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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1384947
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-23 
確定日 2022-05-19 
事件の表示 特願2019−231030「防眩フィルムおよび画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 2日出願公開、特開2020− 52433〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特願2019−231030号(以下「本件出願」という。)は、平成27年7月30日(先の出願に基づく優先権主張 平成26年8月1日)を出願日とする、特願2015−150987号の一部を新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 2年 7月 7日付け:拒絶理由通知書(特許法50条の2の通知を 伴う拒絶理由)
令和 2年11月 5日提出:意見書
令和 2年11月 5日提出:手続補正書
令和 3年 3月23日付け:令和2年11月5日にされた手続補正につい ての補正の却下の決定
令和 3年 3月23日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 3年 6月23日提出:審判請求書
令和 3年 6月23日提出:手続補正書


第2 令和3年6月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
令和3年6月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
令和2年11月5日提出の手続補正書による手続補正は上記「第1」に示したとおり、令和3年3月23日付けの補正の却下の決定により却下されたから、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び9の記載は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
透明基材と、該透明基材の少なくとも一方の面に配置された防眩層とを備え、
該防眩層の該透明基材とは反対側の表面が、凹凸面であり、
該凹凸面の平均間隔Smが、150μm〜350μmであり、
該凹凸面の平均傾斜角θaが、0.1°〜2.5°であり、
該凹凸面の算術平均表面粗さRaが、0.05μm〜0.5μmである、
画像表示装置。

「【請求項9】
請求項1から8のいずれか記載の防眩フィルムと、画像表示セルとを備え、
該防眩フィルムと画像表示セルとのギャップが、100μm〜700μmである、
画像表示装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は当合議体が付与したものであり、補正箇所を示す。

「 防眩フィルムと、画像表示セルとを備え、
該防眩フィルムと画像表示セルとのギャップが、100μm〜700μmであり、
該防眩フィルムが、
透明基材と、該透明基材の少なくとも一方の面に配置された防眩層と、前記透明基材と前記防眩層との間に形成され、該透明基材を構成する材料の少なくとも一部および/または該バインダー樹脂の少なくとも一部とを含む、中間層とを備え、
該防眩層の該透明基材とは反対側の表面が、凹凸面であり、
該凹凸面の平均間隔Smが、150μm〜350μmであり、
該凹凸面の平均傾斜角θaが、0.1°〜2.5°であり、
該凹凸面の算術平均表面粗さRaが、0.05μm〜0.5μmであり、
該中間層の厚みが、該防眩層の厚みに対して、27%〜123%である、
画像表示装置。」

2 補正の適否について
本件補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項9に記載された発明を特定するための必要な事項である「画像表示装置」について、本件出願の出願当初の特許請求の範囲の請求項8の記載並びに明細書の【0073】及び【0074】の実施例における防眩層の厚み6.3μmと中間層の厚み1.7μmとの記載に基づき、「透明基材と、該透明基材の少なくとも一方の面に配置された防眩層と、前記透明基材と前記防眩層との間に形成され、該透明基材を構成する材料の少なくとも一部および/または該バインダー樹脂の少なくとも一部とを含む、中間層とを備え、」及び「該中間層の厚みが、該防眩層の厚みに対して、27%〜123%である」を挿入するものである。また、本件補正前の請求項1を引用する請求項9に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野(【0001】)及び解決しようとする課題(【0007】)が同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしているとともに、同条5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正後発明
上記「1」「(2)本件補正後の特許請求の範囲」の請求項1における「該バインダー樹脂」は、意味が不明であるが、本件補正後の特許請求の範囲の請求項3等の記載により、「該バインダー樹脂」との記載は、「防眩層に含まれるバインダー樹脂」であることが明らかであるので、本件補正後発明は、次のとおりのものであると認定した。

「 防眩フィルムと、画像表示セルとを備え、
該防眩フィルムと画像表示セルとのギャップが、100μm〜700μmであり、
該防眩フィルムが、
透明基材と、該透明基材の少なくとも一方の面に配置された防眩層と、前記透明基材と前記防眩層との間に形成され、該透明基材を構成する材料の少なくとも一部および/または該防眩層に含まれるバインダー樹脂の少なくとも一部とを含む、中間層とを備え、
該防眩層の該透明基材とは反対側の表面が、凹凸面であり、
該凹凸面の平均間隔Smが、150μm〜350μmであり、
該凹凸面の平均傾斜角θaが、0.1°〜2.5°であり、
該凹凸面の算術平均表面粗さRaが、0.05μm〜0.5μmであり、
該中間層の厚みが、該防眩層の厚みに対して、27%〜123%である、
画像表示装置。」

(2)引用文献及び引用発明
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用され、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2013−33240号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】
透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有する防眩性フィルムであって、
前記防眩層が、樹脂、粒子およびチキソトロピー付与剤を含む防眩層形成材料を用いて形成されており、
前記防眩層が、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤が凝集することによって、前記防眩層の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、
前記凸状部を形成する凝集部において、前記粒子が、前記防眩層の面方向に、複数集まった状態で存在することを特徴とする防眩性フィルム。
・・・中略・・・
【請求項8】
前記透光性基材と前記防眩層との間に、前記樹脂が前記透光性基材に浸透して形成された浸透層を有していることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の防眩性フィルム。
【請求項9】
偏光子および防眩性フィルムを有する偏光板であって、
前記防眩性フィルムが、請求項1から8のいずれか一項に記載の防眩性フィルムであることを特徴とする偏光板。
・・・中略・・・
【請求項11】
偏光板を備える画像表示装置であって、
前記偏光板が、請求項9記載の偏光板であることを特徴とする画像表示装置。」

