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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
管理番号 1385129
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-06 
確定日 2022-01-04 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6693110号発明「積層ポリエステルフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6693110号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、3、5〕〔4〕〔6〕について訂正することを認める。 特許第6693110号の請求項4、6に係る特許を取り消す。 特許第6693110号の請求項1−3、5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6693110号の請求項1〜6に係る特許についての出願は、平成27年12月14日に出願され、令和2年4月20日にその特許権の設定登録がされ、同年5月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1〜6に係る特許に対し、同年11月6日に特許異議申立人岩崎勇(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年1月20日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年3月17日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年同月29日付けで特許異議申立人に通知し、それに対して、特許異議申立人は、何ら応答しなかった。当審は、令和3年6月9日付けで取消理由(決定の予告)を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年8月4日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行った。特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年同月11日付けで特許異議申立人に通知し、それに対して、特許異議申立人は、何ら応答しなかった。

第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1〜6からなる。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、もう一方の面に粘着層を有する積層ポリエステルフィルムであり、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下であり、離型層側表面の水滴接触角が70度以上であり、極限粘度(IV)が0.63dl/g以上であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。」とあるのを、「ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、もう一方の面に粘着層を有する、屋外用積層ポリエステル保護フィルムであり、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下であり、離型層側表圃の水滴接触角が70度以上であり、極限粘度(IV)が0.67dl/g以上であることを特徴とする、屋外用積層ポリエステル保護フィルム。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「前記離型層中に離型剤を含有する請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。」とあるのを、「ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、もう一方の面に粘着層を有する、屋外用積層ポリエステル保護フィルムであり、前記離型層中に離型剤を含有し、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下であり、離型層側表面の水滴接触角が90度以上であり、極限粘度(IV)が0.63dl/g以上であることを特徴とする、屋外用積層ポリエステル保護フィルム。」に訂正する。(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、5も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「請求項2に記載の積層ポリエステルフィルム。」とあるのを、「請求項2に記載の屋外用積層ポリエステル保護フィルム。」に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「末端カルボキシル基量(AV)が30当量/t以下である請求項1〜3の何れか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。」とあるのを、「ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、もう一方の面に粘着層を有する積層ポリエステル保護フィルムであり、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下であり、離型層側表面の水滴接触角が70度以上であり、極限粘度(IV)が0.67dl/g以上であり、末端カルボキシル基量(AV)が28当量/t以上、30当量/t以下であることを特徴とする、積層ポリエステルフィルム。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1〜4の何れか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。」とあるのを、「請求項1〜3の何れか1項に記載の屋外用積層ポリエステル保護ポリエステルフィルム。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1〜4の何れか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。」とあるのを、「ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、もう一方の面に粘着層を有する積層ポリエステルフィルムであり、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下であり、離型層側表面の水滴接触角が70度以上であり、極限粘度(IV)が0.67dl/g以上であり、末端カルボキシル基量(AV)が30当量/t以下(ただし、20当量/t以下を除く)であり、95℃、30分間におけるフィルム幅方向(TD)の加熱収縮率が1.0%以下であることを特徴とする、積層ポリエステルフィルム。」に訂正する。

(7)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項2、4、6については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求める。

