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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1384822
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-15 
確定日 2022-05-12 
事件の表示 特願2016−156549「偏光板」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月15日出願公開、特開2018− 25630〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2016−156549号(以下「本件出願」という。)は、平成28年8月9日を出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和2年 6月30日付け:拒絶理由通知書
令和2年10月29日提出:意見書
令和2年10月29日提出:手続補正書
令和3年 1月12日付け:拒絶査定
令和3年 4月15日提出:審判請求書
令和3年 4月15日提出:手続補正書
令和3年 9月29日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」という。)
令和3年12月 6日提出:意見書
令和3年12月 6日提出:手続補正書

2 本願発明
本件出願の請求項1〜7に係る発明は、令和3年12月6日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のものである(以下「本願発明1」という。また、本願発明1〜7を総称して「本願発明」という。)。

「偏光子と、該偏光子の両面に配置された保護層とを備える、偏光板であって、
該保護層が、セルロース系樹脂から形成され、
該偏光板が、平面視において、外縁に凹部を有し、
該凹部が、曲線から構成される頂点を有するか、あるいは、円弧状またはU字状であり、
該保護層の厚みが、20μm〜40μmである、
偏光板。」

3 当審拒絶理由の概要
令和3年9月29日付け拒絶理由通知書において通知した、当合議体の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

理由1(進歩性)本件出願の請求項1〜8に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献3:特開2008−76872号公報
引用文献4:特開2011−197651号公報
引用文献5:特開平8−194116号公報
引用文献6:米国特許出願公開第2013/0328051号明細書
引用文献8:特開2009−300854号公報
引用文献9:特開2011−20224号公報
引用文献10:国際公開第2007/108244号
引用文献11:特開2014−112238号公報
(当合議体注:引用文献3、8及び11は主引用例であり、引用文献4〜6及び9〜10は周知技術を示す文献として挙げられたものである。)


