• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1384903
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-28 
確定日 2022-05-19 
事件の表示 特願2019−230709「防眩フィルムおよび画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月16日出願公開、特開2020− 60781〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特願2019−230709号(以下「本件出願」という。)は、平成27年7月30日(先の出願に基づく優先権主張 平成26年8月1日)を出願日とする、特願2015−150988号の一部を新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 2年 7月21日付け:拒絶理由通知書(特許法50条の2の通知を 伴う拒絶理由)
令和 2年10月26日提出:意見書
令和 2年10月26日提出:手続補正書
令和 3年 2月19日付け:令和2年10月26日にされた手続補正につ いての補正の却下の決定
令和 3年 2月19日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 3年 5月28日提出:審判請求書
令和 3年 5月28日提出:手続補正書


第2 令和3年5月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
令和3年5月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
令和2年10月26日提出の手続補正書による手続補正は上記「第1」に示したとおり、令和3年2月19日付けの補正の却下の決定により却下されたから、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、本件出願の出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のものである。
「 透明基材と、該透明基材の少なくとも一方の面に配置された防眩層とを備え、
外部ヘイズが、−5%〜0.7%である、
防眩フィルム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は当合議体が付与したものであり、補正箇所を示す。
「 透明基材と、該透明基材の少なくとも一方の面に配置された防眩層とを備える防眩フィルムであって、
該防眩層がバインダー樹脂および粒子を含み、
該防眩フィルムが、該透明基材と該防眩層との間に形成され、該透明基材を構成する材料の少なくとも一部および/または該バインダー樹脂の少なくとも一部とを含む、中間層をさらに備え、
該中間層の厚みが、該防眩層の厚みに対して、0.1%〜123%であり、
該防眩フィルムの外部ヘイズが、−5%〜0.7%であり、
該粒子の分散性をレーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒度分布で評価した場合、1μm以上5μm未満の粒子の含有割合が、粒子の全量に対して、50重量%を超える、
防眩フィルム。」

2 補正の適否について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するための必要な事項である「防眩フィルム」について、本件出願の出願当初の特許請求の範囲の請求項5及び8等の記載に基づき、「防眩層とを備え、外部ヘイズが」を「防眩層を備える防眩フィルムであって、」「防眩フィルムの外部ヘイズが」とするとともに、「該防眩層がバインダー樹脂および粒子を含み、」、「該防眩フィルムが、該透明基材と該防眩層との間に形成され、該透明基材を構成する材料の少なくとも一部および/または該バインダー樹脂の少なくとも一部とを含む、中間層をさらに備え、」及び「該中間層の厚みが、該防眩層の厚みに対して、0.1%〜123%であり、」を挿入し、さらに、本件出願の出願当初の明細書の【0046】等の記載に基づき、「該粒子の分散性をレーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒度分布で評価した場合、1μm以上5μm未満の粒子の含有割合が、粒子の全量に対して、50重量%を超える、」を挿入するものである。
また、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野(【0001】)及び解決しようとする課題(【0007】)が同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしているとともに、同条5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正後発明
本件補正後発明は、上記「1」「(2)本件補正後の特許請求の範囲」に記載したとおりのものである。

