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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65G
管理番号 1384594
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-02 
確定日 2022-05-11 
事件の表示 特願2019−525736「小包ドロップ方法、仕分けロボットおよび仕分けシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月 4日国際公開、WO2019/061845、令和 1年11月21日国内公表、特表2019−533624〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願は、2017年(平成29年)12月12日(優先権主張外国庁受理 2017年9月30日 中国(CN))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
令和元年 5月13日 :手続補正書の提出
令和元年10月 2日付け:拒絶理由通知
令和元年12月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和元年12月 9日付け:拒絶理由通知
令和2年 2月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 3月 5日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和2年 7月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和3年 4月28日付け:当審による拒絶理由通知(以下、「当審拒絶 理由通知」という。)
令和3年 8月11日 :意見書、手続補正書の提出


第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、本件出願の請求項1〜13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2016−113291号公報
引用文献2:特許第5557476号公報
引用文献3:国際公開第2016/178348号
引用文献4:特表2015−522493号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開平8−30328号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6:特開平7−225614号公報(周知技術を示す文献)


第3 当審拒絶理由通知の概要
令和2年7月2日に審判請求と同時にした手続補正により補正された請求項1〜13に係る発明に対する当審拒絶理由通知の概要は、以下のとおりである。

理由1.(サポート要件)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由2.(明確性)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

1.理由1について
・請求項 1−8
(1)請求項1に係る発明は、「前記運搬装置が前記投入先へ小包を投入する前に、小包投入命令を受信したか否かを判断することを含み、
前記小包投入命令を受信した場合、前記運搬装置は、投入エリアに移動すると、前記投入先へ小包を投入する」ことを発明特定事項として含むものである。
しかしながら、発明の詳細な説明の段落【0038】,【0059】−【0061】,【0063】−【0065】には、「前記運搬装置が前記投入先へ小包を投入する前に、小包投入命令を受信したか否かを判断すること」、及び、「前記小包投入命令を受信した場合、前記運搬装置は、投入エリアに移動すると、前記投入先へ小包を投入する」ことは記載されていない。
してみると、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において、課題を解決することができると当業者が認識できる程度に記載した範囲を超えているといわざるを得ないものである。
この点、請求項1を引用する請求項2ないし8についても同様である。

(2)請求項2には、「前記小包投入命令は、制御システムまたは他の運搬装置が前記移動状態で小包を投入する条件を満たすか否かを判断した後に前記運搬装置に送信される」と記載されている。
それに対し、発明の詳細な説明には、「本開示に係る移動状態で小包を投入することを満たす条件は、投入エリアに移動を邪魔する他のロボットが存在しなく、投入エリアの路面またはプラットフォームの表面にロボットの移動を邪魔する破損がないこと等を含む。上述したように、1つのロボットが故障すると、該ロボットは運動敷地内に停止してしまう。一時停止する位置は、ちょうど他の一部のロボットが必ず通るルートである可能性があり、この場合、他のロボットは該ルートを迂回せざるを得ない。この過程において、一部のロボットが上記ロボットの投入エリアにおいて停止する可能性があるため、上記ロボットは移動を停止せざるを得ない。また、該判断は、運搬装置が自ら行ってもよく、制御システムが行ってもよく、または、該運搬装置および別の運搬装置が協働して行ってもよく、もちろん、これら方式の組み合わせであってもよい。」(段落【0038】参照)と記載されている。
発明の詳細な説明の上記記載には、「投入エリアに移動を邪魔する他のロボットが存在しなく、投入エリアの路面またはプラットフォームの表面にロボットの移動を邪魔する破損がないこと」を「運搬装置および別の運搬装置が協働して」判断することは記載されていると認められるものの、「移動状態で小包を投入する条件を満たすか否か」を「他の運搬装置」が判断することは、記載されていない。
してみると、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明において、課題を解決することができると当業者が認識できる程度に記載した範囲を超えているといわざるを得ないものである。
この点、請求項2を引用する請求項4ないし8についても同様である。