第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載
(1)引用文献8の記載
当審拒絶理由で引用された、引用文献8(特開2009−300854号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載がある。
なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す(以下、同様である。)。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイパネル、電子機器及びディスプレイパネルに関し、特に、基板におけるクラックの発生を低減できる液晶ディスプレイパネル、電子機器及びディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の液晶ディスプレイパネル600を示す側面図である。液晶ディスプレイパネル600は、多数のスイッチング素子であるTFT(Thin Film Transistor)が形成された第1基板610と、カラーフィルターが形成されている第2基板620で、液晶層を挟み込んだ構造をしている。そして、それぞれの基板の外側には第1偏光板630及び第2偏光板640が貼付されており、画像を表示すべく画素が形成されている画素領域601を覆っている。
【0003】
同図に示すように、第1基板610は、第2基板620より大きく、その一辺が第2基板からはみ出すような大きさとされており、そのはみ出した部分である隣接領域602には、電気的接続のための外部接続用端子611が形成される端子形成領域603が設けられる。外部接続用端子611には、通常、駆動用集積回路(ドライバIC)や、液晶ディスプレイパネルを組み込む電子機器と接続するためのフレキシブルプリント基板のような外部接続用基板が電気的に接続される。かかる接続は、異方性導電性粒子を用いた熱圧着により行われることが一般的である。
【0004】
特許文献1には、上記説明したような構造の液晶ディスプレイパネルが開示されている(図4)。また、第1基板に貼付された偏光板を隣接領域まで延長したものも開示されている(図3)。
【特許文献1】特開平7−175059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、液晶ディスプレイパネルを始めとするディスプレイパネルを薄型化・軽量化するため、第1基板及び第2基板を薄くすることが求められている。ところが、第1基板及び第2基板を薄くすると、強度が低下して基板が割れてしまったり、欠けてしまったりするというような問題が発生する懸念がある。特に、図9において、第1基板610におけるA点は、第2基板620と貼り合わされ、剛性が高くたわみにくい画素領域601と、第1基板610単体で、剛性が低くたわみやすい隣接領域602との境界に位置するため、振動や外力などが加わると応力集中が発生し、欠損が生じやすい。実際には、製造時やハンドリング時に、第1基板610の周縁部において、A点を起点とし、第1偏光板630が貼付される境界に位置するB点にかけて、図中破線で示すようにクラックが発生することがある。
【0006】
このようにクラックが発生すると、第1基板上に形成された配線に断線が生じるなどするため製品不良となる。その結果、歩留まりが低下するためコスト高を招くほか、製品自体の信頼性を低下させることになりかねない。
【0007】
この点に関し、引用文献1には、第1基板に貼付された偏光板を隣接領域に対応する位置まで延長したものが記載されているが、かかる構成を採用することは現実的ではない。なぜなら、前述のとおり、駆動用集積回路や外部接続用基板は熱圧着により接続され、その際の温度はおおよそ180℃前後である。それに対し、偏光板は、一般に、ポリビニールアルコールフィルムをトリアセテートフィルムで挟み積層したものが用いられており、80℃〜90℃程度の温度までしか耐えることができない。したがって、偏光板を貼付した状態で熱圧着を行うと、その温度には耐えられず、変形や変色を起こしてしまうのである。熱圧着の後で偏光板を貼付することも考えられるが、複雑な形状の駆動用集積回路や外部接続用基板が接続された状態で偏光板を第1基板に貼付することは技術的に困難であり、貼付に失敗した場合には廃棄コストが高くなってしまう。
【0008】
本発明はかかる観点に鑑みてなされたものであって、その目的は、液晶ディスプレイパネル、電子機器及びディスプレイパネルにおいて、基板におけるクラックの発生を低減し、歩留まりが良く信頼性の高い液晶ディスプレイパネル、電子機器及びディスプレイパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0010】
(1)複数のスイッチング素子が配列される画素領域と、外部接続用端子が形成される端子形成領域を一部に含む、前記画素領域に隣接する隣接領域と、が設けられる第1基板と、液晶層を介して前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板における、前記画素領域及び前記隣接領域が設けられた面とは反対側の面に、前記画素領域から前記隣接領域に対応する位置に延在すると共に、前記端子形成領域に応じた位置に切り欠き部が設けられた形状の偏光板を配置したことを特徴とする液晶ディスプレイパネル。
【0011】
(2)(1)において、前記偏光板は、少なくとも前記画素領域と前記隣接領域に対応する位置との境界上であって、前記第1基板の周縁部にある位置に延在する形状であることを特徴とする液晶ディスプレイパネル。
【0012】
(3)(1)において、前記切り欠き部は、前記偏光板の一辺にコ字状に設けられていることを特徴とする。
【0013】
(4)(1)において、前記切り欠き部は、前記偏光板に島状に設けられていることを特徴とする液晶ディスプレイパネル。
【0014】
(5)(1)において、前記切り欠き部の角部には、丸みが付けられていることを特徴とする液晶ディスプレイパネル。
・・・中略・・・
【発明の効果】
【0026】
以上の本出願において開示される発明によれば、偏光板により第1基板が補強されるから、クラックの発生を低減することができるとともに、端子形成領域における偏光板には切り欠きが設けられているから、駆動用集積回路や外部接続用基板を問題なく電気的に接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明の好適な第1の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る液晶ディスプレイパネル100の側面図である。なお、図示した部材の寸法の比率は、説明のために誇張して表現したものであり、実際の部材の寸法を正確に反映したものではない。
【0029】
