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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1384948
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-23 
確定日 2022-05-20 
事件の表示 特願2020− 21307「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月 2日出願公開、特開2021−128202〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2020−21307号(以下「本件出願」という。)は、令和2年2月12日を出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和2年11月26日付け:拒絶理由通知書
令和3年 1月15日提出:意見書
令和3年 2月22日付け:拒絶理由通知書
令和3年 3月18日提出:意見書
令和3年 3月18日提出:手続補正書
令和3年 5月11日付け:拒絶査定
令和3年 6月23日提出:審判請求書
令和3年12月13日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」という。)
令和4年 2月9日提出:意見書
令和4年 2月9日提出:手続補正書

2 本願発明
本件出願の請求項1に係る発明は、令和4年2月9日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のものである(以下「本願発明1」という。また、請求項1〜4に記載される発明を総称して、「本願発明」ということがある。)。

「積層方向に貫通する貫通孔を有する粘着剤層付き光学積層体と画像表示素子とを有する表示装置であって、
前記粘着剤層付き光学積層体は、直線偏光層の少なくとも片面に保護層を有する偏光板を含む光学積層体と、前記光学積層体の片面に設けられた粘着剤層と、を有し、
前記直線偏光層の厚みは、10μm以下であり、
白色干渉計(VertScan、菱化システム社製)を用いて求めた、前記貫通孔の側面のうちの前記光学積層体部分の側面の最大高さSaは、2.0μm以下であり、
前記粘着剤層付き光学積層体と前記画像表示素子とは、前記粘着剤層を介して貼合されており、
前記粘着剤層付き光学積層体の前記画像表示素子側とは反対側に、貼合層及び前面板をこの順に有し、
前記貫通孔内に充填材料が充填されている、表示装置。」

3 当合議体の拒絶の理由の概要
令和3年12月13日付け拒絶理由通知書において通知した、当合議体の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

理由(進歩性)本件出願の請求項1〜4に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特許第6622439号公報
引用文献4:特開2011−253163号公報
引用文献5:特開平10−142422号公報
引用文献6:国際公開第2018/216545号
引用文献7:国際公開第2018/196149号
(当合議体注:引用文献1が主引用例であり、引用文献4〜7は周知技術を示すための文献である。)


第2 当合議体の判断
1 引用文献1の記載
当審拒絶理由で引用された、引用文献1(特許第6622439号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された文献であるところ、そこには以下の記載がある。
なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す(以下、同様である。)。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工された積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で用いられる積層フィルムは、その使用目的、デザイン性等から形状を加工することが望まれてきている。しかし、積層フィルムを加工する際には、積層フィルムにクラック、層間剥離等の欠陥が生じることが知られている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−037228号公報
【特許文献2】特開2016−030331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、切削加工による積層フィルムの層間剥離を抑制することができる、切削加工された積層フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示す切削加工された積層フィルムの製造方法を提供する。
〔1〕積層フィルムの主面に対して垂直な方向から見て渦巻き状に切削工具を相対移動させる操作を行うことにより、前記積層フィルムを切削する第1切削工程を含む、切削加工された積層フィルムの製造方法。
〔2〕前記切削工具は、回転可能な柄と外周刃とを有し、
前記外周刃は前記柄と一体となっている、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕前記第1切削工程において、前記柄が前記積層フィルムの主面に対して垂直となる状態で前記切削工具を相対移動させる操作を行う、〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕前記第1切削工程において、前記切削工具を相対移動させる操作は、前記積層フィルムの主面に対して平行な方向に行う、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕前記第1切削工程の前に、前記積層フィルムの主面に対して垂直な方向に貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔を貫通するように前記切削工具を配置する配置工程とを更に含む、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
〔6〕前記貫通孔形成工程において、前記切削工具を、前記積層フィルムの主面に対して垂直な方向に相対移動させることにより、前記貫通孔を形成する、〔5〕に記載の製造方法。
〔7〕前記切削工具は、回転可能な柄と外周刃と底刃とを有し、
前記外周刃と前記底刃とはそれぞれ前記柄と一体となっている、〔6〕に記載の製造方法。
〔8〕前記第1切削工程において、渦巻きのピッチは、0.01mm以上0.5mm以下である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の製造方法。
〔9〕前記第1切削工程により形成された切削部分を研磨する研磨工程を更に含む、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の製造方法。
〔10〕前記第1切削工程により得られた積層フィルムにおいて、前記積層フィルムの主面に対して平行な方向に前記切削工具を相対移動させて更に切削を行う第2切削工程を更に含む、〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の製造方法。
〔11〕前記積層フィルムは表示装置用フィルムである、〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の製造方法。
〔12〕前記積層フィルムは偏光板を含む、〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の製造方法。
〔13〕前記第1切削工程において、前記積層フィルムを複数枚重ねて切削する、〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、切削加工された積層フィルムの製造において、切削加工による積層フィルムの層間剥離を抑制することができる。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0008】
<切削加工された積層フィルム>
切削加工された積層フィルムは、積層フィルムの主面に対して垂直な方向に貫通する穴部を有している。該穴部は、上記切削加工によって形成されたものである。図1を参照して、穴部は、例えば円形(図1の(a))、楕円形、角丸型方形状等であってよく、穴部が端面と結合したU字形状(図1の(b))やオメガ形状(図1の(c))等の切り欠き部であってもよい。
【0009】
穴部が円形である場合、その直径は例えば1.5mm以上15mm以下であってよく、好ましくは2mm以上10mm以下である。穴部が楕円形又は角丸形方形状である場合、楕円又は角丸の曲率半径は、例えば1mm以上10mm以下であってよく、好ましくは2mm以上10mm以下である。穴部が切り欠き部である場合、切り欠き部の深さは、例えば1.5mm以上15mm以下であってよく、好ましくは2mm以上10mm以下である。
【0010】
<積層フィルム>
積層フィルムは、2以上の層が積層されたものである。積層フィルムを構成する層としては、例えば偏光子、保護フィルム、光学機能層、接着剤層、粘着剤層、セパレートフィルム、表面保護フィルム(プロテクトフィルム)等が挙げられる。積層フィルムの層構成の例を図4及び図5に示すが、積層フィルムはこれらに限定されない。図4の例において、積層フィルム100は、偏光板10と、第1粘着剤層20と、光学機能層30と、接着剤層40と、光学機能層31と、第2粘着剤層21とをこの順に有し、偏光板10は、偏光子11と保護フィルム12とを有する。図5に示すように、偏光板10は、偏光子11と、その両面に積層される保護フィルム12及び13とを有してもよい。積層フィルムは好ましくは偏光板を含む。
【0011】
[偏光板]
偏光板10は、通常、偏光子11と保護フィルムとから構成される。
偏光子11は、吸収軸に平行な振動面をもつ直線偏光を吸収し、吸収軸に直交する(透過軸と平行な)振動面をもつ直線偏光を透過する性質を有する吸収型の偏光子であることができる。偏光子11は、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルム又は延伸層、吸収異方性を有する色素を塗布し硬化させてなる層等が挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、例えば、二色性色素が挙げられる。二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。二色性有機染料には、C.I.DIRECT RED 39等のジスアゾ化合物からなる二色性直接染料、トリスアゾ、テトラキスアゾ等の化合物からなる二色性直接染料が包含される。偏光子11は、その一方の面又は両方の面に保護フィルムを接着剤又は粘着剤で貼合して偏光板10として用いることができる。
【0012】
(延伸フィルム又は延伸層である偏光子)
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムである偏光子11は、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。
【0013】
偏光子11の厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは18μm以下、より好ましくは15μm以下である。偏光子11の厚みを薄くすることは、偏光板10の薄膜化に有利である。偏光子11の厚みは、通常1μm以上であり、例えば5μm以上であってよい。偏光子11の厚みは、例えばポリビニルアルコール系樹脂フィルムの選定、延伸倍率の調節等により制御することができる。
・・・中略・・・
【0017】
保護フィルム12として、例えば熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。
熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば環状ポリオレフィン系樹脂フィルム;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等の樹脂からなる酢酸セルロース系樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂からなるポリエステル系樹脂フィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;(メタ)アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂フィルム等、当分野において公知のフィルムを挙げることができる。
【0018】
保護フィルム12の厚みは、偏光板の薄型化の観点から薄いことが好ましいが、薄すぎると強度が低下して加工性に劣る傾向があることから、好ましくは5μm以上150μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上50μm以下である。
【0019】
保護フィルム12は、例えば位相差フィルム及び輝度向上フィルム等の光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記材料からなる透明樹脂フィルムを延伸(一軸延伸または二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。
積層フィルム100が画像表示装置に配置される場合、積層フィルム100は、保護フィルム12が画像表示装置側となるように、画像表示装置に貼合することができる。
【0020】
保護フィルム12上にハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層は、保護フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両方の面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度及びスクラッチ性を向上させた保護フィルム12とすることができる。ハードコート層は、例えば紫外線硬化型樹脂の硬化層である。紫外線硬化型樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、強度を向上させるために、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は限定されることはなく、無機系微粒子、有機系微粒子、又はこれらの混合物が挙げられる。保護フィルム13としては、保護フィルム12の記載が引用される。」

