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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1384955
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-29 
確定日 2022-06-07 
事件の表示 特願2016−197244「動作認識方法及び装置並びにウェアラブル装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年6月1日出願公開、特開2017−94055、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年10月5日(パリ条約による優先権主張 2015年11月20日 韓国)の出願であって、令和2年7月29日付けで拒絶理由が通知され、同年11月4日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年2月19日付けで拒絶査定されたところ、同年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後当審において令和4年1月5日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月11日に意見書及び手続補正書(以下「本件補正書」といい、これによる補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2.原査定の概要

1 理由1(新規性
請求項1−4、6−9、11−15に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2 理由2(進歩性
・請求項5・18に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2・3の記載に裏付けられる周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項10、16−17、19に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 引用文献等一覧
引用文献1.中国特許出願公開第104699242号明細書
引用文献2.特開2014−200681号公報
引用文献3.特開2014−168594号公報

第3.当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

(1)理由1(明確性
本件出願は、特許請求の範囲の記載が、下記アの点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 請求項1・13・16に「・・・前記動きアーチファクトが発生するものと決定する」なる記載があるが、「発生するもの」とは、未来・現在・過去何れの「発生」を指すのか明確でない。

(2)理由2(進歩性
本件出願の請求項1〜19に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献4〜6に記載された技術事項、及び引用文献2・3に裏付けられるものを含む周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
引用文献1:中国特許出願公開第104699242号明細書
引用文献2:特開2014−200681号公報
引用文献3:特開2014−168594号公報
引用文献4:特開平6−7308号公報
引用文献5:特開2011−200574号公報
引用文献6:特開2012−098771号公報

第4.本件発明
本願請求項1〜16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明16」という。)は、本件補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜16に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。(各構成単位冒頭の「1A」などは分説番号であり、以下、各構成単位を該分説番号により「構成1A」などという。)

「 【請求項1】
1A 身体の動きを認識して腕時計型ウェアラブル装置の機能を制御するための動作認識方法であって、
1B ユーザの第1手に着用する前記腕時計型ウェアラブル装置に含まれる生体信号センサの出力信号から前記ユーザが前記ユーザの第2手を用いて前記生体信号センサ又は前記生体信号センサの周辺に加える物理的圧力又は動きによって発生する動きアーチファクトを検出するステップと、
1C 前記動きアーチファクトの信号パターンが予め登録された基準信号パターンに対応する場合、前記基準信号パターンに対応するターゲット装置の機能を制御する制御信号を生成するステップと、を有し、
1D 前記基準信号パターンは、ユーザ選択によって機能の種類が決定され、前記決定された機能の種類に対応する動きアーチファクトの信号パターンを登録することによって生成され、
1E 前記信号パターンの登録は、ユーザが登録しようとする動作を行うとき、前記出力信号に示された動きアーチファクトの信号パターンを格納することを含み、
1F 前記動きアーチファクトを検出するステップは、
前記生体信号センサの出力信号を所定の時間周期でサンプリングするステップと、
1G 前記サンプリングされた信号値の平均値を決定するステップと、
1H 前記決定された平均値と前記サンプリングされた出力信号の信号値との偏差を決定するステップと、
1I 前記偏差の大きさが予め設定された閾値よりも大きい場合、前記動きアーチファクトが発生したものと決定するステップと、を含み、
1J 前記制御信号を生成するステップは、前記動きアーチファクトの信号パターン及び少なくとも1つの基準信号パターンに基づいて前記腕時計型ウェアラブル装置を振る動作、前記腕時計型ウェアラブル装置を押す動作、及び前記腕時計型ウェアラブル装置を叩く動作のうち、前記第2手により行われた動作の種類を決定し、前記決定された動作の種類に対応して前記ターゲット装置の機能を制御する制御信号を生成することを特徴とする
1K 動作認識方法。
【請求項2】
2A 前記出力信号から動きアーチファクトが検出されない場合、前記出力信号から検出された生体信号に基づいてユーザの健康情報を推定するステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の動作認識方法。
【請求項3】
3A 前記制御信号を生成するステップは、
前記出力信号から検出された生体信号に基づいてユーザ認証を行うステップと、
3B 前記ユーザ認証が成功した場合に前記制御信号を生成するステップと、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の動作認識方法。
【請求項4】
4A 前記制御信号を生成するステップは、前記予め登録された基準信号パターンのうちから前記動きアーチファクトの信号パターンに対応する基準信号パターンがあるか否かを判定するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の動作認識方法。
【請求項5】
5A前記ターゲット装置の機能を制御する制御信号を生成するステップは、前記ウェアラブル装置の機能又は前記ウェアラブル装置に接続された他の装置の機能を制御するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の動作認識方法。
【請求項6】
6A 前記他の装置は、移動端末装置、モノのインターネット(IoT)装置、及びスマート自動車のいずれか1つであることを特徴とする請求項5に記載の動作認識方法。
【請求項7】
7A 前記動きアーチファクトを検出するステップは、所定の時間区間における前記出力信号の平均値に基づいて前記動きアーチファクトが発生したか否かを判定するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の動作認識方法。
【請求項8】
8A 前記機能を実行する装置に前記制御信号を無線で送信するステップを更に含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の動作認識方法。
【請求項9】
9A 前記生体信号センサは、光電容積脈波信号及び心電図信号のうちの少なくとも1つを含む生体信号を測定し、
9B 前記生体信号は、ユーザの健康状態に関するものであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の動作認識方法。
【請求項10】
10A ハードウェアと結合してコンピュータに請求項1乃至9のいずれか一項に記載の動作認識方法を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項11】
11A 身体の動きを認識して腕時計型ウェアラブル装置の機能を制御するための動作認識装置であって、
11B 少なくとも1つのプロセッサと、
11C 前記プロセッサによって実行される命令を格納する少なくとも1つのメモリと、を備え、
11D 前記プロセッサは、前記命令によって、
ユーザの第1手に着用する前記腕時計型ウェアラブル装置に含まれる生体信号センサの出力信号から前記ユーザが前記ユーザの第2手を用いて前記生体信号センサ又は前記生体信号センサの周辺に加える物理的圧力又は動きによって発生する動きアーチファクトを検出する動作と、
11E 前記動きアーチファクトの信号パターンが予め登録された基準信号パターンに対応する場合、前記基準信号パターンに対応するターゲット装置の機能を制御する制御信号を生成する動作と、を実行し、
11F 前記基準信号パターンは、ユーザ選択によって機能の種類が決定され、前記決定された機能の種類に対応する動きアーチファクトの信号パターンを登録することによって生成され、
11G 前記信号パターンの登録は、ユーザが登録しようとする動作を行うとき、前記出力信号に示された動きアーチファクトの信号パターンを格納することを含み、
11H 前記動きアーチファクトを検出する動作は、
前記生体信号センサの出力信号を所定の時間周期でサンプリングする動作と、
11I 前記サンプリングされた信号値の平均値を決定する動作と、
11J 前記決定された平均値と前記サンプリングされた出力信号の信号値との偏差を決定する動作と、
11K 前記偏差の大きさが予め設定された閾値よりも大きい場合、前記動きアーチファクトが発生したものと決定する動作と、を含み、
11L 前記制御信号を生成するステップは、前記動きアーチファクトの信号パターン及び少なくとも1つの基準信号パターンに基づいて前記腕時計型ウェアラブル装置を振る動作、前記腕時計型ウェアラブル装置を押す動作、及び前記腕時計型ウェアラブル装置を叩く動作のうち、前記第2手により行われた動作の種類を決定し、前記決定された動作の種類に対応して前記ターゲット装置の機能を制御する制御信号を生成することを特徴とする
11M 動作認識装置。
【請求項12】
12A前記制御信号を生成する動作は、前記ウェアラブル装置の機能又は前記ウェアラブル装置に接続された他の装置の機能を制御する制御信号を生成することを特徴とする請求項11に記載の動作認識装置。
【請求項13】
13A 前記制御信号を生成する動作は、前記予め登録された基準信号パターンのうちから前記動きアーチファクトの信号パターンに対応する基準信号パターンがあるか否かを判定する動作を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の動作認識装置。
【請求項14】
14A ユーザの第1手の腕に着用する腕時計型ウェアラブル装置であって、
14B 生体信号を測定する生体信号センサと、
14C 前記生体信号センサの出力信号から前記ユーザが前記ユーザの第2手を用いて前記生体信号センサ又は前記生体信号センサの周辺に加える物理的圧力又は動きによって発生する動きアーチファクトを検出する動きアーチファクト検出器と、
14D 前記出力信号に動きアーチファクトが示されていると判定された場合、前記動きアーチファクトの信号パターンが予め登録された基準信号パターンに対応するか否かを判定する動作認識装置と、
14E 前記出力信号に動きアーチファクトが示されていないと判定された場合、ユーザの健康状態を決定するために前記生体信号センサの出力信号を処理する健康情報決定器と、を備え、
14F 前記基準信号パターンは、ユーザ選択によって機能の種類が決定され、前記決定された機能の種類に対応する動きアーチファクトの信号パターンを登録することによって生成され、
14G 前記信号パターンの登録は、ユーザが登録しようとする動作を行うとき、前記出力信号に示された動きアーチファクトの信号パターンを格納し、
14H 前記動きアーチファクトを検出器は、
前記生体信号センサの出力信号を所定の時間周期でサンプリングし、
14I 前記サンプリングされた信号値の平均値を決定し、
14J 前記決定された平均値と前記サンプリングされた出力信号の信号値との偏差を決定し、
14K 前記偏差の大きさが予め設定された閾値よりも大きい場合、前記動きアーチファクトが発生したものと決定し、
14L 前記動作認識装置は、前記動きアーチファクトの信号パターン及び少なくとも1つの基準信号パターンに基づいて前記腕時計型ウェアラブル装置を振る動作、前記腕時計型ウェアラブル装置を押す動作、及び前記腕時計型ウェアラブル装置を叩く動作のうち、前記第2手により行われた動作の種類を決定し、前記決定された動作の種類に対応してターゲット装置の機能を制御する制御信号を生成することを含むことを特徴とする
14M ウェアラブル装置。
【請求項15】
15A 前記動作認識装置は、前記生体信号に基づいてユーザ認証を行い、
15B 前記ユーザ認証が成功した場合に前記制御信号を生成することを特徴とする請求項14に記載のウェアラブル装置。
【請求項16】
16A 前記基準信号に基づいて制御信号を生成する制御信号ジェネレータと、
16B 前記制御信号を前記ウェアラブル装置から離れた場所に位置する制御対象装置に送信する送信機と、を更に含むことを特徴とする請求項14又は15に記載のウェアラブル装置。」

