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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1384830
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-20 
確定日 2022-04-28 
事件の表示 特願2017−45216号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年9月27日出願公開、特開2018−148936号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯の概要
本願は、平成29年3月9日の特許出願であって、令和2年6月2日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月3日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに同年10月5日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年11月30日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、
令和3年1月14日付け(送達日:同年2月2日)で、令和2年11月30日に提出された手続補正書による補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、
それに対して、令和3年4月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、
これに対し、当審判合議体において、同年10月20日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月14日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年12月14日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(記号A〜Eは、分説するために当審判合議体にて付した。)。
「A 遊技に伴う演出の実行を指示する演出制御手段と、
B 前記演出制御手段により実行を指示された演出に応じて機能する演出手段と、
C 前記演出制御手段からの指示を受けると、前記演出手段が機能するのに必要な実行パターンを演算に基づいて生成して前記演出手段に送る動作制御と、前記演出制御手段に対して第1通知及び前記実行パターンを生成し終えた後に行う第2通知を行いうる通知制御とを実行可能な演出手段制御手段と
を備え、
D 前記演出制御手段は、
前記第1通知がなされることなく前記第2通知がなされた場合に、異常が発生したと判定する
E ことを特徴とする遊技機。」

3 当審拒絶理由
当審拒絶理由は、次の理由を含むものである。
(1)(進歩性
本願発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


1.特開2013−51794号公報
2.特開2015−107261号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2014−73327号公報(周知技術を示す文献)

4 引用文献1の記載事項、引用発明について
(1)引用文献1の記載事項
当審判合議体による拒絶の理由において引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2013−51794号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審判合議体にて付した。以下同じ。)。

ア 「【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一つの実施形態による可動体駆動装置を、図を参照しつつ説明する。この可動体駆動装置は、可動体の位置を検出するセンサからの検知信号及び可動体を駆動するステッピングモータといった駆動ユニットの動作に基づいて、可動体の現在位置を求め、その現在位置を記憶する。そしてこの可動体駆動装置は、演出用CPUといった上位の制御装置から受信した、可動体の移動目的地を表す情報と可動体の現在位置との差、あるいは、可動体の現在位置における直前の動作の際の移動方向に基づいて、可動体の移動方向を決定し、その移動目的地に達するまで可動体を駆動する。これにより、この可動体駆動装置は、上位の制御装置が可動体の現在位置を把握していなくても、可動体を所望の移動目的地まで移動させることを可能として、上位の制御装置の負荷を軽減する。
【0017】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る可動体駆動装置の概略構成図である。図1に示されるように、可動体駆動装置1は、通信回路2と、レジスタ3と、デューティ比制御回路4と、センサインターフェース部5と、モータ制御回路6と、ソレノイド制御回路7と、を有する。
可動体駆動装置1が有するこれらの各部は、それぞれ、別個の回路として回路基板(図示せず)上に実装されてもよく、あるいは、これらの各部が集積された集積回路として回路基板上に実装されてもよい。
本実施形態では、可動体駆動装置1は、複数の駆動ユニットを制御する機能を持つ。複数の駆動ユニットのそれぞれは、二つのステッピングモータと、一つのソレノイドである。ソレノイドは、例えば、コイルを励磁することにより、磁性体からなる可動体を吸引することによって、その可動体を駆動する。そのため、例えば、ソレノイドは、可動体の移動可能範囲に沿って、互いに異なる位置に配置された複数のコイルを有し、それらコイルが、可動体の移動方向に沿って順次励起されることにより、可動体がその移動方向に沿って移動する。」

