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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1384755
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-15 
確定日 2022-05-11 
事件の表示 特願2020−502454「着信音声通信要求の通知のインテリジェントなルーティングのためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月24日国際公開、WO2019/018055、令和 2年 8月31日国内公表、特表2020−526999〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2018年 5月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年 7月21日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年 3月10日 :手続補正書の提出
令和 2年 7月 1日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 9月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年10月23日付け:拒絶査定
令和 3年 2月15日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和 3年 2月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について

本件補正を認める。

第3 本願発明

本願の請求項に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項16に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「 【請求項16】
プロセッサ実行可能なプログラムコードを備える非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コードは、電子デバイスのプロセッサに、
着信音声通信要求のインジケーションを受信することと、
前記インジケーションに応答して、および通知を出力するようデバイスに要求する前に、
前記電子デバイスに接続された1つまたは複数のデバイスを識別することと、前記1つまたは複数のデバイスの各々は、イメージセンサを備え、
そのそれぞれのイメージセンサを使用して1つまたは複数のイメージをキャプチャするよう各識別されたデバイスに要求することと、
前記1つまたは複数のキャプチャされたイメージを取得することと、
前記キャプチャされたイメージのうちの1つまたは複数中の人物を認識することと、
前記認識された人物に基づいて前記1つまたは複数のデバイスのうちの第1のデバイスを選択することと
前記着信音声通信要求を示す通知を出力するために、前記第1のデバイスに信号を提供することと
を行わせるように構成された、非一時的コンピュータ可読媒体。」

第4 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
本願の請求項1〜5、7、8、10〜13、15、16、18〜21、23、25、26に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2014−053692号公報
2.特開2013−169221号公報

第5 引用文献の記載及び引用発明

1.原査定で引用された特開2014−053692号公報(以下、「引用文献1」という。)の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。

「【0005】
そこで、本発明は上記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、ユーザ端末への着信や受信した情報等をユーザにわかりやすく通知することができる情報送信装置、情報送信方法、およびプログラムを提供することにある。」

「【0021】
情報送信装置100は、例えば、携帯電話端末等の情報処理装置であって、以下、携帯電話端末100と記す。なお、本発明はこれに限られず、情報送信装置100は、パーソナルコンピュータやタブレット型の情報処理装置等であってもよい。この携帯電話端末100は、電話機能、メール送受信機能、およびインターネット接続機能等を備える。携帯電話端末100は、例えば、ユーザAが所有する携帯電話端末であって、ユーザAのメールアドレスやユーザAの電話番号が設定されている。携帯電話端末100は、ユーザAのメールアドレスが送信先であるメールや、ユーザAの電話番号が着信先である電話の発呼信号を受信し、あるいは、ユーザAの電話番号が発信先である電話の発呼信号を送信する。
【0022】
また、携帯電話端末100は、インターネット等の広域通信網や電話回線網、3G網を介して、他の情報送信装置500やSNS(social networking service)サーバ(図示せず)等と接続されている。他の情報送信装置500は、例えば、携帯電話端末等の情報処理装置であって、携帯電話端末100のメールアドレスにメールを送信し、あるいは、携帯電話端末100の電話番号に電話の呼び出しを行う。本実施形態において、他の情報送信装置500を、以下、携帯電話端末500と記す。この携帯電話端末500は、例えば、ユーザBが所有する携帯電話端末であって、ユーザBのメールアドレスやユーザBの電話番号が設定されている。
【0023】
本実施形態において、携帯電話端末100が携帯電話端末500との通信やSNSサーバとの通信等に関する情報、例えば、メール内容や、電話の呼び出し相手を示す情報、SNSサーバから送信されるメッセージを、携帯電話端末100の通信に関する通知情報という。言い換えると、携帯電話端末100の通信に関する通知情報とは、インターネットや電話回線網を介した携帯電話端末500やSNSサーバ等との通信の内容や通信履歴等を示す情報である。この携帯電話端末100の通信に関する通知情報には、通信先が携帯電話端末100である全ての電気通信の内容や履歴が含まれる。
携帯電話端末100は、表示装置200,300のうち、ユーザAの近くにあると推定される表示装置に対して、この通知情報を送信する。これにより、ユーザAは、例えば、携帯電話端末500から受信したメール情報、携帯電話端末500から携帯電話端末100へ電話の着信が今あること又は着信があったこと、あるいは、携帯電話端末100が登録するSNSから通知があったことを、近くの表示装置を介して知ることができる。
【0024】
表示装置200,300は、ディスプレイを備える装置であって、例えば、テレビ、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型の通信端末、ディジタルフォトフレーム、インテリアホン等が適用可能である。本実施形態において、この表示装置200は、テレビである例について以下説明し、テレビ200と記す。また、表示装置300は、パーソナルコンピュータである例について以下説明し、PC300と記す。
小型受信装置400は、携帯電話端末100の所有者であるユーザAが身に付けている装置であって、例えば、腕時計型やクリップ型の情報処理装置である。
【0025】
なお、本実施形態において、携帯電話端末100と小型受信装置400とは、同一人物の所有する装置として、事前にペアリングされているものとする。つまり、携帯電話端末100には、ユーザAが携帯する小型受信装置400のデバイスアドレス(例えば、MACアドレスやBluetoothアドレス)が登録されている。以降はデバイスアドレスとしてMACアドレスを用いた場合を例に説明する。
【0026】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る情報送信システム1の処理フローの概略について説明する。図2は、本実施形態に係る情報送信システム1の処理フローの一例を説明するためのシーケンス図である。なお、本実施形態では、携帯電話端末100の通信に関する通知情報が、携帯電話端末500から受信したメール情報である例を用いて、以下説明する。
(ステップST1)
例えば、ユーザBの携帯電話端末500からユーザAの携帯電話端末100のメールアドレスに宛ててメール情報を送信したとする。これにより、携帯電話端末100は、インターネットを介して、携帯電話端末500からメール情報を受信する。携帯電話端末100は、携帯電話端末500と通信をした場合、この携帯電話端末500との通信に関する通知情報を、小型受信装置400に最も近い表示装置に送信するため、以下のような処理を実行する。」