(イ)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性フィルム、偏光板、画像表示装置および防眩性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防眩性フィルムは、陰極管表示装置(CRT)、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)およびエレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の、様々な画像表示装置において、外光の反射や像の映り込みによるコントラストの低下を防止するために、ディスプレイ表面に配置される。ディスプレイの最表面に防眩性フィルムを用いる場合には、明るい環境下での使用では光の拡散により黒表示の画像が白っぽくなる「白ボケ」という問題がある。この白ボケは防眩性フィルムの防眩性(拡散性)を落とすことで対応可能であるが、トレードオフとして映り込み防止が損なわれ本来の機能を低下させることになる。このように、防眩性の向上と白ボケ改善は、一般的に相反関係にあるとされているが、これらの特性を両立させるための、種々の提案がなされている。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
・・・中略・・・
【0012】
そこで、本発明は、粒子の凝集を利用して防眩層を形成した防眩性フィルムであり、防眩性と、白ボケの防止とを両立した優れた表示特性を有するとともに、外観欠点となる防眩層表面の突起状物の発生を防止して製品の歩留まりを向上させた防眩性フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。さらには、この防眩性フィルムを用いた偏光板および画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の防眩性フィルムは、透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有する防眩性フィルムであって、
前記防眩層が、樹脂、粒子およびチキソトロピー付与剤(チキソ剤、thixotropic agent)を含む防眩層形成材料を用いて形成されており、
前記防眩層が、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤が凝集することによって、前記防眩層の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、
前記凸状部を形成する凝集部において、前記粒子が、前記防眩層の面方向に、複数集まった状態で存在することを特徴とする。
【0014】
本発明の偏光板は、偏光子および防眩性フィルムを有する偏光板であって、前記防眩性フィルムが、前記本発明の防眩性フィルムであることを特徴とする。
・・・中略・・・
【0016】
本発明の画像表示装置は、偏光板を備える画像表示装置であって、前記偏光板が前記本発明の偏光板であることを特徴とする。
・・・中略・・・
【発明の効果】
【0018】
本発明の防眩性フィルムおよびその製造方法によれば、防眩性と、白ボケの防止とを両立した優れた表示特性を有するとともに、粒子の凝集を利用して防眩層を形成しているにもかかわらず、外観欠点となる防眩層表面の突起状物の発生を防止して製品の歩留まりを向上させることができる。さらには、この防眩性フィルムや、この防眩性フィルムを有する偏光板を用いた画像表示装置は、表示特性が優れたものになる。
・・・中略・・・
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記チキソトロピー付与剤が、有機粘土、酸化ポリオレフィンおよび変性ウレアからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
・・・中略・・・
【0026】
つぎに、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の記載により制限されない。
【0027】
本発明の防眩性フィルムは、透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有するものである。前記透光性基材は、特に制限されないが、例えば、透明プラスチックフィルム基材等があげられる。
【0028】
前記透明プラスチックフィルム基材は、特に制限されないが、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下のもの)が好ましく、例えば、特開2008−90263号公報に記載の透明プラスチックフィルム基材があげられる。前記透明プラスチックフィルム基材としては、光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。本発明の防眩性フィルムは、例えば、保護フィルムとして偏光板に使用することもでき、この場合には、前記透明プラスチックフィルム基材としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン等から形成されたフィルムが好ましい。
・・・中略・・・
【0029】
本発明において、前記透明プラスチックフィルム基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、強度、取り扱い性などの作業性および薄層性などの点を考慮すると、10〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは20〜300μmの範囲であり、最適には、30〜200μmの範囲である。前記透明プラスチックフィルム基材の屈折率は、特に制限されない。前記屈折率は、例えば、1.30〜1.80の範囲であり、好ましくは、1.40〜1.70の範囲である。
【0030】
前記防眩層は、前記樹脂、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤を含む防眩層形成材料を用いて形成される。前記樹脂は、例えば、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線や光で硬化する電離放射線硬化性樹脂があげられる。前記樹脂として、市販の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能である。
・・・中略・・・
【0044】
前記防眩層の厚み(d)は、特に制限されないが、3〜12μmの範囲内にあることが好ましい。前記防眩層の厚み(d)を、前記範囲とすることで、例えば、防眩性フィルムにおけるカールの発生を防ぐことができ、搬送性不良等の生産性の低下の問題を回避できる。また、前記厚み(d)が前記範囲にある場合、前記粒子の重量平均粒径(D)は、前述のように、2.5〜10μmの範囲内にあることが好ましい。前記防眩層の厚み(d)と、前記粒子の重量平均粒径(D)とが、前述の組み合わせであることで、さらに防眩性に優れる防眩性フィルムとすることができる。前記防眩層の厚み(d)は、より好ましくは、3〜8μmの範囲内である。
・・・中略・・・
【0048】
本発明の防眩性フィルムにおいて、透光性基材が樹脂等から形成されている場合、前記透光性基材と防眩層との界面において、浸透層を有していることが好ましい。前記浸透層は、前記防眩層の形成材料に含まれる樹脂成分が、前記透光性基材に浸透して形成される。浸透層が形成されると、透光性基材と防眩層との密着性を向上させることができ、好ましい。前記浸透層は、厚みが0.2〜3μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜2μmの範囲である。例えば、前記透光性基材がトリアセチルセルロースであり、前記防眩層に含まれる樹脂がアクリル樹脂である場合には、前記浸透層を形成させることができる。前記浸透層は、例えば、防眩性フィルムの断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することで、確認することができ、厚みを測定することができる。
【0049】
本発明の防眩性フィルムでは、このような浸透層を有する防眩性フィルムに適用した場合であっても、防眩性と、白ボケの防止とを両立した所望するなだらかな表面凹凸形状を容易に形成することができる。前記浸透層は、前記防眩層との密着性が乏しい透光性基材であるほど、密着性の向上のため、厚く形成することが好ましい。
・・・中略・・・
【0063】
本発明の防眩性フィルムは、前記防眩層において、最大径が200μm以上の外観欠点が前記防眩層の1m2あたり1個以下であることが好ましい。より好ましくは、前記外観欠点が無いことである。
【0064】
本発明の防眩性フィルムは、へイズ値が0〜10%の範囲内であることが好ましい。前記ヘイズ値とは、JIS K 7136(2000年版)に準じた防眩性フィルム全体のヘイズ値(曇度)である。前記ヘイズ値は、0〜5%の範囲がより好ましく、さらに好ましくは、0〜3%の範囲である。
・・・中略・・・
【0065】
本発明の防眩性フィルムは、前記防眩層表面の凹凸形状において、JIS B 0601(1994年版)に規定される算術平均表面粗さRaが0.02〜0.3μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.2μmの範囲である。防眩性フィルムの表面における外光や像の映り込みを防ぐためには、ある程度の表面の荒れがあることが好ましいが、Raが0.02μm以上あることで前記映り込みを改善することができる。前記Raが上記範囲にあると、画像表示装置等に使用したときに、斜め方向から見た場合の反射光の散乱が抑えられ、白ボケが改善されるとともに、明所でのコントラストも向上させることができる。
【0066】
前記凹凸形状は、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定した表面の平均凹凸間距離Sm(mm)が0.05〜0.4の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.05〜0.3の範囲、さらに好ましくは0.08〜0.3の範囲、最も好ましくは、0.8〜0.25の範囲である。前記範囲とすることで、例えば、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できる防眩性フィルムとすることができる。
【0067】
本発明の防眩性フィルムは、前記防眩層表面の凹凸形状において、平均傾斜角θa(°)が0.1〜1.5の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0の範囲である。ここで、前記平均傾斜角θaは、下記数式(1)で定義される値である。前記平均傾斜角θaは、例えば、後述の実施例に記載の方法により測定される値である。
平均傾斜角θa=tan−1Δa (1)
【0068】
前記数式(1)において、Δaは、下記数式(2)に示すように、JIS B 0601(1994年度版)に規定される粗さ曲線の基準長さLにおいて、隣り合う山の頂点と谷の最下点との差(高さh)の合計(h1+h2+h3・・・+hn)を前記基準長さLで割った値である。前記粗さ曲線は、断面曲線から、所定の波長より長い表面うねり成分を位相差補償形高域フィルタで除去した曲線である。また、前記断面曲線とは、対象面に直角な平面で対象面を切断したときに、その切り口に現れる輪郭である。
Δa=(h1+h2+h3・・・+hn)/L (2)
【0069】
Ra、Smおよびθaがすべて、上記範囲にあると、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できる防眩性フィルムとすることができる。
・・・中略・・・
【0072】
本発明の防眩性フィルムの製造方法は、特に制限されず、いかなる方法で製造されてもよいが、例えば、前記本発明の防眩性フィルムの製造方法により製造できる。前記本発明の防眩性フィルムの製造方法により製造された防眩性フィルムは、上述の本発明の防眩性フィルムと同様の特性を備えていることが好ましい。本発明の防眩性フィルムは、具体的には、例えば、前記樹脂、前記粒子、前記チキソトロピー付与剤および溶媒を含む防眩層形成材料(塗工液)を準備し、前記防眩層形成材料(塗工液)を前記透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材の少なくとも一方の面に塗工して塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させて前記防眩層を形成することにより、製造できる。本発明の防眩性フィルムの製造においては、金型による転写方式や、サンドブラスト、エンボスロールなどの適宜な方式で凹凸形状を付与する方法などを、併せて用いることもできる。
・・・中略・・・
【0074】
透光性基材として、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)を採用して浸透層を形成する場合は、TACに対する良溶媒が好適に使用できる。その溶媒としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノンなどをあげることができる。
・・・中略・・・
【0083】
以上のようにして、透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材の少なくとも一方の面に、前記防眩層を形成することにより、本発明の防眩性フィルムを製造することができる。
・・・中略・・・
【0091】
本発明の防眩性フィルムは、通常、前記透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材側を、粘着剤や接着剤を介して、LCDに用いられている光学部材に貼り合せることができる。なお、この貼り合わせにあたり、前記透光性基材表面に対し、前述のような各種の表面処理を行ってもよい。
【0092】
前記光学部材としては、例えば、偏光子または偏光板があげられる。偏光板は、偏光子の片側または両側に透明保護フィルムを有するという構成が一般的である。偏光子の両面に透明保護フィルムを設ける場合は、表裏の透明保護フィルムは、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置される。また、偏光板は、2枚の偏光板の吸収軸が互いに略直交するように配置される。
【0093】
つぎに、本発明の防眩性フィルムを積層した光学部材について、偏光板を例にして説明する。本発明の防眩性フィルムを、接着剤や粘着剤などを用いて偏光子または偏光板と積層することによって、本発明の機能を有した偏光板を得ることができる。
【0094】
前記偏光子としては、特に制限されず、各種のものを使用できる。前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等があげられる。
【0095】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、位相差値の安定性などに優れるものが好ましい。前記透明保護フィルムを形成する材料としては、例えば、前記透明プラスチックフィルム基材と同様のものがあげられる。
【0096】
前記、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載の高分子フィルムがあげられる。前記高分子フィルムは、前記樹脂組成物を、フィルム状に押出成型することにより製造できる。前記高分子フィルムは、位相差が小さく、光弾性係数が小さいため、偏光板等の保護フィルムに適用した場合には、歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0097】
前記透明保護フィルムは、偏光特性や耐久性などの点から、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂製のフィルムおよびノルボルネン系樹脂製のフィルムが好ましい。前記透明保護フィルムの市販品としては、例えば、商品名「フジタック」(富士フイルム社製)、商品名「ゼオノア」(日本ゼオン社製)、商品名「アートン」(JSR社製)などがあげられる。前記透明保護フィルムの厚みは、特に制限されないが、強度、取扱性等の作業性、薄層性等の点より、例えば、1〜500μmの範囲である。
【0098】
前記防眩性フィルムを積層した偏光板の構成は、特に制限されないが、例えば、前記防眩性フィルムの上に、透明保護フィルム、前記偏光子および前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよいし、前記防眩性フィルム上に、前記偏光子、前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよい。
【0099】
本発明の画像表示装置は、本発明の防眩性フィルムを用いる以外は、従来の画像表示装置と同様の構成である。例えば、LCDの場合、液晶セル、偏光板等の光学部材、および必要に応じ照明システム(バックライト等)等の各構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により製造できる。
【0100】
本発明の画像表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等である。」