イ 「【0023】
演出用CPUは、ステッピングモータにより駆動される各可動体について、上記の何れかのモードに従って可動体の移動目的地を指定する制御コマンドを生成し、その制御コマンドを可動体駆動装置1へ送信することで、可動体をその移動目的地へ移動させることができる。
以下、可動体駆動装置1の各部について説明する。
【0024】
通信回路2は、例えば、可動体駆動装置1が実装された遊技機の演出用CPUと可動体駆動装置1とを接続する。そして通信回路2は、演出用CPUから、シリアル伝送される複数のビットを持つ制御コマンドと、制御コマンドを解析するために、制御コマンドに含まれる複数のビットのそれぞれと同期を取るためのクロック信号とを受信する。
制御コマンドは、例えば、何れかの駆動ユニットが駆動する可動体の動作を特定するための動作情報またはその駆動ユニットについての設定を規定する設定情報とを含む。一つの駆動ユニットに対する、動作情報と設定情報の組を、便宜上、以下ではコマンドセットと呼ぶ。一つのコマンドセットは、可動体の一つの動作を規定する。
クロック信号は、例えば、制御コマンド中の所定数のビットごとに、矩形状のパルスを持つ信号とすることができる。
・・・
【0037】
図4(a)は、駆動ユニットがステッピングモータである場合における、設定情報を含む制御コマンドのフォーマットの一例を示す図である。制御コマンド400は、先頭から順に、STARTフラグ401と、デバイスアドレス402と、動作/設定切替フラグ403と、系統指定フラグ404と、制御データ405と、ENDフラグ406とを有する。設定情報を含む制御コマンド400は、図3に示された動作情報を含む制御コマンド300と比較して、動作/設定切替フラグ403の値が'1'であること、及び制御データ405の内容が異なる。そこで以下では、制御データ405について説明する。
【0038】
制御データ405は、2ビット長を持つ設定モードフラグ4051と、設定データ4052とを含む。
設定モードフラグ4051は、個別コマンドごとの設定を行う個別設定モードか、全ての制御コマンドに共通の設定を行う初期設定モードかを規定する。本実施形態では、設定モードフラグ4051が'00'であれば、個別設定モードであることを表し、一方、設定モードフラグ4051が'01'であれば初期設定モードであることを表す。
・・・
【0046】
さらに、設定データ4052は、可動体の位置を検知するセンサから検知信号が入力されたときの可動体の位置座標、一つの可動体に対して複数のセンサが設置される場合に、何れのセンサについての位置座標かを指定するフラグなどを規定するデータを含んでいてもよい。
また、駆動ユニットがソレノイドである場合の制御コマンドは、可動体の移動目的地または移動方向、ソレノイドが有する各コイルへ出力される励磁信号のデューティ比などを規定するデータを含んでもよい。」

ウ 「【0056】
センサインターフェース部5は、可動体の位置を検出するセンサからの検知信号を受信するインターフェース回路を有する。センサインターフェース部5は、例えば、センサごとに異なる入力端子を有してもよい。
ここで、センサは、例えば、発光ダイオードといった光源と、その光源と対向して、光源からの光を受光可能なように配置されるフォトダイオードといった受光素子を有する。そしてセンサは、例えば、可動体の移動可能範囲の何れかの一端、例えば、水平方向に移動可能な可動体であれば、その移動可能範囲の左端または右端に設置される。そして、可動体がセンサが設置された端部に達した場合に限り、光源からの光が可動体で遮られることにより、受光素子で検知される光量が低下することで、センサは、可動体がその端部に達したことを検知する。そして、センサは、可動体を検知すると、検知したことを表す検知信号をセンサインターフェース部5へ出力する。
なおセンサは、マグネットセンサといった、他の原理に基づく近接センサであってもよい。また、一つの可動体につき、複数のセンサが設置されてもよい。この場合、各センサは、それぞれ、可動体の移動可能範囲内の互いに異なる位置に設置される。例えば、一つの可動体に対して二つのセンサが設置される場合、その二つのセンサは、可動体の移動可能範囲の両端にそれぞれ設置される。
【0057】
センサインターフェース部5は、ステッピングモータにより駆動される可動体の位置を検知するセンサから検知信号を受信した場合、その検知信号をモータ制御回路6へ通知する。またセンサインターフェース部5は、ソレノイドにより駆動される可動体の位置を検知するセンサから検知信号を受信した場合、その検知信号をソレノイド制御回路7へ通知する。その際、センサインターフェース部5は、どの可動部に対して設置されたセンサの検知信号か識別可能なように、検知信号を受信してからセンサごとに異なる遅延時間だけずらしてからその検知信号をモータ制御回路6またはソレノイド制御回路7へ転送してもよい。あるいは、センサインターフェース部5は、センサごとに異なる識別コードとともに、検知信号をモータ制御回路6またはソレノイド制御回路7へ転送してもよい。
【0058】
モータ制御回路6は、レジスタ3から読み出したコマンドセットに従って、駆動ユニットの一例であるステッピングモータを制御する。本実施形態では、モータ制御回路6は、一方のステッピングモータを制御するための第1制御回路61と、他方のステッピングモータを制御するための第2制御回路62とを有する。各制御回路61、62は、それぞれ、例えば、プロセッサを有し、レジスタ3から別個にコマンドセットを受け取って、対応する可動体を駆動するステッピングモータを制御する。さらにモータ制御回路6は、各可動体の現在位置及び一つ前のステップの動作開始時における位置を記憶するメモリ回路63を有する。このメモリ回路63は、可動体の現在位置を記憶する記憶部の一例である。」

