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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1384913
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-01 
確定日 2022-05-19 
事件の表示 特願2019− 1003「長尺位相差フィルムの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月30日出願公開、特開2019− 82703〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2019−1003号(以下「本件出願」という。)は、平成26年8月7日(先の出願に基づく優先権主張 平成25年8月9日)に出願した特願2014−161221号の一部を平成31年1月8日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 元年11月20日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月24日提出:意見書
令和 2年 1月24日提出:手続補正書
令和 2年 6月24日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 2年 8月21日提出:意見書
令和 2年 8月21日提出:手続補正書
令和 3年 2月19日付け:令和2年8月21日の手続補正についての補正の却下の決定
令和 3年 2月19日付け:拒絶査定
令和 3年 6月 1日提出:審判請求書
令和 3年 6月 1日提出:手続補正書
令和 3年12月10日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 2月 7日提出:意見書
令和 4年 2月 7日提出:手続補正書


第2 本願発明
本願の請求項1〜8に係る発明は、令和4年2月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「 プラスチック基材である長尺基材、長尺光配向膜及び長尺位相差膜をこの順に有し、下記式(1)、(2)及び(3)を満たす波長分散特性を有する長尺位相差フィルムを製造する方法であり、
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm<Re(550)<160nm (3)
(式中、Re(λ)は波長λnmの光に対する面内位相差値を表す。)
該プラスチック基材は、複屈折性が無いシクロオレフィンポリマーであり、
前記長尺光配向膜及び前記長尺位相差膜はそれぞれ1層のみからなり、
以下の(1)〜(6)の工程をこの順に有する前記長尺位相差フィルムの製造方法。
(1)長尺基材に、主鎖部分に下記式:

で表される構成単位を有するポリマーを含む光配向膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺基材上に第1塗布膜を形成する工程
(2)該第1塗布膜を乾燥することにより、第1乾燥被膜を形成する工程
(3)該第1乾燥被膜に、該長尺基材の長尺方向に対して30°〜60°の偏光を照射することにより、前記ポリマーを光配向させてなり、配向規制力の方向が長尺基材の長尺方向に対して30°〜60°であり、かつ一様の配向パターンを有する長尺光配向膜を形成する工程
(4)該長尺光配向膜の上に、サーモトロピック性の重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺光配向膜上に第2塗布膜を形成する工程
(5)該第2塗布膜を乾燥すると共に加熱することにより、第2乾燥被膜を形成する工程
(6)該第2乾燥被膜を硬化することにより、前記式(1)〜(3)を満たす波長分散性を有する長尺位相差膜を形成する工程」


第3 拒絶の理由
令和3年12月10日付けで当合議体が通知した拒絶理由は、概略、本件出願の請求項1に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献1:特開2013−71956号公報


第4 引用文献1及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
当合議体の拒絶の理由で引用文献1として引用され、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2013−71956号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等で活用した箇所である。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及び光学フィルムに関する。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1記載の組成物では、基材上に塗布する際に、その塗布条件によっては、塗布膜中で部分的に重合性液晶化合物の結晶化が生じる場合があった。そのため、該組成物は成膜性の点では改善の余地があった。」

(3)「【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の発明を含む。
〔1〕以下の(A)、(B)及び(C)を含む組成物。
(A)式(A)で表される化合物

[式(A)中、
X1は、酸素原子、硫黄原子又は−NR1−を表す。R1は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Y1は、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の1価の芳香族複素環式基を表す。
Q3及びQ4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR2R3又は−SR2を表すか、Q3及びQ4が互いに結合して、これらがそれぞれ結合する炭素原子とともに芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
D1及びD2は、それぞれ独立に、単結合、−C(=O)−O−、−C(=S)−O−、−CR4R5−、−CR4R5−CR6R7−、−O−CR4R5−、−CR4R5−O−CR6R7−、−CO−O−CR4R5−、−O−CO−CR4R5−、−CR4R5−O−CO−CR6R7−、−CR4R5−CO−O−CR6R7−又は−NR4−CR5R6−又は−CO−NR4−を表す。
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
G1及びG2は、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又は−NH−に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
L1及びL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L1及びL2のうち少なくとも一方が、重合性基を有する有機基である。]
(B)メルカプト基を有する化合物
(C)光重合開始剤」

(4)「【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、成膜性に優れた光学フィルム製造用の組成物及び該組成物から形成される光学フィルムが提供できる。」

