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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1385060
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-24 
確定日 2022-05-31 
事件の表示 特願2019−542606「通信装置、通信方法および集積回路」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 8日国際公開、WO2018/201415、令和 2年 6月25日国内公表、特表2020−519040、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)5月4日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年12月 5日 :手続補正書の提出
令和3年 1月14日付け:拒絶理由通知書
令和3年 4月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 5月14日付け:拒絶査定
令和3年 9月24日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年5月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1ないし11に対して、引用例1、2、4、5

引用文献等一覧
1.Intel Corporation,Details of congestion control for V2V communication,3GPP TSG RAN WG1 #88 R1-1702142,2017年 2月7日,(以下、「引用例1」という。)
2.Panasonic,Discussion on CBR measurement and congestion control behavior,3GPP TSG RAN WG1 #88 R1-1701931,2017年 2月3日,(以下、「引用例2」という。)
4.NEC,Load balancing across multiple carriers,3GPP TSG RAN WG1 #88 R1-1701926,2017年 2月6日,(以下、「引用例4」という。)
5.Considering CA on PC5 carrier,Considering CA on PC5 carrier,3GPP TSG RAN WG1 #88bis R1-1704652,2017年 3月24日,(以下、「引用例5」という。)

第3 本願発明
本願請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和3年9月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
制御回路と、送信機を具備する通信装置であって、
リソースプールとパケットの優先順位の関係が所定の条件を満たす場合、
前記制御回路は、前記リソースプールを選択し、前記送信機は、前記リソースプールを用いて前記パケットを送信し、
前記所定の条件が満たされない場合、
前記制御回路は、複数のキャリアに存在する複数のリソースプールの各々に対応したチャネルビジー率(CBR)が最も低い順番に、前記複数のリソースプールから少なくとも1つのリソースプールを選択し、前記送信機は、前記選択された少なくとも1つのリソースプール内の少なくとも1つのリソースを用いて前記パケットを送信する、
通信装置。
【請求項2】
前記制御回路は、受信信号強度インジケータ(RSSI)に基づいて、前記少なくとも1つのリソースプールから前記少なくとも1つのリソースを選択し、前記送信機は、前記選択された少なくとも1つのリソースを用いて前記パケットを送信する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのリソースは、前記通信装置がモニターしないリソースを除いたリソースから選択される、
請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
リソースプールとパケットの優先順位の関係が所定の条件を満たす場合、
前記リソースプールを選択し、前記リソースプールを用いて前記パケットを送信し、
前記所定の条件が満たされない場合、
複数のキャリアに存在する複数のリソースプールの各々に対応したチャネルビジー率(CBR)が最も低い順番に、前記複数のリソースプールから少なくとも1つのリソースプールを選択し、前記選択された少なくとも1つのリソースプール内の少なくとも1つのリソースを用いて前記パケットを送信する、
通信方法。
【請求項5】
受信信号強度インジケータ(RSSI)に基づいて、前記少なくとも1つのリソースプールから前記少なくとも1つのリソースを選択し、
前記選択された少なくとも1つのリソースを用いて前記パケットを送信する、
請求項4に記載の通信方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのリソースは、通信装置がモニターしないリソースを除いたリソースから選択される、
請求項5に記載の通信方法。
【請求項7】
リソースプールとパケットの優先順位の関係が所定の条件を満たす場合、
前記リソースプールを選択し、前記リソースプールを用いて前記パケットを送信する、
処理と、
前記所定の条件が満たされない場合、
複数のキャリアに存在する複数のリソースプールの各々に対応したチャネルビジー率(CBR)が最も低い順番に、前記複数のリソースプールから少なくとも1つのリソースプールを選択し、前記選択された少なくとも1つのリソースプール内の少なくとも1つのリソースを用いて前記パケットを送信する、処理と、を制御する、
集積回路。」

第4 引用例の記載及び引用発明
1 引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用された、Intel Corporation,Details of congestion control for V2V communication(当審訳:V2V通信の輻輳制御の詳細),3GPP TSG RAN WG1 #88 R1-1702142,2017年 2月7日,(引用例1)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(1)「・2.3 CBR/CR measurement with multiple resource pools
(略)
Proposal 3
・CBR measurements across multiple pools can be used to enable resource pool selection for V2V transmissions.」(第3ページ第7行ないし第23行)
(当審訳:
・2.3 複数のリソースプールでのCBR/CR測定
(略)
提案3
・複数のプールにわたるCBR測定を使用して、V2V送信のリソースプールを選択できる。)

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 引用例1は3GPPにおける文献であり無線通信を前提にしていることは明らかである。そして、無線通信においてリソースプールを選択する装置が基地局や端末装置といった通信装置であることは技術常識である。また、通信装置が制御回路と送信機を具備することは技術常識である。

