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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1384702
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-08 
確定日 2022-05-06 
事件の表示 特願2018−124910「屋外空気調和装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月 9日出願公開、特開2020− 3174〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成30年6月29日に出願されたものであって、令和1年8月2日付けで拒絶の理由が通知され、令和1年10月15日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年2月18日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年6月23日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和2年9月4日付け(発送日:令和2年9月15日)で拒絶査定がなされ、それに対して、令和2年12月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、これに対し、当審において、令和3年9月30日付けで拒絶の理由が通知され、令和3年12月3日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1〜15に係る発明は、令和3年12月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜15に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
圧縮機(1)と、熱源側熱交換器(6)と、前記熱源側熱交換器を通過する空気流れを生じさせる第1ファン(7)と、利用側熱交換器(3)と、前記利用側熱交換器を通過する空気流れを生じさせる第2ファン(4)と、を備えた屋外空気調和装置(100)であって、
少なくとも前記熱源側熱交換器および前記利用側熱交換器を内部に収容するケーシング(10)を備え、
前記第2ファンは、回転軸方向が上下方向となるように設置された遠心送風機であり、
前記熱源側熱交換器が前記利用側熱交換器よりも上に配置されており、
少なくとも前記利用側熱交換器を冷媒の蒸発器として機能させ前記熱源側熱交換器を冷媒の凝縮器として機能させる運転を行い、
前記ケーシングは、前記利用側熱交換器を通過した空気を前記ケーシングの外部の複数の側方に送り出すための複数の吹出口(46)を有しており、
前記ケーシングは、前記熱源側熱交換器が配置された空間と前記第2ファンが配置された空間とを仕切る第3仕切板(15)を有しており、
前記第2ファンは、第2ファンモータ(4a)を有しており、
前記第2ファンモータは、前記第3仕切板に固定されている、
屋外空気調和装置。」

3 拒絶の理由
令和3年9月30日付けで当審が通知した請求項1に係る発明に対する拒絶の理由は次のとおりである。

この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1〜3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例等一覧
1.実願昭50−120914号(実開昭52−34150号)のマイクロフィルム
2.実願昭50−64961号(実開昭51−143338号)のマイクロフィルム
3.特開平9−14691号公報

4 引用例
(1)引用例1
当審の拒絶の理由に引用例1として引用された実願昭50−120914号(実開昭52−34150号)のマイクロフィルムには、次の事項が図面とともに記載されている(下線は当審にて付した。以下同様)。

(1−a)「本考案は縦形床置式スポットクーラに関するものである。
従来の床置式スポットクーラは、一般のウィンド型クーラと同様に、本体ケーシングを横に2分割して前部室に蒸発器を設け、かつ前面に冷気吹出口を設けるとともに、後部室に凝縮器および圧縮機を設け、かつ後面の上方部に熱気吹出口を設けた横長の構造であった。
したがって局所冷房域から近隣する該域外へ作業者が移動した場合には、本機全体を回動させて前記冷気吹出口の吹出方向を変えねばならなかった。」(明細書第1頁第18行〜第2頁第9行)

