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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1384841
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-26 
確定日 2022-05-20 
事件の表示 特願2018−537509「流体導管を解放可能に接続するためのコネクタシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月27日国際公開、WO2017/127579、平成31年 2月21日国内公表、特表2019−504970〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年1月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年1月19日 (US)アメリカ合衆国、2016年2月24日 (US)アメリカ合衆国、2017年1月19日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。
令和2年1月20日に手続補正書の提出
令和2年3月31日付けで拒絶理由通知
令和2年6月26日に意見書及び手続補正書の提出
令和2年7月8日付けで最後の拒絶理由通知
令和2年10月19日に意見書及び手続補正書の提出
令和2年12月21日付けで令和2年10月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定及び同日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和3年4月26日に拒絶査定不服審判の請求及びその請求と同時に手続補正書の提出

第2 令和3年4月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年4月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は、本件補正前に下記(2)のとおりであった特許請求の範囲の記載を、下記(1)のとおり補正するものである。

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
「 【請求項1】
管を解放可能に接続するためのコネクタシステムであって、
第1の通路を有するメス型結合器と、
前記メス型結合器内に配置される第1の弁であって、前記第1の弁は、前記第1の通路を通る流体流動を中断させるように動作可能である、第1の弁と、
前記第1の通路の外側に配置される第1の弁付勢部材であって、前記第1の弁付勢部材は、前記第1の弁を第1の弁閉鎖位置に向けて付勢するように動作可能であり、前記第1の弁付勢部材は、前記第1の弁の一部の周りに配置される、第1の弁付勢部材と、
第2の通路を有するオス型結合器と、
前記オス型結合器内に配置される第2の弁であって、前記第2の弁は、前記第2の通路を通る流体流動を中断させるように動作可能である、第2の弁と、
前記第2の通路の外側に配置される第2の弁付勢部材であって、前記第2の弁付勢部材は、前記第2の弁を第2の弁閉鎖位置に向けて付勢するように動作可能である、第2の弁付勢部材と、
前記メス型結合器に移動可能に結合されるキャッチと、
前記オス型結合器に結合されるキャッチ受容要素であって、前記メス型およびオス型結合器の解放可能かつ嵌合可能な軸方向結合に応じて、前記キャッチは、前記キャッチ受容要素と係合し、前記メス型結合器の軸方向位置を前記オス型結合器に対して固定し、それによって前記コネクタシステムの接続された状態を達成し、前記接続された状態では、前記メス型結合器は、第2の弁開放位置に向かって前記第2の弁を推進し、前記オス型結合器は、第1の弁開放位置に向かって前記第1の弁を推進することにより、前記第1および第2の通路を流体連通状態に配置し、流体流路を提供する、キャッチ受容要素と、
前記メス型結合器に移動可能に結合される解放要素と
を備え、
前記メス型結合器のメス型結合器外側表面に沿った前記解放要素の進行は、前記キャッチを前記キャッチ受容要素から係脱させ、前記コネクタシステムの接続解除された状態を達成する、コネクタシステム。
【請求項2】
前記進行は、前記メス型結合器外側表面に沿った線形運動を含む、請求項1に記載のコネクタシステム。
【請求項3】
前記解放要素は、前記メス型結合器外側表面に沿った前記線形運動を、前記キャッチの往復運動に変換するように構成される、請求項2に記載のコネクタシステム。
【請求項4】
前記解放要素は、前記メス型結合器外側表面に沿った前記線形運動を、前記メス型結合器の内部に向かう前記キャッチの内向き運動、または前記メス型結合器の前記内部から離れる前記キャッチの外向き運動に変換する、請求項3に記載のコネクタシステム。
【請求項5】
前記解放要素が前記キャッチを前記メス型結合器の前記内部に向けて内向きに付勢し、前記キャッチと前記キャッチ受容要素を係合させて、前記コネクタシステムの前記接続された状態を達成する、解放要素の第1の位置に向けて、前記解放要素を付勢する、解放要素付勢部材をさらに備える、請求項4に記載のコネクタシステム。
【請求項6】
前記メス型結合器外側表面に沿った前記解放要素の前記進行は、前記メス型結合器外側表面に対して0°〜約±45°の角度で指向される力の印加によって達成される、請求項1に記載のコネクタシステム。
【請求項7】
前記進行は、前記メス型結合器外側表面に沿った摺動進行を含む、請求項1に記載のコネクタシステム。
【請求項8】
前記キャッチ受容要素は、前記オス型結合器嵌合可能端部に近接してオス型結合器外側表面内に配置される保定溝を備え、前記キャッチは、前記保定溝内に受容可能なボールを備える、請求項1に記載のコネクタシステム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和2年6月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
管を解放可能に接続するためのコネクタシステムであって、
第1の通路を有するメス型結合器と、
前記メス型結合器内に配置される第1の弁であって、前記第1の弁は、前記第1の通路を通る流体流動を中断させるように動作可能である、第1の弁と、
前記第1の通路の外側に配置される第1の弁付勢部材であって、前記第1の弁付勢部材は、前記第1の弁を第1の弁閉鎖位置に向けて付勢するように動作可能である、第1の弁付勢部材と、
第2の通路を有するオス型結合器と、
前記オス型結合器内に配置される第2の弁であって、前記第2の弁は、前記第2の通路を通る流体流動を中断させるように動作可能である、第2の弁と、
前記第2の通路の外側に配置される第2の弁付勢部材であって、前記第2の弁付勢部材は、前記第2の弁を第2の弁閉鎖位置に向けて付勢するように動作可能である、第2の弁付勢部材と、
前記メス型結合器に移動可能に結合されるキャッチと、
前記オス型結合器に結合されるキャッチ受容要素であって、前記メス型およびオス型結合器の解放可能かつ嵌合可能な軸方向結合に応じて、前記キャッチは、前記キャッチ受容要素と係合し、前記メス型結合器の軸方向位置を前記オス型結合器に対して固定し、それによって前記コネクタシステムの接続された状態を達成し、前記接続された状態では、前記メス型結合器は、第2の弁開放位置に向かって前記第2の弁を推進し、前記オス型結合器は、第1の弁開放位置に向かって前記第1の弁を推進することにより、前記第1および第2の通路を流体連通状態に配置し、流体流路を提供する、キャッチ受容要素と、
前記メス型結合器に移動可能に結合される解放要素と
を備え、
前記メス型結合器のメス型結合器外側表面に沿った前記解放要素の進行は、前記キャッチを前記キャッチ受容要素から係脱させ、前記コネクタシステムの接続解除された状態を達成する、コネクタシステム。
【請求項2】
前記進行は、前記メス型結合器外側表面に沿った線形運動を含む、請求項1に記載のコネクタシステム。
【請求項3】
前記解放要素は、前記メス型結合器外側表面に沿った前記線形運動を、前記キャッチの往復運動に変換するように構成される、請求項2に記載のコネクタシステム。
【請求項4】
前記解放要素は、前記メス型結合器外側表面に沿った前記線形運動を、前記メス型結合器の内部に向かう前記キャッチの内向き運動、または前記メス型結合器の前記内部から離れる前記キャッチの外向き運動に変換する、請求項3に記載のコネクタシステム。
【請求項5】
前記解放要素が前記キャッチを前記メス型結合器の前記内部に向けて内向きに付勢し、前記キャッチと前記キャッチ受容要素を係合させて、前記コネクタシステムの前記接続された状態を達成する、解放要素の第1の位置に向けて、前記解放要素を付勢する、解放要素付勢部材をさらに備える、請求項4に記載のコネクタシステム。
【請求項6】
前記メス型結合器外側表面に沿った前記解放要素の前記進行は、前記メス型結合器外側表面に対して0°〜約±45°の角度で指向される力の印加によって達成される、請求項1に記載のコネクタシステム。
【請求項7】
前記進行は、前記メス型結合器外側表面に沿った摺動進行を含む、請求項1に記載のコネクタシステム。
【請求項8】
前記キャッチ受容要素は、前記オス型結合器嵌合可能端部に近接してオス型結合器外側表面内に配置される保定溝を備え、前記キャッチは、前記保定溝内に受容可能なボールを備える、請求項1に記載のコネクタシステム。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された「第1の弁付勢部材」について、「前記第1の弁付勢部材は、前記第1の弁の一部の周りに配置される」という事項を追加することにより、第1の弁付勢部材の配置位置の限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