ウ 「【0025】
[第1粘着剤層]
第1粘着剤層20は、偏光板10と光学機能層30との間に介在してこれらを接合する層である。第1粘着剤層20は、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等を主成分とする粘着剤組成物から構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型又は熱硬化型であってもよい。
【0026】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート化合物、グリシジル(メタ)アクリレート化合物等の、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0027】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成する2価以上の金属イオン;カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリアミン化合物;カルボキシル基との間でエステル結合を形成するポリエポキシ化合物又はポリオール;カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリイソシアネート化合物が例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0028】
第1粘着剤層20の形成は、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤に粘着剤組成物を溶解又は分散させて粘着剤液を調製し、これを積層フィルムの対象面に直接塗工して粘着剤層を形成する方式や、離型処理が施されたセパレートフィルム上に粘着剤層をシート状に形成しておき、それを偏光板の対象面に移着する方式等により行うことができる。
第1粘着剤層20の厚みは、その接着力等に応じて決定されるが、例えば1μm以上50μm以下の範囲であってよく、好ましくは2μm以上40μm以下、より好ましくは3μm以上30μm以下、さらに好ましくは3μm以上25μm以下である。
【0029】
積層フィルム100は、上記のセパレートフィルムを含み得る。セパレートフィルムは、ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等からなるフィルムであることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレートの延伸フィルムが好ましい。
【0030】
第1粘着剤層20は、任意成分、ガラス繊維、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粉や他の無機粉末からなる充填剤;顔料;着色剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;等を含むことができる。
【0031】
帯電防止剤としては、イオン性化合物、導電性微粒子、導電性高分子等を挙げることができるが、イオン性化合物が好ましく用いられる。
イオン性化合物を構成するカチオン成分は無機カチオンでも有機カチオンでもよい。
有機カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン等が挙げられ、無機カチオンとしてはリチウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。
一方、イオン性化合物を構成するアニオン成分としては、無機アニオンでも有機アニオンでもよいが、帯電防止性能に優れるイオン性化合物を与えることから、フッ素原子を含むアニオン成分が好ましい。フッ素原子を含むアニオン成分としては、ヘキサフルオロホスフェートアニオン[(PF6−)]、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン[(CF3SO2)2N−]アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン[(FSO2)2N−]アニオン等が挙げられる。
【0032】
[光学機能層]
光学機能層30,31は、所望の光学機能を付与するための、偏光子11以外の他の光学機能を有する層であってよい。光学機能層の好適な一例は位相差層である。位相差層としては、例えばλ/2の位相差を与える層、λ/4の位相差を与える層(ポジティブAプレート)及びポジティブCプレート等が挙げられる。光学機能層は、配向層及び基材を含んでいてよいし、液晶層、配向層及び基材をそれぞれ2以上有していてもよい。積層フィルム100が偏光層とλ/4の位相差を与えるフィルムとを有する場合、積層フィルム100は円偏光板であってよい。
保護フィルム12が位相差層を兼ねることもできるが、これらのフィルムとは別途に位相差層を積層することもできる。後者の場合、位相差層は、粘着剤層や接着剤層を介して偏光板10に積層することができる。
【0033】
位相差層としては、透光性を有する熱可塑性樹脂の延伸フィルムから構成される複屈折性フィルム、基材フィルム上に形成された上記の液晶層等が挙げられる。
基材フィルムは通常、熱可塑性樹脂からなるフィルムであり、熱可塑性樹脂の一例は、トリアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂である。
【0034】
積層フィルム100に含まれ得る他の光学機能性フィルム(光学部材)の例は、集光板、輝度向上フィルム、反射層(反射フィルム)、半透過反射層(半透過反射フィルム)、光拡散層(光拡散フィルム)等である。
【0035】
[接着剤層]
光学機能層30と光学機能層31とは、粘着剤層又は接着剤層40を介して接合することができる。接着剤層40は、硬化性の樹脂成分を水に溶解又は分散させた公知の水系組成物(水系接着剤を含む。)及び活性エネルギー線硬化性化合物を含有する公知の活性エネルギー線硬化性組成物(活性エネルギー線硬化性接着剤を含む。)等から構成される。
【0036】
水系組成物に含有される樹脂成分としては、ポリビニルアルコール系樹脂やウレタン樹脂等が挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂を含む水系組成物は、密着性や接着性を向上させるために、多価アルデヒド、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキザール、グリオキザール誘導体、水溶性エポキシ樹脂等の硬化性成分や架橋剤をさらに含有することができる。
ウレタン樹脂を含む水系組成物としては、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物とを含む水系組成物が挙げられる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。
【0037】
活性エネルギー線硬化性組成物は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射によって硬化する組成物である。
【0038】
活性エネルギー線硬化性組成物は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する組成物であることができ、好ましくは、かかるエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する紫外線硬化性組成物である。エポキシ系化合物とは、分子内に平均1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。エポキシ系化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
エポキシ系化合物としては、芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより得られる水素化エポキシ系化合物(脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル);脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ系化合物;脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有するエポキシ系化合物である脂環式エポキシ系化合物等が挙げられる。
【0040】
活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化性成分として、上記エポキシ系化合物の代わりに、又はこれとともにラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物を含有することができる。(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー;官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物を挙げることができる。
【0041】
活性エネルギー線硬化性組成物は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含む場合、光カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩;鉄−アレン錯体等を挙げることができる。
活性エネルギー線硬化性組成物は、(メタ)アクリル系化合物等のラジカル重合性成分を含む場合、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、チオキサントン系開始剤、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン等を挙げることができる。
【0042】
光学機能層30と光学機能層31とは、粘着剤層を介して接合されていてもよい。ここで用いられる粘着剤層としては、第1粘着剤層の記載を引用することができる。
【0043】
[第2粘着剤層]
積層フィルム100は、光学機能層31側に第2粘着剤層21を有する。第2粘着剤層21は、積層フィルム100を、画像表示素子又は他の光学部材に貼合することができる。
【0044】
第2粘着剤層21に用いられる粘着剤、粘着剤組成物、厚み及び作製方法としては、第1粘着剤層20の項において述べた説明が引用される。第2粘着剤層21に用いられるセパレートフィルムや含まれ得る任意成分についても第1粘着剤層20の説明が引用される。
【0045】
[表面保護フィルム(プロテクトフィルム)]
積層フィルム100は、その表面(典型的には、偏光板の保護フィルムの表面)を保護するための表面保護フィルムを含むことができる。表面保護フィルムは、例えば画像表示素子や他の光学部材に偏光板が貼合された後、それが有する粘着剤層ごと剥離除去される。
【0046】
表面保護フィルムは、例えば基材フィルムとその上に積層される粘着剤層とで構成される。粘着剤層については上述の記述が引用される。
基材フィルムを構成する樹脂は、例えば、ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;の熱可塑性樹脂であることができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂である。
【0047】
表面保護フィルムの厚みとしては、特に限定されないが、20μm以上200μm以下の範囲とすることが好ましい。基材の厚さが20μm以上であると、積層フィルム100に強度が付与され易くなる傾向にある。」

