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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1384951 |
総通号数 | 6 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-06-24 |
確定日 | 2022-05-11 |
事件の表示 | 特願2019−564984「対象を監視し、干渉源を検出する携帯デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月 3日国際公開、WO2019/002060、令和 2年 7月16日国内公表、特表2020−521401〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年6月21日を国際出願日とする外国語特許出願(パリ条約による優先権主張、2017年6月30日、欧州特許庁)であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和元年11月22日 :翻訳文の提出 令和2年 7月10日 :拒絶理由通知書 同年12月22日 :意見書及び手続補正書の提出 令和3年 2月17日 :拒絶査定(以下「原査定」という。) (原査定の謄本の送達日:同年3月4日) 同年 6月24日 :拒絶査定不服審判の請求 第2 本願発明 本願の請求項1〜13に係る発明は、令和2年12月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、次に特定されるとおりのものである。 「 【請求項1】 携帯デバイスの干渉源を検出する携帯デバイスであって、 前記携帯デバイスの環境における干渉の存在を検出する検出器と、 プロセッサとを有し、前記プロセッサが、 前記携帯デバイスの環境における干渉の強さを決定し、及び ユーザインターフェースを制御し、前記決定された干渉強度に依存する頻度で出力を提供する、携帯デバイス。」 第3 原査定の概要 原査定の拒絶の理由の概略は、次のとおりである。 本願の請求項1〜13に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び下記の引用文献2又は3に例示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特表2013−500079号公報 引用文献2:登録実用新案第3073827号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3:米国特許第6727859号明細書(周知技術を示す文献) 第4 当審の判断 1 引用文献等 (1) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 ア 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用する特表2013−500079号公報(前記引用文献1)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。 「【背景技術】 【0002】 介護人のいる環境における標準的な介護には、例えば、アーバインのマシモコーポレーション(Masimo Corporation)から市販されている酸素濃度計技術を利用した分光分析による患者のモニタリングが含まれる。分光分析が可能な装置には一般的に、脈動する血液が流れている体組織などの測定部位に光放射を行う光源が含まれる。測定部位の組織及び流体による減衰(たとえば組織への透過や反射などによる)の後、1つまたは複数の光検出装置が減衰光を検出し、検出された減衰光に応答する1つまたは複数の検出信号を出力する。1つまたは複数の信号処理装置が検出器信号を処理し、グルコース、酸素、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビン、そのほかの生理的パラメータなどの対象とする血液組成を示す測定値や、患者の健康状態または傾向を判定するのに有益なそのほかのデータまたはデータの組合せを出力する。そのような組合せとして、1つまたは複数の測定値または別々のパラメータの測定値の組合せに対して統計的解析を行って有用な情報とすることがしばしば行われる。 (中略) 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 さらに、周辺及び/又は環境からの干渉(すなわちノイズ)が、測定精度に悪影響を及ぼす可能性がある。干渉は、日常的に使用されている多くの電気装置から発生する。一般的な家庭を例にとると、電力線とコンセント、間接照明、調光器、テレビやコンピュータのディスプレイ、電源や変圧器が電磁干渉を発生させる。例えば、間接照明から発生するノイズは一般的に、50Hzまたは60Hzの基本周波数とその高調波に対応する周期で変化する。当業者には周知のように間接照明の周波数は、その間接照明とその他の干渉を起こす装置に供給されている電気の周波数、及び/又は自然光の周波数との関数である。間接照明の周波数は、したがって、その間接照明を生成する装置に使用されている電源システムに依存して変化する。間接照明の基本周波数の高調波は重要であり、間接照明はその高調波においても顕著な干渉を生じる可能性がある。これは間接照明が蛍光灯である場合に特に当てはまる。蛍光灯は第2高調波(すなわち100Hzまたは120Hz)および第4高調波(すなわち200Hzまたは240Hz)で顕著なノイズを発生させる。これに加えて、一般的な介護環境において、医療器具(たとえば電気焼灼装置)も顕著な電磁干渉を発生させる。