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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1384741
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-02 
確定日 2022-05-19 
事件の表示 特願2020− 63354「反射防止フィルム積層体及びそれを備える物品」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年10月11日出願公開、特開2021−162687〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2020−63354号(以下「本件出願」という。)は、令和2年3月31日を出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和2年 8月17日付け:拒絶理由通知書
令和2年10月16日付け:意見書
令和2年10月16日付け:手続補正書
令和2年10月29日付け:拒絶査定
令和3年 2月 2日付け:審判請求書
令和3年 2月 2日付け:手続補正書
令和3年11月10日付け:拒絶理由通知書
令和4年 1月13日付け:手続補正書
令和4年 1月13日付け:意見書

2 本願発明
本件出願の請求項1〜請求項5に係る発明は、令和4年1月13日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1〜請求項5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「 第1面と該第1面に対して裏側の面である第2面とを有する第1透明基材と、
前記第1面上に順に設けられたハードコート層、無機多層膜層、防汚層を少なくとも含む反射防止層と、
前記第2面上に設けられた粘着層と、を備え、
前記無機多層膜層はそれぞれスパッタリング膜である低屈折率材料層と高屈折材料層の積層体であり、
前記粘着層は、二層の粘着剤層と、前記二層の粘着剤層に挟持され、前記二層の粘着剤層のそれぞれに直接接着する第2透明基材とからなり、
標準光源D65による波長380nm〜780nmの光を入射角5°で入射させた際の反射率Yが0.8%以下であり、かつ、
直径8mmの円錐状プローブを、突き刺し試験速度500mm/minで押し付けた場合の破断力が5.7N以上であり、
前記第1透明基材はプラスチックフィルムであり、
前記第2透明基材が厚さ12μm未満のPETフィルムであり、且つ粘着剤層の厚さが第2透明基材の厚さより大であり、
厚みが170μm以下である、反射防止フィルム積層体。」

3 拒絶の理由
令和3年11月10日付け拒絶理由通知書において当合議体が通知した拒絶の理由は、概略以下のとおりである。
●理由1(進歩性
本件出願の請求項1〜請求項7に係る発明は、本件出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(引用例等一覧)
引用例1:特開平10−86264号公報
引用例2:国際公開第2017/010483号
引用例3:特開2019−28364号公報
引用例4:特開2004−126220号公報
引用例5:特開2005−178173号公報
引用例6:特開2011−209512号公報
引用例7:特開2019−18393号公報
引用例8:“Standard Test Method for Index Puncture Resistance of Geomembranes and Related Products1”,[online],2008年2月4日作成,2010年7月30日更新,[令和3年10月27日検索],インターネット<URL:http://stormsolutionsusa.com/ASTM/ASTM%20D4833-07.pdf>
引用例9:今泉繁良,外3名,“遮水シートの突き刺し抵抗実験”,
ジオシンセティックス論文集,第16巻(2001.12),p.191-198,[online],2009年7月9日作成,2009年9月30日更新,[令和3年10月27日検索],インターネット<https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcigsjournal1998/16/0/16_0_191/_pdf>
引用例10:特開2007−328092号公報
引用例11:特開2015−171770号公報

第2 当合議体の判断
1 理由1(進歩性)について
(1) 引用例の記載及び引用発明
ア 引用例1の記載及び引用発明
令和3年11月10日付け拒絶理由通知書において当合議体が通知した拒絶の理由において引用された、引用例1(特開平10−86264号公報)は、本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある(当合議体注:下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。以下、同様。)。
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】フイルムの表面に反射防止層が施されていることを特徴とするガラス飛散防止フイルム。
【請求項2】反射防止層が蒸着法により作成された、1層又はこれらを組み合わせた多層構成である請求項1のガラス飛散防止フイルム。
・・・略・・・
【請求項5】請求項1ないし4のいずれか一項に記載のガラス飛散防止フイルム層を表面に有するガラス。」