エ 「【0048】
<切削加工された積層フィルムの製造方法>
本発明に係る切削加工された積層フィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも称する。)は、積層フィルムの主面に対して垂直な方向から見て渦巻き状に切削工具を相対移動させる操作を行うことにより、前記積層フィルムを切削する第1切削工程を含む。積層フィルムの主面とは、積層フィルムの厚み方向に垂直な面をいう。
【0049】
[切削工具]
本発明の製造方法に用いられる切削工具は、積層フィルムを切削加工できるものであれば特に限定されないが、例えば回転可能な柄と外周刃とを有し、外周刃は柄と一体となっている切削工具が挙げられる。回転可能な柄と外周刃と底刃とを有し、外周刃と底刃はそれぞれ柄と一体となっている切削工具を用いてもよい。外周刃と底刃とが一体となっていてもよい。このような切削工具としては、エンドミル等が挙げられる。
【0050】
切削工具の外周刃及び底刃の数は、特に限定されないが、例えば1枚以上6枚以下であり、2枚、3枚又は4枚であってもよい。刃数が少ないと削りくずを排出しやすい傾向にあるが、切削工具の剛性は低下しやすい。
【0051】
切削工具の外周刃及び底刃のすくい角は、通常0°以上20°未満であり、3°以上15°未満であってもよい。すくい角が大きすぎると刃が欠けやすくなる傾向にある。
【0052】
切削工具の外周刃及び底刃の逃げ角は、例えば0°より大きく20°未満であり、3°以上15°以下としてもよい。逃げ角が0°であると積層フィルムと刃とが擦れてしまい、逃げ角が大きすぎると刃が欠けやすくなる傾向にある。
【0053】
外周刃は柄に沿ってねじれていてもよい。切削工具の外周刃のねじれ角は−75°以上75°以下であってもよく、−65°以上65°以下としてもよい。ねじれ角が大きすぎると削りくずの排出しにくい傾向にある。
【0054】
切削工具の外周刃は切削工具の回転部分の最大径を構成することが好ましい。切削工具の外周刃の直径(柄に直交する方向の最大径)は、例えば1.0mm以上10mm以下であり、好ましくは1.5mm以上8mm以下である。直径が小さすぎるとエンドミルが折れ易い傾向にあり、大きすぎると細かな切削加工が難しくなってしまう。
【0055】
切削工具の送り速度は、通常50mm/分以上5000mm/分以下であり、100mm/分以上であってもよく、好ましくは200mm/分以上3000mm/分以下である。
【0056】
また、エンドミルの外周刃及び底刃の回転速度は5000rpm以上100000rpm以下であってもよく、10000rpm以上80000rpm以下であってもよく、30000rpm以上60000rpm以下であってもよい。回転速度が遅くなると積層フィルムの層間剥離が生じやすくなる傾向があり、回転速度が速すぎると発熱して積層フィルムにダメージを与える可能性がある。
【0057】
[第1切削工程]
第1切削工程では、例えば図2の(A)に示すように、積層フィルムの主面に対して垂直な方向から見て渦巻き状に切削工具を相対移動させる操作を行うことにより、積層フィルムを切削する。
【0058】
渦巻きとは、外側に遠ざかりながら旋回する曲線を指す。渦巻きには、例えば渦の間隔、すなわち渦巻きのピッチが等間隔である渦巻き(アルキメデスの螺旋等)、渦巻きのピッチが外側にいくほど広くなる渦巻き(対数螺旋等)、渦巻きのピッチが外側にいくほど狭くなる渦巻き(放物螺旋等)等が挙げられる。渦巻きのピッチが等間隔である渦巻きは、一周以下の一定の間隔(例えば半周、1/4周等)ごとに半径が大きくなる渦巻きであってもよい。渦巻きの一周のうち一部では、渦巻きのピッチがゼロ、すなわちすでに切削された部分から新たに切削されない部分があってもよい。渦巻き状に切削工具を相対移動させる操作とは、すでに切削された切削部分の少なくとも一部において、渦巻きのピッチ幅分だけ外側を切削工具が相対移動するようにする操作である。これにより、すでに切削された切削部分の少なくとも一部において、渦巻きのピッチ幅分だけ外側の積層フィルムが切削される。
【0059】
第1切削工程における渦巻きは、1周以上であればよく、好ましくは積層フィルムの切削を行うときの少なくとも最外周が渦巻き状の相対移動により切削されている。
【0060】
本発明に従い、積層フィルムの主面に対して垂直な方向から見て渦巻き状に切削工具を相対移動させる操作を行って積層フィルムを切削すると、直線と円運動の組み合わせによる相対移動により切削した場合(図2の(B)等)に比べて、積層フィルムの層間剥離を抑制することができる。例えば積層フィルムが位相差フィルムと接着剤層又は粘着剤層とを有する場合、位相差フィルムと接着剤層又は粘着剤層との間の層間剥離を抑制することができる。更に、渦巻き状に相対移動させて切削を行うと、目的の大きさの切削部分を形成するまでにかかる時間を短くすることができる。
【0061】
従来、積層フィルムを切削すると、図3に示すような層間剥離が生じやすく、また、糊かけ、クラック等の欠陥を生じやすかった。ここで、糊かけとは、積層フィルム中の粘着剤層において、切削面に近い部分の粘着剤が欠ける状態をいう。クラックとは、積層フィルムの層に生じる亀裂をいい、偏光板又は光学機能層に生じやすい。層間剥離、糊かけ、クラック等の欠陥の種類及び欠陥が生じた層は、光学顕微鏡下での観察によって判別することができる。
【0062】
第1切削工程により形成される切削部分は、曲線部を有している。積層フィルムを円形に切削する場合、例えば中心からの半径を増大させながら渦巻き状に切削工具を相対移動させたあと、すでに切削された部分に接するまで半径を変えず最大半径のまま円形に切削工具を相対移動させると、切削された部分は円形となる。例えば半周ごとに半径が大きくなる円を描くように渦巻き状に切削工具が相対移動する場合、最後の半周を半径を変えずに円を描くように切削工具を相対移動させると、積層フィルムに円形の切削部分を形成することができる。
【0063】
切削工具が渦巻き状に相対移動する軌跡が積層フィルムの端面に接する場合、切削部分をU字形状、オメガ形状等の切り欠き部とすることができる。渦巻きのピッチは、1周のうちに広い部分と狭い部分を有していてもよく、このような繰り返しにより、切削部分を円形以外の形状(例えば楕円等)にすることもできる。
【0064】
第1切削工程において、好ましくは切削工具の外周刃が積層フィルムに接することにより積層フィルムが切削される。切削工具が回転可能な柄を有する場合、該回転可能な柄は、積層フィルムの主面に対して垂直であってもよいし、傾いていてもよいが、好ましく積層フィルムの主面に対して垂直な状態で切削工具を相対移動させる操作を行う。これにより、切削された面は、積層フィルムの主面に対して垂直となる。
【0065】
第1切削工程において、切削工具を相対移動させる操作は、通常、積層フィルムの主面に対して平行な方向に行う。該操作は、更に積層フィルムの主面に対して垂直な移動を伴っていてもよい。積層フィルムの主面に対して垂直な移動を伴う場合、例えば切削工具をらせん状に相対移動する操作が挙げられる。切削工具をらせん状に相対移動させて行う切削は、後述する貫通孔の形成を兼ねていてもよい。
【0066】
第1切削工程において、渦巻きのピッチは、例えば0.01mm以上0.5mm以下であり、好ましくは0.02mm以上0.3mm以下であり、より好ましくは0.03mm以上0.2mm以下である。渦巻きのピッチが上述の範囲内である場合、過度に時間を要することなく積層フィルムを目的の大きさに切削することができる。なお、渦巻きのピッチが大きすぎると切削された積層フィルムに欠陥が生じやすくなる傾向がある。
【0067】
第1切削工程において、積層フィルムは、一枚ずつ切削を行ってもよいし、積層フィルムを複数枚重ねた積層体とし、切削を行ってもよい。第1切削工程において、積層フィルムを複数枚重ねて切削する場合、積層体の主面に対して垂直な方向から見て渦巻き状に切削工具を相対移動させる操作を行うことにより、積層体を構成する各積層フィルムを切削できる。積層体を構成する積層フィルムの枚数は、例えば10枚以上500枚以下であってよい。積層体の厚みは、積層フィルムの積層方向において、例えば1mm以上50mm以下であってよい。
【0068】
[貫通孔形成工程]
本発明の製造方法は、積層フィルムの主面に対して垂直な方向に貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程を更に含むことが好ましい。貫通孔形成工程及び下記の配置工程は、通常、第1切削工程の前に行う。貫通孔の大きさは、切削工具を貫通孔内に配置できるように、切削工具の柄に直交する最大径と同等又はそれより大きい。
【0069】
貫通孔は、好ましくは切削工具を、積層フィルムの主面に対して垂直な方向に相対移動させることにより、形成される。例えば切削工具が回転可能な柄とそれに一体となった底刃を有する場合、切削工具を積層フィルムの主面に向かって垂直な方向に相対移動させることで、積層フィルムを底刃によって切削し、切削工具の柄に直交する最大径と同じ直径の貫通孔を形成することができる。貫通孔形成工程において、積層フィルムの主面に対して平行な方向に切削工具を相対移動させる操作を、積層フィルムの主面に垂直な方向への相対移動と同時に又は独立に行ってもよい。この操作により、切削工具の柄に直交する最大径よりも大きい貫通孔を形成することができる。積層フィルムの主面に対して平行な方向に相対移動させる操作としては、積層フィルムの主面に垂直な方向から見て切削工具が円運動する操作、直線運動する操作等が挙げられる。
