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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1384837
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-23 
確定日 2022-05-31 
事件の表示 特願2016− 95760「電子部品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月16日出願公開、特開2017−204390、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年5月12日の出願であって、令和2年1月31日付けで拒絶理由通知がされ、同年3月27日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、同年9月16日付けで拒絶理由通知がされ、同年11月11日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、令和3年2月12日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年4月23日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和3年2月12日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明及び引用文献4に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本願請求項2、3に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明及び引用文献3、4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2013/157293号
2.特開2009−170242号公報
3.特開平8−264369号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2001−76964号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1〜3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明3」という。)は、令和2年11月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
未焼成の積層体に導電性ペーストを塗布することによって形成される電子部品の製造方法であって、
ハンセン溶解度パラメータの水素結合項δhが9以上11以下であるバインダを含むセラミックグリーンシートと内部電極用の電極材料層とが積層された、未焼成の積層体を準備する工程と、
前記未焼成の積層体を前記導電性ペーストに浸漬して、前記導電性ペーストを塗布する工程と
を備え、
前記導電性ペーストは、導電性粒子および溶剤を含み、
前記溶剤のハンセン溶解度パラメータの水素結合項δhが15以上、かつ分極項δpが7以上であり、
前記溶剤のハンセン溶解度パラメータのSP値が24以上39以下であり、
前記溶剤は、グリコール系溶剤を含み、
前記導電性ペーストの粘度は、せん断速度が10(1/sec)かつ25℃の条件下で30(Pa・s)以上70(Pa・s)以下であり、
前記導電性粒子は、Ni、Cu、Ag、Pd、AgとPdの合金からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。」

なお、本願発明2、3は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「技術分野
[0001] 本発明は、膜型圧電/電歪素子に関する。」

「発明が解決しようとする課題
[0006] 本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、有効電極面積を確保しながら、膜型圧電/電歪素子の積層方向の側面における電極の露出面積を減らし、絶縁低下の可能性を低くした膜型圧電/電歪素子、その製造方法、及びそれを含むアクチュエータ、超音波センサ、加速度センサ、角速度センサ、衝撃センサ、又は質量センサを提供することを目的とする。」

「発明を実施するための形態
[0019] (1)膜型圧電/電歪素子
本発明の膜型圧電/電歪素子は、n+1層(nは1以上の整数)のセラミック製の圧電/電歪膜とn層の内部電極層とを有し、上記圧電/電歪膜と上記内部電極層とを交互に積層した本体部を備えている。nは、1〜10の整数が好ましい。さらに、膜型圧電/電歪素子は、上記本体部の積層方向の相対する2つの側面に設けられた一対の側面電極を備えている。膜型圧電/電歪素子は、これらの積層体の焼成体である。側面電極は上記内部電極層と接続していてもよい。また、圧電/電歪膜と内部電極層の積層方向の素子側面に、内部電極層が露出した電極露出面を有している。さらに、内部電極は、平面方向において、互い違いに櫛歯状に設けられていてもよい。
[0020] 図1、2に本発明の実施の一形態に係る膜型圧電/電歪素子20を概略的に示すと、2層のセラミック製の圧電/電歪膜21,22と、これら2層の圧電/電歪膜21,22の間に配置された内部電極層4とを積層した本体部1を備えている(n=1)。さらに、上記本体部1の積層方向の相対する2つの側面に、側面電極6、7が設けられている。側面電極6、7は、それぞれ本体部1の上面と下面にも側面と連続して設けられている。側面電極6は、側面において、内部電極4と接続している。また、内部電極層4は、電極露出面11において露出している。なお、本明細書において、層を示す参照番号は、焼成前後で同じ符号を付す場合がある。
[0021] 図3に本発明の他の実施の一形態に係る膜型圧電/電歪素子40の内部電極露出面12を概略的に示す。ここでは、4層の圧電/電歪膜23〜26と、3層の内部電極層43〜45とが、本体部を形成している(n=3)。3層の内部電極層43〜45は、平面方向に互い違いに櫛歯状に設けられている。側面電極61は、内部電極層43,45と一方の側面で接続し、側面電極62は、内部電極層44と他方の側面で接続している。電極露出面11は、カット面であってもよい。本明細書において電極露出面とは、圧電/電歪膜と内部電極層の積層方向の側面であって、側面電極のない部分を指し、内部電極層の一部が露出していればよい。
[0022] (1−1)圧電/電歪膜
本発明の膜型圧電/電歪素子における圧電/電歪膜はセラミック製であり、原料として、例えば、圧電セラミックス、電歪セラミックス、強誘電体セラミックス、或いは反強誘電体セラミックス等が挙げられる。これらは、各種用途に応じて適宜選択して使用できる。
・・・
[0025] (1−2)内部電極層
上記内部電極層は、例えば、スクリーン印刷等の周知の手法の一つを利用して電極材料と有機バインダー等を含むペーストを成形することによって形成される。内部電極層は、2層の上記圧電/電歪膜の間に配置され、電極材料としては、室温で固体であり、導電性に優れた金属で構成されていることが好ましく、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、銀、スズ、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、鉛等の金属単体、もしくはこれらの合金が採用され得る。電極層は、Pt、Pd、Ru、Rh、Ni、Cu、Ag、Os及びIrからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含有することが好ましい。電極層を構成する電極粒の大きさは0.05〜1.5μmであることが好ましい。
・・・
[0027] (1−3)側面電極
側面電極は、上記内部電極層と同様に形成することができる。内部電極層と側面電極とは、同じ金属を含んでいてもよく、異なる金属を含んでいてもよい。」

