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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A62C
管理番号 1385039
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-03 
確定日 2022-06-14 
事件の表示 特願2017−93919号「流水検知装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月29日出願公開、特開2018−187222号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年5月10日の出願であって、令和3年1月18日付け(発送日:令和3年1月26日)で拒絶理由が通知され、これに対して令和3年5月14日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年6月7日付け(発送日:令和3年6月15日)で拒絶査定がされた。これに対し、令和3年9月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明(以下「本願発明1及び2」という。)は、令和3年9月3日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
消火設備の配管に取り付けられて、流体の流路及び当該流路を回動自在に閉塞する弁体を有する本体と、
筐体に収納され、前記弁体の回動に応じて信号を出力するスイッチと、を具備し、
前記筐体は、
前記本体に対向する第1側壁、前記第1側壁の下方から前記本体から遠ざかる方向に延びる底面、並びに、前記第1側壁及び前記底面から連続する後壁を含むベースと、
前記ベースに着脱自在に装着され、前記ベースによって形成された空間を覆うカバーと、
前記カバーに設けられ、前記ベースに装着された前記カバーが前記後壁から遠ざかる方向に移動することを規制する第1規制部と、
前記カバーに設けられ、前記ベースに装着された前記カバーが前記第1側壁から遠ざかる方向に移動することを規制する第2規制部と、
を含み、
前記カバーは、前記第1側壁に対向する第2側壁、前記後壁に対向する前壁、及び、前記底面に対向する天面、を含み、
前記第1規制部は、前記カバーが前記ベースに装着された状態において、前記後壁の外面に対向する第1突起、及び、前記後壁の内面に対向する第2突起を有し、
前記第1突起は、前記天面から前記後壁の外面に沿って延び、
前記第2突起は、前記第2側壁から前記後壁の内面に沿って延びており、 前記第2規制部は、前記カバーが前記ベースに装着された状態において前記第1側壁の外面と対向する第3突起であり、
前記第3突起は、前記天面及び前記前壁のうち少なくとも一方から前記第1側壁の外面に沿って延びており、
を特徴とする流水検知装置。
【請求項2】
前記前壁は、前記ベースに装着された前記カバーが前記底面から遠ざかる方向に移動することを規制する単一の第3規制部を更に有すること、
を特徴とする請求項1に記載の流水検知装置。」

第3 拒絶査定の理由について
拒絶査定の理由は、概略以下のとおりである。

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2記載の周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.韓国登録実用新案第0385976号公報
2.実願昭58−194621号(実開昭60−102482号)のマイクロフィルム

第4 当審の判断
(1)引用発明
引用文献1の図6から、保護カバー27は、本体1に対向する第1側壁、前記第1側壁の下方から本体1から遠ざかる方向に延びる底面、並びに、前記第1側壁及び前記底面から連続する後壁を含むベースと、
前記ベースに着脱自在に装着され、前記ベースによって形成された空間を覆うカバーと、
前記カバーは、前記第1側壁に対向する第2側壁、前記後壁に対向する前壁、及び、前記底面に対向する天面、を含むことが、看取できる。
引用文献1(2頁20〜21行、4頁10〜13行、5頁21〜35行、図6)の記載を総合し、本願発明1の記載に倣って整理すると、引用文献1には、大略以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「消火設備の配管と接続し、回転可能なバルブ体2を有する本体1と、
保護カバー27に収納され、バルブ体2の回転によって、ヒンジピン9A及びカム13が回転し、カム13の回転によって、レバー17及びプッシュロッド25を動作させることで作動するリミットスイッチ19と、を具備し、
保護カバー27は、
本体1に対向する第1側壁、前記第1側壁の下方から本体1から遠ざかる方向に延びる底面、並びに、前記第1側壁及び前記底面から連続する後壁を含むベースと、
前記ベースに着脱自在に装着され、前記ベースによって形成された空間を覆うカバーと、
前記カバーは、前記第1側壁に対向する第2側壁、前記後壁に対向する前壁、及び、前記底面に対向する天面、を含む、
流水検知装置。」

(2)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
・引用発明の「バルブ体2」は、その機能及び作用から本願発明1の「弁体」に相当し、同様に「保護カバー27」は「筐体」に相当する。
・引用発明の「消火設備の配管と接続し、回転可能なバルブ体2を有する本体1」は、消火設備の配管から流れる流体の流路と当該流路を閉塞するバルブ体2を有することが明らかであるから、本願発明1の「消火設備の配管に取り付けられて、流体の流路及び当該流路を回動自在に閉塞する弁体を有する本体」に相当する。
・引用発明の「保護カバー27に収納され、バルブ体2の回転によって、ヒンジピン9A及びカム13が回転し、カム13の回転によって、レバー17及びプッシュロッド25を動作させることで作動するリミットスイッチ19」は、リミットスイッチ19がバルブ体2の回転によって信号を出力することであるから、本願発明1の「筐体に収納され、前記弁体の回動に応じて信号を出力するスイッチ」に相当する。
・引用発明の「本体1に対向する第1側壁、前記第1側壁の下方から本体1から遠ざかる方向に延びる底面、並びに、前記第1側壁及び前記底面から連続する後壁を含むベース」は、本願発明1の「前記本体に対向する第1側壁、前記第1側壁の下方から前記本体から遠ざかる方向に延びる底面、並びに、前記第1側壁及び前記底面から連続する後壁を含むベース」に相当する。
・引用発明の「前記ベースに着脱自在に装着され、前記ベースによって形成された空間を覆うカバー」は、本願発明1の「前記ベースに着脱自在に装着され、前記ベースによって形成された空間を覆うカバー」に相当する。
・引用発明の「前記カバーは、前記第1側壁に対向する第2側壁、前記後壁に対向する前壁、及び、前記底面に対向する天面、を含む」ことは、本願発明1の「前記カバーは、前記第1側壁に対向する第2側壁、前記後壁に対向する前壁、及び、前記底面に対向する天面、を含」むことに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。