【0070】
積層フィルムを複数枚重ねて積層体とし、貫通孔形成工程を行ってもよい。貫通孔形成工程において、切削工具を積層体の主面に対して垂直な方向に相対移動させることにより、積層体を構成する各積層フィルムに貫通孔を形成できる。積層フィルムを積層体として貫通孔形成工程を行う場合、貫通孔を形成した該積層体に対してその後の配置工程及び第1切削工程を行うことができる。
【0071】
貫通孔は、打ち抜き法、レーザー法等の公知の方法によって形成することもできる。上記方法によって形成された貫通孔は、切削工具の柄に直交する最大径よりも大きいことが好ましい。
【0072】
[配置工程]
本発明の製造方法は、貫通孔を貫通するように切削工具を配置する配置工程を更に含むことが好ましい。貫通孔を貫通し、切削工具の外周刃が貫通孔の内側に接するように配置してもよい。具体的には、貫通孔を形成後に、貫通孔を貫通するように切削工具を配置すればよい。U字形状、オメガ形状の切り欠き部を形成する場合、積層フィルムの主面に平行な方向に、積層フィルムを切削しながら、切削工具を相対移動させて、渦巻きの開始地点に切削工具を配置してもよい。
【0073】
切削工具により貫通孔を形成した場合は、積層フィルムの主面に対して垂直な方向に相対移動させた切削工具を抜かないことで、貫通孔を貫通するように切削工具を配置することができる。積層フィルムの主面に対して垂直な方向に切削工具を相対移動させて貫通孔を形成した後、貫通孔から垂直方向に切削工具を引き抜いて研磨クズを除き、再び貫通孔に切削工具を配置してもよい。
【0074】
積層フィルムを複数枚重ねて積層体とし、配置工程を行ってもよい。このとき、積層体を構成する各積層フィルムに形成された貫通孔を貫通するように切削工具を配置する。積層体に対して配置工程を行う場合、そのまま該積層体に対して第1切削工程を行うことができる。
【0075】
[研磨工程]
本発明の製造方法は、第1切削工程又は下記第2切削工程により形成された切削部分を研磨する研磨工程を更に含むことが好ましい。
【0076】
積層フィルムを複数枚重ねて積層体とし、研磨工程を行ってもよい。研磨工程において、積層体を研磨することにより、積層体を構成する各積層フィルムの切削部分を研磨できる。積層体に対して第1切削工程又は第2切削工程を行った後、そのまま該積層体を研磨できる。
【0077】
研磨する方法は、切削された面を滑らかにできる方法であれば特に限定されないが、研磨紙(紙やすり)、研磨布、微粒子研磨剤、砥石等で擦る研磨方法、電気研磨方法、溶剤を用いた化学研磨方法等が挙げられる。第1切削工程で用いたエンドミル等の切削工具を用いて、送り速度を落としたり、研磨量を少なくしたり、またはその両方によって、切削面を研磨してもよい。また、研磨によって、それまでの工程でついた汚れ、ほこり等を落とすこともできる。
・・・中略・・・
【0081】
<切削加工された積層フィルムの用途>
本発明の製造方法によって得られる切削加工された積層フィルムは、さまざまな表示装置に用いることができる。表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子又は発光装置を含む。表示装置としては、例えば液晶表示装置、有機EL表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(以下、無機ELともいう)表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FEDともいう)、表面電界放出表示装置(SEDともいう))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLVともいう)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMDともいう)を有する表示装置)及び圧電セラミックディスプレイ等が挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置等のいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。
【0082】
上記切削加工された積層フィルムに、更に前面板、タッチセンサパネル、背面板等を設けて、表示装置に適用することができる。
【0083】
[前面板]
前面板は、好ましくは、光を透過可能な板状体である。前面板は、1層のみから構成されてもよく、2層以上から構成されてもよい。
前面板としては、例えば、ガラス製の板状体(ガラス板、可撓性薄肉ガラス等)、樹脂製の板状体(樹脂板、樹脂シート、樹脂フィルム(ウィンドウフィルムと称する場合がある)等)が挙げられ、可撓性を示す板状体であることが好ましい。上記の中でも、樹脂フィルム等の樹脂製の板状体であることが好ましい。可撓性とは、繰返し屈曲または折り曲げが可能であることをいう。
【0084】
樹脂製の板状体としては、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)等のポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;エチレン−酢酸ビニル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエーテルイミド系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリビニルアセタール系樹脂;ポリエーテルケトン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。
中でも、可撓性、強度及び透明性の観点から、前面板を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂が好適に用いられる。
【0085】
前面板は、基材フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を設けて硬度をより向上させたフィルムであってもよい。基材フィルムとしては、上述の樹脂フィルムを用いることができる。
【0086】
ハードコート層は、基材フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両方の面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度及びスクラッチ性を向上させることができる。ハードコート層の厚みは、例えば0.1μm以上30μm以下であってよく、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0087】
ハードコート層は、例えば、紫外線硬化型樹脂の硬化層である。紫外線硬化型樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、強度を向上させるために、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、限定されることはなく、無機系微粒子、有機系微粒子、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0088】
前面板は、表示装置の前面(画面)を保護する機能を有するのみではなく、タッチセンサとしての機能、ブルーライトカット機能、視野角調整機能等を有するものであってもよい。
【0089】
前面板の厚みは、例えば20μm以上2000μm以下であってよく、好ましくは25μm以上1500μm以下、より好ましくは30μm以上1000μm以下、さらに好ましくは40μm以上500μm以下、特に好ましくは40μm以上200μm以下、なおさらには40μm以上100μm以下であってもよい。
・・・中略・・・
【0095】
[背面板]
背面板として、例えば、光を透過可能な板状体を有していてもよい。背面板は、1層のみから構成されてもよく、2層以上から構成されてもよい。
背面板としては、前面板と同様に、例えばガラス製の板状体(ガラス板、ガラスフィルム等)、樹脂製の板状体(例えば、樹脂板、樹脂シート、樹脂フィルム等)が挙げられる。
上記の中でも、積層フィルム100及びこれを含む表示装置のフレキシブル性の観点から、可撓性を示すことが好ましく、可撓性を示す樹脂製の板状体であることが好ましい。樹脂製の板状体としては、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂の具体例については、前面板についての記述が引用される。熱可塑性樹脂は、好ましくは、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等である。
【0096】
背面板は、重合性液晶化合物が塗布される基材フィルムであってもよい。
【0097】
背面板が光を透過可能な板状体である場合、その厚みは、積層フィルム100の薄型化の観点から、好ましくは15μm以上200μm以下であり、より好ましくは20μm以上150μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上130μm以下である。」