(5)「【発明を実施するための形態】
【0008】
1.組成物(以下、本発明の組成物を場合により、「本組成物」という)
本組成物は、式(A)で表される化合物(以下、場合により「化合物(A)」という)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む。本発明は、本組成物、本組成物を用いて形成される光学フィルム等を提供するものであり、以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。なお、図面中の寸法等は見易さのために任意になっている。
・・省略・・
【0232】
本組成物により形成される光学フィルムの波長分散特性は、本組成物が化合物(A)とともに液晶化合物(A’)を含むことにより制御できる。具体的には、光学フィルムに含まれる重合体(化合物(A)の重合体、又は化合物(A)と液晶化合物(A’)との(共)重合体)において、化合物(A)に由来する構造単位の含有量及び液晶化合物(A’)に由来する構造単位の含有量により所望の波長分散特性を有する光学フィルムを形成できる。光学フィルム中にある前記重合体の化合物(A)に由来する構造単位の含有量を増加させると、より逆波長分散特性を示す傾向がある。所望の波長分散特性を有する光学フィルムを形成するためには、化合物(A)に由来する構造単位の含有量が異なる本組成物を2〜5種類程度調製し、それぞれの本組成物について、同じ膜厚の光学フィルムを製造してその位相差値を求める。そして、結果から、化合物(A)に由来する構造単位の含有量と光学フィルムの位相差値との相関を求め、得られた相関関係から、上記膜厚における光学フィルムに所望の位相差値を与えるために必要な化合物(A)に由来する構造単位の含有量を決定すればよい。
・・省略・・
【0240】
2.光学フィルム
続いて、本組成物から形成される光学フィルム(以下、場合により「本光学フィルム」という)について説明する。
本光学フィルムは、上述した本組成物に含まれる重合性成分を重合してなるものである。本光学フィルムは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムである。光学的な機能とは、屈折、複屈折等を意味する。
【0241】
本光学フィルムは、可視光領域における透明性に優れ、様々な表示装置用部材として使用し得る。本光学フィルムの厚さは、本光学フィルムの用途のより適宜調節でき、例えば、その位相差値によって適宜調節すればよいが、0.1μm〜10μmであることが好ましく、光弾性を小さくする点で0.2μm〜5μmであることがさらに好ましい。
【0242】
表示装置に本光学フィルムを用いる場合、本光学フィルムは単層で用いることもできるし、本光学フィルム複数枚を積層させて積層体としてもよいし、他のフィルムと組み合わせてもよい。他のフィルムと組み合わせて用いることにより、位相差フィルム、視野角補償フィルム、視野角拡大フィルム、反射防止フィルム、偏光フィルム、円偏光フィルム、楕円偏光フィルム及び輝度向上フィルム等に利用することができる。
・・省略・・
【0244】
2−1.位相差フィルム
光学フィルムの一種である位相差フィルムは本光学フィルムの好適な実施態様の一つである。該位相差フィルムは、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光又は楕円偏光を直線偏光に変換したり、直線偏光の偏光方向を変換したりするために用いられる。
・・省略・・
【0246】
前記位相差フィルムの位相差値は、用いられる表示装置により、30〜300nmの範囲から適宜選択すればよい。
前記位相差フィルムを広帯域λ/4板として用いる場合は、Re(549)は113〜163nm、好ましくは130〜150nmに調整すればよい。広帯域λ/2板として用いる場合は、Re(549)は250〜300nm、好ましくは265〜285nmに調整すればよい。位相差値が前記の値であると、広範の波長の光に対し、一様に偏光変換できる傾向があり、好ましい。ここで、広帯域λ/4板とは、各波長の光に対し、その1/4の位相差値を発現する位相差フィルムであり、広帯域λ/2板とは、各波長の光に対し、その1/2の位相差値を発現する位相差フィルムである。ここでいうReについては後述する。
【0247】
なお、本組成物中の化合物(A)及び液晶化合物(A’)の含有量を適宜調整することにより、所望の位相差を与えるように膜厚を調製することができる。得られる位相差フィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(4)のように決定されることから、所望のRe(λ)を得るためには、Δn(λ)と膜厚dを適宜調整すればよい。
Re(λ)=d×Δn(λ) (4)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。)
【0248】
2−2.本光学フィルムの製造方法
本光学フィルムは、適当な基材を準備し、該基材上に本組成物を塗布し、乾燥し、本組成物に含まれる化合物(A)を、又は化合物(A)と液晶化合物(A’)とを重合することにより製造することができる。以下、本光学フィルムの製造方法の一例を説明する。
【0249】
2−2−0.基材の準備
本光学フィルムの製造に用いることができる基材としては例えば、ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、透光性フィルムが好ましい。前記透光性フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム及びポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
【0250】
なお、かかる基材の本組成物を塗布する面には、配向膜が形成されていてもよい。
【0251】
2−2−1.未重合フィルムの作製
基材の上に、本組成物を塗布することにより、該基材上に未重合フィルムが得られる。未重合フィルムがネマチック相等の液晶相を示す場合、モノドメイン配向による複屈折性を有する。
【0252】
基材上への塗布方法としては、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAP(キャップ)コーティング法、ダイコーティング法、インクジェット法、ディップコーティング法、スリットコーティング法、スピンコーティング法及びバーコーターによる塗布等が挙げられる。中でも、ロールtoロール形式で連続的に基材上に本組成物を塗布できる点で、CAPコーティング法、インクジェット法、ディップコーティング法、スリットコーティング法及びバーコーターによる塗布が好ましい。本組成物によれば、上記いずれの塗布方法によって未重合フィルムを形成しても、該未重合フィルム中で、本組成物の構成成分(化合物(A)等の重合性液晶化合物等)が結晶化することを良好に防止できる。
【0253】
本光学フィルムは、前記基材と積層した状態で使用してもよい。本光学フィルムに前記基材を積層しておくことで、フィルムの運搬、保管等を行う際に、本光学フィルムが破損することが抑制され、容易に取り扱うことができる。
・・省略・・
【0255】
配向膜を形成する方法としては、ラビングによって配向規制力が付与される配向性ポリマーを用いる方法(以下、場合により「ラビング法」という)、偏光を照射することにより配向規制力が付与される光配向性ポリマーを用いる方法(以下、場合により「光配向法」という)、基板表面に酸化ケイ素を斜方蒸着する方法、及びラングミュア・ブロジェット法(LB法)を用いて長鎖アルキル基を有する単分子膜を形成する方法等が挙げられる。中でも、本組成物に含まれる化合物(A)の配向均一性、本光学フィルム製造の処理時間及び処理コストの観点から、ラビング法及び光配向法が好ましく、光配向法がより好ましい。配向膜としては、その上に本組成物を塗布しても、本組成物に含まれる成分、例えば、本組成物に含まれる溶剤に溶解しない程度の耐溶剤性を有することが好ましい。また、該配向膜には、前記未乾燥フィルムからの溶剤の除去や、化合物(A)や液晶化合物(A’)の液晶配向時の熱処理に対する耐熱性、下地である基材に対しての密着性を有することも求められる。
・・省略・・
【0257】
配向膜が光配向法によって形成される場合、光配向法に用いられる光配向性ポリマーとしては、感光性構造を有するポリマーが挙げられる。感光性構造を有するポリマーに偏光を照射すると、照射された部分の感光性構造が異性化又は架橋することで光配向性ポリマーが配向し、光配向性ポリマーからなる膜に配向規制力が付与される。上記感光性構造としては、例えば、アゾベンゼン構造、マレイミド構造、カルコン構造、桂皮酸構造、1,2−ビニレン構造、1,2−アセチレン構造、スピロピラン構造、スピロベンゾピラン構造及びフルギド構造等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。これらのポリマーは、感光性構造を有する単量体を用いて、脱水や脱アミン等による重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等により得ることができる。また、異なる感光性構造を有する単量体を複数種用い、それらの共重合体であってもよい。このような光配向性ポリマーとしては、特許第4450261号、特許第4011652号、特開2010−49230号公報、特許第4404090号、特開2007−156439号公報、特開2007−232934号公報等に記載される光配向性ポリマーが挙げられる。
