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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
管理番号 1384739
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-29 
確定日 2022-05-19 
事件の表示 特願2016−246541号「留置型医療用機器」拒絶査定不服審判事件〔平成30年6月28日出願公開、特開2018−99255〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年12月20日の出願であって、令和2年6月1日付けで拒絶理由が通知され、同年10月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和3年1月29日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年9月1日付けで拒絶理由が通知され、同年11月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1〜3に係る発明は、令和3年11月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
体内に留置される本体を有する留置型医療機器であって、
前記本体は、外部から注入された薬液を貯留する液溜り部を包含する包含部と、前記液溜り部を覆う隔膜部と、前記本体よりもX線の透過率が低い非金属部材で構成されて留置型医療機器に関する文字、マーク及び図形の少なくとも一つを表す標識部と、を備え、
前記包含部は、基部と、前記隔膜部を露出させる開口部を有する蓋体と、を備え、前記蓋体及び前記基部は互いに接触して前記隔膜部を挟み込む凹部を形成し、
前記標識部は、前記蓋体と前記基部との間に挟み込まれた別の部材であって、
前記別の部材は、前記文字、マーク及び図形の少なくとも一つが、樹脂バインダに少なくとも前記非金属部材が混入されてなる混合物によって描かれており、
前記別の部材は、前記包含部の上面視において前記液溜り部よりも外側の領域であって、かつ前記蓋体のうちの前記開口部の開口面に平行な前記基部との接触面および前記基部のうちの前記開口面と平行な前記蓋体との接触面で構成され前記蓋体と前記基部とが接触する接触領域において、前記蓋体と前記基部との間に挟み込まれており、上面視で前記接触領域は前記開口部を取り囲む所定幅の環状をなし前記別の部材が前記所定幅よりも小さな寸法で形成されて環状の前記接触領域の幅内に設けられていることを特徴とする、留置型医療用機器。」

第3 拒絶の理由
令和3年9月1日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は、次のとおりのものである。
本願の請求項1〜4に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1及び4に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第2013/094644号
引用文献2:特表2015−526198号公報
引用文献3:米国特許出願公開第2009/0024098号明細書
引用文献4:米国特許出願公開第2011/0288503号明細書

第4 引用文献の記載事項及び引用発明等
1 引用文献1について
(1)記載事項
上記引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様である。)。
「[0002] ・・・そして、シール部材(セプタム)は、ゴム製の栓体であり、薬剤注入用針による複数回の穿刺が可能となっている。・・・」

「[0010] リング状の上部部材3は、シール部材4の中央部が露出(突出)する状態にてシール部材4を収納する本体部31と、本体部31の開口部より内部に突出し、シール部材4の周縁部を押圧するため環状突出部32とを備える。・・・」

「[0031] また、本発明の薬剤注入具としては、図13、図14および図15に示す薬剤注入具1aのように、X線造影機能を有するものであってもよい。
図13は、本発明の他の実施例の薬液注入具1aの平面図である。図14は、図13のE−E線断面図である。図15は、図13に示した薬液注入具の底面図である。
この実施例の皮下埋め込み型薬液注入具1aは、上述した皮下埋め込み型薬液注入具1と同様に、リング状の上部部材3と上部部材3の底面を閉塞する底部部材2とからなる注入具本体と、上部部材3と底部部材2間に収納され、上部部材3の開口を閉塞し、かつ、注入具本体内に薬液流入空間10を形成するシール部材4と、薬液流入空間10と連通する排出ポート5とを備える。そして、注入具本体内、具体的には、リング状の上部部材3と底部部材2間に形成された間隙部に収納されたリング状の造影性部材15を備えている。この造影性部材15により、X線造影機能を備えるものとなっている。リング状の上部部材3、底部部材2、シール部材4および排出ポート5は、上述したものと同じである。
[0032] この実施例の薬液注入具1aでは、造影性部材15は、排出ポート5側に欠損部を有する薄板リング状部材となっている。具体的には、図13ないし図15に示すように、造影性部材15は、図13に示すように、略楕円形状の外縁とほぼ真円状の内縁を有し、排出ポート5側に欠損部を有するものとなっている。そして造影性部材15は、底部部材2の突出する環状壁部22の下部外周を取り囲むものとなっており、その中央部上方にシール部材4が位置する。よって、シール部材4(穿刺可能部)をX線造影により確認可能である。
[0033] この実施例の薬液注入具1aは、上述した薬液注入具1と同様に、シール部材4のフランジ部42は、上部部材3の環状突出部32の下面と底部部材2の環状壁部22の上面により押圧され、高さが、20〜45%減少(好ましくは、20〜40%減少)している。つまり、フランジ部42は、上部部材3と底部部材2間により挟圧(強圧縮)されている。このため、薬液注入具は、薬液をある程度の高圧注入しても液漏れを生じない、いわゆる高耐圧タイプのものとなっている。つまり、この実施例の薬液注入具は、造影剤投与を行う造影CTにおける造影剤の自動注入ポートとして用いることが可能である。そして、この実施例の薬液注入具1aでは、造影性部材15は、造影剤投与を行う造影CTを連想可能なマークからなる切り抜き部15aを備えている。具体的には、切り抜き部15aは、文字「C」からなっている。なお、切り抜き部は、「CT」であってよい。そして、このような造影CTを連想可能なマークからなる切り抜き部15aが造影部材15に設けられていることにより、X線造影により、造影CTを連想可能なマークを認識可能であり、皮下に埋設されている薬液注入具が、造影CTにおける造影剤の自動注入ポートとして使用可能であることを認識できる。」

