ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A01K 審判 全部申し立て 2項進歩性 A01K 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 A01K 審判 全部申し立て 特29条の2 A01K |
---|---|
管理番号 | 1385156 |
総通号数 | 6 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-04-30 |
確定日 | 2022-03-01 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6783006号発明「通信端末、プログラム及び方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6783006号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4、6〕、3、5、9、10について訂正することを認める。 特許第6783006号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6783006号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、令和1年12月27日に出願され、令和2年10月23日にその特許権の設定登録がされ、同年11月11日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和3年4月28日付けで、特許異議申立人 黒田 健真(以下「申立人A」という。)により、請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議申立書(以下「申立書A」という。)の提出がされ、同年同月30日付けで、特許異議申立人 長岡 進(以下「申立人B」という。)により、請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議申立書(以下「申立書B」という。)の提出がされた。 その後の経緯は、次のとおりである。 令和3年7月16日付け: 取消理由通知書(同年7月26日発送) 令和3年9月17日付け: 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和3年11月2日付け: 申立人Aによる意見書の提出 令和3年11月4日付け: 申立人Bによる意見書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正請求の趣旨と訂正の内容 令和3年9月17日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第6783006号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし6、9及び10について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信する情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、」 とあるのを、 「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体であり、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、」 と訂正する。 請求項1を引用する請求項2、請求項4及び請求項6についても、同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に、 「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信する情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、」 とあるのを、 「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体であり、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、」 と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5に、 「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信する情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、」 とあるのを、 「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体であり、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、」 と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項9に、 「前記コンピュータは、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信する情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記プログラムは、前記プロセッサに、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、ディスプレイに、海図と、前記海図において前記船団の各船の位置を示す画像と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、」 とあるのを、 「前記コンピュータは、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記コンピュータは、前記情報処理装置とは別体であり、 前記プログラムは、前記プロセッサに、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、前記海図において前記操業中である前記船団の各船の位置を示す画像と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報と、を表示する第2のステップと、」 と訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項10に、 「前記コンピュータは、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信する情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記方法は、前記プロセッサが 前記情報処理装置が各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、ディスプレイに、海図と、前記海図において前記船団の各船の位置を示す画像と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報とを表示する第2のステップと、」 とあるのを、 「前記コンピュータは、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記コンピュータは、前記情報処理装置とは別体であり、 前記方法は、前記プロセッサが、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、前記海図において前記操業中である前記船団の各船の位置を示す画像と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報と、を表示する第2のステップと、」 と訂正する。 2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、訂正の単位、及び独立特許要件について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明について、情報処理装置が「各船ではなく船外に設けられた」こと、情報処理装置と通信端末とが「別体」であること、情報処理装置と各船及び通信端末との通信が「無線通信を介して」行われること、及び、ディスプレイに当該船でセンシングされる情報を表示する前記船団の各船の少なくとも一部について「操業中」であることを、限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について (ア)情報処理装置が「各船ではなく船外に設けられた」ことについて 訂正事項1のうち、「情報処理装置」を「各船ではなく船外に設けられた」ものとする点について、判断する。 願書に添付された明細書の段落【0015】には、「通信端末10及びセンシング機器」については、「複数の船からなって漁業を行う船団内」の「複数の船30A、30Bに搭載されている」と記載される一方、「サーバ20」については、「各船に通信可能」及び「船30A、30B及びサーバ20は、ネットワーク80を介して相互に通信可能に接続されている。」と記載されており、願書に添付された図面の【図1】にも、「船30A」及び「30B」に対してネットワーク「80」を介した通信を行う相手方が「サーバ20」である様子が示されている。 上記段落【0015】の記載及び【図1】の図示から、「サーバ20」を、「複数の船からなって漁業を行う船団内」の「複数の船30A、30B」のいずれかに設けるのではなく、「船30A、30B」を通信の相手方とするよう、船の外部に設けることは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項を総合することにより、導出される事項ということができる。 したがって、訂正事項1のうち、「情報処理装置」を「各船ではなく船外に設けられた」ものとする点は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 (イ)情報処理装置と通信端末とが「別体」であることについて 訂正事項1のうち、「情報処理装置」と「通信端末」とを「別体」とする点について、判断する。 訂正前の願書に添付された特許請求の範囲の【請求項1】において、「通信端末」と「情報処理装置」とが「通信」することが記載されており、願書に添付された明細書の段落【0015】に、「複数の船からなって漁業を行う船団内」の「複数の船30A、30Bに搭載されている通信端末10及びセンシング機器」と記載されたうえで、「船30A、30B及びサーバ20は、ネットワーク80を介して相互に通信可能に接続されている。」と記載されていることからすれば、「情報処理装置」である「サーバ20」を、「船」に搭載される「通信端末」と「別体」とすることは、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項を総合することにより導出される事項ということができる。 したがって、訂正事項1のうち、「情報処理装置」と「通信端末」とを「別体」とする点は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 (ウ)情報処理装置と各船及び通信端末との通信が「無線通信を介して」行われることについて 訂正事項1のうち、「情報処理装置」と「各船」及び「通信端末」との通信が「無線通信を介して」行われる点について、判断する。 願書に添付された明細書の段落【0015】には、「複数の船からなって漁業を行う船団内」の「複数の船30A、30Bに搭載されている通信端末10及びセンシング機器」と記載されるとともに、「船30A、30B及びサーバ20は、ネットワーク80を介して相互に通信可能に接続されている。ネットワーク80は、有線または無線ネットワークにより構成される。」と記載されており、「サーバ20」と「船30A、30B」及び船に搭載される「通信端末10」との間の通信を、「無線通信を介して」行うことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項を総合することにより導出される事項ということができる。 したがって、訂正事項1のうち、「情報処理装置」と「各船」及び「通信端末」との通信が「無線通信を介して」行われるものとする点は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 (エ)ディスプレイに当該船でセンシングされる情報を表示する前記船団の各船の少なくとも一部について、「操業中」であることを特定した点について 訂正事項1のうち、「ディスプレイ」に、「当該船でセンシングされる情報を表示」する、「前記船団の各船の少なくとも一部」について、「操業中」であることを特定した点について、判断する。 願書に添付された明細書の段落【0087】には、「したがって、船団内の複数の船でセンシングしたデータを、1つの画面に集約してリアルタイムに共有し、一目で分かるようにすることができる。そのため、まき網・ひき網漁の際のコミュニケーション不足を解消し、漁場の判断及び操業を容易にすることができる。」と記載されており、「ディスプレイ」に、「当該船でセンシングされる情報を表示」する、「前記船団の各船の少なくとも一部」について、「操業中」であるものとすることは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項を総合することにより導出される事項ということができる。 したがって、訂正事項1のうち、「ディスプレイ」に、「当該船でセンシングされる情報を表示」する、「前記船団の各船の少なくとも一部」について、「操業中」であることを特定した点は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項3に係る発明について、情報処理装置が「各船ではなく船外に設けられた」こと、情報処理装置と通信端末とが「別体」であること、情報処理装置と各船及び通信端末との通信が「無線通信を介して」行われること、及び、ディスプレイに当該船でセンシングされる情報を表示する前記船団の各船の少なくとも一部について「操業中」であることを、限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項3に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項2による限定の内容は、実質的に訂正事項1による限定の内容と同様であり、上記(1)ウにおいて訂正事項1について示したと同様に、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項5に係る発明について、情報処理装置が「各船ではなく船外に設けられた」こと、情報処理装置と通信端末とが「別体」であること、情報処理装置と各船及び通信端末との通信が「無線通信を介して」行われること、及び、ディスプレイに当該船でセンシングされる情報を表示する前記船団の各船の少なくとも一部について「操業中」であることを、限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項5に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項3による限定の内容は、実質的に訂正事項1による限定の内容と同様であり、上記(1)ウにおいて訂正事項1について示したと同様に、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項9に係る発明について、情報処理装置が「各船ではなく船外に設けられた」こと、情報処理装置とコンピュータとが「別体」であること、情報処理装置と各船及びコンピュータとの通信が「無線通信を介して」行われること、及び、ディスプレイに海図において船団の各船の一を示すとともに前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する、各船について、「操業中」であることを、限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項4は、訂正前の請求項9に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項4による限定の内容は、請求項9に係る発明が「コンピュータ」に実行させる「プログラム」の発明であることから、請求項1に係る発明における「通信端末」を請求項9においては「コンピュータ」に対応させていることをふまえると、実質的に訂正事項1による限定の内容と同様であり、上記(1)ウにおいて訂正事項1について示したと同様に、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的について 訂正事項5は、訂正前の請求項10に係る発明について、情報処理装置が「各船ではなく船外に設けられた」こと、情報処理装置とコンピュータとが「別体」であること、情報処理装置と各船及びコンピュータとの通信が「無線通信を介して」行われること、及び、ディスプレイに海図において船団の各船の位置を示すとともに前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する、各船について、「操業中」であることを、限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記アで説示したとおり、訂正事項5は、訂正前の請求項10に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無について 訂正事項5による限定の内容は、請求項10に係る発明が「コンピュータ」により実行させる「方法」の発明であることから、請求項1に係る発明における「通信端末」を請求項10においては「コンピュータ」に対応させていることをふまえると、実質的に訂正事項1による限定の内容と同様であり、上記(1)ウにおいて訂正事項1について示したと同様に、訂正事項5による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 (6)訂正の単位について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1ないし2、4及び6について、請求項2、4及び6は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、当該訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし2、4及び6に対応する訂正後の請求項1ないし2、4及び6は、一群の請求項であり、訂正事項1による訂正は、一群の請求項1ないし2、4及び6についてするものである。 訂正事項2に係る訂正前の請求項3は、他の請求項を直接又は間接的に引用するものではなく、また、当該訂正事項2によって記載が訂正される請求項3に連動して、訂正されることとなる他の請求項もない。