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審決分類 審判 一部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更  D06F
審判 一部申し立て 2項進歩性  D06F
審判 一部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  D06F
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D06F
審判 一部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件  D06F
管理番号 1385135
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-22 
確定日 2022-03-18 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6721243号発明「乾燥機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6721243号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1、2、3及び4について訂正することを認める。 特許第6721243号の請求項2及び3に係る特許を維持する。 特許第6721243号の請求項1に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6721243号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成28年5月17日に出願された特願2016−99145号の一部を平成29年8月18日に新たな特許出願としたものであって、令和2年6月22日にその特許権の設定登録がされ、令和2年7月8日に特許掲載公報が発行された。
その後、請求項1ないし3に係る特許に対し、令和2年12月22日に特許異議申立人 渡邉康介(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は令和3年3月25日付け(発送日:令和3年4月1日)で取消理由を通知し、特許権者はその指定期間内である令和3年5月28日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、申立人は令和3年8月6日に意見書を提出し、当審は令和3年9月7日付け(発送日:令和3年9月14日)で訂正拒絶理由を通知し、これに対して、特許権者から何らの応答もなかったので、当審は令和3年11月17日付け(発送日:令和3年11月24日)で取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、令和4年1月13日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年1月13日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示すために当審が付した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記内胴体(4)の軸方向の端部には周方向の全域に環状部材(33)が装着され、前記環状部材(33)の前記端壁(19)側の開口縁部(33a)と、前記端壁(19)から外胴部(3)の内部側に向けて突出し周方向の全域に設けられた前記周壁(19a)と、前記開口縁部(33a)と前記周壁(19a)との間に挟持された前記シール部材(35a)とで前記シール機構(35)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥機(1)。」
と記載されているのを、
「乾燥機筐体(2)内に設けられた筒状の外胴部(3)と、この外胴部(3)の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体(4)と、該内胴体(4)を前記外胴部(3)内で回転駆動させる回転駆動機構(5)と、外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部(3)内に供給するとともに前記外胴部(3)の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部(6)と、を備えた乾燥機(1)であって、前記内胴体(4)の軸方向端部と、前記外胴部(3)の軸方向端部との間にシール機構(35)が設けられ、前記内胴体(4)の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口(27)を有し、前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部には、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の軸方向の内側に向かって突出する環状部材(33)が周方向の全域に装着され、前記環状部材(33)の前記端壁(19)側の開口縁部(33a)と、前記端壁(19)から外胴部(3)の軸方向の内側に向けて突出し周方向の全域に設けられた周壁(19a)と、前記開口縁部(33a)と前記周壁(19a)との間に挟持されたシール部材(35a)とで前記シール機構(35)が形成され、前記端壁(19)の内側面において、前記シール部材(35a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に前記周壁(19a)が設けられていることを特徴とする乾燥機(1)。」
に訂正する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「前記周端壁(41)の開口端(41a)の外周面(41b)と、前記端壁(19)の内周面(19b)と、前記外周面(41b)と前記内周面(19b)との間に挟持された前記シール部材(39a)とで前記シール機構(39)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥機(1)。」
と記載されているのを、
「乾燥機筐体(2)内に設けられた筒状の外胴部(3)と、この外胴部(3)の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体(4)と、該内胴体(4)を前記外胴部(3)内で回転駆動させる回転駆動機構(5)と、外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部(3)内に供給するとともに前記外胴部(3)の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部(6)と、を備えた乾燥機(1)であって、前記内胴体(4)の軸方向端部と、前記外胴部(3)の軸方向端部との間にシール機構(39)が設けられ、前記内胴体(4)の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口(27)を有し、前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し、前記シール機構(39)は、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の内側に向かって突出するとともに前記内胴体(4)の周方向の全域に設けられた環状部材(37)に固定された周端壁(41)の開口端(41a)の外側面(41b)と、前記端壁(19)の内側面(19b)と、前記外側面(41b)と前記内側面(19b)との間に挟持されたシール部材(39a)とで形成され、前記端壁(19)の内側面には、前記シール部材(39a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に、前記端壁(19)の内側面(19b)から前記外胴部(3)の軸方向の内側に向かって延びる周壁(42)が設けられていることを特徴とする乾燥機(1)。」
に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「前記内胴体(4)の軸方向の端部には周方向の全域に外側環状部材(107)が装着され、前記外側環状部材(107)は内胴体(4)の内胴体投入口(27)側に設けられ、内胴体投入口(27)の端壁は円板状の板材を2枚重ねて前記周端壁(108)が形成され、前記周端壁(108)の開口縁部に内側環状部材(109)が装着され、外側環状部材(107)と外胴部(3)の端壁(19)との間が前記シール機構(105)によって封止され、前記シール機構(105)は、前記内側環状部材(109)の外周面(109a)と、前記端壁(19)の内周面(19b)と、前記外周面(109a)と前記内周面(19b)との間に挟持されたシール部材(105a)とで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥機(1)。」
と記載されているのを、
「乾燥機筐体(2)内に設けられた筒状の外胴部(3)と、この外胴部(3)の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体(4)と、該内胴体(4)を前記外胴部(3)内で回転駆動させる回転駆動機構(5)と、外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部(3)内に供給するとともに前記外胴部(3)の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部(6)と、を備えた乾燥機(1)であって、前記内胴体(4)の軸方向端部と、前記外胴部(3)の軸方向端部との間にシール機構(105)が設けられ、前記内胴体(4)の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口(27)を有し、前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部には、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の軸方向の内側に向かって突出する外側環状部材(107)が周方向の全域に装着され、前記外側環状部材(107)は前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側に設けられ、前記内胴体投入口(27)の端壁は円板状の板材を2枚重ねて周端壁(108)が形成され、前記周端壁(108)の開口縁部に内側環状部材(109)が装着され、前記外側環状部材(107)と前記外胴部(3)の前記端壁(19)との間が前記シール機構(105)によって封止され、前記シール機構(105)は、前記内側環状部材(109)の外側面(109a)と、前記端壁(19)の内側面(19b)と、前記外側面(109a)と前記内側面(19b)との間に挟持されたシール部材(105a)とで形成され、前記端壁(19)の内側面には、前記シール部材(105a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に、前記端壁(19)の内側面(19b)から前記外胴部(3)の軸方向の内側に向かって延びる周壁(110)が設けられていることを特徴とする乾燥機(1)。」
に訂正する。

(5)訂正事項5
明細書の段落【0008】に「乾燥機筐体内に設けられた筒状の外胴部と、この外胴部の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体と、該内胴体を前記外胴部内で回転駆動させる回転駆動機構と、外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部内に供給するとともに前記外胴部の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部と、を備えた乾燥機であって、前記内胴体の軸方向端部と、前記外胴部の軸方向端部との間にシール機構が設けられ前記内胴体の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口を有し、前記外胴部には、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁を有し、前記シール機構は、前記内胴体の前記内胴体投入口の開口縁部から内部側に向かって内胴体の周方向の全域に設けた環状の周端壁の外周面と、前記外胴部の端壁の内周面と、外周面と内周面との間に挟持されたシール部材とで形成され、前記外胴部の端壁の内周面には、前記シール部材より内側であって外胴部の内部に向かって延設された周壁が設けられている」
と記載されているのを、
「乾燥機筐体内に設けられた筒状の外胴部と、この外胴部の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体と、該内胴体を前記外胴部内で回転駆動させる回転駆動機構と、外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部内に供給するとともに前記外胴部の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部と、を備えた乾燥機であって、前記内胴体の軸方向端部と、前記外胴部の軸方向端部との間にシール機構が設けられ前記内胴体の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口を有し、前記外胴部は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁を有し、前記内胴体の前記内胴体投入口側の軸方向端部には、前記内胴体の前記内胴体投入口側の軸方向端部から前記内胴体の軸方向の内側に向かって突出する環状部材が周方向の全域に装着され、前記環状部材の前記端壁側の開口縁部と、前記端壁から外胴部の軸方向の内側に向けて突出し周方向の全域に設けられた周壁と、前記開口縁部と前記周壁との間に挟持されたシール部材とで前記シール機構が形成され、前記端壁の内側面において、前記シール部材より前記外胴部の径方向の内側に前記周壁が設けられている」
に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の段落【0009】に
「本発明の一態様においては、前記内胴体の軸方向の端部には周方向の全域に環状部材が装着され、前記環状部材の前記端壁側の開口縁部と、前記端壁から外胴部の内部側に向けて突出し周方向の全域に設けられた前記周壁と、前記開口縁部と前記周壁との間に挟持された前記シール部材とで前記シール機構が形成されている」
と記載されているのを、
「本発明の一態様は、乾燥機筐体内に設けられた筒状の外胴部と、この外胴部の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体と、該内胴体を前記外胴部内で回転駆動させる回転駆動機構と、外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部内に供給するとともに前記外胴部の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部と、を備えた乾燥機であって、前記内胴体の軸方向端部と、前記外胴部の軸方向端部との間にシール機構が設けられ、前記内胴体の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口を有し、前記外胴部は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁を有し、前記シール機構は、前記内胴体の前記内胴体投入口側の軸方向端部から前記内胴体の内側に向かって突出するとともに前記内胴体の周方向の全域に設けられた環状部材に固定された周端壁の開口端の外側面と、前記端壁の内側面と、前記外側面と前記内側面との間に挟持されたシール部材とで形成され、前記端壁の内側面には、前記シール部材より前記外胴部の径方向の内側に、前記端壁の内側面から前記外胴部の軸方向の内側に向かって延びる周壁が設けられている」
に訂正する。

(7)訂正事項7
明細書の段落【0010】に
「本発明の一態様においては、前記周端壁の開口端の外周面と、前記端壁の内周面と、前記外周面と前記内周面との間に挟持された前記シール部材とで前記シール機構が形成されていることを特徴とする。また、本発明の一態様においては、前記内胴体の軸方向の端部には周方向の全域に外側環状部材が装着され、前記外側環状部材は内胴体の内胴体投入口側に設けられ、内胴体投入口の端壁は円板状の板材を2 枚重ねて前記周端壁が形成され、前記周端壁の開口縁部に内側環状部材が装着され、外側環状部材と外胴部の端壁との間が前記シール機構によって封止され、前記シール機構は、前記内側環状部材の外周面と、前記端壁の内周面と、前記外周面と前記内周面との間に挟持されたシール部材とで形成されている」
と記載されているのを、
「本発明の一態様は、乾燥機筐体内に設けられた筒状の外胴部と、この外胴部の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体と、該内胴体を前記外胴部内で回転駆動させる回転駆動機構と、外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部内に供給するとともに前記外胴部の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部と、を備えた乾燥機であって、前記内胴体の軸方向端部と、前記外胴部の軸方向端部との間にシール機構が設けられ、前記内胴体の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口を有し、前記外胴部は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁を有し、前記内胴体の前記内胴体投入口側の軸方向端部には、前記内胴体の前記内胴体投入口側の軸方向端部から前記内胴体の軸方向の内側に向かって突出する外側環状部材が周方向の全域に装着され、前記外側環状部材は前記内胴体の前記内胴体投入口側に設けられ、前記内胴体投入口の端壁は円板状の板材を2枚重ねて周端壁が形成され、前記周端壁の開口縁部に内側環状部材が装着され、前記外側環状部材と前記外胴部の前記端壁との間が前記シール機構によって封止され、前記シール機構は、前記内側環状部材の外側面と、前記端壁の内側面と、前記外側面と前記内側面との間に挟持されたシール部材とで形成され、前記端壁の内側面には、前記シール部材より前記外胴部の径方向の内側に、前記端壁の内側面から前記外胴部の軸方向の内側に向かって延びる周壁が設けられている」
に訂正する。

(8)訂正事項8
明細書の段落【0030】に「シール機構39は、周端壁41の開口端41aの外周面41bと、端壁19の内周面19bと、外周面41bと内周面19bとの間に挟持されたシール部材39aとで形成されている。」と記載されているのを、「シール機構39は、周端壁41の開口端41aの外側面41bと、端壁19の内側面19bと、外側面41bと内側面19bとの間に挟持されたシール部材39aとで形成されている。」に訂正する。

(9)訂正事項9
明細書の段落【0031】に「また、端壁19の内周面19bからは、」と記載されているのを、「また、端壁19の内側面19bからは、」に訂正する。

(10)訂正事項10
明細書の段落【0036】に
「シール機構105は、内側環状部材109の外周面109aと、端壁19の内周面19bと、外周面109aと内周面19bとの間に挟持されたシール部材105aとで形成されている。周端壁108は、円板状の板材を2枚重ねて形成され、内胴投入口27の端壁を構成している。この周端壁108の内側(内胴体4の軸中心側)に内側環状部材109が端壁19に対向して固定されている。この内側環状部材109の内周面19bに対向した面に、凹溝109bが形成され、この凹溝109b内にシール部材105aが挿入されている。また、シール部材105aは、内胴体4の軸中心側、すなわち内胴投入口27に近接した位置に配置されている。また、端壁19の内周面19bからは、」
と記載されているのを、
「シール機構105は、内側環状部材109の外側面109aと、端壁19の内側面19bと、外側面109aと内側面19bとの間に挟持されたシール部材105aとで形成されている。周端壁108は、円板状の板材を2枚重ねて形成され、内胴投入口27の端壁を構成している。この周端壁108の内側(内胴体4の軸中心側)に内側環状部材109が端壁19に対向して固定されている。この内側環状部材109の内側面19bに対向した面に、凹溝109bが形成され、この凹溝109b内にシール部材105aが挿入されている。また、シール部材105aは、内胴体4の軸中心側、すなわち内胴投入口27に近接した位置に配置されている。また、端壁19の内側面19bからは、」
に訂正する。

(11)訂正事項11
明細書の段落【0037】に「なお、内胴体4は、外胴部3に対して、回転駆動機構5によって一方向に回転する際に、シール材105aは、端壁19の内周面19bとに常に摺動する。」と記載されているのを、「なお、内胴体4は、外胴部3に対して、回転駆動機構5によって一方向に回転する際に、シール材105aは、端壁19の内側面19bとに常に摺動する。」に訂正する。

