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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61B
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1385112
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-11 
確定日 2022-03-04 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6574241号発明「被験者の刺激感受性を評価するための構成可能なシステムおよびそのための使用の方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 令和2年12月2日付け訂正請求において、特許第6574241号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔25−39〕について訂正することを認める。 特許第6574241号の請求項1ないし24に係る特許を取り消す。 同請求項25ないし32、34ないし39に係る特許を維持する。 同請求項33に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6574241号の請求項1〜39に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)4月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年4月7日、米国)を国際出願日とする出願であって、令和元年8月23日にその特許権の設定登録がされ、同年9月11日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年 3月11日 :特許異議申立人大薮朋子(以下「申立人」という。)による請求項1〜39に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 5月22日 :申立人による手続補正書の提出
同年 7月13日付け:取消理由通知書
同年12月 2日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同月25日付け:訂正拒絶理由通知書
令和3年 3月29日 :特許権者による意見書の提出
同年 4月30日 :申立人による意見書の提出
同年 5月24日付け:取消理由通知書(決定の予告)
なお、上記取消理由通知書(決定の予告)に対して、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。

第2 訂正の適否について
1 請求の趣旨について
本件訂正請求書による請求の趣旨は、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜39について訂正することを求めるものである。

2 一群の請求項について
訂正前の請求項2〜24は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正前の請求項26〜39は請求項25を直接的又は間接的に引用するものであるから、請求項1〜24及び請求項25〜39は、各々一群の請求項である。
そして、本件訂正請求書による訂正は、一群の請求項1〜24においてなされる訂正と、一群の請求項25〜39においてなされる訂正とからなるものであるから、特許法第120条の5第4項で規定する当該一群の請求項ごとに請求されているものである。

3 訂正の内容及び適否
事案に鑑み、一群の請求項25〜39に係る訂正から検討する。
(1)一群の請求項25〜39に係る訂正について
ア 訂正事項について
(ア)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項25の
「前記測定された生理学的応答に基づいて前記促通信号のレベルを調整するためのコントローラとを含み、」を「前記測定された生理学的応答に基づいて前記促通信号のレベルを調整するためのコントローラとを含み、
前記コントローラが、
a)最初に促通信号を加えず、
b)促通信号がない間、第1の生理学的応答測定値を取得し、
c)前記促通信号のレベルを増加させ、
d)次の生理学的応答測定値を取得し、
e)前記次の生理学的応答測定値の変曲点を検出し、
f)前記変曲点の検出に続いて、プロセスc)、d)およびe)を前記促通信号の所定の最大レベルに達するまで繰り返し、
g)その取得の持続時間にわたって増加している最大生理学的応答をもたらす前記促通信号のレベルの選択によって前記促通信号の前記レベルを調整するように構成され、」
に訂正する(請求項25の記載を直接的又は間接的に引用する請求項も同様に訂正する。)。なお、下線は訂正箇所を示す(以下同様)。

(イ)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項35の
「各生理学的応答の勾配の計算であって、前記勾配がそれ自体の大きさによって正規化される、勾配の計算と、
各生理学的応答に対して、その勾配と前記積分との積の計算と、
最高の正の積の選択とを含む」を
「各生理学的応答の勾配の計算であって、前記勾配の平均値は、正または負のいずれかである値を与えるそれ自体の大きさによって正規化される、勾配の計算と、
各生理学的応答に対して、前記正規化された平均勾配と前記積分との積の計算と、
最適促通信号レベルを指定する最高の正の積の選択とを含む」に訂正する(請求項35の記載を直接的又は間接的に引用する請求項も同様に訂正する。)。

(ウ)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項33を削除する。

(エ)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項34の「請求項33」を「請求項25から32のいずれか一項」に訂正する。

(オ)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項35の「請求項33または34」を「請求項25から32及び34のいずれか一項」に訂正する。

(カ)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項36の「請求項33から35のいずれか一項」を「請求項25から32、34、及び35のいずれか一項」に訂正する。

なお、訂正事項14〜17については、令和2年12月25日付け訂正拒絶理由通知書の「4付記」における指摘に対して、特許権者が令和3年3月29日に提出した意見書の内容を踏まえて、上記1で記載した本件訂正請求書による請求の趣旨(特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜39について訂正することを求めるものである。)に沿って、当審において整理したものである。

イ 訂正の適否について
(ア)訂正事項12について
a 訂正の目的の適否
訂正事項12は、測定された生理学的応答に基づいて促通信号のレベルを調整するための「コントローラ」について限定を加えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

b 新規事項の有無
「前記コントローラが、a)最初に促通信号を加えず、b)促通信号がない間、第1の生理学的応答測定値を取得し、c)前記促通信号のレベルを増加させ、d)次の生理学的応答測定値を取得し、e)前記次の生理学的応答測定値の変曲点を検出し、f)前記変曲点の検出に続いて、プロセスc)、d)およびe)を前記促通信号の所定の最大レベルに達するまで繰り返し、g)その取得の持続時間にわたって増加している最大生理学的応答をもたらす前記促通信号のレベルの選択によって前記促通信号の前記レベルを調整するように構成され、」という事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の請求項33に記載されていたことから、訂正事項12は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項12は、測定された生理学的応答に基づいて促通信号のレベルを調整するための「コントローラ」について限定を加えるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(イ)訂正事項13について
a 訂正の目的の適否
訂正事項13は、取消理由通知書で訂正前の請求項35の記載について技術的意味が明確でないとの指摘を受けて訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

b 新規事項の有無
訂正事項13は、本件特許明細書等の【0067】の「同じまたは他の変形において、その取得の持続時間にわたって増加している最大生理学的応答をもたらす、動作217における促通信号のレベルの選択は、その取得の持続時間にわたって各生理学的応答測定値の積分を計算するステップと、各生理学的応答の勾配を計算するステップであって、勾配がそれ自体の大きさによって正規化される、計算するステップと、各生理学的応答に対して、その勾配と積分との積を計算するステップと、次いで最高の正の積を選択するステップとを含むことができる。」との記載、及び【0082】の「オペレータインターフェース228は、それ自体の大きさによって正規化された平均勾配も計算した。もちろん、これは、一貫して、曲線の正または負の傾きにより正または負のいずれかである単位値を提供した。曲線の下の面積と正または負の単位との積により、本明細書において最適指標とも称される、最適促通信号レベルが指定された。したがって、最適促通レベルは、最高の正の最適指標を有するものであった。オペレータインターフェース228は、どの促通レベルが最適指標を提供するのかを自動的に決定することができるが、この決定は、もちろん、実験結果に基づいて手動で行うことができる。」との記載に基づくものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項13は、技術的に明確な記載とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)訂正事項14
訂正事項14は、請求項33を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものでもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(エ)訂正事項15〜17
訂正事項15〜17は、請求項33の発明特定事項を請求項25に記載すると同時に、請求項33を削除したことに伴い、引用する請求項を整理したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項を追加するものでもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 小括
上記のとおり、訂正事項12〜17に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、特許請求の範囲の請求項25〜39を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔25−39〕について訂正することを認める。

(2)一群の請求項1〜24に係る訂正について
一群の請求項1〜24群に係る訂正については、訂正拒絶理由を通知しており、その内容は以下のア及びイのとおりである。
ア 訂正事項について
訂正拒絶理由を通知した訂正事項は以下のとおりである。
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「被験者の刺激感受性を評価するためのシステム」を「被験者の第1の感覚、反射および/または運動機構の感受性を改善するためのシステム」に訂正する。

(イ)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1、3、8の「第1の基準ユニット」を「第1の制御デバイス」に訂正する。また、特許請求の範囲の請求項8の「第2の基準ユニット」を「第2の制御デバイス」に訂正する。