<特許法第29条第1項第3号新規性)及び同法第29条第2項進歩性)について>
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献
ア 引用文献3及びその記載
原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用された文献であって、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特公昭64−10712号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審において付したものである。

(ア)「本発明は、半導体のウエツトエツチング装置などに使用される酸、アルカリなどの腐蝕性流体の輸送時に使用される配管継手に係り、特に、耐薬品性であり、腐蝕性流体の供給動作を簡単かつ安全にできるようにした腐蝕性の簡易着脱配管継手に関するものである。」(3欄4行〜同欄9行)

(イ)「しかしながら、斯かる管継手は全て金属性であり、スプリングも液流通路中に設けられたもので、腐蝕性流体の送液には腐蝕性から使用できないという欠陥がある。
本発明は、上記従来欠陥に鑑み斯かる欠陥を解消すべく発明したもので、本発明の目的とするところは、酸、アルカリ等腐蝕性流体の送液配管中に使用できる簡易着脱配管継手とするべく、継手内の自己閉鎖弁を摺動させる金属製スプリングを直接流通する流体に接触させないように継手内に配設するとともに該継手の結合、分離動作中にスプリングへの液洩れを防止し、継手を構成する弁部材を耐薬品性の材質とするなどして耐蝕性の構造とし、かつ、継手の結合、分離動作が簡単でしかもこの際液洩れがなくて安全に操作できる簡易着脱配管継手を提供せんとするもので、本発明の構成は前記目的達成のために、実施例を示す図面を参照し明らかなように、雌継手1Aと雄継手2Aとを結合、分離して流体を流通、停止する簡易着脱配管継手において、雌継手1Aの雌主体1内に、内部が流体通路となる連通した横孔通孔9bと縦孔通孔9cとを有し、雌主体1に螺合結着された固定バルブ9と、該固定バルブ9の中筒部9aの外周側に嵌装したスプリング7を介して前記縦孔通孔9cの閉鎖方向に付勢される摺動自在に設けたバルブスリーブ8とを配設し、一方、雄継手2Aの雄主体21に前記バルブスリーブ8の小径先筒部8bに先端部分を嵌合させる嵌合筒部21aを設け、この嵌合筒部21aの後部にアダプター22を螺合結着させるとともに、前記雄主体21内に、内部が流体通路となる連通した横孔通孔23fと縦孔通孔23gとを有し、その外周側に嵌装したスプリング24を介して前記縦孔通孔23gの閉鎖方向に付勢される摺動自在かつ、前記固定バルブ9との突合わせ接当可能に設けたポペツトバルブ23を配設し、前記固定バルブ9とバルブスリーブ8との摺動部における縦孔通孔9cとスプリング7との中間位置にシールリング10を組込み、固定バルブ9と雌主体1との嵌合部における前記スプリング7に対し後部位置にシールリング12を組込む一方、前記雄主体21とポペツトバルブ23との摺動部における縦孔通孔23gとスプリング24との中間位置にシールリング27を組込み、ポペツトバルブ23とアダプター22との摺動部におけるスプリング24に対し後部位置にシールリング26を組込み、さらに、前記嵌合筒部21aにおける前記小径先筒部8bに嵌合させる小径横孔部21hの内周面にシールリング25を組込んでなり、前記雌主体1、バルブスリーブ8、固定バルブ9、雄主体21、アダプター22、ポペツトバルブ23を構成する部材を耐蝕性合成樹脂で成形する一方、前記各シールリング10,12,25,26,27を耐蝕性ゴムで成形して耐蝕性の簡易着脱配管継手を構成したものであり、材質としては、各スプリング7,24を耐蝕性合成樹脂被膜でコーテイングされた金属性のスプリングにより構成すること、また、耐蝕性合成樹脂、耐蝕性ゴムをフツ素樹脂、フツ素ゴムにすることを夫々好ましい実施態様とするものであり、かくして強酸、強アルカリの送液配管中に使用できるようにしたことを特徴とする。」(4欄10行〜5欄26行)