(イ) 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築物や電車や乗用車等のドアガラスや窓ガラス等に用いられる、地震等の天災による災害時の衝撃、あるいは人災による衝撃によって破壊されるガラスの飛散を防止するフイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】ガラスの飛散防止フイルムとしては、例えば基材にポリエステル等のフイルム支持体を使用し、ガラスへの貼付側にアクリル系粘着剤を10〜20μm塗工、反対側にはガラスへフイルムを貼付する際に使用するゴムヘラによる殺傷を保護する目的等でUV樹脂等のハードコート剤を3〜5μm塗工したものが挙げられる。ガラスの飛散防止性能は、使用する粘着剤のガラス面との接着強度に依存することが解っているが、接着強度が高すぎた場合は再剥離性が低くなり、また再貼付の際の糊残りが多くなる欠点が出てくるので適切な粘着剤を選定する必要がある。
【0003】又、飛散防止フイルムはガラスへ貼付して使用する目的からすると、より透明度が高いことが望ましく、貼付した向こう側がより鮮明に見える事が要求されている。
・・・略・・・
【0004】
【発明の解決しようとする課題】本発明は、ガラスの飛散防止フイルムを貼付した際に、外光や蛍光灯による反射を防止し、貼付した向こう側をより鮮明に見やすくするガラス飛散防止フイルムを提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記問題点について鋭意検討を重ねた結果、飛散防止フイルムの表面層に反射防止層を設けることによって、該フイルムを貼付したガラスの向こう側をより鮮明に見やすくすることが出来ることを見いだし、本発明に至った。
【0006】本発明は、上記知見に基づいて完成されたものである。即ち本発明は、(1)フイルムの表面に反射防止層が施されていることを特徴とするガラス飛散防止フイルム、(2)反射防止層が蒸着法により作成された、1層又はこれらを組み合わせた多層構成である請求項1のガラス飛散防止フイルム、(3)反射防止層が塗工法により作成された、1層又はこれらを組み合わせた多層構成である請求項1記載のガラス飛散防止フイルム、(4)反射防止層が、反応性のフッ素化合物と、それに反応可能な化合物との反応によって生成したフッ素化合物によって形成された、請求項1記載のガラス飛散防止フイルム、(5)(1)ないし(4)のガラス飛散防止フイルム層を表面に有するガラス、に関する。
・・・略・・・
【0009】反射防止層を形成する方法としては、蒸着法の場合は例えばMgF2またはSiO2等の低屈折率の物質を1層、または基板側より、TiO2またはZrO2等の高屈折率の物質とMgF2またはSiO2等の低屈折率の物質を複数層、一般の蒸着装置により公知の方法で支持体であるPETフイルム上に所定の厚さに蒸着させることによって得られる。ここで所定の膜厚とは、薄膜の干渉によって反射防止効果を発現するのに必要な厚さであって、例えば、1層で反射防止を行う場合、その厚さは膜内に入射する目的とする光の波長の1/4となるようにすることが最も好ましく、具体的には可視光領域において0.1μm程度である。この場合ハードコート性を付与するため予め紫外線硬化樹脂等を用いて支持体上にハードコート層を3〜5μm塗工、硬化せしめた上に蒸着しても何等差し支えがない。
・・・略・・・
【0015】反射防止層を形成せしめた後、支持体の反対側にアクリル樹脂等の粘着剤を公知の塗工方法によって塗工、乾燥せしめ、10〜20μmの粘着層を形成することによりガラスの低反射飛散防止フイルムを作成出来る。この場合の接着強度は160〜1000g/cmの範囲、好ましくは500〜800g/cmの範囲に設計する必要がある。範囲以下では充分な飛散防止性能を発揮できず、以上では剥離の際の糊残りが劣り、飛散防止フイルムとしては大きな欠点が生じる。
【0016】更に本発明に用いる低反射飛散防止フイルムの支持体としてはフイルムの引張強さが4Kgf/10mm以上及びフイルムの可視光線の透過率が30%以上の光学特性の性能を有していれば、いかなるものであっても良い。そのような特性を有するフイルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル・・・略・・・等の樹脂からなるフイルムを挙げることが出来る。さらに好ましくはポリエステル、ポリカーボネートのフイルムを挙げることが出来る。
・・・略・・・
【0018】
【実施例】次に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例が本発明を限定するものでない。
【0019】参考例
反射防止層を有さないガラス飛散防止フイルム(A)
50μm易接着PETフイルム(東洋紡(株)製A−4300)の片側にカヤノバーFOP−1200(日本化薬(株)製UVハードコート剤)を紫外線照射による硬化後の膜厚が4μmになるようにグラビアコーターを用いて塗工、硬化せしめハードコート層を得た。次いで該フイルムの反対面にアクリル系粘着剤SKダイン906(宗研化学(株)製アクリル粘着剤)を乾燥後の膜厚が15μmになるようにコンマコーターを用いて塗工、乾燥し、巻き取り時に25μmのPET製セパレ−タ−を粘着層に貼付せしめガラスの飛散防止フイルムを作成した。得られたガラス飛散防止フィルムの性能を表1に示した。
【0020】実施例2
蒸着法によるガラス飛散防止フイルム(B)の製造
50μm易接着PETフイルム(東洋紡(株)製A−4300)の片側にカヤノバーFOP−1200(日本化薬(株)製UVハードコート剤)を紫外線照射による硬化後の膜厚が4μmになるようにグラビアコーターを用いて塗工、硬化せしめハードコート層を得た。次いで該フイルムのハードコート層上にハードコート層側より、SiO2、ZrO2、TiO2、SiO2を順次、蒸着装置を用いて厚さ0.4μmの反射防止層を形成せしめた。次いで該フイルムの反対面に(A)フイルムと同様の方法により粘着層をもうけることによりガラスの飛散防止フイルムBを作成した。得られた本発明の反射防止層つきのガラス飛散防止フィルムの性能を表1に示した。
【0021】実施例3
塗工法によるガラス飛散防止フイルム(C)の製造
・・・略・・・次いで該フイルムの反対面にAフイルムと同様の方法により粘着層をもうけることによりガラスの飛散防止フイルムCを作成した。得られた本発明の反射防止層つきのガラス飛散防止フィルムの性能を表1に示した。
・・・略・・・
【0023】なお、表1における飛散防止性能試験は次のようにして行った。即ち、実施例で作成したフイルムをA−4判の大きさで厚み5mmのフロート板ガラスに貼付して試験サンプルを作成、4日後に試験を実施。高さ10cmのA−4の木枠(縁の厚みが5mm)上にフイルム面が上になるようサンプルをセットし、1mの高さより1Kgの鉄球をサンプルの中央に当たるように落下させ、飛散したガラスの重量ガラスを測定する。飛散防止率は以下の式により算出した。
飛散防止率(%)=(1−飛散したガラスの重量/試験前のガラスの重量)×100
【0024】
【表1】
表1:ガラスの飛散防止フイルムの性能
反射率 可視光線透過率 飛散防止性能
(550nm) (飛散防止率)
比較例 4.8% 88.7% 99%以上
実施例1 0.3% 90.8% 99%以上
実施例2 1.1% 90.1% 99%以上
【0025】この表から、本発明の反射防止層の設けられたガラス飛散防止フィルムは、反射率が低く、可視光線透過率が優れたガラスの飛散防止フイルムであることが判る。
【0026】
【発明の効果】本発明は、ガラスの飛散防止性能を落とすことなく、フイルムの表面に反射防止層を設けることにより外光や蛍光灯からの反射を防止することによりより安全性を高めた低反射のガラス飛散防止フィルムを提唱するものである。」