(2)引用文献及び引用発明
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(国際公開第2013/054804号)は、、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された文献であるところ、そこにはには、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付与したものであり、発明の認定及び判断等で用いた箇所を示す。
(ア)「技術分野
[0001] 本発明は、黒彩感、暗所黒味、動画用途での防眩性(動画防眩性)に優れ、高度な画質の実現に適した画像表示装置用の防眩シートに関する。
背景技術
[0002] 陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示装置においては、一般に、最表面には反射防止のための光学積層体が設けられている。このような反射防止用光学積層体は、光の拡散や干渉によって、像の映り込みを抑制したり反射率を低減するものである。
・・・省略・・・
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0023] 本発明は、このような状況の下で、低屈折干渉層を用いずとも、殊に、暗所での高度な黒味(暗所黒味)及び黒彩感、艶黒感に優れ、動画用途で許容できる防眩性(動画防眩性)を有し、実使用に供するに適した、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示装置用防眩シートを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0024] 例えば、液晶ディスプレイの画角と画質にはトレードオフの関係がある。これまで、液晶テレビは画角が狭く、等方性であるCRTの代替としての観点からは欠陥と看做され、防眩シートも画角拡大機能を持つことを望まれていた。
然るに、本発明者らは液晶テレビを新たなディスプレイと捉えると共に、視聴環境の変化を勘案し、画角が狭く等方性が無いことを欠陥として捉えることなく、正面画質優先の思想のもと、画角と画質のトレードオフの呪縛から開放されるべく、以下の手段を講じた。
・・・省略・・・
[0059] 本発明は、上記知見に基づいて完成したものであり、以下の態様を包含する。
(1)透明基材の少なくとも一方の面に、バインダー樹脂、拡散粒子及びバインダー微粒子を含む防眩層を有する防眩シートであって、該防眩層は透明基材とは反対側の面に凹凸を有し、前記凹凸は、前記バインダー微粒子の密度の高い局在化層を周囲に有する前記拡散粒子及び/または前記拡散粒子の凝集体に基づく凸部により形成されてなり、前記防眩シートに透明基材側から垂直に可視光線を照射した際の正透過方向の輝度をQ、正透過から30度の方向の輝度をQ30、正透過から+2度の方向の輝度と正透過から+1度の方向の輝度とを結ぶ直線、及び、正透過から−2度の方向の輝度と正透過から−1度の方向の輝度とを結ぶ直線を各々正透過に外挿した透過強度の平均値をUとしたとき、下記の(式1)及び(式 2)を満たすことを特徴とする防眩シート。
(式 1) 10 <Q/U < 36
(式 2) Log10(Q30/Q) < −6
(2)前記バインダー微粒子の比重は前記バインダー樹脂の比重よりも大きいことを特徴とする防眩シート。
(3)前記バインダー微粒子が、疎水処理を施されたフュームドシリカ及び/または層状無機化合物であることを特徴とする防眩シート。
(4)前記防眩層の厚みをT(μm)としたとき、下記の(式 3)を満たすことを特徴とする防眩シート。
(式 3) 3< T < 10
(5)前記防眩シートに透明基材側から垂直に可視光線を照射した際の正透過方向の輝度をQとし、前記防眩シートに透明基材側から垂直に可視光線を照射した際の正透過から20度の方向の輝度をQ20としたとき、下記の(式 4)を満たすことを特徴とする防眩シート。
(式 4) Log10(Q20/Q) < −5.5
(6)防眩シートの全へイズ値をHa(%)とし、防眩シートの内部ヘイズ値をHi(%)としたとき、下記の(式5)を満たすことを特徴とする防眩シート。
(式 5) 0 ≦ Ha−Hi ≦ 1.3
(7)最表層に反射防止防眩層を形成してなる防眩シート。
(8)上記防眩シートを用いた偏光板。
(9)上記防眩シートまたは上記偏光板を用いた画像表示装置。
・・・省略・・・
発明の効果
[0060] 本発明によれば、暗所での高度な黒味(暗所黒味)及び黒彩感、艶黒感に優れ、動画用途で許容できる防眩性(動画防眩性)を有し、且つ、実使用に供するに適した画像表示装置用防眩シートを提供することができる。」