(ウ)訂正事項5
a 特許請求の範囲の請求項1の「前記第1の作用チャネルを含み、前記信号路において終端する経路を形成する第1の変換ループ」を「前記第1の作用チャネルを含み、前記信号路の第1のリレーユニットにおいて終端する経路を形成し、前記第1の作用チャネルからの応答を安定させるように構成された第1の変換ループ」に訂正する。
b 特許請求の範囲の請求項1の「前記信号路を通って経路を形成し、第1の基準ユニットにおいて終端する前記第1の作用チャネルを含む第1のチャネルループ」を「前記第1の作用チャネルを含み、前記信号路を通って経路を形成し、第1の制御デバイスにおいて終端し、前記第1の作用チャネルからの応答を安定させるように構成された第1の第1のチャネルループ」に訂正する。

(エ)訂正事項6
a 特許請求の範囲の請求項3の「前記第1の基準ユニットが第1の初期パラメータ値を有する、前記インターフェースループと」を「前記第1の制御デバイスが第1の初期パラメータ値を有する、第1の作用チャネルからの応答および前記反応チャネルからの応答の組合せを安定化させるように構成された、インターフェースループと」に訂正する。

(オ)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8に「前記第1の作用チャネルからの応答と、前記第2の作用チャネルからの応答と、前記反応チャネルからの応答との応答の組合せを安定化させるように構成されており」という記載を追加する。

(カ)訂正事項11
特許請求の範囲の上記訂正後の請求項8(請求項3および7を含む)を請求項1に組み込む。

イ 訂正の適否の判断
(ア)訂正事項1について
特許権者は、訂正事項1の根拠として、請求項25の記載を挙げているが、請求項25は、
「前記被験者の第2の感覚、反射および/または運動機構を刺激するための促通信号の発生源と、
前記第1の感覚、反射および/または運動機構の生理学的応答を測定するためのセンサと、
前記測定された生理学的応答に基づいて前記促通信号のレベルを調整するためのコントローラとを含み、
前記促通信号の前記レベルを調整するステップが、てこの原理の相互作用により前記被験者の前記第1の感覚、反射および/または運動機構の前記感受性を改善する、システム」であり、請求項1のシステムの発明は、上記請求項25のシステムとは異なり、上記発明特定事項を前提とするものではなく、そして、「評価」と「改善」は技術的意味も異なることから、「被験者の刺激感受性を評価するためのシステム」を「被験者の第1の感覚、反射および/または運動機構の感受性を改善するためのシステム」に訂正することは、実質上特許請求の範囲を変更するものである。
なお、先の取消理由通知書では、取消理由3(明確性)として「「刺激感受性を評価する」と特定されているが、技術的にどのような評価を行うことを特定しているのか不明確である。この点、本件特許明細書等を参照しても、具体的に刺激感受性を評価した例も記載されていないことから、「刺激感受性を評価する」とは具体的に何を行うことと解すればいいのか把握できない。」と指摘しており、「評価」を具体的に特定したものが「改善」であるともいえない。
よって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を変更するものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものとはいえない。

(イ)訂正事項4について
特許権者は、訂正事項4の根拠として、「図2および図3の記載から、図2の一番上の「第1の制御デバイス104」が「第1の基準ユニット」に対応し、図2の中央の「第1の制御デバイス104」が「第2の基準ユニット」に対応していることは明らかである。」と述べているが、技術的に「基準」が「制御」に対応するものではなく、「明らかである」とした技術的根拠が不明である。
してみれば、「第1の基準ユニット」を「第1の制御デバイス」に、「第2の基準ユニット」を「第2の制御デバイス」に訂正することは、技術的事項を変更するものであるから、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を変更するものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものとはいえない。

(ウ)訂正事項5について
aについて
変換ループについて、本件特許明細書等(下線は当審において付与した。以下同様。)には、
「【0025】
作用チャネルでは、センサ108は、被験者に加えられた出力信号の漸進的変化を評価する。作用チャネルのアクチベータ106は、これらの信号を被験者に与える。」
「【0046】
図12に示すように変換ループ140が、聴覚刺激のための単一点直接ループの場合および触覚刺激のための分散直接ループの場合の両方において、アクチベータ応答からの応答を安定化させるのに使用される。より詳細には、変換器ループ140が、アクチベータ作用自体を安定化させる。変換器ループ140は、例えば、その周波数応答を改善し、高調波ひずみを避けるためにその位相シフトを線形化し、またはその利得をスペクトルに沿って平坦化することができ、環境温度が変化したとき、そのパラメータドリフトを低減することなどができる。これらの改善は、基準として対応する入力リレー(より近い制御デバイス105)に達する信号、すなわち、変換ループの基準入力に存在する信号に帰する。その信号が多少でもひずみを含む場合、変換器はひずみを再現する。変換器自体はそれ以上顕著なひずみを導入しない。」と記載されている。
しかし、訂正事項5のa「前記第1の作用チャネルを含み、前記信号路の第1のリレーユニットにおいて終端する経路を形成し、前記第1の作用チャネルからの応答を安定させるように構成された第1の変換ループ」における「前記信号路の第1のリレーユニットにおいて終端する経路を形成」することについては、記載されていない。特許権者は、上記本件特許明細書等の記載と「図2、7、および12の記載から明らか」と述べているが、図面の記載から「第1のリレーユニット」が明らかともいえない。
加えて、上記本件特許明細書等には「作用チャネルのアクチベータ106」との記載があるものの、「アクチベータ」と「作用チャネル」が同じものとはいえないことから、「アクチベータ応答からの応答を安定化させる」及び「アクチベータ作用自体を安定化させる」ことが「第1の作用チャネルからの応答を安定させる」ことと技術的に同等であるとはいえない。
よって、訂正事項5のaについては、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものとはいえない。

bについて
チャネルループについて、本件特許明細書等には、
「【0047】
図13に示すようにチャネルループ142は、直接ループの場合、変数応答を安定化させるのに使用される。チャネルループ142を追加することにより、チャネル性能全体が改善される。次に、本明細書において上述する変換ループの基準入力において存在する信号でも、負のフィードバック作用の追加のため、変換ループだけが使用されたときと比較してさらに低減されたひずみを提示する。変換ループ140は反応時間が速いが、チャネルループ142は、より高いレベルの制御を提供する。ループがより長いと、伝搬時間がより長くなる。」と記載されている。
しかし、訂正事項5のb「前記第1の作用チャネルを含み、前記信号路を通って経路を形成し、第1の制御デバイスにおいて終端し、前記第1の作用チャネルからの応答を安定させるように構成された第1の第1のチャネルループ」における「第1の作用チャネルからの応答を安定させる」ことについて、上記本件特許明細書等には「変数応答を安定化させる」と記載されており、「変数応答」が「第1の作用チャネルからの応答」であるともいえない。
特許権者は、上記本件特明細書等の記載と「図2、6、および13の記載から明らか」と述べているが、図面の記載から「変数応答」が「第1の作用チャネルからの応答」が明らかともいえない。
よって、訂正事項5のbについては、本件特明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものとはいえない。

(エ)訂正事項6について
aについて
インターフェースループについて、本件特許明細書等には、
「【0048】
図14に示すように、インターフェースループ144は、混合ループの場合、変数応答の組合せを安定化させる。」と記載されている。
しかし、訂正事項6のaの「第1の作用チャネルからの応答および前記反応チャネルからの応答の組合せを安定化させる」ことについて、上記本件特許明細書等には「変数応答の組合せを安定化させる」と記載されており、「変数応答の組合せ」が「第1の作用チャネルからの応答および前記反応チャネルからの応答の組合せ」であるとはいえない。
特許権者は、上記本件特許明細書等の記載と「図14のインターフェースループ144の記載とから明らか」と述べているが、図面の記載から「変数応答の組合せ」が「第1の作用チャネルからの応答および前記反応チャネルからの応答の組合せ」であることが明らかともいえない。
よって、訂正事項6のaについて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものとはいえない。