液晶ディスプレイパネル100は、複数のスイッチング素子であるTFTと、外部接続用端子111が形成された第1基板110と、図示しない液晶層を介して第1基板110に対向配置されるカラーフィルターが配置されている第2基板120、第1基板に取り付けられる第1偏光板130、及び、第2基板120に取り付けられる第2偏光板140を有している。液晶ディスプレイパネル100にはさらに、第1偏光板130に図示しない接着層を介してバックライト150が取り付けられるとともに、外部接続用端子111において駆動用集積回路160及び外部接続用基板170が電気的に接続されている。なお、本明細書においては、上述したように、カラーフィルターを第2基板に配置する構成で説明するが、このカラーフィルターは第1基板に配置した構成(カラーフィルター・オン・TFT構成)でも良い。また、本明細書では、第2基板120に第1偏光板130とは別の第2偏光板140が配置される構成について説明するが、この第2偏光板140は、第2基板120と液晶層の間の位置に塗布等により内蔵されていても良い。
【0030】
図中符号101で示す領域は、第1基板110上にTFTが配列され、画像を表示することができる画素領域である。そして、画素領域101に隣接する符号102で示す領域は、隣接領域である。隣接領域102においては、第1基板110と第2基板120とは向かい合っておらず、第1基板110の第2基板120側表面が露出している。かかる隣接領域102の第2基板120側表面には、外部接続用端子111が形成された端子形成領域103が設けられている。そして、第1偏光板130は、第1基板110の画素領域101及び隣接領域102が設けられた面とは反対側の面に取り付けられている。
【0031】
本実施形態においては、第1基板110と第2基板120はガラスであるが、透明な基板であって使用可能なものであれば各種プラスチック等でも構わない。また、第1偏光板130及び第2偏光板140は、好適には接着剤により貼り付けることにより第1基板110及び第2基板120に取り付けられるが、熱接着等適宜の取り付け方法を用いてよい。また、駆動用集積回路160及び外部接続用基板170は、異方性導電粒子を含むペーストあるいはシートを介して外部接続用端子111上に配置されたのち、第1基板110の端子形成領域103を第1基板110の両面から冶具で挟むようにして加圧・加熱され、熱圧着により外部接続用端子111と電気的に接続される。
【0032】
また、本実施形態における液晶ディスプレイパネル100の駆動方式は特に限定されず、IPS(In Plane Switching)方式、VA(Vertical Alignment)方式、TN(Twisted Nematic)方式等の公知のいずれの駆動方式を用いてもよい。図示したものは、バックライト150を有する、いわゆる透過型液晶ディスプレイであるが、反射型液晶ディスプレイであっても構わない。さらに、第1基板にはTFTアレイが形成される、いわゆるアクティブ型の液晶ディスプレイとして示しているが、パッシブ型の液晶ディスプレイであってもよい。
【0033】
図2は、図1のX−X断面における平面矢視図である。同図には、第1偏光板130の平面形状が表れている。第1偏光板130は、画素領域101から隣接領域102に対応する位置に延在し、矩形の第1基板110とほぼ同形大である。そして、端子形成領域103に応じた位置、すなわち、第1基板110における外部接続端子111(図示せず)のちょうど裏側に当たる部分には第1偏光板130が存在しないよう、その一辺にコ字状の切り欠き部131が設けられている。切り欠き部131の角部132には、図示するように所定の大きさの丸みが付けられている。
【0034】
第1偏光板130をこのような形状とすると、隣接領域102においても第1基板110に第1偏光板130が取り付けられているため、第1基板110が補強され、振動や外力が作用したときにもクラックが発生しにくくなる。特に、応力集中によりクラックが発生する際の起点となりやすい、画素領域101と隣接領域102との境界上であって、第1基板110の周縁部である図中C点においても第1偏光板130が延在しているから、クラックの発生を効果的に低減できる。
【0035】
一方、端子形成領域103に応じた位置には第1偏光板130が存在しないため、第1偏光板130を第1基板110に取り付けた後に、駆動用集積回路160及び外部接続用基板170の熱圧着を行っても、第1偏光板130が変形・変色することはない。第1偏光板130と端子形成領域103との間には、熱圧着時に第1偏光板130が変形・変色しない程度の隙間dを設けることが好ましい。隙間dの値は、通常は1〜5mm程度でよいが、条件により適宜設定してよい。
【0036】
また、切り欠き部131の角部132には、所定の大きさの丸みをつけることが好ましい。こうすることにより、角部132における応力集中を緩和し、角部132を起点としたクラックの発生を防止することができる。丸みの大きさは、通常は半径1〜5mm程度でよいが、条件により適宜設定してよい。
【0037】
なお、ここでは第1偏光板130を第1基板110とほぼ同形大としたが、第1基板110よりやや小さめにしてもかまわない。その場合であっても、できるだけC点に近い位置に第1偏光板130が延在するように構成することが望ましい。
【0038】
このように、本実施形態に係る液晶ディスプレイパネル100によれば、振動や外力が作用したときにもクラックの発生を低減することができ、なおかつ、駆動用集積回路160及び外部接続用基板170の熱圧着を問題なく行うことができる。」

イ 「【0042】
図4は、本発明の好適な第3の実施形態における、図2に対応する平面図である。
【0043】
本実施形態に係る液晶ディスプレイパネル300においては、矩形の画素領域301の2辺に2つの隣接領域302a,302bが隣接している。そして、隣接領域302aには端子形成領域303aが、隣接領域302bには端子形成領域303b,303cがそれぞれ設けられ、端子形成領域303aには駆動用集積回路と外部接続用基板が、端子形成領域303b,303cにはそれぞれ駆動用集積回路が電気的に接続される。第1偏光板330は、画素領域301から2つの隣接領域302a,302bへと延在しており、3つの端子形成領域303a,303b,303cに応じた位置にそれぞれ切り欠き部331a,331b,331cを有している。
【0044】
このように、隣接領域302a,302bが複数存在していてもよく、端子形成領域303a,303b,303c、切り欠き部331a,331b,331cを複数設けてもよい。また、1の切り欠き部に複数の端子形成領域を設けることもできる。切り欠き部331a,331b,331cをコ字状でなく島状としてもよいことは言うまでもない。
【0045】
図5は、本発明の好適な第4の実施形態における、図2に対応する平面図である。
【0046】
本実施形態に係る液晶ディスプレイパネル400においては、端子形成領域403の配置に応じて、第1偏光板430の切り欠き部431が、図示するように第1偏光板430の隣り合う2辺から、第1偏光板430の角を切り取るように設けられている。このようにしても、第1の実施形態よりは効果は劣るものの、効果的にクラックの発生を低減することができる。
【0047】
なお、切り欠き部の形状は、以上説明した形状に限定されるものではなく、端子形成領域に応じた位置に設けられていればどのような形状でもよい。また、駆動用集積回路は1つでも、複数設けられてもよいし、液晶ディスプレイパネルの外部に設けるようにしてもよい。」