(ウ)「【実施例】
・・・中略・・・
【0103】
(表面形状測定)
防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、松浪ガラス工業(株)製のガラス板(厚み1.3mm)を粘着剤で貼り合わせ、高精度微細形状測定器(商品名;サーフコーダET4000、(株)小坂研究所製)を用いて、カットオフ値0.8mmの条件で前記防眩層の表面形状を測定し、算術平均表面粗さRa、平均凹凸間距離Smおよび平均傾斜角θaを求めた。なお、前記高精度微細形状測定器は、前記算術平均表面粗さRaおよび前記平均傾斜角θaを自動算出する。前記算術平均表面粗さRaおよび前記平均傾斜角θaは、JIS B 0601(1994年版)に基づくものである。前記平均凹凸間距離Smは、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定した表面の平均凹凸間距離(mm)である。
【0104】
(防眩性評価)
(1)防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製、厚み2.0mm)を粘着剤で貼り合わせ、裏面の反射をなくしたサンプルを作製した。
(2)一般的にディスプレイを用いるオフィス環境下(約1000Lx)において、サンプルを蛍光灯(三波長光源)で照らし、上記で作製したサンプルの防眩性を、下記の基準で目視にて判定した。
判定基準
AA:防眩性に極めて優れ、写り込む蛍光灯の輪郭の像を残さない。
A :防眩性が良好であるが、写り込む蛍光灯の輪郭の像がわずかに残る。
B :防眩性に劣り、蛍光灯の輪郭の像が写り込む。
C :防眩性がほとんどない。
【0105】
(白ボケ評価)
(1)防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、黒色アクリル板(日東樹脂工業(株)製、厚み1.0mm)を粘着剤で貼り合わせ、裏面の反射をなくしたサンプルを作製した。
(2)一般的にディスプレイを用いるオフィス環境下(約1000Lx)にて、上記で作製したサンプルの平面に対し垂直方向を基準(0°)として60°の方向から見て、白ボケ現象を目視により観察し、下記の判定基準で評価した。
判定基準
AA:白ボケがほとんどない。
A :白ボケがあるが、視認性への影響は小さい。
B :白ボケが強く、視認性を著しく低下させる。
・・・中略・・・
【0108】
(凸状部高さ)
防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、松浪ガラス工業(株)製のガラス板(厚み1.3mm)を粘着剤で貼り合わせ、非接触式3次元表面形状測定器(商品名;Wyko、日本ビーコ(株)製)を用いて、対物レンズ10倍、測定面積595μm×452μmにて、前記防眩層の表面形状を測定した。次いで、前記領域で得られた表面形状における凸状部の中心を通る直線で断面した二次元プロファイルを得た。得られた二次元プロファイルにおける中心線(粗さ平均線)からの頂部(凸状部)の高さを、凸状部高さとして算出した。
【0109】
(外観評価)
1m2の防眩性フィルムを用意し、暗室内で蛍光灯(1000Lx)を用いて、30cmの距離から外観欠点について目視で確認した。確認された外観欠点について、目盛り付きのルーペを用いて観察し、外観欠点の大きさ(最大径)を測定し、200μm以上であるものの個数をカウントした。
【0110】
(凝集状態評価)
防眩性フィルムの面を、垂直方向から光学顕微鏡(オリンパス(株)製、「MX61L」)を用いて、半透過モードで、倍率を500倍として粒子の分布を確認した。粒子が隣り合わせになっているものを面方向に凝集しているものと判断した。
・・・中略・・・
【0112】
(実施例1)
防眩層形成材料に含まれる樹脂として、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「UV1700B」、固形分100%)80重量部、および、ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)20重量部を準備した。前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:5.0μm、屈折率:1.520)を2重量部、前記チキソトロピー付与剤として有機粘土である合成スメクタイト(コープケミカル(株)製、商品名「ルーセンタイトSAN」)を1.5重量部、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)を3重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「PC4100」、固形分10%)を0.5部混合した。なお、前記有機粘土は、トルエンで固形分が6.0%になるよう希釈して用いた。この混合物を、固形分濃度が40重量%となるように、トルエン/シクロペンタノン(CPN)混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製した。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)の粘度から算出される下記Ti値は、2.0であった。
Ti値=β1/β2
ここで、β1はHAAKE社製レオストレス6000を用いてずり速度20(1/s)の条件で測定される粘度、β2はHAAKE社製レオストレス6000を用いてずり速度200(1/s)の条件で測定される粘度である。
【0113】
透光性基材として、透明プラスチックフィルム基材(トリアセチルセルロースフィルム、富士フイルム(株)製、商品名「フジタック」、厚さ:60μm、屈折率:1.49)を準備した。前記透明プラスチックフィルム基材の片面に、前記防眩層形成材料(塗工液)を、コンマコータを用いて塗布して塗膜を形成した。そして、この塗膜が形成された透明プラスチックフィルム基材を、約30°の角度で傾斜させながら乾燥工程へと搬送した。乾燥工程において、90℃で2分間加熱することにより前記塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、前記塗膜を硬化処理して厚み7.5μmの防眩層を形成し、実施例1の防眩性フィルムを得た。得られた防眩性フィルムについて、断面のTEM観察を行い浸透層の厚みを測定した、TEM写真を図7に示す。前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
・・・中略・・・
【0115】
(実施例3)
前記粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:6.0μm、屈折率:1.52)を用いたこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例3の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.0であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0116】
(実施例4)
実施例1と同様に調製した混合物を、固形分濃度が35重量%となるように希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例4の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.0であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
・・・中略・・・
【0118】
(実施例6)
前記チキソトロピー付与剤として酸化ポリオレフィン(楠本化成(株)製、商品名「ディスパロン4200−20」)4.0重量部を用いて調製した混合物を、固形分濃度が32重量%となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)/CPN混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例6の防眩性フィルムを得た。前記酸化ポリオレフィンは、PMで固形分が6%になるよう希釈して用いた。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.7であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0119】
(実施例7)
前記チキソトロピー付与剤として変性ウレア(ビックケミ−社製、商品名「BYK410」)0.5重量部を用いて調製した混合物を、固形分濃度が45重量%となるように、メチルイソブチルケトン(MIBK)/CPN混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、防眩層形成材料(塗工液)を調製したこと以外は、実施例1と同様な方法にて、実施例7の防眩性フィルムを得た。前記変性ウレアは、MIBKで固形分が6%になるよう希釈して用いた。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.8であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
・・・中略・・・
【0121】
(実施例9)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を1.4重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例9の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.8であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0122】
(実施例10)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を1.5重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例10の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、1.9であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
【0123】
(実施例11)
前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記有機粘土を1.7重量部混合したこと以外は、実施例8と同様な方法にて、実施例11の防眩性フィルムを得た。なお、前記防眩層形成材料(塗工液)のTi値は、2.1であった。また、前記防眩性フィルムにおける浸透層の厚みは、1μmであった。
・・・中略・・・
【0131】
このようにして得られた実施例1〜14および比較例1〜4の各防眩性フィルムについて、各種特性を測定若しくは評価した。その結果を、図1〜図6および下記表1に示す。
【0132】
【表1】