(オ)訂正事項9について
上記(4)で摘記したように、本件特許明細書等には、
「【0048】
図14に示すように、インターフェースループ144は、混合ループの場合、変数応答の組合せを安定化させる。」と記載されている。
訂正事項9の「前記第1の作用チャネルからの応答と、前記第2の作用チャネルからの応答と、前記反応チャネルからの応答との応答の組合せを安定化させることについて、上記本件特許明細書等には「変数応答の組合せを安定化させる」と記載されており、「変数応答の組合せ」が「前記第1の作用チャネルからの応答と、前記第2の作用チャネルからの応答と、前記反応チャネルからの応答との応答の組合せ」であるとはいえない。
特許権者は、上記本件特許明細書等の記載と「図14のインターフェースループ144の記載とから明らか」と述べているが、図面の記載から「変数応答の組合せ」が「前記第1の作用チャネルからの応答と、前記第2の作用チャネルからの応答と、前記反応チャネルからの応答との応答の組合せ」であることが明らかともいえない。
よって、訂正事項9については、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものとはいえない。

(カ)訂正事項11について
上記(エ)及び(オ)で述べたように、請求項3及び請求項8についての訂正が、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものではないことから、訂正事項11も同項に適合するものとはいえない。

ウ 特許権者の主張について
特許権者は、令和3年3月29日に提出の意見書において、上記イで述べた当審の判断に対して以下のように主張している。
(ア)訂正事項1について
(a)特許権者の主張
「請求項25は、・・・発生源と、・・・センサと、・・・コントローラとを含みます。これに対して、請求項1は、これらと同一の概念である、・・・第2の作用チャネルと、・・・反応チャネルと、・・・コントローラを有しています。従って、請求項1のシステムの発明は、請求項25のシステムと同様の発明特定事項を有するものです。従って、訂正事項1の根拠として、請求項25の記載を挙げることは妥当であると確信します。
また、当業者であれば、「被験者の第1の感覚、反射および/または運動機構の感受性を改善すること」は、「被験者の第1の感覚、反射および/または運動機構の感受性を」評価して、より感受し易いものにすることであると理解できます。従って、「評価」を具体的に特定したものが「改善」であると言えます。」

(b)当審の反論
特許権者は、請求項1と請求項25は、同一の概念であり、同様の発明特定事項を有するものであることを主張しているが、
「【請求項1】
被験者の刺激感受性を評価するためのシステムであって、
第1のタイプの刺激を前記被験者に与えるように構成された第1の作用チャネルと、
前記被験者からの応答を受け取るように構成された反応チャネルと、
前記第1の作用チャネルおよび前記反応チャネルに接続された信号路と、
コントローラとを含み、前記コントローラが、
前記第1の作用チャネルを含み、前記信号路において終端する経路を形成する第1の変換ループ、および
前記信号路を通って経路を形成し、第1の基準ユニットにおいて終端する前記第1の作用チャネルを含む第1のチャネルループのうちの少なくとも1つを一時的に形成するように適合された、システム。」の発明と
「【請求項25】
被験者の第1の感覚、反射および/または運動機構の感受性を改善するためのシステムであって、
前記被験者の第2の感覚、反射および/または運動機構を刺激するための促通信号の発生源と、
前記第1の感覚、反射および/または運動機構の生理学的応答を測定するためのセンサと、
前記測定された生理学的応答に基づいて前記促通信号のレベルを調整するためのコントローラとを含み、
前記促通信号の前記レベルを調整するステップが、てこの原理の相互作用により前記被験者の前記第1の感覚、反射および/または運動機構の前記感受性を改善する、システム。」の発明とが、
「同一の概念」であり、「同様の発明特定事項」を有するものとはいえない。
また、「「・・・感受性を改善すること」は、「・・・の感受性を」評価して、より感受し易いものにすることである」と主張しているが、「改善」と「評価」は技術的意味が異なり、「評価」を具体的に特定したものが「改善」であるとはいえない。

(イ)訂正事項4について
(a)特許権者の主張
「図3の記載から明らかなように、図3のチャネルループは、制御デバイス104において終端します。従って、請求項1の訂正前の「第1の基準ユニット」が、「第1の制御デバイス」を示すことは明らかです。同様に、請求項8の「第2の基準ユニット」が、「第2の制御デバイス」を示すことは明らかです。従って、訂正事項4の技術的根拠は明確です。
また、請求項1、3、8の「第1の基準ユニット」を「第1の制御デバイス」にする訂正、および、請求項8の「第2の基準ユニット」を「第2の制御デバイス」にする訂正は、構成要素の名称を変更しているに過ぎず、これらの構成要素の機能・動作を変更するものではありません。」

(b)当審の反論
図3において「制御デバイス104」は終端しているかもしれないが、「基準」と「制御」は、技術的意味が異なるものであり、「請求項1の訂正前の「第1の基準ユニット」が、「第1の制御デバイス」を示すことは明らかです」とする技術的根拠が不明であり、「基準」を「制御」とすることは技術的に変更するものと解さざるを得ない。
また、「「・・・基準ユニット」を「・・・制御デバイス」にする訂正は、構成要素の名称を変更しているに過ぎず、これらの構成要素の機能・動作を変更するものではありません」とも主張しているが、「基準ユニット」と「制御デバイス」とは、「基準」と「制御」に基づく機能・動作も異なってくることから、名称を変更しているにすぎないともいえない。

(ウ)訂正事項5aについて
(a)特許権者の主張
「本願図12には、変換器ループ140が記載されており、図12を説明する段落0046には、「これらの改善は、基準として対応する入力リレー(より近い制御デバイス105に達する信号、すなわち、変換ループの基準入力に存在する信号に帰する。」と記載されており、図3には、変換器ループが、制御デバイス105において終端していることが記載されています。また、図2を説明する段落0022には、「制御デバイス104および105は、リレーの形で実装することができる。」と記載されています。従って、図2、7、および12と、それらの明細書中の説明から、「第1のリレーユニット」が記載されていることは明らかです。
また、アクチベータに関して、図2の回路記号の説明の上から4番目には、アクチベータを示す記号が記載されており、また、その隣には、同一の回路記号が、作用チャネル106として記載されています。従って、「アクチベータ」と「作用チャネル」が同じものであるごとに明らかです。」

(b)当審の反論
まず、図2、7及び12には「リレーユニット」の記載はなく、【0046】に「入力リレー」及び【0022】に「リレーの形で実装する」ことが記載されているが、何の部品を「第1の」リレー「ユニット」と定義しているのか不明であり、訂正された「前記信号路の第1のリレーユニットにおいて終端する経路を形成」することが記載されているとはいえない。
また、アクチベータを示す記号の隣に、同一の回路記号が作用チャネル106として記載されているからといって、「アクチベータ」と作用「チャネル」が技術的に同じものとはいえない。

(エ)訂正事項5bについて
(a)特許権者の主張
「本願図3には、チャネルループが、変換ループと同様に作用チャネルに対して応答することが記載されています。従って、段落0047の「図13に示すようにチャネルループ142は、直接ループの場合、変数応答を安定化させるのに使用される。」という記載から、図6および13に記載のチャネルループが、作用チャネルからの応答を安定化させるために使用されることは明らかです。」

(b)当審の反論
図6および13に記載のチャネルループが、作用チャネルからの応答を安定化させるために使用されることは明らかであることを主張しているが、チャネルループが作用チャネルに対して応答するといえても、応答を「安定化させ」ているかどうかは、図面からは不明である。また、「変数」応答と「作用チャネルからの」応答が同じものともいえない。

(オ)訂正事項6について
(a)特許権者の主張
「ループは、ループに含まれるチャネルからの応答を安定化させます。すなわち、インターフェースループ144は、インターフェースループ144に含まれるチャネル(第1の作用チャネルおよび反応チャネル)からの応答(の組み合わせ)を安定化させます。
従って、「変数応答の組合せ」が「第1の作用チャネルからの応答および前記反応チャネルからの応答の組合せ」であると言えます。」