(ウ)「第1図は本発明の実施例に於ける雌継手1A、第2図は第1図の雌継手1Aと結合する雄継手2A、第3図は雌継手1Aと雄継手2Aとの結合状態である。
雌継手1Aは雌主体1の中筒部1aには小筒部1bに止め輪2により固定保持されているカラー3を介し、スプリング4により摺動するスリーブ5が組込まれている。スリーブ5はスリーブ5の内部に設けてある円錐面5aが雌主体1の先筒部1cに設けてある円錐面1dにより係止されスリーブ5が雌主体1の先筒部1c側へ離脱しないようにしてある。雌主体1の内部横孔は先筒部1c側より大径横孔1e、中径横孔1f、小径横孔1g及び流体の流路となる通孔1hとで形成され、中筒部1aには大径横孔1eへ貫通する円錐状の縦孔1iが同一円周状に複数設けてあり、この円錐状の縦孔1iには樹脂製球6が組込んであると共に、樹脂製球6が雌主体1の中筒部1aより飛び出さないように、スリーブ5の内径部5bにより樹脂製球6を保持してデテントの作用をするようにしている。雌主体1の中径横孔1fにはスプリング7により摺動するバルブスリーブ8が小径横孔1gに螺合結着されている固定バルブ9の外周側に組込まれている。
バルブスリーブ8の外筒は雌主体1の中径横孔1fに嵌合し摺動する摺動筒部8aと小径の先筒部8bとが形成してあり、又内部横孔はスプリング7の受け座となる大径横孔8cと固定バルブ9の中筒部9aと嵌合し摺動する小径横孔8d、及び固定バルブ9の先端に設けてある環状突胴部9bを嵌合させる中径横孔8eからなるとともに小径横孔8dには固定バルブ9の中筒部9aを摺動中、内部流体が雌主体1の中径横孔1f側に漏洩しない様にO−リング溝8fを設けO−リング10が組込んである。
固定バルブ9には流体の流路となる連通孔縦孔9cと横孔9dを有するとともに中筒部9aの一端には内部流体の気密保持をさせるためにO−リング溝9eを設けO−リング11が組込んである。
又固定バルブ9の中筒部9aの他端には、雌主体1の小径横孔1gに設けてある雌螺子1jと螺合する雄螺子9fが設けてあり、固定バルブ9はこの螺合結着により、雌主体1に固定され、かつ、雌主体1の小径横孔1gと固定バルブ9の中筒部9aとの嵌合部より内部流体が雌主体1の中径横孔1f側に漏洩しないように雌主体1の小径横孔1gにはO−リング溝1kを設けO−リング12が組込んである。
スプリング7により摺動するバルブスリーブ8は固定バルブ9を介して雌主体1の中径横孔1fに組込まれるが、組込後固定バルブ9の環状突胴部9bの一端に設けてある円錐面9gがバルブスリーブ8の中径横孔8e部に設けてある円錐面8gを係止するためバルブスリーブ8が、固定バルブ9より離脱することはない。又、雌主体1の通孔1hには装置の導管が直接接続出来るよう雌螺子1lが形成してある。」(5欄29行〜6欄42行)

(エ)「雄継手2Aは第2図に示したように雄主体21、アダプター22、ポペツトバルブ23、スプリング24及びO−リング25,26,27で構成され、雄主体21は雌主体1の大径横孔1eと嵌合する嵌合筒部21aと中筒部21cと小径の先筒部21bとからなり、先筒部21bには、アダプター22に設けてある雌螺子22aと螺合する雄螺子21dを有しているとともに、嵌合筒部21aの先端方向にはV形状をした環状溝21eを形成してある。
又、雄主体21の内部横孔は先筒部21bから嵌合筒部21aの環状溝21eにかけて大径横孔21fを有し、それより先細の円錐面21gが形成され小径横孔21hと連通している。
アダプター22の内部横孔は一端に雌螺子22aを備えている大径横孔22b、中央に小径横孔22cと他端には流体の流路となる通孔22dを形成し、通孔22dには装置の導管が直接接続出来る様雌螺子22eが設けてある。
雄主体21の雄螺子21dとアダプター22の雌螺子22aとが螺合結着された雄主体21の大径横孔21f内にはポペツトバルブ23がスプリング24を介し摺動可能に組込まれている。
ポペツトバルブ23の外筒は雄主体21内の小径横孔21hに摺動嵌合し、且つ雌主体1内に組込んであるバルブスリーブ8の先筒部8bと外径が同一となつている嵌合胴部23aと、雄主体21の大径横孔21f内を摺動する大径筒部23bと、アダプター22の小径横孔22c内を摺動する小径筒部23cとスプリング24が外周部に組込まれる中径筒部23dとからなり、大径筒部23bの嵌合胴部23a側には先細の円錐面23eが形成されている。この円錐面23eには、流体の流路である横孔23fに連通する縦孔23gが設けてあると共に雄主体21の小径横孔21hとポペツトバルブ23の嵌合胴部23aとの嵌合部より内部流体が外部に洩れない様雄主体21の小径横孔21hにはO−リング溝21iを設けO−リング25が組込んであり、雄主体21内の大径横孔21fとポペツトバルブ23の大径筒部23b並びアダプター22内の小径横孔22cとポペツトバルブ23の小径筒部23cとの嵌合部も内部流体が雄主体21の大径横孔21f内に組込まれているスプリング24部に流入しない様ポペツトバルブ23の大径筒部23bとアダプター22内の小径横孔22cには各々O−リング溝23h,22fを設けO−リング27、O−リング26が組込んである。
又ポペツトバルブ23は雄主体21内に組込まれるが、組込後、ポペツトバルブ23の大径筒部23bに設けてある円錐面23eが雄主体21の大径横孔21f内に設けてある円錐面21gにより係止される為ポペツトバルブ23は雄主体21より抜け出ることはない。」(6欄43行〜8欄8行)

