• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01G
管理番号 1384669
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-09 
確定日 2022-05-06 
事件の表示 特願2017−214632「積層セラミックキャパシター及びその実装基板」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日出願公開、特開2018−182286〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年11月7日(パリ条約による優先権主張、2017年4月13日、韓国、2017年6月8日、韓国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 1月17日付け:拒絶理由通知
令和 2年 4月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 6月29日付け:拒絶査定
令和 2年11月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 6月22日付け:拒絶理由通知(当審)
令和 3年 9月29日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし22に係る発明は、令和3年9月29日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりである。
「第1誘電層及び第2誘電層を含み、積層方向において互いに対向する第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と互いに連結され、互いに対向する第3面及び第4面、前記第1面〜前記第4面と連結され、互いに対向する第5面及び第6面を有する本体と、
前記第1誘電層に配置されており、前記第3面、前記第5面及び前記第6面を介して露出し、前記第4面から第1空間だけ離隔して配置され、第1容量部と、前記第1容量部と第1外部電極とを連結し、前記第1容量部に比べて幅が狭い第1リード部とを含む第1内部電極と、
前記第2誘電層に前記第1誘電層または前記第2誘電層を挟んで前記第1内部電極と対向するように配置されており、前記第4面、前記第5面及び前記第6面を介して露出し、前記第3面から第2空間だけ離隔して配置され、第2容量部と、前記第2容量部と第2外部電極とを連結し、前記第2容量部に比べて幅が狭い第2リード部とを含む第2内部電極と、
前記第1空間の少なくとも一部に配置される第1誘電体パターンと、
前記第2空間の少なくとも一部に配置される第2誘電体パターンと、
前記第1誘電層の前記第1容量部と前記第1リード部とが接する部分に配置される第3誘電体パターンと、
前記第2誘電層の前記第2容量部と前記第2リード部とが接する部分に配置される第4誘電体パターンと、
前記本体の前記第5面及び前記第6面に配置される側面絶縁層と、を含み、
前記第1誘電体パターンは、前記第1空間から前記第1内部電極の端部の段差を覆うが、前記第1内部電極の前記第5面及び前記第6面を介して露出する端面を覆わないように配置され、
前記第2誘電体パターンは、前記第2空間から前記第2内部電極の端部の段差を覆うが、前記第2内部電極の前記第5面及び前記第6面を介して露出する端面を覆わないように配置される、
積層セラミックキャパシター。」

第3 拒絶の理由の概要
令和3年6月22日付けで当審が通知した拒絶理由は、概略、次のとおりのものである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1−2、12−13
・引用文献等 1−2

・請求項 3−11、14−22
・引用文献等 1−3

<引 用 文 献 等 一 覧>
1.特開2006−179873号公報
2.特開2000−311831号公報
3.特開2004−96010号公報

第4 引用文献の記載事項、引用発明等
1 引用文献1
(1)令和3年6月22日付けの当審の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2006−179873号公報)には、次の記載がある。なお、下線は当審で付与した。

「【0002】
一般に積層型チップキャパシタ(MLCC)はセラミックグリーンシートという複数個の誘電体層と複数個の誘電体層間に挿入された内部電極を含む。こうした積層型チップキャパシタは大きさが小型で且つ高い静電容量を具現することが可能で基板上に容易に実装することが可能で、様々な電子装置の容量性部品として幅広く用いられている。
【0003】
こうした積層型チップキャパシタは、相違する或いは相異なる極性を有する2個の内部電極が印刷された誘電体層を交互に繰り返し積層後、この積層物を加圧及び焼成し、その焼成された積層物の両端部に外部端子電極を形成することにより製造される。しかし誘電体層に内部電極を形成する際、内部電極を保護し電気的な短絡現象を防止すべく内部電極の幅方向にマージン部を残しておく。したがって、チップキャパシタの全体外形において、内部電極が形成された中心部位と、マージン部が位置した両側面部位との間に厚さの差が発生する。こうしたチップキャパシタ外形上の厚さの差は、とりわけ焼成過程においてチップに亀裂(crack)を発生させキャパシタの信頼性に悪影響を及ぼす。
【0004】
図1は従来の積層型チップキャパシタの第1内部電極と第2内部電極を示す平面図である。図1によると、通常セラミックグリーンシート(ceramic green sheet)と呼ばれる誘電体層(12、13)上に各々第1内部電極(22)及び第2内部電極(23)が印刷されている。内部電極(22、23)は各々誘電体層(12、13)の一端部から他端部に向かって長さ方向(L方向)へ延長されている。内部電極(22、23)の長さは誘電体層(12、13)の長さより短くなっており、内部電極(22、23)各々は誘電体層(12、13)の一端部においてのみ外部へ露出し他端部においては外部に露出しない。したがって、誘電体層(12、13)は各々所定大きさ(y)の長さ方向(L方向)マージン部(32b、33b)を有する。さらに、内部電極(22、23)の幅は誘電体層(12、13)の幅より短く、誘電体層(12、13)の両側には所定の大きさ(x)の幅方向(W方向)マージン部(32a、33a)が残される。ここで、幅方向マージン部とは、誘電体層の縁端と内部電極との間のマージン部として誘電体層の全長に亘って延長された部分のことをいう。このW方向のマージン部(32a、33a)は内部電極を保護し電気的短絡を防止するために必要である。」