2 一群の請求項について
訂正前の請求項1〜6について、請求項2〜6はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、上記訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1〜6に対応する訂正後の請求項1〜6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。ただし、前記1(7)による別の訂正単位とする求めが認められ、また、訂正後の請求項5の記載は、訂正後の請求項1〜3の何れか1項の記載を引用するものであるから、結局、訂正後の請求項1〜3、5は、新たな一群の請求項となって、それにより残された請求項4、6は、それぞれ独立請求項である。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1にかかる発明特定事項である「積層ポリエステルフィルム」について、「屋外用積層ポリエステル保護フィルム」と訂正して、その適用用途を限定するとともに、ポリエステルの「極限粘度(IV)」に関し、「0.63dl/g以上」を「0.67dl/g以上」の範囲に訂正するものであり、いずれも、訂正前の積層ポリエステルフィルムの構成・用途を減縮するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの記載から明らかなように、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
(a)本件明細書の段落0011には、「本発明の積層ポリエステルフィルムによれば、各種の保護フィルムとして、撥水性と剛性に優れ、良好な水滴跡や汚れ付着防止、酸性雨による塗装膜劣化防止、飛び石などによる傷付き防止の性能を有する高透明なフィルムを提供すること」が記載され、また、段落0035には、「特に本発明のフィルムは、自動車用、看板用、太陽光発電用、道路標識や遮音壁など道路関連部材用など、主に屋外で使用されるガラス鋼板等に用いる保護フィルムとしての使用を考慮した場合、各種の保護対象物への汚染、付着、傷付き防止ばかりでなく、保護対象物を保護する側の、保護フィルムも、水滴跡や酸性雨などによる汚染や付着防止に優れたものであること」が記載され、また、実施例(段落0135〜)においても、「離型層(帯電防止層)側の塵埃付着性」(段落0158)が良好であること(段落0191、[表4]、実施例19〜20)が記載されていることから、訂正事項1にかかる「屋外用積層ポリエステル保護フィルム」との適用用途については、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
(b)訂正事項1にかかる、ポリエステルの「極限粘度(IV)」の数値範囲を「0.63dl/g以上」から「0.67dl/g以上」の範囲に限定する訂正は、本件明細書の段落0017における「ポリエステルの極限粘度(IV)は、好ましくは0.63dl/g以上、より好ましくは0.65dl/g以上、さらに好ましくは0.67dl/g以上」の記載から、さらに好ましい範囲に限定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
(c)上記(a)及び(b)のとおりであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとするとともに、さらに、発明特定事項である「積層ポリエステルフィルム」について、「屋外用積層ポリエステル保護フィルム」と訂正して、その適用用途を限定し、また、「離型層側表面の水滴接触角」に関し、「70度以上」を「90度以上」の範囲に訂正して、その数値範囲を限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5ただし書第4号に規定する「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるとともに、さらに、訂正前の積層ポリエステルフィルムの構成・用途を減縮するものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2にかかる、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めるための訂正自体は、何ら実質的変更を伴うものではない。
さらに、上記アの記載から明らかなように、訂正事項2において、訂正前の積層ポリエステルフィルムの構成・用途を減縮することは、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
(a)訂正事項2にかかる、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとすること自体は、何ら実質的変更を伴うものではない。
(b)本件明細書の段落0011には、「本発明の積層ポリエステルフィルムによれば、各種の保護フィルムとして、撥水性と剛性に優れ、良好な水滴跡や汚れ付着防止、酸性雨による塗装膜劣は防止、飛び石などによる傷付き防止の性能を有する高透明なフィルムを提供すること」が記載され、また、段落0035には、「特に本発明のフィルムは、自動車用、看板用、太陽光発電用、道路標識や遮音壁など道路関連部材用など、主に屋外で使用されるガラス、鋼板等に用いる保護フィルムとしての使用を考慮した場合、各種の保護対象物への汚染、付着、傷付き防止ばかりでなく、保護対象物を保護する側の、保護フィルムも、水滴跡や酸性雨などによる汚染や付着防止に優れたものであること」が記載され、また、実施例(段落0135〜)においても、「離型層(帯電防止層)側の塵埃付着性」(段落0158)が良好であること(段落0191、[表4]、実施例19〜20)が記載されていることから、訂正事項2にかかる「屋外用積層ポリエステル保護フィルム」との適用用途については、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
(c)訂正事項2にかかる、離型層側表面の水滴接触角の数値範囲を「70度以上」から「90度以上」の範囲に限定する訂正は、本件明細書の段落0029における「本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、離型層を形成する側のポリエステルフィルム表面の水滴接触角は、好ましくは70度以上、より好ましくは80度以上、さらに好ましくは90度以上、特に好ましくは100度以上の範囲である。」の記載から、さらに好ましい範囲に限定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
(d)上記(a)〜(c)のとおりであるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3に、「請求項2に記載の積層ポリエステルフィルム。」とあるのを、「請求項2に記載の屋外用積層ポリエステル保護フィルム。」に訂正するものであって、上記(2)に記載したとおり、訂正事項2による訂正後の請求項2の「屋外用積層ポリエステル保護フィルム。」の記載との整合を図るため必要となった訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的としているといえる。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの記載から明らかなように、訂正事項3は、訂正後の請求項2の記載との整合を図るため必要となった訂正であって、訂正後の請求項2については上記(2)に記載したとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、上記アのとおり、訂正後の請求項2の「屋外用積層ポリエステル保護フィルム。」の記載との整合を図るため必要となった訂正である。
そして、訂正後の請求項2については上記(2)に記載したとおりである。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1〜3の何れか1項の記載を引用する記載であったものを、請求項1を引用するもののみに限定するとともに請求項間の引用関係を解消し、前記他の請求項の記載を引用しないものとするとともに、さらに、「積層ポリエステルフィルム」について、発明特定事項であるポリエステルの「極限粘度(IV)」に関し、「0.63dl/g以上」を「0.67dl/g以上」の範囲に訂正して限定するものであり、また、「末端カルボキシル基当量(AV)」に関し、「30当量/t以下」を「28当量/t以上、30当量/t以下」の範囲に訂正して限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5ただし書第4号に規定する「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるとともに、さらに、訂正前の積層ポリエステルフィルムの構成及び引用する請求項を減縮するものであって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮をも目的としているといえる。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4にかかる請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めるための訂正自体は、何ら実質的変更を伴うものではない。
さらに、上記アの記載から明らかなように、訂正事項4は、発明特定事項及び引用する請求項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4にかかる請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めるための訂正自体は、何ら実質的変更を伴うものではない。
また、訂正事項4は、上記アのとおり、発明特定事項であるポリエステルの「極限粘度(IV)」に関し、「0.63dl/g以上」を「0.67dl/g以上」の範囲に訂正するものであり、本件明細書の段落0017における「ポリエステルの極限粘度(IV)は、好ましくは0.63dl/g以上、より好ましくは0.65dl/g以上、さらに好ましくは0.67dl/g以上」の記載から、さらに好ましい範囲に限定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
さらに、訂正事項4にかかる、ポリエステルの「末端カルボキシル基当量(AV)」に関し、「30当量/t以下」を「28当量/t以上、30当量/t以下」の範囲に限定する訂正は、「30当量/t以下」との範囲内で、その下限値を「28当量/t」と定めて、前記範囲を減縮するものであり、そして、前記下限値である「28当量/t」については、本件明細書段落0189、[表1]の「実施例5」〜「実施例20」の欄に、「末端カルボキシル基量AV(当量/t)」が「28」であることが具体的に記載されている。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5の「請求項1〜4の何れか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。」との記載を、「請求項1〜3に記載の屋外用積層ポリエステル保護フィルム。」訂正するものであって、上記訂正事項1〜3に伴い、引用関係を整理するとともに、訂正後の請求項1〜3の「屋外用積層ポリエステル保護フィルム。」の記載との整合を図ること、及び、上記訂正事項4に伴いその引用する請求項から請求項4を削除するため必要となった訂正であるから、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明、及び、同法同項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの記載から明らかなように、訂正事項5は、訂正後の請求項1〜3の記載との整合を図るため必要となった訂正、及び、その引用する請求項から請求項4を削除するため必要となった訂正であって、訂正後の請求項1〜3については上記(1)〜(3)に記載のとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、上記アのとおり、訂正後の請求項1〜3の「屋外用積層ポリエステル保護フィルム。」の記載との整合を図るため必要となった訂正、及び、その引用する請求項から請求項4を削除するため必要となった訂正である。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項6が請求項1〜5の何れか1項の記載を引用する記載であったものを、請求項1を引用するもののみに限定するとともに請求項間の引用関係を解消し、前記他の請求項の記載を引用しないものとするとともに、さらに、「積層ポリエステルフィルム」について、発明特定事項であるポリエステルの「極限粘度(IV)」に関し、「0.63dl/g以上」を「0.67dl/g以上」の範囲に訂正して限定するものであり、また、「末端カルボキシル基当量(AV)」に関し、「30当量/t以下」を「30当量/t以下(ただし、20当量/t以下を除く)」の範囲に訂正して限定するものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5ただし書第4号に規定する「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるとともに、さらに、訂正前の積層ポリエステルフィルムの構成及び引用する請求項を減縮するものであって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮をも目的としているといえる。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6にかかる請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めるための訂正自体は、何ら実質的変更を伴うものではない。
さらに、上記アの記載から明らかなように、訂正事項6は、発明特定事項及び引用する請求項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6にかかる請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めるための訂正自体は、何ら実質的変更を伴うものではない。
また、訂正事項6にかかる、ポリエステルの「極限粘度(IV)」を「0.63dl/g以上」を「0.67dl/g以上」の範囲に限定する訂正は、本件明細書の段落0017における「ポリエステルの極限粘度(IV)は、好ましくは0.63dl/g以上、より好ましくは0.65dl/g以上、さらに好ましくは0.67dl/g以上」の記載から、さらに好ましい範囲に限定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
さらに、訂正事項6にかかる、ポリエステルの「末端カルボキシル基当量(AV)」に関し、「30当量/t以下」を「30当量/t以下(ただし、20当量/t以下を除く)」とする訂正は、いわゆる「除くクレーム」により発明特定事項を限定するものであるから、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。