「[0035] なお、この薬液注入具1aでは、造影性部材15は、排出ポート5側に欠損部を有する薄板リング状部材となっている。リング状の上部部材3と底部部材2間に形成された間隙部に、単に収納されたものとなっているが、これに限定されるものではなく、例えば、底部部材2の上面に埋設したもの、底部部材の下面に埋設したもの、上部部材の底面に埋設したものであってもよい。
[0036] さらに、この実施例の薬液注入具1aでは、造影性部材15は、反転認識機能を備えている。具体的には、造影性部材15は、上述した切り抜き部15aを上述した幅広部分に備えている。さらに、切り抜き部15aは、左右非対称のものとなっている。切り抜き部15aは、上述したように、この実施例では、「C」字状となっている。シール部材4(穿刺可能部)が上側に位置する正常な留置形態では、X線造影において、図13に示すように、文字「C」を認識可能である。そして、造影性部材15が反転し、シール部材4(穿刺可能部)が下側に位置する状態では、図15の背面図に示すように、左右非対称マーク(この実施例では、「C」)が反転し、文字「C」と認識できない状態となる。よって、このような反転認識機能15aを設けることにより、X線造影により、薬剤注入具1aの反転(裏返り)を確認可能である。
[0037] 造影性部材15の形成部材としては、金、プラチナ、タングステン、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、金、プラチナなどの高X線造影製金属メッキを有する金属板、造影性物質(金、プラチナ、タングステンなどの金属粉末、硫酸バリウム、次炭酸ビスマスなどの造影性物質)を添加した樹脂板などが使用できる。特に、金、プラチナ、タングステン、チタン、チタン合金からなる金属板、金もしくはプラチナのメッキを有する金属板が好ましい。」

「[請求項1]リング状の上部部材と前記上部部材の底面を閉塞する底部部材とからなる注入具本体と、前記上部部材と前記底部部材間に収納され、前記上部部材の開口を閉塞し、かつ、前記注入具本体内に薬液流入空間を形成するシール部材と、前記薬液流入空間と連通する排出ポートとを備える皮下埋め込み型薬液注入具であって、
前記底部部材は、底板部と、前記底板部より、突出する環状壁部と、前記環状壁部の上面の外縁側部分により形成されたシール部材周縁部押圧部と、前記環状壁部の上面の内縁側部分に形成され、上方に突出し、内径が上方に向かって拡径する環状傾斜面を有し、かつ前記シール部材内に刺入可能な環状エッジ部とを備え、
前記リング状の上部部材は、前記シール部材の中央部が突出する状態にて前記シール部材を収納する本体部と、前記本体部の開口部より内部に突出し、前記シール部材の周縁部を押圧するため環状突出部とを備え、
前記シール部材は、本体部と、前記本体部の周縁部に形成され、前記上部部材の前記環状突出部の下面と前記底部部材の環状壁部の上面により押圧されるためのフランジ部と、前記フランジ部より下部に形成された底部部材内挿入部と、前記底部部材内挿入部の下面周縁部に形成され、端部に向かって肉薄となるスカート状突出部とを備え、
前記シール部材は、前記フランジ部の上面側が前記上部部材の環状突出部により押圧され、前記フランジ部の下面側の外縁部が前記底部部材の前記環状壁部の上面の前記シール部材周縁部押圧部により押圧されるとともに、前記フランジ部の下面側の内縁部に、前記底部部材の前記環状壁部の前記環状エッジ部が刺入しており、前記シール部材は、前記上部部材と前記底部部材間による強圧縮と、前記底部部材の前記環状エッジ部の刺入により変形し、前記フランジ部の高さが減少し、かつ前記底部部材内挿入部の高さが増加し、さらに、前記スカート状突出部が減少するとともに、前記底部部材内挿入部の下端外周面が、前記底部部材の前記環状壁部の内面に密着していることを特徴とする皮下埋め込み型薬液注入具。」

引用文献1には次の図が示されている。
[図5]


[図9]

[図10]


[図13]

[図14]


[図15]


(2)認定事項
ア 段落[0031]の記載を踏まえて図14をみると、リング状の上部部材3と上部部材3の底面を閉塞する底部部材2とからなる注入具本体が、薬液流入空間10を包含することが看取できる。