エ 「【0073】
その後、各制御回路61、62は、設定情報に含まれる励磁モードフラグの値に対応する励磁方式及び移動方向に従って、決定された動作期間に相当する、ステッピングモータの各端子に印加するパルス状の駆動信号を生成する。この場合、各制御回路61、62は、例えば、メモリ回路63に記憶され、各制御回路61、62により実行される、駆動信号を生成するためのプログラムに従って、1ステップ当たりの動作期間、励磁方式及び移動方向に対応する駆動信号を生成すればよい。なお、各端子へ出力される励磁方式に応じた駆動信号の信号波形は、例えば、特許文献1及び2にも開示されているように公知であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0074】
さらに各制御回路61、62は、デューティ比制御回路4から受け取った連続パルス信号とその駆動信号を乗じることにより、各端子に印加する駆動信号をパルス幅変調する。これにより、可動体駆動装置1は、パルス信号のデューティ比を小さくすることで、制御対象のステッピングモータの発熱量を抑制することができ、一方、パルス信号のデューティ比を大きくすることで、制御対象のステッピングモータのトルクを大きくすることができる。そして各制御回路61、62は、パルス幅変調された各端子の駆動信号を出力する。
・・・
【0077】
一方、移動目的地の座標が相対値指定されている場合には、各制御回路61、62は、その相対値で指定されたステップ数分の駆動信号を各端子へ出力し、そのステップ数分だけ、現在位置等を更新する。その後、各制御回路61、62は、一つのコマンドセットに相当する可動体の動作が終了したと判定する。
【0078】
各制御回路61、62は、可動体の動作が終了したと判定すると、通信回路2を介して、命令完了信号を演出用CPUへ送信する。
【0079】
また、各制御回路61、62は、自動補正フラグがONである場合に、センサインターフェース部5から、その制御回路に対応するステッピングモータが駆動する可動体の位置を検知するセンサからの検知信号を受け取ると、メモリ回路63に記憶されている可動体の位置を表す座標値を、その検知信号に対応するセンサが可動体を検知する位置である検知位置を表す座標値に書き換える。これにより、可動体がセンサの検知位置に達する度に、可動体駆動装置1が記憶する可動体の現在位置が正しい位置に修正されるので、ステッピングモータの回転に可動体が追従できないことが生じても、可動体駆動装置1は、可動体の正確な位置を把握することができる。」