「【0006】
こうした厚さの差による亀裂問題を解決すべく、電極層のスクリーン印刷時導電性ペースト内のNiなど金属含量を減らし電極厚さを最大限薄くする方法がある。しかし、現在のスクリーン印刷技術では1μm程の薄い内部電極は形成しがたい。さらに、厚さの差が発生する部分に誘電体スラリーを印刷して厚さの差を補完する方法があるが、この方法はさらなる工程を必要とし厚さの差による亀裂問題を根本的に解決しがたい。
【0007】
こうした問題を解決すべく、特許文献1はW方向のマージン部無しで内部電極を形成した後、誘電体層を積層する方案を提示している。しかし、上記特許文献1によると、誘電体層を積層後、内部電極の引出部をコーティングで保護した状態において湿式エッチングを施しW方向のマージン部を形成する。したがって、工程が複雑になり製造費用及び時間が増加し、湿式エッチングの均一性を確保しがたい。
【特許文献1】米国特許第5,144,527号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためのものであって、その目的は中心部と両側部との間の厚さの差による亀裂の発生を防止しカッティングラインの整列エラーによる短絡の危険を抑制して、素子の信頼性を向上させることの可能な積層型チップキャパシタを提供することである。」

「【0021】
本発明によると、幅方向のマージン部を無くしキャパシタ本体両側面にチップ保護用側面部材を形成することにより、積層型チップキャパシタにおいて局部的な厚さの差が生じる現象を防止し且つ内部電極が両側端部において短絡しないようにさせることが可能になる。こうして、キャパシタの亀裂現象を抑制し素子の信頼性を向上させることが可能になる。さらに、パターン幅がパターン間隔より大きくなるようスクリーンパターンを形成することにより、製造工程中カッティングラインの整列エラーによる短絡現象を防止することが可能になる。結局、素子の不良率を低減させ素子の信頼性を高めることが可能になる。」

「【0023】
図3は本発明の一実施形態による積層型チップキャパシタの第1内部電極と第2内部電極とを示す平面図である。図3によると、各々の誘電体層(42、43)上に第1内部電極(52)と第2内部電極(53)が形成されている。各々の内部電極(52、53)は、誘電体層(42、43)の幅と同一な幅(M)を有するメイン電極部(main electrode portion)と、それより小さい幅(N)を有するリード部(lead portion;52a、53a)とを含んで成る。したがって、誘電体層(42、43)は幅方向(W方向)のマージン部を有さない。しかし、誘電体層(42、43)は、長さ方向(L方向)のマージン部(62、63)を有することが可能である。前記各メイン電極部は各内部電極(52、53)における各リード部(52a、53a)以外の電極本体部分を指している。
【0024】
リード部(52a、53a)は、メイン電極部から延長され誘電体層(42、43)の一端部に引出される。リード部(52a、53a)は内部電極(52、53)を外部端子電極に連結する役目を果たす。このリード部(52a、53a)の幅(N)は内部電極(52、53)のメイン電極部の幅(M)より小さい。このように、リード部(52a、53a)の幅(N)をメイン電極部の幅(M)より小さく設計すると、後述するように内部電極(52、53)と外部端子電極との望まない短絡現象を防止することが可能になる。
【0025】
図4は図3の内部電極が形成された誘電体層の積層物をBB'ラインに沿って切断した断面図である。この積層物(200a)は第1及び第2内部電極(52、53)が形成された誘電体層(42、43)を交互に積層して形成されたものである。上記積層物(200a)の形成時、第1内部電極(52)の一端部にあるL方向マージン部(62)は第2内部電極(53)の一端部にあるL方向マージン部(63)と交互に配置されるようにする。
【0026】
図4に示したように、W方向のマージン部が無いので上記積層物(200a)は均一な厚さを有する。この積層物(200a)を圧着し焼成して、焼成された積層物(200b)を形成しも、この焼成された積層物(200b)には厚さの偏差が生じない。したがって、従来と異なり厚さの偏差による亀裂が発生しなくなる。
【0027】
しかし、W方向のマージン部が無くなると、図4に示したように内部電極(52、53)の両側端部は積層物(200b)の外部に露出する。したがって、水分などの外部異物により第1内部電極(52)が第2内部電極(53)と連結され両側端部において短絡現象が発生する虞がある。これを防止すべく、図5に示したように上記誘電体層の積層物両側面に、チップ保護用側面部材(70)を形成する。このチップ保護用側面部材は、例えば絶縁性を有するエポキシレジンまたはセラミック材料から成り得る。
【0028】
図6は図5において内部電極と平行な平面に沿って切断した水平断面図で、図7は図5のXX'ラインに沿って切断した断面図である。図6及び図7に示したように、誘電体層(42、43)は幅方向マージン部を有さず、リード部(52a、53a)はメイン電極部の幅(即ち、誘電体層の幅)より小さい幅を有する。さらに、第1内部電極(52)が形成された誘電体層(42)の両側端と、第2内部電極(53)が形成された誘電体層(43)の両側端とにはチップ保護用側面部材(70)が形成されている。こうしたチップ保護用側面部材(70)は内部電極同士の短絡現象を防止するばかりでなく外部物質(湿気など)や外部衝撃からチップ内部を保護する。」