【0258】
基材上に配向膜を形成するためには、上記配向性ポリマー及び光配向性ポリマーは、溶剤に溶解した溶液(配向膜形成用組成物)とし、該配向膜形成用組成物を該基材上に塗布する方法が簡便で好ましい。
・・省略・・
【0259】
配向膜形成用組成物から配向膜を形成するためには、上述のように、まず、前記基材上に、該配向膜形成用組成物を塗布する。塗布方法としては、すでに説明した本組成物を基材上に塗布する方法として例示したものと同じ方法が採用できる。この場合も、ロールtoロール形式で連続的に基材上に本組成物を塗布できる方法が商業的生産の点では好ましい。
【0260】
続いて、配向膜形成用組成物を基材上に塗布した塗布膜(配向膜形成用塗布膜)を乾燥して、該配向膜形成用組成物に含まれる溶剤などの低沸点成分を該配向膜形成用塗布膜から除去する。
【0261】
乾燥方法としては、例えば自然乾燥、通風乾燥、加熱乾燥又は減圧乾燥等、或いはこれらを組み合わせた方法が挙げられる。具体的な乾燥温度としては、10〜250℃であることが好ましく、25〜200℃であることがさらに好ましい。また乾燥時間としては、用いた配向膜形成用組成物に含まれる溶剤の種類にもよるが、5秒間〜60分間であることが好ましく、10秒間〜30分間であることがより好ましい。乾燥温度及び乾燥時間が上記範囲内であれば、前記の基材のいずれかを用いた場合、該基材に対する損傷を抑制することができる。
【0262】
かくして基材上に形成された配向膜形成用塗布膜に、すでに説明した方法により配向規制力を付与して配向膜を形成する。ここでは、配向規制力を付与する好ましい方法として例示したラビング法及び光配向法について詳述する。
・・省略・・
【0267】
次に、配向膜形成用塗布膜に対し、光配向法により配向規制力を付与する光配向法について説明する。
光配向法により配向規制力を付与するには、配向膜形成用塗布膜上に、偏光照射(例えば、直線偏光紫外線)を行う。偏光照射は、例えば、特開2006−323060号公報に記載される装置を用いて行うことができる。例えば、配向膜形成用塗布膜上で、例えば所望の複数領域に対応したフォトマスクを準備し、当該領域毎にフォトマスクを介しての偏光照射(例えば、直線偏光紫外線)を繰り返し行うことにより、パターン化配向膜を形成することができる。上記フォトマスクとしては、例えば、石英ガラス、ソーダライムガラスまたはポリエステルなどのフィルム上に、遮光パターンを設けたものが挙げられる。遮光パターンで覆われている部分は露光される光が遮断され、覆われていない部分は露光される光が透過される。熱膨張の影響が小さいため、フォトマスクに用いられる基材としては石英ガラスが好ましい。
【0268】
光配向法によってもパターン化配向膜を形成することができる。ここではその一例を挙げる。まず、配向膜形成用塗布膜(光配向性ポリマーを含む)に、第1のパターン領域に対応した空隙部を有する第1のフォトマスク(残りの領域は遮光パターンになっている)を介して、第1の偏光方向を有する第1の偏光を照射する(第1の偏光照射)。この第1の偏光照射によって、上記第1のパターン領域の配向規制力の方向を上記第1の偏光方向に対応させる。次いで、第2のパターン領域に対応した空隙部を有する第2のフォトマスク(残りの領域は遮光パターンになっている)を介して、上記第1の偏光方向とは異なる第2の偏光方向(例えば、第1の偏光方向に対して垂直な方向)を有する第2の偏光を照射する(第2の偏光照射)。この第2の偏光照射によって、上記第2のパターン領域12の配向規制力の方向を上記第2の偏光方向に対応させる。これにより、互いに配向規制力の方向が異なる複数のパターン領域を有する配向膜が得られる。さらに、3種類以上のフォトマスクを介して偏光照射を繰り返し行うことにより、互いに配向規制力の方向が異なる3つ以上のパターン領域を有するパターン化配向膜を作成することもできる。光配向性ポリマーの反応性の点で、各偏光照射とも、照射する光は紫外線であることが好ましい。
【0269】
かくして基材上に形成される配向膜又はパターン化配向膜の膜厚は、例えば10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。このような範囲とすれば、本組成物に含まれる液晶性成分(化合物(A)、液晶化合物(A’))を所望の角度に配向させることができる。
【0270】
2−2−2.未重合フィルムの重合
基材上又は配向膜上に形成された前記未重合フィルムに含まれる化合物(A)を、又は、未重合フィルムに含まれる化合物(A)と液晶化合物(A’)とを重合し、硬化させることにより、光学フィルムが得られる。光学フィルムは、化合物(A)の配向性が固定化されており、熱による複屈折の変化の影響を受けにくい。
・・省略・・
【0272】
基材上又は配向膜上に、本組成物を塗布した形成された未重合フィルムに対し、そのまま光照射を行って、該未重合フィルムを硬化することもできるが、該未重合フィルムを乾燥して、該未重合フィルムから溶剤を除去しておくことが好ましい。このようにして、未重合フィルムを乾燥した場合であっても、該未重合フィルム中で、本組成物の構成成分(化合物(A)等の重合性液晶化合物等)が結晶化することを良好に防止できる。
なお、溶剤の除去は、重合反応と並行して行ってもよいが、重合を行う前に、ほとんどの溶剤を除去しておくことが好ましい。その除去方法としては、配向膜の形成方法において乾燥方法として例示したものと同じ方法が採用される。中でも、自然乾燥又は加熱乾燥が好ましく、自然乾燥又は加熱乾燥を行う際の温度は、0℃〜250℃の範囲が好ましく、50℃〜220℃の範囲がより好ましく、80℃〜170℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は、10秒間〜60分間が好ましく、より好ましくは30秒間〜30分間である。加熱温度および加熱時間が上記範囲内であれば、基材として、耐熱性が必ずしも十分ではないものを用いることができる。
【0273】
化合物(A)等を重合させて、未重合フィルムを硬化させた後、基材を剥離することにより、配向膜と本光学フィルムとが積層されたフィルム(積層フィルム)が得られる。さらに、配向膜を剥離して、単層の本光学フィルムを得ることができる。また、他の基材(フィルム又は板)を、該積層フィルムに貼合しておいてから、本光学フィルムに積層されていた基材や配向膜を剥離することにより、転写を行うこともできる。
【0274】
3.偏光板
本光学フィルムは、例えば偏光板製造に用いることができる。当該偏光板は、上述した本光学フィルム(本光学フィルムが位相差フィルムである場合を含む)を少なくとも一つ有するものである。
この偏光板としては、図1(a)〜図1(e)に示すように、(1)本光学フィルム1と、偏光フィルム層2とが、直接積層された偏光板4a(図1(a));(2)本光学フィルム1と偏光フィルム層2とが、接着剤層3を介して貼り合わされた偏光板4b(図1(b));(3)本光学フィルム1と、本光学フィルム1’とを積層させ、さらに、本発明の本光学フィルム1’と偏光フィルム層2とを積層させた偏光板4c(図1(c));(4)本光学フィルム1と、本光学フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本光学フィルム1’上に偏光フィルム層2を積層させた偏光板4d(図1(d));及び、(5)本光学フィルム1と、本光学フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本光学フィルム1’と偏光フィルム層2とを接着剤層3’を介して貼り合せた偏光板4e(図1(e))等が挙げられる。ここで接着剤とは、接着剤及び/又は粘着剤のことを総称するものである。なお、図1の説明では、光学フィルムとしては、本光学フィルムのみであってもよいし、本光学フィルムに配向膜が積層しているものであってもよいし、本光学フィルムに配向膜及び基材が積層しているものであってもよい。
【0275】
前記偏光フィルム層2は、偏光機能を有するフィルムであればよく、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸して沃素や二色性色素を吸着させたフィルム等が挙げられる。
・・省略・・
【0280】
4−2.有機EL表示装置
有機EL表示装置としては、図3に示す有機EL表示装置等が挙げられる。上記有機EL表示装置としては、本発明の偏光板4と、有機ELパネル7とを、接着層5を介して貼り合わせてなる有機EL表示装置11が挙げられる。上記有機ELパネル7は、導電性有機化合物からなる少なくとも1層の層である。上記構成によれば、図示しない電極を用いて、有機ELパネルに電圧を印加することにより、有機ELパネルが有する発光層に含まれる化合物が発光し、白黒表示ができる。
なお、上記有機EL表示装置11において、偏光板4は、広帯域円偏光板として機能するものであることが好ましい。広帯域円偏光板として機能するものであると、有機EL表示装置11の表面において外光の反射を防止することができる。」