(オ)「以上の構成からなる雌継手及び雄継手の結合、分離の動作をさせるには、第1図雌継手1A、第2図雄継手2Aの結合分離は、第3図の如く雌主体1の中筒部1aに組込んであるスリーブ5を小筒部1b側に押し下げて、中筒部1aに複数組込んである樹脂製球6を中筒部1aの外周側へ自由状態とし、雄主体21の嵌合筒部21aを雌主体1内の大径横孔1e部へ押込んで行くと、雌主体1内に螺合固定されている固定バルブ9の環状突胴部9bの端面とスプリング24を介し雄主体21内で摺動可能に保持されているポペツトバルブ23の嵌合胴部23aの端面とが接触する。
更に雄主体21の嵌合筒部21aを押込んで行くと雄主体21内のポペツトバルブ23が、アダプター22側へ後退し始めるがこの後退に追従して雌主体1内に組込まれているバルブスリーブ8の先筒部8bが雄主体21の小径横孔21hに嵌合前進する。この時雄主体21内のポペツトバルブ23の縦孔23gより流出する流体は雄主体21内の小径横孔21hに組込んであるO−リング25によりバルブスリーブ8の先筒部8bがシールされている為内部流体が外部に洩れることはないと共にポペツトバルブ23及びアダプター22内に組込んであるO−リング27と26とで雄主体21の大径横孔21fとポペツトバルブ23の小径筒部23cをシールしているため内部流体が雄主体21の大径横孔21fに組込んであるスプリング24部への流入はない。
更に雄主体21の嵌合筒部21aを押込むと、嵌合筒部21aの端面と雌本体1内に組込まれているバルブスリーブ8の摺動筒部8aと先筒部8bとの境界面とが接触した状態で、バルブスリーブ8が通孔1h側へ後退し始め雌主体1内に組込んである固定バルブ9の流路が開放され始めると共に先に開放されている雄主体21内の流路とが連通し、流体が流通し合う。
この時雌主体1内に組込んであるO−リング12とバルブスリーブ8内に組込んであるO−リング10とで固定バルブ9の中筒部9aをシールしている為、内部流体が雌主体1の中径横孔1f内に組込まれているスプリング7側へ流入することはない。
更に雄主体21の嵌合筒部21aを押込むと、嵌合筒部21aの先端方向に設けてあるV形状をした環状溝21eに、雌主体1の中筒部1aに組込まれ自由状態となつている樹脂製球6が落込むと押し下がつていたスリーブ5はスプリング4の力に依つて元の位置に戻ると共にスリーブ5の内径部5bにより樹脂製球6が固定され、雌継手1Aと雄継手2Aとの結合動作を完了する。
この時雌継手1Aと雄継手2A内の流路は第3図に示したように全開状態となるが雌主体1内に組込んであるバルブスリーブ8の先筒部8bが雄主体21内の小径横孔21hに組込んであるO−リング25に依りシールされているため内部流体が外部に洩れることはなく、雄主体21内の大径横孔21fに組込まれているスプリング24部への流体の流入はポペツトバルブ23及びアダプター22内に組込んであるO−リング27,26とで雄主体21の大径横孔21fとポペツトバルブ23の小径筒部23cを各々シールしているため無い。
又雌主体1内に組込まれているスプリング7部への流体の流入は雌主体1内に組込んであるO−リング12とバルブスリーブ8内に組込んであるO−リング10とで固定バルブ9の中筒部9aをシールしている為無い。」(9欄26行〜11欄4行)

(カ)「次に結合している雌継手1Aと雄継手2Aとを分離させるには、雌主体1の中筒部1aに組込んであるスリーブ5を小筒部1b側へ押し下げると樹脂製球6は固定されていたスリーブ5の内径部5bから固定を解除され、中筒部1aの外周側への移動が自由となると雌主体1の中径横孔1f内に組込んであるスプリング7と雄主体21にポペツトバルブ23を介し組込んであるスプリング24との反力に依り樹脂製球6を雌主体1の中筒部1aの外周側へ押し上げられ雌継手1Aと雄継手2Aとは分離する。
分離の際雌継手1A側は雌主体1の中径横孔1f内に組込んであるスプリング7の反力でバルブスリーブ8が大径横孔1e側へ前進するが、小径横孔1gに螺合固定されている固定バルブ9に設けてある環状突胴部9bの円錐面9gにバルブスリーブ8の中径横孔8e部に設けてある円錐面8gが押し当てられバルブスリーブ8の摺動は阻止され第1図に示した状態となる。
この時固定バルブ9内の流路である縦孔9cより流出する内部流体の外部への洩れは固定バルブ9に組込まれているO−リング11によりバルブスリーブ8の小径横孔8dをシールしているため洩れは無い。又雌主体1内に組込んであるO−リング12とバルブスリーブ8内に組込んであるO−リング10とで固定バルブ9の中筒部9aをシールしているためバルブスリーブ8の摺動中又は停止時に於ても、内部流体が雌主体1の中径横孔1f内に組込まれているスプリング7側へ流入することはない。
雄継手2A側は雌主体1内に組込まれているバルブスリーブ8の摺動筒部8aと先筒部8bとの境界面と雄主体21の嵌合筒部21aの面とが接触した状態で雌主体1の中径横孔1f内に組込んであるスプリング7と雄主体21にポペツトバルブ23を介し、組込んであるスプリング24との反力に依り、雄主体21はアダプター22側へ押し下げられると共にポペツトバルブ23の嵌合胴部23aが、雄主体21の小径横孔21hに嵌合前進し、ポペツトバルブ23の円錐面23eが雄主体21の大径横孔21f内に設けてある円錐面21gに押し当り、ポペツトバルブ23の作動は阻止され第2図に示した状態となる。
この時内部流体の外部への流出は分離動作中は雄主体21内の小径横孔21hに組込んであるO−リング25に依り雌主体1内に組込んであるバルブスリーブ8の先筒部8bを、分離後は雄主体21内に組込んであるポペツトバルブ23の嵌合胴部23aを各々シールする為ない。又、ポペツトバルブ23及びアダプター22内に組込んであるO−リング27と26とで雄主体21内の大径横孔21fとポペツトバルブ23の小径筒部23cとをシールしているためポペツトバルブ23の摺動中又は停止時に於ても内部流体が、雄主体21内の大径横孔21fに組込んであるスプリング24側へ流入することはない。」(11欄5行〜12欄16行)

