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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1384907
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-31 
確定日 2022-06-14 
事件の表示 特願2020− 4773「電子機器、制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月23日出願公開、特開2020− 64683、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年7月21日に出願された特願2016−143486号の一部を、令和2年1月15日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 1月15日 :手続補正書の提出
令和 2年 9月 3日付け:拒絶理由通知書
平成 3年 1月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 2月25日付け:拒絶査定
令和 3年 5月31日 :拒絶査定不服審判の請求
令和 4年 1月25日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 4年 4月 1日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年2月25日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
この出願の請求項1〜3に係る発明は、以下の引用文献A〜Eに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A:特開平8−305476号公報
引用文献B:特開平5−323988号公報
引用文献C:特開平4−205017号公報
引用文献D:特開2007−316760号公報
引用文献E:特開2009−169456号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和4年 1月25日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

1 理由1(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項1には、「前記第1のグループ及び前記第2のグループは、ファイル、フォルダ、アプリケーションソフトウェア及びディレクトリの少なくとも1つである」と記載されており、この記載には、「前記第1のグループ」、「前記第2のグループ」が両方とも「ファイル」である場合や、「前記第1のグループ」が「ファイル」であり、「前記第2のグループ」が「フォルダ」である場合といった、あらゆる組み合わせが含まれる。
一方、請求項1のその余の記載によれば、「第1のグループ」と「第2のグループ」との関係は、「第1のグループ」が割り当てられた「第1のキー群」に対する操作がなされた後に、「第2のグループ」が「第2のキー群」に割り当てられる、というものである。
しかしながら、上記関係を有する「第1のグループ」及び「第2のグループ」が、上記のあらゆる組み合わせを取り得ることについては、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。
請求項2,3にもそれぞれ請求項1と同様の記載がある。

2 理由2(明確性
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1の「前記第1のグループ及び前記第2のグループは、ファイル、フォルダ、アプリケーションソフトウェア及びディレクトリの少なくとも1つ」との記載において、「ディレクトリ」が技術的にどのような概念であるのか不明である。
請求項2,3にもそれぞれ請求項1と同様の記載がある。

2 理由3(進歩性
この出願の請求項1〜3に係る発明は、以下の引用文献1〜4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開平8−305476号公報(拒絶査定時の引用文献A)
引用文献2:特開平5−323988号公報(拒絶査定時の引用文献B)
引用文献3:特開平4−205017号公報(拒絶査定時の引用文献C)
引用文献4:特開2007−316760号公報(拒絶査定時の引用文献D)
(当審注:引用文献1について、当審拒絶理由の「特表2017−502535号公報」との表記は、請求人が令和4年4月1日提出の意見書において指摘するとおり誤記である。)

第4 本願発明
本願請求項1〜3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明3」という。)は、令和4年4月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である(下線は補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
キーの操作に基づいて処理を実行するコントローラと、を備え、
前記物理キー群は、第1のグループを割り当てるための第1のキー群と前記第1のグループを割り当てずに第2のグループを割り当てるための第2のキー群とを含み、
前記コントローラは、前記第1のキー群に第1のグループを割り当て、
前記第1のキー群の物理キーに対する操作を検出すると、前記操作された物理キーに割り当てられた前記第1のグループの名称を音声出力して前記第1のグループに紐付けられた第2のグループを前記第2のキー群に割り当て、
前記第1のグループはフォルダであり、前記第2のグループは前記フォルダに格納されるファイルまたはアプリケーションソフトウェアである電子機器。
【請求項2】
筐体と、
前記筐体の縁に沿って並ぶ物理キー群と、を備え、
前記物理キー群は、第1のグループを割り当てるための第1のキー群と前記第1のグループを割り当てずに第2のグループを割り当てるための第2のキー群とを含む電子機器の制御方法であって、
前記第1のキー群に第1のグループを割り当て、
前記第1のキー群の物理キーに対する操作を検出すると、前記操作された物理キーに割り当てられた前記第1のグループの名称を音声出力して前記第1のグループに紐付けられた第2のグループを前記第2のキー群に割り当て、
前記第1のグループはフォルダであり、前記第2のグループは前記フォルダに格納されるファイルまたはアプリケーションソフトウェアである制御方法。
【請求項3】
筐体と、
前記筐体の縁に沿って並ぶ物理キー群と、を備え、
前記物理キー群は、第1のグループを割り当てるための第1のキー群と前記第1のグループを割り当てずに第2のグループを割り当てるための第2のキー群とを含む電子機器に、
前記第1のキー群に第1のグループを割り当て、
前記第1のキー群の物理キーに対する操作を検出すると、前記操作された物理キーに割り当てられた前記第1のグループの名称を音声出力して前記第1のグループに紐付けられた第2のグループを前記第2のキー群に割り当てる処理を実行させ、
前記第1のグループはフォルダであり、前記第2のグループは前記フォルダに格納されるファイルまたはアプリケーションソフトウェアであるプログラム。」