これらおよびそのほかの課題により、生理的パラメータ(たとえばグルコース)を示す信号情報を干渉信号と区別することが困難となる。さらに、干渉レベルが未知の、広範な介護および非介護環境において、患者およびその他のユーザがグルコースやそのほかの生理的パラメータのデータを少なくともスポットチェック測定で所望することが多い。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明のいくつかの実施形態において、周辺及び/又は環境からの干渉のレベルを高い信頼性で測定できるように構成された干渉検出器が開示される。この検出器は、周波数解析を利用して対象とする周波数帯域における干渉レベルを判定および算出する。対象の帯域は様々な生理的パラメータ測定の際に解析に利用される周波数から構成されていてもよい。例えば、身体の組織や体液で減衰される変調光信号は、搬送波信号(たとえば周期的パルス列)の基本周波数および高調波周波数において生理学的情報を含んでいる可能性がある。干渉レベルが基本周波数および高調波周波数で測定されて、周辺及び/又は環境ノイズのある状態で生理的パラメータの信頼のおける測定ができるかどうかが判定される。 【0006】 本発明のいくつかの実施形態において、干渉レベルは、対象とする周波数に集中する干渉信号のエネルギまたは電力として計算することができる。測定された最大の電力を利用して、周辺及び/又は環境からの干渉が生理的パラメータの測定精度へ及ぼす最悪の影響が判定される。測定された最大の電力を閾値と比較して、干渉の大きさと測定精度の予想される劣化とを客観的に判定することができる。閾値は干渉検出器の雑音レベル、すなわち熱ノイズ、ショットノイズ、その他などのためにシステムに本質的に内在する測定ノイズ信号の倍数に設定することができる。雑音レベルはさらにそのシステムでの信頼できる最小測定値の限界を設定する。雑音レベルの倍数と閾値はその装置で測定する生理的パラメータの種類によって変わりうる。 【0007】 本発明のいくつかの実施形態において、干渉検出器は、測定された干渉レベルを閾値に対する相対値としてユーザに聴覚−視覚的に表示するように構成されていてもよい。視覚的表示には、干渉レベルに対する測定値を棒グラフ、図、グラフなどで表示することを含むことができる。聴覚表示では、干渉レベルに対する測定値の厳しさの度合いを音声で伝えることができる。聴覚−視覚表示は、スポットチェック測定に対して有用であって、生理的パラメータの測定値の予想される精度をユーザに迅速に知らせることができる。それに加えて、周辺及び/又は環境からの干渉が測定精度を著しく劣化させるかまたは測定値を信頼できなくする可能性のある状態をユーザに迅速に警告することができる。」 「【0017】 図1は、本発明の一実施形態による患者モニタリングシステム100の斜視図を示す。 システム100は、1つまたは複数の生理的パラメータと干渉レベルを非侵襲的に判定することができる携帯型患者モニタ103を含む。携帯型患者モニタ103はケーブル112を介して光学センサ101と通信する。いくつかの実施形態において、患者モニタ103はセンサ101を駆動して異なる波長の光を体組織(図示せず)に放射する。センサ101は体組織で減衰された後の光を検出し、センサ101で受信した光の量(これは減衰を含む)を示す信号をケーブル112を介して出力する。さらにいくつかの実施形態においては、モニタ103はケーブル112を介して、温度センサおよび1つまたは複数のセンサ101とケーブル112に接続されたメモリ装置と通信する。いくつかの実施形態において、モニタ103はネットワークインタフェース(図示せず)を介して他の記憶装置および遠隔装置と通信する。 【0018】 患者モニタは、ディスプレイ110と1つまたは複数の制御ボタン108を備えることができる。いくつかの実施形態において、ディスプレイ110は、1つまたは複数の仮想制御及び/又は変化ディスプレイ及び/又は制御スクリーンを含むことのできるタッチセンサディスプレイであってもよい。ディスプレイ110は、測定された多種類の生理的パラメータを表示して、情報を迅速かつ効果的にユーザに伝達するように構成することができる。例えば、ディスプレイ110は、血液酸素飽和度、脈拍、グルコース、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビンなどの値を示すことができる。さらに図1に示すように、ディスプレイ110は、検出されたノイズ干渉レベルの視覚表示を伝達することができる。例えば、ディスプレイ110は棒グラフを出力するように構成することができる。そこでは、以下で詳細を説明するように、緑の網掛けが低レベルの干渉に対応し、赤の網掛けが高レベルの干渉に対応する。 【0019】 図2は、図1のモニタリングシステム100のような、患者モニタリングシステム200の患者モニタと干渉検出器のブロック図を示す。図2に示すように、モニタリングシステム200は、ケーブル212を介して通信するセンサ202と患者モニタ203を含む。いくつかの実施形態において、センサ202は、体組織205に光を照射する複数のエミッタ204(例えば図1に示すように8つのエミッタ)と、組織205で減衰された後の光を検出することができる1つまたは複数の検出器206(例えば図2に示すような4つの検出器)とを含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の検出器206が組織205で減衰された後の周辺及び/又は環境からの干渉レベルを検出するようにセンサ202を構成することができる。 