(イ)「発明を実施するための形態
[0062] 本発明の防眩シートは、透明基材の少なくとも一方の面に、バインダー樹脂、拡散粒子及びバインダー微粒子を含む防眩層を有する防眩シートであって、該防眩層は透明基材とは反対側の面に凹凸を有し、前記凹凸は、前記バインダー微粒子の密度の高い局在化層を周囲に有する前記拡散粒子及び/または前記拡散粒子の凝集体に基づく凸部により形成されてなり、前記防眩シートに透明基材側から垂直に可視光線を照射した際の正透過方向の輝度をQ、正透過から30度の方向の輝度をQ30、正透過から+2度の方向の輝度と正透過から+1度の方向の輝度とを結ぶ直線、及び、正透過から−2度の方向の輝度と正透過から−1度の方向の輝度とを結ぶ直線を各々正透過に外挿した透過強度の平均値をUとしたとき、下記の(式1)及び(式 2)を満たすことを特徴とする防眩シートである。
(式 1) 10 <Q/U < 36
(式 2) Log10(Q30/Q) < −6
・・・省略・・・
[0084] バインダー樹脂に分散される拡散粒子について、以下詳細に説明する。
拡散粒子は透光性の微粒子であることが好ましく、有機粒子であっても、無機粒子であってもよいし、有機粒子と無機粒子を混合して使用してもよい。球状の有機粒子は凹凸形状を制御しやすいので、少なくとも1種類以上の球状有機粒子を含むことが好ましい。
[0085] 本発明の液晶表示装置用防眩シートにおいて、用いる拡散粒子の平均粒径は、0.5〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜9μmであり、最も好ましくは1.5〜8.0μmである。この範囲内であれば、内部拡散及び/または外部拡散及び/または内部拡散要素と表面凹凸との相互作用による拡散透過強度分布を、調整することが可能である。
[0086] 特に、拡散粒子の平均粒径が0.5μm以上であると、粒子の凝集が過度にならず、凹凸形成の調整が容易になり、10μm以下であると、ギラツキやざらついた画像が出にくいために、拡散透過強度分布を設計する上での自由度が確保される。
なお、上記の本願の性質を満たす為には、拡散粒子の平均粒径Rと防眩層厚Tとの関係は下記式を満たすことが好ましい。
0.35 < R/T < 0.65
防眩層厚みに対する平均粒径の比 R/T が0.65以上であると拡散粒子は塗膜層最表面に突出し、また拡散粒子により生じる凹凸は急峻なものとなるおそれがある。前記R/Tが0.35以下であると凹凸が十分に形成されず映り込みが強くなるおそれがある。上記式を満たすことによって、適度な凹凸形状を形成することができる。
[0087] なお、上記平均粒径は、拡散粒子単独で測定する場合、コールターカウンター法による重量平均径(体積平均径)として計測できる。一方、防眩層中の拡散粒子の平均粒径は、防眩層の透過光学顕微鏡観察において、10個の粒子の最大径を平均した値として求められる。もしくはそれが不適な場合は、粒子中心近傍を通る断面の電子顕微鏡(TEM、STEM等の透過型が好ましい)観察において、任意の同じ種類で、ほぼ同じ位の粒径として観察される拡散粒子30個選択して(粒子のどの部位の断面であるか不明であるためn数を増やしている)その断面の最大粒径を測定し、その平均値として算出される値である。いずれも画像から判断するため、画像解析ソフトにて算出してもよい。
[0088] また、拡散粒子の粒径のばらつきが少ないほど、拡散特性にばらつきが少なく、拡散透過強度分布設計が容易となる。より具体的には、重量平均による平均径をMV、累積25%径をd25、累積75%径をd75としたとき、(d75−d25)/MVが0.25以下であることが好ましく、0.20以下であることが更に好ましい。
なお、累積25%径とは、粒径分布における粒径の小さい粒子からカウントして、25重量%となったときの粒子径をいい、累積75%径とは、同様にカウントして75重量%となったときの粒子径をいう。
[0089] 粒径のばらつきの調整方法としては、例えば、合成反応の条件を調整することで行うことができ、また、合成反応後に分級することも有力な手段である。分級では、その回数を上げることやその程度を強くすることで、望ましい分布の粒子を得ることができる。分級には風力分級法、遠心分級法、沈降分級法、濾過分級法、静電分級法等の方法を用いることが好ましい。
[0090] さらに、防眩層を構成するバインダー樹脂と拡散粒子の屈折率差が0.005〜0.25であることが好ましい。屈折率差が0.005以上であると、ギラツキを抑制することができ、0.25以下であると拡散透過強度分布設計が容易となる。以上の観点から、該屈折率差は0.01〜0.2がより好ましく、0.015〜0.15であることがさらに好ましい。
・・・省略・・・
[0105] 防眩層を構成するバインダー樹脂としては、透光性の電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができる。防眩層を形成するには、電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を透明基材に塗布し、該樹脂組成物中に含まれるモノマー、オリゴマー及びプレポリマーを架橋及び/または重合させることにより形成することができる。
[0106] モノマー、オリゴマー及びプレポリマーの反応性官能基としては、電離放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられる。
・・・省略・・・
[0117] また、上記放射線硬化性樹脂組成物には、通常、粘度を調節したり、各成分を溶解または分散可能とするために溶剤を用いる。該溶剤は、用いる溶剤の種類によって、塗布・乾燥の工程により塗膜の表面状態が異なるため外部拡散による透過強度分布を調整し得るほか、有機微粒子の含浸層厚が異なることを考慮して、適宜選択することが好ましい。
具体的には、飽和蒸気圧、透明基材への浸透性等を考慮して選定される。
[0118] 透明基材への、塗液中の低分子量成分の含浸量を調整することによって、防眩層の厚さを制御することに繋がり、また、前記透明基材に含浸したことでその基材表面が柔軟性を持ち、防眩層の硬化収縮を吸収する作用を有することにより、結果として前述の如く表面凹凸形状を調整することができる。特に、透明基材がセルロース系樹脂からなる場合に本手法は有効である。
また、粒子に含浸性を有する溶剤を用いることで、透明樹脂の成分の少なくとも一部が粒子に浸透しやすくなり、前述の含浸層の調整が可能となり拡散透過強度を制御することにつながる。
[0119] 溶剤としては、上記観点から適宜選択することができるが、具体的には、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤や、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノンなどのケトン類が好適に挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・省略・・・
[0125] 本発明の防眩シートに用いられる透明基材としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスなど、通常画像表示装置用防眩シートに用いられるものであれば特に限定はない。
・・・省略・・・
[0126] 透明樹脂フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)、ジアセチルセルロースフィルム、アセチルブチルセルロースフィルム、アセチルプロピルセルロースフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリロニトリルフィルム、ポリノルボルネン系樹脂フィルム等が使用できる。
特に、含浸性があるために表面凹凸を滑らかにし易いこと以外にも、本発明の画像表示装置用防眩シートを偏光板とともに用いる場合では、偏光を乱さないことからTACフィルムが、耐候性から環状ポリオレフィンフィルムが、機械的強度と平滑性を重視する場合は、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムが好ましい。
・・・省略・・・
[0128] 本発明にかかる防眩シートには、ハードコート性、耐映り込み性、反射防止性、帯電防止性、防汚性等の機能を持たせることが可能である。ハードコート性は、通常、鉛筆硬度(JIS K5400に準拠して測定)やスチールウール#0000で荷重をかけながら10往復擦り試験を行い、裏面に黒テープを貼付した状態でキズが確認されない最大荷重で評価する(耐スチールウール擦り性)。
・・・省略・・・
[0134] 本発明の防眩シートは、透明基材に最表面に凹凸形状を有する防眩層を構成する樹脂組成物を塗布して製造する。
塗布の方法としては、種々の方法を用いることができ、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法、マイクログラビアコート法、スプレーコート法、スピンコート法、リバースコート法等の公知の方法が用いられる。
[0135] 本発明においては、塗布量により透過拡散輝度特性が変化するので、内部に拡散要素を有する層と透明樹脂層との厚みの和を3〜10μmの範囲で安定して得やすいロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、リバースコート法が好ましい。
[0136] 前記の方法のいずれかで塗布した後、溶剤を乾燥するために加熱されたゾーンに搬送され各種の公知の方法で溶剤を乾燥する。ここで溶剤相対蒸発速度、固形分濃度、塗布液温度、乾燥温度、乾燥風の風速、乾燥時間、乾燥ゾーンの溶剤雰囲気濃度等を選定することにより、表面凹凸形状のプロファイルによる外部拡散及び前記拡散粒子や前記添加剤による内部拡散を調整できる。
[0137] 特に、乾燥条件の選定によって透過拡散輝度特性を調整する方法が簡便で好ましい。具体的な乾燥温度としては、30〜120℃、乾燥風速では0.2〜50m/sであることが好ましく、この範囲内で適宜調整することで透過拡散輝度特性を調整することができる。
[0138] より具体的には、溶剤の種類と乾燥温度を制御することで、樹脂及び溶剤の基材への浸透性が調整できる。すなわち、溶剤条件が同じ場合には乾燥温度を制御することで、樹脂及び溶剤の基材への浸透性を調整することができ、上述したように、表面凹凸形状を制御することにつながる。」