したがって、訂正事項2による訂正は、請求項3についてするものである。 訂正事項3に係る訂正前の請求項5は、他の請求項を直接又は間接的に引用するものではなく、また、当該訂正事項3によって記載が訂正される請求項5に連動して、訂正されることとなる他の請求項もない。したがって、訂正事項3による訂正は、請求項5についてするものである。 訂正事項4に係る訂正前の請求項9は、他の請求項を直接又は間接的に引用するものではなく、また、当該訂正事項4によって記載が訂正される請求項9に連動して、訂正されることとなる他の請求項もない。したがって、訂正事項4による訂正は、請求項9についてするものである。 訂正事項5に係る訂正前の請求項10は、他の請求項を直接又は間接的に引用するものではなく、また、当該訂正事項5によって記載が訂正される請求項10に連動して、訂正されることとなる他の請求項もない。したがって、訂正事項5による訂正は、請求項10についてするものである。 よって、訂正事項1ないし5による本件訂正は、一群の請求項1ないし2、4及び6については一群の請求項ごとに、請求項3、5、9及び10については請求項ごとに、訂正を請求するものである。 (7)独立特許要件について 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし10について、特許異議の申立てがされているので、訂正事項1ないし5において、請求項1ないし6及び9ないし10について、特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項1ないし6及び9ないし10に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (8)申立人の意見書における主張について ア 申立人の主張 申立人Aは、令和3年11月2日提出の意見書において、本件訂正の適否については、特段の主張をしていない。 申立人Bは、令和3年11月4日提出の意見書において、訂正事項1による請求項1の訂正は、以下の点で、願書に添付された明細書等に記載した事項の範囲を超えるものである旨を主張している。 (第1点)訂正後の請求項1において、「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、」と記載した点について、「受信し」の主体は「通信端末」であるところ、「通信端末」が情報処理装置(サーバ20)を経由することなく、船団で漁業を行う各船から直接情報を受信することは、願書に添付された明細書等には記載されていない。 (第2点)訂正後の請求項1において、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」と記載した点について、情報処理装置であるサーバ20が、陸などの船の外部に設けられることは、願書に添付された明細書等には記載されていない。 イ 主張についての検討 (ア)上記申立人Bの主張の第1点について、検討する。 訂正後の請求項1において、申立人Bが言及する「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、」の記載の後に、「通信端末」が備える「プロセッサ」について、「前記プロセッサは、前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、」と記載されている。上記「第1のステップ」の記載より、訂正後の請求項1において、「通信端末」は、「各船でセンシングされる情報」を、「各船」から「情報処理装置」を経由して「受信」することが特定されており、申立人Bが言及する記載は、「各船」から「通信端末」へと至る「情報」の「受信」が「無線通信」を介することを示すものであって、申立人Bが主張するように、通信端末が情報処理装置を経由することなく各船から直接情報を受信することを特定するものではない。 したがって、上記申立人Bの主張の第1点は、訂正後の請求項1について正解したものでなく、採用することができない。 (イ)上記申立人Bの主張の第2点について、検討する。 上記2(1)ウ(ア)に示したとおり、願書に添付された明細書及び図面の、段落【0015】の記載及び【図1】の図示から、「サーバ20」を、「複数の船からなって漁業を行う船団内」の「複数の船30A、30B」のいずれかに設けるのではなく、「船30A、30B」を通信の相手方とするよう、「複数の船からなって漁業を行う船団内」の「複数の船」のいずれにも搭載することなく、船の外部に設けることは、導出される事項であるから、「複数の船からなって漁業を行う船団内」の「複数の船」のいずれにも搭載されない「サーバ20」の設置について、いずれの船でもない陸に設置される場合が含まれることも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項を総合することにより、導出される事項ということができる。 したがって、上記申立人の主張の第2点について検討しても、上記2(1)ウ(ア)の判断を変更すべき事情はない。 (ウ)よって、申立人A及び申立人Bの意見書における主張について検討しても、本件訂正の適否について、上記(1)ないし(7)と異なる判断をすべき事情はない。 3 小括 以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1ないし5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2、4、6〕、3、5、9、10について、本件訂正を全て認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は全て認められたので、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、各々を「本件発明1」等といい、請求項1ないし10に係る発明をまとめて「本件発明」という。)は、令和3年9月17日付け訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 通信端末であって、 前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体であり、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、通信端末。 【請求項2】 各船でセンシングされた位置情報に基づいて、所定時間帯における各船の航跡を表示する、請求項1に記載の通信端末。 【請求項3】 通信端末であって、 前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体であり、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行し、 各船でセンシングされた位置情報に基づいて、所定時間帯における各船の航跡を表示し、 前記ディスプレイに表示される各船の航跡上の所定ポイントを指定する操作をユーザから受け付けることにより、 当該ポイントに対応する時刻における当該船でセンシングされる情報を表示する、通信端末。 【請求項4】 前記第2のステップにおいて、前記船団を構成する船のうち所定の船を予め指定することにより、当該指定された船について、当該指定された船を識別する情報を、別の船を識別する情報とは異なるように表示する、請求項1または2に記載の通信端末。 【請求項5】 通信端末であって、 前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体であり、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行し、 海図上の所定地点を指定することにより、当該地点を、各船でセンシングされた情報と関連付けられて表示する、通信端末。 【請求項6】 所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付ける、請求項1に記載の通信端末。 【請求項7】 通信端末であって、 前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信する情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行し、 所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付け、 前記海図において、前記漁獲記録を行った地点を、別の地点とは異なるように表示する、通信端末。 【請求項8】 通信端末であって、 前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信する情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行し、 所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付け、 前記海図において、前記漁獲記録を行った時刻から過去所定時間帯における航跡を、別の航跡とは異なるように表示する、通信端末。 【請求項9】 プロセッサを備えるコンピュータに実行させるプログラムであって、 前記コンピュータは、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記コンピュータは、前記情報処理装置とは別体であり、 前記プログラムは、前記プロセッサに、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、ディスプレイに、海図と、前記海図において前記操業中である前記船団の各船の位置を示す画像と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報と、を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、プログラム。 【請求項10】 プロセッサを備えるコンピュータにより実行される方法であって、 前記コンピュータは、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記コンピュータは、前記情報処理装置とは別体であり、 前記方法は、前記プロセッサが、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、ディスプレイに、海図と、前記海図において前記操業中である前記船団の各船の位置を示す画像と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報と、を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、方法。」 第4 証拠一覧、異議申立理由の概要、取消理由の概要、及び証拠の記載 1 証拠一覧 (1)申立書Aに添付して提出された証拠 申立人Aが、申立書Aに添付して提出した証拠は、以下のとおりである。なお、以下では申立人Aが提出した甲第1号証などを、「A甲1」などという。 A甲1: 特開2018−8574号公報 (平成30年1月18日公開) A甲2: 特開2017−104025号公報 (平成29年6月15日公開) A甲3: 特開平5−223934号公報 (平成5年9月3日公開) A甲4: 「北海道マナマコ資源管理ガイドライン」、 北海道立総合研究機構稚内水産試験場 (2014年3月7日発行) (2)申立書Bに添付して提出された証拠 申立人Bが、申立書Bに添付して提出した証拠は、以下のとおりである。なお、以下では申立人Bが提出した甲第1号証などを「B甲1」などという。 B甲1: 国際公開第2020/021936号 (PCT/JP2019/025074号(以下、「先願1」 という。国際出願日2019年6月25日)の国際公開) (国際公開日2020年1月30日) B甲2: 「iPadを活用したデジタル操業日誌の開発」、 松橋みどり、情報科学技術フォーラム講演論文集(FIT) 、第10回、第4分冊、P265−268 (2011年) B甲3: 「海洋ビッグデータを活用したスマート漁業モデル事業」、 一般社団法人東松島みらいとし機構、平成27年度補正予算 IoTサービス創出支援事業 成果報告書、総務省 (平成29年2月28日) B甲4: 「北海道マナマコ資源管理ガイドライン」、 北海道立総合研究機構稚内水産試験場 (2014年3月7日発行) なお、A甲4とB甲4とは、同じものである。 2 異議申立理由の概要、及び取消理由の概要 (1)特許異議申立理由の概要 特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 ア A甲1を主たる引用例とした、新規性及び進歩性(申立書A) 本件特許の訂正前の請求項1、請求項2、請求項4、請求項9、及び請求項10に係る発明は、A甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、同条同項の規定により特許を受けることができないものである。 また、本件特許の訂正前の請求項1ないし10に係る発明は、A甲1に記載された発明、及び、A甲2ないしA甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件の訂正前の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 イ B甲1(先願1)による、拡大先願(申立書B) 本件特許の訂正前の請求項1ないし10に係る発明は、B甲1により国際公開がされた先願1の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が先願1に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記先願1の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件の訂正前の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)令和3年7月16日付け取消理由通知の概要 本件特許の訂正前の請求項1ないし5及び9ないし10に係る発明は、B甲1により国際公開がされた先願1の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が先願1に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記先願1の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである(同法第184条の13参照)。 したがって、本件の訂正前の請求項1ないし5及び9ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 証拠の記載 (1)A甲1 ア 記載事項 A甲1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審において付した。以下同様。) 「【発明を実施するための形態】 【0011】 図1は、探索システムの全体構成を示すブロック図である。探索システムは、無人航空機1、衛星通信装置3A、衛星通信装置3B、衛星地上局5A、衛星地上局5B、インターネット7、および船舶2を備えている。 【0012】 無人航空機1は、自律飛行を行なう航空機であり、例えばマルチローターヘリである。なお、無人航空機とは、着水して、水上を移動する機能を備えた航空機を含む。無人航空機1は、位置検出部11、機体制御部12、カメラ13、および衛星通信部14を備えている。各構成は、ネットワーク(LAN)または各種規格の信号線で接続されている。 【0013】 位置検出部11は、第1位置検出部の一例であり、例えばGPS等により自装置の位置(緯度、経度、および高度)を示す第1位置情報を取得する。 ・・・(中略)・・・ 【0015】 カメラ13は、無人航空機1に搭載される第1センサの一例である。カメラ13は、自装置の周囲を撮影する。撮影した画像データは、衛星通信部14を介して外部に出力される。 【0016】 無人航空機1および船舶2は、衛星通信を介して各種情報を送受信する。すなわち、無人航空機1および船舶2は、衛星通信装置3A、衛星地上局5A、インターネット7、衛星地上局5B、および衛星通信装置3Bを介して、互いに各種情報を送受信する。ただし、図9または図10に示すように、無人航空機1および船舶2は、他の実施形態において、無線通信を介して各種情報を送受信することも可能である。また、無人航空機1および船舶2は、無線通信および衛星通信の両方を介して各種情報を送受信することも可能である。 【0017】 船舶2には、各種の航海機器が搭載されている。この例では、船舶2は、位置検出部21、AIS受信機22、表示装置23、および衛星通信部24を搭載している。 【0018】 位置検出部21は、第2位置検出部の一例であり、例えばGPS等により自船の位置(緯度および経度)を取得する。位置検出部21が取得した第2位置情報は、例えば表示装置23に入力され、海図上に自船の位置として表示される。 【0019】 表示装置23は、各種機器から取得した情報を表示するマルチファンクションディスプレイである。図2は、表示装置23の構成を示すブロック図である。表示装置23は、操作部210,入出力インタフェース(I/F)211、制御部212、表示部213、および記憶部214を備えている。 【0020】 制御部212は、記憶部214に記憶されているプログラムを読み出し、各種の動作を行なう。例えば、制御部212は、記憶部214に記憶されている海図データを読み出して、表示部213に海図を表示する。また、制御部212は、入出力I/F211を介して位置検出部21から第2位置情報を取得する。制御部212は、上述の様に、海図上に自船の位置を表示する。これにより、表示装置23は、プロッタとして機能する。 ・・・(中略)・・・ 【0024】 制御部212は、一実施形態として、図3、図4、図5、および図14に示すように、第1位置情報取得部250、第1センサ情報取得部251、第2センサ情報取得部252、第2位置情報取得部257、および統合表示処理部253を備えている。また、他の実施形態においては、制御部212は、図4および図5に示すように、解析部254をさらに備えている。また、図5の実施形態では、制御部212は、目的位置算出部255をさらに備えている。図14の実施形態では、制御部212は、位置算出部259を備えている。 【0025】 第1位置情報取得部250は、無人航空機1の第1位置情報を取得する。第1センサ情報取得部251は、入出力I/F211を介して無人航空機1からの情報を取得する。ここでは、一例として第1センサは、カメラ13であるため、第1センサ情報取得部251は、第1センサ情報として、カメラ13で撮影された画像データを取得する。 【0026】 第2センサ情報取得部252は、各種航海機器からの情報を取得する。第2センサは、この例では、AIS受信機22である。第2センサ情報取得部252は、AIS受信機22から、第2センサ情報として、AIS情報を取得する。