「[0035] (2)膜型圧電/電歪素子の製造方法
本発明の膜型圧電/電歪素子の製造方法は、図4に示すように、積層工程、塗布工程、及び焼成工程を有していてもよい。なお、本明細書において、グリーンシートは焼成前の積層体を、膜型圧電/電歪素子は焼成後の積層体を指す。塗布工程は設けなくてもよい。
[0036] (2−1)積層工程
(2−1−1)グリーンシート
積層工程では、2層の圧電/電歪グリーン膜と、上記圧電/電歪グリーン膜の間に内部電極層が設けられたグリーンシートを製造し、上記グリーンシートの積層方向の相対する2つの側面に一対の側面電極を設ける。グリーンシートにおける圧電/電歪グリーン膜はバインダーを含む。2層の圧電/電歪グリーン膜は、同じ組成であっても良く、異なる組成であってもよい。また、各電極層は、同じ組成であっても良く、異なる組成であってもよい。
[0037] 図5に、本発明の実施の一形態に係る、膜型圧電/電歪素子用グリーンシート10の内部電極露出面11を模式的に表す。このグリーンシート10は、上記の膜型圧電/電歪素子20に対応するグリーンシートである。グリーンシート10の本体部1では、圧電/電歪グリーン膜21、内部電極層4、圧電/電歪グリーン膜22が、この順に下から積層されている。また、図6に、本発明の他の実施の一形態に係る、膜型圧電/電歪素子形成用グリーンシート30の内部電極露出面12を模式的に示す。このグリーンシート30は、上記の膜型圧電/電歪素子40に対応するグリーンシートである。図5、6では、内部電極層4、43〜45における平均厚みの全てが露出した状態を模式的に示している。
[0038] (2−1−2)バインダーを含む圧電/電歪グリーン膜
セラミック粉末の調製
バインダーを含む圧電/電歪グリーン膜は、従来法に従い適宜製造できる。圧電/電歪膜の原料としては、上記例示の酸化物が使用できる。具体的には、例えば、圧電/電歪膜の原料となる金属酸化物原料粉末を溶剤と共にボールミルなどで均一に混合させた後、溶剤を蒸発させ、酸化物原料同士が反応する温度で仮焼する。仮焼体を粗く粉砕した後、溶剤と共にボールミルなどで粉砕、乾燥し、所定の平均粒径を持つセラミック粉末を得る。セラミック粉末の平均粒径は、例えば0.01〜50μm、好ましくは0.03〜10μm、より好ましくは0.03〜1.5μmとすることができる。
[0039] スラリーの調製
得られたセラミック粉末を、バインダー及び他の添加物と溶媒と共にボールミル等により混合、混練し、スラリーとする。バインダーとしては、水系バインダー、非水系バインダーが挙げられる。
[0040] 水系バインダーにおけるバインダー樹脂としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース[SP値(溶解度パラメーター)20〜29MPa1/2]、メチルセルロース(SP値20MPa1/2)、カルボキシルメチルセルロース(SP値28〜40MPa1/2)などのメチルセルロース系樹脂;ポリビニルアルコール(SP値25〜35MPa1/2)などのポリビニルアルコール系樹脂;ポリエチレンオキシド;アクリル系樹脂等が挙げられる。
[0041] 非水系バインダーとしては、例えば、エチルセルロース(SP値19MPa1/2)、ヒドロキシエチルセルロース(SP値23MPa1/2)などのエチルセルロース系樹脂;ポリビニルブチラール(SP値21〜32MPa1/2)などのポリビニルブチラール系樹脂;(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂等が挙げられる。
[0042] バインダーとしては、なかでもポリビニルブチラール系樹脂、エチルセルロース系樹脂が好ましい。
・・・
[0045] 他の添加物としては、例えば、分散剤、可塑剤、又は焼成助剤等が挙げられる。これらの添加物は必要に応じて加えれば良く、加えなくても良い。
[0046] 分散剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、エチレングリコール、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、デキストリン、脂肪酸石鹸、又はポリアルコール等を挙げることができる。分散剤は、セラミック原料100質量部に対して、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。0.5質量部より少ないと、セラミック原料の分散性が低下する場合があり、グリーンシートにクラック等が生じる場合がある。5質量部より多いと、セラミック原料の分散性は変わらずに焼成時の不純物を増やすことになる場合がある。
・・・
[0049] 溶媒としては、例えば、水、石油等の炭化水素系液状化合物、アルコール等を挙げることができる。溶媒は、セラミック原料100質量部に対して、好ましくは50〜200質量部、より好ましくは75〜150質量部とすることができる。
[0050] 圧電/電歪グリーン膜の製膜
上記で得られたスラリーを脱泡、粘度調製後、PETフィルム等のフィルム上に成形し、乾燥して溶媒を除去することにより、上記のバインダーを含む圧電/電歪グリーン膜を得ることができる。成形方法としては、例えば、ドクターブレード法、ダイコーター法、リバースロールコーター法等を挙げることができ、中でも、ダイコーター法が好ましい。乾燥後の圧電/電歪グリーン膜の厚みとしては、例えば3〜200μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜30μmとすることができる。
[0051] (2−1−3)電極層(内部電極層および側面電極)
本発明において、電極層の形成方法は特に限定されない。電極層は、上記圧電/電歪グリーン膜の上に、導電ペーストを用いたスクリーン印刷、導電レジネート溶液を用いたスピンコート又は吹きつけ法、めっき、スパッタリング又は抵抗加熱蒸着等の蒸着法等の種々の手法を用いて形成することができる。グリーンシートの側面に側面電極を形成する場合も、側面に対し、上記と同様に形成できる。
[0052] スクリーン印刷する場合、導電ペーストは、例えば、上記例示の金属単体、もしくはこれらの合金を含有する粉末に、バインダー及び溶媒を加え、トリロールミル等を用いて混練することにより調製することができる。印刷後、上記溶剤は気散等により除去され、電極層が形成される。溶剤気散後の電極層の厚みとしては、例えば0.3〜2.0μm、好ましくは0.5〜1.8μm、さらに好ましくは0.8〜1.5μmとすることができる。また、上記圧電/電歪グリーン膜の膜厚と、上記電極膜の膜厚との比は2〜200であることが好ましい。圧電/電歪グリーン膜の上面と下面の電極層は、同じ膜厚であっても良く、異なる膜厚であってもよい。
[0053] 電極層形成用のバインダーならびに溶媒としては、上記圧電/電歪グリーン膜の作製において例示のものと同様のバインダーならびに溶媒が使用できる。
・・・
[0055] (2−2)塗布工程
塗布工程では、グリーンシートの積層方向の側面(例えばカット面)の電極露出面に溶剤を塗布する。積層工程において、グリーンシートの積層方向の相対する2つの側面に側面電極が設けられている場合には、側面電極の設けられていない側面の電極露出面に溶剤を塗布する。塗布工程は、焼成工程の前に行う。グリーンシートは、通常の方法で脱脂されていてもよい。
[0056] 溶剤の塗布方法としては、スクリーン印刷、スプレー、筆塗り等の適宜の方法で行うことができる。溶剤の塗布は、好ましくはグリーンシートの側面以外になるべく回り込まないように行う。フィルム上に形成されたグリーンシートを後述のカット工程にてカットする場合には、グリーンシートをカット後、フィルムをエキスパンドし、露出した側面に溶剤をスプレーすることもできる。
・・・
[0059] 塗布用溶剤としては、例えば、キシレン(SP値18)、酢酸エチル(SP値18)、トルエン(SP値18)、ブチルカルビトールアセテート(SP値18)、酢酸メチル(SP値19)、メチルエチルケトン(SP値19)、テキサノール(SP値19)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(SP値19)、シクロヘキサン(SP値20)、エチレングリコールモノブチルエーテル(SP値20)、2−エチルヘキサノール(SP値20)、アセトン(SP値20)等が挙げられる。
・・・
[0061] (2−3)焼成工程
焼成工程では、グリーンシートを焼成して圧電/電歪素子を製造する。焼成温度は、圧電/電歪グリーン膜及び電極層を構成する材料により、適宜選択される。焼成により、バインダー等の有機物が揮発により除去される。焼成は、例えば、600〜1500℃で30分〜4時間程度行うことができる。」