オ 「【実施例】
【0099】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0100】
(製造例1)
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み20μmのポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約4倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、40℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/7.5/100の水溶液に68℃で300秒間浸漬した。引き続き、5℃の純水で5秒間洗浄した後、70℃で180秒間乾燥して、一軸延伸されたポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向された偏光子を得た。偏光子の厚みは7μmであった。
【0101】
得られた偏光子の一方の面に、厚み50μmの環状オレフィン系樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムを、それぞれその貼合面にコロナ処理を施した後、光硬化型接着剤(エポキシ系の光硬化性接着剤)を介して接着して、偏光板を得た。
【0102】
当該偏光板が有する偏光子における熱可塑性樹脂フィルムとは反対側の面に、以下の層を貼合し、第2粘着剤層21を有しないこと以外は図4に記載の構成と同様の構成を有する厚さ17μmの積層フィルムを得た。
第1粘着剤層21:厚さ5μm
光学機能層30:液晶化合物が硬化した層及び配向膜からなるλ/2板、厚さ3μm
接着剤層40:厚さ5μm
光学機能層31:液晶化合物が硬化した層及び配向膜からなるλ/4板、厚さ3μm
【0103】
(製造例2)
偏光子の両面に熱可塑性樹脂フィルムを接着したこと、及び一方の熱可塑性樹脂フィルムに光学機能層を貼合したこと以外は製造例1と同様にして、第2粘着剤層21を有しないこと以外は図5に記載の構成と同様の構成を有する積層フィルムを得た。
【0104】
<実施例1>
積層フィルムを50枚積層し、積層体を形成した。切削には、直径が2mm、刃数2枚であるエンドミルを用いた。まず、積層体の面に対して垂直な方向にエンドミルを動かし、エンドミルの底刃で貫通孔を形成し、貫通孔を貫通するようにエンドミルを配置した(貫通孔形成工程及び配置工程)。その後、図2の(A)に示すように、エンドミルを積層体の面に対して垂直な方向から見て渦巻きとなるように相対移動させて、積層フィルムの切削を行い(第1切削工程)、直径が3mmである円形の穴部を形成した。この際、エンドミルの回転可能な柄が積層フィルムの主面に対して垂直となるように、また、エンドミルを積層フィルムの主面に対して平行な方向に相対移動させる操作を行いながら、切削を行った。渦巻きは、半周ごとに半径が0.05mm大きくなるような円運動に設定し、渦巻きのピッチは0.10mmであった。エンドミルの送り速度は500mm/分、回転速度は50000rpmであった。
【0105】
<実施例2>
第1切削工程において、エンドミルの送り速度が300mm/分であった以外は実施例1と同様にして、積層体の切削を行った。
【0106】
<実施例3>
第1切削工程において、エンドミルの送り速度が500mm/分、回転数が40000rpmであった以外は実施例1と同様にして、積層体の切削を行った。
【0107】
<実施例4>
第1切削工程において、エンドミルの送り速度が500mm/分、回転数が30000rpmであった以外は実施例1と同様にして、積層体の切削を行った。
【0108】
<比較例1>
実施例1とエンドミルの移動経路が異なる以外は、実施例1と同じようにして積層体の切削を行った。まず、積層体の面に対して垂直な方向にエンドミルを動かし、エンドミルの底刃で貫通孔を形成した。その後、図2の(B)に示すように0.10mmの直線運動と、半径が0.10mmずつ大きくなる円運動とを繰り返し、ピッチが0.10mmとなるように、切削を行い、直径3mmの円形の穴部を形成した。
【0109】
<比較例2>
直線運動の距離を0.05mm、円運動の半径を0.05mmずつ大きくし、ピッチが0.05mmとなるようにした以外は、比較例1と同様にして切削を行った。
【0110】
<比較例3>
直線運動の距離を0.15mm、円運動の半径を0.15mmずつ大きくし、ピッチが0.15mmとなるようにした以外は、比較例1と同様にして切削を行った。
【0111】
[層間剥離の測定]
積層体を積層方向におよそ3分割し、それぞれ上層、中層、下層とし、それぞれの層のおよそ中央部から1枚を選び、切削された積層フィルムの切削部分を光学顕微鏡下で観察した。生じた層間剥離量(積層フィルムの主面方向に生じた層間剥離の長さ)の最大値が80μm以下を「A」、81μm以上150μm以下を「B」、151μm以上を「C」として評価した。
【0112】
製造例1の積層フィルムを実施例1〜4並びに比較例1及び2の方法によって切削した結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
製造例2の積層フィルムを実施例1並びに比較例1及び2の方法によって切削した結果を表2に示す。
【0115】
【表2】

