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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1384307
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-01-21 
確定日 2022-04-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6904956号発明「注型用配合物とゼラチン製品を製造する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6904956号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6904956の請求項1ないし17に係る特許についての出願は、2016年12月1日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2015年12月16日 ドイツ(DE))を国際出願日とする出願であって、令和3年6月28日に特許権の設定登録がされ、同年7月21日にその特許公報が発行され、その後、令和4年1月21日に、特許異議申立人 奥村 一正(以下「特許異議申立人」という。)により、請求項1〜17に係る特許に対して、特許異議の申立てがされたものである。

第2 特許請求の範囲の記載
本件の特許請求の範囲の請求項1〜17に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」〜「本件特許発明17」という。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜17に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
固形窪み状鋳型の中に注入することによってゼラチン製品を製造するための注型用配合物であって、以下の構成成分、すなわち
− ゲルクロマトグラフィによって求めた平均分子量が少なくとも130kDa、好ましくは少なくとも145kDaであり、分子量130kDa超の割合が少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも45重量%であるゼラチンを、4〜16重量%;
− 1種類以上の糖アルコールを、6〜76重量%;
− 乾燥物質の含量が80重量%の状態で50℃の温度にて測定した粘度が、800mPa・s未満、好ましくは700mPa・s未満であるグルコースシロップを、0〜50重量%;および
− スクロースを、0〜50重量%、
含有する均質な水溶液を含み、
前記グルコースシロップと前記糖アルコールが合わさって前記水溶液の25〜76重量%を構成し、前記水溶液が、少なくとも78重量%の乾燥物質含量および/または0.75未満の水分活性(Aw値)を有する、注型用配合物。
【請求項2】
前記均質な水溶液が、1種類以上の香味剤、着色剤、および/または酸性化剤をも含む、請求項1に記載の注型用配合物。
【請求項3】
前記均質な水溶液が、1種類以上の栄養素および/または医薬活性物質をも含む、請求項1または2に記載の注型用配合物。
【請求項4】
さらに1種類以上の不溶性構成成分を含み、前記不溶性構成成分は、前記水溶液に分散されており、好ましくは栄養素および医薬活性物質から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項5】
前記栄養素が、ビタミン、ミネラル、植物抽出物、およびペプチド、特にはコラーゲンペプチド、から選択される、請求項3または4に記載の注型用配合物。
【請求項6】
前記ゼラチンが、前記水溶液に5〜12重量%、好ましくは6〜10重量%の割合で含まれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項7】
前記グルコースシロップが、50以上、好ましくは60以上のデキストロース当量を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項8】
前記グルコースシロップが、前記水溶液に8〜40重量%、好ましくは15〜28重量%の割合で含まれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項9】
前記スクロースが、前記水溶液に15〜45重量%、好ましくは20〜40重量%の割合で含まれる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項10】
前記糖アルコールが、前記水溶液に10〜30重量%の割合で含まれる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項11】
前記糖アルコールが、ソルビトール、マンニトール、エリトリトール、およびグリセロールから選択され、好ましくはソルビトールである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項12】
前記均質な水溶液が、1種類以上のさらなる親水コロイドをも含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の注型用配合物。
【請求項13】
ゼラチン製品を製造する方法であって、
− 請求項1〜12のいずれか1項に記載の注型用溶液を製造する工程と;
− 前記注型用溶液を80℃以上の温度で固形窪み状鋳型に注入する工程と;
− 前記窪み状鋳型中の前記注型用溶液を、ゼラチン製品を取得するために冷却する工程と;
− 前記ゼラチン製品を前記窪み状鋳型から取り出す工程と、
を含む方法。
【請求項14】
前記注型用溶液が前記窪み状鋳型の中で60分未満、より好ましくは45分未満の時間で冷却される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記固形窪み状鋳型がプラスチック材料からなり、前記プラスチック材料は、好ましくはシリコーン、ポリカーボネート、またはポリエチレンテレフタレートから選択される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記ゼラチン製品は、前記窪み状鋳型から取り出した後、離型ワックスで処理されるか、または、スクロースおよび/またはクエン酸を散布される、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の注型用配合物の固化物からなるゼラチン製品。」

第3 特許異議申立理由
進歩性
異議申立理由1:請求項1〜17に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記の甲第1号証に記載された発明及び本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物又は電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2〜13号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
明確性要件
異議申立理由2−1:請求項1〜17に係る発明について、ゲルクロマトグラフィによって求めたゼラチンの平均分子量が実施に用いるカラムおよび/またはバッファーによって測定結果が異なることは周知であり(甲第14号証)、本件特許明細書にどのようなカラムおよび/またはバッファーを用いたのか記載がなく、平均分子量が重量平均分子量であるのか、数平均分子量であるのか不明であるから、発明の外延が不明確であるから、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
異議申立理由2−2:請求項13〜16に係る発明について、「請求項1〜12いずれか1項に記載の注型用溶液を製造する工程;」と規定しているが、請求項1〜12には、「注型用溶液」について規定されておらず、発明自体が不明確であるから、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。



甲第1号証:薬剤学、1997年、Vol.57、No.2、p.86〜94
甲第2号証:特許5754978号公報
甲第3号証:日本写真学会誌、2005年、68巻、別冊2、表紙,奥付,目次,p.47〜48
甲第4号証:特許2968908号公報
甲第5号証:特許5771983号公報
甲第6号証:特許4725620号公報
甲第7号証:Food Chemistry 4th revised and extended Edition、2009年、表紙,奥付,目次,p.862〜866
甲第8号証:特開2000−135060号公報
甲第9号証:特許第5810605号公報
甲第10号証:特開2015−27276号公報
甲第11号証:特開2013−111055号公報
甲第12号証:もらえる・ためせるモラタメ.net、2009年12月10日(申込開始日)、
<https://www.moratame.net/detail/tamesu.php?project_id=72077>
甲第13号証:内閣府・食品安全委員会 ファクトシート 調理器具に用いられているシリコーン(概要)、2013年6月17日、p.1〜13
甲第14号証:日本写真学会誌、2005年、68巻、別冊1、p.52〜53

第4 当審の判断
異議申立理由1(1−1、1−2)(進歩性)について
1 甲号証の記載事項
(1)甲第1号証
本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証には、以下の記載がある。
(1a)「本報では,服用に水を要せず,かつ苦味を緩和した小児向け剤形として,ゼラチンを用いたグミ製剤の調製を試みた.ここでグミ(Gummi)とは,砂糖,水飴等の糖質を煮詰めたシロップに,ゲル化剤としてゼラチンを加えた後,冷却固化して得られるゲル化菓子のことであり,グミに薬物を添加して調製した製剤をグミ製剤と称した.解熱薬のアセトアミノフェン(以下AAPと記す)は,Reye症候群18,19)等の副作用を起こし難い薬物と考えられているため小児に繁用されていること,また,1回の投与量が25〜200mgとグミ製剤に含有可能な量であること,さらに,融点が169〜172℃と高く,グミ製剤調製時の加熱による分解がほとんど起こらず,水溶液のpHが4〜6と弱酸性であるためゼラチンとの配合変化も起こし難いと考えられたことからグミ製剤中のモデル薬物として選択した.著者らは,AAP粉体を懸濁分散した懸濁型グミ製剤(以下SUS-Gummiと記す)と,エタノールに溶解した溶解型グミ製剤(以下DIS-Gummiと記す)とを調製し,服用感に影響を与える粘弾性,ならびに薬物の含量均一性等について検討を行ったので報告する.」(87頁1〜11行)