<一致点>
「消火設備の配管に取り付けられて、流体の流路及び当該流路を回動自在に閉塞する弁体を有する本体と、
筐体に収納され、前記弁体の回動に応じて信号を出力するスイッチと、を具備し、
前記筐体は、
前記本体に対向する第1側壁、前記第1側壁の下方から前記本体から遠ざかる方向に延びる底面、並びに、前記第1側壁及び前記底面から連続する後壁を含むベースと、
前記ベースに着脱自在に装着され、前記ベースによって形成された空間を覆うカバーと、
を含み、
前記カバーは、前記第1側壁に対向する第2側壁、前記後壁に対向する前壁、及び、前記底面に対向する天面、を含む、
流水検知装置。」

<相違点>
本願発明1は、筐体が「前記カバーに設けられ、前記ベースに装着された前記カバーが前記後壁から遠ざかる方向に移動することを規制する第1規制部と、前記カバーに設けられ、前記ベースに装着された前記カバーが前記第1側壁から遠ざかる方向に移動することを規制する第2規制部と、」を含み、「前記第1規制部は、前記カバーが前記ベースに装着された状態において、前記後壁の外面に対向する第1突起、及び、前記後壁の内面に対向する第2突起を有し、前記第1突起は、前記天面から前記後壁の外面に沿って延び、前記第2突起は、前記第2側壁から前記後壁の内面に沿って延びており、前記第2規制部は、前記カバーが前記ベースに装着された状態において前記第1側壁の外面と対向する第3突起であり、前記第3突起は、前記天面及び前記前壁のうち少なくとも一方から前記第1側壁の外面に沿って延びて」いるのに対して、引用発明は、第1突起、第2突起、第3突起を有していない点。

イ 判断
上記相違点について検討する。
引用文献2には、底板2、全面板A4と左側板5と天板A6とを一体とした左パネル3、全面板B15と天板B16とを一体とした右パネル14、背面板20及び右側板25からなる遮音箱1が記載されており、背面板20が前面板A4と前面板B15とから遠ざかる方向に移動するのを規制する天板A6と天板B16とから下方に延びる部材(第2図、第3図参照。)及び折曲片5a(第3図、第4図参照。)、並びに右側板25が左側板5から遠ざかる方向に移動するのを規制する天板B16から下方に延びる部材(第4図参照。)及び全面板B15から側方に延びる部材(第4図参照。)が記載されているが、当該各部材は、全体として遮音箱1を形成するための部材であるから、当該記載から、ハウジングにおいて、ハウジングを構成する部品に突起状の部位を設け他の部品の移動を規制することで筐体の形状を保持することが周知であるとまではいえない。
一方、本願発明1は、「本体に対向する第1側壁、前記第1側壁の下方から前記本体から遠ざかる方向に延びる底面、並びに、前記第1側壁及び前記底面から連続する後壁を含むベース」と「前記第1側壁に対向する第2側壁、前記後壁に対向する前壁、及び、前記底面に対向する天面、を含」む「カバー」において、「前記カバーが前記ベースに装着された状態において、前記後壁の外面に対向する第1突起、及び、前記後壁の内面に対向する第2突起を有し、前記第1突起は、前記天面から前記後壁の外面に沿って延び、前記第2突起は、前記第2側壁から前記後壁の内面に沿って延びており、」「前記カバーが前記ベースに装着された状態において前記第1側壁の外面と対向する第3突起であり、前記第3突起は、前記天面及び前記前壁のうち少なくとも一方から前記第1側壁の外面に沿って延びて」いることで、「スイッチを収納する筐体の開閉作業を簡便に行うことができる」(明細書【0014】)という効果を奏するものであって、上記の特定の形状のベースとカバーにおいて、特定の位置に突起を設けることで、筐体の開閉作業を簡便に行うことができるものである。
そして、ハウジングにおいて、ハウジングを構成する部品に突起状の部位を設け他の部品の移動を規制することで筐体の形状を保持することが周知の事項であるとしても、引用発明において、本願発明1において特定する位置に突起状の部位を設けることを、当業者が容易に想到し得たとまではいえない。

ウ 小括
ゆえに、本願発明1は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定を付した発明であるから、本願発明2は、上記(1)と同様の理由で、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。


第5 まとめ
以上のとおりであるから、拒絶査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また他に拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-05-31 
出願番号 P2017-093919
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A62C)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 佐々木 正章
鈴木 充
発明の名称 流水検知装置  
代理人 特許業務法人IPRコンサルタント  
代理人 特許業務法人IPRコンサルタント  

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