(12)一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1から請求項4について、請求項2から請求項4はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1から請求項4に対応する訂正後の請求項1から請求項4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(13)別の訂正単位とする求めについて
訂正後の請求項2、3及び4については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の他の請求項とは別途訂正することを求めるという、別の訂正単位とする求めがあった。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式の請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項2における、訂正前の請求項2の「前記内胴体(4)の軸方向の端部には周方向の全域に環状部材(33)が装着され、」との記載を、「前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部には、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の軸方向の内側に向かって突出する環状部材(33)が周方向の全域に装着され、」との記載に改める訂正は、「環状部材(33)」の具体的な構成を特定する訂正であって、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2における、訂正前の請求項2の「前記端壁(19)から外胴部(3)の内部側に向けて突出し周方向の全域に設けられた前記周壁(19a)と、」との記載を、「前記端壁(19)から外胴部(3)の軸方向の内側に向けて突出し周方向の全域に設けられた周壁(19a)と、」との記載に改める訂正のうち、「外胴部(3)の内部側」との記載を「外胴部(3)の軸方向の内側」との記載に改める訂正は、「外胴部(3)の内部側」が「外胴部(3)の軸方向の内側」であることを明確にする訂正であって、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。さらに、「全域に設けられた前記周壁(19a)」との記載を「全域に設けられた周壁(19a)」との記載に改める訂正は、不要な「前記」を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2における、訂正前の請求項2の「前記開口縁部(33a)と前記周壁(19a)との間に挟持された前記シール部材(35a)」との記載を、「前記開口縁部(33a)と前記周壁(19a)との間に挟持されたシール部材(35a)」との記載に改める訂正は、不要な「前記」を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2において、「前記端壁(19)の内側面において、前記シール部材(35a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に前記周壁(19a)が設けられている」点を限定する訂正は、訂正前の請求項1における「前記外胴部(3)の端壁(19)の内周面には、前記シール部材(35a)より内側であって外胴部(3)の内部に向かって延設された周壁(19a、42、110)が設けられている」との記載を、「前記端壁(19)の内側面において、前記シール部材(35a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に前記周壁(19a)が設けられている」との記載に改める訂正であって、「周壁(19a)」の具体的な位置を特定するものであり、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮するものであり、かつ、明瞭でない記載を釈明するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、訂正前の請求項1、願書に添付した明細書段落【0026】及び図7に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式の請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項3における、訂正前の請求項3の「前記周端壁(41)の開口端(41a)の外周面(41b)と、前記端壁(19)の内周面(19b)と、前記外周面(41b)と前記内周面(19b)との間に挟持された前記シール部材(39a)とで前記シール機構(39)が形成され」との記載を、「前記シール機構(39)は、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の前記内胴体(4)の内側に向かって突出するとともに前記内胴体(4)の周方向の全域に設けられた環状部材(37)に固定された周端壁(41)の開口端(41a)の外側面(41b)と、前記端壁(19)の内側面(19b)と、前記外側面(41b)と前記内側面(19b)との間に挟持されたシール部材(39a)とで形成され、」との記載に改める訂正のうち、「前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の前記内胴体(4)の内側に向かって突出するとともに前記内胴体(4)の周方向の全域に設けられた環状部材(37)」とする訂正は、「環状部材(37)」の具体的な構成を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、「環状部材(37)に固定された周端壁(41)」とする訂正は、「周端壁(41)」の具体的な構成を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。さらに、「周端壁(41)の開口端(41a)の外側面(41b)と、前記端壁(19)の内側面(19b)と、前記外側面(41b)と前記内側面(19b)との間に挟持されたシール部材(39a)とで形成され、」とする訂正は、「外周面(41b)」及び「内周面(19b)」との不明瞭な記載を、「外側面(41b)」及び「内側面(19b)」という明瞭な記載に改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3において、「前記端壁(19)の内側面には、前記シール部材(39a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に、前記端壁(19)の内側面(19b)から前記外胴部(3)の軸方向の内側に向かって延びる周壁(42)が設けられている」点を限定する訂正は、訂正前の請求項1における「前記外胴部(3)の端壁(19)の内周面には、前記シール部材(35a)より内側であって外胴部(3)の内部に向かって延設された周壁(19a、42、110)が設けられている」との記載を、「前記端壁(19)の内側面には、前記シール部材(39a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に、前記端壁(19)の内側面(19b)から前記外胴部(3)の軸方向の内側に向かって延びる周壁(42)が設けられている」との記載に改める訂正であって、「周壁(42)」の具体的な位置を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮するものであり、かつ、明瞭でない記載を釈明するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、訂正前の請求項1、願書に添付した明細書段落【0029】ないし【0031】及び図8に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式の請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項4における、訂正前の請求項4の「前記内胴体(4)の軸方向の端部には周方向の全域に外側環状部材(107)が装着され、」との記載を、「前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部には、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の軸方向の内側に向かって突出する外側環状部材(107)が周方向の全域に装着され、」との記載に改める訂正は、「外側環状部材(107)」の具体的な構成を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4における、訂正前の請求項4の「前記外側環状部材(107)は内胴体(4)の内胴体投入口(27)側に設けられ、内胴体投入口(27)の端壁は円板状の板材を2枚重ねて前記周端壁(108)が形成され、前記周端壁(108)の開口縁部に内側環状部材(109)が装着され、外側環状部材(107)と外胴部(3)の端壁(19)との間が前記シール機構(105)によって封止され、前記シール機構(105)は、前記内側環状部材(109)の外周面(109a)と、前記端壁(19)の内周面(19b)と、前記外周面(109a)と前記内周面(19b)との間に挟持されたシール部材(105a)とで形成され」との記載を、「前記外側環状部材(107)は前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側に設けられ、前記内胴体投入口(27)の端壁は円板状の板材を2枚重ねて周端壁(108)が形成され、前記周端壁(108)の開口縁部に内側環状部材(109)が装着され、前記外側環状部材(107)と前記外胴部(3)の前記端壁(19)との間が前記シール機構(105)によって封止され、前記シール機構(105)は、前記内側環状部材(109)の外側面(109a)と、前記端壁(19)の内側面(19b)と、前記外側面(109a)と前記内側面(19b)との間に挟持されたシール部材(105a)とで形成され、」との記載に改める訂正のうち、「前記」を付す訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、「前記内側環状部材(109)の外側面(109a)と、前記端壁(19)の内側面(19b)と、前記外側面(109a)と前記内側面(19b)との間に挟持されたシール部材(105a)とで形成され、」とする訂正は、「外周面(109a)」及び「内周面(19b)」との不明瞭な記載を、「外側面(109a)」及び「内側面(19b)」という明瞭な記載に改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4における「前記端壁(19)の内側面には、前記シール部材(105a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に、前記端壁(19)の内側面(19b)から前記外胴部(3)の軸方向の内側に向かって延びる周壁(110)が設けられている」点を限定する訂正は、訂正前の請求項1における「前記外胴部(3)の端壁(19)の内周面には、前記シール部材(35a)より内側であって外胴部(3)の内部に向かって延設された周壁(19a、42、110)が設けられている」との記載を、「前記端壁(19)の内側面には、前記シール部材(105a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に、前記端壁(19)の内側面(19b)から前記外胴部(3)の軸方向の内側に向かって延びる周壁(110)が設けられている」との記載に改める訂正であって、「周壁(110)」の具体的な位置を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、特許請求の範囲を減縮するものであり、かつ、明瞭でない記載を釈明するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、訂正前の請求項1、願書に添付した明細書段落【0035】及び【0036】並びに図9に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正後の請求項4に係る発明には、令和3年3月25日付け取消理由通知の「●理由1(明確性)について」及び「●理由2(サポート要件)について」で指摘した不備は存在しない。
また、他に、訂正後の請求項4に係る発明に、特許出願の際に独立して特許を受けることができないという理由は存在しない。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に適合するものである。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項5は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るためのものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、上記訂正事項2に係る訂正と同様、訂正前の請求項1、明細書段落【0027】及び図7に基づきなされた訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、上記訂正事項3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項6は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、上記訂正事項3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るためのものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、上記訂正事項3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために、上記訂正事項3と同様、願書に添付した明細書段落【0029】ないし【0031】及び図8に基づきなされた訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、上記訂正事項4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項7は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、上記訂正事項4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るためのものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、上記訂正事項4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために、上記訂正事項4と同様、願書に添付した明細書段落【0035】、【0036】及び図9に基づきなされた訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、明細書の段落【0030】に「シール機構39は、周端壁41の開口端41aの外周面41bと、端壁19の内周面19bと、外周面41bと内周面19bとの間に挟持されたシール部材39aとで形成されている。」と記載されているのを、図8の記載と一致するように、「シール機構39は、周端壁41の開口端41aの外側面41bと、端壁19の内側面19bと、外側面41bと内側面19bとの間に挟持されたシール部材39aとで形成されている。」に訂正するもので、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8は、明瞭でない記載を釈明するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8は、訂正前の明瞭でない記載を願書に添付した図8に基づき明瞭な記載に改めるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、明細書の段落【0031】に「また、端壁19の内周面19bからは、」と記載されているのを、図8の記載と一致するように、「また、端壁19の内側面19bからは、」に訂正するもので、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正事項9は、明瞭でない記載を釈明するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項9は、訂正前の明瞭でない記載を願書に添付した図8に基づき明瞭な記載に改めるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(8)訂正事項10
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、明細書の段落【0036】に「シール機構105は、内側環状部材109の外周面109aと、端壁19の内周面19bと、外周面109aと内周面19bとの間に挟持されたシール部材105aとで形成されている。周端壁108は、円板状の板材を2枚重ねて形成され、内胴投入口27の端壁を構成している。この周端壁108の内側(内胴体4の軸中心側)に内側環状部材109が端壁19に対向して固定されている。この内側環状部材109の内周面19bに対向した面に、凹溝109bが形成され、この凹溝109b内にシール部材105aが挿入されている。また、シール部材105aは、内胴体4の軸中心側、すなわち内胴投入口27に近接した位置に配置されている。また、端壁19の内周面19bからは、」と記載されているのを、図9の記載と一致するように、「シール機構105は、内側環状部材109の外側面109aと、端壁19の内側面19bと、外側面109aと内側面19bとの間に挟持されたシール部材105aとで形成されている。周端壁108は、円板状の板材を2枚重ねて形成され、内胴投入口27の端壁を構成している。この周端壁108の内側(内胴体4の軸中心側)に内側環状部材109が端壁19に対向して固定されている。この内側環状部材109の内側面19bに対向した面に、凹溝109bが形成され、この凹溝109b内にシール部材105aが挿入されている。また、シール部材105aは、内胴体4の軸中心側、すなわち内胴投入口27に近接した位置に配置されている。また、端壁19の内側面19bからは、」に訂正するもので、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項10は、訂正前の明瞭でない記載を釈明するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項10は、訂正前の明瞭でない記載を願書に添付した図9に基づき明瞭な記載に改めるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(9)訂正事項11
ア 訂正の目的について
訂正事項11は、明細書の段落【0037】に「なお、内胴体4は、外胴部3に対して、回転駆動機構5によって一方向に回転する際に、シール材105aは、端壁19の内周面19bとに常に摺動する。」と記載されているのを、図9の記載と一致するように、「なお、内胴体4は、外胴部3に対して、回転駆動機構5によって一方向に回転する際に、シール材105aは、端壁19の内側面19bとに常に摺動する。」に訂正するもので、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項11は、明瞭でない記載を釈明するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項11は、訂正前の明瞭でない記載を願書に添付した図9に基づき明瞭な記載に改めるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3及び4について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項2ないし4に係る発明(以下、「本件訂正発明2」ないし「本件訂正発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、請求項1については、本件訂正請求により削除された。

「【請求項2】
乾燥機筐体(2)内に設けられた筒状の外胴部(3)と、
この外胴部(3)の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体(4)と、
該内胴体(4)を前記外胴部(3)内で回転駆動させる回転駆動機構(5)と、
外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部(3)内に供給するとともに前記外胴部(3)の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部(6)と、を備えた乾燥機(1)であって、
前記内胴体(4)の軸方向端部と、前記外胴部(3)の軸方向端部との間にシール機構(35)が設けられ、
前記内胴体(4)の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口(27)を有し、前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し、
前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部には、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の軸方向の内側に向かって突出する環状部材(33)が周方向の全域に装着され、
前記環状部材(33)の前記端壁(19)側の開口縁部(33a)と、前記端壁(19)から外胴部(3)の軸方向の内側に向けて突出し周方向の全域に設けられた周壁(19a)と、前記開口縁部(33a)と前記周壁(19a)との間に挟持されたシール部材(35a)とで前記シール機構(35)が形成され、
前記端壁(19)の内側面において、前記シール部材(35a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に前記周壁(19a)が設けられていることを特徴とする乾燥機(1)。
【請求項3】
乾燥機筐体(2)内に設けられた筒状の外胴部(3)と、
この外胴部(3)の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体(4)と、
該内胴体(4)を前記外胴部(3)内で回転駆動させる回転駆動機構(5)と、
外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部(3)内に供給するとともに前記外胴部(3)の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部(6)と、を備えた乾燥機(1)であって、
前記内胴体(4)の軸方向端部と、前記外胴部(3)の軸方向端部との間にシール機構(39)が設けられ、
前記内胴体(4)の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口(27)を有し、前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し、
前記シール機構(39)は、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の内側に向かって突出するとともに前記内胴体(4)の周方向の全域に設けられた環状部材(37)に固定された周端壁(41)の開口端(41a)の外側面(41b)と、前記端壁(19)の内側面(19b)と、前記外側面(41b)と前記内側面(19b)との間に挟持されたシール部材(39a)とで形成され、
前記端壁(19)の内側面には、前記シール部材(39a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に、前記端壁(19)の内側面(19b)から前記外胴部(3)の軸方向の内側に向かって延びる周壁(42)が設けられていることを特徴とする乾燥機(1)。
【請求項4】
乾燥機筐体(2)内に設けられた筒状の外胴部(3)と、
この外胴部(3)の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体(4)と、
該内胴体(4)を前記外胴部(3)内で回転駆動させる回転駆動機構(5)と、
外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部(3)内に供給するとともに前記外胴部(3)の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部(6)と、を備えた乾燥機(1)であって、
前記内胴体(4)の軸方向端部と、前記外胴部(3)の軸方向端部との間にシール機構(105)が設けられ、
前記内胴体(4)の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口(27)を有し、前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し、
前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部には、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の軸方向の内側に向かって突出する外側環状部材(107)が周方向の全域に装着され、前記外側環状部材(107)は前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側に設けられ、前記内胴体投入口(27)の端壁は円板状の板材を2枚重ねて周端壁(108)が形成され、前記周端壁(108)の開口縁部に内側環状部材(109)が装着され、前記外側環状部材(107)と前記外胴部(3)の前記端壁(19)との間が前記シール機構(105)によって封止され、
前記シール機構(105)は、前記内側環状部材(109)の外側面(109a)と、前記端壁(19)の内側面(19b)と、前記外側面(109a)と前記内側面(19b)との間に挟持されたシール部材(105a)とで形成され、
前記端壁(19)の内側面には、前記シール部材(105a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に、前記端壁(19)の内側面(19b)から前記外胴部(3)の軸方向の内側に向かって延びる周壁(110)が設けられていることを特徴とする乾燥機(1)。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
訂正前の請求項1ないし3に係る特許に対して、当審が令和3年11月17日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