オ 「【0083】
上記の実施形態または変形例による可動体駆動装置は、弾球遊技機または回胴遊技機といった遊技機に搭載されてもよい。
図8は、上記の実施形態または変形例による可動体駆動装置を備えた弾球遊技機100の概略斜視図である。また図9は、弾球遊技機100の概略背面図である。図8に示すように、弾球遊技機100は、上部から中央部の大部分の領域に設けられ、遊技機本体である遊技盤101と、遊技盤101の下方に配設された球受け部102と、ハンドルを備えた操作部103と、遊技盤101の略中央に設けられた表示装置104とを有する。
また弾球遊技機100は、遊技の演出のために、遊技盤101の前面において遊技盤101の下方に配置された固定役物部105と、遊技盤101と固定役物部105との間に配置された可動役物部106とを有する。また遊技盤101の側方にはレール107が配設されている。また遊技盤101上には多数の障害釘(図示せず)及び少なくとも一つの入賞装置108が設けられている。
【0084】
操作部103は、遊技者の操作によるハンドルの回動量に応じて図示しない発射装置より所定の力で遊技球を発射する。発射された遊技球は、レール107に沿って上方へ移動し、多数の障害釘の間を落下する。そして遊技球が何れかの入賞装置108に入ったことを、図示しないセンサにより検知すると、遊技盤101の背面に設けられた主制御回路110は、遊技球が入った入賞装置108に応じた所定個の遊技球を玉払い出し装置(図示せず)を介して球受け部102へ払い出す。さらに主制御回路110は、遊技盤101の背面に設けられた演出用CPU111を介して表示装置104に様々な映像を表示させる。
【0085】
可動役物部106は、遊技の状態に応じて移動する可動体の一例であり、遊技盤101の背面に設けられた、本発明の実施形態またはその変形例による可動体駆動装置112により駆動される。なお、遊技機100が、可動役物部106以外にも可動体を有する場合、例えば、入賞装置107の開口部に、開口の大きさを可変にする可動体を有する場合、その可動体も、可動体駆動装置112によって駆動されてもよい。
・・・
【0088】
支持部材122の上面側には、直線歯車としての歯が形成されており、この歯が、移動可能範囲の右上方側の端部に可動役物部106が位置する場合の支持部材122の左下端側の端部の位置近傍に設置された減速ギア124と係合する。また減速ギア124は、ステッピングモータ125の回転軸126に取り付けられたギア127と係合している。そのため、ステッピングモータ125が所定角度回転することにより、ギア127及び減速ギア124を介して、その回転角度に対応する所定の移動量だけ可動役物部106が移動する。そしてステッピングモータ125は、可動体駆動装置112により制御される。
・・・
【0090】
主制御回路110から演出用CPU111に伝達された遊技の状態を表す状態信号に基づいて、演出用CPU111は、可動役物部106の目標座標を決定し、その決定に従った制御コマンドを生成する。そして演出用CPU111は、生成した制御コマンドを可動体駆動装置112へ出力する。例えば、遊技球が入賞装置107に入る前は、演出用CPU111は、可動役物部106が固定役物部105に隠れるように、可動役物部106をその移動可能範囲の左下方の端部を移動目的地として指定する制御コマンドを可動体駆動装置112へ送信する。一方、遊技球が入賞装置107に入ったことが検知され、そのことを示す状態信号が主制御回路110から演出用CPU111に入力されると、演出用CPU111は、可動役物部106をその移動可能範囲の右上方の端部を移動目的地として指定する制御コマンドを生成し、その制御コマンドを可動体駆動装置112へ送信する。」

(2)引用発明について
上記(1)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a〜eは、本願発明のA〜Eに概ね対応させて当審判合議体にて付与した。)。
「a、b
主制御回路110、演出用CPU111、可動役物部106(可動体)、可動役物部106を移動させるステッピングモータ125、通信回路2とレジスタ3とセンサインターフェース部5とモータ制御回路6とを有する可動体駆動装置112を備え(【0016】、【0017】、【0084】、【0085】、【0088】)、
演出用CPU111は、主制御回路110から伝達された遊技の状態を表す状態信号に基づいて可動役物部106の目標座標を決定し、その決定に従った制御コマンドを生成し、生成した制御コマンドを可動体駆動装置112へ出力することで、可動役物部106をその移動目的地へ移動させることができ(【0023】、【0090】)、

制御コマンドは、何れかの駆動ユニットが駆動する可動体の動作を特定するための動作情報またはその駆動ユニットについての設定を規定する設定情報を含み、一つの駆動ユニットに対する動作情報と設定情報の組を、コマンドセットと呼び、一つのコマンドセットは、可動体の一つの動作を規定し(【0024】)、
制御コマンド400の設定情報は、設定データ4052を含む制御データ405を有し(【0037】、【0038】)、
設定データ4052は、可動体の位置を検知するセンサから検知信号が入力されたときの可動体の位置座標、一つの可動体に対して複数のセンサが設置される場合に、何れのセンサについての位置座標かを指定するフラグなどを規定するデータを含み(【0046】)、
モータ制御回路6は、第1制御回路61,第2制御回路62を有し、第1制御回路61,第2制御回路62は、レジスタ3から別個にコマンドセットを受け取って、対応する可動体を駆動するステッピングモータを制御し(【0058】)、
可動体駆動装置112は(【0017】、【0058】、【0085】)、
制御コマンドに含まれる、設定情報に従って決定された動作期間に相当する、パルス状の駆動信号をプログラムに従って生成し、該駆動信号をステッピングモータ125の各端子に印加することで可動役物部106を移動させ(【0024】、【0073】、【0088】)、
移動目的地の座標が相対値指定されている場合には、その相対値で指定されたステップ数分の駆動信号を各端子へ出力し、そのステップ数分だけ、現在位置等を更新し、その後、一つのコマンドセットに相当する可動体の動作が終了したと判定し(【0077】)、
可動体の動作が終了したと判定すると、通信回路2を介して、命令完了信号を演出用CPU111へ送信し(【0078】)、