(b)当審の反論
【0048】に「図14に示すように、インターフェースループ144は、混合ループの場合、変数応答の組合せを安定化させる。」と記載されているが、「変数」応答の「組合せ」と「第1の作用チャネルからの」応答「および前記反応チャネルからの」応答の「組合せ」とが同じものとはいえない。

(カ)訂正事項9について
(a)特許権者の主張
「訂正事項6に対する上記主張と同様に、ループは、ループに含まれるチャネルからの応答を安定化させます。すなわち、インターフェースループは、インターフェースループに含まれるチャネル(第1の作用チャネル、第2の作用チャネル、および反応チャネル)からの応答(の組み合わせ)を安定化させます。
従って、「変数応答の組合せ」が「前記第1の作用チャネルからの応答と、前記第2の作用チャネルからの応答と、前記反応チャネルからの応答との応答の組合せ」であると言えます。」

(b)当審の反論
上記(オ)(b)で述べたことと同様に、【0048】に「図14に示すように、インターフェースループ144は、混合ループの場合、変数応答の組合せを安定化させる。」と記載されているが、「変数」応答の「組合せ」と「第1の作用チャネルからの」応答と、「第2の作用チャネルからの」応答と、「反応チャネルからの」応答との応答の「組合せ」とが同じものとはいえない。

(キ)訂正事項11について
(a)特許権者の主張
「上述したように、請求項3および請求項8についての訂正(訂正事項6および9)は、訂正要件を満たすと思われます。」

(b)当審の反論
上記(オ)(b)、(カ)(b)で述べたとおりである。

エ 小括
よって、訂正拒絶理由である上記イで記載した判断は、令和3年3月29日に提出した意見書における特許権者の主張によって、変わることはない。 したがって、訂正事項1及び4について、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものではなく、訂正事項5、6、9及び11について、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものではないことから、特許請求の範囲の請求項1〜24を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−24〕について訂正することを認めることはできない。

4 まとめ
特許請求の範囲の請求項25〜39を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔25−39〕について訂正することを認める。
特許請求の範囲の請求項1〜24を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−24〕について訂正することを認めない。

第3 本件発明について
第2で述べたとおり、訂正後の請求項〔25−39〕について、訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認めるが、訂正後の請求項〔1−24〕については、訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認めないことから、本件特許の請求項1〜39に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明39」という。ただし、請求項33は削除されたから、本件発明25〜39等と記載する場合には、本件発明33は存在しないものとする。)は、本件発明1〜24については願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜24に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本件発明25〜39については訂正特許請求の範囲の請求項25〜39に記載された事項により特定されるとおりものであり、そのうち、本件発明1及び25を記載すると、以下のとおりである。
「【請求項1】
被験者の刺激感受性を評価するためのシステムであって、
第1のタイプの刺激を前記被験者に与えるように構成された第1の作用チャネルと、
前記被験者からの応答を受け取るように構成された反応チャネルと、
前記第1の作用チャネルおよび前記反応チャネルに接続された信号路と、
コントローラとを含み、前記コントローラが、
前記第1の作用チャネルを含み、前記信号路において終端する経路を形成する第1の変換ループ、および
前記信号路を通って経路を形成し、第1の基準ユニットにおいて終端する前記第1の作用チャネルを含む第1のチャネルループのうちの少なくとも1つを一時的に形成するように適合された、システム。」

「【請求項25】
被験者の第1の感覚、反射および/または運動機構の感受性を改善するためのシステムであって、
前記被験者の第2の感覚、反射および/または運動機構を刺激するための促通信号の発生源と、
前記第1の感覚、反射および/または運動機構の生理学的応答を測定するためのセンサと、
前記測定された生理学的応答に基づいて前記促通信号のレベルを調整するためのコントローラとを含み、
前記コントローラが、
a)最初に促通信号を加えず、
b)促通信号がない間、第1の生理学的応答測定値を取得し、
c)前記促通信号のレベルを増加させ、
d)次の生理学的応答測定値を取得し、
e)前記次の生理学的応答測定値の変曲点を検出し、
f)前記変曲点の検出に続いて、プロセスc)、d)およびe)を前記促通信号の所定の最大レベルに達するまで繰り返し、
g)その取得の持続時間にわたって増加している最大生理学的応答をもたらす前記促通信号のレベルの選択によって前記促通信号の前記レベルを調整するように構成され、
前記促通信号の前記レベルを調整するステップが、てこの原理の相互作用により前記被験者の前記第1の感覚、反射および/または運動機構の前記感受性を改善する、システム。」

第4 取消理由(決定の予告)の概要
本件発明1〜24に係る特許に対して、当審が令和3年5月24日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由は、取消理由2(サポート要件)、取消理由3(明確性)及び取消理由4(進歩性)であり、その「むすび」として、
「本件発明1〜24は、特許法第36条第6項第1号及び同項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであることから、請求項1〜24に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、さらに、本件発明1〜24は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜24に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。」と述べている。

第5 本件発明1〜24について
本件発明1〜24は、上記第3で記載したとおり、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜24に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、上記第1で記載したとおり、上記取消理由通知書(決定の予告)に対して、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件発明1〜24に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。

第6 本件発明25〜39について
本件発明25〜39については、上記第3で記載したとおり、訂正特許請求の範囲の請求項25〜39に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、上記取消理由通知(決定の予告)において、本件発明25〜39に係る特許に対して、取消理由を通知していない。
そこで、以下、本件発明25〜39に係る特許に対して、申立人が、特許異議申立書で申し立てた理由について検討する。
なお、申立人は、令和3年4月30日に提出の意見書において、訂正特許請求の範囲の請求項25〜39で特定されるところの本件発明25〜39については、取り消されるべきものであるとの主張はしていない。

1 異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書で、本件発明25〜39について、以下の申立理由を主張している。
(1)申立理由1
訂正前の請求項25〜31に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に、甲第1〜7号証に記載された事項、又は周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、請求項25〜31に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由2
訂正前の請求項25〜39に係る発明は、甲第8号証に記載された発明に、甲第1〜7号証に記載された事項、又は周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、請求項25〜39に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特表2006−521879号公報
甲第2号証:特開2001−264713号公報
甲第3号証:特表2011−521610号公報
甲第4号証:特開2000−173794号公報
甲第5号証:特開2002−239213号公報
甲第6号証:特表2003−528679号公報
甲第7号証:特開平1−204657号公報
甲第8号証:米国特許出願公開第2006/0161218号明細書
(以下、甲第1号証〜甲第8号証は「甲1」〜「甲8」という。)

甲第9号証:米国特許出願Application No.15/302,920のNon-Final Rejection
甲第9号証については、特許異議申立書で「なお、本件特許に対応する米国特許出願US.201515302920.Aの審査過程において、甲第8号証を引例とした自明性拒絶が通知されている。2017年12月15日付けで発行されたNon-Final Rejectionの内容は甲第9号証に示される。」と述べられているとおり、当該Non-Final Rejectionの発行日は2017年12月15日で本件国際出願日より後であり、上記申立理由の証拠とはならない。

2 甲号証の記載について
(1)甲1について
ア 記載事項について
甲1には、以下の事項が記載されている。
(甲1ア)「【技術分野】
【0003】
本発明は、足及び足首の神経刺激を通じて人間の平衡及び歩行を改善し、足の傷害を防止することに関し、さらに詳しくは、足及び足首に神経刺激を与える着用可能なプラットフォーム並びに神経刺激を最適化するためのシステムに関する。」

(甲1イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、人間の平衡及び歩行の改善並びに足の傷害の防止のために足及び/または足首に神経刺激を与える着用可能なシステム及び神経刺激を最適化するためのシステムを提供することである。
・・・
【0018】
本発明は、足の裏及びその他の表面に神経学的刺激を与えることにより平衡及び歩行を改善するための新規な方法及び装置を提供するものであり、有益である。さらに、本発明は、足首に神経学的刺激を与えることにより平衡及び歩行を改善するための新規な方法及び装置を提供するものであり、有益である。
【0019】
本発明のさらなる目的は、特に糖尿病またはその他の神経障害をかかえる人々において、足の裏及びその他の表面に神経学的刺激を与えることにより、足に傷害が生じる可能性を低くするための新規な方法及び装置を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、足の裏及びその他の表面に神経学的刺激を与えることにより、通常の活動または体育活動に必要な反応を含む、全般的な感覚運動能力を改善するための新規な方法及び装置を提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、足首周りの腱、靭帯及び筋肉に神経学的刺激を与えることにより、平衡、歩行及び全般的な感覚運動能力を改善するため及び足に傷害が生じる可能性を低くするための新規な方法及び装置を提供することである。」