(ウ)「実施例
[0140] 本発明を実施例におり、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらによってなんら限定されるものではない。
[0141](実施例1)
透明基材としてトリアセチルセルロース(富士フイルム(株)製、厚さ80μm)を用意した。
次に、バインダー樹脂として、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA、製品名:M−451、東亜合成(株)製)70質量部、及びイソシアヌル酸PO変性トリアクリレート(製品名:M−313、東亜合成(株)製)30質量部の混合物を用いた(屈折率1.51)。
これに拡散粒子として、スチレンアクリル共重合体粒子(屈折率1.56、平均粒径3.5μm、積水化成品工業製)、バインダー微粒子としてタルク(ナノタルクD−1000、平均粒子径1.0μm、日本タルク製)を、バインダー樹脂100質量部に対して、各々5及び4質量部、含有させた。
さらに、開始剤イルガキュア184(BASFジャパン製)、レベリング剤ポリエーテル変性シリコーン(TSF4460、モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ製)をそれぞれバインダー樹脂100質量部に対して、5質量部、0.04質量部含有させた。
これに溶剤としてトルエン、イソプロパノール、及びシクロヘキサノンの混合溶剤(質量比7:2:1)を、バインダー樹脂100質量部に対して、190質量部配合して得られた樹脂組成物を、前記透明基材に塗工し、0.2m/sの流速で70℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させた。
その後、紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200mJ/cm2)バインダー樹脂を硬化させ、防眩シートを作製した。硬化後の防眩層厚は5.5μmとした。
[0142] (実施例2〜10、比較例1〜5)
塗液に添加する各成分等を表1、及び表2に示したようにした以外は、実施例1と同様にして防眩シートを作成した。
・・・省略・・・
[0144][表2]

・・・省略・・・
[0147][評価方法]
1.膜厚:T(μm)の測定方法
共焦点レーザー顕微鏡(LeicaTCS−NT:ライカ社製:対物レンズ「10〜100倍」)にて、防眩シートの断面を観察し、界面の有無を判断し下記の評価基準で判断した。
[0148] 測定手順
(1)ハレーションのない鮮明な画像を得るため、共焦点レーザー顕微鏡に、湿式の対物レンズを使用し、かつ、光学積層体の上に屈折率1.518のオイルを約2ml乗せて観察した。オイルの使用は、対物レンズと防眩層との間の空気層を消失させるために用いた。
(2)1画面につき凹凸の最大凸部、最小凹部の基材からの膜厚を1点ずつ計2点測定し、それを5画面分、計10点測定し、平均値を防眩層厚として算出した。なお、上記共焦点レーザー顕微鏡にて界面が明確にわからない防眩シートの場合は、ミクロトームなどで断面を作成し、電子顕微鏡観察によって、上記(2)と同様に膜厚を算出することもできる。
[0149]2.総ヘイズ:Ha(%)測定方法
総ヘイズ値は、JIS K−7136(2000)に従って測定することができる。測定機器として、ヘーズメーターHM−150(村上色彩技術研究所)を使用した。なお、ヘイズは、透明基材面を光源に向けて測定する。
[0150]3.内部へイズ:Hi(%)測定方法
本発明で使用している内部ヘイズは、以下のように求められる。防眩シートの観察者面側最表面にある凹凸上に、表面凹凸を形成する樹脂と屈折率が等しいか少なくとも屈折率差が0.02以下である樹脂、本発明の場合は各実施例・比較例から微粒子を除いたものをワイヤーバーで乾燥膜厚が8μm(完全に表面の凹凸形状がなくなり、表面が平坦とできる膜厚とする)となるように塗布し、70℃で1分間乾燥後、100mj/cm2の紫外線を照射して硬化する。
これによって、表面にある凹凸がつぶれ、平坦な表面となる。ただし、この凹凸形状を有する防眩層を形成する組成物中にレベリング剤などが入っていることで、上記リコート剤がはじきやすく濡れにくいような場合は、あらかじめ防眩シートをケン化処理(2mol/lのNaOH(またはKOH)溶液55度3分浸したのち、水洗し、キムワイプなどで水滴を完全に除去した後、50度オーブンで1分乾燥)により、親水処理を施すとよい。
この表面を平坦にしたシートは、表面凹凸をもたず、相互作用もないので、内部ヘイズだけを持つ状態となっている。
このシートのヘイズを、JIS K−7136に従って総ヘイズと同様な方法で測定し、内部ヘイズとして求めることができる。
なお、本発明実施例で用いているトリアセチルセルロール基材自身のヘイズは0.2である。防眩層自身の内部へイズは、上記内部へイズからこの基材のヘイズを差し引いたものになるが、本発明では差し引いていない。画像表示装置には一般的に積層体として防眩層を搭載するため、防眩層のみの内部へイズではなく、積層体全体の内部へイズを考えるのが実態に近いためよい。例えば、ヘイズ0.2程度であれば影響は小さいが、もしもヘイズの高い基材を用いる場合は、差し引いてしまうと積層体としての光学特性評価とは異なるものになる。」