(1b)「1. 試料および試薬
アセトアミノフェン(AAP, 20℃の水1mlに本品15.3mg溶解する:山之内製薬(東京)),ゼラチン
TABLE I. Formula of Gummi Base
Component Content (g)
Gelatin 21.0
Sugar 120.0
Glucose syrup 141.0
Sodium citrate 3.9
Fruit juice 18.0
Coloring matter 0.12
Flavor 0.18
Water p.q.
・・・
(S-1204,分子量約3〜70万,平均分子量約10万;ニッピゼラチン工業(静岡)),砂糖(HA;日本甜菜製糖(東京)),水飴(ハイマル;参松工業(東京)),香料(ピーチフレーバー:長谷川香料(東京)),果汁 (1/5濃縮ピーチ果汁,日本農林規格適合品;サンヨーフーズ(東京)),色素(サンレッド○R(決定注:原文は、○の中にR)RC;三栄源FFI(東京)),クエン酸(高砂香料(東京)),エタノール(食品用変性エタノール,政府専売95%,1級36号,H-4),トウモロコシデンプン(含有水分量約15%のものを60℃で8時間乾燥し4〜7%のものを使用した;ヨシダ製薬(東京))を用いた.また,グミ製剤からのAAPの抽出およびHPLC分析には試薬特級品を用いた.
2. グミ製剤の調製
Table Iに示した処方のグミ製剤の基本溶液(以下,グミベースと記す)を用いて,Fig.lの調製法に基づいてグミ製剤を調製した.ビーカー○1(決定注:原文は、丸数字。以下同様。)にゼラチンを秤量し,ゼラチン重量の約2倍量の精製水を加えゼラチンを膨潤させた後,60℃で溶解させた.ビーカー○2に砂糖,水飴を秤量し,砂糖重量の約1/3量の精製水を加えて125℃で加温溶解させ,含有水分量を屈折計(N-3E;アタゴ社製(東京))を用いて随時測定し,含有水分量が約16〜20%になるまで煮沸を行った.ビーカー○3に果汁,色素,香料を秤量,混和した後クエン酸を加え60℃で溶解させた.以上ビーカー○1,○2,○3を素早く混合し,気泡が立たないように撹拌してグミベースを調製した.
SUS-Gummiの粘性内容液体の調製はTable IIを用いて行った.AAP粉末を篩別し(100〜200メッシュ),40,50または80℃でグミベースに撹拌混合した.
DIS-Gummiの粘性内容液体の調製はTable IIIを用いて行った.AAPをエタノールに60℃で溶解してグミベースに撹拌混合した.その後,エタノール臭が消失した時点で加水し適量とした,
SUS-GummiでAPP添加温度が40,50℃の製剤は,市販グミキャンディーの製法20)に準じて以下のように調製した.はじめに,デンプンを木製プレート(外寸34×26×3.5cm,内寸31×23×3cm)に敷き詰め,次にグミ製剤の形状の元となる石膏製鋳型(以下,モールドと記す.形状および縦方向の最大の厚みは,半球で20mm,半楕円球で15mmとした.)でこのデンプンを敷き詰めた木製プレートにくぼみを付け,Fig.2に示したデンプンプレートを作成した.そして,分注時の注射器内でのAAPの偏りを起こさないように,注射器を恒温漕で加温しておき,SUS-Gummiの粘性内容液体を一度吸い上げてから戻す操作を2〜3回繰り返した後,Fig.3に示したように素早くデンプンプレート上のくぼみのなかに10gずつ分注し, 室温,湿度50%で24時間,水平の状態で放置(以下,この放置をエージングと記す)し,SUS-Gummiを調製した.
SUS-GummiでAAP添加温度が50,80℃の製剤,ならびにDIS-Gummiの調製は,水分透過性のないプラスチックプレート(塩化ビニル製,厚さ0.35mm)を用いた.プラスチックプレート上の直方体のくぼみ(20×20×10mm,縦方向の厚みは10mm)に加温した注射器を用いてSUS-およびDIS-Gummiの粘性内容液体を10gずつ分注し,フィルムでシールした後,ステンレス板にプラスチックプレートを水平に乗せ保冷庫で10℃に急冷し,24時間エージングを行った.その後Fig.4に示したプラスチックプレートのくぼみ凸側を押してグミ製剤を取り出し,DIS-Gummiを調製した.」((87頁表1及び88頁1〜34行)

(1c)「結果および考察
1. 各種グミ製剤の外観
AAP添加量25mg/個のSUS-Gummi, DIS-Gummi,ならびにP-Gummiの肉眼での外観は,Fig.4に示したDIS-Gummiと同様に薄い透明感のあるオレンジ色を呈していた.さらに,内部についてそれぞれのグミ製剤の断面を実体顕微鏡により観察したところ,いずれのグミ製剤においても調製時に生成したと思われる気泡が観察された.さらに,SUS-Gummiにおいては調製時に添加したAAP粉体が,添加時とほぽ同じ粒子径でグミベース中に分散していることが観察された.
2. AAP添加によるグミ製剤の粘弾性への影響
AAP添加量25mg/個のSUS-Gummi, DIS-Gummi,およびP-Gummiの応力緩和率につてTable IVに示した.SUS-Gummi,またはDIS-Gummiの応力緩和率は,いずれもP-Gummiに比べ,有意に高い値を示したことから,AAP添加によりグミ製剤の弾性が低下すると推測された.しかしながら,グミキャンディー製造における一般的かつ経験的知見23)から,この程度の弾性の低下が食感,ならびに服用感に及ぽす影響はきわめてわずかであると考えられた.一方,SUS-GummiとDIS-Gummiとの間で応力緩和率に有意な差が認められなかったことから,AAPの添加方法が異なっても,本報における両グミ製剤の粘弾性にはほとんど相違がなく,また,それらの服用感にもほとんど相違がないものと推察された.
3. グミ製剤のAw値
Table VにAAP添加量50mg/個のサンプルAからFのSUS-Gummi,およびサンプルGのDIS-Gummiについて調製条件, Aw値20,21),ならびに含有水分量を示した.通常Aw値が0.8以上になると糖が変化し褐色に変色したり,あるいは保存中にカビが生じ,製品の劣化の原因となるケースが経験上知られており,反対にAw値が0.6以下に減少すると弾力性を失い,食感の劣化の原因となると考えられている22).このことを考慮すると,グミ製剤ではAw値が0.7付近,含有水分量は約20%に制御されていることが望ましいと考えられる.サンプルAおよびBでは比較的高いAw値を示しており,前述の理由から製剤の劣化が懸念されたが,他のサンプルでは,ほぼ適正な範囲内にあった. Aw値が高い値を示したサンプルA,Bにおいては,他のサンプルに比べ水分量が数%大きい値を示したことから,グミ製剤調製の際に,市販グミキャンディーの製法23)に準拠してデンプンプレートを用いてエージングを行ったことが原因の一つと考えられた.デンプンプレートを用いて成形したSUS-Gummiでは表面が硬くしわが寄り,しかも内部が柔らかい製剤が調製される傾向が観察された.これは,デンプンプレートを用いたエージングにおいては,デンプン粉体層による製剤の乾燥と冷却によるゼラチンの固化が生じ,その際,デンプン粉体層に接触するSUS-Gummiの表面付近の乾燥と固化が内部のそれに先行してしまう.そのため,製剤内部の水分の表面への拡散移行が遅れ,表面が硬く,内部が柔らかくなったものと推察された.これに対してプラスチックプレートを用いてエージングを行った場合は,プレートによる乾燥が生じないため,ゼラチンの固化のみが進行し,ゼラチンによるゲルの構造が均一に形成され,全体に一様な硬さの製剤となったものと考えられた.プレートから取り出された後のSUS-Gummiは,デンプンプレートで成形した場合,表面が硬いため, 内部の水分が乾燥されず,結果として製剤全体の含有水分量が多くなり,また,プラスチックプレートで成形した場合は,製剤内外での硬さが均一なため,乾燥が比較的容易に進行し,含有水分量が少なくなったものと推察された.以上からグミ製剤のAw値を適正範囲内に設定するには,プラスチックプレートを用いて10℃に冷却してエージングする方法が通切であるものと考えられた.
4. グミ製剤中の薬物の含量均一性
Table VIに,AAPを40℃,または50℃で添加したSUS-Gummi(AAP添加量50mg/個)であるサンプルA, Bの含量均一性について示した.なお,分注時の温度も添加時の温度と同1条件で行った,サンプルBはAに比べ,製剤1個当たりの重量,およびAAP含有量におけるCV値がいずれも小さい値を示したことから,薬品添加時の温度を高く設定することにより,製剤中の薬物含量の均一性を向上できるものと考えられた.これは温度が高いほどグミベースの粘度が低いため,薬物の分散性が向上したこと,ならびに分注時のグミベースの粘度が低くなることにより,プレートへの分注精度が向上したことに起因すると考えられた.
・・・
結 論
解熱薬アセトアミノフェンを含有し,水なしで服用できる小児向けの剤形として,溶解型ならびに懸濁型のグミ製剤が調製可能であった.また,薬物の含量均一性の高い両タイプの製造条件は以下のようであった.
溶解型グミ製剤では,薬物添加ならびに分注温度60℃,懸濁型グミ製剤では,薬物添加ならびに分注温度50℃,そして両タイプともに,プラスチックプレートの使用,エージング10℃,24時間,さらに,タイプにおいては溶解型グミ製剤がわずかにエタノールが残存するものの,懸濁型グミ製剤に比べ薬物含量均一性の高い製剤であった.」(90頁19行〜94頁4行)

(2)甲第2号証
本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である甲第2号証には、以下の記載がある。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分として、糖アルコール、ポリデキストロース、ゼラチン及びエステル化されたカルボキシル基含有多糖類の組成比率が次の範囲にあり、前記エステル化されたカルボキシル基含有多糖類がアルギン酸プロピレングリコールエステルまたはヒアルロン酸プロピレングリコールエステルである咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ。
糖アルコール:全重量に対し50〜74重量%
ポリデキストロース:全重量に対し20〜40重量%
ゼラチン:全重量に対し5.5〜10重量%
エステル化されたカルボキシル基含有多糖類:全重量に対し0.05〜1重量%
【請求項2】
前記アルギン酸プロピレングリコールエステルの1重量%水溶液の粘度が、20℃で60〜250mPa・sであること、または、ヒアルロン酸プロピレングリコールエステルのエステル化度が40〜70%である請求項1に記載の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ。
【請求項3】
前記ゼラチンが300ブルームを超えるゼラチンであり、ゲル強度が20×105〜40×105kg/m2・s、粘着性が5.0×105〜10×105kg/m2・sの範囲である請求項1または2に記載の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ。
【請求項4】
糖アルコール、ポリデキストロース及びエステル化されたカルボキシル基含有多糖類の成分を含有するキャンディベースを製造する工程、
キャンディベース中にゼラチンを添加した後にグミキャンディ液の温度を70〜80℃に保温する工程、
ポリプロピレン樹脂で作製した成形用型にグミキャンディ液を充填し、乾燥させずに成形用型を密閉する工程
を有し、前記エステル化されたカルボキシル基含有多糖類がアルギン酸プロピレングリコールエステルまたはヒアルロン酸プロピレングリコールエステルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディの製造方法。」