センサインターフェース部5は、可動体の位置を検出するセンサからの検知信号を受信するインターフェース回路を有し、ステッピングモータ125により駆動される可動体の位置を検知するセンサから検知信号を受信した場合、その検知信号をモータ制御回路6へ通知し(【0056】、【0057】)、
可動体駆動装置112は(【0017】、【0058】、【0085】)、
自動補正フラグがONである場合に、センサインターフェース部5から、その制御回路に対応するステッピングモータが駆動する可動体の位置を検知するセンサからの検知信号を受け取ると、メモリ回路63に記憶されている可動体の位置を表す座標値を、その検知信号に対応するセンサが可動体を検知する位置である検知位置を表す座標値に書き換える【0079】)

弾球遊技機100(【0083】)。」

5 対比
本願発明と引用発明とを、分説に従い対比する。
(a)
引用発明の「主制御回路110から伝達された遊技の状態を表す状態信号に基づいて可動役物部106の目標座標を決定し、その決定に従った制御コマンドを生成し、生成した制御コマンドを可動体駆動装置112へ出力することで、可動役物部106をその移動目的地へ移動させることができ」ることは、「制御コマンド」を出力することにより、「遊技の状態」に基づいて「可動役物部106」を移動させる演出の実行を指示することであるから、本願発明の「遊技に伴う演出の実行を指示する」ことに相当する。
したがって、引用発明の構成a、bの「主制御回路110から伝達された遊技の状態を表す状態信号に基づいて可動役物部106の目標座標を決定し、その決定に従った制御コマンドを生成し、生成した制御コマンドを可動体駆動装置112へ出力することで、可動役物部106をその移動目的地へ移動させることができ」る「演出用CPU111」は、本願発明の構成Aの「遊技に伴う演出の実行を指示する演出制御手段」としての機能を有する。

(b)
引用発明は、「演出用CPU111」が、「生成した制御コマンドを可動体駆動装置112へ出力することで」、「可動役物部106をその移動目的地へ移動させることができ」るものである。
そして、上記(a)より、引用発明の「演出用CPU111」は、本願発明の「遊技に伴う演出の実行を指示する演出制御手段」としての機能を有する。
また、引用発明の「可動役物部106をその移動目的地へ移動させることができ」ることは、本願補正発明の「指示された演出に応じて機能する」ことに相当する。
したがって、上記(a)より、引用発明の構成a、bの「可動役物部106」は、本願発明の構成Bの「前記演出制御手段により実行を指示された演出に応じて機能する演出手段」に相当する。

(c)
引用発明は、構成a、bより、「演出用CPU111」が、「制御コマンドを生成し、生成した制御コマンドを可動体駆動装置112へ出力」し、「可動体駆動装置112」は、「通信回路2とレジスタ3と」「モータ制御回路6と」を有するものである。
そして、引用発明において、「モータ制御回路6は、レジスタ3から別個にコマンドセットを受け取って」いるものである。
そうすると、引用発明において、「モータ制御回路6」は、「演出用CPU111」から出力された「制御コマンド」に基づく「コマンドセット」の指示を受けるものであるといえるから、引用発明の構成aの「モータ制御回路6」「を有する可動体駆動装置112」は、本願発明の「演出制御手段からの指示を受ける」「演出手段制御手段」に相当する。

また、引用発明における「設定情報に従って決定された動作期間に相当する、パルス状の駆動信号」、「プログラムに従って生成」すること、「駆動信号をステッピングモータ125の各端子に印加する」ことは、それぞれ、本願発明の「演出手段が機能するのに必要な実行パターン」、「演算に基づいて生成」すること、「演出手段に送る」ことに相当するから、引用発明における「可動体駆動装置112」は、本願発明の「演出手段が機能するのに必要な実行パターンを演算に基づいて生成して演出手段に送る動作制御」「を実行可能な演出手段制御手段」の機能を備えるものである。