(6)「【実施例】
【0281】
・・省略・・
【0295】
【表3】



(7)「【図1】



2 引用発明
引用文献1には、基材と配向膜を剥離した「単層の本光学フィルム」(【0273】)との記載、及び「図1の説明では、光学フィルムとしては」、「本光学フィルムに配向膜及び基材が積層しているものであってもよい」(【0274】)との記載があることから、以下では表現を統一するため、基材と配向膜を含まないものを「単層の本光学フィルム」といい、単層の本光学フィルムに配向膜及び基材が積層しているものを「光学フィルム」ということとする。

(1)光学フィルムについて
引用文献1の【0244】及び【0246】には、「光学フィルム」の実施態様の一つとして位相差フィルムがあり、位相差フィルムを広帯域λ/4板として用いることが記載されている。また、引用文献1の【0232】の記載より、光学フィルムは、式(A)で示される化合物(A)により、逆波長分散特性を示すものである。また、引用文献1の【0246】の記載からは、位相差フィルムを広帯域λ/4板として用いる際には、Re(549)を130nm〜150nmとすることを把握することができる。
さらに、引用文献1の【0250】及び【0253】には、それぞれ、「基材の本組成物を塗布する面には、配向膜が形成されていてもよい。」、「本光学フィルムは、前記基材と積層した状態で使用してもよい。」との記載がある。これらの記載からは、基材に配向膜及び単層の本光学フィルムが積層されたものを使用することが把握できる。

(2)光学フィルムの製造方法について
引用文献1の【0248】〜【0273】には、光学フィルムの製造方法が記載され、引用文献1の【0255】には「本光学フィルム製造の処理時間及び処理コストの観点から、ラビング法及び光配向法が好ましく、光配向法がより好ましい。」との記載があり、配向膜の配向法として光配向法によることを把握できる。また、引用文献1の【0259】等の記載に接した当業者ならば、「光学フィルム」が「ロールtoロール形式」により製造されることを把握できる。さらに、「単層の本光学フィルム」が、化合物(A)等を重合させ、未重合フィルムを硬化させて形成されるものであることを把握できる。