イ 引用発明
(ア) 引用例1の【0004】によれば、「本発明」の【発明の解決しようとする課題】は、「ガラスの飛散防止フイルムを貼付した際に、外光や蛍光灯による反射を防止し、貼付した向こう側をより鮮明に見やすくするガラス飛散防止フイルムを提供するものである」ところ、【0020】には、「実施例2」(「蒸着法によるガラス飛散防止フイルム(B)の製造」)の製造方法により、「ガラスの飛散防止フイルムBを作成した」ことが記載されている。
また、同【0020】によれば、「実施例2」においては、「次いで該フイルムの反対面に(A)フイルムと同様の方法により粘着層をもうけることによりガラスの飛散防止フイルムBを作成した」と記載されているところ、【0019】には、「参考例」の「反射防止層を有さないガラス飛散防止フイルム(A)」について、「該フイルムの反対面にアクリル系粘着剤SKダイン906(宗研化学(株)製アクリル粘着剤)を乾燥後の膜厚が15μmになるようにコンマコーターを用いて塗工、乾燥」すると記載されている。

(イ) 【0019】、【0020】及び【0021】によれば、参考例、実施例2及び実施例3においてそれぞれ「得られた」「ガラス飛散防止フィルムの性能を表1に示した」とされるところ、【0024】【表1】の「表1:ガラスの飛散防止フイルムの性能」には、「比較例」、「実施例1」及び「実施例2」の「反射率(550nm)」、「可視光線透過率」及び「飛散防止性能(飛散防止率)」が示されている。そうすると、両者の対応関係からみて、【0024】の「表1」「実施例1」及びその性能が、【0020】の「実施例2」で「得られた」「反射防止層つきの」「ガラス飛散防止フイルムB」及びその「性能」に対応していると理解できる。
また、「表1における飛散防止性能試験」及び「飛散防止率」は、【0023】に記載の定義によるものである。

(ウ) 以上勘案すると、引用例1には、「実施例2」の「蒸着法によるガラス飛散防止フイルム(B)の製造」に記載の製造方法により「作成」された「反射防止層つきの」「ガラス飛散防止フイルムB」の発明(以下「引用発明」という。)として、次の発明の記載されているものと認められる。
「 50μm易接着PETフィルム(東洋紡(株)製A−4300)の片側にカヤノバーFOP−1200(日本化薬(株)製UVハードコート剤)を紫外線照射による硬化後の膜厚が4μmになるようにグラビアコーターを用いて塗工、硬化せしめハードコート層を得て、次いで該フィルムのハードコート層上にハードコート層側より、SiO2、ZrO2、TiO2、SiO2を順次、蒸着装置を用いて厚さ0.4μmの反射防止層を形成せしめ、次いで該フィルムの反対面にアクリル系粘着剤SKダイン906(宗研化学(株)製アクリル粘着剤)を乾燥後の膜厚が15μmになるようにコンマコーターを用いて塗工、乾燥して粘着層を設けることにより、作成された、反射防止層付きのガラス飛散防止フィルムBであって、
反射率(550nm)は0.3%、可視光線透過率は90.8%、下記の定義による飛散防止性能(飛散防止率)は99%以上である、
反射防止層付きのガラス飛散防止フィルムB。
(飛散防止性能(飛散防止率))
作成したフィルムをA−4判の大きさで厚み5mmのフロート板ガラスに貼付して試験サンプルを作成、4日後に試験を実施。高さ10cmのA−4の木枠(縁の厚みが5mm)上にフィルム面が上になるようサンプルをセットし、1mの高さより1Kgの鉄球をサンプルの中央に当たるように落下させ、飛散したガラスの重量ガラスを測定する。飛散防止率は以下の式により算出した。
飛散防止率(%)=(1−飛散したガラスの重量/試験前のガラスの重量)×100」
(当合議体注:引用発明においては、「フイルム」及び「フィルム」を、「フィルム」に統一して記載している。また、「反射防止層つき」を「反射防止層付き」と記載し、「粘着層をもうける」を「粘着層を設ける」と記載している。)