イ 図13及び図14から、上部部材3及び底部部材2は互いに接触してシール部材4を挟み込む凹部を形成することが看取できる。

ウ 段落[0031]の記載を踏まえて図13〜15をみると、造影部材15は、リング状の上部部材3と上部部材3の底面を閉塞する底部部材2とからなる注入具本体の上面視において薬液流入空間10よりも外側の領域に設けられることが看取できる。

エ 段落[0031]及び[0035]の記載を踏まえて図5、図9、図10及び図14〜15をみると、造影部材15は、上部部材3のうちの開口部の開口面に平行な底部部材2との接触面および底部部材2のうちの前記開口面と平行な上部部材3との接触面で構成され上部部材3と底部部材2とが接触する接触領域において、上部部材3と底部部材2との間に形成された間隙部に、単に収納されていることが理解できる。

オ 上記エ及び段落[0035]の記載を踏まえて図5、図9、図10及び図13〜15をみると、上面視で前記接触領域は前記開口部を取り囲む、排出ポート5側に欠損部を有する、所定幅の環状をなし前記造影部材15が前記所定幅よりも小さな寸法で形成されて環状の前記接触領域の幅内に設けられていることが看取できる。

(3)引用発明
上記(1)の記載事項及び(2)の認定事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「薬液流入空間10を包含し、リング状の上部部材3と上部部材3の底面を閉塞する底部部材2とからなる注入具本体と、上部部材3と底部部材2間に収納され、上部部材3の開口を閉塞し、かつ、前記注入具本体内に薬液流入空間10を形成するシール部材4と、造影性物質である硫酸バリウムを添加した樹脂板を形成部材として、造影剤投与を行う造影CTを連想可能な文字『C』からなっている切り抜き部15aを備え、リング状の上部部材3と底部部材2間に形成された間隙部に、単に収納されたリング状の造影性部材15と、を備える皮下埋め込み型の薬液注入具1aであって、
注入具本体は、シール部材4の中央部が露出(突出)する状態にてシール部材4を収納する本体部31を備えるリング状の上部部材3と当該上部部材3の底面を閉塞する底部部材2とからなり、上部部材3及び底部部材2は互いに接触してシール部材4を挟み込む凹部を形成し、
造影性部材15は、リング状の上部部材3と底部部材2間に形成された間隙部に、単に収納された排出ポート5側に欠損部を有する薄板リング状部材となっており、
造影性部材15は、反転認識機能を備えており、具体的には、造影性部材15は、切り抜き部15aを備えており、切り抜き部15aは、『C』字状となっており、造影性部材15の形成部材としては、硫酸バリウムなどの造影性物質を添加した樹脂板が使用され、
造影部材15は、リング状の上部部材3と上部部材3の底面を閉塞する底部部材2とからなる注入具本体の上面視において薬液流入空間10よりも外側の領域であって、かつ上部部材3のうちの開口部の開口面に平行な底部部材2との接触面および底部部材2のうちの前記開口面と平行な上部部材3との接触面で構成され上部部材3と底部部材2とが接触する接触領域において、上部部材3と底部部材2との間に形成された間隙部に、単に収納されており、上面視で前記接触領域は前記開口部を取り囲む、排出ポート5側に欠損部を有する、所定幅の環状をなし前記造影部材15が前記所定幅よりも小さな寸法で形成されて環状の前記接触領域の幅内に設けられている、皮下埋め込み型の薬液注入具1a。」

2 引用文献3について
(1)記載事項
上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている(和訳は当審にて付した。以下同様である。)。
「[0004] It is desired to provide a venous access port assembly that provides for a radiologist, radiology technologist, nurse and ultimately a medical practitioner to be able to discern an important property of the port assembly after the port assembly has been implanted into a patient.」
(和訳)
「[0004] ポートアセンブリが患者内に移植された後に、放射線科医、放射線技師、看護士および最終的に医療従事者が、ポートアセンブリの重要な特性を識別することができる、静脈用アクセスポートアセンブリを提供することが望まれている。」