(3)上記(1)〜(2)より、引用文献1には、光学フィルムの製造方法として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「光学フィルムは、逆波長分散特性を示し、Re(549)が130nm〜150nm、広帯域λ/4板として用いられる位相差フィルムの製造方法であって、
光学フィルムは、ロールtoロール形式により製造されるものであり、以下の工程を有する光学フィルムの製造方法。
光学フィルムの製造に用いることができる基材として、例えば、ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、透光性フィルムを準備し、
基材上に、感光性構造を有するポリマーである光配向性ポリマーを溶剤に溶解した溶液(配向膜形成用組成物)を塗布し、
配向膜形成用組成物を基材上に塗布した塗布膜(配向膜形成用塗布膜)を乾燥して、該配向膜形成用組成物に含まれる溶剤などの低沸点成分を該配向膜形成用塗布膜から除去し、
基材上に形成された配向膜形成用塗布膜上に、偏光照射を行い、光配向法により配向規制力を付与して配向膜を形成し、
配向膜上に、以下の式(A)で表される化合物(A)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む組成物を塗布して形成された未重合フィルムを自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥して、重合を行う前に、ほとんどの溶剤を除去しておき、
化合物(A)等を重合させ、未重合フィルムを硬化させて単層の本光学フィルムを形成する。

式(A)

[式(A)中、
X1は、酸素原子、硫黄原子又は−NR1−を表す。R1は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Y1は、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の1価の芳香族複素環式基を表す。
Q3及びQ4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR2R3又は−SR2を表すか、Q3及びQ4が互いに結合して、これらがそれぞれ結合する炭素原子とともに芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
D1及びD2は、それぞれ独立に、単結合、−C(=O)−O−、−C(=S)−O−、−CR4R5−、−CR4R5−CR6R7−、−O−CR4R5−、−CR4R5−O−CR6R7−、−CO−O−CR4R5−、−O−CO−CR4R5−、−CR4R5−O−CO−CR6R7−、−CR4R5−CO−O−CR6R7−又は−NR4−CR5R6−又は−CO−NR4−を表す。
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
G1及びG2は、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又は−NH−に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
L1及びL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L1及びL2のうち少なくとも一方が、重合性基を有する有機基である。]」


第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)長尺基材
引用発明の「基材」は、「基材上に」「配向膜」及び「単層の本光学フィルム」が「形成」されるものであり、また、「光学フィルムは、ロールtoロール形式により製造されるものであ」ることから、長尺形状となっていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「基材」は、本願発明の「長尺基材」に相当する。

(2)長尺光配向膜
引用発明の「配向膜」は、「光配向法により配向規制力を付与して」「形成」されたものであり、また、「光学フィルムは、ロールtoロール形式により製造されるものであ」ることから、長尺形状となっていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「配向膜」は、本願発明の「長尺光配向膜」に相当する。

(3)長尺位相差膜
引用発明の「光学フィルム」は、「広帯域λ/4板として用いられる位相差フィルム」であることから、「単層の本光学フィルム」が位相差膜として機能していることは明らかであり、また、「光学フィルムは、ロールtoロール形式により製造されるものであ」ることから、「単層の本光学フィルム」も長尺形状となっていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「単層の本光学フィルム」は、本願発明の「長尺位相差膜」に相当する。

(4)長尺位相差フィルム
引用発明の「光学フィルム」は「広帯域λ/4板として用いられる位相差フィルム」であることから、「光学フィルム」についても「位相差フィルム」としての特性を有するものと認められる。また、引用発明の「配向膜」及び「単層の本光学フィルム」は、いずれも1層のみからなることは明らかである。さらに、「光学フィルムは、ロールtoロール形式により製造されるものであ」ることから、「光学フィルム」についても長尺形状であり、また、「フィルム」状となっていることは明らかである。
そうしてみると、引用発明の「光学フィルム」は、本願発明の「長尺位相差フィルム」に相当する。
また、引用発明の製造工程からは引用発明の「光学フィルム」は、「基材」、「配向膜」、「単層の本光学フィルム」がこの順となっていることは明らかであり、本願発明の「長尺基材、長尺光配向膜及び長尺位相差膜をこの順に有し」及び「前記長尺光配向膜及び前記長尺位相差膜はそれぞれ1層のみからなり」との要件を満たすものである。

また、逆波長分散特性を有するものは、波長が長くなるに従い面内位相差も大きくなることは、光学フィルムの技術分野における技術常識である。当該技術常識に基づけば、引用発明の「光学フィルムは、逆波長分散特性を示」すことから、引用発明における「光学フィルム」は、本願発明の式(1)及び式(2)を満たすものである。

さらに、引用発明の「光学フィルム」は「Re(549)が130nm〜150nm」に調整されたものである。波長が1nm異なったとしても、その面内位相差が大きく変化することはないのが光学フィルムの技術分野において一般的であり、引用発明の「Re(549)が130nm〜150nm」に調整された「光学フィルム」のRe(550)は「100nm<Re(550)<160nm」を満たすものである蓋然性が高いといえる。
そうしてみると、引用発明の「光学フィルム」は、本願発明の式(3)を満たすものである。

以上より、引用発明の「光学フィルム」は、本願発明の「長尺基材、長尺光配向膜及び長尺位相差膜をこの順に有し、式(1)、(2)及び(3)を満たす波長分散特性を有する」という要件を満たすものである。