また、第2位置情報取得部257は、第2位置情報を取得する。AIS情報には、例えば各船の識別情報、位置、針路、移動速度、または目的位置等が含まれている。また、第2センサは、例えばレーダ27におけるアンテナおよび電磁波送受信部等も該当する。あるいは、不図示のスキャニングソナー等も、第2センサに該当する。 【0027】 統合表示処理部253は、第1位置情報および第2位置情報に基づいて、第1センサ情報取得部251で取得した情報と、第2センサ情報取得部252で取得した情報と、を統合して、表示部213に表示させる処理を行なう。 ・・・(中略)・・・ 【0031】 そして、統合表示処理部253は、無人航空機1の第1位置情報に基づいて、海図上に無人航空機画像402を表示する。また、統合表示処理部253は、第1センサ情報取得部251で取得したカメラ画像404を無人航空機画像402の近傍に表示する。ただし、カメラ画像404は、常時表示する必要はない。例えば、利用者が操作部210を操作して、無人航空機画像402を選択する操作を行なったとき、統合表示処理部253は、無人航空機画像402の近傍にカメラ画像404を表示する。 ・・・(中略)・・・ 【0035】 さらに、この例では、現時点の無人航空機1の位置を示す無人航空機画像402を表示しているが、統合表示処理部253は、過去の無人航空機1の位置情報に基づいて、航跡画像を表示してもよい。 ・・・(中略)・・・ 【0065】 (変形例4) 変形例4は、無人航空機1が着水する態様である。この場合、無人航空機1は、第1センサとして、水温計、水中カメラ、魚群探知機、またはソナー(自船の真下以外を探知する超音波測定機)を備えている。この場合、無人航空機1は、水中を直接観察することができる。なお、無人航空機1が魚群探知機またはソナーを備えている場合には、解析部254は、魚群探知機またはソナーの探知結果に基づいて、魚群の位置情報(第3位置情報)を推定することができる。この場合、統合表示処理部253は、表示部213において、魚群の位置を示す画像(魚群画像)を表示する。 【0066】 なお、本実施形態では、航海機器および表示装置が船舶に搭載される例を示した。しかし、航海機器は、船舶に搭載されるものに限らない。例えば、航海機器は、地上の設備に設置される場合もある。例えば、地上のレーダ基地局において、レーダ画面上に、無人航空機で取得した情報を統合表示する態様であってもよい。すなわち、表示装置は、地上の設備に設置された航海機器から、各種の情報を取得して、無人航空機で取得した情報を統合表示すればよい。」 イ A甲1に記載された発明 上記アからみて、A甲1には、次の発明(以下「A甲1発明」という。)が記載されているものと認める。 【A甲1発明】 「無人航空機1、衛星通信装置3A、衛星通信装置3B、衛星地上局5A、衛星地上局5B、インターネット7、および船舶2を備える探索システムにおける、表示装置23であって、 無人航空機1は、自律飛行を行い、着水して水上を移動する機能を備え、位置検出部11、機体制御部12、カメラ13、及び衛星通信部14を備え、位置検出部11は、自装置の位置を示す第1位置情報を取得し、カメラ13は、無人航空機1に搭載される第1センサの一例であり、自装置の周囲を撮影した画像データを外部に出力し、 無人航空機1および船舶2は、衛星通信または無線通信を介して各種情報を送受信し、 船舶2は、航海機器、位置検出部21、表示装置23、および衛星通信部24を搭載し、位置検出部21は、自船の位置を示す第2位置情報を取得し、 表示装置23は、操作部210、入出力インターフェース211、制御部212、表示部213、及び記憶部214を備え、 制御部212は、記憶部214に記憶されているプログラムを読み出し、各種の動作を行い、第1位置情報取得部250、第1センサ情報取得部251、第2センサ情報取得部252、第2位置情報取得部257、および統合表示処理部253を備えており、 第1位置情報取得部250は、第1位置情報を取得し、第1センサ情報取得部251は、第1センサ情報として、カメラ13が撮影した画像データを取得し、第2センサ情報取得部252は、航海機器から各種情報を取得し、第2位置情報取得部257は、第2位置情報を取得し、 統合表示処理部253は、無人航空機1の第1位置情報に基づいて、海図上に無人航空機画像402を表示し、利用者が操作部210を操作して、無人航空機画像402を選択する操作を行なったとき、統合表示処理部253は、無人航空機画像402の近傍にカメラ画像404を表示し、 統合表示処理部253は、過去の無人航空機1の位置情報に基づいて、航跡画像を表示してもよく、 無人航空機1が、第1センサとして、魚群探知機またはソナーを備えている場合には、統合表示処理部253は、表示部213において、魚群の位置を示す画像(魚群画像)を表示する、 表示装置23。」 (2)A甲2 A甲2には、以下の事項が記載されている。 「【0081】 次に本実施形態の漁業支援システムの操作について説明する。操作者が、本システムの起動、ドローン20のライントランセクト法による航路の設定及びドローン20の航行高度の初期設定、及びドローン20の離陸指示を行うと、ドローン20は自動的に漁船10から離陸し、指示されたトランセクト開始点ヘ自動的に進み、トランセクト航路を飛行して魚群及び魚種を検出し、漁船10に魚群の発見、魚群の規模、魚種及びその位置を報告する。魚群及び魚種の検出は、離陸直後から開始される。ドローンから得られたこれら情報は、漁船側制御装置11のディスプレイ部11b上に表示される。」 (3)A甲3 A甲3には、以下の事項が記載されている。 「【0022】図1は、本発明に係る魚群探知機の一実施例の構成を示す図であり、本発明に係る魚群探知機10は、魚探バッファメモリ12と航跡魚探メモリ14を中心に構成され、船外の温度センサまたは水温装置aからの出力は、水温演算部16により水温値に変換処理され、水温情報として航跡魚探メモリ14に記録され、自船位置を測定するGPS、ロラン、NNSS等の航法装置bから繰り返し送給される自船の緯度、経度を示す位置情報、日付情報は、航法演算部18により処理され、航跡情報として航跡魚探メモリ14に記録される。 【0023】送信部24は、送信トリガ発生部22より指令を受け、送受波器20を介して水中に超音波を送信する。魚群、海底からの反射エコーは、再び送受波器20を介して受信部26で受信される。受信エコーはA/D変換部28でA/D変換され、魚探バッファメモリ12に一時記憶される。 【0024】魚探バッファメモリ12に記憶された魚探情報(魚探映像データ)は、魚群信号演算部30で処理され、魚群規模の識別、魚群の深度等が算出され、魚群情報として航跡情報と対応付けられて航跡魚探メモリ14に記憶される。 【0025】信号制御部32は、操作部34により設定された海図スケール、魚探映像表示範囲等の情報に基づき、航跡魚探メモリ14から航跡情報、魚探情報、魚群情報を読み出し、表示部36を介して、CRT表示装置等の表示器38に表示を行い、また、出力変換部でデータ変換し、プリンタcやパーソナルコンピュータd等の機器に航跡情報、魚探情報、魚群情報を出力する。」 (4)A甲4 摘記は省略するが、A甲4には、ナマコの資源管理をするために、漁業者が漁船のデジタル操業日誌をタブレット端末から入力し、漁船の位置情報と操業情報とをインターネット上のクラウドサーバに収集し、収集した位置情報や操業日誌情報を、各利用者単位でログインID(船舶名)とパスワードを入力する形でセキュリティ対策を行って配信すること(特には第24頁−第26頁「3.1.1 資源管理支援システムを導入しましょう」、第38頁−第39頁「3.1.8 データの管理,保存,セキュリティ」参照)が記載されている。 (5)B甲1 ア 記載事項 B甲1によれば、先願1の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲及び図面(以下、「先願1明細書等」という。)には、次の事項が記載されており、当該事項はその後国際公開されている。 (ア)「[0011]<構成および基本動作> [全体構成] 図1は、本発明の実施の形態に係る航海情報システムの構成を示す図である。 [0012] 図1を参照して、航海情報システム201は、航海情報装置101と、僚船情報装置121とを備える。航海情報装置101は、本船151に搭載されている。また、僚船情報装置121は、僚船152に搭載されている。 [0013] (僚船情報装置) 僚船情報装置121は、通信部20と、複数のセンサ21と、探知部22とを備える。図1では、一例として3つのセンサ21a,21b,21cを示している。 [0014] センサ21aは、たとえば、自己の僚船152の位置を検出し、検出した位置を示す位置情報(他船情報)を探知部22へ出力する。センサ21bは、たとえば、自己の僚船152の船速を検出し、検出した船速を示す速度情報(他船情報)を探知部22へ出力する。 [0015] センサ21cは、たとえば、自己の僚船152が位置する領域の環境に関する環境情報を定期的または不定期に取得し、取得した環境情報(他船情報)を探知部22へ出力する。具体的には、環境情報は、水温、潮汐、波の高さ、風速、潮目および塩分濃度などのうちの少なくともいずれか1つを示す。 [0016] 探知部22は、センサ21aから出力された位置情報、センサ21bから出力された速度情報、およびセンサ21cから出力された環境情報を受ける。また、探知部22は、定期的または不定期に送信波を水中へ送信し、水中からの送信波の反射波を受信し、受信した反射波の測定結果に基づく測定情報を作成して保持する。 [0017] 具体的には、探知部22は、測定結果に基づいて反射波の強度である信号強度を算出し、たとえば、算出した信号強度と、反射波の受信日時、送信波の到達距離R、送信波の方位、送信波の送信方向と水平面とのなす角であるチルト角T、および自己の僚船152の名称などのうちの少なくともいずれか1つとを示す測定情報を作成して保持する。なお、探知部22は、反射波の測定結果そのものを示す測定情報を作成してもよい。 [0018] また、探知部22は、測定情報、ならびにセンサ21a,21b,21cからそれぞれ受けた位置情報、速度情報および環境情報に基づいて、水中における魚群などの対象物を探知する。また、探知部22は、たとえば、最新の測定情報と、最新の位置情報と、最新の速度情報と、最新の環境情報とを対応づけた僚船情報を定期的または不定期に作成して保持する。 [0019] 通信部20は、たとえば、探知部22の保持する僚船情報を、Wi−Fi(登録商標)、LTE(LongTermEvolution)、3Gまたは5G等の通信規格に従って、航海情報装置101へ送信する。 [0020] なお、僚船情報装置121は、僚船情報を、無線通信により送信する代わりに、FDD(Floppy Disk Drive)、USB(Universal Serial Bus)ストレージ、およびSDメモリカードなどの記憶媒体に書き込む構成であってもよい。この場合、僚船情報装置121は、通信部20を備えなくてもよい。 [0021] (航海情報装置) 航海情報装置101は、通信部(他船情報取得部)10と、複数のセンサ11と、探知部12と、表示信号生成部13とを備える。図1では、一例として3つのセンサ11a,11b,11cを示している。」 (イ)「[0027] 表示信号生成部13は、探知部12の保持する本船情報を参照して、本船151の現在位置および測定情報を海図上に重畳した画面の表示信号を生成する。そして、表示信号生成部13は、生成した表示信号を図示しないモニタへ出力することにより、当該画面を表示する。 [0028] 通信部10は、僚船情報装置121から送信された僚船情報を受信し、受信した僚船情報を表示信号生成部13へ出力する。なお、航海情報装置101は、僚船情報が書き込まれた記憶媒体から当該僚船情報を読み出し、読み出した僚船情報を保持する構成であってもよい。この場合、航海情報装置101は、通信部10を備えなくてもよい。 [0029] 表示信号生成部13は、通信部10から出力された僚船情報を受けて、当該僚船情報に基づいて、たとえば、僚船152の現在位置および測定情報を海図上にさらに重畳した画面を表示する。」 (ウ)「[0061] 図2および図3を参照して、表示信号生成部13は、ユーザによる画面に対する操作を受け付け、受け付けた操作内容に基づく画面を表示する。具体的には、ユーザは、図2に示す画面が表示されている状態において、図3に示すように、画面上のポインタPをエリアマークE2内へ移動させて、エリアマークE2を選択する操作を行ったとする。 [0062] この場合、表示信号生成部13は、たとえば、僚船情報装置121から受けた最新の僚船情報に含まれる測定情報および位置情報に基づいて、僚船152に関する詳細情報S2を海図上にさらに重畳した画面を表示する。」 (エ)「[0076] また、表示信号生成部13は、通信部10から受けた複数の僚船情報に基づいて、僚船152の航跡Wを海図上にさらに重畳した画面を表示する。 [0077] ここで、たとえば、ユーザが、画面上のポインタPを航跡W上の点Xに移動させる操作を行ったとする。この場合、表示信号生成部13は、僚船152の位置を示すアイコンIx、および点Xに対応する位置における僚船152の探知範囲を示すエリアマークExを海図上に重畳した画面を表示する。 [0078] また、表示信号生成部13は、通信部10から受けた複数の僚船情報に基づいて、点Xに対応する位置における僚船152の、探知範囲を示すエリアマークExおよび詳細情報Sxを海図上にさらに重畳した画面を表示する。」 (オ)「[0103] 図11を参照して、航海情報システム201は、複数の僚船152にそれぞれ搭載された複数の僚船情報装置121を備える構成であってもよい。 [0104] この場合、航海情報装置101における表示信号生成部13は、たとえば、各僚船152の、位置情報、最新の測定結果に基づく測定情報、および過去の測定結果に基づく測定情報を海図上に重畳した画面を表示する。 [0105] 具体的には、航海情報システム201は、3つの僚船情報装置121A,121B,121Cを備えるとする。僚船情報装置121A,121B,121Cは、それぞれ、僚船152A,152B,152Cに搭載されているとする。 [0106] この場合、表示信号生成部13は、たとえば、僚船152Aの、現在位置を示すアイコンIc2a、現在の探知範囲を示すエリアマークE2a、および過去の探知範囲を示すエリアマークE3a〜E5aを海図上に重畳する。 [0107] また、表示信号生成部13は、たとえば、僚船152Bの、現在位置を示すアイコンIc2b、現在の探知範囲を示すエリアマークE2b、および過去の探知範囲を示すエリアマークE3bを海図上にさらに重畳する。 [0108] また、表示信号生成部13は、たとえば、僚船152Cの、現在位置を示すアイコンIc2c、現在の探知範囲を示すエリアマークE2c、および過去の探知範囲を示すエリアマークE3cを海図上にさらに重畳する。 [0109] また、表示信号生成部13は、たとえば、エリアマークE2〜E5に対して僚船152ごとに異なる色を付すなど、僚船152ごとに異なる態様で表示する。図11では、僚船152AのエリアマークE2a〜E5aの輪郭を、僚船152BのエリアマークE2b,E3bの輪郭よりも太く示している。また、図2では、僚船152AのエリアマークE2a〜E5aの輪郭、および僚船152BのエリアマークE2b,E3bの輪郭を実線で示し、僚船152CのエリアマークE2c,E3cの輪郭を破線で示している。 [0110] なお、表示信号生成部13は、複数の僚船152のうち、たとえばユーザにより選択された1または複数の僚船152の、位置情報、最新の測定結果に基づく測定情報、および過去の測定結果に基づく測定情報を海図上に重畳した画面を表示する構成であってもよい。」 (カ)「[0150] また、本発明の実施の形態に係る航海情報装置101では、表示信号生成部13は、複数の僚船152のうち、選択された1または複数の僚船152の各々の、位置情報および第1測定情報を海図上に重畳した画面の表示信号を生成する。 [0151] このような構成により、複数の僚船152の各々の位置情報および第1測定情報を同一の海図上で把握することが可能であり、また、選択的に僚船152の情報を表示することにより、画面の煩雑化を防ぐことができる。」 (キ)「[0152] また、本発明の実施の形態に係る航海情報装置101では、通信部10は、僚船152に関する、位置情報、速度情報および環境情報のうちの少なくともいずれか1つである他船情報、たとえば位置情報、速度情報および環境情報をさらに取得する。表示信号生成部13は、他船情報が所定条件を満たす場合、所定の通知処理を行う。 [0153] このような構成により、たとえば、僚船152の船速から、当該僚船152が漁を行っていると判断できる場合、または僚船152の位置する領域の水温が、所望の種類の魚群が生息しやすい水温である場合など、僚船152の現在位置が漁に適した状況であることをリアルタイムに通知することができる。」 (ク)「[0172] 本明細書中に開示された実施形態に関連して説明された様々な例示的論理ブロックおよびモジュールは、プロセッサなどのマシンによって実施または実行することができる。プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替的に、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシン、またはそれらの組み合わせなどであってもよい。プロセッサは、コンピュータ実行可能命令を処理するように構成された電気回路を含むことができる。別の実施形態では、プロセッサは、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはコンピュータ実行可能命令を処理することなく論理演算を実行する他のプログラマブルデバイスを含む。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、デジタル信号プロセッサ(デジタル信号処理装置)とマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つ以上のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成として実装することができる。本明細書中では、主にデジタル技術に関して説明するが、プロセッサは、主にアナログ素子を含むこともできる。例えば、本明細書中に記載される信号処理アルゴリズムの一部または全部は、アナログ回路またはアナログとデジタルの混合回路により実装することができる。コンピューティング環境は、マイクロプロセッサ、メインフレームコンピュータ、デジタル信号プロセッサ、ポータブルコンピューティングデバイス、デバイスコントローラ、または装置内の計算エンジンに基づくコンピュータシステムを含むが、これらに限定されない任意のタイプのコンピュータシステムを含むことができる。」 