(7)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許第6693100号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、3、5〕〔4〕〔6〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔1、2、3、5〕〔4〕〔6〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1〜6に係る発明は、令和3年8月4日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」〜「本件特許発明6」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。

「【請求項1】
ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、もう一方の面に粘着層を有する、屋外用積層ポリエステル保護フィルムであり、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下であり、離型層側表面の水滴接触角が70度以上であり、極限粘度(IV)が0.67dl/g以上であることを特徴とする、屋外用積層ポリエステル保護フィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、もう一方の面に粘着層を有する、屋外用積層ポリエステル保護フィルムであり、前記離型層中に離型剤を含有し、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下であり、離型層側表面の水滴触角が90度以上であり、極限粘度(IV)が0.63dl/g以上であることを特徴とする、屋外用積層ポリエステル保護フィルム。
【請求項3】
前記離型剤が、長鎖アルキル基含有化合物、フッ素化合物、ワックスから選ばれる少なくとも一種である請求項2に記載の屋外用積層ポリエステル保護フィルム。
【請求項4】
ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、もう一方の面に粘着層を有する積層ポリエステルフィルムであり、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下であり、離型層側表面の水滴触角が70度以上であり、極限粘度(IV)が0.67dl/g以上であり、末端カルボキシル基量(AV)が28当量/t以上、30当量/t以下であることを特徴とする、積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
95℃、30分間におけるフィルム長手方向(MD)の加熱収縮率が1.0%以下である請求項1〜3の何れか1項に記載の屋外用積層ポリエステル保護フィルム。
【請求項6】
ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、もう一方の面に粘着層を有する積層ポリエステルフィルムであり、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下であり、離型層側表面の水滴触角が70度以上であり、極限粘度(IV)が0.67dl/g以上であり、末端カルボキシル基量(AV)が30当量/t以下(ただし、20当量/t以下を除く)であり、95℃、30分間におけるフィルム長手方向(MD)の加熱収縮率が1.0%以下であることを特徴とする、積層ポリエステルフィルム。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.登録時の請求項1〜6に係る特許に対して、当審が令和3年1月20日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(進歩性) 本件特許の請求項1〜6に係る発明は、本件特許出願日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2015−3993号公報
甲第2号証:特開2004−174725号公報
甲第3号証:特開2015−208946号公報
甲第4号証:特開2003−191424号公報
甲第5号証:特開2015−107618号公報