(甲1ウ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下の詳細な説明を考察すれば、本発明はよりよく理解されるであろうし、上述した態様とは別の本発明の態様が明らかになるであろう。
【0047】
本明細書及び本明細書に添付される図面を通して、先に示されたかまたは論じられた要素の参照数字は同様の要素を示すために別の図面において再び使用されることがある。
【0048】
ここで図面を参照すれば、図1a〜1cは靴の中底インサートの形態にある本発明の着用可能なシステムの第1の実施形態を示す。図1aは、いくつかの層で構成される中底インサート装置の分解組立図を示す。中底の上部層10は、足とアクチュエータコンポーネントの間の快適なインターフェースを提供する、追従性がある柔軟な層である。この上部層10の輪郭は一般的な足に合わされ、厚さは従来の中底に見られるように様々である。上部層10は一般に、発泡体、布またはゲルでつくられる。中間層11は、図面を分かりやすく簡素化するために示されていない、蓄電池及び信号発生回路を入れた制御ポッドを収める容器である。電池、制御ポッド及び信号発生回路の詳細は本発明のこの実施形態及びその他の実施形態の教示によりさらに明らかになるであろう。
【0049】
図1aに示される下部層12は、振動を効率よく伝搬させ得る材料からなる。振動刺激を発生するためのアクチュエータはこれらの層のいずれにも組み込むことができるが、快適性のための上部層10は慣習的に含まれないであろう。図示されていないアクチュエータは、電磁型、電気機械型、固体(例えば、ニチノール、圧電)型、液圧型、空気圧型、強磁性流体型、電気賦活高分子材型等を含む、アクチュエータの1つのタイプまたは組合せタイプからなる。アクチュエータは信号発生回路によって駆動されて、中底材料層を通して足の表面に、非決定論的、雑音性または決定論的な信号(すなわちバイアス信号)を生じさせる。バイアス信号は閾下レベルまたは閾超レベルの信号とすることができる。信号発生器によって発生される駆動信号及びアクチュエータからのバイアス信号の詳細は、バイアス信号周波数範囲の詳細とともに、本明細書のコントローラに関する別の教示の節においてさらに開示されるであろう。
【0050】
図1aの振動多層構造は、合せ込み作業の間及び使用のために靴14に挿入されている間、それぞれの足13のための治療刺激レベルに対してコントローラにより制御可能である。
【0051】
図1bは足裏に刺激を与えるために靴14に用いられている振動中底インサートを示す。使用に続いて、中底内の電池電源は図1cに示されるインターフェースポート16及び外部充電ケーブル17を用いて再充電することができる。インターフェースは、遠隔外部制御、診断、調整、プログラミング及びその他の目的のためにコントローラを外部装置と接続するための通信インターフェースを備えることもできる。
【0052】
図1cは、図1aの多層中底インサートの完成アセンブリー及びプログラミングインターフェースを示す。先に述べたように、インターフェースポート16は、例えば振動レベル及び信号の変更を可能にするプログラミングポートとしてもはたらくことができる。通信インターフェースは有線または光のシリアルまたはパラレル通信インターフェースとすることができる。通信インターフェースは無線RF手段または光通信手段とすることもできる。
【0053】
上述した図1a〜1cの中底インサートは振動刺激器を備える。しかし、上部層10は、上述した層の内の別の層にまたはその上に配置された1つまたはそれより多くの振動アクチュエータの組合せとともに用いることができる、電気刺激器を収めるように適合させることもできる。
【0054】
電気刺激器については、1つまたはそれより多くの、使い捨てであるか、再使用可能であるかまたはスティック−スリップ型の電極を用いることができる。先に述べたように、与えられる刺激は、閾下レベルまたは閾超レベルの刺激、あるいは用いられる刺激器のタイプによって可能となるような2つのレベルの間を交互する刺激である。
【0055】
靴内に図1A〜1cの能動神経学的刺激中底を着用している間、ユーザは足裏における触覚感度の改善を享受するであろう。この改善された触覚感度により、改善された平衡、改善された歩行、高められた感覚運動能力、転倒の低減、及び糖尿病患者の足の潰瘍のような傷害の防止がもたらされるであろう。
【0056】
図1a〜1cは足裏に神経学的刺激を送り出すための中底構造を示す。本発明のこの実施形態のさらに一般的な実施形態は、靴に入れられる、さらに詳しくは、足裏に加えてあるいは足裏の代わりに、足の側面及び上面に刺激を送り出すためのいずれかのインサートとすることができる、刺激プラットフォームである。
・・・
【0093】
本発明において、コントローラは、様々な機能の中でもとりわけ、刺激構造、例えば、電極、アクチュエータ及びこれらの組合せを駆動するために用いられる刺激パラメータの制御の機能を担う。コントローラの高水準概念図が図12に示される。1つまたはそれより多くの刺激構造体121及び1つまたはそれより多くの検知素子すなわちセンサ122がコントローラ120に接続される。検知素子122は、刺激器の用途に基づいて刺激構造体の性能を調整するために、コントローラが用いることができる。」

イ 甲1発明について
上記アの記載(特に下線部参照)から、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、図面における符号は略して記載する。
「靴の中底インサートの形態にある着用可能なシステムであって、
上部層は、足とアクチュエータコンポーネントの間の快適なインターフェースを提供し、中間層は、蓄電池及び信号発生回路を入れた制御ポッドを収める容器であり、下部層は、振動を効率よく伝搬させ得る材料からなり、
振動刺激を発生するためのアクチュエータはこれらの層のいずれにも組み込むことができ、
コントローラは、アクチュエータを駆動するために用いられる刺激パラメータの制御の機能を担い、
該中底を着用している間、ユーザは足裏における触覚感度の改善を享受し、この改善された触覚感度により、改善された平衡、改善された歩行、高められた感覚運動能力、転倒の低減、及び糖尿病患者の足の潰瘍のような傷害の防止がもたらされる、
システム。」(以下「甲1発明」という。)

(2)甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている。
(甲2ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光通信などに使用される光干渉計型光変調器のバイアス制御回路に関する。」

(甲2イ)「【0013】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、本発明は入力される電気信号の大きさの変化に対して出力光の強度が周期的に変化する周期的入出力特性を有する光変調器のバイアス値をフィードバックループを用いて制御するバイアス制御回路において、フィードバックループを開閉するループ開閉スイッチと、このループ開閉スイッチをバイアス制御回路の電源が投入された直後はループ開状態とし、電源が安定した後にループ閉状態とするスイッチ制御手段と、フィードバックループ内に設けられ、バイアス値を制御するためのバイアス信号を発生するバイアス信号発生手段とを有する。そして、バイアス信号発生手段はループ開閉スイッチがループ閉状態となった直後のバイアス信号の値がバイアス信号の最小値より光変調器の周期的入出力特性の半周期に相当する値以上大きく、かつバイアス信号の最大値より半周期に相当する値以上小さいバイアス信号を発生することを特徴とする。」

(3)甲3について
甲3には、以下の事項が記載されている。
(甲3ア)「【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、入力電圧に基づくエネルギー保存器へのエネルギーの規則的な供給のための電圧変換回路に関する。例えば、この種の電圧変換回路は、例えば、熱発電器、燃料電池または太陽電池などのエネルギー源の出力電圧のアップコンバージョンに関連して用いられることができる。さらに、本発明による実施例は、エネルギー保存器へのエネルギーの規則的な供給のための方法に関する。」