「実施例
[0069] 以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[0070] 実施例1〜3、比較例
図8に示す膜型圧電/電歪素子を、図9に示す手順(実施例2、3)又は図10に示す手順(実施例1、比較例)で製造した。まず、PZT系圧電粉末、バインダー樹脂(SP値25のブチラール系樹脂)、可塑剤及び分散剤を混合・混練し、圧電スラリーを作製した。この圧電スラリーを脱泡、粘度調整後、テープキャスティング法により、厚さ10μm程度のシートとしてPETフィルム上に圧電シートを成形した。続いて、圧電シートを適宜の長さに切断した。このシート上に、接着ペースト、電極導体ペースト(表1に示す平均粒径0.3μm、もしくは0.5μm)を印刷して、積層体グリーンシートを作成した。この積層体を粘着シート上に載置し、1.0mm幅にカットした。バーの長手方向の側面に、電極導体ペーストを用いて側面電極を印刷した(以上、積層工程)。圧電/電歪膜の厚みは15μm程度、電極層の厚みは1.0μm程度であった。この積層体グリーンシートの厚みは、0.06mm程度であった。このグリーンシートを、ダイサーにより平面視で長手方向と垂直にカットした(個片加工)。各個片の大きさは、1.0×1.0×0.05(高さ)mmであった。なお、図8において、2は圧電/電歪膜、4は電極層、61,62は側面電極である。」

(2)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 引用文献1に記載された技術は、膜型圧電/電歪素子に関するものであり、その製造方法は、積層工程、塗布工程、及び焼成工程を有しており、塗布工程は設けなくてもよいものである([0001]、[0035])。

イ 積層工程は、バインダーを含む、2層の圧電/電歪グリーン膜と、上記圧電/電歪グリーン膜の間に内部電極層が設けられた、焼成前の積層体であるグリーンシートを製造する工程と、上記グリーンシートの積層方向の相対する2つの側面に一対の側面電極を設ける工程とを備える([0035]、[0036])。

ウ バインダーを含む圧電/電歪グリーン膜は、セラミック粉末を、バインダー及び他の添加物と溶媒と共に混合、混練し、スラリーとし、成形し、溶媒を除去することにより、得ることができる([0039]、[0050])。

エ バインダーとしては、ポリビニルブチラール系樹脂、エチルセルロース系樹脂が好ましく、他の添加物としては、エチレングリコール等の分散剤が挙げられ、溶媒としては、例えば、水、石油等の炭化水素系液状化合物、アルコール等を挙げることができる([0039]、[0041]、[0042]、[0045]、[0046]、[0049])。

オ 電極層は、圧電/電歪グリーン膜の上に、導電ペーストを用いたスクリーン印刷、導電レジネート溶液を用いたスピンコート又は吹きつけ法、めっき、スパッタリング又は抵抗加熱蒸着等の蒸着法等の種々の手法を用いて形成することができ、グリーンシートの側面に側面電極を形成する場合も、側面に対し、内部電極層と同様に形成できる([0051])。
スクリーン印刷をする場合、導電ペーストは、Pt、Pd、Ru、Rh、Ni、Cu、Ag、Os及びIrからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含有する金属単体、もしくはこれらの合金を含有する粉末に、上記圧電/電歪グリーン膜の作製において例示のものと同様のバインダー及び溶媒を加えて調製することができる([0052]、[0053])。

カ 塗布工程は、焼成工程の前に、グリーンシートの積層方向の側面(例えばカット面)の電極露出面に溶剤を塗布する工程であり、溶剤の塗布方法としては、スクリーン印刷、スプレー、筆塗り等の適宜の方法で行うことができ、塗布用溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテル(SP値20)等が挙げられる([0055]、[0056]、[0059])。