(1−b)「第1図において、(1)は縦長の円筒状本体ケーシングで、該本体ケーシング(1)は、縦に上部室(1a)、中間室(1b)、下部室(1c)に3分割されており、それぞれの室は前記中間室(1b)を構成する上板(13)、下板(14)にて仕切られている。
前記上部室(1a)には、該上部室(1a)の周壁に空気吸込口(9)が設けられており、該空気吸込口(9)に対面して円筒状の凝縮器(2)が立設されている。また天板(12)には熱気吹出口(11)が設けられており、該熱気吹出口(11)の内方にはプロペラファン(5)が設けられている。
前記下部室(1c)には、該下部室(1c)の上方に周壁に空気吸込口(10)が設けられており、該空気吸込口(10)に対面して円筒状の蒸発器(3)が立設されるとともに内方に吹出部を上方に向けてシロッコファン(6)が配設されており、該ファン(6)の下方に圧縮機(7)が底板に据付けられている。また(15)はドレンパンである。
前記中間室(1b)は冷気吹出室となるものであって、前記上板(13)、下板(14)、支持部材(17)・・・、および吹出パネル(8)で空間が形成されるごとく構成されており、前記下板(14)には前記シロッコファン(6)の吹出部が連結している。また前記支持部材(17)・・・は前記下部室(1c)の上方に前記上部室(1a)を支持するごとく4ケ所に設けられている。
また前記吹出パネル(8)は本考案の構成要件のうち主要部となるものであって、第2図に示すごとく、円筒状に形成されるとともに、該吹出パネル(8)の一部を切り欠いて吹出口(16)を設けている。
しかして、該吹出パネル(8)は、第3図に拡大して示すごとく、本体ケーシング(1)の側板と該本体ケーシング(1)の内側に設けたガイド部材(18)および(19)とによりそれぞれ本体ケーシング(1)の周囲に形成される溝(20)および(21)に前記吹出パネル(8)の上縁か嵌装されるとともに前記吹出パネル(8)は前記溝(20)、(21)中を回動自在に摺動するごとく装着されている。
なお(4)・・・は移動用キャスターである。」(明細書第4頁第2行〜第6頁第1行)

(1−c)「本考案は叙上のごとく、円筒状に形成した本体ケーシングを縦に3分割して上部室、中間室、下部室となし、前記上部室には凝縮器を設けるとともに天板に熱気吹出口を設けて前記凝縮器を通過した熱気を上方へ吹き出し得るごとくなす一方、前記下部室には蒸発器と圧縮機とを設け、さらに前記中間室を蒸発器を通過した冷気を吹き出す冷気吹出室となし、一部を切欠いて吹出口とした円筒状に形成した吹出パネルを前記冷気吹出室の周囲に回動自在に装着して冷気の吹出方向を任意の方向に選択し得るごとくなしたので、冷気の吹出方向を変える場合、従来例のごとく本機全体を回動させる必要がなく、吹出パネルのみを回動させれば360°のあらゆる方向に吹出方向を設定できる。
しかも、大きな労力を費すことなく簡単に吹出パネルを回動し得るので、作業者に支障を与えることがなく、したがって作業能率の低下を来たすことがない。
しかも前記のごとく本体ケーシングを円筒状に形成し、凝縮器を上方に蒸発器を下方に縦に配設したので、床置占有スペースを小さくし得るから床に直装置いても作業者の邪魔にならず、したがって設置場所が限定されない。
また上部室の天板に熱気吹出口を設けたので、熱気は冷房する局所域から離れた遠方へ熱気を吹出され、これにより熱気と冷気とのショートサーキットを防止でき、局所冷房域の冷房効率に悪影響を与えない。」(明細書第7頁第7行〜第8頁第15行)

(1−d)




(1−e)第1図の矢印から、プロペラファン(5)は、「凝縮器(2)を通過する空気流れを生じさせるプロペラファン(5)」であり、シロッコファン(6)は、「蒸発器(3)を通過する空気流れを生じさせるシロッコファン(6)」であると言える。

(1−f)第1図から、本体ケーシング(1)は、「凝縮器(2)及び蒸発器(3)を内部に収容する」ものであり、「凝縮器(2)が蒸発器(3)よりも上に配置され」ていることが把握でき、シロッコファン(6)は、「回転軸方向が水平方向となるように設置され」ていることが把握できる。

(1−g)第1図から、吹出パネル(8)には、蒸発器(3)を通過した空気が本体ケーシング(1)の外部の側方に向けて送り出されていることが把握でき、上記(1−b)には「該吹出パネル(8)の一部を切り欠いて吹出口(16)を設けている。」及び「本体ケーシング(1)の周囲に形成される溝(20)および(21)に前記吹出パネル(8)の上縁か嵌装されるとともに前記吹出パネル(8)は前記溝(20)、(21)中を回動自在に摺動するごとく装着されている。」と記載されているから、「本体ケーシング(1)に装着された吹出パネル(8)は、蒸発器(3)を通過した空気を本体ケーシング(1)の外部の側方に送り出すための吹出口(16)を有して」いると言える。