ウ 「【図2】



エ 「【図4】



オ 「【図5】



(2)引用文献11の記載
当審拒絶理由で引用された、引用文献11(特開2014−112238号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載がある。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2010年10月29日付け米国特許出願第12/916,475号の優先権主張出願であり、当該出願の内容を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は電子機器に関し、特に、電子機器用のカメラレンズ構造体および付随するディスプレイ構造体のようなカメラ構造体に関する。
【背景技術】
【0003】
ポータブルコンピュータおよび携帯電話機のような電子機器は、カメラを有することが多い。カメラは静止画を撮影するために用いられてもよいし、テレビ電話のような動画機能をサポートするために用いられてもよい。
【0004】
カメラ付き携帯電話においてカメラは、携帯電話機のディスプレイ内のカバーガラス層の一部の下に取り付けることができる。カメラを見えなくするため、カバーガラス下に黒インクの印刷をしてもよい。黒インクにはカメラのための窓を形成するために開口が形成されてよい。
【0005】
ポータブルコンピュータにおいて、カメラはディスプレイの上縁に沿って取り付けることができる。典型的な構成において、ディスプレイはポータブルコンピュータの筐体内部に、ベゼルを用いて取り付けることができる。カメラ用の窓を形成するため、ベゼルに開口を設けることができる。
【0006】
このようなカメラ取り付け配置は、空間が非常に貴重な機器構成においては好ましくないかもしれない。例えば、携帯電話機にカバーガラス層を含めることが許容できないかもしれない。また、ポータブルコンピュータにベゼルを含めることが望ましくないかもしれない。このような従前のディスプレイ構造体が存在しない場合、カメラのような電子部品の機器内部への取り付けは挑戦的なテーマとなり得る。
【0007】
従って、電子機器のための、よりよいカメラおよびディスプレイ構造体を提供可能であることが望ましいであろう。
・・・中略・・・
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る例示的なディスプレイを有するポータブルコンピュータの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るハンドヘルド機器の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るディスプレイを有する電子機器の側断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るディスプレイ構造体の側断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電子機器ディスプレイのための偏光板の側断面図である。
【図6】ポータブルコンピュータ内の従来の液晶ディスプレイ(LCD)モジュールおよびカメラの側断面図である。
【図7】図7は図6に示したタイプの従来のカメラの斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係るディスプレイ機器で用いることのできる例示的なレンズ構造体を備えるカメラの側断面図である。
【図9】本発明の実施形態に従って、偏光板層、カラーフィルタ層、および薄膜トランジスタ層のようなディスプレイの層の下にどのようにカメラを取り付けられうるかを示す、ディスプレイの一部の側断面図である。
【図10】本発明の実施形態に従って、カメラ内のレンズが薄膜トランジスタ層における開口を貫通しながら、偏光板層およびカラーフィルタ層のようなディスプレイの層の下にカメラをどのようにして取り付けることができるかを示す、ディスプレイの一部の側断面図である。
【図11】本発明の実施形態に従って、カラーフィルタ層および薄膜トランジスタ層内を開口が貫通しながら、ディスプレイ内の偏光板層の下にカメラレンズをどのようにして取り付けることができるかを示す、ディスプレイの一部の側断面図である。
【図12】本発明の実施形態に従って、どのようにカメラレンズが偏光板層、カラーフィルタ層および薄膜トランジスタ層の開口を貫通しうるかを示す、ディスプレイの一部の側断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係るカメラに対応するためのノッチを有するディスプレイの一部を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施形態に従って、スリーブと位置合わせされたウィンドウ開口が、薄膜トランジスタ層の下に取り付けられたカメラに適合するために、どのように偏光板層およびカラーフィルタ層に形成されうるかを示す側断面図である。
【図15】本発明の実施形態に係る、図14に示すタイプのカメラ取り付け構造体に用いられ得るカメラウィンドウスリーブを示す斜視図である。
【図16】本発明の実施形態に従って、カメラのレンズ構造体の一部がカラーフィルタ層より上側に設けられ、カメラのレンズ構造体の一部がカラーフィルタ層より下側に設けられるように電子機器内に取り付けられるカメラの側断面図である。
【図17】本発明の実施形態に従って、カメラのレンズ構造体の一部がカラーフィルタ層と関連付けられた薄膜トランジスタ層より上側に取り付けられ、カメラのレンズ構造体の一部がカラーフィルタ層および薄膜トランジスタ層より下側に設けられるように、電子機器内に取り付けられたカメラの側断面図である。
【図18】本発明の実施形態に従って、カメラのレンズ構造体の一部が薄膜トランジスタ層より上側に取り付けられ、カメラのレンズ構造体の一部が薄膜トランジスタ層より下側に設けられるように、電子機器内に取り付けられたカメラの側断面図である。
【図19】本発明の実施形態に従って、プリント配線基板とカメラとの間で信号を導く相互接続線が、どうやって図18に示したタイプの薄膜トランジスタ層の周縁領域のようなディスプレイの周辺領域に通されうるかを示す図である。
【図20】本発明の実施形態に従って、カメラ開口を有する平板状の挿入部材がどのようにカラーフィルタ層および薄膜トランジスタ層のようなディスプレイの層に取り付けられうるかを示す、ディスプレイの一部の縁の展開斜視図である。
【図21】本発明の実施形態に従って、図20の平板状の挿入部材内の開口のような開口を通じてどのようにカメラのレンズが取り付けられうるかを示す側断面図である。
【図22】本発明の実施形態に従って、カメラのレンズに適合するように、開口が偏光板層および平板状挿入部材を貫通するように形成されている例示的なディスプレイ取り付け構造体の側断面図である。
【図23】本発明の実施形態に従って、カメラ開口を有し、引き延ばされた方形平板状挿入部材カメラ開口を有する平板上の挿入部材がどのようにカラーフィルタ層および薄膜トランジスタ層のようなディスプレイの層に取り付けられうるかを示す、ディスプレイの一部の縁部の展開斜視図である。
【図24】本発明の実施形態に従ってカメラウィンドウを有する平面状挿入部材が取り付けられているカメラのレンズに適合するように、開口が偏光板層および平板状挿入部材を貫通するように形成されているディスプレイの一部の側断面図である。
【図25】本発明の実施形態に従って、どのようにカメラウィンドウがカラーフィルタ層に形成されうるかを示す、ディスプレイの一部の側断面図である。
【図26】本発明の実施形態に従って、どのようにカメラウィンドウがカラーフィルタ層と薄膜トランジスタに形成されうるかを示す、ディスプレイの一部の側断面図である。
【図27】本発明の実施形態に従って、カメラのレンズ部分が、カラーフィルタ層および薄膜トランジスタ層に取り付けられている平板状挿入部材の開口を通じて飛び出すようにカメラを取り付けることができるかを示す薄膜トランジスタ電子機器の一部の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話機、および他のコンピュータ機器のような電子機器は、ディスプレイを有することができる。カメラおよび他の電子部品は、電子機器内部のディスプレイの近くに取り付けることができる。カメラ内のレンズの一部がディスプレイの1つ以上の層の上側に取り付けられ、カメラ内のレンズの一部がディスプレイの1つ以上の層の下側に取り付けられる取り付け構造体を用いることができる。一部の構造では、カメラレンズはディスプレイの1つ以上の層と付随するはめ込み層とを貫通して突き出してもよい。
【0017】
ポータブルコンピュータや、ディスプレイを有する他の電子機器のような例示的な電子機器を図1に示す。図1に示すように、機器10のディスプレイ14は筐体12の上側筐体部分12Aの中に取り付けられてよい。筐体12は、筐体の一部または全てが単一素材(例えば金属、プラスチック、または繊維複合体素材)の部材から形成されるユニボディ構造体から形成されもよいし、接着剤、ファスナー、および他の接続機構とともに取り付けられる複数の構造体から形成されてもよい。例えば、筐体12はフレーム部材と他の内部支持部材から形成されてよい。ここで、内部支持部材には外部プレート、筐体側壁、ベゼル構造体、および他の構造体が取り付けられる。
【0018】
筐体部12Aはディスプレイを収納するために用いられてよく、筐体部12Aはディスプレイ筐体と呼ばれてもよい。ディスプレイ筐体12Aは、ディスプレイ筐体12Aが(メインユニットまたはベース筐体とも呼ばれる)メイン筐体12Bに対してヒンジ軸16の周りに回転できるように、筐体部12Bとヒンジ構造体18を用いて取り付けられてよい。機器10はリムーバブルメディア、データポート、キーボード20のようなキー、トラックパッド24のような入力機器、マイク、スピーカ、センサ、ステータスインジケータ光源などのためのポートを含みうる。
【0019】
ディスプレイ14は、有効(active)部分と無効(inactive)部分を有してよい。ディスプレイ14の有効部分28Aは、図1で点線28Dを境界とする矩形のような形状を有してよい。ディスプレイ14の無効部分28Iは矩形からなる輪状(rectangularring)の形状または他の好適な形状を有してよく、またディスプレイ14の周辺を囲む縁を形成してよい。機器10のユーザに画像を提示するため、有効部分28Aにおいて液晶ダイオード画素または他の能動画素構造体を用いることができる。無効部分28Iは通常画素素子を有しておらず、ユーザに対する画像の形成には寄与しない。見苦しい内部部品を隠すため、無効部分28I内の内部部品はインク層のような不透明マスク層を用いて見えないようにすることができる。
【0020】
機器10は、無効機器領域28I内に形成される部品を有してよい。例えば、機器10はカメラ22のようなカメラを有してよい。カメラ22はディスプレイ筐体12A内に取り付けられてよく、また(カメラウィンドウと呼ばれることもある)ウィンドウを通して動作してもよい。
【0021】
ロゴ構造体28のような追加構造体が、上部筐体12Aにさらに取り付けられてよい。例えば、ロゴ26は、ディスプレイ14内の透明ウィンドウ下部の、上部筐体12Aの無効表示領域28Iに形成されてよい。」