キ したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「積層工程、塗布工程及び焼成工程を有しており、膜型圧電/電歪素子の製造方法であって、
積層工程は、バインダーを含む、2層の圧電/電歪グリーン膜と、上記圧電/電歪グリーン膜の間に内部電極層が設けられた、焼成前の積層体であるグリーンシートを製造する工程と、上記グリーンシートの積層方向の相対する2つの側面に一対の側面電極を設ける工程とを備え、
バインダーを含む圧電/グリーン膜は、セラミック粉末を、バインダー及び他の添加物と溶媒と共に混合、混練し、スラリーとし、成形し、溶媒を除去することにより、得ることができ、
バインダーとしては、ポリビニルブチラール系樹脂、エチルセルロース系樹脂が好ましく、他の添加物としては、エチレングリコール等の分散剤が挙げられ、溶媒としては、例えば、水、石油等の炭化水素系液状化合物、アルコール等を挙げることができ、
電極層は、圧電/電歪グリーン膜の上に、導電ペーストを用いたスクリーン印刷、導電レジネート溶液を用いたスピンコート又は吹きつけ法、めっき、スパッタリング又は抵抗加熱蒸着等の蒸着法等の種々の手法を用いて形成することができ、グリーンシートの側面に側面電極を形成する場合も、側面に対し、内部電極層と同様に形成でき、
スクリーン印刷をする場合、導電ペーストは、Pt、Pd、Ru、Rh、Ni、Cu、Ag、Os及びIrからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含有する金属単体、もしくはこれらの合金を含有する粉末に、上記圧電/電歪グリーン膜の作製において例示のものと同様のバインダー及び溶媒を加えて調製することができ、
塗布工程は、焼成工程の前に、グリーンシートの積層方向の側面(例えばカット面)の電極露出面に溶剤を塗布する工程であり、溶剤の塗布方法としては、スクリーン印刷、スプレー、筆塗り等の適宜の方法で行うことができ、塗布用溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテル(SP値20)等が挙げられる、膜型圧電/電歪素子の製造方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】
Pd、Ag、Ni、またはCuから選ばれる金属粉末および/または合金粉末からなる導電性粉末(A)、誘電体シートを構成する材料と共通成分を含む共材(B)、及び有機バインダ(C)からなる積層セラミックコンデンサ内部電極用水性導電性ペースト組成物において、
有機バインダ(C)は、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、又はこれらのセルロース誘導体から選ばれる水溶性樹脂(C1)及びグリコール系化合物から選ばれる水溶性溶剤(C2)を含み、
水溶性樹脂(C1)の含有量が、ペースト全量に対して1.0〜5.0重量%となるように配合して、導電性粉末(A)及び共材(B)を有機バインダ(C)中に十分に分散させたことを特徴とする積層セラミックコンデンサ内部電極用水性導電性ペースト組成物。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ内部電極用水性導電性ペースト組成物に関し、より詳しくは、乾燥膜密度が高く、表面粗さが小さく、連続性に優れた焼成膜を誘電体シートに形成でき、内部電極の薄層化に対応できる積層セラミックコンデンサ内部電極用水性導電性ペーストに関するものである。」