(当合議体注:【表1】は、便宜上、時計回りに90°回転したものである。)
【0133】
前記表1に示すように、実施例においては、外観評価、防眩性および白ボケのすべてについて、良好な結果が得られた。一方、チキソトロピー付与剤を添加していない比較例1〜4については、外観評価において、外観欠点が認められ、比較例1、2および4では、防眩性についても、実施例よりも劣る結果となった。このように、比較例においては、上記のすべての特性について良好なものは得られなかった。
【0134】
図1(a)および図4(a)に、実施例1および比較例2で得られた防眩性フィルムの防眩層表面を観察した光学顕微鏡(半透過モード)写真を示す。図1(b)および図4(b)は、それぞれ、図1(a)および図4(a)の写真において観察される粒子の分布を示した模式図である。また、図2および図5(a)に、実施例1および比較例2で得られた防眩性フィルムの断面を観察したSEM(走査型電子顕微鏡)写真を示す。図5(b)は、図5(a)の写真において観察される粒子の分布を示した模式図である。そして、図3および図6に、実施例1および比較例2で得られた防眩性フィルムの表面形状を3次元的に示したプロファイルを示す。
・・・中略・・・
前記実施例で得られた防眩性フィルムと前記比較例で得られた防眩性フィルムとを比べると、前記実施例で得られた防眩性フィルムの表面形状は、なだらかな凹凸となっていることがわかる。このようななだらかな表面凹凸形状を実現したことにより、防眩性フィルムとして良好なものを得られることがわかる。」