イ 上記アの記載に基づけば、引用文献1には、総ヘイズHa(%)、内部ヘイズHi(%)としたとき、Ha−Hiが0.3である実施例1の防眩シートの発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
ここで、[0150]における「各実施例・比較例から微粒子を除いたもの」とは、微粒子を除いた樹脂組成物であることは、明らかである。

「 透明基材としてトリアセチルセルロースを用意し、
次に、バインダー樹脂として、ペンタエリスリトールテトラアクリレート70質量部、及びイソシアヌル酸PO変性トリアクリレート30質量部の混合物を用い(屈折率1.51)、
これに拡散粒子として、スチレンアクリル共重合体粒子(屈折率1.56、平均粒径3.5μm)、バインダー微粒子としてタルクを、バインダー樹脂100質量部に対して、各々5及び4質量部、含有させ、
さらに、開始剤、レベリング剤をそれぞれバインダー樹脂100質量部に対して、5質量部、0.04質量部含有させ、
これに溶剤としてトルエン、イソプロパノール、及びシクロヘキサノンの混合溶剤(質量比7:2:1)を、バインダー樹脂100質量部に対して、190質量部配合して得られた樹脂組成物を、前記透明基材に塗工し、乾燥空気を流通させて乾燥させ、
その後、紫外線を照射してバインダー樹脂を硬化させ、作製した防眩シートであって、
硬化後の防眩層厚は5.5μmであり、
総ヘイズHa(%)、内部ヘイズHi(%)としたとき、Ha−Hiが0.3である、
防眩シート。
ここで、総ヘイズ値は、JIS K−7136に従って測定することができ、測定機器として、ヘーズメーターHM−150(村上色彩技術研究所)を使用する。
また、内部ヘイズは、防眩シートの観察者面側最表面にある凹凸上に、微粒子を除いた樹脂組成物を乾燥膜厚が8μmとなるように塗布し、乾燥後、硬化し、これによって、表面にある凹凸がつぶれ、平坦な表面となるこのシートのヘイズを、総ヘイズと同様な方法で測定し、内部ヘイズとして求めるものである。」

(3)対比
本件補正後発明と引用発明とを対比する。
ア 透明基材について
引用発明の「防眩シート」は、「透明基材としてトリアセチルセルロースを用意し、次に、バインダー樹脂として、ペンタエリスリトールテトラアクリレート」、及びイソシアヌル酸PO変性トリアクリレート」「の混合物を用い、これに拡散粒子として、スチレンアクリル共重合体粒子」、「バインダー微粒子としてタルクを」「含有させ、さらに、開始剤、レベリング剤を」「含有させ、これに溶剤としてトルエン、イソプロパノール、及びシクロヘキサノンの混合溶剤(質量比7:2:1)を」「配合して得られた樹脂組成物を、前記透明基材に塗工し、乾燥空気を流通させて乾燥させ、その後、紫外線を照射してバインダー樹脂を硬化させ、作製したものであって、乾燥後の防眩層厚は、5.5μmであ」る。
上記製法及び組成からみて、引用発明の「透明基材」は、その文言どおり、本件補正後発明の「透明基材」に相当する。

イ 防眩層、バインダー樹脂、粒子について
上記アの製法及び組成からみて、引用発明の「バインダー樹脂」は、その文言どおり、本件補正後発明の「バインダー樹脂」に相当する。また、引用発明の「拡散粒子」は、本件補正後発明の「粒子」に相当する。さらに、引用発明の「防眩層」は、その文言どおり、本件補正後発明の「防眩層」に相当する。
また、上記アの製法及び組成からみて、引用発明の「防眩層」は、透明基材の一方の面に配置されたといえる。また、引用発明の「防眩層」は、「バインダー樹脂」及び「拡散粒子」を含むといえる。そうしてみると、引用発明の「防眩層」は、本件補正後発明の「防眩層」の、「透明基材の少なくとも一方の面に配置された」及び「バインダー樹脂および粒子を含み」との要件を満たす。