「【0003】
積層セラミックコンデンサは、一般に次の工程を経て製造される。すなわち、チタン酸バリウム等で代表される誘電体粉末(セラミック粉末)と、ポリビニルブチラール、アクリル等の有機バインダからなる誘電体(セラミック)グリーンシート表面に、Pd、Ag、Ag/Pd、Ni、Ni/Cu、Cu等の導電性粉末を含有する導電性ペーストを所定パターンでスクリーン印刷し、これを乾燥する。次に、内部電極とグリーンシートとが交互に重なるよう積層した後、熱圧着し、該熱圧着体を目的の大きさに切断する。続いて、有機バインダ除去を目的として、通常、250〜330℃、空気雰囲気、窒素雰囲気、あるいは空気と窒素との混合気体下で加熱して有機バインダを除去し、続いて、約850〜1350℃で焼成して内部電極、および誘電体を一体焼結させる。このようにして得た積層セラミックコンデンサ素体に、外部回路と接合するための外部電極が取り付けられ、製品となる。
【0004】
積層セラミックコンデンサに使用される内部電極形成用の導電性ペーストは、・・・
【0005】
かかる導電性ペーストは、前述のように、誘電体グリーンシート上にスクリーン印刷された後、加熱・乾燥され有機バインダが除去されるが、その際に得られる導電性ペーストの乾燥体が高い密度を有するようにすることが、焼成後の内部電極の薄層化を実現するために重要である。すなわち、少ない金属塗布量で、薄くて高密度、かつ目標容量値を有する内部電極を形成するためには導電性ペーストを乾燥後に得られる膜(以下、単に「乾燥膜」という。)の単位体積、あるいは、スクリーン印刷単位面積当りの導電性粉末の充填密度(これを「乾燥膜密度」という)をどれだけ高くできるかが大きな課題となる。また、導電性ペーストの乾燥膜は、薄層化を実現するためには表面の平滑性が重要である。すなわち、乾燥後の表面粗さ(Ra)が重要なファクターで、どれだけ小さくできるかが課題である。
【0006】
・・・。そこで、環境問題から、樹脂、溶剤などを水溶性のものに代替した水性導電性ペーストの開発が求められている。
【0007】
しかしながら、水性導電性ペーストには、乾燥が速すぎる、印刷性の確保が難しい、保存安定性に欠ける等の問題点がある。また、導電性粉末についても、有機バインダを水性樹脂に切り替えた場合には分散性が悪化するという問題点がある。このようなことから、環境負荷が低減されるだけでなく、現状の非水性有機バインダを用いた導電性ペーストと同等以上の焼成膜特性が得られる水性導電性ペーストが求められている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の問題点に鑑み、乾燥膜密度が高く、表面粗さが小さく、連続性に優れた焼成膜を誘電体シート上に形成でき、内部電極の薄層化に対応できる積層セラミックコンデンサ内部電極用水性導電性ペースト組成物を提供することにある。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の積層セラミックコンデンサ内部電極用水性導電性ペースト組成物(以下、水性導電性ペースト組成物ともいう)を詳細に説明する。
【0014】
本発明の水性導電性ペースト組成物は、Pd、Ag、Ni、またはCuから選ばれる金属粉末および/または合金粉末からなる導電性粉末(A)、誘電体シートを構成する材料と共通成分を含む共材(B)、及び有機バインダ(C)からなる積層セラミックコンデンサ内部電極用水性導電性ペースト組成物において、有機バインダ(C)は、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース,カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、又はこれらのセルロース誘導体から選ばれる水溶性樹脂(C1)及びグリコール系化合物から選ばれる水溶性溶剤(C2)を含み、水溶性樹脂(C1)の含有量が、ペースト全量に対して1.0〜5.0重量%となるように配合して、導電性粉末(A)及び共材(B)を有機バインダ(C)中に十分に分散させたことを特徴とする。
・・・
【0026】
(2)水溶性溶剤(C2)
水溶性溶剤(C2)は、グリコール系溶剤が使用される。
【0027】
・・・その理由は、ペースト組成物はスクリーン印刷後に、低温で乾燥されるがプロピレングリコールが最も揮発しやすいからである。・・・
【0028】
また、水溶性溶剤(C2)には、水をペースト中に0〜10重量%含有しても良い。好ましくは、5重量%以下、さらに好ましくは、3重量%以下である。水の含有量が、10重量%を超えると、スクリーン印刷で形成した所定パターンが数分間の放置で、周辺部から乾燥を始めてしまい、乾燥速度が速く、ペースト塗布層がレベリングにより平坦になる前に乾燥してしまい、スクリーンメッシュの跡が残る場合もある。10重量%以下であれば、従来の有機溶剤系の導電性ペースト組成物とほぼ同じように、レベリングして平坦化する。
【0029】
4.水性導電性ペースト組成物の製造
以下、本発明の水性導電性ペースト組成物を作製する手順を説明する。本発明の水性導電性ペースト組成物は、まず、水溶性樹脂の粉末を水溶性溶剤に溶解して有機バインダを調製し、次に、導電性粉末、共材を添加し、有機バインダ中に分散する。
【0030】
(1)有機バインダの作製
まず、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性樹脂の粉末とグリコールなどの水溶性溶剤を用意し、水溶性樹脂が20〜50重量%の濃度となるように、グリコール系の水溶性溶剤と混合する。そして、引き続き水溶性樹脂が溶解するまで攪拌しながら加熱する。水溶性樹脂がヒドロキシプロピルメチルセルロース、水溶性溶剤がプロピレングリコールであれば、50〜60℃に加温した恒温槽の湯の中に1〜3時間放置することで、均一に溶解させることができる。
【0031】
(2)導電性ペースト組成物の作製
次に、導電性粉末、共材、作製した有機バインダを所定の量を秤量し、スリーロールミルによって、導電性粉末と共材とを有機バインダ中に均一分散混合させる。
【0032】
導電性粉末は、ペースト全量に対して1〜30重量%、共材は、ペースト全量に対して30〜70重量%とすることが好ましい。また、有機バインダ中の水溶性樹脂は、ペースト全量に対して1〜5重量%とすることが好ましい。粘度は、一般的にブルックフィールド社製B型粘度計、HBTでスピンドルNo.14を用いスピンドルの回転が10rpmで約10〜80Pa・sの粘度を持ち、かつ10rpmと100rpmのときの粘度比(10rpm値/100rpm値)が4以下になるように調整される。
【0033】
これにより、導電性粉末(A)及び共材(B)が有機バインダ(C)中に十分に分散しており、積層セラミックコンデンサ内部電極形成時に、乾燥膜の表面粗さが低減された本発明の水性導電性ペースト組成物を得ることが出来る。」

「【0069】
「評価」
実施例の試料は、特定のセルロース系水溶性樹脂及びグリコール系化合物の水溶性溶剤(C2)を含み、水溶性樹脂(C1)の含有量が、ペースト全量に対して1.0〜5.0重量%となるように配合していることから、導電性粉末(A)及び共材(B)が有機バインダ(C)中に十分に分散されている。
これに対して、比較例の試料は、水溶性の有機樹脂であっても特定のセルロース系水溶性樹脂ではないか、特定のセルロース系水溶性樹脂を用いてもグリコール系化合物以外の溶剤を用いるために、導電性粉末(A)及び共材(B)が有機バインダ(C)中に十分に分散されていない。
以上の実施例、比較例より明らかなように、有機バインダが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどから選ばれる水溶性樹脂と、グリコール系の水溶性溶剤から構成された水性導電性ペースト組成物は、非水溶性の導電性ペーストと同等以上の高い乾燥膜密度および低減された表面粗さを有することが分かった。」

上記記載から、上記引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「積層セラミックコンデンサ内部電極用水性導電性ペースト組成物であって、
金属粉末および/または合金粉末からなる導電性粉末(A)、誘電体シートを構成する材料と共通成分を含む共材(B)、及び有機バインダ(C)からなり、
有機バインダ(C)は、水溶性樹脂(C1)及びグリコール系化合物から選ばれる水溶性溶剤(C2)を含み、
水性導電性ペースト組成物を作製する手順は、まず、水溶性樹脂の粉末を水溶性溶剤に溶解して有機バインダを調製し、次に、導電性粉末、共材を添加し、有機バインダ中に分散するものであり、
粘度が、ブルックフィールド社製B型粘度計、HBTでスピンドルNo.14を用いスピンドルの回転が10rpmで約10〜80Pa・sの粘度を持つように調製された水性導電性ペースト組成物。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由で、周知技術を示す文献として引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、セラミック層と内部電極層とを交互に積層して積層体を形成し、前記積層体の対向する端面に、それぞれ前記内部電極層を引出し接続する外部電極を設けた積層セラミック型電子部品において、前記端面および該端面に接する周縁部に外部電極電極第1層としてガラスペーストを用いて形成し、その上の前記周縁部を除いた部分のみに外部電極第2層として銀または銀-パラジウムペーストを用いた外部電極を形成した構成の積層セラミック型電子部品を供する。」