イ 「【0037】
上側(外側)偏光板62および下側(内側)偏光板50のような偏光板は、積層された複数の材質層から形成されてよい。積層構造を有する偏光板の具体例を、図5の側断面図に示す。図5に示すように、偏光板62(すなわち、本例では上側偏光板)は、偏光フィルム68を有してよい。フィルム68は延伸ポリビニルアルコール(PVA)のような延伸ポリマーから形成されてよく、従ってPVA層と呼ばれることがあってもよい。ヨウ素分子が延伸フィルムと調和して偏光板を形成するよう、延伸PVAフィルム上にヨウ素の層が設けられてもよい。必要なら他の偏光フィルムを用いてもよい。偏光フィルム68は層66と70との間に挟まれてよい。層66および70は、トリアセチルセルロース(TAC)のような素材から形成されてよく、TACフィルムと呼ばれることがあってもよい。TACフィルムはPVAフィルムの延伸構造の維持を助けるとともに、PVAフィルムを保護するであろう。必要に応じて他のフィルムをフィルム68に積層してもよい。」

ウ 「【0055】
図12は、開口138が偏光板62、カラーフィルタ層60、および薄膜トランジスタ層52を通って延びている例示的な構成の側断面図である。このタイプの構成において、偏光板62内の開口142はカメラ22用のカメラウィンドウを形成してよい。点線140で図示したように、必要ならレンズ構造体126の一部が、プリント配線基板118またはカメラ22の基台124内の他の構造体内に収容されてもよい。必要なら、図12に示すタイプのディスプレイ構造体上にコーティング層(例えば、偏光板62およびディスプレイ14の他の層などを保護するために、偏光板62、カバーガラス層、または他の層の最外面に設けられた反射防止コーティングまたは他の層)が設けられてもよい。コーティング層は、一例として、ウィンドウ領域142内の構造体126および/または偏光板62の外表面を覆うために用いられてよい。
【0056】
図10の134、図11の136、および図12の138のような開口は、円形であっても、方形であっても、他の適切な形状を有していてもよい。これら開口の近傍でディスプレイ14を形成する層の部分は、(図10,11,および12において横方向に取り囲まれた開口として示されるように)開口を完全に取り囲んでよい。
【0057】
必要なら、開口134,136,および138のような開口は、ディスプレイ14の端部に沿って形成されてもよい。このタイプの、切り欠き形状を有する開口の構成を図13に示す。図13に示すように、開口136は薄膜トランジスタ層52およびカラーフィルタ層60のようなディスプレイ層に形成されてよい。開口136の一側面がディスプレイ14の縁に沿っているため、開口136はディスプレイ層によって完全には取り囲まれず、開放端部を有する。
【0058】
図13の開口136はカメラ22を収容するために用いることができる。例えば、レンズ構造体126(例えば図11を参照されたい)は、レンズ構造体126の最上部が偏光板層62の内面に支持されるように図13の開口136内に取り付けられてよい。点線142で示すように、切り欠き形状の開口は、図12の開口142のように偏光板62内に形成されてもよい。必要ならカラーフィルタ層60が中実かつカメラ開口を持たなくてもよい(例えば、カメラを収納する、図13の端面の揃った開口が、図10の開口134で示されるように薄膜トランジスタ層52のみを通って延びてもよい。)。
【0059】
ディスプレイ14の複数のレイヤ内の開口の内部を、円筒状のスリーブのような裏打ち構造体によって裏打ちすることが望まれるかもしれない。このタイプの構成を、図14におけるディスプレイ14の例示的な側断面図に示す。図14に示すように、開口144はスリーブ146のようなスリーブ構造体を用いて裏打ちされてよい。開口144は偏光板66、カラーフィルタ60の一部または全て、および薄膜トランジスタ層52の一部または全てを貫通してよい。開口144がスリーブ146を保持するに足りる深さを有することを確保するため、開口144は一例として、偏光板62およびカラーフィルタ層60の両方を貫通するように構成されてよい。通常、開口144は層62のみを貫通するか、層62を貫通して層60の一部または全てを通るか、層62および層60を貫通して層52の一部または全てを通るか、もっと多くの層を貫通するか、いずれであってもよい。
【0060】
必要なら、スリーブ146内の空洞を満たすために、透明物質148(例えばポリマー、ガラス、セラミックなど)を用いてもよい。スリーブ146は例えば金属、プラスチック、または他の適切な物質で形成することができる。スリーブ146はディスプレイ14への取付を容易にするため、フランジ150のようなフランジ構造を備えてもよい(例えばフランジ150の下に接着剤層を用いる)。図15は、図14のスリーブ146のような例示的なスリーブの斜視図である。図15に示すように、スリーブ146は、中央に円筒形状の開口を有する円筒形状を有してよい。必要ならスリーブ146を形成するために他の形状を用いてもよい。」

エ 「【図12】



オ 「【図13】



(3)引用文献3の記載
当審拒絶理由で引用された、引用文献3(特開2008−76872号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載がある。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の製造方法、偏光板、および、その偏光板を少なくとも1枚含む、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光板を配置することが必要不可欠である。偏光板は、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性材料からなる偏光子の両面に、偏光子保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せたものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のポリビニルアルコール系接着剤のような水系接着剤を用いる場合、偏光子と偏光子保護フィルムを貼り合わせた後に、乾燥工程が必要となる。しかし、偏光板の製造工程中に乾燥工程が存在することは、偏光板の生産性を向上させる上で好ましくない。
【0004】
上記のポリビニルアルコール系接着剤のような水系接着剤を用いる場合、水系接着剤との親和性を高めて接着性を向上させるために、水分率が30重量%程度の偏光子が一般に用いられる。しかし、水分率の高い偏光子を用いて偏光板を製造すると、得られた偏光板の高温下あるいは高温高湿下における寸法変化が大きくなってしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2006−220732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、(1)偏光板の製造工程中に乾燥工程を必要とせず、したがって偏光板の生産性が大きく向上し、また、得られた偏光板の高温下あるいは高温高湿下における寸法変化が小さく、さらに、偏光子とその両側の透明基材との接着性が向上する、偏光板の製造方法を提供すること、(2)そのような製造方法により、寸法安定性および接着安定性に優れた偏光板を提供すること、(3)そのような偏光板を用いた高品位の画像表示装置を提供すること、にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の偏光板の製造方法は、
偏光子の両側に透明基材を有する偏光板の製造方法であって、
活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて該偏光子と該透明基材とを貼り合わせ、活性エネルギー線を照射して該接着剤を硬化させる。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記活性エネルギー線が電子線である。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記偏光子の、上記透明基材との貼り合わせ前における水分率が15重量%以下である。
【0009】
本発明の別の局面によれば、偏光板が提供される。本発明の偏光板は、本発明の製造方法で得られる。
【0010】
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。本発明の画像表示装置は、本発明の偏光板を少なくとも1枚含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、偏光板の製造工程中に乾燥工程を必要とせず、したがって偏光板の生産性が大きく向上し、また、得られた偏光板の高温下あるいは高温高湿下における寸法変化が小さく、さらに、偏光子とその両側の透明基材との接着性が向上する、偏光板の製造方法を提供することができる。また、そのような製造方法により、寸法安定性および接着安定性に優れた偏光板を提供することができる。さらに、そのような偏光板を用いた高品位の画像表示装置を提供することができる。
【0012】
このような効果は、偏光子と透明基材とを貼り合わせて偏光板を製造する際に、貼り合わせのための接着剤として活性エネルギー線硬化性接着剤を用いるとともに、活性エネルギー線を照射して該接着剤を硬化させることにより発現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
本明細書において、面内の屈折率は遅相軸方向、進相軸方向をそれぞれnx、nyとし、厚み方向屈折率はnzとする。なお、遅相軸方向とは、面内の屈折率の最大となる方向をいう。
本明細書において、例えば、ny=nzとは、nyとnzとが完全に同一である場合だけでなく、nyとnzとが実質的に同一である場合も包含する。
本明細書において、面内位相差Reは、d(nm)を光学素子(透明基材など)の厚みとしたとき、式:Re=(nx−ny)×dによって求めることができる。
本明細書において、厚み方向位相差Rthは、d(nm)を光学素子(透明基材など)の厚みとしたとき、式:Rth=(nx−nz)×dによって求めることができる。
【0014】
〔偏光子〕
偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂から形成される。偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)で染色して一軸延伸したものが用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、好ましくは100〜5000、さらに好ましくは1400〜4000である。
【0015】
偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、任意の適切な方法(例えば、樹脂を水または有機溶媒に溶解した溶液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法)で成形され得る。偏光子の厚みは、偏光板が用いられるLCDの目的や用途に応じて適宜設定され得るが、代表的には5〜80μmである。
【0016】
偏光子の製造方法としては、目的、使用材料および条件等に応じて任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、膨潤、染色、架橋、延伸、水洗、および乾燥工程からなる一連の製造工程に供する方法が採用される。乾燥工程を除く各処理工程においては、それぞれの工程に用いられる溶液を含む浴中にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬することにより処理を行う。膨潤、染色、架橋、延伸、水洗、および乾燥の各処理の順番、回数および実施の有無は、目的、使用材料および条件等に応じて適宜設定され得る。例えば、いくつかの処理を1つの工程で同時に行ってもよく、特定の処理を省略してもよい。より詳細には、例えば延伸処理は、染色処理の後に行ってもよく、染色処理の前に行ってもよく、膨潤処理、染色処理および架橋処理と同時に行ってもよい。また例えば、架橋処理を延伸処理の前後に行うことが、好適に採用され得る。また例えば、水洗処理は、すべての処理の後に行ってもよく、特定の処理の後のみに行ってもよい。」