【0116】
製造例1の積層フィルムにおいても、製造例2の積層フィルムにおいても、比較例1及び比較例2に比べて実施例1では、層間剥離が抑制されていた。比較例1及び比較例2においては、特に直線運動を行った切削部分に層間剥離が多く見られた。本発明の製造法によれば、層間剥離がより抑制された、切削加工された積層フィルムを製造することができた。実施例1においては、比較例1及び2よりクラック及び糊かけの発生も抑制されていた。
【0117】
製造例1の積層フィルムを、実施例及び比較例1〜3に記載の方法によって切削したときの層間剥離量の最大値を図6に示す。積層フィルムは、積層体の下層から選択した。
【0118】
比較例1〜3の結果より、直線運動と円運動とを繰り返す切削方法では、ピッチが大きくなるにつれて、層間剥離が大きくなっていることがわかる。積層体の下層にある積層フィルムは、切削加工による層間剥離が生じやすい。層間剥離を抑制するためには、ピッチを小さくすることもできるが、ピッチが小さくなると、目的の大きさの穴部を 形成するまでに切削に要する時間が長くなる。本発明の製造方法によれば、ピッチが比較的大きくても層間剥離を抑制することができるため、切削時間を短くすることができる。」

カ 「【図2】(A)



キ 「【図4】



2 引用発明1
引用文献1の【0100】〜【0102】には、製造例1として、「当該偏光板が有する偏光子における熱可塑性樹脂フィルムとは反対側の面に、」「第1粘着剤層20」、「光学機能層30」、「接着剤層40」、「光学機能層31」を順に「貼合し、第2粘着剤層21を有しないこと以外は図4に記載の構成と同様の構成を有」する積層フィルムが記載されている(当合議体注:同文献【0102】の「第1粘着剤層21」が「第1粘着剤層20」の誤記であることは明らかである。)。
また、引用文献1の【0104】、【0112】、【図2】(A)には、上記製造例1の積層フィルムを、実施例1の方法で切削した「積層フィルム」が記載されている。ここで、引用文献1の【0019】、【0081】等の記載からみて、当該「積層フィルム」は画像表示素子を有する「表示装置」に用いられるものであることが理解できる。
引用文献1の上記記載から理解される、実施例1の方法で切削した製造例1の「積層フィルム」を有する「表示装置」を引用発明1とする。

「 平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み20μmのポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約4倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、40℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬し、
その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/7.5/100の水溶液に68℃で300秒間浸漬し、引き続き、5℃の純水で5秒間洗浄した後、70℃で180秒間乾燥して、一軸延伸されたポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向された厚み7μmの偏光子を得て、
偏光子は、吸収軸に平行な振動面をもつ直線偏光を吸収し、吸収軸に直交する(透過軸と平行な)振動面をもつ直線偏光を透過する性質を有する吸収型の偏光子であり、
得られた偏光子の一方の面に、厚み50μmの環状オレフィン系樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムを、それぞれその貼合面にコロナ処理を施した後、光硬化型接着剤(エポキシ系の光硬化性接着剤)を介して接着して、偏光板を得て、
当該偏光板が有する偏光子における熱可塑性樹脂フィルムとは反対側の面に、第1粘着剤層20、光学機能層30、接着剤層40、光学機能層31を貼合した積層フィルムを得て、
上記積層フィルムを50枚積層し、積層体を形成し、
直径が2mm、刃数2枚であるエンドミルを用いて、まず、積層体の面に対して垂直な方向にエンドミルを動かし、エンドミルの底刃で貫通孔を形成し、貫通孔を貫通するようにエンドミルを配置し、その後、図2の(A)に示すように、エンドミルを積層体の面に対して垂直な方向から見て渦巻きとなるように相対移動させて、積層フィルムの切削を行い(第1切削工程)、直径が3mmである円形の穴部を形成した積層フィルムを得て、
画像表示素子とを有する表示装置であって、
第1切削工程では、エンドミルの回転可能な柄が積層フィルムの主面に対して垂直となるように、また、エンドミルを積層フィルムの主面に対して平行な方向に相対移動させる操作を行いながら、切削を行い、渦巻きは、半周ごとに半径が0.05mm大きくなるような円運動に設定し、渦巻きのピッチは0.10mmであり、エンドミルの送り速度は500mm/分、回転速度は50000rpmとした、
表示装置。