ウ 防眩フィルムについて
上記アの製法及び組成からみて、引用発明の「防眩シート」は、フィルムであって、「透明基材」及び「防眩層」を備えるといえる。
上記アの製法及び組成並びに上記の点を総合すると、引用発明の「防眩シート」は、本件補正後発明の「防眩フィルム」に相当する。また、引用発明の「防眩シート」は、本件補正後発明の「防眩フィルム」の「透明基材と」、「防眩層とを備える」との要件を満たす。

エ 外部ヘイズ
引用発明の「防眩シート」は、「総ヘイズHa(%)、内部ヘイズHi(%)としたとき、Ha−Hiが0.3であ」り、「総ヘイズ値は、JIS K−7136(2000)に従って測定することができ、測定機器として、ヘーズメーターHM−150(村上色彩技術研究所)を使用する」ものであり、「内部ヘイズは、防眩シートの観察者面側最表面にある凹凸上に、微粒子を除いた樹脂組成物を乾燥膜厚が8μmとなるように塗布し、乾燥後、硬化し、これによって、表面にある凹凸がつぶれ、平坦な表面となるこのシートのヘイズを、総ヘイズと同様な方法で測定し、内部ヘイズとして求めるものである」。
ここで、本件明細書の【0087】及び【0088】には、それぞれ、「2、全体ヘイズ」、「JIS K 7136(2000年版)のヘイズ(曇度)に準じ、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定した。」及び「3、内部ヘイズおよび外部ヘイズ」、「防眩フィルムの防眩層表面(透明基材とは反対側の面)に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを貼着して得られた評価試料のヘイズ値を、上記(2)の方法で測定して得られた値を内部ヘイズとした。」、「全体ヘイズから内部ヘイズを減じた値を外部ヘイズとした。」と記載されている。上記(2)の方法は定かではないが、本件明細書の【0015】には、「外部ヘイズは、(外部ヘイズ=全体ヘイズ−内部ヘイズ)の式から求められる。全体ヘイズは、JIS K−7136に従って測定することができる。なお、ヘイズの測定は、防眩層の透明基板とは反対側の面を光出射面として行う。内部ヘイズは、防眩層の表面(ヘイズ測定時の光出射側)のヘイズに対する影響をなくした状態で、測定されたヘイズをいう。例えば、光出射側の面に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを貼着し、これによって、防眩層の表面凹凸がつぶれ、平坦な層となった評価試料を作製し、該評価試料のヘイズを内部ヘイズとすることができる。すなわち、表面を平坦にした評価試料は、表面凹凸によるヘイズをもたない、内部ヘイズだけを持つ状態となっている。したがって、この評価試料のヘイズを測定して、内部ヘイズを求めることができる。また、評価試料として、光出射側の面に、樹脂(例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート)をトルエンなどで希釈し、固形分60重量%とした溶液を乾燥膜厚が8μmとなるように塗布して評価試料を用いてもよい。」と記載されている。上記【0015】には、防眩層の表面凹凸がつぶれるようにする手段として、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを貼着することも、樹脂(例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート)を乾燥膜厚が8μmとなるように塗布することも記載されている。
本件明細書の上記記載を参酌すると、引用発明の「総ヘイズHa」及び「内部ヘイズ」は、それぞれ、本件明細書の「全体ヘイズ」及び「内部ヘイズ」に相当するといえる。
そうしてみると、引用発明の「Ha−Hi」は、本件補正後発明の「外部ヘイズ」に相当する。また、引用発明の「防眩シート」は、本件補正後発明の「防眩フィルム」の「外部ヘイズが、−5%〜0.7%であり」との要件を満たす。

(4)一致点及び相違点
ア 一致点
以上の対比結果を踏まえると、本件補正後発明と引用発明は、以下の点で一致する。

「 透明基材と、該透明基材の少なくとも一方の面に配置された防眩層とを備える防眩フィルムであって、
該防眩層がバインダー樹脂および粒子を含み、
該防眩フィルムの外部ヘイズが、−5%〜0.7%であり、
防眩フィルム。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は、以下の点で一応相違する。
(相違点1)
本件補正後発明は、「該透明基材と該防眩層との間に形成され、該透明基材を構成する材料の少なくとも一部および/または該バインダー樹脂の少なくとも一部とを含む、中間層をさらに備え、該中間層の厚みが、該防眩層の厚みに対して、0.1%〜123%であ」るのに対して、引用発明は、中間層を備えるかどうかが、一応、明らかでない点。

(相違点2)
「粒子」が、本件補正後発明は、「分散性をレーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒度分布で評価した場合、1μm以上5μm未満の粒子の含有割合が、粒子の全量に対して、50重量%を超える」のに対して、引用発明の「拡散粒子」は、「平均粒径が3.5μm」であることにとどまり、粒度分布は明らかでない点。