(1−h)第1図から、「本体ケーシング(1)は、凝縮器(2)が配置された空間とシロッコファン(6)が配置された空間とを仕切る上板(13)を有し」ていることが把握できる。また、「シロッコファン(6)は、上板(13)よりも下方に位置して」いることが把握できる。

上記(1−a)〜(1−h)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「圧縮機(7)と、凝縮器(2)と、凝縮器(2)を通過する空気流れを生じさせるプロペラファン(5)と、蒸発器(3)と、蒸発器(3)を通過する空気流れを生じさせるシロッコファン(6)と、を備えた縦形床置式スポットクーラであって、
凝縮器(2)および蒸発器(3)を内部に収容する本体ケーシング(1)を備え、
シロッコファン(6)は、回転軸方向が水平方向となるように設置され、
凝縮器(2)が蒸発器(3)よりも上に配置されており、
本体ケーシング(1)に装着された吹出パネル(8)は、蒸発器(3)を通過した空気を本体ケーシング(1)の外部の側方に送り出すための吹出口(16)を有しており、
本体ケーシング(1)は、凝縮器(2)が配置された空間とシロッコファン(6)が配置された空間とを仕切る上板(13)を有しており、
シロッコファン(6)は、上板(13)よりも下方に位置しており、
移動用キャスター(4)を備えた、
縦形床置式スポットクーラ。」

(2)引用例2
当審の拒絶の理由に引用例2として引用された実願昭50−64941号(実開昭51−143338号)のマイクロフィルムには、次の事項が図面とともに記載されている。

(2−a)「本考案は空気調和機に係り、特にシロッコファンのごとき遠心型送風機を用いて本空気調和機を中心として放射状の任意方向へ選択的に空気を吹き出し得るごとくしたものに関する。
従来、例えば室内に設置される空気調和機は、第4図に示すごとく、本体ケーシング(A)の上部に前面に空気吹出口(14a)を有するプレナム室(8)を設け、該プレナム室(8)の直下にシロッコファン(10)(以下送風機という)を設けて、該送風機(10)ハウジングの吹出部(6)を上方に向けて前記プレナム室(8)に接続している。該送風機(10)の下方には蒸発器(3)および空気吸込口(4)を設けるのである。また(1)は圧紺機、2は凝縮器でそれぞれ本体ケーシング(A)の下部に設けている。
しかしながら斯かる構成の空気調和機においては、前記送風機(10)の吹出方向は上向き(垂直方向)であるとともに前記プレナム室(8)の空気吹出口(14a)は前向き(水平方向)であるので、前記送風機(10)から吹き出された空気は(垂直方向に上昇して、プレナム室(8)の天板(16)に衝突し、その後風向きを直角に曲げ、前記空気吹出口(14a)からそのまま水平方向に吹き出される。
したがって前記プレナム室(8)中の空気流通抵抗が大きくなるので送風量が減少し、これが送風機(10)の送風効率を低下する一因となるのである。
しかも前記の如く送風機(10)から吹き出された空気はプレナム室(8)の天板(16)に衝突することにより風速が減速されるので、空気吹出口(14a)からの到達距離が短縮され、極端な場合にはショートサーキットを起こすことになる。
さらに前記プレナム室(8)を設けることにより、それだけ本体ケーシング(A)が大きくなるとともに前記送風機10の送風効率を低下させないためにはプレナム室の形状を大きくせねばならないという構造上の不利な欠点があり、さらに室内への吹出方向は空気吹出口(14a)からの一方向のみである。
本考案は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、本体ケーシング内にファン室各壁をファンハウジングと兼用させ、遠心型送風機のロータを回転軸が垂直になるごとく設けるとともに、該ロータの吹出部に面するケーシング側板に開閉自在の空気吹出口を設けることにより、前記遠心送風機の空気流れ方向が直角に曲がる空気流通特性を利用して、ファン室内における空気流通抵抗を少なくせしめるととともに、本空気調和機を中心として放射状の任意方向へ選択的に空気を吹き出し得るごとくしたものに関する。
・・・
前記上部室(B)の横断面中央部には遠心型送風機としてのシロッコファンのロータ(9)が、回転軸(11)を垂直に向けかつ該ロータ(9)の空気吸入部(5)を下方の前記仕切板(7)の空孔(22)に対面させて前記上部室(B)内に装設される。」(明細書第1頁第15行〜第4頁第17行)