【0020】 センサ202は、サーミスタまたは熱電対などの温度センサ207と、不揮発性(たとえばEEPROM)または揮発性メモリなどのようなメモリ装置208をさらに備えることもできる。センサ202は、温度センサ導線209、検出器複合信号導線210、メモリ装置導線214、エミッタ駆動信号導線216などを含む、部品との間を相互に信号を交信する複数の導線も含む。いくつかの実施形態において、センサ導線209、210、214、216がケーブル212を介して信号をモニタ203へ送信する。いくつかの実施形態において、ケーブル212は複数のシールド導線を含む。 【0021】 ここではケーブル212を参照して開示したが、本明細書の開示からセンサ202との通信は、多様なケーブル、ケーブルの設計、公衆または私的な通信ネットワークまたは計算機システム、有線または無線通信(IEEE802.11xを含むイーサネット(登録商標)、ブルートゥースまたはWiFiなど)、移動通信、またはそれらの組合せなどを有利に含んでもよいことは、当業者であれば理解されるであろう。 【0022】 いくつかの実施形態において、温度センサ207はセンサ202および、例えばエミッタ204などのその部品の温度をモニタする。例えばいくつかの実施形態において、温度センサ207は、光エミッタ204基板の温度をリアルタイムで概ね近似できる十分な熱伝導を有する熱容量材を備えているかまたはそれと交信する。いくつかの実施形態において、モニタ203は温度センサ207出力を有利に利用して、特に鋭敏な組織205への適用において何よりも患者の安全を確保するようにしてもよい。いくつかの実施形態において、モニタ203は温度センサ207の出力とモニタされた動作電流または電圧を有利に利用して、センサ202の操作条件を補正してもよい。 【0023】 メモリ208は、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、またはそれらの組合せを含む、本明細書の開示により当業者に周知の多様なメモリ装置の任意の1つまたは複数を備えることができる。メモリ208は、広範なデータおよび情報の一部またはすべてを格納できるように構成されていてもよく、それらは例えば、センサ202の種類または操作情報、患者または体組織205のタイプ、バイヤまたは製造者情報、放射可能な波長の数を含むセンサ特性、エミッタ仕様、エミッタ駆動仕様、復調データ、計算モードデータ、較正データ、スクリプトや実行コードなどのソフトウェアまたはファームウェア、センサの電子要素、センサ部品の一部または全部が消耗して交換すべきかどうかを示すセンサ寿命データ、暗号化情報、モニタまたはアルゴリズム更新命令またはデータ、等々を含む。いくつかの実施形態において、メモリ装置208はエミッタ波長補正データを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、モニタ203はメモリ208を読み出して、格納されている広範なデータおよび情報のうちの1つまたはいくつかまたはすべてを判定することができる。図2に示すように、デジタル信号プロセッサ228は、メモリリーダまたはメモリライタなどを利用して、メモリ装置208と通信することができる。 【0024】 モニタ203は、導線210を介して検出器206からアナログ複合検出器信号を受信するように構成されたフロントエンド信号調整器222を備えることができる。信号調整器222は、信号のゲインを調節し、バンドパスフィルタまたはローパスフィルタに信号を通して望ましくない信号成分を除去し、所望の位相応答を有する全域通過フィルタに信号を通して信号位相を規格化する、などのアナログ複合検出器信号の規格化を行うことができる。信号調整器222は、アナログ−デジタル変換機(”A/Dコンバータ”)と通信する1つまたは複数の出力を含む。いくつかの実施形態において、A/Dコンバータ226は、デルタ−シグマ変換器を備え、直線性と信号対雑音性能を向上させてもよく、これは特に低潅流時の測定を強化するのに有利である。低減された信号対雑音は、周辺及び/又は環境からの干渉(たとえば電気焼灼装置からの)をうまく排除することにより測定品質を向上させることもできる。A/Dコンバータ226は、フロントエンド信号調整器222の出力および温度センサ207の出力と通信する入力を含む。コンバータ226はまた、デジタル化された複合検出器信号値と温度センサの読みをプロセッサ228へ通信するための出力も含む。 【0025】 プロセッサ228は、エミッタの駆動電流制御信号230をデジタル−アナログ変換器(“D/Aコンバータ”)232へ出力することができる。D/Aコンバータ232は制御情報をエミッタ駆動回路234へ供給し、それが導線216上を通してセンサ202上の複数のエミッタ204を駆動することができる。いくつかの実施形態において、エミッタ駆動回路234は8つの所定の波長で光を放出できる8つのエミッタを駆動するが、回路234は任意の数のエミッタを駆動することができる。さらに、1つまたは複数のエミッタは同一波長または実質的に同一の波長で光を放出して、冗長性を持たせることができる。回路234はエミッタ204をオン、オフすることで変調して、対応する波長で光のパルス列を形成するように設定することもできる。いくつかの実施形態では、回路234がエミッタ204をオフにして検出器206が周辺又は環境のノイズのレベルを検出するように設定することもでき、これは追加的に矩形パルス列の搬送波信号によって変調することができる。変調のさらなる詳細は、2001年5月8日発行の米国特許第6,229,856号に開示されており、参照によりこの開示をここに援用する。 【0026】 プロセッサ228は、デジタル化された複合検出器信号値を処理し、血液酸素飽和度、脈拍、グルコース、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビンなどの生理的パラメータ情報を算出することができる。