3 対比
ア 偏光板
引用発明1の「偏光子」は、「吸収軸に平行な振動面をもつ直線偏光を吸収し、吸収軸に直交する(透過軸と平行な)振動面をもつ直線偏光を透過する性質を有する吸収型の偏光子」であることから技術的にみて、本願発明1の「直線偏光層」に相当する。
また、引用発明1の「偏光子」の厚みは「7μm」であるから、本願発明1の「前記直線偏光層の厚みは、10μm以下であ」るという要件を満たす。
引用発明1の「熱可塑性樹脂フィルム」は、技術的にみて、本願発明1の「保護層」に相当する(当合議体注:この点は、引用文献1の【0017】の記載からも理解できる。)。
そして、上記「熱可塑性フィルム」が「接着」された引用発明1の「偏光板」は、本願発明1の「偏光板」に相当し、本願発明1の「直線偏光層の少なくとも片面に保護層を有する」という要件を満たす。

イ 貫通孔
引用発明1の「貫通孔」は、その文言が意味するとおり、本願発明1の「貫通孔」に相当する。

ウ 光学積層体
引用発明1の「積層フィルム」は、「当該偏光板が有する偏光子における熱可塑性樹脂フィルムとは反対側の面に、第1粘着剤層20、光学機能層30、接着剤層40、光学機能層31を貼合した」構成のものであって、光学機能を有することは明らかであり、本願発明1の「光学積層体」に相当する。
また、上記アより、引用発明1の「積層フィルム」は、本願発明1の「直線偏光層の少なくとも片面に保護層を有する偏光板を含む光学積層体を有し」という要件を満たすといえ、さらに、「積層体の面に対して垂直な方向にエンドミルを動かし、エンドミルの底刃で貫通孔を形成し、貫通孔を貫通するようにエンドミルを配置し、その後、図2の(A)に示すように、エンドミルを積層体の面に対して垂直な方向から見て渦巻きとなるように相対移動させて、積層フィルムの切削を行」っていることから、本願発明1の「積層方向に貫通する貫通孔を有する」という要件を満たす。

エ 表示装置
上記ア〜エの構成を有する引用発明1の「表示装置」は、本願発明1の「表示装置」に相当し、「積層方向に貫通する貫通孔を有する粘着剤層付き光学積層体」を有するという要件を満たす。

4 一致点及び相違点
(1)一致点
上記3によれば、本願発明1と引用発明1は、次の点で一致する。

「積層方向に貫通する貫通孔を有する光学積層体を有する表示装置であって、
前記光学積層体は、直線偏光層の少なくとも片面に保護層を有する偏光板を含む光学積層体を有し、
前記直線偏光層の厚みは、10μm以下である、
表示装置。」

(2)相違点
上記3によれば、本願発明1と引用発明1は、次の点で相違又は一応相違する。

(相違点1)
本願発明1は、「積層方向に貫通する貫通孔を有する粘着剤層付き光学積層体と画像表示素子とを有する表示装置であって、」「前記光学積層体の片面に設けられた粘着剤層」を有し、「前記粘着剤層付き光学積層体と前記画像表示素子とは、前記粘着剤層を介して貼合されており、前記粘着剤層付き光学積層体の前記画像表示素子側とは反対側に、貼合層及び前面板をこの順に有」する「表示装置」であるのに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。

(相違点2)
本願発明1では、「白色干渉計(VertScan、菱化システム社製)を用いて求めた、前記貫通孔の側面のうちの前記光学積層体部分の側面の最大高さSa」が、「2.0μm以下であ」り、「前記貫通孔内に充填材料が充填されている」のに対し、引用発明1においては、「光学積層体部分の側面の最大高さSa」の値が明らかではなく、貫通孔が充填材料で充填されていない点。

5 判断
(相違点1について)
引用文献1の【0043】、【0082】〜【0089】には、積層フィルムを第2粘着剤層側で画像表示装置に貼合すること、及び、切削加工された積層フィルムに、更に前面板を設けて、表示装置に適用することが記載されている。そして、当該記載に基づいて、引用発明1の「表示装置」を、「積層方向に貫通する貫通孔を有する粘着剤層付き光学積層体と画像表示素子とを有する表示装置であって、」「前記粘着剤層付き光学積層体と前記画像表示素子とは、前記粘着剤層を介して貼合されており、前記粘着剤層付き光学積層体の前記画像表示素子側とは反対側に、貼合層及び前面板をこの順に有」する、「表示装置」とすることは当業者であれば適宜なし得た程度のことである。

(相違点2について)
引用発明1は、貫通孔の形成のために、「直径が2mm、刃数2枚であるエンドミルを用いて、まず、積層体の面に対して垂直な方向にエンドミルを動かし、エンドミルの底刃で貫通孔を形成し、貫通孔を貫通するようにエンドミルを配置し、その後、図2の(A)に示すように、エンドミルを積層体の面に対して垂直な方向から見て渦巻きとなるように相対移動させて、積層フィルムの切削を行い(第1切削工程)、直径が3mmである円形の穴部を形成し」、「第1切削工程では、エンドミルの回転可能な柄が積層フィルムの主面に対して垂直となるように、また、エンドミルを積層フィルムの主面に対して平行な方向に相対移動させる操作を行いながら、切削を行い、渦巻きは、半周ごとに半径が0.05mm大きくなるような円運動に設定し、渦巻きのピッチは0.10mmであり、エンドミルの送り速度は500mm/分、回転速度は50000rpmとした」ものである。引用文献1には、エンドミルの回転方向と旋回移動方向との関係は明記されていないものの、クラック、層間剥離等を問題にしている(【0002】〜【0004】)ことに鑑みて、引用発明1ではエンドミルの回転方向と同じ方向に旋回移動をさせているとみるのが自然である。
ここで、引用発明1の貫通孔の形成方法と本件出願の明細書の【0116】に記載される実施例1の貫通孔の形成方法とを比較すると、用いるエンドミルの直径は2μm、刃数2枚、エンドミルの回転数は50000rpmで共通しており、送り速度(本件出願の実施例1における旋回移動速度)は引用発明1の方が遅い。技術常識に鑑みると、送り速度が小さい引用発明1の方が、面粗さは小さくなるものといえる(当合議体注:送り速度が小さいほど加工面の粗さ(Sa)が小さくなることは、審判請求人の令和4年2月9日提出の意見書に記載される表の実験A、実験Cの記載からも理解できる。また、「TECHNICAL DATA シリーズNo.8 エンドミル加工」、オーエスジー株式会社、2019年9月発行、第41頁の表4.3に記載される「加工面の理論粗さ」の式からも理解できる。)。
そうすると、本願発明1と比べて送り速度(旋回移動速度)が小さい引用発明1において、「Sa」の値は本願発明1よりも小さいものである蓋然性が高く、その値は「2.0μm以下」であると認められる(当合議体注:審判請求人の令和4年2月9日提出の意見書に記載される表を参照すると、引用文献1の実施例1における回転軸の回転方向と旋回移動方向を逆方向とした実験である実験Cにおいて、表面高さSaは2.3μmであることから、同方向とした場合に表面高さSaは2.0μmよりも小さいものとなる蓋然性は極めて高い。)。
また、仮にそうでないとしても、例えば、引用文献1の【0077】の記載に基づいて、切削面を滑らかにするため、送り速度を落とす等の手段により更に研磨することは当業者であれば容易に想到し得たことであり、このような研磨を行った切削面の「Sa」の値は「2.0μm以下」となると認められる(当合議体注:例えば、引用文献1の実施例2において送り速度は300mm/分であり、実施例2を参考にして、送り速度を300mm/分とすることは当業者が適宜なし得たことである。そして、送り速度を500mm/分から300mm/分に変更した場合、表面粗さが更に下がるといえる。)。