「【0038】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る携帯電話端末100のメッセージ制御部106の機能構成の一例について説明する。図4は、携帯電話端末100のメッセージ制御部106の機能構成の一例を示すブロック図である。このメッセージ制御部106は、例えばプログラムに従って動作するCPUの機能処理部の一部である。
図4に示す通り、メッセージ制御部106は、受信部161と、送信部162と、解析部163とを備える。
受信部161は、メッセージ受信部1611と、情報受信部1612とを備え、無線通信部102を介した情報の受信を制御する制御部である。
メッセージ受信部1611は、インターネットを介して携帯電話端末500やSNSサーバ等と通信を行う。このメッセージ受信部1611は、例えば、携帯電話端末500からインターネットを介して送信されるメール情報を受信する。
情報受信部1612は、無線LANを介してテレビ200およびPC300と通信を行う。この情報受信部1612は、例えば、テレビ200およびPC300が検出した電波強度を示す情報を、無線LANを介してテレビ200およびPC300から受信する。
【0039】
送信部162は、検知指示部1621と情報確認部1622とメッセージ送信部1623とを備え、無線通信部102を介した情報の送信を制御する制御部である。これら検知指示部1621と情報確認部1622とメッセージ送信部1623は、無線LANを介してテレビ200およびPC300と通信を行う。
検知指示部1621は、メッセージ受信部1611が例えば携帯電話端末500からメール情報等の通知情報を受信すると、無線LANで接続されているテレビ200およびPC300に対して、小型受信装置400の検知を指示するコマンドを送信する。
情報確認部1622は、例えば、小型受信装置400の検知を指示するコマンドを送信したときから予め決められた時間が経過した場合、テレビ200とPC300に対して、小型受信装置400との距離を示す情報の送信を要求する要求信号を送信する。なお、予め決められた時間とは、テレビ200およびPC300が電波強度を測定するまでに要する時間に応じて設定される。
メッセージ送信部1623は、解析部163によって、携帯電話端末500から受信したメール情報等の通知情報の送信先が判定された場合、判定された送信先のテレビ200あるいはPC300に対して、メッセージ受信部1611が受信したメール情報等の通知情報を送信する。
【0040】
解析部163は、送信先判定部1631と表示内容決定部1632とメッセージ内容記憶部1633とを備える。
送信先判定部1631は、情報受信部1612が受信した小型受信装置400と表示装置との距離を示す情報、例えば、表示装置(テレビ200およびPC300)が検出した電波強度を示す情報に基づき、メッセージ受信部1611が受信したメール情報等の通知情報の送信先を判定する。
この送信先判定部1631による判定方法には様々な方法が適用可能であるが、例えば、以下のような方法を適用することができる。
例えば、送信先判定部1631は、テレビ200から受信した電波強度を示す情報と、PC300から受信した電波強度を示す情報とを比較して、最も強い電波強度を示す情報を送信した方の表示装置を、メール情報の送信先と判定する。
【0041】
また、送信先判定部1631は、受信した電波強度を示す情報に基づき、小型受信装置400との距離を算出して、小型受信装置400に最も近い表示装置をメール情報の送信先と判定してもよい。
さらに、送信先判定部1631は、テレビ200やPC300が電波強度以外の情報、例えば、小型受信装置400と表示装置との距離を示す情報を取得した場合、この情報に基づき、小型受信装置400と最も近い表示装置を送信先として判定するものであってもよい。
【0042】
さらにまた、送信先判定部1631は、以下に説明するようなユーザと表示装置との距離を示す情報をテレビ200やPC300から取得した場合、この情報に基づき、ユーザと最も近い表示装置を送信先として判定するものであってもよい。例えば、テレビ200およびPC300に赤外線センサーや超音波センサーあるいはカメラが取り付けられている場合、送信先判定部1631は、これらセンサーの検出結果やカメラで撮像された撮像画像に基づき、人が近くにいる表示装置を判定してもよい。この場合、送信先判定部1631は、人との距離が最も近い表示装置を通知情報の送信先と判定してもよい。また、送信先判定部1631は、これらセンサーの検出結果やカメラで撮像された撮像画像に基づき、テレビ200およびPC300の近くに居る人物がユーザAであるか否かを判定した上で、ユーザAの最も近くにある表示装置を判定するものであってもよい。
例えば、ユーザAの画像特徴量が携帯電話端末100の記憶部104に登録されている場合、送信先判定部1631は、この画像特徴量を参照して、テレビ200およびPC300によって撮像された撮像画像内にユーザAが含まれているか否かを判定するものであってもよい。また、ユーザAの身長や体型の特徴量が携帯電話端末100の記憶部104に登録されている場合、送信先判定部1631は、この特徴量を参照して、赤外線センサーや超音波センサーによって検出された人物の大きさとユーザAが一致あるいは類似するか否かを判定するものであってもよい。」