「[0025] A second embodiment of X-ray discernable indicia is shown in FIG. 13, and is utilized in the port assemblies of FIGS. 14 to 18. In FIG. 13, the indicia comprise a set of discrete indicia elements of radiopaque material, such as being stamped from a sheet of titanium. Again, as is preferred, the indicia comprise the alphabetical letters “C” and “T” and are utilized together as a set. In FIGS. 14 and 15, the discrete elements are embedded into the thickness of the bottom wall 204 of housing base 206, so that they would not be visible from below (see FIG. 14) even though the silicone overmolded skirt 208 is transparent. However, the discrete letters 202 would clearly be visible on an X-ray very similarly to the port assembly shown in FIG. 11. Another manner of using discrete letters 202 is depicted in FIGS. 16 to 18, in which the letters 202 are insert molded along the bottom surface 230 of housing base 232 and recessed thereinto, preferably. With this variant, the radiopaque material may be titanium or may be, for example, silicone material having barium sulfate filler. In this case the mirror-image of “CT” would be visible from below as depicted in FIG. 18 after the silicone overmolding of skirt 234 about the exterior of housing base 232.」
(和訳)
「[0025] X線識別可能なしるしの第2実施例を図13に示す。それは図14〜図18のポートアセンブリにおいて利用される。図13において、しるしは、チタンシートの型抜きなどの放射線不透過性材料の別個のしるし要素のセットを含む。この場合も、好ましいものとして、しるしは、アルファベット文字“C”と“T”を含み、セットとして共に利用される。図14及び図15において、別個の要素は、ハウジングベース206の底壁204の厚さ内に埋め込まれ、そのため、シリコーンオーバーモールドされたスカート208が透明体であっても、それらは下方から見ることができない(図14参照)。しかしながら、X線では、別個の文字202は、図11のポートアセンブリと非常に似たものとしてはっきりと見ることができる。別個の文字202の他の使用方法が、図16〜18に示されている。文字202は、ハウジングベース232の底面230に沿ってインサート成形されており、内部に凹設されることが好ましい。この実施態様においては、放射線不透過性材料はチタン又は例えば、硫酸バリウム充填剤を含むシリコーン材料であってもよい。この場合、ハウジングベース232の外側のスカート234のシリコーンオーバーモールディング後も、“CT”の鏡像を図18に示すように、下方から見ることができる。」

引用文献3には次の図が示されている。
FIG.13


FIG.14


FIG.15


FIG.16


FIG.17


FIG.18


(2)引用文献3に記載された技術的事項
上記(1)の記載事項から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「硫酸バリウム充填剤を含むシリコーン材料である放射線不透過材料の文字を含む、患者内に移植される静脈用アクセスポートアセンブリ。」

3 引用文献4について
(1)記載事項
上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「[0008] The present inventions are defined by the claims, and only the claims. As set forth in the claims, such inventions may include the optional elements of an access port for subcutaneous use in a patient. Such elements may include a needle-penetrable sealing septum for an access port. It may have, a first and second (and optionally more) elastomeric regions. Indicia may be embedded in the septum. Indicia may be formed in at least one of said regions, and medical imaging additive, such as for example, radiopacity additive, may be used to provide contrast between said regions to provide indicia. Such elements may include where two or more such regions are over-molded.」
(和訳)
「[0008] 本発明は、特許請求の範囲によって、かつ特許請求の範囲によってのみ定義される。特許請求の範囲に記載されたように、本発明は、患者の皮下での使用のためのアクセスポートの任意の要素を含むことができる。このような要素は、アクセスポートに針貫通可能な隔壁を含むことができる。これは、第1及び第2(及び必要に応じてそれ以上)のエラストマー領域を有していてもよい。しるしは、隔壁に埋め込まれてもよい。しるしは、前記領域の少なくとも1つに形成することができ、例えば、放射線不透過性添加剤のような医療用画像添加剤が、前記領域の間にしるしを提供するコントラストを提供するために使用されることができる。そのような要素は、2又はそれ以上のそのような領域がオーバーモールドされた部分を含むことができる。」

「[0029] The term “additive” means one or more ingredients blended, embedded, added or formed into and which increase contrast and/or opacity for medical imaging. By way of example only, and without limitation, this may include barium compounds, barium sulfate, iodine compounds, tungsten, titanium, palladium, other metals (particles (including powders) and otherwise), compounds and/or blends thereof, bubbles, particulate, combinations thereof, and otherwise.」
(和訳)
「[0029] 用語“添加剤”とは、混ぜられ、埋め込まれ、添加され又は形成された、医療用画像のコントラスト及び/又は不透明度を増大する1種以上の成分を意味する。一例としてのみであり、限定するものではないが、これは、バリウム化合物、硫酸バリウム、ヨウ素化合物、タングステン、チタン、パラジウム、他の金属(粒子(粉末を含む)及びその他)、それらの化合物及び/又は混合物、気泡、微粒子、それらの組合せ及びその他を含んでもよい。」

「[0048] The term “indicia” means a shape that is human and/or machine readable as symbolic of something, such as for example a number, letter, bar code, RFID, trademark, symbol, target and/or combination thereof. Indicia may be three dimension and/or essentially two-dimensional, and/or essentially two-dimensional but lying in a curved plane.」
(和訳)
「[0048] 用語“しるし”とは、人間及び/又は機械に何かの象徴として読み取り可能な形状、例えば数字、文字、バーコード、RFID、商標、記号、目標及び/又はそれらの組合せなどを意味する。しるしは、3次元及び/又は本質的に2次元、及び/又は本質的に2次元だが湾曲した平面内にあるものである。」