(2) 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 「第1透明基材」、「ハードコート層」及び「無機多層膜層」
(ア) 引用発明の「反射防止層付きのガラス飛散防止フィルムB」は、「50μm易接着PETフィルム」(「東洋紡(株)製A−4300」)「の片側に」、「膜厚が4μm」の「ハードコート層」を形成し、「ハードコート層」上に「SiO2、ZrO2、TiO2、SiO2を順次、蒸着装置を用いて厚さ0.4μmの反射防止層を形成」し、「該フィルムの反対面に」、「膜厚が15μm」の「アクリル系粘着剤」からなる「粘着層」を形成したものである。

(イ) 技術常識及びその材質、厚みから、引用発明の「50μm易接着PETフィルム」は、プラスチック(フィルム)からなる透明な基材ということができる(透明性については、引用発明の「可視光線透過率は90.8%」であることからも理解できる。)。
そうすると、引用発明の「50μm易接着PETフィルム」は、本願発明の「第1透明基材」に相当する。
また、引用発明は、本願発明の、「前記第1透明基材はプラスチックフィルムであ」るとの要件を具備する。
さらに、引用発明の「50μm易接着PETフィルム」の「片側」の面及び「該フィルムの反対」側の「面」を、第1面及び第1面に対して裏側の面である第2面に対応させることは任意である。そうすると、引用発明の「50μm易接着PETフィルム」は、本願発明の「第1透明基材」の、「第1面と該第1面に対して裏側の面である第2面とを有する」との要件を具備するといえる。

(ウ) 上記(ア)の引用発明の積層構造からみて、引用発明においては、「50μm易接着PETフィルム」の「片側」の面上に、「ハードコート層」及び「反射防止層」がこの順で設けられていると理解できる。
また、上記(ア)より、引用発明の「反射防止層」は、「ハードコート層」上に「SiO2、ZrO2、TiO2、SiO2を順次」「蒸着」したものと理解できる。
そうすると、その材料からみて、引用発明の「反射防止層」は、無機の多層膜層である。また、材料から理解される屈折率の大小関係から、引用発明の「反射防止層」は、低屈折率材料(SiO2)の層と高屈折材料層(ZrO2及びTiO2)の積層体であるといえる。
してみると、本願発明の「ハードコート層」及び「反射防止層」は、それぞれ本願発明の「ハードコート層」及び「無機多層膜層」に相当する。
さらに、引用発明は、本願発明の、「前記無機多層膜層は」「低屈折率材料層と高屈折材料層の積層体であり」との要件を具備する。

イ 「反射防止層」
技術常識から、引用発明の「50μm易接着PETフィイルム」の「片側」の面上に、「ハードコート層」及び「反射防止層」がこの順に設けられた構造(上記ア(ウ))を、反射を防止する層と理解できる。
そうすると、引用発明の「ハードコート層」及び「反射防止層」がこの順に設けられた構造は、本願発明の「反射防止層」に相当する。
また、引用発明の「ハードコート層」及び「反射防止層」がこの順に設けられた構造と、本願発明の「反射防止層」は、上記ア(イ)〜(ウ)より、「前記第1面上に順に設けられたハードコート層、無機多層膜層」「を少なくとも含む」点において共通する。

ウ 「粘着層」
(ア) 上記ア(ア)の引用発明の積層構造からみて、引用発明においては、「該フィルムの反対面」に、「膜厚が15μm」の「アクリル系粘着剤」からなる「粘着層」が設けられていると理解できる。
そうすると、上記ア(イ)より、(引用発明の「粘着層」は、本願発明の、「前記第2面上に設けられた」とされる、「粘着層」に相当する。

エ 「反射防止フィルム積層体」
引用発明の反射防止層付きのガラス飛散防止フィルムB」の「反射率(550nm)は0.3%」である。
そうすると、上記ア〜ウより、引用発明の「ガラス飛散防止フィルムB」は、本願発明の「反射防止フィルム積層体」ということができる。
また、引用発明は、本願発明の、「第1透明基材と」、「反射防止層と」、「粘着層と、を備え」との要件を具備する。
さらに、各層の厚みから、引用発明の厚みを、69.4μm(=0.4(μm)+4(μm)+50(μm)+15(μm))と求めることができる。
そうすると、引用発明は、本願発明の、「厚みが170μm以下である」との要件を具備する。

(3) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と、引用発明は、次の構成で一致する。
「第1面と該第1面に対して裏側の面である第2面とを有する第1透明基材と、
前記第1面上に順に設けられたハードコート層、無機多層膜層を少なくとも含む反射防止層と、
前記第2面上に設けられた粘着層と、を備え、
前記無機多層膜層は低屈折率材料層と高屈折材料層の積層体であり、
前記第1透明基材はプラスチックフィルムであり、
厚みが170μm以下である、反射防止フィルム積層体。」