よって、請求項1ないし8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

・請求項 9−10
(1)請求項9に係る発明は、「前記運搬装置が前記投入先へ小包を投入する前に、小包投入命令を受信したか否かを判断し、
前記小包投入命令を受信した場合、前記制御システムは、投入エリアに移動すると、前記投入先へ小包を投入するように前記運搬装置を制御する」ことを発明特定事項として含むものである。
しかしながら、発明の詳細な説明の段落【0038】,【0059】−【0061】,【0063】−【0065】には、「前記運搬装置が前記投入先へ小包を投入する前に、小包投入命令を受信したか否かを判断」すること、及び、「前記小包投入命令を受信した場合、前記制御システムは、投入エリアに移動すると、前記投入先へ小包を投入するように前記運搬装置を制御する」ことは記載されていない。
してみると、請求項9に係る発明は、発明の詳細な説明において、課題を解決することができると当業者が認識できる程度に記載した範囲を超えているといわざるを得ないものである。
この点、請求項9を引用する請求項10についても同様である。

よって、請求項9及び10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

・請求項 11−13
(1)請求項11に係る発明は、「前記制御ユニットは、前記投入先へ小包を投入する前に、小包投入命令を受信したか否かを判断し、前記小包投入命令を受信した場合、投入エリアに移動すると、前記投入先へ小包を投入するように前記仕分けロボットを制御する」ことを発明特定事項として含むものである。
しかしながら、発明の詳細な説明の段落【0038】,【0059】−【0061】,【0063】−【0065】には、「前記制御ユニットは、前記投入先へ小包を投入する前に、小包投入命令を受信したか否かを判断」すること、及び、「前記小包投入命令を受信した場合、投入エリアに移動すると、前記投入先へ小包を投入するように前記仕分けロボットを制御する」ことは記載されていない。
してみると、請求項11に係る発明は、発明の詳細な説明において、課題を解決することができると当業者が認識できる程度に記載した範囲を超えているといわざるを得ないものである。
この点、請求項11を引用する請求項12及び13についても同様である。

よって、請求項11ないし13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.理由2について
・請求項 1−8
(1)請求項1には、「前記小包投入命令を受信した場合、前記運搬装置は、投入エリアに移動すると、前記投入先へ小包を投入する」と記載されている。
しかしながら、「小包投入命令」が「運搬装置」にどのような動作をさせる命令であるのか、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、その意味内容が不明確である。
また、請求項1の上記記載は、「小包投入命令を受信した」ことをきっかけとして、「運搬装置」が、「投入エリアに移動」するとともに「投入先へ小包を投入」すること、または、「小包投入命令を受信」するとともに「運搬装置」が「投入エリアに移動」したことをきっかけとして、「運搬装置」が「投入先へ小包を投入」することの2通りの解釈が可能であり、その意味内容を一義的に特定することができず、不明確である。
この点、請求項1を引用する請求項2ないし8についても同様である。

(2)請求項2には、「制御システムまたは他の運搬装置が前記移動状態で小包を投入する条件を満たすか否かを判断」と記載されている。
しかしながら、「前記移動状態で小包を投入する条件を満たすか否か」の判断を、実際に移動状態で小包を投入する「運搬装置」とは別の「他の運搬装置」が行うことの技術的意味が、発明の詳細な説明の記載を参酌しても不明である。
この点、請求項2を引用する請求項4ないし8についても同様である。

よって、請求項1ないし8に係る発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項 9−10
(1)請求項9には、「前記小包投入命令を受信した場合、前記制御システムは、投入エリアに移動すると、前記投入先へ小包を投入するように前記運搬装置を制御する」と記載されている。
しかしながら、「小包投入命令」が「運搬装置」にどのような動作をさせる命令であるのか、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、その意味内容が不明確である。
また、請求項9の上記記載は、「小包投入命令を受信した」ことをきっかけとして、「運搬装置」が、「投入エリアに移動」するとともに「投入先へ小包を投入」すること、または、「小包投入命令を受信」するとともに「運搬装置」が「投入エリアに移動」したことをきっかけとして、「運搬装置」が「投入先へ小包を投入」することの2通りの解釈が可能であり、その意味内容を一義的に特定することができず、不明確である。
この点、請求項9を引用する請求項10についても同様である。