(2b)「【発明が解決しようとする課題】
【0014】
検査に用いる試料は通常の食事に類似した咀嚼運動である、食べ物を噛み砕くという状態を捉えることができ、試料の大きさや硬さが一定であること、更に咀嚼能力の測定精度や再現性が高いことが重要である。更に、うしょく(決定注:原文は、「食」片に「虫」)の原因となる糖質を含まないことが望まれている。これらの問題をすべて解決した咀嚼能力検査用試料はなく課題として残っている。
【0015】
そこで、本発明は、前記の咀嚼能力検査における諸問題を解決するためになされたもので、通常の食事に類似した咀嚼運動である、食べ物を噛み砕くという状態を捉えた咀嚼能力を測定することが可能であり、咀嚼能力の測定精度や再現性が高い咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ及びその製造方法を提供することを目的とする。」

(2c)「【0029】
ゼラチンとしては、牛、豚、鶏、魚類などの皮、骨などを原料としたゼラチンを用いることができる。また、それぞれ酸処理、アルカリ処理といった処理方法の仕方で食感が変わってくる。通常、ゼラチンはその使用される用途に応じて最適なゲル強度のものを選択、使用されている。本発明のグミキャンディは咀嚼能力を測定するためのグミキャンディであり、硬さは重要な要因となる。本発明で使用されるゼラチンはブルーム値が300を超えることが好ましい。
なお、前記ブルーム値とは、ゼリー強度を示すもので、ゼラチンの6.67重量%水溶液を規定のカップに入れ10±0.1℃の恒温槽で16〜18時間冷却ゼリー化して、ブルーム式ゼリー強度計のプランジャー(直径12.7mmを4mmだけゼリー中に押し込むのに要する散弾の重さ(g)を測り、この重量をブルーム値として表したものである。」

(2d)「【0038】
そこで、本発明のノンシュガーグミキャンディの製造方法は、
糖アルコール、ポリデキストロース及びエステル化されたカルボキシル基含有多糖類の成分を含有するキャンディベースを製造する工程、
キャンディベース中にゼラチンを添加した後にグミキャンディ液の温度を70〜80℃に保温する工程、
ポリプロピレン樹脂で作製した成形用型にグミキャンディ液を充填し、乾燥させずに成形用型を密閉する工程、
充填量の誤差が0.1g以内であることを特徴とする。
【0039】
前記製造方法であれば、ポリプロピレン樹脂で作製した成形用型にグミキャンディ液を充填するため形状は一定となり、乾燥工程を含まないため、水分値や重量にばらつきがない咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディが得られる。
【0040】
まず、糖アルコール、ポリデキストロース及びエステル化されたカルボキシル基含有多糖類の成分を混合した後、加熱溶解することでキャンディベースを製造する。各成分の混合の順番については特に限定はなく、加熱方法も従来のグミキャンディの場合と同じであればよい。
【0041】
次に、前記キャンディベース中にゼラチンを添加した後にグミキャンディ液の温度を70〜80℃に保温するが、ゼラチンは予め水で膨潤させておけば取り扱い易く、混合も速やかにできるので好ましい。ゼラチンを混合する際の温度条件としては、ゼラチンが固化しない程度であればよく、例えば、70〜80℃であればよい。
【0042】
次に、ポリプロピレン樹脂で作製した成形用型にグミキャンディ液を充填し、乾燥させずに成形用型を密閉する。前記ポリプロピレン樹脂で作製した成形用型は、定法に基づいて作製したものであればよく、例えば、型の形としては特に限定はない。また、成形用型へのグミキャンディ液の充填は、定法に基づいて行えばよい。
次に行う前記成形用型を密閉は、成形用型充填したグミキャンディ液の表面からの水分の蒸発を抑えることを目的としており、密閉方法としては、例えば、成形用型を密閉容器に入れたり、グミキャンディ液が充填された成型用型の上部の開口部を別のシート材で覆うことなどが挙げられるが、特に限定はない。
密閉後に、成形用型を冷却することで、グミキャンディ液を冷却固化して所望の形状のノンシュガーグミキャンディを得ることができる。
【0043】
上記のように成形用型を密閉した後、グミキャンディ液を冷却固化することで、得られるノンシュガーグミキャンディの品質が均一になり易いという利点に加えて、成形用型への充填量に対して得られるノンシュガーグミキャンディの重量の誤差を顕著に低減することができるという利点がある。
例えば、本発明におけるノンシュガーグミキャンディの誤差としては、0.1g以内というレベルで調整することができる。
なお、前記誤差は、グミキャンディ液を所定の型に充填した後、グミキャンディ液がゲル化し固まると型から取り出し、重量を測定することで所望の重量からの誤差として算出することができる。」

(3)甲第3号証
本願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である甲第3号証には、以下の記載がある。
(3a)「1.緒言
ゼラチンを大きく特徴づけている物性は、粘度とゼリー強度である。それらと分子量分布、α鎖、β鎖との関係は興味深く、多くの報告が出されている1,2,3)。その多くは牛骨アルカリゼラチンを対象にしている。牛骨アルカリゼラチンはα鎖、β鎖がはっきりしていることが大きな特徴である。その他のゼラチンではそのようにはっきりした分布は見られなかった。近年、BSE発生により魚を原料としたゼラチンが製造されるようになり、その中には、α鎖、β鎖リッチなゼラチンがある。牛骨アルカリゼラチンの場合は、α鎖に比べβ鎖リッチなゼラチンは同時に高分子量成分も多くなるが、魚ゼラチンでは、高分子量成分は少なく、しかもβ鎖がα鎖の90%近いゼラチンも得られる。
魚ゼラチンについては、魚コラーゲンの変性温度が低いことと関連し、哺乳動物由来のゼラチンに比べ凝固点が低いことが多く述べられているが、その分子量分布についてはほとんど報告がない。筆者らは、特徴的な分子量分布を持つ魚ゼラチンに着目し、物性との関係を考察した。又その特徴的な分布を利用してβ鎖の分画を試みた。」

(3b)「3.結果と考察
β鎖リッチな典型的な魚ゼラチン(I-1)、牛骨アルカリゼラチン(I-2)、及び粘度・ゼリー強度の濃度変化測定に用いたゼラチンについての分子量分布パターンを図1に、物性とGPCから求めた各成分の分率を表1に示した。Iのサンプルは実験室規模での製造で、IIは大量製造品から物性が近いサンプルを挙げた。図1、表1に見られるように、魚ゼラチン(I-1、II-1、II-3)はβ鎖が多く、全体の20%以上を占めている。一方 牛骨アルカリゼラチン(I-2、II-2)はβ鎖に比ベ高分子量部分が多いことがわかる。魚ゼラチンの原料は架橋が未発達なうち採取されるため、高分子量部分が少ないと推測される。」

(3c)「4.まとめ
魚ゼラチンは、架橋が少ないので、高分子量成分が少ない分子量分布を持ち、α鎖β鎖の割合が多かった。比較的融点が高い種類の魚ゼラチンでは、牛骨ゼラチンより融点は低くても同程度の粘度、ゼリー強度を示し、又粘度の濃度依存性が大きかった。そのような魚ゼラチンから分画したβ鎖ゼラチンは元ゼラチンに比べ、粘度が高く、ゼリー強度が低かった。今後、より純度の高いβ鎖を分離し、β鎖の影響及び魚ゼラチンの特徴を見ていく予定である。」

(3d)「



(4)甲第4号証
本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である甲第4号証には、以下の記載がある。
(4a)「【請求項1】 配合されているゼラチンの内で、分子量 20 万以上のゼラチン分子が 25 重量 % 以上占めていることを特徴とする、紐状ゼリー菓子。」

(4b)「【0004】従って、本発明の目的は、消費者を充分に満足せしめ得る食感と、1本だけでも充分に楽しませ得る遊びの要素とを併せ有する紐状ゼリー菓子を提供することにある。ここで、「食感」とは硬さ、歯切れ、歯付き、弾力性乃至伸縮性等の総称であり、「遊びの要素」とは紐状ゼリー菓子を伸ばしたり、縮めたり、結んだり、丸めたり、物に巻き付けたり、一端を持って振り回したりすること等が可能であることを意味している。換言すれば、本発明の本質的な目的は伸縮性に富み、従って引っ張っても切れ難く且つ喫食時の食感が良好な紐状ゼリー菓子を提供することにある。
【0005】
【課題を解決し目的を達成する手段及び作用】既述の課題を解決し且つ上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、所望の食感を有し且つ従来の紐状ゼリー菓子においては考慮の対象とされていなかった「伸ばし易さ」と「切れ難さ」とを有する紐状ゼリー菓子を製造するためには、スターチや小麦粉はゲル化剤として不適当であってゼラチンが適しており、ゼラチンであっても通常のゼリー菓子に使用されているゼラチン (通常のゼラチンゼリー菓子には、成型後の形状変化が要求されないために、充填適性の面から分子量が 20 万以上のゼラチン分子含量の低いもの、即ち 25 重量 % 未満のものであり、粘度の低いことが特徴のゼラチンが使用され、既述の実願平 2 -405131 明細書に記載の紐状ゼリー菓子においても、この種のゼラチンが使用された) は好ましくなく、この通常のゼラチンよりも高分子ゼラチン分子含量の高いゼラチンを用いる必要性のあることが判明し、本発明を完成するに至った。」