イ CBRはチャネルビジー率の略称であることは明らかであるから、上記記載の「複数のプールにわたるCBR測定を使用して、V2V送信のリソースプールを選択できる。」とは、チャネルビジー率(CBR)に基づいて、複数のリソースプールから1つのリソースプールを選択することといえる。そして、当該選択するという動作は、送信自体に関する動作ではなく、送信のための制御に関する動作であるから、制御回路が行っていることは明らかである。

したがって、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 制御回路と、送信機を具備する通信装置であって、
前記制御回路は、チャネルビジー率(CBR)に基づいて、複数のリソースプールから1つのリソースプールを選択する、
通信装置。」

2 引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用された、Panasonic,Discussion on CBR measurement and congestion control behavior(当審訳:CBR測定と輻輳制御動作に関する議論),3GPP TSG RAN WG1 #88 R1-1701931,2017年 2月3日,(引用例2)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「・2 Discussion
(略)
In previous meeting there was a debate on whether congestion control is done in physical layer, higher layer or both but RAN1 didn’t obtain consensus. We are fine with physical layer based approach if the spec impact is small. In that case, we need consider whether congestion control is done in which step of resource (re)selection procedure especially for mode 4 UEs. For example, congestion control could be done in step 2 (excluding resources based on measured S-RSRP) or step 3 (ranking candidate resources based on measured S-RSSI and selects the resource for transmission). If the CBR measurement shows the load is quite congested, it may be necessary that the UE drops the low priority packets. To avoid the impact on UE experience or QoS in that case, it may be necessary that these UEs use exceptional pool to continue the traffic transmission based on random selection.」(第1ページ下から第6行ないし第2ページ第20行)
(当審訳:
・2 ディスカッション
(略)
前回の会議では、輻輳制御が物理層、上位層、またはその両方で行われるかどうかについての議論があったが、RAN1はコンセンサスを取得しなかった。スペックへの影響が小さい場合は、物理層ベースのアプローチで問題ない。その場合、特にモード4 UEの場合、リソース(再)選択手順のどのステップで輻輳制御が行われるかを考慮する必要がある。たとえば、輻輳制御は、ステップ2(測定されたS-RSRPに基づいてリソースを除外)またはステップ3(測定されたS-RSSIに基づいて候補リソースをランク付けし、送信するリソースを選択する)で実行できる。CBR測定で負荷が非常に混雑していることが示された場合、UEが優先度の低いパケットをドロップする必要がある場合がある。その場合のUEエクスペリエンスまたはQoSへの影響を回避するために、これらのUEは、ランダムな選択に基づいてトラフィック送信を継続するために例外的なプールを使用する必要がある場合がある。)

したがって、引用例2には、以下の技術事項が記載されていると認められる。

「S-RSSIに基づいて、送信するリソースを選択する。」

3 引用例4及び引用例5について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、NEC,Load balancing across multiple carriers(当審訳:複数のキャリア間での負荷分散),3GPP TSG RAN WG1 #88 R1-1701926,2017年 2月6日,(引用例4)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「Proposal 1: Within a resource sensing window, CBR measurement of resource pools across multiple carriers is supported for both Mode 3 and Mode 4 UE.」(第1ページ第27行ないし第28行)
(当審訳:
提案1:リソースセンシングウィンドウ内で、複数のキャリアにわたるリソースプールのCBR測定が、モード3とモード4の両方のUEでサポートされる。)

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、Considering CA on PC5 carrier(当審訳:PC5キャリアでのCAの検討),3GPP TSG RAN WG1 #88bis R1-1704652,2017年 3月24日,(引用例5)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「For mode 4 based PC5 CA, the Tx UE should select the resources for transmission on multiple PC5 carriers based on the sensed results of multiple resource pools and then transmit the SA and associated data on these resources.」(第2ページ第14行ないし第15行)
(当審訳:
モード4ベースのPC5 CAの場合、Tx UEは、複数のリソースプールの検知結果に基づいて、複数のPC5キャリアで送信するリソースを選択し、SAと関連データをこれらのリソースで送信する必要がある。)

以上を総合すると、引用例4及び5には、次の周知技術(以下、「周知技術」という。)が記載されていると認められる。

「複数のキャリアにわたる複数のリソースプールを測定する。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明の「制御回路」、「送信機」及び「通信装置」は、それぞれ本願発明1の「制御回路」、「送信機」及び「通信装置」に相当する。