プロセッサ228は、複合検出器信号中の周辺及び/又は環境からの干渉のレベルを算出するように構成された干渉検出器240を備えている。いくつかの実施形態において、プロセッサ228はメモリ装置208中に格納された情報を読み出し、その読み出された情報を生理的パラメータ情報及び/又は干渉レベルの算出に利用することができる。 【0027】 プロセッサ228は視聴覚インタフェース236と通信して、例えば測定され、算出されたパラメータや干渉レベルを表示することができる。 【0028】 視聴覚インタフェース236は、測定部位における組織205の生理的パラメータの計算値と干渉レベルの計算値の表示を提供可能なディスプレイ装置として構成することができる。いくつかの実施形態において、視聴覚インタフェース236は、1つまたは複数の測定されたまたは判定された、パラメータまたは干渉レベルの傾向データを表示することができる。さらに、本発明の開示から当業者は、プロセッサ228から得られるデータの表示には多くの選択肢が存在することがわかるであろう。 (中略) 【0031】 図4Aは、例えば図2に示したプロセッサ228のような、患者モニタにおけるデジタル信号プロセッサおよび干渉検出器428の機能ブロック図である。図4Aに示すように、プロセッサおよび干渉検出器428への入力はデジタル化された複合検出器信号xk(n)401Aであってよい。いくつかの実施形態において、デジタル化された複合検出器信号401A、xk(n)、は1つの検出器206(すなわちkは検出器206の番号に対応する)からの信号のデジタル化されたサンプルを表し、図4Aに示すように個別の信号処理、モデル化、計算パスをそれぞれの信号xk(n)に対して利用することができる。いくつかの実施形態において、複合検出器信号401Aは、光のデータを含まない、検出器206で検出された干渉信号で構成されることもある。 (中略) 【0034】 干渉レベルを決定するために、復調されデシメートされた複数チャネルのデータがエネルギ検出器405へ与えられてもよい。いくつかの実施形態において、エミッタ204を(たとえば回路234によって)オフに設定可能なので、複合検出器信号xk(n)401Aは干渉信号のみで構成することができる。そうすると、復調されてデシメートされた複数チャネルのデータが干渉信号で構成され、エネルギ検出器405Aをその干渉信号のエネルギまたは電力を計算するように設定できる。いくつかの実施形態において、以下で説明するように、エネルギ検出器405Aは各デシメーションチャネルの干渉信号の平均電力を計算することが可能で、その最大値を干渉出力として選択することができる。 (中略) 【0051】 干渉信号(または干渉出力)の算出された最大エネルギまたは電力は、507においてユーザへ知らせることができる。いくつかの実施形態において、干渉出力は、例えば棒グラフで視覚的にユーザに提示することができる。図5に示すように、干渉出力は閾値と比較することができる。いくつかの実施形態において、閾値は患者モニタリングシステムの雑音レベルの倍数として設定することができる。システムの雑音レベルは、熱ノイズ、ショットノイズ、その他などのためにシステムの電子部品によって内在的に(すなわち入力信号を与えない状態で)発生するノイズ信号の指標である。雑音レベルはさらにそのシステムでの信頼性のある測定が可能な、最小測定値の限界を設定する。さらに、システムの雑音レベルは実験的に測定可能である。例えば、血液中のトータルヘモグロビン濃度の測定のためのシステムの雑音レベルは10ppm程度である。したがって、閾値は患者モニタリングシステムで測定しようとする生理的パラメータの種類に応じて設定することができる。いくつかの実施形態において、閾値の乗数は設定可能かつプログラム可能であってよい。 【0052】 図5に示すように、510で干渉出力は閾値と比較することができる。干渉出力が閾値以下の場合、511で棒グラフを閾値に比例した高さまたは幅の緑色(または緑の網掛け)に更新することができる。例えば、緑の棒の高さまたは幅は、(閾値−干渉出力)/閾値として算出できる。別の例では、計算値がパーセンテージで表現できる。干渉出力が閾値より大きい場合、512で棒グラフを閾値に比例した高さまたは幅の赤色(または赤の網掛け)に更新することができる。例えば、赤の棒の高さまたは幅は、(干渉出力−閾値)/閾値として算出できる。別の例では、計算値がパーセンテージで表現できる。当業者には、他の計算方式または色を利用して、ユーザに患者モニタの干渉出力を警告できることが理解されるであろう。 【0053】 図6A〜6Dは、図1の干渉検出器などのような干渉検出器を利用していること及びその出力を示す、ユーザインタフェース表示を示す。図6Aは、算出された干渉出力のスピードメータ型の視覚表示600Aを示す。ダイアル601Aは、干渉出力の程度を示す数字(0〜9)からなっている。閾値は、例えばダイアルのほぼ中央(つまり数字の6)に対応していてもよい。矢印602Aは、算出された干渉出力を閾値に対して相対的に指示するように設定されている。ダイアルはさらに網掛けされていて、算出された干渉出力の度合いが一目でわかるようになっていてもよい。例えば、0〜3の範囲の網掛けは緑色で、干渉レベルが低いことを表し、3〜6の範囲の網掛けは黄色で、中間的な干渉レベルを表し、6〜9の範囲の網掛けは赤色で、干渉レベルが高いことを表す。 【0054】 図6Bは棒グラフ型の視覚表示600Bを示す。緑の色または網掛け603Bは算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表す。