(2−b)「しかして、前記ロータ(9)には該ロータ(9)専用のハウジングは付設されておらず、前記仕切板(7)、本体ケーシング(A)の天板(16)、ガイド板(12)、(12)、(12)、(12)がそれぞれ該ロータ(9)のハウジングを形成する部材として兼用されている。
また(10)は前記ロータ(9)を回転駆動させるモータである。」(明細書第5頁第14〜20行)

(2−c)「また前記空気吹出口(14a)、(14b)、(14c)、(14d)には、遮蔽板(15a)、(15b)、(15c)、(15d)が着脱自在に設けられているので、これら遮蔽板(15a)、(15b)、(15c)、(15d)を適宜取り付けまたは取りはずすことにより空気吹出口(14a)、(14b)、(14c)、(14d)を選択的に任意方向を開閉することができる。また空気吹出口を周囲に設けず任意二方向あるいは三方向に設けて、任意方向に開閉自在にしてもよい。」(明細書第8頁第4〜12行)

(2−d)「




(2−e)第1図から、モータ(10)は本体ケーシングの天板(16)に固定されていることが把握できる。

上記(2−a)〜(2−e)の事項を総合すると、引用例2には、次の事項が記載されていると認められる(以下「引用例2記載の事項」という。)。
「遠心型送風機のロータ(9)を回転軸が垂直になるごとく設けるとともに、該ロータ(9)の吹出部に面するケーシング側板に開閉自在の空気吹出口を複数設けることにより、放射状の任意方向へ選択的に空気を吹き出し得る空気調和機であって、
ロータ(9)を回転駆動させるモータ(10)を有しており、
該モータ(10)は本体ケーシングの天板(16)に固定されている空気調和機。」

(3)引用例3
当審の拒絶の理由に引用例3として引用された特開平9−14691号公報には、次の事項が図面とともに記載されている。

(3−a)「【0019】図1〜図5において、1Bは仕切板、1bは吹出口であり、11は仕切板1Bに設置されたモータで、蒸発用送風機5及び凝縮用送風機6に結合されている。蒸発用送風機5と吹出口1bの間に蒸発器3が、凝縮用送風機6と排気口1dの間に凝縮器4が配置されている。蒸発器3及び凝縮器4は、例えば特開平6−331290号公報に示されるように、冷凍サイクルに配管12a,12bを介して挿入された複数本の伝熱管13と、この伝熱管13に接合された細線フィン14により薄形に形成された熱交換器を構成している。
【0020】16は本体1の下部に設置された圧縮機である。また、本体1の下面にはキャスタ8が装着されている。
・・・
【0022】このようにして、本体1は台車等に載置することなく移動は容易であり、屋外でも使用が可能である。蒸発器3及び凝縮器4は薄形に形成されているため、装置を小形軽量に構成することが可能である。」