(4c)「【0009】本明細書に記載のゼラチンの分子量は、大野・水澤等の方法 (「昭和 62 年度日本写真学会 講演要旨集」第 44 頁参照) に従い高速液体クロマトグラフィーにより行った。即ち、ゼラチンに水を添加し、50℃ の湯煎で溶解させることにより得た 0.5 重量 % のゼラチン溶液 50μl をカラムに注入し、溶離液 (0.2MNaH2PO4, pH 6.8)、送液量 (1.0ml/min.)、カラム温度 (50℃)、分析カラム(Asahipak GS620 を 2 本接続) の条件で溶出時間を測定することにより求めたものである。本明細書で言及する分子量 20 万以上のゼラチン分子とは、溶出時間が 22 分10 秒以内で溶出するゼラチン分子を意味している。
【0010】
【製造例等】次に、試験例及び製造例により本発明を更に詳細に且つ具体的に説明する。尚、試験例は紐状ゼリー菓子の製造に使用されるゼラチンの分子量分布と、このゼリー菓子の「伸ばし易さ」、「切れ難さ」の関係を比較説明するためのものである。
【0011】試験例1
分子量分布が下記の表 1 に示されるように互いに異なるゼラチン原料をそれぞれ「ゼラチン A」及び「ゼラチン B」と命名し、これらを下記の表 2 に示される配合比率で混合して各種の調製ゼラチンを得た (ゼラチン A 及び B の固形分含量は共に 100 重量 % である)。
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】上記の表 2 に示された調製ゼラチンを用い、下記の表 3 に示される配合で諸原料を用いゼリー菓子を調製した。即ち、調製ゼラチンにゼラチン溶解用水を添加し、60℃ にて湯煎してゼラチンを溶解させた。一方、砂糖に砂糖溶解用水を添加し、これに水飴を添加し、130℃ 迄煮詰め、次いで冷却して品温を 90℃ になした。これに上記のゼラチン溶液を添加し、直ちに攪拌混合して均一なものとなし、更に適宜加水して仕上がり固形分含量を 80 重量 % に調整した。得られたゼリー菓子生地を、付着防止のために予め離型油を塗布しておいたトレーに流し込み、冷却して厚み 5mm のシート状に成型固化させた。
【0015】
【表3】



(5)甲第5号証
本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である甲第5号証には、以下の記載がある。
訳文にて示す。
(5a)「【請求項1】
マルチトール及び/又は還元パラチノースと発泡性成分とを含有するハードキャンディが、ゼラチンを含有するグミキャンディ内に分散されているハードキャンディ含有グミキャンディであって、
前記グミキャンディがグミキャンディの全重量に対して還元パラチノース10〜40重量%、ソルビトール30〜60重量%、澱粉1〜10重量%及びグリセリン1〜10重量%を含み、水分含量が15重量%以下であることを特徴とするハードキャンディ含有グミキャンディ。」

(5b)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、活性化傾向にあるグミキャンディ市場において、カリカリした食感とシュワシュワとした発泡感とを持ったハードキャンディ含有グミキャンディ及び前記ハードキャンディ含有グミキャンディを効率よく製造する方法を提供することを目的とする。」

(5c)「【0013】
(グミキャンディ)
本発明で使用するグミキャンディは、糖質として還元パラチノースとソルビトールを主成分とする。これらの糖質を主成分とすることで、グミキャンディの水分含量を15重量%以下とした場合にも、グミキャンディ生地の粘性は低く、ハードキャンディとの混合及び成形が容易になる。
【0014】
還元パラチノースとは、イソマルトースとも呼ばれる、6−O−α−D−グルコピラノシル−D−フルクトースである。
前記グミキャンディ中の還元パラチノースの含有量は、10〜40重量%である。還元パラチノースの含有量が10重量%未満の場合、グミキャンディの弾力性が非常に弱く、グミキャンディの食感として満足出来ないものになり、また、40重量%より多い場合、グミキャンディ生地の粘性が非常に高くなり、ハードキャンディの混合及び成形が困難になってしまう。
【0015】
ソルビトールは、糖アルコールの一種であり、甘味料として知られる。
前記グミキャンディ中のソルビトールの含有量は、30〜60重量%である。ソルビトールの含有量が30重量%未満の場合、グミキャンディの弾力が失われ、60重量%より多い場合、グミキャンディがべとついたヌガーの様な食感となってしまう。」

(5d)「【0019】
その他にグミキャンディの食感形成に必要なものとして、ゼラチンが挙げられる。ゼラチンの原料としては、牛骨ゼラチン、豚皮ゼラチン、魚ゼラチン等を使用することができる。また、それぞれ酸処理、アルカリ処理といった処理の仕方によって食感に変化を与えることができ、これらいずれのゼラチンを用いても構わない。
前記グミキャンディ中のゼラチンの含有量は、5〜10重量%が好ましい。
【0020】
また、ゼラチン以外にも、ペクチン、アラビアガム、カラギーナン、寒天、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、プルラン、ジェランガム等のゲル化剤を添加することもできる。
ただし、前記ゲル化剤を添加するとグミキャンディ生地の粘性が上昇する傾向が強いため、ハードキャンディとの混合及び成形を妨げない範囲での添加量にする必要がある。
【0021】
その他にも所望により香料、酸味料、高甘味度甘味料、着色料、油脂、乳化剤、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、乳製品、果汁等を添加することも可能であり、これらを必要に応じて添加することで、グミキャンディの嗜好性の幅を広げることが出来る。
【0022】
本発明においてグミキャンディの水分含量は15重量%以下であり、8〜12重量%とすることが好ましい。本発明の大きな特徴として、グミキャンディの水分含量が15重量%以下という低い状態にも関らず、硬すぎない心地よい弾力と作業性の良さを持ち合わせていることが挙げられる。さらに、本発明では、グミキャンディの水分含量を下げることで、グミキャンディ中に分散させた発泡成分含有ハードキャンディに含まれている発泡成分の炭酸ガス生成反応の進行を防いでいる。従って、グミキャンディの水分含量が15重量%よりも高い場合、グミキャンディからグミキャンディ中に分散させた発泡性成分含有ハードキャンディへの水分移行が激しく、グミキャンディが所謂「なく」と呼ばれる状態となり、かつグミキャンディ内に分散されたハードキャンディ中で発泡成分の炭酸ガス生成反応が進行し、商品価値を著しく低下させる。
【0023】
(ハードキャンディ)
本発明に用いるハードキャンディを構成する糖類としては、マルチトール(還元麦芽糖)、還元パラチノースを用いることができ、それぞれを単独で用いてもよいし、両者を併用してもよい。本発明ではハードキャンディを構成する糖類としてマルチトール(還元麦芽糖)、還元パラチノースを使用している点に一つの大きな特徴があり、これ以外の糖類、糖アルコール類などを使用した場合では、経時的なグミキャンディからの水分移行によりキャンディ中の発泡性成分が反応しやすく、保存中に炭酸ガスが発生し、かつ、キャンディのカリカリした食感が十分に維持されない。また本発明にいうハードキャンディは、含気させて引き飴のごとくしてもよい。
前記ハードキャンディ中のマルチトール及び還元パラチノースの含有量は、70重量%以上が好ましい。
【0024】
本件出願人が以前に提案した特許文献1では、まず発泡成分を含有したハードキャンディを作製し、次に得られたハードキャンディをシェラックで被覆した後、さらにマルチトール及び/又は還元パラチノースでさらに被覆するとういう3段階の工程を経ていたが、本発明に於いてこの工程は必要ではない。何故ならば、本発明にかかるグミキャンディは、水分含有量が低く、さらに還元パラチノース、ソルビトールを多く含むため、一般的なグミキャンディに比べて、グミキャンディからハードキャンディへの水分移行や、発泡成分の炭酸ガス生成反応が起こりにくくなっているからである。さらに、ハードキャンディに2層の被覆を行わないことで、発泡成分のシュワシュワ感をダイレクトに感じられるため、以前のものよりも、より一層の発泡感を感じられるようになった。」

(6)甲第6号証
本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である甲第6号証には、以下の記載がある。
(6a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリデキストロースを固形分として20〜40%、Dextrose Equivalent(DE)値が20〜35の水飴を固形分として10〜30%、DE値が70を超える水飴を固形分として30〜60%、かつ砂糖10〜30%配合した4種類の成分からなるキャンディベース、及びブルーム値250以上のゼラチンを含み、水分値が13〜17%であることを特徴とするハードグミキャンディ。」

(6b)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、従来のグミキャンディと比較してカロリーが低く、高いチューイング性を保ちつつ、より硬い食感を持つハードグミキャンディ及びその製造方法を提供することを目的とする。」

(6c)「【0032】
(実施例1)
各種水飴と砂糖を使用してキャンディベースを作製し、300ブルーム酸処理ゼラチンを8%になるように添加してグミキャンディ液を調製した。さらにグミキャンディ液にクエン酸塩(酸味料)を用いてpHを3.2〜3.4に調整し、2cm×2cmの型にグミキャンディ液を充填後、40℃以下で水分値が15%になるように乾燥させた。また、乾燥後のハードグミキャンディの大きさを平均8.5mmの高さになるように統一した。
以下にハードグミキャンディの詳細な組成(固形重量部)を示す。
砂糖 20重量部
水飴1(DE値25) 20重量部
水飴2(DE値>75) 30重量部
ポリデキストロース 30重量部
豚皮由来酸処理ゼラチン(300ブルーム) 8重量部
酸味料 2重量部
香料 少々
光沢剤 少々

水飴の組成 水飴1(重量部) 水飴2(重量部)
ブドウ糖 16 73
マルトビオース 10 18
マルトトリオース 7 6
マルトテトラオース 4 2
マルトペンタオース以上 30 1 」

(7)甲第7号証
本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である甲第7号証には、以下の記載がある。
(7a)「