2.令和3年3月17日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項4、6に係る特許に対して、当審が令和3年6月9日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(進歩性) 本件特許の請求項4、6に係る発明は、本件特許出願日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
理由2(サポート要件)本件特許の請求項4、6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

第5 前記第4における進歩性についての判断
1 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
1a「【請求項1】
エステル環状三量体が0.7重量%以下のポリエステル層を有するポリエステルフィルムの少なくとも片面に、アンモニウム基含有化合物および離型剤を含有する塗布液から形成された塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。」
1b「【0003】
特に近年、タッチパネル等に使用が増えている、透明導電性積層体の基材として、ガラスの代わりに使用されることが増えてきている。かかる透明導電性積層体として、ポリエステルフィルムを基材とし、その上に直接、あるいはアンカー層を介して、ITO(酸化インジウムスズ)膜がスパッタリングで形成されているものがある。かかる二軸延伸ポリエステルフィルムは、加熱加工されることが一般的である。」
1c「【0032】
なお、本発明で得られる積層ポリエステルフィルムのヘーズは10%以下であることが好ましい。より好ましくは5%以下、さらに好ましくは4%以下である。積層ポリエステルフィルムのヘーズが10%を超える場合は、光学フィルム用途においては、外観上使用しがたくなる場合がある。」
1d「【0052】
塗布層の形成に使用する離型剤は、フィルムの離型性を向上させるために用いるもので、特に制限はなく、従来公知の離型剤を使用することが可能であり、例えば、長鎖アルキル化合物、フッ素化合物、ワックス、シリコーン化合物等が挙げられる。これらの中でも少量でも効果的に撥水性が得られるという観点から長鎖アルキル化合物やフッ素化合物やが好ましく、特に塗布層の外観という点から長鎖アルキル化合物がより好ましい。これらの離型剤は単独で用いてもよいし、複数種使用してもよい。」
1e「【0091】
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、例えば、タッチパネル用では、フォトレジストを積層し、ITO層にパターニングを施した後、フォトレジストを除去するための洗浄工程でのフィルム上の残水を抑制する必要がある。かかる観点より、適度な撥水性に対応するためには、水滴接触角は、好ましくは55度以上、より好ましくは60度以上、さらに好ましくは65度以上である。水滴接触角が55度を下回る場合には、洗浄工程にて、効果的にフィルム上の残水が抑制出来ず、不適当となる場合がある。」
1f「【0106】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素
加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.63、エステル環状三量体の含有量は0.97重量%であった。
【0107】
<ポリエステル(B)の製造方法>
ポリエステル(A)を、予め160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.75、エステル環状三量体の含有量が0.46重量%のポリエステル(B)を得た。
【0108】
<ポリエステル(C)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、エチルアシッドフォスフェートを生成ポリエステルに対して30ppm、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して100ppmを窒素雰囲気下、260℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、テトラブチルチタネートを生成ポリエステルに対して50ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.3kPaまで減圧し、さらに80分、溶融重縮合させ、極限粘度0.61のポリエステル(A)エステル環状三量体の含有量が1.02重量%のポリエステル(C)を得た。
【0109】
<ポリエステル(D)の製造方法>
ポリエステル(C)を、予め160℃で予備結晶化させた後、温度210℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.72、エステル環状三量体の含有量が0.50重量%のポリエステル(D)を得た。
【0110】
<ポリエステル(E)の製造方法>
ポリエステル1の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径(d50)が1.6μmのシリカ粒子を0.5部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル1の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(C)は、極限粘度0.65、エステル環状三量体の含有量は0.82重量%であった。
【0111】
また、塗布液に含有する組成物としては以下を用いた。
(A1):4つ口フラスコにキシレン200部、オクタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して得た長鎖アルキル化棒物。
・・・
【0113】
(B1):対イオンがメチルスルホネートである、2−(トリメチルアミノ)エチルメタクリレート/エチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/ポリエチレングリコール含有モノアクリレートが、重量比で75/12/15/30 である共重合ポリマー。数平均分子量が150000。
(B2):対イオンがメチルスルホネートである、2−ヒドロキシ3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモノウム塩ポリマー。数平均分子量が130000。
【0114】
(C1):ヘキサメトキシメチロールメラミン。
(D1):メラミン架橋触媒である、2−アミノ−2−メチルプロパノールハイドロクロライド
(E1):けん化度=88モル%、重合度500のポリビニルアルコール。
(E2):数平均分子量が20000の、ポリエチレングリコール含有モノアクリレートポリマー。
(F1):平均粒径0.05μmのシリカ粒子。
(F2):平均粒径0.02μmのアルミナ変性シリカ粒子。
・・・
【0119】
実施例12:
ポリエステル(D)、(E)を重量比で80/20でブレンドしたものを表層、ポリエステル(D)のみのものを中間層の原料として、二台の押出機にそれぞれを供給し、285℃に加熱溶融した後、A層を最外層(表層)、B層を中間層として、2種3層(A/B/A)で厚み構成比がA/B/A=1.5/22/1.5になるよう共押出し、静電密着法を用いて表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら、ロール周速差を利用して縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す水系の塗布液9を塗布し、テンター延伸機に導き、100℃で横方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、横方向に2%の弛緩処理を行い、塗布層の膜厚(乾燥後)が0.02μmの塗布層を有するフィルム厚みが25μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
・・・
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】【表3】