理由1.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

理由2.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で発明の詳細な説明に記載したものではないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。



●理由1(明確性)について
請求項1ないし3に係る発明は明確でない。

●理由2(サポート要件)について
請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

第5 当審の判断
取消理由(決定の予告)において通知した、理由1(明確性)及び理由2(サポート要件)については、本件訂正請求が認められ、請求項1に係る発明は削除され、請求項2及び3に係る発明は、それぞれ本件訂正発明2及び3となったことにより解消した。
したがって、本件訂正発明2及び3は明確であり、発明の詳細な説明に記載したものである。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
本件の請求項1及び2に係る発明は、甲第1ないし3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件の請求項3に係る発明は、甲第1ないし4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

<証拠一覧>
甲第1号証:米国特許第4854054号明細書
甲第2号証:韓国登録特許第10−0625493号公報
甲第3号証:実願昭57−77362号(実開昭58−179099号)のマイクロフィルム
甲第4号証:独国特許出願公開第102005009230号明細書

2 甲号証に記載された発明、事項等
(1)甲第1号証
甲第1号証(以下、「甲1」という。)には、「FABRIC DRYYER AIRFLOW SYSTEM」(訳:布地乾燥の空気流システム)に関して、以下の記載がある(下線は当審が付与した。以下同様。)。

ア 「DESCRIPTION OF A PREFERRED EMBODIMENT
Referring now to FIG. 1 in particular there is shown the overall construction of a fabric dryer 10 including a cabinet assembly comprising a side wall wrapper 11 having generally vertical opposite side panels 12 and a rear panel 13. The side wall wrapper 11 is supported on a base 14 which in turn is supported on a horizontal surface through a plurality of adjustable feet 15. The cabinet assembly further comprises a front panel 16 and a top cover 19 supported on the side wall wrapper 11. The top cover 19 includes an upwardly extending housing 20 for accommodating various controls for the fabric dryer 10.」(2欄24ないし38行)

「好ましい実施形態の説明
ここで特に図1を参照すると、概ね垂直な対向する側板12と後部パネル13を有する側壁ラッパー11からなるキャビネット組立体を含む布地乾燥機10の全体構造が示されている。側壁ラッパー11は、ベース14上に支持され、このベースは、複数の調節可能な脚15を介して水平面上に支持される。キャビネット組立体は、さらに、前部パネル16と、側壁ラッパー11に支持された上部カバー19とを備える。上部カバー19は、布地乾燥機10のための様々な制御装置を収容するための上方に延びるハウジング20を含む。」

イ 「The front panel 16 has a generally central access opening 21 and an access door 22 is hinged on the front panel 16 for operation between open and closed positions relative to the access opening 21. The door 22 includes an outer panel 23 substantially flush with the front panel 16 and an inner panel or door liner 24 having a projecting portion that extends rearwardly through the access opening 21. A seal 25 supported by the inner panel 24 extends around the rearwardly projecting portion of the inner panel 24 for engagement with a recessed portion 26 of the front panel adjacent the access opening 21 to effectively provide an air seal at the access opening 21.」(2欄39ないし51行)

「前部パネル16は、概ね中央のアクセス開口部21を有し、アクセスドア22は、アクセス開口部21に対して開位置と閉位置との間で動作するように前部パネル16にヒンジで固定されている。ドア22は、前部パネル16と実質的に同一平面のアウターパネル23と、アクセス開口部21を通って後方に延びる突出部を有するインナーパネル又はドアライナ24とを含む。インナーパネル24によって支持されたシール25は、アクセス開口部21に隣接するフロントパネルの凹部26と係合するために、インナーパネル24の後方に突出した部分の周りに延びて、アクセス開口部21において効果的に空気シールを提供する。」

ウ 「Disposed within the cabinet assembly is a pair of spaced-apart generally vertical front and rear bulkheads 29 and 30. The rear bulkhead 30 is fixed to the side wall wrapper 11 by a pair of brackets such as the bracket 31 connected to the rear panel 13. The front bulkhead 29 is similarly connected to the front flanges of the side panels 12.」(2欄52ないし58行)

「キャビネット組立体内に配置されるのは、間隔を空けて配置された一対の概ね垂直な前部隔壁29および後部隔壁30である。後部隔壁30は、後部パネル13に接続されたブラケット31のような一対のブラケットによって側壁ラッパー11に固定される。前部隔壁29は、同様に、側板12の前フランジに連結されている。」

エ 「A generally cylindrical peripheral side wall 32 is disposed for rotation between the stationary bulkheads 29 and 30. At the front and at the rear of the peripheral side wall 32 there are inwardly turned flanges comprising relatively short end walls 33 and 34 juxtaposed the front and rear bulkheads 29 and 30 and cooperable with the peripheral side wall 32 and bulkheads 29 and 30 to effectively define a fabric drying chamber 35. A plurality of baffle members 36 are fixed to the peripheral side wall 32 and extend radially into the drying chamber 35 for assisting in the movement of fabrics therewithin during rotation of the peripheral side wall 32.」(2欄59行ないし3欄2行)

「固定された前部隔壁19及び後部隔壁30の間には、概ね円筒状の周辺側壁32が回転可能に配置されている。周辺側壁32の前部及び後部には、前部隔壁29及び後部隔壁30に並置され、周辺側壁32及び前部隔壁29及び後部隔壁30と協働可能な比較的短い端壁33、34からなる内向きのフランジがあり、布地乾燥室35を有効に画定している。複数のバッフル部材36が周辺側壁32に固定され、周辺側壁32の回転中にその中での布地の移動を補助するために乾燥室35内に半径方向に延在している。」

オ 「The front and rear bulkheads 29 and 30 include generally annular recesses 39 and 40 facing the short end walls 33 and 34, respectively, of the peripheral side wall 32. Seals 41 and 42 are fixed to the bulkheads 29 and 30 in the recesses 39 and 40 and are engageable with the facing short end walls 33 and 34 to provide an air seal at the ends of the fabric drying chamber 35.」(3欄3ないし9行)

「前部隔壁29および後部隔壁30は、周辺側壁32の短壁33、34にそれぞれ面する概ね環状の凹部39、40を含んでいる。シール41、42は、凹部39、40内の隔壁29、30に固定され、布地乾燥室35の端部で空気シールを提供するために、対面する短壁33、34に係合可能である。」

カ 「Referring to FIGS. 1 and 3, the seal 41, for example, disposed between the stationary bulkhead 29 and the rotatable peripheral side wall 32 is shown as a U-shaped or channel-shaped felt member having a pair of generally outwardly extending legs 45 and 46 connected to an intermediate arcuate portion. The leg 45 is fixed, as with adhesive, to the stationary bulkhead 29 in the recess 39 so that the intermediate arcuate portion conforms generally to the corner radius 49 and effectively biases the other leg 46 into engagement with the short end wall 33 of the peripheral side wall 32. The felt may be coated on one side with an antifriction layer such as polytetrafluoroethylene to provide a smooth, more durable, and lower friction running surface for engagement with the end wall 33.」(3欄10ないし24行)

「図1および図3を参照すると、例えば、固定隔壁29と回転可能な周辺側壁32との間に配置されるシール41は、中間円弧状部分に接続された一対の概ね外側に延びる脚45、46を有するU形またはチャネル形のフェルト部材として示されている。脚部45は、中間円弧状部分がコーナー半径49に概ね適合し、他方の脚部46を周辺側壁32の端壁33との係合に有効に偏らせるように、凹部39内で固定隔壁29に接着剤で固定される。フェルトは、端壁33との係合のために滑らかで、より耐久性があり、低摩擦の走行面を提供するために、ポリテトラフルオロエチレンなどの抗摩擦層で片面を被覆してもよい。」

キ 「FIGS. 1, 2 and 4 best show that the front bulkhead 29 includes a collar 43 that is forwardly extending as in FIG. 1, generally oval shaped as in FIG. 2 and is substantially axially aligned with the access opening 21 in the front panel 16. As best shown in FIG. 1, the collar 43 is sealed to the rear of the front panel 16 by gasket 44. The collar 43 thus is generally cooperable with the access opening 21 to form a tunnel-like passageway 50 extending horizontally between the front panel 16 and the drying chamber 35.」(3欄25ないし34行)

「図1、図2および図4は、前部隔壁29が、図1のように前方に延び、図2のように概ね楕円形であり、前部パネル16のアクセス開口21と実質的に軸方向に整列しているカラー43を含むことを最もよく示している。図1に最もよく示されているように、カラー43は、ガスケット44によって前部パネル16の後部に密封されている。従って、カラー43は、アクセス開口部21と概ね協働して、前面パネル16と乾燥室35との間に水平方向に延びるトンネル状の通路50を形成している。」

ク 「As further shown in FIG. 1, the rear bulkhead 30 includes an opening 51 for receiving a perforate panel 57 formed integrally with the air duct 59 and through which heated airflow is directed into the drying chamber 35 as will be further described.」(3欄35ないし39行)

「図1にさらに示すように、後部隔壁30は、空気ダクト59と一体的に形成された有孔パネル57を受け入れるための開口部51を含み、それを通してさらに説明するように加熱空気流が乾燥室35に向けられる。」

ケ 「The peripheral side wall 32 is supported on a generally horizontal axis by a system including a pair of rollers 52 supported on brackets 53 fixed to the rear bulkhead 30 and by a pair of slide bearings (not shown) supported by brackets fixed to the front bulkhead 29 and engageable with annular surface 58. The peripheral side wall 32 could be supported entirely on rollers or entirely on slides as conditions warrant.
As further shown in FIG. 1, the peripheral side wall 32 is rotated by a belt 54 encompassing the periphery thereof and driven by a motor 55 mounted on the base 14.」(3欄40ないし51行)

「周辺側壁32は、後部隔壁30に固定されたブラケット53に支持された一対のローラ52と、前部隔壁29に固定され環状面58と係合可能なブラケットに支持された一対のスライドベアリング(図示せず)を含むシステムにより概ね水平軸上に支持されている。周辺側壁32は、条件に応じて、全体がローラで支持されることも、全体がスライドで支持されることも可能である。
図1にさらに示すように、周辺側壁32は、その周辺を包含するベルト54によって回転され、ベース14に取り付けられたモータ55によって駆動される。」

コ 「As best shown in FIGS. 1 and 3, the airflow system for the fabric dryer 10 includes a heater housing 56 supported adjacent the base 14 and into which air is drawn from the immediate surroundings for heating prior to movement into the drying chamber 35. The heater housing 56 may accommodate either a gas or electric heating unit. The heater housing 56 is connected to a generally upwardly extending rear air duct 59 which conducts heated air from the heater housing 56 through the perforate panel 57 and into the drying chamber 35.
The heated air flows from the drying chamber 35 through a filter assembly 60 into the front air duct 61. The filter assembly 60 includes a lint filter 62 disposed within the front air duct 61 for removing lint particles from the air flowing out of the drying chamber 35 into the front air duct 61.」(3欄52ないし63行)

「図1及び図3に最もよく示されているように、布地乾燥機10のための空気流システムは、ベース14に隣接して支持され、乾燥室35への移動に先立って加熱のためにすぐ周囲から空気が吸い込まれるヒーターハウジング56を含んでいる。ヒーターハウジング56は、ガスまたは電気加熱ユニットのいずれかを収容することができる。ヒーターハウジング56は、一般に上方に延びる後部空気ダクト59に接続されており、このダクトは、ヒーターハウジング56から穿孔パネル57を通って乾燥チャンバー35内に加熱された空気を導通させる。
加熱された空気は、乾燥チャンバ35からフィルタアセンブリ60を通って前部空気ダクト61に流れる。フィルタアセンブリ60は、乾燥チャンバ35から前部空気ダクト61に流れ出る空気からリント粒子を除去するために、前部空気ダクト61内に配置されたリントフィルタ62を含む。」

サ 「The air is drawn from the front air duct 61 into a blower assembly 63 from which it is forced through a rearwardly extending lower air duct 64 to atmosphere. The blower assembly 63 includes an impeller driven by the motor 55 mounted adjacent the blower assembly 63 on the base 14. The general airflow pattern within the fabric dryer 10 is shown by the dashed and solid line arrows 67 and 68. The dashed arrows 67 depict room temperature air being drawn into the heater housing 56, through the rear air duct 59 and into the drying chamber 35. The solid arrows 68 show heated air passing through the drying chamber 35, into the filter assembly 60, through the blower assembly 63 and through the lower air duct 64 to atmosphere.」(4欄1ないし14行)

「空気は、前部空気ダクト61から送風機アセンブリ63に吸い込まれ、そこから後方に延びる下部空気ダクト64を通って大気に強制的に放出される。送風機アセンブリ63は、ベース14上の送風機アセンブリ63に隣接して取り付けられたモータ55によって駆動されるインペラを含む。布地乾燥機10内の一般的な気流パターンは、破線矢印67及び実線矢印68によって示されている。破線矢印67は、室温の空気がヒーターハウジング56に引き込まれ、後部空気ダクト59を通り、乾燥室35に入ることを描いている。実線矢印68は、加熱された空気が乾燥室25を通り、フィルタアセンブリ60に入り、ブロワアセンブリ63を通り、下部空気ダクト64を通って大気中に出て行く様子を示している。」

シ 「Also, the clothing will be constantly urged away from the front bulkhead 29 and into the drying chamber 35.」(5欄54ないし56行)

「また、衣類は常に前面隔壁29から取り出され、乾燥室35に入れられる。」













チ 上記コ 及びサ 並びにス の図示内容から、加熱された空気が後部隔壁30側から布地乾燥室35に導かれ、前部隔壁29側から前部空気ダクト61に流れ大気に排出される、といえる。

ツ 上記ソ の図示内容から、凹部39の径方向内側の部分は、周辺側壁32の軸方向の内側に向かって突出していることが看取できる。

上記記載事項、認定事項及び図面の図示内容から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

〔甲1発明〕
「キャビネット組立体内の固定された前部隔壁29と後部隔壁30との間で回転するように配置され、布地乾燥室35を画定する概ね円筒状の周辺側壁32と、
周辺側壁32を回転駆動するモータ55と、
加熱された空気が後部隔壁30側から布地乾燥室35に導かれ、前部隔壁29側から前部空気ダクト61に流れ大気に排出される、布地乾燥機10であって、
前部隔壁29のカラー43が、キャビネット組立体のフロントパネル16のアクセス開口部21と協働してトンネル状通路50を形成し、
前部隔壁29及び後部隔壁30は、周辺側壁32の短い端部壁33、34に面するほぼ環状の凹部39、40を含み、シール41、42が、凹部39、40内に固定され、対向する短い端部壁33、34と係合可能であり、乾燥室35の端部に空気シールを提供し、
凹部39の径方向内側の部分は、周辺側壁32の軸方向の内側に向かって突出している、
布地乾燥機10。」

