• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 特29条特許要件(新規)  B32B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B32B
管理番号 1385123
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-11 
確定日 2022-03-07 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6672954号発明「樹脂シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6672954号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜12〕について訂正することを認める。 特許第6672954号の請求項1〜3、6〜12に係る特許を維持する。 特許第6672954号の請求項4〜5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6672954号の請求項1〜12に係る特許についての出願は、平成28年3月29日にした出願であって、令和2年3月9日にその特許権の設定登録がされ、令和2年3月25日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年9月11日 :特許異議申立人前田洋志(以下「申立人1」という。)による請求項1〜12に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立1」という。)
令和2年9月23日 :特許異議申立人松本朋子(以下「申立人2」という。)による請求項1〜12に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立2」という。)
令和2年9月25日 :特許異議申立人奥田ひとみ(以下「申立人3」という。)による請求項1〜12に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立3」という。)
令和3年3月24日付け:取消理由通知書
令和3年5月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和3年7月30日 :申立人3による意見書の提出

第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の
「支持体と、該支持体上に接合した樹脂組成物層と、を含む樹脂シートであって、
該樹脂組成物層の硬化物の、測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、
該樹脂組成物層の硬化物の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である、樹脂シート。」を、
「支持体と、該支持体上に接合した樹脂組成物層と、を含む樹脂シートであって、
該樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含有し、
該樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、
該無機充填材の平均粒径が、1.5μm以下であり、
該樹脂組成物層の厚みが、1μm以上であり、
該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、
該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である、樹脂シート。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜3、6〜12も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6の「樹脂組成物層が無機充填材を含有し、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が60質量%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂シート。」を、「樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が60質量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7〜12も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7の「樹脂組成物層が無機充填材を含有し、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が64.7質量%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂シート。」を、「樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が64.7質量%以上である、請求項1〜3、6のいずれか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8〜12も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8の「プリント配線板の絶縁層形成用である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂シート。」を、「該樹脂組成物層が、プリント配線板の絶縁層形成用である、請求項1〜3、6、7のいずれか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9〜12も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9の「1GHz以上の高周波基板の絶縁層形成用である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂シート。」を、「該樹脂組成物層が、1GHz以上の高周波基板の絶縁層形成用である、請求項1〜3、6〜8のいずれか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10〜12も同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10の「第1の導体層と、第2の導体層と、第1の導体層と第2の導体層との間に形成された6μm以下の絶縁層と、を含むプリント配線板の、該絶縁層形成用である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂シート。」を、「該樹脂組成物層が、第1の導体層と、第2の導体層と、第1の導体層と第2の導体層との間に形成された6μm以下の絶縁層と、を含むプリント配線板の、該絶縁層形成用である、請求項1〜3、6〜9のいずれか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11、12も同様に訂正する。)。
(9)訂正事項9
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11の「請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物である、プリント配線板。」を、「請求項1〜3、6〜10のいずれか1項に記載の樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物である、プリント配線板。」に訂正する(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)。

2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1〜12は、請求項2〜12が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあって、請求項1の訂正に連動して訂正される関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1−12〕について請求されたものである。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載されていた「樹脂組成物層」について、その組成及び厚みを限定し、本件訂正前の請求項1に記載されていた「樹脂組成物層の硬化物」が不明確であったものを、明確にしたものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、「樹脂組成物層」の組成及び厚みについては、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の、【0014】、【0015】、【0041】、【0048】及び【0080】に記載され、「樹脂組成物層の硬化物」については、【0093】に記載されているから、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、本件訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4、5、9
訂正事項4、5、9は、引用する請求項のうち、訂正事項2〜3によって削除された請求項4〜5を引用先の請求項から削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項6〜8
訂正事項6〜8は、引用する請求項のうち、訂正事項2〜3によって削除された請求項4〜5を引用先の請求項から削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、本件訂正前の請求項8〜10に記載されていた用途の主体が「樹脂組成物層」であることを明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

4 小括
上記のとおり、訂正事項1〜9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜12〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1〜3、6〜12に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」〜「本件発明3」、「本件発明6」〜「本件発明12」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜3、6〜12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
支持体と、該支持体上に接合した樹脂組成物層と、を含む樹脂シートであって、
該樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含有し、
該樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、
該無機充填材の平均粒径が、1.5μm以下であり、
該樹脂組成物層の厚みが、1μm以上であり、
該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、
該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である、樹脂シート。
【請求項2】
樹脂組成物層の厚みが15μm以下である、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
樹脂組成物層の最低溶融粘度が1000poise以上である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項6】
樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が60質量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項7】
樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が64.7質量%以上である、請求項1〜3、6のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項8】
該樹脂組成物層が、プリント配線板の絶縁層形成用である、請求項1〜3、6、7のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項9】
該樹脂組成物層が、1GHz以上の高周波基板の絶縁層形成用である、請求項1〜3、6〜8のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項10】
該樹脂組成物層が、第1の導体層と、第2の導体層と、第1の導体層と第2の導体層との間に形成された6μm以下の絶縁層と、を含むプリント配線板の、該絶縁層形成用である、請求項1〜3、6〜9のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項11】
第1の導体層、第2の導体層、及び、第1の導体層と第2の導体層との間に形成された6μm以下の絶縁層を含む、プリント配線板であって、
該絶縁層は、請求項1〜3、6〜10のいずれか1項に記載の樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物である、プリント配線板。
【請求項12】
請求項11に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。」

第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和3年3月24日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)サポート要件
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
実施例1〜3以外の樹脂組成物や、「絶縁層の厚み」よりも薄い絶縁層や、「無機充填材の平均粒径」が大きいか小さいものや「樹脂組成物中の無機充填材の含有量(充填量)」が多いか少ないものが、「樹脂組成物層の硬化物の」「測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、」「測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である」ことのみをもって、ただちに、本件特許の発明が解決しようとする課題を解決することまでは理解できないから、出願時の技術常識に照らしても、本件発明1〜12の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(2)明確性要件
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
ア 本件訂正前の請求項1に記載された「誘電正接」が、硬化された結果形成された「樹脂組成物層」そのものの「誘電正接」を意味しているのか、「樹脂組成物層」が含有する物質のうち「硬化物」のみの「誘電正接」を意味しているのか、または、これら以外の意味であるのかが不明であるから、本件訂正前の請求項1に係る発明は不明確である。この点、本件訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する本件訂正前の請求項2〜12についても同様である。
イ 本件訂正前の請求項8は本件訂正前の請求項1を引用するところ、請求項1に記載された「支持体」が、請求項8に特定された「プリント配線板」を構成するもののうち、何に相当するものであるのかが不明であり、かつ、「プリント配線板の絶縁層形成用である」という用途の特定が、「樹脂シート」のどのような構成を特定しようとしているのかが不明であるため、本件訂正前の請求項8に係る発明は不明確である。この点、本件訂正前の請求項8を直接的または間接的に引用する本件訂正前の請求項9〜12についても同様である。
ウ 本件訂正前の請求項9は本件訂正前の請求項1を引用するところ、請求項1に記載された「支持体」が、請求項9に特定された「1GHz以上の高周波基板」を構成するもののうち、何に相当するものであるのかが不明であり、かつ、「1GHz以上の高周波基板の絶縁層形成用である」という用途の特定が、「樹脂シート」のどのような構成を特定しようとしているのかが不明であるため、本件訂正前の請求項9に係る発明は不明確である。この点、本件訂正前の請求項9を直接的または間接的に引用する本件訂正前の請求項10〜12についても同様である。
エ 本件訂正前の請求項10は本件訂正前の請求項1を引用するところ、請求項1に記載された「支持体」が、請求項10の「プリント配線板」を構成するもののうち、何に相当するものであるのかかが不明であり、かつ、「第1の導体層と、第2の導体層と、第1の導体層と第2の導体層との間に形成された6μm以下の絶縁層と、を含むプリント配線板の、該絶縁層形成用である」という用途の特定が、「樹脂シート」のどのような構成を特定しようとしているのかが不明であるため、本件訂正前の請求項10に係る発明は不明確である。この点、本件訂正前の請求項10を直接的または間接的に引用する本件訂正前の請求項11〜12についても同様である。
(3)実施可能要件
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
課題解決の機序そのものに関する具体的な記載のない本件特許の発明の詳細な説明の記載から、「樹脂組成物の硬化物」の種類、「絶縁層の厚み」、「無機充填材の平均粒径」「樹脂組成物中の無機充填材の含有量(充填量)」の全てもしくは一部が特定されていない本件訂正前の請求項1〜12に係る発明の全範囲において、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をする必要なく本件特許の請求項1〜12に係る発明を実施することができたとはいえない。
(4)新規性
本件特許の請求項1、9〜12に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(5)進歩性
本件特許の請求項1〜3、8〜12に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、又は引用文献2記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項5〜7に係る発明は、引用文献2記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開昭58−163645号公報(申立2の甲第1号証)
引用文献2:特開2000−230102号公報(申立2の甲第2号証)
引用文献3:特開2016−27097号公報(申立2の甲第5号証)