イ 「【0093】
〔実施例1〕
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素水溶液中で染色した。次いで、3重量%のホウ酸および2重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬し、さらに4重量%のホウ酸および3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中で6.0倍まで延伸した後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬した。その後、40℃のオーブンで1分間乾燥を行い、厚さ30μm、水分率14重量%の偏光子を得た。
得られた偏光子の両面に、トリアセチルセルロースフィルム(コニカ製、商品名:KC4UYW、厚み40μm)を貼り付けて、偏光板(1)を作製した。このとき、トリアセチルセルロースフィルムの偏光子への貼り付け面に電子線硬化性接着剤(ナガセケムテックス製、商品名:DA141)を厚さ5μmに塗工し、偏光子を挟むようにトリアセチルセルロースフィルムの両側からラミネートにより圧着させ、その後、100kGyの照射量の電子線を照射して、電子線硬化性接着剤を硬化させた。
偏光板(1)の評価結果を表1に示す。
・・・中略・・・
【0098】
【表1】



2 引用文献8を主引用例とした場合
(1)引用発明8
引用文献8の【0033】〜【0038】等には、「図1のX−X断面における平面矢視図」である【図2】に示されるように「第1基板110における外部接続端子111」「のちょうど裏側に当たる部分には第1偏光板130が存在しないよう、その一辺にコ字状の切り欠き部131が設けられ」ており、「切り欠き部131の角部132には、所定の大きさの丸みが付けられ」た「第1偏光板」が記載されている。すなわち、「第1偏光板130」は、その平面視において、外縁にコ字状の切り欠き部131を有している。
また、特に引用文献8の【0036】には、「切り欠き部131の角部132には、所定の大きさの丸みをつけること」「により、角部132における応力集中を緩和し、角部132を起点としたクラックの発生を防止することができる」ことが記載されており、また、同文献【0007】及び【0035】の記載から、「第1偏光板130」は、その構成として、「80℃〜90℃程度の温度までしか耐えることができない」「ポリビニールアルコールフィルムをトリアセテートフィルムで挟み積層した」構成を採用した場合においても、「端子形成領域103に応じた位置には第1偏光板130が存在しないため、第1偏光板130を第1基板110に取り付けた後に、駆動用集積回路160及び外部接続用基板170の熱圧着を行っても、第1偏光板130が変形・変色することがない」ものであると理解できる。
引用文献8の上記記載より理解される下記の「第1偏光板130」の発明を、引用発明8とする。

「平面視において、第1基板110における外部接続端子111のちょうど裏側に当たる部分には第1偏光板130が存在しないよう、外縁にコ字状の切り欠き部131が設けられており、切り欠き部131の角部132には、所定の大きさの丸みが付けられており、
こうすることにより、角部132における応力集中を緩和し、角部132を起点としたクラックの発生を防止することができ、
ポリビニールアルコールフィルムをトリアセテートフィルムで挟み積層した構成を採用した場合に、
端子形成領域103に応じた位置には第1偏光板130が存在しないため、第1偏光板130を第1基板110に取り付けた後に、駆動用集積回路160及び外部接続用基板170の熱圧着を行っても、第1偏光板130が変形・変色することがない、
第1偏光板130。」

(2)対比
ア 凹部、頂点
引用発明8の「第1偏光板130」は、「第1偏光板130が存在しないよう、外縁にコ字状の切り欠き部131が設けられており、切り欠き部131の角部132には、所定の大きさの丸みが付けられ」たものであるところ、当該「角部132」は、曲線から構成されたものといえる。
上記構成からみて、引用発明8の「切り欠き部131」及び「角部132」は、それぞれ、本願発明1の「凹部」及び「頂点」に相当する。
また、引用発明8の「切り欠き部131」は、本願発明1の「該凹部が、曲線から構成される頂点を有するか、あるいは、円弧状またはU字状である」という要件を満たしている。

イ 偏光板
上記アの構成及びその文言の意味からみて、引用発明8の「第1偏光板130」は、本願発明1の「偏光板」に相当する。
また、上記アの構成より、両者は「平面視において、外縁に凹部を有」する点で共通する。

(3)一致点及び相違点
ア 一致点
上記(2)によれば、本願発明1と引用発明8は、次の点で一致する。
「偏光板であって、
該偏光板が、平面視において、外縁に凹部を有し、
該凹部が、曲線から構成される頂点を有するか、あるいは、円弧状またはU字状である、
偏光板。」

イ 相違点
上記(2)によれば、本願発明1と引用発明8は、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1においては、「偏光板」が「偏光子と、該偏光子の両面に配置された保護層とを備え」、「保護層」が「セルロース系樹脂から形成され」、「保護層の厚み」が「20μm〜40μmである」であるのに対し、引用発明8においては、そのように特定されていない点。

(4)判断
引用発明8は、「ポリビニールアルコールフィルムをトリアセテートフィルムで挟み積層した構成を採用した場合に、端子形成領域103に応じた位置には第1偏光板130が存在しないため、第1偏光板130を第1基板110に取り付けた後に、駆動用集積回路160及び外部接続用基板170の熱圧着を行っても、第1偏光板130が変形・変色することがない」ものであることから、「ポリビニールアルコールフィルムをトリアセテートフィルムで挟み積層した」構造とすることを前提とするものである(当合議体注:技術常識を参酌すると、「ポリビニールアルコールフィルム」が偏光子であることは自明であり、また、ここでいう「トリアセテートフィルム」は保護層として機能する「セルロース系樹脂」である「トリアセチルセルロース(セルローストリアセテート)」を意味すると解される。)。
そうすると、引用発明8は、「偏光子と、該偏光子の両面に配置された保護層とを備える、偏光板であって、該保護層が、セルロース系樹脂から形成され」という構成を備えるものといえる。
また、仮にそうでないとしても、引用発明8の偏光板の構成として、周知である「セルロース系樹脂から形成され」る「保護層」が「該偏光子の両面に配置された」構成(当合議体注:例えば、引用文献3の【0014】、【0031】、【0069】、【0093】、【図1】、引用文献9の【0054】及び特開2016−85318号公報の【0040】、【0059】、【0061】〜【0065】等を参照。)を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
さらに、本願発明1で特定される「20μm〜40μm」という厚みは、偏光板のセルロース樹脂等からなる保護層の一般的な厚みにすぎず(当合議体注:引用文献3(【0093】)、引用文献9(【0054】)及び特開2016−85318号公報(【0040】、【0059】、【0061】〜【0065】)を参照。)、引用発明8において、セルロース系フィルムの厚みを上記範囲内の厚みとすることは当業者の通常の創作能力の発揮の範疇である。
以上のことから、本願発明1は、引用発明8及び周知技術等に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