よって、請求項9及び10に係る発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項 11−13
(1)請求項11には、「前記小包投入命令を受信した場合、投入エリアに移動すると、前記投入先へ小包を投入するように前記仕分けロボットを制御する」と記載されている。
しかしながら、「小包投入命令」が「仕分けロボット」にどのような動作をさせる命令であるのか、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、その意味内容が不明確である。
また、請求項11の上記記載は、「小包投入命令を受信した」ことをきっかけとして、「仕分けロボット」が、「投入エリアに移動」するとともに「投入先へ小包を投入」すること、または、「小包投入命令を受信」するとともに「仕分けロボット」が「投入エリアに移動」したことをきっかけとして、「仕分けロボット」が「投入先へ小包を投入」することの2通りの解釈が可能であり、その意味内容を一義的に特定することができない。
以上の点、請求項11を引用する請求項12及び13についても同様である。

よって、請求項11ないし13に係る発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

なお、当審拒絶理由通知に対し、請求人は、令和3年8月11日に手続補正を行ったため、当審拒絶理由通知の理由1及び理由2は解消した。


第4 本願発明について
本願の請求項1〜14に係る発明は、令和3年8月11日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
運搬装置が、前記運搬装置に設置された圧力センサによって、小包の受け入れを感知したら、投入先へ移動することと、
前記運搬装置が投入エリアに移動して前記投入先へ小包を投入し、且つ、小包を投入している時点における前記運搬装置の移動速度がゼロに等しくなくすることと、を含む
ことを特徴とする小包仕分けシステムのドロップ方法。」


第5 引用文献に記載された事項及び引用発明
1.引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である特開2016−113291号公報には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審において付与した。以下同様。)。

(1)「【0001】
本発明は、例えば、通信販売などにおいて、購入者から注文された物品を仕分け、梱包し、発送を行う物流倉庫において、複数の物品の仕分けを行うための仕分け装置に関する。」

(2)「【0030】
先ず、図1を参照しながら上位のエリアAについて説明する。
図1に示したように、上位のエリアAには、平面的に広がる走行路4と、この走行路4の一側面に臨むように配置された物品供給部6と、走行路4を自動走行する複数の無人走行車12とが具備されている。
【0031】
上記走行路4には、図1において、左からC列、D列、E列、F列、G列、H列のように、所定間隔置きに開口8aが形成されている。本実施例では、左側最端部のC列のみ開口8aが1つであるが、他の列D、E、F、G、Hでは、開口8aが2つ一組みになっている。なお、これら開口8aの下部には、物品が投入されるシュートが接続されることが好ましい。
【0032】
このシュートは、上位のエリアAの開口8aから、下位のエリアBに配置された出荷用のコンテナ20にまで、物品を確実かつ安全に供給するために用いるものである。しかしながら、このシュートは、例えば、アパレル分野の商品を仕分ける場合のように、柔軟な物品で落下させても壊れる虞のない物品を扱う場合は、設ける必要はない。このような物品は、開口8aから出荷用のコンテナ20に、直接を落下させても良い。なお、シュートを設ける場合は、適宜な傾斜角を持って設けることが好ましい。また、シュートを設ける場合に、図1および図2の視野ではシュートが図示されないため、以下の説明では、図1、図2においてシュートは、開口8aの位置にあるものとする。
【0033】
上記無人走行車12は、開口8a(シュート)が形成された領域(C、D、E、F、G、H)を含めて、あるいは開口8aを跨いで走行できることが好ましい。例えば、開口8aが無人走行車12の走行を邪魔するような場合には、それらの開口8aの上部に蓋を設け、この蓋により物品が投入されない時には、開口8aを閉じておけば良い。」