2 当審の判断
(1)サポート要件
訂正事項1により、本件訂正前の請求項1に記載されていた「樹脂組成物層」について、その組成及び厚みを限定したため、本件発明1〜12は、本件特許の発明が解決しようとする課題を解決するものとなった。
したがって、本件発明1〜12は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(2)明確性要件
ア 訂正事項1により、本件訂正前の請求項1に記載されていた「樹脂組成物層の硬化物」が不明確であったものを明確にしたため、本件発明1〜12は明確である。
イ 訂正事項6により、本件訂正前の請求項8に記載されていた「プリント配線板の絶縁層形成用である」ものが、「樹脂組成物層」に特定されたことにより、本件発明8〜12は明確である。
ウ 訂正事項7により、本件訂正前の請求項9に記載されていた「1GHz以上の高周波基板の絶縁層形成用である」ものが、「樹脂組成物層」に特定されたため、本件発明9〜12は明確である。
エ 訂正事項8により、本件訂正前の請求項10に記載されていた「第1の導体層と、第2の導体層と、第1の導体層と第2の導体層との間に形成された6μm以下の絶縁層と、を含むプリント配線板の、該絶縁層形成用である」ものが、「樹脂組成物層」に特定されたことにより、本件発明10〜12は明確である。

(3)実施可能要件
訂正事項1により、本件訂正前の請求項1に記載されていた「樹脂組成物層」について、その組成及び厚みを限定したことにより、発明の詳細な説明の記載に対応したものとなった。
したがって、本件特許の発明の詳細は説明は、当業者が本件発明1〜12を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

(4)新規性進歩性
ア 引用文献に記載された事項、引用発明
(ア)引用文献1
引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のために、当審が付した。
「2.〔特許請求の範囲〕
少くとも1枚の銅板と少くとも170℃のガラス転位温度を有する1枚の熱可塑性樹脂のシートとから成る複合体を形成し、該複合体に該銅板が該樹脂のシートに直接結合するに充分な時間約170〜300℃の範囲の温度において高圧を加え、得られた約65LBS/INCH以上の剥離強さを有する高プロフイル銅張り積層板を回収することから成る銅張り積層板の製造方法。」(1ページ左欄4〜12行)
「本発明は金属張り積層板の製造方法に関する。詳しくは、本発明は時間、温度及び圧の比較的温和な操作条件を利用して、ある特徴を有する高プロフイル銅と熱可塑性樹脂との間の直接結合を得るための方法に関する。積層板の金属部分が仕上り製品の一面または両面のいづれかにある銅張り積層板は回路板の製造に用いられる。この方法によつて得られる回路板は種々の電子装置に用いられ、特に比較的高周波を含む装置における使用に適する。例えば、本発明の方法によつて製造される回路板はレーダー、高度計、距離測定装置のごときマイクロウエーブ装置及び周波数がジガヘルツまたはジガビツト(ジガは109)で測定されるコンピユーターのごとき高速デジタル装置に使用される。」(2ページ左下欄12行〜右下欄6行)
「本発明は銅張り積層板の製造方法、詳しくは、後に詳記する種類の熱可塑性樹脂から成る支持体を積層板の高プロフイル銅の部分に直接結合する方法に関する。得られた銅張り積層板は各種の目的に使用できる所望の特性を有する。ここに“高プロフィル銅”と言う用語は1面がなめらかで他面が粗い銅ホイルまたはシートとして定義される。」(3ページ左上欄11〜17行)
「積層板の銅部分に対する熱可塑性樹脂の直接結合は少くとも170℃のガラス転位温度を有しかつ予め定められた厚さを有する熱可塑性樹脂のシートが少くとも1枚の銅のシートと接触して支持体として作用する複合体を形成することによつて行われる。」(3ページ右上欄14〜19行)
「本発明の積層板の第2成分を形成する熱可塑性樹脂の例は、少くとも170℃のガラス転位温度を有するものから成り、結晶形融点が170〜181℃の範囲のアセタール類、170〜230℃の範囲の結晶形融点を有するセルロース樹脂、結晶形融点が170〜327℃の範囲のフルオロプラスチツク、216〜265℃の範囲の結晶形融点を有するナイロン−6、195℃の結晶形融点を有するナイロン−11、175℃の結晶形融点を有するナイロン−12、232〜267℃の範囲の結晶形融点を有する熱可塑性ポリエステル類、290℃の結晶形融点を有するポリフエニレンサルフアイド、275℃の無定形融点を有するポリアミド、190℃の無定形融点を有するポリアリールエステル樹脂、310〜365℃の範囲の無定形融点を有するポリイミド樹脂、193〜230℃の範囲の無定形融点を有するポリスルホン、などのごとき樹脂を包含する。上記の導電性金属と熱可塑性樹脂は使用する材料の代表例であつて、本発明はこれに限定されるものではない。」(3ページ左下欄12行〜右下欄12行)
「熱可塑性樹脂が積層板の銅部分に直接結合されている所望の銅張り積層板はバツチ式または連続式操作のいづれでも製造される。例えば、バツチ式操作を使用する時は、複合体は熱可塑性樹脂支持体のシートを銅のシート上におくか、あるいは上記積層板の両面に銅を含む積層板が望ましい場合は銅の2枚のシートの間におくことによつて形成される。」(3ページ右下欄13〜20行)
「 実施例1
高プロフイル鋼とポリスルホンのシートを空気循還オーブン中で約90〜105℃の温度で2時間予備焼きして存在する湿分を追い出すことによつて製造した。これに続いて、銅のシートをステンレススチールの当て板上におき、ポリスルホンのシートをこの銅の上においた。その後、もう1枚の銅のシートをこのポリスルホンの上においてポリスルホンの両面に銅のシートを有する複合体を形成した。このようにして1つの複合体が他の複合体の上におかれた同様の複合体6個以上を作つた。複合体と複合体の間には当て板はおかなかつた。第2のステンレススチールの当て板を複合体の上におき、次に、複合体を125PSIの圧の下で232℃の温度に維持したホツトプレスに入れた。複合体を接着剤層においてホツトプレスに30秒〜3分間維持した。この間に、ポリスルホンは溶融しその両側の2枚の銅のシートへの直接結合を形成した。この時間の終りに、このように形成した銅張り積層板は循還冷却水によつて約50℃の温度に冷却し続いて圧を除きプレスから引き出した。
このようにして形成した積層板に種々の物理的テストを行つて次の結果が得られた:
・・・
各種の物理的テストの他に、積層板はなお電気的データを得るためのテストを行つた。MITによるGHz誘電測定は短い共軸ラインにおける定常波法を用いて1〜24GHzの範囲において行われた。・・・周波数が1〜24ジガヘルツの範囲で、温度が23℃から175℃そしてまた23℃にわたるこのテストの結果は次の表に示した。ただし、表において、Kは誘電率、Zは誘電正接である。」(4ページ右上欄17行〜5ページ左上欄18行)