第5 当審拒絶理由の理由1(サポート要件)及び理由2(明確性)について
令和4年4月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1には、「前記第1のグループはフォルダであり、前記第2のグループは前記フォルダに格納されるファイルまたはアプリケーションソフトウェアである」と記載されており、この点は、請求項2,3についても同様である。
そして、上記記載については、発明の詳細な説明の段落【0039】〜【0040】に記載されており、また、補正前に存在していた「ディレクトリ」との記載を含まないものとなった。
したがって、当審拒絶理由の理由1,2はいずれも解消した。

第6 引用文献の記載、引用発明
1 引用文献1(特開平8−305476号公報)
(1)当審拒絶理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。

「【0010】
【実施例】図1には、この発明が適用された簡易入力装置SIPD(入力装置)を含むパーソナルコンピュータ(デジタル処理装置)の一実施例のシステム構成図が示されている。また、図2には、図1のパーソナルコンピュータに含まれる簡易入力装置SIPDの一実施例の外観平面構造図が示され、図3には、その一実施例の機能ブロック図が示されている。さらに、図4には、図2の簡易入力装置SIPDの表示パネルDP及びキーパネルKPの第1の実施例の配置図が示され、図5には、その第2の実施例の配置図が示されている。これらの図をもとに、この実施例の簡易入力装置SIPDならびに簡易入力装置SIPDを含むパーソナルコンピュータの構成及び動作ならびにその特徴について説明する。」

「【0014】この実施例において、簡易入力装置SIPDは、例えばJIS規格に適合したキーボードとの互換性を有し、図2に示されるように、コネクタCONを介してパーソナルコンピュータつまりそのキーボードコントローラKYBCに結合される。また、簡易入力装置SIPDは、所定の表示パネルDPと、5個のXキーX0〜X4ならびに10個のYキーY0〜Y9からなるキーパネルKPとを備え、さらに図示されないコントロールユニットCTLUを備える。」

「【0016】この実施例において、簡易入力装置SIPDの表示パネルDPには、特に制限されないが、図4に示されるように、46文字のひらがながいわゆる五十音図に沿った形で格子状に配置される。また、XキーX0〜X4は、これらのひらがなの母音つまりX座標を指定すべく対応して配置され、YキーY0〜Y9は、その韻つまりY座標を指定すべく対応して配置される。これにより、XキーX0〜X4ならびにYキーY0〜Y9は、46文字のひらがなのX座標又はY座標を選択的に指定し入力するための選択キー及び入力キーとして併用される。
【0017】すなわち、例えばひらがなの『つ』を入力したい場合、オペレータはまずXキーX2を操作つまり打鍵した後、YキーY3を操作する。XキーX2の操作は、簡易入力装置SIPDのキーパネルインタフェース部KPIFを介して中央処理装置SCPUに伝達される。これにより、中央処理装置CPUは、XキーX2が操作されたことを識別するとともに、表示パネル駆動部DPDに所定の駆動信号を出力し、表示パネルDPの母音『う』行に対応する部分を点灯して表示する。次に、YキーY3の操作は、やはりキーパネルインタフェース部KPIFを介して中央処理装置SCPUに伝達され、中央処理装置SCPUは、先のXキーX2の操作と合わせて指定されたひらがなが『つ』であることを識別する。そして、この『つ』に対応するデジタルコードを生成し、キーボードインタフェース部KBIFを介してキーボードコントローラKYBCに入力するとともに、表示パネル駆動部DPDに所定の駆動信号を出力し、図5に示されるように、表示パネルDPのひらがな『つ』に対応する部分だけを点灯して表示する。」