「【0105】
[プログラムおよび記録媒体]
最後に、情報送信システム1の携帯電話端末100とテレビ200とPC300と小型受信装置400に含まれている各部は、ハードウェアロジックによって構成すれば良い。または、次のように、CPUを用いてソフトウェアによって実現しても良い。
すなわち、携帯電話端末100とテレビ200とPC300と小型受信装置400は、各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU、このプログラムを格納した、上記プログラムを実行可能な形式に展開するRAM、および上記プログラムと各種データとを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)を備えている。この構成により、本発明の目的は、所定の記録媒体によっても達成できる。
この記録媒体は、上述した機能を実現するソフトウェアである携帯電話端末100とテレビ200とPC300と小型受信装置400のプログラムのプログラムコード(実行形式プログラム,中間コードプログラム,ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録していれば良い。携帯電話端末100とテレビ200とPC300と小型受信装置400に、この記録媒体を供給する。これにより、コンピュータ(またはCPUやMPU)が、供給された記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し、実行すれば良い。」

2.引用発明
上記1.からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。

「ユーザ端末への着信や受信した情報等をユーザにわかりやすく通知することができる情報送信プログラムであって(【0005】)、
携帯電話端末100は、ユーザAが所有する携帯電話端末であって、携帯電話端末100は、ユーザAの電話番号が着信先である電話の発呼信号を受信し(【0021】)、
携帯電話端末100の通信に関する通知情報とは、インターネットや電話回線網を介した携帯電話端末500やSNSサーバ等との通信の内容や通信履歴等を示す情報であり(【0023】)、
携帯電話端末100は、表示装置200,300のうち、ユーザAの近くにあると推定される表示装置に対して、この通知情報を送信することにより、ユーザAは、携帯電話端末500から携帯電話端末100へ電話の着信が今あること又は着信があったことを、近くの表示装置を介して知ることができるものであり(【0023】)、
小型受信装置400は、携帯電話端末100の所有者であるユーザAが身に付けている装置であって(【0024】)、
ユーザBの携帯電話端末500からユーザAの携帯電話端末100のメールアドレスに宛ててメール情報を送信した場合には、携帯電話端末100は、インターネットを介して、携帯電話端末500からメール情報を受信し、携帯電話端末100は、携帯電話端末500と通信をした場合、この携帯電話端末500との通信に関する通知情報を、小型受信装置400に最も近い表示装置に送信するため、処理を実行するものであり(【0026】)、
携帯電話端末100のメッセージ制御部106は、受信部161と、送信部162と、解析部163とを備え(【0038】)、
受信部161は、メッセージ受信部1611と、情報受信部1612とを備え(【0038】)、
情報受信部1621は、無線LANを介してテレビ200およびPC300と通信を行い(【0038】)、
送信部162は、検知指示部1621と情報確認部1622とメッセージ送信部1623とを備え(【0039】)、
検知指示部1621は、メッセージ受信部1611が携帯電話端末500から通知情報を受信すると、無線LANで接続されているテレビ200およびPC300に対して、小型受信装置400の検知を指示するコマンドを送信し(【0039】)、
情報確認部1622は、小型受信装置400の検知を指示するコマンドを送信したときから、テレビ200およびPC300が電波強度を測定するまでに要する時間に応じて設定される予め決められた時間が経過した場合、テレビ200とPC300に対して、小型受信装置400との距離を示す情報の送信を要求する要求信号を送信し(【0039】)、
解析部163は、送信先判定部1631と表示内容決定部1632とメッセージ内容記憶部1633とを備え(【0040】)、
送信先判定部1631は、情報受信部1612が受信した小型受信装置400と表示装置との距離を示す情報である表示装置(テレビ200およびPC300)が検出した電波強度を示す情報に基づき、メッセージ受信部1611が受信した通知情報の送信先を判定し(【0040】)、
送信先判定部1631は、以下に説明するようなユーザと表示装置との距離を示す情報をテレビ200やPC300から取得した場合、この情報に基づき、ユーザと最も近い表示装置を送信先として判定するものであってもよく、例えば、テレビ200およびPC300にカメラが取り付けられている場合、カメラで撮像された撮像画像に基づき、人が近くにいる表示装置を判定してもよく、カメラで撮像された撮像画像に基づき、テレビ200およびPC300の近くに居る人物がユーザAであるか否かを判定した上で、ユーザAの最も近くにある表示装置を判定するものであってもよく(【0042】)、
ユーザAの画像特徴量が携帯電話端末100の記憶部104に登録されている場合、送信先判定部1631は、この画像特徴量を参照して、テレビ200およびPC300によって撮像された撮像画像内にユーザAが含まれているか否かを判定するものであってもよく(【0042】)、
携帯電話端末100は、各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU、このプログラムを格納した、上記プログラムを実行可能な形式に展開するRAM、および上記プログラムと各種データとを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)を備え(【0105】)、
この記録媒体は、上述した機能を実現するソフトウェアである携帯電話端末100のプログラムのプログラムコード(実行形式プログラム,中間コードプログラム,ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録していれば良い(【0105】)
記録媒体。」