」(5ページ下欄)
「上記の表から、本発明の方法によつて製造した直接結合積層板は、誘電常数及び消失フアクターが温度及び周波数の広い範囲にわたつて可成り均一である電気的データを与え、かくして高周波を含む装置に使用できることがわかる。」(6ページ左上欄1〜5行)
以上に摘記した事項を総合すると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「熱可塑性樹脂であるポリスルホンのシートの両面に銅のシートを有する複合体を形成し、ポリスルホンのシートが溶融しその両側の2枚の銅のシートへの直接結合を形成した、高プロフイル銅張り積層板であって、周波数8.5GHz、23℃における誘電正接が0.00539であり、周波数8.5GHz、150℃における誘電正接が0.00766及び0.00695であり、周波数14GHz、23℃における誘電正接が0.00560であり、周波数14GHz、150℃における誘電正接が0.00812及び0.00725である、高プロフイル銅張り積層板。」

(イ)引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のために、当審が付した。
「【請求項1】 シクロヘキサジエン系ポリマーと、SiO2の純度が93%以上のシリカ10〜70質量%とを含むことを特徴とする低誘電性樹脂組成物。
【請求項2】 シクロヘキサジエン系ポリマーが、1,2付加体と1,4付加体との混合体であって、1,2付加体のモル分率が20〜80モル%であることを特徴とする請求項1の低誘電性樹脂組成物。
【請求項3】 シリカが、アスペクト比1〜10で、平均粒径0.01〜100μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の低誘電性樹脂組成物。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メッキ特性に優れ、かつ、幅広い温度領域で優れた電気特性を有する低誘電性樹脂組成物に関し、特に、電子部品(配線基板、コネクター、ハウジング、絶縁材料等)に有用な低誘電性樹脂組成物に関する。
【0002】より詳細には、メッキ特性に優れ、しかも比誘電率と誘電正接が幅広い温度領域で低く、かつ、変動することがないため、高周波用の3次元回路基板や電子部品(射出成形回路部品:Molded interconnection device<MID>、射出成形回路基板:Molded circuit boad<MCB>)等に利用可能な低誘電性樹脂組成物に関する。
【0003】ここで言う、高周波信号とは周波数100KHz〜300GHzの電波(電磁波)のことで、高周波信号を用いる具体的な商品としては携帯電話、PHS、ポケベル、衛星端末、ナビゲーションシステム、GPS、無線LAN、ITS等が挙げられる。
【0004】
【技術背景】近年、電子情報分野では、伝達情報量の増加、伝達時間の短縮に対応して、伝送信号の高周波化が進んでいる。単位時間当たりの伝達情報量は、信号の周波数に比例して多くでき、結果として、伝送速度を速くすることが可能となる。しかし、信号の周波数と信号エネルギーの損失との間には、数1に示す関係があり、高い周波数の信号は伝送損失が大きくなるといった欠点がある。この損失は、一般に誘電損失と言われ、数1に示す周波数と絶縁体の比誘電率、誘電正接の関数で表される。
【0005】
【数1】A=k(1/c)f・√εr・tanδ
A:損失(dB/cm)
c:光速
k:定数
f:周波数(Hz)
εr:比誘電率
tanδ:誘電正接
【0006】すなわち、誘電損失は、周波数と、絶縁体の比誘電率及び誘電正接とに比例して大きくなる。よって、高周波信号を利用し、かつ、できるだけ誘電損失を低減するためには、極力、低比誘電率、低誘電正接の絶縁体を用いる必要がある。」
「【0008】ところで、一般に、樹脂の電気特性(比誘電率、誘電正接)は、周囲の環境、例えば温度変化により樹脂の比誘電率と誘電正接が変動し、電子部品や電子機器自体の電気的な性能が変動する。外的変化が余りに大きい場合には、電気特性が低下することがあるため、電子部品や電子機器に使用する樹脂の電気特性の温度依存性が重視される。つまり、高周波用樹脂としては、広い範囲の温度において、比誘電率と誘電正接が変動することなく安定した低い値を示し、かつ優れたメッキ特性を併せ持つ多機能な樹脂が必要とされる。
【0009】
【発明の目的】本発明は、メッキ特性及び電気特性に優れ、かつその電気特性の温度による変動が極めて少ないという複数の機能を兼ね備えた高周波用の低誘電樹脂組成物を、比較的低コストで提供することを目的とする。」
「【0011】本発明における、優れた電気特性とは、高周波用絶縁材料に要求される特性、すなわち低い比誘電率、低い誘電正接を有することを言う。より具体的には、高周波帯100KHz〜300GHzにおける比誘電率が3.5以下、好ましくは3.0以下、同周波数帯における誘電正接が0.01以下、好ましくは0.005以下であることを指す。比誘電率が3.5より大きい樹脂、あるいは誘電正接が0.01より大きい樹脂を、高周波で使用する電子部品や電気絶縁材料に用いると、信号の損失が大きくなるため、製品の性能(特性)が低下し、製品設計、製造、加工等で無理を生じることが多く、場合(用途)によっては使用困難となる。」
「【0024】シリカのサイズは、平均粒径0.01〜100μmが好ましく、より好ましくは0.1〜50μm、さらに好ましくは1〜30μmである。平均粒径が0.01μm未満であると、無電解メッキ用の触媒付与(成形品の表面に無電解メッキ用の触媒を吸着させること)が困難となり、充分なメッキ膜密着強度が得られないばかりか、均一な表面のメッキ膜が得られない。平均粒径が100μmを越えると、ミクロポアのサイズが必要以上に大きくなり、充分なミクロポア効果が得られず、メッキ膜と樹脂の間の物理的結合強度が低くなり、メッキ膜の表面が粗くなるため電気特性が低化する。
【0025】本発明において、シリカの配合量は、10〜70質量%、好ましくは15〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%とする。シリカの配合量が10質量%未満であるとメッキ膜の密着性が著しく低下し、70質量%を越えると、電気特性が低下するばかりか、成形加工性等の他の性能も低下する傾向にある。」
「【0029】本発明の樹脂組成物は、熱可塑性であり、射出成形、押出成形やプレス成形が可能である。本発明の樹脂組成物による成形品と金属メッキ膜との密着強度(メッキ密着強度)は、従来の被メッキ用樹脂組成物の場合と同様に、成形品の表面(すなわち樹脂組成物の表面)の物理的性質、すなわち表面粗さに大きく依存し、特にメッキ前に成形品の表面に適当なサイズのミクロポアを均一に形成することで、ミクロポア効果により高いメッキ密着強度を得ることができる。」
「【0034】
【実施例】〔使用原料〕
(シリカ)
シリカ1:SiO2純度=99.9%
アスペクト比=1.1、平均粒径=5μm
シリカ2:SiO2純度=96.5%
アスペクト比=1.1、平均粒径=5μm
シリカ3:SiO2純度=93.2%
アスペクト比=1.1、平均粒径=5μm
シリカ4:SiO2純度=96.5%
アスペクト比=1.1、平均粒径=10μm
シリカ5:SiO2純度=99.9%
アスペクト比=1.2、平均粒径=1μm
シリカ6:SiO2純度=99.9%
アスペクト比=2.0、平均粒径=95μm
シリカ7:SiO2純度=99.9%
アスペクト比=9.6、平均粒径=30μm
シリカ8:SiO2純度=92.5%
アスペクト比=1.5、平均粒径=10μm
シリカ9:SiO2純度=99.8%
アスペクト比=11.0、平均粒径=10μm
シリカ10:SiO2純度=99.8%
アスペクト比=1.5、平均粒径=110μm
【0035】(シクロヘキサジエン系樹脂)シクロヘキサジエン系樹脂は、Macromolecules 1997,30,3696〜3697、Macromolecules 1998,31,982〜987、Journal of Polymer Science:Part B:Polymer Physics,Vol.36,1657〜1668(1998)に報告されている方法に従って製造した。なお、下記の1,2付加体と1,4付加体の比率は、モル分率を示す。
・ポリシクロヘキサジエン(PCHD):
PCHD1;平均分子量=40000
1,2付加体/1,4付加体=52/48
PCHD2;平均分子量=39000
1,2付加体/1,4付加体=21/79
PCHD3;平均分子量=42000
1,2付加体/1,4付加体=78/22
PCHD4;平均分子量=40000
1,2付加体/1,4付加体=15/85
PCHD5;平均分子量=41000
1,2付加体/1,4付加体=83/17
・ポリシクロヘキサン(PCH)(PCHDの水素化物)
PCH1; 平均分子量=40000
1,2付加体/1,4付加体=52/48
PCH2; 平均分子量=39000
1,2付加体/1,4付加体=21/79
PCH3; 平均分子量=42000
1,2付加体/1,4付加体=78/22
PCH4; 平均分子量=40000
1,2付加体/1,4付加体=15/85
PCH5; 平均分子量=41000
1,2付加体/1,4付加体=83/17」
「【0037】実施例1〜19、比較例1〜14
〔樹脂組成物の製造〕表1に示す組成比で、所定のシクロヘキサジエン系樹脂とシリカを、定量フィーダーを用い20〜60kg/時間の供給速度で、2軸押出機(神戸製鋼社製商品名“KTX46”)に供給し、表2に示す温度及び回転数で加熱溶融混練し、水冷後、ペレタイザーによりストランドを切断してペレット(成形前材料)を製造した。
【0038】〔成形加工〕上記のペレットを通風式乾燥器で150℃で5時間乾燥し、射出成形機(菱屋製鋼社製商品名“HB140”)を用い、表2に示す成形温度(ノズル温度)でメッキ特性評価用及び電気特性評価用の試験片を成形した。この試験片の形状を下に示す。
・短冊 :125×13×3.1mm;メッキ性評価用
・円板1:φ100mm×1.6mm;1〜15MHz電気特性評価用
・円板2:φ100mm×0.8mm;1〜25GHz電気特性評価用」
「【0040】
【表1】