第5.当審拒絶理由についての検討

第5の1.進歩性について

1 引用文献1について

(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には以下の記載がある。

ア 「


」(特許請求の範囲 第1頁)
(当審訳: 「 【請求項1】
身体上の第1部位において実行する動作に応答し、前記第1部位又は前記第1部位に対応する第2部位の目標ドップラー測定情報を獲得し、
前記目標ドップラー測定情報及び参考情報に基づき、前記第1部位及び/又は前記動作を確定する方法を含むことを特徴とする動作及び/又は動作部位を確定する方法。」 )

イ 「











」(明細書5〜6頁)
(当審訳: 「[0103]本出願の実施例の前記方法は、使用者の身体上の第1部位において実行する動作に応答し、前記第1部位又は前記第1部位に対応する第2部位の目標血流情報を獲得し、前記目標血流情報及び参考情報に基づき、前記第1部位及び/又は前記動作を確定することによって、動作及び/又は動作部位を識別する新しい解決手段を提供する。
[0104]以下では、具体的な実施方法をあわせ、前記ステップS120及びS140の機能を詳細に説明する。
[0105]S120:使用者の身体上の第1部位において実行する動作に応答し、前記第1部位又は前記第1部位に対応する第2部位の目標血流情報を獲得する。
[0106]そのうち、前記第1部位も動作部位である。例えば、それは使用者の指、手のひら、腕、首、脚、足等であってよい。前記第部位は、動作部位として以外に、同時に目標血流情報の採集部位としてもよい。例えば、目標血流情報の採集センサがスマートバンドであるという状況において、腕は同時に動作部位及び採集部位とすることができる。
[0107]前記第2部位は別の選択可能な目標血流情報の採集部位であり、前記第2部位は前記第1部位に近接する部位である。言い換えると、前記第1部位及び前記第2部位の距離は閾値距離より小さく、例えば0.1mである。さらに発明者は研究過程において、前記第1部位及び前記第2部位の距離が小さいほど、前記方法の誤差は少なくなるということを発見した。一般的に、前記第1部位及び第2部位は前記使用者の同一肢体上に位置する。例えば、指は動作部位であるという状況において、同じ肢体上の腕は最終部位とすることができる。
[0108]明確にすると、以下では前記第1部位及び前記第2部位において、前記目標血流情報を実際に採集する部位は、前記目標血流情報の獲得部位と称する。
[0109]前記動作は日常的に用いる動作であってよく、例えば指によるタップ、拳を握る、拳を開く等である。また訓練動作であってもよく、例えば指の迅速なダブルタップである。
[0110]前記に述べられているように、前記血流情報はPPG情報又はドップラー測定情報であってよく、対応する前記目標血流情報は目標PPG情報又はドップラー測定情報であってよい。
[0111]図2は、人体のPPG情報に対して採集している概略図である。その原理は、発光部が放出した光が指先で反射した後、受光部が反射光の強度を検出するというものである。血液は光に対して吸収作用があり、反射光の強度は単位時間当たりで指先を流れる血液の流量が変化することに伴って変化する。反射光の変化のサイクルを測定することによりPPG情報を得ることができ、それによって心拍数等の情報を計算できる。血液中のヘモグロビンの緑色の光に対する吸収効果が最も良いので、一般的には緑色LEDを採用して発光部とすることができる。正常な状況において、図3が示しているようなPPG情報の波形図を測定することができる。
[0112]LDF情報採集の原理は、発光ユニットが放出したレーザ信号が赤血球で反射した後、光電センサが検出し、光電センサが出力した信号のドップラー効果を分析することにより、血液の流速及び血流量の大きさを測定できるというものである。LDF原理を基にした光血流センサ(optical blood flow sensor)は心拍数等を測定することに用いることができる。正常な状況において、図4が示すようなLDF情報の波形図を測定することができる。
[0113]S140:前記目標血流情報及び参考情報に基づき、前記第1部位及び/又は前記動作を確定する。
[0114]a)ある実施方法において、前記目標血流情報は目標PPG情報であり、対応して前記ステップS140はさらに、
[0115]S140a:前記目標PPG情報及び参考情報に基づき、前記第1部位及び/又は前記動作を確定する。」 )

ウ 「




」(明細書6〜7頁)
(当審訳: 「[0120]ある実施方法において、前記ステップS141aにおいて、前記参考情報は第1閾値であってよく、前記第1閾値は前記第1部位において実行していない動作、つまり保持して静止している状況において、前記獲得部位が採集したPPG情報(以下「正常な状況において採集したPPG情報」とする)に基づいて設定してよい。例えば正常な状況において採集したPPG情報の最小幅で設定する、又は正常な状況において採集したPPG情報の最大幅で設定する。
[0121]前記目標区別情報は、前記目標PPG情報中の一部の情報であり、前記動作による当該一部の情報は、正常な状況において採集したPPG情報と明らかに区別できる。例えば、中指で1回タップした状況において、得られる前記目標PPG情報の波形は図6が示したとおりである。そのうち、円の内の波形は円の外の波形と明らかに区別される。前記円の内の波形は前記目標区別情報に対応する波形であり、それはまさに、前記中指で1回タップしたことにより正常なPPG波形に発生して変化して得られた波形である。見て分かるように、円の内の波形の最小幅は、正常な状況において採集したPPG情報の幅より明らかに小さい。
[0122]そのため、ある実施方法において、前記ステップS141aはさらに、
[0123]S141a’:前記目標PPG情報中の幅の値と前記参考情報の値の大きさを比較し、比較結果に基づき、前記目標区別情報を確定するステップを含む。
[0124]具体的には、前記参考情報が正常な状況において採集したPPG情報の最小幅であるという状況において、前記目標PPG情報中の幅の値を、前記参考情報の幅が小さい部分を比較し、前記目標区別情報として確定する。当然のことながら、前記参考情報が正常な状況において採集したPPG情報の最大幅であるという状況において、前記目標PPG情報における幅を前記参考情報の値が大きい部分を比較し、前記目標区別情報として確定する。図7を例に挙げると、これは拳を握った状況において腕が得たPPG情報の波形を示している。そのうち、実線の円内の部分波形は実線の円外の波形と明らかに区別される。前記実線の円内の部分波形は前記目標区別情報に対応する波形であり、これはまさに、前記拳を握ったことにより正常なPPG波形に発生して変化して得られた波形である。見て分かるように、実線の円の内の波形の最大幅は、正常な状況において採集したPPG情報の幅より明らかに大きい。」)

エ 「








」(明細書8〜9頁)
(当審訳: 「[0134]ある実施方法において、前記ステップS142aはさらに、
[0135]S142a’:前記目標区別情報が含む波の谷又は波の山の数に基づき、前記動作を確定するステップを含んでよい。
[0136]そのうち、前記目標区別情報中に含まれている波の谷又は波の山の数は、前記動作の実行回数と同じである。図6が示しているように、中指でシングルタップする動作状況において、対応する波の谷の数は1である。図7が示しているように、1回拳を握る状況において、対応する波の谷又は波の山の数は1である。さらに図9は人差し指でシングルタップする状況において得られた目標PPG情報の波形であり、円内の波形は前記目標区別情報に対応し、それに対応する波の谷又は波の山の数も1である。図10は人差し指でダブルタップする状況において得られた目標PPG情報の波形であり、円内の波形は前記目標区別情報に対応している。見て分かるように、このような状況において、前記目標区別情報に含まれている波の谷又は波の山の数は2である。
[0137]別の実施方法において、前記ステップS142aはさらに、
[0138]S142a”:前記目標区別情報に対応する周期に基づき、前記動作を確定するステップを含んでよい。
[0139]前記目標区別情報の対応する周期は、前記第1部位が実行する前記動作の周期に対応している。言い換えると、前記第1部位の毎回の前記動作を実行する時間が長いほど、前記目標区別情報の周期は長くなる。そのため、前記目標区別情報に対応する周期は、前記動作の実行速度に反応でき、それによって前記動作を確定できる。例えば、前記第1部位を脚として、当該脚部が実行する、持ち上げて下ろすという動作の周期が0.3sである場合、対応する動作を歩行であると確定できる。当該脚部が実行する、持ち上げて下ろすという動作の周期が0.03sである場合、対応する動作を走行であると確定できる。当然のことながら、前記第1部位が手であるという状況において、手を前後に動かすという周期に基づき、使用者が歩行又は走行であるかを判断することもできる。
[0140]別の実施方法において、図11を参照すると、前記ステップS142aはさらに、
[0141]S1421a:前記目標区別情報の波形と少なくとも既知の波形の相似度をそれぞれ計算し、計算結果に基づき、目標既知波形を確定し、
[0142]S1422a:前記目標既知波形に基づき、前記第1部位及び/又は前記動作を確定するステップを含んでよい。
[0143]そのうち、前記少なくとも既知波形は複数の既知波形の集合であってよく、事前に学習して得てよい。例えば使用者が事前に前記第1部位にそれぞれの動作を実行させ、対応する目標区別情報の波形を対応して獲得し、前記既知波形とする。それによって、前記第1部位、前記動作及び既知波形の三者間の対応関係を確立することができる。当該対応関係は表1が示しているとおりである。
・・・
[0146]実際の利用において、前記ステップS1421aで獲得された前記目標区別情報の波形は、それぞれ前記集合した各既知波形と相似度を計算でき、さらに相似度が最高である既知波形を前記目標既知波形として選択できる。それによって前記ステップS1422a中で、前記目標既知波形に基づき、前記第1部位及び/又は前記動作を確定できる。」)

