6)によれば、本件発明は、いずれもその課題を解決できると認識できるものである。
また、本件発明は、その他の点でも、本件の発明の詳細な説明に記載したものであると認められる。
したがって、本件特許は特許法36条6項1号に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものである。
よって、取消理由3には理由がない。

第6 むすび
前記第5によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-02-17 
出願番号 P2016-227866
審決分類 P 1 651・ 113- Y (H03H)
P 1 651・ 121- Y (H03H)
P 1 651・ 537- Y (H03H)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 佐藤 智康
丸山 高政
登録日 2021-05-31 
登録番号 6892250
権利者 日本電波工業株式会社
発明の名称 圧電デバイス及びベース  
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