(キ)「本発明簡易着脱配管継手の発明例は前記の通りであるが、本発明は雌継手1Aと雄継手2Aとを結合、分離して流体を流通、停止する簡易着脱配管継手において、雌継手1Aの雌主体1内に、内部が流体通路となる連通した横孔通孔9dと縦孔通孔9cとを有し、雌主体1に螺合結着された固定バルブ9と、該固定バルブ9の中筒部9aの外周側に嵌装したスプリング7を介して前記前記縦孔通孔9cの閉鎖方向に付勢される摺動自在に設けたバルブスリーブ8とを配設し、一方、雄継手2Aの雄主体21に前記バルブスリーブ8の小径先筒部8bに先端部分を嵌合させる嵌合筒部21aを設け、この嵌合筒部21aの後部にアダプター22を螺合結着させるとともに、前記雄主体21内に、内部が流体通路となる連通した横孔通孔23fと縦孔通孔23gとを有し、その外周側に嵌装したスプリング24を介して前記縦孔通孔23gの閉鎖方向に付勢される摺動自在かつ、前記固定バルブ9との突合わせ接当可能に設けたポペツトバルブ23を配設し、前記固定バルブ9とバルブスリーブ8との摺動部における縦孔通孔9cとスプリング7との中間位置にシールリング10を組込み、固定バルブ9と雌主体1との嵌合部における前記スプリング7に対し後部位置にシールリング12を組込む一方、前記雄主体21とポペツトバルブ23との摺動部における縦孔通孔23gとスプリング24との中間位置にシールリング27を組込み、ポペツトバルブ23とアダプター22との摺動部におけるスプリング24に対し後部位置にシールリング26を組込んだ構成としたから、雌継手1Aと雄継手2Aとを分離、結合動作において、バルブスリーブ8とポペツトバルブ9が摺動中に流体は内部を流通し直接スプリングに接触しないので、スプリングの腐蝕が起ることはなく。耐久性が保持できる。
また、本発明は、雄主体21の先端開放部の小径横孔部21hの内周面に組込んだOリング25を、雌主体1内の前記バルブスリーブ8の小径先筒部8bに挿入嵌合可能にしたことにより、雌継手1Aと雄継手2Aとの分離、結合時、前記雄主体21の小径横孔部21hの内周面がOリング25を介し、雌主体1のバルブスリーブ8の小径先筒部8bに嵌入しつつバルブスリーブ8を後退させて嵌合し、このときバルブスリーブ8の横孔通孔9d、縦孔通孔9cとポペツトバルブ23の横孔通孔23f、縦孔通孔23gとを連通させるので、前記Oリング25の作用で内部流体の気密を保持し、外部に液洩れすることがないので、人体に危険な酸、アルカリに対して安全であり、かつ、雌継手1Aと雄継手21Aの結合、分離動作のみで流体流路を流通、停止するので操作もきわめて簡単である。」(15欄9行〜16欄17行)









イ 上記ア及び図面の記載から認められる事項
上記ア及び図面の記載から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア)上記ア(ア)〜(キ)及び第1図〜第3図(特に4欄14行〜同欄25行、6欄40行〜同欄42行、7欄13行〜同欄17行及び15欄10行〜同欄12行)の記載によれば、引用文献3には、装置の導管を解放可能に接続するための簡易配管着脱継手が記載されていると認められる。

(イ)上記ア(イ)、(ウ)及び(キ)並びに第1図及び第3図の記載によれば、簡易配管着脱継手において、雌継手1Aを備えることが認められる。
そして、特に4欄29行〜同欄31行(なお、「横孔通孔9b」は「横孔通孔9d」の誤記と認める。)、5欄40行〜同欄42行、6欄20行〜同欄21行及び6欄27行〜同欄28行及び15欄12行〜同欄14行並びに第1図の記載によれば、雌継手1Aは、雌主体1の通孔1hと、前記雌主体1に固定された固定バルブ9の縦孔通孔9c及び横孔通孔9dとを含む流体通路(以下「第1の流体通路」という。)を有することが認められる。

(ウ)上記ア(イ)、(ウ)、(カ)及び(キ)並びに第1図及び第3図(特に4欄32行〜同欄35行、6欄5行〜同欄19行、11欄16行〜同欄23行及び15欄15行〜同欄18行)の記載によれば、簡易配管着脱継手において、雌継手1A内に配置されるバルブスリーブ8を備えることが認められる。
また、同記載によれば、前記バルブスリーブ8は、雌主体1の中径横孔1fに嵌合し摺動する摺動筒部8aと前記雌主体1に固定された固定バルブ9の中筒部9aと嵌合し摺動する小径横孔8dとを有して摺動自在とされ、前記固定バルブ9の前記第1の流体通路となる縦孔通孔9cを閉鎖させるように動作可能であるから、第1の流体通路を通る流体流動を中断させるように動作可能であることが認められる。