3.原査定で引用された特開2013−169221号公報(以下、「引用文献2」という。)の記載
引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「【0011】
また、前記人感知部は、指向性を有し周囲の音を収集する1以上のマイクロフォンと、その音の中から音声を認識してその方向に係る情報を提供する音声認識部とを含んでもよい。このようにすれば、前記人感知部はマイクロフォンで収集した音に含まれる音声を認識することによって、人の存否を感知し、人を感知したときはその人までの距離および方向を判定する情報を制御部に提供することができる。また、遮蔽物があってカメラの画像には人が写らない状況であっても、音声によって人を感知することができる。音声の認識および音源である人までの距離を判定するための情報は、周知の音響フィルタ技術および音声認識技術を用いることによって作成することができる。
なお、音声や画像による人の方向と距離の判定は、高い精度が必ずしも要求されるものでない。おおよその距離や方向を判定する程度の精度であっても周囲の人が騒音を気にしないように離れて走行できればよい。例えば、判定の精度が低くても、その精度に見合った距離の閾値を設計者が設定し、制御部11はその閾値を用いて走行制御を行えばよい。
【0012】
例えば、1つのマイクロフォンを用いる場合は、例えば制御部がロボット掃除機を同じ場所で旋回させ、その間に単一指向性のマイクロフォンを用いてながら音を収集する。旋回に伴って変化する音の強弱の情報を提供すれば、制御部はその情報に基づいて音源の方向を判定できる。また、直接音と反射音の割合や直接音と初期反射音の到達時間差の情報を提供すれば、制御部はその情報に基づいて音源までの距離を判定できる。一方、左右両側にマイクロフォンがある場合は、各マイクロフォンが収集する音の音量差、時間差および/または位相差の情報を提供すれば、制御部はその情報に基づいて音源の方向を判定できる。音源までの距離は、1つのマイクロフォンを用いるときと同様に判定できる。さらに、前後左右にマイクロフォンがある場合は、各マイクロフォンが収集する音の音量差、時間差および/または位相差の情報を提供すれば、制御部はその情報に基づいて音源までの距離と音源の方向とを判定できる。
【0013】
さらに、前記人感知部は、1つの指向性マイクロフォンを有し、前記音声認識部は、段階的な音声の大きさを認識し、前記制御部は、第1閾値以上の大きさの音声が検出されたときに筐体を旋回させ、旋回に伴って変化する音声の大きさに基づいて音声の方向を判定してもよい。このようにすれば、複数のマイクロフォンを用いる場合に比べて安価に人を感知することができる。人との距離は前述のごとく音の強弱や直接音と反射音の分析に基づいて判定してもよい。あるいは、カメラと組み合わせることによって、マイクロフォンの音声から人の存否を認識し、カメラの画像から人との距離と方向を判定するようにしてもよい。
【0014】
さらに、前記制御部は、前記音声の大きさが第1閾値よりも小さい第2閾値を下回るまで、前記離隔方向へ前記筐体を走行させるように制御してもよい。このようにすれば、一旦は近接限度まで人に近づいたときでもその人から十分離れた距離まで遠ざかるように制御することができる。
【0015】