(5)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明の「透明基材」は、「トリアセチルセルロース」であり、引用発明の「防眩層」は、「溶剤としてトルエン、イソプロパノール、及びシクロヘキサノンの混合溶剤(質量比7:2:1)を、バインダー樹脂100質量部に対して、190質量部配合して得られた樹脂組成物を、前記透明基材に塗工し、0.2m/sの流速で70℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させ」たものである。
ここで、引用文献1の[0118]、[0119]及び[0126]には、それぞれ、「透明基材への、塗液中の低分子量成分の含浸量を調整することによって、防眩層の厚さを制御することに繋がり、また、前記透明基材に含浸したことでその基材表面が柔軟性を持ち、防眩層の硬化収縮を吸収する作用を有することにより、結果として前述の如く表面凹凸形状を調整することができる。特に、透明基材がセルロース系樹脂からなる場合に本手法は有効である。また、粒子に含浸性を有する溶剤を用いることで、透明樹脂の成分の少なくとも一部が粒子に浸透しやすくなり、前述の含浸層の調整が可能となり拡散透過強度を制御することにつながる。」、「溶剤としては、上記観点から適宜選択することができるが、具体的には、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤や、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノンなどのケトン類が好適に挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。」及び「透明樹脂フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)・・・等が使用できる。特に、含浸性があるために表面凹凸を滑らかにし易いこと以外にも、本発明の画像表示装置用防眩シートを偏光板とともに用いる場合では、偏光を乱さないことからTACフィルムが・・・が好ましい。」と記載されている。
上記記載を参酌すると、引用発明における、透明基材として「トリアセチルセルロース」、バインダー樹脂として「ペンタエリスリトールテトラアクリレート」、及び溶剤として「トルエン、イソプロパノール、及びシクロヘキサノンの混合溶剤(質量比7:2:1)」の、各組成並びに乾燥工程から、引用発明においても、防眩層に用いられている樹脂組成物が透明基材に含浸して層(以下「透明基材に含浸した層」という。)をなしているといえる。また、引用発明の防眩層の厚みは5.5μmであるところ、引用発明の上記各組成及び乾燥工程から、上記透明基材に含浸した層の厚みが、5.5nm(5.5μm×0.1/100)未満であるものや、防眩層の厚みより大きな6.77μm(5.5μm×123/100)を超えるものは考えがたい(当合議体注:このことは、本件明細書の【0077】及び【0078】に記載された実施例1及び2におけるバインダー樹脂、透明基材及び溶剤の各組成並びに乾燥工程からも推認できることである。)。
そうしてみると、引用発明において、上記透明基材に含浸した層の厚みは、上記相違点1に係る数値範囲内にある蓋然性が高いといえる。

仮に、引用発明において、上記透明基材に含浸した層の厚みが、上記相違点1に係る数値範囲内になかったとしても、上記[0118]、[0119]及び[0126]の記載に接した当業者であれば、上記透明基材に含浸した層の厚みを相違点1に係る数値範囲内に設定しようと十分に動機づけられるといえる。
そして、本件明細書の実施例1及び2(【0077】及び【0078】)において、防眩層の厚み6.3μmに対して中間層の厚み1.7μmの組み合わせのみの記載しかない。比較例1〜5についても、外部ヘイズが本願発明の範囲外のものであって前提の異なるものである。そうすると、本件明細書の記載からは、中間層の厚みの防眩層の厚みに対する数値範囲の上限及び下限に臨界的意義は認められない。
そうしてみると、引用発明において、上記透明基材に含浸した層の厚みを上記相違点1に係る数値範囲内とすることは、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。

以上のとおりであるから、上記相違点1は、実質的な差異ではない。
仮に、相違するとしても、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
引用発明の「拡散粒子」は、「スチレンアクリル共重合体粒子(屈折率1.56、平均粒径3.5μm)」であって、粒度分布は明らかではない。
しかしながら、平均粒径が3.5μmであれば、粒径が3.5μmを中心に正規分布していることが一般的である。例えば、極端に分散の大きい粒度分布のものや、粒径の個数の分布が1.0μmと6.0μmとにピークが2つあって平均粒径が3.5μmとなるようもの敢えて採用しているとは、考えがたい。
この点について、引用文献1の[0088]には、「また、拡散粒子の粒径のばらつきが少ないほど、拡散特性にばらつきが少なく、拡散透過強度分布設計が容易となる。より具体的には、重量平均による平均径をMV、累積25%径をd25、累積75%径をd75としたとき、(d75−d25)/MVが0.25以下であることが好ましく、0.20以下であることが更に好ましい。なお、累積25%径とは、粒径分布における粒径の小さい粒子からカウントして、25重量%となったときの粒子径をいい、累積75%径とは、同様にカウントして75重量%となったときの粒子径をいう。」と記載されている。仮に、MV=3.5μm、(d75−d25)/MV=0.25とすると、d75−d25=0.875となる。そうすると、全量のうち少なくとも50重量%を超える粒子が、2.675(=3.5−0.875)μm以上4.375(3.5+0.875)μm以下という数値範囲内の粒径を有することなり、引用発明は、上記相違点2に係る本件補正後発明の構成を具備していることとなる。
そうしてみると、引用発明の「拡散粒子」の分散性をレーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒度分布で評価した場合、1μm以上5μm未満の粒子の含有割合が、50重量%よりを超える蓋然性が高いといえる。
したがって、上記相違点2は、実質的な差異ではない。
また、仮に蓋然性が高いとまでいえなかったとしても、引用発明において、引用文献1の[0088]の記載に接した当業者が、拡散特性のばらつきを抑制するために、同文献1の[0089]に記載された調整方法を用いて、「拡散粒子」の粒径のばらつきを可能な限り小さく制御して、相違点2に係る本件補正後発明の構成に至ることは容易である。