オ 「










」(明細書10〜11頁)
(当審訳: 「0156]図13を参照すると、ある実施方法において、前記ステップS140bは、
[0157]S141b:前記目標ドップラー測定情報に対応する目標流速相関情報を確定し、
[0158]S142b:前記目標流速相関情報及び前記参考情報を基にして、前記第1部位及び/又は前記動作を確定するステップを含んでよい。
[0159]前記で示されているように、前記目標ドップラー測定情報は例えばLDF、LDV、超音波ドップラーシフト等であってよく、それはつながっている包絡波信号を含み、それに対して例えば高速フーリエ変換を行って対応する周波数域信号を得ることができ、前記周波数域信号中のドップラー周波数分量はまさに血流速度に比例し、それによって血液の流速を得られ、さらに血流速度及び血液の横断面が含む血液細胞数に基づき、血流流量を確定できる。

[0160]そのうち、前記目標流速相関情報のデータタイプは前記血流速度であってよく、前記血流流量であってもよい。言い換えると、前記目標流速相関情報は目標血流速度情報又は目標血流流量情報であってよい。前記目標ドップラー測定情報中には前記動作により発生するノイズを含んでいる。そのため、前記目標流速相関情報中には前記ノイズも含まれている。具体的には、前記ノイズには運動による血流速度の変化及び/又は前記目標ドップラー測定情報の測定装置及び肢体が接触して変化したことによる測定誤差が含まれている(それぞれの動作により、測定装置と肢体の接触で発生したそれぞれの変化)。一般的なLDF測定過程において、人々は一般的に極力このようなノイズを回避するが、本出願ではこのようなノイズを利用して前記動作に対する識別を実現する。
[0161]ある実施方法において、前記ステップS142bはさらに、
[0162]S1421b:前記目標流速相関信号及び前記参考情報に基づき、目標区別情報を確定し、
[0163]S1422b:少なくとも前記目標区別情報に基づき、前記第1部位及び/又は前記動作を確定するステップを含んでよい。
・・・
[0176]前記ステップS1422bにおいて、少なくとも前記目標区別情報に基づき、前記第1部位及び/又は前記動作を確定する。ある実施方法において、それは、
[0177]S14221b:前記目標区別情報の波形と少なくとも既知波形との相似度をそれぞれ計算し、計算結果に基づき、目標既知波形を確定し、
[0178]S14222b:前記目標既知波形に基づき、前記第1部位及び/又は前記動作を確定するステップを含んでよい。」)

カ 「



」(明細書12頁)
(当審訳:「[0201]図20は、本発明の1つの実施例の前記動作及び/又は動作部位を確定する装置のモジュール構造の概略図である。前記動作及び/又は動作部位を確定する装置は、1つの機能モジュールとしてスマートバンド、スマートウォッチ等の着用可能装置に設置されている。当然のことながら、1つの独立した着用可能装置として使用者に提供して使用してよい。」

キ 「



」(明細書13頁)
(当審訳: 「[0207]そのうち、前記第1部位は動作部位でもある。例えば、それは使用者の指、手のひら、腕、首、脚、足等であってよい。前記第1部位は動作部位以外として、同時に目標血流情報の採集部位であってよい。例えば、目標血流情報の採集センサはスマートバンドである状況において、腕は同時に動作部位及び採集部位となってよい。」 )

ク 「






」(明細書15〜16頁)
(当審訳: 「[0240]さらに図24を参照すると、別の実施方法において前記第1確定モジュール2020は、
[0241]第3確定ユニット2023aであって、前記目標PPG情報の信号特徴を確定することに用いられるものと、
[0242]第4確定ユニット2024aであって、前記信号特徴及び前記参考情報に基づき、前記第1部位及び/又は前記動作を確定することに用いられるものと、を含む。
[0243]前記目標PPG情報の信号特徴は、前記目標PPGのフットプリント、平均値、差分中の少なくとも1つを含む。前記フットプリントは前記目標PPG情報の幅、位相、周波数スペクトル中の少なくとも1組で構成される。全平均値は前記目標PPG情報の幅、位相、周波数スペクトル中の少なくとも1つの平均値である。前記差分は前記目標PPG情報の幅、位相、周波数スペクトル中の少なくとも1つの差分である。
[0244]前記参考情報は事前に学習して得る参考信号特徴であってよく、例えば学習段階において前記表1に従って対応する動作を実行し、対応するPPG情報の信号特徴を前記参考情報として対応して獲得できる。具体的な利用において、得られた前記目標PPG情報の信号特徴と複数の参考情報との相似度を計算し、相似度が最高である参考情報に対応する部位及び/又は動作を前記第1部位及び/又は前記動作としてよい。」)

ケ 「



」(明細書16頁)
(当審訳:「[0247]図25を参照すると、ある実施方法において、前記第1確定モジュール2020は、
[0248]第1確定サブモジュール2021bであって、前記目標ドップラー測定情報の信号特徴を確定することに用いられるものと、
[0249]第2確定サブモジュール2022bであって、前記信号特徴及び前記参考情報に基づき、前記第1部位及び/又は前記動作を確定することに用いられるものと、を含んでよい。
[0250]前記目標ドップラー測定情報の信号特徴は、前記目標ドップラー測定情報のフットプリント、平均値、差分中の少なくとも1つを含む。前記フットプリントは前記目標ドップラー測定情報の幅、位相、周波数スペクトル中の少なくとも1組で構成される。全平均値は前記目標ドップラー測定情報の幅、位相、周波数スペクトル中の少なくとも1つの平均値である。前記差分は前記目標ドップラー測定情報の幅、位相、周波数スペクトル中の少なくとも1つの差分である。
[0251] 前記参考情報は事前に学習して得る参考信号特徴であってよく、例えば学習段階において前記表1に従って対応する動作を実行し、対応する前記目標ドップラー測定情報の信号特徴を前記参考情報として対応して獲得できる。具体的な利用において、得られた前記目標ドップラー測定情報の信号特徴と複数の参考情報との相似度を計算し、相似度が最高である参考情報に対応する部位及び/又は動作を前記第1部位及び/又は前記動作としてよい。」 )

コ 「



」(明細書18頁)
(当審訳: 「[0275] そのうち、前記少なくとも既知波形は複数の既知波形の集合であってよく、事前に学習して得てよい。例えば使用者が事前に前記第1部位にそれぞれの動作を実行させ、対応する目標区別情報の波形を対応して獲得し、前記既知波形とする。それによって、前記第1部位、前記動作及び既知波形の三者間の対応関係を確立することができる。当該対応関係は表1が示しているとおりである。」)

サ 「






」(明細書18〜19頁)
(当審訳: 「[0283]第2確定モジュール2030であって、前記第1部位及び/又は前記動作に対応する入力情報を確定することに用いられるものを含む。
[0284]そのうち、前記第1部位及び/又は前記動作と前記入力情報との間の対応関係は、事前に確定してよく、その対応関係は表2が示しているとおりである。第2行を例に挙げると、スマートバンドがスマートグラスと通信していると仮定すると、スマートバンドは使用者の動作命令を獲得し、それによって前記スマートグラスを制御する。スマートバンドが人差し指のダブルタップの動作を識別する状況において、それはスマートグラスが現在使用者に示しているAPP(アプリ)を開く、例えば写真機能を開くことを制御することができる。表2が示している関係表は、事前に前記スマートバンド等の着用可能な装置内部に保存してよく、その取扱説明書中にこのような関係表を提供し、使用者が表2に類似した動作により対応する命令の入力を実行することを指導して訓練することができる。
[0285]本出願の実施例の前記入力情報を確定する方法及び装置の1つの利用場面は以下のとおりである:使用者は1つのスマートバンドを左手の腕部位に身に着けており、使用者が現在の時間を知りたいと考えている場合、使用者は右手の人差し指を左手の腕付近(例えば腕の方に近い側)において迅速に2回タップすると、バンドは左手腕のPPG情報の変化を検出することにより、使用者が短時間に2回押したことを識別し、対応する入力情報が時間を表示する命令であることを確定し、それによって当該命令を制御モジュールに入力し、制御モジュールはバンドを制御し、音声等の方式で現在の時間を出力する。使用者がバンドをスリープさせたいと考えている場合、使用者は右手の人差し指を左手の腕付近で長押しすると、バンドは左手腕部のPPG情報の変化を検出し、使用者が人差し指を左手腕付近で3秒を超えて長押ししていることを識別し、対応する入力情報がスリープ命令であるということを確定し、それによって当該命令を制御モジュールに入力し、制御モジュールはバンドがスリープモードに入ることを制御する。」)

シ 「






」(明細書19頁)
(当審訳: 「[0286]本出願の別の実施例の前記動作及び/又は動作部位を確定する装置のハードウェアの構造は図31が示しているとおりである。本出願の具体的な実施例は前記動作及び/又は動作部位を確定する装置の具体的な実現に対して限定するものではない。図31を参照すると、前記装置3100は、
[0287]プロセッサ(processor)3110、通信インターフェース(communication interface)3120、メモリ(memory)3130及び通信バス3140を含んでよい。そのうち、
[0288]プロセッサ3110、通信インターフェース3120及びメモリ3130は通信バス3140により完全に相互間で通信を行う。
[0289]通信インターフェース3120はその他ネットワーク要素と通信を行うことに用いられる。
[0290]プロセッサ3110はプログラム3132を実行することに用いられ、具体的には上記図1が示している方法の実施例中の関連ステップを実行できる。
[0291]具体的には、プログラム3132はプログラムコードを含んでよく、前記プログラムコードはコンピュータの操作命令を含む。
[0292]プロセッサ3110は1つの中央演算処理装置CPU、又は特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit)、又は本出願の実施例を実施するように設定された1つ以上の集積回路であってよい。
[0293]メモリ3130はプログラム3132を保存するために用いられる。メモリ3130は高速RAMメモリを含んでよく、さらに不揮発性メモリ(non-volatile memory)を含んでよく、例えば少なくとも1つの磁気ディスクである。プログラム3132は具体的には、
[0294]使用者の身体上の第1部位が実行する動作に応答し、前記第1部位又は前記第1部位に対応する第2部位の目標血流情報を獲得し、
[0295]前記目標血流情報及び参考情報に基づき、前記第1部位及び/又は前記動作を確定するステップを実行してよい。」 )