(3)「【0036】
平面的に広がる走行路4の右側面に臨むように配置された上記物品供給部6は、上位のエリアAに供給された物品に対して、それぞれ仕分け先を割り当てて無人走行車12に1つずつ物品を投入する場所である。この物品供給部6で仕分けされる物品は、この物品供給部6から無人走行車12に搭載されて、その後無人走行車12により、所定の開口8a(シュートを設ける場合はシュートの相当)に、所定のコースを辿って搬送されることになる。
【0037】
無人走行車12から、所定の開口8aに物品を投入する方法としては、例えば、無人走行車12の上面にトレイを具備させ、このトレイに物品を載せた状態で物品を所定の開口8aまで搬送し、その後、トレイを傾斜させて、この傾斜したトレイから物品を開口8a内に投入させても良い。
【0038】
あるいは、無人走行車12の上に予めベルトコンベアを設けておき、このベルトコンベアを介して物品を投入させることもできる。このような場合には、所定の開口8aの近傍に無人走行車12を走行させ、これに続いて、無人走行車12のベルトコンベアを回転駆動させ、ベルトコンベア上を搬送させる物品の勢いを利用して物品を開口8a内に落下させれば良い。
【0039】
さらに、物品を投入する他の方法としては、無人走行車12に底面が開閉可能な容器を設け、底面が閉じた状態の容器により物品を搬送し、無人走行車12が所定位置に到達したら、容器の底面を開いて、いわゆる落とし穴式で物品を開口8a内に投入させても良い。」

(4)「【0052】
まず、仕分け作業者は物流倉庫の在庫保管エリアからピッキングされた物品に対して、それぞれ仕分け先を割り当てて、順次、上位のエリアAにおける物品供給部6から無人走行車12に搭載する。物品が搭載された無人走行車12は、各仕分け先に対応するシュートが接続された開口8aに向かって直接搬送されることになる。この場合、無人走行車12は、走行の妨げとならない経路を選択して、短時間のうちに目的となる開口8aに到達することができる。」

摘記事項(1)〜(4)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

【引用発明】
「物品が、無人走行車12に搭載されて、その後無人走行車12により、所定の開口8aに搬送され、
無人走行車12が所定位置に到達したら、物品を開口8a内に投入する、
物品の仕分けを行うための仕分け装置の物品を投入する方法。」

2.引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3である国際公開第2016/178348号には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1)「[0014]1.第1実施形態
(1)ピッキングシステム
図1及び図2を用いて、ピッキングシステム1を説明する。ピッキングシステム1は、倉庫内でピッキング(荷揃え)ができるシステムである。ピッキングシステム1は、主に、自動倉庫3を有している。図1は、本発明の一実施形態としてのピッキングシステムの概略平面図である。図2は、ピッキングシステムの自動倉庫の概略正面図である。なお、このピッキングシステム1は、工場の部品倉庫、一般物流倉庫等に適用可能であるが、特に、注文者の数及び商品の数及び種類が多数となるような例えば一般消費者用の通信販売用物品倉庫に最適である。・・・」

(2)「[0028](6)シュート
ピッキングシステム1は、図1に示すように、天井レール7の一部に近接して配置され、容器23及び/又は商品を他の設備に排出するためのシュート127をさらに備えている。
例えば、第2スタッカクレーン17は、天井レール7を走行して、容器23をシュート127まで運ぶ。シュート127は、容器23及び/又は商品を他の設備に排出することで、方面別仕分けを行う。なお、第2スタッカクレーン17は、走行しながら容器23を127に排出できる。
[0029] 図31〜図38を用いて、上記動作をより詳細に説明する。
図31及び図32に示すように、デパレ・ピッキングステーション121の荷物授受部123は、コンベア171を有している。コンベア171は、例えばベルトコンベアであり、商品収容箱28から取り出された商品W1が置かれている。第2移載装置21は、荷物授受部123の側方に停止する。そして、ピースコンベア155が荷物授受部123側にスライドされる。
[0030] 続いて、図33及び図34に示すように、コンベア171及びピースコンベア155が駆動されて、商品W1はコンベア171からピースコンベア155に移動される。
続いて、図35及び図36に示すように、ピースコンベア155がコンベアスライド装置157によってスライドされて、左右方向の反対側に移動させられる。この状態で第2スタッカクレーン17は走行を続ける。
そして、第2スタッカクレーン17がシュート127に接近すると、図37及び図38に示すように、ピースコンベア155が駆動されて、商品W1をシュート127に投入する。このように第2スタッカクレーン17が走行しながら商品W1をシュート127に投入できる。なお、商品W1は、例えば、ABCパレート分析におけるAグループの商品であって、シュート127によって方面別出荷エリアに直接搬送される。
[0031] 別の例として、第2スタッカクレーン17がシュート127に接近すると、図39及び図40に示すように、ケースコンベア161が駆動されて、容器23をシュート127に投入する。このように第2スタッカクレーン17が走行しながら容器23をシュート127に投入できる。
以上に述べたように、シュート127は、容器単位又は商品単位での方面向け搬送を可能にする。」