(エ)上記ア(イ)、(ウ)、(カ)及び(キ)並びに第1図及び第3図(特に4欄27行〜同欄35行、6欄5行〜同欄19行、11欄16行〜同欄23行、15欄15行〜同欄18行及び第1図)の記載によれば、簡易配管着脱継手において、第1の流体通路の外側に配置されるスプリング7を備えること、及び、前記スプリング7が、バルブスリーブ8を雌主体1に固定された固定バルブ9の第1の流体通路となる縦孔通孔9cの閉鎖位置に向けて付勢するように動作可能であることが認められる。
また、全体として円筒状を呈するスプリング7とバルブスリーブ8との配置関係について第1図を参照すると、前記スプリング7は、前記バルブスリーブ8の一部である摺動筒部8aの内周に配置されることが認められる。

(オ)上記ア(イ)、(エ)及び(キ)並びに第1図及び第2図の記載によれば、簡易配管着脱継手において、雄継手2Aを備えることが認められる。
そして、特に4欄38行〜同欄41行、7欄13行〜同欄17行、7欄31行〜同欄33行及び15欄21行〜同欄24行並びに第2図の記載によれば、雄継手2Aは、雄主体21内の横孔通孔23f及び縦孔通孔23gと、アダプター22の通孔22dとを含む流体通路(以下「第2の流体通路」という。)を有することが認められる。

(カ)上記ア(イ)、(エ)、(カ)及び(キ)並びに第2図及び第3図の記載(特に4欄39行〜5欄1行、7欄18行〜8欄8行、11欄35行〜12欄3行及び15欄22行〜同欄28行)によれば、簡易配管着脱継手において、雄継手2A内に配置されるポペットバルブ23を備えることが認められる。
また、同記載によれば、前記ポペットバルブ23は、前記ポペットバルブ23の第2の流体通路となる縦孔通孔23gを閉鎖させるように動作可能であるから、前記第2の流体通路を通る流体流動を中断させるように動作可能であることが認められる。

(キ)上記ア(イ)、(エ)、(カ)及び(キ)並びに第2図及び第3図の記載(特に4欄39行〜5欄1行、7欄18行〜8欄2行、11欄35行〜12欄3行及び15欄22行〜同欄28行)によれば、簡易配管着脱継手において、第2の流体通路の外側に配置されるスプリング24を備えること、及び、前記スプリング24は、ポペットバルブ23を前記ポペットバルブ23の前記第2の流体通路となる縦孔通孔23gの閉鎖位置に向けて付勢するように動作可能であることが認められる。

(ク)上記ア(ウ)、(オ)及び(カ)並びに第1図及び第3図の記載(特に5欄40行〜6欄5行、9欄26行〜同欄37行、10欄24行〜同欄31行及び11欄5行〜同欄15行)によれば、簡易配管着脱継手において、雌継手1Aに移動可能に結合される樹脂製球6を備えることが認められる。

(ケ)上記ア(エ)及び(オ)並びに第2図及び第3図の記載(特に6欄43行〜7欄8行及び10欄24行〜同欄31行)によれば、簡易配管着脱継手において、雄継手2Aに結合される嵌合筒部21aの環状溝21eを形成した部分を備えることが認められる。
また、同記載と上記(ク)の検討によれば、雌継手1A及び前記雄継手2Aの解放可能かつ嵌合可能な軸方向結合に応じて、樹脂製球6は、前記嵌合筒部21aの環状溝21eを形成した部分と係合し、前記雌継手1Aの軸方向位置を前記雄継手2Aに対して固定することが認められる。
さらに、上記ア(オ)及上記(イ)〜(キ)の検討によれば、上記固定によって前記簡易配管着脱継手の接続された状態を達成し、前記接続された状態では、前記雌継手1Aは、ポペットバルブ23の縦孔通孔23gの開放位置に向かって前記ポペットバルブ23を推進し(9欄26行〜10欄9行)、前記雄継手2Aは、固定バルブ9の縦孔通孔9cの開放位置に向かってバルブスリーブ8を推進する(10欄10行〜同欄17行)ことにより、第1の流体通路及び第2の流体通路を流体連通状態に配置し(10欄24行〜同欄33行)、流体流路を提供することが認められる。

(コ)上記ア(ウ)、(オ)及び(カ)並びに第1図及び第3図の記載(特に5欄33行〜6欄5行、9欄26行〜同欄37行、10欄24行〜同欄31行及び11欄5行〜同欄15行)によれば、簡易配管着脱継手において、雌継手1Aに移動可能に結合されるスリーブ5を備えることが認められる。

(サ)上記ア(カ)及び第1図〜第3図の記載(特に11欄5行〜同欄15行)と上記(ク)〜(コ)の検討によれば、簡易配管着脱継手において、雌継手1Aの雌主体1における中筒部1aの外側表面に沿ったスリーブ5の進行(小筒部1b側への押し下げ)は、樹脂製球6を嵌合筒部21aの環状溝21eを形成した部分から係脱させ、前記簡易配管着脱継手の接続解除された状態を達成することが認められる。