あるいは、前記人感知部は、走行方向に対して前後左右の4方向の音をそれぞれ収集する4つのマイクロフォンを含み、前記音声認識部は、各マイクロフォンが収集した音声の音量差、時間差および/または位相差を認識し、前記制御部は、前記音声の音量差、時間差および/または位相差に基づいてその人の方向と距離を判定してもよい。このようにすれば、いわゆるステレオ信号として左右方向の音を収集して音源である人の左右の定位を検出し、前後方向の音を収集して音源である人の前後の定位を検出し、これらを組み合わせて音源までの距離と方向を分析することができる。」

第6 対比

本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

(ア)『電子デバイスによって、着信音声通信要求のインジケーションを受信すること』について

本願の発明の詳細な説明【0045】には、『スマートフォン520は、着信音声通信要求のインジケーションを受信する。この例では、セルラデバイス510は、セルラトランシーバ516aを介してセルラネットワーク515を使用して、スマートフォン520に音声コールをかける。スマートフォン520は、セルラトランシーバ516bを介してセルラネットワーク515からの着信音声コールのインジケーションを受信する。』の記載があるから、受信する『着信音声通信要求のインジケーション』とは、『着信音声コールのインジケーション』つまり、発信側のデバイスが音声コールをかけた際に受信側のデバイスが受信する信号を含んでいる。
「携帯電話端末100」を、一般的に『電子デバイス』と称することは任意であり、引用発明の「携帯電話端末100」は、「ユーザAの電話番号が着信先である電話の発呼信号を受信」するものである。ここで、「電話」は『音声コール』であるから、引用発明の「ユーザAの電話番号が着信先である電話の発呼信号」は、発信側のデバイスが音声コールをかけた際に受信側のデバイスが受信する信号であり、『着信音声通信要求のインジケーション』である。
したがって、引用発明と本願発明は、『電子デバイスによって、着信音声通信要求のインジケーションを受信すること』を備える点で共通する。

(イ)『前記電子デバイスに接続された1つまたは複数のデバイスを識別することと、前記1つまたは複数のデバイスの各々は、イメージセンサを備え、』について

引用発明の「テレビ200」及び「PC300」は、いずれも『デバイス』と呼ぶことができ、「無線LANで接続されている」から『前記電子デバイスに接続された複数のデバイス』であるといえる。
また、「携帯電話端末100」(の「送信先判定部1631」)は、「テレビ200」及び「PC300」に取り付けられているカメラで撮像された撮像画像に基づき、ユーザAの最も近くにある表示装置を判定するのであるから、情報処理を行う上で、「テレビ200」及び「PC300」を『識別すること』は、自明である。
さらに、「テレビ200」及び「PC300」には「カメラ」が取り付けられていて、カメラで撮像された撮像画像に基づき、人が近くにいる表示装置を判定したり、「テレビ200」及び「PC300」の近くに居る人物がユーザAであるか否かを判定するから、「カメラ」は『イメージセンサ』であるといえる。
したがって、引用発明は、『前記電子デバイスに接続された1つまたは複数のデバイスを識別することと、前記1つまたは複数のデバイスの各々は、イメージセンサを備え』ているといえる。