3.周知技術を示す文献に記載された事項
(1)周知技術を示す文献である特許第2874559号公報(以下、「周知技術を示す文献7」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア「【0033】この載せ移載作業時において、コントローラ11は荷有りセンサ6,7から共に荷検出信号が出力されると、載せ移載が完了したとしてコントローラ18への載せ要求信号の出力を停止する。
【0034】コントローラ18は載せ要求信号の出力が停止されると、直ちに地上コンベヤ4の駆動を停止させる。更に、コントローラ18は載せ要求信号の出力が停止された後、載せ移載信号の出力を停止する。そして、コントローラ11は載せ移載信号の出力が停止されると、台車コンベヤ5を停止させる。更に、コントローラ18は載せ移載信号の出力を停止した後、載せ移載準備信号の出力を停止する。そして、この載せ移載準備信号の出力が停止されると、有軌道台車Mは発進可能状態となる。」

イ「【0061】「荷有りセンサは、台車コンベヤ上に載置された荷を検出するためのセンサであって、上記実施例に示す光電管等からなる光検出型のセンサのみならず、荷の重量等を検出する圧力センサ等をも含む意味である。」」

(2)周知技術を示す文献である実用新案登録第2593070号公報(以下、「周知技術を示す文献8」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア「【0019】・・・また、図1において、RY1はロードセンサ77により荷有りが検出された場合にオンするリレイ、RY2はリミットスイッチ75がオンの場合、すなわちフォーク体44が左向きの場合にオンするリレイ、RY3はリミットスイッチ76がオンの場合、すなわちフォーク体44が右向きの場合にオンするリレイである。RY2がオンの場合に、設定器85の設定データが減算器87へ出力され、RY3がオンの場合に、設定器86の設定データが減算器87へ出力され、出退位置検出器84から出力された実出退位置データとの偏差が演算され、その偏差を零とするように駆動手段88よりスライド装置(モータなど)70へ駆動信号が出力される。また、RY1がオフの場合、すなわち荷19を積載していないときは、駆動信号はカットされる。」

(3)周知技術を示す文献である特開平8−34505号公報(以下、「周知技術を示す文献9」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア「【0083】(3)上記実施例では、識別センサ17a,18aを光センサから構成し、荷を光学的に検出した。これに対し、識別センサ17a,18aを荷重センサから構成し、荷の重量から当該荷を検出してもよい。又、識別センサ17a,18aをイメージスキャナ等から構成してもよい。」


第6 当審の判断
1.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「無人走行車12」は、本願発明の「運搬装置」に相当し、引用発明の「所定の開口8a」は、「物品」が投入される場所であるから、本願発明の「投入先」に相当する。また、引用発明の「物品」は、「品物」という限りにおいて、本願発明の「小包」と一致し、引用発明の「物品が、無人走行車12に搭載され」ることは、「運搬装置」が「品物」を「受け入れる」という限りにおいて、本願発明の「運搬装置が、前記運搬装置に設置された圧力センサによって、小包の受け入れを感知」することと一致する。そして、引用発明の「その後無人走行車12により、物品が投入される所定の開口8aに搬送され」ることは、「無人走行車12」が「所定の開口8a」に移動することで、「無人走行車12」に「搭載」された「物品」が「搬送」されることを意味するから、本願発明の「運搬装置」が「投入先へ移動すること」に相当する。
引用発明の「所定位置」は、「無人走行車12」が「物品を開口8a内に投入する」位置であるから、本願発明の「投入エリア」に相当し、引用発明の「無人走行車12が所定位置に到達したら、物品を開口8a内に投入する」ことは、「運搬装置が投入エリアに移動して投入先へ品物を投入」するという限りにおいて、本願発明の「前記運搬装置が投入エリアに移動して前記投入先へ小包を投入」することと一致する。
引用発明の「物品の仕分けを行うための仕分け装置」は、「品物」の「仕分けシステム」という限りにおいて、本願発明の「小包仕分けシステム」と一致し、引用発明の「物品を投入する方法」は、「品物」の「ドロップ方法」という限りにおいて、本願発明の「小包」の「ドロップ方法」と一致する。