イ 引用文献1に記載された発明
上記(1)によれば、引用文献1には、請求項1を引用する請求項8を引用する請求項9をさらに引用する請求項11に係る次の「画像表示装置」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 偏光板を備える画像表示装置であって、
偏光板が、偏光子および防眩性フィルムを有し、
防眩性フィルムが、透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有し、
防眩層が、樹脂、粒子およびチキソトロピー付与剤を含む防眩層形成材料を用いて形成されており、粒子およびチキソトロピー付与剤が凝集することによって、防眩層の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、凸状部を形成する凝集部において、粒子が、防眩層の面方向に、複数集まった状態で存在し、
前記透光性基材と前記防眩層との間に、前記樹脂が前記透光性基材に浸透して形成された浸透層を有している、
画像表示装置。」

ウ 引用文献5の記載
原査定の拒絶の理由において引用文献5として引用された、特開2001−272544号公報(以下「引用文献5」という。)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。
なお、下線は当合議体が付したものであり、判断等に活用した箇所を示す。

(ア)「【請求項1】 偏光子の両面に保護層が形成されてなる偏光板の少なくとも片面に接着層が形成された接着偏光板であって、前記接着層の剪断弾性率が、1×108〜1×1011Paであり、且つ、少なくとも前記接着層が存在する側の保護層の厚みが30〜60μmであることを特徴とする接着偏光板。
・・・中略・・・
【請求項4】 前記偏光板の接着層面をガラスセルの表裏面にバイアスの角度で互いにクロスニコルの方向になるように貼付し、これを(a)80℃・湿度60%の条件下で24時間放置した場合、(b)60℃・湿度90%の条件下で24時間放置した場合の、前記(a)条件並びに(b)条件下でのいずれにおける場合においても、偏光度が3%以上低下する領域が全体の面積の25%以下である前記請求項1〜3のいずれかに記載の接着偏光板。」

(イ)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶を用いた表示装置(以下、LCD表示装置と略称することがある。)に用いる偏光板に関するものであり、特に、従来より薄型でかつ、高温、高湿度環境下においても表示品質の低下が少ない偏光板に関する。
・・・中略・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
・・・中略・・・
【0007】即ち、本発明は、従来より薄型でかつ、高温、高湿度環境下においても画像表示品質の低下が少ない接着偏光板を提供する事を目的とする。」

(ウ)「【0013】
【発明の実施の形態】
・・・中略・・・また、偏光子(偏光フィルム)の厚みについては、特に限定するものではないが、15〜30μm程度の厚みの偏光フィルムを用いることが好ましい。
【0014】偏光子(偏光フィルム)の両面に設ける保護層となる透明保護フィルム素材としては、適宜な透明フィルムを用いうる。
・・・中略・・・
【0023】尚、本発明で用いる透明保護層は、本発明の目的を阻害しない限り、ハードコート処理や反射防止処理、スティッキングの防止や拡散ないしアンチグレア等を目的とした処理などを施したものであってもよい。
・・・中略・・・
【0026】
・・・中略・・・
なお上記した反射防止層やスティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、それらの層を設けたシートなどからなる光学層として透明保護層とは別体のものとして設けてもよい。」

(エ)「【0042】
【実施例】(実施例1)一軸延伸ポリビニルアルコールフイルム製25μm厚の偏光子の両側に、保護層として45μmのトリアセチルセルロースフィルムをポリビニルアルコール接着剤を用いて貼り合せ、この片側に有機溶媒(トルエン)中でイソシアネート系架橋材と混合したアクリル系感圧接着剤をロールコーターにて25μmの厚さ(乾燥後の厚み、以下同様)で塗布して接着層の剪断弾性率が6×109Paの接着偏光板を得た。総厚は140μmであり、セルと偏光子間の距離は70μmである。
【0043】この偏光板を画面の大きさとして13.3インチサイズの大きさの長方形に偏光軸が長辺に対して45°となるようにバイアスカットし、LCDガラスセルの表裏両面にクロスニコルの状態になるように貼り付け、50℃、0.5MPa、15分の条件でオートクレーブにかけた。(気泡を抜いたり、各層の密着性を向上させるため。)
このLCDセルを80℃・湿度60%の条件で24時間放置した後、5000cd/cm2のライトテーブル上に載せてISO 100のカラー写真フィルムを用いて写真撮影を行った。撮影条件は絞り5.6、シャッター速度10秒であった。その写真を現像し、白く偏光解消された部分(偏光板の周辺部近傍が白く偏光解消される)の面積を積算したところ全体の面積の21.5%であった。そしてその後、この白く偏光解消された部分の偏光度を測定すると試験前と比べて3%以上低下している部分が白く写真撮影されていたことが分かった。
【0044】(実施例2)実施例1と同じLCDセルを60℃・湿度90%の条件で24時間放置した後、実施例1と同じ手法で写真撮影を行い、白く偏光解消された部分の面積を積算したところ全体の面積の21.9%であった。」