さらに、引用発明において、「可動体の動作が終了した」ことの判定は、「移動目的地の座標が相対値指定されている場合には、その相対値で指定されたステップ数分の駆動信号を各端子へ出力し、そのステップ数分だけ、現在位置等を更新し、その後、一つのコマンドセットに相当する可動体の動作が終了したと判定」されるものである。
ここで、引用発明における「相対値で指定されたステップ数分の駆動信号を各端子へ出力し」た後は、本願発明における「実行パターンを生成し終えた後」に相当する。
また、引用発明の「可動体の動作が終了したと判定する」ことで「送信」される「命令完了信号」は、「指定されたステップ数分の駆動信号を各端子へ出力し」た後に実行されることから、本願発明の「実行パターンを生成し終えた後に行う第2通知」に相当する。
したがって、引用発明の「移動目的地の座標が相対値指定されている場合には、その相対値で指定されたステップ数分の駆動信号を各端子へ出力し、そのステップ数分だけ、現在位置等を更新し、その後、一つのコマンドセットに相当する可動体の動作が終了したと判定し、可動体の動作が終了したと判定すると、通信回路2を介して、命令完了信号を演出用CPU111へ送信」することは、本願発明の「演出制御手段に対して」「実行パターンを生成し終えた後に行う第2通知を行いうる通知制御」「を実行可能な」ことに相当する。

よって、引用発明の構成cと、本願発明の構成Cとは、「演出制御手段からの指示を受けると、演出手段が機能するのに必要な実行パターンを演算に基づいて生成して演出手段に送る動作制御と、演出制御手段に対して」「実行パターンを生成し終えた後に行う第2通知を行いうる通知制御を実行可能な演出手段制御手段」である点で共通する。

(e)
引用発明の構成eの「弾球遊技機100」は、本願発明の構成Eの「遊技機」に相当する。

上記(a)〜(e)によれば、本願発明と引用発明は、
「A 遊技に伴う演出の実行を指示する演出制御手段と、
B 前記演出制御手段により実行を指示された演出に応じて機能する演出手段と、
C´前記演出制御手段からの指示を受けると、前記演出手段が機能するのに必要な実行パターンを演算に基づいて生成して前記演出手段に送る動作制御と、前記演出制御手段に対して前記実行パターンを生成し終えた後に行う第2通知を行いうる通知制御を実行可能な演出手段制御手段と
を備える
E 遊技機。」の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1(構成C)]
「演出制御手段」に対して第2通知を行いうる通知制御を実行可能な「演出手段制御手段」に関して、
本願発明は、「演出手段制御手段」から「演出制御手段」へ「第1通知」も行いうるのに対して、
引用発明は、「可動体駆動装置112」には、「可動体の位置を検知するセンサから」の「検知信号が入力」されるが、「演出用CPU111」には、「可動体の位置を検知するセンサから」の「検知信号」が「可動体駆動装置112」から「入力」されるか否か明らかでない点。

[相違点2(構成D)]
演出制御手段に関して、
本願発明は、第1通知がなされることなく第2通知がなされた場合に、異常が発生したと判定するのに対して、
引用発明は、「演出用CPU111」には、「可動体の位置を検知するセンサから」の「検知信号」が「可動体駆動装置112」から「入力」されるか否か明らかでないため、本願発明のように「第1通知がなされることなく第2通知がなされた場合に、異常が発生したと判定する」ものかどうか明らかでない点。