(ウ)『そのそれぞれのイメージセンサを使用して1つまたは複数のイメージをキャプチャするよう各識別されたデバイスに要求することと、前記キャプチャされた1つまたは複数のイメージを取得すること』について

引用発明の「携帯電話端末100」(の「送信先判定部1631」)は、「テレビ200およびPC300にカメラが取り付けられている場合」に、「カメラで撮像された撮像画像」に基づき、人が近くにいる表示装置を判定するものであって、カメラで撮像された撮像画像に基づき、テレビ200およびPC300の近くにいる人物がユーザAであるかを判定した上で、ユーザAの最も近くにある表示装置を判定するものである。
また、「カメラで撮像された撮像画像」は『キャプチャされたイメージ』であるから、引用発明と本願発明は、『キャプチャされた1つまたは複数のイメージを取得すること』を備える方法である点で共通する。

(エ)『前記キャプチャされたイメージのうちの1つまたは複数中の人物を認識することと、前記認識された人物に基づいて前記1つまたは複数のデバイスのうちの第1のデバイスを選択すること』について

引用発明の「携帯電話端末100」の「送信先判定部1631」は、「ユーザAの画像特徴量が携帯電話端末100の記憶部104に登録されている場合」に「この画像特徴量を参照して、テレビ200およびPC300によって撮像された撮像画像内にユーザAが含まれているか否かを判定する」ことにより、「テレビ200およびPC300の近くに居る人物がユーザAであるか否かを判定した上で、ユーザAの最も近くにある表示装置を判定する」ものであるから、「テレビ200およびPC300によって撮像された撮像画像」が、携帯電話端末100に送信され、携帯電話端末100の記憶部104に登録されたユーザAの画像特徴量と対比されて、送信先判定部1631が、撮像画像にユーザAが含まれているか否かを判定していることは明らかである。
ここで、「テレビ200およびPC300によって撮像された撮像画像」は、『キャプチャされたイメージ』であって、「ユーザAであるか否かを判定」することは『人物』を『認識』していることである。
また、「ユーザAの最も近くにある表示装置を判定」することは「ユーザAであるか否か」の判定に基づいて『前記1つまたは複数のデバイスのうちの』最も近くにあるデバイスを『選択』することであり、選択されたデバイスを『第1のデバイス』と呼称することも任意のことであるから、引用発明は、『前記キャプチャされたイメージのうちの1つまたは複数中の人物を認識することと、前記認識された人物に基づいて前記1つまたは複数のデバイスのうちの第1のデバイスを選択すること』を備えているといえる。

(オ)『前記着信音声通信要求を示す通知を出力するために、前記第1のデバイスに信号を提供すること』について

引用発明は、「ユーザAの近くにあると推定される表示装置」すなわち『前記第1のデバイス』に対して、通知情報を送信し、これにより、ユーザAは、携帯電話端末500から携帯電話端末100へ電話の着信が今あることを、近くの表示装置を介して知ることができるものである。
「携帯電話端末100へ電話の着信が今あること」も「通信履歴」の一つであるから、「携帯電話端末100へ電話の着信が今あること」すなわち『着信音声通信要求を示す通知』を「近くの表示装置」が出力するには、携帯電話端末100が「近くの表示装置」である『前記第1のデバイス』に「通知情報を送信」すなわち『信号を提供』することが必要であることは自明である。そして、「通知情報を送信することにより」知ることができるのであるから、「通知情報の送信」である『信号の提供』は、『通知を出力するために』行われる。
したがって、引用発明は、『前記着信音声通信要求を示す通知を出力するために、前記第1のデバイスに信号を提供すること』を備えているといえる。

(カ)『前記インジケーションに応答して、および通知を出力するようデバイスに要求する前に』について

引用発明は、「ユーザ端末への着信や受信した情報等をユーザにわかりやすく通知する」のであって、「着信が今あること等を、近くの表示装置を介して知ることができる」ものであるから「近くの表示装置」の選択は、『通知を出力するようデバイスに提供する前』に行う必要があることは、自明である。