エ 引用文献5に記載された技術的事項
上記ウ(イ)によれば、引用文献5には、液晶を用いた表示装置に用いる偏光板に関し、特に、従来より薄型でかつ、高温、高湿度環境下においても表示品質の低下が少ない偏光板の発明が記載されている(【0001】)。また、偏光板においては、偏光子の両面に設ける透明保護層とは別体のものとしてアンチグレア層を設けてもよいことが記載されている(【0026】)。
さらに、上記ウ(エ)によれば、引用文献5には、実施例1及び2として、セル側から順に、接着層(厚さ25μm)、保護層(厚さ45μm)、偏光子(厚さ25μm)、保護層(厚さ45μm)からなる、総厚140μmの接着偏光板が、LCDガラスセルの表裏面にクロスニコルの状態になるように貼り付けられた、LCDセルであって、60℃・湿度90%の条件で24時間放置した後、偏光解消された部分の面積を積算したところ全体の面積の21.9%であるLCDセルが記載されている。

(3)対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。

ア 透明基材、防眩層
引用発明の「防眩性フィルム」は、「透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有し、防眩層が、樹脂、粒子およびチキソトロピー付与剤を含む防眩層形成材料を用いて形成されており、粒子およびチキソトロピー付与剤が凝集することによって、防眩層の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、凸状部を形成する凝集部において、粒子が、防眩層の面方向に、複数集まった状態で存在する」。
上記構成からみて、引用発明の「防眩層」は、透光性基材の少なくとも一方の面に形成されたといえる。また、引用発明の「防眩層の表面」とは、「透光性基材」とは反対側の面のことである。また、引用発明において「防眩層の表面に凸状部」が形成されていることから、防眩層の表面は凹凸面であるといえる。
そうしてみると、引用発明の「透光性基材」及び「防眩層」は、それぞれ本件補正後発明の「透明基材」及び「防眩層」に相当する。また、引用発明の「防眩層」は、本件補正後発明の「防眩層」の「該透明基材の少なくとも一方の面に配置された」及び「該透明基材とは反対側の表面が、凹凸面であり」との要件を満たす。

イ バインダー樹脂、中間層
引用発明の「浸透層」は、「前記透光性基材と前記防眩層との間に、前記樹脂が前記透光性基材に浸透して形成された」ものである。
上記アの構成及び上記構成からみて、引用発明の「樹脂」は、防眩層に含まれるものである。また、引用発明の「浸透層」は、透光性基材と防眩層との間に形成され、樹脂の少なくとも一部を含むといえる。
そうしてみると、引用発明の「樹脂」及び「浸透層」は、それぞれ、本件補正後発明の「バインダー樹脂」及び「中間層」に相当する。また、引用発明の「浸透層」は、本件補正後発明の「中間層」の「前記透明基材と前記防眩層との間に形成され、該透明基材を構成する材料の少なくとも一部および/または該防眩層に含まれるバインダー樹脂の少なくとも一部を含む」との要件を満たす。

ウ 防眩フィルム
引用発明の「防眩性フィルム」は、「透光性基材の少なくとも一方の面に、防眩層を有し」、「前記透光性基材と前記防眩層との間に、前記樹脂が前記透光性基材に浸透して形成された浸透層を有している」。
上記構成及び「防眩層」の上記アで述べた組成から理解される機能からみて、引用発明の「防眩性フィルム」は、本件補正後発明の「防眩フィルム」に相当する。
また、上記ア及びイ並びに上記の点を総合すると、引用発明の「防眩性フィルム」は、本件補正後発明の「防眩フィルム」の「透明基材と」、「防眩層と」、「中間層とを備え」との要件を満たす。

エ 画像表示装置
引用発明は、「偏光板を備える画像表示装置であ」る。
上記ア〜ウ及び上記構成を総合すると、引用発明の「画像表示装置」は、その文言どおり、本件補正後発明の「画像表示装置」に相当する。また、引用発明の「画像表示装置」は、本件補正後発明の「画像表示装置」と、「防眩フィルム」「を備え」との点で共通する。

(4)一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「 防眩フィルムを備え、
該防眩フィルムが、
透明基材と、該透明基材の少なくとも一方の面に配置された防眩層と、前記透明基材と前記防眩層との間に形成され、該透明基材を構成する材料の少なくとも一部および/または該防眩層に含まれるバインダー樹脂の少なくとも一部を含む、中間層とを備え、
該防眩層の該透明基材とは反対側の表面が、凹凸面である、
画像表示装置。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
「画像表示装置」が、本件補正後発明は、「防眩フィルムと、画像表示セルとを備え」、「防眩フィルムと画像表示セルとのギャップが、100μm〜700μmであ」るのに対して、引用発明は、画像表示セルを備えるかどうかが明らかでなく、このように特定されていない点。

(相違点2)
「中間層」が、本件補正後発明は、「該中間層の厚みが、該防眩層の厚みに対して、27%〜123%である」るのに対して、引用発明は、「浸透層」の厚みは明らかでない点。

(相違点3)
「凹凸面」が、本件補正後発明は、「平均間隔Smが、150μm〜350μmであり」、「平均傾斜角θaが、0.1°〜2.5°であり」、「算術平均表面粗さRaが、0.05μm〜0.5μmである」のに対して、引用発明は、「平均間隔Sm」、「平均傾斜角θa」及び「算術平均粗さRa」が特定されていない点。