(2)甲第2号証
甲2号証(以下、「甲2」という。)には、以下の記載がある。



(3ページ25ないし28行)

ここに図示されたところのように、本発明による衣類乾燥機はおおよそ箱形状で成り立って外見を形成するハウジング(1)と、前記ハウジング(1)の内部に設置されて乾燥する洗濯物が入れられる回転ドラム(2)と、前記回転ドラム(2)を回転させて洗濯物が速かに乾燥するようにする回転装置(3)と、外部空気が回転ドラム(2)を通じて循環されるようにする吸気ダクト(7)及び排気ダクト(8)を具備する。



(4ページ1ないし5行)

吸気ダクト(7)で外部空気が流入されるようにするためにハウジング(1)の後面板(1a)には吸気ホール(未図示)が形成されており、吸気ダクト(7)から回転ドラム(2)で高温の空気が流入されるようにするために後面パネル(10)には連通ホール(10a)が形成されている。
排気ダクト(8)はその入口部が前面パネル(9)に結合されて、その出口部が開放された状態でハウジング(1)の外部で延長されて形成されて、この排気ダクト(8)の内部には排気ファン(12)が配置されて空気がハウジング(1)の外部で吸気ダクト(7)を通じて回転ドラム(2)で流入された後、排気ダクト(8)を経てまたハウジング(1)の外部で強制排出されるようにする。



(4ページ35ないし36行)

また、回転ドラム(2)をシーリングするために両端部の円周上に設置されるフェルト(14)中後面パネル(10)と結合されるフェルト(14)が前面パネル(9)を組立てながら折れるか乾かして入って行く現象を防止することができるようになる。




オ 上記エ の図示内容から、フェルト14は、回転ドラム2の前面パネル9側の内周面と、前面パネル9の、回転ドラム2の軸方向の内側に向かって突出する部分の外周面との間に設けられている、といえる。

上記記載事項、認定事項及び図面の図示内容から、甲2には、次の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されている。

〔甲2記載事項〕
「ハウジング1の内部に設置されて乾燥する洗濯物が入れられる回転ドラム2と、
回転ドラム2の回転装置3と、
回転ドラム2内に、背面パネル10の連通ホール10aから高温の空気が流入し、排気ダクト8から流出する衣類乾燥機であって、
回転ドラム2をシールするために、回転ドラム2と前面パネル9及び背面パネル10との間に、フェルト14が設けられており、
フェルト14は、回転ドラム2の前面パネル9側の内周面と、前面パネル9の、回転ドラム2の軸方向の内側に向かって突出する部分の外周面との間に設けられている、
衣類乾燥機。」

(3)甲第3号証
甲第3号証(以下、「甲3」という。)には、以下の記載がある。

ア 「図中先ず1は外箱であり、前面部に被乾燥物出入用の開口部2を有すると共に該開口部2を開閉する蓋3を有し、そしてその下方にはフイルタ4を張設した吸気口5を有する。尚、上記扉3は先端部が開口部2内に位置する凸部6を有すると共に、該凸部6より外側の部分に排気口7を有し、該排気口7にはフイルタ8を張設している。而して9は外箱1内に配設したドラムで、前部がドラム受け10によって外箱1に支承されると共にパツキン11によって外箱1との間がシールされている。一方、後部は多数の通気孔12が穿設されると共に軸13が突設され、その軸13を、外箱1の後部両側壁間に横架した支持板14に軸受15によって支承せしめている。又、上記支持板14には拡風体16を取着している。ここで、この拡風体16は詳細には弾性材例えば構成樹脂によって周囲が二重壁を成す扁平箱状に形成したもので、その周縁部には上記二重の周囲壁のうちのそと壁16aに連ねてひれ部17を一体形成しており、そしてその二重の周囲壁間にはパツキン18の基部を収めて固着し、他の部分をひれ部17に添わせる形態で該パッキン18をそのひれ部17の弾性的押圧力により前記ドラム9特にこれの後端面の中で外周部に近い箇所に圧接させている。」(明細書3ページ9行ないし4ページ13行)

イ 「従つて上記構成のものの場合、ドラム9内に図示しない被乾燥物を容れて運転を開始させると、ヒータ20が発熱し、同時にモータ22が起動してベルト24を介しドラム9を回転させ、且つフアン21を回転させる。而してフアン21の回転により、外箱1内には機外の空気が吸気口5からフイルタ4を通じて吸入され、更にその吸入された空気はケーシング19内に至つてヒータ20により加熱され熱風と化して拡風体16内に至る。そしてその拡風体16内から各通気孔12を通じてドラム9内に至り、此処で該ドラム9の回転により攪拌中にある被乾燥物と接してその湿気を奪い、その開口部2と凸部6との間からフイルタ8を通じ排気口7から機外へと排出される。」(明細書4ページ20行ないし5ページ13行)



上記記載事項及び図面の図示内容から、甲3には、次の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されている。

〔甲3記載事項〕
「外箱1内に配設された被乾燥物が入れられるドラム9と
ドラム9を回転させるモータ22と、
熱風がドラム9内に至り、機外に排出される乾燥機であって、
ドラム9はパッキン11によって、外箱1との間がシールされている、
乾燥機。」

(4)甲第4号証
甲第4号証(以下、「甲4」という。)には、以下の記載がある。なお、ウムラウト記号は省略し、エスツェットはssで代用した。

ア 「[0032] Anders als bei einem Haushalt-Waschetrockner ist bei diesem Trockner die drehbare Trommel 1 nicht an ihrer Ruckwand fliegend gelagert, sondern ruht mit am Trommelmantel 2 angebrachten Laufringen 3 auf sog. Laufrollen 4 . Die Laufrollen 4 sind als durch einen hier nicht gezeigten Elektromotor 5 (gegebenenfalls reversierend) antreibbare Reibrader ausgefuhrt. Uber die Laufrollen 4 wird das gesamte Gewicht der Trommel 1 und deren Ladung in den nicht gezeigten stationaren Anlagenteil abgeleitet. Eine derartige Lagerung lasst relativ grosse Toleranzen fur die Abmessungen bzw. die Genauigkeit des Trommelmantels 2 zu, sowie relativ grosse durch Warmedehnungen bedingte Axialbewegungen des Trommelmantels. Ausserdem lasst eine solche Lagerung die Stirnseiten der Trommel frei zuganglich, so dass - wie hier - an jeder Stirnseite eine Zugangsoffnung 9 vorgesehen werden kann (zweite Zugangsoffnung ist verdeckt und daher nicht gezeigt), namlich eine zum Beladen und die andere zum Entladen, so dass der Trockner im Durchlaufverfahren betrieben werden kann.」

「このタンブル乾燥機の回転可能なドラム1は、家庭用タンブル乾燥機とは異なり、その後壁に片持ち梁がなく、ドラムシェル2に取り付けられたレース3がローラ4上に載っている。ローラ4は摩擦輪であり、図示しない電動モータ5(必要に応じて逆転)で駆動することが可能である。ドラム1の全重量とその荷重は、ローラ4を介して、図示しない固定部に伝達される。このような軸受配置は、ドラムシェル2の寸法または精度に対する比較的大きな公差を許容し、また、熱膨張によるドラムシェルの比較的大きな軸方向移動を許容するものである。さらに、このような軸受配置は、ドラムの端面を自由にアクセスできるようにし、このように、アクセス開口部9を各端面に設けることができ(第2のアクセス開口部は覆われているので図示せず)、すなわち一方は投入用、他方は排出用として、乾燥機を連続プロセスで運転できるようにする。」

イ 「[0033] Der Trommelmantel 2 kann mit vorzugsweise lochblechartig gestalteten weiteren Offnungen 7 versehen sein, uber die dem Trommelinneren Luft zugefuhrt und/oder entzogen werden kann und die hier ebenfalls als Zugangsoffnungen bezeichnet werden. Ublicherweise bildet das stationare Gehause mindestens zwei entsprechend abgedichtet an der Trommel anliegende Abschnitte, die hier nicht dargestellt sind - einen, in dem uber die momentan dort befindlichen Offnungen 6 Luft zugefuhrt werden kann, und einen weiteren, in dem gleichzeitig uber die gerade in diesem Bereich befindlichen Offnungen 6 Luft abgefuhrt werden kann. Bei manchen Ausfuhrungen solcher Trockner erfolgt die Luftzu- und -abfuhr auch uber entsprechende Offnungen in den Zugangsklappen. Der hier nicht gezeigte stationare Anlagenteil des Trockners, d. h. der Anlagenteil, dessen Grundbestandteil i. d. R. der stationare Maschinenrahmen bildet, umfasst alle wesentlichen zum Betrieb des Trockners erforderlichen Baugruppen, wie das Geblase, die Luftleiteinrichtungen, den Lufterhitzer, den optionalen Luftwarmetauscher, ggf. den Feuchtigkeits-Kondensator und gegebenenfalls die gesamte Maschinensteuerung sowie das die Anlage umgebende Gehause samt Isolierung einschliesslich der fur das Verschliessen der Zugangsoffnungen der Trommel vorgesehenen Zugangsklappen - wobei der Begriff Zugangsklappen im weitesten Sinne verstanden wird und auch schwenkbare Turen sowie komplett entfernbare Verschlussdeckel und dgl. umfasst.」

「ドラムシェル2は、好ましくはパンチングシートメタルデザインの開口部7をさらに備えることができ、それを介してドラムの内部に空気を供給および/または内部から引き出すことができ、それはまたここではアクセス開口部と呼ばれる。通常、固定ハウジングは、ドラムに対して対応するように密閉された状態で横たわる少なくとも2つの部分、ここでは示していないが、1つは現在そこに位置する開口部6を介して空気を供給できる部分、もう1つは現在この部分に位置する開口部6を介して空気を同時に除去できる部分を形成している。このようなドライヤーの設計では、アクセスフラップに設けられた開口部からも空気の供給と除去が行われる場合がある。ここに示されていない乾燥機の固定部分、すなわち、基本構成要素が通常固定機械フレームである乾燥機の部分は、ファン、空気伝導装置、空気加熱器、オプションの空気熱交換器、必要に応じて水分凝縮器など、乾燥機の運転に必要なすべての必須アセンブリで構成されている。ドラムのアクセス開口部を閉じるために設けられたアクセスフラップを含み、システムを囲むハウジングおよび断熱材と同様に、該当する場合は、水分凝縮器、および該当する場合は、機械制御システム全体を含む。」

ウ 「[0037] Wie man am besten an Hand der Fig. 2a erkennen kann, besteht zwischen dem Rand jeder dieser Zugangsoffnungen 9 und der ihnen zugeordneten, zum stationaren Anlagenteil gehorenden (also nicht mitrotierenden) Zugangsklappe 8, 8’ ein Spalt S1 mit einer variablen Spalthohe H(x), die dem jeweils kleinsten ortlichen Abstand zwischen der Tur 8 und dem Rand der Zugangsoffnung 9 entspricht, der hier durch den Gleitring 19 verkorpert wird. Wie insbesondere die Fig. 2 zeigt, ist jedem Spalt S1 eine als Kreisring gestaltete Filzscheibe 10 zugeordnet, die das erste Dichtungsbauteil 10 der Dichtung darstellt. Nachfolgend sei stellvertretend fur den Begriff “erstes Dichtungsbauteil” der besseren Anschaulichkeit halber jeweils von “der Filzscheibe 10” die Rede. Die aus Filz (oder anderem geeignetem Material) bestehende Scheibe kann profiliiert sein und ist dann ggf. nur noch im Wesentlichen eine Scheibe. Aus Kostengrunden wird jedoch bevorzugt auf eine Profiliierung verzichtet.」

「図2aから最もよく分かるように、これらのアクセス開口部9の各々の縁と、それらに関連し、システムの静止部分に属する(すなわち回転しない)アクセスドア8、8’との間には、可変ギャップ高さH(x)を有するギャップS1が存在し、これはドア8とスライドリング19によってここで具現されているアクセス開口部9の縁との最小の局所距離と対応している。特に図2に示すように、各ギャップS1は、円形リングとして設計されたフェルトディスク10と関連しており、これはシールの第1シール部品10を表している。以下では、分かりやすくするために、「第1シール部材」という用語を「フェルトディスク10」と呼ぶことにする。フェルトディスク(または他の適切な材料)は、プロファイルすることができ、その後、本質的にディスクだけである可能性がある。しかし、コスト面を考慮すると、ディスクのプロファイル化は行わない方が望ましい。」

エ 「[0038] Im Bereich ihres grossten Durchmessers ist die Filzscheibe 10 am stationaren Anlagenteil 11 festgelegt, vorzugsweise unter Zwischenschaltung eines starren Stutzringes 12 angeschraubt. Die Verschraubung ist in dem Bereich angeordnet, der bei geoffneter Zugangsklappe 8, 8' frei zuganglich ist, so dass die Filzscheibe 10 einfach und schnell an- und abmontiert werden kann. Die Filzscheibe 10 schleift in einem ersten Funktionsbereich B1 an einer Gleitflache G1. Diese wird durch einen Gleitkorper 19 bereitgestellt, der die Zugangsoffnung 9 der Trommel einfasst. Der Gleitkorper 19 ist aus Grunden der Stabilitat unmittelbar kraftschlussig mit dem Laufring 3 und/oder mit dem durch den Laufring 3 verstarkten Bereich der Trommel 1 verbunden, oder sogar einstuckig mit dem Laufring hergestellt. Er kann so den auftretenden Belastungen gut standhalten. Die Filzscheibe 10 wird bei geschlossener Zugangsklappe 8, 8' durch das zweite Dichtungsbauteil 14, das hier in der sehr einfachen Form eines rechteckigen Rings aus geschlossenporigem Schaumstoff ausgefuhrt ist, welcher an der Zugangsklappe 8, 8' angeklebt oder angeknopft ist, an die Gleitflache G1 angepresst. Auf diese Art und Weise wird der Filzscheibe 10 die fur eine sichere Abdichtung des Spalts S1 erforderliche Anpressung an die Gleitflache G1 vermittelt. Die am besten in Fig. 2 visualisierte Pressung des zweiten Dichtungsbauteils 14 ist durch entsprechende Materialwahl und Dimensionierung des zweiten Dichtungsbauteils 14 in einem weiten Bereich frei einstellbar. Der hier das zweite Dichtungsbauteil 14 bildende Schaumstoffring ist deutlich kompressibler als die Filzscheibe 10 . Er wirkt als Feder mit einem grossen nutzbaren Federweg, deren Federkonstante vorzugsweise so ausgewahlt ist, das die Pressung der Filzscheibe 10 gegenuber der Gleitflache G1 stets annahernd konstant bleibt, auch wenn es z. B. durch Warmedehnungen bedingt zu einer relativ grossen Verlagerung der Gleitflache G1 in axialer Richtung kommt. Das zweite Dichtungsbauteil 14 fungiert als so genannte Nebenabdichtung. D. h. es dichtet den kleinen oder nur vergleichsweise geringen Relativbewegungen ausgesetzten Spalt hinter der Filzscheibe 10 ab (vom Trommelinneren aus gesehen).」