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が2である場合、緑の色または網掛け603Bは80%(つまり、100%×(10−2)/10)を表示し、幅でこのパーセント値を示すことができる。赤色または網掛け604Bは同様に算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表す。この例の場合、赤色または網掛け604Bは20%を表示し、その幅でこのパーセント値を示すことができる。あるいはまた、算出された干渉出力が閾値を超えない限りは、赤色または網掛けを表示されない場合がある。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が20である場合、赤色または網掛け604Bは200%(つまり、100%×20/10)を表示し、幅が棒グラフ表示600Bの全体を覆う。この場合には緑の色または網掛け603Bは表示されない。いくつかの実施形態において、閾値が棒グラフ表示600Bの中央に対応し、それに応じて、緑と赤色または網掛けが計算されて表示される。いくつかの実施形態において、他の色(例えば黄色)も表示することができる。 (中略) 【0056】 図6Dは、棒グラフ型の視覚表示600Dを示す。これは600Cに似ているが縦型である。緑の色または網掛けは算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表し、パーセント値は表示されていない。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が3である場合、緑の色または網掛け607Dは棒グラフ表示600Dの70%(つまり、100%×(10−3)/10)の高さで表示される。赤色または網掛け608Dは同様に算出された干渉出力の閾値に対するパーセンテージを表す。この例では、赤色または網掛け608Dは棒グラフ表示600Dの40%の高さで表示される。あるいはまた、算出された干渉出力が閾値を超えない限りは、赤色または網掛けが表示されない場合がある。例えば、閾値が10で算出された干渉出力が12である場合、赤色または網掛け608Dは120%(つまり、100%×12/10)の高さで表示されるか、または棒グラフ表示600Dの全体を覆う。この場合には緑の色または網掛け607Dは表示されない。いくつかの実施形態において、閾値が棒グラフ表示600Dの中央に対応し、それに応じて、緑と赤色または網掛けが計算されて表示されてもよい。いくつかの実施形態において、他の色(例えば黄色)も表示することができる。図6E〜6Hも、例えばハッピーフェースまたはサッドフェース、指針、指示光などを含む、異なる色、グラフ、形、表示を利用した代替表示を示している。 【0057】 いくつかの実施形態において、患者モニタはユーザへの音声通知を提供するように構成することができる。例えば、干渉出力を計算して、それを閾値と比較した後、干渉出力が閾値よりも低い場合には、患者モニタが"測定は安全です"という音声を発することができる。別の例としては、干渉出力が閾値に近いかそれを超える場合に、"危険です"という音声を発することができる。当業者であれば、本明細書の開示から多様な視聴覚通知手法があることは理解されるであろう。」 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図6A】 」 「【図6B】 」 「【図6H】 」 イ 引用発明の認定 上記記載内容及び図示内容を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「1つまたは複数の生理的パラメータと干渉レベルを非侵襲的に判定することができる携帯型患者モニタを含む患者モニタリングシステムであって、(【0017】、【図1】) モニタリングシステム200は、ケーブル212を介して通信するセンサ202と患者モニタ203を含み 、(【0019】、【図2】) センサ202は、体組織205に光を照射する複数のエミッタ204と、組織205で減衰された後の光を検出することができる1つまたは複数の検出器206とを含み、(【0019】、【図2】) 1つまたは複数の検出器206が組織205で減衰された後の周辺及び/又は環境からの干渉レベルを検出するように構成され、(【0019】、【図2】) センサ202とモニタ203の通信は無線通信であり、(【0020】、【0021】) モニタ203はプロセッサ228を有し、(【0031】、【図2】) プロセッサ228は、エミッタ204の駆動電流制御信号230をD/Aコンバータ232へ出力し、(【0025】) D/Aコンバータ232は制御情報をエミッタ駆動回路234へ供給し、それが導線216上を通してセンサ202上の複数のエミッタ204を駆動することができ、(【0025】) エミッタ駆動回路234がエミッタ204をオフにして検出器206が周辺又は環境のノイズのレベルを検出するように設定することができるものであり、(【0025】) プロセッサ228は、デジタル化された複合検出器信号値を処理し、血液酸素飽和度、脈拍、グルコース、メトヘモグロビン、トータルヘモグロビンなどの生理的パラメータ情報を算出することができ、複合検出器信号中の周辺及び/又は環境からの干渉のレベルを算出するように構成された干渉検出器240を備えており、(【0026】) プロセッサ228は、視聴覚インタフェース236と通信して、測定され、算出されたパラメータや干渉レベルを表示することができ、(【0027】) 視聴覚インタフェース236は、測定部位における組織205の生理的パラメータの計算値と干渉レベルの計算値の表示を提供可能なディスプレイ装置として構成することができ、1つまたは複数の測定されたまたは判定された、パラメータまたは干渉レベルの傾向データを表示することができるものであり、(【0028】) 干渉信号(または干渉出力)の算出された最大エネルギまたは電力は、棒グラフで視覚的にユーザに提示される、(【0051】) 患者モニタリングシステム。」 (2) 引用文献2、4、5、6の記載事項と周知技術の認定 ア 引用文献2 原査定の拒絶の理由において、周知技術を示す文献として引用された登録実用新案第3073827号公報(前記引用文献2)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。 「【0019】 前記装置本体2は、図5に示すようにアンテナ10を有し、このアンテナ10は、第1〜第5アンプ21〜25の入力端に接続されている。これら第1〜第5アンプ21〜25は相互に増幅率が異なり、入力信号を各々2倍、4倍、8倍、16倍、32倍する特性を有している。各アンプ21〜25の出力端は、AM検波器30に接続され、AM検波器30は波形整形回路40を介して制御部50に接続されている。制御部50は、CPU、プログラムROM、ワークRAM等で構成され、プログラムROMに格納された制御プログラムをワークRAM上で実行することにより、第1〜第5アンプ21〜25、LED60〜63の動作制御、スピーカ64およびモータ65の動作制御を行うものであり、前記測定スイッチ70が接続されている。 【0020】 一方、この盗撮検知装置1が検知対象とする盗撮システムは、図1に示したように、超小型のCCDカメラ101の映像をTV放送波のトランスミッター102で送信し、その電波を離れた場所にてテレビ受像器103で受信して表示するものである。そして、盗撮検知装置1はトランスミッター102からのテレビジョン映像信号における垂直同期信号を検出することにより、盗撮システムの存在、より詳しくはトランスミッター102の存在を検出しようとするものである。」 「【0022】 しかして、前記測定スイッチ70が押圧操作されると、制御部50制御プログラムに基づき、図6に示すフローチャートに従って動作を開始し、先ず、最も低い2倍の増幅率である第1アンプ21を選択してこれのみ動作させる(ステップS1)。これにより、アンテナ10によって受信された電波は、第1アンプ21で2倍に増幅され、AM検波器30で検波された後、波形整形回路40で波形整形されて制御部50に入力される。すると、制御部50は入力信号があるか否かを判別し(ステップS2)、入力信号がある場合には、それが周波数60Hzの信号であるか否かを判断する(ステップS3)。周波数60Hzの信号である場合には、LED60〜63をパターン1で制御する(ステップS4)。」 「【0026】 このパターン2は、図7(7−2)に示すように、緑色LED60、61をオフ状態に維持するとともに、赤色LED62、63を後述するパターン3よりも高速でオン・オフする制御形態である。したがって、赤色LED62、63が速い動作で点滅して、赤色の点滅光が透光部81を介して外部に照射され、透光部81からの点滅光を視認したユーザは、近くから盗撮されているであろうことを認識することができる。」 「【0029】 したがって、増幅率が8倍である第3アンプ23で増幅を行って、B部波形として60Hzの波形を検出することができれば、アンテナ10が受信した60Hzの電界強度もやや高く、盗撮検知装置1のやや近くにトランスミッター102があるとすることができる。よって、この場合には、パターン3でLED60〜63を制御する。 【0030】 このパターン3は、図7(7−3)に示すように、緑色LED60、61をオフ状態に維持するとともに、赤色LED62、63を前述のパターン2よりも低速でオン・オフする制御形態である。したがって、赤色LED62、63が遅い動作で点滅し、これにより赤色の点滅光が透光部81を介して外部に照射される。よって、透光部81からの点滅光を視認したユーザは、前記パターン1の場合よりは、やや近くから盗撮されている(図1(b))であろうことを認識することができる。」 「【図5】 」 「【図6】 」 イ 引用文献4 当審が新たに引用する、本願の優先日より前に発行された登録実用新案第3146932号公報には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。 「【0001】 本考案は、周波数検出部と多色発光ダイオードの組み合わせによって任意の周波数の強弱を光によって表示する電磁波表示器に属する。」 「【0005】 それぞれの発光色には受け持ちの周波数を設定し、検出部で検出された周波数に対応する色彩光が表示される。 【0006】 検知された周波数の強弱は、各色相の点滅により表示される。検知された周波数が強くなるほど、点滅の間隔が短くなり、想定極限値を超えたときは点灯する。」 ウ 引用文献5 当審が新たに引用する、本願の優先日より前に出願公開された特開2000−307496号公報には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、建造物を介して、高広帯域信号の伝送を行うための信号中継装置に関するものである。特に、信号中継器の設置場所を容易に設定できる構成の信号中継装置に関する。」 「【0012】本発明の信号中継装置は、前記受信機側のアンテナで受信される電波の強度を検知する手段が、少なくとも音、光、画像のいずれかによって表示する部分を有することを特徴とする。 【0013】光による表示は、光の強弱、点滅のピッチ、或いは点灯部の数、色で電波強度を表示することが好ましい。