(6)(1)の工程
引用発明の「感光性構造を有するポリマーである光配向性ポリマーを溶剤に溶解した溶液(配向膜形成用組成物)」は、本願発明の「光配向膜形成用組成物」と、「ポリマーを含有する光配向膜形成用組成物」という点で共通する。また、引用発明における「配向膜形成用組成物を基材上に塗布した塗布膜(配向膜形成用塗布膜)」は、本願発明の「第1塗布膜」に相当し、「基材上に」「(配向膜形成用組成物)を塗布」する工程により「配向膜形成用塗布膜」を形成することは、その工程からみて明らかである。
そうすると、引用発明の「基材上に、感光性構造を有するポリマーである光配向性ポリマーを溶剤に溶解した溶液(配向膜形成用組成物)を塗布」する工程は、本願発明の「(1)」の工程と「(1)長尺基材に、」「ポリマーを含有する光配向膜形成用組成物を」「塗布して、該長尺基材上に第1塗布膜を形成する」という点で共通する。

(7)(2)の工程
引用発明の「配向膜形成用組成物を基材上に塗布した塗布膜(配向膜形成用塗布膜)を乾燥して、該配向膜形成用組成物に含まれる溶剤などの低沸点成分を該配向膜形成用塗布膜から除去」する工程における、「乾燥」により「溶剤などの低沸点成分を」「除去」された「配向膜形成用塗布膜」は、本願発明の「第1乾燥被膜」に相当する。
そうすると、引用発明の「配向膜形成用組成物を基材上に塗布した塗布膜(配向膜形成用塗布膜)を乾燥して、該配向膜形成用組成物に含まれる溶剤などの低沸点成分を該配向膜形成用塗布膜から除去」する工程は、本願発明の「(2)該第1塗布膜を乾燥することにより、第1乾燥被膜を形成する工程」に相当する。

(8)(3)の工程
引用発明の「基材上に形成された配向膜形成用塗布膜上に、偏光照射を行い、光配向法により配向規制力を付与して配向膜を形成」する工程は、本願発明の「(3)」の工程と「(3)該第1乾燥被膜に」「偏光を照射することにより」「長尺光配向膜を形成する工程」という点で共通する。

(9)液晶硬化膜形成用組成物
引用発明の「式(A)で表される化合物(A)」は、引用文献1の【0252】の「化合物(A)等の重合性液晶化合物等」の記載から「重合性液晶」であると認められ、また、引用文献1の【0295】【表3】の記載から「サーモトロピック性」を示すものと認められる。そうすると、引用発明の「式(A)で表される化合物(A)」は、本願発明の「サーモトロピック性の重合性液晶化合物」に相当する。
また、引用発明の「式(A)で表される化合物(A)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む組成物」は、重合性液晶化合物である「式(A)で表される化合物(A)」を含み、後の工程で「硬化」することにより「単層の本光学フィルム」となるものであることから、本願発明の「サーモトロピック性の重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物」に相当する。

(10)(4)の工程
上記(9)より、引用発明の「塗布して形成された未重合フィルム」は、本願発明の「第2塗布膜」に相当する。
そうすると、引用発明の「配向膜上に、」「式(A)で表される化合物(A)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む組成物を塗布」する工程は、本願発明と、「(4)該長尺光配向膜の上に、サーモトロピック性の重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物を」「塗布して、該長尺光配向膜上に第2塗布膜を形成する工程」という点で共通する。

(11)(5)の工程
引用発明の「未重合フィルムを自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥して、重合を行う前に、ほとんどの溶剤を除去しておき」との工程において、「乾燥」により「ほとんどの溶剤を除去」された「未重合フィルム」は、本願発明の「第2乾燥被膜」に相当する。
そうすると、引用発明の「未重合フィルムを自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥して、重合を行う前に、ほとんどの溶剤を除去しておき」との工程は、本願発明の「(5)」の工程と「(5)該第2塗布膜を乾燥する」「ことにより、第2乾燥被膜を形成する工程」という点で共通する。

(12)(6)の工程
引用発明の「化合物(A)等を重合させて、未重合フィルムを硬化させ」る工程は、本願発明の「(6)該第2乾燥被膜を硬化することにより、前記(1)〜(3)を満たす波長分散性を有する長尺位相差膜を形成する工程」という要件を満たす。

(13)(1)〜(6)の工程
上記(6)〜(8)、(10)〜(12)の工程を総合すると、引用発明の「光学フィルムの製造方法」は、本願発明の「長尺位相差フィルムの製造方法」に相当する。また、引用発明は、本願発明の「(1)〜(6)の工程をこの順に有する」という要件を満たす。

2 一致点
上記1によると、本願発明と引用発明は次の点で一致する。

「 長尺基材、長尺光配向膜及び長尺位相差膜をこの順に有し、下記式(1)、(2)及び(3)を満たす波長分散特性を有する長尺位相差フィルムを製造する方法であり、
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm<Re(550)<160nm (3)
(式中、Re(λ)は波長λnmの光に対する面内位相差値を表す。)
前記長尺光配向膜及び前記長尺位相差膜はそれぞれ1層のみからなり、
以下の(1)〜(6)の工程をこの順に有する前記長尺位相差フィルムの製造方法。
(1)長尺基材に、主鎖部分にポリマーを含む光配向膜形成用組成物を塗布して、該長尺基材上に第1塗布膜を形成する工程
(2)該第1塗布膜を乾燥することにより、第1乾燥被膜を形成する工程
(3)該第1乾燥被膜に、偏光を照射することにより、長尺光配向膜を形成する工程
(4)該長尺光配向膜の上に、サーモトロピック性の重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物を塗布して、該長尺光配向膜上に第2塗布膜を形成する工程
(5)該第2塗布膜を乾燥することにより、第2乾燥被膜を形成する工程
(6)該第2乾燥被膜を硬化することにより、前記式(1)〜(3)を満たす波長分散性を有する長尺位相差膜を形成する工程」

3 相違点
本願発明と引用発明は次の点で相違する。

(相違点1)
「長尺基材」について、本願発明では「プラスチック基材であ」り、「該プラスチック基材は、複屈折性が無いシクロオレフィンポリマーであ」るのに対して、引用発明では、「ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、透光性フィルム」と例示されている点。