「【0030】
先ず、図8によると、誘電体から成る母体グリーンシート(mother green sheet;140)上にスクリーンパターン(180)を形成する。この母体グリーンシート(140)は後にカッティングされ図3に示したような誘電体層(42、43)となる。さらに、スクリーンパターン(180)が形成された領域は以降長さ方向マージン部(L方向マージン部)を形成するようになる。」



(2)引用文献1の上記記載からは、以下のことがいえる。
ア 引用文献1の段落【0002】、【0030】の記載によれば、「積層型チップキャパシタ」の「誘電体層(42、43)」は「セラミックグリーンシート」から形成されるものである。そして、段落【0023】の記載によれば、「各々の誘電体層(42、43)上に第1内部電極(52)と第2内部電極(53)が形成」される。
してみると、引用文献1に記載された「積層型チップキャパシタ」は、セラミックグリーンシートから形成される各々の誘電体層(42、43)上に第1内部電極(52)と第2内部電極(53)が形成されるものである。

イ 引用文献1の段落【0023】の記載によれば、「各々の内部電極(52、53)は、誘電体層(42、43)の幅と同一な幅(M)を有するメイン電極部」「と、それより小さい幅(N)を有するリード部」「とを含んで成る」ことにより、「誘電体層(42、43)は幅方向(W方向)のマージン部を有さ」ず、「誘電体層(42、43)は、長さ方向(L方向)のマージン部(62、63)を有」する。また、図3から、誘電体層(42、43)は内部電極(52、53)のリード部(52a、53a)の両側部にもマージン部を有することが見てとれる。

ウ 引用文献1の段落【0024】の記載によれば、「リード部(52a、53a)は、メイン電極部から延長され誘電体層(42、43)の一端部に引出され」「外部端子電極に連結」される。

エ 引用文献1の段落【0025】の記載によれば、「内部電極が形成された誘電体層の積層物」「(200a)は第1及び第2内部電極(52、53)が形成された誘電体層(42、43)を交互に積層して形成され」、「第1内部電極(52)の一端部にあるL方向マージン部(62)は第2内部電極(53)の一端部にあるL方向マージン部(63)と交互に配置」される。また、図3ないし図5から、積層体(200a)は直方体であること及びL方向マージン部(62)はL方向マージン部(63)と長さ方向(L方向)で逆方向となるように交互に配置されることが見てとれる。
してみると、引用文献1に記載された「内部電極が形成された誘電体層の積層物(200a)」は、直方体であり、第1及び第2内部電極(52、53)が形成された誘電体層(42、43)を交互に積層して形成され、第1内部電極(52)の一端部にある長さ方向(L方向)マージン部(62)は第2内部電極(53)の一端部にある長さ方向(L方向)マージン部(63)と長さ方向(L方向)で逆方向となるように交互に配置されるものである。

オ 引用文献1の段落【0027】の記載によれば、「上記誘電体層の積層物両側面に、」「エポキシレジンまたはセラミック材料から成」る「チップ保護用側面部材(70)を形成」する。

(3)上記アないしオによれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「セラミックグリーンシートから形成される各々の誘電体層(42、43)上に第1内部電極(52)と第2内部電極(53)が形成され、
各々の内部電極(52、53)は、誘電体層(42、43)の幅と同一な幅(M)を有するメイン電極部と、それより小さい幅(N)を有するリード部とを含んで成ることにより、誘電体層(42、43)は幅方向(W方向)のマージン部を有さず、誘電体層(42、43)は、長さ方向(L方向)のマージン部(62、63)及び内部電極(52、53)のリード部(52a、53a)の両側部にマージン部を有し、
リード部(52a、53a)は、メイン電極部から延長され誘電体層(42、43)の一端部に引出され外部端子電極に連結され、
内部電極が形成された誘電体層の積層物(200a)は、直方体であり、第1及び第2内部電極(52、53)が形成された誘電体層(42、43)を交互に積層して形成され、第1内部電極(52)の一端部にある長さ方向(L方向)のマージン部(62)は第2内部電極(53)の一端部にある長さ方向(L方向)のマージン部(63)と長さ方向(L方向)で逆方向となるように交互に配置され、
上記誘電体層の積層物両側面に、エポキシレジンまたはセラミック材料から成るチップ保護用側面部材(70)を形成した、
積層型チップキャパシタ。」