「その最大径の領域において、フェルトディスク10は、静止ハウジング11に、好ましくは剛性の支持リング12を介在させてねじ止め固定される。アクセスフラップ8、8’が開いているときに自由にアクセスできる領域にネジ接続部があるので、フェルトワッシャー10を簡単かつ迅速に装着・取り外すことができる。フェルトディスク10は、第1の機能領域B1において、摺動面G1と擦れ合う。これは、ドラムのアクセス開口部9を囲むスライド体19によって提供される。安定性の理由から、摺動体19は、レース3および/またはレース3によって補強されたドラム1の領域に直接摩擦的に接続され、あるいはレースと一体的に製造されてもいる。そのため、発生する負荷にしっかりと耐えることができる。アクセスフラップ8、8’が閉じられると、フェルトワッシャー10は、ここでは、アクセスフラップ8、8’に接着またはボタン止めされている第2のシール部材14によって摺動面G1に対して押圧される。このようにして、フェルトワッシャ10には、隙間S1を確実にシールするために必要な摺動面G1に対する接触圧が付与される。図2に最もよく示されているように、第2のシール部品14の圧縮性は、第2のシール部品14の材料と寸法を適切に選択することによって、広い範囲にわたって自由に調整することができる。ここで第2のシール部材14を形成する発泡体リングは、フェルトワッシャー10よりも明らかに圧縮性が高い。これは、使用可能な変位量が大きいばねとして作用し、そのばね定数は、例えば熱膨張により摺動面G1に比較的大きな変位があっても、摺動面G1に対するフェルトワッシャ10の圧力が常に略一定となるように選択することが好ましい。第2のシール部品14は、いわゆる二次封止として機能する。つまり、フェルトワッシャ14の裏側(ドラムの内側から見て)の小さな隙間や、比較的小さな相対移動にしかさらされない隙間を密閉するのである。」

オ 「[0047] Diese weitere Abdichtung ist von Bedeutung, wenn, wie hier in Fig. 1a gezeigt, dem Trommelinneren von aussen, also vom stationaren Anlagenteil her, Luft zugefuhrt und/oder entzogen wird. Zu diesem Zweck ist der Trommelmantel 2 zumindest in einem Umfangsbereich rundum mit Offnungen 7 (vorzugsweise in Form einer Lochung) versehen, so wie insbes. in Fig. 1 angedeutet. Gleichzeitig ist der stationare Gehauseteil 11 so gestaltet, dass er Abschnitte 11u besitzt, die den Aussenumfang der Trommel bereichsweise (zum Zwecke geeigneter Abschirmung nach aussen) umschliessen. Zwischen diesen Abschnitten 11u bleibt mindestens ein schachtartiger Abschnitt LE frei. Uber diesen kann durch die Lochung des Trommelmantels 2 hindurch Luft in das Innere der Trommel zugefuhrt werden. Zwischen den Abschnitten 11u bleibt (mindestens) ein schachtartiger Abschnitt LA frei. Uber diesen kann durch die Lochung des Trommelmantels 2 hindurch Luft aus der Trommel abgefuhrt werden.」

「この図1aに示すように、ドラムの内部に外部から、すなわちシステムの静止部分から空気が供給され、及び/又は抽出される場合、このさらなる密閉が重要である。この目的のために、ドラムシェル2は、特に図1に示されるように、少なくとも1つの周方向領域の全周に開口部7(好ましくは穿孔の形態で)を備えている。同時に、静止ハウジング部11は、特定の領域でドラムの外周を囲む部分11uを有するように設計されている(外部からの好適な遮蔽のため)。これらのセクション11uの間には、少なくとも1つのシャフト状セクションLEが自由な状態で残っている。この部分を介して、ドラムシェル2の穿孔からドラムの内部に空気を供給することができます。セクション11uの間には、(少なくとも)1つのシャフト状セクションLAがフリーな状態で残っている。この部分を介して、ドラムシェル2の穿孔を通して、ドラムから空気を排出することができる。」






ク 上記キ の図示内容から、アクセスフラップ8の、第2の封止部材14よりも径方向内側に、回転ドラム1の軸方向の内側に向けて突出する部材が設けられていることが看取できる。

上記記載事項及び図面の図示内容から、甲4には、次の事項(以下、「甲4記載事項」という。)が記載されている。

〔甲4記載事項〕
「静止ハウジング11内に設けられた回転ドラム1と、
回転ドラム1の外周を一定の領域で囲う部分11uと、
回転ドラム1を回転させる電動モータ5と、
回転ドラム1内に空気を供給、排出する手段とを有する乾燥機であって、
フェルトディスク10が、静止ハウジング11にねじ止めされ、回転ドラム1のアクセス開口部9を囲む摺動体19が、回転ドラム1のドラムシェル2に取り付けられたレース3に連結され、
アクセスフラップ8が閉じられると、フェルトディスク10が第2の封止部材14と摺動体19の摺動面G1に押し付けられることでアクセスフラップ8と静止ハウジング11との間の隙間S1をシールし、
アクセスフラップ8の、第2の封止部材14よりも径方向内側に、回転ドラム1の軸方向の内側に向けて突出する部材が設けられている、
乾燥機。」

3 当審の判断
(1)本件訂正発明2について
本件訂正発明2と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「キャビネット組立体」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件訂正発明2の「乾燥機筐体(2)」に相当し、以下同様に、「周辺側壁32」は「内胴体(4)」に、「モータ55」は「回転駆動機構(5)」に、「加熱された空気」は「外気を取り込んで加熱した乾燥風」及び「乾燥風」に、それぞれ相当する。
甲1発明における「加熱された空気が後部隔壁30の開口部51を通って乾燥室35に導かれ、前部隔壁29側から前部空気ダクト61に流れ大気に排出される」に関して、加熱された空気を供給し、外方に排出する供給・排出部を備えることは技術常識から自明である。よって、甲1発明における「加熱された空気が後部隔壁30の開口部51を通って乾燥室35に導かれ、前部隔壁29側から前部空気ダクト61に流れ大気に排出される」態様と、本件訂正発明2における「外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部(3)内に供給するとともに前記外胴部(3)の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部(6)」を備える態様とは、「外気を取り込んで加熱した乾燥風を供給するとともに、外方に排出する乾燥風供給・排出部」を備える態様という限りにおいて一致している。
甲1発明における「前部隔壁29のカラー43が、キャビネット組立体のフロントパネル16のアクセス開口部21と協働してトンネル状通路50を形成し」に関して、上記2 (1)キ 及びシ から、前部隔壁29には、被乾燥物が投入される開口が形成されているといえる。
よって、甲1発明における「前部隔壁29のカラー43が、キャビネット組立体のフロントパネル16のアクセス開口部21と協働してトンネル状通路50を形成し」と、本件訂正発明2における「前記内胴体(4)の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口(27)を有し、前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し」とは、「前記内胴体の軸方向端部に、被乾燥物が投入される開口が形成される壁を有し」という限りにおいて一致している。
甲1発明における「前部隔壁29及び後部隔壁30は、周辺側壁32の短い端部壁33、34に面するほぼ環状の凹部39、40を含み、シール41、42が、凹部39、40内に固定され、対向する短い端部壁33、34と係合可能であり、乾燥室35の端部に空気シールを提供し」と、本件訂正発明2における「前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部には、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の軸方向の内側に向かって突出する環状部材(33)が周方向の全域に装着され、
前記環状部材(33)の前記端壁(19)側の開口縁部(33a)と、前記端壁(19)から外胴部(3)の軸方向の内側に向けて突出し周方向の全域に設けられた周壁(19a)と、前記開口縁部(33a)と前記周壁(19a)との間に挟持されたシール部材(35a)とで前記シール機構(35)が形成され、」とは、「前記内胴体の軸方向端部にシール機構が設けられ」という限りにおいて一致している。
甲1発明における「凹部39の径方向内側の部分は、周辺側壁32の軸方向の内側に向かって突出している」と、本件訂正発明2における「前記端壁(19)の内側面において、前記シール部材(35a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に前記周壁(19a)が設けられている」とは、「前記壁の内側面において、前記シール機構より径方向の内側に軸方向の内側に向けて突出した部分が設けられている」という限りにおいて一致している。
よって、本件訂正発明2と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。

〔一致点〕
「乾燥機筐体内に設けられ、回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体と、
該内胴体を回転駆動させる回転駆動機構と、
外気を取り込んで加熱した乾燥風を供給するとともに外方に排出する乾燥風供給・排出部と、を備えた乾燥機であって、
前記内胴体の軸方向端部にシール機構が設けられ、
前記内胴体の軸方向端部に、被乾燥物が投入される開口が形成される壁を有し、
前記壁の内側面において、前記シール機構より径方向の内側に軸方向の内側に向けて突出した部分が設けられている乾燥機。」

〔相違点1〕
本件訂正発明2は、
「筒状の外胴部(3)」と、この「外胴部(3)の内部に」筒状の内胴体(4)と、を備え、前記内胴体(4)の軸方向端部と、「前記外胴部(3)の軸方向端部」との間にシール機構(35)が設けられ、「前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し」、「前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の軸方向の内側に向かって突出する環状部材(33)が周方向の全域に装着され、前記環状部材(33)の前記端壁(19)側の開口縁部(33a)と、前記端壁(19)から外胴部(3)の軸方向の内側に向けて突出し周方向の全域に設けられた周壁(19a)と、前記開口縁部(33a)と前記周壁(19a)との間に挟持されたシール部材(35a)とで前記シール機構(35)が形成され、前記端壁(19)の内側面において、前記シール部材(35a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に前記周壁(19a)が設けられている」のに対して、甲1発明は、「筒状の外胴部」を備えていない点。

上記相違点1について検討する。
甲2記載事項及び甲3記載事項は上記のとおりであって、筒状の外胴部を開示するものではない。
したがって、甲1発明において、甲2記載事項及び甲3記載事項を参酌しても、上記相違点1に係る本件訂正発明2の発明特定事項とすることはできない。
甲4記載事項は、筒状の外胴部を開示しているが、「前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し」、「前記環状部材(33)の前記端壁(19)側の開口縁部(33a)と、前記端壁(19)から外胴部(3)の軸方向の内側に向けて突出し周方向の全域に設けられた周壁(19a)と、前記開口縁部(33a)と前記周壁(19a)との間に挟持されたシール部材(35a)とで前記シール機構(35)が形成」することは開示も示唆もしていない。
また、上記相違点1に係る本件訂正発明2の発明特定事項は、甲1発明から自明な事項ではなく、甲1発明から当業者が適宜なし得た設計的事項でもなく、本件出願前の周知技術でもない。
したがって、本件訂正発明2は、甲1発明及び甲2記載事項ないし甲4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明3について
本件訂正発明3と甲1発明とを対比すると、本件訂正発明2と甲1発明との対比における一致点と同様の一致点を有するとともに、次の点で相違する。

〔相違点2〕
本件訂正発明3は、「筒状の外胴部(3)」と、この「外胴部(3)の内部に」筒状の内胴体(4)と、を備え、前記内胴体(4)の軸方向端部と、「前記外胴部(3)の軸方向端部と」の間にシール機構(39)が設けられ、前記内胴体(4)の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口(27)を有し、「前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し、」「前記シール機構(39)は、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の内側に向かって突出するとともに前記内胴体(4)の周方向の全域に設けられた環状部材(37)に固定された周端壁(41)の開口端(41a)の外側面(41b)と、前記端壁(19)の内側面(19b)と、前記外側面(41b)と前記内側面(19b)との間に挟持されたシール部材(39a)とで形成され、前記端壁(19)の内側面には、前記シール部材(39a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に、前記端壁(19)の内側面(19b)から前記外胴部(3)の軸方向の内側に向かって延びる周壁(42)が設けられている」のに対して、甲1発明は、「筒状の外胴部」を備えていない点。

上記相違点2について検討する。
甲2記載事項及び甲3記載事項は上記のとおりであって、筒状の外胴部を開示するものではない。
したがって、甲1発明において、甲2記載事項及び甲3記載事項を参酌しても、上記相違点2に係る本件訂正発明3の発明特定事項とすることはできない。
甲4記載事項は、筒状の外胴部を開示しているが、「前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し、」「前記シール機構(39)は、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の内側に向かって突出するとともに前記内胴体(4)の周方向の全域に設けられた環状部材(37)に固定された周端壁(41)の開口端(41a)の外側面(41b)と、前記端壁(19)の内側面(19b)と、前記外側面(41b)と前記内側面(19b)との間に挟持されたシール部材(39a)とで形成され、」「前記端壁(19)の内側面には、前記シール部材(39a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に、前記端壁(19)の内側面(19b)から前記外胴部(3)の軸方向の内側に向かって延びる周壁(42)が設けられている」ことは開示も示唆もしていない。
また、上記相違点2に係る本件訂正発明3の発明特定事項は、甲1発明から自明な事項ではなく、甲1発明から当業者が適宜なし得た設計的事項でもなく、本件出願前の周知技術でもない。
したがって、本件訂正発明3は、甲1発明及び甲2記載事項ないし甲4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 令和3年8月6日付け申立人の意見書について
申立人は、令和3年5月28日の訂正の請求について、令和3年8月6日付けの意見書(以下、「意見書」という。)において、次のように主張している。

〔主張1〕
訂正事項2について、訂正前の請求項2における「前記開口部(3a)と前記周壁(19a)との間に挟持された前記シール部材(35a)」との記載を、「前記開口部(3a)と前記周壁(19a)との間に設けられた前記シール部材(35a)」との記載に改める訂正は、訂正前では、シール部材(35a)が挟持された状態で設けられていたのに、訂正後は単に設けられたとなり、どのように設けられたのかが記載がない点で不明瞭であり、また訂正前の挟持された状態以外も含まれることになる点で、特許請求の範囲を拡張するものである。
よって、特許法第120条の5第2項第1号に該当しないものであるから、特許法第126条第6項により訂正が認められないものである。