「【0042】〔無電解メッキ処理方法〕短冊形試験片を用い、下記の工程及び条件で試験片の表面を化学エッチング処理した後、下記の工程及び条件で無電解メッキ処理して厚さ2μmの無電解銅メッキ膜を形成し、さらに下記の条件で電気メッキを行ってメッキ膜の厚さを40μmとした。無電解メッキ後の試料は、通風式オーブン中で200℃で3時間アニーリング処理を施した。」
「【0044】〔メッキ膜密着強度の測定〕電気メッキ処理後、成形品を通風式オーブン中で200℃で3時間アニーリング処理を施し、次いでカッターナイフで1cm巾の帯状カットを入れ、該カットの先端部を90゜の角度にめくりあげ、該めくりあげた先端部をバネでつかみ、引き剥す力をメッキ密着強度(kgf/cm)とした。評価結果を表3に示す。
【0045】〔耐熱性の評価〕上記アニーリング処理後の成形品を、直ちに240℃の溶融ハンダ浴に入れ、1分間そのまま放置した後、室温でゆっくり冷却し、冷却後の成形品について、形状の変化、メッキ膜の膨れ及び剥がれの有無を目視により観察し、次の基準で評価し、結果を表3に併せて示した。
成形品形状の変化(変形):○・・・無し、×・・・有り
メッキ膜の膨れ :○・・・無し、×・・・有り
メッキ膜の剥がれ :○・・・無し、×・・・有り
【0046】
【表3】

【0047】〔電気特性の評価〕以下に示す測定方法及び条件で比誘電率及び誘電正接を測定した。測定方法は、IEEE Trans.,I&M.,p509〜514(1989)に示された方法とし、測定条件は、次の通りとした。評価結果を表4に示す。
測定周波数:1GHz、10GHz、20GHz
測定温度 :−50℃、0℃、50℃、100℃、150℃
測定方法 :トリプレート線路共振機法(損失分離法)なお、表4中、上段は比誘電率εrで、下段は誘電正接tanδである。
【0048】
【表4】





・・・」
以上に摘記した事項を総合し、特に実施例16に着目すると、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「平均分子量=40000、1,2付加体/1,4付加体=52/48のポリシクロヘキサン60質量%、SiO2純度=99.9%、アスペクト比=1.2、平均粒径=1μmのシリカ40質量%からなり、測定周波数10GHz、0℃における誘電正接が0.0013であり、50℃における誘電正接が0.0013であり、150℃における誘電正接が0.0013であり、熱可塑性である低誘電性樹脂組成物、を利用した電子部品。」

(ウ)引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【0104】
[接着フィルム]
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で用いることもできるが、工業的には一般に、接着フィルムの形態で用いることが好ましい。
【0105】
接着フィルムは、支持体と、該支持体と接合している樹脂組成物層(接着層)とを含んでなり、樹脂組成物層(接着層)が本発明の樹脂組成物から形成される。」
「【0117】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。
【0118】
一実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述の接着フィルムを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、接着フィルムを、該接着フィルムの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程」
「【0139】
[半導体装置]
本発明のプリント配線板を用いて、半導体装置を製造することができる。半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0140】
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。」

イ 本件発明1について
(ア)引用発明1を主引用発明とした新規性進歩性について
a 本件発明1と引用発明1との対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「熱可塑性樹脂であるポリスルホンのシート」と、本件発明1の「該支持体上に接合した樹脂組成物層」とは、「樹脂組成物層」の限りで一致するから、引用発明1の「高プロフイル銅張り積層板」と、本件発明1の「樹脂シート」とは、「樹脂組成物層を含む樹脂シート」の限りで一致する。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点]
「樹脂組成物層を含む樹脂シート。」
[相違点1a]
「樹脂シート」について、本件発明1は「支持体と、該支持体上に接合した樹脂組成物層と、を含む」ものであるのに対し、引用発明1は「ポリスルホンのシートの両面に銅のシートを有する複合体を形成し、ポリスルホンのシートが溶融しその両側の2枚の銅のシートへの直接結合を形成した、高プロフイル銅張り積層板」である点。
[相違点1b]
「樹脂組成物層」について、本件発明1は「該樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含有し、該樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、該無機充填材の平均粒径が、1.5μm以下であり、該樹脂組成物層の厚みが、1μm以上であ」るのに対し、引用発明1は「熱可塑性樹脂であるポリスルホンのシート」である点。
[相違点1c]
本件発明1は「該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である」のに対し、引用発明1は「高プロフイル銅張り積層板」の「周波数8.5GHz、23℃における誘電正接が0.00539であり、周波数8.5GHz、150℃における誘電正接が0.00766及び0.00695であり、周波数14GHz、23℃における誘電正接が0.00560であり、周波数14GHz、150℃における誘電正接が0.00812及び0.00725である」である点。

b 判断
まず、相違点1bについて検討する。
引用発明1の「熱可塑性樹脂であるポリスルホンのシート」は、本件発明1のように「無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含有し」ていないから、相違点1bは実質的な相違点である。
そして、引用発明1の「高プロフイル銅張り積層板」は、「熱可塑性樹脂であるポリスルホンのシートが溶融しその両側の2枚の銅のシートへの直接結合を形成した」ものであるから、引用発明1の「熱可塑性樹脂であるポリスルホンのシート」に、熱硬化性樹脂である「エポキシ樹脂」を含有させることには阻害要因があるし、あえて「エポキシ樹脂」を含有させることの動機付けもない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明1ではなく、また、本件発明1は引用発明1に基いて当業者が容易に発明できたものではない。

(イ)引用発明2を主引用発明とした新規性進歩性について
a 本件発明1と引用発明2との対比
引用発明2の「電子部品」と、本件発明1の「樹脂シート」とは、「物品」である限りで一致する。
引用発明2の「平均分子量=40000、1,2付加体/1,4付加体=52/48のポリシクロヘキサン60質量%、SiO2純度=99.9%、アスペクト比=1.2、平均粒径=1μmのシリカ40質量%からなり、」「熱可塑性である低誘電性樹脂組成物」と、本件発明1の「無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含有し、」「不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、該無機充填材の平均粒径が、1.5μm以下であり、」「厚みが、1μm以上であ」る「樹脂組成物層」とは、「無機充填材を含有し、該無機充填材の平均粒径が、1.5μm以下である」「樹脂組成物」である限りで一致する。
引用発明2の「低誘電性樹脂組成物」の「測定周波数10GHz、0℃における誘電正接が0.0013であり、50℃における誘電正接が0.0013であり、150℃における誘電正接が0.0013であ」ることと、本件発明1の「該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である」こととは、「樹脂組成物の測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、樹脂組成物層の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である」である限りで一致する。
したがって、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点]
「無機充填材を含有し、該無機充填材の平均粒径が、1.5μm以下であり、樹脂組成物からなる部分を含み、樹脂組成物の測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、樹脂組成物の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である物品。」
[相違点2a]
「物品」について、本件発明1は「支持体と、該支持体上に接合した樹脂組成物層と、を含む樹脂シート」であるのに対し、引用発明2は、「低誘電性樹脂組成物、を利用した電子部品」である点。
[相違点2b]
「無機充填材を含有し、該無機充填材の平均粒径が、1.5μm以下である樹脂組成物」について、本件発明1は、「無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含有し、該樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、該無機充填材の平均粒径が、1.5μm以下であり、該樹脂組成物層の厚みが、1μm以上であ」る「樹脂組成物層」であるのに対し、引用発明2は、「平均分子量=40000、1,2付加体/1,4付加体=52/48のポリシクロヘキサン60質量%、SiO2純度=99.9%、アスペクト比=1.2、平均粒径=1μmのシリカ40質量%からなり、」「熱可塑性である低誘電性樹脂組成物」である点。
[相違点2c]
「樹脂組成物の測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、樹脂組成物の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である」ことについて、本件発明1は「該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物」の誘電正接であるのに対し、引用発明2は、「熱可塑性である低誘電性樹脂組成物」の誘電正接である点。