2 引用文献2
(1)令和3年6月22日付けの当審の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2000−311831号公報)には、次の記載がある。なお、下線は当審で付与した。

「【0029】
【発明の実施の形態】この発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法がたとえば積層セラミックコンデンサの製造に適用されるとき、基本的には、図2に示した各工程が実施され、また、製造の能率を上げるため、図2に示した各工程は、マザーの状態で実施される。図1には、この発明の実施形態による積層セラミックコンデンサの製造方法に含まれる特徴的な工程が断面図で示されている。
【0030】図1(1)を参照して、まず、セラミックグリーンシート11がマザーの状態で用意される。
【0031】次いで、セラミックグリーンシート11の主面12上に、内部回路要素膜としての内部電極13が、多数箇所に分布するように部分的に形成される。内部電極13は、セラミックグリーンシート11の主面12上において、その厚みによる段差14をもたらしている。」

「【0035】次いで、内部電極13の厚みによる段差14を実質的になくすように、セラミックグリーンシート11の主面12上であって、内部電極13が形成されない全領域に、セラミックペースト17が、たとえば、スクリーン印刷、グラビア印刷、凸版印刷等の印刷によって付与される。セラミックペースト17は、セラミック粉末、バインダおよび溶剤を含むものであるが、ここに含まれるセラミック粉末としては、セラミックグリーンシート11に含まれるセラミック粉末と実質的に同じ成分であることが好ましい。
【0036】この発明の特徴的構成として、上述のようにセラミックペースト17を付与するとき、セラミックペースト17は、図1(1)に示すように、重なりの幅18をもって、内部電極13の周縁部に重なるように付与される。
【0037】このように、セラミックペースト17が内部電極13の周縁部に重なるように付与されることによって、たとえ印刷等の位置ずれが生じても、内部電極13とセラミックペースト17との間にギャップが形成されることが防止される。
【0038】また、内部電極13の周縁部には傾斜面15が形成されているので、この周縁部に重なるようにセラミックペースト17が付与されても、その後において、図1(2)に示すように、セラミックペースト17の、内部電極13の周縁部に乗り上げた部分は、内部電極13間へと迅速に移動し、円滑にレベリングされる。言い換えると、内部電極13の段差14が、セラミックペースト17のパターンをアライニングするように作用することになる。また、セラミックペースト17は、付与後において乾燥される。これらのことから、セラミックペースト17は、内部電極13の表面と実質的に面一の表面を形成する状態となる。」

(2)引用文献2の上記記載からは、以下のことがいえる。
ア 引用文献2の段落【0029】、【0035】の記載によれば、「積層セラミックコンデンサの製造方法」において、「内部電極の厚みによる段差を実質的になくすように、」「内部電極が形成されていない全領域に、セラミックペーストが」「印刷によって付与」される。

イ 引用文献2の段落【0036】、【0037】の記載によれば、「セラミックペーストは」、「内部電極の周縁部に重なるように付与され」、「たとえ印刷等の位置ずれが生じても、内部電極とセラミックペーストとの間にギャップが形成されることが防止」される。

(3)上記アないしイによれば、引用文献2には、次の技術事項(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている。

「積層セラミックコンデンサの製造方法において、内部電極の厚みによる段差を実質的になくすように、内部電極が形成されていない全領域に、セラミックペーストを印刷によって付与するにあたり、セラミックペーストは、内部電極の周縁部に重なるように付与され、たとえ印刷等の位置ずれが生じても、内部電極とセラミックペーストとの間にギャップが形成されることを防止する」技術。

第5 対比
1 本願発明1と引用発明1とを対比する。
(1)「本体」について
引用発明1の「各々の誘電体層(42、43)」は、本願発明1の「第1誘電体層及び第2誘電体層」に相当する。
引用発明1における「積層物(200a)」は、「直方体であり、」「第1及び第2内部電極(52、53)が形成された誘電体層(42、43)を交互に積層して形成され」たものであるから、6つの面を有しているのは明らかであり、本願発明1の「第1誘電層及び第2誘電層を含み、積層方向において互いに対向する第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と互いに連結され、互いに対向する第3面及び第4面、前記第1面〜前記第4面と連結され、互いに対向する第5面及び第6面を有する本体」に相当する。