〔主張2〕
訂正事項2について、訂正前の請求項2における「前記外胴部(3)の端壁(19)の内周面には、前記シール部材(35a)より内側であって外胴部(3)の内部に向かって延設された周壁(19a、42、110)が設けられている」との記載を、「端壁(19)の内周面において、前記シール部材(35a)より前記外胴部(3)の内側に前記周壁(19a)が設けられている」とした訂正は、訂正前は「周壁(19a)がシール部材(35a)に延設されていた旨」が特定されているのに対して、訂正後は「周壁(19a)が単にシール部材(35a)より内側に設けられている」となり、「延設」の文言が削除されている点で、特許請求の範囲を拡張又は変更したものに相当する。
よって、特許法第120条の5第2項第1号に該当しないものであるから、特許法第126条第6項により訂正が認められないものである。

上記主張1については、本件訂正請求により、「前記開口部(3a)と前記周壁(19a)との間に設けられた前記シール部材(35a)」との記載は、「前記開口部(3a)と前記周壁(19a)との間に挟持された前記シール部材(35a)」となったことから、特許請求の範囲を拡張するものではなくなった。
上記主張2については、本件訂正発明2には「前記端壁(19)から外胴部(3)の軸方向の内側に向けて突出し周方向の全域に設けられた周壁(19a)」(下線は当審が付与した。)との記載があることから、周壁(19a)が「延設」されていることは、実質的に特定されている。
よって、特許請求の範囲を拡張又は変更したものではない。