イ 相違点
本願発明と、引用発明は、以下の点で相違、あるいは一応相違する。
(相違点1)
「反射防止層」が、本願発明は、「前記第1面上に順に設けられたハードコート層、無機多層膜層、防汚層を少なくとも含」み、「前記無機多層膜層」の「低屈折率材料層と高屈折材料層」「はそれぞれスパッタリング膜である」のに対して、引用発明は、「防汚層」を含んでおらず、また、「SiO2、ZrO2、TiO2、SiO2を」「蒸着装置を用いて」「形成せしめ」ている点。

(相違点2)
第2面上に設けられた粘着層が、本願発明では、「二層の粘着剤層と、前記二層の粘着剤層に挟持され、前記二層の粘着剤層のそれぞれに直接接着する第2透明基材とからなり」、「前記第2透明基材が厚さ12μm未満のPETフィルムであり、且つ粘着剤層の厚さが第2透明基材の厚さより大であ」るのに対して、引用発明は、そのようなものではない点。

(相違点3)
本願発明は、「標準光源D65による波長380nm〜780nmの光を入射角5°で入射させた際の反射率Yが0.8%以下であ」るのに対して、引用発明は、そのようなものであるかどうか分からない点。

(相違点4)
本願発明は、「直径8mmの円錐状プローブを、突き刺し試験速度500mm/minで押し付けた場合の破断力が5.7N以上であ」るのに対し、引用発明は、そのようなものであるかどうか分からない点。

(4) 判断
ア 相違点2〜相違点4について
事案に鑑み相違点2〜相違点4をまとめて検討する。
(ア) 令和3年11月10日付け拒絶理由通知書において当合議体が通知した拒絶の理由において引用された、引用例2(国際公開第2017/010483号)の[0002]、[0007]〜[0009]、[0012]〜[0019](第1実施形態)、[0021]〜[0024](第2実施形態)、[0035]〜[0042]、[図1]、「図2」及び[図6]等には、ガラスの破片の飛散を防止し、衝突した小飛来物の貫通を抑制することができる飛散防止フィルム([0002]、[0007])について、
[A]第1の実施形態([図1])の「飛散防止フィルム10」を、第1基材11と、第1粘着層21により構成すること、第1基材11の厚みは、200μm以上が望ましいが、第1粘着層21の剥離力を適宜に調整することにより、100μm程度とすることもできること([0014]、[0015])、
[B]第1粘着層21としては、JIS K6854−2に規定の180度剥離試験によるガラス板に対する剥離力(剥離強度)が、20N/25mm幅以上30N/25mm幅以下の範囲内となる粘着材が適用されること、剥離力が20N/25mm幅以上30N/25mm幅以下の範囲内となる強粘着層となると、小飛来物の衝突により破損したガラス破片をより多く包み込むことができ、ガラス破片による第1基材11の突き刺しが抑制されるため、衝突した小飛来物の耐貫通性をより向上させることができること([0016]、[0019])、
[C]第1基材11及び第1粘着層21を含む総厚は、100μm以上300μm以下の範囲に設定されること、飛散防止フィルム10の総厚が100μm未満であると、衝撃に対する強度が不足して、小飛来物の貫通を防げないことがあること、飛散防止フィルム10の総厚(図1、図2の符号t)を100μm以上300μm以下の範囲に設定することが望ましいことは、第2の実施形態のように、飛散防止フィルム10Aにおいて、第1基材11、第1粘着層21、第2基材12及び第2粘着層22を備えた層構成とした場合も同様であること([0017])、
[D]飛散防止フィルム10において、第1基材11と第1粘着層21との厚み比は、100:10以上100:40以下の範囲に設定されること、第1基材11と第1粘着層21との厚み比は、100:10を下回ると、第1粘着層21がガラス破片を包み込む効果が乏しくなるため、ガラス破片による第1基材11の突き刺しにより、小飛来物が貫通しやすくなること、第1基材11と第1粘着層21との厚み比が100:40を上回ると、飛散防止フィルム10の平坦性が悪くなること、したがって、飛散防止フィルム10の総厚を100μm以上300μm以下の範囲とし、第1基材11と第1粘着層21との厚み比を100:10以上100:40以下の範囲に設定することにより、衝突した小飛来物の耐貫通性を向上させることができること([0018])、が記載されている。
また、引用例2には、
[E]第2の実施形態([図2])の「飛散防止フィルム10A」を、厚み方向の最表面から第1基材11、第1粘着層21、第2基材12及び第2粘着層22を配置することにより構成すること、第2基材12及び第2粘着層22としては、第1実施形態の第1基材11及び第1粘着層21と同じ材料を適用することができること([0022])、
[F]第1基材11、第1粘着層21、第2基材12及び第2粘着層22を含む膜厚を100μm以上300μm以下とすること、第1基材11及び第2基材12の合計の厚みと、第1粘着層21及び第2粘着層22の合計の厚みとの厚み比を100:10以上100:40の範囲に設定すること、第1基材11及び第2基材12の複数の基材を備えた層構成の場合、第1粘着層21及び第2粘着層22の剥離力は、20N/25mm幅以下であってもよいこと([0023])、
[G]第1粘着層21の剥離力(粘着力)を第2粘着層22の剥離力(粘着力)よりも相対的に小さくすることにより、ガラス本体2側に配置された強粘着層である第2粘着層22によって、小飛来物の衝突により破損したガラス破片をより多く包み込むことができ、また、弱粘着層である第1粘着層21は、より柔軟性が高まるため、ガラス破片が第1基材11に達した場合に、第1基材11を第2基材12とは独立して撓ませることができるため、第1基材11において、ガラス破片の慣性力による衝撃を吸収させることができること([0024])、が記載されている。
さらに、引用例2の図6には、第2の実施形態と同じ層構成を備えているものの、厚み比が100:43で、100:10以上100:40以下の範囲から外れている点が実施例1、3、5と異なる([0038])、「比較例2」について、「層構成」が、基材A(第1基材11)(100μm)/粘着a(第1粘着層21)(25μm)/基材B(第2基材12)(16μm)/粘着b(第2粘着層22)(25μm)であり、「総厚」が「166μm」であり、粘着a(第1粘着層21)及び粘着b(第2粘着層22)の「剥離強度(N/25mm)」がそれぞれ「11」であり、「鋼球227g 高さ3.5m」とする「落球試験」結果が「×:鋼球が貫通する。」であることが示されている。
(当合議体注:引用例2の[図1]、[図2]及び[図6]は、以下のものである。
[図1]