(5)判断
ア 相違点1について
引用発明は、「偏光板を備える画像表示装置であ」るところ、引用文献1の【0091】及び【0092】には、それぞれ、「本発明の防眩性フィルムは、通常、前記透明プラスチックフィルム基材等の前記透光性基材側を、粘着剤や接着剤を介して、LCDに用いられている光学部材に貼り合せることができる。」及び「前記光学部材としては、例えば、偏光子または偏光板があげられる。偏光板は、偏光子の片側または両側に透明保護フィルムを有するという構成が一般的である。・・・偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置される。また、偏光板は、2枚の偏光板の吸収軸が互いに略直交するように配置される。」と記載されている。上記記載から、引用文献1には、偏光子の両面に透明保護フィルムを有する偏光板が液晶セルの両側に配置されるLCDが記載されているといえる。そうすると、引用発明において、液晶セル(本件補正後発明の「画像表示セル」に相当。)を備えるように構成することに何ら格別の困難性はない。
次に、引用文献1の【0100】には、「本発明の画像表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等である。」と記載されている。また、車載用機器の用途においては、高温多湿、振動環境下での信頼性及び堅牢性が求められることは技術常識である。
ここで、例えば、上記(2)エに示したとおり、引用文献5には、高温、高湿度環境下(60℃・湿度90%の条件で24時間放置)において、表示品質の信頼性が求められるLCDセルにおいて、「アンチグレア層」(本件補正後発明の「防眩フィルム」に相当。)と「LCDガラスセル」(本件補正後発明の「画像表示セル」に相当。)とのギャップが接着偏光板の総厚140μmであるLDCセル(本件補正後発明の「画像表示装置」に相当。)が記載されており、上記相違点1に係る「100μm〜700μm」という要件を満たす画像表示装置は、先の出願前において一般的なものとして当業者に知られていたことが理解される。
そうしてみると、引用発明の「画像表示装置」を「車載用機器」として具体化しようとする当業者が、引用発明における「画像表示装置」を、相違点1に係る構成を備えた「画像表示装置」とすることは容易に想到し得たことである。
(当合議体注:液晶セル表面から防眩性フィルムまでの距離は、「携帯機器」のように特に薄型化が求められるものでない限り、100μmを超えると考えられ、また、700μmにまで厚くする必要もないと考えられる。)

なお、念のため付言すると、本件補正後発明の「防眩フィルムと画像表示セルとのギャップ」は、その文言どおり解釈すれば、前記ギャップは防眩フィルムの構成要素である「透明基材」の厚さを含まないものである。これに対して、本件明細書の【0069】における、「防眩フィルムにおける防眩層と画像表示セルとのギャップXは、好ましくは100μm〜700μmである。」(下線は当合議体で付与した。)との記載及び本件の図3の記載によれば、防眩層と画像表示セルとのギャップは透明基材の厚さを含むとの解釈もあり得る。
しかしながら、このような解釈を採用したとしても、引用文献1の【0029】には、「本発明において、前記透明プラスチックフィルム基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、強度、取り扱い性などの作業性および薄層性などの点を考慮すると、10〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは20〜300μmの範囲であり、最適には、30〜200μmの範囲である。」と記載されている。上記記載によれば、引用発明の「透光性基材」において想定されている厚さは最大でも500μm程度といえる。したがって、ギャップを引用文献5に記載された接着偏光板の総厚140μmに透光性基材の厚さを加えても、本件補正後発明の「100μm〜700μm」の範囲内である。
そうしてみると、本件補正後発明の「防眩フィルムと画像表示セルとのギャップ」が透明基材の厚さを含むか否かは、上記相違点1の判断に影響を及ぼすものではない。

イ 相違点2について
引用文献1の【0044】及び【0048】には、それぞれ、「前記防眩層の厚み(d)は、特に制限されないが、3〜12μmの範囲内にあることが好ましい。」及び「前記浸透層は、厚みが0.2〜3μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜2μmの範囲である。」と記載されている。仮に、浸透層及び防眩層のそれぞれの中央値をとると、7.5((12-3)/2+3)μm、1.6((3-0.2)/2+0.2)μmとなる。この場合、浸透層の厚みの防眩層の厚みに対する比は、1.6/7.5=0.21であるから21%となり、浸透層の厚みが防眩層の厚みに対して上記相違点2に係る範囲の下限を下回るものである。
しかしながら、引用文献1の【0049】には、「前記浸透層は、前記防眩層との密着性が乏しい透光性基材であるほど、密着性の向上のため、厚く形成することが好ましい。」と記載されている。そうしてみると、引用発明の「浸透層」の厚みを上記【0049】の示唆にならって密着性をより重視して浸透層の厚みを0.2〜3μmの範囲内で厚めに設計することは、当業者がなし得る事項である。この場合、例えば、浸透層の厚みを2.1μmとすると、浸透層の厚みの防眩層の厚みに対する比は、2.1/7.5=0.28であるから、28%となる。
次に、相違点2に係る本件補正後発明の数値範囲(27%〜123%)の臨界的意義について検討する。本件明細書には(実施例(【0073】、【0074】及び【0096】【表1】)として、防眩層の厚み6.3μmに対して中間層の厚み1.7μmの組み合わせ以外の記載はない。また、比較例についてみても、算術平均粗さRa、平均凹凸間距離Sm、平均傾斜角度θa等が本件補正後発明の範囲外のものであって前提が異なるものである。したがって、本件明細書には、上記数値範囲の臨界的意義を実証したと認めるに足りる記載はない。そうすると、中間層の厚みの防眩層の厚みに対する数値範囲の上限及び下限に臨界的意義は認められない。
そうしてみると、引用発明において、浸透層の厚みを防眩層の厚みに対して、上記相違点2に係る範囲内とすることは、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。
したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本件補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
引用文献1の【0065】〜【0068】には、凹凸面の平均間隔Sm、平均傾斜角θa、算術平均表面粗さRaについて、好ましい数値範囲が記載され、さらに、【0069】には、「Ra、Smおよびθaがすべて、上記範囲にあると、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できる防眩性フィルムとすることができる。」と記載されている。さらに、引用文献1の【0132】【表1】には、実施例3〜4、6〜7、9〜11として、上記Sm、θa及びRa全てが、相違点3に係る数値範囲を満たす防眩性フィルムが記載されている。
したがって、上記記載に接した当業者が、引用発明において、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できる防眩性フィルムとするために、相違点3に係る構成を採用することは容易に想到し得たことである。