したがって、申立人の上記主張は採用できない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2及び3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2及び3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
なお、本件請求項1に係る特許は、本件訂正請求による訂正により削除された。これにより、本件請求項1に係る特許に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】乾燥機
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーツ、枕カバー、タオル等のリネン製品やモップ、マット等の洗濯した洗濯物を乾燥させる乾燥機に関し、特に洗濯物を投入した内胴体を回転させながら高温の乾燥風を洗濯物に吹き付けて乾燥させる回転ドラム式の乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
シーツ、枕カバー、タオル等のリネン製品やモップ、マット等の洗濯した洗濯物を乾燥させる乾燥機及び乾燥方法が、特許文献1で提案されている。特許文献1に記載されている乾燥機は、乾燥機筐体内に設けられた外胴部と、この外胴部内に回転自在に支持され洗濯物が投入される内胴体(回転ドラム)とを備えている。また、内胴体を外胴部内で回転駆動させる回転駆動機構と、外気を取り込んで加熱した乾燥風を外胴部内に供給するとともに外胴部内の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部とを備えている。
【0003】
そして、内胴体内に洗濯物を投入し、内胴体を外胴部内で回転させながら、乾燥風を外胴部内に供給し、内胴体の外周に設けられたメッシュ状の孔、あるいは複数のパンチ穴から乾燥風を内部に導入し、洗濯物に吹き付けることにより洗濯物の水分を無くすことで洗濯物を乾燥させる。回転する内胴体内で洗濯物に吹き付けられる乾燥風は、取り込んだ外気とヒータとの熱交換により外気が加熱されて生成される。生成された乾燥風は、内胴体内で洗濯物に吹き付けられた後に、排出部によって外方へ排出されたり、一部を外気ともにヒータにより加熱して再び内胴体内に送られて、洗濯物に吹き付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2007−61410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、内胴体と外胴部の軸方向の端部に、隙間が存在していると、外胴部内に供給された乾燥風が外胴部の内壁と内胴体の側壁との間を通って、内胴体内で洗濯物に吹き付けられることなく外胴部から排出されてしまう。このため、洗濯物の乾燥に全く寄与しない乾燥風が無駄に排出されることになり、乾燥効率が悪い。
【0006】
また、内胴体と外胴部の軸方向の端部に隙間が存在していると、この隙間部分に洗濯物が入り込んだり、あるいは糸くず等が入り込み内胴体の回転抵抗を増やしてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、内胴体と外胴部の軸方向端部からの乾燥風の排出を防止し、被乾燥物や糸くず等の噛み込みを防止し、乾燥効率が向上する乾燥機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、乾燥機筐体内に設けられた筒状の外胴部と、この外胴部の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体と、該内胴体を前記外胴部内で回転駆動させる回転駆動機構と、外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部内に供給するとともに前記外胴部の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部と、を備えた乾燥機であって、前記内胴体の軸方向端部と、前記外胴部の軸方向端部との間にシール機構が設けられ前記内胴体の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口を有し、前記外胴部は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁を有し、前記内胴体の前記内胴体投入口側の軸方向端部には、前記内胴体の前記内胴体投入口側の軸方向端部から前記内胴体の軸方向の内側に向かって突出する環状部材が周方向の全域に装着され、前記環状部材の前記端壁側の開口縁部と、前記端壁から外胴部の軸方向の内側に向けて突出し周方向の全域に設けられた周壁と、前記開口縁部と前記周壁との間に挟持されたシール部材とで前記シール機構が形成され、前記端壁の内側面において、前記シール部材より前記外胴部の径方向の内側に前記周壁が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、乾燥機筐体内に設けられた筒状の外胴部と、この外胴部の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体と、該内胴体を前記外胴部内で回転駆動させる回転駆動機構と、外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部内に供給するとともに前記外胴部の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部と、を備えた乾燥機であって、前記内胴体の軸方向端部と、前記外胴部の軸方向端部との間にシール機構が設けられ、前記内胴体の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口を有し、前記外胴部は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁を有し、前記シール機構は、前記内胴体の前記内胴体投入口側の軸方向端部から前記内胴体の内側に向かって突出するとともに前記内胴体の周方向の全域に設けられた環状部材に固定された周端壁の開口端の外側面と、前記端壁の内側面と、前記外側面と前記内側面との間に挟持されたシール部材とで形成され、前記端壁の内側面には、前記シール部材より前記外胴部の径方向の内側に、前記端壁の内側面から前記外胴部の軸方向の内側に向かって延びる周壁が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、乾燥機筐体内に設けられた筒状の外胴部と、この外胴部の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体と、該内胴体を前記外胴部内で回転駆動させる回転駆動機構と、外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部内に供給するとともに前記外胴部の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部と、を備えた乾燥機であって、前記内胴体の軸方向端部と、前記外胴部の軸方向端部との間にシール機構が設けられ、前記内胴体の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口を有し、前記外胴部は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁を有し、前記内胴体の前記内胴体投入口側の軸方向端部には、前記内胴体の前記内胴体投入口側の軸方向端部から前記内胴体の軸方向の内側に向かって突出する外側環状部材が周方向の全域に装着され、前記外側環状部材は前記内胴体の前記内胴体投入口側に設けられ、前記内胴体投入口の端壁は円板状の板材を2枚重ねて周端壁が形成され、前記周端壁の開口縁部に内側環状部材が装着され、前記外側環状部材と前記外胴部の前記端壁との間が前記シール機構によって封止され、前記シール機構は、前記内側環状部材の外側面と、前記端壁の内側面と、前記外側面と前記内側面との間に挟持されたシール部材とで形成され、前記端壁の内側面には、前記シール部材より前記外胴部の径方向の内側に、前記端壁の内側面から前記外胴部の軸方向の内側に向かって延びる周壁が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内胴体の軸方向端部と、外胴部の軸方向端部との間にシール機構を設けたので、内胴体と外胴部の軸方向端部からの乾燥風の排出を防止することができ、被乾燥物の乾燥に寄与することのない乾燥風の排出を低減することができるので、乾燥効率を向上することができる。また、シール機構を内胴体と外胴部の軸方向端部に設けたことにより、内胴体と外胴部の軸方向端部に被乾燥物や糸くず等の噛み込みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る乾燥機を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る乾燥機を示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る乾燥機を示す側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る乾燥機を示し、図3のIV−IV線に沿って切断した断面概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る乾燥機を示し、図2のV−V線に沿って切断した断面概略図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る乾燥機を示し、図2のVI−VI線に沿って切断した断面概略図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る乾燥機を示し、図5のVII−VII線に沿って切断した一部を示す概略断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る乾燥機を示し、図7に示すシール構造の他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る乾燥機を示し、図7に示すシール構造の他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る乾燥機を示し、乾燥風供給・排出部を示す側面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る乾燥機のヒータを自動洗浄する構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る乾燥機の乾燥風供給・排出部を示す平面図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る乾燥機の乾燥風供給・排出部を示す正面図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る乾燥機における排出部を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図15】本発明に係る乾燥機の実施の形態における制御部と、この制御部に検知結果を入力する検知手段と、制御部によって制御される機器を示すブロック図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る乾燥機の流量調整弁の作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る乾燥機の実施の形態について詳細に説明する。本発明に係る乾燥機は、シーツ、枕カバー、タオル等のリネン製品やモップ、マット等の洗濯した洗濯物を乾燥させるいわゆる業務用の乾燥機である。
[乾燥機の全体構成と実施例の特徴]
【0014】
図1乃至図3に示すように、本実施の形態に係る乾燥機1は、箱形状の乾燥機筐体2と、この乾燥機筐体2の一方の側方に隣設配置される乾燥風供給・排出部6の筐体51とで構成されている。図4に示すように、乾燥機1は、乾燥機筐体2内に設けられた外胴部3と、この外胴部3の内部に回転可能に支持され被乾燥物10が投入される内胴体4と、この内胴体4を外胴部3内で回転駆動させる回転駆動機構5と、筐体51内に設けられ外気を取り込んで加熱した乾燥風を外胴部3内に供給するとともに外胴部3内の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部6と、を備えている。
【0015】
図4、図5に示すように、本実施の形態の乾燥機1は、乾燥風供給・排出部6が外気を取り込み加熱して乾燥風を形成し内胴体4内に供給する供給部52と、内胴体4内で被乾燥物10を乾燥させた後の排出乾燥風を内胴体4内から排出する排出部53とが筐体51内に一体に形成されている。
【0016】
図5に示すように、本実施の形態の乾燥機1は、内胴体4内から排出された排出乾燥風を外気取入口54から取り入れた外気とともにヒータ56で加熱し再び内胴体4内に供給する排熱循環部94が筐体51内の供給部52と排出部53との間に形成されている。
【0017】
また、図1、図3、図4、図5に示すように、本実施の形態の乾燥機1は、供給部52が筐体51に設けた外気取入口54と、この外気取入口54から取り入れる風量を調節する吸気ダンパ55と、外気取入口54から取り入れた外気を加熱するヒータ56とで形成されている。排出部53が内胴体4内の乾燥風を排出する排出部ダクト67と、内胴体4内の乾燥風を吸入して排出部ダクト67内に排出させる排気ブロア68と、排出部ダクト67内に排出した乾燥風の外方への排出量を調節する排気ダンパ69(図14参照)とで形成されている。
【0018】
また、本実施の形態の乾燥機1は、乾燥機1による乾燥運転を制御する制御部12を有しており、制御部12は、乾燥運転を開始した乾燥初期運転時に、内胴体4内で被乾燥物10に吹き付けられた後に内胴体4内から排出される排出乾燥風の湿度が第1の設定値を下回るまで、吸気ダンパ55を外気取入口54の開口面積が最大となる全開状態とし、排気ダンパ69を排出部ダクト67の開口面積が最大となる全開状態とする。
【0019】
また、本実施の形態の乾燥機1は、内胴体4の軸方向端部と、外胴部3の軸方向端部との間にシール機構35、36、あるいはシール機構39、40が設けられている。
以下、実施の形態に係る乾燥機1の詳細について図面を用いて説明する。
[乾燥機筐体]
【0020】
乾燥機筐体2は、図1、図5に示すように、前面13側に被乾燥物10を内部に投入するための投入口14が設けられ、図5、図6に示すように、後面側に乾燥した被乾燥物を排出する排出口15が設けられている。投入口14には、上下動することで投入口14を開閉する投入側開閉蓋16が設けられている。この投入側開閉蓋16には、乾燥機筐体2内を覗くことができる内部覗き窓17、17が設けられている。また、排出口15には、図6に示すように上部が回動可能に乾燥機筐体2に支持され、回動することで排出口15を開閉する排出側開閉蓋18が設けられている。また、投入口14と排出口15との間に外胴部3が乾燥機筐体2に一体に設けられている。
【0021】
外胴部3は、図4、図5、図6に示すように、筒状で、軸方向の一方の端壁19は乾燥機筐体2の投入口14に向けて開口し、軸方向の他方の端壁20は乾燥機筐体2の排出口15に向けて開口している。また、外胴部3の周方向に沿う側壁21には、下部側に乾燥風排出口22が設けられ、乾燥機筐体2内の筐体51側に乾燥風取入口23が設けられている。乾燥風排出口22には、外胴部3の下部に配設された排気ダクト24の一側が連結されている。排気ダクト24の他側は、後述する乾燥風供給・排出部6と連結されている。また、乾燥風取入口23には、乾燥風供給ダクト25の一側が連結されている。乾燥風供給ダクト25の他側は、後述する乾燥風供給・排出部6と連結されている。
【0022】
また、乾燥風取入口23には、乾燥風供給ダクト25の一側が連結されている。乾燥風供給ダクト25の他側は、後述する乾燥風供給・排出部6と連結されている。また、乾燥風供給ダクト25には、上方に向けて開口する冷却口11が設けられている。この冷却口11は、乾燥機1が稼動している際には閉止され、乾燥機1による乾燥運転が終了した後に開放される。この冷却口11を開放することにより、被乾燥物が冷却(クールダウン)される。
【0023】
そして、乾燥風供給・排出部6で生成された乾燥風が乾燥風供給ダクト25、乾燥風取入口23を通って外胴部3内に供給され、外胴部3内からは乾燥風排出口22、排気ダクト24を通って被乾燥物10を乾燥させた後の乾燥風が乾燥風供給・排出部6に排出され、排気または循環される。外胴部3内に供給された乾燥風は、外胴部3内で回転している内胴体4内に送られ、内胴体4内に投入されている被乾燥物10に吹き付けられる。
【0024】
[内胴体4]
内胴体4は、図4、図5、図6に示すように、円筒状で、軸方向の一方の端面26は乾燥機筐体2の投入口14に向けて開口する内胴投入口27が形成され、軸方向の他方の端面28は乾燥機筐体2の排出口15に向けて開口する内胴排出口29が形成されている。また、内胴体4の周方向に沿う側壁30には、全面にわたり複数の乾燥風通過孔31が設けられている。この乾燥風通過孔31からは、外胴部3に供給された乾燥風が通過し、内胴体4の内部に乾燥風が導入される。
【0025】
また、内胴体4の側壁30の内側には、周方向に等間隔に6個の突起32が設けられている。これらの突起32は、内胴体4の軸方向に長く、内胴体4の中心部に向かって側壁30の内面から突出し、中心部に向かうほど先端が鋭角状に形成されている。これらの突起32は内胴体4が外胴部3内で回転すると、図4に示すように、被乾燥物10を内胴体4の下部側から上部側まで掻き揚げて、内胴体4の上部側から下部側に向けて被乾燥物10を落下させる。このとき乾燥風通過孔31を通過した乾燥風が被乾燥物10に吹き付けられる。
【0026】
[シール機構]
また、図7に示すように、内胴体4の軸方向の両端部には、周方向の全域に環状部材33、34が装着されている。環状部材33は、内胴体4の内胴投入口27側に設けられ、環状部材34は、内胴排出口29側に設けられている。環状部材33と外胴部3の端壁19との間はシール機構35によって封止され、環状部材34と端壁20との間はシール機構36によって封止されている。
【0027】
シール機構35は、環状部材33の端壁19側の開口縁部33aと、端壁19から外胴部3の内部側に向けて突出し周方向の全域に設けられた周壁19aと、開口縁部33aと周壁19aとの間に設けられたシール部材35aとで形成されている。シール機構36は、環状部材34の外周面34aと、端壁20の内周面20aと、外周面34aと内周面20aとの間に設けられたシール部材36aとで形成されている。
【0028】
これらのシール機構35、36により、内胴体4内に導入される乾燥風が内胴体4と外胴部3との軸方向の両端の間から、被乾燥物10に吹き付けられることなく排出されるのを防止することができる。
【0029】
また、内胴体4と外胴部3の軸方向端部のシール機構は、図8に示す構造でもよい。図8に示す構造では、内胴体4の軸方向の両端部に、周方向の全域に環状部材37、38がそれぞれ装着されている。環状部材37は、内胴体4の内胴投入口27側に設けられ、環状部材38は、内胴排出口29側に設けられている。環状部材37と外胴部3の端壁19との間はシール機構39によって封止され、環状部材38と端壁20との間はシール機構40によって封止されている。
【0030】
シール機構39は、周端壁41の開口端41aの外側面41bと、端壁19の内側面19bと、外側面41bと内側面19bとの間に挟持されたシール部材39aとで形成されている。周端壁41は、円板状で、環状部材37に固定され端壁19に対向して内胴体4の内胴投入口27の端壁を構成している。また、シール部材39aは、内胴体4の軸中心側、すなわち内胴投入口27に近接した位置に配置されている。
【0031】
さらに、周端壁41と内胴体4の側壁30とがなす角部には、周端壁41のシール材39a側から内胴体4の内壁向けて傾斜する角部埋設部材44が設けられている。また、端壁19の内側面19bからは、シール部材39aの内側に、内胴排出口29側に向けて延びる周壁42が設けられ、この周壁42は、シール部材39aの内胴投入口27側を覆うように設けられている。
【0032】
シール機構40は、環状部材38と、環状部材38に固定され端壁20に対向して内胴体4の内胴排出口29の端壁となる周端壁43と、端壁20の内周面20aと、環状部材38、周端壁43、内周面20aとで囲まれる内部に配置されたシール部材40aとで形成されている。
【0033】
そして、上記シール機構39、40によって、被乾燥物10の投入側と排出側において内胴体4と外胴部3との間に隙間が生じることがない。これにより、内胴体4内に導入された乾燥風が外胴部3と内胴体4との間に流れ出ることがなく、内胴体4内に導入された乾燥風が全て被乾燥物に吹き付けられることになる。さらに、被乾燥物の投入側と排出側において内胴体4と外胴部3との間に隙間が存在していないので、内胴体4内の被乾燥物10が隙間に噛み込むことがなくなる。
【0034】
加えて、シール部材39aが周端壁41の開口端41aと端壁19の周壁19aとの間に位置しているので、内胴体4内の被乾燥物10とシール部材39aが接触することがなくなり、シール部材39aが損傷することがない。さらに、シール部材39aを内胴体4の軸中心側に設けて、角部埋設部材44を設けたことにより、内胴体4の環状部材37と周端壁41とが連続する角部に被乾燥物10が滞留することがない。
【0035】
また、内胴体4と外胴部3の軸方向のシール機構は、図9に示す構造でもよい。図9に示す構造では、内胴体4の軸方向の両端部に、周方向の全域に外側環状部材107、111がそれぞれ装着されている。外側環状部材107は、内胴体4の内胴投入口27側に設けられ、外側環状部材111は、内胴排出口29側に設けられている。外側環状部材107と外胴部3の端壁19との間はシール機構105によって封止され、外側環状部材111と端壁20との間はシール機構106によって封止されている。
【0036】
シール機構105は、内側環状部材109の外側面109aと、端壁19の内側面19bと、外側面109aと内側面19bとの間に挟持されたシール部材105aとで形成されている。周端壁108は、円板状の板材を2枚重ねて形成され、内胴投入口27の端壁を構成している。この周端壁108の内側(内胴体4の軸中心側)に内側環状部材109が端壁19に対向して固定されている。この内側環状部材109の内側面19bに対向した面に、凹溝109bが形成され、この凹溝109b内にシール部材105aが挿入されている。また、シール部材105aは、内胴体4の軸中心側、すなわち内胴投入口27に近接した位置に配置されている。また、端壁19の内側面19bからは、シール部材39aの内側に、内胴排出口29側に向けて延びる周壁110が設けられている。この周壁110は、シール部材105aと内側環状部材109を覆うように設けられている。
【0037】
シール機構106は、外側環状部材111に固定された内側環状部材112の外周面112aと、端壁20の内周面20aと、外周面112aと内周面20aとの間に挟持されたシール部材106aとで形成されている。また、端壁20の内胴排出口29側は、内胴投入口27側に向けて延設されて周壁部20bが形成されている。この周壁部20bはシール部材106a、内側環状部材112を覆うように設けられている。シール機構105、シール機構106は、図8に示すシール機構39、40と同様の機能、作用効果を有している。なお、内胴体4は、外胴部3に対して、回転駆動機構5によって一方向に回転する際に、シール材105aは、端壁19の内側面19bとに常に摺動する。なお、内胴体4が外胴部3に対して回転駆動機構5によって一方向に回転する際に、シール材39aは、周端壁41の内面と端壁19の内面とに常に摺動する。
【0038】
[回転駆動機構]
回転駆動機構5は、図4、図5に示すように、内胴体4を外胴部3内で回転可能に支持する4個の駆動ローラ50、50、50、50と、この駆動ローラを回転駆動させるモータ48と、駆動ローラ50、50、50、50に駆動力を伝達する2本の回転軸47、47と、回転軸47、47にモータ48の回転駆動力を伝達する伝達ベルト45とで形成されている。駆動ローラ50、50、50、50は、内胴体4の下部の両側に2個ずつ配置され、内胴体4を下部側の四隅で支持している。乾燥風供給・排出部6側の2個の駆動ローラ50、50、乾燥風供給・排出部6と反対側の2個の駆動ローラ50、50は、それぞれ回転軸47に連結されている。回転軸47、47は、伝達ベルト45、45と連結されている。
【0039】