(3−b)「
【図1】


5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「圧縮機(7)」、「凝縮器(2)」、「プロペラファン(5)」、「蒸発器(3)」、「シロッコファン(6)」は、それぞれ、本願発明の「圧縮機(1)」、「熱源側熱交換器(6)」、「第1ファン(7)」、「利用側熱交換器(3)」、「第2ファン(4)」に相当する。
よって、引用発明の「圧縮機(7)と、凝縮器(2)と、凝縮器(2)を通過する空気流れを生じさせるプロペラファン(5)と、蒸発器(3)と、蒸発器(3)を通過する空気流れを生じさせるシロッコファン(6)と、を備え」る点は、本願発明の「圧縮機(1)と、熱源側熱交換器(6)と、前記熱源側熱交換器を通過する空気流れを生じさせる第1ファン(7)と、利用側熱交換器(3)と、前記利用側熱交換器を通過する空気流れを生じさせる第2ファン(4)と、を備え」る点に相当する。
そして、引用発明の「縦形床置式スポットクーラ」と、本願発明の「屋外空気調和装置(100)」とは、「空気調和装置」である点で共通する。

イ 引用発明の「凝縮器(2)および蒸発器(3)を内部に収容する本体ケーシング(1)を備え」る点は、本願発明の「少なくとも前記熱源側熱交換器および前記利用側熱交換器を内部に収容するケーシング(10)を備え」る点に相当する。

ウ 引用発明の「凝縮器(2)が蒸発器(3)よりも上に配置され」る点は、本願発明の「熱源側熱交換器が利用側熱交換器よりも上に配置され」る点に相当する。

エ 引用発明の「蒸発器(3)」、「凝縮器(2)」は、それぞれ、本願発明の「冷媒の蒸発器として機能させ」る運転を行う「利用側熱交換器」、「冷媒の凝縮器として機能させ」る運転を行う「熱源側熱交換器」に相当する。

オ 引用発明の「吹出口(16)」は、本願発明の「吹出口(46)」に相当する。
よって、引用発明の「本体ケーシング(1)に装着された吹出パネル(8)は、蒸発器(3)を通過した空気を本体ケーシング(1)の外部の側方に送り出すための吹出口(16)を有」する点と、
本願発明の「ケーシングは、利用側熱交換器を通過した空気を前記ケーシングの外部の複数の側方に送り出すための複数の吹出口(46)を有」する点とは、
「利用側熱交換器を通過した空気をケーシングの外部の側方に送り出すための吹出口(46)を有」する点で共通する。

カ 引用発明の「上板(13)」は、本願発明の「第3仕切板(15)」に相当する。
よって、引用発明の「本体ケーシング(1)は、凝縮器(2)が配置された空間とシロッコファン(6)が配置された空間とを仕切る上板(13)を有」する点は、本願発明の「ケーシングは、熱源側熱交換器が配置された空間と第2ファンが配置された空間とを仕切る第3仕切板(15)を有」する点に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「圧縮機(1)と、熱源側熱交換器(6)と、前記熱源側熱交換器を通過する空気流れを生じさせる第1ファン(7)と、利用側熱交換器(3)と、前記利用側熱交換器を通過する空気流れを生じさせる第2ファン(4)と、を備えた空気調和装置であって、
少なくとも前記熱源側熱交換器および前記利用側熱交換器を内部に収容するケーシング(10)を備え、
前記熱源側熱交換器が前記利用側熱交換器よりも上に配置されており、
少なくとも前記利用側熱交換器を冷媒の蒸発器として機能させ前記熱源側熱交換器を冷媒の凝縮器として機能させる運転を行い、
前記利用側熱交換器を通過した空気を前記ケーシングの外部の側方に送り出すための吹出口(46)を有しており、
前記ケーシングは、前記熱源側熱交換器が配置された空間と前記第2ファンが配置された空間とを仕切る第3仕切板(15)を有している、
空気調和装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
第2ファンに関して、本願発明は「回転軸方向が上下方向となるように設置された遠心送風機」であるのに対し、引用発明は「回転軸方向が水平方向となるように設置され」た「シロッコファン(6)」である点。

[相違点2]
吹出口に関して、本願発明は「ケーシング」が「複数の側方に送り出すための複数の吹出口(46)を有し」ているのに対し、引用発明は「本体ケーシング(1)に装着された吹出パネル(8)」が「側方に送り出すための吹出口(16)を有し」ているが、該吹出口(16)が、複数の側方に送り出すための複数かどうか不明である点。