イ 本願発明1では「前記制御回路は、複数のキャリアに存在する複数のリソースプールの各々に対応したチャネルビジー率(CBR)が最も低い順番に、前記複数のリソースプールから少なくとも1つのリソースプールを選択」していることから、チャネルビジー率(CBR)に基づいて複数のリソースプールから少なくとも1つのリソースプールを選択しているといえる。
よって、本願発明1の「前記制御回路は、複数のキャリアに存在する複数のリソースプールの各々に対応したチャネルビジー率(CBR)が最も低い順番に、前記複数のリソースプールから少なくとも1つのリソースプールを選択」することと、引用発明の「前記制御回路は、チャネルビジー率(CBR)に基づいて、複数のリソースプールから1つのリソースプールを選択する」こととは、制御回路は、チャネルビジー率(CBR)に基づいて、複数のリソースプールから1つのリソースプールを選択する点で共通する。

以上を総合すると、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「 制御回路と、送信機を具備する通信装置であって、
前記制御回路は、チャネルビジー率(CBR)に基づいて、複数のリソースプールから1つのリソースプールを選択する、
通信装置。」

(相違点)
本願発明1では、
「リソースプールとパケットの優先順位の関係が所定の条件を満たす場合、
前記制御回路は、前記リソースプールを選択し、前記送信機は、前記リソースプールを用いて前記パケットを送信し、
前記所定の条件が満たされない場合、
前記制御回路は、複数のキャリアに存在する複数のリソースプールの各々に対応したチャネルビジー率(CBR)が最も低い順番に、前記複数のリソースプールから少なくとも1つのリソースプールを選択し、前記送信機は、前記選択された少なくとも1つのリソースプール内の少なくとも1つのリソースを用いて前記パケットを送信する」
という発明特定事項を有するのに対し、引用発明においては、当該発明特定事項が特定されていない点。

(2)判断
次に、上記相違点について検討する。
上記相違点に係る発明特定事項については引用例2に記載されておらず、引用例4及び引用例5に基づく周知技術でもなく、当該技術分野における周知技術でもない。 したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項である「リソースプールとパケットの優先順位の関係が所定の条件を満たす場合、前記制御回路は、前記リソースプールを選択し、前記送信機は、前記リソースプールを用いて前記パケットを送信し、前記所定の条件が満たされない場合、前記制御回路は、複数のキャリアに存在する複数のリソースプールの各々に対応したチャネルビジー率(CBR)が最も低い順番に、前記複数のリソースプールから少なくとも1つのリソースプールを選択し、前記送信機は、前記選択された少なくとも1つのリソースプール内の少なくとも1つのリソースを用いて前記パケットを送信する」という発明特定事項を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明4について
本願発明4は、本願発明1に対応する通信方法の発明であり、本願発明1の上記相違点に対応する「リソースプールとパケットの優先順位の関係が所定の条件を満たす場合、前記リソースプールを選択し、前記リソースプールを用いて前記パケットを送信し、前記所定の条件が満たされない場合、複数のキャリアに存在する複数のリソースプールの各々に対応したチャネルビジー率(CBR)が最も低い順番に、前記複数のリソースプールから少なくとも1つのリソースプールを選択し、前記選択された少なくとも1つのリソースプール内の少なくとも1つのリソースを用いて前記パケットを送信する」という発明特定事項を含むことから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明5及び6について
本願発明5及び6は、本願発明4の発明特定事項を全て含むから、本願発明4と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

5 本願発明7について
本願発明7は、本願発明1に対応する集積回路の発明であり、本願発明1の上記相違点1に対応する「リソースプールとパケットの優先順位の関係が所定の条件を満たす場合、前記リソースプールを選択し、前記リソースプールを用いて前記パケットを送信する、処理と、前記所定の条件が満たされない場合、複数のキャリアに存在する複数のリソースプールの各々に対応したチャネルビジー率(CBR)が最も低い順番に、前記複数のリソースプールから少なくとも1つのリソースプールを選択し、前記選択された少なくとも1つのリソースプール内の少なくとも1つのリソースを用いて前記パケットを送信する」という発明特定事項を含むことから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定についての判断
令和3年9月24日にされた手続補正により、本願発明1ないし本願発明7のいずれも、少なくとも「リソースプールとパケットの優先順位の関係が所定の条件を満たす場合、前記制御回路は、前記リソースプールを選択し、前記送信機は、前記リソースプールを用いて前記パケットを送信し、前記所定の条件が満たされない場合、前記制御回路は、複数のキャリアに存在する複数のリソースプールの各々に対応したチャネルビジー率(CBR)が最も低い順番に、前記複数のリソースプールから少なくとも1つのリソースプールを選択し、前記送信機は、前記選択された少なくとも1つのリソースプール内の少なくとも1つのリソースを用いて前記パケットを送信する」という発明特定事項を備えるものとなっている。
してみれば、上記「第5」のとおり、本願発明1ないし7は、当業者であっても、原査定において引用された引用発明、引用例2に記載された技術事項及び引用文献4、5に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-05-10 
出願番号 P2019-542606
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 廣川 浩
石田 紀之
発明の名称 通信装置、通信方法および集積回路  
代理人 特許業務法人鷲田国際特許事務所  

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