(6)効果について
本件補正後発明に関して、外部ヘイズの数値範囲による効果について、本件明細書の【0009】には、「本発明によれば、防眩層を備え、該防眩層の外部ヘイズを特定範囲に制御することにより、防眩性および透明性を維持しつつ、さらに、ギラツキを抑制し得る防眩フィルムを提供することができる。本発明の防眩フィルムは、防眩フィルムの背面側に薄いガラス基板が設けられるような画像表示装置(例えば、パソコン)はもとより、上記のように比較的厚いガラス等が配置される構成の画像表示装置に対しても、優れた防眩効果を発揮し、かつ、ギラツキを抑制することができる。」と記載されている。また、粒度分布の数値範囲による効果について、本件明細書の【0046】には、「防眩層形成用組成物中の粒子の分散性をレーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒度分布で評価した場合、1μm以上5μm未満の粒子の含有割合は、該組成物中の粒子の全量に対して、50重量%を超えることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%〜100重量%であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、適切な表面形状を有する防眩層を形成することができる。」と記載されている。さらに、中間層の数値範囲による効果について、本件明細書の【0068】及び【0069】には、それぞれ、「本発明においては、防眩層を形成した際に形成される上記中間層の厚みが厚くなりすぎないよう、上記比率に制御することにより、ギラツキ抑制効果がより高い防眩フィルムを得ることができる。本発明の防眩フィルムは、高精細な画像表示装置に適用しても、優れたギラツキ抑制効果を発現し得る。また、本発明の防眩フィルムは、防眩層の内部ヘイズを比較的小さくしても、ギラツキが生じ難く、そのため、透明性に優れる。さらに、防眩層の厚みに対する中間層の厚みの比率を123%以下とすることにより、耐擦傷性に優れる防眩層が形成され得る。」及び「また、防眩層の厚みに対する中間層の厚みの比率を3%以上(より好ましくは10%以上)とすることにより、防眩層中で上記粒子が分散性よく(凝集が少ない状態で)存在し得、その結果、ギラツキを抑制し得る防眩フィルムを得ることができる。」と記載されている。
しかしながら、上記(5)に示したとおり、本件補正後発明は引用文献1に記載された発明であるから、このような効果は、引用発明も奏するものである。
あるいは、上記効果は、先の出願当時本件補正後発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかったものではなく、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものともいえない。当業者が予測できる範囲内のものである。

(7)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和3年5月28日提出の審判請求書において、「上記のとおり、引用文献1は、本願とは全く異なる目的のために、低分子量成分を透明基材へ浸透させることしか記載しておらず、それにより形成される中間層の厚みと防眩層の厚みとの関係を開示も示唆もしていません。引用文献1に開示のない事項により、引用文献1に開示のない効果を奏する本願発明は、引用文献1に記載の発明から容易にできた発明ではありません。」、「また、引用文献1は、防眩層に含まれる粒子の分散性をレーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒度分布で評価した場合、1μm以上5μm未満の粒子の含有割合が、粒子の全量に対して、50重量%を超えることを開示も示唆もしていません。本願発明においては、このように構成された粒子を用いることにより、適切な表面形状を有する防眩層を形成することができます。引用文献1は、拡散粒子とバインダー微粒子との併用により、所定の防眩性を有する防眩シートを得ています(請求項1)。このような手段により所望の防眩性が得られることを特徴とする引用文献1においては、粒子を本願の如く特定する動機付けがなく、したがって、引用文献1に基づいて、本願発明の想到することは容易ではありません。」と主張している。
しかしながら、上記(5)及び(6)で示したとおり、審判請求人の主張はいずれも採用することができない。

(8)小括
本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。あるいは、本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条7項に規定に違反するので、同法第159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記「第2 令和3年5月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定」[結論]のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、本願発明は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定に該当し特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3 引用文献及び引用発明
引用文献1の記載及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)ア及びイに記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正後発明から、上記第2[理由]1の補正事項に係る限定を削除したものである。また、上記第2[理由]2(4)イの相違点で示した相違点1及び2は、いずれも本件補正による補正事項に係る限定に含まれる構成である。
そうしてみると、引用文献1に記載された発明は、本件補正による補正事項に係る限定を削除した本願発明の構成を全て具備するので、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-11 
結審通知日 2022-03-15 
審決日 2022-03-31 
出願番号 P2019-230709
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 清水 康司
井口 猶二
発明の名称 防眩フィルムおよび画像表示装置  
代理人 籾井 孝文  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