」(865頁図19.3)

(8)甲第8号証
本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である甲第8号証には、以下の記載がある。
(8a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 20〜60℃の融点を有する食用油脂と、粒径が実質的に1〜40μmの範囲にある水不溶性可食粉末とを均一に混和して得られる水不溶性可食組成物。」

(8b)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、カルシウム粉末や茶葉粉末等の水不溶性可食粉末(以下、単に「可食粉末」という)を含有する栄養強化型固形食品を食する場合の問題点である口腔内でのざらざらした違和感、つまり舌触りの悪さを解決することである。さらに製造時における飴生地に添加する際の可食粉末の分散性及び取扱性の向上のため、できるだけ粒径の大きな可食粉末を配合可能にすることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、舌触りの向上のため、製造時に配合される可食粉末の凝集を防止して飴生地中にできる限り均一に分散させる方法について検討した結果、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は、20〜60℃の融点を有する食用油脂と、粒径が実質的に1〜40μmの範囲にある可食粉末とを均一に混和して得られる、固形食品に添加して用いられる水不溶性可食組成物である。また、本発明は、上記の水不溶性可食粉末組成物を含有する固形食品であり飴菓子である。」

(8c)「【0011】(b) 水不溶性可食粉末
可食粉末としては、緑茶、紅茶、ウーロン茶、ギャバロン茶、甜茶等の茶類の粉末;ニンジンの葉、モロヘイヤ等の野菜類;サンザシ、くこ等の果実類の粉末;熊笹、クロレラ藻体、植物繊維等の乾燥微粉末やカルシウム粉末を使用することができる。特に鶏卵の卵殻粉末は天然の食品素材中で最も高いカルシウム含量を持ち、吸収率が高く、大量かつ安価に入手できるため経済的にも有利である。」

(9)甲第9号証
本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である甲第9号証には、以下の記載がある。
(9a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分として、次のa)〜c)の3成分、
a)平均分子量5,000〜20,000のコラーゲンペプチド37.5〜67.5重量%
b)ポリデキストロース5.0〜18.8重量%
c)乾燥果実25.0〜50.0重量%
を含み、かつ水分値が9〜15重量%であることを特徴とする果実含有ハードグミキャンディ様構造物。」

(9b)「【0001】
本発明は、果実とコラーゲンペプチドとを含有する新規なハードグミキャンディ様構造物及びその製造方法に関する。」

(9c)「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、健康及び美容によい食品として、従来のハードグミキャンディと同じように、おいしく手軽に食することができ、舐める、又は噛みしめることができ、口中滞在時間が長く、噛み締めても歯付きがない心地よい食感をもちあわせたハードグミキャンディ様構造物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明において、ハードグミキャンディ様構造物とは、砂糖や水飴等の糖質を煮詰めた後、冷却・固化して得られる従来のハードグミキャンディ又は従来のパスティーユと比べて、外観及び食感が同じあるいは類似している(ハードグミキャンディ様という)食品又は菓子をいう。」

(9d)「【0056】
(実施例1〜6)
2種類のコラーゲンペプチド粉末を下記表1に記載の配合となるように混合し、コラーゲンペプチド100部に対して水30部を加えて混錬した後、水分値が20%になるまで湯煎70℃にて濃縮を行った。その後、得られた濃縮物に表1記載のポリデキストロース及び乾燥果実、酸味料及び香料を添加し、均質な状態まで混練し、引き飴工程により水分値を表1に示す規定値まで低下させた。その後、定法によりスタンピング成型を行い、室温で冷却し固化させて、単重1.35gの実施例1〜6のハードグミキャンディ様構造物を得た。」

(10)甲第10号証
本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である甲第10号証には、以下の記載がある。
(10a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性を有するグミキャンディに関する。更に詳しくは、本発明は、還元型コエンザイムQ10等の脂溶性機能性成分を安定に含有することにより機能性を有し、かつ食感の変化や冷涼感、果汁感等の風味の点で菓子としての満足度が高いグミキャンディに関する。」

(10b)「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、還元型コエンザイムQ10等の脂溶性機能性成分を安定に含有することにより機能性を有し、かつ食感の変化や冷涼感、果汁感等の風味の点で菓子としての満足度が高いグミキャンディを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、グミからなる中心層の外側に、糖衣層や油脂層等を多層に形成したグミキャンディにおいて、中心層に直接接触しない中間層に還元型コエンザイムQ10等の脂溶性機能性成分を含有する油脂層を設けると共に、その外側にビタミンCを含有する被覆層を設けることによって、水分含有量が比較的多いグミが中心層に存在しているにもかかわらず、油脂層中の脂溶性機能性成分の酸化変性が抑制され、該脂溶性機能性成分が安定に存在し、各種機能性が付与され、かつ食感の変化や風味が良好なグミキャンディが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、グミからなる中心層の周囲に、内側から第1層〜第4層の4層が順に形成されており、第1層は糖及び糖アルコールの少なくとも1種を主成分とする糖衣層であり、第2層は油脂を主成分とし、酸化により変性を受けやすい脂溶性機能性成分を含む油脂層であり、第3層はビタミンCを主成分とする被覆層であり、第4層は糖及び糖アルコールの少なくとも1種を主成分とする糖衣層であること特徴とするグミキャンディを提供する。」

(10c)「【0042】
以上のような、第1層として糖衣層、第2層として油脂層、更に第3層としてビタミンCを含む被覆層、第4層として糖衣層を、中心層としてのグミの外側に順次形成してなる本発明のグミキャンディにおいては、第1層〜第4層全体における、第1層の糖衣層と、第4層の糖衣層との合計重量割合が第1層〜第4層全体の10重量%〜80重量%の時、目的である冷涼感と果汁感とパリッとした食感に加えて、油脂層に脂溶性機能性成分を添加しても、添加した成分の不快な匂いを感じさせない、高機能で美味しいグミキャンディが得られ易い。
【0043】
本発明のグミキャンディは、例えば、次のようにして得ることができる。先ず糖衣パンの回転ドラム内に、中心層として、例えば、長さ12mm、幅8mm、高さ8mm、単重0.4g程度のグミを入れ、ドラムを回転させながら、送風などを行い、糖衣シロップや必要に応じて糖粉末を掛けてゆき、第1層を厚み0.01〜0.2mm、例えば0.1mmに形成する。次に、冷風を送りながら、湯煎等で溶かし、還元型コエンザイムQ10やその他の脂溶性機能性成分などを入れた油脂をかけてゆき、第2層を厚み0.5〜0.7mm、例えば0.6mmに形成する。次いで、送風を行いながら糖衣シロップを用いてビタミンCと必要に応じてその他酸味料や香料粉末を掛けていき、第3層を厚み0.01〜0.2mm、例えば0.1mmに形成する。最後にまた、送風を行いながら糖衣シロップ、アラビアガム、水などからなる調製溶液や必要に応じて糖粉末を掛けてゆき、第4層を厚み0.3〜0.5mm、例えば0.4mmに形成する。また、前記第4層の調製溶液には、色素、香料などの所望の成分を添加することが出来る。こうして、本発明のグミキャンディが得られる。」

(11)甲第11号証
本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である甲第11号証には、以下の記載がある。
(11a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分として、糖質を35〜80重量%、食用油脂を5〜40重量%、並びに
ゼラチン、ペクチン、カラギーナン及びプルランから選ばれる少なくとも一種以上を含み、弾力性が5.0×105kg/m2・sec〜2.0×106kg/m2・sec、粘着性1.5×105kg/m2・sec〜8.0×105kg/m2・secである引き裂き可能なグミキャンディ様菓子の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴とする引き裂き可能なグミキャンディ様菓子の製造方法。
(1)前記原料を加熱混合する工程
(2)得られる混合物を厚さ0.2〜5mmのシート状の生地に成形する工程
(3)前記シート状の生地の表面に細い麺線状の切り込みを入れる工程
(4)前記シート状の生地を前記麺線の方向に対して略垂直の方向に切断する工程」

(11b)「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、グミキャンディのような弾力性と粘着性を有しながら、好みの大きさに引き裂くことができるという楽しさと、引き裂いた菓子片それぞれの味の出方や食感のバラエティを楽しむことができるグミキャンディ様菓子を、品質を維持しながら、効率よく製造することができる製造方法を提供することを目的とする。」

(11c)「【0018】
本発明において、グミキャンディ様菓子の生地のまとまりや柔軟性をもたせるために、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、プルランなどを用いる。中でも、生地の弾力ある食感や作業性からゼラチンを用いることが最も好ましい。
【0019】
前記ゼラチンとしては、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、牛皮ゼラチン、牛骨ゼラチン、フィッシュゼラチン等が挙げられるが、特に限定はない。また、原料のゼラチンには、加熱処理前に酸処理やアルカリ処理などの別の処理が施されたものでもよい。原料のゼラチンのブルーム値は、市販の150〜300のものを用いることができるが、食感や引き裂き性を考慮した場合に、280〜300ブルームで粘度が4.0mPa・s以上であることが好ましい。
なお、前記ブルーム値とは、ゼリー強度を示すもので、ゼラチンの6.67重量%水溶液を規定のカップに入れ10±0.1℃の恒温槽で16〜18時間冷却ゼリー化して、ブルーム式ゼリー強度計のプランジャー(直径12.7mm)を4mmだけゼリー中に押し込むのに要する散弾の重さ(g)を測り、この重量をブルーム値として表したものである。」