(2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】
ポリエステルフィルムを基材とし、その両面に樹脂層を有し、一方の樹脂層表面に粘着層を有するフィルムであって、露出する樹脂層表面の水滴接触角が80度以上であり、表面に10kV直流電圧を印加した時の飽和帯電が両面ともに2kV以下であり、印加停止後の飽和帯電量の半減時間が両面ともに15秒以下であることを特徴とする光学部材表面保護用フィルム。」

(3)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「【請求項1】
融点(TmB)が180〜225℃の範囲であるポリエステル層Bと、当該層Bに隣接する層Aおよび層Cを有する積層ポリエステルフィルムであって、層Aおよび層Cの融点(TmA、TmC)がそれぞれ層Bの融点より高く、融点の差(TmA−TmBおよびTmC−TmB)がそれぞれ10〜40℃の範囲であり、当該ポリエステルフィルム中に無機粒子を25〜200ppm含有し、当該ポリエステルフィルムの両面に、四級アンモニウム塩基含有ポリマー、ポリエチレングリコール含有アクリレートポリマーおよび架橋剤を含有する塗布液を塗布して得られた塗布層1を有し、層A側の当該塗布層上に、少なくとも一種のオルガノシロキサン化合物を含有する塗布剤を塗布して形成された、厚みが10〜100nmの塗布層(2)を有し、当該塗布層(2)上にシリコーン系離型層を有することを特徴とする離型ポリエステルフィルム。」
3b「【0068】
本発明において、離型層が設けられていない面には、接着層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けてもよく、また、ポリエステルフィルムにはコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。」

(4)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
4a「【請求項1】 重縮合金属触媒残渣が150ppm未満であり、アンチモン金属が全酸成分に対し15mmol%以下であり、かつ固有粘度が0.52〜1.50dl/gであるポリエステルを主要構成成分とするポリエステルフィルムの一方の表面に離型層が設けられていることを特徴とする積層フィルム。」
4b「【0041】本発明の積層フィルムは、150℃で測定した縦方向の熱収縮率が1.0〜5.0%であることが好ましい。縦方向の熱収縮率を1.0%未満に抑えると、フィルムの平面性が悪化し易く、また透明性が低下することがあり、本発明のポリエステルフィルムをドライフィルムフォトレジスト用に使用した際に製造工程や電子回路製造工程で不具合を生じる原因となる。また、縦方向の熱収縮率が5.0%を超えると、各工程での熱や溶剤によって収縮変形を生じ易く、不適当である。」

(5)甲第5号証(以下、「甲5」という。)
5a「【請求項1】
少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムの片面に、シリコーン化合物を含有する離型層を有する離型フィルムであり、前記ポリエステルフィルムが離型層と隣接するポリエステル層の末端カルボキシル基量(AV)が20当量/t以下であり、極限粘度(IV)が0.66dl/g以下であることを特徴とする離型フィルム。」

2 甲1に記載された発明
甲1には、その請求項1に係る発明の具体例として実施例12に記載の積層ポリエステルフィルム(その材料等の説明の記載である段落【0109】〜【0111】、【0113】、【0114】、【0127】〜【0129】の記載を含む)には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(摘記1a、1f参照)。
「エステル環状三量体が0.7重量%以下のポリエステル層を有するポリエステルフィルムの少なくとも片面に、アンモニウム基含有化合物および離型剤を含有する塗布液から形成された塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルムであって、
ポリエステル(D)、(E)を重量比で80/20でブレンドしたものを表層、ポリエステル(D)のみのものを中間層の原料として、2種3層(A/B/A)で厚み構成比がA/B/A=1.5/22/1.5になるよう共押出して、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成し、縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に水系の塗布液9を塗布し、横方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、横方向に2%の弛緩処理を行い、塗布層の膜厚(乾燥後)が0.02μmの塗布層を有するフィルム厚みが25μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、
上記ポリエステル(D)は、その極限粘度が0.72であり、
上記ポリエステル(E)は、その極限粘度が0.65であり、
上記水系の塗布液9は、(A1):4つ口フラスコにキシレン200部、オクタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加え、ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して得た長鎖アルキル化棒物2%と、(B1)対イオンがメチルスルホネートである、2−(トリメチルアミノ)エチルメタクリレート/エチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/ポリエチレングリコール含有モノアクリレートが、重量比で75/12/15/30 である共重合ポリマー(数平均分子量が150000)25%、(C1)ヘキサメトキシメチロールメラミン55%、(D1メラミン架橋触媒である、2−アミノ−2−メチルプロパノールハイドロクロライド3%、(E1)けん化度=88モル%、重合度500のポリビニルアルコール10%及び平均粒径0.05μmのシリカ粒子5%からなるものであり、
フィルムヘーズが0.8%であり、
水滴接触角が60°である、
積層ポリエステルフィルム」

3 当審の判断
(1)本件特許発明1
ア 本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「ポリエステル層を有するポリエステルフィルムの少なくとも片面に・・・離型剤を含有する塗布液から形成された塗布層を有する」、「フィルムヘーズが0.8%である」及び「積層ポリエステルフィルム」は、それぞれ、本件特許発明1の「ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し」、「離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下である」及び「積層ポリエステル保護フィルム」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下である、積層ポリエステル保護フィルム。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件特許発明1は、ポリエステルフィルムのもう一方の面に粘着層を有するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。