ウ 引用発明
上記ア及びイから、本件補正発明に倣って整理すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「装置の導管を解放可能に接続するための簡易配管着脱継手であって、
第1の流体通路を有する雌継手1Aと、
前記雌継手1A内に配置されるバルブスリーブ8であって、前記バルブスリーブ8は、前記第1の流体通路を通る流体流動を中断させるように動作可能である、バルブスリーブ8と、
前記第1の流体通路の外側に配置されるスプリング7であって、前記スプリング7は、前記バルブスリーブ8を雌主体1に固定された固定バルブ9の前記第1の流体通路となる縦孔通孔9cの閉鎖位置に向けて付勢するように動作可能であり、前記スプリング7は、前記バルブスリーブ8の一部である摺動筒部8aの内周に配置される、スプリング7と、
第2の流体通路を有する雄継手2Aと、
前記雄継手2A内に配置されるポペットバルブ23であって、前記ポペットバルブ23は、前記第2の流体通路を通る流体流動を中断させるように動作可能である、ポペットバルブ23と、
前記第2の流体通路の外側に配置されるスプリング24であって、前記スプリング24は、前記ポペットバルブ23を前記ポペットバルブ23の前記第2の流体通路となる縦孔通孔23gの閉鎖位置に向けて付勢するように動作可能である、スプリング24と、
前記雌継手1Aに移動可能に結合される樹脂製球6と、
前記雄継手2Aに結合される嵌合筒部21aの環状溝21eを形成した部分であって、前記雌継手1A及び前記雄継手2Aの解放可能かつ嵌合可能な軸方向結合に応じて、前記樹脂製球6は、前記嵌合筒部21aの環状溝21eを形成した部分と係合し、前記雌継手1Aの軸方向位置を前記雄継手2Aに対して固定し、それによって前記簡易配管着脱継手の接続された状態を達成し、前記接続された状態では、前記雌継手1Aは、前記ポペットバルブ23の前記縦孔通孔23gの開放位置に向かって前記ポペットバルブ23を推進し、前記雄継手2Aは、前記固定バルブ9の前記縦孔通孔9cの開放位置に向かって前記バルブスリーブ8を推進することにより、前記第1の流体通路及び前記第2の流体通路を流体連通状態に配置し、流体流路を提供する、前記嵌合筒部21aの環状溝21eを形成した部分と、
前記雌継手1Aに移動可能に結合されるスリーブ5と
を備え、
前記雌継手1Aの前記雌主体1における中筒部1aの外側表面に沿った前記スリーブ5の進行は、前記樹脂製球6を前記嵌合筒部21aの環状溝21eを形成した部分から係脱させ、前記簡易配管着脱継手の接続解除された状態を達成する、簡易配管着脱継手。」

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
ア 後者の「装置の導管」は、前者の「管」に相当し、同様に、「簡易配管着脱継手」は「コネクタシステム」に相当する。

イ 後者の「第1の流体通路」は前者の「第1の通路」に相当し、同様に、「雌継手1A」は「メス型結合器」に相当する。

ウ 後者の「バルブスリーブ8」は前者の「第1の弁」に相当する。

エ 後者の「スプリング7」は前者の「第1の弁付勢部材」に相当し、同様に、「雌主体1に固定された固定バルブ9の前記第1の流体通路となる縦孔通孔9cの閉鎖位置」は「第1の弁閉鎖位置」に、「バルブスリーブ8の摺動筒部8a」は「第1の弁の一部」に相当する。

オ 後者の「第2の流体通路」は前者の「第2の通路」に相当し、同様に、「雄継手2A」は「オス型結合器」に相当する。

カ 後者の「ポペットバルブ23」は前者の「第2の弁」に相当する。

キ 後者の「スプリング24」は前者の「第2の弁付勢部材」に相当し、同様に、「前記ポペットバルブ23の前記第2の流体通路となる縦孔通孔23gの閉鎖位置」は「第2の弁閉鎖位置」に相当する。

ク 後者の「樹脂製球6」は前者の「キャッチ」に相当する。

ケ 後者の「嵌合筒部21aの環状溝21eを形成した部分」は前者の「キャッチ受容要素」に相当し、同様に、「前記雌継手1A及び前記雄継手2A」は「前記メス型およびオス型結合器」に、「前記ポペットバルブ23の前記縦孔通孔23gの開放位置」は「第2の弁開放位置」に、「前記固定バルブ9の前記縦孔通孔9cの開放位置」は「第1の弁開放位置」に、「前記第1の流体通路及び前記第2の流体通路」は「前記第1および第2の通路」に、相当する。

コ 後者の「スリーブ5」は前者の「解放要素」に相当する。

サ 後者の「前記雌主体1における中筒部1aの外側表面」は前者の「メス型結合器外側表面」に相当する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「管を解放可能に接続するためのコネクタシステムであって、
第1の通路を有するメス型結合器と、
前記メス型結合器内に配置される第1の弁であって、前記第1の弁は、前記第1の通路を通る流体流動を中断させるように動作可能である、第1の弁と、
前記第1の通路の外側に配置される第1の弁付勢部材であって、前記第1の弁付勢部材は、前記第1の弁を第1の弁閉鎖位置に向けて付勢するように動作可能である、第1の弁付勢部材と、
第2の通路を有するオス型結合器と、
前記オス型結合器内に配置される第2の弁であって、前記第2の弁は、前記第2の通路を通る流体流動を中断させるように動作可能である、第2の弁と、
前記第2の通路の外側に配置される第2の弁付勢部材であって、前記第2の弁付勢部材は、前記第2の弁を第2の弁閉鎖位置に向けて付勢するように動作可能である、第2の弁付勢部材と、
前記メス型結合器に移動可能に結合されるキャッチと、
前記オス型結合器に結合されるキャッチ受容要素であって、前記メス型およびオス型結合器の解放可能かつ嵌合可能な軸方向結合に応じて、前記キャッチは、前記キャッチ受容要素と係合し、前記メス型結合器の軸方向位置を前記オス型結合器に対して固定し、それによって前記コネクタシステムの接続された状態を達成し、前記接続された状態では、前記メス型結合器は、第2の弁開放位置に向かって前記第2の弁を推進し、前記オス型結合器は、第1の弁開放位置に向かって前記第1の弁を推進することにより、前記第1および第2の通路を流体連通状態に配置し、流体流路を提供する、キャッチ受容要素と、
前記メス型結合器に移動可能に結合される解放要素と
を備え、
前記メス型結合器のメス型結合器外側表面に沿った前記解放要素の進行は、前記キャッチを前記キャッチ受容要素から係脱させ、前記コネクタシステムの接続解除された状態を達成する、コネクタシステム。」

[相違点]
本件補正発明においては、「第1の弁付勢部材」が「第1の弁の一部の周りに配置される」のに対して、引用発明においては、「スプリング7」が「バルブスリーブ8の一部である摺動筒部8aの内周に配置される」点。