そして、引用発明1の「貫通孔」が「形成」された「積層フィルム」の背面に「画像表示素子」を設け、前面に「前面板」を設ける場合において、粘着剤層が貫通孔に漏れ出したり、粉塵や水蒸気が侵入すること等を考慮すると、「前記貫通孔内に充填材料が充填され」た構成とすることは当業者であれば当然になし得ることであるといえる。また、引用文献6([0029]、[図7](a))、引用文献7(第10頁第25〜32行、図7)等に記載されるように、前面板との貼合層を形成するために用いる貼合剤で貫通孔を充填することは、本件出願時における周知技術であることからも、前面板への適用を記載している引用発明1の積層フィルム(【0082】〜【0089】)においても、当業者が容易に適用できたことであると認められる。

6 発明の効果について
本願発明の効果に関して、本件出願の明細書【0010】には、「本発明によれば、貫通孔に充填材料を充填した場合にも、貫通孔の側面と充填材料とを良好に密着することができる粘着剤層付き光学積層体を提供することができる。」と記載されている。
しかしながら、当該効果は、切削面を滑らかにする認識に基づきSaの値が2.0μm以下とされた引用発明1が具備する効果であり、又は引用発明1及び周知技術から容易に推考される発明が具備する効果である。さらに、一般に、表面粗さが小さい面ほど密着性が高いことは当業者の技術常識であるから(例えば、特開2014−186355号公報の【0036】等参照。)、上記効果は、当業者であれば予測可能なものであるといえる。

7 審判請求人の令和4年2月9日提出の意見書の主張について
(1)主張の内容
審判請求人は、令和4年2月9日提出の意見書の「(5)理由2(進歩性)について」において、
「しかしながら、添付の実験成績証明書(令和4年(2022年)2月8日付)に示すように、エンドミルの回転方向と旋回移動方向とが同方向の関係であるか、逆方向の関係であるかに拘らず、引用文献1の実施例において評価されている層間剥離の測定結果(引用文献1の段落[0111])には相違がないことが確認されています(下記表)。

添付の実験成績証明書の実験Bは、本願明細書の実施例1に相当する実験です。同実験Aと実験Bとは、エンドミルの回転軸の回転方向と旋回移動方向との関係が異なること以外は同じ条件で行った実験です。上記表に示すように、エンドミルの回転軸の回転方向と旋回移動方向とが同方向か(実験B)、逆方向か(実験A)によって、層間剥離の評価結果に差異はありません。
したがって、切削加工による積層フィルムの層間剥離を問題とする引用発明1において(引用文献1の段落[0004])、エンドミルの回転軸の回転方向と旋回移動方向とを同方向であると判断することはできません。
・・・中略・・・
上記実験成績証明書の実験A及びBの層間剥離の評価によれば、エンドミルの回転方向とエンドミルの旋回移動方向との関係において差異がなく、また、国際公開第2017/154671号に記載されているように、エンドミルの回転方向とエンドミルの旋回移動方向とを逆方向とすることによりエンドミル加工装置による安定加工が行い得る場合もあることを勘案すると、引用文献1においてエンドミルを「回転方向と同じ方向に旋回移動をさせているとみるのが自然である」と直ちに判断することはできません。」(以下「主張1」という。)、
「・・・前略・・・
そうしてみると、引用発明1の積層フィルムに貫通孔を形成するにあたり、仮にエンドミルの回転軸を回転方向と同じ方向に旋回移動をさせたり、補正後の請求項1に記載の最大高さSaを2.0μm以下とすることがあったとしても、引用発明1において、貫通孔の側面と充填材料との密着性を向上でき、耐熱試験によって上記剥離や発泡が生じることを抑制できることを、当業者が予測することはできません。
・・・中略・・・
引用発明1において、層間剥離を抑制したとしても、貫通孔の側面を補正後の請求項1で規定する最大高さSaの範囲まで平滑になっているとは限らないため、引用発明1において、引用文献1に記載の技術を採用したときに、貫通孔の側面と充填材料との密着性を向上でき、耐熱試験によって上記剥離や発泡が生じることを抑制できることを、当業者が予測することはできません。」(以下「主張2」という。)と主張している。

(2)主張1について
審判請求人は、「本願明細書の実施例1に相当する実験」の結果において、エンドミルの回転軸の回転方向と旋回移動方向とが同方向か(実験B)、逆方向か(実験A)によって、層間剥離の評価結果に差異がないこと及び国際公開第2017/154671号において、エンドミルの回転方向とエンドミルの旋回移動方向とを逆方向とすることを示唆する記載があることから、引用発明1において、エンドミルの回転軸の回転方向と旋回移動方向とを同方向であると判断することはできない旨主張しているが、引用発明1においてエンドミルの回転方向とエンドミルの旋回移動方向とが逆方向であるという根拠にはならない(当合議体注:特に国際公開第2017/154671号の記載に関しては、同文献の【0054】をみると、ダウンカット(逆方向)の方が安定な加工という面でやや優れる点が記載されているが、【図6】のようにその差は微差であるといえる。)。そして、エンドミルの回転方向とエンドミルの旋回移動方向を同方向とした方が加工面の面粗さを小さくできることも当業者にとっても自明であることに鑑みて、引用発明1は「同方向」を採用している蓋然性が高く、また、そうでないとしても、引用文献1の【0077】の記載に基づいて切削面を滑らかにしようとする当業者はエンドミルの回転方向とエンドミルの旋回移動方向を同方向として切削を行うものといえる。

また、仮に、引用発明1の「Sa」が2.0μmより大きなものであったとしても、上記5に記載したとおり、引用発明1において、引用文献1の【0077】等の記載に基づいて切削面を更に研磨すること等により、「最大高さSa」の値を「2.0μm以下」とすることは当業者が適宜なし得たことであると認められる。なお、意見書を参照しても、この点に関する具体的な反論は記載されていない。
よって、上記主張1は採用できない。

(3)主張2について
上記5及び6に記載したとおり、引用発明1のような貫通孔を有する積層フィルムを他の部材と貼り合わせるに際して、粉塵や水蒸気が侵入しないように貫通孔に「充填材料が充填され」た構成とすることは当業者が当然になし得ることであるから、請求人が主張する効果は、引用発明1が奏する効果であり、また、当業者が予測可能な効果であるといえる。
よって、上記主張2は採用できない。


第3 むすび
本願発明1は、引用文献1に記載された発明又は引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-07 
結審通知日 2022-03-08 
審決日 2022-03-30 
出願番号 P2020-021307
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 下村 一石
関根 洋之
発明の名称 表示装置  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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