ス 「






」(明細書19〜20頁)
(当審訳: 「[0297]本分野の当業者は、本文が開示する実施例の説明の各例のユニット及び方法のステップをあわせ、電子ハードウェア、あるいはコンピュータソフトウェア及び電子ハードウェアの結合により実現できるということを気付くことができる。これらの機能は結局のところ、ハードウェア又はソフトウェアの方式で実行されるものであり、技術的解決手段の特定の利用及び設計の高速条件によって決まる。当業者は各特定の利用に対してそれぞれの方法を使用することにより、説明された機能を実現できるが、これらの実現には本出願範囲を超えないことを認識しなければならない。
[0298]前記機能がソフトウェア機能ユニットの形式で実現され、独立した製品として販売又は使用される場合、1つのコンピュータの可読な記憶媒体中に保存してよい。このような理解を基にして、本出願の技術的解決手段は本質的に、又は従来技術に対して貢献する部分又は当該技術的解決手段の部分は、ソフトウェア製品の形式で示すことができ、当該コンピュータソフトウェア製品は1つの記憶媒体中に保存され、1台のコンピュータ機器(パーソナルコンピュータ、コントローラ又はネットワーク機器などであってよい)が本出願の各実施例の前記方法の全て又は一部のステップを実行することに用いられる複数の命令を含んでいる。さらに前記記憶媒体は、USBディスク、携帯ハードディスク、読み出し専用メモリ(ROM, Read-Only Memory)、ランダム・アクセス・メモリ(Random Access Memory)、磁気ハードディスク又は光ディスク等の各種プログラムコードを保存できる媒体を含む。
[0299]以上の実施方法は本出願を説明するためだけに用いられており、本出願を制限する者ではない。当業者は、本出願の精神及び範囲から外れない状況において、さらに各種変化と変形を行うことができ、それによって全ての同等の技術的解決手段も本出願の範疇に入っており、本出願の特許請求の範囲は請求項により限定されている。」)

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)に摘記した記載自項によれば、引用文献1には次の発明が記載されているといえる。(分節番号については、上記第4で述べたものと同様である。また、各構成単位中または末尾の括弧内に引用文献の引用箇所を段落番号などで示す。)

ア 引用発明1−1
「a1 使用者の身体上の第1部位において実行する動作に応答し、前記第1部位又は前記第1部位に対応する第2部位の目標血流情報を獲得し、前記目標血流情報及び参考情報に基づき、前記第1部位及び/又は前記動作を確定することによって、動作及び/又は動作部位を識別し、([0103]、[0109]、[0110])
a2 例えば、目標血流情報の採集センサは腕を採集部位とするスマートバンドやスマートウォッチであり、例えばスマートバンドがスマートグラスと通信していると仮定すると、スマートバンドが人差し指のダブルタップの動作を識別する状況において、それはスマートグラスが現在使用者に示しているAPP(アプリ)を開く、例えば写真機能を開くことを制御する方法であって、([0201]、[0207]、[0284])
b1 使用者は、例えば1つのスマートバンドを左手の腕部位に身に着けており、使用者が現在の時間を知りたいと考えている場合、使用者は右手の人差し指を左手の腕付近(例えば腕の方に近い側)において迅速に2回タップすると、スマートバンドは左手腕のPPG情報の変化を検出するものであり、([0285])
b2 前記目標血流情報は、発光部が放出した光が指先で反射した後、受光部が反射光の強度を検出する目標PPG情報、又は、
発光ユニットが放出したレーザ信号が赤血球で反射した後、光電センサが検出し、光電センサが出力した信号のドップラー効果を分析することにより、血液の流速及び血流量の大きさを測定できる目標ドップラー(LDF)測定情報であってよく、([0110]〜[0114])
前記動作による前記目標PPG情報中の一部の情報であり、正常な状況において採集したPPG情報と明らかに区別できる目標区別情報を区別し、確定し、([0120]〜[0124])
また、目標ドップラー測定情報に対応する目標流速相関情報を確定し、前記目標ドップラー測定情報中に含まれる、前記動作により発生するノイズを利用して前記動作に対する識別を実現すべく、目標区別情報を確定し、([0157]〜[0162])
c 前記目標区別情報が含む波の谷又は波の山の数、前記目標区別情報に対応する周期、前記目標区別情報の波形と少なくとも既知波形の相似度に基づき、前記動作を確定し、([0135]、[0138]、[0141]〜[0142]、[0176]〜[0178])
d1 ここで、前記「目標区別情報が含む波の谷又は波の山の数」に基づくものについては、例えば、前記目標区別情報中に含まれている波の谷又は波の山の数は、前記動作の実行回数と同じである、中指でシングルタップする動作状況において、対応する波の谷の数は1である、1回拳を握る状況において、対応する波の谷又は波の山の数は1である、というものであり、([0136])
d2 前記「目標区別情報に対応する周期」に基づくものについては、例えば、前記目標区別情報の対応する周期は、前記第1部位が実行する前記動作の周期に対応している、というものであり、([0139])
d3 前記「既知波形」に基づくものは、例えば、使用者が事前に前記第1部位にそれぞれの動作を実行させ、対応する目標区別情報の波形を対応して獲得し、前記既知波形とし、それによって、前記第1部位、前記動作及び既知波形の三者間の対応関係を確立することができ、前記目標区別情報の波形は、それぞれ前記集合した各既知波形と相似度を計算でき、さらに相似度が最高である既知波形を前記目標既知波形として選択できる、というものであり、([0143]、[0146]、[0275])
e1 例えば使用者が現在の時間を知りたいと考えている場合、使用者は右手の人差し指を左手の腕付近(例えば腕の方に近い側)において迅速に2回タップすると、スマートバンドは左手腕のPPG情報の変化を検出することにより、使用者が短時間に2回押したことを識別し、音声等の方式で現在の時間を出力し、
また、例えば使用者は右手の人差し指を左手の腕付近で長押しすると、スマートバンドは左手腕部のPPG情報の変化を検出し、使用者が人差し指を左手腕付近で3秒を超えて長押ししていることを識別し、スマートバンドがスリープモードに入ることを制御するものであり、([0285])
e2 動作の確定については、
例えば学習段階において対応する動作を実行し、対応するPPG情報の信号特徴を参考情報として対応して獲得し、得られた目標PPG情報や目標ドップラー測定情報の信号特徴と複数の参考情報との相似度を計算し、相似度が最高である参考情報に対応する部位及び/又は動作を前記第1部位及び/又は前記動作とするものであり、([0244])、[0251])
l 使用者の身体上の前記第1部位において実行する前記動作に応答し、前記第1部位又は前記第1部位に対応する第2部位の目標血流情報を獲得するものであり、([0105])
m 前記目標PPG情報が対応するPPG情報によって心拍数等の情報を計算でき、([0111])
前記目標ドップラー(LDF)情報が対応するLDF原理を基にした光血流センサ(optical blood flow sensor)は心拍数等を測定することに用いることができる、
k 動作及び/又は動作部位を識別する方法。」

イ 引用発明1−10
「10a 引用発明1−1の方法であって、電子ハードウェア、あるいはコンピュータソフトウェア及び電子ハードウェアの結合により実現でき、前記機能はハードウェア又はソフトウェアの方式で実行され、前記機能がソフトウェア機能ユニットの形式で実現され、独立した製品として販売又は使用される場合、1つのコンピュータの可読な記憶媒体中に保存される方法。([0297]〜[0298])」

ウ 引用発明1−11
「11a 引用発明1−1の方法の手順が、電子ハードウェア、あるいはコンピュータソフトウェア及び電子ハードウェアの結合により実現でき、
11b 前記手順はハードウェア又はソフトウェアの方式で実行され、
11c 前記手順がソフトウェア機能ユニットの形式で実現され、
11d 独立した製品として販売又は使用される場合、1つのコンピュータの可読な記憶媒体中に保存され、
11e 前記保存されたコンピュータソフトウェアが含む複数の命令を用いて、1台のコンピュータ機器(パーソナルコンピュータ、コントローラ又はネットワーク機器などであってよい)が前記方法の全て又は一部のステップを実行する、
11f 装置。([0297]〜[0298])」

2 引用文献2について
引用文献2には次の記載がある。

・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両乗員を識別するための、コンピュータにより実行される方法であって、複数のセンサから、心臓の活動の測定を示す信号を受信することと、前記信号の複数のバイオメトリック特徴に基づいてバイオマーカを決定することと、前記バイオマーカに基づいて前記車両乗員を識別することと、を含む方法。
・・・
【請求項4】
前記心臓の前記活動の測定が心臓の波形である、請求項1に記載の方法。」

・「【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
自動車の様々な車両機能は、個人識別(すなわち、運転者及び乗員の識別)を利用している。例えば、個人識別により、様々な車両システム及び車両システムデータに関する入力、アクセス、起動、パーソナライゼーション及び変更の制御が容易となる。固有の個人識別は、車両システム及びデータにかかる正確で安全な操作だけでなく、カスタムされた車両環境及び一人一人に合わせた仕上がりの良いドライビング体験も提供する。」

・「【0039】
図5(c)は、心臓の活動の測定値を表す光学信号からの心臓の波形514を示す。光学信号は、光電子センサ又はPPG装置から発生される光電式容積脈波(PPG)信号であってよい。心臓の波形514は、拍動血流の測定値を表すPPG信号である。心臓の波形514は、心臓の波形400と同様の信号の複数の特徴を含み得る。代表的な信号の複数の特徴としては、ピーク518、又は、これとは異なる波形514についての波の時間的長さ、ピーク、特徴を挙げることができる。信号特徴は、一定の時間にわたって信号内で繰り返し発生し得る。例えば、図5(d)は、一連のピーク520、522、524を有する一連の心臓の波形(すなわち、心臓の波形514)を有する光学信号516を示す。また、波形514及び/又は信号516の他の特性は、信号特徴として識別できることが理解される。」

3 引用文献3について
引用文献3には次の記載がある。

・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者から発せられる生体情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した生体情報を記憶する記憶部と、前記取得部が取得した生体情報および前記記憶部に記憶された生体情報とを比較して認証を行う第1の認証部と、前記第1の認証部とは異なる認証を行う第2の認証部と、前記記憶部に記憶された生体情報の量が予め定められた量未満であれば、前記第1の認証部での認証に代えて、前記第2の認証部に認証させる代替部と、を備える認証装置。」