<相違点2>
積層ポリエステル保護フィルムが、本件特許発明1では屋外用であるのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。

<相違点3>
本件特許発明1は、離型層側表面の水滴接触角が70度以上であるのに対し、甲1発明は水滴接触角が60°である点。

<相違点4>
本件特許発明1は、極限粘度(IV)が0.67dl/g以上であるのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。

イ 相違点についての検討
事案に鑑み<相違点2>について検討する。
甲1には、甲1発明の積層ポリエステルフィルムをタッチパネル等に使用する透明導電性積層体として使用することが記載されており(摘記1b参照)、屋外用に使用することに関しては記載も示唆もない。
また、甲2〜甲5にも、屋外用の積層ポリエステル保護フィルムについて記載も示唆もない。
そうすると、上記相違点5に係る本件特許発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。

ウ 本件特許発明1の効果について
本件特許明細書の【表3】及び【表4】によると、撥水性、耐加水分解性、塵埃付着性が、良好である等の屋外で使用される場合での効果を奏すると認められ、本件特許発明1がその全体にわたり当業者の予測し得ない顕著な効果を発現していると認められる。

エ まとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、<相違点2>以外の相違点について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2〜5の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(2)本件特許発明2、3、5
本件特許発明2、3、5は、「屋外用積層ポリエステル保護フィルム」という点を発明特定事項に備えているところ、上記本件特許発明1と甲1発明との相違点と実質的に同等の相違点を有するものであるから、本件特許発明2、3、5についても、甲1発明及び甲2〜5の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(3)本件特許発明4
ア 本件特許発明4と甲1発明を対比する。
甲1発明の「ポリエステル層を有するポリエステルフィルムの少なくとも片面に・・・離型剤を含有する塗布液から形成された塗布層を有する」、「フィルムヘーズが0.8%である」及び「積層ポリエステルフィルム」は、それぞれ、本件特許発明4の「ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し」、「離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下である」及び「積層ポリエステル保護フィルム」に相当する。
そうすると、本件特許発明4と甲1発明は、「ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下である、積層ポリエステル保護フィルム。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点5>
本件特許発明4は、ポリエステルフィルムのもう一方の面に粘着層を有するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。

<相違点6>
本件特許発明4は、離型層側表面の水滴接触角が70度以上であるのに対し、甲1発明は水滴接触角が60°である点。

<相違点7>
本件特許発明4は、極限粘度(IV)が0.67dl/g以上であるのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。

<相違点8>
本件特許発明4は、末端カルボキシル基量(AV)が28当量/t以上、30当量/t以下であるのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。

イ 相違点についての検討
事案に鑑み<相違点8>について検討する。
甲1には、積層ポリエステルフィルムにおいて末端カルボキシル基量(AV)が28当量/t以上、30当量/t以下であるものについて、記載も示唆もない。
甲5には積層ポリエステルフィルムにおいて末端カルボキシル基量(AV)が20当量/t以下であるものが記載されているが(摘記5a参照)、末端カルボキシル基量(AV)が28当量/t以上、30当量/t以下であるものについては、実施例としては記載も示唆もない。
そうすると、上記相違点8に係る本件特許発明4の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。

ウ 本件特許発明4の効果について
本件特許明細書の【表3】及び【表4】によると、積層ポリエステルの末端カルボキシル基量(AV)が28当量/t以上、30当量/t以下とすることにより、撥水性、耐加水分解性、塵埃付着性が、良好である等の効果を奏すると認められ、本件特許発明4がその全体にわたり当業者の予測し得ない顕著な効果を発現していると認められる。

エ まとめ
以上のとおり、本件特許発明4は、<相違点8>以外の相違点について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2〜5の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(4)本願発明6について
ア 本件特許発明6と甲1発明を対比する。
甲1発明の「ポリエステル層を有するポリエステルフィルムの少なくとも片面に・・・離型剤を含有する塗布液から形成された塗布層を有する」、「フィルムヘーズが0.8%である」及び「積層ポリエステルフィルム」は、それぞれ、本件特許発明6の「ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し」、「離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下である」及び「積層ポリエステル保護フィルム」に相当する。
そうすると、本件特許発明6と甲1発明は、「ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下である、積層ポリエステル保護フィルム。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点9>
本件特許発明6は、ポリエステルフィルムのもう一方の面に粘着層を有するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。

<相違点10>
本件特許発明6は、離型層側表面の水滴接触角が70度以上であるのに対し、甲1発明は水滴接触角が60°である点。

<相違点11>
本件特許発明6は、極限粘度(IV)が0.67dl/g以上であるのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。

<相違点12>
本件特許発明6は、末端カルボキシル基量(AV)が30当量/t以下(ただし、20当量/t以下を除く)であるのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。

<相違点13>
本件特許発明6は、95℃、30分間におけるフィルム長手方向(MD)の加熱収縮率が1.0%以下であるのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。