[図2]

[図6]



(イ) 引用発明のガラス飛散防止フィルムの改良、設計変更にあたっては、当業者は、同じ技術分野に属する引用例2を参考にできるところ、引用例2の上記(ア)の記載に接した当業者は、第2の実施形態の飛散防止フィルム10Aについて、総厚tを100μm以上300μm以下とし、厚み比(基材:粘着層)を100:10以上100:40の範囲に設定すれば、衝突した小飛来物の耐貫通性を向上することができる([0023]、[0018])と理解できる。
また、当業者は、第2の実施形態の飛散防止フィルム10Aの第1粘着層21及び第2粘着層22の剥離力について、衝突した小飛来物の耐貫通性をより向上させることができる点から、剥離力を20N/25mm幅以上30N/25mm幅以下の範囲内となる強粘着層とするとよい([0023]、[0016]、[0019])、第1粘着層21の剥離力(粘着力)を第2粘着層22の剥離力(粘着力)よりも相対的に小さくする(すなわち第2粘着層を強粘着とする)とよい([0024])、と理解する。
加えて、ガラス飛散防止フィルム10Aは薄い方が好ましいことは明らかであるところ、当業者であれば、厚み比が100:43である点において、厚み比が100:10〜100:40の範囲の第2の実施形態の各実施例と異なると説明される、比較例2(「層構成」が第1基材11(100μm)/第1粘着層21(25μm)/第2基材12(16μm)/第2粘着層22(25μm)である。)は、「総厚」が「166μm」である点で、第2の実施形態の実施例1、3、5と比較して好ましいこと、厚み比及び落球試験(耐貫通性)に関し改良できること、を理解する。具体的には、当業者であれば、比較例2の第1基材11の厚み(あるいは第1基材11及び第2基材12の合計厚み)を前提とすれば、第1粘着層21及び第2粘着層22の剥離力(粘着性)の調整により耐貫通性(落球試験)を改善できると理解する。また、第1粘着層21及び第2粘着層22を薄くしさえすれば、厚み比を例えば上限の100:40とできると理解する。

以上勘案すると、引用例2に記載の第2の実施形態の飛散防止フィルム10Aの構成及び比較例2の層構成を参考にして、引用発明において、(第1基材11としての)PETフィルム(「第1透明基材」)のハードコート層とは反対側の面(「第2面」)に、(例えば、剥離力が24N/25mm)の第1粘着層21(「粘着剤層」)を備え、その外側に(「易接着PETフィルム」と同じ材料の、第2基材12としての)第2のPETフィルム(「第2透明基材」)及び(例えば、24〜30N/25mmの範囲の第1粘着層21よりも強粘着の)第2粘着層22(「粘着剤層」)をこの順に備え、第2のPETフィルム(「第2透明基材」)が、第1粘着層21及び第2粘着層(「二層の粘着剤層」)に挟持され、第1粘着層21及び第2粘着層(「二層の粘着剤層」)のそれぞれに直接接着した構成とすること、また、第1粘着層21及び第2粘着層(「二層の粘着剤層」)の厚みをそれぞれ約23μm(合計厚みを約46μm)と薄くして厚み比100:39.7(略100:40)、総厚162μmとすることは、引用発明の改良、設計変更にあたって、第2の実施形態の飛散防止フィルム10Aの構成、比較例2の層構成及び総厚に着目し、その厚み比や粘着剤の剥離力(耐貫通性)を調整、改善する当業者が容易になし得たことである。その際、易接着PETフィルム(「第1透明基材」)及び第2のPETフィルム(「第2透明基材」)の合計厚み(116μm)の範囲で、例えば、易接着PETフィルム(「第1透明基材」)及び第2のPETフィルム(「第2透明基材」)の厚みをそれぞれ106μm及び10μmとすることは、当業者の設計上の事項である。
そして、上記の設計変更を施してなる引用発明は、相違点2に係る本願発明の構成を具備することとなる。
(当合議体注:審判請求時の補正により追加された、本願発明の「第2透明基材が厚さ12μm未満のPETフィルムであり、且つ粘着剤層の厚さが第2透明基材の厚さより大であ」るとの発明特定事項(すなわち、第2透明基材(PETフィルム)の厚さを12μm未満とし、粘着剤層の厚さを12μm以上で、かつ第2透明基材(PETフィルム)の厚さより大きいものとすること)について、その技術上の意義は認められない。あるいは、審判請求時の補正により追加された上記発明特定事項(特に、粘着剤層の厚さを12μm以上で、かつ第2透明基材(PETフィルム)の厚さより大きいものとする点)は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。)。