b 判断
まず、相違点2bについて検討する。
引用発明2の「低誘電性樹脂組成物」は、本件発明1のように「エポキシ樹脂、及び硬化剤を含有」することの特定がないから、相違点2bは実質的な相違点である。
そして、引用発明2の「低誘電性樹脂組成物」は「熱可塑性である」から、引用発明2の「低誘電性樹脂組成物」に、熱硬化性樹脂である「エポキシ樹脂」を含有させることには阻害要因があるし、あえて「エポキシ樹脂」を含有させることの動機付けもない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明2ではなく、また、本件発明1は引用発明2に基いて当業者が容易に発明できたものではない。

ウ 本件発明2〜12について
本件発明2〜12は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであるから、上記イで検討したのと同じ理由により、当業者が引用発明1又は引用発明2に基いて当業者が容易に発明できたものではない。

第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由の概要
以下、申立○の甲第□号証は、「申立○甲□」と記載する。
(1)新規性
ア 本件訂正前の請求項1〜8、10、11に係る発明は、申立1甲1に記載された発明又は申立1甲2に記載された発明であり、請求項1、3〜9に係る発明は、申立1甲3に記載された発明であり、請求項1、3〜6に係る発明は、申立1甲4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
イ 本件訂正前の請求項1、2、4、8に係る発明は、申立3甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)進歩性
ア 本件訂正前の請求項1〜12に係る発明は、申立1甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、申立1甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、申立1甲1に記載された発明、申立1甲2に記載された発明、申立1甲3に記載された発明及び周知技術に基いて、申立甲1に記載された発明、申立1甲2に記載された発明、申立1甲4に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 本件訂正前の請求項1〜12に係る発明は、申立2甲3、申立2甲4又は申立2甲5に記載された発明及び申立2甲1に記載された発明に基いて、申立2甲3、申立2甲4又は申立2甲5に記載された発明及び申立2甲2に記載された発明に基いて、申立2甲3、申立2甲4又は申立2甲5に記載された発明、申立2甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、申立2甲3、申立2甲4又は申立2甲5に記載された発明、申立2甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ウ 本件訂正前の請求項1〜12に係る発明は、申立3甲1に記載された発明に基いて、申立3甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
申立1甲1:特開2014−185218号公報
申立1甲2:特開2014−185228号公報
申立1甲3:特開2014−101399号公報
申立1甲4:特開2014−34668号公報
申立2甲3:特開2006−176645号公報
申立2甲4:特開2011−144361号公報
申立2甲5:特開2016−27097号公報
申立3甲1:Hirohisa Narahashi, "Low Df Build up Material for High Frequency Signal Transmission of Substrates”2013年5月30日
(3)発明該当性(申立2)
本件訂正前の請求項1〜12に係る発明は、その所期課題を解決し得ない未完成発明であり、発明該当性の要件を満たさない。

2 当審の判断
(1)新規性進歩性について
ア 本件特許に係る出願前の技術常識
申立1甲5(類家光雄,他2名,“高温領域におけるエポキシ樹脂中のトリーイング破壊”,静電気学会誌,17,4(1993),p.280-287)には、次の記載がある。
「次に図15に誘電正接(tanδ)と試料温度(t)の関係(以下tanδ-tとする)を示す.温度が20℃から110℃付近まではtanδに変化は見られないが,120℃からtanδが急激に増加をし始め,εの場合の変化し始める温度と一致する.このように,温度によるtanδの変化しない領域(常温〜110℃)から急激に変化する領域(120℃以上)への移行は,温度によりエポキシ樹脂の分子鎖運動形態が変化したためと考えられる.所10)らがtanδの温度による変化は,交流導電率の変化に対応するとしていることや,新保5)がエボキシ樹脂のガラス転移点温度付近の転移領域では,物性は連続的に変化する,としていることと考え合わせると,この急激に変化する温度は,エポキシ樹脂のガラス転移点温度と推測される.従って,この温度を境に分子運動の活発化に伴って,熱解離などによるイオンなどの荷電担体の増加とその移動が容易になりtanδが大きくなったためと思われる.」(285ページ左欄11行〜右欄10行)

以上の記載によれば、エポキシ樹脂の誘電正接は、ガラス転移点温度付近で上昇し、ガラス転移温度では急激に上昇することが、当業者の技術常識である。

イ 申立1甲1について
申立1甲1には、次の記載がある。
「【0125】
(5)誘電正接
フィルム状硬化物から幅2.6mm、長さ80mm、厚さ40μmの小片を切り出し、空洞共振器摂動法誘電率測定装置を用いて10GHzにおける誘電正接(tanδ)の測定を行なった。tanδが0.01以下であれば電気特性に優れると評価できる。」
「【0132】
【表1】


以上の記載によれば、申立1甲1に記載された「硬化性エポキシ組成物」からなる「フィルム状硬化物」の「10GHzにおける誘電正接(tanδ)」の測定温度は不明である。
測定温度に特段の断りがないことからみて、測定温度が室温(23〜25℃程度)であるとしても、測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下といえるのは、実施例1、実施例5及び比較例1であるが、実施例1、実施例5及び比較例1の組成の「硬化性エポキシ組成物」からなる「フィルム状硬化物」の測定周波数10GHzにおける誘電正接が、23℃における誘電正接の値から変化しないという技術常識を示す証拠はない。
また、実施例1、実施例5及び比較例1の「硬化性エポキシ組成物」からなる「フィルム状硬化物」のガラス転移温度(Tg)は、それぞれ164℃、150℃及び168℃であるところ、エポキシ樹脂の誘電正接は、ガラス転移点温度付近で上昇し、ガラス転移温度では急激に上昇することが、当業者の技術常識であるから、実施例1、実施例5及び比較例1の、測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である蓋然性が高いとまではいえない。

ウ 申立1甲2について
申立1甲2には、次の記載がある。
「【0125】
(4)誘電正接
フィルム状硬化物から幅2.6mm、長さ80mm、厚さ40μmの小片を切り出し、空洞共振器摂動法誘電率測定装置を用いて10GHzにおける誘電正接(tanδ)の測定を行なった。tanδが0.01以下であれば電気特性に優れると評価できる。」
「【0136】
【表1】


以上の記載によれば、申立1甲2に記載された「硬化性樹脂組成物」からなる「フィルム状硬化物」の「10GHzにおける誘電正接(tanδ)」の測定温度は不明である。
また、測定温度に特段の断りがないことからみて、測定温度が室温(23〜25℃程度)であるとしても、測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下といえるのは、比較例1及び比較例2であるが、比較例1及び比較例2の組成の「硬化性樹脂組成物」からなる「フィルム状硬化物」の測定周波数10GHzにおける誘電正接が、23℃における誘電正接の値から変化しないという技術常識を示す証拠はない。
また、比較例1及び比較例2の「硬化性樹脂組成物」からなる「フィルム状硬化物」のガラス転移温度(Tg)は、それぞれ168℃及び154℃であるところ、エポキシ樹脂の誘電正接は、ガラス転移点温度付近で上昇し、ガラス転移温度では急激に上昇することが、当業者の技術常識であるから、実施例1、実施例5及び比較例1の、測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である蓋然性が高いとまではいえない。