イ 相違点についての検討
事案に鑑み<相違点12>について検討する。
甲1には、積層ポリエステルフィルムにおいて末端カルボキシル基量(AV)が30当量/t以下(ただし、20当量/t以下を除く)であるものについて、記載も示唆もない。
甲5には積層ポリエステルフィルムにおいて末端カルボキシル基量(AV)が20当量/t以下であるものが記載されているが(摘記5a参照)、末端カルボキシル基量(AV)が30当量/t以下(ただし、20当量/t以下を除く)であるものについては、実施例としては記載も示唆もない。
そうすると、上記相違点12に係る本件特許発明6の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。

ウ 本件特許発明6の効果について
本件特許明細書の【表3】及び【表4】によると、積層ポリエステルの末端カルボキシル基量(AV)が30当量/t以下(ただし、20当量/t以下を除く)とすることにより、撥水性、耐加水分解性、塵埃付着性が、良好である等の効果を奏すると認められ、本件特許発明6がその全体にわたり当業者の予測し得ない顕著な効果を発現していると認められる。

エ まとめ
以上のとおり、本件特許発明6は、<相違点12>以外の相違点について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2〜5の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

第6 前記第4におけるサポート要件についての判断
1 検討手法
一般に『特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、明細書のサポート要件の存在は、特許出願人(…)又は特許権者(…)が証明責任を負うと解するのが相当である。…当然のことながら、その数式の示す範囲が単なる憶測ではなく、実験結果に裏付けられたものであることを明らかにしなければならないという趣旨を含むものである。』とされている〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕。
以下、上記観点に沿って検討する。

2 本件発明が解決しようとする課題
本件発明が解決しようとする課題は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0008】の記載からみて、「自動車、看板、太陽光発電、道路標識や遮音壁など道路関連部材など、主に屋外で使用されるガラス、鋼板等の保護フィルム用等に使用する、高い透明性を有し、水滴跡や汚れ付着防止、酸性雨による塗装膜劣化防止、飛び石などによる傷付き防止に非常に優れた、高い撥水性能と剛性を有する積層ポリエステルフィルムを提供することにある」であると認められる。

3 検討・判断
本件特許発明4、6は、「屋外で使用される保護フィルム」以外の様々な態様を含む。
ここで、本件特許発明は、例えば、実施例において、撥水性、耐加水分解性、透明性及び塵埃付着性について評価しており、また、発明の効果においても良好な水滴跡や汚れ付着防止、酸性雨による塗装膜劣化防止、飛び石などによる傷付き防止の性能について言及している(段落[0011])。
このような記載のとおり、本件特許発明は、明細書の記載及びに出願時の技術常識をも考慮すると、「屋外で使用される保護フィルム」についてその効果が説明されている発明である(段落[0001])。
しかし、発明の詳細な説明には、屋外で使用される保護フィルムが上記課題を解決することが、記載されているものの、屋外で使用される保護フィルム以外の態様のものが、上記課題を解決できることは記載されておらず、上記課題を解決できるという出願時の技術常識もない。
そうすると、本件特許発明4、6は、上記課題を解決できないものを含むものであることから、屋外で使用される保護フィルムに関する事項を発明特定事項としていない本件特許発明4、6の全ての範囲にまで、特許を受けようとする発明を拡張ないし一般化できるといえないので、本件特許請求項4、6の記載がサポート要件を満たす範囲にあるとはいえない。

4 特許権者の主張
特許権者は、令和3年8月4日提出の意見書において「末端カルボキシル基は、段落0095に記載のとおり、離型層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等をさらに改善することを可能とするものであるが、一方で、本件特許明細書段落0018に記載のとおり、ポリエステルフィルム自体の耐加水分解性と関係するものであり、末端カルボキシル基量が多すぎるとポリエステルフィルム自体の耐加水分解性が低下し、一方、少なすぎると離型層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等が低下することとなる。
したがって、本件特許発明4及び6においては、末端カルボキシル基量を特定範囲とすることで、積層ポリエステルフィルム全体としての物性が特定され、そして、それは屋外使用に耐える物性を有することは、本件特許明細書の実施例も含めた記載から明らかであるといえる。
したがって、本件特許発明4及び6において屋外使用の特定がなくとも、末端カルボキシル基量の特定をもって、本件特許発明の課題が解決できると当業者が理解できると思料する。」と主張する。
本件特許明細書段落0018には、末端カルボキシル基量が多すぎるとポリエステルフィルム自体の耐加水分解性が低下し、一方、少なすぎると離型層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等が低下することとなることは、記載されていないから、末端カルボキシル基量を特定範囲とすることのみで、積層ポリエステルフィルム全体としての物性が特定され、そして、それは屋外使用に耐える物性を有することとなるとはいえない。
また、屋外使用に耐える物性を有することとなるとしても、上記3のとおり、本件特許発明4及び6は、「屋外で使用される保護フィルム」以外の様々な態様を含むものであり、そのような本件特許発明の課題が解決できると当業者が理解できるとはいえない。
よって、特許権者の上記主張は採用できない。