イ 先願1明細書等に記載された発明 上記ア(ア)に摘記した段落[0012]、上記ア(オ)に摘記した段落[0103]より、先願1明細書等には、本船151に搭載される航海情報装置101、及び複数の僚船152にそれぞれ搭載された複数の僚船情報装置121を備える、航海情報システム201が記載されている。 また、上記ア(オ)及び(カ)に摘記したように、航海情報システム201が複数の僚船152にそれぞれ搭載された複数の僚船情報装置121を備える場合にも、上記ア(ア)ないし(エ)及び(キ)ないし(ク)に摘記した航海情報システム201の基本構成及び基本的な動作を変更する必要性はないことが明らかであるから、先願1明細書等には、上記ア(オ)及び(カ)に摘記されるように、複数の僚船152にそれぞれ搭載された複数の僚船情報装置121を備える航海情報システム201において、上記ア(ア)ないし(エ)及び(キ)ないし(ク)に摘記した構成を備えることが、記載されている。 さらに、上記ア(イ)の段落[0027]に示されるように、「表示信号生成部13」は表示信号を生成して「モニタへ出力」するものであるところ、上記ア(ク)に摘記した段落[0172]に示されるとおり、コンピューティング環境としては「ポータブルコンピューティングデバイス」を含むことができ、また、「ポータブルコンピューティングデバイス」が表示信号生成機能やモニタ表示に係る機能を有していることは一般的であるから、先願1明細書等には、本船151に搭載する航海情報装置101が備える他船と通信する通信部10や複数のセンサ11に係る機能は別として、モニタに対する表示信号の生成に係る機能を担う表示信号生成部13及びモニタをポータブルコンピューティングデバイスとしてよいことが、記載されているに等しい。 以上より、先願1明細書等には、本船151に搭載する航海情報装置101が備える、表示信号生成部13及びモニタに着目すると、次の発明(以下、「先願1発明」という。)が記載されていると認められる。 【先願1発明】 「本船151に搭載される航海情報装置101、及び複数の僚船152にそれぞれ搭載された複数の僚船情報装置121を備える、航海情報システム201における、航海情報装置101の表示信号生成部13及びモニタであって、 僚船152に搭載される僚船情報装置121は、自己の僚船152の位置を検出するセンサ21a、自己の僚船152の船速を検出するセンサ21b、自己の僚船152が位置する領域の水温、朝夕、波の高さ、風速、潮目および塩分濃度などを示す環境情報を取得するセンサ21c、送信波を水中へ送信し、水中からの送信波の反射波を受信し、受信した反射波の測定結果に基づく測定情報を作成する探知部22を有し、水中における魚群などの対象物を探知し、測定情報と、位置情報と、速度情報と、環境情報とを対応づけた僚船情報を、本船151に搭載される航海情報装置101へ送信し、 本船151に搭載される航海情報装置101が備える通信部10は、僚船情報装置121から送信された僚船情報を受信し、受信した僚船情報を表示信号生成部13へ出力し、 本船151に搭載される航海情報装置101が備える表示信号生成部13は、本船151の現在位置および測定情報を海図上に重畳した画面の表示信号を生成し、モニタに出力することにより、画面を表示し、通信部10から出力された僚船情報を受けて、当該僚船情報に基づいて、たとえば、僚船152の現在位置および測定情報を海図上にさらに重畳した画面を表示し、 表示信号生成部13は、画面が表示されている状態において、ユーザによる画面に対する操作を受け付け、受け付けた操作内容に基づく画面を表示することができ、 表示信号生成部13は、僚船152の航跡Wを海図上に重畳した画面を表示し、ユーザが、画面上のポインタPを航跡W上の点Xに移動させる操作を行うと、複数の僚船情報に基づいて、点Xに対応する位置における僚船152の、探知範囲を示すエリアマークExおよび詳細情報Sxを海図上にさらに重畳した画面を表示してよく、 表示信号生成部13は、各僚船152の位置情報、および測定情報を海図上に重畳した画面を表示し、 表示信号生成部13は、異なる色を付すなど、僚船152ごとに異なる態様で表示してよく、 表示信号生成部13は、複数の僚船152のうち、ユーザにより選択された1または複数の僚船152の、位置情報、測定情報を海図上に重畳した画面を表示する構成とすることにより、複数の僚船152の各々の位置情報を同一の海図上で把握することが可能であり、また、選択的に僚船152の情報を表示することにより、画面の煩雑化を防ぐことができ、 表示信号生成部13は、僚船152に関する他船情報が所定条件を満たし、僚船152が漁を行っていると判断できる場合、リアルタイムに通知することができる、 ポータブルコンピューティングデバイスとしてよい、表示信号生成部13及びモニタ。」 (6)B甲2 摘記は省略するが、B甲2には、ナマコの資源評価のための操業日誌について、漁業者が通信端末より漁獲量などを入力するとデータが陸上のdata base serverに送信され、data base serverから取得したデータをアプリケーションにより閲覧可能とすること(特には第266頁−第267頁「3.1 本研究の位置づけ」参照)が、記載されている。 (7)B甲3 摘記は省略するが、B甲3には、数日先までの漁獲量の予測を行い、合理的な漁業運営を実現することを目的として、漁業者より漁獲量のデータを得るためにタブレットアプリを開発し、定置網の漁獲量を入力できるようにし、情報は、データ解析しやすいように、一つのデータベース上に蓄積されるようにして、タブレット端末で動作する漁獲データ閲覧アプリにて、グラフ表示できるようにしたこと(特には第6頁「2.1 実験系」参照)が、記載されている。 (8)B甲4 B甲4は、A甲4と同じ内容であり、上記(4)に示した事項が記載されている。 第5 当審の判断 1 取消理由通知に採用した特許異議申立理由(拡大先願)について 取消理由通知において採用した特許異議申立理由は、訂正前の本件特許の請求項1ないし5及び9ないし10に係る発明は、B甲1により国際公開がされた先願1の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が先願1に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記先願1の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない、としたものである(上記第4の2(2))。 上記第2のとおり、本件訂正により、特許請求の範囲の記載は訂正されているので、以下では、本件訂正後の特許請求の範囲の記載に基づいて上記第3に認定した、本件発明1ないし5及び9ないし10について、先願1による拡大先願の理由により、取り消されるべきものであるか否かを、判断する。 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と先願1発明とを対比する。 先願1発明における「本船151」及び「複数の僚船152」は、「航海情報システム201」を用いて「僚船情報」を共有しつつ、「本船151に搭載される航海情報装置101」の「表示信号生成部13」によって「僚船152が漁を行っていると判断できる場合、リアルタイムに通知することができる」から、「本船151」及び各「僚船152」は、本件発明1における「船団で漁業を行う各船」に相当する。 先願1発明において、「僚船152に搭載される僚船情報装置121」が「自己の僚船152の位置を検出するセンサ21a、自己の僚船152の船速を検出するセンサ21b、自己の僚船152が位置する領域の水温、朝夕、波の高さ、風速、潮目および塩分濃度などを示す環境情報を取得するセンサ21c、送信波を水中へ送信し、水中からの送信波の反射波を受信し、受信した反射波の測定結果に基づく測定情報を作成する探知部22を有し、水中における魚群などの対象物を探知」する構成は、本件発明1において、「前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え」る構成に相当する。 先願1発明において、「本船151に搭載される航海情報装置101」が備える「ポータブルコンピューティングデバイスとしてよい、表示信号生成部13及びモニタ」は、本件発明1における「通信端末」に相当する。 先願1発明において、「ポータブルコンピューティングデバイスとしてよい、表示信号生成部13及びモニタ」が、プロセッサ、メモリ及びディスプレイを備えていることが明らかであることをふまえると、先願1発明は、本件発明1において「通信端末」が「プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え」る構成に相当する構成を有している。 先願1発明において、「測定情報と、位置情報と、速度情報と、環境情報とを対応づけた僚船情報」が「送信」されて、「本船151に搭載される航海情報装置101が備える通信部10」で「受信」され、「表示信号生成部13へ出力」される構成は、僚船152から本船151の「通信部10」への通信が無線通信によることは明らかであることをふまえると、本件発明1において、「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であ」る構成と、「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信」する点で、共通する。 先願1発明において、「表示信号生成部13」が、「通信部10から出力された僚船情報を受け」る構成と、本件発明1において、「プロセッサ」が、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップ」を「実行」する構成とは、「プロセッサ」が、「前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を受信する第1のステップ」を「実行」する構成である点で共通する。 先願1発明において、「表示信号生成部13は、僚船152に関する他船情報が所定条件を満たし、僚船152が漁を行っていると判断できる場合、リアルタイムに通知することができ」る構成は、本件発明1において、「プロセッサ」が、「前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップ」を「実行」する構成に相当する。 先願1発明において、「表示信号生成部13」が、「画面が表示されている状態において、ユーザによる画面に対する操作を受け付け、受け付けた操作内容に基づく画面を表示することができ」るものであり、「複数の僚船152のうち、ユーザにより選択された1または複数の僚船152の、位置情報、測定情報を海図上に重畳した画面を表示する構成とすることにより、複数の僚船152の各々の位置情報を同一の海図上で把握することが可能であり、また、選択的に僚船152の情報を表示することにより、画面の煩雑化を防ぐことができ」る構成は、本件発明1において、「プロセッサ」が、「前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップ」を「実行」する構成に相当する。 整理すると、本件発明1と先願1発明とは、次の点で一致する。 「通信端末であって、 前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記プロセッサは、 前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、通信端末。」 そして、本件発明1と先願1発明とは、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1においては、「通信端末」が「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能」であり、「前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体」であり、「通信端末」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する」と特定されているのに対し、 先願1発明においては、「航海情報システム201」は「本船151に搭載される航海情報装置101」及び「複数の僚船152にそれぞれ搭載された複数の僚船情報装置121」よりなるものであり、「本船151に搭載される航海情報装置101」の「表示信号生成部13」は、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」が「受け付けた前記センシングされる情報」を、「無線通信を介して受信」して利用するよう、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」と協働するものではない点。 イ 相違点についての判断 上記相違点1について判断する。 先願1明細書等において、「航海情報システム201」は、「本船151に搭載」される「航海情報装置101」と、「僚船152に搭載」される「僚船情報装置121」とで構成されており、僚船152の情報を受け付けて情報処理機能を備える装置を船外に設けること、及び、「航海情報システム101」の「表示信号生成部13及びモニタ」を、船外に設けられて僚船152の情報を受け付ける情報処理機能を備える装置と協働するよう構成することは、記載されていない。 先願1明細書等の段落[0019]には、「僚船情報」の「航海情報装置101」への送信に関し、「Wi−Fi(登録商標)、LTE(LongTermEvolution)、3Gまたは5G等の通信規格に従って、」と記載されているが、「通信規格」に従った通信において、通信の中継を行う地上局等が介在し得ることをもって、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」を用い、「通信端末」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する」という、上記相違点1に係る本件発明1の構成に、相当するということはできない。 また、先願1明細書等において、僚船152の情報を受け付ける、情報処理機能を備える装置を船外に設けることが記載されていないことからすると、たとえ上記第4の3(6)ないし(8)に示したB甲2ないしB甲4に記載されるように、漁業者が入力する操業日誌または漁獲量のデータをサーバ上に集めて閲覧可能とすることが周知技術であったとしても、先願1発明において、「本船151に搭載」される「航海情報装置101」と、「僚船152に搭載」される「僚船情報装置121」とで構成される「航海情報システム201」を、船外に設けられた情報処理装置を介在するシステムへと変更することが、具体的実施に際しての微差程度であるということはできない。 したがって、上記相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1は先願1発明と同一ではない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の構成を全て有したうえで、さらに構成を付加したものである。 そして、上記(1)のとおり、本件発明2が有する本件発明1の構成は、先願1発明と同一でないから、本件発明2における付加的構成について対比・判断するまでもなく、本件発明2は、先願1発明と同一ではない。 (3)本件発明3について ア 対比 本件発明3は、本件発明1における「第1のステップ」及び「第3のステップ」中における「各船」から、それぞれ「前記船団を構成する」及び「前記船団の」という記載を省くとともに、「各船でセンシングされた位置情報に基づいて、所定時間帯における各船の航跡を表示し、前記ディスプレイに表示される各船の航跡上の所定ポイントを指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該ポイントに対応する時刻における当該船でセンシングされる情報を表示する」との構成を追加したものである。 上記(1)アにおける、本件発明1と先願1発明との対比をふまえると、本件発明3と先願1発明とは、本件発明3における付加的構成について対比するまでもなく、少なくとも次の点で相違する。 なお、以下では、先に検討した相違点1等と関連する相違点には、本件発明3についての相違点であることを示す「−3」等を付して、相違点1−3等と表記する。 <相違点1−3> 本件発明3においては、「通信端末」が「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能」であり、「前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体」であり、「通信端末」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する」と特定されているのに対し、 先願1発明においては、「航海情報システム201」は「本船151に搭載される航海情報装置101」及び「複数の僚船152にそれぞれ搭載された複数の僚船情報装置121」よりなるものであり、「本船151に搭載される航海情報装置101」の「表示信号生成部13」は、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」が「受け付けた前記センシングされる情報」を、「無線通信を介して受信」して利用するよう、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」と協働するものではない点。 イ 判断 上記相違点1−3に係る本件発明3の構成は、上記(1)イに検討した上記相違点1に係る本件発明1の構成と同様に、実質的な相違点であるから、本件発明3におけるその余の構成について判断するまでもなく、本件発明3は、先願1発明と同一ではない。 (4)本件発明4について 本件発明4は、本件発明1又は2の構成を全て有したうえで、さらに構成を付加したものである。 そして、上記(1)(2)のとおり、本件発明4が有する本件発明1又は2の構成は、先願1発明と同一でないから、本件発明4における付加的構成について対比・判断するまでもなく、本件発明4は、先願1発明と同一ではない。 (5)本件発明5について ア 対比 本件発明5は、本件発明1における「第1のステップ」及び「第3のステップ」中における「各船」から、それぞれ「前記船団を構成する」及び「前記船団の」という記載を省くとともに、「海図上の所定地点を指定することにより、当該地点を、各船でセンシングされた情報と関連付けられて表示する」との構成を追加したものである。 上記(1)アにおける、本件発明1と先願1発明との対比をふまえると、本件発明5と先願1発明とは、本件発明5における付加的構成について対比するまでもなく、少なくとも次の点で相違する。 <相違点1−5> 本件発明5においては、「通信端末」が「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能」であり、「前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体」であり、「通信端末」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する」と特定されているのに対し、 先願1発明においては、「航海情報システム201」は「本船151に搭載される航海情報装置101」及び「複数の僚船152にそれぞれ搭載された複数の僚船情報装置121」よりなるものであり、「本船151に搭載される航海情報装置101」の「表示信号生成部13」は、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」が「受け付けた前記センシングされる情報」を、「無線通信を介して受信」して利用するよう、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」と協働するものではない点。 イ 判断 上記相違点1−5に係る本件発明5の構成は、上記(1)イに検討した上記相違点1に係る本件発明1の構成と同様に、実質的な相違点であるから、本件発明5におけるその余の構成について判断するまでもなく、本件発明5は、先願1発明と同一ではない。 (6)本件発明9について ア 対比 本件発明9は、本件発明1における「プロセッサと、メモリと、ディスプレイと」を備えた「通信端末」を、「プロセッサを備えるコンピュータ」としたうえで、「通信端末」の発明である本件発明1を、「プロセッサを備えるコンピュータに実行させるプログラム」の発明とし、「第2のステップ」において、「ディスプレイ」に表示する情報を、「海図と、前記海図において前記操業中である前記船団の各船の位置を示す画像と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報と、を表示する」と特定したものである。 先願1発明において、「ポータブルコンピューティングデバイスとしてよい、表示信号生成部13及びモニタ」の「表示信号生成部13」が行う処理が「プログラム」に基づいて実行されることが明らかであることをふまえると、先願1明細書等には、「先願1発明における、表示信号生成部13の処理を、ポータブルコンピューティングデバイスに実施させる、プログラム。」の発明(以下、「先願1プログラム発明」という。)も記載されている。 本件発明9と先願1プログラム発明との対比においては、上記(1)アにおける本件発明1と先願1発明との対比をふまえることができる。また、先願1プログラム発明において、「表示信号生成部13」が「僚船152に関する他船情報が所定条件を満たし、僚船152が漁を行っていると判断できる場合、リアルタイムに通知することができ、」かつ「僚船情報に基づいて、たとえば、僚船152の現在位置および測定情報を海図上にさらに重畳した画面を表示」することは、本件発明9において、「プロセッサ」が「前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、前記海図において前記操業中である前記船団の各船の位置を示す画像と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報と、を表示する第2のステップ」を実行する構成に相当する。 そうすると、本件発明9と先願1プログラム発明とは、次の点で一致する。 「プロセッサを備えるコンピュータに実行させるプログラムであって、 前記コンピュータは、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記コンピュータは、前記プロセッサに、 前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、前記海図において前記操業中である前記船団の各船の位置を示す画像と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報と、を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、プログラム。」 そして、本件発明9と先願1プログラム発明とは、以下の点で相違する。 <相違点1−9> 本件発明9においては、「コンピュータ」が「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能」であり、「前記コンピュータは、前記情報処理装置とは別体」であり、「プログラム」によって「コンピュータ」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する」と特定されているのに対し、 先願1プログラム発明においては、「航海情報システム201」は「本船151に搭載される航海情報装置101」及び「複数の僚船152にそれぞれ搭載された複数の僚船情報装置121」よりなるものであり、「本船151に搭載される航海情報装置101」の「表示信号生成部13」に処理を実行させるプログラムは、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」が「受け付けた前記センシングされる情報」を、「無線通信を介して受信」して利用するよう、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」と協働するものではない点。 イ 判断 上記相違点1−9に係る本件発明9の構成は、上記(1)イに検討した上記相違点1に係る本件発明1の構成と同様に、実質的な相違点であるから、本件発明9は、先願1プログラム発明と同一ではない。 (7)本件発明10について ア 対比 本件発明10は、本件発明9に係る「プログラム」を、「コンピュータにより実行される方法」の発明としたものである。 先願1発明において、「ポータブルコンピューティングデバイスとしてよい、表示信号生成部13及びモニタ」の「表示信号生成部13」によって処理が実行されることに着目すると、先願1明細書等には、「先願1発明における、表示信号生成部13の処理を、ポータブルコンピューティングデバイスに実施させる、方法。」の発明(以下、「先願1方法発明」という。)も記載されている。 上記(6)アに示した、本件発明9と先願1プログラム発明との対比をふまえると、本件発明10と先願1方法発明とは、次の点で一致する。 「プロセッサを備えるコンピュータにより実行される方法であって、 前記コンピュータは、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記方法は、前記プロセッサが、 前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、前記海図において前記操業中である前記船団の各船の位置を示す画像と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報と、を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、方法。」 そして、本件発明10と先願1方法発明とは、以下の点で相違する。 <相違点1−10> 本件発明10においては、「コンピュータ」が「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能」であり、「前記コンピュータは、前記情報処理装置とは別体」であり、「コンピュータ」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する」と特定されているのに対し、 先願1方法発明においては、「航海情報システム201」は「本船151に搭載される航海情報装置101」及び「複数の僚船152にそれぞれ搭載された複数の僚船情報装置121」よりなるものであり、「本船151に搭載される航海情報装置101」の「表示信号生成部13」は、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」が「受け付けた前記センシングされる情報」を、「無線通信を介して受信」して利用するよう、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」と協働して処理を実行するものではない点。 イ 判断 上記相違点1−10に係る本件発明10の構成は、上記(6)イに検討した上記相違点1−9に係る本件発明9の構成と同様に、実質的な相違点であるから、本件発明10は、先願1方法発明と同一ではない。 (8)取消理由通知に採用した特許異議申立理由についての小括 よって、本件発明1ないし5及び9ないし10に係る特許は、先願1による拡大先願の取消理由及び特許異議申立理由により、取り消されるべきものではない。 2 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由の1(拡大先願)について 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の一つは、訂正前の本件特許の請求項6ないし8に係る発明は、B甲1により国際公開がされた先願1の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が先願1に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記先願1の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない、というものである(上記第4の2(1)イ及び(2))。 上記第2のとおり、本件訂正により、特許請求の範囲の記載は訂正されているので、以下では、本件訂正後の特許請求の範囲の記載に基づいて上記第3に認定した、本件発明6ないし8について、先願1による拡大先願の理由により、取り消されるべきものであるか否かを、判断する。 (1)本件発明6について 本件発明6は、本件発明1の構成を全て有したうえで、さらに「所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付ける」との構成を付加したものである。 上記1(1)のとおり、本件発明6が有する本件発明1の構成は、先願1発明と同一でない。 また、先願1明細書等には、漁獲記録を作成することも記載されていないから、本件発明6は、本件発明6における付加的構成の点でも、先願1発明と同一でない。 したがって、本件発明6は、先願1発明と同一ではない。 (2)本件発明7について ア 対比 本件発明7と先願1発明とを対比する。 先願1発明における「本船151」及び「複数の僚船152」は、「航海情報システム201」を用いて「僚船情報」を共有しつつ、「本船151に搭載される航海情報装置101」の「表示信号生成部13」によって「僚船152が漁を行っていると判断できる場合、リアルタイムに通知することができる」から、「本船151」及び各「僚船152」は、本件発明7における「船団で漁業を行う各船」に相当する。 先願1発明において、「僚船152に搭載される僚船情報装置121」が「自己の僚船152の位置を検出するセンサ21a、自己の僚船152の船速を検出するセンサ21b、自己の僚船152が位置する領域の水温、朝夕、波の高さ、風速、潮目および塩分濃度などを示す環境情報を取得するセンサ21c、送信波を水中へ送信し、水中からの送信波の反射波を受信し、受信した反射波の測定結果に基づく測定情報を作成する探知部22を有し、水中における魚群などの対象物を探知」する構成は、本件発明7において、「前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え」る構成に相当する。 先願1発明において、「本船151に搭載される航海情報装置101」が備える「ポータブルコンピューティングデバイスとしてよい、表示信号生成部13及びモニタ」は、本件発明7における「通信端末」に相当する。 先願1発明において、「ポータブルコンピューティングデバイスとしてよい、表示信号生成部13及びモニタ」が、プロセッサ、メモリ及びディスプレイを備えていることが明らかであることをふまえると、先願1発明は、本件発明7において「通信端末」が「プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え」る構成に相当する構成を有している。 先願1発明において、「測定情報と、位置情報と、速度情報と、環境情報とを対応づけた僚船情報」が「送信」されて、「本船151に搭載される航海情報装置101が備える通信部10」に「受信」され、「表示信号生成部13へ出力」される構成と、本件発明7において、「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信する情報処理装置と通信可能であ」る構成とは、「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信」する点で、共通する。 先願1発明において、「表示信号生成部13」が、「通信部10から出力された僚船情報を受け」る構成と、本件発明7において、「プロセッサ」が、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する第1のステップ」を「実行」する構成とは、「プロセッサ」が、「前記船団を構成する各船からの前記センシングされる情報を受信する第1のステップ」を「実行」する構成である点で共通する。 先願1発明において、「表示信号生成部13」が、「通信部10から出力された僚船情報を受けて、当該僚船情報に基づいて、たとえば、僚船152の現在位置および測定情報を海図上にさらに重畳した画面を表示」する構成は、本件発明7において、「プロセッサ」が、「前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップ」を「実行」する構成に相当する。 先願1発明において、「表示信号生成部13は、僚船152に関する他船情報が所定条件を満たし、僚船152が漁を行っていると判断できる場合、リアルタイムに通知することができ」る構成は、本件発明7において、「プロセッサ」が、「前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップ」を「実行」する構成に相当する。 先願1発明において、「表示信号生成部13」が、「画面が表示されている状態において、ユーザによる画面に対する操作を受け付け、受け付けた操作内容に基づく画面を表示することができ」るものであり、「複数の僚船152のうち、ユーザにより選択された1または複数の僚船152の、位置情報、測定情報を海図上に重畳した画面を表示する構成とすることにより、複数の僚船152の各々の位置情報を同一の海図上で把握することが可能であり、また、選択的に僚船152の情報を表示することにより、画面の煩雑化を防ぐことができ」る構成は、本件発明7において、「プロセッサ」が、「前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップ」を「実行」する構成に相当する。 整理すると、本件発明7と先願1発明とは、次の点で一致する。 「通信端末であって、 前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信し、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記プロセッサは、 前記船団を構成する各船からの前記センシングされる情報を、受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、通信端末。」 そして、本件発明7と先願1発明とは、以下の点で相違する。 <相違点2> 本件発明7においては、「通信端末」が「情報処理装置と通信可能」であり、「通信端末」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する」と特定されているのに対し、 先願1発明においては、「本船151に搭載される航海情報装置101」のうち「表示信号生成部13及びモニタ」のプロセッサについて本件発明7のように特定されていない点。 <相違点3> 本件発明7においては、「所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付け、前記海図において、前記漁獲記録を行った地点を、別の地点とは異なるように表示する」のに対し、 先願1発明においては、漁獲記録を作成するための操作を受け付け、海図において漁獲記録を行った地点を別の地点とは異なるように表示しない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、上記相違点3について判断する。 「通信端末」において、漁獲記録を作成するための操作を受け付け、漁獲記録を行った地点を別の地点とは異なるように表示するためには、「通信端末」の構成、又は「通信端末」を機能させるプログラムが、漁獲記録を作成するための操作を受け付けるとともに、漁獲記録の作成に対応して表示を異ならせる機能を有することが必要であるところ、先願1明細書等には、漁獲記録を作成することについて記載がない。 したがって、上記相違点3に係る本件発明7の構成は、実質的な相違点である。 そして、上記相違点3に係る本件発明7の構成は、実質的な相違点であるから、その余の相違点2について判断するまでもなく、本件発明7は、先願1発明と同一ではない。 (3)本件発明8について ア 対比 本件発明8は、本件発明7において、「所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付け、前記海図において、前記漁獲記録を行った地点を、別の地点とは異なるように表示する」との構成を、「所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付け、前記海図において、前記漁獲記録を行った時刻から過去所定時間帯における航跡を、別の航跡とは異なるように表示する」構成へと置き換えたものである。 上記(2)における本件発明7と先願1発明との対比をふまえると、本件発明8と先願1発明とは、次の相違点2−8及び4において相違し、その余の点で一致する。 <相違点2−8> 本件発明8においては、「通信端末」が「情報処理装置と通信可能」であり、「通信端末」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する」と特定されているのに対し、 先願1発明においては、「本船151に搭載される航海情報装置101」のうち「表示信号生成部13及びモニタ」のプロセッサについて本件発明8のように特定されていない点。 <相違点4> 本件発明8においては、「所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付け、前記海図において、前記漁獲記録を行った時刻から過去所定時間帯における航跡を、別の航跡とは異なるように表示する」のに対し、 先願1発明においては、漁獲記録を作成するための操作を受け付け、海図において、漁獲記録を行った時刻から過去所定時間帯における航跡を、別の航跡とは異なるように表示しない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、上記相違点4について判断する。 