エ 申立1甲3について
申立1甲3には、次の記載がある。
「【0068】
[評価方法]
・・・
<誘電特性(比誘電率Dk、誘電正接Df)の測定>
誘電特性は、樹脂硬化物の外層銅箔をエッチングしたものを空洞共振器摂動法により測定した。条件は、周波数:10GHz、測定温度:25℃とした。
・・・
<熱特性の測定>
熱特性は、樹脂硬化物の外層銅箔をエッチングしたものをTMAにより測定した。熱特性は、ガラス転移点Tgにより評価した。樹脂硬化物の外層銅箔をエッチングしたもののTgをTMAにより測定した。」
「【0065】
【表1】

【0066】
【表2】


「【0070】
【表3】


以上の記載によれば、申立1甲3に記載された「樹脂硬化物」の「誘電正接Df」は、「周波数:10GHz、測定温度:25℃」である。
そうすると、実施例2(Df=0.0054)、実施例3(Df=0.006)、実施例10(Df=0.0055)及び実施例11(Df=0.0053)については、23℃における誘電正接が0.006以下である蓋然性が高い。
しかし、実施例2、実施例3、実施例10及び実施例11の組成の「樹脂組成物」の測定周波数10GHzにおける誘電正接が、23℃における誘電正接の値から変化しないという技術常識を示す証拠はなく、実施例2、実施例3、実施例10及び実施例11の組成の「樹脂組成物」は、エポキシ樹脂を含有するものの、エポキシ樹脂を主成分とするものでもないから、エポキシ樹脂の誘電正接に関する当該技術常識のとおりに誘電正接が変化するともいえない。
そうすると、実施例2、実施例3、実施例10及び実施例11の「樹脂硬化物」の、測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である蓋然性が高いとまではいえない。

オ 申立1甲4について
申立1甲4には、次の記載がある。
「【0073】
(実施例1〜12、比較例1〜6)
各成分を下記表に示す配合割合(質量部)になるように計量配合した後、トルエンを加え、80℃に加温された反応釜に投入し、回転数150rpmで回転させながら、常圧混合を3時間行った。
このようにして得られた樹脂組成物を含むワニスを、基材(離型処理をほどこしたPETフィルム)の片面に塗布し、100℃で乾燥させることにより、支持体付の接着フィルムを得た。
表中の略号はそれぞれ以下を表わす。
・・・
成分(C)
NC3000H:ビフェニル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製
828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製
HP4032D:ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製
BMI−70:ビスマレイミド、ケイ・アイ化成株式会社製
V−03:カルボジイミド、日清紡績株式会社製
・・・」
「【0075】
誘電率(ε)、誘電正接(tanδ):接着フィルムを180℃で加熱硬化させ、支持体から剥離した後、該接着フィルムから試験片(40±0.5mm×100±2mm)を切り出し、厚みを測定した。試験片を長さ100mm、直径2mm以下の筒状に丸めて、空洞共振器摂動法(10GHz)にて、誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)を測定した。」
「【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】


以上の記載によれば、申立1甲4に記載された「樹脂組成物」からなる「接着フィルム」の「10GHz」の「誘電正接(tanδ)」の測定温度は不明である。
測定温度に特段の断りがないことからみて、測定温度が室温(23〜25℃程度)であるとすると、実施例1〜12及び比較例1〜6の全てが周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下といえる。
しかし、実施例1〜12及び比較例1〜6の「樹脂組成物」からなる「接着フィルム」の測定周波数10GHzにおける誘電正接が、23℃における誘電正接の値から変化しないという技術常識を示す証拠はなく、実施例1〜8、10〜12及び比較例1、2、5、6の組成の「樹脂組成物」からなる「接着フィルム」は、エポキシ樹脂を含有するものの、エポキシ樹脂を主成分とするものでもないから、エポキシ樹脂の誘電正接に関する技術常識のとおりに誘電正接が変化するともいえない。
そうすると、実施例2、実施例3、実施例10及び実施例11の「樹脂硬化物」の、測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である蓋然性が高いとまではいえない。

カ 申立2甲3について
申立2甲3には、次の記載がある。
「【0058】
5.体積抵抗率
JIS C2318準拠の方法にて、体積抵抗率を測定した。
6.比誘電率、誘電正接
(試験片の作製)
耐熱性高分子フィルムを、必要厚みになる枚数重ね、250℃のホットプレスにて300kgf/cm2の荷重を加えて圧着して1.6mm厚、100mm×100mmの板状試験片を作製した。
(試験片の測定)
上記試料について、Qメータ法にて1MHzの比誘電率、誘電正接を測定した。さらに、アジレントテクノロジ社製、N5250Aミリ波PNAシリーズ・ネットワーク・アナライザを用い、空洞共振摂動法により1GHz〜30GHzの範囲での比誘電率、誘電正接を測定した。」
「【0064】
(比誘電率、誘電正接の温度特性の評価)
以上、得られた全てのポリイミドフィルムについて、その比誘電率と誘電正接を1MHz、および10GHzについて温度を代えて測定を行った。結果を表2〜5に示す。実施例において得られたフィルムの比誘電率、誘電正接は測定した温度範囲内において大きな変化を示さず、ほぼ安定した値を示した。比較例1においては温度の上昇に伴い比誘電率、誘電正接ともにゆるやかに増加した。比較例2、3については比誘電率、誘電正接ともに温度に伴って値が大きく変化した。比較例4、5については50℃近傍にピークを持つ特異な挙動を示した。
【0065】
【表1】


以上の記載によれば、申立2甲3に記載された「ポリイミドフィルム」は、測定温度が「25℃」で「周波数:10GHz」の「誘電正接」が、0.003〜0.006の範囲にある実施例1〜4及び比較例1〜5が記載されているが、実施例1〜4及び比較例1〜5は、エポキシ樹脂を含有していない。