[相違点3]
本願発明は「第2ファンは、第2ファンモータ(4a)を有しており、前記第2ファンモータは、第3仕切板に固定されている」のに対し、引用発明は「シロッコファン(6)は、上板(13)よりも下方に位置して」いるものの、上板(13)には固定されていない点。

[相違点4]
本願発明は「屋外空気調和装置」であるのに対し、引用発明は「縦形床置式スポットクーラ」である点。

6 判断
ア 相違点1、2について検討する。
上記相違点1、2は関連するのでまとめて検討する。
引用例2の(2−a)には、従来の空気調和装置は、第4図に示すように、プレナム室(8)の直下にシロッコファン(10)を設けており、シロッコファン(10)の吹出方向は上向き(垂直方向)であるとともに前記プレナム室(8)の空気吹出口(14a)は前向き(水平方向)であるためシロッコファン(10)の送風効率が低下するという課題を有していたことが記載されている。
そして、このような課題を解決するために、引用例2記載の事項の「遠心型送風機のロータ(9)を回転軸が垂直になるごとく設けるとともに、該ロータ(9)の吹出部に面するケーシング側板に開閉自在の空気吹出口を複数設けることにより、放射状の任意方向へ選択的に空気を吹き出し得る空気調和機」の構成を採用したものである。
一方、引用発明のシロッコファン(6)、上板(13)及び吹出口(16)の配置は、引用例2に記載された従来の空気調和装置と同様のものであるから、引用例2に記載された送風効率が低下するという課題と同様の課題を内在している。
さらに、引用発明の吹出パネル(8)は、該吹出パネル(8)を冷気吹出室の周囲に回動自在に装着して冷気の吹出方向を任意の方向に選択できるものであるから(引用例1の(1−c)参照)、引用発明と引用例2記載の事項とは、共に任意方向へ選択的に空気を吹き出し得る空気調和機である点で共通する。
そうすると、引用発明において、送風効率を改善するために引用例2記載の事項を適用し、遠心型送風機のロータ(9)を回転軸が垂直になるように設けるとともに(相違点1に係る構成)、該ロータ(9)の吹出部に面するケーシング側板に開閉自在の空気吹出口を複数設けて(相違点2に係る構成)複数の側方へ選択的に空気を吹き出し得る空気調和機とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点3について検討する。
引用例2記載の事項には、「ロータ(9)を回転駆動させるモータ(10)を有しており、該モータ(10)は本体ケーシングの天板(16)に固定されている空気調和機」も開示されている。
また、引用発明は、凝縮器(2)が配置された空間とシロッコファン(6)が配置された空間とを仕切る上板(13)を有している。
よって、上記アでの検討と同様に、引用発明において、送風効率を改善するために引用例2記載の事項のロータ(9)(第2ファン)及び、モータ(10)(第2ファンモータ)を適用するとともに、モータ(10)(第2ファンモータ)を、引用発明の上板(13)(第3仕切板)に固定することは当業者であれば容易になし得たことである。

ウ 相違点4について検討する。
一般に、キャスター等を備え、屋外で使用可能な移動式空気調和装置は周知の技術である(例えば、引用例3の段落【0022】参照)。
そして、引用発明の縦型床置式スポットクーラは、上記周知の技術で示すような移動用キャスター(4)を備えた移動式のものであるから(図1参照)、引用発明の縦型床置式スポットクーラを屋外で使用する屋外空気調和装置とすることは当業者が適宜なし得たことである。

エ 本願発明が奏する効果について
本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術から予測しうる程度のものであって、格別のものではない。