(12)甲第12号証
本願の優先日前に電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第12号証には、以下の記載がある。
(12a)「作り方のポイントは、できあがったグミを取り出しやすくするため、型の内側に薄くサラダ油を塗っておくことです。
さて、どんな味のグミができるのか楽しみです」

(13)甲第13号証
本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である甲第13号証には、以下の記載がある。
(13a)「1.シリコーンとは
シリコーンは、耐熱性、耐寒性、耐候性、電気絶縁性、撥水性(水をはじく)、離型性(剥がしやすくなる)などの多彩な特性を有する樹脂(高分子、ポリマー)で、代表的なものとしてポリジメチルシロキサンがあります。その形状は、オイル状、ゴム状、レジン(樹脂)状など多様なものがあります。シリコーンの製品数は数千種にも及び、エレクトロニクスから輸送機械、化学、繊維、食品、化粧品、建築など幅広い分野で利用されています。
食品関係では、近年、シリコーンゴム製のオーブン用・電子レンジ用調理器具が多数市販され ています。また、食品用シリコーンゴム製品は、耐寒性に優れていることから、−40℃の冷凍庫に保管しても硬くならず、割れることもありません。さらに、一般の有機系ゴムと比べると耐熱性にも優れ、シリコーンゴムの処方注1や使用条件によっても異なりますが、一般には約260℃までの高温で使用可能です。また、離型性に優れることから、食材などがくっつきにくく、調理時の取扱いが容易な材料でもあります。
そして、これらの製品は100℃以上の高温で使用されるものも多く、製品中に残存する化学物質が食品へ移行しやすいと推測されます。最近の研究において、シリコーンゴム製調理器具で調理した食品への化学物質の移行量が測定され、脂肪分の多い食品に、残存した原料の一部であるシリコーンオリゴマー(低分子量(分子量が1,000以下)の環状ポリジメチルシロキサン類) が移行することが報告されています。
なお、シリコーン樹脂は食品添加物としても指定されており、揚げ油や豆腐及びジャム製造時 における消泡剤などに使用されています。」

2 甲号証に記載された発明
(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、摘記(1a)に、アセトアミノフェン(AAP)粉体を懸濁分散した懸濁型グミ製剤(SUS-Gummi)と、エタノールに溶解した溶解型グミ製剤(DIS-Gummi)とを製造したことが記載され、摘記(1b)には、該グミ製剤を製造するための基本溶液であるグミベースの成分組成及びプラスチックプレートを用いて製造したことが記載され、摘記(1c)には、上記グミ製剤の水分活性(Aw値)が記載されているので、以下の発明が記載されているといえる。

「プラスチックプレートを用いて、アセトアミノフェン(AAP)粉体を懸濁分散した懸濁型グミ製剤(SUS-Gummi)と、エタノールに溶解した溶解型グミ製剤(DIS-Gummi)を製造するためのグミベースであって、
ゼラチン S-1204 分子量約3〜70万、平均分子量約10万 21g
グルコースシロップ 141.0g
砂糖 120.0g
クエン酸ナトリウム 3.9g
果汁 18.0g
色素 0.12g
香料 0.18g
水 残部
の成分組成を有し、製造されたグミ製剤が、0.718、0.717、0.663の水分活性(Aw値)を有するグミベース」に係る発明(以下「甲1発明」という。)

「アセトアミノフェン(AAP)粉体を懸濁分散した懸濁型グミ製剤(SUS-Gummi)と、エタノールに溶解した溶解型グミ製剤(DIS-Gummi)を製造する方法であって、
甲1発明のグミベースを加温してプラスチックプレートに注入する工程と、
プラスチックプレート中のグミベースを、SUS-GummiまたはDIS-Gummiを取得するために冷却する工程と、
SUS-GummiまたはDIS-Gummiをプラスチックプレートから取り出す工程とを含む方法」(以下「甲1製造方法発明」という。)

「プラスチックプレートを用いて、アセトアミノフェン(AAP)粉体を懸濁分散した懸濁型グミ製剤(SUS-Gummi)と、エタノールに溶解した溶解型グミ製剤(DIS-Gummi)を製造するためのグミベースとして、
ゼラチン S-1204 分子量約3〜70万、平均分子量約10万 21g
グルコースシロップ 141.0g
砂糖 120.0g
クエン酸ナトリウム 3.9g
果汁 18.0g
色素 0.12g
香料 0.18g
水 残部
の成分組成を有し、製造したグミ製剤の水分活性(Aw値)が0.718、0.717、0.663であるグミ製剤」に係る発明(以下「甲1製品発明」という。)

3 対比・判断
甲第1号証に記載された発明との対比・判断(異議申立理由1−1について)
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「プラスチックプレート」は、本件特許発明1の「固形窪み状鋳型」に相当し、甲1発明の「プラスチックプレートを用いて、アセトアミノフェン(AAP)粉体を懸濁分散した懸濁型グミ製剤(SUS-Gummi)と、エタノールに溶解した溶解型グミ製剤(DIS-Gummi)を製造するためのグミベース」は、ゼラチンを成分として含むものであるので、本件特許発明1の「ゼラチン製品を製造するための注型用配合物」に相当する。
また、甲1発明の「砂糖」は、「スクロース」からほとんど形成されるものであり、相当するといえる。
また、甲1発明に含まれたグルコースシロップ及び砂糖の量は、残部である水分量にかかわらず、計算上50%以下であり、本件特許発明1の「グルコースシロップを、0〜50重%」「スクロースを、0〜50重量%」含有することに該当することは明らかである。

したがって、本件特許発明1は、甲1発明と、
「固形窪み状鋳型の中に注入することによってゼラチン製品を製造するための注型用配合物であって、以下の構成成分、すなわち
− ゼラチン;
− グルコースシロップを、0〜50重量%;および
− スクロースを、0〜50重量%、
含有する均質な水溶液を含む
注型用配合物。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−1:ゼラチンに関し、本件特許発明1においては、「ゲルクロマトグラフィによって求めた平均分子量が少なくとも130kDa、好ましくは少なくとも145kDaであり、分子量130kDa超の割合が少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも45重量%である」ものを「4〜16重量%」含有させることが特定されているのに対して、甲1発明においては、「分子量約3〜70万、平均分子量約10万」のものを「21.0g」含有すると特定されている点。

相違点2−1:本件特許発明1においては、「1種類以上の糖アルコールを、6〜76重量%」含むことが特定されているのに対して、甲1発明においては、糖アルコールを含まない点。

相違点3−1:グルコースシロップに関し、本件特許発明1においては、「乾燥物質の含量が80重量%の状態で50℃の温度にて測定した粘度が、800mPa・s未満、好ましくは700mPa・s未満である」こと、「前記グルコースシロップと前記糖アルコールが合わさって前記水溶液の25〜76重量%を構成」することが特定されているのに対して、甲1発明においては、「グルコースシロップ 141.0g」を含有することが特定されているものの、グルコースシロップの粘度の特定や、グルコースシロップと前記糖アルコールが合わさって前記水溶液の特定割合を構成することの特定のない点。

相違点4−1:水分活性(Aw値)に関して、本件特許発明1においては、「水溶液が、少なくとも78重量%の乾燥物質含量および/または0.75未満の水分活性(Aw値)を有する」と特定されているのに対して、甲1発明においては、製造されたグミ製剤が、0.718、0.717、0.663の水分活性(Aw値)を有すると特定されている点。

イ 判断
(ア)相違点1−1について
a 甲1発明は、小児または高齢者を対象に水がなくても容易に服用できることを狙って、懸濁型グミ製剤または溶解型グミ製剤を調製し、服用感に与える粘弾性並びに含量均一性等について検討したものであり、ゼラチンとして本件特許発明1とは異なる平均分子量である約10万のものが用いられている。
甲第1号証には、ゼラチンの平均分子量に着目しておらず、実験で用いられたS-1204との商品名のゼラチンの平均分子量をわざわざ変更することの記載も示唆もなく、平均分子量を本件特許発明1の範囲に上昇させる動機付けは存在しない。

b また、甲第2号証の測定の再現性が高く、精度の向上した咀嚼能力検査用ノンシュガーキャンディを得る文献の技術的事項(摘記(2a)〜(2d))、甲第3号証の特徴的な分子量分布を持つ魚ゼラチン及びそのβ鎖に着目して物性との関係を考察し、魚ゼラチンの原料が高分子量部分が少ないことを推測している文献の技術的事項(摘記(3a)〜(3d))、甲第4号証の硬さ、歯切れ、歯付き、弾力性乃至伸縮性等の総称としての「食感」を有し、「遊びの要素」としての紐状ゼリー菓子を伸ばしたり、縮めたり、結んだり、丸めたり、物に巻き付けたり、一端を持って振り回したりすること等が可能である「伸ばし易さ」と「切れ難さ」とを有する紐状ゼリー菓子の原料として、分子量20万以上のゼラチン分子が25重量%以上を占めていることを記載している文献の技術的事項(摘記(4a)〜(4c))を甲1発明に適用する動機付けがない。