特に光の場合は設置後も継続して表示を続けることで環境の変化による伝送条件の変化がないか容易に確認ができ、必要に応じて設置位置の変更を行なうことができる長所がある。」 「【0038】上記実施の形態では、発光材料としてLEDを用いたが、電球など他の材料を用いても同様の結果が得られた。電波強度をLEDレベルメータで表示する代わりに、光の強弱、あるいは光の点滅の周期を用いて 表示しても同様な結果が得られた。」 エ 引用文献6 当審が新たに引用する、本願の優先日より前に出願公開された特開2013−245946号公報には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。 「【0001】 本発明は、物理量のレベルを表示するレベル表示装置及びレベル表示方法に関する。」 「【0026】 レベル検出部31が検出するレベルの最小値を第1段階、最大値を第7段階とすると、第2表示部52は、第2制御部33の制御により、各段階において、以下のような周期で点滅する。 第1段階 点灯時間0.2秒、消灯時間0.2秒 第2段階 点灯時間0.4秒、消灯時間0.4秒 第3段階 点灯時間0.6秒、消灯時間0.6秒 第4段階 点灯時間0.8秒、消灯時間0.8秒 第5段階 点灯時間1.0秒、消灯時間1.0秒 第6段階 点灯時間1.2秒、消灯時間1.2秒 第7段階 点灯時間1.4秒、消灯時間1.4秒」 「【0031】 上述の実施の形態においては、レベル表示装置は、放送波のアンテナ、盗聴器の発見器等の電波の受信レベルを検出するほか、他の様々な検査装置等に適用することができる。例えば、電波を受信する受信部1として、様々な物理量を検出する検出器を適用することにより、音量、各種濃度、放射線量等のレベルを表示する装置に適用することができる。」 オ 周知技術の認定 前記ア〜エにおいて引用文献2、4、5、6の記載を摘記して例示したように、次の技術事項は、周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。 [周知技術1] 「様々な物理量を検出したとき、表示部の点滅の間隔(頻度)の変化によって検出信号の強度の変化を表示する表示装置。」 2 本願発明1の想到容易性について (1) 対比 ア 対比分析 本願発明1と引用発明を対比する。 (ア)a 引用発明の「モニタリングシステム200」は、「ケーブル212を介して通信するセンサ202と患者モニタ203を含み」、「患者モニタ203」は「携帯型」であるから、引用発明の「モニタリングシステム200」は、本願発明1の「携帯デバイス」に相当する。 b 引用発明の「センサ202」に含まれる「1つまたは複数の検出器206」が「周辺及び/又は環境からの干渉レベルを検出する」ことは、本願発明1の「携帯デバイスの干渉源を検出する」ことに相当する。 c そうすると、引用発明の「ケーブル212を介して通信するセンサ202と患者モニタ203」を含む「モニタリングシステム200」は、本願発明1の「携帯デバイスの干渉源を検出する携帯デバイス」に相当する。 (イ)a 本願発明1の「前記携帯デバイスの環境における干渉の存在を検出する検出器」について、本願明細書における具体的な説明としては、段落【0027】に、次の記載がある。 「図1を参照すると、干渉源を検出するための携帯デバイス100は、検出器102を含む。検出器102は、携帯デバイス100の環境における干渉の存在を検出するよう構成される。干渉は例えば、電磁干渉(無線周波数干渉など)、他の任意のタイプの干渉、又は干渉のタイプの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、携帯デバイス100の検出器102は、受信信号強度インジケータ(RSSI)レベルを監視することにより干渉の存在を検出するよう構成され得る。例えば、検出器102は無線周波数(RF)チップであり得る。」(下線は当審が付与した。) 本願明細書の上記記載を参酌すると、「前記携帯デバイスの環境における干渉の存在を検出する検出器」の例として、環境中に含まれる干渉源に由来する信号を受信したときの受信信号強度を監視することにより干渉の存在を検出する検出器が挙げられているから、本願発明1の「前記携帯デバイスの環境における干渉の存在を検出する検出器」は、このようなものを含むものとして解釈することとなる。 b 上記aを踏まえると、引用発明の「1つまたは複数の検出器206」は「周辺及び/又は環境からの干渉レベルを検出するように構成され」ているから、このような「1つまたは複数の検出器206」を含む引用発明の「センサ202」は、本願発明1の「前記携帯デバイスの環境における干渉の存在を検出する検出器」に相当するといえる。 (ウ) 引用発明の「周辺及び/又は環境からの干渉のレベルを算出する」ことは、本願発明1の「前記携帯デバイスの環境における干渉の強さを決定」することに相当する。 そうすると、引用発明において、「複合検出器信号中の周辺及び/又は環境からの干渉のレベルを算出するように構成された干渉検出器240を備え」る「プロセッサ228」は、本願発明1の「前記携帯デバイスの環境における干渉の強さを決定」する「プロセッサ」に相当するといえる。 (エ)a 引用発明の「視聴覚インタフェース236」は、「干渉レベルの計算値の表示を提供可能なディスプレイ装置として構成」されているから、本願発明1の「ユーザインターフェース」に相当する。 b 引用発明の「プロセッサ228」が「視聴覚インタフェース236と通信して、測定され、算出されたパラメータや干渉レベルを表示すること」は、本願発明1の「プロセッサ」が「ユーザインターフェースを制御し」、「前記決定された干渉強度に依存する」「出力を提供する」ことに相当する。 c そうすると、本願発明1と引用発明は、「ユーザインターフェースを制御し、前記決定された干渉強度に依存する出力を提供する」点で共通する。 