「【図2】



(2)上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「簡易入力装置SIPD(入力装置)を含むパーソナルコンピュータであって、(【0010】)
簡易入力装置SIPDは、所定の表示パネルDPと、5個のXキーX0〜X4ならびに10個のYキーY0〜Y9からなるキーパネルKPとを備え、(【0014】)
簡易入力装置SIPDの表示パネルDPには、46文字のひらがながいわゆる五十音図に沿った形で格子状に配置され、XキーX0〜X4は、これらのひらがなの母音つまりX座標を指定すべく対応して配置され、YキーY0〜Y9は、その韻つまりY座標を指定すべく対応して配置され、(【0016】)
例えばひらがなの『つ』を入力したい場合、オペレータはまずXキーX2を操作つまり打鍵した後、YキーY3を操作し、XキーX2の操作は、簡易入力装置SIPDのキーパネルインタフェース部KPIFを介して中央処理装置SCPUに伝達され、これにより、中央処理装置CPUは、XキーX2が操作されたことを識別するとともに、表示パネル駆動部DPDに所定の駆動信号を出力し、表示パネルDPの母音『う』行に対応する部分を点灯して表示し、次に、YキーY3の操作は、やはりキーパネルインタフェース部KPIFを介して中央処理装置SCPUに伝達され、中央処理装置SCPUは、先のXキーX2の操作と合わせて指定されたひらがなが『つ』であることを識別する、(【0017】)
パーソナルコンピュータ。」

2 引用文献4(特開2007−316760号公報)
当審拒絶理由にて引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0134】
図18を参照して、ダイアル型のソフトウェアキーボード60において指66がリング内の文字「な」に触れたものとする。このとき、文字「な」とリングの中心とを結ぶ線を文字「な」の外側に延長した位置を始点として、リングを囲む円周上に、文字「な」460、「に」462、「ぬ」464、「ね」466、「の」468の表示450を順番に行なう。これらはいずれも、ダイアル型のソフトウェアキーボード60のリング内の文字と、リングの中心とを結ぶ線を半径方向に延長した位置に表示される。
【0135】
図19を参照して、指66によりリング内をドラッグすると、ドラッグ位置に応じ、文字460〜468のいずれかが文字候補として選択される。このような変形は、第1の実施の形態の記載から、当業者であれば容易に実現することができるであろう。文字が選択されたときには、文字460〜468の表示を消去する。こうすることで、選択可能な文字に関しユーザが混乱することが防止できる。
【0136】
なお、この変形例では、選択された文字セットを全てリングの外側領域に表示している。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、選択されている文字候補のみをリングの外側領域に表示するようにしてもよい。又は、選択されている文字候補と、その前後の文字とを表示するようにしてもよい。この場合には、選択されている文字候補と、その前後の文字とが区別できるように、図19に示すように表示形態を互いに異ならせることが望ましい。すなわち、選択されていない文字は第1の表示態様、例えば背景表示をやや暗くする表示形式で表示し、選択されている文字は第1の表示態様と異なる第2の表示態様、例えば背景表示が明るい表示形式で表示する。
【0137】
上記した実施の形態では、代表文字表示とドラッグとを用いて文字の入力を行なっている。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。2階層の選択を行なうような処理であって、各項目が簡便な形で表示できるような処理の全般について、本発明を適用することができる。上記した実施の形態では、「字種」という代表文字列に触れたときの処理がこれに相当する。
【0138】
例えば2階層のメニューを実現する場合、最初に第1階層のメニューを表示し、ユーザが任意のメニュー項目に触れてドラッグすることにより、順次そのメニュー項目の第2階層に属するメニュー項目を選択項目の候補とし、ドラッグが終了した時点での選択項目が最終的に選択されたメニュー項目である、とする制御を行なうこともできる。
【0139】
図20に、そうしたメニューの具体的な例を示す。図20(A)を参照して、第1階層のメニュー500は、上記した実施の形態と同様、リングと、このリング内に配列された第1の階層の複数のメニュー項目510〜522とを含む。メニュー項目516が電子メールの選択に対応する場合、ユーザの指66がメニュー項目516に触れると、第1階層のメニュー500が図20(B)に示す第2階層のメニュー502に切替わる。
【0140】
図20(B)を参照して、第2階層のメニュー502は、リングと、リング内に配列された、第2の階層の電子メールに関する複数のメニュー項目530〜536とを含む。
【0141】
第2階層のメニュー502に表示が切り替わるときには、指66は図20(A)におけるメニュー項目516に相当する位置に触れているが、その位置は図20(B)におけるメニュー項目530の位置でもある。ユーザがリング内で指66をドラッグしていくことにより、ドラッグ位置に応じたメニュー項目が項目候補として選択され、ドラッグを解除した時点で選択されていた項目候補が、実際に起動される。」