「[0089] FIG. 5D shows a version similar to FIG. 5A, except that indicia 36d is not integral with region 30d, but rather is separate. As illustrated in FIG. 5D, region 36d, which may comprise the indicia, is shown as a solid material, often an elastomeric region. For example, it may include radiopacity additive. Alternatively region 36d may lack, or have less, radiopacity additive or other attributes as compared to other regions, such as for example region 20d. Thus, for example, region 36d may lack radiopacity, whereas region 20d may have radiopacity, such as by an additive. When the indicia includes 36d, such indicia is shown in contact with region 30d and region 20d. It is also shown embedded, and indeed partially embedded in septum 103. Such is the case with indicia 36 as exemplified in FIG. 5A. Further still, indicia 36d may be, rather than a solid material (an elastomer or otherwise) simply a void (void, air, gas, or may comprise some other fluid such as a liquid). In such case, typically, it would be capped such as illustrated in FIGS. 5C and/or 5E. Thus, such void may be present while other regions, such as region 20d have a radiopacity additive.」
(和訳)
「[0089] 図5Dは、指標36が領域30dと一体化されるのではなく分離されていること以外は、図5Aと同様の形態を示している。図5Dに示すように、領域36dは、しるしを含んでもよく、固体材料、しばしばエラストマー領域として示されている。例えば、それは、放射線不透過性添加剤を含んでもよい。また、他の領域、例えば領域20dと比較して、領域36dは、放射線不透過性添加剤又は他の属性を欠いているか、より少なく有してもよい。したがって、例えば、領域36dは、放射線不透過性を欠いてもよく、領域20dが、例えば添加剤によって、放射線不透過性を有していてもよい。しるしが36dを含む場合、そのようなしるしは、領域30d及び領域20dに接触するように示されている。それはまた、隔膜103に埋め込まれ及び実際には部分的に埋め込まれることが示されている。そのようなものが、図5Aに例示されるようなしるし36の場合である。更に、指標36dは、固体材料(エラストマー又はその他)だけでなく、単に空隙(空隙、空気、気体又は液体などの他の流体を含んでもよい)であってもよい。このような場合、典型的には、図5C及び/又は5Eに示すようにキャップされている。このように、領域20dなどのそれ以外の領域が放射線不透過性添加剤を有することになるが、このような空隙が存在していてもよい。」

引用文献4には次の図が示されている。
Fig.5D


Fig.5G


Fig.9


(2)引用文献4に記載された技術的事項
上記(1)の記載事項から、引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「硫酸バリウムなどの放射線不透過性添加剤を含むエラストマーを文字の形状としたしるしを含む、患者の皮下での使用のためのアクセスポート。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「薬液流入空間10」は、引用発明が「皮下埋め込み型の薬液注入具1a」であって、外部から注入された薬液を貯留するものであることは明らかであるから、本願発明の「外部から注入された薬液を貯留する液溜まり部」に相当する。

イ 本願の願書に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)の段落【0011】に「・・・蓋体12は、基部14(図3)と共に包含部10を構成する・・・」と記載されいる。
そして、引用発明の「リング状の上部部材3」及び「上部部材3の底面を閉塞する底部部材2」も、引用文献1の図5及び図14の配置関係からみて、それぞれ蓋体及び基部ということができるから、引用発明の「リング状の上部部材3と上部部材3の底面を閉塞する底部部材2とからなる注入具本体」は、本願発明の「包含部」に相当する。
よって、上記アの相当関係も踏まえると、引用発明の「薬液流入空間10を包含し、リング状の上部部材3と上部部材3の底面を閉塞する底部部材2とからなる注入具本体」は、本願発明の「外部から注入された薬液を貯留する液溜り部を包含する包含部」に相当する。

ウ 引用発明の「上部部材3と底部部材2間に収納され、上部部材3の開口を閉塞し、かつ、前記注入具本体内に薬液流入空間10を形成するシール部材4」は、引用文献1の図14も併せみると、シール部材4が薬液流入空間10を覆うものといえるから、本願発明の「前記液溜り部を覆う隔膜部」に相当する。

エ 本願明細書の段落【0017】に「本実施形態では、図4(b)に示すように、基部14側の面42bに凹溝421を形成し、凹溝421に樹脂バインダに非金属部材を混入した充填部材423が充填されている。ここで、非金属部材としては、例えば、金属の酸化物、金属の化合物及びハロゲンの少なくとも1つを含むものとする。本実施形態では、金属の酸化物(MOx)として、例えば、酸化ビスマス(Bi2O3)が使用できる。金属塩としては、例えば、酸化ビスマス(BaSO4)が使用できる。・・・」と記載されていることを踏まえると、引用発明の「硫酸バリウム」は、本願発明の「非金属部材」に相当し、同様に、「造影性物質である」ことは「本体よりもX線の透過率が低い」ことに相当する。
また、引用発明の「造影剤投与を行う造影CTを連想可能な文字『C』からなっている切り抜き部15aを備え」ることは、本願発明の「留置型医療機器に関する文字、マーク及び図形の少なくとも一つを表す」ことに相当する。
以上を踏まえると、引用発明の「造影性物質である硫酸バリウムを添加した樹脂板を形成部材として、造影剤投与を行う造影CTを連想可能な文字『C』からなっている切り抜き部15aを備え、リング状の上部部材3と底部部材2間に形成された間隙部に、単に収納されたリング状の造影性部材15」は、本願発明の「前記本体よりもX線の透過率が低い非金属部材で構成されて留置型医療機器に関する文字、マーク及び図形の少なくとも一つを表す標識部」に相当する。