キ 申立2甲4について
申立2甲4には、次の記載がある。
「【0113】
<誘電正接の測定及び評価>
実施例及び比較例において、支持体にフッ素樹脂系離型剤(ETFE)処理したPET(三菱樹脂(株)製「フルオロージュRL50KSE」)を用いた以外は同様にして、各実施例、比較例と同じ樹脂組成物層を有する接着フィルムを得た。得られた接着フィルムを190℃で90分間加熱することで熱硬化させ、支持体を剥離することによりシート状の硬化物を得た。その硬化物を長さ80mm、幅2mmに切り出し評価サンプルとした。この評価サンプルについてアジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製HP8362B装置を用い空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。2本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。誘電正接の値が、0.011未満の場合を「○」、0.011以上を「△」とした。
【0114】
<実施例1>
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量277、DIC(株)製「EXA−7311」)20質量部と、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量169、ジャパンエポキシレジン(株)製「YL983U」)15質量部、リン含有エポキシ樹脂(東都化成(株)製「TX0712−EK75」、リン含有量2.6%、エポキシ当量約355の不揮発分75質量%のMEK溶液)10質量部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)とシクロヘキサノンの1:1溶液)10質量部とをMEK10質量部、シクロヘキサノン5質量部、ソルベントナフサ20質量部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへ、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発分75質量%のMEK溶液)20質量部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量約124、不揮発分80質量%のMEK溶液)10質量部と共に攪拌混合し、硬化促進剤としてイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体(ジャパンエポキシレジン(株)製「jERcure P200H50」、不揮発分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)0.4質量部、ナフテン酸亜鉛(II)ミネラルスピリット溶液(和光純薬工業(株)製、亜鉛8%含有)の3質量%のアノン溶液3質量部、及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)75質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
樹脂組成物の不揮発分中、(A)シアネートエステル樹脂16質量%、(B)ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂14質量%、(C)無機充填材52質量%、(D)イミダゾール系硬化促進剤0.14質量%、金属系硬化促進剤として添加した金属(亜鉛)50ppm、(E)液状エポキシ樹脂10質量%、(G)高分子成分2.1質量%となる。
次に、かかる樹脂組成物ワニスをポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、以下PETフィルムと略す)上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、80〜110℃(平均95℃)で6分間乾燥した(樹脂組成物層中の残留溶媒量:約1.5質量%)。次いで、樹脂組成物層の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリットし、507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
【0115】
<実施例2>
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量277、DIC(株)製「EXA−7311」)10質量部と、液状ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量144、DIC(株)製「HP4032SS」)10質量部と、結晶性2官能エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)5質量部をMEK10質量部、シクロヘキサノン10質量部、ソルベントナフサ40質量部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへ、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発分75質量%のMEK溶液)16質量部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量約124、不揮発分80質量%のMEK溶液)6質量部と共に攪拌混合し、さらに活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460S−65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)12質量部、硬化促進剤として4−ジメチルアミノピリジンの1質量%のMEK溶液2質量部、コバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成(株)製)の1質量%のMEK溶液4.5質量部、及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)140質量部、難燃剤として(三光(株)製「HCA−HQ」、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド、平均粒径2μm)5質量部、ゴム粒子としてスタフィロイド(ガンツ化成(株)製、AC3832)4.5質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
樹脂組成物の不揮発分中、(A)シアネートエステル樹脂8.4質量%、(B)ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂5.0質量%、(C)無機充填材70質量%、(D)アミン系硬化促進剤0.010質量%、金属系硬化促進剤として添加した金属(コバルト)37ppm、(E)液状エポキシ樹脂及び結晶性2官能エポキシ樹脂7.5質量%、(F)活性エステル硬化剤3.9質量%、(H)ゴム粒子2.3質量%となる。次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0116】
<実施例3>
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量277、DIC(株)製「EXA−7311」)10質量部と、液状ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量144、DIC(株)製「HP4032SS」)8質量部と、結晶性2官能エポキシ樹脂として(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)4質量部と(日本化薬(株)製「NC3100」、エポキシ当量258)3質量部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量37000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YL7553」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5質量部をMEK10質量部、シクロヘキサノン10質量部、ソルベントナフサ40質量部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへ、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発分75質量%のMEK溶液)16質量部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量約124、不揮発分80質量%のMEK溶液)6質量部と共に攪拌混合し、さらに活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460S−65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)12質量部、硬化促進剤として4−ジメチルアミノピリジンの1質量%のMEK溶液2質量部、コバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成(株)製)の1質量%のMEK溶液4.5質量部、及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)140質量部、難燃剤として(三光(株)製「HCA−HQ」、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド、平均粒径2μm)5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
樹脂組成物の不揮発分中、(A)シアネートエステル樹脂8.6質量%、(B)ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂5.1質量%、(C)無機充填材71質量%、(D)アミン系硬化促進剤0.010質量%、金属系硬化促進剤として添加した金属(コバルト)38ppm、(E)液状エポキシ樹脂及び結晶性2官能エポキシ樹脂7.0質量%、(F)活性エステル硬化剤4.0質量%、(G)高分子成分0.8質量%となる。次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0117】
<実施例4>
実施例1のナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量277、DIC(株)製「EXA−7311」)20質量部の代わりに、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量247、DIC(株)製「EXA−7310」)15質量部を添加したこと以外は、実施例1と全く同様にして熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。樹脂組成物の不揮発分中、(A)シアネートエステル樹脂16.6質量%、(B)ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂11質量%、(C)無機充填材54質量%、(D)イミダゾール系硬化促進剤0.14質量%、金属系硬化促進剤として添加した金属(亜鉛)52ppm、(E)液状エポキシ樹脂10.8質量%、(G)高分子成分2.2質量%となる。次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0118】
<実施例5>
実施例2のゴム粒子としてスタフィロイド(ガンツ化成(株)製、AC3832)4.5質量部の代わりに、ゴム粒子(ガンツ化成(株)製「IM401−改7−17」、コアがポリブタジエンでシェルがスチレンとジビニルベンゼンの共重合体であるコアシェル型ゴム粒子)4.5質量部を添加したこと以外は、実施例2と全く同様にして熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。樹脂組成物の不揮発分中、(A)シアネートエステル樹脂8.4質量%、(B)ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂5.0質量%、(C)無機充填材70質量%、(D)アミン系硬化促進剤0.010質量%、金属系硬化促進剤として添加した金属(コバルト)38ppm、(E)液状エポキシ樹脂及び結晶性2官能エポキシ樹脂7.5質量%、(F)活性エステル硬化剤3.9質量%、(H)ゴム粒子2.3質量%となる。次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0119】
<実施例6>
実施例2にさらにブロックイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製「AP−Stable」)5質量部を添加したこと以外は、実施例2と全く同様にして熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
【0120】
<実施例7>
実施例2にさらにブロックイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製「MS−50」)5質量部を添加したこと以外は、実施例2と全く同様にして熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
【0121】
<比較例1>
実施例1において、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量277、DIC(株)製「EXA−7311」)20質量部を、固形ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬(株)製「NC3000H」)20質量部に変更する以外は全く同様にして製造した樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0122】
<比較例2>
実施例2において、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量277、DIC(株)製「EXA−7311」)10質量部を、固形ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬(株)製「NC3000H」)10質量部に変更する以外は全く同様にして製造した樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0123】
<比較例3>
実施例2において、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量277、DIC(株)製「EXA−7311」)10質量部、活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460S−65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)12質量部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド、平均粒径2μm)5質量部を、固形ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬(株)製「NC3000H」)10質量部、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(フェノール当量231、日本化薬(株)製「GPH−103」)の50質量%のMEK溶液10質量部に変更する以外は全く同様にして製造した樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0124】
結果を表1に示す。
【表1】


以上の記載によれば、申立2甲4には、「樹脂組成物層」の測定温度が「23℃」で「周波数:5.8GHz」の「誘電正接」が、0.006よりも大なる実施例1〜7及び比較例1〜3が記載されているに過ぎず、「周波数:10GHz」の「誘電正接」は不明である。
そうすると、実施例1〜7及び比較例1〜3の「樹脂組成物層」の、測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である蓋然性が高いとまではいえない。

ク 申立2甲5について
申立2甲5には、次の記載がある。
「【0153】
<誘電正接の測定>
評価用硬化物cを、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断した。該試験片について、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。2本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0154】
<実施例1>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「828US」、エポキシ当量約180)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量約269)25部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)25部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、ソルベントナフサ30部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC(株)製「LA−3018−50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)15部、活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部、カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)製「V−03」、NCO含有量0質量%、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)20部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分10質量%のMEK溶液)3部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SO−C2」)275部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。
【0155】
支持体としてアルキド樹脂系離型層付きPETフィルム(リンテック(株)製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。該支持体の離型層上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが30μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80℃〜120℃(平均100℃)で4分間乾燥させて、接着フィルムを作製した。
【0156】
<実施例2>
カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)製「V−03」、不揮発分50質量%のトルエン溶液)の配合量を80部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0157】
<実施例3>
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SO−C2」)の配合量を100部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0158】
<実施例4>
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SO−C2」)275部を、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.3μm、(株)アドマテックス製「SO−C1」)275部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0159】
<実施例5>
活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部を、活性エステル化合物(DIC(株)製「EXB9050L−62M」、活性基当量約334、不揮発成分62質量%のMEK溶液)21部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0160】
<実施例6>
硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分10質量%のMEK溶液)3部を、硬化促進剤(四国化成(株)製「1B2PZ」、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、固形分10質量%のMEK溶液)6部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0161】
<実施例7>
カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)製「V−03」、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)20部を、カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)製「V−07」、NCO含有量0.5質量%、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)20部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0162】
<実施例8>
フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、ポリビニルブチラール樹脂(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」、不揮発成分15質量%のエタノールとトルエンの1:1溶液)40部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0163】
<実施例9>
フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、酸無水物基含有ビニル系樹脂(CRAY VALLEY HSC社製「EF−30」、固形分50%のシクロヘキサノン溶液)12部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0164】
<実施例10>
フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、ポリイミド樹脂(新日本理化(株)製「SN−20」、固形分20%のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液)30部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0165】
<実施例11>
フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、ポリイミド樹脂(DIC(株)製「ユニディックV−8000」、不揮発成分40質量%のエチルジグリコールアセテート溶液)15部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0166】
<実施例12>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「828US」、エポキシ当量約180)10部を、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂((株)ダイセル製「セロキサイド 2021P」)10部に変更した以外は、実施例2と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0167】
<実施例13>
トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC(株)製「LA−3018−50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)の配合量を5部に変更し、ベンゾオキサジン系硬化剤(四国化成工業(株)製「P−d」、固形分50%のシクロヘキサノン溶液)10部を追加した以外は、実施例2と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0168】
<実施例14>
フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、合成例1のシロキサン骨格含有ポリイミド樹脂(固形分55質量%)10.9部に変更した以外は、実施例2と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0169】
[合成例1]
環流冷却器を連結した水分定量受器、窒素導入管、攪拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)20部、γ−ブチロラクトン70.9部、トルエン7部、ジアミノシロキサン(信越化学工業(株)製「X−22−9409」、アミン当量665)61.5部、2,6−ビス(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−1,5−ナフタレンジアミン(HFA−NAP)7.4部を加えて窒素気流下で45℃にて2時間攪拌して反応を行った。次いでこの反応溶液を昇温し、約160℃に保持しながら窒素気流下で縮合水をトルエンとともに共沸除去した。水分定量受器に所定量の水がたまっていること、水の流出が見られなくなっていることを確認したところでさらに昇温し、200℃で1時間攪拌した。その後冷却して終了とし、ヘキサフルオロイソプロパノール基(HFA基)を有するシロキサン骨格含有ポリイミド樹脂を55質量%含むワニスを作製した。この場合の、樹脂中のシロキサン構造の含有量は70.9質量%で、HFA基当量は2881g/molである。
【0170】
<実施例15>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「828US」、エポキシ当量約180)10部を、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7760」、エポキシ当量約235)10部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0171】
<比較例1>
カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)製「V−03」、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)20部を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0172】
<比較例2>
活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0173】
<比較例3>
フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0174】
<比較例4>
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SO−C2」)の配合量を40部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0175】
結果を表1に示す。
【0176】
【表1】