・「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証装置および認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体から発せられる種々の情報(以後、「生体情報」と称する)を認証に用いた認証機能が、例えば携帯端末等に導入されている。特許文献1には、使用者の脈波を用いた生体識別装置が記載されている。生体情報の一つである脈波には使用者各個人の特徴が表れる。よって、生体識別装置は、登録者になりすました他人の誤った認証を防止できる。
・・・
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、認証装置として携帯端末を例にし、生体情報として脈波を例にして、説明する。
【0012】
携帯端末1は、図1に示すように、取得部2と、記憶部3と、第1の認証部4と、第2の認証部5と、代替部6と、を備える。記憶部3と、第1の認証部4と、第2の認証部5と、代替部6とは、携帯端末1に設けられているCPU(CentralProcessingUnit)が例えば携帯端末1に設けられているROM(ReadOnlyMemory)に記憶されたプログラムを実行することで実現される。
【0013】
取得部2は、携帯端末1の使用者から発せられる脈波を取得する。そして、取得部2は、取得した脈波に対応する脈波データを作成する。取得部2は、例えば、圧力の変化を検出することで、脈波を検出するセンサである。このセンサは、使用者が触れることができる位置、例えば、携帯端末1の筐体に、配置されている。」

・「【0031】
まず、記憶部3は、RAMに既に記憶されている脈波データから、個人特有脈波データを作成する(ステップS3)。その後、取得部2は、脈波を取得して、取得した脈波から脈波データを作成する(ステップS4)。
【0032】
その後、第1の認証部4は、作成した脈波データと、作成した個人特有脈波データとを比較照合して、脈波データと個人特有脈波データの各値とが合致しているかを判定する脈波データ判定処理を実行する(ステップS5)。
【0033】
脈波データ判定処理の例を、図5のフローチャートに示す。脈波データ判定処理では、第1の認証部4は、まず、脈波データで示される脈波の周期が個人特有脈波データで示される脈波の周期の誤差範囲内であるか否かを判定する(ステップS11)。
【0034】
正規の使用者である場合(なりすまし者でない場合)、第1の認証部4は、脈波データで示される脈波の周期が個人特有脈波データで示される脈波の周期の誤差範囲内であると判定する(ステップS11;Yes)。
【0035】
次に、第1の認証部4は、脈波データで示される脈波の最大値が個人特有脈波データで示される脈波の最大値の誤差範囲内であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0036】
正規の使用者である場合(なりすまし者でない場合)、第1の認証部4は、脈波データで示される脈波の最大値が個人特有脈波データで示される脈波の最大値の誤差範囲内であると判定する(ステップS12;Yes)。」

4 引用文献4について

(1)引用文献4には次の事項が記載されている。

・「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は医療モニタ分野に関し、特に血圧のモニタに関する。詳細には、本発明は血圧測定装置における人為的アーチファクトの検出方法に関する。」

・「【0014】
【課題を解決するための手段】
・・・
【0015】
患者の実際の血圧を表す時間順のサンプルは、圧力変換器によりディジタル化されたサンプルでもよい。しかし、事前処理されたサンプルも使用可能であることが理解されよう。事前処理には例えばフィルタリングや平均化が含まれる。例えば、出願人のモニタは(125Hzに対応する)8msec間隔で血圧のサンプル抽出を行う。しかし、本発明では125Hzのサンプル抽出速度は必要ないことが判明している。従って、32msec間隔で時間順の(平均化された)サンプルを作成するために4つの(オリジナルの)サンプルが平均化される。基本的には、CPU時間を節減するために、平均化期間をできるだけ長く(即ち、本発明の方法の効率に影響を及ぼさないように)することが有利である。従って、「実際の」という用語は、サンプルが処理される時点と全く同じ時点でサンプルが抽出されなければならないということを意味するものではない。実際には、血圧サンプルの実際の出現と、時間順でのサンプルの出現との間には(例えばCPUの過負荷等により発生する)かなりの時間的遅延が生ずることがあってもよい。
【0016】
上記以外の事前処理方法(利得調整、50Hzノッチフィルタリング等)を利用することも可能である。
【0017】
次いで、先行する血圧値に基づいて平均値が算出される。この平均値を以降で「比較値」と称することにする。比較値を算出する目的は血圧の長期又は中期の平均値を提供することであり、即ち、その平均値は血圧の履歴を表している。
【0018】
本発明の好適実施例では、平均血圧値は、検出された各心拍間で(即ち各脈動間で)算出される。
これは「心拍間平均血圧」とも呼ばれる。この心拍間平均血圧を算出するのに、前述のELLISの特許(米国特許第4,667,680号、ここでは本引用をもってその全てを包含させるものとする)に開示された方法が利用される。
ここでの「平均」とは、一回の脈動中の平均血圧が算出されることを意味する(この場合には心臓収縮期並びに弛緩期の血圧も算出されるが、本発明の好適実施例では弛緩期の血圧は採用しない)。
【0019】
上述の心拍間平均血圧は比較値を算出するために用いられる。この比較値を得るために16の連続する心拍間平均血圧が平均化されることが好ましい。しかし、平均化される心拍間平均血圧値の数は用途上の必要性に応じて変更することも可能である。
【0020】
上記平均化方法は本発明の好適実施例と関連するものである。発明者が実施した広範なテストにより、「移動平均」法(即ち一定のタイムウィンドウに亘って算出された平均値)がアーチファクト検出の必要性を満たす最良の方法であることが明らかとなった。これは、その結果として得られる比較値が、患者の血圧の履歴を精確に反映し、しかも血圧の変化を充分に迅速に追跡するからである。このような移動平均値は下記の公式によって特徴づけられる。」

・「【0026】
次のステップでは、前記時間順のサンプルの少なくとも一つが平均値(比較値)と比較される(同様に、時間順のサンプルから導出された値、例えは短期の平均値、又はその他の導出値を比較値と比較することも可能であることが理解されよう)。この比較における条件が「真」である場合、それは、時間順のサンプルの値が長期又は中期の比較値を超えたというオーバーシュートを示し、これはひいては人為的アーチファクトの(最初の)指示となり得る。
【0027】
しかし、このようなオーバーシュートは通常の動作中にも発生し得る。従って、本発明では時間修飾子が与えられる。即ち、上記の条件は一定時間に亘って基本的に中断なく「真」でなければならない。これは、一旦検出されたオーバーシュートの「確認」と呼ばれる。時間修飾子は、一組の後続のサンプルについて上述の比較を単に行うことによって実現することができる。これらの比較の結果の全てによって、個々の時間順のサンプルが比較値より大きい振幅を有していることが判明した場合、これは、アーチファクトの明白かつ確実な指示であるとみなされる(これは、別の実施例では、特定の大多数の比較により肯定の結果が判明した(即ち時間順のサンプルの値が比較値を超えた)だけでも充分である)。
・・・
【0030】
(ここで、s(t)は時間順のサンプルの値を表し、m(t)は平均値を表す)本発明の場合には2秒の期間が優れた結果をもたらすことが判明した。
【0031】
前記期間中に上記方程式の有効性の検査を行う好適な方法は、所定期間に亘って、比較ステップを、又は計算及び比較ステップを反復することである。
例えば、時間順のサンプルは特定の期間で計算することができ、同じ時点で平均値(比較値)が計算され、比較が行われる(本発明の特定実施例ではこの期間は32msecに選択された。この期間は、人為的アーチファクトを確実に検出するのに充分な分解能であり、しかも、費やされるCPU時間は僅かである。しかし、これが限定的な例示ではないことは理解されよう)。
【0032】
また代替的に、期間の最初に一度だけ平均値を算出し、この値を時間ウィンドウ中の時間順のサンプル用の基準値として用いることも可能である。これらの実施例は全て本発明に含まれる。」

・「【0076】
図5は本発明による瀉水及びサンプル検出/抑止の基本動作を示すフローチャートである。モニタは血圧波形を8msec毎にサンプル抽出する。これらのサンプルは図5でSi(t)と示されている。
【0077】
しかし、瀉水及びサンプル検出を高信頼性をもって行うためには8msec間隔の分解能は必要ないことが判明した。従って、CPU(中央処理装置)時間を節減するため、図5のステップ17に示すように平均値バーs(t)が算出される。本実施例において説明する特定の実施例(後で詳述する)では、平均値バーs(t)は4つのサンプルに亘り算出される。」

・「【0108】
ボックス29で行われる動作は平均値即ち比較値バーm(t)の計算である。図示の例では、平均値は16の心拍間平均血圧値の移動平均として算出される。即ちn=16である。しかし、ここで用いる心拍間平均血圧値mi(パルス)は、任意に選択可能なものの1つであり、ここでは心拍間平均血圧値を生成する血圧計算器が利用可能となったためにその値を選択したに過ぎないことにに留意されたい(前述の米国特許第4,667,680号を参照のこと)。移動平均値バーm(t)を計算するために、別の血圧値を同様に良好に用いることが可能である。
【0109】
ここで、動作がステップ31に進んで、In_FS_Flagと称するフラグがテストされる。これは、検出されたアーチファクトの終了時に、所定期間例えば4秒間だけセットされるフラグである。言い換えると、In_FS_Flag=TRUEとは、アーチファクトが最近発生したことを意味している。
【0110】
ステップ31でのテストが否定である(In_FS_Flag=FALSE)場合、平均値バーm(t)は係数αだけ増大される。αは1より大きい定数である。これは好適には1.5(150%)である。平均値バーm(t)を増大することにより、アーチファクト検出器の感度が低下する。これに対応する動作を図6に符号32で示す。
・・・
【0113】
ステップ36で、バーs(t)が平均値即ち比較値バーm(t)と比較される。バーs(t)がバーm(t)未満である場合、即ちオーバーシュートが認められない場合、動作はラベル「C」に進む。これは、アーチファクトが検出されなかった場合にたどられる経路である。
【0114】
そうではない場合には、有効なアーチファクトが示される前に満たされなければならない別の条件がテストされる。これは図7へと続くラベル「B」に至る経路である。ボックス37で示すように、次のテストはs(t)の最小値のチェックを行う。sminは例えば4kPa(30mmHg)とすることができる。このテスト結果が否定である場合、動作はノード38(アーチファクトなし)に進む。そうではない場合は次の必要条件がテストされる。
【0115】
この条件は、ステップ39で、正の又は少なくともほんの僅かに負の勾配に関して行われるテストである。△minは好適には−0.66kPa(−5mmHg)である。ボックス39でのテストが否定である場合、アーチファクトは存在せず、動作はノード40に進む。
【0116】
また、ボックス39でのテストが肯定である場合には、アーチファクトの検出を肯定する全ての条件により、結果が肯定であることが判明する。上述のように、ここで、これらの条件が特定期間に亘って安定状態を保っているかどうかがテストされる。このテストは、ステップ41で「Conf_Timer」と呼ばれるカウンタをインクリメントし、そのカウンタ値をステップ42で最大値CTMAXと比較することによって行われる。CTMAXは好適には2秒に相当する値となる。
【0117】
Conf_Timerがその最大値に達した場合、アーチファクトが肯定されたことが示される。これは、ボックス43に示すように、F/S_Flagを設定することにより行われる。アーチファクトの検出後に必要な更に別の動作は次のとおりである。即ち、In_FS_Flagのセット(ボックス44)、In_FS_Timer(即ちIn_FS_Flagを制御するのに必要なタイマ:ステップ45)のリセット、及びLong_Timer_Flagのリセット(ステップ46)である。」