オ 引用発明の「皮下埋め込み型の薬液注入具1a」は、本願発明の「留置型医療機器」に相当する。
よって、上記ア〜エの相当関係も踏まえると、引用発明の「薬液流入空間10を包含し、リング状の上部部材3と上部部材3の底面を閉塞する底部部材2とからなる注入具本体と、上部部材3と底部部材2間に収納され、上部部材3の開口を閉塞し、かつ、前記注入具本体内に薬液流入空間10を形成するシール部材4と、造影性物質である硫酸バリウムを添加した樹脂板を形成部材として、造影剤投与を行う造影CTを連想可能な文字『C』からなっている切り抜き部15aを備え、リング状の上部部材3と底部部材2間に形成された間隙部に、単に収納されたリング状の造影性部材15と、を備える皮下埋め込み型の薬液注入具1aであ」ることは、「注入具本体」、「シール部材4」及び「造影性部材15」をまとめたものは本体といえるから、本願発明の「体内に留置される本体を有する留置型医療機器であって、前記本体は、外部から注入された薬液を貯留する液溜り部を包含する包含部と、前記液溜り部を覆う隔膜部と、前記本体よりもX線の透過率が低い非金属部材で構成されて留置型医療機器に関する文字、マーク及び図形の少なくとも一つを表す標識部と、を備え、」ることに相当する。

カ 引用発明の「上部部材3」は、引用文献1の図14の底部部材2との配置関係からみて、本願発明の「蓋体」に相当する。
また、引用発明の「シール部材4の中央部が露出(突出)する状態にてシール部材4を収納する本体部31を備えるリング状の上部部材3」は、「シール部材4の中央部が露出(突出)する状態」であって、引用文献1の図13及び14の記載も踏まえると、「上部部材3」が開口部を有することは明らかである。
よって、上記ウの相当関係も踏まえると、引用発明の「シール部材4の中央部が露出(突出)する状態にてシール部材4を収納する本体部31を備えるリング状の上部部材3」は、本願発明の「前記隔膜部を露出させる開口部を有する蓋体」に相当する。

キ 引用発明の「底部部材2」は、引用文献1の図14の上部部材3との配置関係からみて、本願発明の「基部」に相当する。
よって、上記ウ及びカの相当関係も踏まえると、引用発明の「上部部材3及び底部部材2は互いに接触してシール部材4を挟み込む凹部を形成」することは、本願発明の「前記蓋体及び前記基部は互いに接触して前記隔膜部を挟み込む凹部を形成」することに相当する。

ク 上記カ及びキの相当関係を踏まえると、引用発明の「注入具本体は、シール部材4の中央部が露出(突出)する状態にてシール部材4を収納する本体部31を備えるリング状の上部部材3と上部部材3の底面を閉塞する底部部材2とからなり、上部部材3及び底部部材2は互いに接触してシール部材4を挟み込む凹部を形成」することは、本願発明の「前記包含部は、基部と、前記隔膜部を露出させる開口部を有する蓋体と、を備え、前記蓋体及び前記基部は互いに接触して前記隔膜部を挟み込む凹部を形成」することに相当する。

ケ 上記エの相当関係も踏まえると、引用発明の「造影性部材15」が「間に形成された間隙部に、単に収納された」ことは、本願発明の「標識部」が「間に挟み込まれた」ことに相当し、同様に「薄板リング状部材」は「別の部材」に相当する。

コ 上記エ、カ及びケの相当関係を踏まえると、引用発明の「造影性部材15は、リング状の上部部材3と底部部材2間に形成された間隙部に、単に収納された排出ポート5側に欠損部を有する薄板リング状部材となって」いることは、本願発明の「前記標識部は、前記蓋体と前記基部との間に挟み込まれた別の部材であ」ることに相当する。

サ 上記エの相当関係を踏まえると、引用発明の「硫酸バリウムなどの造影性物質を添加した樹脂板」は、本願発明の「樹脂バインダに少なくとも前記非金属部材が混入されてなる混合物」に相当する。