(相違点2)
「(1)」「の工程」について、本願発明では、「光配向膜形成用組成物を連続的に塗布」するのに対して、引用発明では、「感光性構造を有するポリマーである光配向性ポリマーを溶剤に溶解した溶液(配向膜形成用組成物)」を連続的に塗布するかどうかが明らかでない点。

(相違点3)
「(1)」「の工程」の「ポリマーを含む光配向膜形成用組成物」における「ポリマー」について、本願発明では、「主鎖部分に下記式:

で表される構成単位を有する」のに対して、引用発明では、「感光性構造を有する」と特定されるのみである点。

(相違点4)
「(3)」「の工程」の「長尺光配向膜」について、本願発明では「長尺基材の長尺方向に対して30°〜60°の角度で偏光を照射することにより、」「配向規制力の方向が長尺基材の長尺方向に対して30°〜60°であり、かつ一様の配向パターンを有する」のに対して、引用発明では、照射される「偏光」の角度についての特定がなく、また、「配向膜」について「配向規制力の方向が長尺基材の長尺方向に対して30°〜60°であり、かつ一様の配向パターンを有する」との特定がない点。

(相違点5)
「(4)」「の工程」について、本願発明では、「液晶硬化膜形成用組成物を連続的に塗布」するのに対して、引用発明では、「式(A)で表される化合物(A)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む組成物」を連続的に塗布するかどうかが明らかでない点。
(当合議体注:上記「式(A)」は、上記「第4」「2(3)」で示したとおりのものである。下記「4(2)」においても同様である。)

(相違点6)
「(5)」「の工程」について、本願発明では「第2塗布膜を乾燥すると共に加熱する」のに対して、引用発明では「未重合フィルムを自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥」すると特定されている点。

4 判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明における基材として、「例えば、ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、透光性フィルム」が挙げられているところ、この中より、プラスチックからなる基材を選択することは、当業者が適宜選択する事項にすぎない。
ここで、引用文献1の【0249】には、「前記透光性フィルムとしては、例えば・・・ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム・・・等が挙げられる。」と記載されている。技術常識から、上記ノルボルネン系ポリマーは、シクロオレフィンポリマーであるものの、複屈折性については明らかではない。しかしながら、複屈折性を持たせるかどうかは延伸するかどうかによるところ、低複屈折性のノルボルネン系ポリマーを光学フィルムとして用いることは、周知技術(例えば、特開平6−51117号公報の特許請求の範囲、【0012】、【0013】、特開2001−318202号公報の特許請求の範囲参照。)である。
上記周知技術を心得た当業者であれば、引用文献1の上記記載から、引用発明の基材として複屈折性が低いシクロオレフィンポリマーを選択することは、設計事項にすぎない。
したがって、引用発明に基づいて、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点2及び5について
相違点2及び5は、いずれも組成物を連続的に塗布する工程であるのでまとめて検討する。
ロールtoロール形式で光学素子を製造する際に、長尺基材上に光配向膜形成用組成物を塗布、乾燥、偏光光を照射して光配向膜を形成し、光配向膜上に重合性液晶化合物を塗布、乾燥、光を照射することを、連続的に行うことは、周知技術である(例えば、特開2013−33249号公報の【0106】〜【0116】、特開2013−101328号公報の【0089】〜【0099】等を参照。)。
ここで、引用発明の「光学フィルム」の製造において、「基材上に、感光性構造を有するポリマーである光配向性ポリマーを溶剤に溶解した溶液(配向膜形成用組成物)を塗布」する工程、「配向膜形成用組成物を基材上に塗布した塗布膜(配向膜形成用塗布膜)を乾燥して、該配向膜形成用組成物に含まれる溶剤などの低沸点成分を該配向膜形成用塗布膜から除去」する工程、「基材上に形成された配向膜形成用塗布膜上に、偏光照射を行い、光配向法により配向規制力を付与して配向膜を形成」する工程、「配向膜上に、以下の式(A)で表される化合物(A)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む組成物を塗布して形成された未重合フィルムを自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥して、重合を行う前に、ほとんどの溶剤を除去してお」く工程及び「化合物(A)等を重合させて、未重合フィルムを硬化させ」る工程を、連続的に行わなければ、単に効率が落ちるだけでなく、配向膜等にスリキズやゴミによる損傷等を招きやすくなる。そうすると、引用発明の「光学フィルム」の製造において、各工程を連続的に行うことは、ごく自然なことである。
そうしてみると、引用発明の「光学フィルム」の製造において、効率を高めたり損傷等を防いだりするために、「感光性構造を有するポリマーである光配向性ポリマーを溶剤に溶解した溶液(配向膜形成用組成物)を塗布」する工程及び「式(A)で表される化合物(A)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む組成物を塗布」する工程における組成物を塗布する工程を連続的に行うようにすることは、当業者にとって格別の困難性はない。
したがって、引用発明及び周知技術に基づいて、上記相違点2及び5に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)相違点3について
引用文献1の【0257】には、「感光性構造を有するポリマー」の例として「桂皮酸構造」(シンナモイル基を有する構造である)が例示されており、また、ロールtoロール形式で連続的に光学素子を製造する際の光配向膜として、シンナモイル基を有するポリマーを含有する光配向膜形成用組成物を用いることは周知技術である(例えば、特開2013−33249号公報の【0020】、特開2013−101328号公報の【0075】、特開2013−33248号公報の【0040】等を参照。)。また、シンナモイル基を有することにより、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向層が得られやすいことも周知である(特開2013−33249号公報の【0020】、特開2013−101328号公報の【0075】等を参照。)。
ここで、引用文献1の上記「桂皮酸構造」の具体的な記載はないが、上記【0257】には「特許第4011652号」が記載されていて、特許第4011652号の【0013】〜【0015】、【0024】、【0083】等には、ケイ皮酸重合体として、メタアクロイルオキシ基を有するポリマーが開示されていて、ケイ皮酸重合体を用いた液晶用配向層は、高い光化学的安定性、優れた液晶の配向が達成されることも開示されている。したがって、引用文献1には、光配向膜を形成し得る感光性構造を有するポリマーとして、メタアクロイルオキシ基を有する桂皮酸構造が実質的に開示されているといえる。少なくとも、光配向膜を形成し得る感光性構造を有するポリマーとして、メタアクロイルオキシ基を有する桂皮酸構造は周知技術であるといえる。
そうしてみると、引用発明における「感光性構造を有するポリマー」として、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れているものである「メタアクロイルオキシ基を有するポリマー」とすることは、当業者にとって格別の困難性はない。
したがって、引用発明及び周知技術に基づいて、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(4)相違点4について
長尺方向に対して45°に一様に配向する位相差フィルムと偏光フィルムとを、ロールtoロール形式で連続的に積層させることにより、高い生産性で容易に製造ができ、低コストである円偏光板の製造方法は周知技術である(特開2010−266723号公報の【0077】〜【0083】等、特開2012−42530号公報の請求項15、【0251】、【0320】、図3等、特開2007−155970号公報の【0069】〜【0071】等を参照。)。また、照射する偏光方向を制御することで、配向の角度を所望の角度にできることについても周知技術である(引用文献1の【0268】〜【0269】及び特開2006−243653号公報の【0070】〜【0073】等を参照。)。
そうすると、これらの周知技術を心得た当業者にとって、引用発明において、高い生産性で容易に製造ができ、低コストである円偏光板の製造方法として、引用発明の「光学フィルム」の配向を長尺方向に対して45°に一様な配向となるように、「配向膜」を長尺方向に対して45°に一様に配向したものとし、そのために、光配向法により配向規制力を付与する際に照射する偏光を、長尺方向に対して30°〜60°の角度とすることは、格別の工夫なく採用する手段にすぎない。
したがって、引用発明及び周知技術に基づいて、上記相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(5)相違点6について
引用発明における「未重合フィルム」の乾燥方法として「自然乾燥又は加熱乾燥」のうち「加熱乾燥」によって乾燥させることは、両者のうち当業者が適宜選択する事項にすぎない。
したがって、引用発明に基づいて、上記相違点6に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