c さらに、甲第5号証は、カリカリした食感とシュワシュワとした発泡感とを持ったハードキャンディ含有グミキャンディを製造することを目的として、グミキャンディがグミキャンディの全重量に対して還元パラチノース、ソルビトール、澱粉及びグリセリンを必須成分として、水分含量が15重量%以下としたものに過ぎないし(摘記(5a)〜(5d))、甲第6号証は、従来のグミキャンディと比較してカロリーが低く、高いチューイング性を保ちつつ、より硬い食感を持つハードグミキャンディ及びその製造方法を提供することを目的として、ポリデキストロースを固形分として、Dextrose Equivalent(DE)値が20〜35の水飴を固形分として10〜30%、DE値が70を超える水飴を固形分として30〜60%、かつ砂糖10〜30%配合した4種類の成分からなるキャンディベース、及びブルーム値250以上のゼラチンを含み、水分値が13〜17%であるハードグミキャンディを製造したもの(摘記(6a)〜(6c))に過ぎず、甲第7号証は、糖溶液の温度と粘度の相関図の実験例にすぎない。
そして、甲第8号証の水不溶性可食組成物に関する記載や、甲第9〜11号証のグミキャンディにおける添加成分に関する記載、甲第12号証のグミの取り出し易さの工夫に関する記載、甲第13号証の調理器具に用いられているシリコーンのファクトシートの記載を含めて上記甲号証の記載を考慮しても、甲1発明において、平均分子量を本件特許発明1の範囲に上昇させる動機付けは存在しないといえる

d したがって、甲1発明において、相違点1−1は、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

(イ)本件特許発明1の効果について
本件特許発明1は、前記第2の請求項1に特定したように、
「固形窪み状鋳型の中に注入することによってゼラチン製品を製造するための注型用配合物であって、以下の構成成分、すなわち
− ゲルクロマトグラフィによって求めた平均分子量が少なくとも130kDa、好ましくは少なくとも145kDaであり、分子量130kDa超の割合が少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも45重量%であるゼラチンを、4〜16重量%;
− 1種類以上の糖アルコールを、6〜76重量%;
− 乾燥物質の含量が80重量%の状態で50℃の温度にて測定した粘度が、800mPa・s未満、好ましくは700mPa・s未満であるグルコースシロップを、0〜50重量%;および
− スクロースを、0〜50重量%、
含有する均質な水溶液を含み、
前記グルコースシロップと前記糖アルコールが合わさって前記水溶液の25〜76重量%を構成し、前記水溶液が、少なくとも78重量%の乾燥物質含量および/または0.75未満の水分活性(Aw値)を有する、注型用配合物。」との構成を採用することで、本件特許明細書【0013】【0014】に記載される予測できない顕著な効果を奏している。

(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、甲1号証のグミベースに含まれる水の量に関し、おおよその量で記載された、溶解段階で添加された加熱前の精製水の添加量に基づき計算したゼラチン、砂糖、グルコースシロップの重量割合を用い、甲1号証に記載された発明としてのグミベースを認定し、本件特許発明1に対する新規性進歩性の欠如の主張をしている。
しかしながら、甲第1号証において、プラスチックプレートに注入する段階での上記ゼラチン、砂糖、グルコースシロップのグミベース中の成分割合は、精製水を添加後、煮沸によって水分量を調整していることからみても明らかとはいえない(摘記(1b)「2.グミ製剤の調製」の欄参照)。
また、甲1号証に記載された水分活性(Aw値)は、製造されたグミ製剤としての含有水分量であり、型に注入する前の注型用配合物としての「水分活性(Aw値)」と同じことを意味しているとはいえない。
したがって、甲1号証に記載された発明としてのグミベースの「水分活性(Aw値)」も明らかであるとはいえない。
以上のとおり、計算の仮定に疑義があり、Aw値の技術的意味が本件特許発明1とは異なる値を用いて認定した発明を前提とした本件特許発明1に対する特許異議申立人の新規性進歩性に関する上記主張を採用することはできない。

ウ 甲1発明との対比・判断のまとめ
したがって、本件特許発明1は、相違点2−1、相違点3−1、相違点4−1を検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜13号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができるものとはいえない。

(2)本件特許発明2〜12について
ア 本件特許発明2〜12は、本件特許発明1において、本件特許発明1の構成をすべて含み、さらに追加成分や、ゼラチン、グルコースシロップ、スクロース、糖アルコールの含有割合及びグルコースシロップのデキストロース当量、糖アルコールの種類に関する技術的限定を加えた発明であって、少なくとも上記(1)アで論じたのと同様の相違点を有する。

イ したがって、本件特許発明2〜11は、上記(1)イで検討したのと同様に、本件特許発明2〜11は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜13号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができるものとはいえない。

(3)本件特許発明13について
ア 対比
本件特許発明13と甲1製造方法発明とを対比すると、甲1製造方法発明の「プラスチックプレート」は、本件特許発明13の「固形窪み状鋳型」に相当し、甲1製造方法発明の「アセトアミノフェン(AAP)粉体を懸濁分散した懸濁型グミ製剤(SUS-Gummi)と、エタノールに溶解した溶解型グミ製剤(DIS-Gummi)を製造する方法」は、グミ製剤は、ゼラチンを成分として含むものであるから、本件特許発明13の「ゼラチン製品を製造する方法」に相当する。
また、甲1製造方法発明の「甲1発明のグミベース」は、本件特許発明13の「請求項1〜12のいずれか1項に記載の注型用溶液」と、「固形窪み状鋳型の中に注入することによってゼラチン製品を製造するための注型用配合物であって、以下の構成成分、すなわち
− ゼラチン;
− グルコースシロップを、0〜50重量%;および
− スクロースを、0〜50重量%、
含有する均質な水溶液を含む、
注型用配合物」である限りにおいて、共通しているといえる(上記(1)アの検討したとおり、甲1発明の「砂糖」は、「スクロース」からほとんど形成されるものであり、相当するといえ、甲1発明に含まれたグルコースシロップ及び砂糖の量は、残部である水分量にかかわらず、計算上50%以下であり、「グルコースシロップを、0〜50重%」「スクロースを、0〜50重量%」含有することに該当することは明らかである。)。
また、甲1製造方法発明の「甲1発明のグミベースを加温してプラスチックプレートに注入する工程」は、本件特許発明13の「前記注型用溶液を80℃以上の温度で固形窪み状鋳型に注入する工程」と、前記注型用溶液を加温して固形窪み状鋳型に注入する工程」である限りにおいて共通している。
さらに、甲1製造方法発明の「プラスチックプレート中のグミベースを、SUS−GummiまたはDIS−Gummiを取得するために冷却する工程」、「SUS−GummiまたはDIS−Gummiをプラスチックプレートから取り出す工程」は、それぞれ、本件特許発明13の「前記窪み状鋳型中の前記注型用溶液を、ゼラチン製品を取得するために冷却する工程」、「前記ゼラチン製品を前記窪み状鋳型から取り出す工程」にそれぞれ相当する。

したがって、本件特許発明13は、甲1製造方法発明と、
「ゼラチン製品を製造する方法であって、
固形窪み状鋳型の中に注入することによってゼラチン製品を製造するための注型用配合物であって、以下の構成成分、すなわち
− ゼラチン;
− グルコースシロップを、0〜50重量%;および
− スクロースを、0〜50重量%、
含有する均質な水溶液を含む、
注型用溶液を製造する工程と;
− 前記注型用溶液を加温して固形窪み状鋳型に注入する工程と;
− 前記窪み状鋳型中の前記注型用溶液を、ゼラチン製品を取得するために冷却する工程と;
− 前記ゼラチン製品を前記窪み状鋳型から取り出す工程と、
を含む方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−13:ゼラチンに関し、本件特許発明13においては、「ゲルクロマトグラフィによって求めた平均分子量が少なくとも130kDa、好ましくは少なくとも145kDaであり、分子量130kDa超の割合が少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも45重量%である」ものを「4〜16重量%」含有させることが特定されているのに対して、甲1製造方法発明においては、「分子量約3〜70万、平均分子量約10万」のものを「21.0g」含有させると特定されている点。

相違点2−13:本件特許発明13においては、「1種類以上の糖アルコールを、6〜76重量%」含むことが特定されているのに対して、甲1製造方法発明においては、糖アルコールを含まない点。

相違点3−13:グルコースシロップに関し、本件特許発明13においては、「乾燥物質の含量が80重量%の状態で50℃の温度にて測定した粘度が、800mPa・s未満、好ましくは700mPa・s未満である」こと、「前記グルコースシロップと前記糖アルコールが合わさって前記水溶液の25〜76重量%を構成」することが特定されているのに対して、甲1製造方法発明においては、「グルコースシロップ 141.0g」を含有することが特定されているものの、グルコースシロップの粘度の特定や、グルコースシロップと前記糖アルコールが合わさって前記水溶液の特定割合を構成することの特定のない点。

相違点4−13:水分活性(Aw値)に関して、本件特許発明13においては、「水溶液が、少なくとも78重量%の乾燥物質含量および/または0.75未満の水分活性(Aw値)を有する」と特定されているのに対して、甲1製造方法発明においては、製造されたグミ製剤が、0.718、0.717、0.663の水分活性(Aw値)を有すると特定されている点。

相違点5−13:注型用溶液の注入時の温度に関し、本件特許発明13においては、「80℃以上の温度で」「注入する」ことが特定されているのに対して、甲1製造方法発明においては、「加温して」「注入する」と特定されている点。