シ 引用発明の「造影性部材15」は「薄板リング状部材となって」いるから、上記ケのとおり、本願発明の「別の部材」にも相当する。
また、引用発明の「反転認識機能を備えており、具体的には、造影性物材15は、切り抜き部15aを備えており、切り抜き部15aは、『C』字状となって」いることと、本願発明の「前記文字、マーク及び図形の少なくとも一つ」とは、「前記文字、マーク及び図形の少なくとも一つを表すもの」という点で共通する。
よって、上記エ及びサの相当関係も踏まえると、引用発明の「造影性部材15は、反転認識機能を備えており、具体的には、造影性物材15は、切り抜き部15aを備えており、切り抜き部15aは、『C』字状となっており、造影性部材15の形成部材としては、硫酸バリウムなどの造影性物質を添加した樹脂板が使用され」ることと、本願発明の「前記別の部材は、前記文字、マーク及び図形の少なくとも一つが、樹脂バインダに少なくとも前記非金属部材が混入されてなる混合物によって描かれて」いることとは、「前記別の部材は、前記文字、マーク及び図形の少なくとも一つを表すものが、樹脂バインダに少なくとも前記非金属部材が混入されてなる混合物によって描かれて」いる点で共通する。

ス 上記ア、イ、カ、ケ及びシの相当関係も踏まえると、引用発明の「造影部材15は、リング状の上部部材3と上部部材3の底面を閉塞する底部部材2とからなる注入具本体の上面視において薬液流入空間10よりも外側の領域であって、かつ上部部材3のうちの開口部の開口面に平行な底部部材2との接触面および底部部材2のうちの前記開口面と平行な上部部材3との接触面で構成され上部部材3と底部部材2とが接触する接触領域において、上部部材3と底部部材2との間に形成された間隙部に、単に収納されており、上面視で前記接触領域は前記開口部を取り囲む、排出ポート5側に欠損部を有する、所定幅の環状をなし前記造影部材15が前記所定幅よりも小さな寸法で形成されて環状の前記接触領域の幅内に設けられている」ことは、本願発明の「前記別の部材は、前記包含部の上面視において前記液溜り部よりも外側の領域であって、かつ前記蓋体のうちの前記開口部の開口面に平行な前記基部との接触面および前記基部のうちの前記開口面と平行な前記蓋体との接触面で構成され前記蓋体と前記基部とが接触する接触領域において、前記蓋体と前記基部との間に挟み込まれており、上面視で前記接触領域は前記開口部を取り囲む所定幅の環状をなし前記別の部材が前記所定幅よりも小さな寸法で形成されて環状の前記接触領域の幅内に設けられていること」に相当する。

以上によれば、本願発明と引用発明とは、
「体内に留置される本体を有する留置型医療機器であって、
前記本体は、外部から注入された薬液を貯留する液溜り部を包含する包含部と、前記液溜り部を覆う隔膜部と、前記本体よりもX線の透過率が低い非金属部材で構成されて留置型医療機器に関する文字、マーク及び図形の少なくとも一つを表す標識部と、を備え、
前記包含部は、基部と、前記隔膜部を露出させる開口部を有する蓋体と、を備え、前記蓋体及び前記基部は互いに接触して前記隔膜部を挟み込む凹部を形成し、
前記標識部は、前記蓋体と前記基部との間に挟み込まれた別の部材であって、
前記別の部材は、前記文字、マーク及び図形の少なくとも一つを表すものが、樹脂バインダに少なくとも前記非金属部材が混入されてなる混合物によって描かれており、
前記別の部材は、前記包含部の上面視において前記液溜り部よりも外側の領域であって、かつ前記蓋体のうちの前記開口部の開口面に平行な前記基部との接触面および前記基部のうちの前記開口面と平行な前記蓋体との接触面で構成され前記蓋体と前記基部とが接触する接触領域において、前記蓋体と前記基部との間に挟み込まれており、上面視で前記接触領域は前記開口部を取り囲む所定幅の環状をなし前記別の部材が前記所定幅よりも小さな寸法で形成されて環状の前記接触領域の幅内に設けられていることを特徴とする、留置型医療用機器。」である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
「別の部材」において「混合物によって描かれて」いる「前記文字、マーク及び図形の少なくとも一つを表すもの」が、本願発明は「前記文字、マーク及び図形の少なくとも一つ」であるのに対し、引用発明は「『C』字状」の「切り抜き部15a」である点。

第6 判断
(1)本願発明は「前記文字、マーク及び図形の少なくとも一つが」、「混合物によって描かれて」いるものであるところ、具体的にどのように描かれているかは特定されていないから、文字、マーク及び図形の少なくとも一つ(以下「文字等」ということもある。)が、文字等の周囲にある混合物によって空白として描かれているもの(いわゆる白抜き)や、文字等が、混合物自身の形状が文字等の形状に形成された混合物によって描かれているもなどを包含するものといえる。

(2)そして前者(いわゆる白抜き)については、引用発明も、「『C』字状」の「切り抜き部15a」が、C字状の切り抜き部15aの周囲にある「造影性物質を添加した樹脂板」(混合物)によって文字として描かれているものといえるから、上記相違点は実質的な相違点ではない。