5 効果について
本願発明に関して、本件明細書の【0006】には、「本発明によれば、長尺位相差フィルムの長尺方向に対して斜め方向に光軸を有する長尺位相差フィルムを製造することができる。」と記載されている。また、本件明細書の【0136】には、「長尺位相差フィルム(1)から任意の箇所のフィルム片(4cm×4cm)を切り出し、ヘイズメーター(HZ−2;スガ試験機(株)製)を用いてヘイズ値を測定した。その結果、ヘイズ値は0.2%であった。」と記載されている。
しかしながら、上記【0006】の効果は、本願発明の構成から予測できるものであり、また、引用発明及び周知技術が備える効果であるか、または予測できる範囲内のものである。
また、上記【0136】のヘイズ値について、本件明細書においては比較例のヘイズ値の記載はなく、基材との関係においてヘイズ値についての効果については参酌できない。仮に、参酌したとしても、どのような基材を用いるかは設計事項にすぎず、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。

6 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和4年2月7日提出の意見書において、「引用文献1からは、長尺基材として、複屈折性が無いシクロオレフィンポリマーを用い、かつ、工程(3)において、該長尺基材の長尺方向に対して30°〜60°の偏光を照射することにより、主鎖部分にメタアクロイルオキシ基を有するポリマーを光配向させてなり、配向規制力の方向が長尺基材の長尺方向に対して30°〜60°であり、かつ一様の配向パターンを有する長尺光配向膜を形成するという本願発明の構成を導き出すための示唆は得られません。」、「文献A、文献B、文献C及び文献D(文献A〜Dということがあります)のいずれも、基材上の配向層に偏光層を形成したものであり(文献Aの段落[0094];文献Bの段落[0088];文献Cの段落[0089];文献Dの請求項1)、配向層上に位相差膜を形成する製造方法にかかる本願発明とは異なる発明であるため、当業者は、これらの文献と引用文献1とを組み合わせようとはしないと思料します。」(当合議体注:「文献A」、「文献B」、「文献C」及び「文献D」は、それぞれ、「特開2013−109090号公報」、「特開2013−101328号公報」、「特開2013−33248号公報」及び「特開2013−33249号公報」を示す。)、「仮に、引用文献1と、文献A〜Eとを組み合わせることができたとしても、これらの文献のいずれにも、長尺基材、長尺光配向膜、及び式(1)〜(3)を満たす長尺位相差膜をこの順に有する長尺位相差フィルムにおいて、長尺基材として複屈折性が無いシクロオレフィンポリマーを用いることを教示又は示唆していないため、本願発明の構成を導き出すことはできません。」(当合議体注:「文献E」は、「特開2006−243653号公報」を示す。)及び「さらに本願発明は、引用文献1及び周知技術として示された文献A〜Eからは予測し得ない優れた効果を奏します。・・・長尺位相差フィルムであっても、波長分散性が式(1)〜(3)を満たすことができ、かつ、ヘイズ値を非常に低くすることができます。」と主張している。
しかしながら、上記4及び5のとおりであるから、審判請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。

7 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件出願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-14 
結審通知日 2022-03-15 
審決日 2022-03-30 
出願番号 P2019-001003
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 関根 洋之
井口 猶二
発明の名称 長尺位相差フィルムの製造方法  
代理人 松谷 道子  
代理人 森住 憲一  
代理人 岩木 郁子  
代理人 梶田 真理奈  
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