また、引用発明の「反射防止層付きのガラス飛散防止フィルムB」の「反射率(550nm)」「0.3%」を前提とすると、上記の設計変更を施してなる引用発明はその層構成からみて、相違点3に係る、標準光源D65による波長380nm〜780nmの光を入射角5°で入射させた際の反射率Yが0.8%以下との要件を満たす蓋然性が高い。
あるいは、反射防止フィルムの反射率を、標準光源D65による波長380nm〜780nmの光を入射角5°で入射させた際の視感度反射率で測定、評価する(例えば、視感度反射率が0.5%以下等)ことは、周知の技術的事項である(例えば、引用例3の請求項1、【0065】、【0068】【表1】等を参照。)。加えて、反射防止フィルムの設計時に、境界面におけるフレネル反射の低減のために、反射防止フィルムの基板及び(粘着剤層等の)層の屈折率を近いものとする(屈折率差を0に近づける)ことや、干渉を考慮した基板や層の材料・屈折率及び厚みの調整を行うことも技術常識である(例えば、引用例4の【0022】〜【0026】、【0037】〜【0056】、引用例5の【0024】〜【0060】、引用例6の請求項1〜5、【0022】、【0026】〜【0028】、【0038】〜【0040】等を参照。)。
してみると、引用発明に上記設計変更を施す際、フィルムと粘着剤との屈折率差や各粘着剤の厚みを調整し、標準光源D65による波長380nm〜780nmの光を入射角5°で入射させた際の反射率Yが0.8%以下とすることは、当業者の設計上のことである。

さらに、上記設計変更を施してなる引用発明は、その層構成や、フィルムや粘着層の(合計)厚みや粘着力(剥離力)からみて、相違点4に係る、直径8mmの円錐状プローブを、突き刺し試験速度500mm/minで押し付けた場合の破断力が5.7N以上であるとの要件を満たす蓋然性が高い。
あるいは、ガラス飛散防止性能を突き刺し試験を用いた突き刺し強度(N)により評価することは、周知の技術的事項であるところ(例えば、引用例7の請求項1、【0094】等を参照。)、引用発明はガラス飛散防止フィルムであるから、上記設計変更を施す際、上記反射率設計に加え、引用発明のガラス飛散防止性能を、直径8mmの円錐状プローブを、突き刺し試験速度500mm/minで押し付けた場合の破断力(N)により評価することとし、当該破断力が5.7N以上となるよう粘着層の材料、厚み、粘着力(剥離力)を調整することは、当業者の設計上のことである(当合議体注:ASTM D4833規格に準じた突き刺し試験において、直径8mmの円錐状プローブを用いること、あるいは、プローブ移動速度を500mm/minとすることは、例えば、引用例8の3頁のFIG.3、引用例9の191頁の要約2行目、192頁左欄8〜9行等に記載されている。)。
(当合議体注:以上述べたような設計変更を行っても、「厚みが170μm以下である」との一致点が相違点となるわけではない。)。

イ 相違点1について
(ア) ガラス飛散防止フィルムにおいて、ハードコート層や反射防止層の上(あるいは最表面)に、厚みが数nm〜20nm程度の防汚層を形成することは、周知の技術的事項である(例えば、引用例3の請求項6,7、【0017】等を参照。)。また、反射防止層を構成する低屈折率層及び高屈折率層をスパッタリングにより形成することも、周知の技術的事項である(例えば、引用例3の【0048】、引用例10の【0096】の等の記載を参照。)。

(イ) そうすると、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者の設計上のことである、
また、上記アで検討した相違点2〜相違点4に係る設計変更を合わせて検討しても判断は変わらない。

ウ 本願発明の効果について
(ア) 本願発明の効果に関し、本願明細書の【0017】には、「本発明によれば、視認性を向上しつつ、ディスプレイ表面の飛散防止やシャープエッジの発生抑制に優れた反射防止フィルム積層体を提供することができる。」との記載がある。

(イ) しかしながら、上記の相違点1〜相違点4に係る設計変更を施してなる引用発明の「反射防止層付き」の「ガラス飛散防止フィルムB」において、視認性の向上や、ガラスの飛散防止やシャープエッジの発生抑制は、当業者であれば当然に予測、期待する一般的な効果である。さらに、(本願発明は、ディスプレイ表面に貼り付けるものに特定されているわけでないが、)ガラス飛散防止フィルムをディスプレイ表面に適用することは周知のことであるから、「ディスプレイ表面の飛散防止やシャープエッジの発生抑制に優れた反射防止フィルム積層体を提供」できるとのことも、当業者にとって予測可能なことである。