(甲3イ)「【0009】
本発明は、電圧変換回路の入力に与えられる入力電圧に基づくエネルギー保存器へのエネルギーの規則的な供給のための電圧変換回路を提供する。電圧変換回路は、エネルギー保存器および制御端末を有するスイッチ装置を含む。スイッチ装置は、エネルギー保存器に接続される。さらに、電圧変換回路は、フィードバック信号を提供するフィードバック回路を含む。フィードバック回路は、フィードバック信号を制御端末に与える切り替え可能なカップリング素子を含み、切り替え可能なカップリング素子は、電圧変換の始動段階の後より始動段階においてより強いカップリング効果を提供する。」

(4)甲4について
甲4には、以下の事項が記載されている。
(甲4ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、YAGレーザを励起する為のアークランプ又はフラッシュランプ等へ給電する電源回路に関するものである。」

(甲4イ)「【0012】
【課題を解決するための手段】第1発明に係る電源回路は、直流電源又はコンデンサと、該直流電源又はコンデンサと負荷とを含めたループ回路をなすべき、スイッチ回路及びリアククトルからなる複数の並列に接続された直列回路と、前記負荷及びリアククトルに並列にそれぞれ接続すべき複数のフリーホイールダイオードと、前記負荷に流れる電流を検出する電流検出器と、与えられた制御指令値と該電流検出器が検出した電流値との偏差を演算する偏差演算器と、該偏差演算器が演算した偏差に基づき、前記スイッチ回路をオン/オフ制御し、前記偏差に基づき、前記スイッチ回路を同時的にオン制御又はオフ制御するオン/オフ制御手段とを備え、前記負荷に流す電流をステップ状に増減制御すべくなしてあることを特徴とする。」

(5)甲5について
甲5には、以下の事項が記載されている。
(甲5ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、体感発生システム及び体感発生方法に係り、さらに詳しくは、コンピュータゲームやビデオソフトによりモニタに映し出されたシーン又は音声と連動して利用者に対して当該シーン又は音声に対応した所定の刺激を与える体感発生システム及び体感発生方法に関する。」

(甲5イ)「【0025】測定器30は、利用者Aの身体の一部に装着され、利用者の呼吸、心拍数、体温、血圧等の身体的反応を測定する。本実施形態においては、図2(a)に示した体感発生器20に併設されており、利用者Aの上腕部aに巻き付けることにより血圧及び心拍数が測定可能とされている。もちろん、測定器30はこれに限らず、利用者Aの身体の一部に取着することにより体温や呼吸数を測定するものであっても構わない。」

(6)甲6について
甲6には、以下の事項が記載されている。
(甲6ア)「【0001】
(発明の分野)
本発明は非侵襲的な測定方法およびシステムに関し、より詳細には、急性の痛みおよび慢性の痛みの最中における脳活動の指数を測定するための方法および装置、ならびに急性または慢性の痛みに対する治療効果を測定する能力に関する。神経映像信号から定量的な指数を求めるための新規の方法でもある。」

(甲6イ)「【0014】
本発明のさらなる態様によれば、動機的および情動的機能を通じての脳活動の指数を測定するための方法は、中枢神経系(CNS)信号を非侵襲的に取得するステップと、CNS信号を統計的に解析し、次いで特定の解剖学的および機能的な脳の部位に局在化するステップと、機能的な脳の部位の内部およびそれらの間の活動のパターンに関してCNS信号を評価するステップと特定のアプリケーションとの関連付けの結果を解釈するステップとを含む。この特定の構成により、機能的および情動的機能を通じての脳活動の指数を測定するための技術が提供される。一実施形態では、1つまたは複数の動機/情動プロセスに的を絞った1つまたは複数の実験的パラダイムを被験対象に施しながら、CNS信号を(例えば、MRI、PETまたは他の非侵襲的測定システムを介して)取得する。他の実施形態では、被験対象に刺激を与えながら(例えば、被験対象に人または食物または消耗品の写真を見せながら)、あるいは被験対象に特定の作業を行わせながら(例えば、棒を押して特定の結果を得るなど)、CNS信号を取得する。あるいは、被験対象を上記の作業の何らかの組合せに従事させることも可能である。」

(7)甲7について
甲7には、以下の事項が記載されている。
(甲7ア)「〔産業上の利用分野〕
この発明は治療等の目的の為に味覚認識の判定や評価を行うための装置に関する。」(1頁右欄2〜4行)

(甲7イ)「〔課題を解決するための手段〕
この発明では、味物質を含む供試材3を口腔9内に送給して、被験者が味覚を感じたか否かの認識を脳波の変動により捉える。」(2頁左上欄12〜15行)

(8)甲8について
ア 記載事項について
甲8には、以下の事項が記載されている。
(甲8ア)「FIELD OF THE INVENTION
[0003] The present invention relates to systems and methods for management of brain and body functions and sensory perception. For example, the present invention provides systems and methods of sensory substitution and sensory enhancement (augmentation) as well as motor control enhancement. The present invention also provides systems and methods for treating diseases and conditions, as well as providing enhanced physical and mental health and performance through sensory substitution, sensory enhancement, and related effects. 」
(当審訳:発明の分野
[0003] 本発明は、脳及び身体の機能並びに知覚の管理のためのシステム及び方法に関する。例えば、本発明は、運動機構の制御の増進だけでなく、感覚代行及び感覚の増進(増強)のシステム及び方法を提供する。本発明は、感覚代行、感覚の増進及びそれらと関連した効果を介して、増進された肉体的及び精神的な健康と行動を提供すると共に、疾患状態の治療に対するシステム及び方法を提供する。)

(甲8イ)「DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
[0078] The present invention provides systems and methods for managing sensory information by providing new forms of sensory input to replace, supplement, or enhance sensory perception, motor control, performance of mental and physical tasks, and health and well being. The systems and methods of the present invention accomplish these results by providing sensory input from a device to a subject. The sensory input is provided in a manner such that, through the nature of the input, or through subject training, or a combination thereof, a subject receiving the input receives information and the intended benefit. Thus, the present invention provides a machine-brain interface for the transmission of sensory information (e.g., through the skin). Unlike methods that simply provide physical stimulation of a skin surface, preferred embodiments of the systems and methods of the present invention provide structure to the signal such that information is conveyed to the brain, affecting brain function.
[0079] Brain Computer Interface (BCI) technology is one of the most intensely developing areas of modern science and has created numerous significant crossroads between neuroscience and computer science. The goal of BCI technology is to provide a direct link between the human brain and a computerized environment. However, the vast majority of recent BCI approaches and applications have been designed to provide the information flow from the brain to the computerized periphery. The opposite or alternative direction of flow of information (computer to brain interface-CBI) remains almost undeveloped.
[0080] The systems of the present invention provide a Computer Brain Interface and other systems and methods for providing information to the brain that offers an alternative symmetrical technology designed to support a direct link from a computerized or machine environment (or from any other system that can provide information about the environment) to the brain and to do it, if desired, non-invasively.」
(当審訳:発明の詳細な説明
[0078] 本発明は、知覚、運動機構の制御、精神的及び身体的な作業の行動能力並びに健康な状態を改善する、補強する又は強化するための新たな形態の感覚入力を提供することによって、感覚情報を管理するためのシステムおよび方法を提供する。本発明のシステム及び方法は、感覚入力をデバイスから対象に与えることによって、これらの結果を得るべく実行する。感覚入力は、入力の性質、対象の運動、あるいはそれらの組み合わせを通じて、入力を受け取る対象が情報及び意図した利益を受けるような様式で与えられる。したがって、本発明は、感覚情報の伝達(例えば、皮膚を介して)のための機械-脳インターフェースを提供する。皮膚表面に対して物理的刺激を単に与える方法とは異なり、本発明のシステムおよび方法は情報が脳へと伝えられ、脳機能に影響を及ぼすようなシグナルとなるような構成とする。
[0079] 脳コンピュータインターフェース(BCI)技術は、現代科学の最も発達してきている領域の一分野であり、神経科学とコンピューターサイエンスとの間で多数の重要な道筋を作ってきた。BCI技術の目的は、ヒトの脳及びコンピュータ化された環境との間に直接的なリンクを提供することである。しかしながら、最近の多くのBCIのアプローチ及び適用は、脳からの情報の流れをコンピュータ化された周辺に提供するように設計されていた。それとは逆の代替的な方向で流れる情報(コンピュータから脳へのインターフェース−CBI)については、ほとんど未発達のままである。
[0080] 本発明のシステムは、必要に応じて非侵襲的に、コンピュータ化された又は機械化された環境(又はその環境に関する情報を提供することができる他のシステム)から脳への直接的リンクをサポートするように設計された交換可能な技術を提供する、脳への情報を与えるコンピュータブレインインターフェースとその他のシステム及び方法を提供する。)