イ 一致点及び相違点の認定 上記アの対比分析の検討結果をまとめると、本願発明1と引用発明は、以下の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。 [一致点] 「携帯デバイスの干渉源を検出する携帯デバイスであって、 前記携帯デバイスの環境における干渉の存在を検出する検出器と、 プロセッサとを有し、前記プロセッサが、 前記携帯デバイスの環境における干渉の強さを決定し、及び ユーザインターフェースを制御し、前記決定された干渉強度に依存する出力を提供する、携帯デバイス。」 [相違点] 本願発明1においては、出力が干渉強度に依存する「頻度」として提供されるのに対し、引用発明では「棒グラフで視覚的にユーザに提示される」点。 (2)判断 ア 相違点について 前記「1 引用文献等」の「(6)周知技術の認定」において周知技術1として認定したとおり、「様々な物理量を検出したとき、表示部の点滅の間隔(頻度)の変化によって検出信号の強度の変化を表示する表示装置。」は、周知なものであり、引用発明の「棒グラフで視覚的にユーザに提示される」ようにした表示手段に代えて、前記周知な表示装置を採用することにより、出力が干渉強度に依存する頻度として提供されるように変更することは、当業者が適宜選択できる設計事項にすぎない。 そして、本願発明1の奏する効果は、引用発明及び周知技術1から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本願発明1は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易になし得たものである。 イ 請求人の主張について (ア) 請求人の主張内容 審判請求書において、請求人は次のとおり主張している。 「3.本願発明が特許されるべき理由 (a)本願発明の説明 本願発明による携帯デバイスの特徴は、補正後の請求項1に記載したように、・・・<中略>・・・ことにある。 即ち、本願請求項1に係る発明による携帯デバイスは、決定された「干渉強度に依存する頻度」で、ユーザインターフェースに出力を提供することを、特徴の一つにしている。この特徴により、干渉による影響を受けるリスクがどの程度あるのかを利用者がきめ細かく知ることができるという効果を発揮するのである。 (b)引用例の説明及び本願発明との対比 いずれの引用文献においても、干渉強度に依存する頻度で出力を提供するユーザインターフェースは、何ら開示されていない。 ここで審査官殿が指摘された引用文献1に記載された内容は、あくまで「干渉出力を閾値と比較して、条件を満たす場合に「危険です」という音声を出力する点にとどまる。一方の本願発明においては、干渉強度に応じて、出力の「頻度」を変化させるものである。即ち、引用文献1の例で言えば、「危険です」という音声を出力する頻度を、干渉強度に応じて変化させるような着想のものとなる。しかしながら引用文献1においては、単に「危険です」という音声を出力することしか示唆しておらず、その音声出力の頻度を干渉強度に応じて変更させるような着想は何ら開示されていない。 そのため、引用文献1においては、干渉により影響を受けるリスクがどの程度あるのかを、きめ細かく知ることができないという欠点がある。 このように引用文献1乃至3には、課題の共通性、作用・機能の共通性、本願発明の技術的思想の開示がないので、本願発明の進歩性を否定する根拠となる動機づけとなり得るものが存在せず、従って本願発明はこれら引用文献から当業者が容易に想到し得るものではないと思料する。」 (イ) 請求人の主張についての検討 引用文献1においては、「当業者であれば、本明細書の開示から多様な視聴覚通知手法があることは理解されるであろう。」(段落【0057】)とされ、音声出力のほかに棒グラフ型の視覚表示やスピードメータ型の視覚表示などの強度に応じて変更される表示形態が具体的に示されているから、請求人の「しかしながら引用文献1においては、単に「危険です」という音声を出力することしか示唆しておらず、その音声出力の頻度を干渉強度に応じて変更させるような着想は何ら開示されていない。」との主張は誤りである。 そして前述のとおり、「様々な物理量を検出したとき、表示部の点滅の間隔(頻度)の変化によって検出信号の強度の変化を表示する表示装置。」は、周知なものであり、引用発明の「棒グラフで視覚的にユーザに提示される」ようにした表示手段に代えて、前記周知な表示装置を採用することは、当業者が適宜選択すべき設計事項にすぎず、発想の飛躍を要するものとは認めることができない。 したがって、上記(ア)の主張を採用することはできない。 第5 むすび 以上検討のとおり、本願発明1は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 審判長 岡田 吉美 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |
審理終結日 | 2021-12-06 |
結審通知日 | 2021-12-07 |
審決日 | 2021-12-20 |
出願番号 | P2019-564984 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04B)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
岡田 吉美 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 濱野 隆 |
発明の名称 | 対象を監視し、干渉源を検出する携帯デバイス |
代理人 | 五十嵐 貴裕 |
代理人 | 笛田 秀仙 |