以上の記載によれば、申立2甲5には「樹脂組成物層」の測定温度が「23℃」で「周波数:5.8GHz」の「誘電正接」が、0.0043〜0.0059の範囲にある実施例1〜4、6〜15が記載されているが、「周波数:10GHz」の「誘電正接」は不明である。
仮に、「周波数:10GHz」の「誘電正接」が、「周波数:5.8GHz」の「誘電正接」と同程度であったとしても、実施例1〜4、6〜15の組成の「樹脂組成物層」の測定周波数10GHzにおける誘電正接が、23℃における誘電正接の値から変化しないという技術常識を示す証拠はない。
また、実施例1〜4、6〜15の「樹脂組成物層」のガラス転移温度(Tg)は、165〜180℃であるところ、エポキシ樹脂の誘電正接は、ガラス転移点温度付近で上昇し、ガラス転移温度では急激に上昇することが、当業者の技術常識であるから、実施例1〜4、6〜15の「樹脂組成物層」の、測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である蓋然性が高いとまではいえない。

ケ 申立3甲1について
申立3甲1の15ページには、上段に、「ABF GYシリーズ」及び「GYシリーズ(エポキシ−フェノールエステル硬化剤)と記載され、下段左側の表に、「GY11」について、「Tg(℃、引張り熱機械分析)」が「155」、「Tg(℃、動的粘弾性測定誌装置)」が「165」及び「誘電正接(Df)(空洞摂動、5.8GHz)」が「0.0042」と記載されている。
また、申立3甲1の16ページには、上段に、「ABF(40μm)のDk及びDf(10GHzにおける)の温度依存性」と記載され、下段の表に、「GY11」について、「温度/℃」が「25」の場合に「0.0039」、「100」の場合に「0.0054」と記載されている。
以上の記載を総合すると、「エポキシ−フェノールエステル硬化剤」である「GY11」のガラス転移温度Tgは、155〜165℃程度であり、測定周波数10GHz、25℃における誘電正接が0.0039、100℃における誘電正接は0.0054であることがわかるが、150℃における誘電正接は不明であり、「エポキシ−フェノールエステル硬化剤」の測定周波数10GHzにおける誘電正接が、100℃における誘電正接の値から変化しないという技術常識を示す証拠もない
ここで、「GY11」がエポキシ樹脂を主成分とするものであるとすると、前述のとおり「GY11」のガラス転移Tgは、155〜165℃程度であるところ、エポキシ樹脂の誘電正接は、ガラス転移点温度付近で上昇し、ガラス転移温度では急激に上昇することが、当業者の技術常識であるから、「GY11」の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である蓋然性が高いとまではいえない。

コ まとめ
以上ア〜ケによれば、申立1甲1〜申立3甲1のいずれにも、本件発明1〜3、6〜12の「無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含有し」た「樹脂組成物層」であり、「該樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、該無機充填材の平均粒径が、1.5μm以下であり、該樹脂組成物層の厚みが、1μm以上であり、該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である」ものが記載されているとはいえない。
また、申立1甲1〜申立3甲1に記載されたものを、本件発明1〜3、6〜12のように、「無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含有し」た「樹脂組成物層」であり、「該樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、該無機充填材の平均粒径が、1.5μm以下であり、該樹脂組成物層の厚みが、1μm以上であり、該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である」ものとする動機付けもなく、「無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含有し」た「樹脂組成物層」であり、「該樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、該無機充填材の平均粒径が、1.5μm以下であり、該樹脂組成物層の厚みが、1μm以上であり、該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である」ものとすることが、当業者に周知であるともいえない。
そうすると、本件発明1〜3、6〜12は、申立1甲1〜申立3甲1に記載された発明ではなく、また、申立1甲1〜申立3甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものでもない。

(2)発明該当性について
本件発明1〜3、6〜12は、自然法則自体、発明者が目的を意識して創作していない天然物や自然現象等の単なる発見、自然法則に反するもの、自然法則を利用していないもの及び技術的思想でないものの、いずれでもないことは明らかである。
また、本件発明1〜3、6〜12が、本件特許の発明が解決しようとする課題を解決可能であることは、上記第4の2の(1)に記載したとおりであるから、発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なものでもない。
そうすると、当該発明該当性にかかる申立人の主張は、その前提において失当である。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1〜3、6〜12に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1〜3、6〜12に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、請求項4〜5に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、申立人1〜3による請求項4〜5に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に接合した樹脂組成物層と、を含む樹脂シートであって、
該樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含有し、
該樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が50質量%以上85質量%以下であり、
該無機充填材の平均粒径が、1.5μm以下であり、
該樹脂組成物層の厚みが、1μm以上であり、
該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、23℃における誘電正接が0.006以下であり、
該樹脂組成物層を熱硬化させて得られる硬化物の測定周波数10GHz、150℃における誘電正接が0.01以下である、樹脂シート。
【請求項2】
樹脂組成物層の厚みが15μm以下である、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
樹脂組成物層の最低溶融粘度が1000poise以上である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が60質量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項7】
樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合に、該無機充填材の含有量が64.7質量%以上である、請求項1〜3、6のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項8】
該樹脂組成物層が、プリント配線板の絶縁層形成用である、請求項1〜3、6、7のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項9】
該樹脂組成物層が、1GHz以上の高周波基板の絶縁層形成用である、請求項1〜3、6〜8のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項10】
該樹脂組成物層が、第1の導体層と、第2の導体層と、第1の導体層と第2の導体層との間に形成された6μm以下の絶縁層と、を含むプリント配線板の、該絶縁層形成用である、請求項1〜3、6〜9のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項11】
第1の導体層、第2の導体層、及び、第1の導体層と第2の導体層との間に形成された6μm以下の絶縁層を含む、プリント配線板であって、
該絶縁層は、請求項1〜3、6〜10のいずれか1項に記載の樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物である、プリント配線板。
【請求項12】
請求項11に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-02-25 
出願番号 P2016-066543
審決分類 P 1 651・ 1- YAA (B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B)
P 1 651・ 536- YAA (B32B)
P 1 651・ 113- YAA (B32B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 藤井 眞吾
石井 孝明
登録日 2020-03-09 
登録番号 6672954
権利者 味の素株式会社
発明の名称 樹脂シート  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