(2)引用文献4から認定される技術事項
上記(1)の記載事項から、引用文献4には次の技術事項(以下「技術事項4」という。)が記載されていると認定できる。

「血圧測定装置における人為的アーチファクトの検出方法において、
例えば16の、連続する心拍間平均血圧の、移動平均値または期間の最初に一度だけ算出した平均値バーm(t)のα倍(α>1;好適にはα=1.5)と、8msec毎にサンプル抽出した血圧値サンプルの4つのサンプルにわたる平均値バーs(t)とを比較し、バーs(t)≧バーm(t)であることを、アーチファクトの検出を肯定する条件の一つとする、検出方法。」

5 引用文献5について

(1)引用文献5には次の記載がある。

・「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カフ圧に重畳される心拍毎の動脈脈波成分に基づいて、最高血圧及び最低血圧を算出する振動法(オシロメトリック法)による電子血圧計に関する。
・・・
【0003】
しかし、血圧測定時に被測定者の腕や指など体の動きである体動(アーチファクト)が生じると、腕の筋肉が伸縮してカフ内の容積が変化し、結果としてカフ圧信号に急激な減圧又は加圧が生じる。このように急激なカフ圧変化が生じると、脈波を正確に検出することができず、血圧の測定精度に悪影響を与えてしまう。」

・「【0037】
この図2に示す圧力検出信号から、図1(b)に示した脈波検出手段13が検出した各脈波(体動等のノイズ成分も含む)を図3に示す。図3における横軸は各脈波が上昇し始める時点の脈波開始圧力〔mmHg〕であり、縦軸はその各脈波高(波高値)〔mmHg〕である。この図3に示すように、脈波高はカフ内圧力が高いときは小さく、減圧に従って大きくなり、最大波高値を示した後、再び小さくなる。しかし、体動等のノイズ成分はPn,Pmで示すような異常な波高値の脈波として検出される。
【0038】
図1(b)に示したノイズ分離記憶手段14が、図3に示した脈波成分に含まれるノイズを判定してそのノイズの波高値をノイズ値として正常な脈波の波高値とは区別して記憶する。そのノイズの判定方法は従来から種々行われているが、最も簡単な方法としては、ある脈波の次の脈波の波高値が所定比率(例えば2倍や3倍)以上のときは、後の脈波はノイズと判定する。
【0039】
あるいは、脈波の波高値の測定誤差の影響を少なくするために、複数の脈波(例えば3脈波や4脈波)の波高値の平均を、1脈波ずつずらして順次取っていってノイズを判定するようにしてもよく、その場合、平均をとる対象の複数の脈波の波高値とその平均を相互に比較し、所定比率(例えば2倍や3倍)以上の脈波をノイズと判定するとよい。図3において白丸印は1脈波ずつずらして3脈波ずつ順次平均をとった波高値を示す。
【0040】
その他、ある脈波の波高値に対して所定の比率で次の脈波の波高値の上限と下限を決め、次の脈波がその範囲外の波高値であった場合、一定時間内に所定値以上の変動があった場合、前後の脈波の波高値の平均値との差が所定値以上であった場合等、どのような方法で判断してもよい。図3において、脈波PmとPnはいずれもその波高値が直前の脈波の波高値の2倍以上であるためノイズと判定し、その各波高値をノイズ値として、他の正常な脈波の波高値とは区別して記憶する。」

(2)引用文献5から認定される技術事項
上記(1)の記載事項から、引用文献5には次の技術事項(以下「技術事項5」という。)が記載されていると認定できる。

「カフ圧に重畳される心拍毎の動脈脈波成分に基づいて、最高血圧及び最低血圧を算出する振動法(オシロメトリック法)による電子血圧計による血圧測定において、体動等のノイズ成分は異常な波高値の脈波として検出されることから、複数の脈波(例えば3脈波や4脈波)の波高値の平均を、1脈波ずつずらして順次取っていって、平均をとる対象の複数の脈波の波高値とその平均を相互に比較し、所定比率(例えば2倍や3倍)以上の脈波をノイズと判定する、または、前後の脈波の波高値の平均値との差が所定値以上であった場合ノイズと判定する、体動等のノイズの検出方法。」

6 引用文献6について
引用文献6には次の記載がある。

・「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および方法、並びに、プログラムに関し、特に、各種の機器を操作するためのジェスチャの認識に用いて好適な画像処理装置および方法、並びに、プログラムに関する。
・・・
【0003】
これらの技術の多くは、ユーザが身に付けたり、手に持ったりする、事前に登録された目標物体(例えば、専用の器具など)を追跡することにより、ユーザにより行われるジェスチャを認識する。」

・「【0033】
なお、後述するように、初期化動作と同様に、ユーザは任意の動作を操作動作として設定することができる。また、初期化動作と同様に、操作動作は、例えば、移動方向、移動距離、移動速度、回転角等の各種の特徴量により定義される。」

・「【0093】
[動作パターン登録処理]
次に、図6のフローチャートを参照して、情報処理システム1により実行される動作パターン登録処理について説明する。なお、この処理は、例えば、ジェスチャ認識処理の実行中に、ユーザが所定の操作を行ったとき開始される。
・・・
【0095】
ステップS102において、登録部24は、操作動作を登録する。具体的には、登録部24は、操作動作の登録のガイダンスの実行をガイダンス部25に指令する。ガイダンス部25は、対象機器13に指令を与え、操作動作の登録のガイダンスを実行させる。ユーザは、ガイダンスに従って、操作動作の登録を行い、登録部24は、登録された操作動作に対応する動作データ(操作動作データ)を記憶部26に記憶させる。
【0096】
その後、動作パターン登録処理は終了する。
【0097】
なお、ステップS101およびS102の処理は、順序を逆にしてもよい。また、初期化動作と操作動作を任意の順序で登録できるようにしてもよい。
【0098】
また、初期化動作および操作動作の登録方法は、特定の方法に限定されるものではなく、任意の方法を採用することができる。
【0099】
例えば、予め登録されている複数の動作パターンを矢印などにより示した一覧を、対象機器13の図示せぬ表示装置に表示し、初期化動作および各操作動作に適用する動作パターンをユーザに選択させるようにしてもよい。
【0100】
また、例えば、描画用の画面を対象機器13の図示せぬ表示装置に表示し、ユーザが、マウスなどの図示せぬ入力装置を用いて初期化動作または各操作動作に適用する動作パターン(動作の軌跡)を描画するようにしてもよい。この場合、例えば、描画した動作パターンに対応する動作データが生成され、記憶部26に記憶される。
【0101】
さらに、例えば、初期化動作または各操作動作に適用する動作を、実際に画像入力装置11の前でユーザに実行させるようにしてもよい。この場合、例えば、撮像した入力画像データに基づいて、ユーザの動作が抽出され、抽出された動作に対応する動作データが生成され、記憶部26に記憶される。
【0102】
このようにして、任意の動作パターンを初期化動作および操作動作として登録することができ、さらにユーザの利便性が向上する。」

7 対比・判断

7−1 本件発明1〜9について

(1)本件発明1と引用発明1−1との対比

ア 構成a1の「使用者の身体上の第1部位において実行する動作」、「人差し指のダブルタップの動作」は何れも、構成1Aの「身体の動き」に相当する。
構成a1の「動作及び/又は動作部位を識別」すること、構成a2の「スマートグラスが現在使用者に示しているAPP(アプリ)を開く、例えば写真機能を開くことを制御する」することはそれぞれ、構成1Aの「身体の動きを認識」すること、「ウェアラブル装置の機能を制御する」ことに相当する。
構成a2の「スマートウォッチ」は、構成1Aの「腕時計型ウェアラブル装置」に相当する。また、構成a2の「スマートバンド」も、少なくとも使用者の腕に装着され得る「ウェアラブル装置」である点で、構成1Aの「腕時計型ウェアラブル装置」と共通する(構成1Aの「ウェアラブル装置」に相当する。)。

イ(ア)構成b1の、使用者の「左手」、「右手」、「身につけ」ることは、それぞれ構成1Bの、「ユーザの第1手」、「ユーザの第2手」、「着用する」こと、に相当する。
また、構成b1の「スマートバンド」は構成a2で「目標血流情報の採集センサ」であるとされるものであり、腕に対し人差し指でタップすれば、該腕に物理的圧力が加えられ、また腕の組織に動きが与えられることが明らかであるから、構成b1で、「使用者は右手の人差し指を左手の腕付近(例えば腕の方に近い側)において迅速に2回タップする」ことは、構成1Bの「前記ユーザが前記ユーザの第2手を用いて・・・前記生体信号センサの周辺に加える物理的圧力又は動き」に相当するといえる。

(イ)構成b2の「発光部が放出した光が指先で反射した後、受光部が反射光の強度を検出する目標PPG情報」、「発光ユニットが放出したレーザ信号が赤血球で反射した後、光電センサが検出し、光電センサが出力した信号のドップラー効果を分析することにより、血液の流速及び血流量の大きさを測定できる目標ドップラー(LDF)測定情報」は何れも、構成1Bの「生体信号センサの出力信号」に相当する。
上記(ア)で説示した事項とも関連し、構成b2の「前記動作による前記目標PPG情報中の一部の情報であり、正常な状況において採集したPPG情報と明らかに区別できる目標区別情報」及び、「前記目標ドップラー測定情報中に含まれる、前記動作により発生するノイズを利用して前記動作に対する識別を実現すべく、」「確定し」た「目標区別情報」は何れも、動作によるものであり、正常なPPG信号とは異なる信号、またはノイズを利用した情報であるから、構成1Bの「動きアーチファクト」に相当する。