これにより、モータ48の回転駆動力が伝達ベルト45を介して回転軸47、47に伝達され、駆動ローラ50、50、50、50が回転駆動する。なお、各駆動ローラ50、50、50、50は図示しない軸受により乾燥機筐体2に回転可能に支持されており、回転軸47、47には図示しないプーリーが一端側に設けられ、これらのプーリーとモータ48の駆動軸との間に伝達ベルト45がそれぞれ巻き掛けられている。また、駆動ローラ50、50、50、50は、外胴部3の外側に配置され、外周の一部が外胴部3の側壁21を貫通して内胴体4内に突出しており、この突出部分に内胴体4が載置されている。
【0040】
そして、モータ48の回転駆動力で回転軸47、47を回転させることにより、駆動ローラ50、50、50、50が回転し、内胴体4が、外胴部3内で回転する。外胴部3内で回転する内胴体4内には、乾燥風供給・排出部6が生成した乾燥風が導入され、内胴体4に投入されている被乾燥物が内胴体4内で掻き揚げられて、乾燥風供給・排出部6からの乾燥風が吹き付けられる。
【0041】
[乾燥風供給・排出部]
乾燥風供給・排出部6は、図4〜図6に示すように、乾燥機筐体2の側部に配置された箱型形状の筐体51内に一体に組み込まれており、外気を取り込み加熱して乾燥風を形成し外胴部3内に供給する供給部52と、内胴体4内で被乾燥物を乾燥させた後の乾燥風を内胴体4内から排出する排出部53とで形成されている。供給部52は、外気取入口54と、外気取入口54から取り入れる風量を調節する吸気ダンパ55と、外気取入口54から取り入れた外気を加熱するヒータ56とで形成されている。
【0042】
外気取り入れ口54は、図4〜図6、図10に示すように、筐体51の上部、前面13の側壁57に矩形状に開口して形成されている。この外気取入口54に、吸気ダンパ55が設けられている。吸気ダンパ55は、4枚の回動蓋58(58a、58b、58c、58d)と、これらの回動蓋58を回動させる駆動機構59とで形成されている。4枚の回動蓋58a、58b、58c、58dは、長方形状で外気取入口54の上下の枠60、61間に等間隔に配置されている。また、回動蓋58a、58b、58c、58dは、長手方向の両端が上下の枠60、61にそれぞれ支軸62(図12、図13参照)を介して回動自在に支持されている。4枚の回動蓋58a、58b、58c、58dが略90度回動した状態で、4枚の回動蓋58a、58b、58c、58dによって外気取入口54は全開状態となり、回動しない状態では、4枚の回動蓋58a、58b、58c、58dが外気取入口54を覆い、外気取入口54は全閉状態となる。
【0043】
したがって外気取入口54に対して交差する方向に位置した状態、すなわち回動した状態では、4枚の回動蓋58a、58b、58c、58d間から外気が筐体51内に導入される。4枚の回動蓋58a、58b、58c、58dを回動させるごとに4枚の回動蓋58a、58b、58c、58d間が広くなり筐体51内に導入される外気の流量が多くなる。この回動蓋58a、58b、58c、58dの回動角度が駆動機構59によって制御される。
【0044】
駆動機構59は、図12、図13に示すように、外気取入口54の上部に配置された平行リンク機構63と、この平行リンク機構63を駆動するエアシリンダ64とで構成されている。平行リンク機構63は、上部の枠60に回動自在に支持された支軸62、62、62、62にそれぞれ一端が固定されたレバー65、65、65、65と、これらのレバー65、65、65、65の他端が回動自在に連結された駆動リンク66とで形成されている。駆動リンク66は、エアシリンダ64の駆動軸64aと連結されている。
【0045】
そして、エアシリンダ64の駆動軸64aがシリンダ内にあるときは、図12に示すように、回動蓋58a、58b、58c、58dは外気取入口54に対して交差した状態であって、外気取入口54が全開状態となり、駆動軸64aがシリンダ内から突出するにしたがって、駆動リンク66がスライド移動し、各レバー65を回動させる。各レバー65が回動することで回動蓋58a、58b、58c、58dが次第に回動し、外気取入口54の隙間が小さくなる。駆動軸64aがシリンダ内から最大に突出した状態では、回動蓋58a、58b、58c、58dがヒータ56に対して平行な状態となり、外気取入口54が全閉状態となる。これにより、外気取入口54から取り入れる外気の量を制御することができる。外気取入口54から取り入れられた外気は、ヒータ56を通過することで加熱される。
【0046】
ヒータ56は、エロフィンチューブを多段に配置して形成されている。エロフィンチューブは、パイプの外周にフィンをらせん状に巻き付けたチューブで、パイプ内に高温の蒸気を流動させることにより、らせん状のフィン間を通過する空気を加熱する。また、エロフィンチューブは、図示しない蒸気発生装置と蒸気供給管98(図10参照)と連通されている。この蒸気供給管98の途中には、流量調整弁97が設けられている。この流量調整弁97は、制御部12によって開閉され、エロフィンチューブ内に流れる蒸気の流量が調整される。
【0047】
したがって、外気取入口54から導入された外気は、多段に配置されたエロフィンチューブのらせん状のフィン間を通過することにより加熱されて乾燥風が生成される。このため、エロフィンチューブのらせん状のフィンには、外気に含まれる塵等が付着するので、ヒータ56を洗浄する自動洗浄機構100が設けられている。
[自動洗浄機構]
【0048】
自動洗浄機構100は、図11に示すように、ヒータ56に対して洗浄液を噴射する噴射ノズル101と、この噴射ノズル101に洗浄液を供給する洗浄液供給部102と、ヒータ56に噴射されヒータ56を洗浄後の洗浄液を回収する回収部103と、洗浄液供給部102への洗浄液の流量を調節する流量調節弁104とで形成されている。噴射ノズル101は、ヒータ56の上部に配置され筐体51にヒータ56の長手方向に等間隔に4個設けられている。これらの噴射ノズル101は、洗浄液供給部102から、ヒータ56の上部に向けて延設された4本の供給管102aの先端に、ヒータ56に向けて洗浄液を噴射可能に取り付けられている。また、ヒータ56の下部側に、回収部103が設けられており、ヒータ56の上部に噴射され下部側に流れる洗浄液を回収する。
【0049】
なお、洗浄液として水道水使用する場合には、上記したように流量調節弁104により水道水の流量を調整することで噴射ノズル101からの噴射圧力を調節することができる。洗浄液として他の流体を用いる場合には、洗浄液を洗浄液供給部102へ圧送するための圧送ポンプを用いて、洗浄液に圧力を加え、噴射ノズル101から噴射圧力を調節するようにしても良い。
【0050】
そして、流量調節弁104によって流量が調節された洗浄液(水道水)は、4個の噴射ノズル101、101、101、101からヒータ56、すなわちエロフィンヒータのらせん状のフィンにそれぞれ吹き付けられて、フィンやパイプに付着している塵等を洗い流しながら下方に流れ落ち、回収部103によって回収される。したがって、乾燥機1の稼動を停止した後に、噴射ノズル101から洗浄液をヒータ56に直接噴射させて自動的に洗浄することができる。
【0051】
これにより、ヒータ56を筐体51から取り出して、ヒータ56を洗浄し、再び筐体51内に組み付ける作業が不要になる。また、ヒータ56を洗浄する際に、噴射ノズル101の角度を変更して、ヒータ56の外気取入口側のフィルターに洗浄液を噴射させることにより、ヒータ56とともにフィルターをも洗浄することができる。また、内胴体4内から排出された乾燥風を循環させて使用する場合には、乾燥風内に混ざっている被乾燥物からの糸くず等の塵がヒータ56に付着している場合でも自動洗浄機構100によって容易に洗浄し除去することができ、供給部52では、塵等を含まない清潔な乾燥風を生成することができる。
【0052】
この生成された乾燥風は、乾燥風供給ダクト25を通って外胴部3の乾燥風取入口23から外胴部3内に供給され、内胴体4内に導入された後に、乾燥風排出口22から排出部53に排出される。
【0053】
排出部53は、図4〜図6,図14に示すように、乾燥機筐体2内の排気ダクト24と一側が連通され他側に排気口74が設けられた排出部ダクト67と、この排出部ダクト67の途中に設けられて排気ダクト24を介して外胴部3内の乾燥風を外胴部3内から吸い出し、排出部ダクト67内に排出させる排気ブロア68と、排出部ダクト67に設けられて内胴体4内で被乾燥物10に吹き付けられた後の乾燥風(排出乾燥風)を全て外方に排出したり、排出乾燥風の一部を循環させる排気ダンパ69とで形成されている。
【0054】
排出部ダクト67は、図14に示すように、排気ダクト24と連通された連結ダクト70と、排気ブロア68が収納されるブロアケーシング71と、このブロアケーシング71から上方に延びる排気・循環ダクト72とで形成されている。連結ダクト70は、筐体51の下部側で乾燥機筐体2の下部側の排気ダクト24と連通されている。ブロアケーシング71は、筐体51の下部側に設けられ、内部に排気ブロア68のブロアファン73が内蔵されている。
【0055】
ブロアケーシング71から上方に延びる排気・循環ダクト72は、図5に示すように供給部52に隣設して設けられている。図12、図14(a)、(b)、(c)に示すように、排気・循環ダクト72の上端側は排気口74が形成され、供給部52に隣設する側壁75,76には、循環口78が上下方向に沿って4箇所にそれぞれ設けられている。これらの循環口78は、循環ダクト79に連通されている。循環ダクト79は外気取入口54と連通され、吸気ダンパ55の4枚の回動蓋58のうち循環ダクト79に隣設した回動蓋58aによって外気取入口54側と循環口78とが開閉される。外気取入口54を全開状態(すなわち、開口面積が最大となる位置に回動蓋58が位置している状態)で、回動蓋58aが排気・循環ダクト72を閉止する。
【0056】
排気ダンパ69は、図14(a)、(b)、(c)に示すように、側壁77に回動自在に支持された2枚の開閉蓋80、81と、開閉蓋80の回動軸80aの一端に固定された回動駆動レバー82と、この回動駆動レバー82を回動軸80aを中心に回動させるエアシリンダ83と、開閉蓋80の回動軸80aの他端に固定された上部回動レバー84と、開閉蓋80の回動軸80aの他端と同じ側の開閉蓋81の回動軸81aに固定された下部回動レバー85と、上部回動レバー84と下部回動レバー85とを連結する連結レバー86とで形成されている。
【0057】
エアシリンダ83の駆動軸83aがシリンダに対して出没することにより、開閉蓋80、81が回動軸80a、81aを中心に排出部ダクト67内で回動し、排出部ダクト67を開閉する。そして、エアシリンダ83の駆動軸83aが突出した状態では、開閉蓋80、81が側壁77側に位置して排出部ダクト67の全開状態となる。このとき、外気取入口54の吸気ダンパ55は、回動蓋58aが循環ダクト79を閉止している。駆動軸83aがシリンダ内に引き込んだ状態では、開閉蓋80、81が側壁77から離れて排出部ダクト67を閉止して全閉状態となる。このとき、外気取入口54の吸気ダンパ55は、回動蓋58aが循環ダクト79を開放している。排出部ダクト67内には、内胴体4内から排出された乾燥風が排気ブロア68によって送風される。
【0058】
排気ブロア68は、ブロアダクト71に配置されたブロアファン73と、このブロアファン73を回転駆動するブロアモータ87とで形成されている。プロアモータ87は、ブロアダクト71から外方に突出して設けられ、ブロアダクト71内のブロアファン73を回転駆動する。ブロアファン73は、回転駆動することで排気ダクト24を介して、外胴部3の乾燥風排出口22から、被乾燥物に吹き付けられた後の乾燥風を外胴部3内から吸い込むことで、被乾燥物10に吹き付けられた後の乾燥風を排出部ダクト67内に送風する。また、外胴部3内から被乾燥物10に吹き付けられた後の乾燥風を外胴部3内から吸い込むことにより乾燥風取入口23、乾燥風供給ダクト25を介して外気取入口54から外気が吸い込まれる。
[排熱循環部]
【0059】
排熱循環部94は、図12、図13に示すように、排出部ダクト67に設けた循環口78、78、78、78と、循環ダクト79と、回動蓋58aと、開閉蓋80、81で構成されている。排気ブロア68によって、排出部ダクト67内に送風される被乾燥物に吹き付けられた後の乾燥風は、排気ダンパ69、吸気ダンパ55の回動角度、すなわち開閉角度を制御することにより、一部が循環口78を通って循環ダクト79内に送られ、外気取入口54から再びヒータ56によって加熱されて循環される。この乾燥風の循環では、排気ダンパ69、吸気ダンパ55の開閉角度を制御部12が、乾燥駆動時の状態に応じて設定することで、好適な乾燥条件で、かつ熱効率の良い乾燥運転を行うことができる。
[制御部12]
【0060】
また、ヒータ56に供給される高温の水蒸気の流量を調節する流量調整弁97、吸気ダンパ55、排気ダンパ69、モータ48、ブロアモータ87は、制御部12に接続されて、制御部12が設定した乾燥条件、乾燥手順にしたがって制御される。
【0061】
制御部12は、図15に示すように、入力部88と、出力部89と、第一記憶部90と、第二記憶部91と、乾燥条件設定部92とで構成されている。出力部89には、流量調整弁、吸気ダンパ55、排気ダンパ69、モータ48、排気ブロア68が接続され、入力部88には、吸気温度センサ93と、排気温度センサ95と、排気湿度センサ96とが接続されている。吸気温度センサ93は、図1に示すように、乾燥機筐体2の内部であって外胴部3の軸方向中間部の上部に配設されている。排気温度センサ95は図4に示すように、排気・循環ダクト72の外側に配設されている。排気湿度センサ96は、図4に示すように、排気・循環ダクト72の外側に配設されている。
【0062】
そして、吸気温度センサ93は、外気取入口54から供給部52内に導入される外気の温度を検知し、この検知結果を制御部12に入力する。排気温度センサ95は、内胴体4内で被乾燥物10に吹き付けられて外胴部3の乾燥風排出口22から排出された排出乾燥風の温度を検知し、この結果を制御部12に入力する。排気湿度センサ96は、排気温度センサ95の近傍に配設されて、排出乾燥風の湿度を検知し、この結果を制御部12に入力する。
【0063】
制御部12の乾燥条件設定部92は、吸気ダンパ55、排気ダンパ69、排気ブロア68、内胴体4の回転モータ48を制御すると同時に、流量調整弁97も並行して制御する。その手順を図16に示す流量調整弁97のフローチャートに従い説明する。
【0064】
図16のフローチャートのステップS3において、流量調整弁97を全開状態とした後、ステップS4において、制御部12の乾燥条件設定部92は、内胴体4内から排出された乾燥風の排気温度が第1の温度より高くなったか否かを判断する。第1の温度に達していない場合は、制御部12の乾燥条件設定部92はステップS3にて流量調整弁97を全開状態とする。ステップS4にて排気温度が第1の所定の温度より高くなると、制御部12の乾燥条件設定部92は、ステップS5にて流量調整弁97を全開状態から絞り、ヒータ56への蒸気の供給量を少なくする。これにより、ヒータ56の温度が下がり始める。
【0065】
次に制御部12の乾燥条件設定部92は、ステップS6にて排出乾燥風の温度が第1の温度より低い第2の温度より低いか否かを判断する。ステップS6にて排出乾燥風の温度が第2の温度より低くないと制御部12の乾燥条件設定部92が判断すると、すなわち第2の温度より高いと、ステップS5が実行されて流量調整弁97が絞られる。ステップS6にて排気温度が第2の温度より低くなったと制御部12の乾燥条件設定部92が判断すると、ステップS7にて流量調整弁97を開き、ヒータ56への蒸気の供給量を増やして、排気温度を高くする。
【0066】
次に制御部12の乾燥条件設定部92は、ステップS8で乾燥機1の稼動が終了したか否か、すなわち、乾燥機1の稼動が終了したか否かを判断して、乾燥が終了していない場合は、ステップS4以下を繰り返し実行させる。制御部12の乾燥条件設定部92は、乾燥機1の稼働中は、ヒータ56への蒸気の供給量を、内胴体4から排出された乾燥風の温度が第1の温度と第2の温度との間に維持されるように、流量調整弁97を絞ったり、開いたり制御する。そして、ステップS8にて乾燥機1の稼動が終了した制御部12の乾燥条件設定部92が判断すると、流量調整弁97を全閉状態としてヒータ56への蒸気の供給を停止する。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態によれば、内胴体4の軸方向端部と、外胴部3の軸方向端部との間にシール機構35、36あるいはシール機構39、40、105、106が設けられたことにより、内胴体4と外胴部3の軸方向端部からの乾燥風の排出を防止することができ、被乾燥物10の乾燥に寄与することのない乾燥風を低減することができるので、乾燥効率を向上することができる。また、シール機構35、36あるいはシール機構39、40、105、106を内胴体4と外胴部3の軸方向端部に設けたことにより、内胴体4と外胴部3の軸方向端部に被乾燥物や糸くず等の噛み込みを防止することができる。また、シール部材39a、105aを内胴体4の軸中心側に設けて、角部埋設部材44を設けたことにより、内胴体4の環状部材37と周端壁41とが連続する角部に被乾燥物10が滞留することがない。
【0068】
上述の通り、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る乾燥機は、シーツ、枕カバー、タオル等のリネン製品やモップ、マット等の洗濯した洗濯物を乾燥させる業務用の乾燥機、連続して洗濯を行う連続洗濯機によって洗濯された洗濯物を乾燥する乾燥機に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 乾燥機
2 乾燥機筐体
3 外胴部
4 内胴体
5 回転駆動機構
6 乾燥風供給・排出部
35 36 シール機構
39 40 シール機構
105 106 シール機構
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
乾燥機筐体(2)内に設けられた筒状の外胴部(3)と、
この外胴部(3)の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体(4)と、
該内胴体(4)を前記外胴部(3)内で回転駆動させる回転駆動機構(5)と、
外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部(3)内に供給するとともに前記外胴部(3)の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部(6)と、を備えた乾燥機(1)であって、
前記内胴体(4)の軸方向端部と、前記外胴部(3)の軸方向端部との間にシール機構(35)が設けられ、
前記内胴体(4)の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口(27)を有し、前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し、
前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部には、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の軸方向の内側に向かって突出する環状部材(33)が周方向の全域に装着され、
前記環状部材(33)の前記端壁(19)側の開口縁部(33a)と、前記端壁(19)から外胴部(3)の軸方向の内側に向けて突出し周方向の全域に設けられた周壁(19a)と、前記開口縁部(33a)と前記周壁(19a)との間に挟持されたシール部材(35a)とで前記シール機構(35)が形成され、
前記端壁(19)の内側面において、前記シール部材(35a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に前記周壁(19a)が設けられていることを特徴とする乾燥機(1)。
【請求項3】
乾燥機筐体(2)内に設けられた筒状の外胴部(3)と、
この外胴部(3)の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体(4)と、
該内胴体(4)を前記外胴部(3)内で回転駆動させる回転駆動機構(5)と、
外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部(3)内に供給するとともに前記外胴部(3)の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部(6)と、を備えた乾燥機(1)であって、
前記内胴体(4)の軸方向端部と、前記外胴部(3)の軸方向端部との間にシール機構(39)が設けられ、
前記内胴体(4)の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口(27)を有し、前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し、
前記シール機構(39)は、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の内側に向かって突出するとともに前記内胴体(4)の周方向の全域に設けられた環状部材(37)に固定された周端壁(41)の開口端(41a)の外側面(41b)と、前記端壁(19)の内側面(19b)と、前記外側面(41b)と前記内側面(19b)との間に挟持されたシール部材(39a)とで形成され、
前記端壁(19)の内側面には、前記シール部材(39a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に、前記端壁(19)の内側面(19b)から前記外胴部(3)の軸方向の内側に向かって延びる周壁(42)が設けられていることを特徴とする乾燥機(1)。
【請求項4】
乾燥機筐体(2)内に設けられた筒状の外胴部(3)と、
この外胴部(3)の内部に回転可能に支持され被乾燥物が投入される筒状の内胴体(4)と、
該内胴体(4)を前記外胴部(3)内で回転駆動させる回転駆動機構(5)と、
外気を取り込んで加熱した乾燥風を前記外胴部(3)内に供給するとともに前記外胴部(3)の乾燥風を外方に排出する乾燥風供給・排出部(6)と、を備えた乾燥機(1)であって、
前記内胴体(4)の軸方向端部と、前記外胴部(3)の軸方向端部との間にシール機構(105)が設けられ、
前記内胴体(4)の軸方向端部は、前記被乾燥物が投入される内胴体投入口(27)を有し、前記外胴部(3)は、前記被乾燥物が投入される開口が形成される端壁(19)を有し、
前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部には、前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側の軸方向端部から前記内胴体(4)の軸方向の内側に向かって突出する外側環状部材(107)が周方向の全域に装着され、前記外側環状部材(107)は前記内胴体(4)の前記内胴体投入口(27)側に設けられ、前記内胴体投入口(27)の端壁は円板状の板材を2枚重ねて周端壁(108)が形成され、前記周端壁(108)の開口縁部に内側環状部材(109)が装着され、前記外側環状部材(107)と前記外胴部(3)の前記端壁(19)との間が前記シール機構(105)によって封止され、
前記シール機構(105)は、前記内側環状部材(109)の外側面(109a)と、前記端壁(19)の内側面(19b)と、前記外側面(109a)と前記内側面(19b)との間に挟持されたシール部材(105a)とで形成され、
前記端壁(19)の内側面には、前記シール部材(105a)より前記外胴部(3)の径方向の内側に、前記端壁(19)の内側面(19b)から前記外胴部(3)の軸方向の内側に向かって延びる周壁(110)が設けられていることを特徴とする乾燥機(1)。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-03-08 
出願番号 P2017-157799
審決分類 P 1 652・ 856- YAA (D06F)
P 1 652・ 854- YAA (D06F)
P 1 652・ 121- YAA (D06F)
P 1 652・ 855- YAA (D06F)
P 1 652・ 537- YAA (D06F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 鈴木 充
星名 真幸
登録日 2020-06-22 
登録番号 6721243
権利者 株式会社東京洗染機械製作所
発明の名称 乾燥機  
代理人 特許業務法人日誠国際特許事務所  
代理人 特許業務法人日誠国際特許事務所  

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