エ 令和4年1月13日付け意見書における主張について
(ア) 同意見書「第2.本願発明が特許されるべき理由」「3.本願発明と引用発明との対比」において、請求人は、
「本願請求項1に記載の発明(以下、「請求項1発明」という。)」と、「主引例である引用例2に記載されている発明(以下、「引用発明2」という)」との相違点として、
「〔相違点1〕」「請求項1発明では、「粘着剤層の厚さが第2透明基材の厚さより大であ」のに対して、引用発明2では、実施例で「粘着a」「粘着b」(請求項1発明の「粘着剤層」に相当)の厚さが「基材B」(請求項1発明の「第2透明基材」に相当)の厚さより小であり、かつ、比較例2ついては「粘着a」「粘着b」(請求項1発明の「粘着剤層」に相当)の厚さが「基材B」(請求項1発明の「第2透明基材」に相当)の厚さより大である点。」、
「〔相違点2〕」「請求項1発明では、「第2透明基材が厚さ12μm未満のPETフィルムであ」るのに対して、引用発明2では、実施例で「基材B」(請求項1発明の「第2透明基材」に相当)が厚さ100μmであり、かつ、比較例2も厚さ16μmであり、いずれも厚さ12μmを超えている点。」を挙げ、
「相違点1について」、「層の大小関係について、引用発明2の実施例は請求項1発明とは逆の大小関係であり、しかも、落球試験で鋼球が貫通する結果が得られている比較例2(図6参照)が請求項1発明と同様の層の大小関係を有します。請求項1発明の「粘着剤層の厚さが第2透明基材の厚さより大であ」る構成を採用することは、引用発明2において落球試験で鋼球が貫通する結果が得られている比較例2と同様の層の大小関係を採用することですから、相違点1だけでも、引用発明2に基づいて当業者は請求項1発明に容易に想到することは困難であるものと思料いたします。」、
「相違点2について」、「引用発明2の実施例で「基材B」(請求項1発明の「第2透明基材」に相当)が厚さ100μmであって、12μmの8倍以上の厚さである一方、比較例2の「基材B」の厚さ16μmです。しかも、引用発明2の実施例1、5、6の「粘着a」「粘着b」(請求項1発明の「粘着剤層」に相当)の厚さと、比較例2の「粘着a」「粘着b」の厚さはいずれも25μmと共通しており、さらに、引用発明2の実施例1、5、6の「基材A」の厚さと比較例2の厚さも共通しています。すなわち、引用発明2の実施例1、5、6と比較例2のとの違いは、「基材B」の厚さです。そうすると、当業者は当然に、比較例2の「基材B」の厚さ16μmでさえ薄すぎて、耐貫通性が不十分であると考えるものと思料いたします。従って、引用発明2に基づいて、当業者であっても、第2透明基材として厚さ12μm未満のPETフィルムを採用することが容易ではないことは明らかです。」と主張する。

(イ) しかしながら、上記ア(ア)及び(イ)で述べたとおり、当業者は、引用例2の第1の実施形態及び第2の実施形態の記載等を参考にできるところ、これらの記載に接した当業者は、厚み比が100:43である点において、厚み比が100:10〜100:40の範囲の実施例と異なる比較例2について、「総厚」の点で第2の実施形態として好ましい層構成であること、第1基材11の厚み(あるいは第1基材11及び第2基材12の合計厚み)から、粘着層の粘着力(剥離力)の調整により耐貫通性(落球試験)を改善できること、粘着層の厚みを薄くすることにより厚み比を100:40とできること、を理解できる。そうすると、引用例2に記載の第2の実施形態の構成及び比較例2の層構成を参考に、引用発明の改良、設計変更を行うことは、当業者にとって容易である。
また、引用発明において、比較例2の層構成を採用した際に、第2基材12の厚みを12μm未満(例えば10μm)とすることも当業者の設計上の事項である(上記ア(イ)「当合議体注」において述べたとおり、審判請求時の補正により追加された、本願発明の「第2透明基材が厚さ12μm未満のPETフィルムであり、且つ粘着剤層の厚さが第2透明基材の厚さより大であ」るとの発明特定事項について、技術上の意義は認められない。あるいは、当該事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるといえない。)。
そうすると、同意見書における請求人の上記主張を採用することはできない。

オ 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術的事項及び引用例2〜引用例10に記載された(周知の)技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 上記ア〜オにおいては、引用例1を主引用例とし(、引用例2等を副引用例とし)て対比・判断を行ったが、引用例2を主引用例とし(、引用例1、引用例3〜引用例10を副引用例とし)て対比・判断を行っても同様である。

第3 むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-14 
結審通知日 2022-03-15 
審決日 2022-03-30 
出願番号 P2020-063354
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 河原 正
関根 洋之
発明の名称 反射防止フィルム積層体及びそれを備える物品  
代理人 松本 裕幸  
代理人 細川 文広  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 荒 則彦  
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