(2)「第1内部電極」について
引用発明1の「第1内部電極(52)」は、「誘電体層(42)上に」「形成され、」「メイン電極部と」「リード部とを含んで成る」ものである。
そして、引用発明1は、上記「メイン電極部」が「誘電体層(42)の幅と同一な幅(M)を有」し、「誘電体層(42)は幅方向(W方向)のマージン部を有さず、誘電体層(42)は、長さ方向(L方向)のマージン部(62)」「を有し」、「リード部(52a)は、メイン電極部から延長され誘電体層(42)の一端部に引出され」る。
してみると、引用発明1の「第1内部電極(52)」は、誘電体層(42)上に配置されており、長さ方向(L方向)のリード部(52a)側の面及び幅方向(W方向)の両面で露出し、長さ方向(L方向)のマージン部(62)が形成される側の面からはマージン部(62)だけ離間して配置されたものである。
そして、引用発明1の第1内部電極(52)が配置された「誘電体層(42)」、長さ方向(L方向)のリード部(52a)側の面、幅方向(W方向)の両面、長さ方向(L方向)のマージン部(62)が形成される側の面、マージン部(62)はそれぞれ、本願発明1の「第1誘電体層」、「第3面」、「第5面及び第6面」、「第4面」、「第1空間」に相当し、引用発明1の「第1内部電極(52)」は、本願発明1の「前記第1誘電層に配置されており、前記第3面、前記第5面及び前記第6面を介して露出し、前記第4面から第1空間だけ離隔して配置され」る「第1内部電極」に相当する。
また、引用発明1の「第1内部電極(52)」は、「メイン電極部と、それより小さい幅(N)を有するリード部とを含んで成」り、「リード部(52a)は、メイン電極部から延長され誘電体層(42)の一端部に引出され外部端子電極に連結」する。
そして、引用発明1の第1内部電極(52)のメイン電極部、リード部(52a)、リード部(52a)が連結する外部端子電極はそれぞれ、本願発明1の「第1容量部」、「前記第1容量部と第1外部電極とを連結し、前記第1容量部に比べて幅が狭い第1リード部」、「第1外部電極」に相当し、引用発明1の「第1内部電極(52)」は、本願発明1の「第1容量部と、前記第1容量部と第1外部電極とを連結し、前記第1容量部に比べて幅が狭い第1リード部とを含む第1内部電極」に相当する。
以上のことより、引用発明1の「第1内部電極(52)」は、本願発明1の「前記第1誘電層に配置されており、前記第3面、前記第5面及び前記第6面を介して露出し、前記第4面から第1空間だけ離隔して配置され、第1容量部と、前記第1容量部と第1外部電極とを連結し、前記第1容量部に比べて幅が狭い第1リード部とを含む第1内部電極」に相当する。

(3)「第2内部電極」について
引用発明1は、「各々の誘電体層(42、43)上に第1内部電極(52)と第2内部電極(53)が形成され」、「第1及び第2内部電極(52、53)が形成された誘電体層(42、43)を交互に積層して形成され」るから、「第2内部電極(53)」は、誘電体層(43)に誘電体層(42)または誘電体層(43)を挟んで第1内部電極(52)と対向するように配置されている。
そして、引用発明1の「第2内部電極(53)」は「メイン電極部と」「リード部とを含んで成る」ものである。
また、引用発明1は、上記「メイン電極部」が「誘電体層(43)の幅と同一な幅(M)を有」し、「誘電体層(43)は幅方向(W方向)のマージン部を有さず、誘電体層(43)は、長さ方向(L方向)のマージン部(63)を有し」、「リード部(53a)は、メイン電極部から延長され誘電体層(43)の一端部に引出され」る。ここで、「長さ方向(L方向)のマージン部(63)」は「長さ方向(L方向)のマージン部(62)」と「長さ方向(L方向)で逆方向」に配置される。
してみると、引用発明1の「第2内部電極(53)」は、誘電体層(43)に誘電体層(42)または誘電体層(43)を挟んで第1内部電極と対向するように配置され、長さ方向(L方向)のリード部(53a)側の面及び幅方向(W方向)の両面で露出し、(マージン部(62)が形成される側の面とは長さ方向(L方向)で逆方向の)マージン部(63)が形成される側の面からはマージン部(63)だけ離間して配置されたものである。
そして上記(1)での対比を考慮すると、引用発明1の第2内部電極(53)が配置された「誘電体層(43)」、長さ方向(L方向)のリード部(53a)側の面、幅方向(W方向)の両面、長さ方向(L方向)のマージン部(63)が形成される側の面、マージン部(63)はそれぞれ、本願発明1の「第2誘電層」、「第4面」、「第5面及び第6面」、「第3面」、「第2空間」に相当し、引用発明1の「第2内部電極(53)」は、本願発明1の「前記第2誘電層に前記第1誘電層または前記第2誘電層を挟んで前記第1内部電極と対向するように配置されており、前記第4面、前記第5面及び前記第6面を介して露出し、前記第3面から第2空間だけ離隔して配置され」る「第2内部電極」に相当する。
また、引用発明1の「第2内部電極(53)」は、「メイン電極部と、それより小さい幅(N)を有するリード部とを含んで成」り、「リード部(53a)は、メイン電極部から延長され誘電体層(43)の一端部に引出され外部端子電極に連結」する。
そして、引用発明1の第2内部電極(53)のメイン電極部、リード部(53a)、リード部(53a)が連結する外部端子電極はそれぞれ、本願発明1の「第2容量部」、「前記第2容量部と第2外部電極とを連結し、前記第2容量部に比べて幅が狭い第2リード部」、「第2外部電極」に相当し、引用発明1の「第2内部電極(53)」は、本願発明1の「第2容量部と、前記第2容量部と第2外部電極とを連結し、前記第2容量部に比べて幅が狭い第2リード部とを含む第2内部電極」に相当する。
以上のことより、引用発明1の「第2部電極(53)」は、本願発明1の「前記第2誘電層に前記第1誘電層または前記第2誘電層を挟んで前記第1内部電極と対向するように配置されており、前記第4面、前記第5面及び前記第6面を介して露出し、前記第3面から第2空間だけ離隔して配置され、第2容量部と、前記第2容量部と第2外部電極とを連結し、前記第2容量部に比べて幅が狭い第2リード部とを含む第2内部電極」に相当する。