3 引用文献11を主引用例とした場合
(1)引用発明11
引用文献11の【0057】〜【0058】等の記載から、「偏光板62」は、【図13】に示されるように「カメラ22を収容するため」の「ディスプレイ14の端部に沿って形成された」「開口136」を有する「薄膜トランジスタ層52」および「カラーフィルタ層60」と積層されるものであることがみてとれる。また、【図13】から、当該「開口136」は、平面視において、外縁に設けらたものであることが理解できる。
引用文献11の上記記載から理解される下記の「偏光板62」の発明を、引用発明11とする。

「ディスプレイ14の端部に沿って形成され、平面視において、外縁に設けられたカメラ22を収容するために用いることができる開口136を有する薄膜トランジスタ層52およびカラーフィルタ層60と積層される、
偏光板62。」

(2)対比
ア 偏光板
引用発明11の「偏光板62」は、その文言の意味するとおり、本願発明1の「偏光板」に相当する。

(3)一致点及び相違点
ア 一致点
上記(2)によれば、本願発明1と引用発明11とは、「偏光板。」である点で一致する。

イ 相違点
上記(2)によれば、本願発明1と引用発明11は、次の点で相違する。
(相違点2)
本願発明1においては、「偏光板」が「偏光子と、該偏光子の両面に配置された保護層とを備え」、「保護層」が「セルロース系樹脂から形成され」、「保護層の厚み」が「20μm〜40μmである」であるのに対し、引用発明11においては、そのように特定されていない点。

(相違点3)
本願発明1においては、「偏光板」が、「平面視において、外縁に凹部を有し、該凹部が、曲線から構成される頂点を有するか、あるいは、円弧状またはU字状であ」るのに対し、引用発明11においては、そのように特定されていない点。

(4)判断
(相違点2について)
引用文献11の【0037】には、「偏光板62」の構成として、偏光フィルム68がトリアセチルセルロース(TAC)から形成される層66と70との間に挟まれた構成のものとすることが示唆されており、TACフィルムがPVAフィルムを保護することも記載されている。
そうすると、引用発明11において、上記示唆に基づいて、偏光板を、偏光子と、該偏光子の両面に配置された保護層とを備える、偏光板であって、該保護層が、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース)から形成されるものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、保護層の厚みが20μm〜40μmである点については、上記2(4)に記載したとおり、当業者の通常の創作能力の発揮の範疇である。

(相違点3について)
引用文献11の【0058】及び【図13】には、引用発明11の「偏光板62」の一辺のうち、「カメラ22を収容するために用いることができる開口136」と対向する位置(図13の点線142で示される位置)に、切り欠き形状の開口142を形成することが示唆されている。そうしてみると、当該示唆に接した当業者は、引用発明11の「偏光板62」の一辺にも開口142を設けて、偏光板が、平面視において、外縁に凹部を有するものに設計変更するように動機づけられるといえる。そして、各種の形状の凹部を有する偏光板が知られているところ(当合議体注:例えば、引用文献6の第16図〜第17図、第19図〜第20図、引用文献8の上記摘記箇所及び引用文献10の[0048]、[図8]を参照。)、引用発明11において、凹部の形状を、収容するものの形状に応じて、曲線から構成される頂点を有する形状、あるいは、円弧状またはU字状とすることは、上記設計変更にともなって当業者が適宜採用し得る事項である。
以上のことから、本願発明1は、引用発明11及び周知技術等に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

4 引用文献3を主引用例とした場合
(1)引用発明3
引用文献3の実施例1(【0093】等)から理解される下記の「偏光板(1)」の発明を、引用発明3とする。

「 厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素水溶液中で染色し、次いで、3重量%のホウ酸および2重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬し、さらに4重量%のホウ酸および3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中で6.0倍まで延伸した後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬し、その後、40℃のオーブンで1分間乾燥を行い、厚さ30μm、水分率14重量%の偏光子を得て、
得られた偏光子の両面に、トリアセチルセルロースフィルム(コニカ製、商品名:KC4UYW、厚み40μm)を貼り付けて、偏光板(1)を作製し、このとき、トリアセチルセルロースフィルムの偏光子への貼り付け面に電子線硬化性接着剤(ナガセケムテックス製、商品名:DA141)を厚さ5μmに塗工し、偏光子を挟むようにトリアセチルセルロースフィルムの両側からラミネートにより圧着させ、その後、100kGyの照射量の電子線を照射して、電子線硬化性接着剤を硬化させた、
偏光板(1)。」

(2)対比
ア 保護層
引用発明3の「トリアセチルセルロースフィルム(コニカ製、商品名:KC4UYW、厚み40μm)」は、「偏光子の両面に」「貼り付け」られたものであり、その構成及び技術常識からみて、「保護層」として機能するものである。また、「トリアセチルセルロースフィルム」がセルロース系樹脂から形成されるものであることは明らかである。
以上総合すると、引用発明3の「トリアセチルセルロースフィルム」は、本願発明1の「保護層」に相当する。
また、引用発明3は、本願発明1の「該保護層が、セルロース系樹脂から形成され」、「該保護層の厚みが、20μm〜40μmである」という要件を満たしている。

イ 偏光板
引用発明3の「偏光板(1)」は、その文言の意味するとおり、本願発明1の「偏光板」に相当する。
また、上記アの記載した構成から、引用発明3は、本願発明1の「偏光子と、該偏光子の両面に配置された保護層とを備える」という要件を満たしている。

(3)一致点及び相違点
ア 一致点
上記(2)によれば、本願発明1と引用発明3は、次の点で一致する。
「偏光子と、該偏光子の両面に配置された保護層とを備える、偏光板であって、
該保護層が、セルロース系樹脂から形成され、
該保護層の厚みが、20μm〜40μmである、
偏光板。」

イ 相違点
上記(2)によれば、本願発明1と引用発明3は、次の点で相違する。
(相違点4)
本願発明1においては、「偏光板」が、「平面視において、外縁に凹部を有し、該凹部が、曲線から構成される頂点を有するか、あるいは、円弧状またはU字状であ」るのに対し、引用発明3においては、そのように特定されていない点。