第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
特許異議申立の理由は以下のとおりである。
(1)特許法第36条第6項第1号
ア 本件実施例及び比較例の記載によると、離型層の組成を変えることで、本件特許発明の効果を説明している。
ここで、実施例において、その効果が示されているのは、離型成分IA〜IDの少なくとも1種と、成分III(ヘキサメトキシメチロールメラミン)とを含む態様である。すなわち、本件発明は、成分III(ヘキサメトキシメチロールメラミン)を必須成分としている。
一方、比較例2から4においても、離型層組成(塗布液13)は、成分III(ヘキサメトキシメチロールメラミン)を必須成分としている。
すなわち、本件特許発明を実施するにあたり、離型層は如何なる成分の組合わせを必要とするのか、また、各成分の配合量について、当業者は理解できず、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
イ 本件特許発明は、例えば、実施例において、撥水性、耐加水分解性、透明性 及び塵埃付着性について評価しており、また、発明の効果においても良好な水滴跡や汚れ付着防止、酸性雨による塗装膜劣化防止、飛び石などによる傷付き防止の性能について言及している(段落[0011])。
このような記載の通り、本件特許発明は、明細書の記載及びに出願時の技術常識をも考慮すると、「屋外で使用される保護フィルム」についてその効果が説明されている発明である(段落[0001])。
一方、甲第1号証に示されるように、積層ポリエステルフィルムには、「光学部材として使用できる積層ポリエステルフィルム」も存在し、本件発明について、本件明細書において、光学部材に適用できる作用効果、その構成について、具体的な説明がなされていない。
このため、本件明細書の記載によると、本件特許発明は、「屋外で使用される保護フィルム」以外の様々な態様に、発明を拡張ないし一般化できるとはいえない。

(2)第36条第4項第1号
本件特許明細書の実施例1〜4、比較例5及び6の記載によると、実施例1と、実施例2〜4は同一のポリエステルフィルムを用いているにもかかわらず、離型層側表面の水滴接触角が大きく相違している。例えば、実施例2は105゜であるのに対し、実施例4は90゜であり、誤差の範囲であるとは言い難い。
このように、同一のポリエステルフィルムを用いているにもかかわらず、ポリエステルフィルムの水滴接触角が相違しており、水滴接触角の相違がいかなる理由で生じるのか理解できず、当業者は本件特許発明を再現、実施できない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
(1)特許法第36条第6項第1号
ア 本件特許明細書の段落【0037】〜【0125】に離型層の成分の組合わせや、また、各成分の配合量について記載されていることから、本件特許発明の範囲まで本件特許発明の範囲を拡張ないし一般化することはできないとはいえない。
イ 本件特許発明1、2、3、5は「屋外用積層ポリエステル保護フィルム」であるので、本件特許発明の範囲まで本件特許発明の範囲を拡張ないし一般化することはできないとはいえない。

(2)特許法第36条第4項第1号について
本願明細書の実施例及び比較例をみれば、離型層の相違により水滴接触角の相違が生じることが明らかであり、水滴接触角の相違がいかなる理由で生じるのか理解でき、当業者が本件特許発明を再現、実施できないとはいえない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項4、6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許の請求項4、6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許の請求項1−3、5に係る特許は、令和3年1月10日付けの取消理由通知に記載した取消理由、令和3年6月9日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によって取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1−3、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、もう一方の面に粘着層を有する、屋外用積層ポリエステル保護フィルムであり、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下であり、離型層側表面の水滴接触角が70度以上であり、極限粘度(IV)が0.67dl/g以上であることを特徴とする、屋外用積層ポリエステル保護フィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、もう一方の面に粘着層を有する、屋外用積層ポリエステル保護フィルムであり、前記離型層中に離型剤を含有し、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下であり、離型層側表面の水滴接触角が90度以上であり、極限粘度(IV)が0.63dl/g以上であることを特徴とする、屋外用積層ポリエステル保護フィルム。
【請求項3】
前記離型剤が、長鎖アルキル基含有化合物、フッ素化合物、ワックスから選ばれる少なくとも一種である請求項2に記載の屋外用積層ポリエステル保護フィルム。
【請求項4】
ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、もう一方の面に粘着層を有する積層ポリエステルフィルムであり、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下であり、離型層側表面の水滴接触角が70度以上であり、極限粘度(IV)が0.67dl/g以上であり、末端カルボキシル基量(AV)が28当量/t以上、30当量/t以下であることを特徴とする、積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
95℃、30分間におけるフィルム長手方向(MD)の加熱収縮率が1.0%以下である請求項1〜3の何れか1項に記載の屋外用積層ポリエステル保護フィルム。
【請求項6】
ポリエステルフィルムの一方の面に離型層を有し、もう一方の面に粘着層を有する積層ポリエステルフィルムであり、離型層とポリエステルフィルムとの積層状態のフィルムの内部ヘーズが1.0%以下であり、離型層側表面の水滴接触角が70度以上であり、極限粘度(IV)が0.67dl/g以上であり、末端カルボキシル基量(AV)が30当量/t以下(ただし、20当量/t以下を除く)であり、95℃、30分間におけるフィルム幅方向(TD)の加熱収縮率が1.0%以下であることを特徴とする、積層ポリエステルフィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-11-25 
出願番号 P2015-242773
審決分類 P 1 651・ 537- ZDA (C09J)
P 1 651・ 536- ZDA (C09J)
P 1 651・ 121- ZDA (C09J)
最終処分 08   一部取消
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 瀬下 浩一
川端 修
登録日 2020-04-20 
登録番号 6693110
権利者 三菱ケミカル株式会社
発明の名称 積層ポリエステルフィルム  
代理人 田口 昌浩  
代理人 田口 昌浩  
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