(キ)『プロセッサ実行可能なプログラムコードを備える非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コードは、電子デバイスのプロセッサに、・・・(中略)・・・を行わせるように構成された、非一時的コンピュータ可読媒体』について

引用発明の「携帯電話端末100」は、「各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU」、「上記プログラムを実行可能な形式に展開するRAM」、および「上記プログラムと各種データとを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)」を備え、この記録媒体は、「上述した機能を実現するソフトウェアである携帯電話端末100のプログラムのプログラムコード」をコンピュータで読み取り可能に記録するものである。
してみると、「携帯電話端末100」の「各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU」は『電子デバイスのプロセッサ』といえるから、「記録媒体」は『プロセッサ実行可能なプログラムコードを備えるコンピュータ可読媒体』であるといえる。
また、「上記プログラムを実行可能な形式に展開するRAM」が一時的な記憶であるのに対し、「上記プログラムと各種データとを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)」が非一時的な記憶を行うことは、技術常識であるから、引用発明と本願発明は、「プロセッサ実行可能なプログラムコードを備える非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コードは、電子デバイスのプロセッサに、所定の処理を行わせるように構成された、非一時的コンピュータ可読媒体」である点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「プロセッサ実行可能なプログラムコードを備える非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コードは、電子デバイスのプロセッサに、
電子デバイスによって、着信音声通信要求のインジケーションを受信することと、
通知を出力するようデバイスに要求する前に、
前記電子デバイスに接続された1つまたは複数のデバイスを識別することと、前記1つまたは複数のデバイスの各々は、イメージセンサを備え、
キャプチャされた1つまたは複数のイメージを取得することと、
前記キャプチャされたイメージのうちの1つまたは複数の人物を認識することと、
前記認識された人物に基づいて前記1つまたは複数のデバイスのうちの第1のデバイスを選択することと、
前記着信音声通信要求を示す通知を出力するために、前記第1のデバイスに信号を提供することと
を行わせるように構成された、非一時的コンピュータ可読媒体。」

(相違点1)
本願発明は、『前記インジケーションに応答して、および通知を出力するようデバイスに要求する前』に処理を行うのに対し、引用発明は、『通知を出力するようデバイスに要求する前』に処理を行うものの、「ユーザAの電話番号が着信先である電話の発呼信号」に応答しているかどうかは明記されていない点。

(相違点2)
本願発明は、『そのそれぞれのイメージセンサを使用して1つまたは複数のイメージをキャプチャするよう各識別されたデバイスに要求すること』を備えるのに対し、引用発明がそのような要求を行っているかどうかは明記されていない点。

第7 判断

上記相違点について検討する。

相違点1について

引用発明は、通知情報がメール情報である場合、「メール情報を受信する」ことによって、すなわち『インジケーションに応答して』処理を実行するのであるから、「電話の着信が今あること」である場合についても、『インジケーション(ユーザAの電話番号が着信先である電話の発呼信号)に応答して』、処理を実行すること、すなわち『前記インジケーションに応答して、および通知を出力するようデバイスに要求する前』に処理を行うことは、当業者が容易に想到しうることである。

相違点2について

引用発明は、「ユーザAの最も近くにある表示装置を判定」するために必要な、ユーザAが身につけている「小型受信装置400と表示装置との距離」を示す情報を取得するため、トリガーとして、「携帯電話端末100」の「検知指示部1621」が、無線LANで接続されているテレビ200およびPC300に対して、小型受信装置400の検知を指示するコマンドを送信しているから、「ユーザAの最も近くにある表示装置を判定」する際に必要な情報を「デバイスに取得するよう要求」しているといえる。
そして、引用発明は、「撮像画像」を用い、これに基づき、ユーザAの最も近くにある表示装置を判定するものであってもよいとされている。
してみると、引用発明において、「ユーザAの最も近くにある表示装置を判定」する際に必要な情報である上記「撮像画像」である『イメージ』を取得する際にも、テレビ200とPC300に対して、撮像を要求する、すなわち『イメージをキャプチャするよう要求する』ことは、当業者が容易に想到しうることである。

そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第8 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 吉田 隆之
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-12-02 
結審通知日 2021-12-07 
審決日 2021-12-23 
出願番号 P2020-502454
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 伊藤 隆夫
衣鳩 文彦
発明の名称 着信音声通信要求の通知のインテリジェントなルーティングのためのシステムおよび方法  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 岡田 貴志  
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