(4)「誘電体パターン」について
本願発明1は「前記第1空間の少なくとも一部に配置される第1誘電体パターンと、前記第2空間の少なくとも一部に配置される第2誘電体パターンと、前記第1誘電層の前記第1容量部と前記第1リード部とが接する部分に配置される第3誘電体パターンと、前記第2誘電層の前記第2容量部と前記第2リード部とが接する部分に配置される第4誘電体パターンと、」「を含み、前記第1誘電体パターンは、前記第1空間から前記第1内部電極の端部の段差を覆うが、前記第1内部電極の前記第5面及び前記第6面を介して露出する端面を覆わないように配置され、前記第2誘電体パターンは、前記第2空間から前記第2内部電極の端部の段差を覆うが、前記第2内部電極の前記第5面及び前記第6面を介して露出する端面を覆わないように配置される」のに対して、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。

(5)「側面絶縁層」について
引用発明1の「チップ保護用側面部材(70)」は、「誘電体層の積層物両側面」に「エポキシレジンまたはセラミック材料」で形成されるものであるから、本願発明1の「前記本体の前記第5面及び前記第6面に配置される側面絶縁層」に相当する。

(6)「積層セラミックキャパシター」について
引用発明1の「積層型チップキャパシタ」は、「セラミックグリーンシートから形成される各々の誘電体層(42、43)上に第1内部電極(52)と第2内部電極(53)が形成」されたものであるから、本願発明1の「積層セラミックキャパシター」に相当する。

2 そうすると、本願発明1と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「第1誘電層及び第2誘電層を含み、積層方向において互いに対向する第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と互いに連結され、互いに対向する第3面及び第4面、前記第1面〜前記第4面と連結され、互いに対向する第5面及び第6面を有する本体と、
前記第1誘電層に配置されており、前記第3面、前記第5面及び前記第6面を介して露出し、前記第4面から第1空間だけ離隔して配置され、第1容量部と、前記第1容量部と第1外部電極とを連結し、前記第1容量部に比べて幅が狭い第1リード部とを含む第1内部電極と、
前記第2誘電層に前記第1誘電層または前記第2誘電層を挟んで前記第1内部電極と対向するように配置されており、前記第4面、前記第5面及び前記第6面を介して露出し、前記第3面から第2空間だけ離隔して配置され、第2容量部と、前記第2容量部と第2外部電極とを連結し、前記第2容量部に比べて幅が狭い第2リード部とを含む第2内部電極と、
前記本体の前記第5面及び前記第6面に配置される側面絶縁層と、を含む、
積層セラミックキャパシター。」

〈相違点〉
本願発明1は「前記第1空間の少なくとも一部に配置される第1誘電体パターンと、前記第2空間の少なくとも一部に配置される第2誘電体パターンと、前記第1誘電層の前記第1容量部と前記第1リード部とが接する部分に配置される第3誘電体パターンと、前記第2誘電層の前記第2容量部と前記第2リード部とが接する部分に配置される第4誘電体パターンと、」「を含み、前記第1誘電体パターンは、前記第1空間から前記第1内部電極の端部の段差を覆うが、前記第1内部電極の前記第5面及び前記第6面を介して露出する端面を覆わないように配置され、前記第2誘電体パターンは、前記第2空間から前記第2内部電極の端部の段差を覆うが、前記第2内部電極の前記第5面及び前記第6面を介して露出する端面を覆わないように配置される」のに対して、引用発明1はその旨特定されていない点