「【図20】



第7 当審拒絶理由の理由3(進歩性)について
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明の「簡易入力装置SIPD(入力装置)を含むパーソナルコンピュータ」において、「簡易入力装置SIPD」は、その筐体の縁に沿って、「XキーX0〜X4」及び「YキーY0〜Y9」が並ぶものであることが、引用文献1の図2から見て取れる。そして、「XキーX0〜X4」及び「YキーY0〜Y9」は、「表示パネルDP」とは独立した「キーパネルKP」を構成することから、物理的なキーの群であることが明らかであって、本願発明1の「物理キー群」に相当する。
また、引用発明の「中央処理装置CPU」は、「XキーX2が操作されたことを識別する」とともに、「YキーY3の操作」がこれに「伝達され」て、「先のXキーX2の操作と合わせて指定されたひらがなが『つ』であることを識別する」から、「XキーX0〜X4」及び「YキーY0〜Y9」の操作に基づいて処理を実行するということができ、本願発明1の「コントローラ」に相当する。
以上のことから、引用発明は、本願発明1の
「筐体と、
前記筐体の縁に沿って並ぶ物理キー群と、
前記物理キー群の物理キーの操作に基づいて処理を実行するコントローラ」
に相当する構成を有している。

(イ)引用発明の「XキーX0〜X4」は、「ひらがなの母音」を「指定すべく対応して配置され」、「YキーY0〜Y9」は、「その韻」(「ひらがなの母音」の「韻」)を「指定すべく対応して配置され」たものであるから、それぞれ、「ひらがなの母音」、「韻」を割り当てるためのキー群であって、異なる群を構成しており、それぞれ、「第1のキー群」、「第2のキー群」と称することは任意である。ここで、「YキーY0〜Y9」は、「ひらがなの母音」を割り当てるものではないことが明らかである。
また、「ひらがなの母音」及び「韻」は、異なるグループといえるものであり、それぞれ、「第1のグループ」、「第2のグループ」と称することは任意である。
以上の点について、上記(ア)も踏まえると、引用発明は、本願発明1の
「前記物理キー群は、第1のグループを割り当てるための第1のキー群と前記第1のグループを割り当てずに第2のグループを割り当てるための第2のキー群とを含」む
ことに相当する構成を有している。

(ウ)引用発明は、
「例えばひらがなの『つ』を入力したい場合、オペレータはまずXキーX2を操作つまり打鍵した後、YキーY3を操作し、XキーX2の操作は、簡易入力装置SIPDのキーパネルインタフェース部KPIFを介して中央処理装置SCPUに伝達され、これにより、中央処理装置CPUは、XキーX2が操作されたことを識別するとともに、表示パネル駆動部DPDに所定の駆動信号を出力し、表示パネルDPの母音『う』行に対応する部分を点灯して表示し、次に、YキーY3の操作は、やはりキーパネルインタフェース部KPIFを介して中央処理装置SCPUに伝達され、中央処理装置SCPUは、先のXキーX2の操作と合わせて指定されたひらがなが『つ』であることを識別する」
との構成を含むものである。
ここで、「XキーX2の操作」により「中央処理装置CPU」が「XキーX2が操作されたことを識別」し、「表示パネルDPの母音『う』行に対応する部分を点灯して表示」する動作は、「中央処理装置CPU」が「XキーX2」に「母音『う』行」を割り当てていることによるものであり、この点は、「XキーX2」以外の「XキーX0〜X4」にもついても同様であることが明らかである。
また、上記動作に引き続いて行われる「YキーY3の操作は、やはりキーパネルインタフェース部KPIFを介して中央処理装置SCPUに伝達され、中央処理装置SCPUは、先のXキーX2の操作と合わせて指定されたひらがなが『つ』であることを識別する」ことは、「XキーX2が操作されたこと」が「識別」されたことに応じて、「ひらがなが『つ』」を含む「母音『う』行」に属する「韻」、すなわち、「母音『う』行」に紐付けられた「韻」である各ひらがなが、「YキーY3」を含む「YキーY0〜Y9」に割り当てられることによるものであるといえる。
そして、引用発明において、「識別」することは、本願発明1の「検出」することに相当する。
以上の点について、上記(ア)、(イ)も踏まえると、本願発明1の
「前記コントローラは、前記第1のキー群に第1のグループを割り当て、
前記第1のキー群の物理キーに対する操作を検出すると、前記操作された物理キーに割り当てられた前記第1のグループの名称を音声出力して前記第1のグループに紐付けられた第2のグループを前記第2のキー群に割り当て」る
ことに関して、引用発明と本願発明1とは、
「前記コントローラは、前記第1のキー群に第1のグループを割り当て、
前記第1のキー群の物理キーに対する操作を検出すると、前記操作された物理キーに割り当てられた前記第1のグループに紐付けられた第2のグループを前記第2のキー群に割り当て」る
ことにおいて共通している。