6 当審判合議体の判断
ア 相違点について
上記相違点1、2は、「演出用CPU111」への信号の送信についての関連する構成であるのでまとめて検討する。
遊技機の技術分野において、演出制御手段に可動体の位置検知センサからの信号を入力可能とし、可動体の演出駆動が終了し、可動体が最終位置に到達するタイミングで、本来オンである筈の可動体の位置検知センサの出力がオフである場合、演出制御手段側において、可動体の駆動に異常が生じたと判定することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、当審拒絶理由で引用文献3として引用した特開2014−73327号公報には、「演出表示装置70において装飾図柄の変動が開始され、可動役物110が演出動作パターンに従って演出動作(上昇動作)している際、ステッピングモータ160に異常が発生したものとする…。可動役物110が最終位置に到達するタイミングで、可動役物110が最終位置に存在するか否かの異常判定処理が実行される…。具体的には、第2検出センサ122からの検出信号(ON/OFF信号)に基づいて、可動役物110が最終位置に存在するか否かが判定される。…第2検出センサ122からの検出信号を参照した結果、本来であれば第2検出センサ122がONである筈なのにも関わらず、第2検出センサ122がOFFである場合、ステッピングモータ160の動作が異常であると判定され、エラーフラグがONとなる…。」(【0135】)ことが記載され、
特開2009−165527号公報には、「チェック信号出力部92は、変動パターン抽選部72により決定された変動パターンが…、演出駆動が実行されるパターンである場合、この変動パターンの終了後(図柄の変動表示の終了後)、チェック信号を出力する。」(【0029】)こと、「補正駆動実行部93は、チェック信号が出力された際に、第1センサ42から検知信号が出力されているか否かを判定し、第1センサ42から検知信号が出力されていない場合、すなわち、演出駆動が完了したにもかかわらず、揺動役物24が初期位置に移動されていない場合に、揺動役物24を補正駆動する。」(【0030】)、「…初期位置に移動されているべきときに初期位置に揺動役物24が移動されていない場合(50個の逆回転パルスが供給されたにも関わらず第1センサ42から検知信号が出力されなかった場合)、エラー信号出力部94は、これを第1予備エラーと判定して、この予備エラーの履歴をサブメモリ84に記憶する。」(【0031】)ことが記載されている。)。

一方、引用発明の「可動体駆動装置112」は、構成cより、「移動目的地の座標が相対値指定されている場合には、その相対値で指定されたステップ数分だけ、現在位置等を更新した後、一つのコマンドセットに相当する可動体の動作が終了したと判定し、可動体の動作が終了したと判定すると、通信回路2を介して、命令完了信号を演出用CPU111へ送信」するものであり、「命令完了信号」の送信は、「可動体の位置を検知するセンサから検知信号」の「入力」がなくても行われるものである。
そして、引用発明の「可動体駆動装置112」は、構成dによると、「自動補正フラグがONである場合に、センサインターフェース部5から、その制御回路に対応するステッピングモータが駆動する可動体の位置を検知するセンサからの検知信号を受け取ると、メモリ回路63に記憶されている可動体の位置を表す座標値を、その検知信号に対応するセンサが可動体を検知する位置である検知位置を表す座標値に書き換える」もの、すなわち、「可動体の位置を検知するセンサからの検知信号を受け取」った場合に座標値の書き換え処理を行うものである。しかしながら、引用発明は、「可動体の位置を検知するセンサからの検知信号を受け取」らなかった場合に、「可動体駆動装置112」が行う処理について特定するものではない。
ここで、そもそも引用発明に、可動体の駆動異常の判定について明示されていなかったとしても、遊技機の可動体に何らかの駆動異常が起こり得ることは当業者における技術常識であるから、引用発明において、「指定されたステップ数分」「可動体」を「動作」しても「可動体の位置を検知するセンサからの検知信号を受け取」らなかった場合、遊技機が、可動体に何らかの駆動異常が生じたと判定する必要のあることは明らかである。
そうすると、引用発明と上記周知の技術事項に接した当業者であれば、可動体の駆動異常に対応すべく、引用発明に上記周知の技術事項を適用するものである。
そして、引用発明における「演出用CPU111」は、「可動体」の駆動を統括的に制御するものであるから、上記周知の技術事項における「演出制御手段」に対応する。

よって、引用発明において、可動体の駆動異常が生じた場合に対応すべく、上記周知の技術事項に接した当業者であれば、技術常識を考慮して、「演出用CPU111」において、「可動体の位置を検知するセンサから」の「検知信号」を受信可能とするとともに、「可動体の位置を検知するセンサから」の「検知信号」(第1通知)を受信することなく「命令完了信号」(第2通知)を受信した場合に、可動体の駆動に異常が発生したと判定するようにし、上記相違点1、2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

イ 請求人の主張について
令和3年12月14日提出の意見書において、請求人は、次の主張をする。
「4.拒絶理由に対する意見
〔1〕理由1(進歩性)について
(1)本願発明の特徴及び効果
補正後の請求項1から明らかなように、本願発明の遊技機は、演出手段制御手段が演出制御手段に対して第1通知及び実行パターンを生成し終えた後に行う第2通知を行いうる通知制御を実行可能であり、演出制御手段は、第1通知がなされることなく第2通知がなされた場合に、異常が発生したと判定する点に特徴を有しています。
このような構成を採ることにより、演出制御手段は第1通知及び第2通知のうちいずれを受信したかに応じて異常が発生したか否かを判定することができるため、異常時の制御への切り替えを効率よく行うことができます([0355]〜[0358]、[0404]等)。