(4)判断
相違点4について検討する。
本件出願時において、その用途等に応じて偏光板の形状を加工する技術、すなわち、偏光板の外縁に凹部を形成する技術は、当業者の周知慣用技術であり、その偏光板が使用される装置の設計等に応じて当業者が適宜選択できたことである。また、凹部の形状として各種の形状の凹部を備える偏光板が知られているところ(当合議体注:例えば、引用文献6、引用文献8、引用文献10の上記摘記箇所を参照。)、凹部の形状は使用される装置の形状等に応じて適宜決定すべきものといえる。
そうすると、引用発明3において、その用途等に応じて上記技術を採用し、平面視において、外縁に凹部を有し、該凹部が、曲線から構成される頂点を有するか、あるいは、円弧状またはU字状のものとすることは、当業者であれば通常の創作能力の発揮の範疇である。

以上のことから、本願発明1は、引用発明3及び周知技術等に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

5 発明の効果について
本願発明の効果に関して、本件出願の明細書の【0006】には、「本発明によれば、セルロース系樹脂から構成される保護層を備えることにより、外縁に凹部を有する形状であるか、または貫通孔を有する形状であっても、クラックが発生しがたい偏光板を提供することができる。」と記載されている。
しかしながら、当該効果は、引用発明3、8、11及び周知技術等から容易に推考される発明が具備する効果である。

6 審判請求人の令和3年12月6日提出の意見書の主張について
審判請求人は、令和3年12月6日提出の意見書の「2.特許法第29条第2項に関する拒絶理由について」において、
「(引用文献8を主引例としたご指摘について)
・・・中略・・・
しかしながら、従来、薄いセルロース系フィルムは、保護性不足の観点から、クラックが生じやすい形状の偏光子(以下、異形状偏光子ともいう)の保護層としては用いられていませんでした。したがって、厚みが20μm〜80μmであるセルロース系フィルムが周知であるとしても、このような薄いフィルムを異形状偏光子に適用することは、当業者が容易に想到し得ることではありません。
このように、引用文献8の発明において、保護層の厚みを薄くすることは、当業者が容易に想到し得たことではありません。したがって、本願発明は、引用文献8、ならびに、引用文献3〜5および9に基づき、容易にできた発明ではありません。
引用文献6および10は、従属項に引用された文献であるため、詳細な対比説明は省略いたしますが、これらの文献においても、セルロース系樹脂から形成され、かつ、厚みが20μm〜80μmである保護層を備える異形状の偏光板は、開示も示唆もされていません。」(以下「主張1」という。)、
「(引用文献11を主引例としたご指摘について)
・・・中略・・・
しかしながら、上述のとおり、保護性の観点から、厚み20μm〜80μmの薄いフィルムを異形状偏光子に適用することは、当業者が容易に想到し得ることではありません。
換言すると、仮に、引用文献11の偏光板の保護層として、本願発明で特定するような厚みの薄い保護層を用いたとすれば、従来の技術常識からすると、偏光子の保護性が低下するため、当業者は、外縁に凹部を設けるなど、偏光子のクラックを誘発するような形状変更をしようとはしません。
拒絶理由通知書においては、「各種の形状の凹部を有する偏光板が知られているところ(引用文献6、8及び10の上記摘記箇所を参照。)、引用発明11において、凹部の形状を、収容するものの形状に応じて、曲線から構成される頂点を有する形状、あるいは、円弧状またはU字状とすることは、当業者の設計的事項の範疇である」旨のご指摘をいただいております。しかしながら、各種の形状の凹部を有する偏光板が知られているとしても、このような偏光板において、保護層の厚みを薄くすることは容易に想到し得る事項ではありません。したがって、引用文献11の偏光板の保護層の厚みを40μm以下としつつ、引用文献6、8および10の開示に基づき、引用文献1の偏光板の形状を変更するということは、当業者が容易に想到し得る事項ではありません。」(以下「主張2」という。)、
「(引用文献3を主引例としたご指摘について)
・・・中略・・・しかしながら、引用文献6、8および10においては、保護層の厚みは開示も示唆もされていません。
仮に、引用文献3の偏光板の保護層として、本願発明で特定するような厚みの薄い保護層を用いたとしても、従来の技術常識からすると、偏光子の保護性が低下するため、当業者は、外縁に凹部を設けるなど、偏光子のクラックを誘発するような形状変更をしようとはしません。したがって、引用文献3の偏光板の保護層の厚みを40μm以下としつつ、引用文献6、8および10の開示に基づき、引用文献3の偏光板の形状を変更するということは、当業者が容易に想到し得る事項ではありません。」(以下「主張3」という。)と主張している。

上記主張1について検討する。
表示装置、光学フィルム等の薄型化の要請に基づいて保護層としてできる限り薄いものを用いることは当業者の自明の課題であり、当業者が偏光板の設計において通常考慮することである(当合議体注:例えば特開2016−85318号公報の【0040】等を参照。)。また、上記2(4)で述べたように、厚み40μmのセルロース系フィルムを用いた偏光板は周知であり、このような厚みのセルロース系フィルムを用いることが格別な技術的事項であるともいえない。
そして、引用発明8において、上記自明の課題の下、従来の保護層との厚みを参考にして40μm程度の厚みのものとすることは当業者であれば適宜試みることのできたものである。ここで、仮に、審判請求人が主張するように、20〜40μmの厚みの保護層を有する偏光板を加工した場合にクラックが生じやすいことが知られていたとしても、クラックの生じ易さは保護層の厚みのみならず、偏光板を形成する他の層を含めた全体の層構成や凹部の大きさ、形状にも依存するものであり、厚み以外の条件を調整することによりクラックが生じないものとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮であり、そのような調整により保護層が厚み40μm程度の厚みであってもクラックがないものを得ることが困難という理由もないから、当業者であれば適宜なし得たことであるといえる。
以上の点は、上記主張2についても同様にいえることである。
また、特に引用発明8は、「角部132」を備えることによりに「応力集中を緩和し、角部132を起点としたクラックの発生を防止することができ」るものであることから、このようなクラックの発生の抑制効果のある偏光板において、薄型化の要請のために薄い保護層を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
上記主張3についても、同様に、厚み40μmである偏光板において、上記周知技術を採用を試みることが困難という理由はないから、引用発明3において凹部を形成する周知技術を採用することで本願発明を導くことは当業者であれば容易に想到し得たことである。

したがって、審判請求人の上記主張1〜3は、採用することができない。


第3 むすび
本願発明は、引用文献3、8又は11に記載された発明及び周知技術等に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-03 
結審通知日 2022-03-08 
審決日 2022-03-23 
出願番号 P2016-156549
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 下村 一石
関根 洋之
発明の名称 偏光板  
代理人 籾井 孝文  

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