(ウ)上記(ア)・(イ)から、構成b1において、前記「タップ」により「スマートバンドは左手腕のPPG情報の変化を検出する」ことは、当該「変化」が生体信号由来ではなく「タップ」によるもので、生体信号センサにとっては、アーチファクト(ノイズ)にあたる信号を検出することにほかならないから、構成1Bの「前記ユーザが前記ユーザの第2手を用いて前記・・・前記生体信号センサの周辺に加える物理的圧力又は動きによって発生する動きアーチファクトを検出する」ことに相当するといえる。

ウ(ア)構成cの「前記目標区別情報が含む波の谷又は波の山の数」は、構成dで「前記目標区別情報中に含まれている波の谷又は波の山の数は、前記動作の実行回数と同じである、中指でシングルタップする動作状況において、対応する波の谷の数は1である、1回拳を握る状況において、対応する波の谷又は波の山の数は1である、というもの」と説明されるものであり、信号(グラフ)の形状(パターン)について、波の谷又は波の山があることやそれらの数がどうであるか、という類型化をするものにほかならないから、構成1Cの「基準信号パターン」に相当するといえる。

(イ)構成cの「前記目標区別情報に対応する周期」は、構成dで「前記「目標区別情報に対応する周期」に基づくものについては、例えば、前記目標区別情報の対応する周期は、前記第1部位が実行する前記動作の周期に対応している、というもの」と説明されるものであり、これも信号(グラフ)の形状について、その周期がどうであるかについて類型化するものにほかならないから、構成1Cの「基準信号パターン」に相当するといえる。

(ウ)構成cの「既知の波形」は、構成dで、「前記「既知の波形」に基づくものは、例えば、使用者が事前に前記第1部位にそれぞれの動作を実行させ、対応する目標区別情報の波形を対応して獲得し、前記既知波形とし、それによって、前記第1部位、前記動作及び既知波形の三者間の対応関係を確立することができ、前記目標区別情報の波形は、それぞれ前記集合した各既知波形と相似度を計算でき、さらに相似度が最高である既知波形を前記目標既知波形として選択できる、というもの」と説明されるものであって、これも信号(グラフ)の形状(パターン)について類型化するものにほかならず、構成1Cの「基準信号パターン」に相当するといえる。

(エ)構成cで「波の谷又は波の山の数」が「実行回数と同じ」ある数値を呈すること、「動作の周期が対応」すること、構成c・dで「既知の波形の相似度」が例えば「最高である」ことは、いずれも構成1Cの「前記動きアーチファクトの信号パターンが予め登録された基準信号パターンに対応する」ことに相当するといえる。

(オ)構成cで「前記目標区別情報が含む波の谷又は波の山の数、前記目標区別情報に対応する周期、前記目標区別情報の波形と少なくとも既知の波形の相似度に基づき、前記動作を確定」することは、これによって動作が確定されることにより、例えば構成a2で例示される「例えば、目標血流情報の採集センサは腕を採集部位とするスマートバンドである状況において、スマートバンドがスマートグラスと通信していると仮定すると、スマートバンドが人差し指のダブルタップの動作を識別する状況において、それはスマートグラスが現在使用者に示しているAPP(アプリ)を開く、例えば写真機能を開くことを制御する」という機器制御に結びつくことが明らかであり、この「動作を確定」から「APP(アプリ)を開く、例えば写真機能を開くことを制御する」に例示される機器制御に到る工程は構成1Cの「前記基準信号パターンに対応するターゲット装置の機能を制御する」工程に相当し、構成cにおける前記「・・・機器制御に到る工程」において、「スマートグラス」に例示される機器に対し前記機器制御を実現するために何らかの制御信号が発出されていることは自明であって、該制御信号の発出は構成1Cの「制御信号を生成する」ことに相当するといえる。

エ(ア)構成a2で「スマートバンドが人差し指のダブルタップの動作を識別する状況において、それはスマートグラスが現在使用者に示しているAPP(アプリ)を開く、例えば写真機能を開くことを制御する」際には、「人差し指のダブルタップの動作」は「スマートグラス」という機器「が現在使用者に示しているAPP(アプリ)を開く、例えば写真機能を開くことを制御する」という機能と関連づけられているのであり、
構成e1では、使用者の「右手の人差し指を左手の腕付近(例えば腕の方に近い側)において迅速に2回タップする」、「右手の人差し指を左手の腕付近で長押しする」なる動作が、それぞれ、スパートバンドにおける血流情報取得や動作確定を行う機能とは別の機能要素における、「音声等の方式で現在の時間を出力」する、「スリープモードに入る」という機能と関連づけられている。

(イ)上記(ア)から、引用発明1−1においては、使用者の複数の動作と、機器の複数の機能とがそれぞれ関連づけられているといえる。

(ウ)一方、構成d3には、「前記第1部位、前記動作及び既知波形の三者間の対応関係を確立する」際に、「使用者が事前に前記第1部位にそれぞれの動作を実行させ、対応する目標区別情報の波形を対応して獲得し、前記既知波形と」する工程が含まれている。

(エ)また、構成e2には、動作の確定を行う前提として、「学習段階において対応する動作を実行し、対応するPPG情報やドップラー情報信号の信号特徴を参考情報として対応して獲得」する工程が含まれている。
ここで、「学習」の主体は明示的ではないが、上記(ウ)で挙げた構成d3において、動作と既知波形すなわち信号特徴との関連づけが「使用者」の動作に基づいて行われていることに照らし、構成e2の各学習における動作と信号特徴との対応付けの主体も「使用者」である場合が少なくとも含まれることが明らかである。

(オ)上記(イ)・(ウ)・(エ)を総合すると、上記(ウ)の「対応関係の確立」及び上記(エ)の「学習段階」における、動作に対応した信号特徴を獲得する作業は、上記(イ)の、それぞれ異なる動作と関連づけられた機器の複数の機能それぞれに対して個別に行われることが明らかであるといえる。
ここで、構成cにおいて、動作の確定のために目標区別情報の波形との相似度を計算する対象となる「既知波形」は、構成d3で「集合した各既知波形」から「相似度が最高である既知波形を前記目標既知波形として選択できる」と特定されるとおり複数が、構成d3で明示的に特定され、構成e2でも事前実施が自明である「学習」と特定されるように、相似度の計算に対し事前に複数準備されているのであるから、事前に記憶されているものであることが自明である。そして、この「事前に記憶」することは、構成1Dの「登録」が記憶するとの意味を含むものであっても、これに相当する。
よって、前記のとおり引用発明1−1が備えることが自明である「対応関係の確立、及び学習段階、における、動作に対応した信号特徴を獲得する作業を、それぞれ異なる動作と関連づけられた機器の複数の機能それぞれに対して個別に行うこと」は、構成1Dの「前記決定された機能の種類に対応する動きアーチファクトの信号パターンを登録すること」に相当するといえる。

(カ)上記(オ)のとおりであるから、前記「対応関係の確立」及び「学習段階」において、使用者がそれぞれの機能に対応する動作を行うには、何れの機能に対する動作を行うのかを決めるべく、装置側から指示されるか、使用者自ら指定するか、いずれかの工程が必要になることが明らかであるから、引用発明1−1は、少なくとも、「『対応関係の確立』及び『学習段階』において、使用者がそれぞれの機能に対応する動作を行うにあたり、何れの機能に対する動作を行うのかを決める」工程を備えることが明らかであるといえる。
そして、該工程は構成1Dの「機能の種類が決定され」る工程に相当する。

(キ)よって、構成1Dに関しては、「動きアーチファクトの信号パターンを登録する」にあたり、登録先の(動作と関連づける対象の)機能の決定が「ユーザ選択によって」行われる点が引用発明1−1において当該決定の主体が明示的でない点で、本件発明1と引用発明1−1とは一応相違するといえる。

オ(ア)上記エ(オ)で引用発明1−1が備えると認定した「事前に記憶」すること、及び構成d3の「獲得」することは、構成1Eの「格納する」ことに相当する。

(イ)上記(ア)を踏まえれば、構成d3の「使用者が事前に前記第1部位にそれぞれの動作を実行させ、対応する目標区別情報の波形を対応して獲得」することは、構成1Eの「ユーザが登録しようとする動作を行うとき、前記出力信号に示された動きアーチファクトの信号パターンを格納すること」に相当する。

カ 構成a1で獲得された構成b2の「目標血流情報」に含まれる「目標PPG情報」及び「目標ドップラー情報」は、それぞれPPGやドップラー測定による血流情報測定の技術常識に照らしても、技術常識その中に構成c・d1・d3で「波」、「波形」を含む「目標区別情報」を含むものであることからみても、一定のサンプリング周期で取得される時系列信号からなることが自明である。
よって、引用発明1−1(構成a1)における目標血流情報を獲得する工程は、構成1Fの「生体信号センサの出力信号を所定の時間周期でサンプリングするステップ」に相当することが明らかであるといえる。

キ 構成jの「動作及び/又は動作部位を識別する方法」は構成1Jの「動作認識方法」に相当する。

(2)一致点と相違点
上記(1)のとおりであるから、本件発明1と引用発明1−1とは、下記アの点で一致し、下記イの各点で相違する。

ア 一致点
「1A’ 身体の動きを認識してウェアラブル装置の機能を制御するための動作認識方法であって、
1B’ ユーザの第1手に着用する腕時計型ウェアラブル装置に含まれる生体信号センサの出力信号から前記ユーザが前記ユーザの第2手を用いて前記生体信号センサの周辺に加える物理的圧力又は動きによって発生する動きアーチファクトを検出するステップと、
1C 前記動きアーチファクトの信号パターンが予め登録された基準信号パターンに対応する場合、前記基準信号パターンに対応するターゲット装置の機能を制御する制御信号を生成するステップと、を有し、
1D’ 前記基準信号パターンは、機能の種類が決定され、前記決定された機能の種類に対応する動きアーチファクトの信号パターンを登録することによって生成され、
1E 前記信号パターンの登録は、ユーザが登録しようとする動作を行うとき、前記出力信号に示された動きアーチファクトの信号パターンを格納することを含み、
1F 前記動きアーチファクトを検出するステップは、
前記生体信号センサの出力信号を所定の時間周期でサンプリングするステップと、を備える、
1K 動作認識方法。」