「通信端末」において、漁獲記録を作成するための操作を受け付け、漁獲記録を行った時刻から過去所定時間帯における航跡を、別の航跡とは異なるように表示するためには、「通信端末」の構成、又は「通信端末」を機能させるプログラムが、漁獲記録を作成するための操作を受け付けるとともに、漁獲記録の作成に対応して表示を異ならせる機能を有することが必要であるところ、先願1明細書等には、漁獲記録を作成することについて記載がない。 したがって、上記相違点4に係る本件発明8の構成は、実質的な相違点である。 そして、上記相違点4に係る本件発明8の構成は、実質的な相違点であるから、その余の相違点2−8について判断するまでもなく、本件発明8は、先願1発明と同一ではない。 (4)取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由の1(拡大先願)についての小括 よって、本件発明6ないし8に係る特許は、先願1による拡大先願の特許異議申立理由により、取り消されるべきものではない。 3 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由の2(新規性・進歩性)について 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の他の一つは、A甲1を主たる引用例とした新規性及び進歩性である。すなわち、本件特許の訂正前の請求項1、請求項2、請求項4、請求項9、及び請求項10に係る発明は、A甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項3号に該当するから、同条同項の規定により特許を受けることができず、また、本件特許の訂正前の請求項1ないし10に係る発明は、A甲1に記載された発明、及び、A甲2ないしA甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである(上記第4の2(1)ア)。 上記第2のとおり、本件訂正により、特許請求の範囲の記載は訂正されているので、以下では、本件訂正後の特許請求の範囲の記載に基づいて上記第3に認定した、本件発明1ないし10について、A甲1を主たる引用例とした新規性欠如または進歩性欠如の理由により、取り消されるべきものであるか否かを、判断する。 (1)本件発明1について ア 対比 A甲1発明における「表示装置23」は、「操作部210、入出力インターフェース211、制御部212、表示部213、及び記憶部214」を備えており、「制御部212」が備える「第1位置情報取得部250、第1センサ情報取得部251」は、「無人航空機1」から「衛星通信または無線通信を介して」送信される情報を取得するから、「表示装置23」は通信を介した情報を取得する機能を有するということができ、本件発明1における「通信端末」に相当する。 A甲1発明において、「無人航空機1」が「位置検出部11」及び「第1センサ」としての「カメラ13」を備えており、「第1センサとして、魚群探知機またはソナーを備えている場合」もある構成と、本件発明1において、「前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え」る構成とは、「センシングを行う移動体は、位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、カメラとのうちの少なくともいずれかを備え」る点で、共通する。 A甲1発明において、「表示装置23」が「制御部212、表示部213、及び記憶部214」を備える構成は、本件発明1において、「通信端末」が、「プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え」る構成に相当する。 A甲1発明において、「表示装置23」の「制御部212」が備える「第1位置情報取得部250」が「第1位置情報を取得」し、「第1センサ情報取得部251」が「第1センサ情報」を「取得」する構成と、本件発明1において、「通信端末」の「プロセッサ」が「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップ」を実行する構成とは、「通信端末」の「プロセッサ」が「移動体によりセンシングされる情報を受信する第1のステップ」を実行する点で、共通する。 A甲1発明において、「表示装置23」の「制御部212」が備える「統合表示処理部253」が、「無人航空機1の第1位置情報に基づいて、海図上に無人航空機画像402を表示し、利用者が操作部210を操作して、無人航空機画像402を選択する操作を行なったとき、統合表示処理部253は、無人航空機画像402の近傍にカメラ画像404を表示」する構成と、本件発明1において、「通信端末」の「プロセッサ」が、「前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する」構成とは、「通信端末」の「プロセッサ」が、「前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、移動体の少なくとも一部について当該移動体でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、前記ディスプレイに表示される前記移動体を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された移動体について、当該指定された移動体でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する」点で、共通する。 そうすると、本件発明1とA甲1発明とは、次の点で一致する。 「通信端末であって、 センシングを行う移動体は、位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、カメラとのうちの少なくともいずれかを備え 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記プロセッサは、 移動体によりセンシングされる情報を受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、移動体の少なくとも一部について当該移動体でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記移動体を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された移動体について、当該指定された移動体でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、通信端末。」 そして、本件発明1とA甲1発明とは、次の点で相違する。 <相違点A> センシングを行う移動体について、 本件発明1においては、「船団で漁業を行う各船」であり、「通信端末」は「船団で漁業を行う各船」と協働するよう構成されているのに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」である点。 <相違点B> 本件発明1においては、「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能」であって、「前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体」であり、「通信端末」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する」のに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」の情報について、「各船でなく船外に設けられた情報処理装置」が「無線通信を介して受信」して「受け付け」たうえで、「表示装置23」が、「前記情報処理装置」から「無線通信を介して受信」していない点。 <相違点C> 「位置情報取得装置」及び「カメラ」に関し、 本件発明1においては、「位置情報取得装置」は「船の位置を取得する」と特定され、「カメラ」は「船上の様子を撮影する」ものと特定されているのに対し、 A甲1発明においては、「位置検出部11」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の位置を示す第1位置情報」を取得し、「カメラ13」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の周囲を撮影」する点。 <相違点D> 「第2のステップ」において表示の対象とする移動体に関し、 本件発明1においては、「前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部」と特定しているのに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」であって、「操業中」である「船団の各船」ではない点。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点Aについて 上記相違点Aについて判断する。 「通信端末」を「無人航空機1」と協働させるか、「船団で漁業を行う各船」と協働させるかに応じて、「通信端末」が組み込まれるシステム、「通信端末」の機能、及び「通信端末」に機能を実行させるプログラムに変更が生じると解されるから、相違点Aは「通信端末」という物の構成として見ても、実質的な相違点である。 A甲1発明は、【発明が解決しようとする課題】を記載する段落【0005】及び【0006】に、「無人航空機で取得した情報」を「利用者に知らせる」ことが示されているように、「無人航空機1」を用いることを前提としており、「着水」が必要な場合にも「無人航空機1」に「着水して水上を移動する機能を備え」させるものであるから、A甲1発明において、「無人航空機1」に代えて、「船団で漁業を行う各船」を、センシングのための移動体とする動機付けがあるということはできない。 A甲2には、上記第4の3(2)に示した事項が記載されているが、A甲2の記載も、魚群探索にドローンを用いるものであるから、A甲1発明において上記相違点Aに係る本件発明1の構成を採用することを記載あるいは示唆するものではない。 A甲3には、上記第4の3(3)に示した事項が記載されているが、自船の航跡に過去の魚探情報を対応づけて表示可能とするものであり、A甲1発明において上記相違点Aに係る本件発明1の構成を採用することを記載あるいは示唆するものではない。 A甲4には、上記第4の3(4)に示した事項が記載されているが、ナマコの資源管理のために、ナマコ漁船の漁業者が漁の記録を入力したデータを、サーバに収集する技術であり、情報の閲覧についても「ログインID(船舶名)とパスワードを入力する形でセキュリティ対策を行」うものであるから、「無人航空機1」を利用する「探索システム」を前提としたA甲1発明において、「船団で漁業を行う各船」でセンシングされる情報を、「表示装置23」に統合表示することを記載あるいは示唆するものではない。 B甲2には、上記第4の3(6)に示した事項が記載されているが、ナマコの資源管理のために携帯端末を用いてデジタル操業日誌を入力するものであり、「無人航空機1」を利用する「探索システム」を前提としたA甲1発明において、採用すべき動機付けがあるものではない。 B甲3には、上記第4の3(7)に示した事項が記載されているが、数日先までの漁獲量の予測を行い、合理的な漁業運営を実現することを目的として、漁業者より漁獲量のデータを得るためにタブレットアプリを開発し、定置網の漁獲量を入力できるようにし、情報は、データ解析しやすいように、一つのデータベース上に蓄積されるようするものであるから、「無人航空機1」を利用する「探索システム」を前提としたA甲1発明において、採用すべき動機付けがあるものではない。 B甲4は、A甲4と同じ内容であり、A甲1発明において上記相違点Aに係る本件発明1の構成を採用することを記載あるいは示唆するものではない。 したがって、A甲1発明において、上記相違点Aに係る本件発明1の構成に至ることは、A甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4の記載を考慮しても、当業者にとって想到容易であるということができない。 (イ)相違点Bについて 「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」が、「各船でセンシングされる情報」を「受け付け」たうえで、「通信端末」が、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から」受信するか、それとも、「無人航空機1」からの情報を「衛星通信または無線通信を通じて」取得するかに応じて、「通信端末」が組み込まれるシステム、システムの中で「通信端末」が実行する機能、及び「通信端末」に当該機能を実行させるプログラムには、変更が生じると解されるから、相違点Bは相違点Aと同様に、「通信端末」という物の構成としてみても、実質的な相違点である。 この点に関し、A甲1の段落【0066】には、「航海機器」を「地上の設備」とし、「地上のレーダ基地局において、レーダ画面上に、無人航空機で取得した情報を統合表示」する変形が記載されているが、当該記載は、「レーダ基地局」が「無人航空機で取得した情報」を受信して「レーダ画面」上に表示を行うこと示しているものであり、「各船」と「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」及び「通信端末」による、相違点Bに係る本件発明1の構成に相当する協働関係を示唆しているということはできない。 A甲2ないしA甲4、及びB甲2ないしB甲4には、上記第4の3(2)ないし(4)及び(6)ないし(8)に示した事項が記載されているが、上記(ア)において相違点Aについて示したと同様の理由で、A甲1発明において、上記相違点Bに係る本件発明1の構成を採用することを、記載あるいは示唆するものではない。 (ウ)本件発明1の新規性・進歩性の小括 上記(ア)及び(イ)のとおり、上記相違点A及び上記相違点Bは実質的な相違点であるから、その余の相違点C及びDについて判断するまでもなく、本件発明1はA甲1発明と同一ではない。 また、上記(ア)及び(イ)のとおり、上記相違点A及び上記相違点Bに係る本件発明1の構成は、A甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものでないから、その余の相違点C及びDについて判断するまでもなく、A甲1発明、並びにA甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の構成を全て有したうえで、さらに構成を付加したものである。 そして、上記(1)のとおり、本件発明2が有する本件発明1の構成は、A甲1発明と同一でなく、また、本件発明2が有する本件発明1の構成は、A甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2における付加的構成について対比・判断するまでもなく、本件発明2は、A甲1発明と同一ではなく、また、A甲1発明並びにA甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1における「第1のステップ」及び「第3のステップ」中における「各船」から、それぞれ「前記船団を構成する」及び「前記船団の」という記載を省くとともに、「各船でセンシングされた位置情報に基づいて、所定時間帯における各船の航跡を表示し、前記ディスプレイに表示される各船の航跡上の所定ポイントを指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該ポイントに対応する時刻における当該船でセンシングされる情報を表示する」との構成を追加したものである。 上記(1)アにおける、本件発明1とA甲1発明との対比をふまえると、本件発明3とA甲1発明とは、本件発明3における付加的構成について対比するまでもなく、少なくとも次の点で相違する。 なお、以下では、先に検討した相違点A等と関連する相違点には、本件発明3等についての相違点であることを示す「−3」等を付して、相違点A−3等と表記する。 <相違点A−3> センシングを行う移動体について、 本件発明3においては、「船団で漁業を行う各船」であり、「通信端末」は「船団で漁業を行う各船」と協働するよう構成されているのに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」である点。 <相違点B−3> 本件発明3においては、「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能」であって、「前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体」であり、「通信端末」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する」のに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」の情報について、「各船でなく船外に設けられた情報処理装置」が「無線通信を介して受信」して「受け付け」たうえで、「表示装置23」が、「前記情報処理装置」から「無線通信を介して受信」していない点。 <相違点C−3> 「位置情報取得装置」及び「カメラ」に関し、 本件発明3においては、「位置情報取得装置」は「船の位置を取得する」と特定され、「カメラ」は「船上の様子を撮影する」ものと特定されているのに対し、 A甲1発明においては、「位置検出部11」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の位置を示す第1位置情報」を取得し、「カメラ13」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の周囲を撮影」する点。 <相違点D−3> 「第2のステップ」において表示の対象とする移動体に関し、 本件発明3においては、「前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部」と特定しているのに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」であって、「操業中」である「船団の各船」ではない点。 上記相違点A−3及びB−3は、本件発明1とA甲1発明との相違点A及びBと実質的に同じであり、上記(1)イにおいて上記相違点A及びBについて判断したと同様に、相違点A−3及びB−3に係る構成は、A甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、上記相違点A−3及びB−3に係る構成が想到容易でないから、本件発明3のその余の構成について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明、並びにA甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明4について 本件発明4は、本件発明1又は2の構成を全て有したうえで、さらに構成を付加したものである。 