以上より、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

【一致点】
「運搬装置が、品物を受け入れたら、投入先へ移動することと、
前記運搬装置が投入エリアに移動して前記投入先へ品物を投入することと、を含む
品物仕分けシステムのドロップ方法。」

【相違点1】
「品物」に関し、本願発明では「小包」であるのに対し、引用発明では「物品」である点。

【相違点2】
本願発明では、「運搬装置が、前記運搬装置に設置された圧力センサによって、小包の受け入れを感知したら、投入先へ移動する」のに対し、引用発明では、係る構成を有しない点。

【相違点3】
本願発明では、「小包を投入している時点における前記運搬装置の移動速度がゼロに等しくなくする」のに対し、引用発明では、係る構成を有しない点。

2.判断
(1)相違点1について
上記相違点1について検討する。
本願明細書において「小包」の特別の定義が記載されていないことを鑑みれば、本願発明の「小包」は、日本語の通常の意味の「小さいつつみ」(広辞苑 第6版)を意味するものと認められる。また、日本語では「つつみ」は通常、「つつんだ物」(広辞苑 第6版)を意味する。
一方、引用文献1の段落【0001】に記載されているように、引用発明の「物品」は「通信販売などにおいて、購入者から注文された物品」である。
そして、通信販売で扱われる物品に、個別に包装されているものが存在することは、当業者によく知られたことである。
してみれば、引用発明において、「物品」は、個別に包装された「小包」を包含する概念であるといえるから、上記相違点1は、実質的に相違しない。
仮に、上記相違点1が実質的に相違するとしても、引用発明において、「物品」として、個別に包装されている「小包」を選択し、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
上記相違点2について検討する。
物品を搬送する装置において、圧力センサにより物品が受け入れられたことを感知することは、上記「第5 3.」に示したとおり、周知技術を示す文献7〜9に例示される従来周知の技術である。
そして、引用発明は、「物品が、無人走行車12に搭載されて、その後無人走行車12により、所定の開口8aに搬送され」るものであるところ、引用発明の「無人走行車12」は、「走行路4を自動走行する」(段落【0030】)ものであるから、「無人走行車12」が自動走行を行うために、物品が搭載されたことを感知する手段を備える動機付けがあったというべきである。

してみれば、引用発明に対し、「無人走行車12」が自動走行を行うために、物品が搭載されたことを感知するための手段として、従来周知の技術を採用し、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
上記相違点3について検討する。
上記「第5 2.」に示したとおり、引用文献3には、通信販売用物品倉庫において、第2スタッカクレーン17が走行しながら商品W1又は容器23をシュート127に投入できることが記載されている(以下、「引用文献3に記載された事項」という。)。
一方、上記「第5 1.」に示したとおり、引用文献1の段落【0032】には、「このシュートは、上位のエリアAの開口8aから、下位のエリアBに配置された出荷用のコンテナ20にまで、物品を確実かつ安全に供給するために用いるものである。しかしながら、このシュートは、例えば、アパレル分野の商品を仕分ける場合のように、柔軟な物品で落下させても壊れる虞のない物品を扱う場合は、設ける必要はない。このような物品は、開口8aから出荷用のコンテナ20に、直接を落下させても良い。」と記載され、段落【0037】〜【0039】には、無人走行車12から、所定の開口8aに物品を投入する種々の方法が記載されている。
引用文献1の上記各記載を参酌すれば、引用文献1は、物品が壊れない範囲で種々の投入方法を採用することを示唆しているものといえるから、引用発明に対し、引用文献3に記載された事項を採用する動機付けがあったというべきである。
してみれば、引用発明に対し、引用文献3に記載された事項を採用し、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