オ 請求人の主張について
(ア)請求人は、令和3年12月3日付け意見書において、「そして、引用例1の発明は、上記課題を解決するために、引用例1の請求項1において特定されておりますように、『・・・一部を切り欠いて吹出口とした円筒状に形成した吹出パネルを前記冷気吹出室の周囲に回動自在に装着して冷気の吹出方向を任意の方向に選択し得るごとくなしたことを特徴とする』との構成を採用したというものです。また、以下に示す引用例1の図2においても、実際に明示されている吹出口16は1つだけであり、更には、発明の名称も縦形床置式『スポット』クーラとされております。
したがいまして、引用例1に記載の発明では、回動自在な吹出パネルに形成された吹出口は、特定の作業者に対して冷気を供給するために1つ設けられているものとして認定されるべきであると思料いたします。」(「(3−2)引用例1に記載の発明の認定」)と主張する。
しかしながら、図2において、実際に明示されている吹出口は1つであっても、明示されていない反対側にもう1つの吹出口がある可能性は否定できない。さらに、図1においては、シロッコファン(6)から吹出パネル(8)に向かう空気の矢印は2つの方向に向いているからも、吹出口が複数ある可能性を否定できない。
さらに、スポットクーラ(スポットエアコン)であっても、吹出口は1つであるとは限らないものである(例えば、特開平2−287054号の図2には、複数の吹き出しダクト16を備えたスポットエアコンが示されている。)。
したがって、吹出口について、引用発明において「本体ケーシング(1)に装着された吹出パネル(8)は、蒸発器(3)を通過した空気を本体ケーシング(1)の外部の側方に送り出すための吹出口(16)を有し」とした認定に誤りはないし、上記[相違点2]において、「・・・該吹出口(16)が、複数の側方に送り出すための複数かどうか不明である点。」とした認定に誤りはない。
例え、請求人が主張するように引用発明において、吹出口が1つであったとしても、吹出口の位置を複数位置に選択可能なものであるので、上記アで検討したように、選択可能な複数の吹出口を有する引用例2記載の事項を引用発明に適用し、引用発明の吹出口を選択可能な複数の吹出口とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)また、請求人は、同意見書において「上述の通り、引用例1は、作業者が局所冷房域から移動したとしても、大きな労力を費やすことなく吹出パネルを回動させて、簡単に吹出方向を変えるという発明を開示するものです。したがいまして、引用例1においては、特定の作業者の位置に対応するように吹出パネルに1つだけ吹出口が設けられていると認定されるべきものと思料いたします。
そうすると、引用例1の記載に接した当業者であれば、引用例1に記載の発明を採用するからには、特定の作業者に冷気を供給できるように特定の方向のみに向けて開口した1つだけの吹出口を有する『スポット』クーラを用いることになり、当該1つの吹出口から冷気を集中的に供給する構成を採用することになる、と解するのが自然であると考えます。
そうすると、引用例1に記載の発明において、本願発明のように、『利用側熱交換器を通過した空気を前記ケーシングの外部の複数の側方に送り出すための複数の吹出口(46)』との構成の採用は、むしろ阻害されているものと思料いたします。」(「(3−4)相違点2について」)と主張する。
しかしながら、上記6(ア)で指摘したとおり、引用発明のシロッコファン(6)、上板(13)及び吹出口(16)の配置から見て引用例2と同様の課題を内在しており、引用発明と引用例2記載の事項とは、共に任意方向へ選択的に空気を吹き出し得る空気調和機である点で共通するから、引用発明に引用例2記載の事項を適用する動機付けを有している。
また、仮に、引用発明が吹出パネルに1つだけ吹出口が設けられているものであるとしても、引用例2の(2−c)には、空気吹出口には、遮蔽板を適宜取り付けまたは取りはずすことにより空気吹出口を選択的に任意方向を開閉することができることが記載されているから、引用発明に引用例2記載の事項を適用したものにおいて、空気吹出口を1つとすることも可能である。そして、遮蔽板の開閉操作が必要であることをもって複数の吹出口を設けることを阻害するともいえない。
したがって、引用発明に複数の吹出口を採用することに阻害要因があるとはいえない。

よって、請求人の主張は採用できない。

カ まとめ
よって、本願発明は、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-02-25 
結審通知日 2022-03-01 
審決日 2022-03-18 
出願番号 P2018-124910
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 山崎 勝司
平城 俊雅
発明の名称 屋外空気調和装置  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  

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