イ 甲8発明について 上記アの記載(特に下線部参照)から、甲8には、以下の発明が記載されていると認められる。
「知覚、運動機構の制御、精神的及び身体的な作業の行動能力並びに健康な状態を改善する、補強する又は強化するための感覚入力を提供することによって、感覚情報を管理するためのシステムであって、
感覚入力は、入力を受け取る対象が情報を受けるような様式で、デバイスから対象に与えられ、
該情報が脳へと伝えられ、脳機能に影響を及ぼすようなシグナルとなるような構成とする、システム。」(以下「甲8発明」という。)

3 当審の判断
(1)申立理由1について
ア 本件発明25について
(ア)対比
本件発明25と甲1発明とを対比する。
a 本件発明25において、「第1」及び「第2」の「感覚、反射および/または運動機構」があり、「感受性を改善」する前者を「第1」と呼称している限りにおいて、甲1発明の「ユーザ」の「触覚感度の改善」は、本件発明25の「被験者の」「第1の感覚」「の感受性を改善」に相当する。
そうすると、甲1発明の「ユーザ」の「触覚感度の改善」する「システム」は、本件発明25の「被験者の第1の感覚、反射および/または運動機構の感受性を改善するためのシステム」に相当する。

b 甲1発明の「アクチュエータを駆動するために用いられる刺激パラメータの制御の機能を担」う「コントローラ」は、「アクチュエータを駆動するために用いられる刺激パラメータ」のレベルを調整しているともいえることから、本件発明25の「前記測定された生理学的応答に基づいて前記促通信号のレベルを調整するためのコントローラ」とは、「レベルを調整するためのコントローラ」という限りにおいて共通している。

c 一致点・相違点について
上記a及びbを踏まえると、本件発明25と甲1発明とは、
(一致点)
「被験者の第1の感覚、反射および/または運動機構の感受性を改善するためのシステムであって、
レベルを調整するためのコントローラを含む、システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
システムが、本件発明25は、「前記被験者の第2の感覚、反射および/または運動機構を刺激するための促通信号の発生源と、前記第1の感覚、反射および/または運動機構の生理学的応答を測定するためのセンサと」を含むものであるのに対し、甲1発明は、それらを含むものではない点。

(相違点2)
レベルを調整するためのコントローラが、本件発明25では、
「前記測定された生理学的応答に基づいて前記促通信号の」レベルを調整するためのものであって、「a)最初に促通信号を加えず、b)促通信号がない間、第1の生理学的応答測定値を取得し、c)前記促通信号のレベルを増加させ、d)次の生理学的応答測定値を取得し、e)前記次の生理学的応答測定値の変曲点を検出し、f)前記変曲点の検出に続いて、プロセスc)、d)およびe)を前記促通信号の所定の最大レベルに達するまで繰り返し、g)その取得の持続時間にわたって増加している最大生理学的応答をもたらす前記促通信号のレベルの選択によって前記促通信号の前記レベルを調整するように構成され、前記促通信号の前記レベルを調整するステップが、てこの原理の相互作用により」前記被験者の前記第1の感覚、反射および/または運動機構の前記感受性を改善するものであるのに対し、
甲1発明では、「アクチュエータを駆動するために用いられる刺激パラメータの制御の機能を担」うものである点。

(イ)判断
相違点1及び2を同時に検討する。
本件発明25は、システムに「前記被験者の第2の感覚、反射および/または運動機構を刺激するための促通信号の発生源と、前記第1の感覚、反射および/または運動機構の生理学的応答を測定するためのセンサと」を設け、コントローラが「前記測定された生理学的応答に基づいて前記促通信号のレベル」の「調整」を「a)最初に促通信号を加えず、b)促通信号がない間、第1の生理学的応答測定値を取得し、c)前記促通信号のレベルを増加させ、d)次の生理学的応答測定値を取得し、e)前記次の生理学的応答測定値の変曲点を検出し、f)前記変曲点の検出に続いて、プロセスc)、d)およびe)を前記促通信号の所定の最大レベルに達するまで繰り返し、g)その取得の持続時間にわたって増加している最大生理学的応答をもたらす前記促通信号のレベルの選択によって前記促通信号の前記レベルを調整するように構成され、前記促通信号の前記レベルを調整するステップが、てこの原理の相互作用により」行うことによって、「被験者の前記第1の感覚、反射および/または運動機構の前記感受性」の「改善」をしているが、
上記甲1〜7には、「被験者の感覚、反射および/または運動機構の感受性」の「改善」を、「被験者の第2の感覚、反射および/または運動機構を刺激するための促通信号の発生源と、第1の感覚、反射および/または運動機構の生理学的応答を測定するためのセンサと」を設けて、コントローラが「a)最初に促通信号を加えず、b)促通信号がない間、第1の生理学的応答測定値を取得し、c)前記促通信号のレベルを増加させ、d)次の生理学的応答測定値を取得し、e)前記次の生理学的応答測定値の変曲点を検出し、f)前記変曲点の検出に続いて、プロセスc)、d)およびe)を前記促通信号の所定の最大レベルに達するまで繰り返し、g)その取得の持続時間にわたって増加している最大生理学的応答をもたらす前記促通信号のレベルの選択によって前記促通信号の前記レベルを調整するように構成され、前記促通信号の前記レベルを調整するステップが、てこの原理の相互作用により」行うことを開示したものはなく、それが本件出願の優先日当時に周知であったといえる証拠もない。
そうすると、本件発明25は、甲1発明、及び、甲1〜7に記載された事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明26〜31について
本件発明26〜31は、いずれも本件発明25を直接的又は間接的に引用した発明であり、甲1発明とは、少なくとも上記相違点1及び2で相違し、それらに対する判断は上記のとおりであるから、本件発明25と同様に、甲1発明、及び、甲1〜7に記載された事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括
よって、本件発明25〜31は、甲1発明、及び、甲1〜7に記載された事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないことから、申立理由1によって、本件発明25〜31に係る特許を取り消すことはできない。

(2)申立理由2について
ア 本件発明25について
(ア)対比
本件発明25と甲8発明とを対比する。
a 本件発明25において、「第1」及び「第2」の「感覚、反射および/または運動機構」があり、「感受性を改善」する前者を「第1」と呼称している限りにおいて、甲8発明の「対象」の「知覚、運動機構の制御」「を改善する」ことは、本件発明25の「被験者の第1の感覚」「運動機構の感受性を改善する」ことに相当する。
そうすると、甲8発明の「対象」の「知覚、運動機構の制御」「を改善する」「システム」は、本件発明25の「被験者の第1の感覚、反射および/または運動機構の感受性を改善するためのシステム」に相当する。

b 一致点・相違点について
上記aを踏まえると、本件発明25と甲8発明とは、
(一致点)
「被験者の第1の感覚、反射および/または運動機構の感受性を改善するためのシステム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点3)
システムが、本件発明25では、「前記被験者の第2の感覚、反射および/または運動機構を刺激するための促通信号の発生源と、前記第1の感覚、反射および/または運動機構の生理学的応答を測定するためのセンサと、前記測定された生理学的応答に基づいて前記促通信号のレベルを調整するためのコントローラとを含み、
前記コントローラが、a)最初に促通信号を加えず、b)促通信号がない間、第1の生理学的応答測定値を取得し、c)前記促通信号のレベルを増加させ、d)次の生理学的応答測定値を取得し、e)前記次の生理学的応答測定値の変曲点を検出し、f)前記変曲点の検出に続いて、プロセスc)、d)およびe)を前記促通信号の所定の最大レベルに達するまで繰り返し、g)その取得の持続時間にわたって増加している最大生理学的応答をもたらす前記促通信号のレベルの選択によって前記促通信号の前記レベルを調整するように構成され、前記促通信号の前記レベルを調整するステップが、てこの原理の相互作用により」前記被験者の前記第1の感覚、反射および/または運動機構の前記感受性を改善するものであるのに対し、甲1発明は、それらを含むシステムではない点。