第6 判断
1 相違点に係る本願発明1の構成について
本願の明細書段落【0073】に「第1容量部221aと第1リード部221bとが接する部分に第3誘電体パターン233を配置し」と記載されるのに対し、図10aからは、第3誘電体パターン233は誘電体の長さ方向(第2方向X)の端部領域において第1リード部221bの両側部に配置されることが見てとれる。
してみると、本願発明1の「前記第1誘電層の前記第1容量部と前記第1リード部とが接する部分に配置される第3誘電体パターン」なる構成は、前記第1誘電体層の長さ方向の端部領域において第1リード部の両側部に第3誘電体パターンが配置されることを特定したものと認められる。
また同様に、本願発明1の「前記第2誘電体層の前記第2容量部と前記第2リード部とが接する部分に配置される第4誘電体パターン」なる構成は、前記第2誘電体層の長さ方向の端部領域において第2リード部の両側部に第4誘電体パターンが配置されることを特定したものと認められる。
以上のことより、上記相違点に係る本願発明1の構成は、「前記第1空間の少なくとも一部に配置される第1誘電体パターンと、前記第2空間の少なくとも一部に配置される第2誘電体パターンと、前記第1誘電体層の長さ方向の端部領域において第1リード部の両側部に配置される第3誘電体パターンと、前記第2誘電体層の長さ方向の端部領域において第2リード部の両側部に配置される第4誘電体パターンと、」「を含み、前記第1誘電体パターンは、前記第1空間から前記第1内部電極の端部の段差を覆うが、前記第1内部電極の前記第5面及び前記第6面を介して露出する端面を覆わないように配置され、前記第2誘電体パターンは、前記第2空間から前記第2内部電極の端部の段差を覆うが、前記第2内部電極の前記第5面及び前記第6面を介して露出する端面を覆わないように配置される」と認められる。

2 引用発明1への引用文献2記載の技術の適用について
引用発明1と引用文献2記載の技術とはいずれも、積層セラミックコンデンサに関するものであり、内部電極が形成された部分と形成されない部分との段差による問題を解決するためのものである。
また、引用発明1は、「長さ方向(L方向)のマージン部(62、63)」及び「リード部(52a、53a)」の両側部にマージン部を有し、当該4箇所のマージン部が段差を生じさせることは当業者には明らかである。
そして、引用発明においても、上記4箇所のマージン部が生じさせる段差による問題を解決することは当然に望まれるところであるから、引用発明に引用文献2記載の技術を適用し、「長さ方向(L方向)のマージン部(62、63)」及び「リード部(52a、53a)」の両側部のマージン部に対して内部電極の周縁部に重なるようにセラミックペーストを付与することは、当業者が容易になし得たことである。
またこの場合、引用発明1の「長さ方向(L方向)のマージン部(62、63)」に対して「内部電極(52、53)」の周縁部を覆うように付与したセラミックペーストは、「マージン部(62、63)」から「内部電極(52、53)」の端部の段差を覆うが「内部電極(52、53)」の「幅方向(W方向)」面を介して露出する端面は覆わない。
したがって、引用発明1に引用文献2記載の技術を適用して、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願発明の奏する効果は、引用発明1に引用文献2記載の技術を適用したことにより得られる効果に対して、当業者が想起し得ないものとも認められない。

3 令和3年9月29日の意見書での請求人の主張について
(1)請求人の主張
請求人は令和3年9月29日の意見書において、概略次のように主張している。
ア 「・・・そして、引用文献1においては、『厚さの差が発生する部分に誘電体スラリーを印刷して厚さの差を補完する方法があるが、この方法はさらなる工程を必要とし厚さの差による亀裂問題を根本的に解決しがたい』(段落0006)として厚さの差が発生する部分に誘電体スラリーを印刷する方法は忌避し、『幅方向のマージン部を無くしキャパシタ本体両側面にチップ保護用側面部材を形成する』ようにしている。
ここで、引用文献2は、内部電極によって厚さの差が発生する部分にセラミックペーストを印刷によって付与するものである(段落0035)。したがって、引用文献1に記載の発明に引用文献2の技術を適用することは、引用文献1において忌避された技術を適用することとなり、さらなる工程が必要となって引用文献1の効果を失わしめるものである。したがって、引用文献1に記載の発明に引用文献2の技術を適用することには阻害要因がある。
また、・・・当業者であれば、引用文献2の技術を用いるとするならば、引用文献1のように、一旦幅方向のマージン部を無くし、その後にキャパシタ本体両側面にチップ保護用側面部材を形成する必要性はないと判断する。したがって、引用文献1の構造を採用しながら引用文献2の技術を用いることは、当業者にとって容易に想到することができないものである。」(第12頁第40行−第13頁第16行)