3.請求人の主張について
請求人は審判請求書において、「本出願発明では、明細書段落0037における記載「仕分けロボットの移動プラットフォームは、浮いた鋼製プラットフォーム構造であってもよい。これによって、投入先は、鋼製プラットフォームの仕切り口、すなわち、鋼製プラットフォームに配置された開口であってもよい。例えば、これら開口は、鋼製プラットフォームに分散配置されてもよい。仕分けロボットは、地面上で移動することができ、それにより、投入先は、地面に設けられた小包仮置き容器であってもよい。例えば、これら小包仮置き容器は、仕分けロボットが移動する地面の周縁に設けられてもよい。例えば、小包輸送装置は、中間位置に位置してもよい。それにより、操作者は、待機している仕分けロボットに小包を置くことができ、且つ、仕分けロボットは、小包を受け入れると、投入先付近の適切な位置に移動し、小包を投入先に投入することができる。仕分けロボットの一側に圧力センサを設けてもよい。それにより、小包を受け入れると、圧力センサが小包配置信号を感知することができ、圧力センサは、ブレーキシステムに移動信号を送信することができ、これによって、仕分けロボットは、一定のルートに沿って投入先へ移動することができる。」のように、仕分けロボットは、仕分けロボットに設置された圧力センサによって、小包の受け入れを感知したら、小包の投入先へ移動するという構成上の特徴がある。
これにより、仕分けロボットは、小包を受け入れるまでは無駄な動きを要することなく停止してして(審決注:「停止して」の誤記と思われる。以下同様。)いられるため節電に寄与し、小包の受け入れを契機として投入先へ移動するため、空荷のまま投入先などへ移動してしまう無駄な動きや誤動作を省け、仕分けの効率を高める作用効果がある。
このような特徴、特に、仕分けロボットに設置された圧力センサによって、小包の受け入れを感知し、ブレーキを解除する移動信号をブレーキシステムへ送信し、仕分けロボットが所定のルートに沿って小包投入先へ移動する、という一連の動作制御については、引用文献1〜6には言及や示唆はないため、容易には想到しないものと思料する。」(第2ページ第19行〜第3ページ第10行)と主張している。
しかしながら、「運搬装置が、前記運搬装置に設置された圧力センサによって、小包の受け入れを感知したら、投入先へ移動する」構成が、引用発明及び従来周知の技術から、当業者が容易に想到し得たことであることは、上記「2.(2)」で示したとおりである。
そして、請求項1の「運搬装置が、前記運搬装置に設置された圧力センサによって、小包の受け入れを感知したら、投入先へ移動すること」という発明特定事項から明らかなとおり、本願発明は、「運搬装置」が「小包」を受け入れてからの動作が特定されているに留まり、「運搬装置」が「小包」を受け入れるまでの動作が具体的に特定されるものではないから、請求人が主張する「仕分けロボットは、小包を受け入れるまでは無駄な動きを要することなく停止してしていられるため節電に寄与し、小包の受け入れを契機として投入先へ移動するため、空荷のまま投入先などへ移動してしまう無駄な動きや誤動作を省け、仕分けの効率を高める作用効果」は、請求項1の発明特定事項が当該効果を奏するための前提となる構成を欠くものであり、本願発明の有利な効果として認めることができない。
仮に、当該作用効果について請求人の主張を認めたとしても、当該作用効果は、「無人走行車12」が自動走行する引用発明及び従来周知の技術から、当業者が予測し得る程度のものであり、格別顕著な効果とはいえない。
よって、請求人の主張は採用できない。

4.小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用文献3に記載された事項及び従来周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 間中 耕治
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-12-01 
結審通知日 2021-12-07 
審決日 2021-12-20 
出願番号 P2019-525736
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65G)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 間中 耕治
特許庁審判官 内田 博之
中村 大輔
発明の名称 小包ドロップ方法、仕分けロボットおよび仕分けシステム  
代理人 新保 斉  

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