(イ)判断
上記相違点3は、上記(1)ア(ア)で記載した相違点1及び2に係る技術事項にさらに技術事項を追加したものであり、その相違点1及び2が、上記(1)ア(イ)で述べたように、上記甲1〜7には示されておらず、それが本件出願の優先日当時に周知であったといえる証拠もないのであるから、相違点3についても、上記甲1〜7には示されておらず、それが本件出願の優先日当時に周知であったといえる証拠もないことになる。
してみれば、本件発明25は、甲8発明、及び、甲1〜7に記載された事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明26〜39について
本件発明26〜39は、いずれも本件発明25を直接的又は間接的に引用した発明であり、甲8発明とは、少なくとも上記相違点3で相違し、それらに対する判断は上記のとおりであるから、本件発明25と同様に、甲8発明、及び、甲1〜7に記載された事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括
よって、本件発明25〜39は、甲8発明、及び、甲1〜7に記載された事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないことから、申立理由2によって、本件発明25〜39に係る特許を取り消すことはできない。

第7 むすび
上記第5で述べたとおり、取消理由通知書(決定の予告)における本件発明1〜24についての取消理由は妥当なものと認められるので、請求項1〜24に係る特許は、特許法第113条第2号あるいは第4号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項25〜32及び34〜39に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。さらに、他に請求項25〜32及び34〜39に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項33に係る特許は、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項33に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 井上 博之
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項25】
被験者の第1の感覚、反射および/または運動機構の感受性を改善するためのシステムであって、
前記被験者の第2の感覚、反射および/または運動機構を刺激するための促通信号の発生源と、
前記第1の感覚、反射および/または運動機構の生理学的応答を測定するためのセンサと、
前記測定された生理学的応答に基づいて前記促通信号のレベルを調整するためのコントローラとを含み、
前記コントローラが、
a)最初に促通信号を加えず、
b)促通信号がない間、第1の生理学的応答測定値を取得し、
c)前記促通信号のレベルを増加させ、
d)次の生理学的応答測定値を取得し、
e)前記次の生理学的応答測定値の変曲点を検出し、
f)前記変曲点の検出に続いて、プロセスc)、d)およびe)を前記促通信号の所定の最大レベルに達するまで繰り返し、
g)その取得の持続時間にわたって増加している最大生理学的応答をもたらす前記促通信号のレベルの選択によって前記促通信号の前記レベルを調整するように構成され、
前記促通信号の前記レベルを調整するステップが、てこの原理の相互作用により前記被験者の前記第1の感覚、反射および/または運動機構の前記感受性を改善する、システム。
【請求項26】
前記促通信号の前記発生源が、視覚刺激デバイスと、振動刺激デバイスと、電磁刺激デバイスと、温度刺激デバイスと、触覚刺激デバイスと、音響刺激デバイスと、前記被験者からの短い距離内に置かれた匂いの発生源と、前記被験者が味わうための味覚サンプルを提供するデバイスとからなる群から選択される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記促通信号の前記発生源が、直接刺激を前記被験者の体の特定の領域に加えるように構成される、請求項25または26に記載のシステム。
【請求項28】
2つの異なる領域間の前記被験者の体の部位を刺激するために、前記被験者の体の前記2つの異なる領域を刺激することにより差異的な促通信号を加えるための2つの発生源を含む、請求項25から27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
いくつかの領域によって占められた前記被験者の体の部位を刺激するために、前記被験者の体の前記いくつかの領域を刺激することにより分散促通信号を加えるための複数の発生源を含む、請求項25から28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
複数の異なる促通信号を前記被験者の体に加えるための異なるタイプの複数の発生源を含む、請求項25から29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記システムをコンピュータに接続して刺激プロセスに関する情報をそれに転送するためのインターフェースをさらに含む、請求項25から30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記センサが、前記第1の感覚、反射および/または運動機構における温度を測定するように構成される、請求項25から31のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】(削除)
【請求項34】
前記コントローラが、各生理学的測定値の取得を実時間で実施するように構成される、請求項25から32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
その取得の持続時間にわたって増加している最大生理学的応答をもたらす前記促通信号のレベルの前記選択が、
各生理学的応答測定値のその取得の持続時間にわたる積分の計算と、
各生理学的応答の勾配の計算であって、前記勾配の平均値は、正または負のいずれかである値を与えるそれ自体の大きさによって正規化される、勾配の計算と、
各生理学的応答に対して、前記正規化された平均勾配と前記積分との積の計算と、
最適促通信号レベルを指定する最高の正の積の選択とを含む、請求項25から32及び34のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項36】
前記第1の感覚、反射および/または運動機構を刺激するための興奮性信号の発生源を含み、
前記コントローラが、前記促通信号の前記レベルを調整する前に、前記興奮性信号のレベルを前記第1の感覚、反射および/または運動機構における閾値下レベルに調整するように構成される、請求項25から32、34、及び35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
前記コントローラが、前記興奮性信号の前記レベルをそれがもはや前記被験者によって検出不可能となるまで低減することによって、前記興奮性信号の前記レベルを前記第1の感覚、反射および/または運動機構における閾値下レベルに調整するように構成される、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記興奮性信号の前記発生源が、視覚刺激デバイスと、振動刺激デバイスと、電磁刺激デバイスと、温度刺激デバイスと、触覚刺激デバイスと、音響刺激デバイスと、前記被験者からの短い距離内に置かれた匂いの発生源と、前記被験者が味わうための味覚サンプルを提供するデバイスとからなる群から選択される、請求項36または37に記載のシステム。
【請求項39】
前記興奮性信号を前記第1の感覚、反射および/または運動機構に加えるための前記興奮性信号の前記発生源に接続された刺激装置と、
前記促通信号を前記第2の感覚、反射および/または運動機構に加えるための前記促通信号の前記発生源に接続された別の刺激装置とを含む、請求項36から38のいずれか一項に記載のシステム。
 
訂正の要旨 審決(決定)【理由】の欄参照。
異議決定日 2021-10-20 
出願番号 P2017-504210
審決分類 P 1 651・ 121- ZDB (A61B)
P 1 651・ 537- ZDB (A61B)
最終処分 08   一部取消
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
三崎 仁
登録日 2019-08-23 
登録番号 6574241
権利者 ラファエル・ドティ ジーザス−エドゥアード・ルーゴ−アース ジョセリン・フォベール
発明の名称 被験者の刺激感受性を評価するための構成可能なシステムおよびそのための使用の方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 松尾 直樹  
代理人 実広 信哉  
代理人 淺野 耕一朗  
代理人 阿部 達彦  
代理人 淺野 耕一朗  
代理人 松尾 直樹  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  
代理人 松尾 直樹  
代理人 野村 進  
代理人 野村 進  
代理人 村山 靖彦  
代理人 野村 進  
代理人 淺野 耕一朗  
代理人 実広 信哉  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 野村 進  
代理人 淺野 耕一朗  
代理人 阿部 達彦  
代理人 阿部 達彦  
代理人 松尾 直樹  
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