(6)本願発明の効果について
本願発明の凹凸面の効果に関して、本件出願の明細書の【0009】には、「本発明によれば、凹凸面を有する防眩層を備え、該凹凸面が特定の平均間隔Sm、平均傾斜角θaおよび算術平均表面粗さRaを有することにより、防眩性および透明性を維持しつつ、さらに、ギラツキを抑制し得る防眩フィルムを提供することができる。特に、本発明の防眩フィルムは、高精細化と耐熱性とが求められる画像表示装置において、特に有用である。」と記載されている。また、本願発明の中間層の効果に関して、本件出願の明細書の【0064】及び【0065】には、それぞれ、「本発明においては、防眩層を形成した際に形成される上記中間層の厚みが厚くなりすぎないよう、上記比率に制御することにより、ギラツキ抑制効果がより高い防眩フィルムを得ることができる。本発明の防眩フィルムは、高精細な画像表示装置に適用しても、優れたギラツキ抑制効果を発現し得る。また、本発明の防眩フィルムは、防眩層の内部ヘイズを比較的小さくしても、ギラツキが生じ難く、そのため、透明性に優れる。さらに、防眩層の厚みに対する中間層の厚みの比率を123%以下とすることにより、耐擦傷性に優れる防眩層が形成され得る。」及び「また、防眩層の厚みに対する中間層の厚みの比率を3%以上(より好ましくは10%以上)とすることにより、防眩層中で上記粒子が分散性よく(凝集が少ない状態で)存在し得、その結果、ギラツキを抑制し得る防眩フィルムを得ることができる。」と記載されている。さらに、本願発明のギャップの効果に関して、本件出願の明細書の【0069】には、「比較的厚いガラス基板を備え、ギャップXが100μm以上であれば、耐熱性および強度に優れる画像表示装置を得ることができる。・・・ガラス基板を厚くすることにより、耐熱性・強度向上の効果が顕著となる。本発明の防眩フィルムは、該ギャップXが大きい場合にも、ギラツキを抑制することができるため、該防眩フィルムを用いれば、耐熱性・強度向上とギラツキ抑制とを両立することができる。」と記載されている。
しかしながら、このような効果は、先の出願当時本願発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかったものではなく、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものでもない。

(7)請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書の4頁において、「本願発明は、防眩フィルムと画像表示セルとのギャップが大きい画像表示装置(例えば、耐熱性が求められる車載用途の画像表示装置)において、防眩フィルム起因のギラツキが顕著であるという課題を、新たに見いだしてなされた発明です。そして、本願発明は、特定の表面形状を有する防眩フィルムを用いることで、上記新規な課題を解決することを特徴とします。」(以下「主張1」という。)、また、審判請求書の4〜5頁において、「本願発明においては、「中間層の厚みが、防眩層の厚みに対して、27%〜123%である」であることにより、ギラツキ抑制効果がより高く、かつ、耐擦傷性に優れる防眩フィルムを得ることができ、さらには、白ボケ防止および防眩性に優れる画像表示装置を得ることができます(出願当初の0064段、0096段)。このような効果は、単に密着性向上を目的として浸透層を形成することしか記載していない上記引用文献からは予期し得ない効果です。すなわち、本願発明は、単に密着性向上を目的として浸透層を形成することしか記載せず、また、中間層の厚みの防眩層の厚みに対する比を本願のごとく特定することを記載していない上記引用文献に基づいて、容易にできた発明ではありません。」(以下「主張2」という。)と主張する。

イ 主張1について、一般に、引用発明とその他の発明及び周知技術等との間で共通する課題があれば、当該課題は動機付けになり得るのであって、動機付けになり得る課題が、請求人が認識する、本願発明が解決しようとする課題と同一である必要は必ずしもない。
これを本件について検討すると、確かに、引用文献5はもとより、いずれの文献にも、ギャップが大きい画像表示装置において、ギラツキが顕著であるという課題は記載されていない。しかしながら、以下に示すとおり、当業者が、ギャップXの増加に伴うギラツキの増大を認識していなければ、引用文献1及び5を組み合わせることはできない理由はない。
すなわち、引用発明の「画像表示装置」は、携帯電話のように、薄型化ないし耐折り曲げ性が重視される用途(ギャップが小さくても良い用途)から、車載用途のようにも、信頼性ないし堅牢性が重視される用途(ギャップが大きいことが好ましい用途)までの広範な範囲の用途を想定し、防眩性ないし白ぼけ抑制等という課題を解決することを想定したものである。同時に、引用文献1のいずれの記載をみても、引用発明の「画像表示装置」は、「100μm〜700μm」の範囲外となるような特別に小さな又は大きなギャップを備えた画像表示装置を想定したものと理解することもできない。他方、防眩フィルムと画像表示セルとのギャップが、「100μm〜700μm」である画像表示装置が、先の出願前において一般的なものとして当業者に知られていたことは、上記(5)で述べたとおりである。
以上によれば、引用発明の「画像表示装置」の具体化を試みる当業者が、上記一般的なギャップサイズ(100μm〜700μm)の表示装置を想定する動機は十分にあるといえる。そして、当業者は、選択したギャップに応じて、凹凸面の各パラメータの値を引用文献1が示唆する範囲内で適宜調整するものと考えられる。

ウ 主張2について、引用発明とその他の発明及び周知技術等との間で共通する課題があれば、当該課題は動機付けになり得るのであって、動機付けになり得る課題が、請求人が認識する、本願発明が解決しようとする課題と同一である必要は必ずしもないことは、上記イで述べたとおりである。
また、本願発明の効果についても、上記(6)で述べたとおりである。

エ したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(8)小括
本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条7項に規定に違反するので、同法第159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記「第2 令和3年6月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定」[結論]のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明を引用する請求項9に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、本願発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明及び引用文献5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3 引用文献及び引用発明
引用文献1の記載及び引用発明並びに引用文献5の記載は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正後発明から、上記第2[理由]1の補正事項に係る事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定した本件補正後発明も、上記第2[理由]2に記載したとおり、引用文献1に記載された発明及び引用文献5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明及び引用文献5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-10 
結審通知日 2022-03-15 
審決日 2022-03-31 
出願番号 P2019-231030
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 清水 康司
井口 猶二
発明の名称 防眩フィルムおよび画像表示装置  
代理人 籾井 孝文  
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