イ 「さらに、引用文献2においては、例えば内部電極の段差の寸法3μmに対し(段落0056)、セラミックペーストの周縁部での厚み方向寸法を内部電極の段差の寸法と同等の3μmにレベリングするものであり(段落0059)、内部電極の端部の段差を覆う本願発明とは相違する。したがって、もしも仮に引用文献1に記載の発明に引用文献2に記載の技術を適用したとしても、本願発明の構成を得ることはできない。」(第13頁第17−21行)

(2)請求人の主張についての検討
ア 上記アの主張について検討する。
引用文献1の段落【0003】に「チップキャパシタの全体外形において、内部電極が形成された中心部位と、マージン部が位置した両側面部位との間に厚さの差が発生する。・・・厚さの差は、とりわけ焼成過程においてチップに亀裂(crack)を発生させキャパシタの信頼性に悪影響を及ぼす」、段落【0008】に「本発明は・・・その目的は中心部と両側部との間の厚さの差による亀裂の発生を防止しカッティングラインの整列エラーによる短絡の危険を抑制して、素子の信頼性を向上させること」と記載され、段落【0004】に「幅方向マージン部とは、誘電体層の縁端と内部電極との間のマージン部として誘電体層の全長に亘って延長された部分のことをいう」、段落【0021】に「本発明によると、幅方向のマージン部を無くしキャパシタ本体両側部にチップ保護用側面部材を形成することにより、積層型チップキャパシタにおいて局部的な厚さの差が生じる現象を防止し且つ内部電極が両側端部において短絡しないようにさせることが可能になる。こうして、キャパシタの亀裂現象を抑制し・・・製造工程中カッティングラインの整列エラーによる短絡現象を防止することが可能になる」と記載されている。
これらの記載によれば、引用発明1は、チップキャパシタの全体外形において内部電極が形成された中心部とマージン部が位置した両側部との間の厚さの差による亀裂の発生を防止しカッティングラインの整列エラーによる短絡の危険を抑制するために、誘電体層の縁端と内部電極との間のマージン部として誘電体層の全長に亘って延長された部分である幅方向のマージン部を無くしたものである。
してみると、引用文献1の段落【0006】には厚さの差が発生する部分に誘電体スラリーを印刷して厚さの差を補完する方法はさらなる工程を必要とし厚さの差による亀裂問題を根本的に解決しがたい旨の記載があるが、当該記載は、誘電体スラリーを印刷して厚さの差を補完する方法では工程が増えると共に全体外形において「中心部と両側部との間の厚さの差」による亀裂の発生を防止しがたいことを意図した記載と認められる。
したがって、引用文献1の段落【0006】の記載は、積層型チップキャパシタの幅方向のマージン部に対して誘電体スラリーを印刷して厚さの差を補完することを忌避する記載であり、幅方向以外のマージン部に対して誘電体スラリーを印刷することを阻害する記載とまではいえない。
また、引用発明1は、幅方向のマージン部を無くした積層型チップキャパシタであるから、幅方向以外のマージン部により生じる段差による問題を解決するにあたり、幅方向のマージン部を無くさない構成とするとは認められない。
そして、上記「2」で述べたように、引用発明1のように幅方向マージン部を無くしても「長さ方向(L方向)のマージン部(62、63)」及び「リード部(52a、53a)」の両側部のマージン部が残る積層型チップキャパシタにおいて、当該マージン部により生じる段差による問題を解決することは当然に望まれるところであり、引用発明に引用文献2記載の技術を適用し、上記マージン部に内部電極の周縁部に重なるようにセラミックペーストを付与することは、当業者が容易になし得たことである。
なお、長さ方向のマージン部は、2つの外部端子電極間を短絡させないために必須のものであるから、当該マージンにより生じる段差による問題を解決するために、長さ方向のマージン部を無くすことはできない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

イ 上記イの主張について検討する。
本願の請求項2に「前記第1誘電体パターン、前記第2誘電体パターン、前記第3誘電体パターン、および前記第4誘電体パターンは、前記第1内部電極及び前記第2内部電極よりも厚く形成される請求項1に記載の積層セラミックキャパシター。」と記載されていることを考慮すれば、本願発明1は、「内部電極の端部の段差を覆う」が「内部電極よりも厚く形成」されていないものを含むものと認められる。
してみると、本願発明1の「誘電体パターンは」「内部電極の端部の段差を覆う」との構成は、誘電体パターンが内部電極の上面まで覆うものに限定されるものではなく、誘電体パターンが内部電極と同じ厚さのものを含むものと認められる。
したがって、請求人の主張は特許請求の範囲(請求項1)に基づかない主張であるといえ採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 井上 信一
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-11-24 
結審通知日 2021-11-30 
審決日 2021-12-14 
出願番号 P2017-214632
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01G)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 山田 正文
畑中 博幸
発明の名称 積層セラミックキャパシター及びその実装基板  
代理人 龍華国際特許業務法人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