(4)判断
ア 相違点について
引用発明において、スプリング7がバルブスリーブ8の一部である摺動筒部8aの内周に配置されるところ、スプリング7(第1の弁付勢部材)は、バルブスリーブ8(第1の弁)の一部である摺動筒部8aの内側からみた場合、バルブスリーブ8(第1の弁)の一部である摺動筒部8aの周りに配置されるといえるから、上記相違点は実質的な相違点ではない。
仮に、本件補正発明の「前記第1の弁付勢部材は、前記第1の弁の一部の周りに配置される」という事項について、第1の弁付勢部材が第1の弁の一部の外側の周り(外周)に配置されていると限定的に解釈し、上記相違点が実質的な相違点であるとして、以下に検討する。
上記相違点に係る本件補正発明の構成については、本願明細書の段落0137の記載によれば、第1の弁付勢部材と第1の弁とを同心関係に配置したという技術的意義を有する旨の記載があるが、そのようなことは引用発明においても認められる程度のことであり、格別な技術的意義を見出すことができず、当業者が適宜なし得る設計的事項というべきものである。
一方、引用発明において、バルブスリーブ8は、外周側で摺動筒部8aが雌主体1の中径横孔1fに摺動するのみならず、内周側で小径横孔8dの内面が雌主体1に固定された固定バルブ9の中筒部9aと摺動することから(上記(2)イ(ウ)を参照。)、内周側でも円滑に摺動するように図ることは当業者が考慮することであり、加えて、引用文献3の上記(2)ア(エ)(特に7欄13行〜同欄31行)並びに第2図及び第3図には、スプリング24(第2の弁付勢部材)がポペットバルブ23(第2の弁)の中径筒部23d(一部)の外周部(周り)に配置されること」(以下「引用文献3の記載事項」という。)が記載されている。
以上を踏まえると、引用発明のバルブスリーブ8において、摺動性の向上及び安定を目的として、摺動筒部8aを外周側に設けられているものに加えて、さらに内周側にも設けること、又は、摺動筒部8aを内周側のみに設けることは当業者が適宜なし得る設計変更であり、その際に、引用文献3の記載事項を参酌して、内周側に設けられた摺動筒部8aの外周にスプリング7を配置することは、当業者が容易になし得たことである。
そうすると、引用発明において、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の4ページ5行〜同ページ20行において、
「本願請求項に係る「前記第1の弁付勢部材が、前記第1の弁の一部の周りに配置される」という配置は、第1の弁付勢部材が第1の通路の外部または外、それに従って流体流路の外部または外に配置することを可能および許容するものであり、そのようなことには、少なくとも本願明細書の段落0126に記載されるような対応する効果があります。」
「本願明細書の段落0126には『従来の「迅速解放」結合器とは対照的に、瞬間的第1の弁付勢部材(37)は、メス型およびオス型結合器(3)(5)が接続し、コネクタシステム(1)の接続された状態(7)を達成すると、第1の通路(4)の外部または外側に、故に、流体流路(8)の外部または外側に配置される。対応して、流体流路(8)内の流体流動弾は、力性圧縮性部材(16)に接触せず、これは、流体流路(8)内の菌膜成長のための潜在的基質の排除および流体流路(8)内の流体流動に対する物理的妨害物の排除を含む、複数の理由から有利であり得る。』と記載されています。」
「少なくとも以上に鑑みて、補正後の特徴が、単なる設計的事項ではなく、上述いたしましたところの顕著な技術的効果を達成するための重要な特徴であることは明らかです。」
と主張する。
しかし、「流体流路(8)内の流体流動弾は、力性圧縮性部材(16)に接触せず、これは、流体流路(8)内の菌膜成長のための潜在的基質の排除および流体流路(8)内の流体流動に対する物理的妨害物の排除を含む、複数の理由から有利であり得る。」という効果は、第1の弁付勢部材が、第1の弁の一部の周りに配置されること、すなわち、上記相違点に係る本件補正発明の構成により直接達成される効果ではなく、第1の弁付勢部材を、流体流路から隔離することにより達成されるものであり、上記(2)ア(イ)、(ウ)、(カ)及び(キ)(4欄14行〜同欄25行、10欄4行〜同欄9行、10欄18行〜同欄23行、11欄28行〜同欄34行、12欄9行〜同欄16行及び15欄28行〜同欄末行)、第1図、第3図に記載されているように、引用発明におけるスプリング7も、本件補正発明における第1の弁付勢部材と同様に流体流路から隔離されるものであるから、請求人の上記主張は採用できない。

ウ 効果について
そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献3の記載事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ まとめ
したがって、本件補正発明は、引用文献3に記載された引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するか、又は、引用発明及び引用文献3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項又は同法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜8に係る発明は、令和2年6月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、請求項1についての理由は、概ね以下のとおりである。
(1)理由1(新規性)について
本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)理由2(進歩性)について>
本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献3:特公昭64−10712号公報公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3、その記載及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から「前記第1の弁付勢部材は、前記第1の弁の一部の周りに配置される」という限定を削除したものであるから、本願発明と引用発明とは、前記第2の[理由]2(3)の対比を踏まえると、相違点は認められない。
仮に相違点が認められるとしても、当業者が適宜なし得る設計事項の範疇のものである。
そうすると、前記第2の[理由]2(4)の判断を踏まえると、本願発明は、引用文献3に記載された引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するか、又は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項又は同法第29条第2項の規定により特許受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 松下 聡
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-12-17 
結審通知日 2021-12-20 
審決日 2022-01-05 
出願番号 P2018-537509
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16L)
P 1 8・ 575- Z (F16L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 林 茂樹
槙原 進
発明の名称 流体導管を解放可能に接続するためのコネクタシステム  
代理人 石川 大輔  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 健策  
代理人 山本 秀策  
代理人 飯田 貴敏  

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