イ 相違点
(ア)相違点1(構成1D)
本件発明1が基準信号パターンを機能の種類に対応する動きアーチファクトの信号パターンを登録することによって生成するにあたり、機能の種類の決定を「ユーザ選択によって」行うのに対し、引用発明1−1では、該決定の主体が明示的でない点。

(イ)相違点2(構成1G〜1I)
本件発明1は、動きアーチファクトを検出するステップとして、サンプリングされた信号値の平均値を決定するステップと、前記決定された平均値と前記サンプリングされた出力信号の信号値との偏差を決定するステップと、前記偏差の大きさが予め設定された閾値よりも大きい場合、前記動きアーチファクトが発生するものと決定するステップと、を含むのに対し、引用発明1−1は該各ステップを含まない点。

(ウ)相違点3(構成1A・1B)
本件発明1は、機能を制御する対象であるウェアラブル装置も、ユーザの第1手に着用するウェアラブル装置も、「腕時計型ウェアラブル装置」であるのに対し、引用発明1−1では、ユーザの第1手に着用するウェアラブル装置には腕時計型ウェアラブル装置(スマートウィッチ)が含まれるものの、機能を制御する対象であるウェアラブル装置は「スマートグラス」である点。

(エ)相違点4(構成1J)
本件発明1は、「前記制御信号を生成するステップは、前記動きアーチファクトの信号パターン及び少なくとも1つの基準信号パターンに基づいて前記腕時計型ウェアラブル装置を振る動作、前記腕時計型ウェアラブル装置を押す動作、及び前記腕時計型ウェアラブル装置を叩く動作のうち、前記第2手により行われた動作の種類を決定し、前記決定された動作の種類に対応して前記ターゲット装置の機能を制御する制御信号を生成する」工程を備えるのに対し、引用発明1−1は、ウェアラブル装置を装着した腕自体をタップするものであり、腕時計型ウェアラブル装置自体に押すなどの作用を施すものではない点。

(3)相違点の検討

ア 相違点1について
(ア)上記(1)エ(カ)で説示したとおり、引用発明1−1において「対応関係の確立」及び「学習段階」において、使用者がそれぞれの機能に対応する動作を行うには、何れの機能に対する動作を行うのかを決めるべく、装置側から指示されるか、使用者自ら指定するか、いずれかの工程が必要になることが明らかといえる。
(イ)そして、検知した人体の動作に基づき機器を操作する技術は周知であるし、そのユーザーインターフェイスにおいて、任意の操作を選択して動作と該操作との関連づけの登録や変更登録を行うことも周知である。このことは、例えば上記2−6で摘記した、ジェスチャ認識による機器操作に関する引用文献6の【0097】に「初期化動作と操作動作を任意の順序で登録できるようにしてもよい」との記載によっても裏付けられる。
(ウ)以上のとおりであるから、引用発明1−1において相違点1の構成とすることは、上記(ア)における両工程の二択のうち後者を単に選択したにすぎず、また、上記(イ)のとおり周知技術に照らしても、当業者が容易に想到し得たことといえる。

イ 相違点2について
血圧など生体信号に含まれる体動に起因するアーチファクトの存在(可能性)を、生体信号の平均値を取得し、該平均値の定数倍に設定した閾値と判定対象の生体信号値とを比較し、判定対象の生体信号が該閾値を超えていることを条件として判定することは、引用文献4、5からそれぞれ認定される上記技術事項4、5によっても裏付けられるとおり、周知技術であるといえる。
ここで、「生体信号の平均値」、は構成1Fの「サンプリングされた信号値の平均値」に相当する。
また、「平均値の定数倍に設定した閾値と判定対象の生体信号値とを比較」することは、定数を「α」とすれば、
生体信号値−α×平均値>0
を検証する演算を意味するが、この演算は、
生体信号値−平均値>(α−1)×平均値
を検証する演算と等価であり、ここでの「生体信号値−平均値」、「(α−1)×平均値」はそれぞれ、構成1Hの「前記決定された平均値と前記サンプリングされた出力信号の信号値との偏差」、構成1Iの「予め設定された閾値」に相当するといえ、本件発明1の構成1G〜1Iと前記周知技術との間に実質的相違はないといえる。
よって、引用発明1−1において、生体信号から体動によるアーチファクトに関連する信号部分を検出するために、前記周知技術を適用して相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであり、該適用したものが仮に相違点2に関し本件発明1と相違するとしても、計算手順上の設計事項にすぎないといえる。

ウ 相違点3について
相違点3に係る、ユーザの第1手に着用する腕時計型ウェアラブル装置に含まれる生体信号センサの出力信号から動きアーチファクトを検出し、身体の動きを認識して前記腕時計型ウェアラブル装置自体の機能を制御する構成は、当審拒絶理由において提示した引用文献2〜6に開示が無く、本願優先日前における周知技術であるともいえない。
したがって、引用発明1−1において、相違点3の構成とすることは、当業者であっても引用文献2〜6やその他周知技術に基づいて、容易に想到し得たこととはいえない。

エ 相違点4について
単に、片方の手(腕)に装着した腕時計型ウェアラブル装置に対し、使用者が他方の手によりその盤面を叩いたり(タップ)、押したり(長押し)して、該使用者の動作を前記装置が内部のセンサ(タッチパネルなど)で直接検出することで該装置に制御信号を与えるようなことは、ごく周知の技術である。
また、腕時計型ウェアラブル装置を装着した腕を振ることで該装置を振って(加速度運動)、その動作を前記装置が内部のセンサ(加速度センサなど)で直接検出することで該装置に制御信号を与えるようなこともまた、周知技術であり、該装置を、それを装着した腕を振る代わりに、それを装着したのと反対側の手で装置を振ることによって前記検出や制御信号を与えることをさせることも、使用者による使用形態の応用の範囲内のことといい得る余地はある。
しかし、相違点4に係る本件発明1の構成1Jは、構成1Bの、「ユーザの第1手に着用する前記腕時計型ウェアラブル装置に含まれる生体信号センサの出力信号から前記ユーザが前記ユーザの第2手を用いて前記生体信号センサ又は前記生体信号センサの周辺に加える物理的圧力又は動きによって発生する動きアーチファクトを検出する」という「動きアーチファクト」の発生・検出原理を前提として、構成1Jの「前記動きアーチファクトの信号パターン及び少なくとも1つの基準信号パターンに基づいて前記腕時計型ウェアラブル装置を振る動作、前記腕時計型ウェアラブル装置を押す動作、及び前記腕時計型ウェアラブル装置を叩く動作のうち、前記第2手により行われた動作の種類を決定し、前記決定された動作の種類に対応して前記ターゲット装置の機能を制御する制御信号を生成する」ものである。
引用発明1−1に前記「ごく周知の技術」や前記「周知技術」(の使用者による使用形態の応用)を適用すると、外形的に相違点4は充足され得るものの、該適用後の構成は、使用者の動作を前記装置が内部のセンサ(タッチパネルや加速度センサなど)で直接検出するものとなるから、前記構成1Bに係る前提を欠くこととなり、それに伴う新たな相違点を生じる。
よって、前記「ごく周知の技術」や前記「周知技術」(の使用者による使用形態の応用)を考慮し、他の相違点が容易想到であるとしても、本件発明1が容易想到であるということはできない。
そして、当審拒絶理由において提示した引用文献2〜6には、相違点4に相当する技術事項についての開示はないし、相違点4を充足し、かつ、引用発明1−1に適用した後の構成が構成1Bに係る前提構成とも整合しうる技術、すなわち、生体信号センサ又は生体信号センサの周辺に加える物理的圧力又は動きによって発生する動きアーチファクトを検出することを前提として構成1Jの工程を行う技術が周知であるということもできない。
したがって、引用発明1−1において、相違点4の構成とすることは、当業者であっても引用文献2〜6やその他周知技術に基づいて、容易に想到し得たこととはいえない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用文献1〜6及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本件発明1を直接または間接的に引用する本件発明2〜9も、同様の理由により、引用文献1〜6及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

7−2 本件発明11〜16について
本件発明11・14も、本件発明1とカテゴリーは異なるものの、上記相違点3、4に係る構成1A・1B・1Jに対応する構成(構成11A・11D・11L;構成14A・14C・14L)を備える。
そうすると、上記1(3)ウ・エで説示したものと同様の理由により、本件発明11及び14も、引用文献1〜6及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本件発明11を直接または間接的に引用する本件発明12・13、本件発明14を直接または間接的に引用する本件発明15・16も、同様の理由により、引用文献1〜6及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

第5の2.明確性について
当審拒絶理由において明確性要件違反が指摘された、本件補正前の独立項(本件補正前の請求項1・13・16)における「・・・前記動きアーチファクトが発生するものと決定する」なる記載は、本件補正により、本件補正後の独立請求項である請求項1・11・14のそれぞれ構成1I・11K・14Kにおいて、「前記偏差の大きさが予め設定された閾値よりも大きい場合、前記動きアーチファクトが発生したものと決定する」と補正された。これにより、前記明確性要件違反は解消している。

第6.原査定について
本件補正により、補正後の請求項1〜10は構成1A・1B・1Jなる構成群を、請求項11〜13は構成11A・11D・11Lなる構成群を、請求項14〜16は構成14A・14C・14Lなる構成群を備えるに至り、該各構成群が、原査定で引用した引用文献1〜3及びその他の周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものでないことは、上記第5の1.7−1で説示したとおりである。
よって、本件発明1〜16は、原査定で引用した引用文献1に記載した発明ではなく、また、当業者であっても、原査定で引用した引用文献1〜3及びその他の周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。従って、原査定を維持することはできない。

第7.むすび
以上のとおり、原査定の理由、及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2022-05-23 
出願番号 P2016-197244
審決分類 P 1 8・ 113- WY (A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 樋口 宗彦
伊藤 幸仙
発明の名称 動作認識方法及び装置並びにウェアラブル装置  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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