(3)また後者(混合物自身の形状が文字等の形状に形成)については、例えば、上記「第4 2(2)」に示したとおり、引用文献3に「硫酸バリウム充填剤を含むシリコーン材料である放射線不透過材料の文字を含む、患者内に移植される静脈用アクセスポートアセンブリ。」が記載され、また、上記「第4 3(2)」に示したとおり、引用文献4にも「硫酸バリウムなどの放射線不透過性添加剤を含むエラストマーを文字の形状としたしるしを含む、患者の皮下での使用のためのアクセスポート。」が記載されているとおり、留置型医療機器において、混合物自身の形状を、文字の形状に形成することは、従来周知の技術である。
さらに、引用文献4の段落[0089]に「・・・図5Dに示すように、領域36dは、しるしを含んでもよく、固体材料、しばしばエラストマー領域として示されている。例えば、それは放射線不透過性添加剤を含んでもよい。また、他の領域、例えば領域20dと比較して、領域36dは、放射線不透過性添加剤又は他の属性を欠いているか、より少なくて有してもよい。したがって、例えば、領域36dは、放射線不透過性を欠いてもよく、領域20dが、添加剤によって、放射線不透過性を有していてもよい。・・・」と記載されるとおり、混合物を配置する領域を文字の部分とするか、文字の周囲の部分とするかは、当業者が必要に応じて適宜選択できる設計的事項といえる。
そうすると、引用発明の文字等を表すものとして、「『C』字状」の「切り抜き部15a」に換えて、上記引用文献3及び4に記載された周知技術を採用し、C字状の文字の部分を「造影性物質を添加した樹脂板」(混合物)で形成するとともに、その周囲の部分を造影性物質を欠く部材で形成し、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。

(4)また、本願発明の効果も、引用発明並びに上記引用文献3及び4に記載された周知技術から、当業者が予測し得た程度のものである。

(5)したがって、本願発明は引用発明並びに引用文献3及び4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 請求人の主張について
令和3年11月5日提出の意見書における請求人の主張について、以下検討する。
(1)請求人は「混合物によって文字等が描かれているとは、空白によって文字等が描かれていることを意味せず、その言葉どおり混合物が文字等の形状に形成されていることを意味しますので、ネガ・ポジを反転させて文字等を白抜きにした相補的形状にすることは含みません。そこで、明細書の段落0018の末尾を補正して、標識部40が文字等と相補的な形状となっていてもよいとする記載箇所を削除しました。」と主張する。
しかしながら、上記「第6(1)」で説示したとおり、本願発明においては「前記文字、マーク及び図形の少なくとも一つが、樹脂バインダに少なくとも前記非金属部材が混入されてなる混合物によって描かれており」としか特定されておらず、請求人が意見書で主張する「混合物が文字等の形状に形成されている」等の具体的な描かれ方は特定されていないから、依然として混合物によってネガ・ポジを反転させて文字等を白抜きにした相補的形状にすることをも包含するものと認められる。
また、請求人が主張する上記補正後の本願明細書の段落【0018】についても、補正前の「・・・また、非金属部材の標識部40は、・・・逆に文字等と相補的な形状となっていてもよい。なお、相補的な形状とは、例えば、非金属部材に文字等を型抜きし、これにX線を透過させることで文字等を白抜きにして示すものをいう。」なる記載は削除されたものの、補正後の「・・・また、非金属部材の標識部40は、自身が文字、図形等(以下、「文字等」)の形状を有するものであってもよい。」なる記載は、依然として一例を示す記載に留まるものであって、非金属部材の標識部40が、自身が文字等の形状を有するものであることを定義するものでもない。
よって、上記請求人の主張は採用することができない。
なお、請求人の主張どおり解釈したとしても、本願発明が引用発明並びに引用文献3及び4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであることは、上記「第6(3)」に説示したとおりである。

(2)さらに請求人は「引用文献4の発明は凹溝にX線不透過の混合物を充填して『ポジ型』で文字を表示する技術ではありますが、この凹溝は本体の基部(region 20d)に彫り込んで形成されたものであり、本願発明のように蓋体や基部とは別の部材にX線不透過の混合物で『ポジ型』で文字を描くことは引用文献4には開示も示唆もされていません。」と主張する。
しかしながら、引用発明は「造影性部材15」が「薄板リング状部材となっており」、これは本願発明の「別の部材」に相当するものである。
そして、「造影性部材15」が備える「『C』字状」の「切り抜き部15a」に換えて、上記引用文献3及び4に記載された周知技術を採用することが、当業者にとって容易であることは、上記「第6(3)」に説示したとおりである。
よって、上記請求人の主張は採用することができない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに引用文献3及び4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-09 
結審通知日 2022-03-15 
審決日 2022-03-29 
出願番号 P2016-246541
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A61M)
P 1 8・ 121- WZ (A61M)
P 1 8・ 113- WZ (A61M)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 佐々木 一浩
木村 立人
発明の名称 留置型医療用機器  
代理人 右田 俊介  

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