「【0014】図1(a)、図1(b)に示すように、セラミック体1の内部に内部電極2が所定の間隔を置いて交互に重ねられ、内部電極は、各極性毎にそれぞれセラミック体の側面(端面2a,2b、図2参照)に引き出され、端面に形成される各外部電極第1層6に接続される。また、外部電極第1層6の上に外部電極第2層7が形成されており、その上に端子電極4が形成されている。
【0015】外部電極第1層6はガラスペーストで形成され、セラミック体1の内部電極2と接続する両端面と該両端面に接する周縁部に500〜600℃で熱処理されて形成されている。更にその上に、セラミック体1の両端面のみに銀ペーストを塗布し、600〜800℃に焼付けて外部電極第2層7を形成する。ここで、ガラスペーストは、セラミック体1と外部電極第2層7の密着強度を高める役目を持ち、しかも、内部電極2と外部電極第2層7とは、外部電極第2層7を焼付けした際、外部電極第1層が再度軟化して外部電極第2層の導電物質が浸透するため電気的に接続される。最後に、外部電極第2層7の上にニッケルメッキ法によりニッケル層を施した後、半田層を施して端子電極4を形成する。従って、端子電極4は外部電極第2層7の両端面だけに形成され、周縁部には形成されない。」

4 引用文献4について
原査定において、周知技術を示す文献として引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0014】
【発明の実施の形態】次に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について、具体的且つ詳細に説明する。積層セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサを製造する場合を例として説明すると、・・・
【0022】このような内部電極パターン2a、2bが印刷されたセラミックグリーンシート1a、1bを、図3に示すように交互に積み重ね、さらにその両側に内部電極パターン2a、2bが印刷されてないセラミックグリーンシート1、1、いわゆるダミーシートを積み重ね、これらを圧着し、図4に示すような積層体を得る。
・・・
【0024】さらに、この積層体を縦横に裁断し、図5に示すような個々のチップ状の未焼成のセラミック積層体3に分割する。このセラミック積層体3は、例えば、図6に示すような層構造を有する。内部電極5、6を有する誘電体からなるセラミック層7、7…が図6で示す順序に積層され、さらにその両側に内部電極5、6が形成されてないセラミック層7、7…が各々複数層積み重ねられる。そして、このような層構造を有するセラミック積層体3の端部には内部電極5、6が交互に露出している。
・・・
【0026】次に得られたセラミック積層体3を研磨し、その面取りを行なう。焼成後のセラミック積層体3は硬く、且つ脆い。これに対して、未焼成のセラミック積層体3は、焼成後のセラミック積層体3に比べて、柔らかく、且つ脆くもない。・・・
【0030】
・・・このようにして研磨されたセラミック積層体3を図7に概念的に示しており、セラミック積層体3の角部及び6面の交差する辺部に面取り8が施されている。・・・
【0031】
・・・次に研磨したセラミック積層体3を焼成する。セラミック積層体3の焼成は、雰囲気トンネル炉や雰囲気固定炉を使うことが可能である。
【0032】このようにしてセラミック積層体3を焼成した後、図8に示すように、セラミック積層体3の端部に外部電極2、2が形成される。外部電極2、2を形成するため導体成分には、一般にNiやNi合金、CuやCu合金、AgやPdやそれらの合金等を用いることができる。外部電極2、2を導電ペーストを用いて形成する場合、ディップ法等でセラミック積層体3の端部に導電ペーストを塗布する。その後、中性雰囲気や還元雰囲気中で600〜1000℃で焼き付けることにより、外部電極2、2が形成される。焼成する前の未焼成のセラミック積層体3の端部に導電ペーストを塗布し、セラミック積層体3の焼成と同時に導電ペーストを焼き付けて外部電極2、2を形成しても良い。また、蒸着やスパッタなどドライ法を用いて外部電極2、2を形成することもできる。
【0033】既に説明した通り、セラミック積層体3の面取りを行うための研磨工程を、セラミック積層体3の焼成前に行うのではなく、焼成後に行なっても良い。焼成後に研磨を行なう場合は、セラミック積層体3の端部に前記のようにして外部電極2、2を形成した後が望ましい。このようにすると、表面に研磨屑が付着していないきれいなセラミック積層体3を得ることができるばかりでなく、外部電極2、2を覆っている酸化膜などを同時に除去できる。このため、その後の外部電極2、2のめっき工程において、めっきののりを向上することができる。もちろん、セラミック積層体3の焼成前と外部電極2、2の形成の後の双方で研磨工程を行ってもよい。」

上記記載から、上記引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「積層セラミック電子部品の製造方法であって、
セラミックグリーンシートの積層体を分割して、個々のチップ状の未焼成のセラミック積層体3を得て、
次に得られたセラミック積層体3を研磨し、その面取りを行ない、次に研磨したセラミック積層体3を焼成し、セラミック積層体3を焼成した後、セラミック積層体3の端部に外部電極2、2を形成し、外部電極2、2を導電ペーストを用いて形成する場合、ディップ法等でセラミック積層体3の端部に導電ペーストを塗布し、その後焼き付けることにより、外部電極2、2を形成する、
または、焼成する前の未焼成のセラミック積層体3の端部に導電ペーストを塗布し、セラミック積層体3の焼成と同時に導電ペーストを焼き付けて外部電極2、2を形成する、
セラミック積層体3の面取りを行うための研磨工程は、セラミック積層体3の焼成前に行うのではなく、焼成後に行なっても良い、積層セラミック電子部品の製造方法。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「膜型圧電/電歪素子」、「焼成前の積層体であるグリーンシート」は、それぞれ本願発明1における「電子部品」、「未焼成の積層体」に相当する。