(エ)引用発明の「パーソナルコンピュータ」は、後述する相違点は別として、本願発明1の「電子機器」に含まれる。

イ 上記アから、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「筐体と、
前記筐体の縁に沿って並ぶ物理キー群と、
前記物理キー群の物理キーの操作に基づいて処理を実行するコントローラと、
を備え、
前記物理キー群は、第1のグループを割り当てるための第1のキー群と前記第1のグループを割り当てずに第2のグループを割り当てるための第2のキー群とを含み、
前記コントローラは、前記第1のキー群に第1のグループを割り当て、
前記第1のキー群の物理キーに対する操作を検出すると、前記操作された物理キーに割り当てられた前記第1のグループに紐付けられた第2のグループを前記第2のキー群に割り当てる、電子機器。」

(相違点1)
本願発明1は、「前記第1のキー群の物理キーに対する操作を検出する」ことに応じて行われる、「前記操作された物理キーに割り当てられた前記第1のグループ」に「紐付けられた」、「第2のグループを前記第2のキー群に割り当て」ることに関して、「前記第1のグループの名称を音声出力して」なされると特定されるものであるのに対して、引用発明では、「XキーX2を操作」することに応じて行われる、「YキーY3」への「ひらがなが『つ』」等の割り当てに関して、そのように特定されるものではない点。

(相違点2)
本願発明1では、「第1のキー群」、「第2のキー群」にそれぞれ割り当てられる「第1のグループ」、「第2のグループ」が、それぞれ、「フォルダ」、「ファイルまたはアプリケーションソフトウェア」のに対して、引用発明では、「XキーX0〜X4」、「YキーY0〜Y9」にそれぞれ割り当てられるものが、「ひらがなの母音」、「韻」である点。

(2)判断
事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。
第1のキー群と第2のキー群とを備える電子機器において、第1のキー群の各キーにそれぞれフォルダを割り当て、それらのいずれかに対して入力操作がなされると、当該フォルダに含まれる複数のファイルまたはアプリケーションソフトウェアを、第2のキー群の各キーに割り当てるようにすることは、引用文献1〜4のいずれにも記載されておらず、本願の原出願日前において周知技術であったとも認められない。
引用文献4には、上記第6の2(ダイアル型のソフトウェアキーボードにおいて、リング内の各位置に階層構造のメニュー項目を、ユーザの選択操作に応じて階層を切り替えて表示する等)の記載があり、また、引用文献2(段落【0010】〜【0011】等参照)、引用文献3(第2頁右上欄等参照)には、いずれも、特定のキーが操作された場合に、当該操作が確実になされたことをユーザに知らせるために、その操作の内容を示す音声を出力することについて記載されているものの、上記の事項については記載されていない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2,3について
本願発明2,3は、それぞれ本願発明1に対応する方法、プログラムの発明であって、本願発明1に対応する発明特定事項を含んでいる。
そうすると、本願発明2,3も本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 小括
以上のとおりであるから、当審拒絶理由の理由3(進歩性)は解消した。

第8 原査定について
令和4年4月1日提出の手続補正書による補正の結果、本願発明1〜3は、いずれも相違点2に係る技術的事項を有するものとなっており、当該技術的事項は、原査定における引用文献A〜Eには記載されておらず、本願の原出願日前における周知技術でもないので、本願発明1〜3は、当業者であっても、原査定における引用文献A〜Eに基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-05-31 
出願番号 P2020-004773
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 富澤 哲生
野崎 大進
発明の名称 電子機器、制御方法、及びプログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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