相違点の判断
(ア)相違点1−13について
a 上記(1)イで検討したのと同様に、甲1製造方法発明は、小児または高齢者を対象に水がなくても容易に服用できることを狙って、懸濁型グミ製剤または溶解型グミ製剤を調製し、服用感に与える粘弾性並びに含量均一性等について検討したものであり、ゼラチンとして本件特許発明13とは異なる平均分子量である約10万のものが用いられている。
甲第1号証には、ゼラチンの平均分子量に着目しておらず、実験で用いられたS-1204との商品名のゼラチンの平均分子量をわざわざ変更することの記載も示唆もなく、平均分子量を本件特許発明13の範囲に上昇させる動機付けは存在しない。

b また、甲第2号証の測定の再現性が高く、精度の向上した咀嚼能力検査用ノンシュガーキャンディを得る文献の技術的事項、甲第3号証の特徴的な分子量分布を持つ魚ゼラチン及びそのβ鎖に着目して物性との関係を考察し、魚ゼラチンの原料が高分子量部分が少ないことを推測している文献の技術的事項、甲第4号証の硬さ、歯切れ、歯付き、弾力性乃至伸縮性等の総称としての「食感」を有し、「遊びの要素」としての紐状ゼリー菓子を伸ばしたり、縮めたり、結んだり、丸めたり、物に巻き付けたり、一端を持って振り回したりすること等が可能である「伸ばし易さ」と「切れ難さ」とを有する紐状ゼリー菓子の原料として、分子量20万以上のゼラチン分子が25重量%以上を占めていることを記載している文献の技術的事項を甲1発明に適用する動機付けがない。

c さらに、甲第5号証は、カリカリした食感とシュワシュワとした発泡感とを持ったハードキャンディ含有グミキャンディを製造することを目的として、グミキャンディがグミキャンディの全重量に対して還元パラチノース、ソルビトール、澱粉及びグリセリンを必須成分として、水分含量が15重量%以下としたものに過ぎないし、甲第6号証は、従来のグミキャンディと比較してカロリーが低く、高いチューイング性を保ちつつ、より硬い食感を持つハードグミキャンディ及びその製造方法を提供することを目的として、ポリデキストロースを固形分として、Dextrose Equivalent(DE)値が20〜35の水飴を固形分として10〜30%、DE値が70を超える水飴を固形分として30〜60%、かつ砂糖10〜30%配合した4種類の成分からなるキャンディベース、及びブルーム値250以上のゼラチンを含み、水分値が13〜17%であるハードグミキャンディを製造したものに過ぎず、甲第7号証は、糖溶液の温度と粘度の相関図の実験例にすぎない。
そして、甲第8号証の水不溶性可食組成物に関する記載や、甲第9〜11号証のグミキャンディにおける添加成分に関する記載、甲第12号証のグミの取り出し易さの工夫に関する記載、甲第13号証の調理器具に用いられているシリコーンのファクトシートの記載を含めて上記甲号証の記載を考慮しても、甲1製造方法発明において、平均分子量を本件特許発明13の範囲に上昇させる動機付けは存在しないといえる。

d したがって、甲1製造方法発明において、相違点1−13は、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

(ウ)本件特許発明13の効果について
本件特許発明13は、前記第2の請求項13に特定したように、
「ゼラチン製品を製造する方法であって、
− 請求項1〜12のいずれか1項に記載の注型用溶液を製造する工程と;
− 前記注型用溶液を80℃以上の温度で固形窪み状鋳型に注入する工程と;
− 前記窪み状鋳型中の前記注型用溶液を、ゼラチン製品を取得するために冷却する工程と;
− 前記ゼラチン製品を前記窪み状鋳型から取り出す工程と、
を含む方法。」との構成を採用することで、本件特許明細書【0013】【0014】に記載される予測できない顕著な効果を奏している。

ウ 甲1製造方法発明との対比・判断のまとめ
したがって、本件特許発明13は、相違点2−13、相違点3−13、相違点4−13、相違点5−13を検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜13号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができるものとはいえない。

(4)本件特許発明14〜16について
ア 本件特許発明14〜16は、本件特許発明13において、本件特許発明13の構成をすべて含み、さらに注型用溶液の窪み状鋳型の中での冷却時間、固形窪み状鋳型の材料の種類、ゼラチン製品の後処理に関する技術的限定を加えた発明であって、少なくとも上記(3)アで論じたのと同様の相違点を有する。

イ したがって、本件特許発明14〜16は、上記(3)イで検討したのと同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜13号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができるものとはいえない。

(5)本件特許発明17について
ア 本件特許発明17は、本件特許発明1〜12の注型用配合物に関し、その「固化物からなるゼラチン製品」として特定した発明であって、甲1製品発明の「グミ製剤」は、本件特許発明17の「固化物からなるゼラチン製品」であるから、上記(1)アで論じたのと同様に、本件特許発明17は、甲1製品発明と、
「固形窪み状鋳型の中に注入することによってゼラチン製品を製造するための注型用配合物であって、以下の構成成分、すなわち
− ゼラチン;
− グルコースシロップを、0〜50重量%;および
− スクロースを、0〜50重量%、
含有する均質な水溶液を含む
注型用配合物の固化物からなるゼラチン製品。」の点で一致し、上記(1)アで論じた相違点1−1、相違点2−1、相違点3−1、相違点4−1のと対応する相違点である、相違点1−17、相違点2−17、相違点3−17、相違点4−17をそれぞれ有する。

イ したがって、本件特許発明17は、上記(1)イで検討したのと同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜13号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができるものとはいえない。

4 異議申立理由1の判断のまとめ
以上のとおり、本件特許発明1〜17は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜13号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるものとはいえないので、異議申立理由1には、理由がない。

異議申立理由2(明確性要件)について
1 異議申立理由2−1、2−2について
特許異議申立人は、前記第3 2に記載のように明確性要件について理由を述べている。

2 判断
(1)異議申立理由2−1について
請求項1の「ゲルクロマトグラフィによって求めた平均分子量が少なくとも130kDa、好ましくは少なくとも145kDaであり、分子量130kDa超の割合が少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも45重量%であるゼラチン」という記載について、甲第1号証でも「平均分子量」との表現で、平均分子量の種類を特定せずに記載しているように、この技術分野の技術常識を考慮すれば、「平均分子量」との記載を当業者は、ゲルクロマトグラフィによって求めた平均分子量として理解できるといえる。
また、ゲルクロマトグラフィによって平均分子量を求める場合に、カラムの種類やバッファーの種類によって、測定値に一定の影響があるとしても、当業者は本件の出願時の技術常識を考慮して本件特許発明における、ゲルクロマトグラフィの平均分子量測定条件を理解すればよく、第三者の不測の不利益を生じるほどに不明確であるとはいえない。

特許異議申立人は、甲第14号証を提出して、表2の異なるカラム及びバッファーで測定した場合の重量平均分子量の値が異なることを指摘し、どのようなカラム及びバッファー用いたのかも、平均分子量の種類も不明であるから、発明の外延が不明確である旨主張している。
しかしながら、甲第14号証は、現行法におけるゼラチン成分の吸着の改善した新分析法を現行分析法と比較した学会誌の記載であって、その測定値の異なる理由も説明されているのであるから、当業者であれば本件の出願時の技術常識を考慮して測定値を理解することで発明の範囲を理解でき、その範囲は明確であるといえる。
したがって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

(2)異議申立理由2−1について
請求項13の「請求項1〜12のいずれか1項に記載の注型用溶液」との記載について、請求項1〜12に「注液用溶液」との記載はないが、引用する請求項1の「固形窪み状鋳型の中に注入することによってゼラチン製品を製造するための注型用配合物であって、以下の構成成分、すなわち・・・ゼラチンを、4〜16重量%;・・・糖アルコールを、6〜76重量%;・・・グルコースシロップを、0〜50重量%;および・・・スクロースを、0〜50重量%、含有する均質な水溶液を含み、前記グルコースシロップと前記糖アルコールが合わさって前記水溶液の25〜76重量%を構成し、前記水溶液が、少なくとも78重量%の乾燥物質含量および/または0.75未満の水分活性(Aw値)を有する、注型用配合物。」(下線は当審にて追加。以下同様。)との記載及び特許請求の範囲全体の記載から「請求項1〜12のいずれか1項に記載の注型用溶液」とは、「注型用配合物」が液状物であることは明らかであるから、「注型用溶液」とは、「注液用配合物」を指すものと理解できる。
また、上記判断は、発明の詳細な説明でも、【0017】〜【0031】において、「注型用配合物」と「注型用溶液」を特に区別せず使用している記載とも整合している。
したがって、上記請求項13の「請求項1〜12のいずれか1項に記載の注型用溶液」との記載が第三者の不測の不利益を生じるほどに不明確であるとはいえない。
よって、請求項13を引用する請求項14〜16を含めて、それらの請求項の記載は明確であるといえる。

特許異議申立人は、請求項13の「請求項1〜12のいずれか1項に記載の注型用溶液」との記載について、請求項1〜12には、「注型用溶液」について規定されておらず、発明自体が不明確である旨主張しているが、上述のとおり、「請求項1〜12のいずれか1項に記載の注型用溶液」とは、「注型用配合物」すなわち「均質な水溶液を含む」ものであることは明らかであり、発明の詳細な説明とも整合しているので、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

3 異議申立理由2の判断のまとめ
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載について、請求項1〜17に係る発明は、明確であるといえるので、異議申立理由2には、理由がない。

第5 むすび
したがって、請求項1〜17に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1〜17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-03-25 
出願番号 P2018-531253
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 吉岡 沙織
瀬良 聡機
登録日 2021-06-28 
登録番号 6904956
権利者 ゲリタ アクチェンゲゼルシャフト
発明の名称 注型用配合物とゼラチン製品を製造する方法  
代理人 青木 篤  
代理人 三橋 真二  
代理人 鶴田 準一  
代理人 中村 和広  
代理人 胡田 尚則  
代理人 南山 知広  
代理人 渡辺 陽一  
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