イ 引用発明において、「積層工程」は、「バインダーを含む、2層の圧電/電歪グリーン膜と、上記圧電/電歪グリーン膜の間に内部電極層が設けられた、焼成前の積層体であるグリーンシートを製造する工程」、「側面電極を設ける工程」とを備え、「電極層は、圧電/電歪グリーン膜の上に、導電ペーストを用いたスクリーン印刷、導電レジネート溶液を用いたスピンコート又は吹きつけ法、めっき、スパッタリング又は抵抗加熱蒸着等の蒸着法等の種々の手法を用いて形成することができ、グリーンシートの側面に側面電極を形成する場合も、側面に対し、内部電極層と同様に形成でき」るものであるところ、引用発明における「バインダー」、「圧電/電歪グリーン膜」、「内部電極層」、「導電ペースト」は、それぞれ本願発明1における「バインダ」、「セラミックグリーンシート」、「内部電極用の電極材料層」、「導電性ペースト」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「未焼成の積層体に導電性ペーストを塗布することによって形成される電子部品の製造方法」であって、「バインダを含むセラミックグリーンシートと内部電極用の電極材料層とが積層された、未焼成の積層体を準備する工程」と、「前記未焼成の積層体」に「前記導電性ペーストを塗布する工程」とを備える点で共通する。

ウ 引用発明において、「電極層は、圧電/電歪グリーン膜の上に、導電ペーストを用いたスクリーン印刷、導電レジネート溶液を用いたスピンコート又は吹きつけ法、めっき、スパッタリング又は抵抗加熱蒸着等の蒸着法等の種々の手法を用いて形成することができ、グリーンシートの側面に側面電極を形成する場合も、側面に対し、内部電極層と同様に形成でき、スクリーン印刷をする場合、導電ペーストは、Pt、Pd、Ru、Rh、Ni、Cu、Ag、Os及びIrからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含有する金属単体、もしくはこれらの合金を含有する粉末に、上記圧電/電歪グリーン膜の作製において例示のものと同様のバインダー及び溶媒を加えて調製することができ」るものであるから、「導電ペースト」の調製に使用する「Pt、Pd、Ru、Rh、Ni、Cu、Ag、Os及びIrからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含有する金属単体、もしくはこれらの合金を含有する粉末」、「溶媒」は、それぞれ本願発明1における「導電性粒子」、「溶剤」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記導電性ペーストは、導電性粒子および溶剤を含み」、「前記導電性粒子は、Ni、Cu、Ag、Pd、AgとPdの合金からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む」点で一致する。

エ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「未焼成の積層体に導電性ペーストを塗布することによって形成される電子部品の製造方法であって、
バインダを含むセラミックグリーンシートと内部電極用の電極材料層とが積層された、未焼成の積層体を準備する工程と、
前記未焼成の積層体に前記導電性ペーストを塗布する工程と
を備え、
前記導電性ペーストは、導電性粒子および溶剤を含み、
前記導電性粒子は、Ni、Cu、Ag、Pd、AgとPdの合金からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む電子部品の製造方法。」

<相違点>
<相違点1>
「セラミックグリーンシート」について、本願発明1は、「ハンセン溶解度パラメータの水素結合項δhが9以上11以下である」という構成を備えるのに対し、引用発明の「圧電/電歪グリーン膜」は、そのような構成を備えていない点。

<相違点2>
「未焼成の積層体」に「前記導電性ペーストを塗布する工程」について、本願発明1は、「前記未焼成の積層体を前記導電性ペーストに浸漬して」、塗布する工程という構成を備えるのに対し、引用発明は、「上記グリーンシートの積層方向の相対する2つの側面に一対の側面電極を設ける工程」を備え、「電極層は、圧電/電歪グリーン膜の上に、導電ペーストを用いたスクリーン印刷、導電レジネート溶液を用いたスピンコート又は吹きつけ法、めっき、スパッタリング又は抵抗加熱蒸着等の蒸着法等の種々の手法を用いて形成することができ、グリーンシートの側面に側面電極を形成する場合も、側面に対し、内部電極層と同様に形成でき」るものであり、(焼成前の積層体である)グリーンシートに、導電ペーストを用いて、「側面電極を設ける工程」について、導電ペーストに「浸漬して」、塗布するとの特定はなされていない点。

<相違点3>
「未焼成の積層体」に塗布する「導電性ペースト」が含む「溶剤」について、本願発明1は、「前記溶剤のハンセン溶解度パラメータの水素結合項δhが15以上、かつ分極項δpが7以上であり、前記溶剤のハンセン溶解度パラメータのSP値が24以上39以下であり、前記溶剤は、グリコール系溶剤を含」むものであるのに対し、引用発明では、電極層を、「スクリーン印刷する場合」に使用する「導電ペースト」に加えられる「溶媒」について、本願発明1の上記のような特定はなされていない点。

<相違点4>
「未焼成の積層体」に塗布する「導電性ペースト」について、本願発明1では、「前記導電性ペーストの粘度は、せん断速度が10(1/sec)かつ25℃の条件下で30(Pa・s)以上70(Pa・s)以下」であるのに対し、引用発明では、電極層を、「スクリーン印刷する場合」に使用する「導電ペースト」について、本願発明1の上記のような特定はなされていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点2、4について
事案に鑑み、相違点2,4についてまとめて検討する。

(ア)引用発明において、「電極層」を形成する手法として、「導電ペーストを用いたスクリーン印刷」等が特定されており、引用文献1には、(焼成前の積層体である)グリーンシートの側面に「側面電極を設ける工程」に関して、導電ペーストに「浸漬して」、塗布することについては、開示も示唆もされていない。

(イ)「第4 引用文献、引用発明等」の「2 引用文献2について」に記載のとおり、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されている。