(2)本願発明と引用文献に記載された技術との対比
A)相違点
・・・
引用文献1を精査したところ、引用発明の「モータ制御回路6(が有する第1制御回路61及び第2制御回路62)」は、「可動体の動作が終了したと判定すると、通信回路2を介して、命令完了信号を演出用CPUへ送信」しますが([0078])、「モータ制御回路6」が「命令完了信号」とは別の信号を「演出用CPU」に送信するか否か、すなわち2種類の信号を「演出用CPU」に送信可能か否かについては、記載がなされていないため不明です。また、引用発明の「演出用CPU」は、「遊技に伴う演出の実行を指示する」構成には相当しますが、「モータ制御回路6」から2種類の信号のうち一方の信号が送信されることなく他方の信号が送信された場合に、「演出用CPU」が、異常が発生したと判定するか否かについても、記載がなされていないため不明です。
・・・
B)非容易想到性
・・・
引用発明に周知の技術事項を適用して拒絶理由通知書において認定された上記の相違点のように構成することは、当業者であれば確かに可能かもしれません。しかしながら、本願の特許請求の範囲は、上述した補正により、拒絶理由が通知された時点とは異なる内容となっており、本願発明は、上記A)の後段で述べた点において、引用発明とは構成が相違しています。また、引用文献1には、「モータ制御回路6」が「演出用CPU」に対して2種類の信号を送信しうる制御を実行可能であり、一方の信号が送信されることなく他方の信号が送信された場合に、「演出用CPU」が異常が発生したと判定する点について、記載も示唆も一切なされていません。したがって、当業者が引用文献1を知ったとしても、本願発明の着想の契機とは到底なり得ず、引用発明及び周知の技術事項に基づいて本願発明の構成に至ることは有り得ません。
また、本願発明は、上記4.〔1〕(1)で述べた構成を敢えて採用することにより、演出制御手段は第1通知及び第2通知のうちいずれを受信したかに応じて異常が発生したか否かを判定することができるため、異常の発生を判定するための別途の処理、例えば、演出の実行を指示してから所定時間内に第1通知がなされなければ異常が発生したと判定するために、指示後の経過時間を計測する等の処理を実行する必要がなく、異常時の制御への切り替えを効率よく行うことができるという、引用発明と周知の技術事項との組み合わせによってはなし得ない格別の効果を奏します。」

そこで、請求人の上記主張について検討する。
上記アにおいて検討したように、引用発明の「演出用CPU111」において、「可動体の位置を検知するセンサから」の「検知信号」を受信可能とするとともに、「可動体の位置を検知するセンサから」の「検知信号」(第1通知)を受信することなく「命令完了信号」(第2通知)を受信した場合に、可動体の駆動に異常が発生したと判定することは、当業者が容易になし得たものである。
次に、請求人の主張する効果について検討する。
請求人は、「本願発明は、上記4.〔1〕(1)で述べた構成を敢えて採用することにより、演出制御手段は第1通知及び第2通知のうちいずれを受信したかに応じて異常が発生したか否かを判定することができる」旨、主張するが、本願の特許請求の範囲には、「第1通知がなされることなく第2通知がなされた場合」の異常の判定のみ記載されているので、請求人の上記主張は本願の特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。
仮にそうでないとしても、請求人の主張する本願発明が備えるとする構成Dは、上記アにおいて検討したように、引用発明に上記周知の技術事項を適用することにより導かれる構成であって、本願発明の構成Dにより奏される効果についても、引用発明及び上記周知の技術事項に基づいて自ずと奏される効果にすぎない。
よって、請求人の上記主張は、採用することができない。

ウ 本願発明の奏する効果について
上記イの検討内容からみて、本願発明により奏される効果は、当業者が、引用発明及び上記周知の技術事項から予測し得た効果の範囲内のものであって、格別なものではない。

7 むすび
以上のとおり、 本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-02-17 
結審通知日 2022-02-22 
審決日 2022-03-09 
出願番号 P2017-045216
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 鷲崎 亮
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 山崎 崇裕  
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