そして、上記(1)及び(2)のとおり、本件発明4が有する本件発明1又は2の構成は、A甲1発明と同一でなく、また、本件発明4が有する本件発明1又は2の構成は、A甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明4における付加的構成について対比・判断するまでもなく、本件発明4は、A甲1発明と同一ではなく、また、A甲1発明並びにA甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明5について 本件発明5は、本件発明1における「第1のステップ」及び「第3のステップ」中における「各船」から、それぞれ「前記船団を構成する」及び「前記船団の」という記載を省くとともに、「海図上の所定地点を指定することにより、当該地点を、各船でセンシングされた情報と関連付けられて表示する」との構成を追加したものである。 上記(1)アにおける、本件発明1とA甲1発明との対比をふまえると、本件発明5とA甲1発明とは、本件発明5における付加的構成について対比するまでもなく、少なくとも次の点で相違する。 <相違点A−5> センシングを行う移動体について、 本件発明5においては、「船団で漁業を行う各船」であり、「通信端末」は「船団で漁業を行う各船」と協働するよう構成されているのに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」である点。 <相違点B−5> 本件発明5においては、「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能」であって、「前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体」であり、「通信端末」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する」のに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」の情報について、「各船でなく船外に設けられた情報処理装置」が「無線通信を介して受信」して「受け付け」たうえで、「表示装置23」が、「前記情報処理装置」から「無線通信を介して受信」していない点。 <相違点C−5> 「位置情報取得装置」及び「カメラ」に関し、 本件発明5においては、「位置情報取得装置」は「船の位置を取得する」と特定され、「カメラ」は「船上の様子を撮影する」ものと特定されているのに対し、 A甲1発明においては、「位置検出部11」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の位置を示す第1位置情報」を取得し、「カメラ13」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の周囲を撮影」する点。 <相違点D−5> 「第2のステップ」において表示の対象とする移動体に関し、 本件発明5においては、「前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部」と特定しているのに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」であって、「操業中」である「船団の各船」ではない点。 上記相違点A−5及びB−5は、本件発明1とA甲1発明との相違点A及びBと実質的に同じであり、上記(1)イにおいて上記相違点A及びBについて判断したと同様に、相違点A−5及びB−5に係る構成は、A甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、上記相違点A−5及びB−5に係る構成が想到容易でないから、本件発明5のその余の構成について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1発明、並びにA甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明6について 本件発明6は、本件発明1の構成を全て有したうえで、さらに構成を付加したものである。 そして、上記(1)のとおり、本件発明6が有する本件発明1の構成は、A甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明6における付加的構成について対比・判断するまでもなく、本件発明6は、A甲1発明並びにA甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)本件発明7について ア 対比 A甲1発明における「表示装置23」は、「操作部210、入出力インターフェース211、制御部212、表示部213、及び記憶部214」を備えており、「制御部212」が備える「第1位置情報取得部250、第1センサ情報取得部251」は、「無人航空機1」から「衛星通信または無線通信を介して」送信される情報を取得するから、「表示装置23」は通信を介した情報を取得する機能を有するということができ、本件発明7における「通信端末」に相当する。 A甲1発明において、「無人航空機1」が「位置検出部11」及び「第1センサ」としての「カメラ13」を備えており、「第1センサとして、魚群探知機またはソナーを備えている場合」もある構成と、本件発明7において、「前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え」る構成とは、「センシングを行う移動体は、位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、カメラとのうちの少なくともいずれかを備え」る点で、共通する。 A甲1発明において、「表示装置23」が「制御部212、表示部213、及び記憶部214」を備える構成は、本件発明7において、「通信端末」が、「プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え」る構成に相当する。 A甲1発明において、「表示装置23」の「制御部212」が備える「第1位置情報取得部250」が「第1位置情報を取得」し、「第1センサ情報取得部251」が「第1センサ情報」を「取得」する構成と、本件発明1において、「通信端末」の「プロセッサ」が「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップ」を実行する構成とは、「通信端末」の「プロセッサ」が「移動体によりセンシングされる情報を受信する第1のステップ」を実行する点で、共通する。 A甲1発明において、「表示装置23」の「制御部212」が備える「統合表示処理部253」が、「無人航空機1の第1位置情報に基づいて、海図上に無人航空機画像402を表示し、利用者が操作部210を操作して、無人航空機画像402を選択する操作を行なったとき、統合表示処理部253は、無人航空機画像402の近傍にカメラ画像404を表示」する構成と、本件発明7において、「通信端末」の「プロセッサ」が、「前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行」する構成とは、「通信端末」の「プロセッサ」が、「前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、移動体の少なくとも一部について当該移動体でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、前記ディスプレイに表示される前記移動体を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された移動体について、当該指定された移動体でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する」点で、共通する。 そうすると、本件発明7とA甲1発明とは、次の点で一致する。 「通信端末であって、 センシングを行う移動体は、位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、カメラとのうちの少なくともいずれかを備え 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記プロセッサは、 移動体によりセンシングされる情報を受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、移動体の少なくとも一部について当該移動体でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記移動体を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された移動体について、当該指定された移動体でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、通信端末。」 そして、本件発明7とA甲1発明とは、次の点で相違する。 <相違点A−7> センシングを行う移動体について、 本件発明7においては、「船団で漁業を行う各船」であり、「通信端末」は「船団で漁業を行う各船」と協働するよう構成されているのに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」である点。 <相違点B−7> 本件発明7においては、「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信する情報処理装置と通信可能」であって、「通信端末」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する」のに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」の情報について、「情報処理装置」が「受け付け」たうえで、「表示装置23」が、「前記情報処理装置」から「受信」していない点。 <相違点C−7> 「位置情報取得装置」及び「カメラ」に関し、 本件発明7においては、「位置情報取得装置」は「船の位置を取得する」と特定され、「カメラ」は「船上の様子を撮影する」ものと特定されているのに対し、 A甲1発明においては、「位置検出部11」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の位置を示す第1位置情報」を取得し、「カメラ13」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の周囲を撮影」する点。 <相違点E> 本件発明7においては、「所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付け、前記海図において、前記漁獲記録を行った地点を、別の地点とは異なるように表示する」のに対し、 A甲1発明においては、漁獲記録を作成するための操作を受け付け、海図において漁獲記録を行った地点を別の地点とは異なるように表示しない点。 イ 相違点についての判断 上記相違点A−7は、本件発明1とA甲1発明との相違点Aと実質的に同じであり、上記(1)イにおいて上記相違点Aについて判断したと同様に、相違点A−7に係る構成は、A甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、上記相違点A−7に係る構成が想到容易でないから、本件発明7のその余の構成について検討するまでもなく、本件発明7は、甲1発明、並びにA甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (8)本件発明8について ア 対比 本件発明8は、本件発明7において、「所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付け、前記海図において、前記漁獲記録を行った地点を、別の地点とは異なるように表示する」との構成を、「所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付け、前記海図において、前記漁獲記録を行った時刻から過去所定時間帯における航跡を、別の航跡とは異なるように表示する」構成へと置き換えたものである。 上記(7)における本件発明7とA甲1発明との対比をふまえると、本件発明8とA甲1発明とは、次の点において相違し、その余の点で一致する。 <相違点A−8> センシングを行う移動体について、 本件発明8においては、「船団で漁業を行う各船」であり、「通信端末」は「船団で漁業を行う各船」と協働するよう構成されているのに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」である点。 <相違点B−8> 本件発明8においては、「前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信する情報処理装置と通信可能」であって、「通信端末」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する」のに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」の情報について、「情報処理装置」が「受け付け」たうえで、「表示装置23」が、「前記情報処理装置」から「受信」していない点。 <相違点C−8> 「位置情報取得装置」及び「カメラ」に関し、 本件発明8においては、「位置情報取得装置」は「船の位置を取得する」と特定され、「カメラ」は「船上の様子を撮影する」ものと特定されているのに対し、 A甲1発明においては、「位置検出部11」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の位置を示す第1位置情報」を取得し、「カメラ13」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の周囲を撮影」する点。 <相違点F> 本件発明8においては、「所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付け、前記海図において、前記漁獲記録を行った時刻から過去所定時間帯における航跡を、別の航跡とは異なるように表示する」のに対し、 A甲1発明においては、漁獲記録を作成するための操作を受け付け、海図において、漁獲記録を行った時刻から過去所定時間帯における航跡を、別の航跡とは異なるように表示しない点。 イ 判断 上記相違点A−8は、本件発明1とA甲1発明との相違点Aと実質的に同じであり、上記(1)イにおいて上記相違点Aについて判断したと同様に、相違点A−8に係る構成は、A甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、上記相違点A−8に係る構成が想到容易でないから、本件発明8のその余の構成について検討するまでもなく、本件発明8は、甲1発明、並びにA甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (9)本件発明9について ア 対比 本件発明9は、本件発明1における「プロセッサと、メモリと、ディスプレイと」を備えた「通信端末」を、「プロセッサを備えるコンピュータ」としたうえで、「通信端末」の発明である本件発明1を、「プロセッサを備えるコンピュータに実行させるプログラム」の発明とし、「第2のステップ」において、「ディスプレイ」に表示する情報を、「海図と、前記海図において前記操業中である前記船団の各船の位置を示す画像と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報と、を表示する」と特定したものである。 A甲1発明において、「表示装置23」の「制御部212」が「記憶部214に記憶されているプログラムを読み出し、各種の動作を行」うことからすると、A甲1には、「A甲1発明における、表示装置23の処理を実行させる、プログラム。」の発明(以下、「A甲1プログラム発明」という。)も記載されている。 上記(1)アにおける本件発明1とA甲1発明との対比をふまえると、本件発明9とA甲1プログラム発明とは、次の点で一致する。 「プロセッサを備えるコンピュータに実行させるプログラムであって、 センシングを行う移動体は、位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、カメラとのうちの少なくともいずれかを備え 前記プログラムは、前記プロセッサに、 移動体によりセンシングされる情報を受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、海図において前記移動体の位置を示す画像と、前記移動体の少なくとも一部について当該移動体でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記移動体を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された移動体について、当該指定された移動体でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、プログラム。」 そして、本件発明9とA甲1プログラム発明とは、次の点で相違する。 <相違点A−9> センシングを行う移動体について、 本件発明9においては、「船団で漁業を行う各船」であり、「コンピュータ」の「プログラム」は、「船団で漁業を行う各船」と協働するよう構成されているのに対し、 A甲1発明においては、「無人航空機1」である点。 <相違点B−9> 本件発明9においては、「前記コンピュータは、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能」であって、「前記コンピュータは、前記情報処理装置とは別体」であり、「プログラム」に基づいて「コンピュータ」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する」のに対し、 A甲1プログラム発明においては、「無人航空機1」の情報について、「各船でなく船外に設けられた情報処理装置」が「無線通信を介して受信」して「受け付け」たうえで、「表示装置23」が、「前記情報処理装置」から「無線通信を介して受信」しない点。 <相違点C−9> 「位置情報取得装置」及び「カメラ」に関し、 本件発明9においては、「位置情報取得装置」は「船の位置を取得する」と特定され、「カメラ」は「船上の様子を撮影する」ものと特定されているのに対し、 A甲1プログラム発明においては、「位置検出部11」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の位置を示す第1位置情報」を取得し、「カメラ13」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の周囲を撮影」する点。 <相違点D−9> 「第2のステップ」において「海図」とともに表示する「移動体の画像」に関し、 本件発明9においては、「前記操業中である前記船団の各船の位置を示す画像」と特定しているのに対し、 A甲1プログラム発明においては、「無人航空機1」の「無人航空機画像402」であって、「操業中」である「船団の各船」の位置を示すものではない点。 イ 相違点についての判断 上記相違点A−9及びB−9について判断する。 上記相違点A−9及びB−9は、本件発明1とA甲1発明との相違点A及びBと実質的に同じであり、上記(1)イにおいて上記相違点A及びBについて判断したと同様に、相違点A−9及びB−9は実質的な相違点であり、また、相違点A−9及びB−9に係る構成は、A甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、上記相違点A−9及びB−9に係る構成が、実質的な相違点であり、想到容易でないから、本件発明9のその余の構成について検討するまでもなく、本件発明9は、甲1プログラム発明と同一でなく、また本件発明9は、A甲1プログラム発明、並びにA甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (10)本件発明10について 本件発明10は、本件発明9に係る「プログラム」を、「コンピュータにより実行される方法」の発明としたものである。 A甲1発明において、「表示装置23」の「制御部212」が「記憶部214に記憶されているプログラムを読み出し、各種の動作を行」うことからすると、A甲1には、「A甲1発明における、表示装置23の処理を実行させる、方法。」の発明(以下、「A甲1方法発明」という。)も記載されている。 上記(1)アにおける本件発明1とA甲1発明との対比をふまえると、本件発明10とA甲1方法発明とは、次の点で一致する。 「プロセッサを備えるコンピュータにより実行される方法であって、 センシングを行う移動体は、位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、カメラとのうちの少なくともいずれかを備え 前記方法は、前記プロセッサが、 移動体によりセンシングされる情報を受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、海図において前記移動体の位置を示す画像と、前記移動体の少なくとも一部について当該移動体でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記移動体を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された移動体について、当該指定された移動体でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、方法。」 そして、本件発明10とA甲1方法発明とは、次の点で相違する。 <相違点A−10> センシングを行う移動体について、 本件発明10においては、「船団で漁業を行う各船」であり、「コンピュータ」は、「船団で漁業を行う各船」と協働するよう構成されているのに対し、 A甲1方法発明においては、「無人航空機1」である点。 <相違点B−10> 本件発明10においては、「前記コンピュータは、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能」であって、「前記コンピュータは、前記情報処理装置とは別体」であり、「コンピュータ」の「プロセッサ」は、「前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する」のに対し、 A甲1方法発明においては、「無人航空機1」の情報について、「各船でなく船外に設けられた情報処理装置」が「無線通信を介して受信」して「受け付け」たうえで、「表示装置23」が、「前記情報処理装置」から「無線通信を介して受信」しない点。 <相違点C−10> 「位置情報取得装置」及び「カメラ」に関し、 本件発明10においては、「位置情報取得装置」は「船の位置を取得する」と特定され、「カメラ」は「船上の様子を撮影する」ものと特定されているのに対し、 A甲1方法発明においては、「位置検出部11」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の位置を示す第1位置情報」を取得し、「カメラ13」は「無人航空機1」に搭載されて「自装置の周囲を撮影」する点。 <相違点D−10> 「第2のステップ」において「海図」とともに表示する「移動体の画像」に関し、 本件発明10においては、「前記操業中である前記船団の各船の位置を示す画像」と特定しているのに対し、 A甲1方法発明においては、「無人航空機1」の「無人航空機画像402」であって、「操業中」である「船団の各船」の位置を示すものではない点。 イ 相違点についての判断 上記相違点A−10及びB−10について判断する。 上記相違点A−10及びB−10は、本件発明1とA甲1発明との相違点A及びBと実質的に同じであり、上記(1)イにおいて上記相違点A及びBについて判断したと同様に、相違点A−10及びB−10は実質的な相違点であり、また、相違点A−10及びB−10に係る構成は、A甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、上記相違点A−10及びB−10に係る構成が、実質的な相違点であり、想到容易でないから、本件発明10のその余の構成について検討するまでもなく、本件発明10は、甲1方法発明と同一でなく、また本件発明10は、A甲1方法発明、並びにA甲2ないしA甲4及びB甲2ないしB甲4の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (11)取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由(新規性・進歩性)についての小括 よって、本件発明1ないし10に係る特許は、A甲1を主たる引用例とした、新規性欠如または進歩性欠如の特許異議申立理由により、取り消されるべきものではない。 4 申立人による意見書における主張について ア 申立人Aの主張について 申立人Aは、令和3年11月2日付け意見書において、本件発明1と先願1発明との相違点1に関し、サーバーを使った漁船情報の共有については、参考文献1ないし8にも示されるように周知・慣用技術であるから、相違点1は実質的な相違点ではなく、本件発明1と先願1発明とは同一である旨を主張している。 申立人Aが提出した参考文献1ないし8を参照すると、摘記は省略するが、申立人Aが提出した参考文献1ないし3には、地上に設置される漁業無線局に関する記載があり、参考文献4には、漁船の無線通信機が同一のグループ識別機能を有する無線通信機の全てに宛ててデータを一斉送信することが記載されており、参考文献5ないし8には、魚群予測又は資源管理等のために漁船が収集したデータをサーバに集約することが記載されている。 しかしながら、先願1発明において、「僚船情報」の「航海情報装置101」への送信について、通信規格に従う結果として、参考文献1ないし3に示される地上の無線局に中継される、あるいは、参考文献4に示されるようにグループをなす無線通信機の全てに一斉送信され得るとしても、そのことをもって、上記相違点1に係る本件発明1の如く、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」が「船団を構成する各船」から「前記センシングされる情報」を「受け付け」たうえで、「情報端末」の「プロセッサ」が「前記情報処理装置が・・・受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する」構成に相当するとはいえない。また、先願1明細書等において、「航海情報システム201」は、「本船151に搭載」される「航海情報装置101」と、「僚船152に搭載」される「僚船情報装置121」とで構成されており、僚船152の情報を受け付けて情報処理機能を備える装置を船外に設けること、及び、「航海情報システム101」の「表示信号生成部13及びモニタ」を、船外に設けられて僚船152の情報を受け付ける情報処理機能を備える装置と協働するよう構成することが、いずれも記載されていないことからすれば、参考文献5ないし8に示されるように、魚群予測又は資源管理等のために漁船が収集したデータをサーバに集約することが公知であるからといって、先願1発明において、船外の地上にサーバを設け、僚船152の情報をサーバが受け付けたうえで、本船の航海情報装置101はサーバから僚船152の情報を受信するように変更を加えることについて、実施に際しての微差程度ということはできない。 したがって、申立人Aの上記主張を考慮しても、本件発明1と先願1発明との相違点1について、上記1(1)イの判断を変更すべき事情は見いだせない。 イ 申立人Bの主張について (ア)相違点1について 申立人Bは、令和3年11月4日付け意見書において、本件発明1と先願1発明との相違点1に関し、本件発明1における「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」とは、「情報処理装置」が「船」の「屋内部分」でなく「屋外部分」に設けられることを意味するところ、先願1発明において、船における通信部10の設置場所を選択することは、周知技術、慣用技術の付加であって、新たな効果を奏するものではないこと、及び、先願1発明において、通信部10と表示信号生成部13とを含む航海情報装置101に代えて、通信部10の機能を有する通信装置と、表示信号生成部13の機能を有する表示信号生成装置とを採用することは、周知技術または慣用技術であることより、相違点1は実質的な相違点ではなく、本件発明1と先願1発明とは同一である旨を主張している。 しかしながら、本件発明1を特定する本件訂正後の請求項1においては、「センシングを行うため」の機器について、「前記船団を構成する船は、・・・ソナーと、・・・のうちの少なくともいずれかを備え」と記載する一方、「情報処理装置」については、「各船ではなく船外に設けられた情報処理装置」と記載しているから、「情報処理装置」は船の屋外部分に設けられているのではなく、船に設けることにはならない「船外」に設けられていると特定されているものであり、上記申立人Bの主張は相違点1に係る本件発明1の構成を正解しないものである。 そして、上記1(1)イに判断したとおり、相違点1は実質的な相違点であるから、申立人Bの上記主張について検討しても、本件発明1と先願1発明との相違点1について、上記1(1)イの判断を変更すべき事情は見いだせない。 (イ)明確性について 申立人Bは、令和3年11月4日付け意見書において、本件発明1を特定する訂正後の請求項1の記載において、「前記操業中」の記載より前に「操業中」の記載がないから、「前記操業中」が指すものが不明確であり、本件発明1は、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができない旨を主張している。 しかしながら、訂正後の請求項1において申立人Bが言及する記載は、請求項1の第2段落に記載される「船団で漁業を行う各船」を受けて、操業中であることを付記して、「前記操業中である前記船団の各船」と記載したものと解されるから、「操業中」の前に「前記」の語があることにより、第三者に不測の不利益を生じさせる程に発明が不明確となっているものではない。 したがって、明確性に関する上記申立人Bの主張について検討しても、本件発明1に係る特許は、特許法第113条第4号に該当するとして、取り消されるべきものではない。 ウ 申立人の主張についての小括 以上のとおり、申立人A及び申立人Bによる、意見書における主張について検討しても、本件発明1ないし10に係る特許が取り消されるべきものであるか否かについて、上記1ないし3の判断を変更すべき事情は見いだせない。 第6 むすび 以上のとおり、本件訂正は全て認められるとともに、本件発明1ないし10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件発明1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 通信端末であって、 前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体であり、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、通信端末。 【請求項2】 各船でセンシングされた位置情報に基づいて、所定時間帯における各船の航跡を表示する、請求項1に記載の通信端末。 【請求項3】 通信端末であって、 前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体であり、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行し、 各船でセンシングされた位置情報に基づいて、所定時間帯における各船の航跡を表示し、 前記ディスプレイに表示される各船の航跡上の所定ポイントを指定する操作をユーザから受け付けることにより、 当該ポイントに対応する時刻における当該船でセンシングされる情報を表示する、通信端末。 【請求項4】 前記第2のステップにおいて、前記船団を構成する船のうち所定の船を予め指定することにより、当該指定された船について、当該指定された船を識別する情報を、別の船を識別する情報とは異なるように表示する、請求項1または2に記載の通信端末。 【請求項5】 通信端末であって、 前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記通信端末は、前記情報処理装置とは別体であり、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、前記操業中である前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行し、 海図上の所定地点を指定することにより、当該地点を、各船でセンシングされた情報と関連付けられて表示する、通信端末。 【請求項6】 所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付ける、請求項1に記載の通信端末。 【請求項7】 通信端末であって、 前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信する情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行し、 所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付け、 前記海図において、前記漁獲記録を行った地点を、別の地点とは異なるように表示する、通信端末。 【請求項8】 通信端末であって、 前記通信端末は、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から受信する情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記通信端末は、プロセッサと、メモリと、ディスプレイとを備え、 前記プロセッサは、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、前記ディスプレイに、海図と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行し、 所定の船について、当該船の漁獲記録を作成するための操作をユーザから受け付け、 前記海図において、前記漁獲記録を行った時刻から過去所定時間帯における航跡を、別の航跡とは異なるように表示する、通信端末。 【請求項9】 プロセッサを備えるコンピュータに実行させるプログラムであって、 前記コンピュータは、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記コンピュータは、前記情報処理装置とは別体であり、 前記プログラムは、前記プロセッサに、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、ディスプレイに、海図と、前記海図において前記操業中である前記船団の各船の位置を示す画像と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報と、を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、プログラム。 【請求項10】 プロセッサを備えるコンピュータにより実行される方法であって、 前記コンピュータは、船団で漁業を行う各船でセンシングされる情報を各船から無線通信を介して受信し、各船ではなく船外に設けられた情報処理装置と通信可能であり、 前記船団を構成する船は、前記センシングを行うために、前記船の位置を取得する位置情報取得装置と、魚群探知機と、ソナーと、船上の様子を撮影するカメラとのうちの少なくともいずれかを備え、 前記コンピュータは、前記情報処理装置とは別体であり、 前記方法は、前記プロセッサが、 前記情報処理装置が前記船団を構成する各船から無線通信を介して受け付けた前記センシングされる情報を、前記情報処理装置から無線通信を介して受信する第1のステップと、 前記受信した情報に基づいて、ディスプレイに、海図と、前記海図において前記操業中である前記船団の各船の位置を示す画像と、前記船団の各船の少なくとも一部について当該船でセンシングされる情報と、を表示する第2のステップと、 前記ディスプレイに表示される前記船団の各船を指定する操作をユーザから受け付けることにより、当該指定された船について、当該指定された船でセンシングされる情報を表示する第3のステップと、を実行する、方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-02-17 |
出願番号 | P2019-239179 |
審決分類 |
P
1
651・
16-
YAA
(A01K)
P 1 651・ 121- YAA (A01K) P 1 651・ 113- YAA (A01K) P 1 651・ 851- YAA (A01K) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
長井 真一 |
特許庁審判官 |
有家 秀郎 土屋 真理子 |
登録日 | 2020-10-23 |
登録番号 | 6783006 |
権利者 | 株式会社ライトハウス |
発明の名称 | 通信端末、プログラム及び方法 |
代理人 | IPTech特許業務法人 |
代理人 | IPTech特許業務法人 |