「積層セラミックコンデンサ内部電極用水性導電性ペースト組成物であって、
金属粉末および/または合金粉末からなる導電性粉末(A)、誘電体シートを構成する材料と共通成分を含む共材(B)、及び有機バインダ(C)からなり、
有機バインダ(C)は、水溶性樹脂(C1)及びグリコール系化合物から選ばれる水溶性溶剤(C2)を含み、
水性導電性ペースト組成物を作製する手順は、まず、水溶性樹脂の粉末を水溶性溶剤に溶解して有機バインダを調製し、次に、導電性粉末、共材を添加し、有機バインダ中に分散するものであり、
粘度が、ブルックフィールド社製B型粘度計、HBTでスピンドルNo.14を用いスピンドルの回転が10rpmで約10〜80Pa・sの粘度を持つように調製された水性導電性ペースト組成物。」

上記のように、引用文献2に記載された技術的事項は、「内部電極用水性導電性ペースト組成物」に関して、「有機バインダ(C)は、水溶性樹脂(C1)及びグリコール系化合物から選ばれる水溶性溶剤(C2)を含み」という構成、及び、「粘度」について、「ブルックフィールド社製B型粘度計、HBTでスピンドルNo.14を用いスピンドルの回転が10rpmで約10〜80Pa・sの粘度を持つように調製された」という構成を備えるものである。
しかしながら、引用文献2には、外部電極用導電性ペーストについては記載も示唆もされておらず、したがって、引用文献2には、未焼成の積層体に塗布する導電ペーストの粘度についても、未焼成の積層体を当該導電ペーストに浸漬して、塗布することについても、記載も示唆もされていない。
また、上記「2 引用文献2について」に摘記の段落【0001】、【0005】、【0008】の記載に照らすと、引用文献2に記載された技術的事項の課題は、乾燥膜密度(スクリーン印刷単位面積当りの導電性粉末の充填密度)が高く、表面粗さが小さく、連続性に優れた焼成膜を誘電体シート上に形成でき、内部電極の薄層化に対応できる積層セラミックコンデンサ内部電極用水性導電性ペースト組成物を提供することであり、更に、同段落【0038】〜【0067】の【表1】〜【表16】、及び同段落【0069】の「以上実施例、比較例より明らかなように、・・・同等以上の高い乾燥膜密度・・・を有することが分かった。」との記載に照らすと、実施例と比較例の「評価」において、乾燥膜密度を評価の指標としている。
したがって、引用文献2に記載された技術的事項は、内部電極用水性導電性ペースト組成物の塗布を、浸漬ではなくスクリーン印刷で行うことを前提としていることが明らかといえる。

(ウ)また、「第4 引用文献、引用発明等」の「4 引用文献4について」に記載のとおり、引用文献4には、以下の技術的事項が記載されている。

「積層セラミック電子部品の製造方法であって、
セラミックグリーンシートの積層体を分割して、個々のチップ状の未焼成のセラミック積層体3を得て、
次に得られたセラミック積層体3を研磨し、その面取りを行ない、次に研磨したセラミック積層体3を焼成し、セラミック積層体3を焼成した後、セラミック積層体3の端部に外部電極2、2を形成し、外部電極2、2を導電ペーストを用いて形成する場合、ディップ法等でセラミック積層体3の端部に導電ペーストを塗布し、その後焼き付けることにより、外部電極2、2を形成する、
または、焼成する前の未焼成のセラミック積層体3の端部に導電ペーストを塗布し、セラミック積層体3の焼成と同時に導電ペーストを焼き付けて外部電極2、2を形成する、
セラミック積層体3の面取りを行うための研磨工程は、セラミック積層体3の焼成前に行うのではなく、焼成後に行なっても良い、積層セラミック電子部品の製造方法。」

上記のように、引用文献4に記載された技術は、「積層セラミック電子部品の製造方法」に関して、「次に得られたセラミック積層体3を研磨し、その面取りを行ない、次に研磨したセラミック積層体3を焼成し、セラミック積層体3を焼成した後、セラミック積層体3の端部に外部電極2、2を形成し、外部電極2、2を導電ペーストを用いて形成する場合、ディップ法等でセラミック積層体3の端部に導電ペーストを塗布し、その後焼き付けることにより、外部電極2、2を形成する、または、焼成する前の未焼成のセラミック積層体3の端部に導電ペーストを塗布し、セラミック積層体3の焼成と同時に導電ペーストを焼き付けて外部電極2、2を形成する」という構成を備えるものである。
しかしながら、引用文献4には、未焼成の積層体に塗布する導電性ペーストの粘度については、記載も示唆もされていない。

(エ)上記(イ)のとおり、引用文献2に記載された技術的事項は、内部電極用水性導電性ペーストの塗布を、浸漬ではなくスクリーン印刷で行うことを前提としているから、引用発明において、「側面電極を設ける工程」で用いる「導電ペースト」の粘度について、引用文献4に記載された技術的事項を参照した当業者であっても、引用文献2に記載された技術的事項の「内部電極用水性導電性ペースト」の粘度の数値範囲を適用することを容易になし得たということはできない。

(オ)また、「第4 引用文献、引用発明等」の「3 引用文献3について」に摘記のとおり、更に、引用文献3のその他の箇所を参照しても、引用文献3には本願発明1の上記相違点2、4に係る構成について、記載も示唆もされていない。
したがって、引用発明において、引用文献2〜4に記載された技術的事項に基づいて、相違点2、4に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。

イ よって、上記相違点1、3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2〜4に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2、3について
本願発明2、3も、相違点2、4に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2〜4に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1〜3は、当業者が引用発明及び引用文献2〜4に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-05-11 
出願番号 P2016-095760
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 河本 充雄
特許庁審判官 辻本 泰隆
恩田 春香
発明の名称 電子部品の製造方法  
代理人 西澤 均  
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